(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】加水分解処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20220210BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220210BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B09B3/00 304Z
B09B3/00 ZAB
B01J3/00 A
(21)【出願番号】P 2018174836
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518334211
【氏名又は名称】井上 敦夫
(73)【特許権者】
【識別番号】303054238
【氏名又は名称】森口 千秋
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】森口 千秋
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-120746(JP,A)
【文献】特開2003-053398(JP,A)
【文献】特開2010-022250(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0073195(KR,A)
【文献】特開2009-121724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/122746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/00- 3/08
B09B 1/00- 5/00
C02F 11/00-11/20
A23N 1/00-17/02
A23K 10/00-50/90
A62D 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を加水分解処理するための処理室に蒸気を供給するための蒸気供給部を接続して、蒸気供給部から処理室に高温・高圧の蒸気を供給して被処理物を加水分解処理する加水分解処理装置において、
処理室を複数個設けるとともに、少なくとも2個の処理室の間に連通路を形成し、連通路に開閉弁を設け、開閉弁を開放することで一方の処理室の内圧を利用して他方の処理室の内圧を上昇させるように制御
し、各処理室として球形状の容器を用い、各処理室の下端の湾曲した底部に排出装置の開閉弁を配置するとともに、蒸気供給部に接続されたノズルを各処理室の内部で下方の排出装置の開閉弁に向けて屈曲させて配置して、ノズルから吐出した蒸気を排出装置の開閉弁に吹付けることを特徴とする加水分解処理装置。
【請求項2】
被処理物の加水分解処理を終了した処理室の内圧を利用して被処理物の加水分解処理を開始する処理室の内圧を上昇させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の加水分解処理装置。
【請求項3】
前記連通路及び
連通路に設けた開閉弁を全ての処理室の間に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加水分解処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温・高圧の蒸気で被処理物を加水分解処理する加水分解処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品残渣物等の有機廃棄物などから肥料や飼料などを生成する際には、加水分解処理装置が用いられている。
【0003】
この加水分解処理装置は、被処理物を加水分解処理するための処理室に蒸気を供給するためのボイラー等の蒸気供給部を接続した構成となっている。
【0004】
そして、加水分解処理装置では、有機廃棄物などの被処理物を容器に投入するとともに、蒸気供給部から容器に高温・高圧の蒸気を供給して、容器の内部を高温・高圧状態とすることで、容器の内部で被処理物を加水分解処理している(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の加水分解処理装置では、容器の内部で被処理物を加水分解処理した後に、容器から加水分解処理後の被処理物(肥料や飼料)を排出する。これにより、容器の内圧は、一旦、大気圧に開放された状態となる。
【0007】
そして、上記従来の加水分解処理装置では、次に被処理物を容器に投入して加水分解処理を行う際に、再び蒸気供給部から蒸気を供給して、容器の内圧を大気圧から加水分解処理に適した高圧な状態にまで上昇させる必要があった。
【0008】
そのため、上記従来の加水分解処理装置では、被処理物を連続して処理する場合に、被処理物を加水分解処理する毎に容器の内圧を大気圧から加水分解処理に適した高圧な状態にまで昇圧させる時間を要しており、被処理物の加水分解処理に要する処理時間が長くなり、また、被処理物の加水分解処理に要する蒸気量が多くなり、被処理物の処理コストが増大してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、請求項1に係る本発明では、被処理物を加水分解処理するための処理室に蒸気を供給するための蒸気供給部を接続して、蒸気供給部から処理室に高温・高圧の蒸気を供給して被処理物を加水分解処理する加水分解処理装置において、処理室を複数個設けるとともに、少なくとも2個の処理室の間に連通路を形成し、連通路に開閉弁を設け、開閉弁を開放することで一方の処理室の内圧を利用して他方の処理室の内圧を上昇させるように制御し、各処理室として球形状の容器を用い、各処理室の下端の湾曲した底部に排出装置の開閉弁を配置するとともに、蒸気供給部に接続されたノズルを各処理室の内部で下方の排出装置の開閉弁に向けて屈曲させて配置して、ノズルから吐出した蒸気を排出装置の開閉弁に吹付けることにした。
【0010】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、被処理物の加水分解処理を終了した処理室の内圧を利用して被処理物の加水分解処理を開始する処理室の内圧を上昇させるように制御することにした。
【0011】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記連通路及び連通路に設けた開閉弁を全ての処理室の間に設けることにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、被処理物を加水分解処理するための処理室に蒸気を供給するための蒸気供給部を接続して、蒸気供給部から処理室に高温・高圧の蒸気を供給して被処理物を加水分解処理する加水分解処理装置において、処理室を複数個設けるとともに、少なくとも2個の処理室の間に連通路を形成し、連通路に開閉弁を設け、開閉弁を開放することで一方の処理室の内圧を利用して他方の処理室の内圧を上昇させるように制御することにしているために、処理室の内圧の上昇に要する時間や蒸気量を少なくすることができ、被処理物の処理コストを低減させることができる。
【0014】
特に、被処理物の加水分解処理を終了した処理室の内圧を利用して被処理物の加水分解処理を開始する処理室の内圧を上昇させるように制御することにした場合には、連続して被処理物を加水分解処理することができ、短時間で大量の被処理物を加水分解処理することができ、これによっても、被処理物の処理コストを低減させることができる。
【0015】
また、前記連通路及び開閉弁を全ての処理室の間に設けた場合には、複数の処理室を効率良く使用して被処理物の加水分解処理を行うことができるので、より一層被処理物の処理コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る加水分解処理装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る加水分解処理装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、加水分解処理装置1は、概ね、被処理物を加水分解処理するための処理部2と、処理部2に蒸気を供給するための蒸気供給部3と、処理部2の臭気を脱臭する脱臭部4と、各部を制御するための制御部5で構成している。
【0019】
処理部2は、複数個(ここでは、2個)の処理室6,7を設けて、各処理室6,7で被処理物を蒸気によって加水分解処理するようになっている。
【0020】
各処理室6,7には、加水分解処理前の被処理物を上端部から内部に投入するための投入装置8,9と、加水分解処理時に被処理物を内部で撹拌するための撹拌装置10,11と、加水分解処理後の被処理物を下端部から外部に排出するための排出装置12,13がそれぞれ接続されている。
【0021】
また、各処理室6,7には、上端部と下端部とに蒸気供給部3がバルブ14~17を介してそれぞれ接続され、上端部に脱臭部4がバルブ18,19を介してそれぞれ接続されている。
【0022】
各処理室6,7は、内部で被処理物を蒸気によって加水分解処理することができる密閉可能な中空状の容器であればよく、ここでは、球形状の容器を用いている。なお、球形状の処理室6,7の下端の湾曲した底部に排出装置12,13の開閉弁を配置するとともに、蒸気供給部3にバルブ16,17を介して接続されたノズルを処理室6,7の内部で下方の開閉弁の中央に向けて屈曲させて配置して、ノズルから吐出した蒸気を開閉弁に吹き付けることができるようにしている。
【0023】
複数個の処理室6,7の間には、それぞれの内部を連通させるための連通路20を形成するとともに、連通路20の途中に開閉弁21を設けている。
【0024】
蒸気供給部3は、被処理物を加水分解処理するのに十分な高温及び高圧の蒸気を生成するボイラー等の蒸気生成器22にバルブ14~17を介して処理部2の各処理室6,7を接続している。
【0025】
この蒸気供給部3には、蒸気生成器22と各処理室6,7(バルブ14~17)との間に蒸気用セパレーター23が介設されている。これにより、蒸気供給部3では、蒸気生成器22で生成した水蒸気に含有される過剰な水分を分離して排水するようにしている。
【0026】
脱臭部4は、クーリングタワー24が接続された脱臭装置25をバルブ18,19を介して処理部2の各処理室6,7に接続するとともに、脱臭装置25をバルブ26,27を介して処理部2の投入装置8,9に接続している。
【0027】
この脱臭部4には、処理部2(バルブ18,19,26,27)との間に弱酸性のミスト(霧状の弱酸性水)を噴霧するための噴霧装置28,29が介設されている。これにより、脱臭部4では、処理部2の各処理室6,7や投入装置8,9で発生する臭気を弱酸性のミストの作用で中和しながら脱臭するようにしている。
【0028】
加水分解処理装置1は、以上に説明したように構成しており、制御部5で各部を適宜制御することで、被処理物を加水分解処理する。
【0029】
その際に、制御部5は、複数個の処理室6,7の間の連通路20に設けられた開閉弁21を閉じた状態で、複数個の処理室6,7の全てに同時に蒸気供給部3から蒸気を供給して全ての処理室6,7の内圧を上昇させ、全ての処理室6,7で同時に被処理物を加水分解処理することもできる。これにより、大量の被処理物を同時にまとめて加水分解処理することができる。
【0030】
また、制御部5は、複数個の処理室6,7の間の連通路20に設けられた開閉弁21を閉じた状態で、いずれかの処理室6に蒸気供給部3から蒸気を供給して内圧を上昇させて被処理物の加水分解処理を行い、その後、開閉弁21を開いて、一方の処理室6の内圧を利用して他の処理室7の内圧をある程度上昇させておき、その後、開閉弁21を閉じて、他の処理室7に蒸気供給部3から蒸気を供給して内圧を上昇させ被処理物の加水分解処理を行うこともできる。これにより、他の処理室7の内圧の上昇に要する時間や蒸気量を少なくすることができ、被処理物の処理コストを低減させることができる。
【0031】
ここで、
図1に示したように、2個の処理室6,7を設けた場合や、
図2(a)に示すように、3個の処理室30,31,32を設けた場合には、各処理室6,7や各処理室30,31,32のそれぞれの間に、連通路20及び開閉弁21や連通路33,34,35及び開閉弁36,37,38を設けることで、全ての処理室6,7や処理室30,31,32の間に連通路20及び開閉弁21や連通路33,34,35及び開閉弁36,37,38を設けた構成とすることができる。
【0032】
また、
図2(b)に示すように、処理室39~42の個数が4個以上の場合には、各処理室39~42のそれぞれの間に、連通路43~48及び開閉弁49~54を設けることで、全ての処理室39~42の間に連通路43~48及び開閉弁49~54を設けた構成とすることができるが、いずれかの処理室39~42の間だけに連通路43~48及び開閉弁49~54(たとえば、連通路43~46及び開閉弁49~52や、連通路47,48及び開閉弁53,54)を設けた構成としてもよい。
【0033】
以上に説明したように、上記加水分解処理装置1は、被処理物を加水分解処理するための処理室6,7に蒸気を供給するための蒸気供給部3を接続して、蒸気供給部3から処理室6,7に高温・高圧の蒸気を供給して被処理物を加水分解処理するように構成している。
【0034】
そして、上記加水分解処理装置1は、処理室6,7を複数個設けるとともに、少なくとも2個の処理室6,7の間に連通路20を形成し、連通路20に開閉弁21を設け、開閉弁21を開放することで一方の処理室6の内圧を利用して他方の処理室7の内圧を上昇させるように制御している。
【0035】
そのため、上記構成の加水分解処理装置1では、処理室7の内圧の上昇に要する時間や蒸気量を少なくすることができ、被処理物の処理コストを低減させることができる。
【0036】
また、上記加水分解処理装置1は、被処理物の加水分解処理を終了した処理室6の内圧を利用して被処理物の加水分解処理を開始する処理室7の内圧を上昇させるように制御している。
【0037】
そのため、上記構成の加水分解処理装置1では、連続して被処理物を加水分解処理することができ、短時間で大量の被処理物を加水分解処理することができ、これによっても、被処理物の処理コストを低減させることができる。
【0038】
さらに、上記加水分解処理装置1は、連通路20及び開閉弁21を全ての処理室6,7の間に設けるようにしている。
【0039】
そのため、上記構成の加水分解処理装置1では、複数の処理室6,7を効率良く使用して被処理物の加水分解処理を行うことができるので、より一層被処理物の処理コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 加水分解処理装置 2 処理部
3 蒸気供給部 4 脱臭部
5 制御部 6,7 処理室
8,9 投入装置 10,11 撹拌装置
12,13 排出装置 14~17 バルブ
18,19 バルブ 20 連通路
21 開閉弁 22 蒸気生成器
23 蒸気用セパレーター 24 クーリングタワー
25 脱臭装置 26,27 バルブ
28,29 噴霧装置 30,31,32 処理室
33,34,35 連通路 36,37,38 開閉弁
39~42 処理室 43~48 連通路
49~54 開閉弁