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  • 特許-トレーニングマシンの制御方法 図1
  • 特許-トレーニングマシンの制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】トレーニングマシンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 24/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
A63B24/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020560685
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2018046618
(87)【国際公開番号】W WO2020129162
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514134860
【氏名又は名称】株式会社CALADA LAB.
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 一雄
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-18189(JP,A)
【文献】特開2015-139535(JP,A)
【文献】米国特許第6228000(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/248926(US,A1)
【文献】米国特許第7678022(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線動又は枢動の往復動が可能な往復動手段と、前記往復動手段に与えられた負荷の値を取得する負荷取得手段と、該往復動手段に負荷を与える負荷付与手段を具えたトレーニングマシンの制御方法であって、
前記負荷取得手段は、固定された前記往復動手段に対して与えられた負荷を往動方向の基準負荷として取得し、
前記負荷付与手段は、前記基準負荷以下の負荷を、前記往復動手段に対して往動方向の負荷が与えられたときに該往復動手段の往動方向に対向する往動負荷として前記往復動手段に付与し、その後又はその前に、前記基準負荷よりも大きい負荷を、前記往復動手段の復動方向に対する復動負荷として前記往復動手段に与えながら該往復動手段を復動させ
前記往復動手段が一往復するごとに、前記往復動手段の位置に応じた前記往動負荷及び復動負荷を、前回の往復動時の前記往動負荷及び復動負荷よりも低くすることを特徴とする、
トレーニングマシンの制御方法。
【請求項2】
前記往復動手段が動かされる範囲の基端及び末端を検知する位置センサをさらに具え、
前記負荷付与手段が、前記基端及び末端より前記範囲外に前記往復動手段を移動させないように制御する、請求項1のトレーニングマシンの制御方法。
【請求項3】
前記往動負荷を前記往復動手段の往動方向への移動に伴い、徐々に高くした後に低くし、
前記復動負荷を前記往復動手段の復動方向への移動に伴い、徐々に高くした後に低くする、請求項1又は2のトレーニングマシンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋力トレーニングに用いられるトレーニングマシンのハンドル等に加える負荷を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋力トレーニングに用いられる装置としては、重りを利用するものやモータによる負荷を利用するものが開発されてきており、使用者に対して効果的な負荷を与えるためにこれらの装置を制御する方法も開発されてきている。この例として、以下に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-163108号公報
【文献】特開2018-175670号公報
【0004】
特許文献1には、運動者の操作により移動可能なハンドルと、ハンドルの移動と回転運動を相互変換する運動変換機構と、運動変換機構によりハンドルの移動と連動して回転軸が回転するモータと、モータのトルクを制御する制御部を具えたトレーニング装置であって、ハンドルの加速度、位置、或いは時間によって変化する目標値を設定し、ハンドルの負荷を変化させるトレーニングマシン制御方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、使用者が運動器具に対して一連の運動で与える力(運動特性)と、使用者の年齢・性別等の情報(属性情報)に基づいて、使用者が運動器具を用いて運動する際の負荷を決定することができるトレーニングマシンの制御方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のトレーニングマシンによれば、モータによって負荷を与えることができるため、ウェイトが不要で、トレーニングマシンのコンパクト化を図ることができるとされている。また、モータを制御することによって、ウェイトを用いた機器と同様の負荷を使用者に与えることができ、荷重が掛かるハンドルの位置や、トレーニングの時間によって使用者に与える負荷を変化させることもできるとされている。しかし、具体的にどのような負荷を与えれば使用者の筋力を効果的に向上させることができるのか、その制御方法までは明らかにされていない。
【0007】
特許文献2には、使用者の運動特性と属性情報に基づいて負荷を決定する制御方法が開示されているが、属性情報の入力作業などに手間がかかるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題点に鑑み、操作が簡便で、且つ、使用者の筋力を効果的に向上させることができるトレーニングマシンの制御方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、直線動又は枢動の往復動が可能な往復動手段と、前記往復動手段に与えられた負荷の値を取得する負荷取得手段と、該往復動手段に負荷を与える負荷付与手段を具えたトレーニングマシンの制御方法であって、
前記負荷取得手段は、固定された前記往復動手段に対して与えられた負荷を往動方向の基準負荷として取得し、
前記負荷付与手段は、前記基準負荷以下の負荷を、前記往復動手段に対して往動方向の負荷が与えられたときに該往復動手段の往動方向に対向する往動負荷として前記往復動手段に付与し、その後又はその前に、前記基準負荷よりも大きい負荷を、前記往復動手段の復動方向に対する復動負荷として前記往復動手段に与えながら該往復動手段を復動させることを特徴とするトレーニングマシンの制御方法によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固定された往復動手段に対して与えられた負荷を往動方向の基準負荷として取得し、往復動手段の往動方向に対向する往動負荷と往復動手段の復動方向に対する復動負荷を決定するから、トレーニングのための負荷の決定が簡便に出来る。また、負荷付与手段が、基準負荷よりも大きい負荷を、往復動手段の復動方向に対する復動負荷を与えながら往復動手段を復動させるので、使用者が対象の部位の筋肉を縮めるとき又は伸ばすときに比較的大きな負荷を与えることができるから、使用者の筋力を効果的に向上させることができる。
【0011】
また、往復動手段が動かされる範囲の基端及び末端を検知する位置センサをさらに具え、負荷付与手段が、基端及び末端より範囲外に往復動手段を移動させないように制御する構成とすれば、使用者の安全を確保することができる。
【0012】
また、往復動手段が一往復するごとに、往復動手段の位置に応じた往動負荷及び復動負荷を、前回の往復動時の往動負荷及び復動負荷よりも低くする構成とすれば、使用者の筋力をさらに効果的に向上させることができる。
【0013】
また、往動負荷を往復動手段の往動方向への移動に伴い、徐々に高くした後に低くし、復動負荷を往復動手段の復動方向への移動に伴い、徐々に高くした後に低くする構成とすれば、使用者の筋力をより一層効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のトレーニングマシンの制御方法における処理を示すフローチャート。
図2図1の制御方法における基準負荷、往動負荷、復動負荷の関係の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図1,2を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明のトレーニングマシンの制御方法は、直線動又は枢動の往復動が可能な往復動手段を具える既存のトレーニングマシン、例えば、チェストプレス、レッグプレス、ショルダープレス、トライセプス・プレス、ヒップアダクション、ヒップアブダクション、ペックフライ、リア・デルトイド、ラテラルレイズ、ラットプルダウン、シーテッドロー、アーム・カール、アシストチンアップ、レッグエクステンション、レッグカール、ライイングレッグカール、グルート、バックエクステンション、アブドミナル、トーソ・ローテーション、カーフレイスなどに適用することができる。これらのトレーニングマシンにおいて、往復動手段は、手で握ることができるハンドルや持ち手、肩や腕、脚を掛けることができるバー状のもの、足等で押すことができるプレート状のものである。
【0017】
なお、本発明を適用するためには、使用者から与えられた負荷の値を取得し、且つ、使用者に与える負荷を調整する必要があるので、トレーニングマシンにおいては、往復動手段に与えられた負荷の値を取得する負荷取得手段と、往復動手段に負荷を与える負荷付与手段を具えている必要がある。具体的には、モータやシリンダ(空気圧、油圧を含む。)、或いはこれらとブレーキ機構の組合せによって、ワイヤやベルトを通じて往復動手段に負荷を与え、センサによって、往復動手段を通じてモータやシリンダに与えられた負荷を取得する構成を具えていることを要する。
【0018】
また、トレーニングマシンは、往復動手段が動かされる範囲の基端及び末端を検知する位置センサをさらに具えていることが好ましい。位置センサは、機械式スイッチや光学的センサなど、公知のものでよい。以上の構成を具えたトレーニングマシンは、既に公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一つの実施形態のトレーニングマシンの制御方法における処理を示すフローチャートである。使用者がトレーニングマシンの使用を開始すると、往復動範囲決定処理S10が実行される。往復動範囲決定処理S10では、使用者によって往復動手段が動かされた範囲の基端及び末端を位置センサによって検知する。このとき、往復動手段には負荷が与えられていない状態であることが好ましい。
【0020】
往復動手段が動かされた基端及び末端は、往復動手段が1度動かされたときに検出することもできるが、往復動手段が複数回往復動されたときの基端又は末端の最大値、最小値、又は平均値とすることもできる。このようにして取得された往復動手段の基端又は末端より範囲外に往復動手段を移動させないように制御する構成とすれば、トレーニングを行う使用者の補助者を要することなく、使用者の安全を確保することができる。なお、位置センサを具えていないトレーニングマシンの場合、往復動範囲決定処理S10は省略される。
【0021】
往復動範囲決定処理S10が完了すると、基準負荷決定処理S12が実行される。基準負荷決定処理S12では、固定された往復動手段に対して与えられた負荷を往動方向の基準負荷として取得する。取得した基準負荷の値は、フラッシュメモリ等の一次記憶手段又はハードディスク等の記憶手段に記憶されてもよい。
【0022】
基準負荷決定処理S12で、往復動手段に対して与えられる負荷は、往復動手段の直線動又は枢動する一方向又は他方向のいずれの方向の負荷であってもよい。例えば、チェストプレスの場合、使用者が往復動手段を押す方向(自身の胸部から離れる方向)であっても、往復動手段を引く方向(自身の胸部に近付ける方向)であってもよい。一方向又は他方向のいずれの方向の負荷であっても、この負荷を往動方向の基準負荷として取得するのである。基準負荷は、使用者の随意最大筋力(maximal voluntary contraction)であることが望ましい。この場合、本発明の制御方法を適用したトレーニングマシンにおいて、最も効果的に使用者の筋力を鍛えることができる。
【0023】
基準負荷決定処理S12によって、基準負荷が取得された後、往動負荷付与処理S14が実行される。往動負荷付与処理S14は、往復動手段が基端又は末端にある状態から開始されることが好ましい。往動負荷付与処理S14では、負荷付与手段が基準負荷以下の負荷を、往復動手段に対して往動方向の負荷が与えられたときに往復動手段の往動方向に対向する往動負荷として往復動手段に付与する。
【0024】
往復動手段が所定の位置、末端の位置、又は基端の位置から復動負荷付与処理S16が実行される。復動負荷付与処理S16では、基準負荷よりも大きい負荷を、往復動手段の復動方向に対する復動負荷として往復動手段に与えながら往復動手段を復動させる。このように、基準負荷よりも大きな負荷が与えられながら往復動手段が復動するので、使用者はこれに対向するように力を入れることにより、トレーニング対象となっている筋肉のエキセントリック収縮を効率よく実現させることができる。本発明によれば、往復動手段の往動方向及び復動方向のいずれに対しても負荷が与えられるので、無重力空間であっても筋力トレーニングを行うことができる。
【0025】
ここで、使用者の安全を考慮して、往復動手段が復動する速度を調整してもよい。なお、往復動手段の1往復目は、往動負荷付与処理S14の後に復動負荷付与処理S16が実行されるのが通常であるが、復動負荷付与処理S16を先に実行する構成としてもよい。
【0026】
上述したように、本発明のトレーニングマシンの制御方法によれば、固定された往復動手段に対して与えられた負荷を往動方向の基準負荷として取得し、往復動手段の往動方向に対向する往動負荷と往復動手段の復動方向に対する復動負荷を決定することができるので、トレーニングのための負荷の決定の操作が簡便である。
【0027】
往動負荷付与処理S14及び復動負荷付与処理S16において、往復動手段に付与される負荷の値は、一定のものでもよいが、往復動手段の位置に応じて、負荷の値を変化させてもよい。そこで、以下に、図2を用いて、往動負荷付与処理S14及び復動負荷付与処理S16によって往復動手段に与えられる負荷の一例について、具体的に説明する。
【0028】
また、往復動手段が一往復するごとに、往復動手段の位置に応じた往動負荷及び復動負荷を、前回の往復動時の往動負荷及び復動負荷よりも低くする構成とするのがよい。本構成によれば、使用者は、複数セット、往復動手段を往復動させやすくなるので、使用者の筋力をさらに効果的に向上させることができるからである。
【0029】
図2において、横軸pは、往復動手段の位置であり、便宜上、往復動手段の基端が0、末端が1として表されている。縦軸KLは、負荷の値であり、単位は重量キログラム(kgf)であり、基準負荷決定処理S12によって取得された基準負荷がFmaxとして表されている。Fmax*2は、Fmaxの2倍の値を示した線である。なお、下記説明においては、Fmaxの値は実際の負荷の値ではなく、便宜上、Fmax=1としている。前述したように、基準負荷は、使用者の随意最大筋力(maximal voluntary contraction)であることが望ましいが、使用者の体調等によっては、これを調整してもよい。
【0030】
図2に示されている制御方法においては、往動負荷付与処理S14で、往復動手段の往動方向への移動に伴い、往動負荷FSが徐々に高くされ、その後、低くされる。具体的には、往復動手段の位置が0≦p<0.26であるとき、KL=1.89p+0.27の関数に従い往動負荷FSは増加していく。次いで、往復動手段の位置が0.26≦p<0.71にあるとき、KL=0.53p+0.62の関数に従い往動負荷FSは増加していき、往復動手段の位置が0.71≦p<1.0のとき、KL=-1.04p+1.74の関数に従って往動負荷FSは減少していく。なお、往復動手段の位置pの値が0.71のとき、往動負荷FSの値はKmaxと等しくなる。
【0031】
また、復動負荷付与処理S16では、往復動手段の復動方向への移動に伴い、復動負荷SSが徐々に高くされ、その後、低くされる。具体的には、往復動手段が0≦p<0.71のとき、KL=0.05p+1.49の関数に従い、復動負荷SSが増加する。そして、往復動手段が0.71≦p≦1.0のとき、KL=-1.06p+2.28の関数に従い、復動負荷SSが減少する。
【0032】
上述したように、往動負荷付与処理S14及び復動負荷付与処理S16において往復動手段に与える負荷は、往復動手段の移動に伴い、徐々に高くした後、低くするなど、変化させてよい。本構成により、使用者の筋力をより一層効果的に向上させることができる。なお、往動負荷付与処理S14と復動負荷付与処理S16では、往復動手段の基端から末端までの負荷の曲線が異なっていてもよく、当該曲線は、本発明のトレーニングマシンの制御方法が組込まれるトレーニングマシンによって、すなわち、トレーニング対象の筋肉が効果的に鍛えられるように変更することができる。
【0033】
以上に説明した本発明によれば、操作が簡便で、且つ、使用者の筋力を効果的に向上させることができるトレーニングマシンの制御方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
Fmax 基準負荷
FS 往動負荷
SS 復動負荷
図1
図2