(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】はんだペースト用フラックス、及び、はんだペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220210BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20220210BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20220210BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20220210BHJP
C22C 9/02 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
B23K35/30 310C
C22C13/00
C22C9/02
(21)【出願番号】P 2018531947
(86)(22)【出願日】2017-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2017028007
(87)【国際公開番号】W WO2018025903
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2016152043
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】大谷 怜史
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光康
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-505006(JP,A)
【文献】特開2004-176179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸と、脂肪族一級アミンとからなる有機成分を
65質量%以上100質量%以下含有し、
前記脂肪酸は、主鎖の炭素数が8以上10以下である飽和脂肪酸、及び、炭素数が18である不飽和脂肪酸の少なくとも一方であり、
前記脂肪族一級アミンは、主鎖の炭素数が4以上8以下である飽和脂肪族一級アミン、及び、炭素数が18である不飽和脂肪族一級アミンの少なくとも一方である、
はんだペースト用フラックス。
【請求項2】
前記はんだペースト用フラックスの質量に対する前記有機成分の質量割合は、70質量%以上100質量%以下である請求項1に記載のはんだペースト用フラックス。
【請求項3】
前記脂肪酸と前記脂肪族一級アミンとのモル比が1:0.5以上1.5以下となるように構成される請求項1又は2に記載のはんだペースト用のフラックス。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、及び、リノレン酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項
1乃至3の何れ一項に記載のはんだペースト用フラックス。
【請求項5】
前記脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とから構成されると共に、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との合計のモル数に対する不飽和脂肪酸のモル数の割合が20mol%以下である請求項1乃至
4の何れか一項に記載のはんだペースト用フラックス。
【請求項6】
前記不飽和脂肪族一級アミンは、オレイルアミンである請求項
1乃至5の何れか一項に記載のはんだペースト用フラックス。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか一項に記載のはんだペースト用フラックスと、はんだ粉とを含有しており、
前記はんだ粉は、Sn又はSn合金からなるSn系金属の粒子、及び、Cu又はCu合金からなるCu系金属の粒子の少なくとも一方を含むはんだペースト。
【請求項8】
前記はんだペースト用フラックスの含有量が5質量%以上12質量%以下である請求項
7に記載のはんだペースト。
【請求項9】
前記はんだ粉は、平均粒径が5μm以上35μm以下である請求項
7又は
8に記載のはんだペースト。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2016-152043号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、はんだペースト用フラックス、及び、該はんだペースト用フラックスを用いて形成されたはんだペーストに関する。
【背景技術】
【0003】
電子部品等の接合部品が基板に接合された接合構造体を製造する際には、はんだ粉とフラックスとを含むはんだペーストを基板表面の電極部に塗布し、該電極部に接合部品の電極部を接触させた状態で加熱することで、はんだペーストから形成されたはんだ接合部を介して基板と接合部品とが接合されている。
【0004】
近年では、環境への配慮から、はんだペースト中のはんだ粉を構成するはんだ合金として、鉛を含まないもの(鉛フリーはんだ合金)を使用することが望まれている。鉛フリーはんだ合金を使用したはんだ粉としては、例えば、Sn又はSn合金からなるSn系金属の粒子と、Cu又はCu合金からなるCu系金属の粒子とが混合されたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
斯かるはんだ粉を用いたはんだペーストは、上記のようなはんだ接合部を形成するべく加熱されると、まずCu系金属の粒子よりも融点の低いSn系金属の粒子が溶融する。そして、溶融したSn系金属がCu系金属の粒子の表面のCuと反応することで、Cu系金属の粒子の表面に金属間化合物(具体的には、CuSn合金)層(以下、IMC層とも記す)が形成される。該IMC層は、Sn系金属よりも融点が高いため、はんだ接合部が再度加熱された場合であってもはんだ接合部が再溶融しにくくなる。このため、接合構造体を再度加熱することが必要な場合であっても、はんだ接合部における接合状態を良好に維持することができる。
【0006】
しかしながら、上記のように、融点の異なる金属の粒子が混合されたはんだペーストを用いてはんだ接合部を形成すると、はんだ接合部内にボイド(空隙)が形成され易くなる。具体的には、上記のようなはんだペーストが加熱されると、フラックス等の揮発成分が揮発してガスが発生し、該ガスが溶融したSn系金属中に気泡として残存することになる。斯かるガスは、Sn系金属が硬化する際にも抜けることなくはんだ接合部に残存してボイドが形成される。このようなボイドがはんだ接合部中に多く存在すると、基板と接合部品との接触面積が減少するため電気抵抗が増加して発熱等の虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願発明は、ボイドが少ないはんだ接合部を形成することができるはんだペースト用フラックスを提供すると共に、該はんだペースト用フラックスを用いたはんだペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るはんだペースト用フラックスは、脂肪酸と、脂肪族一級アミンとからなる有機成分を主成分として含有する。
【0010】
前記はんだペースト用フラックスは、前記はんだペースト用フラックスの質量に対する前記有機成分の質量割合が70質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0011】
前記はんだペースト用フラックスは、前記脂肪酸と前記脂肪族一級アミンとのモル比が1:0.5以上1.5以下となるように構成されることが好ましい。
【0012】
前記はんだペースト用フラックスは、前記脂肪酸が飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の少なくとも一方であり、前記飽和脂肪酸は、主鎖の炭素数が10以下であり、前記不飽和脂肪酸は、炭素数が18以下であることが好ましい。
【0013】
前記不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、及び、リノレン酸からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0014】
前記はんだペースト用フラックスは、前記脂肪酸が飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とから構成されると共に、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との合計のモル数に対する不飽和脂肪酸のモル数の割合が20mol%以下であることが好ましい。
【0015】
前記はんだペースト用フラックスは、前記脂肪族一級アミンが飽和脂肪族一級アミン及び不飽和脂肪族一級アミンの少なくとも一方であり、前記飽和脂肪族一級アミンは、主鎖の炭素数が8以下であり、前記不飽和脂肪族一級アミンは、炭素数が18以下であることが好ましい。
【0016】
前記不飽和脂肪族一級アミンは、オレイルアミンであることが好ましい。
【0017】
本発明に係るはんだペーストは、上記の何れかのはんだペースト用フラックスと、はんだ粉とを含有しており、前記はんだ粉は、Sn又はSn合金からなるSn系金属の粒子、及び、Cu又はCu合金からなるCu系金属の粒子の少なくとも一方を含む。
【0018】
前記はんだペーストは、前記はんだペースト用フラックスの含有量が5質量%以上12質量%以下であることが好ましい。
【0019】
前記はんだペーストは、前記はんだ粉の平均粒径が5μm以上35μm以下であることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明に係るはんだペースト用フラックスは、脂肪酸と、脂肪族一級アミンとからなる有機成分を主成分として含有するものである。前記はんだペースト用フラックスの質量に対する前記有機成分の質量割合は、65質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。また、前記脂肪酸と前記脂肪族一級アミンとのモル比は、1:0.5以上1.5以下となることが好ましく、1:0.7以上1.3以下となることがより好ましく、1:1であることが特に好ましい。
【0022】
前記脂肪酸としては、常温で液状であるものを用いることが好ましい。なお、常温とは25℃以上30℃以下の温度をいう。また、前記脂肪酸としては、はんだペーストをリフローする際の温度まで気化しないものが好ましく、例えば、沸点が140℃以上400℃以下であることが好ましく、200℃以上360℃以下であることがより好ましく、230℃以上270℃以下であることが特に好ましい。
【0023】
また、前記脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の少なくとも一方であることが好ましい。飽和脂肪酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、主鎖の炭素数が10以下のものが好ましく、9以下のものがより好ましい。具体的には、飽和脂肪酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、4-メチルノナン酸、及び、2-ヘキシルデカン酸からなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。不飽和脂肪酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、炭素数が24以下のものが好ましく、18以下のものがより好ましい。具体的には、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、及び、リノレン酸からなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。
【0024】
なお、前記脂肪酸として、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を使用する場合、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との合計のモル数に対する不飽和脂肪酸のモル数の割合が20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましい。
【0025】
前記脂肪族一級アミンとしては、常温で液状であるものを用いることが好ましい。また、前記脂肪族一級アミンとしては、沸点が70℃以上400℃以下であることが好ましく、75℃以上180℃以下であることがより好ましい。また、脂肪族一級アミンとしては、前記脂肪酸よりも沸点が低いものであることがより好ましい。
【0026】
また、脂肪族一級アミンは、飽和脂肪族一級アミン及び不飽和脂肪族一級アミンの少なくとも一方であることが好ましい。飽和脂肪族一級アミンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、主鎖の炭素数が8以下のものが好ましく、6以下のものがより好ましい。また、飽和脂肪族一級アミンとしては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、及び、2-エチルヘキシルアミンからなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。不飽和脂肪族一級アミンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、炭素数が18以下のものが好ましい。また、不飽和脂肪族一級アミンとしては、オレイルアミンが挙げられる。
【0027】
上記のようなはんだペースト用フラックスには、上記の脂肪酸、及び、脂肪族一級アミン以外の他の成分が含有されてもよい。例えば、粘度を調整する等の目的で、溶剤やチキソ剤等が含有されてもよい。
【0028】
前記溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)などのグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、オクタンジオールなどのアルコール類、ターピネオール、メントール、フェニルエタノール、リナロール、ゲラニオール等のテルペン系アルコール類等が挙げられる。前記溶剤は、単独で用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。また、溶剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、はんだペースト用フラックスの質量に対して、0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上16質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
前記チキソ剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、アマイド系チキソ剤、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミドなどが挙げられる。また、チキソ剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、はんだペースト用フラックスの質量に対して、0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上16質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
以上のようなはんだペースト用フラックスは、はんだ粉と混練されてはんだペーストを形成する。はんだペーストの質量に対するはんだペースト用フラックスの質量割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、5質量%以上12質量%以下であることが好ましく、5.5質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、5.5質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
また、はんだペーストの粘度としては、特に限定されるものではなく、印刷やディスペンス塗布など、供給方法に応じて調整することができる。例えば、10Pa・s以上350Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以上300Pa・s以下であることがより好ましい。なお、前記粘度は、スパイラル式粘度測定装置(マルコム社製PCU-205)を使用し、10rpmでの粘度値に基づいて測定されるものである。
【0032】
前記はんだ粉としては、特に限定されるものではなく、一般的なはんだ粉を用いることができる。例えば、鉛フリーはんだとして用いられているSn-Ag系はんだ、Sn-Ag-Cu系はんだ、Sn-Ag-Cu-Bi系はんだ、Sn-Ag-In-Bi系はんだ、Sn-Cu系はんだ、Sn-Zn系はんだ、Sn-Bi系はんだ、Sn-Sb系はんだ、Sn-Au系はんだ、Sn-In系はんだ等の鉛フリーはんだを構成する金属粉末を用いることができる。特に、はんだ粉として、Sn又はSn合金からなるSn系金属の粒子と、Cu又はCu合金からなるCu系金属の粒子とが混合されたもの(以下、SnCuはんだ粉とも記す)を用いることが好ましい。
【0033】
前記Sn系金属の粒子としては、Sn100質量%からなるSn粒子、あるいは、Snと、In、Ag、Cu、Sb、Ni,Ge,Fe,Co、及び、Biからなる群から選ばれる一種以上の他の金属とからなるSn合金粒子等が挙げられる。Sn合金粒子としては、好ましくは、Sn-Ag、Sn-Cu、Sn-Sb、又は、Sn-Ag-Cuの組成を有するものが挙げられる。
【0034】
Sn系金属の粒子は、例えば、平均粒径D50(メジアン径)が、1μm以上70μm以下であることが好ましく、5μm以上35μm以下であることがより好ましい。また、Sn系金属の粒子は、90%粒子径D90が、100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。Sn系金属の粒子が前記範囲のような粒子径である場合には、60μm厚以下の薄い印刷が可能となるため、はんだ接合部の厚みを薄くすることができる。はんだ接合部の厚みが薄い方が放熱性を向上させることができる。
【0035】
前記Cu系金属の粒子としては、Cu100質量%からなるCu粒子、あるいは、Cuと、In、Ag、Sn、及びBiからなる群から選ばれる一種以上の他の金属とからなるCu合金粒子等が挙げられる。Cu合金粒子としては、好ましくは、Cu-Ag-Sn-Bi-Inの組成を有するものが挙げられる。
【0036】
Cu系金属の粒子は、例えば、平均粒径D50(メジアン径)が、1μm以上70μm以下であることが好ましく、5μm以上35μm以下であることがより好ましい。また、Cu系金属の粒子は、90%粒子径D90が、100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。Cu系金属の粒子が前記範囲のような粒子径である場合には、60μm厚以下の薄い印刷が可能となるため、はんだ接合部の厚みを薄くすることができる。はんだ接合部の厚みが薄い方が放熱性を向上させることができる。
【0037】
なお、上記の「平均粒径D50(メジアン径)」および「90%粒子径D90」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される値をいう。
【0038】
Sn系金属の粒子とCu系金属の粒子との混合割合としては、特に限定されるものではない。例えば、Sn系金属の粒子が35質量%以上85質量%以下であることが好ましく、50質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。また、Cu系金属の粒子が15質量%以上65質量%以下であることが好ましく、35質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。このような混合割合となることで、はんだペーストが加熱された際に、溶融したSn系金属がCu系金属の粒子の表面のCuと反応し、Cu系金属の粒子の表面に十分な金属間化合物(具体的には、CuSn合金)層(以下、IMC層とも記す)が形成される。
【0039】
なお、上記のようなはんだ粉を構成する金属の粒子として、Sn系金属の粒子及びCu系金属の粒子の他に他の金属の粒子を更に含んでもよい。別の金属の粒子としては、例えば、Ni等を含有する金属粒子が挙げられる。このような他の金属の粒子は、はんだ粉の質量に対して1質量%以上20質量%以下の含有量であることが好ましい。
【0040】
以上のように、本発明に係るはんだペースト用フラックス、及び、はんだペーストによれば、ボイドが少ないはんだ接合部を形成することができる。
【0041】
即ち、脂肪酸と、脂肪族一級アミンとからなる有機成分を主成分として含有するはんだペースト用フラックスと、はんだ粉とが混練されて形成されるはんだペーストを用いて、電子部品等の接合部品を基板に接合した際に、はんだ接合部にボイドが生じるのを低減することができる。
【0042】
なお、本発明に係るはんだペースト用フラックス、及び、はんだペーストは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよい(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい)ことは勿論である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<使用材料>
1.脂肪酸
・オクタン酸(東京化成工業社製、製品名:n-オクタン酸)
・ノナン酸(東京化成工業社製、製品名:ノナン酸)
・4-メチルノナン酸(東京化成工業社製、製品名:4-メチルノナン酸)
・デカン酸(東京化成工業社製、製品名:デカン酸)
・ステアリン酸(東京化成工業社製、製品名:ステアリン酸)
・オレイン酸(和光純薬工業社製、製品名:オレイン酸)
・リノール酸(ALDRICH社製、製品名:リノール酸)
・リノレン酸(東京化成工業社製、製品名:リノレン酸)
・2-ヘキシルデカン酸(東京化成工業社製、製品名:2-ヘキシルデカン酸)
2.脂肪族一級アミン
・ブチルアミン(東京化成工業社製、製品名:ブチルアミン)
・ヘキシルアミン(東京化成工業社製、製品名:ヘキシルアミン)
・2-エチルヘキシルアミン(広栄化学工業社製、製品名:2-エチルヘキシルアミン)・オクチルアミン(東京化成工業社製、製品名:n-オクチルアミン)
・オレイルアミン(東京化成工業社製、製品名:オレイルアミン)
3.樹脂成分
・超淡色ロジン(荒川化学社製、製品名:KR-612)
・不均化ロジン(荒川化学社製、製品名:ロンジスR)
4.溶剤
・ヘキシルジグリコール(日本乳化剤社製、製品名:HeDG)
・ターピネオール(ヤスハラケミカル社製、製品名:ターピネオール)
5.チキソ剤
・N.N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド(伊藤製油社製、製品名:J-630)
・ひまし硬化油(伊藤製油社製、製品名:ひまし硬化油)
・ハニーワックス(三木化学工業社製、製品名:赤印晒蜜蝋)
6.活性剤
・アジピン酸(東京化成工業社製、製品名:アジピン酸)
・trans-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール(JAIN SPECIALITY FINE CHEMICALS社製、製品名:DBBD)
7.はんだ粉1
SnからなるSn系金属の粒子(平均粒径:19.8μm)と、Cu合金からなるCu系金属の粒子(平均粒径:11.7μm)とからなるものを用いた。Cu合金の組成は、Cuが65質量%、Snが15質量%、Agが10質量%、Biが5質量%、Inが5質量%とした。また、はんだ粉の質量に対する各粒子の質量割合は、Sn系金属の粒子が65質量%であり、Cu系金属の粒子が35質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
8.はんだ粉2
Snからなる第一Sn系金属の粒子(平均粒径:19.8μm)と、Sn合金からなる第二Sn系金属の粒子(平均粒径:30.8μm)と、Cu合金からなるCu系金属の粒子(平均粒径:11.7μm)とからなるものを用いた。Sn合金の組成は、Snが95質量%、Sbが5質量%とした。Cu合金の組成は、Cuが65質量%、Snが15質量%、Agが10質量%、Biが5質量%、Inが5質量%とした。また、はんだ粉の質量に対する各粒子の質量割合は、第一Sn系金属の粒子が32.5質量%、第二Sn系金属の粒子が32.5質量%、Cu系金属の粒子が35質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
9.はんだ粉3
Snからなる第一Sn系金属の粒子(平均粒径:19.8μm)と、Sn合金からなる第二Sn系金属の粒子(平均粒径:28.4μm)と、Cu合金からなるCu系金属の粒子(平均粒径:11.7μm)とからなるものを用いた。Sn合金の組成は、Agが1.1質量%、Cuが0.7質量%、Niが0.07質量%、Geが0.01質量%、残部がSnのみとした。また、はんだ粉の質量に対する各粒子の質量割合は、第一Sn系金属の粒子が32.5質量%、第二Sn系金属の粒子が32.5質量%、Cu系金属の粒子が35質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
10.はんだ粉4
SnからなるSn系金属の粒子(平均粒径:19.8μm)と、CuからなるCu系金属の粒子(平均粒径:1.1μm)とからなるものを用いた。また、はんだ粉の質量に対する各粒子の質量割合は、Sn系金属の粒子が65質量%であり、Cu系金属の粒子が35質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
11.はんだ粉5
SnからなるSn系金属の粒子(平均粒径:19.8μm)と、Cu合金からなるCu系金属の粒子(平均粒径:11.7μm)とからなるものを用いた。Cu合金の組成は、Cuが65質量%、Snが15質量%、Agが10質量%、Biが5質量%、Inが5質量%とした。また、はんだ粉の質量に対する各粒子の質量割合は、Sn系金属の粒子が50質量%であり、Cu系金属の粒子が50質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
12.はんだ粉6
SnからなるSn系金属の粒子(平均粒径:19.8μm)と、Cu合金からなるCu系金属の粒子(平均粒径:11.7μm)とからなるものを用いた。Cu合金の組成は、Cuが65質量%、Snが15質量%、Agが10質量%、Biが5質量%、Inが5質量%とした。また、はんだ粉の質量に対する各粒子の質量割合は、Sn系金属の粒子が40質量%であり、Cu系金属の粒子が60質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
13.はんだ粉7
SnからなるSn系金属の粒子(平均粒径:7.3μm)と、Cu合金からなるCu系金属の粒子(平均粒径:9.6μm)とからなるものを用いた。Cu合金の組成は、Cuが65質量%、Snが15質量%、Agが10質量%、Biが5質量%、Inが5質量%とした。また、はんだ粉の質量に対する各粒子の質量割合は、Sn系金属の粒子が65質量%であり、Cu系金属の粒子が35質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
14.はんだ粉8
Sn合金からなるSn系金属の粒子(平均粒径:28.8μm)からなるものを用いた。Sn合金の組成は、Snが96.5質量%、Agが3.0質量%、Cuが0.5質量%とした。なお、上記の平均粒径(D50)は、ベックマンコールター製レーザー回折粒度分布測定装置によって測定されるものである。
【0045】
<比較例1>
1.フラックスの作製
上記の樹脂成分、活性剤、チキソ剤、溶剤を下記表1の配合で混練してフラックス(比較例1)を作製した。
【0046】
【0047】
2.はんだペーストの作製
比較例1のフラックスと上記のはんだ粉1とを下記表2の配合で混練してはんだペーストを作製した。
【0048】
【0049】
3.ボイドの評価
(1)疑似基板の作製
Cu板(過硫酸アンモニウムエッチング処理をしたもの)に、比較例1のはんだペーストを、60μmの厚みでマスク開口率が100%となるように印刷し、疑似基板を作製した。
(2)加熱処理
得られた疑似基板を、高温観察装置(山陽精工社製、SK-5000)を用いて加熱処理した。加熱処理の温度条件としては、熱処理開始(常温)から120℃までを1.6℃/秒で昇温し、その後120℃を300秒間維持し、120℃から常温までを0.8℃/秒で冷却する条件とした(温度プロファイル1)。また、加熱処理は、酸素濃度が500ppm以下の窒素雰囲気下で行った。
温度プロファイル1で加熱処理した後の疑似基板のはんだペースト上にSiチップ(サイズ:0.3×5.0×5.0)を重ねて0.4MPaで加圧した状態で、温度プロファイル1とは異なる温度条件で加熱処理を行い、試験体を得た。加熱処理の温度条件としては、熱処理開始(常温)から150℃までを2.1℃/秒で昇温し、150℃から180℃までを0.25℃/秒で昇温し、180℃から250℃までを2℃/秒で昇温し、その後250℃を60秒間維持し、250℃から常温までを3.8℃/秒で冷却する条件とした(温度プロファイル2)。
(3)ボイド率の算出
そして、得られた試験体をSiチップを備える位置で切断し、その断面を観察することで、ボイド率(空隙率)を算出した。具体的には、ハイロックス社製デジタルマイクロスコープKH-8700を用いてボイド部分の面積を算出し、接合部全体の面積部で除してボイド率を算出した。算出されたボイド率については、下記表3に示す。
【0050】
【0051】
<試験1(実施例1~24)>
1.フラックスの作製
各脂肪酸と各脂肪族一級アミンとを下記表4の組合せで使用し、下記表5の配合で混練してフラックスを作製した。
【0052】
【0053】
2.はんだペーストの作製
上記の実施例1~24の各フラックスと上記のはんだ粉1とを下記表6の配合で混練してはんだペーストを作製した。
【0054】
【0055】
3.ボイドの評価
上記のように作製した各はんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。各実施例のボイド率は、下記表7,8に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
<試験2(実施例25~48)>
1.フラックスの作製
各脂肪酸と各脂肪族一級アミンとを下記表9の組合せで使用したこと以外は、試験1と同様にフラックスを作製した。
【0059】
【0060】
2.はんだペーストの作製と、ボイドの評価
上記の実施例25~48の各フラックスを用いたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
また、上記のように作製した各はんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。各実施例のボイド率は、下記表10,11に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
<試験3(実施例49~55)>
1.フラックスの作製
下記表12の組合せで脂肪酸と脂肪族一級アミンとを使用し、脂肪酸のモル比を下記表12の通りとしたこと以外は、試験1と同様にフラックスを作製した。
【0064】
2.はんだペーストの作製と、ボイドの評価
上記の実施例49~55の各フラックスを用いたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
また、上記のように作製した各はんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。各実施例のボイド率は、下記表12に示す。
【0065】
【0066】
<試験4(実施例56~60)>
1.フラックス、及び、はんだペーストの作製
試験2の実施例30のフラックスを作製し、該フラックスを用いて下記表13の配合としたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
【0067】
2.ボイドの評価
上記のように作製した各はんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。各実施例のボイド率は、下記表13に示す。
【0068】
【0069】
<試験5(実施例61~67)>
1.フラックス、及び、はんだペーストの作製
試験2の実施例26,30のフラックスを作製し、該フラックスと、下記表14のようにはんだ粉2~7を用いたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
【0070】
2.ボイドの評価
上記のように作製した各はんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。各実施例のボイド率は、下記表14に示す。
【0071】
【0072】
<試験6(実施例68,69)>
1.フラックス、及び、はんだペーストの作製
フラックスの配合が下記表15に記載の配合となるようにしたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
【0073】
2.ボイドの評価
下記表15の配合で作製したはんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。各実施例のボイド率は、下記表15に示す。
【0074】
【0075】
<試験7(実施例70)>
1.フラックスの作製
下記表16の組合せで脂肪酸と脂肪族一級アミンとを使用し、脂肪族一級アミンのモル分率を下記表16の通りとしたこと以外は、試験1と同様にフラックスを作製した。
【0076】
2.はんだペーストの作製と、ボイドの評価
上記のフラックスを用いたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
また、上記のように作製したはんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。実施例70のボイド率は、下記表16に示す。
【0077】
【0078】
<試験8(実施例71,72)>
1.フラックスの作製
フラックスの配合が下記表17に記載の配合としたこと以外は、試験1と同様にフラックスを作製した。
【0079】
2.はんだペーストの作製と、ボイドの評価
上記のフラックスを用いたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
また、上記のように作製したはんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。各実施例のボイド率は、下記表17に示す。
【0080】
【0081】
<試験9(実施例73)>
1.フラックスの作製
フラックスの配合が下記表18に記載の配合となるようにしたこと以外は、試験1と同様にフラックスを作製した。
2.はんだペーストの作製と、ボイドの評価
上記のフラックスを用い、下記表19に記載の配合となるようにしたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
また、上記のように作製されたはんだペーストを用いて試験体を作製したこと以外は、比較例1と同一条件で、ボイドの評価を行った。実施例73のボイド率は、下記表18に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
<試験10(比較例2,実施例74)>
1.比較例2のフラックス、及び、はんだペーストの作製
比較例1のフラックスを作製し、該フラックスと、はんだ粉8とを用いたこと以外は、比較例1と同様にはんだペーストを作製した。
【0085】
2.実施例74のフラックス、及び、はんだペーストの作製
実施例6のフラックスを作製し、該フラックスと、はんだ粉8とを用いたこと以外は、試験1と同様にはんだペーストを作製した。
【0086】
3.ボイドの評価
(1)疑似基板の作製
FR-4樹脂基板(OSP処理をしたもの)に、上記の各はんだペーストを、120μmの厚みでマスク開口率が100%となるように印刷し、疑似基板を作製した。
(2)加熱処理
得られた疑似基板のはんだペースト上にPwTrチップを重ね、はんだリフロー装置(エイテック製、NIS-20-82-C)を用いて酸素濃度1000ppmの窒素雰囲気下で加熱処理を行い、試験体を得た。加熱処理の温度条件としては、熱処理開始(常温)から180℃までを1.5℃/秒で昇温し、その後180℃を100秒間維持した。その後180℃から250℃までを2.0℃/秒で昇温し、250℃を15秒間維持した後、250℃から常温までを3.0/秒で冷却する条件とした(温度プロファイル3)。
(3)ボイド率の算出
そして、加熱処理後の試験体をPwTrチップを備える位置で切断し、その断面を観察することで、ボイド率(空隙率)を算出した。具体的には、ハイロックス社製デジタルマイクロスコープKH-8700を用いてボイド部分の面積を算出し、接合部全体の面積部で除してボイド率を算出した。算出されたボイド率については、下記表20に示す。
【0087】
【0088】
<まとめ>
表3に示す比較例1のボイド率と、表7,8,10~18に示す実施例1~73のボイド率とを比較すると、各実施例の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、脂肪酸と、脂肪族一級アミンとからなる有機成分を主成分として含有したはんだペースト用フラックスを用いることで、ボイド率の低減を図ることができる。
【0089】
また、表7,8の実施例1~3、5~7、9~11と実施例4,8,12~24とを比較すると、実施例1~3、5~7、9~11の方がボイド率が効果的に低減されることが認められる。つまり、脂肪酸として主鎖の炭素数が10以下のものを用い、脂肪族一級アミンとして主鎖の炭素数が8以下のものを用いることで、ボイド率をより効果的に低減できる。
【0090】
また、表3に示す比較例1のボイド率と、表10~12に示す実施例25~55のボイド率とを比較すると、各実施例の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、低沸点(炭素数10以下)の脂肪酸と、高沸点(炭素数18)の脂肪酸とを併用した場合であってもボイド率の低減を図ることができる。
【0091】
また、表12に示す実施例49~52のボイド率と、実施例53~55のボイド率とを比較すると、実施例49~52の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との合計のモル数に対する不飽和脂肪酸のモル数の割合が20mol%以下であることで、より効果的にボイド率の低減を図ることができる。
【0092】
また、表3に示す比較例1のボイド率と、表13に示す実施例56~60のボイド率とを比較すると、各実施例の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、本願発明のはんだペースト用フラックスを用いることで、はんだペースト中のフラックスの含有量に影響されることなく、ボイド率の低減を図ることができる。特に、はんだペースト用フラックスの含有量が5.5質量%以上6質量%以下であることで、より効果的にボイド率の低減を図ることができる。
【0093】
また、表3に示す比較例1のボイド率と、表14に示す実施例61~67のボイド率とを比較すると、各実施例の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、本願発明のはんだペースト用フラックスを用いることで、金属の粒子の種類、混合比、及び、粒径範囲に影響されることなく、ボイド率の低減を図ることができる。
【0094】
また、表3に示す比較例1のボイド率と、表15に示す実施例68,69のボイド率とを比較すると、各実施例の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、本願発明のはんだペースト用フラックスにおいて、脂肪酸と脂肪族一級アミンとのモル比が1:0.5以上1.5以下となるように構成することで、ボイド率の低減を図ることができる。
【0095】
また、表3に示す比較例1のボイド率と、表16に示す実施例70のボイド率とを比較すると、実施例70の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、低沸点(炭素数10以下)の脂肪族一級アミンと、高沸点(炭素数18)の脂肪族一級アミンとを併用した場合であってもボイド率の低減を図ることができる。
【0096】
また、表3に示す比較例1のボイド率と、表17に示す実施例71,72のボイド率とを比較すると、各実施例の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、本願発明のはんだペースト用フラックスにおいて、脂肪酸及び脂肪族一級アミンが分枝鎖型であっても、ボイド率の低減を図ることができる。
【0097】
また、表3に示す比較例1のボイド率と、表18に示す実施例73のボイド率とを比較すると、実施例73の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、本願発明のはんだペースト用フラックスにおいて、脂肪酸及び脂肪族一級アミンが主成分として含有されることで、ボイド率の低減を図ることができる。
【0098】
また、表20に示す比較例2のボイド率と実施例74のボイド率とを比較すると、実施例74の方がボイド率が低いことが認められる。つまり、本願発明のはんだペースト用フラックスは、Sn系金属の粒子のみからなるはんだ粉を用いてはんだペーストを作製した場合であっても、ボイド率の低減を図ることができる。