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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】アミノ酸由来の異味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220210BHJP
   A61K 47/46 20060101ALN20220210BHJP
   A61K 47/40 20060101ALN20220210BHJP
   A61P 3/02 20060101ALN20220210BHJP
   A61K 31/198 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A61K47/46
A61K47/40
A61P3/02
A61K31/198
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019011273
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020115811
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000208086
【氏名又は名称】大洋香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(72)【発明者】
【氏名】岩本 壮王多
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161166(JP,A)
【文献】特開2018-186720(JP,A)
【文献】KUWATA, T. et al.,ホエイからの各種有用成分の分離と栄養,機能食品への応用研究,MILK SCIENCE,2012年,Vol.61,No.2,pp.95-103
【文献】研究課題名(和文)アミノ酸の味の定量化を実現する苦みセンサの開発,科研費, 科学研究費助成事業 研究成果報告書,2014年06月02日
【文献】IZAWA, N. et al.,蛋白質加水分解物の苦味とその除去,日本食品科学工学会誌,1999年,Vol.46, No.8,pp.501-507
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
A61K 47/46
A61K 47/40
A61P 3/02
A61K 31/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ抽出物及びシクロデキストリンが配合されてなることを特徴とするアミノ酸由来の異味改善剤。
【請求項2】
バラ抽出物及びシクロデキストリンが配合されてなることを特徴とする分岐鎖アミノ酸由来の異味改善剤。
【請求項3】
前記分岐鎖アミノ酸が、ロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選ばれる1または2以上であることを特徴とする請求項2に記載の分岐鎖アミノ酸由来の異味改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノ酸に由来する異味を低減するアミノ酸由来の異味改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸には生物にとって必要不可欠な栄養成分である。ヒトにおいては20種類からなるアミノ酸によってタンパク質が構成されており、ヒスチジンやロイシン、メチオニンのような、ヒト体内中で合成できないアミノ酸は必須アミノ酸とされ、外部からの摂取によって補う必要があり、サプリメント等の形態で製品展開されている。
【0003】
例えば、ロイシン、イソロイシンおよびバリンのような分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid(BCAA)と呼ばれる必須アミノ酸がサプリメントや粉末食品、飲料として幅広く展開されている。しかしながら、これらのアミノ酸の一部は苦味や渋味といった異味を有しており、嗜好性の観点から摂取阻害の要因とされている。
【0004】
そこで、これらのアミノ酸の嗜好性を改善するために、アミノ酸を製剤化する方法や、高甘味度甘味料を併用することによる、異味のマスキング方法が多く開発されてきた(特許文献1,2)。
【0005】
【文献】特開2016-104016号公報
【文献】特開2005-336078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、アミノ酸の苦味を完全にマスキングすることができず、さらなるマスキング剤または異味の改善剤の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、様々な植物性抽出物のうち、バラ抽出物と、シクロデキストリンを併用することで、相乗的にアミノ酸由来のの異味低減効果が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕 バラ抽出物及びシクロデキストリンが配合されてなることを特徴とするアミノ酸由来の異味改善剤。
〔2〕 バラ抽出物及びシクロデキストリンが配合されてなることを特徴とする分岐鎖アミノ酸由来の異味改善剤。
〔3〕 前記分岐鎖アミノ酸が、ロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選ばれる1または2以上であることを特徴とする〔2〕に記載の分岐鎖アミノ酸由来の異味改善剤。
〔4〕 〔1〕に記載のアミノ酸由来の異味改善剤を含有することを特徴とする食品。
〔5〕 〔2〕または〔3〕のいずれかに記載の分岐鎖アミノ酸由来の異味改善剤を含有することを特徴とする食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アミノ酸に由来する異味に対して異味低減効果を有するアミノ酸由来の異味改善剤を提供することができる。
【0010】
また、本発明によれば、特に分岐鎖アミノ酸の異味を効果的に低減することができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、特に分岐鎖アミノ酸のなかでもロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選ばれる1または2以上に対して効果的に異味を低減することができる。
【0012】
さらにまた、本発明に係るアミノ酸由来の異味改善剤を含有する食品によれば、アミノ酸を含む食品に対して、当該食品の風味を阻害することなく、アミノ酸由来の苦味もしくは渋みといった異味をほとんど感じることなく摂取することが可能となる。
【0013】
同様に、本発明に係る分岐鎖アミノ酸由来の異味改善剤を含有する食品によれば、分岐鎖アミノ酸を含む食品に対して、当該食品の風味を阻害することなく、分岐鎖アミノ酸由来の苦味もしくは渋みといった異味をほとんど感じることなく摂取することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、ロイシン由来の異味改善スコアを示した棒グラフ。
図2】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、ロイシン水溶液の飲みやすさ改善スコアを示した棒グラフ。
図3】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、イソロイシン由来の異味改善スコアを示した棒グラフ。
図4】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、イソロイシン水溶液の飲みやすさ改善スコアを示した棒グラフ。
図5】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、バリン由来の異味改善スコアを示した棒グラフ。
図6】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、バリン水溶液の飲みやすさ改善スコアを示した棒グラフ。
図7】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、フェニルアラニン由来の異味改善スコアを示した棒グラフ。
図8】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、フェニルアラニン水溶液の飲みやすさ改善スコアを示した棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアミノ酸由来の異味改善剤(以下、異味改善剤という。)は、バラ抽出物及びシクロデキストリンを有効成分として含有するものである。本発明の異味改善剤はアミノ酸に由来する異味に対して、優れた低減効果を示す。以下では、アミノ酸に由来する異味に対する低減効果を「異味低減効果」と略記する。
【0016】
バラ抽出物とはバラ、好ましくはバラの花弁もしくは蕾から抽出した抽出物である。抽出方法としては、含水アルコール抽出、熱水抽出など一般的な抽出方法のいずれでもよいが、含水アルコール抽出が望ましい。また、対象物への使用濃度を考慮して、デキストリン等のアミノ酸由来の異味低減効果を有しない賦形剤を使用してもよい。
【0017】
シクロデキストリン及びバラ抽出物は、それぞれ単独では異味低減効果が僅かにあるに過ぎないが、本発明を見出すにあたり、シクロデキストリンとバラ抽出物を併用することで、相乗的に異味低減効果を発揮することを見出した。配合比率はバラ抽出物に対して、重量比で0.1~500倍量、好ましくは重量比で1~50倍量のシクロデキストリンを配合することが望ましい。
【0018】
本発明が対象とする異味の由来となる苦味を有するアミノ酸は特に限定されるものではなく、例えばロイシン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、システイン、リジン、フェニルアラニン、アルギニン、バリン、メチオニン及びヒスチジン等が挙げられる。
【0019】
本発明には、必要に応じて香料を配合することができる。香料としては、例えば、フルーツ系香料や乳系香料等が挙げられる。これにより、本発明による異味低減効果をさらに高めることができる。前記香料は、本発明が食品に含有される場合には当該食品の風味に合った香料を選択することで、当該食品の風味を損なうことなく、食べやすさをより向上させることができる。
【0020】
本発明に係る異味改善剤は、必要に応じて、乳化剤、固着剤、湿潤剤、安定剤等を適宜添加することにより、油剤、乳剤、水和剤、粉剤及び粒剤の形態として製剤化することができる。
【0021】
本発明に係る異味改善剤を、アミノ酸由来の異味を有する食品に含有させることにより、上記製品中におけるアミノ酸に由来する異味を大きく低減することができる。前記食品に対する本発明に係るバラ抽出物製剤の含有量は、0.0001~1重量%であることが好ましく、0.001~0.1重量%であることがより好ましい。バラ抽出物製剤の濃度が食品に対して0.001重量%より低くなると異味の低減効果が十分に得られず、バラ抽出物製剤の濃度が食品に対して1重量%よりも高くなると原料の調達コスト上昇の要因となる。また、食品に対するバラ抽出物製剤の濃度を0.01~0.1重量%とすることで、原料の調達コストの上昇を抑えつつ、異味の低減効果を明確に得ることができる。
【0022】
食品としては、例えば、アミノ酸を含む栄養補助食品、健康食品、介護食、菓子類、飲料類等が挙げられる。これらの食品に、本発明に係る異味改善剤を配合することにより、アミノ酸由来の異味を低減して摂取しやすくなる。
【実施例
【0023】
以下、試験例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。なお、本実施例における説明及び表中の各成分の含有量を示
す%は重量%で示されているものとする。
【0024】
1.アミノ酸含有飲料に対する異味低減効果の確認試験
(1)被検試料
丸善製薬(株)社製ローズバッツエキスパウダーMFを比較例1、3及び5の被検試料として使用した。また、シクロデキストリン(日本食品化工(株)社製セルデックスB-100)を比較例2,4及び6の被検試料として使用した。さらに、バラ抽出物及びシクロデキストリンの併用組成物を実施例1~4の被検試料として使用した。当該併用組成物は、ローズバッツエキスパウダーMF、シクロデキストリン、及びデキストリンの合計を100%として、ローズバッツエキスパウダーMF10%、シクロデキストリン45%及びデキストリン(松谷化学工業(株)社製マックス1000)45%を顆粒化することで調製した(以下、「バラ抽出物製剤という」)。
【0025】
(2)供試飲料
下記表1~4に示した処方に従って、アミノ酸配合水溶液を調製した。具体的には、各原料を水に投入後、撹拌、溶解をおこなったものを供試飲料として使用した。なお、ロイシンはプロテインケミカル株式会社製の「L-ロイシン」、イソロイシンは味の素株式会社製の「L-イソロイシン」、バリンは味の素株式会社製の「L-バリン」、フェニルアラニンは味の素株式会社製の「L-フェニルアラニン」を使用した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
実施例1~4、比較例1~8、並びに各ブランクで得られたアミノ酸配合水溶液について、5名のパネラーによって、下記スコア基準を設けたうえで、異味低減効果改善効果を評価した。
【0031】
(ロイシン配合水溶液の異味低減効果官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化はなく、低減効果は認められない。
1:ブランクと比較して、低減効果がわずかに認められる。
2:ブランクと比較して、低減効果が認められる。
3:ブランクと比較して、低減効果が強く認められる。
【0032】
【表5】
【0033】
(ロイシン配合水溶液の異味低減効果官能評価の結果)
表5及び図1の結果から、実施例1の平均スコアは2以上を示したことで、バラ抽出物製剤がロイシン由来の異味低減効果を示すことが明らかとなった。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例1及び2では、スコアが1を大きく下回ったことから異味低減効果をほとんど示さないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではロイシンの異味低減効果を示さないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に異味低減効果が得られることを示している。
【0034】
(ロイシン配合水溶液の飲みやすさ官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化は認められない。
1:ブランクと比較して、飲みやすさがわずかに向上する。
2:ブランクと比較して、飲みやすさが向上する。
3:ブランクと比較して、飲みやすさが大きく向上する。
【0035】
【表6】
【0036】
(ロイシン配合水溶液の飲みやすさ官能評価の結果)
表6及び図2の結果から、異味低減効果と同様にバラ抽出物製剤において、平均スコアは2以上を示した。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例1及び2では、スコアが1を大きく下回ったことから飲みやすさは、ほとんど変化しないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではロイシンの飲みやすさを改善しないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に飲みやすさが改善されることを示している。また、実施例1の飲みやすさのスコアが高かったことから、バラ抽出物製剤自体が特異的な強い香気や呈味を有さず、ロイシンを含有する飲料に配合しても飲料本来の風味を損なわないことが示された。
【0037】
(イソロイシン配合水溶液の異味低減効果官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化はなく、低減効果は認められない。
1:ブランクと比較して、低減効果がわずかに認められる。
2:ブランクと比較して、低減効果が認められる。
3:ブランクと比較して、低減効果が強く認められる。
【0038】
【表7】
【0039】
(イソロイシン配合水溶液の異味低減効果官能評価の結果)
表7及び図3の結果から、実施例2の平均スコアは2以上を示したことで、バラ抽出物製剤がイソロイシン由来の異味低減効果を示すことが明らかとなった。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例3及び4では、スコアが1を大きく下回ったことから異味低減効果をほとんど示さないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではイソロイシンの異味低減効果を示さないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に異味低減効果が得られることを示している。
【0040】
(イソロイシン配合水溶液の飲みやすさ官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化は認められない。
1:ブランクと比較して、飲みやすさがわずかに向上する。
2:ブランクと比較して、飲みやすさが向上する。
3:ブランクと比較して、飲みやすさが大きく向上する。
【0041】
【表8】
【0042】
(イソロイシン配合水溶液の飲みやすさ官能評価の結果)
表8及び図4の結果から、異味低減効果と同様にバラ抽出物製剤において、平均スコアは2以上を示した。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例3及び4では、スコアが1を大きく下回ったことから飲みやすさは、ほとんど変化しないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではイソロイシンの飲みやすさを改善しないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に飲みやすさが改善されることを示している。また、実施例2の飲みやすさのスコアが高かったことから、バラ抽出物製剤自体が特異的な強い香気や呈味を有さず、イソロイシンを含有する飲料に配合しても飲料本来の風味を損なわないことが示された。
【0043】
(バリン配合水溶液の異味低減効果官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化はなく、低減効果は認められない。
1:ブランクと比較して、低減効果がわずかに認められる。
2:ブランクと比較して、低減効果が認められる。
3:ブランクと比較して、低減効果が強く認められる。
【0044】
【表9】
【0045】
(バリン配合水溶液の異味低減効果官能評価の結果)
表9及び図5の結果から、実施例3の平均スコアは2以上を示したことで、バラ抽出物製剤がバリン由来の異味低減効果を示すことが明らかとなった。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例3及び4では、スコアが1を大きく下回ったことから異味低減効果をほとんど示さないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではバリンの異味低減効果を示さないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に異味低減効果が得られることを示している。
【0046】
(バリン配合水溶液の飲みやすさ官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化は認められない。
1:ブランクと比較して、飲みやすさがわずかに向上する。
2:ブランクと比較して、飲みやすさが向上する。
3:ブランクと比較して、飲みやすさが大きく向上する。
【0047】
【表10】
【0048】
(バリン配合水溶液の飲みやすさ官能評価の結果)
表10及び図6の結果から、異味低減効果と同様にバラ抽出物製剤において、平均スコアは2以上を示した。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例3及び4では、スコアが1を大きく下回ったことから飲みやすさは、ほとんど変化しないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではバリンの飲みやすさを改善しないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に飲みやすさが改善されることを示している。また、実施例3の飲みやすさのスコアが高かったことから、バラ抽出物製剤自体が特異的な強い香気や呈味を有さず、バリンを含有する飲料に配合しても飲料本来の風味を損なわないことが示された。
【0049】
フェニルアラニンは、ロイシン、イソロイシンおよびバリンと同様に必須アミノ酸と呼ばれるアミノ酸であり、分岐鎖アミノ酸ではないものの、異味として苦味を有する。以下に、実施例4としてバラ抽出物製剤のフェニルアラニンに対する異味低減効果を検討する。
【0050】
(フェニルアラニン配合水溶液の異味低減効果官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化はなく、低減効果は認められない。
1:ブランクと比較して、低減効果がわずかに認められる。
2:ブランクと比較して、低減効果が認められる。
3:ブランクと比較して、低減効果が強く認められる。
【0051】
【表11】
【0052】
(フェニルアラニン配合水溶液の異味低減効果官能評価の結果)
表11及び図7の結果から、実施例4の平均スコアは約2点を示したことで、バラ抽出物製剤がフェニルアラニン由来の異味低減効果を示すことが明らかとなった。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例3及び4では、スコアが1以下であったことから、フェニルアラニン由来の異味について、大きな改善は見られないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではイソロイシンの異味低減効果を示さないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に異味低減効果が得られることを示している。
【0053】
(フェニルアラニン配合水溶液の飲みやすさ官能評価基準)
0:ブランクと比較して、変化は認められない。
1:ブランクと比較して、飲みやすさがわずかに向上する。
2:ブランクと比較して、飲みやすさが向上する。
3:ブランクと比較して、飲みやすさが大きく向上する。
【0054】
【表12】
【0055】
(フェニルアラニン配合水溶液の飲みやすさ官能評価の結果)
表12及び図8の結果から、異味低減効果と同様にバラ抽出物製剤において、平均スコアは約2点を示した。一方で、バラ抽出物、若しくはシクロデキストリン単独を含有する比較例7及び8では、スコアが1以下であったことから、飲みやすさについて、大きな改善は見られないことが分かった。このことは、バラ抽出物、又はシクロデキストリン単独ではフェニルアラニンの飲みやすさを改善しないが、これらを併用することで、2を超える平均スコアを示し、相乗的に飲みやすさが改善されることを示している。また、実施例4の飲みやすさのスコアが高かったことから、バラ抽出物製剤自体が特異的な強い香気や呈味を有さず、フェニルアラニンを含有する飲料に配合しても飲料本来の風味を損なわないことが示された。
【0056】
以上より、バラ抽出物、およびシクロデキストリンを併用することでアミノ酸の有する異味を相乗的に低減したことから、アミノ酸由来の異味が改善されたので、本発明によりアミノ酸由来の異味低減効果が得られることがわかった。
【0057】
特に、実施例1~3によるロイシン、イソロイシンおよびバリンに対する異味低減効果がいずれも2.0以上のスコアを示したことから、本発明は分岐鎖アミノ酸由来の異味に対して顕著な異味低減効果を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るアミノ酸由来の異味改善剤を、アミノ酸を含む栄養補助食品等の食品に配合することで、アミノ酸由来の異味をほとんど感じることなく摂取することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8