(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】光送信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置、並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02315 20210101AFI20220210BHJP
H01S 5/0687 20060101ALI20220210BHJP
H04B 10/572 20130101ALI20220210BHJP
【FI】
H01S5/02315
H01S5/0687
H04B10/572
(21)【出願番号】P 2017059048
(22)【出願日】2017-03-24
【審査請求日】2020-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 俊也
(72)【発明者】
【氏名】中井 義博
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇之
(72)【発明者】
【氏名】胡 匡洋
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/063973(WO,A1)
【文献】特開昭63-318188(JP,A)
【文献】特開2013-115257(JP,A)
【文献】特開2014-022567(JP,A)
【文献】特開2009-064829(JP,A)
【文献】特開2003-078088(JP,A)
【文献】特開2013-153136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0220755(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104518423(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザ素子と、
前記複数の半導体レーザ素子に対して一括して温度調整をする、1の温度調整手段と、
前記複数の半導体レーザ素子のうち第1半導体レーザ素子と、前記1の温度調整手段と、の間に配置される、第1熱抵抗体と、を備え、
前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第1半導体レーザ素子の温度は、前記第1半導体レーザ素子と異なる他の半導体レーザ素子の温度より高い、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光送信モジュールであって、
前記第1半導体レーザ素子は、前記1の温度調整手段によって制御される駆動温度において、予め定められた波長とは異なる第1波長の光を出射し、
前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第1熱抵抗体により、前記第1半導体レーザ素子が出射する光の波長は、前記第1波長から前記予め定められた波長へ近づけられる、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光送信モジュールであって、
前記複数の半導体レーザ素子を搭載するとともに、前記1の温度調整手段と熱的に接続する、サブマウントを、さらに備え、
前記第1熱抵抗体は、前記第1半導体レーザ素子と前記サブマウントとの間に配置され、それぞれと熱的に接続する、第1子基板である、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光送信モジュールであって、
前記複数の半導体レーザ素子のうち、前記第1半導体レーザ素子とは異なる第2半導体レーザ素子は、前記サブマウントに直接搭載される、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項5】
請求項3に記載の光送信モジュールであって、
前記複数の半導体レーザ素子のうち、前記第1半導体レーザ素子とは異なる第2半導体レーザ素子と、前記サブマウントと、の間に配置され、それぞれと熱的に接続するとともに、前記1の温度調整手段が駆動されるときに前記第2半導体レーザ素子の温度を、前記第1半導体レーザ素子の温度と異ならせる、第2子基板を、さらに備える、光送信モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光送信モジュールであって、
前記第2半導体レーザ素子は、前記1の温度調整手段によって制御される温度範囲では、予め定めれられた波長とは異なる第2波長の光を出射し、
前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第2子基板により、前記第2半導体レーザ素子が出射する光の波長は、前記第2波長から前記予め定められた波長へ近づけられる、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項7】
請求項3に記載の光送信モジュールであって、
前記複数の半導体レーザ素子それぞれと、前記サブマウントと、の間に配置され、それぞれと熱的に接続するとともに、前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記複数の半導体レーザ素子のうち少なくとも二つの前記半導体レーザ素子の温度を異ならせる、複数の子基板を、さらに備える、光送信モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の光送信モジュールであって、
前記複数の子基板の厚みは実質的に等しい、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項9】
請求項5又は6に記載の光送信モジュールであって、
前記サブマウントと前記第1半導体レーザ素子との間に対する前記第1子基板の熱抵抗は、前記サブマウントと前記第2半導体レーザ素子との間に対する前記第2子基板の熱抵抗と、異なっている、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項10】
請求項3乃至9のいずれかに記載の光送信モジュールであって、
前記第1子基板を構成する材料の熱伝導率は、前記サブマウントを構成する材料の熱伝導率よりも小さい、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の光送信モジュールであって、
前記第1熱抵抗体は、前記1の
温度調整手段に直接搭載される、第1子基板であり、
前記第1半導体レーザ素子は、前記第1子基板に直接搭載され、
前記複数の半導体レーザ素子のうち、前記第1半導体レーザ素子とは異なる第2半導体レーザ素子は、前記1の
温度調整手段に直接搭載される、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の光送信モジュールであって、
第2子基板を、さらに備え、
前記第1熱抵抗体は、前記1の
温度調整手段に直接搭載される、第1子基板であり、
前記第1半導体レーザ素子は、前記第1子基板に直接搭載され、
前記第2子基板は、前記1の
温度調整手段に直接搭載され、
第2半導体レーザ素子が、前記第2子基板に直接搭載され、
前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第1半導体レーザ素子と前記第2半導体レーザ素子の温度は異なる、
ことを特徴とする、光送信モジュール。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の光送信モジュールと、
光受信モジュールと、
を備える、光モジュール。
【請求項14】
請求項13に記載の光モジュールが搭載される、光伝送装置。
【請求項15】
複数の半導体レーザ素子と、
前記複数の半導体レーザ素子に対して一括して温度調整をする、1の温度調整手段と、
前記複数の半導体レーザ素子のうち第1半導体レーザ素子と、前記1の温度調整手段と、の間に配置される、第1熱抵抗体と、
を備える、光送信モジュールの製造方法であって、
前記第1半導体レーザ素子を作製するステップと、
基準温度において、前記第1半導体レーザ素子が出射する光の出力波長を測定するステップと、
前記出力波長と、前記第1半導体レーザ素子に対応する基準の波長範囲と、の波長の差を比較するステップと、
前記波長の差に基づいて、前記第1熱抵抗体の材質と寸法を決定するステップと、
を備える、ことを特徴とする、光送信モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体光素子を備える、光送信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置、並びにそれらの製造方法に関し、特に複数の半導体光素子の温度調整に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体光素子を備える光送信モジュールが用いられている。例えば、光送信モジュールは、サブマウントとペルチェをさらに備えている。複数の半導体光素子がサブマウントの上表面(載置面)に配置され、ペルチェがサブマウントの下表面(底面)に配置される。複数の半導体光素子とペルチェはサブマウントを介して熱的に接続される。1つのペルチェが、サブマウントを介して、複数の半導体光素子を温度調整する。
【0003】
特許文献1に、複数の半導体レーザ素子とペルチェを備える、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)用の光送信モジュール(TOSA:Transmitter Optical SubAssembly)が開示されており、1つのペルチェを用いて、一括に温度制御がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光送信モジュールでは、1つのペルチェが複数の半導体レーザ素子それぞれの温度が所望の温度範囲の中に収まるよう、一括に温度調整をしている。一般に、半導体レーザ素子は、半導体ウエハにて多量に一括に作製され、作製後、基準温度(例えば、50℃)において出射する光の出力波長が、基準の波長範囲内に収まっているかが検査される。しかしながら、半導体ウエハにて作製される多量の半導体レーザ素子すべて(又は大部分)が、その出力波長が基準の波長範囲内に収めることは難しく、基準の波長範囲外の半導体レーザ素子も同時に作製されてしまう。例えば、光送信モジュールにおいて、ペルチェが複数の半導レーザ素子を基準温度(を含む予め定められた温度範囲)となるよう温度調整をする場合、検査によって基準の波長範囲内に収まっている半導体レーザ素子を選択して、検査によって選択される半導体レーザ素子をサブマウントに搭載することとなる。
【0006】
一般に、半導体レーザ素子が出射する出力波長は温度に依存する。それゆえ、ペルチェが複数の半導体レーザ素子を一括して温度調整するならば、検査によって基準の波長範囲に収まっていない半導体レーザ素子を廃棄するしかなく、歩留りの低下を招き、高コスト化してしまう。対して、複数の半導体レーザ素子を個別に温度調整をすれば、廃棄される半導体レーザ素子も適切な温度に調整することができ、出力波長を予め定められた波長範囲内に収めることが出来る。しかし、この場合、複数の半導体それぞれにペルチェなどの温度調整機構が必要となり、複数の温度調整機構やそれぞれを駆動する駆動回路などにより、光送信モジュールの小型化や省コストを阻むこととなる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、低コスト化及び小型化と、複数の半導体光素子それぞれの温度調整と、がともに実現される光送信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置、並びにそれらの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る光送信モジュールは、複数の半導体光素子と、前記複数の半導体光素子に対して一括して温度調整をする、1の温度調整手段と、前記複数の半導体光素子のうち第1半導体光素子と、前記1の温度調整手段と、の間に配置される、第1熱抵抗体と、を備え、前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第1半導体光素子の温度は、前記第1半導体光素子と異なる他の半導体光素子の温度より高い、ことを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)に記載の光送信モジュールであって、前記第1半導体光素子は、前記1の温度調整手段によって制御される駆動温度において、予め定められた波長とは異なる第1波長の光を出射し、前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第1熱抵抗体により、前記第1半導体光素子が出射する光の波長は、前記第1波長から前記予め定められた波長へ近づけられてもよい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載の光送信モジュールであって、前記複数の半導体光素子を搭載するとともに、前記1の温度調整手段と熱的に接続する、サブマウントを、さらに備え、前記第1熱抵抗体は、前記第1半導体光素子と前記サブマウントとの間に配置され、それぞれと熱的に接続する、第1子基板であってもよい。
【0011】
(4)上記(3)に記載の光送信モジュールであって、前記複数の半導体光素子のうち、前記第1半導体光素子とは異なる第2半導体光素子は、前記サブマウントに直接搭載されてもよい。
【0012】
(5)上記(3)に記載の光送信モジュールであって、前記複数の半導体光素子のうち、前記第1半導体光素子とは異なる第2半導体光素子と、前記サブマウントと、の間に配置され、それぞれと熱的に接続するとともに、前記1の温度調整手段が駆動されるときに前記第2半導体光素子の温度を、前記第1半導体光素子の温度と異ならせる、第2子基板を、さらに備えていてもよい。
【0013】
(6)上記(5)に記載の光送信モジュールであって、前記第2半導体光素子は、前記1の温度調整手段によって制御される温度範囲では、予め定めれられた波長とは異なる第2波長の光を出射し、前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第2子基板により、前記第2半導体光素子が出射する光の波長は、前記第2波長から前記予め定められた波長へ近づけられてもよい。
【0014】
(7)上記(3)に記載の光送信モジュールであって、前記複数の半導体光素子それぞれと、前記サブマウントと、の間に配置され、それぞれと熱的に接続するとともに、前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記複数の半導体光素子のうち少なくとも二つの前記半導体光素子の温度を異ならせる、複数の子基板を、さらに備えてもよい。
【0015】
(8)上記(7)に記載の光送信モジュールであって、前記複数の子基板の厚みは実質的に等しくてもよい。
【0016】
(9)上記(5)又は(6)に記載の光送信モジュールであって、前記サブマウントと前記第1半導体光素子との間に対する前記第1子基板の熱抵抗は、前記サブマウントと前記第2半導体光素子との間に対する前記第2子基板の熱抵抗と、異なっていてもよい。
【0017】
(10)上記(3)乃至(9)のいずれかに記載の光送信モジュールであって、前記第1子基板を構成する材料の熱伝導率は、前記サブマウントを構成する材料の熱伝導率よりも小さくてもよい。
【0018】
(11)上記(1)又は(2)に記載の光送信モジュールであって、前記第1熱抵抗体は、前記1の温度調整手段に直接搭載される、第1子基板であり、前記第1半導体光素子は、前記第1子基板に直接搭載され、前記複数の半導体光素子のうち、前記第1半導体光素子とは異なる第2半導体光素子は、前記1の温度調整手段に直接搭載されてもよい。
【0019】
(12)上記(1)又は(2)に記載の光送信モジュールであって、第2子基板を、さらに備え、前記第1熱抵抗体は、前記1の温度調整手段に直接搭載される、第1子基板であり、前記第1半導体光素子は、前記第1子基板に直接搭載され、前記第2子基板は、前記1の温度調整手段に直接搭載され、前記第2半導体光素子は、前記第2子基板に直接搭載され、前記1の温度調整手段が駆動されるときに、前記第1半導体光素子と前記第2半導体光素子の温度は異なっていてもよい。
【0020】
(13)本発明に係る光モジュールは、上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の光送信モジュールと、光受信モジュールと、を備えていてもよい。
【0021】
(14)本発明に係る光伝送装置は、上記(13)に記載の光モジュールが搭載されていてもよい。
【0022】
(15)本発明に係る光送信モジュールの製造方法は、複数の半導体光素子と、前記複数の半導体光素子に対して一括して温度調整をする、1の温度調整手段と、前記複数の半導体光素子のうち第1半導体光素子と、前記1の温度調整手段と、の間に配置される、第1熱抵抗体と、を備える、光送信モジュールの製造方法であって、前記第1半導体光素子を作製するステップと、基準温度において、前記第1半導体光素子が出射する光の出力波長を測定するステップと、前記出力波長と、前記第1半導体光素子に対応する基準の波長範囲と、の波長の差を比較するステップと、前記波長の差に基づいて、前記第1熱抵抗体の材質と寸法を決定するステップと、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、低コスト化及び小型化と、複数の半導体光素子それぞれの温度調整と、がともに実現される光送信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置、並びにそれらの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光送信モジュールの内部を上方から見た様子を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る光送信モジュールの断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る光送信モジュールの一部分を示す模式図である。
【
図5】セラミック材料に対する熱抵抗体の特性を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る光送信モジュールの一部分を示す模式図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る光送信モジュールの一部分を示す模式図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る光送信モジュールの一部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0026】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置1及び光モジュール2の構成を示す模式図である。光伝送装置1は、プリント回路基板11とIC12を備えている。光伝送装置1は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置1は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置1に、複数の光モジュール2が搭載されており、光モジュール2より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC12などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板11を介して、該当する光モジュール2へそのデータを伝達する。
【0027】
光モジュール2は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバである。光モジュール2は、プリント回路基板21と、光ファイバ3Aを介して受信する光信号を電気信号に変換する光受信モジュール23Aと、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3Bへ送信する光送信モジュール23Bと、を含んでいる。プリント回路基板21と、光受信モジュール23A及び光送信モジュール23Bとは、それぞれフレキシブル基板22A,22Bを介して接続されている。光受信モジュール23Aより電気信号がフレキシブル基板22Aを介してプリント回路基板21へ伝送され、プリント回路基板21より電気信号がフレキシブル基板22Bを介して光送信モジュール23Bへ伝送される。光モジュール2と光伝送装置1とは電気コネクタ5を介して接続される。光受信モジュール23Aや光送信モジュール23Bは、プリント回路基板21に電気的に接続され、光信号/電気信号を電気信号/光信号にそれぞれ変換する。
【0028】
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の光伝送装置1と2個以上の光モジュール2と、1個以上の光ファイバ3を含む。各光伝送装置1に、1個以上の光モジュール2が接続される。2個の光伝送装置1にそれぞれ接続される光モジュール2の間を、光ファイバ3が接続している。一方の光伝送装置1が生成した送信用のデータが接続される光モジュール2によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ3へ送信される。光ファイバ3上を伝送する光信号は、他方の光伝送装置1に接続される光モジュール2によって受信され、光モジュール2が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の光伝送装置1へ伝送する。
【0029】
ここで、各光モジュール2が送受信する電気信号のビットレートは100Gbit/sである。光送信モジュール23Bは、CFP系規格であり、25Gbit/s(もしくは28Gbit/s)の光を波長間隔20nmで4波長多重化して100Gbit/sで伝送するDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)方式である。
【0030】
図2は、当該実施形態に係る光送信モジュール30の内部を上方から見た様子を示す図である。また、
図3は、当該実施形態に係る光送信モジュール30の断面図である。なお、当該実施形態に係る光送信モジュール30は、例えば、
図1に示す光送信モジュール23Bである。
【0031】
当該実施形態に係る光送信モジュール30は、パッケージ101と、底面と載置面とを有するサブマウント104と、サブマウント104の底面に接して配置されるペルチェ110と、サブマウント104の載置面に搭載される複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200と、を備えている。光送信モジュール30は、ともにサブマウント104の載置面に搭載されるコリメートレンズ102及びビームスプリッタ103(光分波器)と、複数(ここでは、8本)の配線105と、フィードスルー106と、光合波器107と、集光レンズ108と、レセプタクル端子109と、複数(ここでは、4個)の受光素子300と、をさらに備える。なお、光送信モジュール30は、CAN型TOSAであってもボックス型の光送信モジュールであってもよい。なお、サブマウント104は、底面と載置面とが互いに対向する板形状を有しているが、これに限定さえることはなく、例えば、L字形状を有していても良い。サブマウント104がL字形状を有する場合は、ペルチェと接する面が底面となる。この場合、底面と載置面とは対向しないが、熱の移動経路は、対向する場合と変わらない。すなわち、熱の多くは、半導体レーザ素子が搭載される面(載置面)とサブマウントがペルチェと接する面(底面)間を移動する。
【0032】
当該実施形態に係る光送信モジュール30において、サブマウント104の底面はペルチェ110とは物理的に接しており、熱的に接続されている。また、サブマウント104と複数の半導体レーザ素子200とは熱的に接続されている。それゆえ、ペルチェ110は、サブマウント104を介して複数の半導体レーザ素子200を一括して温度調整することができる。ここでは、光送信モジュール30を予め定められた駆動温度で駆動させるとき、ペルチェ110はサブマウント104を該予め定められた駆動温度(を含む予め定められた温度範囲内)に維持するように温度調整している。
【0033】
ここで、複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200は、電界吸収型(EA:Electro Absorption)変調器と、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)レーザと、が半導体基板上にモノリシックに集積されるEA-DFBレーザである。光送信モジュール30が駆動される場合に、複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200は、互いに異なるとともにそれぞれ予め定められた波長の光を出射することが求められている。DFBレーザは、電流70mA及び電圧1.3V(電力0.091W)で駆動され、EA変調器は、電流15mA、中心バイアス-0.7V、及びビルトイン電圧0.95V(電力0.025W)で、それぞれ駆動される。半導体レーザ素子200の光出力は2mWであり、終端抵抗の発熱量は以下の通りである。終端抵抗の抵抗値は50Ωであり、EA変調器におけるオン状態(光透過状態:バイアス電圧としてハイ電圧を印加)におけるフォトカレントは-7.35mAであり、オフ状態(光遮断状態:バイアス電圧としてロー電圧を印加)におけるフォトカレントは-14mAであり、フォトカレント交流波高値は3.325mAであり、消費電力は0.00055Wである。よって、かかる場合に、半導体レーザ素子200の発熱量の合計は約0.117Wとなる。
【0034】
そして、複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200のうち、
図2の下端に位置する半導体レーザ素子200を第1半導体レーザ素子200Aとし、残り3個の半導体レーザ素子200をそれぞれ第2半導体レーザ素子200Bとする。当該実施形態に係る光送信モジュール30の主な特徴は、第1半導体レーザ素子200Aとペルチェ110との間に配置され、第1半導体レーザ素子200Aから放出される熱の伝達を妨げるための、第1子基板(図示せず)を備えることになる。かかる構成の詳細については後述する。
【0035】
複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200それぞれは、複数のワイヤ105Aを介してフィールドスルー106と電気的に接続されている。また、複数(ここでは、4個)の受光素子300それぞれは、複数のワイヤ105Bを介してフィールドスルー106と電気的に接続されている。複数の半導体レーザ素子200はパッケージ101内に並置されて収納されており、複数の半導体レーザ素子200それぞれは予め定められた波長の光Lを出射する。複数の半導体レーザ素子200から出射される光Lそれぞれは、同一の方向に向かうように出射される。なお、簡単のために、
図2及び
図3には、複数のワイヤ105A及び複数のワイヤ105Bは、それぞれ、1本のワイヤ105A及び1本のワイヤ105Bのみ図示されている。
【0036】
複数の半導体レーザ素子200からパッケージ101の内部で空間伝送によって出射された光Lのそれぞれは、光Lが出射される方向に備えられたコリメートレンズ102を通過することによって平行光に変換される。コリメートレンズ102は、
図2及び
図3に示す通り、複数のレンズが並置して連結するマイクロレンズアレイとしてもよい。
【0037】
平行光に変換された光Lは、その後ビームスプリッタ103に入射され、所定の割合で透過光Ltと分岐光Lbとに分岐される。すなわち、ビームスプリッタ103は、光軸方向(半導体レーザ素子200の出射方向)に透過光Ltを出射し、光軸に対して垂直方向に分岐光Lbを出射する。ここで、分岐光Lbはビームスプリッタ103によって
図3における上方へ出射される。
【0038】
ビームスプリッタ103によって上方へ出射される複数(ここでは、4本)の分岐光Lbは、複数(ここでは、4個)の受光素子300それぞれの受光面301に入射する。
図3に示す通り、複数の受光素子300それぞれは、ビームスプリッタ103上に配置され、複数の受光素子300それぞれの受光面301は、ビームスプリッタ103に対向している。ここで、受光素子300は、フォトダイオードなどである。受光素子300は、半導体レーザ素子200の光出力をそれぞれモニタリングする。半導体レーザ素子200の光出力は、該モニタリング結果に基づいて一定なものとなるように制御される。
【0039】
また、半導体レーザ素子200から出射された光の一部であるビームスプリッタ103を透過した透過光Ltは、光を合波する光合波器107に入射され、更に光合波器107にて光を合波して外部に伝送する光Loutとして出力される。光合波器107から出力された光Loutはその後、集光レンズ108にて集光されレセプターと接続されるレセプタクル端子109に入射する。そして、レセプタクル端子109は外部の光ファイバ(図示せず)と光学的に接続されており、レセプタクル端子109から出力される光は、光ファイバを伝送する。
【0040】
光送信モジュール30のパッケージ101内部は、真空状態であることとしてもよいし、不活性ガス(例えば窒素ガス等)、ドライエア等が充填されていることとしてもよい。このようにパッケージ101内部が不活性ガスで充満されることにより、光送信モジュール30の信頼性を高めることができる。
【0041】
図4は、当該実施形態に係る光送信モジュール30の一部分を示す模式図である。
図4は、サブマウント104の載置面には、第1の方向(
図4の横方向)に沿って並ぶ複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200が搭載される。4個の半導体レーザ素子200のうち、(3個の)第2半導体レーザ素子200Bは、サブマウント104の載置面に直接搭載されるのに対して、第1半導体レーザ素子200Aは、第1子基板210Aを介してサブマウント104の載置面に搭載される。すなわち、第1子基板210Aは、第1半導体レーザ素子200Aとサブマウント104との間に配置され、それぞれと熱的に接続している。
【0042】
本明細書において、半導体レーザ素子200がサブマウント104に搭載されるとは、サブマウント104の載置面に半導体レーザ素子200が物理的に接して、すわなち、直接に搭載される場合と、サブマウント104の載置面に物理的に接して熱抵抗体が配置され、さらに熱抵抗体に物理的に接して半導体レーザ素子200が搭載される場合、すなわち、間接的に搭載される場合と、を含んでいる。
【0043】
サブマウント104の載置面には、搭載される複数の半導体レーザ素子200の複数の電極と接続するための複数の配線パターン116が形成されている。複数の配線パターン116は、複数の電極と、複数のワイヤ115を介して、それぞれ接続される。なお、半導体レーザ素子200は、EA変調器部とDFBレーザ部を有する。EA変調器部の1対のEA電極は、1対のワイヤ115A,115Bを介して、1対の配線パターン116A,116Bと電気的に接続されている。DFBレーザ部の1対のDFB電極のうち、一方は、ワイヤ115Cを介して配線パターン116Cと電気的に接続されている。他方は、半導体レーザ素子200の底面側に配置されており、対応する電極パターン116Dと電気的に接続されている。第1半導体レーザ素子200Aの他方のDFB電極と対応する電極パターン116Dと電気的に接続させるために、第1子基板210Aにはビアホール(図示せず)が設けられている。しかしながら、これに限定されることはなく、第1子基板210Aの側面にメタライズを施すなどの手段によって実現してもよい。なお、本実施形態ではサブマウントの材質は窒化アルミである。
【0044】
ここで、第1子基板210Aは、ペルチェ110が駆動されるときに第1半導体レーザ素子200Aから放出される熱の伝達を妨げるための熱抵抗体(第1熱抵抗体)である。なお、複数の半導体レーザ素子200それぞれとサブマウント104との間は、熱伝導により、熱的接続は十分に確保されている。それゆえ、第1半導体レーザ素子200Aとサブマウント104の間に第1子基板210A(第1熱抵抗体)が配置される場合、第1子基板210Aは、熱抵抗が高く、放熱性を低下させる、熱抵抗体として機能する。
【0045】
光送信モジュール30が駆動される場合に、ペルチェ110によってサブマウント104は予め定められた駆動温度(を含む予め定められた温度範囲)に制御される。該予め定められた駆動温度において、複数の半導体レーザ素子200それぞれは、予め定められた波長の光を出射することが求められている。それゆえ、基準温度において、複数の半導体レーザ素子200が出射する光の出力波長は、基準の波長範囲内にそれぞれ収まっていることが求められている。ここで、簡単のために、駆動温度は基準温度に等しく、ともに50℃とする。
【0046】
ここで、第1半導体レーザ素子200Aが出射する光の基準温度における出力波長は、対応する基準の波長範囲内に収まっておらず、波長範囲より短くなっている。これに対して、3個の第2半導体レーザ素子200Bそれぞれが出射する光の基準温度における出力波長は、対応する基準の波長範囲内に収まっている。
【0047】
各第2半導体レーザ素子200Bは、サブマウント104の載置面に直接搭載されており、ペルチェ110がサブマウント104を駆動温度に維持する場合に、各第2半導体レーザ素子200Bは駆動温度(及び予め定められた温度範囲)に維持される。よって、各第2半導体レーザ素子200Bは、駆動温度において、予め定められた波長(を含む予め定められた波長範囲)の光を出射することが出来る。
【0048】
これに対して、もしも第1子基板210Aが配置されず、第1半導体レーザ素子200Aがサブマウント104の載置面に直接搭載されるならば、駆動温度において、第1半導体レーザ素子200Aは、予め定められた波長(を含む予め定められた波長範囲)とは異なる第1波長の光を出射することとなる。しかしながら、当該実施形態に係る光送信モジュール30では、第1子基板210Aが第1半導体レーザ素子200Aとサブマウント104との間に配置されることにより、第1子基板210Aが熱抵抗体として機能し、半導体レーザ200Aは半導体200Bと比較して放熱性が低下した状態となる。詳細に説明すると、発熱体である半導体レーザ素子200からの熱の流出経路は、載置面を介してサブマウント104に伝達する経路、複数のワイヤ115を介してサブマウント104に伝達する経路、さらに、パッケージ内部がガスにより充填されている場合は、周りに熱放射として放出される経路、がある。これら経路のうち、周囲ガスへの熱放射の熱量は、サブマウント104への熱伝導の熱量と比べて十分に小さく、半導体レーザ素子からの熱の多くはサブマウント104に伝達される。サブマウント104はペルチェ110により駆動温度に維持されており、サブマウント104に直接搭載されている半導体レーザ素子200Bの温度はサブマウントの載置面の温度と略一致する。厳密言えば、サブマウント104と半導体レーザ素子200Bとの接触部(一般的にはハンダにて接続)の熱抵抗分だけ半導体レーザ素子200Bのほうが温度は高くなるが、ここでは説明の簡略化のために、接触抵抗分は無視しサブマウント104の載置面の温度と半導体レーザ素子200Bとの温度は一致しているとする。対して、半導体レーザ素子200Aは熱抵抗体である第1子基板210Aを介してサブマウント104と物理的・熱的に接続している。第1子基板210Aは熱抵抗体であるため、半導体レーザ素子200Aの発熱分のサブマウント104への熱伝導性を低減させる役割をする(放熱性の低下)。結果として、半導体レーザ素子200Aの温度は第1子基板210Aとの接続面と略一致し(上述同様、接触抵抗分は無視する)、第1子基板210Aの半導体レーザ素子200Aとの接続面の温度は、サブマウント104との接続面の温度より高い状態で熱平衡状態となる。
【0049】
よって、第1半導体レーザ素子200Aの温度は駆動温度よりも高くなり、第1半導体レーザ素子200Aが出射する光の出力波長は、駆動温度で駆動される場合の出力波長よりも長波長側にシフトする。第1子基板210Aを適当な材質や寸法を選択して形成することにより、第1半導体レーザ素子200Aが出射する光の出力波長を、第1波長より予め定められた波長に近づけることができる。さらに望ましくは、第1半導体レーザ素子200Aが出力する光の出力波長を、予め定められた波長とすることができる。なお、説明の簡略化のために半導体レーザ素子200の温度は分布を持たないこととして説明した。厳密には半導体レーザ素子200内部においても熱分布は存在するが、ここでは、第1子基板210Aの効果を説明するために簡略化している。
【0050】
また、ここでは、基準温度と駆動温度を等しいとしたが、これに限定されることはない。半導体レーザ素子200が出射する光の出力波長は温度に依存する。それゆえ、駆動温度における各半導体レーザ素子200に求められる予め定められた波長は、基準温度における各半導体レーザ素子200に対応する基準の波長範囲と、駆動温度と基準温度の温度差に応じて、決定される。
【0051】
図5は、セラミック材料に対する熱抵抗体の特性を示す図である。ここで、第1子基板210Aの寸法を、幅300μm、長さ600μm、及び幅100μmとする。かかる寸法で熱抵抗体を形成する場合に、熱抵抗体が
図5に示す材料である場合に、かかる材料の熱伝導率(W/mK)と、かかる熱抵抗体によって発生する温度差(K)及び半導体レーザ素子200が出射する光の出力波長の差と、をそれぞれ示している。
【0052】
当該実施形態に係る光送信モジュール30の第1子基板210Aの製造方法は、以下の通りである。第1半導体レーザ素子200Aを公知の方法において作製する。作製後、基準温度において、第1半導体レーザ素子200Aが出射する光の出力波長を測定する。かかる出力波長と、第1半導体レーザ素子200Aに対応する基準の波長範囲と、の波長の差を比較する。具体的には、かかる出力波長と、第1半導体レーザ素子200Aに対応する基準の波長範囲の中心値と、の波長差を計算する。基準温度と駆動温度とが等しい場合は、かかる波長差に応じて、第1子基板210Aの材料と寸法を決定する。
図5に示す寸法にて第1子基板210Aを形成する場合に、かかる波長差を補完する温度差を算出し、該温度差を発生することが出来る材料や寸法を決定すればよい。かかる波長差が0.16nmであるとき、第1子基板210Aをアルミナ(Al
2O
3)によって形成するのが望ましい。CFP系規格のDWDMでは、隣り合う出力波長の波長差が約4.5nmであるので、
図5に示す代表的なセラミック材料によって第1子基板210Aを形成することにより、第1半導体レーザ素子200Aが出射する光の出力波長を予め定められた波長に十分に近づけることができる。基準温度と駆動温度とが異なる場合は、かかる波長差に応じて、ペルチェ110の駆動温度に基づいて、第1半導体レーザ素子200Aが予め定められた波長の光を出射できる温度を算出し、その温度差を発生することが出来る材料や寸法を決定すればよい。一般的に、サブマウント104は放熱性の高い材料(熱伝導率が大きい材料で、例えば窒化アルミなど)を用いる。それに対して第1子基板201Aはサブマウントより熱伝導率が小さい材料とし、かつ寸法をサブマウントより小さくすることで熱抵抗を大きくすることができ、より効果的に第1半導体レーザ素子200Aとサブマウント104の載置面と温度差を大きくすることができるようになる。サブマウント104と第1子基板201Aを同材料で形成しても構わないが、より大きな温度差を得るためには異なる材料を用いることが望ましい。
【0053】
当該実施形態に係る光送信モジュール30では、第1子基板210Aを備えている。第1子基板210Aを用いることなく、第1半導体レーザ素子200Aをサブマウント104の載置面に直接搭載するならば、駆動温度において第1半導体レーザ素子200Aを用いることが出来ない。それゆえ、第1半導体レーザ素子200Aを廃棄することとなり、歩留り低下を招く。第1子基板210Aがサブマウント104に配置されることにより、駆動温度と異なる(駆動温度より高い)温度で第1半導体レーザ素子200Aを駆動させることができ、光送信モジュール30に第1半導体レーザ素子200Aを用いることができる。熱抵抗体を配置することにより、半導体レーザ素子の実効的な駆動温度を、個別のペルチェを用いて温度調整することなく、調整することが出来るので、半導体レーザ素子の使用可能な波長範囲を調整することができる。同時に、一つのペルチェで動作させることができるために、小型・低消費電力を実現することができる。さらに、半導体レーザ素子の波長範囲仕様を拡大することができ、半導体レーザ素子の歩留りを向上させることができる。本実施形態で用いた第1子基板201A(熱抵抗体)はそれ自身では発熱しない。例えば第1子基板201Aに代わりヒータを採用した場合であっても波長範囲の調整は可能となる。しかしヒータの場合は、それを駆動するための配線・電源などが必要となり、小型・低コストを満足する光送信モジュールを提供することは難しくなる。本願発明は、単なるセラミック基板などを採用するだけで半導体レーザの波長を個別に調整することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る光送信モジュール30の一部分を示す模式図である。
図6に示す光送信モジュール30の一部分は、
図4に示す第1の実施形態に係る光送信モジュール30の一部分に対応している。当該実施形態に係る光送信モジュール30は、サブマウント104の載置面に配置される複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200と複数(ここでは、4個)の子基板210(熱抵抗体)の構成が、第1の実施形態と異なっているが、それ以外については同じ構造を有している。当該実施形態に係るサブマウント104に搭載される4個の半導体レーザ素子200は、第1半導体レーザ素子200A、第2半導体レーザ素子200B、第3半導体レーザ素子200C、及び第4半導体レーザ素子200Dであり、各半導体レーザ素子200とサブマウント104との間に、それぞれ子基板210が配置される。すなわち、サブマウント104と4個の半導体レーザ素子200との間に、第1子基板210A、第2子基板210B、第3子基板210C、及び第4子基板210Dがそれぞれ配置される。ここでは、複数(ここでは、4個)の子基板210はすべて、実質的に同じ寸法をしている。材質については、第1子基板210A及び第3子基板210Cが共通しており、第2子基板210B及び第4個基板210Dが共通している。
【0055】
第2半導体レーザ素子200Bは、第1半導体レーザ素子200Aと異なる半導体レーザ素子であり、光送信モジュール30が駆動されるときに、第1半導体レーザ素子200Aが出射する光の出力波長と異なる波長の光を出射することが望まれている。第2半導体レーザ素子200Bが出射する光の基準温度における出力波長は、第1半導体レーザ素子200Aと同様に、対応する基準の波長範囲内に収まっておらず、波長範囲より短くなっている。第2子基板210Bは、ペルチェ110が駆動されるときに第2半導体レーザ素子200Bにサブマウント104の載置面との温度差を発生させるための熱抵抗体(第2熱抵抗体)である。当該実施形態において、第3半導体レーザ素子200C及び第4半導体レーザ素子200Dについても第2半導体レーザ素子200Bと同様であり、第3子基板210C及び第4子基板210Dについても第2子基板210Bと同様である。
【0056】
4個の半導体レーザ素子200は、ペルチェ110が駆動されるときに、対応する子基板210により、サブマウント104が維持される駆動温度より高い温度でそれぞれ維持される。各子基板210を適当な材質や寸法を選択して形成することにより、各半導体レーザ素子200が出射する光の出力波長を、駆動温度における出力波長より予め定められた波長にそれぞれ近づけることができる。第2半導体レーザ素子200Bの駆動温度における出力波長は第2波長である。さらに望ましくは、各半導体レーザ素子200が出力する光の出力波長を、それぞれ予め定められた波長とすることができる。
【0057】
複数の子基板210それぞれの材料や寸法は、対応する半導体レーザ素子200の特性に応じて選択されればよいが、複数(ここでは、4個)の半導体レーザ素子200のうち、少なくとも2個の半導体レーザ素子200の下側に配置される2個の子基板210は、異なる材質又は/及び寸法であるのが望ましい。複数(ここでは、4個)の子基板210の材質及び寸法がすべて等しければ、複数の子基板210を配置する意義が低下し、複数の子基板210を配置する代わりに、ペルチェ110により、サブマウント104をより高い温度に維持すればよい。
【0058】
当該実施形態に係るサブマウント104に搭載される4個の半導体レーザ素子200すべておいて、サブマウント104との間にそれぞれ、4個の子基板210が配置される。ここで、4個の子基板210は共通する寸法で作製される。少なくとも、4個の子基板210すべての厚みが実質的に等しいのが望ましい。光送信モジュール30がかかる構成を有することにより、共通する構造で作製される4個の半導体レーザ素子200それぞれにおける光の出射箇所(発光中心点)の高さが実質的に等しくなる。当該実施形態に係る光送信モジュール30は、4個のコリメータレンズ102を有するマイクロレンズアレイを用いることができるなど、複数のレンズによる光軸調整が容易になる。
【0059】
当該実施形態では、第1の実施形態と異なり、半導体レーザ素子200の複数の電極と、サブマウント104の載置面に形成される複数の電極パターン116とは、すべて複数(ここでは、4本)のワイヤ115を介して電気的に接続される。第1の実施形態と異なり、子基板210にビアホールを設けないことにより、大きな熱抵抗によるより大きな温度差を実現することができる。半導体レーザ素子200のEA変調部の1対のEA電極は、1対のワイヤ115A,115Bを介して、1対の配線パターン116A,116Bと電気的に接続される。半導体レーザ素子200のDFBレーザ部の1対のレーザ電極は、1対のワイヤ115C,115Dを介して、1対の配線パターン116C,116Dと電気的に接続される。
【0060】
なお、当該実施形態において、4個の半導体レーザ素子200それぞれと、サブマウント104の載置面との間に、4個の子基板210が配置されている。4個の子基板210が配置されていることにより、複数のレンズによる光軸調整が容易になるが、これに限定されることはない。第1の実施形態と異なり、第1半導体レーザ素子200A及び第2半導体レーザ素子200Bに、第1子基板210A及び第2子基板210Bが、それぞれ配置されることにより、2個の半導体レーザ素子200それぞれに応じて2個の子基板210を配置することにより、第1半導体レーザ素子200A及び第2半導体レーザ素子200Bの特性に応じて、光送信モジュール30を構成することができる。
【0061】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態に係る光送信モジュール30の一部分を示す模式図である。
図7に示す光送信モジュール30の一部分は、
図4に示す第1の実施形態に係る光送信モジュール30の一部分に対応している。当該実施形態に係る光送信モジュール30は、サブマウント104を備えておらず、ペルチェ110に複数の半導体レーザ素子200が搭載されており、かかる点が第1の実施形態と異なっているが、それ以外については同じ構造をしている。
【0062】
図7に示す通り、当該実施形態に係る光送信モジュール30は、サブマウント104を備えておらず、ペルチェ110に複数の半導体レーザ素子200が搭載される。ペルチェ104は載置面を有しており、第1半導体レーザ素子200Aとペルチェ110との間に、第1子基板210Aが配置される。複数の半導体レーザ素子200のうち、第1半導体レーザ素子200A以外の3個の半導体レーザ素子200は、第2半導体レーザ素子200Bであり、3個の第2半導体レーザ素子200Bは、ペルチェ110に直接搭載される。
【0063】
なお、当該実施形態に係るペルチェ110の載置面に、複数の半導体レーザ素子200と電気的に接続させるために複数の配線パターン116が形成される。第1半導体レーザ素子200Aと接続される配線パターン116は、サブマウント104の載置面に形成される第2の実施形態に係る複数の配線パターン116(
図6参照)と同様であり、3個の第2半導体レーザ素子200Bそれぞれと接続される配線パターン116は、サブマウント104の載置面に形成される第1の実施形態に係る複数の配線パターン116(
図4参照)と同様である。
【0064】
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態に係る光送信モジュール30の一部分を示す模式図である。
図8に示す光送信モジュール30の一部分は、
図6に示す第2の実施形態に係る光送信モジュール30の一部分に対応している。当該実施形態に係る光送信モジュール30は、複数の半導体レーザ素子200それぞれにする複数のサブマウント104をそれぞれ備えている。ここで、第1半導体レーザ素子200Aとペルチェ110との間に配置される第1サブマウント104Aが、第1熱抵抗体であり、第2半導体レーザ素子200Bとペルチェ110との間に配置される第2サブマウント104Bが、第2熱抵抗体である。第3サブマウント104C及び第4サブマウント104Dについても同様である。
【0065】
なお、当該実施形態に係る複数のサブマウント104の載置面に、複数の半導体レーザ素子200と電気的に接続させるために複数の配線パターン116が形成されるが、複数の配線パターン116それぞれは、サブマウント104の載置面に形成される第1の実施形態に係る複数の配線パターン116(
図4参照)と同様である。
【0066】
以上、本発明の実施形態に係るサブマウント、光送信モジュール、及び光モジュール、並びに、それらの制御方法について説明した。上記実施形態では、半導体光素子は、半導体レーザ素子としたが、これに限定されることなく、PD(Photo Diode)素子など他の半導体光素子にも広く適用することができる。また、上記実施形態では、半導体レーザ素子は、EA-DFBレーザとしたが、これに限定されることはなく、CW光源、直接変調型半導体レーザ素子など、他の半導体レーザ素子にも広く適用することができる。また、上記実施形態に係る光送信モジュールは、CFP4系の4個の半導体レーザ素子を備えていたが、これに限定されることはなく、光送信モジュールは、例えば、8個の半導体レーザ素子を備えていてもよい。上記実施形態では、1の温度調整手段を、1のペルチェとしたが、これに限定されることはなく、他の温度調整機構であってもよい。本発明は、本発明の効果を奏する光送信モジュールに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 光伝送装置、2 光モジュール、3,3A,3B 光ファイバ、11,21 プリント回路基板、12 IC,22A,22B フレキシブル基板、23A 光受信モジュール、23B,30 光送信モジュール、101 パッケージ、102 コリメートレンズ、103 ビームスプリッタ、104 サブマウント、104A 第1サブマウント、104B 第2サブマウント、104C 第3サブマウント、104D 第4サブマウント、105A,105B 配線、106 フィードスルー、107 光合波器、108 集光レンズ、109 レセプタクル端子、110 ペルチェ、115、115A、115B、115C、115D ワイヤ、200 半導体レーザ素子、200A 第1半導体レーザ素子、200B 第2半導体レーザ素子、200C 第3半導体レーザ素子、200D 第4半導体レーザ素子、210 子基板、210A 第1子基板、210B 第2子基板、210C 第3子基板、210D 第4子基板、300 受光素子。