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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】車両のパワーユニットのカプセル装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/00 20060101AFI20220210BHJP
   B60K 11/08 20060101ALI20220210BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220210BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B60K5/00 E ZHV
B60K11/08
B60K13/04 Z
F02B77/13 B
F02B77/13 N
F02B77/13 U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017189314
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019064342
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝人
(72)【発明者】
【氏名】角田 隆
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013638(JP,A)
【文献】特表2017-514744(JP,A)
【文献】特開2000-263511(JP,A)
【文献】特開2015-074439(JP,A)
【文献】特開2019-038275(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03815394(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12,
7/00- 8/00,
11/00-16/00
F02B 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の房室に設けられて混合気をエンジン本体で燃焼させるパワーユニットを有する車両についての、少なくとも前記エンジン本体の周囲を囲うカプセル構造と、
前記カプセル構造に設けられ、前記カプセル構造の内外を開閉可能に連通する開閉機構と、
を有し、
前記カプセル構造は、少なくとも、前記開閉機構が取り付けられる前カバー部と、前記前カバー部以外の箱カバー部とに分割して構成され、
前記箱カバー部は、前記エンジン本体とともに前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、
前記前カバー部は、前記エンジン本体とは別の位置で前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、前記箱カバー部と別に前記車両により支持され、
前記前カバー部は、略直方体形状の被覆ケース部材による前記カプセル構造についての前面部分であり、
前記箱カバー部は、前記エンジン本体、前記エンジン本体を前記車両に取り付けるマウント部材、前記車両において前記エンジン本体の下側に位置する骨格部材または構造部材に取り付けて支持され、
前記前カバー部は、前記車両において前記エンジン本体の前側に位置する骨格部材または構造部材に取り付けて支持され、
前記開閉機構が取り付けられて略直方体形状の前記被覆ケース部材の前面部分に対応する前記前カバー部は、周縁に沿って全周に形成されるリブ部、を有し、
前記リブ部は、前面が開口した略直方体形状の前記箱カバー部の前縁と近接し、
略直方体形状の前記被覆ケース部材についての前記前面部分以外の部分に、前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分を形成する、
車両のパワーユニットのカプセル装置。
【請求項2】
車両の房室に設けられて混合気をエンジン本体で燃焼させるパワーユニットを有する車両についての、少なくとも前記エンジン本体の周囲を囲うカプセル構造と、
前記カプセル構造に設けられ、前記カプセル構造の内外を開閉可能に連通する開閉機構と、
を有し、
前記カプセル構造は、少なくとも、前記開閉機構が取り付けられる前カバー部と、前記前カバー部以外の箱カバー部とに分割して構成され、
前記箱カバー部は、前記エンジン本体とともに前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、
前記前カバー部は、前記エンジン本体とは別の位置で前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、前記箱カバー部と別に前記車両により支持され、
前記車両により別々に支持されている前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分は、互いに離間し、相対的な動きを許容するように隙間を塞ぐシール構造、吸音構造、または断熱構造が設けられる
両のパワーユニットのカプセル装置。
【請求項3】
車両の房室に設けられて混合気をエンジン本体で燃焼させるパワーユニットを有する車両についての、少なくとも前記エンジン本体の周囲を囲うカプセル構造と、
前記カプセル構造に設けられ、前記カプセル構造の内外を開閉可能に連通する開閉機構と、
を有し、
前記カプセル構造は、少なくとも、前記開閉機構が取り付けられる前カバー部と、前記前カバー部以外の箱カバー部とに分割して構成され、
前記箱カバー部は、前記エンジン本体とともに前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、
前記前カバー部は、前記エンジン本体とは別の位置で前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、前記箱カバー部と別に前記車両により支持され、
前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分には、圧縮された弾性部材、隙間より長い可撓材、またはジャバラ構造を有するシール部材が設けられる
両のパワーユニットのカプセル装置。
【請求項4】
車両の房室に設けられて混合気をエンジン本体で燃焼させるパワーユニットを有する車両についての、少なくとも前記エンジン本体の周囲を囲うカプセル構造と、
前記カプセル構造に設けられ、前記カプセル構造の内外を開閉可能に連通する開閉機構と、
を有し、
前記カプセル構造は、少なくとも、前記開閉機構が取り付けられる前カバー部と、前記前カバー部以外の箱カバー部とに分割して構成され、
前記箱カバー部は、前記エンジン本体とともに前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、
前記前カバー部は、前記エンジン本体とは別の位置で前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、前記箱カバー部と別に前記車両により支持され、
前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分の端末には、隙間が変動しても互いに接触し難いラビリンス構造に形成される
両のパワーユニットのカプセル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車といった車両のエンジン本体といったパワーユニットを囲うカプセル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、近年、パワーユニットとしてバッテリおよびモータを使用する電気自動車の開発が進められている。しかしながら、電気自動車の本格的な実用化には今後の開発に委ねられている状況にある。
このため、現在および少なくとも近い未来においては、ハイブリッド自動車を含めて、混合気をエンジン本体で燃焼させる内燃機関の利用がなくなるとは考えにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-119384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、エンジン本体をカプセル構造で覆っている。これにより、エンジン本体の動作音が外へ漏れ出にくくなる。
しかしながら、特許文献1では、車両走行中には、カプセル構造の前面流入口を開放状態に制御している。エンジン本体の音は、解放された前面流入口から、車両の前へ出力されてしまう。
このため、カプセル構造に設ける前面流入口などの開口部として、開閉可能な開閉機構を設けることが考えられる。
しかしながら、このような開閉機構は、通常はカプセル構造に取り付けられるものであり、エンジン本体の振動がカプセル構造を通じて伝達されることにより、開閉機構が振動し、開閉機構自体から音が発せられてしまう可能性がある。
【0005】
このように自動車といった車両では、車両の外へ音が出力され難くすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両のパワーユニットのカプセル装置は、車両の房室に設けられて混合気をエンジン本体で燃焼させるパワーユニットを有する車両についての、少なくとも前記エンジン本体の周囲を囲うカプセル構造と、前記カプセル構造に設けられ、前記カプセル構造の内外を開閉可能に連通する開閉機構と、を有し、前記カプセル構造は、少なくとも、前記開閉機構が取り付けられる前カバー部と、前記前カバー部以外の箱カバー部とに分割して構成され、前記箱カバー部は、前記エンジン本体とともに前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、前記前カバー部は、前記エンジン本体とは別の位置で前記車両の骨格部材または構造部材に取り付けられ、前記箱カバー部と別に前記車両により支持される。
【0007】
好適には、前記前カバー部は、略直方体形状の被覆ケース部材による前記カプセル構造についての前面部分であり、前記箱カバー部は、前記エンジン本体、前記エンジン本体を前記車体に取り付けるマウント部材、前記車両において前記エンジン本体の下側に位置する骨格部材または構造部材に取り付けて支持され、前記前カバー部は、前記車両において前記エンジン本体の前側に位置する骨格部材または構造部材に取り付けて支持される、とよい。
【0008】
好適には、前記開閉機構が取り付けられて略直方体形状の前記被覆ケース部材の前面部分に対応する前記前カバー部は、周縁に沿って全周に形成されるリブ部、を有し、前記リブ部は、前面が開口した略直方体形状の前記箱カバー部の前縁と近接し、略直方体形状の前記被覆ケース部材についての前記前面部分以外の部分に、前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分を形成する、とよい。
【0009】
好適には、前記車両により別々に支持されている前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分は、互いに離間し、相対的な動きを許容するように隙間を塞ぐシール構造、吸音構造、または断熱構造が設けられる、とよい。
【0010】
好適には、前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分には、圧縮された弾性部材、隙間より長い可撓材、またはジャバラ構造を有するシール部材が設けられる、とよい。
【0011】
好適には、前記前カバー部と前記箱カバー部との合わせ部分の端末には、隙間が変動しても互いに接触し難いラビリンス構造に形成される、とよい。
【0012】
好適には、前記カプセル構造は、前記車両の骨格部材または構造部材より内側に位置するように設けられる、とよい。
【0013】
好適には、前記カプセル構造は、前記車両において、少なくとも前記エンジン本体を含む、オイルにより潤滑される機器を囲う、とよい。
【0014】
好適には、前記カプセル構造は、前記車両に設けられる前記エンジン本体、エンジン補器、トランスミッション、およびハイブリッド機器の中の、少なくとも前記エンジン本体を囲う、とよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、車両の房室に設けられて混合気をエンジン本体で燃焼させるパワーユニットを有する車両についての、少なくともエンジン本体の周囲を、カプセル構造により囲う。よって、カプセル構造の内側のエンジン本体などからの音が、直接的に車両の外へ漏れださないようにできる。また、エンジン本体などを保温することができる。
しかも、カプセル構造に設けられた開閉機構を開いて、カプセル構造の内外を連通することにより、エンジン本体などの熱を外気で冷やすことができる。
また、カプセル構造は、少なくとも、開閉機構が取り付けられる前カバー部と、前カバー部以外の箱カバー部とに分割して構成される。箱カバー部は、エンジン本体とともに車両の骨格部材または構造部材に取り付けられる。前カバー部は、エンジン本体とは別の位置で車両の骨格部材または構造部材に取り付けられる。このように開閉機構が取り付けられる前カバー部を、箱カバー部と分離して別に車両に取り付けて支持させることにより、エンジン本体などの振動がカプセル構造を通じて直接的に開閉機構へ伝わらないようにできる。開閉可能な開閉機構が振動により音を発することが起き難くなる。
このように本発明では、カプセル構造に収容されるエンジン本体などの音が外へ漏れ出にくくし、しかも、カプセル装置自体から音を発しないようにできる。その結果、車両の外へ音が出力され難くなる。また、振動が作用し難くなるため、開閉機構の耐久性も改善され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車の説明図である。
図2図2は、図1の自動車に設けられるパワーユニットおよびカプセル装置の説明図である。
図3図3は、図2のカプセル装置の詳細な構成の説明図である。
図4図4は、図3の被覆ケース部材の前カバー部と箱カバー部との合わせ部分の構造の説明図である。
図5図5は、図2のパワーユニットおよびカプセル装置の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の説明図である。
自動車1は、車両の一例である。図1(A)は、模式的な自動車1の側面透視図である。図1(B)は、模式的な自動車1の前面透視図である。
【0019】
図1の自動車1は、車体2を有する。車体2の前部には、前室3が設けられる。前室3には、自動車1の骨格部材としての一対のフロントビーム5が延在する。また、前室3と乗員室4との間には、それらの隔壁(構造部材)としてのトーボード6が設けられる。
前室3には、エンジン本体11、トランスミッション12などのパワーユニットが配置される前室3が設けられる。また、車体2の床下には、前室3から車体2の後側へ向かってプロペラシャフト13が設置される。プロペラシャフト13の後端には、後側の車軸や車輪15と連結されるリアディファレンシャルギアボックス14が設けられる。
エンジン本体11は、エアクリーナ16および吸気管17を通じて吸気される外気とガソリンとの混合気を燃焼室において点火燃焼させ、燃焼した混合気の膨張圧力によりピストンをシリンダ内で降下させ、ピストンに連結された出力軸を回転させる。また、燃焼した混合気は、開いた排気弁および排気管18を通じて外へ排気される。
エンジン本体11で発生させた出力軸の回転駆動力は、トランスミッション12で減速され、プロペラシャフト13、リアディファレンシャルギアボックス14、およびリアアクスルシャフトを通じて後側の車輪15へ伝達される。また、回転駆動力の一部は、トランスミッション12で分岐され、図示外のフロントアクスルシャフトを通じて前側の車輪15へ伝達される。
【0020】
ところで、自動車1では、近年、パワーユニットとしてバッテリおよびモータを使用する電気自動車の開発が進められおり、これと内燃機関とを比較した場合、内燃機関から発生される動作音などが歩行者などにより大きいと感じるようになってきている。
特に、内燃機関では、エンジン本体11などにおいて動作音が発生する。
このように自動車1では、外へ音が出力され難くすることが求められている。
【0021】
図2は、図1の自動車1に設けられるパワーユニットおよびカプセル装置30の説明図である。
【0022】
図2には、自動車1に設けられるパワーユニットとして、エンジン本体11、オイルパン19、ラジエタ20、エアクリーナ16、吸気管17、排気管18、ターボ機器21、触媒機器22、トランスミッション12、プロペラシャフト13、リアディファレンシャルギアボックス14、が図示されている。
オイルパン19は、エンジン本体11の下部に、エンジン本体11と一体的に形成されている。エンジン本体11およびトランスミッション12は、オイルにより潤滑される機器である。
ラジエタ20、エアクリーナ16、吸気管17、排気管18、ターボ機器21、触媒機器22は、エンジン本体11とともに用いられるエンジン補器である。エンジン補器には、特に図示をしないがこの他にもたとえば、発電機、バッテリ、ディストリビュータ、インジェクタ、燃料タンク、ポンプ、などがある。これらのエンジン補器は、エンジン本体11の作動を助け、エンジン本体11の状態および燃焼状態を燃焼に適した範囲内とするために、エンジン本体11とともに用いられるものである。
【0023】
図2には、さらにエンジン本体11といったパワーユニットを囲うカプセル装置30が図示されている。
カプセル装置30は、被覆ケース部材31、上開閉機構32、下開閉機構35、制御部39、を有する。
図3は、図2のカプセル装置30の詳細な構成の説明図である。
【0024】
被覆ケース部材31は、略立方体の箱形状を有し、パワーユニットについてのオイルパン19が一体化されたエンジン本体11およびトランスミッション12を囲う。被覆ケース部材31は、たとえば断熱材で形成される。被覆ケース部材31は、エンジン本体11およびトランスミッション12より一回り大きいサイズの箱型に形成される。被覆ケース部材31から外へ突出するプロペラシャフト13、吸気管17、排気管18の周囲には、被覆ケース部材31の密閉性を確保するために、たとえばゴム材や樹脂材で形成された図示外のブーツが設けられる。
これにより、被覆ケース部材31は、エンジン本体11およびトランスミッション12との間に空気層を確保しつつ、これらの周囲を密閉するように囲う。エンジン本体11に設けられるインジェクタ、オイルパン19も、被覆ケース部材31に囲われる。
また、排気管18の略全体、吸気管17の略全体、ターボ機器21は、被覆ケース部材31に収められる。その一方で、触媒機器22、エアクリーナ16は、被覆ケース部材31の外に設けられる。
なお、発電機、バッテリ、ディストリビュータ、燃料タンク、ポンプなどのエンジン補器は、被覆ケース部材31の内側に設けられても、外側に設けられてもよい。
そして、被覆ケース部材31は、図1に示すように前室3において、エンジン本体11と重ねて、エンジン本体11と同じ位置で、車体2の一対のフロントビーム5の上に取り付けて支持される。被覆ケース部材31は、図1(B)に示すように一対のフロントビーム5から下へ突出することがないように設けられる。車体2の最低地上高は、被覆ケース部材31が無い場合と同じになる。
【0025】
また、密閉可能な略箱形状の被覆ケース部材31は、その前部を構成する前カバー部41と、残部を構成する箱カバー部44と、を有する。
【0026】
箱カバー部44は、被覆ケース部材31の上面、下面、左右両側面、および後面に対応する箱形状に形成される。
そして、箱カバー部44は、エンジン本体11と重ねて、エンジン本体11と同じ位置で、前記自動車1のフロントビーム5に取り付けられる。
なお、箱カバー部44は、エンジン本体11そのものに取り付けられても、エンジン本体11の下側に取り付けられるクロスメンバに取り付けられても、エンジン本体11をフロントビーム5などに取り付けるマウント部材に取り付けられてもよい。
【0027】
前カバー部41は、被覆ケース部材31の前面に対応する前面部42と、前面部42の周縁に沿って全周に形成されるリブ部43、を有する。
そして、前カバー部41は、フロントビーム5の前端に取り付けられるラジエタフレーム25に取り付けられる。前カバー部41は、エンジン本体11の取付部位から離れた別の位置で、自動車1の別の骨格部材に取り付けられ、箱カバー部44と別に離間した状態で自動車1により支持される。
また、図3に示すように、前カバー部41のリブ部43は、その全周において箱カバー部44の前端縁と重なる。
図1に示すように、被覆ケース部材31は、車体2の一対のフロントビーム5から下へ突出しないように内側に収めて設けられる。
【0028】
上開閉機構32、および下開閉機構35は、前カバー部41に設けられ、外気を被覆ケース部材31の内側へ取り込むために開閉可能に設けられる。
上開閉機構32は、上開口部33と、上開閉部材34と、を有する。上開閉機構32は、車体2の前面のフロントグリル28と同じ高さ位置において、前カバー部41に取り付けて一体的に設けられる。上開閉部材34が可動することにより上開口部33が開き、被覆ケース部材31の内外が連通する。
下開閉機構35は、下開口部36と、下開閉部材37と、を有する。下開閉機構35は、車体2の前面のバンパの開口部29と同じ高さ位置において、前カバー部41に取り付けて一体的に設けられる。下開閉部材37が可動することにより下開口部36が開き、被覆ケース部材31の内外が連通する。
【0029】
制御部39には、上開閉部材34、下開閉部材37が接続される。制御部39は、自動車1の状態に応じて、上開閉部材34および下開閉部材37の開閉を制御する。
制御部39は、たとえばマイクロコンピュータにより実現できる。専用回路として被覆ケース部材31に取り付けて設けられても、自動車1を制御するECU(Engine Control Unit)の機能として設けられてもよい。
たとえば、エンジン本体11が停止している場合、制御部39は、上開閉部材34および下開閉部材37を閉じる。これにより、被覆ケース部材31は密閉され、エンジン本体11などは保温される。
この他にもたとえば、エンジン本体11の暖気が終わると、制御部39は、下開閉部材37を閉じたまま上開閉部材34を開く。これにより、被覆ケース部材31の内部へ外気を取り込み、エンジン本体11などを冷却できる。
また、登坂やトーイングなどによりエンジン本体11の負荷が上昇すると、制御部39は、負荷が上昇している期間において上開閉部材34を閉じて下開閉部材37を開く。これにより、エンジン本体11の下側に配置される排気管18やオイルパン19を直接的に冷却することができる。
【0030】
図4は、図3の被覆ケース部材31の前カバー部41と箱カバー部44との合わせ部分の構造の説明図である。
【0031】
図4(A)では、前カバー部41のリブ部43と、箱カバー部44の前縁部とは、端末がともに屈曲されて重ねられている。これにより、前カバー部41のリブ部43と箱カバー部44の前縁部との合わせ部分に、ラビリンス構造が形成される。
また、リブ部43と前縁部とは、エンジン本体11などの振動により箱カバー部44が振動したとしてもリブ部43が接触し難い微小間隔をあけている。
【0032】
図4(B)では、前カバー部41のリブ部43と、箱カバー部44の前縁部とは、端末がともに屈曲されて重ねられている。これにより、前カバー部41のリブ部43と箱カバー部44の前縁部との合わせ部分に、ラビリンス構造が形成される。
リブ部43と前縁部と箱カバー部44の前縁部との間には、弾性部材51が圧縮された状態で挟まれている。弾性部材51は、たとえばゴム材、ウレタンなどの樹脂材、不織布などにより形成されている。リブ部43と前縁部との合わせ部分は、全周にわたって形成されているので、弾性部材51はたとえばリング形状に形成されていてよい。
【0033】
図4(C)では、前カバー部41のリブ部43と、箱カバー部44の前縁部とは、端末がともに屈曲されて重ねられている。これにより、前カバー部41のリブ部43と箱カバー部44の前縁部との合わせ部分に、ラビリンス構造が形成される。
前カバー部41のリブ部43と箱カバー部44との間には、これらの隙間より前後方向へ長い可撓材52が貼り渡されている。可撓材52は、ビニールなどの樹脂材または不織布などで形成されてよい。可撓材52は、たとえばリング形状に形成されていてよい。
【0034】
図4(D)では、前カバー部41のリブ部43と、箱カバー部44の前縁部とは、端末がともに屈曲されて重ねられている。これにより、前カバー部41のリブ部43と箱カバー部44の前縁部との合わせ部分に、ラビリンス構造が形成される。
前カバー部41のリブ部43と箱カバー部44との間には、蛇腹状に折り曲げられたシール部材53が貼り渡されている。シール部材53は、ビニールなどの樹脂材または不織布などで形成されてよい。シール部材53は、たとえばリング形状に形成されていてよい。
【0035】
これらの構成では、被覆ケース部材31の前カバー部41と箱カバー部44との合わせ部分は、互いに離間し、相対的な動きを許容するように隙間を塞いでいる。よって、これらの接触音が発生し難い。
また、リブ部43と箱カバー部44の前縁部との合わせ部分は、略直方体形状の被覆ケース部材31の前面部42ではなく、その後側の側面部分に形成される。よって、合わせ部分から仮に音が漏れ出たとしても、それが自動車1の前などへダイレクトに出力されてしまうことはない。
そして、図4(A)では、ラビリンス構造により、一定の吸音効果を期待できる。
また、図4(B)から図4(D)では、シール構造により、吸音効果および断熱効果を期待できる。
【0036】
以上のように、本実施形態では、自動車1の前室3に設けられて混合気をエンジン本体11で燃焼させるパワーユニットを有する自動車1についての、少なくともエンジン本体11の周囲を、断熱構造の被覆ケース部材31により、空気層を挟むように間隔をあけて密閉するように囲う。よって、被覆ケース部材31の内側のエンジン本体11などからの音が、直接的に自動車1の外へ漏れださないようにできる。また、エンジン本体11などを保温することができる。
しかも、密閉可能な被覆ケース部材31に一体的に設けられた上開閉部材34や下開閉部材37を開いて、前記被覆ケース部材31の内外を連通することにより、エンジン本体11などの熱を外気で冷やすことができる。
また、密閉可能な前記被覆ケース部材31は、少なくとも、上開閉部材34および下開閉部材37が取り付けられる前カバー部41と、前カバー部41以外の箱カバー部44とに分割して構成される。箱カバー部44は、エンジン本体11と重ねて、エンジン本体11と同じ位置で、自動車1の骨格部材または構造部材に取り付けられる。前カバー部41は、エンジン本体11の取付部位から離れた別の位置で自動車1の別の骨格部材または構造部材に取り付けられる。このように開閉機構が取り付けられる前カバー部41を、箱カバー部44と分離して別に離間した状態に自動車1に取り付けて支持させることにより、エンジン本体11などの振動が被覆ケース部材31を通じて直接的に開閉機構へ伝わらないようにできる。開閉可能な上開閉部材34、下開閉部材37が振動により音を発することが起き難くなる。
このように本発明では、被覆ケース部材31に収容されるエンジン本体11などの音が外へ漏れ出にくくし、しかも、カプセル装置30自体から音を発しないようにできる。その結果、音が自動車1の外へ漏れ出にくくなる。また、振動が作用し難くなるため、上開閉部材34、下開閉部材37の耐久性も改善され得る。
【0037】
本実施形態では、略直方体形状の被覆ケース部材31の前面部分である前カバー部41は、自動車1においてエンジン本体11の前側に位置する骨格部材または構造部材に取り付けて支持される。また、略直方体形状の被覆ケース部材31の箱カバー部44は、前記自動車1において前記エンジン本体11の下側に位置する骨格部材または構造部材に取り付けて支持される。このように開閉機構が取り付けられる前カバー部41を、エンジン本体11や被覆ケース部材31の箱カバー部44とは異なる位置で自動車1の骨格部材または構造部材に取り付けることにより、自動車1の骨格部材または構造部材を通じて前カバー部41、上開閉部材34、および下開閉部材37へ振動が伝達することが起き難くなる。開閉可能な開閉機構が振動により音を発することが起き難くなる。
【0038】
本実施形態では、略直方体形状の被覆ケース部材31の前面部分に対応する前カバー部41は、前カバー部41の周縁に沿って全周に形成されるリブ部43、を有する。そして、このリブ部43が、前面が開口した略直方体形状の箱カバー部44の前縁と近接する。これにより、略直方体形状の被覆ケース部材31についての前面部分以外の部分に、前カバー部41と箱カバー部44との全周の合わせ部分を形成できる。被覆ケース部材31についての前面部分に合わせ部分が形成される場合、その合わせ部分から出力される音が、自動車1の前面から直接的に外へ出力され易い。このような事態を防止して、自動車1の外への音漏れを抑制できる。
【0039】
本実施形態では、前カバー部41と箱カバー部44とは、互いに離間している。よって、箱カバー部44を通じてエンジン本体11の振動などが前カバー部41に伝わらないようにできる。
しかも、前カバー部41と箱カバー部44との合わせ部分には、相対的な動きを許容するように隙間を塞ぐシール構造、吸音構造、または断熱構造が設けられる。よって、前カバー部41と箱カバー部44との合わせ部分に隙間が形成されているにもかかわらず、被覆ケース部材31としての密閉性能、吸音性能、断熱性能を確保することができる。
【0040】
たとえば前カバー部41に対して箱カバー部44が振動している場合でも、変動する隙間を塞ぐことができる。
【0041】
しかも、隙間が変動しても互いに接触し難いラビリンス構造とすることにより、端末部分の接触音などが発生し難い。
しかも、ラビリンス構造により、隙間を通じた音や熱の放出は抑制され得る。吸音性能および断熱性能を得ることができる。
【0042】
本実施形態では、被覆ケース部材31は、自動車1の骨格部材または構造部材より内側に収まるように設けられる。これにより、自動車1の車体2の最低地上高などのスペックに大きな影響を与えることなく、自動車1に被覆ケース部材31を設けることができる。
【0043】
上記実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0044】
たとえば上記実施形態では自動車1は、エンジン本体11による内燃機関のみをパワーユニットを有する。
この他にも自動車1には、内燃機関とともにモータ駆動による電気駆動装置を有するハイブリッド自動車や、電気駆動装置のみを有する電気自動車がある。
図5は、図2のパワーユニットおよびカプセル装置30の変形例の説明図である。
図5には、トランスミッション12に電気モータ61が取り付けられている。電気モータ61には、図示外のコンバータを通じて複数の電池セルが接続される。電気モータ61を駆動することにより、トランスミッション12を通じで駆動力をプロペラシャフト13に伝達させることができる。
このようなパワーユニットの構成である場合、カプセル装置30の被覆ケース部材31は、エンジン本体11、エンジン補器、トランスミッション12とともに、ハイブリッド機器としての電気モータ61やコンバータを囲うように設けられてよい。この場合、電気モータ61やコンバータを、摩擦抵抗などが運転に適した状態になるように暖めることが可能である。また、被覆ケース部材31の内を二室に分けて、一方にエンジン本体11などを収め、他方にハイブリッド機器を収めるようにしてもよい。この場合、部屋ごとに個別の温度に保温させることも可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1…自動車(車両)、2…車体、3…前室、4…乗員室、5…フロントビーム、6…トーボード、11…エンジン本体、12…トランスミッション、13…プロペラシャフト、14…リアディファレンシャルギアボックス、15…車輪、16…エアクリーナ、17…吸気管、18…排気管、19…オイルパン、20…ラジエタ、21…ターボ機器、22…触媒機器、25…ラジエタフレーム、28…フロントグリル、29…開口部、30…カプセル装置、31…被覆ケース部材、32…上開閉機構、33…上開口部、34…上開閉部材、35…下開閉機構、36…下開口部、37…下開閉部材、39…制御部、41…前カバー部、42…前面部、43…リブ部、44…箱カバー部、51…弾性部材、52…可撓材、53…シール部材、61…電気モータ
図1
図2
図3
図4
図5