IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カワムラサイクルの特許一覧

<>
  • 特許-車いす 図1
  • 特許-車いす 図2
  • 特許-車いす 図3
  • 特許-車いす 図4
  • 特許-車いす 図5
  • 特許-車いす 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】車いす
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
A61G5/10 703
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017189958
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019063131
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】598026851
【氏名又は名称】株式会社カワムラサイクル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 広法
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-038578(JP,A)
【文献】特開2014-144213(JP,A)
【文献】特開2005-28095(JP,A)
【文献】米国特許第5758892(US,A)
【文献】米国特許第8998245(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00-14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の側フレームを備えており、
それぞれの側フレームが前後方向に延びるベースパイプと、上記ベースパイプの上方で前後方向に延びるシートサイドパイプと、上記ベースパイプの後部と上記シートサイドパイプの後部とを連結する後輪取付部とを備えており、
上記ベースパイプの前部に対して上記ベースパイプの後部が左右方向において内側に位置しており、
上記ベースパイプの前部に対して上記シートサイドパイプの後部が左右方向において内側に位置しており、
上記後輪取付部が車輪が取り付けられる取付面を備えており、上記取付面が左右方向外向きに面して上下方向に延びており、
座シートが架け渡される一対のシートパイプを備えており、
上記シートサイドパイプの後部に対してそれぞれのシートパイプの後部が左右方向において外側に位置している車いす。
【請求項2】
左右一対の側フレームを備えており、
それぞれの側フレームが前後方向に延びるベースパイプと、上記ベースパイプの上方で前後方向に延びるシートサイドパイプと、上記ベースパイプの後部と上記シートサイドパイプの後部とを連結する後輪取付部とを備えており、
上記ベースパイプの前部に対して上記ベースパイプの後部が左右方向において内側に位置しており、
上記ベースパイプの前部に対して上記シートサイドパイプの後部が左右方向において内側に位置しており、
上記後輪取付部が車輪が取り付けられる取付面を備えており、上記取付面が左右方向外向きに面して上下方向に延びており、
上記ベースパイプの後部と上記シートサイドパイプの後部とが、左右方向において、同じ位置に配置されており、
上記後輪取付部が上記ベースパイプから上記シートサイドパイプまで延びており、
上記後輪取付面は上記後輪取付部の下端から上端まで延びている、車いす。
【請求項3】
上記シートパイプを支持する後座受具を備えており、
上記後座受具が上記シートサイドパイプの後部に取り付けられる後取付部と、上記シートパイプの後部を受ける後受部とを備えており、
上記後受部が、左右方向において上記後取付部の外側に位置している請求項1に記載の車いす。
【請求項4】
上記シートサイドパイプの前部に対して上記シートサイドパイプの後部が左右方向において内側に位置している請求項1から3のいずれかに記載の車いす。
【請求項5】
上記ベースパイプの後部と上記シートサイドパイプの後部とが、左右方向において、同じ位置に配置されている請求項1から4のいずれかに記載の車いす。
【請求項6】
上記取付面が上下方向において上記ベースパイプの位置から上記シートサイドパイプの位置まで延びている請求項1から5のいずれかに記載の車いす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-144213号公報には、その全幅を小さくした車いすが開示されている。この車いすでは、側フレームは、座シートに沿って前後方向に延びるシートサイドパイプと、シートサイドパイプの下方で前後方向に延びるベースパイプと、後輪取付部とを備えている。このベースパイプは、前後方向に延びる前部と、前後方向に延びる後部と、前部と後部との間で屈曲する中間部とからなっている。この中間部を備えることで、後部は前部に対して左右方向内側に位置している。
【0003】
後輪取付部は、ベースパイプの後部から上方に延びる下方部と、この下方部の上端からシートサイドパイプの後部まで延びる上方部とを備えている。この下方部は、ベースパイプの後部と同様に左右方向内側に位置している。上方部は、この下方部と下方部より左右方向外側に位置するシートサイドパイプとの間で、下方から上方に向かって内側から外向きに傾斜して延びている。この後輪取付部の下方部に、車いすの後輪が取り付けられる。この後輪は、後輪取付部の下方部が内側に位置する分だけ、内側に取り付けられている。これにより、この車いすの全幅は、従来の車いすより小さい。
【0004】
全幅が小さい車いすは、幅狭な廊下でも円滑に走行できる。この車いすは、従来の車いすより小回りがきく。一方で、座シートの左右幅は従来の車いすと同じにされている。この車いすは、着座する使用者の乗り心地を損なわない。この車いすは全幅を小さくしつつも、使用者の乗り降りを補助する介助者の動作を阻害しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-144213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車いすでは、後輪取付部に、後輪が取り付けられる。この後輪の取付高さを変更することで、座シートの高さを変更しうる。しかし、特許文献1の車いすでは、後輪取付部の上方部は、下方部の上端からシートサイドパイプまで傾斜して延びている。この車いすでは、後輪取付部のうち、上下方向の延びる下方部に後輪が取り付けられる。傾斜して延びる上方部に後輪はそのまま取り付けられない。この車いすは、後輪の取り付け高さが制限されている。
【0007】
本発明の目的は、後輪の取り付け高さを制約することなく、全幅が小さくされた車いすの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車いすは、左右一対の側フレームを備えている。それぞれの側フレームは、前後方向に延びるベースパイプと、上記ベースパイプの上方で前後方向に延びるシートサイドパイプと、上記ベースパイプの後部と上記シートサイドパイプの後部とを連結する後輪取付部とを備えている。上記ベースパイプの前部に対して、上記ベースパイプの後部は左右方向において内側に位置している。上記ベースパイプの前部に対して、上記シートサイドパイプの後部は左右方向において内側に位置している。上記後輪取付部は、車輪が取り付けられる取付面を備えている。上記取付面は、左右方向外向きに面して、上下方向に延びている。
【0009】
好ましくは、この車いすは、座シートが架け渡される一対のシートパイプを備えている。上記シートサイドパイプの後部に対して、それぞれのシートパイプの後部は、左右方向において外側に位置している。
【0010】
好ましくは、この車いすは、上記シートパイプを支持する後座受具を備えている。上記後座受具は、上記シートサイドパイプの後部に取り付けられる後取付部と、上記シートパイプの後部を受ける後受部とを備えている。上記後受部は、左右方向において上記後取付部の外側に位置している。
【0011】
好ましくは、上記シートサイドパイプの前部に対して、上記シートサイドパイプの後部は、左右方向において内側に位置している。
【0012】
好ましくは、上記ベースパイプの後部と上記シートサイドパイプの後部とは、左右方向において、同じ位置に配置されている。
【0013】
好ましくは、上記取付面が上下方向において上記ベースパイプの位置から上記シートサイドパイプの位置まで延びている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車いすは、ベースパイプの後部とシートサイドパイプの後部とを連結する後輪取付部とを備えている。ベースパイプの前部に対して、ベースパイプの後部は左右方向において内側に位置している。後輪取付部は、ベースパイプの後部と共に左右方向内側に位置している。これにより、全幅が小さくされうる。更に、この車いすでは、ベースパイプの前部に対して、シートサイドパイプの後部が左右方向において内側に位置している。後輪取付部は、ベースパイプの後部とシートサイドパイプの後部と間で上下方向へ延びている。この車いすでは、全幅が小さくされても、後輪の取り付け高さを制約することが抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る車いすが示された斜視図である。
図2図2は、図1の車いすの分解図である。
図3図3は、図1の一方の側フレーム、アームサポート及びフットレッグサポートの分解図である。
図4図4(a)は図3のベースパイプの平面図であり、図4(b)はシートサイドパイプの平面図である。
図5図5は後輪と後輪取付部とが示された断面図である。
図6図6(a)前座受具がシートサイドパイプ及びシートパイプの断面と共に示された正面図であり、図6(b)は図3の後座受具がシートサイドパイプ及びシートパイプの断面と共に示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1には、本発明に係る車いす1が示されている。図2には、車いす1の分解図が示されている。この車いす1は、一対の側フレーム2、一対のアームサポート3、クロスフレーム4、一対のフットレッグサポート5、一対の前輪6、一対の後輪7、座シート8、背シート9及びブレーキ装置10を備えている。図1の矢印Xは、車いす1の前後方向前向きを表している。矢印Yは、車いす1の左右方向左向きを表している。矢印Zは、車いす1の上下方向上向きを表している。
【0018】
図3には、右側に位置する、側フレーム2、アームサポート3及びフットレッグサポート5が示されている。この側フレーム2は、ベースパイプ12、シートサイドパイプ13、フロントパイプ14、後輪取付部15、背下パイプ16、背上パイプ17、背折れ連結具18、クロスフレーム取付部19、前座受具20及び後座受具21を備えている。アームサポート3は、アームパイプ22、前アーム支持具23及び後アーム支持具24を備えている。フットレッグサポート5は、サポート本体25、ステップ板26及びステー27を備えている。
【0019】
ベースパイプ12は、側フレーム2の下側に位置して前後方向に延びている。ベースパイプ12は、フロントパイプ14から後輪取付部15まで延びている。ベースパイプ12には、前後一対のクロスフレーム取付部19が取り付けられている。それぞれのクロスフレーム取付部19は、回動軸19aと、ベースパイプ12に固定された一対のステー19bとを備えている。この回動軸19aの軸線は、前後方向に延びている。
【0020】
シートサイドパイプ13は、ベースパイプ12の上方に位置して、前後方向に延びている。シートサイドパイプ13は、フロントパイプ14から後輪取付部15まで延びている。このシートサイドパイプ13に前座受具20が取り付けられる。シートサイドパイプ13に後座受具21が取り付けられる。後座受具21は、前座受具20の後方に位置している。
【0021】
フロントパイプ14は、側フレーム2の前側に位置している。フロントパイプ14は、上下方向に延びている。フロントパイプ14は、ベースパイプ12の前端とシートサイドパイプ13の前端とに連結している。
【0022】
後輪取付部15は、側フレーム2の後側に位置している。後輪取付部15は、上下方向に延びている。後輪取付部15は、ベースパイプ12の後端とシートサイドパイプ13の後端とに連結されている。
【0023】
図2に示される様に、後輪取付部15は、後輪取付面28及び複数の後輪取付孔29を備えている。後輪取付面28は、後輪取付部15の左右方向外向きに面している。後輪取付面28は、左右方向に延びる直線に垂直な平面である。後輪取付面28は後輪取付部15の下端から上端まで上下方向に延びている。この車いす1では、後輪取付面28は、上下方向において、ベースパイプ12より下方の位置からシートサイドパイプ13より上方の位置まで延びている。この後輪取付面28に、複数の後輪取付孔29が形成されている。複数の後輪取付孔29は、上下方向に所定の間隔で形成されている。後輪取付孔29は、後輪取付面28に垂直に形成され、後輪取付部15を貫通している。この車いす1では、上下方向において、最も下に位置する後輪取付孔29の下端は、ベースパイプ12の上端より下方に位置している。上下方向において、最も上に位置する後輪取付孔29の上端は、シートサイドパイプ13の下端より上方に位置している。
【0024】
クロスフレーム4は、一対のシートパイプ30、前クロスメンバー対31、後クロスメンバー対32を備えている。一対のシートパイプ30は、前後方向に延びている。
【0025】
前クロスメンバー対31は、クロスメンバー33とクロスメンバー34とからなっている。クロスメンバー33の上端は、左のシートパイプ30に固定されている。クロスメンバー33の下端部は右のベースパイプ12のクロスフレーム取付部19に軸着される。クロスメンバー34の上端は、右のシートパイプ30に固定されている。クロスメンバー34の下端部は左のベースパイプ12のクロスフレーム取付部19に軸着される。クロスメンバー33の中央部とクロスメンバー34の中央部が軸着されている。クロスメンバー33とクロスメンバー34とは、前後方向を回転軸にして回動可能に連結されている。
【0026】
後クロスメンバー対32は、クロスメンバー35とクロスメンバー36とからなっている。後クロスメンバー対32は、前クロスメンバー対31の後方に位置している。クロスメンバー35及びクロスメンバー36は、前述のクロスメンバー33及びクロスメンバー34と同様にして、シートパイプ30に固定されている。クロスメンバー35とクロスメンバー36とは、クロスメンバー33とクロスメンバー34と同様に、ベースパイプ12に回動可能に連結される。
【0027】
右のシートパイプ30は、右のシートサイドパイプ13に取り付けられた、前座受具20及び後座受具21に着脱可能に支持される。左のシートパイプ30は、左のシートサイドパイプ13に取り付けられた、前座受具20及び後座受具21に着脱可能に支持される。このクロスフレーム4は、一対の側フレーム2を連結する。一対の側フレーム2とクロスフレーム4とは、車いす1の骨格を形成している。
【0028】
このクロスメンバー33とクロスメンバー34とが回動し、クロスメンバー35とクロスメンバー36とが回動して、この車いす1の車幅が変更可能にされている。この車いす1の姿勢は、使用者が着座する使用姿勢と、左右の側フレーム2が互いに近づけられた折り畳み姿勢との間で変更可能にされている。
【0029】
図3に示される様に、背下パイプ16は、後輪取付部15の上端から上方に延びている。背下パイプ16は、シートサイドパイプ13の後端部から上方に延びていてもよい。背上パイプ17は、背下パイプ16の上方に位置している。背上パイプ17の下側部17aは上下方向に延びている。背上パイプ17の上側部17bは、下側部17aの上端から後方に向かって延びている。この背上パイプ17の上側部17bの後端部には、手押しハンドル37が取り付けられて固定されている。このハンドル37は、車いす1の後方に立つ介助者によって握られる。
【0030】
この背下パイプ16と背上パイプ17との間に、背折れ連結具18が位置している。背折れ連結具18は、本体40と、下側連結部41と、上側連結部42とを備えている。下側連結部41は、本体40の下端から下方に延びている。この下側連結部41の形状は円筒状である。上側連結部42は、本体40の上端から上方に延びている。この上側連結部42の形状は円筒状である。この本体40は、上側連結部42を下側連結部41に対して、左右方向を回動軸にして回動可能にしている。
【0031】
背下パイプ16の上端部の形状は、円筒状である。背下パイプ16の上端部には、その長手方向に沿って延び、その上端に開口する空孔を備えている。この上端の開口から空孔に、下側連結部41が挿入される。背下パイプ16と下側連結部41とに、ネジ201が通されてネジ止めされる。更に、2本のセットビス202が、背下パイプ16の上端部にねじ込まれる。このセットビス202が、下側連結部41に押し当てられる。この様にして、背下パイプ16に、背折れ連結具18が取り付けられる。
【0032】
背上パイプ17の下端部の形状は、円筒状である。図示されないが、背上パイプ17は、その長手方向に沿って延び、その下端に開口する空孔を備えている。この下端の開口から空孔に、上側連結部42が挿入される。背上パイプ17と上側連結部42とに、2本のネジ203が通されてネジ止めされる。この様にして、背上パイプ17に、上側連結部42が、取り付けられる。
【0033】
アームサポート3のアームパイプ22は、前後方向に延びる主部22aと上下方向に延びる前端部22bとを備えている。前アーム支持具23は、フロントパイプ14に取り付けられる。後アーム支持具24は、背下パイプ16に取り付けられる。アームパイプ22は、前アーム支持具23及び後アーム支持具24によって、側フレーム2に取り付けられる。側フレーム2に取り付けられたアームパイプ22の主部22aは、シートサイドパイプ13の上方に位置して、前後方向へ延びている。
【0034】
前アーム支持具23は、フロントパイプ14に、ネジ204で着脱可能に取り付けられる。アームパイプ22の前端部22bは、前アーム支持具23の有底の挿入孔23aに挿入される。前アーム支持具23には、セットビス205がねじ込まれる。このセットビス205が前端部22bに押し当てられて、先端部22bは挿入孔23aから抜け止めされる。この様にして、アームパイプ22の前端部22bは、フロントパイプ14に着脱可能に取り付けられる。アームパイプ22の前端部22bは、シートサイドパイプ13に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0035】
後アーム支持具24は、背下パイプ16に、背折れ連結具18の下側連結部41と共に、ネジ201で着脱可能に取り付けられる。アームパイプ22の主部22aは、後アーム支持具24に、ネジ206で着脱可能に取り付けられる。このアームサポート3は、側フレーム2に着脱可能に固定される。図示されないが、これら取付部分を覆う樹脂製や金属製のカバーが取り付けられてもよい。
【0036】
この車いす1では、フットレッグサポート5のサポート本体25は、シートサイドパイプ13と一体に形成されている。このサポート本体25は、シートサイドパイプ13の前端から前方に延びる後部25aと、この後部25aから前方に向かって上方から下方に傾斜して延びる主部25bとを備えている。この主部25bの下端には、ステップ板26が取り付けられている。このステップ板26には、車いす1に着座する使用者の足が載せられる。ステー27は、ベースパイプ12と一体に形成されている。ステー27は、ベースパイプ12の前端から延びて、サポート本体25の主部25bに連結されている。このステー27は、サポート本体25を固定する。ステー27は、サポート本体25の主部25bとフロントパイプ14とを連結してもよい。
【0037】
図2に示される様に、それぞれの前輪6は、キャスター45及びキャスター支持具46を備えている。キャスター45は、本体47と車輪48を備えている。キャスター支持具46は、フロントパイプ14に固定されている。本体47は、キャスター支持具46に上下方向を回転軸にして回転可能に支持される。車輪48は、本体47に車輪48の中心軸を回転軸にして回転可能に支持される。
【0038】
座シート8は、座布52及び座クッション53を備えている。座布52は、一対のシートパイプ30に架け渡される。この座布52の左右方向端部が、例えば、シートパイプ30にネジ止めされる。この座クッション53は、座布52に着脱可能に取り付けられる。例えば、面ファスナーによって、座布52に座クッション53が取り付けられる。
【0039】
背シート9は、背布54、背下クッション55及び背上クッション56を備えている。
背布54は、一対の背下取付部57と一対の背上取付部58とを備えている。一対の背下取付部57は、一対の背下パイプ16に架け渡される。例えば、背下取付部57が背下パイプ16の周りで折り返されて、面ファスナーで接着されて取り付けられる。一対の背上取付部58は、背下取付部57と同様に、一対の背上パイプ17に架け渡されて、取り付けられる。背下クッション55及び背上クッション56は、背布54に着脱可能に取り付けられる。例えば、面ファスナーによって、背布54に背下クッション55及び背上クッション56が取り付けられる。
【0040】
ブレーキ装置10は、一対のブレーキ本体62と、ブレーキレバー63と、一対のブレーキ本体62とブレーキレバー63とに接続されるブレーキワイヤー64とを備えている。それぞれのブレーキ本体62は、後輪7に取り付けられている。ブレーキ本体62は、後輪7の回転を制動する機能と、制動を解除する機能とを備えている。ブレーキレバー63は、背上パイプ17の上側部17bに取り付けられている。ブレーキレバー63がハンドル37と共に握られることで、ブレーキワイヤー64を介して、ブレーキ本体62が後輪7の回転を制動する。ブレーキレバー63を握るのをやめると、ブレーキワイヤー64を介して、ブレーキ本体62が後輪7の回転の制動を解除する。このブレーキ本体62としては、ドラムブレーキ、ディスクブレーキ等が例示される。
【0041】
図4(a)には、上方から見たベースパイプ12と、後輪取付部15とが示されている。二点鎖線は、ベースパイプ12の前端に固定されたフロントパイプ14を表している。ベースパイプ12の前部12aは前後方向に延びている。ベースパイプ12の後部12bは前後方向に延びている。この前部12aに対して後部12bは左右方向内側に位置している。この前部12aの後端と後部12bの前端とは、後方から前方に向かって左右方向内側から外向きに傾斜して延びる中間部12cで一体に連結されている。図4(a)の一点鎖線Lf1は、前部12aの軸線を表している。一点鎖線Lr1は、後部12bの軸線を表している。両矢印W1は、軸線Lf1と軸線Lr1との間隔を表している。
【0042】
図4(b)には、上方から見たシートサイドパイプ13と、後輪取付部15とが示されている。二点鎖線は、シートサイドパイプ13の前端に固定されたフロントパイプ14を表している。シートサイドパイプ13の前部13aは前後方向に延びている。シートサイドパイプ13の後部13bは前後方向に延びている。この前部13aに対して後部13bは左右方向内側に位置している。この前部13aの後端と後部13bの前端とは、後方から前方に向かって左右方向内側から外向きに傾斜して延びる中間部13cで一体に連結されている。図4(b)の一点鎖線Lf2は、前部13aの軸線を表している。一点鎖線Lr2は、後部13bの軸線を表している。両矢印W2は、軸線Lf2と軸線Lr2との間隔を表している。
【0043】
この車いす1では、左右方向において、ベースパイプ12の前部12aの軸線Lf1の位置と、シートサイドパイプ13の前部13aの軸線Lf2の位置が同じにされている。ベースパイプ12の前端とシートサイドパイプ13の前端とは、上下方向に延びるフロントパイプ14で連結されている。ベースパイプ12の後部12bの軸線Lr1の位置と、シートサイドパイプ13の後部13bの軸線Lr2の位置が同じにされている。この車いす1では、間隔W1と間隔W2とが同じにされている。ベースパイプ12の後端とシートサイドパイプ13の後端とは、上下方向に延びる後輪取付部15で連結されている。この後輪取付部15の左右方向外側に面して、後輪取付面28が形成されている。この後輪取付面28に直交して後輪取付孔29が形成されている。
【0044】
図5に示される様に、後輪7は、固定軸68及び車輪69を備えている。固定軸68が車輪取付孔29に通されて、後輪7は後輪取付部15に取り付けられている。車輪69は、その軸線を回転軸にして、固定軸68に回転可能に支持されている。ブレーキ本体62は、車輪69の左右方向内側で、固定軸68に取り付けられている。このブレーキ本体62は、車輪69と後輪取付部15との間に位置している。
【0045】
後輪7はブレーキ本体62と共に、後輪取付面28を基準面にして取り付けられている。この後輪取付部15では、後輪取付面28に、複数の後輪取付孔29が形成されている。この複数の後輪取付孔29のいずれかに固定軸68が通されて、後輪7は後輪取付部15に取り付けられる。固定軸68が通される後輪取付孔29を変更することで、側フレーム2に対して、後輪7の上下方向位置が変更されうる。これにより、座シート8の高さ(座高)が変更可能にされている。
【0046】
図5の片矢印Wは、車いす1の全幅を表している。この全幅Wは、左右方向おいて、車いす1の一方の外端から他方の外端までの距離として測定される。この全幅Wは、車いす1の左右方向最大幅である。
【0047】
図6(a)に示される様に、前座受具20は、前取付部72及び前受部73を備えている。前受部73は、左右方向において前取付部72と同じ位置に位置している。前取付部72はシートサイドパイプ13の前部13aに取り付けられている。この前部13aの上方に前受部73が位置している。前受部73には、上方に開口する支持溝74が形成されている。この支持溝74に、シートパイプ30が着脱可能に支持されている。前座受具20は、左右方向において、シートパイプ30をシートサイドパイプ13と同じ位置に保持している。
【0048】
図6(b)に示される様に、後座受具21は、後取付部75及び後受部76を備えている。後受部76は、左右方向において後取付部75の外側に位置している。後取付部75はシートサイドパイプ13の後部13bに取り付けられている。この後部13bの上方に後受部76が位置している。後受部76には、上方に開口する支持溝77が形成されている。この支持溝77に、シートパイプ30が着脱可能に支持されている。後座受具21は、左右方向において、シートパイプ30をシートサイドパイプ13の外側に保持している。
【0049】
ここでは、右の側フレーム2について説明がされた。左の側フレーム2は、この右の側フレーム2と左右対称の形状を備えている。左の側フレーム2も、右側に位置する側フレーム2と同様の構成を備えている。
【0050】
一般に、後輪7は、前輪6より左右方向外側に突出し易い。この車いす1では、ベースパイプ12の前部12aに対して後部12bが左右方向内側に位置している。この後部12bが内側に位置することで、後輪7は左右方向内側に位置している。これにより、車いす1では、全幅Wが小さくされている。
【0051】
更に、ベースパイプ12の前部12aに対してシートサイドパイプ13の後部13bが左右方向内側に位置している。これにより、後輪取付部15は、ベースパイプ12からシートサイドパイプ13まで、上下方向に延びている。この後輪取付部15の後輪取付面28は、上下方向に広範囲に形成されうる。この車いす1は、後輪7の取付高さの自由度が大きい。この後輪取付部15は上下方向に(鉛直方向に)延びているがこれに限られない。後輪取付部15は、左右方向において内側又は外側に突出することなく延びていればよい。後輪取付部15は、下方から上方に向かって前後方向いずれかの向きに傾斜して延びていてもよい。
【0052】
特に、ブレーキ本体62が後輪7の車輪69の内側に位置する車いす1では、後輪7が左右方向外側に大きく突出し易い。後輪取付部15の上部が左右方向外向きに屈曲している車いすでは、このブレーキ本体62が後輪7の取り付け高さを制約する。この車いす1では、後輪取付面28を上下方向に広範囲に形成されうるので、ブレーキ本体62が車輪69の内側に位置する車いす1においても、後輪7の取り付け高さを広範囲に設定しうる。本発明は、この様なブレーキ本体62を備える車いす1に特に適している。
【0053】
このベースパイプ12の後部12bとシートサイドパイプ13の後部13bとが左右方向において、同じ位置に配置されている。この後部12bから後部13bまで延びる後輪取付部15も左右方向に傾斜することなく上下方向に延びている。この後輪取付部15は、後部12bから後部13bまでの広範囲に、後輪取付面28を容易に形成しうる。この車いす1では、後輪取付面28はベースパイプ12からシートサイドパイプ13まで延びているので、後輪7は上下方向において広範囲に取り付けられうる。
【0054】
この車いす1では、シートパイプ30の後部は、左右方向において、シートサイドパイプ13の後部13bの外側に位置している。この車いす1は、後部13bを内側に位置させつつ、座シート8の幅が狭くされていない。この車いす1は、着座する使用者の乗り心地を損なわない。この車いす1は、使用者の乗り降りを補助する介助者の動作を阻害しない。
【0055】
更に、後座受具21の後受部76は、左右方向において、後取付部75の外側に位置している。これにより、この後座受具21は、シートサイドパイプ13の後部13bの外側に位置するシートパイプ30の後部を、容易に着脱可能に支持しうる。
【0056】
この車いす1では、図4(a)及び図4(b)に示される様に、シートサイドパイプ13の後部13bの長さは、ベースパイプ12の後部12bの長さより短いがこれに限られない。この後部13bは、後輪7との干渉を防止する様にされていればよい。この後部13bの長さは、後部12bの長さと同じにされてもよいし、後部12bの長さより長くされてもよい。更には、このシートサイドパイプ13は、その全長に亘り、内側に位置して、その前端がフロントパイプ14に連結されてもよい。また、前座受具20では、後座受具21と同様に、前受部73は左右方向において前取付部72の外側に位置してもよい。
【0057】
この車いす1は、後輪7を上下方向において広範囲に取り付けられうるので、座シート8の高さ(座高)を広範囲に変更しうる。この車いす1は、座シート8の高さを広範囲に変更できるので、多数の標準部品が組み合わされて、種々の使用に対応させるモジュール化に適している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明された車いす1は、座シートが架け渡されるシートパイプが側フレームのシートサイドパイプに支持される車いすに広く適用されうる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・車いす
2・・・側フレーム
7・・・後輪
8・・・座シート
10・・・ブレーキ装置
12・・・ベースパイプ
13・・・シートサイドパイプ
14・・・フロントパイプ
15・・・後輪取付部
20・・・前座受具
21・・・後座受具
28・・・後輪取付面
29・・・後輪取付孔
30・・・シートパイプ
52・・・座布
62・・・ブレーキ本体
68・・・固定軸
69・・・車輪
72・・・前取付部
73・・・前受部
74、77・・・支持溝
75・・・後取付部
76・・・後受部
図1
図2
図3
図4
図5
図6