(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】植物性材料およびリサイクルされた材料から、パルプ、エネルギーおよびバイオ派生物を製造するための、方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20220210BHJP
C08B 15/08 20060101ALI20220210BHJP
D21C 5/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B01J19/00 301E
C08B15/08
D21C5/00
(21)【出願番号】P 2017564526
(86)(22)【出願日】2016-06-13
(86)【国際出願番号】 US2016037188
(87)【国際公開番号】W WO2016201414
(87)【国際公開日】2016-12-15
【審査請求日】2019-06-03
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517428252
【氏名又は名称】サーク,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】クーマル,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】マジェラノフスキー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】コステンユク,イーゴル
(72)【発明者】
【氏名】ボベ,イウリアン
(72)【発明者】
【氏名】バルラ,フロリン
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表平04-506544(JP,A)
【文献】特開2013-014737(JP,A)
【文献】特表2016-516850(JP,A)
【文献】特開2002-059118(JP,A)
【文献】米国特許第05411594(US,A)
【文献】特開2011-032388(JP,A)
【文献】特開2009-261275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J10/00-12/02
14/00-19/32
C08B1/00-37/18
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の発酵性炭水化物の抽出のため、および、更なる抽出用の材料を調製するための機械的処理装置/材料処理装置を備えている、前処理部と、
アルカリ系触媒を濃縮した
、バイオマスおよび亜臨界水が供給される、リアクターアセンブリを備えている抽出部であって、上記リアクターアセンブリは、(i)第1の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、第1の所定時間の間、第1の圧力、および、第1の温度が一定のレベルに維持される、第1の稼働状態、(ii)リグニン、並びに、残存している、第2の鎖強度を有するオリゴ炭水化物、および、脂肪酸を分解するために、第2の所定時間の間、第2の圧力、および、第2の温度が一定のレベルに維持される、第2の稼働状態、または、(iii)上記第1の稼働状態および上記第2の稼働状態の両方を有する、抽出部と、を備えているシステムであって、
上記システムの、圧力、温度、流量、および、成分濃度
を含むパラメーターは、リアルタイムにて、制御および修正され、
上記システムの上記第
1の稼働状態、および、上記第2の稼働状態の少なくとも1つは、上記発酵性炭水化物、脂肪酸、または、これらの両方の回収率が所望の値に達するまで繰り返される、システム。
【請求項2】
上記前処理部の上記機械的処理装置/材料処理装置は、可溶性の炭水化物を最初に抽出するための機械プレス、材料供給機構に動作可能に接続されている湿式または乾式のミル、または、上記機械プレスおよび上記ミルの両方、並びに、水または他の液体と混合するための貯蔵タンク、を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
更に、速度および流速を変えることができるポンプを備え、
上記ポンプは、上記混合されたバイオマスおよび液体を下流へ送り込む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記システム内の圧力を増加させるための高圧ポンプであって、速度および流速を変えることができる高圧ポンプと、
上記第1の稼働状態にて圧力を維持するための圧力調節バルブと、
バイオマスの圧力を、上記第1の温度、および、上記第1の圧力、または、上記第2の温度、および、上記第2の圧力へ増加させるためのポンプと、
上記第2の圧力、および、上記第2の温度のセクションの中で圧力を維持するための圧力調節バルブと、を更に備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
上記第1の稼働状態は、0~300psiの圧力、および、180℃以下の温度を包含し、
上記第2の稼働状態は、301~3000psiの圧力、および、180℃~350℃の温度を包含する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
上記前処理、上記第1の稼働状態、および、上記第2の稼働状態は、所望の圧力、所望の温度、および、所望の流速を、所望の時間の間、一定に維持することができるホストコンピュータソフトウェアによって、制御および監視され、
上記システムは、インストールされ、かつ、ネットワークを有しているホストコンピュータマネージングソフトウェアに接続されている複数のセンサーを備えており、
上記ネットワークでは、上記パラメーターに関する技術情報が、リアルタイムにて収集され、マネージングシステムに中継され、かつ、解析される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上記リアクターアセンブリは、
1つ以上の圧力調節バルブが後に続いている、1つ以上のリアクターのアセンブリと、
上記リアクターからの産出物を冷却するための熱交換器と、
上記下流
へ送り込まれた液体から所望の材料を回収するためのセパレーターと、を備えている、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
上記システムは、植物性材料または腐敗性廃棄物から、バイオ燃料の製造、バイオ炭、パルプ、セルロース、様々な産業のための原料、または、これらの組み合わせのための原料の成分(例えば、発酵性炭水化物、脂肪酸、および、他の化合物)を、最終産物として製造するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
上記システムは、モジュールおよびスケーラブルであり、ステーショナリーまたはモバイルであり、
上記システムは、モバイル形態であるときに、1つ以上の、貨物トレーラ、鉄道車両、
運送用コンテナ、一方から他方への輸送に用いられる他のプラットホーム、または、これらの組み合わせ、に搭載され得るものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
パルプの製造方法であって、
水溶性の発酵性炭水化物の抽出のため、および、更なる抽出用の材料を調製するための機械的処理装置/材料処理装置を備えている、前処理部と、
アルカリ系触媒を濃縮した
、バイオマスおよび亜臨界水が供給される、リアクターアセンブリを備えている抽出部であって、上記リアクターアセンブリは、(i)第1の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、第1の所定時間の間、第1の圧力、および、第1の温度が一定のレベルに維持される、第1の稼働状態、(ii)リグニン、並びに、残存している、第2の鎖強度を有するオリゴ炭水化物、および、脂肪酸を分解するために、第2の所定時間の間、第2の圧力、および、第2の温度が一定のレベルに維持される、第2の稼働状態、または、(iii)上記第1の稼働状態および上記第2の稼働状態の両方を有する、抽出部と、を備えているシステムであって、
上記システムの、圧力、温度、流量、および、成分濃度
を含むパラメーターは、リアルタイムにて、制御および修正され、
上記システムの上記第
1の稼働状態、および、上記第2の稼働状態の少なくとも1つは、上記発酵性炭水化物、脂肪酸、または、これらの両方の回収率が所望の値に達するまで繰り返される、システムを準備する工程と、
バイオマスをプロセシングサイズに加工する工程と、
上記バイオマスを、上記システムの上記リアクターアセンブリ内で、亜臨界水による処理プロセスにて
、1.5~10重量%以下の濃度のアルカリ系触媒を含んでいる触媒を用いて処理することによって、パルプの産物を作製する工程と、を有するパルプの製造方法。
【請求項11】
上記パルプの産物は
、0.000001~12mmの繊維長を有するものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記方法では、上記リアクターを介して、材料が連続して供給され、その結果、上記プロセスが、紙パルプ産物、セルロース、または、これらの組み合わせを連続して製造する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
上記方法は、モジュールおよびスケーラブルであり、ステーショナリーまたはモバイルであり、
上記システムは、モバイル形態であるときに、1つ以上の、貨物トレーラ、鉄道車両、運送用コンテナ、一方から他方への輸送に用いられる他のプラットホーム、または、これらの組み合わせに搭載され得るものである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
上記リアクターアセンブリは、連続式のリアクター、または、バッチ式のリアクターを備えている、請求項2に記載のシステム。
【請求項15】
植物性材料または腐敗性材料から、
熱価が増加したバイオ炭を製造する方法であって、
上記方法は、請求項1に記載のシステムにバイオマスを導入する工程と、バイオ炭を製造している間に、上記システムに油を加える工程と、を有し、
上記製造されたバイオ炭は、製造している間に上記システムに油を加えずに製造されたバイオ炭と比較して、熱価が増加している、方法。
【請求項16】
上記バイオ炭は
、20,000~30,000BTU/poundの範囲の熱価を示し、ここ
で、14,000~16,700BTU/poundの熱価は、上記加えられた油に由来する熱価である、請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
上記方法は、モジュールおよびスケーラブルであり、ステーショナリーまたはモバイルであり、
上記システムは、モバイル形態であるときに、1つ以上の、貨物トレーラ、鉄道車両、運送用コンテナ、一方から他方への輸送に用いられる他のプラットホーム、または、これらの組み合わせに搭載され得るものである、請求項1
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、モジュラーシステム、または、非モジュラーシステムに関するものである。当該モジュラーシステム、および、非モジュラーシステムは、植物性材料、木材、廃材、藻、菌のバイオマス、農業廃棄物、リサイクルされた材料、腐敗性廃棄物、これらの副産物、および/または、中間産物を、工業的に処理するためのものである。当該モジュラーシステム、および、非モジュラーシステムは、亜臨界水を利用した加水分解によって、紙、パルプ製品、バイオエネルギー産業および他のバイオ関連商品のための原料油、を製造する。
【0002】
〔背景技術〕
草、非食料の作物、および、農業廃棄物は、バイオ燃料、および、紙/パルプの製造にとって、費用効率が良い「緑(green)」の原料油(feedstock)としての可能性を示してきた。そして、草、非食料の作物、および、農業廃棄物は、最近の10年間、大規模な研究プログラムの対象となってきた。しかしながら、特定の地域の田畑から移動され得るバイオマスの量には限りがあるため、バイオマスは、田畑から処理機へ運搬される必要があり、これによって、製造プロセスのコストが増加する。加えて、パルプ、および、紙製品を製造している間、比較的大量の化学触媒(典型的には、25体積%を超える水酸化ナトリウム)が必要であるのみならず、加熱のために、大量のエネルギーが必要であり、これによって、製造コストが増加する。それ故に、植物のバイオマスを処理することによって、パルプおよび紙製品を製造するのみならず、バイオエネルギー産業および/またはグリーンケミカル産業(green chemicals industry)のための原料油の材料を製造する、経済的に継続可能なシステムおよび技術を手に入れることは、有益である。
【0003】
〔概要〕
幾つかの態様は、水溶性の発酵性炭水化物(fermentable carbohydrates)の抽出のための機械的処理装置/材料処理装置を備えている前処理部と、発酵性炭水化物、油、セルロース、パルプ、および、他のバイオ派生物を製造するために、バイオマスおよび亜臨界水が供給されるリアクターを備えている抽出部と、を備えているシステムである。幾つかの態様では、上記リアクターは、(i)第1の鎖強度(chain strength)を有する炭水化物を分解するために、第1の所定時間の間、第1の圧力、および、第1の温度が維持される、第1の稼働状態(ステージ1)、および、(ii)残存している、第2の鎖強度を有するオリゴ炭水化物を分解するために、第2の所定時間の間、第2の圧力、および、第2の温度が維持される、第2の稼働状態(ステージ2)、を有している。幾つかの態様では、上記リアクターは、2つの稼働状態(ステージ1、または、ステージ2)のうちの一方のみ、を有している。幾つかの態様では、上記リアクターは、ステージ1、および/または、ステージ2を繰り返すと共に、幾つかの稼働状態を有している。
【0004】
幾つかの態様は、紙のためのパルプ、または、食品への添加物としてのパルプ、の製造方法である。特に、幾つかの態様では、上記方法は、バイオマスをプロセシングサイズ(processing size)に加工する工程と、上記バイオマスを、略10重量%未満の量のアルカリ系触媒(例えば、NaOH、および/または、KOHが挙げられるが、これらに限定されない)を含んでいる触媒を用いて処理を行うことによって、パルプ製品を製造する工程と、亜臨界水を用いて、上記バイオマスを処理する工程と、を有している。上記アルカリ系触媒は、略0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または、10重量%以上(from)の量が存在していてもよい。
【0005】
幾つかの態様は、タバコのバイオマスから製造される、紙のためのパルプである。上記パルプは、バイオマスをプロセシングサイズに加工する工程と、上記バイオマスを、亜臨界水による処理プロセスを用いて、略10%未満の量のアルカリ系触媒を含んでいる触媒を用いて処理を行うことによって、紙パルプ産物を製造する工程と、を有する方法によって製造される。幾つかの態様では、上記加工する工程にて、乾燥したバイオマス、または、新鮮なバイオマスを用い、および/または、機械的な破砕機(例えば、ハンマーミル)を用いて、上記バイオマスを加工する。幾つかの態様では、上記亜臨界水による処理プロセスは、リアクターに対して熱(略180℃以下)を加えることを包含する。
【0006】
幾つかの態様は、良好な特性を有するバイオ炭の製造方法である。当該方法は、本発明のシステムにバイオマスを導入する工程を有しており、当該システムは、水溶性の発酵性炭水化物の抽出のための機械的処理装置/材料処理装置を備えている前処理部と、バイオマスおよび亜臨界水が供給されるリアクターを備えている抽出部と、を備えている。当該方法は、更に、バイオ炭を製造している間に、当該システムに油を加える工程を有しており、製造されたバイオ炭は、従来技術の方法によって製造されたバイオ炭と比較して、より良好な特性(例えば、増加した熱価(thermal value))を有している。
【0007】
幾つかの態様は、(a)水溶性の発酵性炭水化物の抽出のため、および、更なる抽出用の材料を調製するための機械的処理装置/材料処理装置を備えている、前処理部と、(b)バイオマスおよび亜臨界水が供給される、リアクター、または、リアクターアセンブリを備えている、抽出部であって、上記リアクターアセンブリは、(i)第1の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、第1の所定時間の間、第1の圧力、および、第1の温度が一定のレベルに維持される、第1の稼働状態、および、(ii)残存している、第2の鎖強度を有するオリゴ炭水化物(oligo-carbohydrates)、および、脂肪酸を分解するために、第2の所定時間の間、第2の圧力、および、第2の温度が一定のレベルに維持される、第2の稼働状態を有する、抽出部と、を備えているシステムであって、当該システムは、上記発酵性炭水化物、脂肪酸、または、これらの両方の回収率が所望の値に達するまで繰り返される、システムである。幾つかの態様では、上記前処理部の上記機械的処理装置/材料処理装置は、可溶性の炭水化物を最初に抽出するための機械プレス、材料供給機構に動作可能に接続されている湿式または乾式のミル、または上記機械プレスと上記ミルとの両方、および、水または他の液体と混合するための貯蔵タンクを備えている。幾つかの態様では、上記システムは、更に、速度および流速を変えることができるポンプを備え、当該ポンプは、上記混合されたバイオマスおよび液体を下流へ送り込む。
【0008】
幾つかの態様では、本発明のシステムは、(a)上記システム内の圧力を増加させるための高圧ポンプであって、速度および流速を変えることができる、高圧ポンプと、(b)上記第1の稼働状態にて圧力を維持するための圧力調節バルブと、(c)上記流路内のバイオマスの上記圧力を、上記第2の温度、および、上記第2の圧力へ増加させるためのポンプと、(d)上記第2の圧力、および、上記第2の温度のセクションの中で圧力を維持するための圧力調節バルブと、を更に備えている。
【0009】
幾つかの態様では、上記第1の稼働状態は、略0~300psiの圧力、および、略180℃以下の温度を包含し、上記第2の稼働状態は、略301~3000psiの圧力、および、略180℃~350℃の温度を包含する。
【0010】
幾つかの態様では、上記前処理、上記第1の稼働状態、および、上記第2の稼働状態は、所望の圧力、所望の温度、および、所望の流速を、所望の時間の間、一定に維持することができるホストコンピュータソフトウェア(centralized computer software)によって、制御および監視され、上記システムは、インストールされ、かつ、ネットワークを有しているホストコンピュータマネージングソフトウェア(centralized computer managing software)に接続されている複数のセンサーを備えており、上記ネットワークでは、主要なパラメーター(例えば、圧力、温度、流量、および、成分濃度など)に関する技術情報が、リアルタイムにて収集され、マネージングシステムに中継され、かつ、解析され、上記パラメーターは、リアルタイムにて、制御、および、修正される。
【0011】
幾つかの態様では、上記リアクターアセンブリは、(i)1つ以上の圧力調節バルブが後に続いている、1つ以上のリアクターのアセンブリ(assembly)と、(ii)上記リアクターからの産出物を冷却するための熱交換器と、(iii)上記水相から有用な材料を回収し、その結果として、水をリサイクルするためのセパレーターと、を備えている。
【0012】
幾つかの態様では、上記システムは、植物性材料、または、腐敗性廃棄物から、バイオ燃料の製造、バイオ炭、パルプ、セルロース、様々な産業のための原料、または、これらの組み合わせのための原料油の成分(例えば、発酵性炭水化物、脂肪酸、および、他の化合物)を、最終産物として製造するように構成されている。
【0013】
幾つかの態様では、上記システムは、モジュール、および、スケーラブルであり、ステーショナリー、または、モバイルであり(modular and scalable, stationary or mobile)、上記システムは、モバイル形態であるときに、1つ以上の、貨物トレーラ、鉄道車両、運送用コンテナ、一方から他方への輸送に用いられる他のプラットホーム、または、これらの組み合わせに搭載され得るものである。
【0014】
幾つかの態様は、バイオマスをプロセシングサイズ(processing size)に加工する工程と、上記バイオマスを、亜臨界水による処理プロセスにて、略1.5~10重量%以下の濃度のアルカリ系触媒を含んでいる触媒を用いて処理することによって、パルプの産物を作製する工程と、を有するパルプの製造方法である。幾つかの態様では、上記パルプの産物は、略0.000001~12mmの繊維長を有するものである。幾つかの態様では、上記プロセスが、紙パルプ産物、セルロース、または、これらの組み合わせを連続して製造するように、上記方法では、上記リアクターを介して、材料が連続して供給される。
【0015】
幾つかの態様では、上記方法は、モジュール、および、スケーラブルであり、ステーショナリー、または、モバイルであり、上記システムは、モバイル形態であるときに、1つ以上の、貨物トレーラ、鉄道車両、運送用コンテナ、一方から他方への輸送に用いられる他のプラットホーム、または、これらの組み合わせに搭載され得るものである。
【0016】
幾つかの態様は、請求項10に記載の方法によって製造され、0.000001~12mmの繊維サイズを有している、パルプ、粉末セルロース、ナノセルロース、または、溶解性セルロースであって、水中の可溶性炭水化物、および、水中の他の可溶性材料は、副産物(co-products)として製造されたものである、パルプ、粉末セルロース、または、溶解性セルロースである。幾つかの態様では、上記パルプは、更に、200℃よりも低い温度にて、リアクターに曝される(exposed to a reactor)。
【0017】
幾つかの態様は、植物性材料、または、腐敗性材料から、特性が増加したバイオ炭を製造する方法であって、当該方法は、(a)本発明のシステムにバイオマスを導入する工程と、(2)バイオ炭を製造している間に、上記システムに油を加える工程と、を有し、上記製造されたバイオ炭は、製造している間に、上記システムに油を加えずに製造されたバイオ炭と比較して、熱価(thermal value)が増加している、方法、である。幾つかの態様では、上記バイオ炭は、略20,000~30,000BTU/poundの範囲の熱価を示し、ここで、略14,000~16,700BTU/poundの熱価は、上記加えられた油に由来する熱価である。幾つかの態様では、上記方法は、モジュール、および、スケーラブルであり、ステーショナリー、または、モバイルであり、上記システムは、モバイル形態であるときに、1つ以上の、貨物トレーラ、鉄道車両、運送用コンテナ、一方から他方への輸送に用いられる他のプラットホーム、または、これらの組み合わせに搭載され得るものである。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
上述した概要、および、後述する詳細な説明は、図面を考慮して読まれ得る。当該図面は、簡単に後述するように、特定の、典型的な、実施形態および特徴点を示している。しかしながら、概要、および、詳細な説明は、明記されているこれらの実施形態および特徴点のみに限定されない。
【0019】
図1は、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスを処理するためのシステムを示す図である。
【0020】
図2は、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスを処理するためのシステムを示す図である。
【0021】
図3は、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスを処理するためのシステムを示す図である。
【0022】
図4aは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、処理モジュールの間の「圧力増加」対「時間」の関係を示すグラフである。
【0023】
図4bは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、処理モジュールの間の「温度増加」対「時間」の関係を示すグラフである。
【0024】
図5は、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスからパルプを製造するために用いられるプロセスを示すフローチャートである。
【0025】
図6aは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造された発酵性炭水化物(糖)の写真である。
【0026】
図6bは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造された油の写真である。
【0027】
図6cは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造されたバイオ炭の写真である。
【0028】
図6dは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造されたバイオ派生物(タンパク質)の写真である。
【0029】
図6eは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造された紙の写真である。
【0030】
図6fは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造されたカードボード(cardboard)の写真である。
【0031】
〔詳細な説明〕
添付の実施例を参照しながら、以下に、本発明について更に説明する。添付の実施例には、幾つかの態様が記載されているが、全ての態様が記載されているわけではない。本発明は、異なる態様にて実施され得、ここに記載された態様に限定されない。むしろ、これらの態様は、本開示を十分かつ完全にするために提供されたものであって、これらの態様は、当業者へ、実施形態の範囲を完全に伝える。
【0032】
特に定義しない限り、本明細書に用いられている全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的理解されている意味と、同じ意味を有する。本明細書に言及されている全ての、刊行物、特許出願、特許、および、他の参考文献は、その全体が、参考として本明細書中に援用される。
【0033】
長年にわたる特許法上の慣例にならって、本明細書(特許請求の範囲も含む)中に用いられた場合、用語「1つ(a)」および「1つ(an)」は、「1つ以上(one or more)」を意図する。
【0034】
本明細書中に用いられる用語「略(about)」は、質量、重量、時間、体積、直径または割合に関する、値または量について言及する場合、特定の量から+/- 20%の範囲の変動、特定の量から+/- 10%の範囲の変動、特定の量から+/- 5%の範囲の変動、特定の量から+/- 1%の範囲の変動、または、特定の量から+/- 0.1%の範囲の変動を包含すること、を意図する。なお、このような変動は、本方法を行うにあたって、適切な変動である。
【0035】
用語「ステップ(step)」は、プロセスまたは方法の特徴に関連して、明示的に用いられ、または、暗示的に用いられ得る。しかしながら、順番または手順について明記されない限り、このような、明示的なステップの間、または、暗示的なステップの間における、順番または手順は、限定されない。
【0036】
本発明は、市場性の高い材料を製造するための様々な植物性材料を加工するための、産業用システムに関するものである。特に、当該システムは、亜臨界水による抽出技術(subcritical water extraction technology(水熱液化技術(hydrothermal liquefaction technology:HTL)とも呼ばれる)を用い、かつ、前処理モジュールと、2段階の処理モジュールと、を備えている。幾つかの態様では、本システムの最終産物は、バイオ燃料の製造のための原料油の成分(糖、および/または、油)、バイオ炭、および、様々な産業のための原料(例えば、紙製品を製造するためのパルプ、および/または、食品または工業製品のためのセルロース)を含み得る。本システムは、モジュール式または非モジュール式であってもよく、かつ、プログラムされた自動運転、または、手動運転と共に、プレハブ部品(prefabricated elements)を備えていてもよい。これによって、本システムは、現場にて、容易に、移動、および/または、組み立てられ得る。本システムは、ステーショナリーまたはモバイルであり得る。また、本システムは、1つ以上の、貨物トレーラ、鉄道車両、運送用コンテナ、または、一方から他方へ輸送される他のプラットホーム、に搭載され得る。
【0037】
幾つかの態様では、本システムおよび本方法は、改良された特性を有するバイオ炭の製造に用いられ得る。例えば、幾つかの態様では、改良された特性を有するバイオ炭を製造するために、バイオ炭の製造プロセスの間、バイオマスに由来する、廃油またはバージンオイルが添加され得る。特に、幾つかの態様では、前処理を行う追加の工程のときに、バイオマスに対して、油が加えられ得る。その後、リリアクターアセンブリ内にて更なる処理が行われ、当該リアクターアセンブリ内にて、バイオマス中に油が吸収される。加えて、または、別の態様では、バイオ炭が製造され、その後、当該バイオ炭と油とを混合してもよい。任意の油(例えば、植物油、または、任意の植物の油)、または、廃油が、用いられ得る。幾つかの態様では、1kgの乾燥したバイオマス材料あたり、略0.8~1.5Lの油が、用いられ得る。それ故に、1kgの乾燥したバイオマスあたり、油を、略0.8L以上(または、略0.8L以下)、略0.85L以上(または、略0.85L以下)、略0.9L以上(または、略0.9L以下)、略0.95L以上(または、略0.95L以下)、略1.0L以上(または、略1.0L以下)、略1.05L以上(または、略1.05L以下)、略1.1L以上(または、略1.1L以下)、略1.15L以上(または、略1.15L以下)、略1.2L以上(または、略1.2L以下)、略1.25L以上(または、略1.25L以下)、略1.3L以上(または、略1.3L以下)、略1.35L以上(または、略1.35L以下)、略1.4L以上(または、略1.4L以下)、略1.45L以上(または、略1.45L以下)、または、略1.5L以上(または、略1.5L以下)、用いることができる。幾つかの態様では、製造されたバイオ炭は、油を加えずに製造されたバイオ炭と比較して、改良された熱価(BTU/pound)を示し得る。幾つかの態様では、タバコのバイオマスを用い、かつ、本発明の方法にしたがって製造されたバイオ炭は、略20,000~30,000BTU/poundの範囲の熱価(略14,000~16,700BTU/poundの熱価は、加えられた油に由来する熱価である)を示し得る。
【0038】
本システムへの使用に適した植物性材料としては、植物のバイオマス、農業廃棄物、腐敗性の家庭廃棄物、これらの中間体、および、これらの副産物、を挙げることができる。本明細書にて用語「バイオマス(biomass)」とは、利用可能な、任意の植物に由来する物質(木質、または、非木質)を意図する。例えば、バイオマスとして、種子、農作物の廃棄物および残留物(例えば、実を収穫した後のトウモロコシ(corn stover)、麦かん(wheat straw)、稲わら(rice straw)、サトウキビの搾りかす、麻(カンナビス・サティバ:Cannabis sativa)、アーモンドの殻、ピーナツの殻、タバコの茎など)、収穫された牧草(例えば、スイッチグラス(switch grass)、アルファルファ(alfalfa)、冬ライ麦など)、木質の作物、木くず、および、木質の残留物(例えば、木、針葉樹または広葉樹の材木(softwood or hardwood forest thinnings)、樹皮の廃棄物、枝、松葉、おがくず、紙およびパルプの産業残留物または一連のゴミ、木質繊維など)、食べ物のゴミ、および、任意の有機物質を挙げることができるが、これらに限定されない。バイオマスには、農産物、非農産物、全ての気生植物(aerial plant)、および、全ての陸生植物(underground plant)、が包含され得る。藻類のタイプのバイオマス、および、菌類のタイプのバイオマスもまた、用語「バイオマス」に包含され得る。幾つかの態様では、バイオマスは、新鮮なもの、部分的に乾燥されたもの、完全に乾燥されたもの、または、これらの混合物であってもよい(例えば、高湿度のもの、低湿度のもの、または、高湿度と低湿度との間のあらゆるレベルのもの)。本システムへの使用に適したバイオマスの具体例としては、食用作物(例えば、トウモロコシ、小麦、大豆、キャベツ、甜菜(sugar beet)、サトウキビ、緑黄色野菜(greens)など)、非食用作物(例えば、タバコ、様々な草、竹、ラベンダー、藻、アルテミシア(Artemisia)、麻など)、木材、木材のチップ、農業廃棄物(例えば、粉末セルロースの製造に用いられ得る、実を収穫した後のトウモロコシなど)、および、植物に関連した産業廃棄物などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
加えて、植物から製造される中間精製物が、本発明に用いられ得る。例えば、リサイクルされた紙およびカードボード、コットンリンター(cotton linters)、様々な袋(例えば、ジャガイモ用の袋、および、コーヒー用の袋など)、ビールを醸造した後のオオムギおよび/またはコムギ、紙コップ(コーティングされた紙コップ、および、コーティングされていない紙コップを含む)から、パルプおよび/または繊維が製造され得る。
【0040】
更に詳細に後述するように、本システムは、亜臨界水による抽出技術と、コンピューターによって制御される可変的なパラメーターと、を組み合わせることによって、バイオマスから、市場価値を備えた、天然油、糖、紙製造および食品添加物のためのパルプ、および、他の材料を製造する。本明細書にて用語「亜臨界水」とは、臨界点よりも下の、液状の水を意図する。有利なことに、亜臨界水は、無毒性であり、環境にやさしく、安価であり、かつ、グリーンな溶剤(green solvent)である。当該グリーンな溶剤は、溶剤抽出プロセスに伝統的に用いられてきた従来の有機溶剤(例えば、n-ヘキサン)の代用として、用いられ得る。亜臨界の領域では、水のイオン化定数(Kw)は、温度と共に増加する。当該イオン化定数は、周囲水(ambient water)のイオン化定数よりも、略3桁大きい。水の誘電率は、80から20へ低下する。大きなKwによって、亜臨界水は、バイオマスの成分を加水分解するための酸性媒質を提供できる一方で、低い誘電率によって、亜臨界水は、有機化合物を溶解することができる。溶剤特性が調節可能であるが故に、亜臨界水は、バイオマスから多くの有機成分を抽出する目的に、使用され得る。
【0041】
幾つかの態様では、本システムは、油を炭化水素(hydrocarbon)に変換するために用いられ得る。具体的に、抽出された油は、例えば、(i)エステル交換プロセスを介して、バイオディーゼル燃料に変換され得、または、(ii)触媒による水素化脱酸素プロセス(catalytic hydrodeoxygenation process)を介して、再生可能なディーゼル燃料、および、高度なバイオ燃料(ジェット燃料、グリーンディーゼル燃料)に変換され得る。
【0042】
幾つかの態様では、本システムは、略500℃の反応条件下における、活性炭の製造に用いられ得る。特に、バイオ炭に結合させるために、本システムに対して触媒(例えば、亜鉛を含んでいる触媒)を添加することができる。
【0043】
幾つかの態様では、本システムは、プログラムされた自動運転、または、手動運転を行う、プレハブモジュール部品(prefabricated modular elements)を備えている。これによって、本システムは、高価であり、かつ、時間がかかるシステム部品の停止を行うこと無く、容易に現場に移動され得、かつ、容易に現場にて組み立てられ得る。したがって、本システムは、互換性および交換性を有する、モジュールとセクションとの組み合わせを包含し得る。なお、当該セクションは、柔軟な操作が可能であって、原料油(feedstock)の1種を、別のものに変換させる。幾つかの態様では、本システムは、バイオマス取得施設、または、現場(biomass capture facility or site)へ輸送される。
【0044】
開示されているモジュール構造と亜臨界水による抽出との組み合わせによって、オペレーターは、確立されたプロトコールに基づいたプログラムされたモードにしたがって、設備を運転することができる。開示されているモジュール構造と亜臨界水による抽出との組み合わせは、また、新たな技術の発展と共に、周知技術への改良の導入、および、周知技術の改良のための試験、を行うための広範な機会を提供する。上記システムのモジュール部品は、本明細書中、「セクション(sections)」と呼ぶこともできる。
【0045】
本方法は、前処理モジュール、および、2段階の処理モジュール(抽出装置)を有する。バイオマスからパルプおよび紙を製造するために、本発明の方法は、バイオマスをプロセシングサイズに加工する工程と、亜臨界水による処理プロセスを用いて、上記バイオマスを触媒にて処理して、紙パルプ産物を製造する工程と、を有する。幾つかの態様では、上記触媒は、略8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、または、2重量%以下(no more than)の濃度にて、水酸化ナトリウム(NaOH)を含み得る。幾つかの態様では、NaOHの量は、略2重量%~略5重量%であり得る。
【0046】
(i)バイオマスからの、水溶性の化合物、および、水(ジュース(juice))の抽出を可能にするために、および、(ii)後の処理モジュールにおける処理のために、バイオマスのサイズを小さくするために、上記前処理モジュールは、破砕装置/材料処理装置(disintegrating device/material handling)を有している。幾つかの態様では、上記ジュースは、水溶性の発酵性炭水化物を含み得る。なお、当該発酵性炭水化物としては、例えば、グルコース、ガラクトース、および/または、マンノースが挙げられるが、これらに限定されない。
図1に示すように、破砕装置は、圧力を用いて植物のバイオマスを破砕する機能を有している装置を備え得る。幾つかの態様では、上記破砕装置は、固相抽出機構(solid phase extraction mechanism)、逆圧機構(counter pressure mechanism)、エアーコンプレッサ(air compressor)(1~100psi)、気圧制御器(air pressure control)、蒸気発生器(steam generator)、液相分離器(liquid phase separate)、および/または、固形産物回収器(resulting cake collector)を備えている、特定のねじプレス(specialty screw press)であってもよい。幾つかの態様では、上記破砕装置は、低湿度のバイオマスの破砕に適した粉砕機構を有している粉砕エレメント(grinding element)(例えば、ハンマーミル、または、産業用シュレッダー)を備え得る。上記破砕装置、および/または、上記粉砕エレメントは、更なる処理のために、大量の植物のバイオマスを粉砕、および/または、破砕するように機能する。なお、当該更なる処理としては、(i)新鮮なバイオマスから、水溶性の糖を含んでいるジュースを抽出する処理、(ii)バイオマスの粒子を小型化する処理、および/または、(iii)処理モジュール内での更なる処理のために、低湿度の材料を破砕する処理、が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様では、上記破砕装置は、湿式のミルを備えることが可能である。この場合、粉砕する前に、ミルプロセス(milling process)の一部として、(i)バイオマスに対して、水、および、任意の他の可溶性の化合物を加え、および、(ii)バイオマスを、水、および、任意の他の可溶性の化合物に浸す、ことも可能である。
【0047】
上記処理モジュールは、幾つかの任意の特徴点を兼ね備えていてもよい。当該特徴点としては、(i)エアーコンプレッサを有している、材料運搬通気システム(material conveying pneumatic system)、(ii)乾燥した植物材料、農業副産物、および/または、新鮮なバイオマスを搾って得られる固形物を破砕するための、チューブ状の空気濾過バッグ(tubing and air filtration bags)、(iii)入力、出力、および/または、中間パラメーターを遠隔制御し得る、電子制御、(iv)非常時に任意で停止する、電子制御、および、(v)1つの構造グループとして集合している、1つ以上の反応チューブ(リアクター)(幾つかの態様では、例えば、前処理バイオマス供給システムに接続されている、数個のリアクター)、を挙げることができる。しかしながら、当該特徴点は、これらに限定されない。
【0048】
上記処理モジュールは、ステージ1の処理(低圧条件/低温条件を包含し得る)と、ステージ2の処理(高圧条件/高温条件を包含し得る)と、を有している。幾つかの態様では、混合されたバイオマス材料に対するステージ1の処理の間に、リアクター内にて、低温の亜臨界水による抽出が行われる。したがって、上記リアクターは、第1の鎖長を有する炭水化物を分解するために、所定時間の間、第1の圧力、および、第1の温度(0~300psi、および、200℃以下)に維持される、第1の稼働状態を有する。上記第1の圧力は、最大で(または、少なくとも)、略300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または、15psi、であり得る。上記第1の温度は、最大で、略200、195、190、185、180、175、170、165、160、155、150、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、または、25℃、であり得る。幾つかの態様では、上記第1の圧力、および/または、上記第1の温度は、所定の時間の間、一定に維持され得る。
【0049】
幾つかの態様では、上記時間は、略5~20分間(例えば、略5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または、20分間)であり得る。したがって、ステージ1の処理の間、バイオマス中に存在する炭水化物(遊離糖)が、回収(recovered)される。加えて、低温度、および、低圧力の条件下にてデンプンから遊離する糖(例えば、アミロース(500~20,000 D-グルコースユニット)、および、アミロペクチン(2,000,000以下のD-グルコースユニット))もまた、回収される。幾つかの態様では、当該プロセスが終了した後、分離器を用いて、バイオマスの懸濁液から上記糖が分離される。幾つかの態様では、圧力と、返送される水の供給量とのバランスをとるための流量調節バルブと共に、水をリサイクルするために、上記分離器に返送用パイプラインが接続され、および、上記低圧/低温の領域に返送用パイプラインが接続され得る。
【0050】
ステージ1の処理は、バイオマスの懸濁液と水とを、収容および混合する、混合ジャンクション(mixing junction)を有している。幾つかの態様では、上記混合ジャンクションは、バイオマスの懸濁液と水とを、収容および混合するための、タンクを有している。粉砕されたバイオマスの懸濁液は、例えば、高圧ポンプによって、混合ジャンクションへ運ばれる。幾つかの態様では、例えば、高圧ポンプによって、水(例えば、脱イオン水)もまた、混合ジャンクションへ運ばれ得る。特定の用途のために、混合ジャンクションが、所望の量のバイオマスを収容できるサイズ(幾つかの態様では、例えば、100~1000ガロン)に設計され得ることが、理解されるべきである。幾つかの態様では、上記混合ジャンクションは、バイオマスの懸濁液/水の混合物の温度を所望の温度に上げるための、1つ以上の発熱体(heating element)を備えている。幾つかの態様では、ステージ1の処理は、返送ループ(return loop)も備えている。当該返送ループは、流入物を部分的にリサイクルするため、および、混合ジャンクション内のバイオマス/水の混合物を豊富にするために、流量調節バルブ、配管、または、交差流路フィルター(crossflow filter)に接続された他の流路、を備えている。幾つかの態様では、ステージ1の処理は、蒸気を捕らえるため、当該蒸気の温度を低下させるため、および、水相に水を戻すための、コンデンサーを有していてもよい。
【0051】
幾つかの態様では、上記混合ジャンクションは、低レベルセンサーおよび停止器(少ない体積が検出された場合に、システムを停止させることができる);バイオマスの大きな断片を捕捉するためのバスケットストレーナ(basket strainer);システム内の圧力のバランスをとるための蓄圧器(accumulator);少なくとも2つの周波数可変装置(variable frequency device);送水ポンプ;循環ポンプ;2つの流量調節バルブ;サンプリングのための排出口;および/または、更なるセンサー装置(sensor installation)、を備えていてもよい。幾つかの態様では、上記ポンプ、加熱器、蓄圧器、および、流量調節バルブは、リアクターアセンブリ内にて、圧力を略0~300psiに維持し、かつ、温度を200℃以下に維持する。
【0052】
ステージ2の間に、ステージ1にて処理されたバイオマスの材料を処理する。リアクターアセンブリは、残存している、第2の鎖長を有する炭水化物を分解するために、所定時間の間、第2の圧力、および、第2の温度(301~3,000psi、および、180~350℃以下)に維持される、第2の稼働状態の下で、材料を処理する。上記圧力は、略301、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950、または、3000psi以下(または、以上)であり得る。上記温度は、略180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、または、300℃以下(または、以上)であり得る。幾つかの態様では、上記第2の圧力、および/または、上記第2の温度は、所定の時間の間、一定に維持され得る。
【0053】
幾つかの態様では、上記時間は、略0.0833分間(5秒間)~略40分間(例えば、少なくとも(または、下記の時間以下)0.0833、0.167、0.25、0.333、0.4165、0.5、0.583、0.67、0.75、0.833、0.917、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5、または、40分間)であり得る。幾つかの態様では、第2の鎖長を有する炭水化物は、(i)ステージ1の処理に由来する、残存している未分解のデンプン、および/または、(ii)セルロース、および/または、(iii)ヘミセルロース(300~10,000 D-グルコースユニット)、を意図する。
【0054】
次いで、材料は、固相(バイオ炭、および/または、パルプ産物)と、液相(糖、油、他の可溶物(other solubles)、および、水)と、に分離される。幾つかの態様では、本システムは、不都合(harsh)な有機溶剤を用いること無く、生体組織から、植物性の油、および、脂肪酸を抽出することを可能にする。高圧、および、高温のセクションは、以下のものの1つ以上を有し得る:(i)連続的なキャビティ・ポンプ(progressive cavity pump)、(ii)可変周波数装置(variable frequency device)が備えられている、付加的な高圧ポンプ,(iii)イオン水、または、脱イオン水の供給器、および、(iv)前処理された供給懸濁液の流量および温度、並びに、システムの圧力を適切にするための、温水器。幾つかの態様では、ステージ1の処理、および、ステージ2の処理の間における材料の分解を表す化学式は、「(C6H10O5)n+nH2O→nC6H12O6」にて示される。幾つかの態様では、高温/高圧のセクションは、(i)圧力調節バルブ、(ii)水相中の有用な材料を回収するためのセパレーター、および、(iii)リサイクルするために、蒸気に由来する水を、冷却および回収するためのコンデンサー、を有している。幾つかの態様では、固相のパルプ、および/または、セルロース産物を製造する場合、当該パルプは、標準的な漂白剤(例えば、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム)、および、装置を用い、かつ、周知の方法にしたがって、漂白される。
【0055】
それ故に、本システムは、以下の機能のうちの1つ以上を行う:(i)新鮮なバイオマスからの、水溶性化合物、および、水(ジュース(juice))の抽出、(ii)固形産物の調製、および、当該固形産物の混合ジャンクション(混合タンクであってもよい)への運搬、(iii)低湿度のバイオ材料の分解、(iv)混合ジャンクション内の湿度の調節、(v)懸濁液を低圧/低温のステージ(ステージ1)に通すことによる処理、(vi)処理された物を高圧/高温のステージ(ステージ2)に通すこと、(vii)過剰な水分を除去することによる、抽出産物中における所望の産物の濃縮、および、(viii)所望の材料の回収。幾つかの態様では、本システムは、上記プロセスが連続的に産物を製造するように、リアクターを介して、材料の連続的な流れを供給する。幾つかの態様では、上記産物は、発酵性炭水化物、油、および/または、バイオ炭を含み得る。幾つかの態様では、上記産物は、紙製品であり得る。なお、紙製品としては、例えば、クラフトパルプ(紙、カードボードなど)、粉末セルロース(食品添加物として使用し得る粉末セルロース)、溶解性セルロース(レーヨン、ダイナマイトなどの製造に用いられる溶解性セルロース)、ナノ結晶セルロース(または、マイクロ結晶セルロース)、および、発酵性炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。更に、幾つかの態様では、本システムは、特殊な紙製品(例えば、添加物を含んでいる紙製品)の製造に用いられ得る。特殊な紙製品としては、(i)医療分野において、おむつ製品、および、他の用途に用いられる、帯電パルプ(charged pulp)、または、(ii)銀、銅、または、他の金属が組み込まれた紙、が挙げられる。
【0056】
幾つかの態様では、上記前処理モジュール、および/または、上記処理モジュールは、予め組み立てられた筺体構造物として、組み立てられ得る。当該構造物は、直立した、体重を支えるフレーム(例えば、金属のフレーム)を含み得る。当該フレームは、抽出器の様々なセクションのためのサポート表面、当該サポートフレームの直立した構成に接続している、基礎フレームおよび上端フレーム、を備えている。幾つかの態様では、上記前処理モジュール、または、上記処理モジュールの1つ以上の構成が、ホストコンピュータソフトウェアによって監視および制御され、これによって、所望の滞留時間の間、現在の特定の圧力および/または温度が、一定に維持される。この目的を達成するために、様々なパラメーターに関する技術情報(温度、圧力、流量、含有量など)が、リアルタイムにて収集され得、かつ、マネージングシステムへ中継され得るように、多重センサーが、インストールされ、かつ、ホストコンピュータマネージングソフトウェアネットワークに接続され得る。なお、上記マネージングシステムでは、リアルタイムにてパラメーターを制御/修正するために、上記技術情報が解析される。
【0057】
好ましくは、幾つかの態様では、本方法は、原料油の処理のための、溶剤および媒質として、単に水を用いる。幾つかの態様では、本方法は、非水溶性の天然材料(例えば、セルロース、ヘミセルロース、および、リグニンなど)を、糖分子のオリゴマーおよびモノマー(例えば、スクロース、フルクトース、および、グルコースなど)に連続的に変換するために用いられ得る。
【0058】
図1は、本発明の幾つかの態様に係るシステムの一形態を示している。具体的に、当該システムは、破砕装置1、および、粉砕エレメント2を備えている。幾つかの態様では、粉砕装置1は、専用のねじプレス、または、あらゆるタイプの機械的なグラインダーまたはプロセッサであり得、粉砕エレメント2は、低湿度のバイオマスの破砕のための粉砕機構を備えているハンマーミルであり得る。上記粉砕エレメントは、更に、地面のバイオマスを混合ジャンクションへ運ぶための送風機、および、破砕にて生じた粉塵を収容するための空気濾過システム、を備え得る。幾つかの態様では、上記粉砕エレメントは、材料供給システムに接続され得る。上記破砕装置、および/または、粉砕エレメントの後で、バイオマスからジュースが抽出され、バイオマスの粒子が小型化され、固形の産物が混合ジャンクション3へ運ばれる。幾つかの態様では、上記混合ジャンクション3が、貯蔵/混合タンクであり得る。幾つかの態様では、上記固形物は、混合ジャンクション3内にて水と混合され、これによって、所望されるように、含水量が調節され、および/または、流動性が改善される。水と混合された後、上記バイオマスは、懸濁液(slurry)と呼ばれ得る。
【0059】
図1に示すように、混合ジャンクションは、混合ジャンクションの体積が閾値よりも下であるときに、抽出器供給システム(extractor feed system)との接続を切断する、バルブ4と関連していてもよい。ポンプ6は、処理の最初の段階において、バイオマスと水との適切な混合を確実なものにする。幾つかの態様では、本システムは、周波数可変装置(variable frequency device:VFD)5を備えている。周波数可変装置5は、混合されたバイオマスと液体とをポンプ6が下流へ流し出すように、ポンプ6のモーターの周波数を調節する機能を有している。示しているように、濾過装置7(例えば、バスケットストレーナ(basket strainer)、または、分離/濾過機構)は、ホールディング装置3から離れた地面のバイオマスの大きな断片を捕らえ、かつ、システムが目詰まりすることを防ぐ。幾つかの態様では、上記システムは、蓄圧器8を備え得る。当該蓄圧器8は、システム内の圧力の変化を補正し、かつ、他のシステムエレメントに由来する、潜在的な物理的ダメージを防ぐ。本明細書に記載されている他の構成と同様に、上記蓄圧器は、本システムにおいて、任意の構成であり得る。
【0060】
幾つかの態様では、本システムは、懸濁液の温度および圧力を所望のレベルに上げるために、少なくとも1つの発熱体9を備えている。発熱体9は、直接的な加熱、または、間接的な加熱を行い得る。本明細書において「直接的な加熱(direct heating)」とは、温度を上げるために、水蒸気、または、加熱された空気/ガスを、直接、懸濁液中に注入することを意図する。本明細書において「間接的な加熱(indirect heating)」とは、懸濁液に熱を伝えるための発熱装置を用いるプロセスであって、バイオマスとヒーターとが直接接していないプロセス、を意図する。幾つかの態様では、本システムは、本システム内の圧力を所望のように更に上げるために、循環ポンプ10を備え得る。幾つかの態様では、循環ポンプ10は、送水ポンプであり得る。幾つかの態様では、ポンプ10のモーターの周波数を調節するために、VFD11が設けられていてもよい。
【0061】
幾つかの態様では、本システムは、リアクターの低圧/低温の領域の中の圧力を、プログラムされたパラメーターの範囲内(換言すれば、低圧/低温の第1の稼働状態、または、高圧/高温の第2の稼働状態)に維持するために、圧力調節バルブ12を備えている。加えて、幾つかの態様では、本システムは、パイプ内の流速を、プログラムされたパラメーターの範囲内に維持するために、流量調節バルブ13を備えている。
【0062】
幾つかの態様では、本システムは、返送ループ14を備えている。当該返送ループ14は、処理されたバイオマス中に、興味のある所望の化合物を濃縮するように、機能する。例えば、バイオマスの懸濁液中に触媒を濃縮することが可能である。当該触媒としては、リグニンに結合して、バイオマスの懸濁液中の繊維を緩める、アルカリ性触媒(例えば、NaOH)を挙げることができるが、本発明は、これに限定されない。加えて、バイオマスの懸濁液のpHは、ループ14を用いて、所望のレベルに調節され得る。幾つかの態様では、本システムは、濃縮器15を備えている。当該濃縮器15は、蒸気/気相から水を捕捉し、当該水をバイオマスの懸濁液に戻すように機能する。幾つかの態様では、本システムは、低温/低圧のセクションの中の圧力を、プログラムされたパラメーターの範囲内に維持するために、圧力調節バルブ16を備えている。幾つかの態様では、本システムは、抽出器の高温/高圧のセクションの中の圧力を上げるため、および、前処理されたバイオマスをリアクターアセンブリ23に供給するために、連続的なキャビティ・ポンプ17を備えている。幾つかの態様では、高温/高圧のセクションは、バイオマスの懸濁液中の破砕された細胞および組織から、水溶性の天然成分、および、非水溶性の天然成分を抽出するための場所である。高圧供給18は、懸濁液がリアクターアセンブリ23に到達することを可能にする。
【0063】
幾つかの態様では、本システムは、リアクターアセンブリ内にて使用するための懸濁液中に高圧水(幾つかの態様では、例えば、脱イオン水)を濃縮するために、ポンプ19(例えば、ハイポテンシーポンプ(high potency pump))を備えている。幾つかの態様では、本システムは、ポンプ19のモーターの周波数を制御するために、可変周波数モジュレータ(variable frequency modulator)20を備えている。幾つかの態様では、本システムは、水供給ユニット22から供給される水の温度を上げるために、少なくとも1つの更なる発熱体21を備えている。
【0064】
幾つかの態様では、リアクターアセンブリ23は、幾つかの流路リアクターを備え得る。例えば、当該リアクターアセンブリは、略200bar、および、略300℃にて稼働され得る。リアクターアセンブリ23は、高温/高圧のセクションの中の圧力を、プログラムされたパラメーターの範囲内に維持するために、圧力調節バルブ24を備え得る。幾つかの態様では、リアクターアセンブリ23は、様々な直径(例えば、各々、略0.5~10cmであるが、これに限定されない)を有する、幾つかのリアクターを備え得る。幾つかの態様では、上記リアクター群は、縦方向に(vertically)配列され得る。幾つかの態様では、上記リアクター群は、ステンレス鋼によって構成され得る。リアクターアセンブリは、植物由来のバイオポリマーを小さな分子へと化学変換する場所である。なお、当該小さな分子は、水溶性の糖を抽出するために、更に、用いられ得る。加えて、リアクターアセンブリは、初発の植物のバイオマスの物理的性質を変化させて、市場価値を有する更なる製品(例えば、紙)の原料を製造することを可能にする。幾つかの態様では、上述したプロセスは、抽出器の高温/高圧のセクションの中に構成されている、亜臨界水抽出リアクター内にて行われ得る。
【0065】
幾つかの態様では、本システムは、リアクターを出て行く液体から蒸気を分離するために、分離ユニット25を備えている。本システムは、液相内の所望の産物を回収して更に濃縮するために、回収器26を備え得る。また、本システムは、水を回収してリサイクルするために、濃縮器27を備え得る。幾つかの態様では、水を回収し、当該水をシステムに戻す(re-routing)ために、水回収器28が用いられ得る。幾つかの態様では、本システムは、低温/低圧のセクションに対して部分的に懸濁液を供給するために、返送ループ29を備えている。
【0066】
図2は、本システムの一態様を示している。具体的に、上記処理モジュールでは、ポンプ(幾つかの態様では、高圧ポンプであり得る)を用いて、バイオマスの懸濁液を混合ジャンクションへ向かって進ませる。任意で、ポンプ(高圧ポンプであり得る)を用いて、水(例えば、脱イオン水)を混合ジャンクションへ向かって進ませ、当該混合ジャンクションにて、水とバイオマスの懸濁液とを混合する。
【0067】
バイオマスの懸濁液は、2段階の抽出が行われる処理モジュールへ進む。懸濁液を処理するステージ1では、リアクターアセンブリ内にて、低温における亜臨界水抽出が行われる。したがって、リアクターアセンブリは、第1の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、第1の所定時間の間、第1の圧力(幾つかの態様では、0~300psi)、および、第1の温度(幾つかの態様では、200℃以下)に維持される、第1の稼働状態を有している。当該処理が終わった後、圧力調節器、および、セパレーターによって、バイオマスの懸濁液から糖が分離される(separete out)。ステージ1にて処理された材料を処理するステージ2では、リアクターアセンブリは、残存している、第2の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、第2の所定時間の間、第2の圧力(幾つかの態様では、略301~3,000psi)、および、第2の温度(幾つかの態様では、略200℃~350℃)に維持される、第2の稼働状態の下で、上記材料を処理する。次いで、当該材料は、油抽出(oil extraction)のための固形物、糖、および、水に分離される。幾つかの態様では、リアクターアセンブリは、亜臨界水抽出を包含し得る。
【0068】
図3は、本システムの一態様を示している。特に、バイオマス(幾つかの態様では、タバコの俵(tobacco bales)であり得る)が、前処理モジュールに供給される。当該前処理モジュールでは、破砕装置(例えば、ハンマーミル/材料処理装置)が、バイオマスを、より小さな断片へと破砕する。次いで、破砕されたバイオマスは、例えば、コンベヤー、または、他の類似の装置を用いて、圧縮ジューサー(juicer press)に向かって移動される。圧縮ジューサーは、タバコの固形物と、タバコのジュースとを、分離する。タバコの固形物は、リアクターアセンブリ内に供給される。タバコのジュースは、遠心分離機を用いて分離され、(i)固体は、リアクターアセンブリ内に供給するために、固形物と混合され、(ii)液体は、膜濾過されて、ニコチンタンパク質と水とに分離され、当該水は、メインタンク(main tank)に返送される。
【0069】
バイオ炭は、リアクターアセンブリ内にて行われる処理ステップの副産物である。当該バイオ炭は、あらゆる他の適切な処理に用いられ得、または、他の使用(例えば、肥料など)のための、適切な原料油、または、材料として用いられ得る。リアクターアセンブリ由来のタバコの糖懸濁液は、膜濾過モジュール/チャンバー(chamber)内にて処理され、発酵槽/バイオリアクターへ輸送されるタバコのジュースの濃縮物のみならず、水およびニコチン副産物が形成される。燃料前駆体および他の固形物を作製するために、酵母および/またはバクテリアが、発酵槽/バイオリアクター内に加えられる。蒸留/脱水プロセスによって、アルコール、および、固形物が形成され、次いで、当該アルコールおよび固形物は、分子篩に運ばれる。分子篩は、固形物および水を分離し、次いで、当該固形物および水は、遠心分離機に供され、次いで、少なくとも1つの蒸発器に供される。蒸留器によって乾燥された、タンパク質の固形物/タンパク質の濃縮物を作製するために、少なくとも1つの乾燥器が用いられ得る。分子篩は、また、アルコールを分離し、次いで、当該アルコールから、バイオエタノールが形成される。
【0070】
図4aおよび
図4bは、リアクター内における、経時的な、圧力および温度を示すグラフである。具体的に、
図4aは、時間t1まで、第1の圧力が用いられることを示している。時間t1から時間t2まで、第2の圧力(より高い圧力)が用いられる。同様に、
図4bは、時間t1まで、第1の温度が用いられ、時間t1から時間t2まで、第2の温度(より高い温度)が用いられる。
【0071】
図面を参照しながら、具体的な、態様および特徴点について説明した。(i)これらの説明は、あらゆる単一の態様、または、特徴点のあらゆる特定の組み合わせ、に限定されないこと、および、(ii)これらの説明の範囲、および、添付の請求項の精神から離れること無く、同様の態様および特徴点を生じ得ること、または、改変、および、付加を行い得ること、が理解されるべきである。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、当業者に、本発明の代表的な態様を実施するためのガイダンスを提供することを包含している。本願の開示内容、および、当該分野の一般的なレベルを考慮すれば、当業者は、(i)以下の実施例は、単なる典型例のみを意図していること、(ii)本発明の主題から離れること無く、多数の、変更、改変、および、変更を行い得ること、を理解できる。
【0073】
<実施例1>
バッチ式リアクター(Batch Reactor)内における、42gピーナッツの殻の原料油(Peanut Husk Feedstock)の抽出
実施例1~24では、(i)様々な原料油(ピーナッツの殻、ワインの搾りかす、リンゴの皮、松の木のチップ、大豆の殻)を、製紙業のためのパルプの作製に用い得るか否か、および、(ii)熱水による液化プロセス(hydrothermal liquefaction process)を、パルプの作製プロセスに現在用いられている化学物質の減少または代替のために用いることが可能か否か、を決めることを目的とする。
【0074】
42.04gの固体状のピーナッツの殻(含水率:16.15%)と、428mLの1%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLのパーバッチ式リアクター(Parr batch reactor、モデル番号4848)へ加えた。当該リアクターは、ピーナッツの殻、および、NaOHを加える前に、21分間、予め加熱した。後述する表1に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0075】
最高温度は164℃であり、最高圧力は84psiであり、pHは7.5であり、かつ、1.68mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0076】
【0077】
<実施例2>
バッチ式リアクター内における、23.74gピーナッツの殻の原料油の抽出
23.74gの固体状のピーナッツの殻(含水率:16.15%)と、465mLの1%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、ピーナッツの殻、および、NaOHを加える前に、29分間、予め加熱した。後述する表2に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0078】
最高温度は183℃であり、最高圧力は171psiであり、pHは8.25であり、かつ、0.62mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0079】
【0080】
<実施例3>
バッチ式リアクター内における、破砕されたピーナッツの殻の原料油の抽出、20分間の予めの加熱
30.58gの破砕されたピーナッツの殻(含水率:16.15%)と、474mLの5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、ピーナッツの殻、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表3に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0081】
最高温度は176℃であり、最高圧力は1272psiであり、pHは13.79であり、かつ、3.36mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0082】
【0083】
<実施例4>
バッチ式リアクター内における、破砕されたピーナッツの殻の原料油の抽出、36分間の予めの加熱
30.98gの破砕されたピーナッツの殻(含水率:16.15%)と、475mLの5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、ピーナッツの殻、および、NaOHを加える前に、36分間、予め加熱した。後述する表4に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0084】
最高温度は205℃であり、最高圧力は1400psiであり、最低圧力は149psiであり、pHは13.89であり、かつ、2.5mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0085】
【0086】
<実施例5>
バッチ式リアクター内における、31.1gブドウ、および、10g茎の原料油の抽出、2.5%NaOH
31.10gのブドウ(含水率:75.25%)、および、10.01gのブドウの茎(含水率:41.35%)と、470mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、ブドウ、茎、および、NaOHを加える前に、15分間、予め加熱した。後述する表5に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0087】
最高温度は132℃であり、最高圧力は1500psiであり、pHは13.63であり、かつ、1.67mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0088】
【0089】
<実施例6>
バッチ式リアクター内における、15.23gブドウ、および、21.53g茎の原料油の抽出、2.5%NaOH
15.23gのブドウ(含水率:75.25%)、および、21.53gのブドウの茎(含水率:41.35%)と、460mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、ブドウ、茎、および、NaOHを加える前に、15分間、予め加熱した。後述する表6に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0090】
最高温度は157℃であり、最高圧力は1300psiであり、pHは13.86であり、かつ、0.63mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0091】
【0092】
<実施例7>
バッチ式リアクター内における、13.82gブドウ、および、21.75g茎の原料油の抽出、1.5%NaOH
13.82gのブドウ(含水率:75.25%)、および、21.75gのブドウの茎(含水率:41.35%)と、455mLの1.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、ブドウ、茎、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表7に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0093】
最高温度は174℃であり、最高圧力は1240psiであり、pHは13.35であり、かつ、2.12mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0094】
【0095】
<実施例8>
バッチ式リアクター内における、ブドウの茎の原料油の抽出
20.56gのブドウの茎(含水率:41.35%)と、465mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、茎、および、NaOHを加える前に、25分間、予め加熱した。後述する表8に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0096】
最高温度は183℃であり、最高圧力は840psiであり、pHは13.69であり、かつ、2.22mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0097】
【0098】
<実施例9>
バッチ式リアクター内における、リンゴの皮の原料油の抽出、1.5%NaOH
72.71gのリンゴの皮(含水率:78.39%)と、433mLの1.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、リンゴの皮、および、NaOHを加える前に、15分間、予め加熱した。後述する表9に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0099】
最高温度は139℃であり、最高圧力は1300psiであり、pHは13.29であり、かつ、3.98mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0100】
【0101】
<実施例10>
バッチ式リアクター内における、リンゴの皮の原料油の抽出、0.75%NaOH
78.77gのリンゴの皮(含水率:78.39%)と、425mLの0.75%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、リンゴの皮、および、NaOHを加える前に、15分間、予め加熱した。後述する表10に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0102】
最高温度は136℃であり、最高圧力は1600psiであり、pHは10.85であり、かつ、4.91mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0103】
【0104】
<実施例11>
バッチ式リアクター内における、74.73gリンゴの皮の原料油の抽出、2.5%NaOH
74.73gのリンゴの皮(含水率:78.39%)と、420mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、リンゴの皮、および、NaOHを加える前に、15分間、予め加熱した。後述する表11に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0105】
最高温度は170℃であり、最高圧力は1500psiであり、pHは13.40であり、かつ、1.85mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0106】
【0107】
<実施例12>
バッチ式リアクター内における、82gリンゴの皮の原料油の抽出、2.5%NaOH
82.06gのリンゴの皮(含水率:78.39%)と、415mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、リンゴの皮、および、NaOHを加える前に、15分間、予め加熱した。後述する表12に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0108】
最高温度は165℃であり、最高圧力は1400psiであり、pHは13.31であり、かつ、2.91mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0109】
【0110】
<実施例13>
バッチ式リアクター内における、松の木(pinewood)の原料油の抽出、最高圧力1330psi
12.57gの松の木の固形物(含水率:12.43%)と、490mLの5.0%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、松の木、および、NaOHを加える前に、14分間、予め加熱した。後述する表13に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0111】
最高温度は141℃であり、最高圧力は1330psiであり、pHは13.57であり、かつ、0.65mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0112】
【0113】
<実施例14>
バッチ式リアクター内における、松の木の原料油の抽出、最高圧力125psi
16.01gの松の木の固形物(含水率:12.43%)と、455mLの5.0%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、松の木、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表14に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0114】
最高温度は179℃であり、最高圧力は125psiであり、pHは13.45であり、かつ、2.18mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0115】
【0116】
<実施例15>
バッチ式リアクター内における、松の木の原料油の抽出、最高圧力157psi
17.25gの松の木の固形物(含水率:12.43%)と、460mLの5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、松の木、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表15に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0117】
最高温度は187℃であり、最高圧力は157psiであり、pHは13.61であり、かつ、1.90mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0118】
【0119】
<実施例16>
バッチ式リアクター内における、松の木の原料油の抽出、最高圧力1500psi
17.70gの松の木の固形物(含水率:12.43%)と、470mLの5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、松の木、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表16に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0120】
最高温度は185℃であり、最高圧力は1500psiであり、pHは13.60であり、かつ、1.89mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0121】
【0122】
<実施例17>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻(Soy Hull)の原料油の抽出、最高温度162℃、最高圧力1200psi
26.21gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、470mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表17に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0123】
最高温度は162℃であり、最高圧力は1200psiであり、pHは13.13であり、かつ、3.94mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0124】
【0125】
<実施例18>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻の原料油の抽出、最高圧力145psi
30.19gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、470mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表18に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0126】
最高温度は170℃であり、最高圧力は145psiであり、pHは13.44であり、かつ、3.78mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0127】
【0128】
<実施例19>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻の原料油の抽出、最高温度180℃、最高圧力1200psi
30.45gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、465mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表19に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0129】
最高温度は180℃であり、最高圧力は1200psiであり、pHは13.39であり、かつ、3.04mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0130】
【0131】
<実施例20>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻の原料油の抽出、最高圧力1150psi
30.40gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、470mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、18分間、予め加熱した。後述する表20に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0132】
最高温度は170℃であり、最高圧力は1150psiであり、pHは13.45であり、かつ、3.65mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0133】
【0134】
<実施例21>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻の原料油の抽出、最高圧力1000psi
30.39gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、460mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、18分間、予め加熱した。後述する表21に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0135】
最高温度は185℃であり、最高圧力は1000psiであり、pHは13.41であり、かつ、3.02mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0136】
【0137】
<実施例22>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻の原料油の抽出、最高圧力1300psi
30.74gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、460mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表22に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0138】
最高温度は178℃であり、最高圧力は1300psiであり、pHは13.40であり、かつ、2.67mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0139】
【0140】
<実施例23>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻の原料油の抽出、最高圧力1250psi
31.45gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、455mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表23に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0141】
最高温度は193℃であり、最高圧力は1250psiであり、pHは13.36であり、かつ、2.79mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0142】
【0143】
<実施例24>
バッチ式リアクター内における、大豆の殻の原料油の抽出、最高圧力470psi
31.57gの大豆の殻の固形物(含水率:9.35%)と、450mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、大豆の殻、および、NaOHを加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表24に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0144】
最高温度は199℃であり、最高圧力は470psiであり、pHは13.31であり、かつ、2.58mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0145】
【0146】
<実施例1~24から得られる結論>
4つのサンプル(実施例12(リンゴの皮)、実施例15および16(松の木)、並びに、実施例20(大豆の殻))は、製紙業のためのパルプの作製にとって、最も優れていることが明らかになった。当該結論は、サンプルの物理的試験に基づいている。松の木からパルプを作製するための最も適した条件は、略182℃、略800psi、および、30~40分間の滞留時間(residence time)である、と結論付けられた。NaOHの濃度を5%から、7%または10%へ増加させることによって、滞留時間を短縮することができる。リンゴの皮にとって最も適した条件は、略161℃、略800psi、略2.5%NaOH、および、略15分間の滞留時間であった。大豆の皮の実施例群において非常に条件が変化したが、結果は、NaOHの濃度が重要な役割を担い得ること、および、2.5%よりも低いNaOHの濃度は低すぎること、を示している。
【0147】
本願に示したデータは、製紙業のためのパルプを作製する伝統的な方法と比較して、はるかに少ないNaOHを用いて、良質なパルプが作製されたことを示している。
【0148】
<実施例25~34>
実施例25~34は、パルプ作製プロセスに現在用いられている化学物質を減少または置換するために、亜臨界水の技術(または、熱水による液化)を用いて、バイオマス(例えば、タバコのバイオマス)から紙製品を作製するための方法およびプロセス、に関する。加えて、実施例25~34は、パルプ作製プロセスに現在用いられている化学物質を減少または置換するために、熱水による液化プロセス(亜臨界水)を用いることが可能か否か決定すること、に関する。後述する表25に示すように、パルプに関する5つのサンプルセットを作製した。
【0149】
【0150】
これらの実施例では、500mLの容積の、ベンチレベルのリアクター(bench-level reactor)(Parr)を用いた。乾燥させたタバコの茎をハンマーミルに供し、4.5mmの所望の粒子サイズにした。後述する実施例25~34に示すように、様々な条件下(温度;圧力;NaOHの有無;滞留時間;前処理の有無)にて、タバコ原料を処理した。
【0151】
<実施例25>
水を用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、最高圧力300psi
41.69gの圧搾(milled)されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、410mLの脱イオン水と、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、水を加える前に、25分間、予め加熱した。後述する表26に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0152】
最高温度は201℃であり、最高圧力は300psiであり、pHは4.65であり、かつ、0.39mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0153】
【0154】
<実施例26>
水を用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、最高圧力930psi
40.84gの圧搾されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、453mLの脱イオン水と、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、水を加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表27に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0155】
最高温度は180℃であり、最高圧力は930psiであり、pHは5.19であり、かつ、0.46mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0156】
【0157】
<実施例27>
水を用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、最高圧力1500psi
41.70gの圧搾されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、460mLの脱イオン水と、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、水を加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表28に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0158】
最高温度は167℃であり、最高圧力は1500psiであり、pHは5.37であり、かつ、0.40mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0159】
【0160】
<実施例28>
NaOHを用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、最高圧力1383psi
41.32gの圧搾されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、455mLの5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、NaOHを加える前に、30分間、予め加熱した。後述する表29に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0161】
最高温度は166℃であり、最高圧力は1383psiであり、pHは13.49であり、かつ、0.66mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0162】
【0163】
<実施例29>
NaOHを用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、23分間の前加熱(preheating)
41.42gの圧搾されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、455mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、NaOHを加える前に、23分間、予め加熱した。後述する表30に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0164】
最高温度は170℃であり、最高圧力は1500psiであり、pHは13.29であり、かつ、0.48mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0165】
【0166】
<実施例30>
NaOHを用いた、バッチ式リアクター内における、予め加熱したタバコの原料油の抽出
前処理の工程として、タバコの茎を、略1時間煮沸し、当該タバコの茎を、一晩中、水に浸した。245gの前処理されたタバコの茎(含水率:80.27%)と、265mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、NaOHを加える前に、18分間、予め加熱した。後述する表31に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0167】
最高温度は146℃であり、最高圧力は1880psiであり、pHは11.16であり、かつ、0.37mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0168】
【0169】
<実施例31>
水を用いた、バッチ式リアクター内における、予め加熱したタバコの原料油の抽出
前処理の工程として、タバコの茎を、略1時間煮沸し、当該タバコの茎を、一晩中、水に浸した。269.04gの前処理されたタバコの茎(含水率:80.27%)と、240mLの脱イオン水と、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、水を加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表32に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0170】
最高温度は130℃であり、最高圧力は1750psiであり、pHは5.44であり、かつ、0.44mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0171】
【0172】
<実施例32>
水を用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、最高圧力260psi
63.24gの圧搾されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、400mLの脱イオン水と、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、水を加える前に、25分間、予め加熱した。後述する表33に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0173】
最高温度は187℃であり、最高圧力は260psiであり、pHは4.82であり、かつ、0.83mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0174】
【0175】
<実施例33>
NaOHを用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、最高圧力1550psi
50.13gの圧搾されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、445mLの2.5%NaOHと、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、NaOHを加える前に、30分間、予め加熱した。後述する表34に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0176】
最高温度は174℃であり、最高圧力は1550psiであり、pHは13.29であり、かつ、0.56mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0177】
【0178】
<実施例34>
水を用いた、バッチ式リアクター内における、タバコの原料油の抽出、最高圧力1140psi
51gの圧搾されたタバコの茎(含水率:10.46%)と、450mLの脱イオン水と、を混合し、当該混合物を、500mLの実施例1のバッチ式リアクターへ加えた。当該リアクターは、タバコ、および、水を加える前に、20分間、予め加熱した。後述する表35に示すように、様々な時点において、温度、および、圧力を記録した。
【0179】
最高温度は170℃であり、最高圧力は1140psiであり、pHは4.92であり、かつ、0.61mg/mLの可溶性の糖が回収された。
【0180】
【0181】
<実施例25~34から得られる結論>
180℃を超える(over)温度を用いた場合には、固形物の最終量(final content in solids)が非常に少ないことが明らかになった。5%を超える(over)濃度のNaOHを用いた場合にも、同様の結果が得られた(反応中に、固形物が液化した)。反応媒体として、水のみ、または、2.5%NaOHのみを用いた場合に、より良好な結果が得られた。品質が良いパルプを作製するための最も好ましい条件が、略170℃、略1000psi、および、略20分間~30分間の滞留時間であることを、データは示している。
【0182】
図1に示したものと同様の、パイロット規模の抽出器(pilot scale extractor)を用いた場合、同様の結果が得られた。熱水処理を用いること、および、パルプ作製プロセスに用いられるNaOHの量を27%(当該分野の標準値)から2.5%へ著しく減少させることによって、タバコ廃棄物から、紙の初期材料(first piece of paper)を作製した。
図5aおよび
図5bは、タバコのリグノセルロース物質の廃棄物から構成される、紙(5a)、および、カードボード(5b)の写真を示している。以下に示す表36~表38は、パイロット規模のリアクターを用いた、実施例25~32の結果をまとめたものである。表39は、参考として提供されるものである。
【0183】
【0184】
表37は、精製されていないパルプの特性と、タバコの実施例(乾燥されたタバコのバイオマス)から作製されたパルプの特性と、の対比を示す。サンプル1(S1)のプロセスの条件は、185℃、2.5%NaOH、900psiであり、サンプル2(S2)のプロセスの条件は、180℃、2.5%NaOH、900psiであり、サンプル3(S3)のプロセスの条件は、175℃、2.5%NaOH、900psiであり、サンプル4(S4)のプロセスの条件は、170℃、2.5%NaOH、900psiである。
【0185】
【0186】
【0187】
表38は、精製されていないパルプの特性と、タバコの実施例(乾燥されたタバコのバイオマス)から作製されたパルプの特性と、の対比を示す。サンプル1(S1)のプロセスの条件は、185℃、2.5%NaOH、900psiであり、サンプル2(S2)のプロセスの条件は、180℃、2.5%NaOH、900psiであり、サンプル3(S3)のプロセスの条件は、175℃、2.5%NaOH、900psiであり、サンプル4(S4)のプロセスの条件は、170℃、2.5%NaOH、900psiである。
【0188】
【0189】
【0190】
【図面の簡単な説明】
【0191】
【
図1】開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスを処理するためのシステムを示す図である。
【
図2】開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスを処理するためのシステムを示す図である。
【
図3】開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスを処理するためのシステムを示す図である。
【
図4】aは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、処理モジュールの間の「圧力増加」対「時間」の関係を示すグラフであり、bは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、処理モジュールの間の「温度増加」対「時間」の関係を示すグラフである。
【
図5】開示されている本発明の幾つかの態様に係る、バイオマスからパルプを製造するために用いられるプロセスを示すフローチャートである。
【
図6】aは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造された発酵性炭水化物(糖)の写真であり、bは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造された油の写真であり、cは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造されたバイオ炭の写真であり、dは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造されたバイオ派生物(タンパク質)の写真であり、eは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造された紙の写真であり、fは、開示されている本発明の幾つかの態様に係る、製造されたカードボード(cardboard)の写真である。