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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】浴槽洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018002027
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019118705
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古川 真也
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009854(JP,A)
【文献】特開2006-081724(JP,A)
【文献】特開平11-037554(JP,A)
【文献】特開2005-160745(JP,A)
【文献】特公平5-009639(JP,B2)
【文献】特開2008-183061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯留する貯留容器と、
洗剤を貯留する洗剤タンクと、
貯留容器から供給される湯水と洗剤タンクから供給される洗剤とを混合して洗浄水を生成する洗剤混合部と、
貯留容器から洗剤混合部に湯水を供給する湯水連絡管と、
洗剤タンクから洗剤混合部に洗剤を供給する洗剤導入管と、
浴槽内に洗浄水や湯水を噴射する洗浄ノズルと、
洗剤混合部から洗浄ノズルに洗浄水や湯水を供給する洗浄管と、
湯水連絡管に設けられ、湯水を圧送するポンプと、
ポンプの回転数を検出する回転数検出部と、
ポンプの消費電力または電流を検出するポンプ駆動特性検出部と、
洗浄運転におけるポンプの駆動を制御する制御部と、
所定の目標流量、並びにポンプの回転数と、ポンプの消費電力または電流と、流量との相関関係を示す第1ポンプデータを記憶する記憶部と、を備え、
制御部は、洗浄運転において、回転数検出部で検出されるポンプの回転数と、ポンプ駆動特性検出部で検出されるポンプの消費電力または電流と、第1ポンプデータとから現在流量を算出し、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、第1ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正する浴槽洗浄装置。
【請求項2】
湯水を貯留する貯留容器と、
洗剤を貯留する洗剤タンクと、
貯留容器から供給される湯水と洗剤タンクから供給される洗剤とを混合して洗浄水を生成する洗剤混合部と、
貯留容器から洗剤混合部に湯水を供給する湯水連絡管と、
洗剤タンクから洗剤混合部に洗剤を供給する洗剤導入管と、
浴槽内に洗浄水や湯水を噴射する洗浄ノズルと、
洗剤混合部から洗浄ノズルに洗浄水や湯水を供給する洗浄管と、
湯水連絡管に設けられ、湯水を圧送するポンプと、
ポンプの回転数を検出する回転数検出部と、
ポンプの消費電力または電流を検出するポンプ駆動特性検出部と、
洗浄運転におけるポンプの駆動を制御する制御部と、
所定の目標流量、並びにポンプの回転数と、ポンプの消費電力または電流と、流量との相関関係を示す第1ポンプデータ、及びポンプの回転数と、ポンプの揚程と、流量と、ポンプ下流側の流路の抵抗との相関関係を示す第2ポンプデータを記憶する記憶部と、を備え
制御部は、洗浄運転において、回転数検出部で検出されるポンプの回転数と、ポンプ駆動特性検出部で検出されるポンプの消費電力または電流と、第1ポンプデータとから現在流量を算出し、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、第2ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正する浴槽洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽を自動で洗浄する浴槽洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽内へ洗浄水や湯水を噴射させて浴槽の内壁面に付着した汚れを洗い落とす浴槽洗浄装置が知られている。この種の浴槽洗浄装置では、例えば、洗剤と湯水とを洗剤混合部で混合させて洗浄水を生成し、洗浄ノズルから浴槽内に向けて洗浄水や湯水を噴射させている。
【0003】
上記のような浴槽洗浄装置において高い洗浄効果を得るためには、所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させる必要がある。そのため、洗浄ノズルから浴槽内に向けて洗浄水や湯水を噴射させる流量を所定の目標流量となるように調整する必要がある。
【0004】
一方、上記のような浴槽洗浄装置において、湯水を貯留する貯留容器を設けるとともに、貯留容器よりも下流側の流路にポンプを設け、ポンプによって貯留容器の湯水を洗剤混合部に圧送し、洗浄ノズルから洗浄水や湯水を噴射させることが考えられる。このような構成により浴槽の所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させるためには、所定の目標流量となるような予め設定された目標回転数でポンプを駆動させることも考えられるが、配管長さや電圧差などの設置環境による相違や、ポンプ性能のバラツキ、異物詰まり等による経年劣化によって、目標回転数に対応した所定の目標流量が得られず、洗浄水や湯水の噴射位置が所定の位置からずれてきて、十分な洗浄性能が得られないという問題がある。
【0005】
また、貯留容器よりも下流側の流路に流量センサを設け、流量センサで検出される流量に基づきポンプの回転数を制御することも考えられるが、洗剤混合部から上流側へ逆流する洗剤だけでなく、水中に含まれるスケールや開放系の貯留容器を用いたときの藻や汚れなどの異物が湯水内に混入する場合がある。その結果、これらの異物や洗剤が流量センサの機構部を詰まらせる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-61850号公報
【文献】特開2013-9854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、湯水を貯留する貯留容器と、貯留容器内の湯水を圧送するポンプとを備えた浴槽洗浄装置において、ポンプの回転数を制御するための流量センサを用いることなく、高い洗浄効果を発揮させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
湯水を貯留する貯留容器と、
洗剤を貯留する洗剤タンクと、
貯留容器から供給される湯水と洗剤タンクから供給される洗剤とを混合して洗浄水を生成する洗剤混合部と、
貯留容器から洗剤混合部に湯水を供給する湯水連絡管と、
洗剤タンクから洗剤混合部に洗剤を供給する洗剤導入管と、
浴槽内に洗浄水や湯水を噴射する洗浄ノズルと、
洗剤混合部から洗浄ノズルに洗浄水や湯水を供給する洗浄管と、
湯水連絡管に設けられ、湯水を圧送するポンプと、
ポンプの回転数を検出する回転数検出部と、
ポンプの消費電力または電流を検出するポンプ駆動特性検出部と、
洗浄運転におけるポンプの駆動を制御する制御部と、
所定の目標流量、並びにポンプの回転数と、ポンプの消費電力または電流と、流量との相関関係を示す第1ポンプデータを記憶する記憶部と、を備え、
制御部は、洗浄運転において、回転数検出部で検出されるポンプの回転数と、ポンプ駆動特性検出部で検出されるポンプの消費電力または電流と、第1ポンプデータとから現在流量を算出し、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、第1ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正する浴槽洗浄装置が提供される。
【0009】
例えば、ポンプ下流側の流路に異物等が詰まるとポンプ下流側の流路の抵抗が大きくなるから、所定の目標回転数でポンプを駆動させても、圧送する湯水の流量が低下し、所定の目標流量が得られなくなるが、ポンプ下流側の流路に流量センサが設けられていない場合、流量の低下を直接、検出することができない。
【0010】
しかしながら、ポンプ下流側の流路の抵抗が大きくなると、同一の回転数でも圧送する湯水の流量が低下するから、ポンプの仕事量が減少して、ポンプの消費電力及び電流は低下する
【0012】
って、所定の目標流量となるように所定の目標回転数でポンプを駆動させたときのポンプの消費電力または電流と、ポンプの回転数、ポンプの消費電力または電流、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータとを対比すれば、現在流量と所定の目標流量との相違を検出することができる。
【0013】
そして、ポンプの回転数が増加するに従って、圧送する湯水の流量が増加し、それに伴ってポンプの消費電力及び電流が増加するから、所定の目標流量が得られるまでポンプの回転数を増加させる。すなわち、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、ポンプの回転数と、ポンプの消費電力または電流と、流量との相関関係を示す第1ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正することができる。
【0014】
また、本発明によれば
湯水を貯留する貯留容器と、
洗剤を貯留する洗剤タンクと、
貯留容器から供給される湯水と洗剤タンクから供給される洗剤とを混合して洗浄水を生成する洗剤混合部と、
貯留容器から洗剤混合部に湯水を供給する湯水連絡管と、
洗剤タンクから洗剤混合部に洗剤を供給する洗剤導入管と、
浴槽内に洗浄水や湯水を噴射する洗浄ノズルと、
洗剤混合部から洗浄ノズルに洗浄水や湯水を供給する洗浄管と、
湯水連絡管に設けられ、湯水を圧送するポンプと、
ポンプの回転数を検出する回転数検出部と、
ポンプの消費電力または電流を検出するポンプ駆動特性検出部と、
洗浄運転におけるポンプの駆動を制御する制御部と、
所定の目標流量、並びにポンプの回転数と、ポンプの消費電力または電流と、流量との相関関係を示す第1ポンプデータ、及びポンプの回転数と、ポンプの揚程と、流量と、ポンプ下流側の流路の抵抗との相関関係を示す第2ポンプデータを記憶する記憶部と、を備え
制御部は、洗浄運転において、回転数検出部で検出されるポンプの回転数と、ポンプ駆動特性検出部で検出されるポンプの消費電力または電流と、第1ポンプデータとから現在流量を算出し、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、第2ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正する浴槽洗浄装置が提供される
【0015】
一般に、ポンプの流量と揚程との相関関係を示す流量-揚程特性曲線はポンプ固有の特性であり、ある状態におけるポンプ下流側の流路の抵抗は、流量-揚程特性曲線上に抵抗曲線として表すことができ、ポンプを駆動させたときの流量は、所定のポンプの回転数における流量-揚程特性曲線と抵抗曲線との交点(動作点)により定まる。また、既述したように、ポンプを駆動させたときの流量の変化は、ポンプの消費電力または電流で検出することができる。
【0016】
一方、ポンプ下流側の流路に異物等が詰まると、ポンプ下流側の流路の抵抗が増加し、流量が低下するから、ポンプの回転数が同一であっても、ポンプの仕事量が減少して、ポンプの消費電力及び電流は低下する。従って、所定の目標流量が得られるように所定の目標回転数でポンプを駆動させたときのポンプの消費電力または電流と、ポンプの回転数、ポンプの消費電力または電流、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータとに基づき、現在流量と所定の目標流量との相違を検出することができる。
【0017】
また、所定の目標回転数でポンプを駆動させたときの流量-揚程特性曲線と現在のポンプ下流側の流路の抵抗の抵抗曲線との交点が現在流量が得られる動作点であるから、第1ポンプデータに基づき決定される現在流量と、ポンプの回転数、ポンプの揚程、流量、及びポンプ下流側の流路の抵抗との相関関係を示す第2ポンプデータとに基づき現在のポンプ下流側の流路の抵抗の抵抗曲線を選択することができる。そして、ポンプ下流側の流路の抵抗が同一であれば、ポンプの回転数を増加させることにより、その抵抗曲線に沿って流量が増加するから、所定の目標流量が得られるポンプの回転数を抵抗曲線に沿って決定し、補正する。すなわち、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、ポンプの回転数と、ポンプの揚程と、流量と、ポンプ下流側の流路の抵抗との相関関係を示す第2ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正することができる。また、上記のようにポンプ下流側の流路の抵抗を利用することにより、所定の目標流量が得られるポンプの回転数をダイレクトに特定することができるから、短時間で所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、流量センサを用いることなく、ポンプの消費電力または電流を利用することにより、所定の目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正することができる。これにより、安定して所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。従って、高い洗浄効果を有する浴槽洗浄装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る浴槽洗浄装置の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る浴槽洗浄装置の流量-消費電力データを示す相関図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1に係る浴槽洗浄装置の試運転における制御動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施の形態1に係る浴槽洗浄装置の洗浄運転における制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
図5図5は、本発明の実施の形態1に係る浴槽洗浄装置の洗浄運転における制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
図6図6は、本発明の実施の形態1に係る浴槽洗浄装置の洗浄運転における制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係る浴槽洗浄装置の流量-揚程データ及び抵抗データを示す相関図である。
図8図8は、本発明の実施の形態2に係る浴槽洗浄装置の試運転における制御動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施の形態2に係る浴槽洗浄装置の洗浄運転における制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る浴槽洗浄装置を説明する。
図1は、本実施の形態に係る浴槽洗浄装置の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、浴室BR内には、浴室壁に沿って浴槽1が配設され、浴室BR外(例えば、屋外)には、熱源機である給湯器6が配設されている。図示しないが、浴槽1は、貯水部を構成する浴槽内周壁と、貯水部の開口縁から全周に亘って外方へ水平に張り出す上縁フランジ部と、浴槽1の外側面を構成するエプロンとを備え、上縁フランジ部の下方には浴槽内空間10が形成されている。
【0021】
浴槽1の底部には、浴槽1に貯留された湯水である浴槽水を排水するための排水栓2と、湯水や洗浄水を噴射する洗浄ノズル7とが設けられている。図示しないが、洗浄ノズル7は、洗浄管43を介して供給される湯水や洗浄水を浴槽1の貯水部の内周面全域に亘って放射状に噴射する噴射口を備える。この噴射口は、湯水や洗浄水の流量に応じて、湯水や洗浄水の噴射位置が貯水部の内周面の上下域に変動するように構成されている。浴槽1の上縁フランジ部には、排水スイッチ5が設けられており、排水スイッチ5は、上縁フランジ部の下方に設けられた排水栓2を開閉する排水栓コントローラ50と接続されている。従って、使用者が排水スイッチ5を操作したり、後述するリモコンRの洗浄スイッチを操作したりすると、排水栓2が開栓され、浴槽1内の浴槽水が排水される。
【0022】
図示しないが、給湯器6は、ガスバーナと、給湯熱交換器とを備える。ガスバーナには、ガス供給管78が接続されている。給湯熱交換器には、給水源から上水を供給するための給水管63と、カランやシャワーなどの給湯栓65や後述する本体ユニット4に給湯器6から加熱された湯水を供給する給湯管66とが接続されている。給湯器6内には、給湯器6の運転を制御する給湯器コントローラ60が組み込まれており、給水管63に設けられた給水センサや給湯管66に設けられた給湯温度センサなどの各種センサ、給水管63、給湯管66、及びガス供給管78に設けられた各種制御弁、点火装置、電源ボックスや、給湯器用のリモコンは、給湯器コントローラ60と接続されている。なお、本実施の形態では、給湯器6は給湯熱交換器のみを有するが、浴槽1に循環金具を設けるとともに、給湯器6に給湯熱交換器及び風呂熱交換器を設け、追焚き機能を有する給湯器を用いてもよい。また、電気式給湯器やヒートポンプ式給湯器を用いてもよい。
【0023】
給水管63及び給湯管66はそれぞれ、給湯栓65側と浴室BRの天井裏に配設された本体ユニット4側とに分岐している。給水管63及び給湯管66からそれぞれ本体ユニット4側に分岐する湯水タンク47よりも上流側の第1温調用給水管63a及び第1湯水供給管66aには、逆止弁71,72と、湯水混合部80とが接続されている。より詳細には、湯水混合部80は、第1温調用給水管63aに上流側から順に介設された、給水温センサ81、水量センサ83、及び水量調整弁85と、第1湯水供給管66aに上流側から順に介設された、湯温センサ82、湯量センサ84、及び湯量調整弁86とを備える。また、逆止弁71,72近傍の第1温調用給水管63a及び第1湯水供給管66aの配管周囲にはそれぞれ、凍結防止用ヒーター73,74が配設されている。第1温調用給水管63a及び第1湯水供給管66aは、水量調整弁85及び湯量調整弁86の下流側で合流して、1つの第2湯水供給管66bを構成している。第2湯水供給管66bには、温度センサ75が介設されている。
【0024】
第2湯水供給管66bは、補水用電磁弁(補水弁)46を介して、貯留容器である湯水タンク47に接続されている。また、湯水混合部80と湯水タンク47とを接続する第2湯水供給管66bからは、湯張り用湯水供給管66dが分岐しており、湯張り用湯水供給管66dは、湯張り用電磁弁90を介して、浴槽1の上方に位置する框水栓79と接続されている。第2湯水供給管66bの分岐部と湯張り用電磁弁90との間の湯張り用湯水供給管66dの配管周囲には、凍結防止用ヒーター76が配設されている。
【0025】
図示しないが、湯水タンク47の上部には、第2湯水供給管66bから供給される湯水が吐出する補水口と、補水口よりも下方に位置するオーバーフロー口とが設けられている。また、湯水タンク47の底部には、流出口が設けられており、流出口には、ポンプ48に湯水を供給するための湯水連絡管66cが接続されている。さらに、オーバーフロー口には、浴槽パン内に延設されたオーバーフロー管68が接続されている。従って、補水口とオーバーフロー口との間には吐水口空間が形成されており、第2湯水供給管66bは湯水タンク47によって湯水タンク47よりも下流側の流路と縁切りされている。このため、湯水タンク47は、逆流防止手段として機能する。
【0026】
湯水タンク47内には、貯留されている湯水の量を検出するための長さの異なる高水位電極471、低水位電極472、及びアース電極473が挿入されている。高水位電極471は、湯水タンク47内に湯水が貯留された際、下端がオーバーフロー口よりも下方に位置するように配設されている。高水位電極471及び低水位電極472はそれぞれ、水位が所定の高水位及び低水位に達するとオンとなり、所定の高水位及び低水位に満たないとオフとなる。
【0027】
湯水タンク47と洗剤混合部51とを接続する湯水連絡管66cには、上流側から順に、ポンプ48と、開閉電磁弁(開閉弁)49とが介設されている。ポンプ48を駆動及び停止させるとともに、開閉電磁弁49を開弁及び閉弁させることにより、湯水タンク47から洗浄水生成ユニット3へ湯水が供給及び停止され、それによって洗浄ノズル7から湯水や洗浄水の噴射及び停止が行われる。また、ポンプ48の回転数を制御することにより、洗浄ノズル7から噴射される湯水や洗浄水の流量が調整される。従って、ポンプ48から洗浄ノズル7までの流路がポンプ48の下流側の流路を構成している。
【0028】
ポンプ48は、モータ480を駆動用電動機とし、インバータ制御による駆動電圧の変更制御によって、ポンプ羽根の回転数の変更制御が行われて、流量が変更されるように構成されている。図示しないが、モータ480には、上記ポンプ48の回転数を検出するホール素子などの回転数検出部と、上記駆動電圧の制御信号により印加された電圧下で流れる電流を検出する電流検出部とが配設されている。これらの検出信号は本体ユニットコントローラ40に出力される。
【0029】
図示しないが、本体ユニット4は、上記した湯水混合部80、湯水タンク47、ポンプ48等の各構成部品が収容されたケーシングを備え、ケーシング内の湯水混合部80の近傍には、ケーシング内の温度を検出する低温感知用温度センサ77が配設されている。また、既述した給水温センサ81、湯温センサ82、水量センサ83、湯量センサ84、水量調整弁85、湯量調整弁86、凍結防止用ヒーター73,74,76、温度センサ75、低温感知用温度センサ77、補水用電磁弁46、開閉電磁弁49、湯張り用電磁弁90、湯水タンク47内の電極471,472,473、モータ480、及び図示しない回転数検出部や電流検出部は、ケーシング内に設けられた本体ユニットコントローラ40と電気配線を介して接続されている。さらに、本体ユニットコントローラ40は、後述する洗浄ユニットコントローラ30、リモコンRや、図示しない電源ボックスと電気配線を介して接続されている。
【0030】
浴槽1の上縁フランジ部の下方に位置する浴槽内空間10には、洗浄水生成ユニット3を構成する、洗剤を貯留する洗剤タンク41と、ベンチュリ式の洗剤混合部51と、洗剤タンク41からの洗剤を洗剤混合部51に導く洗剤導入管44とが配設されており、洗剤導入管44には、洗剤混合部51への洗剤の供給を調整する第1及び第2洗剤弁42a,42bが介設されている。洗剤混合部51と洗浄ノズル7とは、洗浄管43を介して接続されている。なお、浴槽内空間10の大きさ等に応じて、洗剤タンク41、第1及び第2洗剤弁42a,42b、並びに洗剤混合部51を浴槽内空間10内でそれぞれ離間させて配設してもよい。
【0031】
天井裏の本体ユニット4と、浴室BR内の洗浄水生成ユニット3とは、浴槽1の一側方の浴室壁を貫通する湯水連絡管66cによって接続されている。より詳細には、湯水連絡管66cは、本体ユニット4の開閉電磁弁49と、洗浄水生成ユニット3の洗剤混合部51とに接続されている。従って、第1及び第2洗剤弁42a,42bが開弁された状態で、ポンプ48を駆動させるとともに、開閉電磁弁49を開弁させて、湯水タンク47に貯留された湯水を湯水連絡管66cを介して洗剤混合部51に供給すると、湯水が洗剤混合部51を通過する際に生じる負圧によって、洗剤と湯水とが混合されて洗浄水が生成され、洗浄管43を通って、洗浄ノズル7から洗浄水が噴射され、浴槽1の洗浄が行われる。また、第1及び第2洗剤弁42a,42bが閉弁された状態で、同様にポンプ48を駆動させるとともに、開閉電磁弁49を開弁させて、湯水タンク47に貯留された湯水を湯水連絡管66cから洗剤混合部51に供給すると、洗浄ノズル7から湯水のみが噴射され、浴槽1の予備洗浄やすすぎが行われる。なお、図示しないが、ポンプ48よりも下流側の湯水連絡管66cから分岐させた殺菌用配管と浴室BRの天井壁などに設けたミストノズルとをオゾン水や次亜塩素酸水などの殺菌水を発生させる殺菌装置を介して接続させることにより、浴室BR内に殺菌水を噴霧させ、浴室BR内全体を殺菌することもできる。
【0032】
図示しないが、洗浄水生成ユニット3は、上記した洗剤混合部51や第1及び第2洗剤弁42a,42bが収容されたケーシングを備える。また、洗浄水生成ユニット3には、洗浄ユニットコントローラ30が組み込まれており、既述した第1及び第2洗剤弁42a,42bや図示しない洗剤タンク41の電極は、洗浄ユニットコントローラ30と電気配線を介して接続されている。さらに、洗浄ユニットコントローラ30は、電気配線を介して排水栓コントローラ50及び本体ユニットコントローラ40と接続されている。なお、洗剤混合部51は、負圧によって洗剤と湯水とを混合するものだけでなく、洗剤と湯水とを撹拌混合させる撹拌容器を用いてもよい。
【0033】
浴室BR内には、湯張り運転及び洗浄運転用のリモコンRが配設されている。リモコンRには、運転スイッチ101、湯張り運転を行う湯張りスイッチ102、洗浄運転を行う洗浄スイッチ103、洗浄運転終了後に、湯張り運転を行う洗浄・湯張りスイッチ104、湯張り温度を設定する湯張り温度設定スイッチ105、さし湯やさし水運転を開始及び停止させるさし湯及びさし水スイッチ106、洗浄コースを選択する洗浄コース設定スイッチ107、タイマスイッチ108、及び運転状態や設定温度が表示される表示部110などが設けられている。なお、後述するように、リモコンRは、所定の目標流量を設定するための試運転における設定部としても機能する。また、図示しないが、リモコンRは、本体ユニットコントローラ40と電気配線を介して接続されており、洗浄ユニットコントローラ30や排水栓コントローラ50と本体ユニットコントローラ40を介して接続されている。各コントローラは、CPU、ROM、RAMを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
【0034】
図示しないが、給湯器コントローラ60は、給湯器6の給湯運転を制御する給湯制御回路が組み込まれており、本体ユニットコントローラ40には、洗浄運転や試運転を制御する洗浄制御回路が組み込まれている。また、洗浄制御回路は、機能的構成手段として、補水用電磁弁46及び開閉電磁弁49の開閉や水量調整弁85及び湯量調整弁86の開度を制御して洗浄運転や試運転を実行する洗浄運転制御部、洗浄運転や試運転においてモータ480をインバータ制御して、ポンプ48を所定の回転数で駆動させるポンプ駆動部、ポンプ48を所定の回転数で駆動させたときに電流検出部から出力される電流とインバータ制御の駆動電圧とに基づき、ポンプ48の消費電力を算出する消費電力算出部、消費電力算出部で算出されるポンプ48の現在の消費電力と、記憶部に記憶されているポンプ48の回転数に応じた消費電力と流量との相関関係を示す第1ポンプデータとから現在流量を算出して、現在流量と所定の目標流量との相違を判定する流量判定部、ポンプ48の現在の消費電力と第1ポンプデータとに基づき、所定の回転数増減分ずつ段階的にポンプ48の回転数を増減させていく回転数補正部、及び試運転において、目標流量及び基準目標回転数を設定する試運転設定制御部を備える。従って、本実施の形態では、洗浄制御回路の各機能部が、洗浄運転においてポンプ48の回転数を制御し、補正する制御部として機能する。また、本実施の形態では、モータ480の電流検出部と、電流検出部で検知された電流に基づきポンプ48の消費電力を算出する消費電力算出部とがポンプ駆動特性検出部として機能する。なお、ポンプ48の消費電力は、電力計により直接、検出してもよい。本体ユニットコントローラ40の記憶部であるメモリには、試運転において目標流量及び基準目標回転数を設定するための設定制御プログラム、洗浄運転を実行する洗浄制御プログラム、洗浄運転中にポンプ48の回転数を補正する補正制御プログラムの他、現在流量の算出やポンプ48の回転数を補正するための第1ポンプデータのデータテーブル、ポンプ48の回転数を変更するためのポンプ48の駆動電圧の設定値が格納されているとともに、工場出荷時にはその1つが初期値として登録されている。
【0035】
図2は、本実施の形態の浴槽洗浄装置における洗浄運転中の補正制御の動作を概略的に説明するものであり、第1ポンプデータに基づいて作製されたポンプ48の流量-消費電力データ(以下、「Q-P特性曲線」という)を示す。図2では、所定間隔(10Hz)ごとに回転数を増減させたN(-1)~N(+3)の5段階(190Hz~230Hz)の回転数に応じたQ-P特性曲線が示されている。これらの最大及び最小回転数並びに回転数の増減の段階数は例示であり、必要とされる流量及び精度に応じて、多くあるいは少なく設定してもよい。なお、このポンプ48を用いて洗浄運転を行う場合の目標流量及び基準目標回転数を設定するための試運転における設定制御については、後述する。
【0036】
Q-P特性曲線は、ポンプ固有の特性である。例えば、図2では、ポンプ下流側の流路の抵抗の初期状態において、目標流量Q(0)は、5.0L/分に設定されており、この所定の目標流量Q(0)を得るためのポンプ48の目標回転数N(0)は、200Hzに設定されている。従って、ポンプ下流側の流路の初期状態において回転数N(0)でポンプ48を駆動させたとき、図2の回転数N(0)のQ-P特性曲線と目標流量Q(0)との基準点L(0)における消費電力P(0)は、40Wとなる。
【0037】
しかしながら、ポンプ下流側の流路に異物等が詰まると、ポンプ下流側の流路の抵抗が大きくなる。そのため、ポンプ48を回転数N(0)で駆動させると、回転数N(0)のQ-P特性曲線に沿って流量Qが低下し、それに伴ってポンプ48の仕事量が減少し、ポンプ48の消費電力Pも低下してくる。従って、ポンプ48の現在の消費電力Pと、ポンプ48の回転数Nに応じたQ-P特性曲線とを対比することにより、現在流量Qと目標流量Q(0)との相違を判定することができる。そして、ポンプ下流側の流路の抵抗の増加に起因して、例えば、図2に示すように流量Qが回転数N(0)のQ-P特性曲線に沿って変化点L(1)まで低下すると、消費電力Pは消費電力P(1)(31W)程度まで低下し、現在流量Qと所定の目標流量Q(0)との乖離が大きくなる。その結果、洗浄水や湯水の噴射位置が所定の噴射位置から低い位置にずれてきて、洗浄性能が低下する。
【0038】
このため、本実施の形態では、現在流量Qと目標流量Q(0)との乖離が大きくなると、モータ480にポンプ48の回転数Nを増加させる制御信号が出力され、ポンプ48の回転数Nを、記憶部に記憶されている第1ポンプデータに基づいて段階的に増加させる補正制御を実行する。
【0039】
具体的には、上記のようにポンプ48の現在の消費電力PとQ-P特性曲線とから算出される現在流量Qが所定の目標流量Q(0)よりも低下している場合、ポンプ48の回転数Nを回転数N(0)から1段階増加させた回転数N(+1)(210Hz)に増加させる。すると、ポンプ48によって圧送される湯水の流量Qは、回転数N(+1)のQ-P特性曲線に沿って、例えば、変化点L(2)まで増加する。しかしながら、本実施の形態のポンプ48では、図2に示すように、回転数N(+1)でポンプ48を駆動させたときにポンプ48の消費電力P(2)(38W)となる流量Q(4.6L/分)は、回転数N(+1)のQ-P特性曲線における所定の目標流量Q(0)(5.0L/分)よりも少ない。このため、さらにポンプ48の回転数Nを回転数N(+1)から1段階増加させた回転数N(+2)(220Hz)に増加させる。すると、ポンプ48によって圧送される湯水の流量Qは、回転数N(+2)のQ-P特性曲線に沿って、例えば、変化点L(3)まで増加する。この回転数N(+2)で回転させたときにポンプ48の消費電力P(3)(46W)となる流量Qは、所定の目標流量Q(0)(5.0L/分)に一致する。従って、ポンプ下流側の流路の抵抗の変化によりポンプ48の圧送する流量が低下した場合でも、ポンプ48を所定の回転数で回転させたときのポンプ48の消費電力と、ポンプ48の回転数、ポンプ48の消費電力、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータとに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することによって、所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。なお、ポンプ48の消費電力はポンプ48の電流により算出されるため、ポンプ48の消費電力の代わりに、ポンプ48の電流を用いても同様にポンプ48の回転数を補正することができる。
【0040】
また、上記のようにポンプ下流側の流路に異物等が詰まっても、清掃等を行うことによりポンプ下流側の流路から異物等が除去され、ポンプ下流側の流路の抵抗が低下する場合がある。このような場合、ポンプ48の回転数Nを回転数N(+2)に増加させた状態を維持すると、ポンプ下流側の流路の抵抗の低下により、回転数N(+2)のQ-P特性曲線に沿って流量Qが増加し、それに伴って消費電力Pも増加してくる。従って、上記と同様に、ポンプ48の消費電力Pと、ポンプ48の回転数N(+2)のQ-P特性曲線とを対比することにより、現在流量Qと所定の目標流量Q(0)との相違を判定することができる。そして、ポンプ下流側の流路の抵抗の低下に起因して、例えば、図2に示すように流量Qが回転数N(+2)のQ-P特性曲線に沿って変化点L(4)まで増加すると、ポンプ48の消費電力Pは消費電力P(4)(57W)程度まで増加し、現在流量Qと所定の目標流量Q(0)との乖離が大きくなる。その結果、洗浄水や湯水の噴射位置が所定の噴射位置よりも高い位置にずれてきて、噴射位置が低い場合と同様に、洗浄性能が低下する。
【0041】
このため、本実施の形態では、上記の消費電力Pが低下した場合とは逆に、モータ480にポンプ48の回転数Nを低下させる制御信号が出力され、ポンプ48の回転数Nを記憶部に記憶されている第1ポンプデータに基づき段階的に低下させる補正制御を実行する。
【0042】
具体的には、上記のようにポンプ48の消費電力PとQ-P特性曲線とから算出される現在流量Qが所定の目標流量Q(0)よりも増加している場合、ポンプ48の回転数Nを回転数N(+2)から1段階低下させたN(+1)(210Hz)に低下させる。すると、ポンプ48によって圧送される湯水の流量Qは、回転数N(+1)のQ-P特性曲線に沿って、例えば、変化点L(5)まで低下する。しかしながら、本実施の形態のポンプ48では、図2に示すように、回転数N(+1)でポンプ48を駆動させたときのポンプ48の消費電力P(5)(48W)となる現在流量Q(5.5L/分)は、回転数N(+1)のQ-P特性曲線における所定の目標流量Q(0)(5.0L/分)よりも多い。このため、さらにポンプ48の回転数Nを回転数N(+1)から1段階低下させた回転数N(0)に低下させる。すると、ポンプ48によって圧送される湯水の流量Qは、回転数N(0)のQ-P特性曲線に沿って、例えば、変化点L(6)(ここでは、L(6)=L(0))まで低下し、この回転数N(0)で回転させたときにポンプ48の消費電力P(6)(40W)(ここでは、P(6)=P(0))となる流量Qは、所定の目標流量Q(0)(5.0L/分)に一致する。従って、ポンプ下流側の流路の抵抗の変化によりポンプ48の圧送する流量が増加した場合でも、ポンプ48を所定の回転数で回転させたときのポンプ48の消費電力と、ポンプ48の回転数、ポンプ48の消費電力、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータとに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することによって、所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。
【0043】
なお、上記説明では、簡略化のため、ポンプ48の消費電力Pの増減に伴い、ポンプ48の回転数Nを回転数N(+2)に増加またはポンプ48の回転数Nを回転数N(0)に減少させることにより、所定の目標流量Q(0)が得られているが、ポンプ48の回転数Nの増減の程度によって流量の増減も変動する。従って、ポンプ48の性能や浴槽1の大きさなどに合わせて、回転数補正後の洗浄水や湯水の噴射位置と、所定の噴射位置との相違が許容範囲内であれば、必ずしも補正後の流量と所定の目標流量とを完全に一致させる必要はない。
【0044】
次に、図3を参照して、試運転において目標流量及び基準目標回転数を設定する設定制御について説明する。なお、本実施の形態の浴槽洗浄装置では、後述する洗浄運転の各工程で同一の噴射位置が設定されているため、試運転におけるこれらの設定も1回だけ実行されるが、各工程で異なる噴射位置が設定される場合、噴射位置に合わせて目標流量及び基準目標回転数を設定する設定制御が実行される。
【0045】
給湯器6、洗浄水生成ユニット3、本体ユニット4、リモコンRなどの設置工事が終了した後、給湯器用のリモコンの運転スイッチがオン操作された状態で、例えば、施工者がリモコンRの洗浄・湯張りスイッチ104と洗浄コース設定スイッチ107とを同時押しする試運転スイッチのオン操作を行うと、設定制御プログラムが起動される。
【0046】
この設定制御では、まず排水栓コントローラ50により排水栓2が開栓され、本体ユニットコントローラ40により補水用電磁弁46を開弁させる。すると、水道水圧力によって給水管63から給湯器6に上水が供給され、図示しない給水センサで所定水量以上の水量が検知されると、給湯器コントローラ60は、ガスバーナを点火させて給湯運転を開始させる。そして、湯水タンク47内の低水位電極472がオンになると、開閉電磁弁49を開弁させる。そして、ポンプ48を工場出荷時に記憶部に登録されている初期値の駆動電圧で駆動させる。これにより、ポンプ48が所定の初期回転数N(S)で回転され、洗浄ノズル7から浴槽1へ湯水の噴射が開始される(ステップST1~ST5)。
【0047】
施工者が洗浄水の噴射位置を確認し、湯水の噴射位置が所定の噴射位置(例えば、予想される喫水線)と合致している場合、施工者がリモコンRの洗浄・湯張りスイッチ104を再度押す確定操作が行われると、初期回転数N(S)が基準目標回転数N(0)として記憶部に登録される。また、第1ポンプデータに基づき、このときの基準目標回転数N(0)でポンプ48を駆動させたときの消費電力Pに対応する目標流量Q(0)が記憶部に登録される(ステップST6,ST8~ST9)。また、噴射位置が所定の噴射位置からずれている場合、施工者がリモコンRの洗浄コース設定スイッチ107のUP/DOWNキーを操作することによりポンプ48の回転数を増減させて、流量を増減させ、噴射位置を所定の噴射位置に合致させる。その後、上記と同様に、リモコンRの洗浄・湯張りスイッチ104を再度押す確定操作が行われると、変更後の回転数N及び流量Qがそれぞれ、基準目標回転数N(0)及び目標流量Q(0)として記憶部に登録される(ステップST6~ST9)。上記のようにして基準目標回転数N(0)等の設定が終了すると、ポンプ48を停止させるとともに、補水用電磁弁46及び開閉電磁弁49を閉弁させる(ステップST10~ST11)。これにより、設置場所に合致した所定の目標流量を設定することができる。なお、浴槽洗浄装置の設置場所が予め定められている場合、設定制御を行うことなく、工場出荷時に設定される目標流量を利用してもよい。
【0048】
次に、図4図6を参照して洗浄運転における制御動作を説明する。
例えば、浴槽1の使用後、給湯器用のリモコンの運転スイッチのオン操作及びリモコンRの運転スイッチ101のオン操作がなされている状態で、使用者が洗浄スイッチ103をオン操作すると、本体ユニットコントローラ40は、排水栓2を開栓させるとともに、排水時間a(例えば、5分間)を計時するためにタイマtaをスタートさせる(ステップST21~ST22)。
【0049】
排水時間aが経過すると、補水用電磁弁46を開弁させるとともに、水量調整弁85及び湯量調整弁86の開度が調整される。すると、上記と同様に、給湯器6で給湯運転が開始され、所定温度の湯水が湯水タンク47に供給される(ステップST23~ST24)。次いで、湯水タンク47内の低水位電極472がオンとなっているかどうかが判定され、低水位電極472がオフとなっている場合、低水位電極472がオンされるまで、所定温度の湯水が湯水タンク47に供給される(ステップST25)。
【0050】
低水位電極472がオンとなると、開閉電磁弁49を開弁させる。そして、上記設定制御で登録された所定の目標流量Q(0)が得られるように、所定の基準目標回転数N(0)でポンプ48を駆動させて、補正制御を開始する(ステップST26~ST28)。
【0051】
図6に示すように、この補正制御では、ポンプ48の回転数N及びポンプ48の消費電力Pが検出され、ポンプ48の消費電力Pと、既述した第1ポンプデータとに基づき、現在流量Qが算出される(ステップST201~ST202)。そして、現在流量Qと目標流量Q(0)とが対比され、現在流量Qと目標流量Q(0)との差(|Q-Q(0)|)が所定の許容範囲△Qa(例えば、目標流量Q(0)に対して±5%)未満であれば(ステップST203で、No)、所定の噴射位置に湯水が噴射されていると考えられるため、現在の基準目標回転数N(0)が予備洗浄用の目標回転数N(0)として登録される(ステップST205)。
【0052】
一方、現在流量Qと目標流量Q(0)との差(|Q-Q(0)|)が所定の許容範囲△Qa以上であれば(ステップST203で、Yes)、所定の噴射位置からずれて湯水が噴射されている可能性が高い。このため、現在流量Qと目標流量Q(0)との差(|Q-Q(0)|)が所定の許容範囲△Qa未満になるまで、既述したポンプ48の回転数Nの段階的な補正が実行される(ステップST204)。そして、現在流量Qと目標流量Q(0)との差(|Q-Q(0)|)が所定の許容範囲△Qa未満になると、現在の回転数Nが予備洗浄用の目標回転数N(0)として登録される(ステップST205)。
【0053】
上記のようにして予備洗浄用の目標回転数N(0)が登録されると、予備洗浄時間b(例えば、90秒間)を計時するためにタイマtbをスタートさせる(ステップST29)。これにより、予備洗浄用の目標流量Q(0)で湯水が浴槽1内に噴射される。
【0054】
所定の予備洗浄時間bが経過すると、ポンプ48を停止させるとともに、開閉電磁弁49及び補水用電磁弁46を閉弁させて、予備洗浄待機時間c(例えば、10秒間)を計時するため、タイマtcをスタートさせ、予備洗浄待機時間cが経過すると、予備洗浄工程を終了させる(ステップST30~ST34)。
【0055】
予備洗浄工程が終了すると、洗浄工程に移行する。洗浄工程では、補水用電磁弁46を開弁させるとともに、水量調整弁85及び湯量調整弁86の開度が調整され、低水位電極472がオンされるまで、所定温度の湯水が湯水タンク47に供給される(ステップST35~ST36)。
【0056】
低水位電極472がオンとなると、開閉電磁弁49並びに第1及び第2洗剤弁42a,42bを開弁させる(ステップST37)。そして、上記設定制御で登録された所定の目標流量Q(0)が得られるように、所定の基準目標回転数N(0)でポンプ48を駆動させて、補正制御を開始する(ステップST38~ST39)。この洗浄工程における補正制御は、上記した予備洗浄工程におけるそれと同様であるため図示しないが、消費電力Pと第1ポンプデータとに基づき、洗浄用の目標回転数N(0)が登録される。
【0057】
上記のようにして洗浄用の目標回転数N(0)が登録されると、所定の洗浄時間d(例えば、2秒間)を計時するためにタイマtdをスタートさせる。所定の洗浄時間dが経過すると、ポンプ48を停止させるとともに、開閉電磁弁49、補水用電磁弁46並びに第1及び第2洗剤弁42a,42bを閉弁させて、洗浄待機時間e(例えば、10秒間)を計時するため、タイマteをスタートさせ、洗浄待機時間eが経過すると、洗浄工程を終了させる(ステップST40~ST45)。
【0058】
洗浄工程が終了すると、すすぎ工程に移行する。すすぎ工程では、予備洗浄工程と同様に、補水用電磁弁46を開弁させるとともに、水量調整弁85及び湯量調整弁86の開度が調整され、低水位電極472がオンされるまで、所定温度の湯水が湯水タンク47に供給される(ステップST46~ST47)。
【0059】
低水位電極472がオンとなると、開閉電磁弁49を開弁させる(ステップST48)。そして、上記設定制御で登録された所定の目標流量Q(0)が得られるように、所定の基準目標回転数N(0)でポンプ48を駆動させて、補正制御を開始する(ステップST49~ST50)。このすすぎ工程における補正制御は、上記した予備洗浄工程におけるそれと同様であるため図示しないが、消費電力Pと第1ポンプデータとに基づき、すすぎ用の目標回転数N(0)が登録される。
【0060】
上記のようにしてすすぎ用の目標回転数N(0)が登録されると、所定のすすぎ時間f(例えば、90秒間)を計時するためにタイマtfをスタートさせる。所定のすすぎ時間fが経過すると、ポンプ48を停止させるとともに、開閉電磁弁49及び補水用電磁弁46を閉弁させて、すすぎ待機時間g(例えば、10秒間)を計時するため、タイマtgをスタートさせ、すすぎ待機時間gが経過すると、すすぎ工程を終了させる(ステップST51~ST56)。なお、洗浄及びすすぎ工程をそれぞれ、複数回実行させてもよいし、予備洗浄を行うことなく、洗浄及びすすぎ工程のみを実行させてもよい。
【0061】
以上詳細に説明したように、上記浴槽洗浄装置によれば、所定の目標流量となるように所定の目標回転数でポンプ48を駆動させたときのポンプ48の消費電力と、ポンプ48の回転数、ポンプ48の消費電力、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータとを対比することにより、現在流量と所定の目標流量との相違を検出することができる。そして、ポンプ48の回転数が増減するに従って、圧送する湯水の流量が増減し、それに伴ってポンプ48の消費電力が増減するから、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、ポンプ48の回転数と、ポンプ48の消費電力と、流量との相関関係を示す第1ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することができる。また、ポンプ48の消費電力は、ポンプ48の電流に基づいて算出されるから、ポンプ48の消費電力の代わりにポンプ48の電流でも同様に、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することができる。また、上記浴槽洗浄装置によれば、洗浄運転における各工程で毎回、補正制御を行うから、前の工程の実行中にポンプ下流側の流路の抵抗の変化が生じた場合でも、後の工程で所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。
【0062】
従って、本実施の形態によれば、流量センサを用いることなく、ポンプ48の消費電力または電流を利用することにより、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することができる。これにより、ポンプ下流側の流路の抵抗が変化しても、安定して所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。
【0063】
(実施の形態2)
本実施の形態の浴槽洗浄装置の基本構成は、実施の形態1の浴槽洗浄装置のそれと同様であり、ポンプ48の回転数の補正を行う構成のみが異なる。このため、同一の構成については、説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0064】
図示しないが、本実施の形態の浴槽洗浄装置における洗浄制御回路は、機能的構成手段として、補水用電磁弁46及び開閉電磁弁49の開閉や水量調整弁85及び湯量調整弁86の開度を制御して洗浄運転や試運転を実行する洗浄運転制御部、洗浄運転や試運転においてポンプ48を駆動するモータ480をインバータ制御して、ポンプ48を所定の回転数で駆動させるポンプ駆動部、ポンプ48を所定の回転数で駆動させたときに電流検出部から出力される電流とインバータ制御の駆動電圧とに基づき、ポンプ48の消費電力を算出する消費電力算出部、消費電力算出部で算出されるポンプ48の現在の消費電力と、設定制御で登録される基準消費電力とを対比して、現在流量と所定の目標流量との相違を判定する流量判定部、記憶部に記憶されている既述した第1ポンプデータ、並びにポンプ48の回転数に応じた流量、揚程及びポンプ下流側の流路の抵抗の相関関係を示す第2ポンプデータに基づき、現在の抵抗曲線を選択する抵抗曲線選択部、第2ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるように回転数を補正する回転数補正部、及び試運転において、目標流量、基準目標回転数、及び基準消費電力を設定する試運転設定制御部を備える。従って、本実施の形態においても、洗浄制御回路の各機能部が、洗浄運転においてポンプ48の回転数を制御し、補正する制御部として機能し、モータ480の電流検出部と、洗浄制御回路における電流検出部で検知された電流に基づきポンプ48の消費電力を算出する消費電力算出部とがポンプ駆動特性検出部として機能する。また、本体ユニットコントローラ40の記憶部であるメモリには、試運転において目標流量、基準目標回転数、及び基準消費電力を設定するための設定制御プログラム、洗浄運転を実行する洗浄制御プログラム、洗浄運転中にポンプ48の回転数を補正する補正制御プログラムの他、抵抗曲線の選択やポンプ48の回転数を補正するための第1及び第2ポンプデータのデータテーブル、ポンプ48の回転数を変更するためのポンプ48の駆動電圧の設定値が格納されているとともに、工場出荷時にはその1つが初期値として登録されている。
【0065】
図7は、本実施の形態の浴槽洗浄装置における洗浄運転中の補正制御の動作を概略的に説明するものであり、第2ポンプデータに基づいて作製されたポンプ48の流量-揚程データ(以下、「Q-H特性曲線」という)と抵抗データ(以下、「抵抗曲線」という)とを示す。図7では、実施の形態1と同様に、所定間隔(10Hz)ごとに回転数を増減させたN(-1)~N(+3)の5段階(190Hz~230Hz)の回転数に応じたQ-H特性曲線(実線)と、所定間隔ごとに抵抗を増減させたR(-2)~R(+3)の6段階の抵抗曲線(一点鎖線)が示されている。なお、実施の形態1と同様、これらの最大及び最小回転数や抵抗曲線は例示であり、必要とされる流量及び精度に応じて、多くあるいは少なく設定してもよい。
【0066】
Q-P特性曲線と同様に、Q-H特性曲線は、ポンプ固有の特性であり、ポンプ48の回転数Nをインバータ制御により増減させた場合、流量と、吐出圧力、すなわち揚程には、一定の関係が成立し、図7に示すように、回転数Nの増減に従って、Q-H特性曲線は縦軸の揚程Hに沿った方向で移動する。また、ポンプ48を用いた装置では、湯水がポンプ下流側の流路を流れるときに抵抗が存在する。湯水連絡管66c、洗浄管43、開閉電磁弁49、洗剤混合部51などからなるポンプ下流側の流路は浴槽洗浄装置の一部であるから、抵抗曲線を定める諸元(配管径、曲げ、分岐など)は設計時に予め求めることができる。この抵抗は抵抗曲線として表され、抵抗が一定の状態で、ある抵抗曲線R上の流量Qを満足する動作点が、装置に要求されるポンプ48の回転数Nとなる。
【0067】
例えば、図7で、ポンプ下流側の流路の初期状態の抵抗曲線Rを抵抗曲線R(0)とし、この抵抗が一定の状態においてポンプ48の回転数Nを制御する場合、目標流量Q(0)の5.0L/分が得られる動作点は、回転数N(0)のQ-H特性曲線と、抵抗R(0)の抵抗曲線との交点M(0)となる。また、このM(0)におけるポンプ48の消費電力Pは、既述した図2の第1ポンプデータから消費電力P(0)(40W)となる。
【0068】
しかしながら、ポンプ下流側の流路に異物等が詰まると、ポンプ下流側の流路の抵抗が大きくなる。そのため、ポンプ48を回転数N(0)で駆動させると、回転数N(0)のQ-P特性曲線に沿って流量Qが低下し、それに伴ってポンプ48の消費電力Pも低下してくる。従って、ポンプ48の消費電力Pと、既述した第1ポンプデータであるポンプ48の回転数Nに応じたQ-P特性曲線から求められる基準消費電力P(0)とを対比することにより、現在流量Qと目標流量Q(0)との相違を判定することができる。そして、ポンプ下流側の流路の抵抗の増加に起因して、例えば、図7に示すように流量Qが回転数N(0)のQ-P特性曲線に沿ってQ(1)(4.1L/分)まで低下すると、図2に示すように消費電力Pは消費電力P(1)(31W)程度まで低下し、現在流量Qと所定の目標流量Q(0)との乖離が大きくなる。その結果、洗浄水や湯水の噴射位置が所定の噴射位置から低い位置にずれてきて、洗浄性能が低下する。
【0069】
このため、本実施の形態では、現在流量Qと目標流量Q(0)との乖離が大きくなると、モータ480にポンプ48の回転数Nを増加させる制御信号が出力され、ポンプ48の回転数Nを、記憶部に記憶されている第1及び第2ポンプデータに基づいて所定の回転数Nへ増加させる補正制御を実行する。
【0070】
具体的には、まず現在のポンプ下流側の流路の抵抗を特定するために、第1ポンプデータに基づき現在の回転数N(0)で低下した消費電力P(1)に対応する現在流量Q(1)が決定され、さらに第2ポンプデータに基づき現在流量Q(1)となる動作点M(1)が決定されて、この動作点M(1)を通過する抵抗曲線R(+2)が選択される。
【0071】
現在のポンプ下流側の流路の抵抗の抵抗曲線Rが抵抗曲線R(+2)である場合、ポンプ48の回転数Nを増減させると、この抵抗曲線R(+2)に沿って流量Qが増減される。従って、抵抗曲線R(+2)で所定の目標流量Q(0)を得るための所定の回転数NのQ-H特性曲線と抵抗曲線R(+2)との交点を特定することにより、流量Qを所定の目標流量Q(0)まで増加させることができる。この場合、図7に示すように、回転数N(+2)のQ-H特性曲線と抵抗曲線R(+2)との交点M(2)が所定の目標流量Q(0)が得られる動作点である。従って、ポンプ下流側の流路の抵抗の変化によりポンプ48の圧送する流量が低下した場合でも、ポンプ48を所定の回転数で回転させたときの消費電力と、ポンプ48の回転数、ポンプ48の消費電力、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータと、ポンプ48の回転数、ポンプ48の揚程、流量、及びポンプ下流側の流路の抵抗の相関関係を示す第2ポンプデータとに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することによって、所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。また、上記補正制御によれば、現在の消費電力と、第1及び第2ポンプデータとに基づき、所定の目標流量を得るためのポンプ48の回転数をダイレクトに決定することができるから、ポンプ48の回転数を所定の目標流量を得るためのポンプ48の回転数にジャンプさせることができる。従って、実施の形態1のように所定の目標流量を得るためにポンプ48の回転数を段階的に増減させる必要がなく、短時間でポンプ48の回転数を補正することができる。
【0072】
また、実施の形態1と同様に、ポンプ下流側の流路から異物等が除去され、ポンプ下流側の流路の抵抗が低下すると、回転数N(+2)のQ-H特性曲線に沿って現在流量Qが増加する。例えば、図7に示すように流量Qが回転数N(+2)のQ-H特性曲線に沿ってQ(3)(6.0L/分)まで増加すると、図2に示すように消費電力Pは消費電力P(4)(57W)程度まで増加し、現在流量Qと所定の目標流量Q(0)との乖離が大きくなる。その結果、洗浄水や湯水の噴射位置が所定の噴射位置から高い位置にずれてきて、洗浄性能が低下する。
【0073】
このため、本実施の形態では、現在流量Qと目標流量Q(0)との乖離が大きくなると、モータ480にポンプ48の回転数Nを低下させる制御信号が出力され、ポンプ48の回転数Nを、記憶部に記憶されている第1及び第2ポンプデータに基づいて所定の回転数Nへ低下させる補正制御を実行する。
【0074】
具体的には、まず現在のポンプ下流側の流路の抵抗を特定するために、第1ポンプデータに基づき現在の回転数N(+2)で増加した消費電力P(4)に対応する現在流量Q(3)が決定され、さらに第2ポンプデータに基づき現在流量Q(3)となる動作点M(3)が決定されて、この動作点M(3)を通過する抵抗曲線R(0)が選択される。
【0075】
現在のポンプ下流側の流路の抵抗の抵抗曲線Rが抵抗曲線R(0)である場合、ポンプ48の回転数Nを増減させると、この抵抗曲線R(0)に沿って流量Qが増減される。従って、抵抗曲線R(0)で所定の目標流量Q(0)を得るための所定の回転数NのQ-H特性曲線と抵抗曲線R(0)との交点を特定することにより、流量Qを所定の目標流量Q(0)まで低下させることができる。この場合、図7に示すように、回転数N(0)のQ-H特性曲線と抵抗曲線R(0)との交点M(4)(ここでは、M(4)=M(0)である)が所定の目標流量Q(0)が得られる動作点である。従って、ポンプ下流側の流路の抵抗の変化によりポンプ48の圧送する流量が増加した場合でも、ポンプ48を所定の回転数で回転させたときのポンプ48の消費電力と、ポンプ48の回転数、ポンプ48の消費電力、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータと、ポンプ48の回転数、ポンプ48の揚程、流量、及びポンプ下流側の流路の抵抗の相関関係を示す第2ポンプデータとに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することによって、所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。なお、実施の形態1と同様に、所定の許容範囲内であれば、必ずしも補正後の流量と所定の目標流量を完全に一致させる必要はない。
【0076】
次に、図8を参照して、試運転において、目標流量、基準目標回転数、及び基準消費電力を設定する設定制御について説明する。本実施の形態でも、洗浄運転の各工程における目標流量は同一に設定されているが、各工程で異なる目標流量を設定してもよい。
【0077】
実施の形態1と同様にして設定制御プログラムが起動されて、排水栓2の開栓、及び補水用電磁弁46の開弁がなされ、湯水タンク47内の低水位電極472がオンになると、開閉電磁弁49を開弁させる。そして、ポンプ48を工場出荷時に記憶部に登録されている初期値の駆動電圧で駆動させる。これにより、ポンプ48が所定の初期回転数N(S)で回転され、洗浄ノズル7から浴槽1への洗浄水の噴射が開始される(ステップST101~ST105)。
【0078】
施工者が洗浄水の噴射位置を確認し、洗浄水の噴射位置が所定の噴射位置(例えば、予想される喫水線)と合致している場合、施工者がリモコンRの洗浄・湯張りスイッチ104を再度押す確定操作が行われると、初期回転数N(S)が基準目標回転数N(0)として記憶部に登録される。そして、このときの消費電力Pが基準消費電力P(0)として登録され、基準消費電力P(0)と、既述した第1ポンプデータとに基づき目標流量Q(0)が記憶部に登録される。また、噴射位置が所定の噴射位置からずれている場合には、施工者がリモコンRの洗浄コース設定スイッチ107のUP/DOWNキーを操作することにより回転数を増減させて、流量を増減させ、噴射位置を所定の噴射位置に合致させる。その後、上記と同様に、リモコンRの洗浄・湯張りスイッチ104を再度押す確定操作が行われると、変更後の回転数N、消費電力P、及び流量Qがそれぞれ、基準目標回転数N(0)、基準消費電力P(0)、及び目標流量Q(0)として記憶部に登録される(ステップST106~ST109)。上記のようにして基準目標回転数N(0)等の設定が終了すると、ポンプ48を停止させるとともに、補水用電磁弁46及び開閉電磁弁49を閉弁させる(ステップST110~ST111)。
【0079】
次に、図9を参照して洗浄運転における補正制御の制御動作を説明する。なお、本実施の形態における洗浄制御の制御動作は、実施の形態1のそれと同様であるため、説明を省略する。
【0080】
補正制御では、ポンプ48の回転数N及びポンプ48の消費電力Pが検出され、ポンプ48の現在の消費電力Pと、設定制御で登録された基準消費電力P(0)とが対比される(ステップST301~ST302)。そして、ポンプ48の現在の消費電力Pと基準消費電力P(0)との差(|P-P(0)|)が所定の許容範囲△Pa(例えば、基準消費電力P(0)に対して±5%)未満であれば、(ステップST302で、No)、所定の噴射位置に湯水が噴射されていると考えられるため、現在の基準目標回転数N(0)が予備洗浄用の目標回転数N(0)として登録される(ステップST305)。
【0081】
一方、ポンプ48の現在の消費電力Pと基準消費電力P(0)との差(|P-P(0)|)が所定の許容範囲△Pa以上であれば(ステップST302で、Yes)、現在流量Qと目標流量Q(0)との乖離が大きくなり、所定の噴射位置からずれて湯水が噴射されている可能性が高い。このため、既述したポンプ48の現在の消費電力Pと第1及び第2ポンプデータとに基づき、現在のポンプ下流側の流路の抵抗となる抵抗曲線Rが選択される(ステップST303)。次いで、選択された抵抗曲線Rと、第2ポンプデータとに基づき、所定の目標流量Q(0)が得られる補正後のポンプ48の回転数を特定し、補正後のポンプ48の回転数が予備洗浄用の目標回転数N(0)として登録される(ステップST304~ST305)。洗浄工程及びすすぎ工程の補正制御でも、同様にして、洗浄用の目標回転数N(0)及びすすぎ用の目標回転数N(0)が登録される。
【0082】
以上詳細に説明したように、上記浴槽洗浄装置によれば、所定の目標流量となるように所定の目標回転数でポンプ48を駆動させたときのポンプ48の消費電力と、ポンプ48の回転数、ポンプ48の消費電力、及び流量の相関関係を示す第1ポンプデータと、ポンプ48の回転数、ポンプ48の揚程、流量、及びポンプ下流側の流路の抵抗の相関関係を示す第2ポンプデータとを対比することにより、現在のポンプ下流側の流路の抵抗の抵抗曲線を選択することができる。また、ポンプ下流側の流路の抵抗が同一であれば、回転数を増減させることにより、その抵抗曲線に沿って流量が増減するから、現在流量と所定の目標流量とが相違する場合、ポンプ48の回転数と、ポンプ48の揚程と、流量と、ポンプ下流側の流路の抵抗との相関関係を示す第2ポンプデータに基づき、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することができる。なお、実施の形態1と同様に、ポンプ48の消費電力の代わりにポンプ48の電流を用いることもできる。また、上記のようにポンプ下流側の流路の抵抗を利用することにより、所定の目標流量が得られる回転数をダイレクトに特定することができるから、短時間で所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することができる。また、上記浴槽洗浄装置によれば、洗浄運転における各工程で毎回、補正制御を行うから、前の工程の実行中にポンプ下流側の流路の抵抗の変化が生じた場合でも、後の工程で所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。
【0083】
従って、本実施の形態によれば、流量センサを用いることなく、ポンプ48の消費電力または電流を利用することにより、所定の目標流量が得られるようにポンプ48の回転数を補正することができる。これにより、ポンプ下流側の流路の抵抗が変化しても、安定して所定の噴射位置に洗浄水や湯水を噴射させることができる。
【0084】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、洗浄運転における各工程で、ポンプを設定制御で登録された基準目標回転数で駆動を開始させて補正制御を行っているが、前回の洗浄運転における補正制御で目標回転数が変更された場合、補正後の目標回転数を登録し、次回の洗浄運転における補正制御では補正後の目標回転数でポンプの駆動を開始させてもよい。
(2)上記実施の形態では、洗浄運転における各工程中で補正制御が実行されているが、少なくとも1つの工程で補正制御を実行してもよいし、各工程とは別に補正制御のための工程を設けてもよい。また、補正制御は、各工程の実行中に計測されるポンプの消費電力または電流に基づいてリアルタイムで行ってもよい。すなわち、補正後の目標回転数を登録することなく、目標流量が得られるようにポンプの回転数を補正してもよい。
(3)上記実施の形態では、所定の噴射位置に噴射される流量を所定の目標流量としているが、使用者が任意の流量を選択して所定の目標流量としてもよい。
(4)上記実施の形態では、給湯器側のみから湯水タンクに湯水が供給されているが、浴槽内に噴射した湯水を再度、湯水タンクに循環させてもよい。
(5)上記実施の形態では、湯張り機能を有する浴槽洗浄装置が使用されているが、湯張り機能のない浴槽洗浄装置や、熱源機のない浴槽洗浄機能のみを有する浴槽洗浄装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 浴槽
7 洗浄ノズル
41 洗剤タンク
43 洗浄管
46 補水用電磁弁(補水弁)
47 湯水タンク(貯留容器)
48 ポンプ
49 開閉電磁弁(開閉弁)
51 洗剤混合部
66c 湯水連絡管
40 本体コントローラ
48 ポンプ
480 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9