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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20220210BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220210BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220210BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20220210BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220210BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G09F9/30 338
H01L29/78 616L
H01L29/78 617A
H01L29/78 617U
H01L29/78 619A
H01L29/78 617K
H01L29/78 617T
H01L29/78 618B
G02F1/1368
H05B33/14 A
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018002641
(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公開番号】P2019120897
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 功
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-131047(JP,A)
【文献】特開2017-152701(JP,A)
【文献】特開2013-123041(JP,A)
【文献】特開2013-251536(JP,A)
【文献】特開2014-192418(JP,A)
【文献】特開2017-005273(JP,A)
【文献】特開2017-204659(JP,A)
【文献】特開2018-190753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/1343-1/1345
1/135-1/1368
G09F9/30-9/46
H01L21/336
27/32
29/786
51/50
H05B33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記酸化物半導体は、チャネルと、前記チャネルの両側に前記ドレインおよび前記ソースが形成され、前記チャネルと前記ドレインの間、および、前記チャネルと前記ソースの間に中間領域が形成され、
前記酸化物半導体の前記チャネルと前記中間領域の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記チャネルの上方で、前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成されており、
前記層間絶縁膜は、前記酸化物半導体の前記ドレインおよび前記ソースと直接接していることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜において前記ドレインおよび前記ソースと接する部分はSiNで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記層間絶縁膜の水素含有量は、前記サイドスペーサの水素含有量よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記酸化物半導体は、チャネルと、前記チャネルの両側に前記ドレインおよび前記ソースが形成され、前記チャネルと前記ドレインの間、および、前記チャネルと前記ソースの間に中間領域が形成され、
前記酸化物半導体の前記チャネルと前記中間領域の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記チャネルの上方で、前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成されおり、
前記酸化物半導体における水素含有量は、前記チャネル<前記中間領域<ドレインおよびソースの順であることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記酸化物半導体はチャネルを有し、前記チャネルはチャネル長とチャネル幅を持ち、前記サイドスペーサの前記アルミニウム酸化膜と接する側を底部とし、前記サイドスペーサの前記底部と反対側を上部としたとき、前記底部の前記チャネル長方向の長さは、前記上部の前記チャネル長方向の長さよりも大きく、
前記底部の前記チャネル長方向の長さは、前記上部の前記チャネル長方向の長さはよりも0.3μm以上大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記サイドスペーサの高さは100nm乃至500nmであることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記ゲート電極を形成する金属は、前記サイドスペーサの側面を覆い、前記サイドスペーサの上面に延在していることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記ゲート電極を形成する金属が前記サイドスペーサの上面に延在する量は、0.1μm以上であることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記酸化物半導体の上にゲート絶縁膜が形成され、
前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、
前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、
前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、
前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及びソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成され、
平面視にて、前記ドレインと前記ソースを結ぶ方向について前記ゲート電極の幅は前記アルミニウム酸化膜の幅よりも狭く形成され、
前記酸化物半導体の前記ドレインおよび前記ソースは前記ゲート絶縁膜によって覆われ、前記層間絶縁膜は前記ゲート絶縁膜と接触していることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記層間絶縁膜が前記ゲート絶縁膜と接する部分はSiNで形成されていることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記層間絶縁膜の水素含有量は、前記サイドスペーサの水素含有量よりも大きいことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項12】
前記酸化物半導体は、チャネルを有し、前記チャネルの両側に前記ドレインまたは前記ソースが形成され、前記チャネルと前記ドレインの間、および、前記チャネルと前記ソースの間に中間領域が形成され、
前記酸化物半導体における水素含有量は、前記チャネル<前記中間領域<前記ドレインおよび前記ソースの順であることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項13】
チャネルはチャネル長とチャネル幅を持ち、前記サイドスペーサの前記アルミニウム酸化膜と接する側を底部とし、前記サイドスペーサの前記底部と反対側を上部としたとき、前記底部の前記チャネル長方向の長さは、前記上部の前記チャネル長方向の長さよりも大きいことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、酸化物半導体を用いたTFTを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は各画素内にTFT(Thin Film Transistor)で形成された駆動トランジスタ、スイッチングトランジスタを有し、また、液晶表示装置は各画素内に、TFTで形成されたスイッチングトランジスタを有している。したがって、TFTの特性は重要である。
【0003】
酸化物半導体はOFF抵抗が高く、これをTFTに用いるとOFF電流を小さくすることが出来る。したがって、画素電極電位の変動を小さくすることが出来る。また、酸化物半導体を用いたTFTは、ポリシリコン等を用いたTFTよりも低温で形成することが出来るので、樹脂基板を用いた表示装置を実現することが出来る。
【0004】
TFTでは、チャネルとドレインとの間に電界が集中し、この部分で絶縁破壊が生ずる危険がある。したがって、poly-Siを用いたTFTでは、チャネルとドレインとの間にLDD(Lightly Doped Drain)領域を形成してこの部分での絶縁破壊を防止している。
【0005】
酸化物半導体を用いたTFTでは、ドレインとソースを形成するために、酸化物半導体のドレインとソースの部分に水素を供給することによってこの部分に導電性を付与することが行われている。特許文献1には、ドレインおよびソースに供給された水素を拡散させ、LDD領域と同じ作用をする領域、すなわち、チャネルとドレインあるいはソースの間にチャネル領域よりも抵抗が小さく、ドレインあるいはソースよりも抵抗が大きい領域を形成する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-85079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のように、アニールによって水素をゲート電極の下側に拡散させて中間抵抗部分を形成する方法は、水素の拡散領域の制御が難しい。特に、チャネル長が小さくなると、TFTがディプリートしてしまう危険がある。ドレインおよびソースの抵抗を小さくするために、より多くの水素をドレインおよびソースに供給すると、さらにディプリートの危険が増大する。
【0008】
本発明の課題は、酸化物半導体を用いたTFTにおいて、チャネルとドレインおよびソースの間に、安定して中間領域を形成できる構成を得ることである。また、安定した特性を有する酸化物半導体を用いたTFTを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、前記酸化物半導体は、チャネルと、前記チャネルの両側にドレインおよびソースが形成され、前記チャネルと前記ドレインの間、および、前記チャネルと前記ソースの間に中間領域が形成され、前記酸化物半導体の前記チャネルと前記中間領域の上にゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にアルミニウム酸化膜が形成され、前記チャネルの上方で、前記アルミニウム酸化膜の上にゲート電極が形成され、前記ゲート電極の両側にサイドスペーサが形成され、前記ゲート電極、前記サイドスペーサ及び前記ソース及びドレインを覆って層間絶縁膜が形成されていることを特徴とする表示装置。
【0011】
(2)平面視にて前記ゲート電極が前記アルミニウム酸化膜と接する部分と前記酸化物半導体が重なる部分に前記チャネルが形成され、同様に前記サイドスペーサに対応する部分に前記酸化物半導体の前記中間領域が形成されていることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
【0012】
(3)前記層間絶縁膜は、前記酸化物半導体の前記ドレインおよび前記ソースと直接接していることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
【0013】
(4)前記酸化物半導体の前記ドレインおよび前記ソースは前記ゲート絶縁膜によって覆われ、前記層間絶縁膜は前記ゲート絶縁膜と接触していることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】有機EL表示装置の平面図である。
図2】比較例としての有機EL表示装置の表示領域の断面図である。
図3図2の構成の問題点を示す断面図である。
図4】本発明による有機EL表示装置の表示領域の断面図である。
図5】実施例1のTFT部分の断面図である。
図6】実施例1のTFT部分の平面図である。
図7】本発明によるTFTを形成するための途中工程を示す断面図である。
図8】本発明によるTFTを形成するための図7に続く途中工程を示す断面図である。
図9】本発明によるTFTを形成するための図8に続く途中工程を示す断面図である。
図10】本発明によるTFTを形成するための図9に続く途中工程を示す断面図である。
図11】本発明によるTFTを形成するための図10に続く途中工程を示す断面図である。
図12】本発明によるTFTを形成するための図11に続く途中工程を示す断面図である。
図13】実施例2の有機EL表示装置の表示領域の断面図である。
図14】実施例2によるTFTを形成するための途中工程を示す断面図である。
図15】実施例2によるTFTが完成した状態を示す断面図である。
図16】液晶表示装置の平面図である。
図17】本発明による液晶表示装置の表示領域の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。酸化物半導体としては、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)、ZnON(Zinc Oxide Nitride)、IGO(Indium Gallium Oxide)等がある。酸化物半導体のうち、光学的に透明でかつ結晶質でないものはTAOS(Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)と呼ばれている。本明細書では、酸化物半導体をTAOSと呼ぶこともある。実施例1及び2では、本発明を有機EL表示装置に適用した場合について説明し、実施例3で本発明を液晶表示装置に適用した場合を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1において、表示領域10の両側には走査線駆動回路80が形成されている。表示領域10には、横方向(x方向)に走査線91が延在し、縦方向(y方向)に配列している。映像信号線92及び電源線93が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線91と、映像信号線92及び電源線93で囲まれた領域が画素95となっており、画素95内には、TFTで形成された駆動トランジスタ、スイッチングトランジスタ、光を発光する有機EL層等が形成されている。
【0017】
TFT基板100の1辺には端子領域20が形成されている。端子領域20には、有機EL表示装置に電源や信号を供給するためにフレキシブル配線基板600が接続されている。TFT基板100を例えば0.2mm以下のガラスで形成すればディスプレイを湾曲して使用することが出来る。また、TFT基板100をポリイミド等の樹脂で形成すれば、フレキシブルな表示装置を形成することが出来る。ポリイミドは機械的な強度、耐熱性等から表示装置の基板として優れた特性を有している。
【0018】
図2は比較例としての、有機EL表示装置の表示領域10の断面図である。TFT基板100の上には、下地膜101が形成されている。下地膜101は、上層に形成される酸化物半導体105がガラスあるいは樹脂からの不純物によって汚染されることを防止することと、表示装置に形成される膜と樹脂基板あるいはガラス基板との接着力を向上することである。
【0019】
下地膜101は例えば、シリコン酸化膜(以後SiOで代表させる)、シリコン窒化膜(以後SiNで代表させる)、SiOの3層構成となっている。下層のSiOは、不純物の侵入を防止するとともに、TFT基板である、ガラスあるいはポリイミドとの接着性を確保する。SiNは、ガラス基板あるいはポリイミド基板からの、特に水分等に対する優れたバリア性を有する。上層のSiOは、不純物に対するバリアの役割を有すとともに、SiOの上に形成される層と基板との接着力の向上をはかる。
【0020】
図2において、下地膜101の上には、ボトムゲート電極102が形成されている。ゲート電極は酸化物半導体105の上側にも形成されており、図2のTFTはいわゆるデュアルゲート方式となっている。しかし、図2の構成では、トップゲート電極109の影響がボトムゲート電極102の影響よりも強い。ボトムゲート電極102は、半導体層105に対する、裏側からの光の影響を避ける効果も有している。
【0021】
ボトムゲート電極102と酸化物半導体105の間に2層構造からなるボトムゲート絶縁膜が形成されている。ボトムゲート絶縁膜は第1ボトムゲート絶縁膜103と第2ボトムゲート絶縁膜104の2層構造となっている。第1ボトムゲート絶縁膜103は、例えば、50nmのシリコン窒化膜(SiN)で形成され、第2ボトムゲート絶縁膜104は例えば200nmのシリコン酸化膜(SiO)で形成されている。
【0022】
第2ボトムゲート絶縁膜104の上に酸化物半導体105が形成されている。酸化物半導体105のチャネル部に相当する部分にトップゲート絶縁膜106が形成され、その上にトップゲート電極109が形成されている。図2におけるTFTの構成は図3で説明する。
【0023】
図2において、TFTを覆って層間絶縁膜110が形成されている。層間絶縁膜110は、SiN膜又はSiO膜あるいは、SiNとSiOの積層構造となっている。図2の層間絶縁膜110は、酸化物半導体105に水素を供給する役割を有している。したがって、層間絶縁膜110は水素を含有する膜であると都合がよい。
【0024】
層間絶縁膜110にスルーホールを形成して酸化物半導体105のドレイン領域とドレイン電極111を接続し、酸化物半導体105のソース領域とソース電極112を接続する。層間絶縁膜110、ドレイン電極111、ソース電極112等を覆って有機平坦化膜113をアクリル等の樹脂で形成する。有機平坦化膜113は平坦化膜としての役割を有しているので、1.5μm乃至4μm程度と、厚く形成される。
【0025】
有機平坦化膜113にスルーホールを形成し、下部電極114とソース電極112の接続を行う。下部電極114は下層が銀の薄膜等で形成された反射電極であり、上側が有機EL層に対するアノードとして動作する。アノードは例えば透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)によって形成する。
【0026】
下部電極114の端部、有機平坦化膜113等を覆ってバンク115を形成する。バンク115はアクリル等の樹脂で形成される。バンク115の役割は、下部電極114の上に形成される有機EL層116が下部電極114の端部において段切れを生じないようにすることと、画素間を区画することである。バンク115は当初は全面に形成され、その後、有機EL層116が形成される部分、すなわち、発光部分にホールを形成する構成となっている。
【0027】
図2において、バンク113のホール内において、下部電極114の上に有機EL層116が形成される。有機EL層116は、例えば、下から順に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の5層から形成されている。
【0028】
有機EL層116の上には、透明電極によってカソードとなる上部電極117が形成されている。上部電極117は透明である必要がある。上部電極117は例えば、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(Antimony Zinc Oxide)等の透明導電膜あるいは、銀等の金属の薄膜で形成されている。金属も薄膜化すると、透明に近くなる。上部電極117は、各画素共通に表示領域10全面に形成される。
【0029】
有機EL層116は水分に弱く、また、薄いので機械的に弱い。そこで、SiN、SiO、アクリル等で形成された有機膜等の積層膜で形成される保護膜118が上部電極117を覆って形成される。SiNは水分に対するバリア層となり、有機膜は機械的なバッファーを構成し、SiOは、バリア層としての役割の他、他の膜との接着力を向上させる。
【0030】
有機EL表示装置は反射膜を有しているので、外光を反射する。外光の反射は視認性を劣化させる。そこで、図2に示す有機EL表示装置は、表示面に粘着材119を介して円偏光板120を配置して外光の反射を防止している。
【0031】
図3は、図2におけるTFT部分の拡大断面図である。図3において、下地膜101の上にボトムゲート電極102が金属で形成されている。ボトムゲート電極102を覆って第1ボトムゲート絶縁膜103がSiNによって厚さが例えば50nmで形成されている。その上に第2ボトムゲート絶縁膜104がSiOによって厚さ200nmで形成されている。第1ボトムゲート絶縁膜103、第2ボトムゲート絶縁膜104は連続してCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成することが出来る。
【0032】
第2ボトムゲート絶縁膜104の上に酸化物半導体105が形成されている。酸化物半導体105は水素によって還元されると特性が変動する。SiNは水素を放出するために、酸化物半導体105と接する第2ボトムゲート絶縁膜104はSiOで形成されている。酸化物半導体105は、例えばスパッタリングによって、10nm乃至100nmの厚さに形成される。酸化物半導体105は例えばIGZOで形成される。
【0033】
図3において、酸化物半導体105の上で、酸化物半導体105のチャネルに対応する部分にトップゲート絶縁膜106がSiOによって、例えば厚さ100nmで形成されている。トップゲート絶縁膜106は、例えば、全面にSiOを形成した後、フォトリソグラフィによって、チャネルに対応する部分のみに残す。
【0034】
その後、トップゲート絶縁膜106の上にトップゲート電極109を形成する。トップゲート電極109の厚さは例えば200nmである。トップゲート絶縁膜106の厚さは、100nmであり、ボトムゲート絶縁膜は200nmのSiOによる第2ボトムゲート絶縁膜104と50nmのSiNによる第1ゲート絶縁膜103の積層膜なので、TFTのVg-Id特性は、トップゲート電極109の影響が支配的になる。以後、トップゲート電極109を単にゲート電極といい、トップゲート絶縁膜106を単にゲート絶縁膜という場合もある。
【0035】
その後、ゲート電極109、酸化物半導体105を覆って層間絶縁膜110を形成する。層間絶縁膜110は、下層がSiN膜、上層がSiO膜である積層構造とする場合が多い。下層をSiN膜とするのは、SiN膜から水素を酸化物半導体105に供給し、酸化物半導体105にドレイン領域とソース領域を形成するためである。すなわち、アニール工程において、酸化物半導体105のゲート電極109に覆われていない部分に水素が拡散し、酸化物半導体105に導電性を付与する。これによって、酸化物半導体105にドレイン領域およびソース領域が形成される。そして、層間絶縁膜110にスルーホールを形成し、酸化物半導体105のドレインをドレイン電極111と、酸化物半導体105のソースをソース電極112と接続する。
【0036】
一方、酸化物半導体105がゲート電極109に覆われている部分には、水素は拡散しないので、高抵抗が保たれる。しかし、酸化物半導体105のドレインおよびソースに吸収された、SiNからの水素は、アニール工程において、酸化物半導体105の横方向にも拡散する。そうすると、チャネル長が短い場合は、チャネルが導通してしまうという問題を生ずる。あるいは、チャネルが導通しないまでも、Vd-Id特性がばらついてしまうという問題が生ずる。
【0037】
本発明はこの問題を対策するものである。図4は本発明による有機EL表示装置の表示領域10の断面図である。図4図2と異なる点は、酸化物半導体105を有するTFTの構成及びTFTを覆う層間絶縁膜110の構成である。図4において、SiOによって第2ボトムゲート絶縁膜104を形成し、その上に酸化物半導体105を形成して、パターニングするまでは図2と同じである。
【0038】
図4において、酸化物半導体105のドレイン領域とソース領域に挟まれた領域に対応する部分にSiOによるゲート絶縁膜106が形成され、その上にアルミニウム酸化膜(以後AlO)107が形成されている。SiO膜106とAlO膜107によってゲート絶縁膜が形成されているということも出来るが、本明細書では、便宜上、SiO膜をゲート絶縁膜106といい、アルミニウム酸化膜はAlO膜107という。
【0039】
AlO膜107の上に金属あるいは合金によってゲート電極109が形成されているが、本発明の特徴は、AlO膜107の両端に、例えば、SiN等の絶縁膜によるサイドスペーサ108が形成されていることである。このサイドスペーサ108によって、後で説明するように、チャネルを、ドレインあるいはソースから確実に分離することが出来る。
【0040】
ゲート電極109およびゲート絶縁膜106はパターニングされ、酸化物半導体105のドレインおよびソースはゲート絶縁膜106あるいはゲート電極109には覆われておらず、層間絶縁膜110と直接接触している。層間絶縁膜110はSiN膜またはSiN膜とSiO膜の2層構造となっている。本発明の特徴の一つは、SiN膜が直接酸化物半導体105のドレインあるいはソースと接触していることである。したがって、ドレインおよびソースには水素が供給され、ドレインおよびソースの抵抗を小さくすることが出来る。
【0041】
ドレインおよびソースに水素を供給した場合、水素は拡散しやすいために、比較例である図3のような構成では、アニール工程において、水素が拡散し、TFTの特性が不安定になる。さらに、チャネル長が短くなると、チャネルが導通してしまうという危険も生ずる。本発明は、特に、ゲート電極109の両側にサイドスペーサ108を形成することによって、酸化物半導体を有するTFTの特性が不安定になることを防止している。層間絶縁膜110より上の構成は図2で説明したのと同様である。
【0042】
図5は、図4におけるTFT周辺の断面図である。図5において、酸化物半導体105の上にゲート絶縁膜106、AlO膜107およびゲート電極109が形成されている。ゲート電極109の端部とAlO膜107の間にサイドスペーサ108が形成されている。ゲート電極109がサイドスペーサ108を挟まずに酸化物半導体105と対向している部分が酸化物半導体105のチャネル1051となっている。言い換えると、図5における、ゲート電極109を形成する金属において、凹部1091となっている部分に対応する酸化物半導体105の部分がチャネル1051になっている。
【0043】
ゲート絶縁膜106は、ゲート電極109の下側のみに形成され、酸化物半導体105のドレイン、ソースとなる部分は覆っていない。その後、ゲート電極109、酸化物半導体105等を覆ってSiNで層間絶縁膜110を形成する。酸化物半導体105がSiN膜と接する部分には、水素が供給されるので、ドレインおよびソースは低抵抗となり、ドレイン電流を多く流すことが出来る。
【0044】
従来は、比較的欠陥が多いSiOを酸化物半導体105と接触させてドレインおよびソースを形成してきたが、水素の放出は、SiNに比べて少ないので、ドレイン及びソースを十分に低抵抗化できず、ドレイン電流を多く流すことができなかった。一方、従来構成でSiNによって層間絶縁膜110を形成すると、水素が酸化物半導体105に供給されるが、この水素は酸化物半導体105のチャネル1051にも拡散し、チャネルを導通させてしまう。特に、チャネル長が短いTFTではこの危険が大きい。
【0045】
本発明は、ゲート電極109の両脇にサイドスペーサ108を形成することによって、チャネル1051への水素の拡散を制御し、酸化物半導体105におけるドレイン及びソースの低抵抗化とチャネル1051への水素の影響の防止を同時に実現している。本発明は、さらに、ゲート絶縁膜106と、ゲート電極109及びサイドスペーサ108の間にAlO膜107を形成することによって、この効果をより増強している。
【0046】
図5において、ゲート絶縁膜106とゲート電極109及びサイドスペーサ108の間に存在しているAlO膜107の厚さは10乃至50nmである。酸化物半導体105のチャネルの特性変動を抑えるためには、酸素を供給することが効果的である。したがって、AlO膜107からも酸素を供給することによって酸素をより安定して酸化物半導体105に供給している。
【0047】
AlO膜107の上に形成されたサイドスペーサ108の形状は、断面において、一方の側壁が傾斜を持った台形である。サイドスペーサ108によって、酸化物半導体108にオフセット領域1052を形成している。オフセット領域1052は酸化物半導体105のチャネルとドレインおよびソース(以後ドレインで代表させる)との間の中間領域を確実に形成し、ドレインあるいはソースに水素が多く供給された場合であっても、この水素がチャネルに影響を与えることを防止し、TFTの特性のばらつきを防止する。特にチャネル長が短くなった場合にこの効果は大きい。
【0048】
図5において、オフセット領域1052の長さd2は0.5μm乃至2μmである。例えば、チャネル長d1が2μmの場合、オフセット領域1052の長さd2は1μm程度であることが望ましい。オフセット領域1051とサイドスペーサ108の間にはAlO膜107が存在している。このAlO膜107は酸素の良好な供給源となるので、ドレインからチャネル側に拡散しようとする水素をオフセットし、チャネル1051が水素によって還元されることを効果的に防止している。
【0049】
図5において、ゲート電極109がサイドスペーサ108の上面に乗り上げている。ゲート電極109を安定して形成するためである。ゲート電極109がサイドスペーサ108の上に乗りあげる量d3は、好ましくは0.1μm以上である。平面で視て、ゲート電極109の端部からオフセット領域1052の端部までの距離はd4である。d4は0.3μm以上であることが望ましい。オフセット領域1052の幅d2はd3+d4となる。
【0050】
図5において、サイドスペーサ108の一方の側壁は傾斜面になっている。サイドスペーサ108の側壁を傾斜面としている理由は、ゲート電極109やサイドスペーサ108を覆って形成される層間絶縁膜110によるステップカバレッジを向上させるためである。したがって、傾斜面は、本発明には必須の要件ではない。
【0051】
サイドスペーサ108の厚さは、例えば、100nm乃至500nmである。サイドスペーサ108の厚さが小さすぎると、ドライエッチングでサイドスペーサを加工しているときに消滅してしまう。一方、サイドスペーサ108の厚さが大きすぎる場合は、ゲート電極109やサイドスペーサ108を覆う層間絶縁膜110の段切れの問題、サイドスペーサ108の加工時間が長くなる等の問題が生ずる。またサイドスペーサ108の厚さが大きすぎると、サイドスペーサ108がSiNで形成されている場合は、サイドスペーサ108自体からの水素の供給量が多くなるという問題を生ずる。
【0052】
ゲート電極109及びサイドスペーサ108を覆って層間絶縁膜110が形成されている。層間絶縁膜110は一般にはSiNとSiOの2層膜で形成されるが、できれば酸化物半導体105と接触することになる下層はSiN膜で形成するのがよい。SiN膜が水素の供給体となり、酸化物半導体105のドレイン領域とソース電極領域の抵抗を下げることが出来る。
【0053】
図5において、サイドスペーサ108の材質は、後で説明するように、ドライエッチングによる微細加工の要請からSiNで形成することが望ましいが、加工条件によっては、SiON(酸窒化シリコン)、あるいはSiOで形成することも出来る。サイドスペーサ108をSiNで形成する場合、層間絶縁膜110を構成するSiNとサイドスペーサ108を構成するSiNとは同じ膜質でもよい。しかし、層間絶縁膜110を構成するSiNの水素含有量のほうが、サイドスペーサ108を構成するSiNの水素含有量よりも多いことが望ましい。つまり、サイドスペーサ108はチャネルに近いので、サイドスペーサ108からの水素の供給は抑えたほうがよいからである。
【0054】
いずれのSiNもCVDで形成するが、仮に、同じガス比、パワー、成膜圧力等でもサイドスペーサ108を成膜するときの成膜温度を高温(例えば300℃乃至350℃)に設定すればよい。高温成膜のほうが、膜の付きまわりがよいので、「す」が入りにくいという利点もある。
【0055】
図6はTFTの平面図である。図6において、ボトムゲート電極102の上に、ボトムゲート絶縁膜を介して酸化物半導体105が形成されている。酸化物半導体105の上には、島状にゲート絶縁膜が形成されているが、図6ではゲート電極109およびサイドスペーサ108で覆われて見えない。図6において、ゲート電極109の周囲にサイドスペーサ108が見えているが、これは、図5におけるサイドスペーサ108の傾斜面である。
【0056】
ゲート電極109には凹部1091が形成されている。ゲート電極109の凹部1091が形成されている部分に酸化物半導体105のチャネルが形成され、凹部1091の両側にオフセット領域1051が形成されている。図6において、ゲート電極109やサイドスペーサ108と重複していない酸化物半導体105には層間絶縁膜110を構成するSiNが接触し、SiNから供給される水素によって酸化物半導体105が還元され、ドレインおよびソースが形成される。ドレインにはスルーホールを介してドレイン電極111が接続し、ソースにはスルーホールを介してソース電極112が接続している。
【0057】
図7乃至図12は、図5の構成を実現する製造工程を示す断面図である。図7は、下地膜101の上にボトムゲート電極102を形成し、これを覆って第1ボトムゲート絶縁膜103、第2ボトムゲート絶縁膜104が形成され、その上に酸化物半導体105が形成されている。ボトムゲート電極102はスパッタリングで成膜された後、パターニングする。第1ボトムゲート絶縁膜103はSiNによって例えば厚さ50nm、第2ボトムゲート絶縁膜104はSiOによって例えば厚さ200nmで形成される。SiNとSiOは連続してCVDによって形成することが出来る。
【0058】
その後、第2ボトムゲート絶縁膜104の上に酸化物半導体105が形成される。酸化物半導体105は10乃至100nmで成膜した後、島状にパターニングしている。その後、酸化物半導体105の上にトップゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜)106をSiOによって形成する。SiOの膜厚は例えば100nmである。ボトムゲート絶縁膜とトップゲート絶縁膜の膜厚の関係は図2で説明したとおりである。その後AlO膜107を10乃至50nmの厚さになるようにスパッタリングによって形成する。
【0059】
図8は、サイドスペーサ108を形成するための途中工程を示す断面図である。図8において、サイドスペーサ108を形成するためのSiN膜をCVDによって、100nm乃至500nmの厚さで成膜する。このSiNを形成するCVDは、後で形成する層間絶縁膜110を形成するCVDよりも高温(例えば300℃乃至350℃)で形成される。より緻密な膜質として、水素の放出を抑えるためである。図8において、SiN膜の上に、サイドスペーサをパターニングするためのレジスト400を形成する。その後SF6系のガスを用いてSiN膜をドライエッチングする。
【0060】
図9はサイドスペーサ108用のSiN膜をドライエッチングした状態を示す断面図である。SiNはSF6系のガスを用いたドライエッチングによってサイドエッチングされやすい。サイドエッチングの様子を図9の矢印で示す。サイドエッチングによって、サイドスペーサ108の幅はレジストの幅よりも小さくなる。サイドスペーサの幅は、底面で0.5μm乃至2μmと非常に小さいので、このようなレジストパターンを形成することは難しい。SiNを用いることによってサイドエッチングの効果によって、サイドスペーサ108をレジストのパターニング限界以下の寸法に加工することが出来る。
【0061】
AlOと、サイドスペーサを構成するSiNとを比較すると、AlOはSiNに対して、SF6系のガスを用いたドライエッチングでは選択比が非常に大きいので、図9に示すドライエッチング工程では、AlO膜はほとんどエッチングされない。
【0062】
その後、図10に示すように、ゲート電極109となる金属あるいは合金を成膜し、ゲート電極109として残したい部分にレジスト400を形成する。ゲート電極109としては、例えば、Mo、MoW、あるいは、Ti-Al-Ti等の積層膜が使用される。そして、Cl系のガスを用いたドライエッチングにより金属およびAlO膜をエッチングし、AlO膜107およびゲート電極109をパターニングする。Cl系のガスを用いた場合には、ゲート絶縁膜106を構成するSiOはエッチングされにくいが、ゼロではないので必要に応じてSiOのエッチング途中でCl系のドライエッチングを停止させる。
【0063】
図11は、図10に示すCl系のガスを用いたドライエッチングによりゲート電極109及びAlO膜107をパターニングした状態を示す断面図である。この状態では、酸化物半導体105はゲート絶縁膜106によって覆われている。そこで、図11に示すように、F系のドライエッチングによってゲート絶縁膜の材料となるSiOをエッチングし、ゲート絶縁膜106をパターニングする。F系のドライエッチングによっては、酸化物半導体105は殆どエッチングされない。
【0064】
図12は、F系のドライエッチングによってSiOを除去し、ゲート絶縁膜106をパターニングした後の状態を示す断面図である。F系のドライエッチングによってサイドスペーサ108を構成するSiNも若干エッチングされるので、サイドスペーサ108の外側の壁にはテーパが形成される。
【0065】
図12において、ゲート電極109は断面が台形状のサイドスペーサ108の上底に残留している。この量はd3である。d3は、好ましくは0.1μm以上である。サイドスペーサ108の下底とサイドスペーサ108の上底の差は、0.3μm以上あることが望ましい。
【0066】
その後、図12の構成に対して、層間絶縁膜110を形成すると、図5の構成となる。層間絶縁膜110はSiNあるいはSiNとSiOの積層膜で形成するが、層間絶縁膜110は酸化物半導体105に水素を供給するので、積層膜とする場合は、酸化物半導体105と接する層はSiNで形成するのがよい。また、層間絶縁膜110におけるSiNはサイドスペーサ108を構成するSiNよりも水素の含有量が多いほうがよい。
【実施例2】
【0067】
図13は本発明の実施例2を示す有機EL表示装置の表示領域の断面図である。図13において、トップゲート絶縁膜106がゲート電極109の下のみでなく、全面に形成されている。また、サイドスペーサ108の側面に傾斜がついていない。図13のその他の構成は図4と同じである。図13では、酸化物半導体105のドレイン領域およびソース領域は層間絶縁膜110と接していない。したがって、層間絶縁膜110をSiNで形成しても、SiNから水素を受け取ることが出来ない。したがって、酸化物半導体105のドレイン領域およびソース領域を形成するために、図14に示すように、別途イオンインプランテーション(I/I)を行う必要がある。
【0068】
図14の断面構造は、実施例1の図11と同じである。しかし、図14では、ドライエッチングをおこなうのではなく、イオンインプランテーション(I/I)を行い、酸化物半導体105にボロン(B)あるいはリン(P)等をドープして導電性を付与し、酸化物半導体にドレインおよびソースを形成している。なお、イオンインプランテーション(I/I)は酸化物半導体105の構造に欠陥を生じさせて導電性を付与するものであるから、Ar等を打ち込んでもよい。イオンインプランテーション(I/I)はゲート電極109をマスクとして行われる。また、サイドスペーサ108も厚く形成され、さらにこの部分にはAlO膜107も存在しているので、チャネルと、ドレインおよびソースの間には中間領域が構成される。なお、イオンインプランテーション(I/I)では、サイドスペーサ108はエッチングされないので、サイドスペーサ108の側面は、図12で示すような傾斜は形成されにくい。
【0069】
図15は、イオンインプランテーションの後、層間絶縁膜110を形成し、この層間絶縁膜110にスルーホールを形成して、ドレイン電極111とソース電極112を接続した状態を示す断面図である。層間絶縁膜110の構成は、実施例1の図5等で説明したのと同様である。実施例2では、酸化物半導体105のドレイン領域およびソース領域は、イオンインプランテーションによって導電性を付与されている。
【0070】
酸化物半導体105のドレイン領域およびソース領域は、酸素を多く含むゲート絶縁膜106で覆われている。そうすると、イオンインプランテーションによって導電性を付与されたにもかかわらず、ドレイン領域、ソース領域は酸素の影響によって徐々に抵抗が上昇する可能性がある。
【0071】
層間絶縁膜110がゲート絶縁膜106と接する面をSiNで構成することによって、SiNからの水素の供給によって、ゲート絶縁膜106からの酸素による、酸化物半導体105のドレインおよびソースへの影響が緩和される。したがって、TFTの特性を安定化させることが出来る。その他の構成は実施例1で説明したのと同様である。
【実施例3】
【0072】
実施例1及び2では、本発明を有機EL表示装置に適用する場合について説明した。しかし、本発明は、液晶表示装置についても適用することが出来る。図16は液晶表示装置の平面図である。図16において、TFT基板100と対向基板200がシール材30によって接着し、シール材30の内側で、TFT基板100と対向基板200の間に液晶が挟持されている。
【0073】
TFT基板100と対向基板200が重なった部分に表示領域10が形成されている。表示領域10には、走査線91が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線92が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線91と映像信号線92で囲まれた領域に画素95が形成されている。TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100と対向基板200が重なっていない部分は端子領域20となっている。端子領域20には、液晶表示装置に電源や信号を供給するためのフレキシブル配線基板600が接続している。
【0074】
図17は、液晶表示装置の表示領域の断面図である。図17において、有機平坦化膜110の形成までは、実施例1の図4と同じである。なお、実施例1の図4のTFTは有機EL層を駆動する駆動TFTであり、本実施例のTFTは、スイッチングTFTであるが、基本的な構成は同じである。
【0075】
すなわち、遮光膜を兼ねた第1ゲート電極102の上に2層構成のボトムゲート絶縁膜(103,104)が形成され、その上に酸化物半導体105が形成されている。酸化物半導体105におけるチャネルに対応する部分にトップゲート絶縁膜106を形成する。トップゲート絶縁膜106の上にAlO膜107を形成する。そして、AlO膜107の上部両端に本発明の特徴であるサイドスペーサ108を形成する。その後、ゲート電極109を形成する。
【0076】
ゲート電極109、サイドスペーサ108、酸化物半導体105等を覆って層間絶縁膜110を形成する。層間絶縁膜110の構成も図5で説明したのと同様である。そして、層間絶縁膜110にスルーホールを形成して、酸化物半導体105のドレインとドレイン電極111を、酸化物半導体105のソースとソース電極112を接続する。ドレイン電極111、ソース電極112、層間絶縁膜110を覆って有機平坦化膜113を形成する。
【0077】
図17において、有機平坦化膜113よりも後で形成される構成が図4に示す有機EL表示装置と異なっている。図17は、IPS(In Plane Switching)方式の液晶表示装置の断面図である。図17において、有機平坦化膜113にソース電極112と画素電極152を接続するためのスルーホールを形成する。図17において、有機平坦化膜113の上にITOによるコモン電極150が形成されている。コモン電極150を覆って容量絶縁膜151がSiNによって形成されている。
【0078】
容量絶縁膜151の上に画素電極152が形成されている。画素電極152は、有機平坦化膜113に形成されたスルーホールにおいて、ソース電極112と接続している。なお、容量絶縁膜151は、有機平坦化膜113のスルーホールの側壁を覆っているが、下部において、スルーホールが形成され、画素電極152がソース電極112と接続可能となるようにしている。画素電極152の上に液晶を初期配向させるための配向膜153が形成されている。
【0079】
液晶層300を挟んで、TFT基板100と対向して、対向基板200が形成されている。対向基板200の内側にはブラックマトリクス202が形成され、画素電極122と対応する部分にはカラーフィルタ201が形成されている。ブラックマトリクス202およびカラーフィルタ201を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。オーバーコート膜203の上に液晶を初期配向させるために配向膜204が形成されている。
【0080】
図17において、画素電極122に映像信号が印加されると、矢印で示すような電気力線が発生し、液晶分子301を回転させ、画素におけるバックライトからの光の透過率を制御して画像を形成する。
【0081】
このように、液晶表示装置においても、実施例1の構成のTFTを適用することによって、特性の安定した、酸化物半導体によるTFTを形成することが出来る。実施例2で説明した構成も、液晶表示装置にも同様に適用することが出来る。
【0082】
以上の説明では、液晶表示装置はIPS方式について説明したが、他の方式の液晶表示装置についても適用することが出来る。
【0083】
酸化物半導体はリーク電流を小さくできるが、移動度はpoly-Siに比べて小さいので、周辺駆動回路、例えば、図1における走査線駆動回路80を、酸化物半導体を用いたTFTで構成するのは難しい場合がある。この点、poly-Siは移動度が大きいので、poly-Siを用いたTFTを周辺駆動回路に使用することが出来る。
【0084】
一方、poly-Siを用いたTFTはリーク電流が大きいので、画素電極の電位変動が問題になる。したがって、酸化物半導体を用いたTFTを表示領域における画素に使用し、poly-Siを用いたTFTを周辺駆動回路に用いると合理的である。このような構成をハイブリッド方式と呼ぶとすると、本発明は、このようなハイブリッド方式の表示装置についても適用することが出来る。
【符号の説明】
【0085】
10…表示領域、 20…端子領域、 30…シール材、 80…走査線駆動回路、 91…走査線、 92…映像信号線、 93…電源線、 95…画素、 100…TFT基板、 101…下地膜、 102…ボトムゲート電極、 103…第1ボトムゲート絶縁膜、 104…第2ボトムゲート絶縁膜、 105…酸化物半導体、 106…ゲート絶縁膜、 107…AlO膜、 108…サイドスペーサ、 109…ゲート電極、 110…層間絶縁膜、 111…ドレイン電極、 112…ソース電極、 113…有機平坦化膜、 114…下部電極、 115…バンク、 116…有機EL層、 117…上部電極、 118…保護膜、 119…粘着材、 120…円偏光板、 150…コモン電極、 151…容量絶縁膜、 152…画素電極、 153…配向膜、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 204…配向膜、 300…液晶層、 400…レジスト、 301…液晶分子、 1051…チャネル、 1052…オフセット領域、 1091…ゲート電極の凹部、 I/I…イオンインプランテーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17