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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/06 20060101AFI20220210BHJP
   G21K 5/04 20060101ALI20220210BHJP
   H01J 37/065 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H01J37/06 Z
G21K5/04 E
H01J37/065
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018014225
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019133812
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一郎
(72)【発明者】
【氏名】大工 博之
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 洋平
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-313269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/06
G21K 5/04
H01J 37/065
H01J 1/88
H01J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空雰囲気の真空チャンバと、この真空チャンバの内部に配置された絶縁端子と、この絶縁端子に保持された電子銃と、窓が設けられるとともに電子銃から出射される電子線を案内して当該窓から照射するノズルとを備え、上記絶縁端子の電子銃に対向する面に周溝が形成された電子線照射装置であって、
上記周溝が、内壁面および外壁面と、これら内壁面および外壁面を接続する底面とから構成され、
上記内壁面、底面および外壁面と電子銃とに接触して、当該電子銃を付勢する導電性のコイルばねを備えることを特徴とする電子線照射装置。
【請求項2】
周溝が、内壁面、底面および外壁面を覆う金属膜を有し、
導電性のコイルばねの上記内壁面、底面および外壁面と電子銃との接触が、上記金属膜を介したものであることを特徴とする請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項3】
導電性のコイルばねの線径が、絶縁端子の電子銃に対向する面と当該電子銃との間隔以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子線照射装置は、一般的に、内部が真空雰囲気の真空チャンバと、この真空チャンバの内部に配置された絶縁端子と、この絶縁端子に保持された電子銃とを備える。真空チャンバの役割は、電子銃からの電子線を真空雰囲気により加速することであり、絶縁端子の役割は、電子銃から真空チャンバへの電流を遮断することである。電子銃には高電圧が印加されるので、電子銃からギャップ放電が発生しやすく、電子銃を保持する絶縁端子から沿面放電が発生しやすい。
【0003】
このような放電は、電子線照射装置の寿命を短くすることになるので、抑制される必要がある。これらの放電を抑制する構成として、絶縁端子の電子銃を保持する側に円周溝が形成される。しかしながら、円周溝が形成されることにより、上記放電が抑制されても、円周溝で別途の放電が発生しやすくなるという問題がある。
【0004】
したがって、円周溝での放電を抑制するために、円周溝をメタライズした電子線照射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-313269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の電子線照射装置では、メタライズにより円周溝に形成された金属膜は、極めて薄いことから電気抵抗値が高くなるので、放電を十分に抑えられるものではない。このため、メタライズされた円周溝に厚い導電体を配置することが考えられるが、厚い導電体は接触性が悪いので、厚い導電体に接触する面に凸凹がある場合に、当該厚い導電体の電気抵抗値は高いままである。したがって、メタライズされた円周溝(周溝の一例である)では、例え厚い導電体が配置されても、放電を十分に抑えることができない。
【0007】
そこで、本発明は、絶縁端子に形成された周溝での放電を十分に抑え得る電子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の発明に係る電子線照射装置は、内部が真空雰囲気の真空チャンバと、この真空チャンバの内部に配置された絶縁端子と、この絶縁端子に保持された電子銃と、窓が設けられるとともに電子銃から出射される電子線を案内して当該窓から照射するノズルとを備え、上記絶縁端子の電子銃に対向する面に周溝が形成された電子線照射装置であって、
上記周溝が、内壁面および外壁面と、これら内壁面および外壁面を接続する底面とから構成され、
上記内壁面、底面および外壁面と電子銃とに接触して、当該電子銃を付勢する導電性のコイルばねを備えるものである。
【0009】
また、第2の発明に係る電子線照射装置は、第1の発明に係る電子線照射装置における周溝が、内壁面、底面および外壁面を覆う金属膜を有し、
導電性のコイルばねの上記内壁面、底面および外壁面と電子銃との接触が、上記金属膜を介したものである。
【0010】
加えて、第3の発明に係る電子線照射装置は、第1または第2の発明に係る電子線照射装置における導電性のコイルばねの線径が、絶縁端子の電子銃に対向する面と当該電子銃との間隔以下であるものである。
【発明の効果】
【0011】
上記電子線照射装置によると、電子銃を付勢するとともに周溝の面および電子銃に接触する導電性のコイルばねにより、電子線の出射により発生する電子が導かれるので絶縁端子に形成された周溝での放電を十分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る電子線照射装置の概略縦断面図である。
図2】同電子線照射装置における絶縁端子の先端部および電子銃を拡大した一部切欠側面図である。
図3】同電子線照射装置における絶縁端子の先端部、接続金属体、導電性のコイルばねおよび電子銃の分解斜視図である。
図4】本発明の実施例2に係る電子線照射装置における円周溝およびその近傍の拡大断面図である。
図5】本発明の実施例3に係る電子線照射装置における円周溝およびその近傍の拡大断面図である。
図6】本発明の実施例4に係る電子線照射装置における絶縁端子の先端部、接続金属体、導電性の無端状コイルばねおよび電子銃の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例1に係る電子線照射装置について図面に基づき説明する。
【0014】
この電子線照射装置は、図1に示すように、内部が真空雰囲気の真空チャンバ2と、この真空チャンバ2の内部に配置された絶縁端子3と、この絶縁端子3に保持された電子銃5とを備える。また、上記電子線照射装置1は、上記電子銃5から出射する電子線Eを案内するフランジ7およびノズル8と、このフランジ7に接続された真空ポンプ9とを備える。上記真空チャンバ2、フランジ7およびノズル8は互いに内部が連通するとともに同一軸心であり、上記真空ポンプ9は上記真空チャンバ2、フランジ7およびノズル8の内部を真空雰囲気にし得るものである。さらに、上記電子線照射装置1は、上記絶縁端子3に電子銃5を保持させるための接続金属体4を備える。なお、上記ノズル8におけるフランジ7とは反対側には、上記電子銃5からの電子線Eを透過させて照射する窓10が設けられる。
【0015】
上記真空チャンバ2は、略円筒形状であり、一方の底面側が、図示しない外部電源から電力の供給を受ける電力側(図1での上側)となり、他方の底面側が、電子線Eを出射する電子線側(図1での下側)となる。また、上記真空チャンバ2は、上記電力側(一方の底面側)が例えば図1に示すキャップ21などで上記絶縁端子3を保持する側であり、上記電子線側(他方の底面側)が上記フランジ7およびノズル8を接続する側である。
【0016】
上記絶縁端子3は、例えばセラミックまたは硝子からなる略円筒形状であり、基端部が真空チャンバ2の電力側に上記キャップ21などで保持され、先端側が上記接続金属体4により上記電子銃5を保持する。上記絶縁端子3の先端側には、図1の破線で囲われた部分を拡大した図2に詳しく示すように、上記電子銃5に対向する面に円周溝31(周溝の一例である)が形成される。この円周溝31は、内壁面32および外壁面34と、これら内壁面32および外壁面34を接続する湾曲底面33(底面の一例である)とで形成される空間である。この円周溝31が形成されることにより、上記絶縁端子3の先端側には、内側円筒突出部36および外側円筒突出部38が形成される。この内側円筒突出部36と外側円筒突出部38との間が円周溝31となるので、上記内壁面32は内側円筒突出部36の外周面となり、上記外壁面34は外側円筒突出部38の内周面となる。内側円筒突出部36の方が外側円筒突出部38よりも先端側に突出しているが、この内側円筒突出部36の突出した端面37は上記接続金属体4および電子銃5に接触しない。
【0017】
上記接続金属体4は、図2に示すように、上記内側円筒突出部36の内周面で保持される小径部41と、この小径部41よりも大径の大径部43と、小径部41および大径部43を接続して内側円筒突出部36の端面37に面する段差部42とを有する。また、上記接続金属体4は、その段差部42と上記内側円筒突出部36の端面37とが所定間隔gとなる位置で、上記絶縁端子3に小径部41が保持される。さらに、上記接続金属体4は、その大径部43の外径が上記円周溝31の内壁面32よりも小径である。
【0018】
上記電子銃5は、上記接続金属体4の大径部43を外周側から覆う金属部品であり、上記接続金属体4の段差部42と略面一で円周溝31に面する円周端面54を有する。すなわち、この円周端面54と内側円筒突出部36の端面37との間隔も、上記所定間隔gとなる。また、上記電子銃5は、図示しないが、内部にフィラメントを配置して、このフィラメントから電子線Eをノズル8に向けて出射するように構成される。このフィラメントは、図示しないが、上記接続金属体4および絶縁端子3の内部に配置された中心棒に、電気的に接続される。この中心棒は、上記真空チャンバ2の電力側を経由して上記外部電源から電力が供給されるものである。さらに、上記電子銃5は、図3に詳しく示すように、上記接続金属体4の先端側から嵌め込まれるように構成される。
【0019】
上記フィラメントから電子線Eが出射することで、当該フィラメントを内部に配置する電子銃5から電子が接続金属体4に流れるとともに、この接続金属体4を保持する絶縁端子3が帯電する。電子銃5からのギャップ放電および絶縁端子3からの沿面放電は上記円周溝31により抑えられるが、この円周溝31で放電するおそれがある。しかしながら、上記円周溝31に配置された図1図3に示す導電性のコイルばね6(弾性導電部材の一例である)により、当該円周溝31での放電が抑えられる。
【0020】
以下、本発明の要旨である導電性のコイルばね6(以下では略して、コイルばね6と言う)について詳細に説明する。
【0021】
このコイルばね6は、図2に詳しく示すように、上記内壁面32、湾曲底面33および外壁面34と電子銃5の円周端面54とに接触して、当該電子銃5の円周端面54を付勢するものである。言い換えれば、上記コイルばね6は、上記円周端面54に接触する部分で当該円周端面54を押しているので、この円周端面54に多少の凸凹があっても、当該円周端面54と適切に電気的に接続される。上記コイルばね6は、円周端面54を付勢するためにも、湾曲底面33から円周端面54までよりも長い自由長さを有する。また、上記コイルばね6は、図3に示すように、一端部61が内壁面32に沿うようにして押し入れられることで、当該一端部61が湾曲底面33を沿って外壁面34まで至るようにされ、さらに他端部62が電子銃5の円周端面54で押し入れられて配置される。このコイルばね6の配置は、図2に示すような一様に円周溝31の面32~34に接触する状態に限られず、一部で円周溝31の面32~34に接触しない状態でもよい。
【0022】
上記コイルばね6の電気抵抗値は、円周溝31での放電を抑制する程度まで低く設定される。この電気抵抗値を満たすように、上記コイルばね6の線径および材質が決定される。上記コイルばね6の線径は、当該コイルばね6の電気抵抗値を下げるためにも、大きい方が好ましい。しかしながら、上記線径が上記所定間隔gよりも大きいと、上記円周端面54と内側円筒突出部36の端面37との間にコイルばね6を構成する線材が位置した場合に、当該線材が噛み込まれることになるので、適切に電子銃5が接続金属体4に保持されなくなる。このため、上記コイルばね6の線径は、上記所定間隔g以下ものが採用される。一方で、上記コイルばね6の材質は、銀または銅など電気抵抗率の低いものが採用される。
【0023】
上記コイルばね6は、放電を抑えるものであるから、放電の要因となり得る角部を有しない方が好ましい。このため、上記コイルばね6を構成する線材の両端は、好ましくは滑らかにされる。さらに、上記コイルばね6を構成する線材の放電が予想される部分は、電気抵抗値を下げるように構成されることが好ましく、例えばその部分の線径が他の部分の線径よりも大きくされる。
【0024】
以下、上記電子線照射装置1の組み立て方法について説明する。
【0025】
真空チャンバ2の電力側に、当該真空チャンバ2の外部から図示しない外部電源を接続し、当該真空チャンバ2の内部から図1に示すキャップ21などにより絶縁端子3の基端側を保持させる。この絶縁端子3の先端側には、図1および図2に示すように、予め接続金属体4を保持させておく。
【0026】
次に、図3に示すように、コイルばね6の一端部61を円周溝31に押し入れるとともに、コイルばね6の他端部62を電子銃5の円周端面54で押し込みながら、電子銃5を接続金属体4に嵌め込む。そして、電子銃5の円周端面54と段差部42とが略面一になる位置で、電子銃5を接続金属体4に固定させる。
【0027】
その後、真空チャンバ2の電子線側にフランジ7およびノズル8を同一軸心となるように接続し、フランジ7に真空ポンプ9を接続する。この真空ポンプ9により、真空チャンバ2、フランジ7およびノズル8の内部を真空雰囲気にする。
【0028】
以下、上記電子線照射装置1の動作および作用について説明する。
【0029】
まず、外部電源から中心棒を介してフィラメントに電力を供給することで、フィラメントから電子線Eが出射する。この電子線Eは、図1に示す真空チャンバ2からフランジ7およびノズル8に案内されて、ノズル8に設けられた窓10から外部に照射する。
【0030】
フィラメントから電子線Eが出射することで、当該フィラメントを内部に配置する電子銃5から電子が接続金属体4に流れるとともに、図2に示す接続金属体4を保持する絶縁端子3が帯電する。この帯電は円周溝31により内側円筒突出部36に集中するものの、内側円筒突出部36の電子は、コイルばね6を介して外側円筒突出部38に導かれる。また、電子銃5の円周端面54がコイルばね6で付勢されているので、この円周端面54に多少の凸凹があっても、当該円周端面54とコイルばね6が適切に電気的に接続される結果、電子銃5の電子も、コイルばね6を介して外側円筒突出部38に導かれる。
【0031】
このように、上記実施例1に係る電子線照射装置1によると、電子銃5を付勢するとともに円周溝31の面32~34および電子銃5に接触するコイルばね6により、電子線Eの出射により発生する電子が内側円筒突出部36および電子銃5から外側円筒突出部38に導かれるので、円周溝31での放電を十分に抑えることができる。
【0032】
また、弾性導電部材としてコイルばね6を採用することにより、コイルばね6の円周溝31への配置が容易になるので、電子線照射装置1を容易に組み立てることができる。
【実施例2】
【0033】
本実施例2に係る電子線照射装置1は、弾性導電部材として、上記実施例1のようなコイルばね6ではなく、板ばね60を採用したものである。なお、以下において、上記実施例1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
本実施例2に係る板ばね60は、図4に示すように、内壁面32、湾曲底面33および外壁面34と電子銃5の円周端面54とに面接触するように、短辺側の両端部で曲げられたものである。また、上記板ばね60は、円周溝31の全周にわたって配置されるために、長辺側で曲げられて環状にされたものである。この板ばね60も、上記実施例1に係るコイルばね6と同様に、放電の要因となり得る角部を有しない方が好ましい。このため、上記板ばね60の短辺および長辺における角部は、好ましくはアール加工などにより滑らかにされる。さらに、上記板ばね60の放電が予想される部分は、電気抵抗値を下げるように構成されることが好ましく、例えばその部分の板厚が他の部分の板厚よりも大きくされる。
【0035】
このように、本実施例2に係る電子線照射装置1によると、板ばね60と円周溝31の面32~34および電子銃5との接触の面積が増えるので、円周溝31での放電をより十分に抑えることができる。
【実施例3】
【0036】
本実施例3に係る電子線照射装置1は、上記実施例1に係る電子線照射装置1の円周溝31がメタライズされたものである。なお、以下において、上記実施例1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
本実施例3に係る円周溝31は、図5に示すように、メタライズされているので、内壁面32、湾曲底面33および外壁面34を覆う金属膜30を有する。一方で、本実施例3に係るコイルばね6は、このメタライズされた円周溝31に配置される。このため、上記コイルばね6は、この金属膜30を介して、内壁面32、湾曲底面33および外壁面34に接触する。なお、図5では上記金属膜30が円周溝31の全面を覆うものとして示したが、金属膜30がコイルばね6と接触する範囲のみ円周溝31を覆うものであってもよい。
【0038】
このように、本実施例3に係る電子線照射装置1によると、金属膜30により、コイルばね6と円周溝31の面32~34および電子銃5との電気的な接触の面積が増えるので、円周溝31での放電をより十分に抑えることができる。
【実施例4】
【0039】
本実施例4に係る電子線照射装置1は、弾性導電部材として、上記実施例1のようなコイルばね6ではなく、図6に示す無端状コイルばね66を採用したものである。なお、以下において、上記実施例1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
本実施例4に係る無端状コイルばね66は、図6に示すように、通常のコイルばねの両端を接続した環形状のものであり、例えば、バルシール社製のラジアルスプリング、アキシアルスプリングまたは斜め巻きコイルスプリングなどである。この無端状コイルばね66も、上記実施例1に係るコイルばね6と同様に、放電の要因となり得る角部を有しない方が好ましい。
【0041】
上記無端状コイルばね66は、上記円周端面54および円周溝31の面32~34に接触する部分で当該面54,32~34を押しているので、これらの面54,32~34に多少の凸凹があっても、当該面54,32~34と適切に電気的に接続される。
【0042】
このように、本実施例4に係る電子線照射装置1によると、円周端面54および円周溝31の面32~34に多少の凸凹があっても、これらの面54,32~34と無端状コイルばね66とが適切に電気的に接続されるので、円周溝31での放電をより十分に抑えることができる。
【0043】
ところで、上記実施例1~4で説明した構成のうち、[課題を解決するための手段]に記載した第1の発明の構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。例えば、上記実施例2または4に係る電子線照射装置1に、上記実施例3に係る金属膜30を採用したものであってもよい。
【0044】
また、上記実施例1~4では、周溝が円周溝31であるとして説明したが、角周溝(多角形状の周溝)であってもよい。また、円周溝31の底面が湾曲底面33であるとして説明したが、湾曲以外の形状をした底面であってもよい。なお、円周溝31の底面が湾曲底面33であることにより、円周溝31へのコイルばね6および板ばね60の配置が容易になるので、電子線照射装置1を容易に組み立てることができる。
【0045】
さらに、上記実施例1~4では、弾性導電部材の一例として、コイルばね6,板ばね60または無端状コイルばね66について説明したが、電子銃5への付勢が可能な程度に弾性を有するとともに、導電性を有するものであればよい。
【0046】
また、上記実施例1~3では、コイルばね6または板ばね60による付勢が電子銃5に対するものとして説明したが、電子銃5に加えて円周溝31の内壁面32に対するもの、すなわち、コイルばね6または板ばね60(つまり弾性導電部材)が内壁面32を締め付けるものであってもよい。弾性導電部材が内壁面32を締め付けることで、弾性導電部材と内壁面32とが適切に電気的に接続されるので、円周溝31での放電をより十分に抑えることができる。
【符号の説明】
【0047】
E 電子線
g 所定間隔
1 電子線照射装置
2 真空チャンバ
3 絶縁端子
4 接続金属体
5 電子銃
30 金属膜
31 円周溝
32 内壁面
33 湾曲底面
34 外壁面
60 板ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6