(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20220210BHJP
H02K 33/04 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B06B1/04 S
H02K33/04 A
(21)【出願番号】P 2018035773
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 剛法
(72)【発明者】
【氏名】田島 慎也
(72)【発明者】
【氏名】東井 幸一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝博
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-195798(JP,A)
【文献】特開2009-033864(JP,A)
【文献】特開2010-011003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0243404(US,A1)
【文献】特開2012-068316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H02K 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル及び前記コイルの半径方内側に間隔をあけて配置されるマグネットのうちの一方を有する可動体、前記コイル及び前記マグネットのうちの他方を有する固定体、及び前記可動体を前記固定体に対して可動自在に支持する弾性支持部を有し、給電される前記コイルと前記マグネットの協働により、前記可動体が前記固定体に対して前記マグネットの着磁方向で振動する振動アクチュエータであって、
前記固定体は、
前記可動体を覆うように振動方向の一方側に配置される第1固定体と、
前記可動体を覆うように前記振動方向の他方側に配置され、前記第1固定体に接合して前記可動体を振動可能に収容する第2固定体と、
を有し、
前記弾性支持部は、前記可動体に一端側が固定され、前記可動体の外周から放射方向に突出して設けられる板状の弾性体であり、
前記弾性支持部の他端部は、前記第1固定体と前記第2固定体とに挟持されて固定され、
前記第1固定体は、前記振動方向の一方側に配置された上面部を含み、前記可動体を前記振動方向の一方側から覆う金属製のケースを有し、
前記第1固定体は、
前記ケースの周壁部の内面に沿って設けられ、前記振動方向の一方側の端部で前記上面部に当接するとともに、前記振動方向の他方側の端部で前記弾性支持部の他端部に当接する当接部を有し、
前記第1固定体の前記一方側の端部は、前記上面部に当接して変形可能な複数の突起を有する、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記固定体は、前記可動体を挿通し、前記可動体を前記振動方向に移動可能に支持するシャフトを有し、
前記シャフトは、両端部側で、前記第1固定体と前記第2固定体にそれぞれに固定されている、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2固定体は、前記
上面部に対向して配置され、前記ケースに接合して前記可動体を振動可能に収容する金属製のベースプレートを有し、
前記シャフトは、前記ベースプレートと、前記ケースの前記
上面部とに、圧入及び溶接のうち少なくとも一方で固定されている、
請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記第2固定体は、前記ケースに接合して、前記可動体を振動可能に収容する金属製のベースプレートを有し、
前記コイルは、前記ベースプレート上に非電導部を介して設けられている、
請求項
1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記ケースは、前記ベースプレートに対して、カシメ固定及び溶接固定のうち少なくとも一つの固定で固定されている、
請求項3または4に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記可動体と対向する前記
上面部及び前記ベースプレートには、前記可動体との接触を緩衝する緩衝部材が設けられている、
請求項3または4に記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動機能を有する携帯機器には、振動発生源として振動アクチュエータが実装されている。振動アクチュエータを駆動してユーザに振動を伝達することにより、着信を通知したり、操作感や臨場感を向上したりすることができる。ここで、携帯機器は、携帯電話やスマートフォンなどの携帯通信端末、タブレットPCなどの携帯情報端末、携帯型ゲーム端末、据置型ゲーム機のコントローラー(ゲームパッド)、服や腕などに装着されるウェアラブル端末を含む。
【0003】
振動アクチュエータとして、小型化が図られたものとして、例えば、特許文献1に示すように、ページャー等に用いられる振動アクチュエータが知られている。
この振動アクチュエータは、1対の板状弾性体を相対向するようにして枠体に支持させ、渦巻型形状である一方の板状弾性体の盛り上がった中央部分に、磁石を取り付けたヨークを固定して支持している。ヨークは磁石とともに磁界発生体を構成し、この磁界発生体内に、他方の板状弾性体に取り付けたコイルが配置されている。このコイルに発振回路を通じて周波数の異なる電流を切替えて付与して一対の板状弾性体を選択的に共振させて振動を発生させることにより、ヨークは枠体の中心線方向で振動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、振動機能を有する携帯機器には、ユーザに十分な体感振動を与えられることが要求され、さらに振動を付与する振動アクチュエータとしては、特許文献1に開示の振動アクチュエータよりも、より簡易な構成で組み立て易いものが望まれている。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で組み立て易く、所望の振動出力を実現できる振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動アクチュエータの一つの態様は、コイル及び前記コイルの半径方内側に間隔をあけて配置されるマグネットのうちの一方を有する可動体、前記コイル及び前記マグネットのうちの他方を有する固定体、及び前記可動体を前記固定体に対して可動自在に支持する弾性支持部を有し、給電される前記コイルと前記マグネットの協働により、前記可動体が前記固定体に対して前記マグネットの着磁方向で振動する振動アクチュエータであって、前記固定体は、前記可動体を覆うように振動方向の一方側に配置される第1固定体と、前記可動体を覆うように前記振動方向の他方側に配置され、前記第1固定体に接合して前記可動体を振動可能に収容する第2固定体と、を有し、前記弾性支持部は、前記可動体に一端側が固定され、前記可動体の外周から放射方向に突出して設けられる板状の弾性体であり、前記弾性支持部の他端部は、前記第1固定体と前記第2固定体とに挟持されて固定され、前記第1固定体は、前記振動方向の一方側に配置された上面部を含み、前記可動体を前記振動方向の一方側から覆う金属製のケースを有し、前記第1固定体は、前記ケースの周壁部の内面に沿って設けられ、前記振動方向の一方側の端部で前記上面部に当接するとともに、前記振動方向の他方側の端部で前記弾性支持部の他端部に当接する当接部を有し、前記第1固定体の前記一方側の端部は、前記上面部に当接して変形可能な複数の突起を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で組み立て易く、所望の振動出力を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータを示す斜視図である。
【
図2】同振動アクチュエータの底面側斜視図である。
【
図3】同振動アクチュエータにおける要部構成を示す概略断面図である。
【
図4】同振動アクチュエータにおける固定体と可動体とを示す上面側分解図である。
【
図5】同振動アクチュエータにおける固定体と可動体とを示す底面側分解図である。
【
図6】同振動アクチュエータの上側固定体の上面側分解斜視図である。
【
図7】同振動アクチュエータの上側固定体の底面側分解斜視図である。
【
図8】同振動アクチュエータの下側固定体の上面側分解斜視図である。
【
図9】同振動アクチュエータの下側固定体の底面側分解斜視図である。
【
図10】同振動アクチュエータの可動ユニットの上面側分解斜視図である。
【
図11】同振動アクチュエータの可動ユニットの底面側上側分解斜視図である。
【
図12】弾性支持部と可動体のリングコアとの接合部を示す斜視図である。
【
図13】弾性支持部と可動体のリングコアとの接合部の説明に供する図である。
【
図14】同振動アクチュエータの磁気回路構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る振動アクチュエータ10を示す斜視図であり、
図2は、同振動アクチュエータ10の底面側斜視図であり、
図3は、同振動アクチュエータ10における要部構成を示す概略断面図である。また、
図4及び
図5は、同振動アクチュエータ10における固定体20と可動体60とを示す上面側分解図及び底面側分解図である。なお、本実施の形態における「上」側、「下」側は、理解しやすくするために便宜上付与したものであり、振動アクチュエータ10における可動体60(
図3参照)の振動方向の一方、他方を意味する。すなわち、振動アクチュエータ10が機器に搭載される際には上下が逆になっても左右になっても構わない。
【0012】
図1及び
図2に示す振動アクチュエータ10は、スマートフォン等の携帯機器に振動発生源として実装され、携帯機器の振動機能を実現する。振動アクチュエータ10は、例えば、ユーザに対して着信を通知したり、操作感や臨場感を与えたりする場合に駆動される。
【0013】
図1~
図5に示す振動アクチュエータ10は、固定体20と、弾性支持部50と、固定体20のケース32内で、弾性支持部50を介して往復動自在に配置される可動体60とを有する。振動アクチュエータ10は、電源供給部(図示省略)からコイル48が通電されることで、コイル48とマグネット65とが協働して、可動体60を往復振動させる磁気回路構成を有する。
【0014】
本実施の形態の振動アクチュエータ10は、コイル48を固定体20側に設け、マグネット65を可動体60側に設けて、所謂ムービングマグネット式の構成としているが、これに限らない。コイル48を可動体60に設けたムービングコイル式とした構成としてもよい。
【0015】
振動アクチュエータ10では、固定体20は、2つのユニット(上側固定体30及び下側固定体40)を有し、可動体60と弾性支持部50とを一つの可動ユニット70とし、これら3つのユニットを組み立てることで振動アクチュエータ10は、容易に形成される。
【0016】
固定体20は、上側固定体(第1固定体)30と下側固定体(第2固定体)40とにより可動ユニット70の弾性支持部50の他端部(
図12に示す外周側接合部502)を挟むことで、可動ユニット70の可動体60を着磁方向(本実施の形態ではコイル軸方向にも相当)、ここでは挟持方向に移動可能に支持している。この挟持方向は、振動アクチュエータ10における可動体60の振動方向に相当する。また、弾性支持部50は、板状の弾性体であり、本実施の形態では、板ばねである。弾性支持部50は、可動体60に一端側が固定され、可動体60の外周から放射方向に配置される。弾性支持部50についての詳細は後述する。
【0017】
<上側固定体30>
図6及び
図7は、本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータ10の上側固定体30の上面側分解斜視図及び底面側分解斜視図である。
上側固定体30は、可動体60を覆うように振動方向の一方側に配置される。
上側固定体30は、
図3、
図6及び
図7に示すように、ケース32、上側ばね固定部34、シャフト36、緩衝部材38を有する。
【0018】
ケース32は、振動アクチュエータ10の外形を構成し、内部に可動体60を収容する。
本実施の形態では、ケース32は、下側固定体40のベースプレート42とともに中空の円柱状の外形を構成し、内部に、可動ユニット70、つまり、弾性支持部50及び可動体60を収容している。
【0019】
ケース32は、耐衝撃性を有するSUS(ステンレス)等の金属材料で構成される。ケース32は、絞り加工により金属板を凹状に成形されたものでもよい。ケース32は、ベースプレート42と同種の金属(例えば、SUS(ステンレス)304)により構成されることが好ましい。
【0020】
ケース32は、円盤状の上面部322の外周から垂下する円筒状の周壁部324を有し、周壁部324の下端部に設けられた突状の爪部3241で、ベースプレート42の外周縁に係合しつつ固定されている。爪部3241は、ベースプレート42の外周縁にカシメ、溶接、或いはカシメと溶接の双方で互いに固定されている。本実施の形態では、ケース32とベースプレート42とが同種の金属で構成されているので、カシメ或いは溶接により強固に固定することができる。特に、溶接で固定する場合、ケース32とベースプレート42の双方の融点が揃うため、双方を更に強固に固定できる。なお、ケース32は、磁性体であっても被磁性体であってもよい。
ケース32の上面部322の中央には、コイル48と同一軸上でシャフト36が垂設されている。
【0021】
シャフト36に沿って可動体60が移動するよう構成されており、一端部(本実施の形態では上端部)で、上面部322に固定され、他端部で下側固定体40のベースプレート42に固定されている。
シャフト36は、上面部322及びベースプレート42に対して、それぞれに接着、溶接、或いは、圧入のいずれかの接合方法で固定されている。本実施の形態では、シャフト36は、上面部322及びベースプレート42のそれぞれに形成された開口部に挿入され、接着、溶接、或いは、圧入のいずれか、或いは少なくとも2つの接合方法で固定されていてもよい。また、
図4~
図7では、シャフト36は、上側固定体30に固定されているものとしているが、下側固定体40側のベースプレート42に固定されていても良い。
上側ばね固定部34は、ケース32内において、一端部(上側当接部342)で、可動ユニット70の弾性支持部50に可動体60の振動方向の上側から当接し、他端側で上面部322に接触する。
【0022】
具体的には、上側ばね固定部34は、周壁部324の内周面に配置され、上側当接部342で、外周側接合部502に当接して押圧する。上側当接部342は、外周側接合部502を、下側固定体40のコイルホルダ(下側ばね固定部)44とで挟持して固定する。なお、外周側接合部502は、可動ユニット70の弾性支持部50の他端部として弾性支持部50の外周縁を構成している。
【0023】
また、上側ばね固定部34は、その他端部(上端部)には、塑性変形或いは弾性変形可能な突状の複数の撓み部344が設けられ、この撓み部344で上面部322に当接する。撓み部344は、上側ばね固定部34とコイルホルダ44とで弾性支持部50を互いに挟持する方向に押圧した際に、ケース32の上面部322の可動体収容側に当接して撓む。これにより上側ばね固定部34は、ケース32内において、上面部322と弾性支持部50との間で、その位置を調整可能である。すなわち、撓み部344は、弾性支持部50を押圧する上側ばね固定部34の高さ寸法の調整を可能とする。
本実施の形態では、上側ばね固定部34は、変形可能な樹脂材により形成されており、ケース32とベースプレート42との間で、弾性支持部50をコイルホルダ44とともに確実に挟持する。
【0024】
緩衝部材38は、可動する可動体60とケース32の上面部322との間に配置され、可動体60の最大振幅時の可動体60に接触する。緩衝部材38は、例えば、スポンジ等で形成されるダンパーであり、本実施の形態では、リング状に形成され、シャフト36が挿通された状態で、上面部322の可動体収容側に取り付けられている。緩衝部材38は、振動アクチュエータ10における可動体60の可動振幅が大きくなった場合、または、外部より衝撃が加わった際に、可動体60がケース32に接触して、異音が発生したり、衝撃により各部品が破損することを防止する。
【0025】
<下側固定体40>
図8及び
図9は、本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータ10の下側固定体40の上面側分解斜視図及び底面側分解斜視図である。
【0026】
下側固定体40は、可動体60を覆うように振動方向の他方側(下側)に配置され、上側固定体30に接合して可動体60を振動可能に収容する。
本実施の形態では、下側固定体40にマグネット65とともに磁気回路を構成する筒状のコイル48が設けられている。
下側固定体40は、コイル48の他、ベースプレート42、コイルホルダ44、緩衝部材46を有する。
【0027】
ベースプレート42は、振動アクチュエータ10の底面部を構成するものである。ベースプレート42は、ケース32とともに振動アクチュエータ10の筐体を構成する。
ベースプレート42は、ケース32の形状、つまり、ケース32における周壁部324の開口形状に対応して円盤状に形成され、且つ、上面部322と対向する円盤状のベース本体部分を有する。このベース本体部分の外周の一部から半径方向外方に突出する突出板部422が設けられる。
【0028】
ベースプレート42は、耐衝撃性を有するSUS(ステンレス)等の金属材料で構成され、外周縁部に、ケース32の周壁部324の下端部に係合する被係合部が形成されている。この被係合部に、ケース32の周壁部324の下端部がカシメ及び溶接の一方または双方により固定されている。なお、ベースプレート42は、本実施の形態では、上述したようにケース32と同種の金属(例えば、SUS(ステンレス)304)により構成されており、ケース32に固定され、内部での可動体60の振動に耐えうる構造となっている。
【0029】
ベースプレート42上には、コイルホルダ44を介してコイル48が設けられている。
コイルホルダ44は、コイル48を保持し、マグネット65が、コイル48の半径方向内側で、所定間隔を空けて同一軸心で位置するようにしている。
また、コイルホルダ44は、弾性支持部50に下側で当接し、上側ばね固定部34とともに弾性支持部50を挟持する下側ばね固定部として機能する。
【0030】
コイルホルダ44は、コイル48とベースプレート42との間に介設される非磁性体である。また、コイルホルダ44は、樹脂等の非電導材料で構成されることが好ましい。
これにより、ベースプレート42とコイル48の間に非電導性の材料からなるコイルホルダ(非電導部)44が配置される構成となり、固定体20として、コイル48を組み立てる際に、電気的な絶縁をした状態でコイル48をコイルホルダ44に固定できる。また、コイルホルダ44を樹脂部品としてボビン構造としても組立性の向上を図ることができる。
【0031】
コイルホルダ44は、円盤状のホルダ本体442と、弾性支持部50に当接する下側当接部444と、コイル48に接続された配線を導出する導出部446とを有する。
ホルダ本体442は、外径がケース32の内径と略同じであり、ケース32内に挿入される円盤状に形成されている。ホルダ本体442は、ベースプレート42のベース本体部分上に取りつけられる。ホルダ本体442には、コイル48が固定される凹状のコイル固定部が設けられ、このコイル固定部にコイル48が接着等により固定されている。また、ホルダ本体442には、中央部に形成された開口部に挿入されるシャフト36が固定される。
【0032】
下側当接部444は、弾性支持部50に当接するものであり、ホルダ本体442の外周縁部に立ち上がるように設けられている。ここでは、下側当接部444は、環状の周壁状に形成されている。これにより弾性支持部50は、ホルダ本体442から離れた位置で固定体20に固定される。弾性支持部50(具体的には、弾性支持部50の外側接合部502)と、ホルダ本体442との間隔は、可動体60の常態位置から振動方向の他方側への可動範囲となる。
【0033】
導出部446は、コイル48に接続された配線を導出する。導出部446は、ホルダ本体442の一端部から突出して設けられ、ベースプレート42の突出板部422上に配置される。導出部446の配線を介して、外部からコイル48に電源が供給される。
なお、コイルホルダ44とベースプレート42とは、それぞれに設けられた複数組の位置決め凸部448と位置決め凹部428とが嵌合することで位置決めされた状態で重なる。例えば、本実施の形態では、コイルホルダ44を、非磁性体であり非電導材料として樹脂により成形し、属製のベースプレート42の位置決め凹部428を貫通孔としている。これにより、コイルホルダ44側の位置決め凸部448を位置決め凹部428としての貫通孔に挿入して嵌合し、挿入した樹脂製の位置決め凸部448を溶かして貫通孔に容易に固定できる。
【0034】
緩衝部材46は、可動する可動体60とコイルホルダ44のホルダ本体442との間に配置され、可動体60の最大振幅時の可動体60に接触する。例えば、スポンジ等で形成されるダンパーであり、本実施の形態では、リング状に形成され、シャフト36が挿通された状態で、ホルダ本体442上に取り付けられている。緩衝部材46は、振動アクチュエータ10における可動体60の可動振幅が大きくなった場合、または、外部より衝撃が加わった際に、可動体60がベースプレート42に接触して、異音が発生したり、衝撃により各部品が破損することを防止する。
【0035】
コイル48は、組み立てられた振動アクチュエータ10において、軸方向(マグネット65の着磁方向)を振動方向として、マグネット65とともに、振動アクチュエータ10の駆動源の発生に用いられる。コイル48の軸は、例えば、後述するマグネット65及びシャフト36のうち少なくともマグネット65の軸と同軸上に配置される。
【0036】
コイル48の両端部は、導出部446に配線され、電源供給部(図示省略)に接続される。ここでは、導出部446に配線されるコイル48の両端部は、交流供給部に接続され、交流供給部からコイル48に交流電源(交流電圧)が供給される。これにより、コイル48はマグネットとの間に、互いの軸方向で互いに接離方向に移動可能な推力を発生できる。具体的には、コイル48は、その上端部で、半径方向内側のマグネット65の軸方向の中心部分に対向するように配置され、コイル48の軸方向の中心部分で、センターヨーク63と対向するように配置されている。マグネット65において平板コア614側(本実施の形態では上側)がS極、センターヨーク63側がN極となるように着磁されている場合、マグネット65とセンターヨーク63との接合部分から放射され、平板コア614側から入射する磁束が形成される。したがって、マグネット65及びセンターヨーク63を囲むように配置されるコイル48のどの部分に対しても、コイル48の径方向の内側から外側に磁束が横切るので、コイル48に通電したときに同じ方向(
図14で示すF方向、或いは-F方向)にローレンツ力が作用する。
【0037】
<可動ユニット70>
図10及び
図11は、本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータ10の可動ユニット70の上面側分解斜視図及び底面側上側分解斜視図である。
可動ユニット70は、コイル48及びマグネット65のうちの一方を有する。可動ユニット70は、本実施の形態では、マグネット65を有している。
可動ユニット70は、弾性支持部50により固定体20のケース32及びベースプレート42内において、上面部322とベースプレート42との間で、上面部322とベースプレート42とが対向する方向に往復移動可能に支持される。
【0038】
可動ユニット70は、円盤状に形成された可動体60の外周から弾性支持部50が放射状に張り出すように設けられ、張り出した弾性支持部50の外周部(外周側接合部502)で、上側ばね固定部34とコイルホルダ44とで挟持されることにより固定体20に固定されている。
可動ユニット70では、可動体60は、弾性支持部50を、下側(コイル48側)の端部で固定している。
【0039】
可動体60は、可動部コア61、センターヨーク63、下側軸受け64、マグネット65、上側軸受け67を有する。
【0040】
可動部コア61は、コイル48及びマグネット65のうちの一方が固定されるとともに、コイル48及びマグネット65の双方を囲むように配置され、可動体60の外周を構成する。
【0041】
可動部コア61は、本実施の形態では、有蓋筒状の磁性体であり、ヨークとして機能する。可動部コア61は、例えば、センターヨーク63と同種の磁性材料により構成されており、コイル48、マグネット65及びセンターヨーク63とともに磁気回路を構成する。また、可動部コア61は、リングコア612及び平板コア(天面部に相当)614を有し、可動体60において、可動体60の本体部分としての機能と、ウェイトとしての機能も有する。
【0042】
可動部コア61は、中央にシャフト36が挿通される開口部を有する円環板状の平板コア614に、その外周部から下方に突出するように、リングコア612を固定して構成される。なお、リングコア612と平板コア614により有蓋筒状に形成されているがこれに限らず一体構造として構成されてもよい。しかしながら、可動部コア61を一体構造とした場合、切削加工が必要であり、材料の廃棄が多く、加工工数も多くなり、コストが高くなる。これに対し、本実施の形態の可動部コア61は、筒状のリングコア612と、板状の平板コア614とに分割されたものどうしを組み合わせることで構成しているので、プレス加工にて作成することが可能となり、一体構造よりも、コスト低減化を図ることができる。
【0043】
可動部コア61内、具体的には、リングコア612内に、平板コア614からマグネット65、センターヨーク63が順に、それぞれ中央の開口部が同軸上で連続するように配置されている。これら連続する開口部に、シャフト36が移動自在に挿通されている。
【0044】
マグネット65は、コイル48の軸方向を着磁方向にし、着磁面を向けて配置される。マグネット65は、円筒状に形成され、開口する2方向、つまり、振動方向(シャフト36の軸方向であり、コイル48の軸方向に相当)に着磁されている。マグネット65は、本実施の形態では、コイル48に対して、コイル48の半径方向内側で所定間隔を空けて位置するように配置される。この半径方向における所定間隔は、マグネット65及びコイル48が着磁方向に互いに抜き差しするように移動可能な間隔である。
図3に示すように、マグネット65は、本実施の形態では、下側固定体40のコイル48の上端面が、着磁方向の中心位置に位置するように、配置されている。なお、マグネット65は、コイル48の内側で、コイル48の軸方向に着磁面をそれぞれ向けて配置されるものであれば、円筒状以外の形状であってもよい。
【0045】
センターヨーク63は、マグネット65に密着して配置され、マグネット65の磁束を集中させ、漏らすことなく効率良く通す。本実施の形態では、センターヨーク63は、コイル48の内側において、コイル48の軸方向(振動方向)の中央部分に対して軸方向と直交する方向で対向するように位置する。
【0046】
これらセンターヨーク63及び平板コア614のそれぞれの中央の開口部には、下側軸受け64及び上側軸受け67が嵌め込まれている。
【0047】
下側軸受け64及び上側軸受け67には、それぞれ、シャフト36が軸方向で移動自在に挿通され、可動体60自体を、シャフト36に沿って振動方向に円滑に移動自在にする。
下側軸受け64及び上側軸受け67は、センターヨーク63及び平板コア614内で、マグネット65を軸方向、つまり振動方向で挟むように配置されている。
【0048】
下側軸受け64及び上側軸受け67は、それぞれ筒状に形成されており、それぞれのマグネット65側の端部の外周は、フランジ状に放射方向に突出して設けられ、抜け止め部642、672を構成している。
下側軸受け64は、センターヨーク63の開口部に挿入(ここでは圧入)された際に、センターヨーク63の開口部においてマグネット65側の面に形成された凹状の段差部632に抜け止め部642が係合する。
【0049】
これにより、下側軸受け64は、センターヨーク63とマグネット65との間に挟まれた状態で配置され、シャフト36との摺動、外部からの衝撃或いは振動アクチュエータ10の駆動によってセンターヨーク63から外れることがない。また、組立時及び設計寸法誤差が生じても外れることがない。
【0050】
上側軸受け67は、平板コア614の開口部に挿入(ここでは圧入)された際に、平板コア614に形成された凹状の段差部6142に抜け止め672が係合する。
これにより、上側軸受け67は、平板コア614とマグネット65との間に挟まれた状態で配置され、シャフト36との摺動、外部からの衝撃或いは振動アクチュエータ10の駆動によって平板コア614から外れることがない。また、組立時及び設計寸法誤差が生じても外れることがない。
【0051】
このように、下側軸受け64及び上側軸受け67は、これらで挟むように配置されるマグネット65側、つまり、可動体60の中心側にそれぞれ抜け止め部642、672を有する。下側軸受け64及び上側軸受け67の抜け止め部の642、672は、センターヨーク63及び平板コア614の段差部632、6142に、それぞれ係合するので、可動体60において下側軸受け64及び上側軸受け67は、抜け止めされた状態で配置されている。
【0052】
リングコア612は、筒状体であり、本実施の形態では、弾性支持部50が接合されている。具体的には、リングコア612は、底面側、つまり、平板コア614とは逆側の端部である接合端部6124で、弾性支持部50が接合されている。接合端部6124は、本実施の形態では、リングコア612の開口する下端部であり、開口縁部に沿って周方向に環状に形成されており、弾性支持部50を接合して固定する。接合端部6124は、開口方向、ここでは下方に突出する筒状のカシメ爪部6124aと、カシメ爪部6124aの基端部側で、カシメ爪部6124aと直交する固定段差面6124bとを有する。
【0053】
リングコア612の外周面の一部には、リングコア612の中心とした対称の位置に平面部6128が設けられている。平面部6128は、対象物を挟んで固定する固定治具により円筒状であるリングコア612を確実に挟持できる部位である。平面部6128は、接合端部6124と弾性支持部50の内周側接合部506との接合する際に、リングコア612が円筒状であっても、固定治具により容易に挟持されてリングコア612を確実に固定させることができる。例えば、弾性支持部50の内周側接合部506に対して接合端部6124をカシメて(所謂、変形させて)固定する際に、その工程を安定して行うことができる。
【0054】
リングコア612は、弾性支持部50との接合部分近傍の外周、ここでは、接合端部6124に隣接して配置され、変形時の弾性支持部50の干渉を回避する切欠状の逃げ部6122を有する。
リングコア612において、接合端部6124のカシメ爪部6124aと固定段差面6124bは、逃げ部6122よりも下端側に設けられている。
【0055】
逃げ部6122は、可動体60がベースプレート42側に移動する際の弾性支持部50の干渉を逃げて回避する。なお、弾性支持部50が、可動体60の下端部(接合端部6124)で接合されているので、可動体60が平板コア614側に移動しても、可動体60は弾性支持部50の変形部分から離れる方向に移動するので、その際の逃げ部は不要である。
逃げ部6122の軸方向、つまり振動方向の長さは、逃げ部6122の一端側(ここでは下端側)の開口端部で接合される弾性支持部50、具体的には、ばねの可動範囲により設定される。
【0056】
逃げ部6122の振動方向の長さ(開口範囲)は、弾性支持部50である板ばねの可動範囲、つまり、可動体60の可動範囲の1/2~2/3の長さ(変形時における弾性支持部50の干渉を回避するための寸法として「逃げ寸法」とも称する)で設定される。逃げ寸法を可動範囲の1/2~2/3とすることにより、弾性支持部50である板ばねが干渉することなく、可動体60の質量を維持した状態で駆動させることができる。
【0057】
図12は、弾性支持部50と可動体60のリングコア612との接合部を示す斜視図である。
図13は、弾性支持部50と可動体60のリングコア612との接合部の説明に供する図であり、
図13Aは円環状の内周側接合部506をリングコア612の接合端部6124に嵌め込んだ状態を示し、
図13Bは、円環状の内周側接合部506をリングコア612に接合した状態を示す。まず、
図12を参照して弾性支持部50について説明する。
【0058】
弾性支持部50は、外周側の他端部としての外周側接合部502と内周側の一端部としての内周側接合部506とが、弾性変形により厚み方向に変位可能である。弾性支持部50は、常態時において、可動体60の移動方向と直交するよう(ここでは水平方向)に配置されている。
具体的には、弾性支持部50は、中央に開口を有するリング状の板ばねであり、外周側に配置される外周側接合部502と、内周側に配置される内周側接合部506を、外周側接合部502と内周側接合部506とを接続するアーム部504とを有する。
【0059】
本実施の形態では、弾性支持部50において、外周側接合部502及び内周側接合部506は、それぞれ円環状に形成され、間隔を空けて配置されている。この間隔内に配置された円弧状のアーム部504は、アーム部504の両端部で外周側接合部502及び内周側接合部506にそれぞれ接続され、弾性変形する。主にこのアーム部504の弾性変形により、外周側接合部502と内周側接合部506とは厚み方向で変位自在である。なお、外周側接合部502と内周側接合部506の変位量は、アーム部504の長さにより調整できる。
【0060】
弾性支持部50は、
図3に示すように、内周側の内周側接合部506で可動体60に接合され、外周側の外周側接合部502で固定体20に固定される。
弾性支持部50の円環状の内周側接合部506は、リングコア612の接合端部6124(詳細には、カシメ爪部6124a)に外嵌して接合され、リングコア612からリングコア612の半径方向外側に延在するように固定されている。
【0061】
弾性支持部50とリングコア612との接合は、溶接或いは接着等を用いてもよいが、本実施の形態では、
図13に示すように、弾性支持部50の他端部をリングコア612のカシメ爪部6124aに外嵌してカシメ爪部6124aをカシメることで接合されている。
【0062】
具体的には、
図13Aに示すように、リングコア612の下端部6124に弾性支持部50の内周側接合部506を外嵌して、環状の固定段差面6124b上に位置させる。
次いで、
図13Bに示すように、カシメ爪部6124aを打ったり締めたりすることにより、内周側接合部506は、固定段差面6124bとで挟むようにして強固に留められる。
【0063】
これにより、内周側接合部506は、リングコア612を全周カシメ加工することにより確実に固定されている。よって、接着を用いた場合において駆動時に外れるような力か掛かっても、外れることがない。また、溶接を用いた場合と異なり、溶接するスペースを可動体60の各部品或いは弾性支持部50に設ける必要が無い。これにより、そのスペースを確保するために弾性支持部50である板ばねの設計自由度が低下することがない。
このように、弾性支持部50である板ばねと可動体60とを強固に接続でき、弾性支持部50の設計自由度を高くすることができる。
【0064】
振動アクチュエータ10では、
図14に示す磁気回路が形成される。また、振動アクチュエータ10において、コイル48は、可動体60のマグネット65及びセンターヨーク63からの磁束に直交するように配置されている。したがって、
図14に示すように通電が行われると、マグネット65の磁界とコイル48に流れる電流との相互作用により、フレミング左手の法則に従ってコイル48に-F方向のローレンツ力が生じる。
【0065】
-F方向のローレンツ力の方向は、磁界の方向とコイル48に流れる電流の方向に直交する方向(
図14ではベースプレート42側)である。コイル48はベースプレート42側(下側固定部であるコイルホルダ44)に固定されているので、作用反作用の法則に則り、この-F方向のローレンツ力と反対の力が、マグネット65を有する可動体60にF方向の推力として発生し、マグネット65を有する可動体側がF方向、つまり平板コア614(上部固定体30)側に移動する。可動体60は、駆動信号に従い駆動し、F方向に移動した際に、駆動条件によっては、緩衝部材38に接触(具体的には、衝突)する。
【0066】
また、コイル48の通電方向が逆方向に切り替わり、コイル48に通電が行われると、逆向きのF方向のローレンツ力が生じる。このF方向のローレンツ力の発生により、作用反作用の法則に則り、このF方向のローレンツ力と反対の力が、可動体60に推力(-F方向の推力)として発生し、可動体60は、-F方向、つまり、ベースプレート42(下部固定体40)側に移動する。可動体60は、駆動信号に従い駆動し、-F方向に移動した際に、駆動条件によっては、緩衝部材46に接触(具体的には、衝突)する。
【0067】
振動アクチュエータ10は、コイル48を有する固定体20と、コイル48の軸方向(AL)に磁化され、コイル48の半径方向内側に配置されるマグネット65を有し、弾性支持部50により弾性保持された状態でコイル48の内側でコイル48の軸方向に移動可能に配置される可動体60とを備える。
【0068】
振動アクチュエータ10では、内周側接合部506が可動体60に固定された板ばねとしての弾性支持部50の外周側接合部502が、固定体20を構成する上側固定体30と下側固定体40とに挟み込まれることで固定されている。これにより、弾性支持部50は、振動アクチュエータ10の天面(平板コア614)と底面(ベースプレート42)とから離間した状態で、可動体60を可動自在に支持している。
【0069】
これにより、可動体60を有する可動ユニット70が、ケース32とベースプレート42とからなる固定体20の筐体の内部で、上側ばね固定部34とコイルホルダ44により挟み込みにて固定されるので、所望の振動を得つつ、組立性が良く、構造が簡単であり、工程コストの低減を図ることができる。また、シャフト36を有しているので、一層、耐衝撃性が高く、十分な体感振動を得ることができる。
【0070】
ここで、振動アクチュエータ10は、電源供給部(図示略)からコイル48へ入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル48の通電方向は周期的に切り替わり、可動体60には、平板コア614側のF方向の推力とベースプレート42側のF方向の推力が交互に作用する。これにより、可動体60は、コイル48の巻回軸方向、つまり、シャフト36の延在方向に振動する。
【0071】
以下に、振動アクチュエータ10の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の振動アクチュエータ10では、可動体60の質量をm[kg]、ばね(板ばね)のねじり方向のバネ定数をKspとした場合、可動体60は、固定体20に対して、下式(1)によって算出される共振周波数fr[Hz]で振動する。
【0072】
【0073】
可動体60は、バネ-マス系の振動モデルにおけるマス部を構成すると考えられるので、コイル48に可動体60の共振周波数frに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体60は共振状態となる。すなわち、電源供給部からコイル48に対して、可動体60の共振周波数frと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体60を効率良く振動させることができる。
【0074】
振動アクチュエータ10の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエータ10は、下式(2)で示す運動方程式及び下式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0075】
【0076】
【0077】
すなわち、振動アクチュエータ10における質量m[kg]、変位x(t)[m]、推力定数Kf[N/A]、電流i(t)[A]、ばね定数Ksp[N/m]、減衰係数D[N/(m/s)]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0078】
このように、振動アクチュエータ10では、可動体60の質量mと板ばねである弾性支持部50のバネ定数Kspにより決まる共振周波数frに対応する交流波によりコイル48への通電を行った場合に、効率的に大きな振動出力を得ることができる。
【0079】
また、振動アクチュエータ10は、式(2)、(3)を満たし、式(1)で示す共振周波数を用いた共振現象により駆動する。これにより、振動アクチュエータ10では、定常状態において消費される電力は負荷トルクによる損失及び摩擦などによる損失だけとなり、低消費電力で駆動、つまり、可動体60を低消費電力で直線往復振動させることができる。
【0080】
本実施の形態によれば、振動アクチュエータ10は、可動ユニット70の弾性支持部50を、上側ばね固定部34を有する上側固定体30と、コイルホルダ44を有する下側固定体40とで挟持することで組み立てることができる。つまり、組立時において、上側固定体30、下側固定体40及び可動ユニット70を予め組み立てた後で、これらを組み付けるだけで振動アクチュエータ10を組み立てることができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、一端部(下端部)で弾性支持部50の外周側接合部502をコイルホルダ44とともに挟持する上側ばね固定部34の他端部(上端部)には、複数の撓み部(突起)344が設けられている。これにより、振動アクチュエータ10の組立時において、撓み部344が撓むことにより高さ寸法の調整が可能である。すなわち、振動アクチュエータ10の組立時において、ケース32内に、上側ばね固定部34とコイルホルダ44とで、可動ユニット70の外周部分から張り出す弾性支持部50の外周側接合部502を挟持して収める際に、各部品の累積公差により、部品(例えば、コイルホルダ44が外側にはみ出す場合でも、撓み部344が撓むことにより、これら部品を好適に収容して組みつけることができ、強制的に組み付けを行う必要が無く、ケース32が変形することがない。
【0082】
また、アクチュエータの構成として、円柱状の可動体と、その外周を囲むように配置される固定体との間に、双方に取りつけられる弾性支持部が配置される構成では、可動体の可動時に変形する弾性支持部が可動体に干渉する恐れがある。
【0083】
これに対し、本実施の形態の振動アクチュエータ10では、弾性支持部50が、可動体60の振動方向の一端部、ここでは下端部である接合端部6124に接合され、且つ、接合端部6124に隣接して逃げ部6122が設けられている。これにより、可動体60が振動方向に可動して変位しても、その変位した状態を変形することで支持する弾性支持部50が、可動体60に干渉することがない。
【0084】
また、この逃げ部6122は、可動体60の振動方向(コイル48の軸方向)における可動範囲の1/2~2/3の長さで窪むように形成されている。これにより、逃げ部6122を形成するために可動部コア61の一部であるリングコア612の質量を必要以上に小さくすることなく、可動体60の可動範囲において好適な質量を確保して振動出力の低下を防止できる。
【0085】
また、本実施の形態の振動アクチュエータ10は、上述した携帯機器の他、振動を必要とする美顔マッサージ器等の電動理美容器具に用いることができる。
【0086】
なお、上記本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の改変をなすことができ、そして本発明が該改変させたものに及ぶことは当然である。たとえば、接合端部6124と弾性支持部50の接合は、カシメ爪部6124aをカシメることに限定されるものではなく、接合端部6124と弾性支持部50の接触箇所あるいはその近傍に接着剤を塗布し固定することや、溶接による固定、接合端部6124と別部材により、弾性支持部50を挟持固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る振動アクチュエータは、簡易な構成で、組み立て易く、所望の振動出力を発揮する振動発生源として機能するものであり、ユーザに振動を付与する携帯機器に搭載されるものとして有用である。
【符号の説明】
【0088】
10 振動アクチュエータ
20 固定体
30 上側固定体(第1固定体)
32 ケース
34 上側ばね固定部(当接部)
36 シャフト
38 緩衝部材
40 下側固定体(第2固定体)
42 ベースプレート
44 コイルホルダ(下側ばね固定部、第2固定体)
46 緩衝部材
48 コイル
50 弾性支持部
60 可動体
61 可動部コア
63 センターヨーク
64 下側軸受け
65 マグネット
67 上側軸受け
70 可動ユニット
322 上面部
324 周壁部
342 上側当接部
344 撓み部(突起)
422 突出板部
428 位置決め凹部
442 ホルダ本体
444 下側当接部
446 導出部
448 位置決め凸部
502 外周側接合部
504 アーム部
506 内周側接合部
612 リングコア
614 平板コア(天面部)
632 段差部
642、672 抜け止め部
3241 爪部
6122 逃げ部
6124 接合端部(下端部)
6124a カシメ爪部
6124b 固定段差面
6128 平面部
6142 段差部