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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ロータリジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20220210BHJP
   F16L 27/08 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
F16J15/34 H
F16L27/08 Z
F16J15/34 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018039583
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019152306
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木久山 貴規
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理
(72)【発明者】
【氏名】西 崇伺
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-019912(JP,A)
【文献】国際公開第2006/061997(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143480(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
F16L 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる第一流体通路と、気体が流れる第二流体通路とを備えるロータリジョイントであって、
液体が流れる第一外側流路、及び気体が流れる第二外側流路が、それぞれ内周側で開口して形成された筒形のケース体と、
前記ケース体内に相対回転可能として設けられ、液体が流れる第一内側流路、及び気体が流れる第二内側流路が、それぞれ外周側で開口して形成されている軸体と、
前記第一外側流路と前記第一内側流路とを繋ぐ第一中間流路を形成するために、且つ前記第二外側流路と前記第二内側流路とを繋ぐ第二中間流路を形成して前記第二流体通路を構成するために、前記ケース体と前記軸体との間の環状空間において軸方向に複数設けられたメカニカルシールと、を備え、
前記メカニカルシールは、前記ケース体に取り付けられているとともに第一シール面が形成された第一密封環と、前記軸体に取り付けられているとともに前記第一シール面に摺接する第二シール面が形成された第二密封環と、を有し、
前記第一流体通路は、前記第二中間流路を挟んで互いに軸方向の異なる位置で開口する前記第一外側流路及び前記第一内側流路と、前記第一外側流路の開口と前記第一内側流路の開口とを繋ぐ前記第一中間流路と、を有し、
前記第一中間流路は、当該第一中間流路を流れる液体が、前記第二中間流路を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑するように形成されている、ロータリジョイント。
【請求項2】
前記第一中間流路は、
前記環状空間において、前記複数のメカニカルシールのうちの一部のメカニカルシールを用いて形成され、前記第一外側流路の開口と連通する第一環状流路と、
前記環状空間において、前記複数のメカニカルシールのうちの他の一部のメカニカルシールを用いて形成され、前記第一内側流路の開口と連通する第二環状流路と、
前記第一環状流路と前記第二環状流路とを繋ぐ繋ぎ流路と、を有する、請求項1に記載のロータリジョイント。
【請求項3】
前記ケース体には、前記第二外側流路が軸方向に複数形成され、
前記軸体には、前記第二外側流路と同数の前記第二内側流路が形成されており、
前記複数のメカニカルシールは、前記環状空間において前記第二外側流路と前記第二内側流路とを1つずつ繋ぐ前記第二中間流路を形成して複数の前記第二流体通路を構成するメカニカルシールを含み、
前記第一外側流路及び前記第一内側流路は、前記複数の第二中間流路を挟んで互いに軸方向の異なる位置で開口し、
前記第一中間流路は、当該第一中間流路を流れる液体が、前記複数の第二中間流路を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑するように形成されている、請求項1又は2に記載のロータリジョイント。
【請求項4】
前記第一中間流路は、
前記環状空間において、前記複数のメカニカルシールのうちの一部のメカニカルシールを用いて形成され、前記第一外側流路の開口と連通する第一環状流路と、
前記環状空間において、前記複数のメカニカルシールのうちの他の一部のメカニカルシールを用いて形成され、前記第一内側流路の開口と連通する第二環状流路と、
前記第一環状流路と前記第二環状流路とを繋ぐ繋ぎ流路と、を有し、
前記繋ぎ流路は、
前記環状空間の前記第一環状流路と前記第二環状流路との間において、前記複数の第二内側流路を形成しているメカニカルシールを用いて形成された第三環状流路と、
前記ケース体に形成され、前記第一環状流路と前記第二環状流路とを前記第三環状流路を介して繋ぐ複数の流路孔と、を有する、請求項3に記載のロータリジョイント。
【請求項5】
前記第一外側流路は、外部から前記ケース体内に液体を供給する供給流路であり、
前記第一内側流路は、前記軸体内から外部へ液体を排出する排出流路であり、
前記ケース体及び前記軸体は、前記第一外側流路の開口が前記第一内側流路の開口よりも下側に位置するように、軸方向を上下方向として配置されている、請求項3又は4に記載のロータリジョイント。
【請求項6】
前記軸体には、外部から当該軸体内に液体を供給する供給流路となる第三内側流路が、外周側で開口して形成され、
前記ケース体には、当該ケース体内から外部へ液体を排出する排出流路となる第三外側流路が、内周側で開口して形成されており、
前記複数のメカニカルシールは、前記環状空間において前記第三外側流路と前記第三内側流路とを繋ぐ第三中間流路を形成して第三流体通路を構成するメカニカルシールを含み、
前記第三内側流路は、前記軸体において前記第一内側流路の開口よりも軸方向上側の位置で開口している、請求項5に記載のロータリジョイント。
【請求項7】
前記軸体には、前記第三内側流路の途中部から分岐して前記第三中間流路の軸方向上端部と連通する分岐流路が形成されている、請求項6に記載のロータリジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリジョイントは、固定側部材の流路と回転側部材の流路とを接続するために用いられている。例えば、半導体ウエハの表面研磨処理を行うために用いられるCMP装置(Chemical Mechanical Polishing装置)では、回転側部材(ターンテーブル又はトップリング)と、これを支持する固定側部材(CMP装置本体)との間を、研磨液、洗浄水、純水、冷却水、研磨残渣液等の液体や、加圧用空気、エアーブロー用空気等の気体が被密封流体として流れる。このような被密封流体が混ざることなく前記回転側部材と前記固定側部材との間を流れるために、これらの部材間を接続するジョイント部には、独立した流体通路を複数設けることが必要である。そこで、このようなジョイント部として、例えば特許文献1に開示されている多ポート式のロータリジョイントが用いられる。
【0003】
図5は、従来のロータリジョイントを示す断面図である。このロータリジョイント80は、筒形のケース体81と、このケース体81内に回転可能として設けられている軸体82と、これらケース体81と軸体82との間の環状空間85に設けられている複数のメカニカルシール86とを備えている。
【0004】
メカニカルシール86は、ケース体81に取り付けられている第一密封環87と、軸体82と一体回転する第二密封環88と、複数のコイルスプリング89とを有している。そして、ロータリジョイント80には、複数(図例では3つ)の独立した流体通路90が設けられている。
軸体82は、軸本体83と、この軸本体83の外周側に嵌合されているスリーブ84とを有している。スリーブ84、及びメカニカルシール86の第二密封環88は、軸方向に沿って交互に配置されており、軸本体83と一体回転可能である。
【0005】
ケース体81には、その外周側及び内周側で開口する外側流路91が形成されている。そして、軸体82には、その外周側で開口する内側流路92が形成されている。内側流路92は、軸本体83に形成された流路孔92aと、スリーブ84に形成された貫通孔92bとからなる。貫通孔92bは、流路孔92aと繋がっており、内側流路92の外周側の開口孔となる。
【0006】
一つの外側流路91と一つの内側流路92とは、軸方向の同じ高さ位置で開口しており、これら外側流路91と内側流路92とにより一つの独立した流体通路90が構成される。このため、環状空間85において軸方向に複数の流体通路90を形成するメカニカルシール86が設けられている。すなわち、スリーブ84を挟んで隣り合う第二密封環88,88同士の間、及びスリーブ84を挟んで隣り合う第一密封環87,87同士の間には、それぞれ内側流路92(貫通孔92b)と外側流路91とを繋ぐ環状の中間流路93が形成されている。
【0007】
メカニカルシール86のコイルスプリング89は、第二密封環88に対して第一密封環87を軸方向に向かって押し付けており、第一密封環87が、その軸方向に隣接する第二密封環88に接触し、この接触している面の間から被密封流体が漏れるのを防止する。つまり、第一密封環87の環状側面の一部が第一シール面87aとなり、第二密封環88の環状側面の一部が、この第一シール面87aと摺接する第二シール面88aとなる。
【0008】
以上の構成により、ケース体81に対して、軸本体83、スリーブ84及び第二密封環88は一体となって回転可能となり、回転側となる第二密封環88が、静止側となる第一密封環87に摺接してメカニカルシール86としての機能が発揮され、これにより、独立した流体通路90を形成することができる。
【0009】
複数の流体通路90は、ターンテーブル等に冷却水などの液体を供給する第一流体通路90Aと、ターンテーブル等に加圧用空気などの気体を供給する第二流体通路90Bと、ターンテーブル等に供給された液体を回収して外部に排出する第三流体通路90Cとからなる。
【0010】
液体が流れる第一流体通路90Aは、ケース体81の外周の軸方向一方側(図中の上側)で開口している。これにより、前記液体は、第一流体通路90Aの外側流路91から、図中の上側に配置された2つのメカニカルシール86A,86Bの間に形成された中間流路93A、前記メカニカルシール86A,86Bそれぞれにおける第一及び第二密封環87,88の外周側の環状空間を通過し、軸体82における図中の左側の実線で示す内側流路92に供給される。
【0011】
液体が流れる第三流体通路90Cは、ケース体81の外周の軸方向他方側(図中の下側)で開口している。これにより、前記液体は、軸体82の図中の右側に示す内側流路92から、図中の下側に配置された他の2つのメカニカルシール86C,86Dの間に形成された中間流路93C、前記メカニカルシール86C,86Dそれぞれにおける第一及び第二密封環87,88の外周側の環状空間、及び第三流体通路90Cの外側流路91を通過し、ケース体81の外部に排出される。
【0012】
気体が流れる第二流体通路90Bは、ケース体81の外周において第一流体通路90Aと第三流体通路90Cとの間で開口している。これにより、前記気体は、第二流体通路90Bの外側流路91から、2つのメカニカルシール86B,86Cの間に形成された中間流路93Bを通過し、軸体82の図中の左側の破線で示す内側流路92に供給される。
【0013】
以上により、気体が流れる第二流体通路90Bの中間流路93Bを形成する2つのメカニカルシール86B,86Cそれぞれの第一及び第二シール面87a,88aは、第一及び第三流体通路90A,90Cを流れる液体によって潤滑されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2002-174379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の上記ロータリジョイント80にあっては、気体が流れる第二流体通路90Bを形成する各メカニカルシール86B,86Cの第一及び第二シール面87a,88aを潤滑するためには、ケース体81において第二流体通路90Bの外側流路91の軸方向両側に、液体が流れる第一及び第三流体通路90A,90Cの各外側流路91を設ける必要がある。このため、従来のロータリジョイントは、液体が流れる流体通路を少なくとも2つ備えていないと、気体が流れる流体通路を形成しているメカニカルシールのシール面を潤滑することができないという問題があった。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、液体が流れる一つの流体通路だけで、気体が流れる流体通路を形成しているメカニカルシールのシール面を前記液体で潤滑することができるロータリジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のロータリジョイントは、液体が流れる第一流体通路と、気体が流れる第二流体通路とを備えるロータリジョイントであって、液体が流れる第一外側流路、及び気体が流れる第二外側流路が、それぞれ内周側で開口して形成された筒形のケース体と、前記ケース体内に相対回転可能として設けられ、液体が流れる第一内側流路、及び気体が流れる第二内側流路が、それぞれ外周側で開口して形成されている軸体と、前記第一外側流路と前記第一内側流路とを繋ぐ第一中間流路を形成するために、且つ前記第二外側流路と前記第二内側流路とを繋ぐ第二中間流路を形成して前記第二流体通路を構成するために、前記ケース体と前記軸体との間の環状空間において軸方向に複数設けられたメカニカルシールと、を備え、前記メカニカルシールは、前記ケース体に取り付けられているとともに第一シール面が形成された第一密封環と、前記軸体に取り付けられているとともに前記第一シール面に摺接する第二シール面が形成された第二密封環と、を有し、前記第一流体通路は、前記第二中間流路を挟んで互いに軸方向の異なる位置で開口する前記第一外側流路及び前記第一内側流路と、前記第一外側流路の開口と前記第一内側流路の開口とを繋ぐ前記第一中間流路と、を有し、前記第一中間流路は、当該第一中間流路を流れる液体が、前記第二中間流路を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑するように形成されている。
【0018】
上記のように構成されたロータリジョイントによれば、液体が流れる第一流体通路において、ケース体側の第一外側流路の開口および軸体側の第一内側流路の開口は、気体が流れる第二流体通路の第二中間流路を挟んで、互いに軸方向の異なる位置で開口している。そして、第一外側流路の開口と第一内側流路の開口とを繋ぐ第一中間流路は、当該第一中間流路を流れる液体が、前記第二中間流路を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑するように形成されている。これにより、一つの第一流体通路(第一中間流路)を流れる液体によって、気体が流れる第二流体通路(第二中間流路)を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑することができる。
【0019】
前記第一中間流路は、前記環状空間において、前記複数のメカニカルシールのうちの一部のメカニカルシールを用いて形成され、前記第一外側流路の開口と連通する第一環状流路と、前記環状空間において、前記複数のメカニカルシールのうちの他の一部のメカニカルシールを用いて形成され、前記第一内側流路の開口と連通する第二環状流路と、前記第一環状流路と前記第二環状流路とを繋ぐ繋ぎ流路と、を有するのが好ましい。
この場合、第一外側流路の開口と連通する第一環状流路と、第一内側流路の開口と連通する第二環状流路とを繋ぎ流路で繋ぐという簡単な構成により、第一中間流路を形成することができる。
【0020】
前記ケース体には、前記第二外側流路が軸方向に複数形成され、前記軸体には、前記第二外側流路と同数の前記第二内側流路が形成されており、前記複数のメカニカルシールは、前記環状空間において前記第二外側流路と前記第二内側流路とを1つずつ繋ぐ前記第二中間流路を形成して複数の前記第二流体通路を構成するメカニカルシールを含み、前記第一外側流路及び前記第一内側流路は、前記複数の第二中間流路を挟んで互いに軸方向の異なる位置で開口し、前記第一中間流路は、当該第一中間流路を流れる液体が、前記複数の第二中間流路を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑するように形成されているのが好ましい。
【0021】
この場合、液体が流れる第一流体通路において、ケース体側の第一外側流路の開口および軸体側の第一内側流路の開口は、気体が流れる複数の第二流体通路の第二中間流路を挟んで、互いに軸方向の異なる位置で開口している。そして、第一外側流路の開口と第一内側流路の開口とを繋ぐ第一中間流路は、当該第一中間流路を流れる液体が、前記複数の第二中間流路を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑するように形成されている。これにより、一つの第一流体通路(第一中間流路)を流れる液体によって、気体が流れる複数の第二流体通路(第二中間流路)を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面を潤滑することができる。
【0022】
前記繋ぎ流路は、前記環状空間の前記第一環状流路と前記第二環状流路との間において、前記複数の第二内側流路を形成しているメカニカルシールを用いて形成された第三環状流路と、前記ケース体に形成され、前記第一環状流路と前記第二環状流路とを前記第三環状流路を介して繋ぐ複数の流路孔と、を有するのが好ましい。
この場合、繋ぎ流路を流れる液体は、複数の第二内側流路を形成しているメカニカルシールを用いて形成された第三環状流路をそれぞれ通過するため、繋ぎ流路の途中に配置された前記メカニカルシールの第一及び第二シール面を確実に潤滑することができる。
【0023】
前記第一外側流路は、外部から前記ケース体内に液体を供給する供給流路であり、前記第一内側流路は、前記軸体内から外部へ液体を排出する排出流路であり、前記ケース体及び前記軸体は、前記第一外側流路の開口が前記第一内側流路の開口よりも下側に位置するように、軸方向を上下方向として配置されているのが好ましい。
この場合、第一流体通路を流れる液体は、軸方向下側に位置する第一外側流路から供給され、軸方向上側に位置する第一内側流路から外部へ排出される。その際、第一外側流路の開口から第一中間流路に流入した液体は、複数の第二中間流路をそれぞれ形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面間の付近を順次通過して、第一内側流路の開口へ導かれる。これにより、前記各メカニカルシールの第一及び第二シール面間の付近においてエア溜まりが生じるのを抑制することができるので、当該第一及び第二シール面間が潤滑不足になるのを抑制することができる。
【0024】
前記軸体には、外部から当該軸体内に液体を供給する供給流路となる第三内側流路が、外周側で開口して形成され、前記ケース体には、当該ケース体内から外部へ液体を排出する排出流路となる第三外側流路が、内周側で開口して形成されており、前記複数のメカニカルシールは、前記環状空間において前記第三外側流路と前記第三内側流路とを繋ぐ第三中間流路を形成して第三流体通路を構成するメカニカルシールを含み、前記第三内側流路は、前記軸体において前記第一内側流路の開口よりも軸方向上側の位置で開口しているのが好ましい。
この場合、第三内側流路の開口は、第一内側流路の開口よりも軸方向上側に位置するため、例えば、第三内側流路を軸体の軸方向上端から軸方向下側に向かって掘り込み加工する際に、第一内側流路の開口位置よりも下側へ深く掘り込む必要がない。このため、第三内側流路を容易に加工することができる。
【0025】
前記軸体には、前記第三内側流路の途中部から分岐して前記第三中間流路の軸方向上端部と連通する分岐流路が形成されているのが好ましい。
この場合、第三内側流路を流れる液体は、第三内側流路の途中部から分岐流路を介して第三中間流路の軸方向上端部に供給され、当該軸方向上端部を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面間の付近を通過して第三外側流路へ導かれる。これにより、第三中間流路の軸方向上端部を形成しているメカニカルシールの第一及び第二シール面間の付近においてエア溜まりが生じるのを抑制することができるので、当該第一及び第二シール面間が潤滑不足になるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のロータリジョイントによれば、液体が流れる流体通路が1つだけであっても、気体が流れる流体通路を形成しているメカニカルシールのシール面を前記液体で潤滑することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。
図2】前記ロータリジョイントの上側を示す拡大断面図である。
図3】前記ロータリジョイントの下側を示す拡大断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。
図5】従来のロータリジョイントを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。このロータリジョイント1(以下、ジョイント1ともいう。)は、回転機器の固定側部材(例えば、CMP装置本体)に取り付けられる筒形のケース体2と、この回転機器の回転側部材(例えば、CMP装置のターンテーブル)に取り付けられる軸体5とを備えている。本実施形態のケース体2及び軸体5は、軸方向を上下方向として配置されている。
【0029】
なお、本発明において、「軸方向」とは、ジョイント1の中心線に沿った方向(この中心線に平行な方向も含む)であり、ケース体2、軸体5、及び後述するメカニカルシール7それぞれの中心線は、ジョイント1の中心線と一致するようにして構成されている。また、本発明において「径方向」とは、ジョイント1の中心線に対して直交する方向である。また、ジョイント1の姿勢は、図1に示す姿勢以外であってもよいが、説明の便宜上、本実施形態では、図1に示す上側をジョイント1の「上」とし、下側をジョイント1の「下」とする。
【0030】
<ケース体>
ケース体2は、複数のフランジ20を上下方向に積み重ねて構成されている。本実施形態では、これら複数のフランジ20は、下から順に、第一フランジ21、第二フランジ22、第三フランジ23、第四フランジ24、第五フランジ25、及び第六フランジ26によって構成されている。各フランジ21~26は、いずれも円環状に形成されており、ボルト27によって連結固定されている。これにより、ケース体2は、全体として筒形の構造体となっている。
【0031】
以下、第一~第六フランジ21~26における2つ以上のフランジの共通事項を説明する場合は、フランジ20と総称する。
第一~第五フランジ21~25において、隣り合うフランジ20同士の間には、それぞれOリング28が設けられている。
【0032】
第一~第六フランジ21~26それぞれは、径方向内側へ突出している環状の突出部21a,22a,23a,24a,25a,26aを有している。
第一フランジ21には、被密封流体が流れる第一外側流路31が、突出部21a以外の部分を被密封流体が通過するように径方向に貫通して形成されている。被密封流体としては、研磨液、洗浄水、純水、冷却水、オイル、クーラント、研磨残渣液等の液体、及び流体加圧用空気、エアーブロー用空気等の気体が挙げられる。本実施形態において第一外側流路31には、液体である冷却水が被密封流体として流れる。
【0033】
第二~第四フランジ22~24には、被密封流体が流れる第二外側流路32が、それぞれ突出部22a,23a,24a内を被密封流体が通過するように径方向に貫通して形成されている。本実施形態において各第二外側流路32には、気体である空気が被密封流体として流れる。
第五フランジ25には、被密封流体が流れる第三外側流路33が、突出部25aを除く部分を被密封流体が通過するように径方向に貫通して形成されている。本実施形態において第三外側流路33には、液体である冷却水が被密封流体として流れる。なお、第五フランジ25には、第一フランジ21と同様に、研磨液、洗浄水、純水、冷却水、オイル、クーラント、研磨残渣液等の液体が流れることがあり得る。
【0034】
各外側流路31~33の両端部は、フランジ20の内周側と外周側とで開口しており、本実施形態では、フランジ20の外周側の開口部が、前記固定側部材の複数の配管それぞれが接続される接続ポートとなる。以上より、ケース体2には、冷却水が被密封流体として流れる第一外側流路31及び第三外側流路33、及び空気が被密封流体として流れる複数の第二外側流路32が、軸方向に沿って所定の間隔をあけて形成されている。
【0035】
<軸体>
軸体5は、ケース体2の内周側に配置されており、上下方向に長い直線状の軸本体51と、この軸本体51に嵌合された複数のスリーブ52とを有している。軸本体51には、スリーブ52の他に、後述する複数のメカニカルシール7の第二密封環72が嵌合されており、スリーブ52と第二密封環72とは、軸方向に沿って交互に配置されている。本実施形態では、スリーブ52及び第二密封環72は6つずつ設けられている。
【0036】
軸本体51の下方には、押し付け部材53がボルト54によって固定されている。また、軸本体51の上端部には直径が大きくなっている大径部51aが形成されている。この大径部51aは、軸本体51に嵌合されたスリーブ52及び第二密封環72が上側へ移動するのを規制している。
軸本体51とスリーブ52と第二密封環72との間には、Oリング55が設けられている。Oリング55は、後述する各内側流路61~63を流れる被密封流体が他の流路へ浸入したり外部へ漏れたりするのを防いでいる。
【0037】
押し付け部材53と第一フランジ21の突出部21aとの間には転がり軸受8が設けられ、軸本体51の大径部51aと第六フランジ26の突出部26aとの間には転がり軸受9が設けられている。これにより、軸本体51及びスリーブ52を含む軸体5は、第二密封環72と共に、ケース体2に対して回転可能に支持されている。
【0038】
軸本体51内には、流路孔61a,63aが1つずつ形成されるとともに、流路孔62aが複数(図例では3つ)形成されている。これらの流路孔61a~63aそれぞれの一方側は、軸本体51の外周面において軸方向(上下方向)の異なる位置で開口している。流路孔61a~63aの他方側は、軸本体51の端面(上端面)で開口しており、この端面の開口に対して、前記回転側部材の複数の配管それぞれが接続される。
【0039】
各流路孔61a,63aの前記一方側の開口に対応するスリーブ52,52は、その内周側において軸本体51の外周面との間に形成された環状の隙間61b,63bと、各隙間61b,63bと連通する貫通孔61c,63cとを有している。
同様に、各流路孔62aの前記一方側の開口に対応するスリーブ52は、その径方向内側において軸本体51の外周面との間に形成された環状の隙間62bと、この隙間62bと連通する貫通孔62cとを有している。
【0040】
各隙間61b~63bは、対応する流路孔61a~63aと連通している。各貫通孔61c~63cは、周方向に所定間隔をあけて複数(図中には1つのみ図示)形成されている。
軸本体51内の流路孔61aと、対応するスリーブ52の隙間61bおよび複数の貫通孔61cとは、液体である冷却水が被密封流体として流れる第一内側流路61を構成している。これにより、第一内側流路61は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔61cを有している。
【0041】
軸本体51内の各流路孔62aと、対応するスリーブ52の隙間62bおよび複数の貫通孔62cとは、気体である空気が被密封流体として流れる第二内側流路62を構成している。これにより、各第二内側流路62は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔62cを有している。
【0042】
軸本体51内の流路孔63aと、対応するスリーブ52の隙間63bおよび複数の貫通孔63cとは、液体である冷却水が被密封流体として流れる第三内側流路63を構成している。これにより、第三内側流路63は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔63cを有している。
【0043】
以上より、各内側流路61~63は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔61c~63cを有している。従って、軸体5には、1つの第一内側流路61、第二外側流路32と同数(3つ)の第二内側流路62、及び1つの第三内側流路63が、軸方向の異なる位置で開口して形成されている。
【0044】
本実施形態では、第三内側流路63は、第一内側流路61の開口、及び各第二内側流路62の開口よりも軸方向上側の位置で開口している。なお、軸体5において、第三内側流路63は、図示の位置で開口する場合に限定されるものではなく、軸方向の任意の位置で開口させることができる。
【0045】
<複数のメカニカルシールの全体構成>
ケース体2と軸体5との間には環状空間Aが形成されており、この環状空間Aには軸方向に複数(図例では9つ)のメカニカルシール7が設けられている。本実施形態のジョイント1は、環状空間Aの軸方向に複数のメカニカルシール7を配置してなる多流路ロータリジョイントとされている。
【0046】
複数のメカニカルシール7は、第一外側流路31と第一内側流路61とを繋ぐ第一中間流路41を形成するためのメカニカルシール7、第二外側流路32と第二内側流路62とを1つずつ繋ぐ第二中間流路42を形成するメカニカルシール7、及び第三外側流路33と第三内側流路63とを繋ぐ第三中間流路43を形成するメカニカルシール7を含む。
【0047】
<第三中間流路を形成するメカニカルシール>
図2は、ジョイント1の上側を示す拡大断面図である。図2において、第五フランジ25の内周側には1つのスリーブ52Eが対向して配置されており、このスリーブ52Eで開口する第三内側流路63(貫通孔63c)と、第五フランジ25の内周側で開口する第三外側流路33とは、軸方向の同じ位置で開口している。そして、スリーブ52Eと第五フランジ25との間には、第三中間流路43を形成する2つのメカニカルシール7H,7Iが設けられている。
【0048】
各メカニカルシール7H,7Iは、ケース体2側に取り付けられた第一密封環(静止密封環)71と、軸体5側に取り付けられた第二密封環(回転密封環)72と、押圧部材としてのコイルスプリング73とを有している。
第二密封環72は、環状の部材からなり、前記のとおり、軸体5に一体回転可能に設けられている。第二密封環72の軸方向の端面には、スリーブ52Eの軸方向の端面が接触し、スリーブ52Eは、軸方向に隣り合うメカニカルシール7H,7Iの第二密封環72,72間のスペーサとして機能する。第二密封環72の軸方向一端には、環状の第二シール面72aが形成されている。
【0049】
第一密封環71は、環状の部材からなり、スリーブ52Eの径方向外側に配置されている。この状態で、第一密封環71は、ケース体2に回り止めされている。第一密封環71の第二密封環72側の端面には、第一シール面71aに接触する第二シール面72aが形成されている。
【0050】
コイルスプリング73は、第五フランジ25の突出部25aと第一密封環71との間に、圧縮された状態で介在している。コイルスプリング73は周方向に沿って複数(図中には1つのみ図示)設けられている。このため、複数のコイルスプリング73の弾性復元力によって、第一密封環71は第二密封環72側へ向かって軸方向に押圧され、両シール面71a,72a間に軸方向の押し付け力が作用する。これにより、両シール面71a,72a同士を、軸方向に押し付けあった状態で接触させることができる。なお、コイルスプリング73以外の他の押圧部材を用いてもよい。
【0051】
従って、第一密封環71の第一シール面71aが、第二密封環72の第二シール面72aに摺接することで、これら両シール面71a,72aの間から被密封流体が漏れるのを防止するシール機能が発揮される。つまり、第一密封環71の第一シール面71aと第二密封環72の第二シール面72aとの相対回転に伴う摺接作用によりメカニカルシール7H,7Iのシール機能が発揮される。
【0052】
各メカニカルシール7H,7Iの第一密封環71は、スリーブ52Eの外周面との間に隙間を有して設けられており、第一密封環71とスリーブ52との間には、環状の隙間流路43aが形成されている。この隙間流路43aは、スリーブ52Eの貫通孔63cと連通している。そして、メカニカルシール7Hの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能と、メカニカルシール7Iの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能とによって、被密封流体が隙間流路43aから外部へ漏れるのを防止している。
【0053】
さらに、両メカニカルシール7H,7Iの第一密封環71,71同士の間には、環状流路43bが形成されており、この環状流路43bは、隙間流路43aと第三外側流路33とを繋いでいる。そして、各第一密封環71の外周面と、第五フランジ25の突出部25aの内周面との間には、Oリング74が設けられている。このOリング74は、被密封流体が環状流路43bから外部へ漏れるのを防止している。なお、各第一密封環71は、Oリング74を介して第五フランジ25の突出部25aに対して軸方向に移動可能な状態で嵌合されている。
【0054】
以上より、第三外側流路33と第三内側流路63との間には、密封された隙間流路43a及び環状流路43bが介在しており、これらの流路43a,43bは、第三外側流路33と第三内側流路63とを繋ぐ第三中間流路43を構成している。このように、軸方向に隣り合うメカニカルシール7H,7Iを用いて形成された第三中間流路43によって、第三外側流路33と第三内側流路63とが連結されている。そして、第三外側流路33、第三中間流路43、及び第三内側流路63により、1つの独立した第三流体通路13が構成されている。
【0055】
<複数の第二中間流路を形成するメカニカルシール>
図3は、ジョイント1の下側を示す拡大断面図である。図3において、第二フランジ22の内周側には1つのスリーブ52Aが対向して配置されており、このスリーブ52Aで開口する第二内側流路62(貫通孔62c)は、第二フランジ22の内周側で開口する第二外側流路32よりも、軸方向の少し上側の位置で開口している。そして、前記スリーブ52と第二フランジ22との間には、第二外側流路32と第二内側流路62とを繋ぐ第二中間流路42を形成する2つのメカニカルシール7B,7Cが設けられている。各メカニカルシール7B,7Cは、前記のメカニカルシール7H,7Iと同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0056】
各メカニカルシール7B,7Cの第一密封環71は、スリーブ52Aの外周面との間に隙間を有して設けられており、第一密封環71とスリーブ52Aとの間には、環状の隙間流路42aが形成されている。この隙間流路42aは、スリーブ52Aの貫通孔62cと連通している。そして、メカニカルシール7Bの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能と、メカニカルシール7Cの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能とによって、被密封流体が隙間流路42aから外部へ漏れるのを防止している。
【0057】
さらに、両メカニカルシール7B,7Cの第一密封環71,71同士の間には、環状流路42bが形成されており、この環状流路42bは、隙間流路42aと第二外側流路32とを繋いでいる。そして、各第一密封環71の外周面と、第二フランジ22の突出部22aの内周面との間には、Oリング74が設けられている。このOリング74は、被密封流体が環状流路42bから外部へ漏れるのを防止している。なお、各第一密封環71は、Oリング74を介して第二フランジ22の突出部22aに対して軸方向に移動可能な状態で嵌合されている。
【0058】
以上より、第二外側流路32と第二内側流路62との間には、密封された隙間流路42a及び環状流路42bが介在しており、これらの流路42a,42bは、1つ目の第二外側流路32と1つ目の第二内側流路62とを繋ぐ1つ目の第二中間流路42を構成している。このように、軸方向に隣り合うメカニカルシール7を用いて形成された第二中間流路42によって、前記1つ目の第二外側流路32と前記1つ目の第二内側流路62とが連結されている。そして、これらの第二外側流路32、第二中間流路42、及び第二内側流路62により、1つ目の独立した第二流体通路12が構成されている。
【0059】
図1において、上記と同様に、第三フランジ23とその内周側に対向するスリーブ52Bとの間には、2つ目の第二外側流路32と、2つ目の第二内側流路62とを繋ぐ2つ目の第二中間流路42を形成する2つのメカニカルシール7D,7Eが設けられている。
第三フランジ23の内周側で開口する第二外側流路32と、スリーブ52Bの内周側で開口する第二内側流路62(貫通孔62c)との間には、密封された隙間流路42a及び環状流路42bが介在しており、これらの流路42a,42bは前記2つ目の第二中間流路42を構成している。そして、これらの第二外側流路32、第二中間流路42、及び第二内側流路62により、2つ目の独立した第二流体通路12が構成されている。
【0060】
さらに、第四フランジ24とその内周側に対向するスリーブ52Cとの間には、3つ目の第二外側流路32と3つ目の第二内側流路62とを繋ぐ3つ目の第二中間流路42を形成する2つのメカニカルシール7F,7Gが設けられている。
第四フランジ24の内周側で開口する第二外側流路32と、スリーブ52Cの内周側で開口する第二内側流路62(貫通孔62c)との間には、密封された隙間流路42a及び環状流路42bが介在しており、これらの流路42a,42bは前記3つ目の第二中間流路42を構成している。そして、これらの第二外側流路32、第二中間流路42、及び第二内側流路62により、3つ目の独立した第二流体通路12が構成されている。
【0061】
以上より、メカニカルシール7B~7Gは、複数の第二外側流路32と複数の第二内側流路62とを1つずつ繋ぐ複数の第二中間流路42を形成して複数の独立した第二流体通路12を構成している。
なお、本実施形態では、メカニカルシール7Cの第二密封環72は、その上側に隣接するメカニカルシール7Dの第二密封環72も兼ねているが、これらのメカニカルシール7C,7D毎に第二密封環72を設けてもよい。同様に、メカニカルシール7Eの第二密封環72は、その上側に隣接するメカニカルシール7Fの第二密封環72も兼ねているが、これらのメカニカルシール7E,7F毎に第二密封環72を設けてもよい。
【0062】
<第一中間流路を形成するためのメカニカルシール>
図1に示すように、第一外側流路31及び第一内側流路61は、軸体5の外周側において、複数の第二流体通路12の第二中間流路42を挟んで、互いに軸方向(上下方向)の異なる位置で開口している。本実施形態では、第一外側流路31の開口は、第一内側流路61の開口よりも軸方向下側に位置している。つまり、第一外側流路31は、複数の第二中間流路42よりも軸方向下側の位置で開口し、第一内側流路61は、複数の第二中間流路42よりも軸方向上側の位置で開口している。そして、これらの開口は第一中間流路41によって繋がっている。従って、第一外側流路31、第一中間流路41、及び第一内側流路61により、1つの独立した第一流体通路11が構成されている。
【0063】
本実施形態では、第一流体通路11の第一中間流路41は、環状空間Aに形成されて第一外側流路31の前記開口と連通する第一環状流路41aと、環状空間Aに形成されて第一内側流路61の前記開口と連通する第二環状流路41bと、第一環状流路41aと第二環状流路41bとを繋ぐ繋ぎ流路41cとによって構成されている。
【0064】
環状空間Aには、第一環状流路41aを形成する2つのメカニカルシール7A,7Bが設けられ、かつ、第二環状流路41bを形成する2つのメカニカルシール7G,7Hが設けられている。
なお、メカニカルシール7Bは、上記のように、第二中間流路42を形成するメカニカルシールであるが、第一環状流路41aを形成するメカニカルシールも兼ねている。同様に、メカニカルシール7G,7Hは、上記のように、それぞれ第二中間流路42及び第三中間流路43を形成するメカニカルシールであるが、第二環状流路41bを形成するメカニカルシールも兼ねている。メカニカルシール7Aは、他のメカニカルシール7と同様の構成である。従って、メカニカルシール7A,7B,7G,7Hについては、詳細な説明を省略する。
【0065】
図3において、第一環状流路41aは、メカニカルシール7A,7Bと、これらに対向する第一フランジ21との間に形成されており、第一フランジ21の内周側で開口する第一外側流路31と連通している。メカニカルシール7A,7Bは、共用の第二密封環72を有している。
【0066】
メカニカルシール7Aの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Aの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能よって、被密封流体が、第一環状流路41aの軸方向下側から外部へ漏れるのを防止している。
また、メカニカルシール7Bの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Bの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が、第一環状流路41aの軸方向上側から、その内周側に形成された第二中間流路42(隙間流路42a)へ漏れるのを防止している。
【0067】
図2において、第二環状流路41bは、メカニカルシール7G,7H及びその間に配置されたスリーブ52Dと、当該スリーブ52Dに対向する第四フランジ24との間に形成されている。これにより、第二環状流路41bは、軸体5の外周側で開口する第一内側流路61(貫通孔61c)と連通している。
【0068】
メカニカルシール7Gの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Gの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が、第二環状流路41bの軸方向下側から、その内周側に形成された第二中間流路42(隙間流路42a)へ漏れるのを防止している。
同様に、メカニカルシール7Hの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Hの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が、第二環状流路41bの軸方向上側から、その内周側に形成された第三中間流路43(隙間流路43a)へ漏れるのを防止している。
【0069】
図1において、第一環状流路41aと第二環状流路41bとを繋ぐ繋ぎ流路41cは、環状空間Aにおいて軸方向に複数(図例では2つ)形成された第三環状流路41d,41eと、ケース体2に形成された複数(図例では3つ)の流路孔41f,41g,41hとを有している。
【0070】
第三環状流路41dは、軸方向に隣り合う第二内側流路62をそれぞれ形成しているメカニカルシール7C,7Dと、これらに対向する第二及び第三フランジ22,23との間に形成されている。メカニカルシール7Cの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能と、メカニカルシール7Dの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能とによって、被密封流体が、第三環状流路41dから、その内周側に形成された上下2つの第二中間流路42(隙間流路42a)へ漏れるのを防止している(図3参照)。
【0071】
第三環状流路41eは、軸方向に隣り合う第二内側流路62をそれぞれ形成しているメカニカルシール7E,7Fと、これらに対向する第三及び第四フランジ23,24との間に形成されている。メカニカルシール7Eの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能と、メカニカルシール7Fの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能とによって、被密封流体が、第三環状流路41eから、その内周側に形成された上下2つの第二中間流路42(隙間流路42a)へ漏れるのを防止している。
【0072】
ケース体2側の流路孔41fは、第二フランジ22の突出部22aにおいて軸方向に貫通して形成されており、第一環状流路41aの上端部と第三環状流路41dの下端部とを繋いでいる。流路孔41gは、第三フランジ23の突出部23aにおいて軸方向に貫通して形成されており、第三環状流路41dの上端部と第三環状流路41eの下端部とを繋いでいる。流路孔41hは、第四フランジ24の突出部24aにおいて軸方向に貫通して形成されており、第三環状流路41eの上端部と第二環状流路41bの下端部とを繋いでいる。
【0073】
以上より、複数の流路孔41f~41hは、第一環状流路41aと第二環状流路41bとを、複数の第三環状流路41d,41eを介して繋いでいる。つまり、第一外側流路31及び第一内側流路61は、下側から順に、第一環状流路41a、流路孔41f、第三環状流路41d、流路孔41g、第三環状流路41e、流路孔41h、及び第二環状流路41bを介して繋がっている。
【0074】
これにより、第一中間流路41を流れる冷却水(被密封流体)は、複数の第二中間流路42を形成している各メカニカルシール7B~7Gの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却するようになっている。
具体的には、第一環状流路41aを流れる冷却水は、第二中間流路42を形成しているメカニカルシール7Bの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却する。第三環状流路41dを流れる冷却水は、メカニカルシール7C,7Dの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却する。
【0075】
第三環状流路41eを流れる冷却水は、メカニカルシール7F,7Eの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却する。第二環状流路41bを流れる冷却水は、第二中間流路42を形成しているメカニカルシール7Gの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却する。
【0076】
なお、第一環状流路41aを流れる冷却水は、メカニカルシール7Aの第一及び第二シール面71a,72aも潤滑及び冷却する。また、第二環状流路41bを流れる冷却水は、メカニカルシール7Hの第一及び第二シール面71a,72aも潤滑及び冷却する。
【0077】
<第一及び第三流体通路の冷却水の流れ>
図1において、第一外側流路31は、冷却水(被密封流体)の供給源からケース体2内に冷却水を供給する供給流路とされている。これにより、第一外側流路31におけるケース体2の外周側の開口は、前記供給源から冷却水が供給される供給口とされている。
第一内側流路61は、軸体5内から前記回転側部材へ冷却水を送出(排出)する送出流路(排出流路)とされている。これにより、第一内側流路61における軸本体51の上端側の開口は、前記回転側部材に冷却水を送出する送出口(排出口)とされている。
【0078】
従って、第一流体通路11は、冷却水の供給源から第一外側流路31に供給された冷却水を、第一中間流路41を介して第一内側流路31から前記回転側部材へ送出するようになっている。
【0079】
第三内側流路63は、前記回転側部材から軸体5内に冷却水を回収(供給)する回収流路(供給流路)とされている。これにより、第三内側流路63における軸本体51の上端側の開口は、前記回転側部材から冷却水が回収される回収口(供給口)とされている。
第三外側流路33は、ケース体2内から外部へ冷却水を排出する排出流路とされている。これにより、第三外側流路33におけるケース体2の外周側の開口は、ケース体2の外部に冷却水を排出する排出口とされている。
【0080】
従って、第三流体通路13は、前記回転側部材から第三内側流路63に回収された冷却水を、第三中間流路43を介して第三外側流路33から外部へ排出するようになっている。
【0081】
図2において、軸体5には、第三内側流路63の途中部から分岐して第三中間流路43の軸方向上端部と連通する分岐流路15が形成されている。分岐流路15は、軸本体51に形成された流路孔15aと、第三中間流路43の隙間流路43aに対向するスリーブ52Eに形成された環状の隙間15b及び貫通溝15cとを有している。
【0082】
流路孔15aは、第三内側流路63の上下方向(軸方向)に延びる部分の途中部から径方向外側に向かって延びるように分岐し、軸本体51の外周側において第三内側流路63の開口よりも少し上側の位置で開口している。
環状の隙間15bは、スリーブ52Eの内周側において軸本体51の外周面との間に形成されており、流路孔15aの開口と連通している。
【0083】
貫通溝15cは、スリーブ52Eの軸方向上端部に形成されており、隙間流路43aの軸方向上端部(第一及び第二シール面71a,72aの接触部とスリーブ52Eの外周面との間に形成された環状の空間)と隙間15bとを繋いでいる。
【0084】
以上より、第三内側流路63を流れる冷却水の一部は、分岐流路15の流路孔15a、隙間15b、貫通溝15cを介して、隙間流路43aの軸方向上端部を通過し、環状流路43bを介して第三外側流路33へ導かれる。これにより、隙間流路43aの軸方向上端部、つまり環状空間Aの最上部に配置されたメカニカルシール7Iの第一及び第二シール面71a,72a間の付近においてエア溜まりが生じるのを抑制することができる。
【0085】
<効果>
以上、本実施形態のロータリジョイント1によれば、液体(冷却水)が流れる第一流体通路11において、ケース体2側の第一外側流路31の開口および軸体5側の第一内側流路61の開口は、気体(空気)が流れる複数の第二流体通路12の第二中間流路42を挟んで、互いに軸方向の異なる位置で開口している。そして、第一外側流路31の開口と第一内側流路61の開口とを繋ぐ第一中間流路41は、当該第一中間流路41を流れる液体が、前記複数の第二中間流路42を形成しているメカニカルシール7B~7Gの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑するように形成されている。これにより、一つの第一流体通路11(第一中間流路41)を流れる液体によって、気体が流れる複数の第二流体通路12(第二中間流路42)を形成しているメカニカルシール7B~7Gの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑することができる。
【0086】
また、第一流体通路11の第一中間流路41は、第一外側流路31の開口と連通する第一環状流路41aと、第一内側流路61の開口と連通する第二環状流路41bと、第一環状流路41aと第二環状流路41bとを繋ぐ繋ぎ流路41cとによって構成されている。このため、第一環状流路41aと第二環状流路41bとを繋ぎ流路41cで繋ぐという簡単な構成により、第一中間流路41を形成することができる。
【0087】
また、第一中間流路41の繋ぎ流路41cは、各第二内側流路62を形成しているメカニカルシール7C~7Fを用いて形成された複数の第三環状流路41d,41eと、第一環状流路41aと第二環状流路41bとを複数の第三環状流路41d,41eを介して繋ぐ複数の流路孔41f~41hとを有する。これにより、繋ぎ流路41cを流れる液体は、各第二内側流路62を形成しているメカニカルシール7C~7Fを用いて形成された複数の第三環状流路41d,41eをそれぞれ通過するため、繋ぎ流路41cの途中に配置されたメカニカルシール7C~7Fの第一及び第二シール面71a,72aを確実に潤滑することができる。
【0088】
また、第一流体通路11を流れる液体は、軸方向下側に位置する第一外側流路31から供給され、軸方向上側に位置する第一内側流路61から外部へ排出される。その際、第一外側流路31の開口から第一中間流路41に流入した液体は、複数の第二中間流路42をそれぞれ形成しているメカニカルシール7B~7Gの第一及び第二シール面71a,72a間の付近を順次通過して、第一内側流路61の開口へ導かれる。これにより、前記各メカニカルシール7B~7Gの第一及び第二シール面71a,72a間の付近においてエア溜まりが生じるのを抑制することができるので、当該第一及び第二シール面71a,72a間が潤滑不足になるのを抑制することができる。
【0089】
また、第三流体通路13の第三内側流路63の開口は、第一流体通路11の第一内側流路61の開口よりも軸方向上側に位置する。このため、例えば、第三内側流路63を軸本体51の軸方向上端から軸方向下側に向かって掘り込み加工する際に、第一内側流路61の開口位置よりも下側へ深く掘り込む必要がないので、第三内側流路63を容易に加工することができる。
【0090】
また、軸体5には、第三内側流路63の途中部から分岐して第三中間流路43の軸方向上端部と連通する分岐流路15が形成されている。このため、第三内側流路63を流れる液体は、第三内側流路63の途中部から分岐流路15を介して第三中間流路43の軸方向上端部に供給され、当該軸方向上端部を形成しているメカニカルシール7Iの第一及び第二シール面71a,72a間の付近を通過して第三外側流路33へ導かれる。これにより、環状空間Aの最上部に配置されたメカニカルシール7Iの第一及び第二シール面71a,72a間の付近においてエア溜まりが生じるのを抑制することができるので、当該第一及び第二シール面71a,72a間が潤滑不足になるのを抑制することができる。
【0091】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。本実施形態のロータリジョイント1と第1実施形態のロータリジョイント1とが主に相違する点は、第一外側流路31と第三外側流路33との軸方向の位置関係が異なる点、第一外側流路31の開口と第一内側流路61の開口との間に形成される第二中間流路42の個数が異なる点、及び気体が流れる第四流体通路14が形成されている点である。
【0092】
図4において、本実施形態のロータリジョイント1では、ケース体2の複数のフランジ20は、下から順に、第一フランジ21、第二フランジ22、第三フランジ23、及び第四フランジ24によって構成されている。第一フランジ21と押し付け部材53との間には転がり軸受8が設けられ、第四フランジ24と軸本体51の大径部51aとの間には転がり軸受9が設けられている。これにより、軸体5はケース体2に対して回転可能に支持されている。
【0093】
第三フランジ23の軸方向下側には、液体である冷却水が被密封流体として流れる第一外側流路31が径方向に貫通して形成されている。また、第三フランジ23の第一外側流路31よりも軸方向上側には、気体である空気が被密封流体として流れる1つの第二外側流路32が径方向に貫通して形成されている。
【0094】
第二フランジ22の軸方向下側には、液体である冷却水が被密封流体として流れる第三外側流路33が径方向に貫通して形成されている。また、第二フランジ22の軸方向上側には、気体である空気が被密封流体として流れる1つの第四外側流路34が径方向に貫通して形成されている。
以上より、ケース体2には、冷却水が被密封流体として流れる第一外側流路31及び第三外側流路33、及び空気が被密封流体として流れる第二外側流路32及び第四外側流路34が、それぞれ1つずつ軸方向に沿って形成されている。
【0095】
軸本体51内には、流路孔61a,62a,63a,64aが1つずつ形成されている。これらの流路孔61a~64aそれぞれの一方側は、軸本体51の外周面において軸方向(上下方向)の異なる位置で開口している。流路孔61a~64aの他方側は、軸本体51の端面(上端面)で開口しており、この端面の開口に、前記回転側部材の複数の配管それぞれが接続される。
【0096】
各流路孔61a~64aの前記他方側の開口に対応するスリーブ52は、その内周側において軸本体51の外周面との間に形成された環状の隙間61b,62b,63b,64bと、径方向に貫通して形成された貫通孔61c,62c,63c,64cとを有している。
【0097】
各隙間61b~64bは、対応するスリーブ52の流路孔61a~64aと連通している。各貫通孔61c~64cは、周方向に所定間隔をあけて複数(図中には1つのみ図示)形成されている。
軸本体51内の流路孔61aと、対応するスリーブ52の隙間61bおよび複数の貫通孔61cとは、液体である冷却水が被密封流体として流れる第一内側流路61を構成している。これにより、第一内側流路61は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔61cを有している。
【0098】
軸本体51内の流路孔62aと、対応するスリーブ52の隙間62bおよび複数の貫通孔62cとは、気体である空気が被密封流体として流れる第二内側流路62を構成している。これにより、第二内側流路62は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔62cを有している。
【0099】
軸本体51内の流路孔63aと、対応するスリーブ52の隙間63bおよび複数の貫通孔63cとは、液体である冷却水が被密封流体として流れる第三内側流路63を構成している。これにより、第三内側流路63は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔63cを有している。
【0100】
軸本体51内の流路孔64aと、対応するスリーブ52の隙間64bおよび複数の貫通孔64cとは、気体である空気が被密封流体として流れる第四内側流路64を構成している。これにより、第四内側流路64は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔64cを有している。
【0101】
以上より、各内側流路61~64は、軸体5の外周側の開口孔とされる貫通孔61c~64cを有している。従って、軸体5には、第一内側流路61、第二内側流路62、第三内側流路63、及び第四内側流路64が、それぞれ1つずつ、軸方向の異なる位置で開口して形成されている。本実施形態では、第三内側流路63は、第一内側流路61の開口、第二内側流路62の開口、及び第四内側流路64の開口よりも軸方向下側の位置で開口している。
【0102】
ケース体2と軸体5との間に形成された環状空間Aには、軸方向に複数(図例では6つ)のメカニカルシール7が設けられている。これら複数のメカニカルシール7は、第一外側流路31と第一内側流路61とを繋ぐ第一中間流路41を形成するためのメカニカルシール、第二外側流路32と第二内側流路62とを繋ぐ第二中間流路42を形成するメカニカルシール、第三外側流路33と第三内側流路63とを繋ぐ第三中間流路43を形成するメカニカルシール、及び第四外側流路34と第四内側流路64とを繋ぐ第四中間流路44を形成するメカニカルシールを含む。
【0103】
第二フランジ22の軸方向下部の内周側には1つのスリーブ52Aが対向して配置されており、このスリーブ52Aで開口する第三内側流路63(貫通孔63c)と、第二フランジ22の内周側で開口する第三外側流路33とは、軸方向の同じ位置で開口している。そして、スリーブ52Aと第二フランジ22との間には、第三中間流路43を形成する2つのメカニカルシール7A,7Bが設けられている。
【0104】
第三中間流路43は、各メカニカルシール7A,7B及びその間に配置されたスリーブ52Aと、当該スリーブ52Aに対向する第二フランジ22との間において環状に形成されている。そして、各メカニカルシール7A,7Bの第一シール面71a及び第二シール面72a、及び各メカニカルシール7A,7Bの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が第三中間流路43から外部へ漏れるのを防止している。
【0105】
以上より、軸方向に隣り合うメカニカルシール7A,7Bを用いて形成された第三中間流路43によって、第三外側流路33と第三内側流路63とが連結されている。そして、第三外側流路33、第三中間流路43、及び第三内側流路63により、1つの独立した第三流体通路13が構成されている。なお、本実施形態の軸体5には、第三内側流路63の途中部から分岐して第三中間流路43と連通する分岐流路は形成されていない。
【0106】
第二フランジ22の軸方向上部の内周側には1つのスリーブ52Bが対向して配置されており、このスリーブ52Bで開口する第四内側流路64(貫通孔64c)と、第二フランジ22の内周側で開口する第四外側流路34とは、軸方向の同じ位置で開口している。そして、前記スリーブ52Bと第二フランジ22との間には、第四中間流路44を形成する2つのメカニカルシール7B,7Cが設けられている。なお、メカニカルシール7Bは、上記のように、第三中間流路43を形成するメカニカルシールであるが、第四中間流路44を形成するメカニカルシールも兼ねている。
【0107】
各メカニカルシール7B,7Cの第一密封環71は、対応するスリーブ52Bの外周面との間に隙間を有して設けられており、各第一密封環71とスリーブ52Bとの間には、環状の隙間流路44aが形成されている。この隙間流路44aは、スリーブ52Bの貫通孔64cと連通している。そして、メカニカルシール7Bの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能と、メカニカルシール7Cの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能とによって、被密封流体が隙間流路44aから外部へ漏れるのを防止している。
【0108】
さらに、両メカニカルシール7B,7Cの第一密封環71,71同士の間には、環状流路44bが形成されており、この環状流路44bは、隙間流路44aと第四外側流路34とを繋いでいる。そして、各第一密封環71の外周面と、第二フランジ22の突出部22aの内周面との間に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が環状流路44bから外部へ漏れるのを防止している。
【0109】
以上より、第四外側流路34と第四内側流路64との間には、密封された隙間流路44a及び環状流路44bが介在しており、これらの流路44a,44bは、第四外側流路34と第四内側流路64とを繋ぐ第四中間流路44を構成している。このように、軸方向に隣り合うメカニカルシール7B,7Cを用いて形成された第四中間流路44によって、第四外側流路34と第四内側流路64とが連結されている。そして、第四外側流路34、第四中間流路44、及び第四内側流路64により、1つの独立した第四流体通路14が構成されている。
【0110】
第三フランジ23の軸方向下部の内周側には1つのスリーブ52Cが対向して配置されており、このスリーブ52Cで開口する第二内側流路62(貫通孔62c)と、第三フランジ23の内周側で開口する第二外側流路32とは、軸方向の同じ位置で開口している。そして、前記スリーブ52Cと第三フランジ23との間には、第二中間流路42を形成する2つのメカニカルシール7D,7Eが設けられている。
【0111】
各メカニカルシール7D,7Eの第一密封環71は、スリーブ52Cの外周面との間に隙間を有して設けられており、各第一密封環71とスリーブ52Cとの間には、環状の隙間流路42aが形成されている。この隙間流路42aは、スリーブ52Cの貫通孔62cと連通している。そして、メカニカルシール7Dの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能と、メカニカルシール7Eの第一及び第二シール面71a,72aによるシール機能とによって、被密封流体が隙間流路42aから外部へ漏れるのを防止している。
【0112】
さらに、両メカニカルシール7D,7Eの第一密封環71,71同士の間には、環状流路42bが形成されており、この環状流路42bは、隙間流路42aと第二外側流路32とを繋いでいる。そして、各第一密封環71の外周面と、第三フランジ23の突出部23aの内周面との間には、Oリング74が設けられている。このOリング74は、被密封流体が環状流路42bから外部へ漏れるのを防止している。なお、各第一密封環71は、Oリング74を介して第三フランジ23の突出部23aに対して軸方向に移動可能な状態で嵌合されている。
【0113】
以上より、第二外側流路32と第二内側流路62との間には、密封された隙間流路42a及び環状流路42bが介在しており、これらの流路42a,42bは、第二外側流路32と第二内側流路62とを繋ぐ第二中間流路42を構成している。このように、軸方向に隣り合うメカニカルシール7D,7Eを用いて形成された第二中間流路42によって、第二外側流路32と第二内側流路62とが連結されている。そして、第二外側流路32、第二中間流路42、及び第二内側流路62により、1つの独立した第二流体通路12が構成されている。
【0114】
第一外側流路31及び第一内側流路61は、軸体5の外周側において、1つの第二流体通路12の第二中間流路42を挟んで、互いに軸方向(上下方向)の異なる位置で開口している。本実施形態では、第一外側流路31は、第二中間流路42よりも軸方向下側の位置で開口し、第一内側流路61は、第二中間流路42よりも軸方向上側の位置で開口している。そして、これらの開口は第一中間流路41によって繋がっている。従って、第一外側流路31、第一中間流路41、及び第一内側流路61により、1つの独立した第一流体通路11が構成されている。
【0115】
本実施形態では、第一流体通路11の第一中間流路41は、環状空間Aに形成されて第一外側流路31の前記開口と連通する第一環状流路41aと、環状空間Aに形成されて第一内側流路61の前記開口と連通する第二環状流路41bと、ケース体2に形成されて第一環状流路41aと第二環状流路41bとを繋ぐ繋ぎ流路41cとによって構成されている。
【0116】
環状空間Aには、第一環状流路41aを形成する2つのメカニカルシール7C,7Dが設けられ、かつ、第二環状流路41bを形成する2つのメカニカルシール7E,7Fが設けられている。
なお、メカニカルシール7Cは、上記のように、第四中間流路44を形成するメカニカルシールであるが、第一環状流路41aを形成するメカニカルシールも兼ねている。同様に、メカニカルシール7D,7Eは、上記のように、第二中間流路42を形成するメカニカルシールであるが、第二環状流路41bを形成するメカニカルシールも兼ねている。
【0117】
第一環状流路41aは、メカニカルシール7C,7Dと、これらに対向する第三フランジ23との間に形成されており、第三フランジ23の内周側で開口する第一外側流路31と連通している。メカニカルシール7C,7Dは、共用の第二密封環72を有している。
【0118】
メカニカルシール7Cの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Cの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が、第一環状流路41aの軸方向下側から、その内周側に形成された第四中間流路44(隙間流路44a)へ漏れるのを防止している。
【0119】
また、メカニカルシール7Dの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Dの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が、第一環状流路41aの軸方向上側から、その内周側に形成された第二中間流路42(隙間流路42a)へ漏れるのを防止している。
【0120】
第二環状流路41bは、メカニカルシール7E,7F及びその間に配置されたスリーブ52Dと、当該スリーブ52Dに対向する第三フランジ23との間に形成されている。これにより、第二環状流路41bは、軸体5の外周側で開口する第一内側流路61(貫通孔61c)と連通している。
【0121】
メカニカルシール7Eの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Eの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が、第二環状流路41bの軸方向下側から、その内周側に形成された第二中間流路42(隙間流路42a)へ漏れるのを防止している。
また、メカニカルシール7Fの第一及び第二シール面71a,72a、及びメカニカルシール7Fの第一密封環71の外周側に設けられたOリング74によるシール機能によって、被密封流体が、第二環状流路41bの軸方向上側から外部へ漏れるのを防止している。
【0122】
ケース体2側の繋ぎ流路41cは、第三フランジ23の突出部23aにおいて軸方向に貫通して形成された流路孔からなり、第一環状流路41aの上端部と第二環状流路41bの下端部とを繋いでいる。つまり、第一外側流路31及び第一内側流路61は、下側から順に、第一環状流路41a、繋ぎ流路41c、及び第二環状流路41bを介して繋がっている。
【0123】
これにより、第一流体通路11の第一中間流路41を流れる冷却水(被密封流体)は、第二中間流路42を形成している各メカニカルシール7D,7Eの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却するようになっている。
具体的には、第一中間流路41の第一環状流路41aを流れる冷却水は、第二中間流路42を形成しているメカニカルシール7Dの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却する。また、第一中間流路41の第二環状流路41bを流れる冷却水は、第二中間流路42を形成しているメカニカルシール7Eの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却する。
【0124】
なお、第一環状流路41aを流れる冷却水は、第四中間流路44を形成している一方のメカニカルシール7Cの第一及び第二シール面71a,72aも潤滑及び冷却する。また、第三流体通路13の第三中間流路43を流れる冷却水(被密封流体)は、第四中間流路44を形成している他方のメカニカルシール7Bの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑及び冷却するようになっている。
第2実施形態において説明を省略した点は、第1実施形態と同様である。
【0125】
以上、本実施形態のロータリジョイント1によれば、液体(冷却水)が流れる第一流体通路11において、ケース体2側の第一外側流路31の開口および軸体5側の第一内側流路61の開口は、気体(空気)が流れる第二流体通路12の第二中間流路42を挟んで、互いに軸方向の異なる位置で開口している。そして、第一外側流路31の開口と第一内側流路61の開口とを繋ぐ第一中間流路41は、当該第一中間流路41を流れる液体が、第二中間流路42を形成しているメカニカルシール7D,7Eの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑するように形成されている。これにより、一つの第一流体通路11(第一中間流路41)を流れる液体によって、気体が流れる第二流体通路12(第二中間流路42)を形成しているメカニカルシール7D,7Eの第一及び第二シール面71a,72aを潤滑することができる。
【0126】
また、第一流体通路11の第一中間流路41は、第一外側流路31の開口と連通する第一環状流路41aと、第一内側流路61の開口と連通する第二環状流路41bとを繋ぎ流路41cで繋ぐという簡単な構成により形成することができる。
【0127】
[その他]
上記各実施形態におけるロータリジョイント1は、軸方向において上下逆に配置されていてもよいし、軸方向が水平方向となるように配置されていてもよい。
また、上記各実施形態におけるロータリジョイント1は、第一流体通路11をCMP装置の回転側部材へ液体を送出する流体通路とし、第三流体通路13を前記回転側部材から液体を回収する流体通路としているが、第一流体通路11を前記回転側部材から液体を回収する流体通路とし、第三流体通路13を回転側部材へ液体を送出する流体通路としてもよい。その場合、第一外側流路31はケース体2内から外部へ液体を排出する排出流路となり、第一内側流路61は外部から軸体5内に液体を供給する供給流路となる。また、第三外側流路33は外部からケース体2内に液体を供給する供給流路となり、第三内側流路63は軸体5内から外部へ液体を排出する排出流路となる。
【0128】
上記各実施形態におけるロータリジョイント1は、CMP装置以外に、スパッタリング装置やエッチング装置等の他の装置にも適用することができる。その場合、ロータリジョイント1は、第三流体通路13を備えていなくてもよい。また、ロータリジョイント1は、半導体分野での使用に限定されるものではない。
上記第1実施形態において、第一外側流路31及び第一内側流路61は、3つの第二中間流路42を挟んで軸方向の異なる位置で開口しているが、少なくとも1つの第二中間流路42を挟んで軸方向の異なる位置で開口していればよい。なお、第一外側流路31及び第一内側流路61が、2つの第二中間流路42を挟んで軸方向の異なる位置で開口する場合、第一中間流路41における第一環状流路41aと第二環状流路41bとを繋ぐ繋ぎ流路41cは、1つの第三環状流路と、2つの流路孔とで構成することができる。
【0129】
上記第2実施形態において、第一外側流路31及び第一内側流路61は、環状空間Aにおいて1つの第二中間流路42を挟んで軸方向の異なる位置で開口しているが、複数の第二中間流路42を挟んで軸方向の異なる位置で開口していてもよい。
また、上記第2実施形態のロータリジョイント1は、第四流体通路14を備えていなくもよい。
【0130】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
1 ロータリジョイント
2 ケース体
5 軸体
7 メカニカルシール
11 第一流体通路
12 第二流体通路
13 第三流体通路
15 分岐流路
31 第一外側流路(供給流路)
32 第二外側流路
33 第三外側流路(排出流路)
41 第一中間流路
41a 第一環状流路
41b 第二環状流路
41c 繋ぎ流路
41d,41e 第三環状流路
41f,41g,41h 流路孔
42 第二中間流路
43 第三中間流路
61 第一内側流路(排出流路)
62 第二内側流路
63 第三内側流路(供給流路)
71 第一密封環
71a 第一シール面
72 第二密封環
72a 第二シール面
A 環状空間
図1
図2
図3
図4
図5