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  • 特許-フィルム及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20220210BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220210BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/70
A61K47/46
A61K47/10
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/9789
A61K8/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018064527
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172626
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】DSP五協フード&ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田渕 彰
(72)【発明者】
【氏名】馬場 陽平
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-142046(JP,A)
【文献】特開2011-026207(JP,A)
【文献】特開2016-193892(JP,A)
【文献】特開2000-354460(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050541(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
A23L 5/00- 5/30
A23L 29/00-29/10
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08B 1/00-37/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とポリフェノールとを含有し、
前記ポリフェノールが添加されていない場合よりも強度が高められ
前記ポリフェノールが、茶抽出物である、フィルム。
【請求項2】
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とポリフェノールとグリセリンとを含有し、
前記ポリフェノールが添加されていない場合よりも強度が高められた、フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルムを製造する方法であって、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を水に溶解させて得られた溶液を乾燥してなるフィルム状組成物を、ポリフェノールと水とを含有する浸漬液に浸漬する工程を備えた、フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記浸漬液が、さらにグリセリンを含有する、請求項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記浸漬液における前記ポリフェノールの濃度を、0.05~2.0質量%とする、請求項またはに記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多糖類として、ガラクトキシログルカンの側鎖の一部を構成するガラクトースを、部分的に分解(部分分解)することによって除去して得られた、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物(以下、単に「ガラクトース部分分解物または部分分解物」という場合がある。)が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
かかるガラクトース部分分解物を、水に溶解させてゲル状組成物を形成した後、乾燥してフィルム状に形成しようとしても、得られたフィルムは強度が十分ではない。
【0004】
そこで、かかるガラクトース部分分解物を用い、十分な強度を有するフィルムが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分的分解物と、ポリフェノールとを含有することによって、増粘、ゲル化作用を発揮し得る組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-283305号公報
【文献】特開2016-193892号公報
【文献】特開2000-354460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の方法以外の方法で、ガラクトース部分分解物を含有するフィルムに強度を付与することができれば、それは望ましい。
一方、特許文献3には、ポリフェノールを含有することによってガラクトース部分分解物のゲル組成物について開示されているが、フィルムへの適用については開示されていな。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、ガラクトース部分分解物を含有しながらも強度に優れたフィルム、及び、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、以下の知見を見出した。
すなわち、ガラクトース部分分解物を水に溶解させてゲル組成物とし、このゲル組成物を乾燥して得られたフィルムは、水中に浸漬しても、溶解はしない。しかし、高度に膨潤する。高度に膨潤したフィルムは、強度が大きく低下し、非常に崩壊し易くなる。そのため、実用に耐えなくなる。
【0010】
しかし、驚くべきことに、このように形成したフィルムをポリフェノールの水溶液に浸漬すると、短時間でフィルムの強度が向上することを見出した。また、このように浸漬して製造すると、簡便であることを見出した。
しかも、一旦フィルムを形成してからポリフェノールの水溶液に浸漬させる他、予め、ポリフェノールと共にガラクトース部分分解物を水に溶解させた後、乾燥しても、同様のフィルムが製造されることを見出した。
さらに、ポリフェノールの水溶液の濃度に応じて、フィルムの強度を調節できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るフィルムは、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とポリフェノールとを含有し、
前記ポリフェノールが添加されていない場合よりも強度が高められている。
【0012】
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物を含有しながらも強度に優れたフィルムとなる。
【0013】
上記構成のフィルムにおいては、
さらにグリセリンを含有していてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、さらにグリセリンを含有することによって、柔軟性が高められる。
【0015】
上記構成のフィルムにおいては、
前記ポリフェノールが、茶抽出物であってもよい。
【0016】
かかる構成によれば、ポリフェノールが茶抽出物であることによって、ガラクトース部分分解物との反応性が向上するため、より強度が高くなる。
【0017】
本発明に係るフィルムの製造方法は、
前記フィルムを製造する方法であって、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を水に溶解させて得られた溶液を乾燥してなるフィルム状組成物を、ポリフェノールと水とを含有する浸漬液に浸漬する工程を備える。
【0018】
かかる構成によれば、上記浸漬液に浸漬するだけで、浸漬前よりも強度が高く、ガラクトース部分分解物を含有しながらも強度に優れたフィルムが得られるため、簡便である。
【0019】
上記構成のフィルムの製造方法においては、
前記浸漬液が、さらにグリセリンを含有してもよい。
【0020】
かかる構成によれば、より柔軟性が高いフィルムが得られる。
【0021】
上記構成のフィルムの製造方法においては、
前記浸漬液における前記ポリフェノールの濃度を、0.05~2.0質量%としてもよい。
【0022】
かかる構成によれば、より強度が高められたフィルムを、より短時間で製造し得る。
【0023】
上記構成のフィルムの製造方法においては、
前記ポリフェノールとして、茶抽出物を用いてもよい。
【0024】
かかる構成によれば、ポリフェノールが茶抽出物であることによって、ガラクトース部分分解物との反応性が向上するため、より強度が高いフィルムが得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上の通り、本発明によれば、ガラクトース部分分解物を含有しながらも強度に優れたフィルム、及び、その製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ポリフェノールの濃度ごと(0質量%~2質量%)に、浸漬時間と破断応力の関係を示したグラフ
図2】ポリフェノールの濃度ごと(0質量%~2質量%)に、10分以内の浸漬時間と破断応力の関係を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係るフィルム及びその製造方法の実施形態について、説明する。
【0028】
本実施形態のフィルムは、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とポリフェノールとを含有し、
前記ポリフェノールが添加されていない場合よりも強度が高められている。
【0029】
前記ガラクトキシログルカンは、双子葉、単子葉植物など高等植物の細胞壁(一次壁)の構成成分であり、また、一部の植物種子の貯蔵多糖類として存在する非イオン性の高分子多糖類である。
このガラクトキシログルカンは、グルコース、キシロースおよびガラクトースを構成糖として有しており、主鎖としてβ-1,4結合してなるグルコースを有し、側鎖としてキシロースを有し、そのキシロースにさらに結合されたガラクトースを有する。
ガラクトキシログルカンは、いかなる植物由来のガラクトキシログルカンでもよく、例えばタマリンド、ジャトバ、ナスタチウムの種子、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギなどの穀物またはリンゴなどの果実の表皮から入手できる。最も入手し易く、含有量も多いことを考慮すると、好ましくは、豆科植物タマリンド種子由来のガラクトキシログルカンである。かかるガラクトキシログルカンとしては、市販のものを採用し得る。市販品としては、例えば、グリロイド(登録商標、DSP五協フード&ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0030】
前記ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物は、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースが、部分分解されて除去されてなる物質である。
なお、本実施形態においてガラクトキシログルカンとは、側鎖ガラクトースが後述する酵素処理による部分分解によって除去されていないガラクトキシログルカン(完全ガラクトキシログルカン)を意味する。また、かかる完全ガラクトキシログルカンは、ネイティブガラクトキシログルカンとも称される場合がある。
上記部分分解には酵素が用いられる。酵素としては、例えば、β-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0031】
前記β-ガラクトシダーゼは、ガラクトキシログルカンに含まれるガラクトースとキシロースの結合を加水分解してガラクトースを遊離する酵素である。β-ガラクトシダーゼとしては、植物由来のものおよび微生物由来のもののいずれでもよいが、微生物Aspergillus oryzaeまたはBacillus circulans由来の酵素、または、ガラクトキシログルカン含有種子中の酵素が好ましい。かかるβ-ガラクトシダーゼとしては、市販のものを採用し得る。
【0032】
このβ-ガラクトシダーゼによる酵素反応では、反応の進行につれて側鎖ガラクトースが部分的に除去され、その除去率が30%付近になると反応液は急激に増粘しゲル化する。ガラクトースの除去率が30~55%の範囲では、加熱によってゲル化し冷却によってゾル化する可逆的熱応答ゲル化性を有するものとなる。ガラクトース除去率が30%未満ではポリフェノールとの反応性が低下し、また、55%を越えるとガラクトース部分分解物の水への溶解性が低下し、均一なガラクトース部分分解物水溶液を調製しにくく、不均一な皮膜が形成される傾向にある。
【0033】
この点を考慮すれば、ガラクトースが30~55%部分分解されてなる上記ガラクトース部分分解物を用いることが好ましい。ガラクトース部分分解物が、ガラクトースが30~55%部分分解されてなることによって、ポリフェノールと反応させると、比較的短時間でフィルム強度が高められ得る。よって、より強度の高いフィルムが、より短時間で製造され得る。
【0034】
ガラクトキシログルカンは、通常、側鎖キシロースを約37%、側鎖ガラクトースを約17%含有している(Gidleyら、カーボハイドレート リサーチ(Carbohydrate Research)、214(1991)219-314頁参照)。よって、ガラクトースが30~55%部分分解されてなるガラクトース部分分解物は、側鎖キシロースを39~41%、側鎖ガラクトースを8~12%含有していると算出される。
なお、ガラクトースの部分分解率(すなわち、ガラクトースの除去率)は、得られた部分分解物がセルラーゼ分解されることによって生成されるガラクトキシログルカンオリゴ糖量を、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称する。)(アミノカラム)で測定することにより算出することができる。
【0035】
前記ポリフェノールとしては、化学合成品であるポリフェノール、植物由来のポリフェノール(植物ポリフェノール)が挙げられ、これらのうち、好ましくは植物ポリフェノールである。
植物ポリフェノールは、緑茶(抹茶煎茶など)、紅茶、ウーロン茶、プーアル茶(黒茶)、マテ茶等の茶葉、白色野菜、柑橘類の果皮や種子、ブドウの果皮や種子(赤ワイン、赤ブドウ果汁など)、リンゴ、柿、桃、なし、タマネギの皮、栗、ゴボウ、コーヒー豆、カカオ豆等から、温水等で抽出される抽出物(固体状及び液状状の抽出物を含む)である。この抽出物には、モノマーポリフェノールやポリマーポリフェノールが多く含まれている。
【0036】
上記モノマーポリフェノールとしては、フラボノイド類、クロロゲン酸、没食子酸や、エラグ酸等が挙げられる。
上記フラボノイド類としては、カテキン類、ケルセチン、ルチン、アントシアニン等が挙げられる。
上記カテキン類としては、(+)-カテキン、(+)-ガロカテキン、(-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキン、及び、これらの没食子酸エステル等が挙げられる。これらのうち、カテキン類としては、(-)-エピガロカテキンの没食子酸エステル(エピガロカテキンガレート)が好ましい。
【0037】
上記ポリマーポリフェノールとしては、縮合型及び加水分解型のタンニン等が挙げられる。
上記縮合型のタンニンとしては、プロアントシアニジン類等が挙げられ、該プロアントシアニジン類としては、テアルビジンやプロデルフィニジン等が挙げられる。
上記加水分解型のタンニンとしては、タンニン酸、ガロタンニンや、エラグタンニン等が挙げられる。
【0038】
上記植物ポリフェノールが使用される場合、上述の抽出物それ自体が使用されてもよいし、また、その抽出物から有効成分であるポリフェノールを濃縮(抽出)したものが使用されてもよいし、さらに、その抽出物から有効成分のポリフェノールを精製(分離)したものが使用されてもよい。これらの抽出物のうち、茶葉から抽出された抽出物である茶抽出物が、好ましい。
なお、上記植物ポリフェノールは、上記のものに特に限定されるものではなく、ポリフェノールを含有する植物から得られるものであれば、いずれでもよい。
なお、ポリフェノールは、1種又は複数種の混合物として用いられてもよい。
【0039】
本実施形態のフィルム中のガラクトース部分分解物の含有量は、所望のフィルムの強度に応じて適宜設定されればよく、特に限定されない。
例えば、フィルム中のガラクトース部分分解物の含有量は、2~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
該フィルム中のガラクトース部分分解物の含有量が、2質量%以上であることによって、過剰な水分を含有することなく、強度を発揮できるという利点がある。
該フィルム中のガラクトース部分分解物の含有量が、60質量%以下であることによって、湿潤性及び柔軟性に優れるという利点がある。
【0040】
本実施形態のフィルム中のポリフェノールの含有量は、ガラクトース部分分解物フィルムの強度が得られる程度、及び、フィルムの厚みの程度に応じて、すなわち、所望のフィルムの強度および厚みに応じて適宜設定されればよく、特に限定されない。
【0041】
本実施形態におけるポリフェノール溶液浸漬前の乾燥物(フィルム状組成物)の厚みは、0.005~0.2mmが好ましく、0.05~0.1mmがより好ましい。
該フィルム状組成物の厚みが、0.005mm以上であることによって、ポリフェノール溶液への浸漬によるフィルムの作製といった加工の際、破れにくいという利点がある。
該フィルム状組成物の厚みが、0.2mm以下であることによって、様々な形状に追随し易く、ポリフェノールへの浸漬によるフィルムの作製の際、フィルムを作製しやすくなるという利点がある。
【0042】
本実施形態のフィルムの厚みは、0.05~0.5mmが好ましく、0.1~0.3mmがより好ましい。
該フィルムの厚みが、0.05mm以上であることによって、破れ難く、一定強度を有するフィルムを作製し易くなるという利点がある。
該フィルムの厚みが、0.5mm以下であることによって、様々な形状に追随し易くなるという利点がある。
【0043】
本実施形態のフィルムの水分含量は、40~98質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。
該フィルムの水分含量が、40質量%以上であることによって、湿潤性及び柔軟性に優れるという利点がある。
該フィルムの水分含量が、98質量%以下であることによって、過剰な水分を含有することなく強度を発揮し得るという利点がある。
上記水分含量は、フィルムの表面に付着している過剰な水分をティッシュ等で取り除いた後、フィルムの質量(乾燥前質量)を測定し、50℃、30分間の加熱送風乾燥後の質量を測定し、乾燥前後の質量の減少分を、乾燥前質量に対する百分率として算出される値である。
【0044】
本実施形態のフィルムの強度は、0.005MPa~4MPaが好ましく、0.01MPa~2.5MPaがより好ましい。
該フィルムの強度が、0.005MPa以上であることによって、破れ難くなるという利点がある。
該フィルムの強度が、4MPa以下であることによって、より良好な触感を有するという利点がある。
【0045】
本実施形態のフィルムは、必要に応じて、通常、化粧品、医療品、工業品に添加される各種添加剤を含有してもよい。かかる添加剤としては、例えば、可塑剤、防腐剤、水分活性低下剤、pH調整剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。上記の他、添加剤として、皮膜用賦形剤が挙げられ、該賦形剤としては、例えば、各種デンプン類(修飾デンプン、加工デンプン、デンプン、デンプン分解物等を含む)等の各種多糖類が挙げられる。
【0046】
本実施形態のフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す製造方法が採用され得る。
【0047】
次いで、本実施形態のフィルムの製造方法について、説明する。
【0048】
本実施形態のフィルムの製造方法は、
上記本実施形態のフィルムを製造する方法であって、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を水に溶解させて得られた溶液を乾燥してなるフィルム状組成物を、ポリフェノールと水とを含有する浸漬液に浸漬する工程(浸漬工程)を備える。
【0049】
具体的には、本実施形態のフィルムの製造方法は、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を水に溶解して得られた溶液を乾燥することによってフィルム状組成物を形成する工程(フィルム状組成物の形成工程)と、
形成されたフィルム状組成物を、ポリフェノールと水とを含有する浸漬液に浸漬する工程(浸漬工程)とを備える。
【0050】
(フィルム状組成物の形成工程)
フィルム状組成物の形成工程は、例えば、
ガラクトース部分分解物を水に冷却しながら溶解させて水溶液を形成する溶解工程と、
得られた溶液を乾燥することによってフィルム状組成物を得る乾燥工程(溶液の乾燥工程)とを備える。
なお、乾燥工程において、ガラクトース部分分解物の水溶液はゲル化する場合がある。このようにゲル化した状態で乾燥を一旦停止し、その後、再乾燥させてもよい。
【0051】
溶解工程においては、例えば、ガラクトース部分分解物を水に0.1~10質量%となるように、冷却しながら溶解させ得る。
溶解においては、従来公知の溶解に使用される装置が適宜使用される。
なお、ガラクトース部分分解物を水に溶解させることが可能であれば、冷却しなくてもよい。
溶解工程においては、ガラクトース部分分解物及び水の他、前述したような添加剤を添加してもよい。
【0052】
前記溶液の乾燥工程においては、例えば、得られた溶液を、水分含量が1~90質量%になるように乾燥することによって、フィルム状組成物を得る。なお、かかる水分含量は、乾燥によって得られたフィルム状組成物の質量から乾燥前の溶液に含まれる不揮発性分(水以外の不揮発成分)の質量を差し引いた差の、該フィルム状組成物の質量に対する百分率である。
乾燥においては、従来公知の乾燥に使用される装置が適宜使用される。
【0053】
フィルム状組成物の厚みは、特に限定されず、後の工程で形成されるフィルムが所望の厚みを有するように、適宜設定され得る。
本実施形態のフィルム状組成物の厚みは、例えば、前述した通り、0.005~0.2mmが好ましく、0.05~0.1mmがより好ましい。
【0054】
(浸漬工程)
浸漬工程においては、例えば、得られたフィルム状組成物を、容器に収容された上記浸漬液に浸漬する。
浸漬液中のポリフェノール水溶液の濃度は、特に限定されず、後の工程で得られるフィルムの強度が所望の強度となるように、適宜設定され得る。
【0055】
例えば、ポリフェノールの濃度が高い程、ガラクトース部分分解物との反応性が高くなり、フィルム強度が高くなる傾向にある。また、ポリフェノールは、一定量の水に溶解させる量が多いほど溶け難くなる傾向にある。
従って、例えば、かかる観点を考慮して、ポリフェノール水溶液の濃度は、通常、0.05~2.0質量%とすることができ、0.1~1.5質量%とすることが好ましく、0.1~1.0質量%とすることがより好ましい。
ポリフェノール水溶液の濃度を0.05~2.0質量%とすることによって、ポリフェノール水溶液が調製しやすくなり、ガラクトース部分分解物とポリフェノールとの反応性を向上させることができるため、より強度の高いフィルムを、より短時間で製造し得る。
【0056】
浸漬は、例えば室温で行うことができる。
浸漬時間は、特に限定されないが、例えば、2~10分(最小の時間として)とし得る。
浸漬液には、ポリフェノール及び水の他、前述したような添加剤を添加してもよい。
【0057】
浸漬されたフィルム状組成物を、後述する水分量となるように乾燥することによって、フィルムを得てもよい。かかる乾燥においては、従来公知の乾燥に使用される装置が適宜使用される。
なお、かかる乾燥を行うことなく、フィルムを得てもよい。
【0058】
本実施形態においては、フィルムの水分含量を、特に限定されないが、40~98%とすることが好ましく、50~95%とすることがより好ましい。
なお、水分含量は、前述した測定方法によって測定される値である。
【0059】
本実施形態のフィルムの製造方法によれば、上記のように浸漬液に浸漬するだけで、浸漬前よりも強度が高いフィルムが得られるため、簡便である。
【0060】
以上の通り、本実施形態のフィルムは、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とポリフェノールとを含有し、
前記ポリフェノールが添加されていない場合よりも強度が高められている。
【0061】
本実施形態のフィルムによれば、ガラクトース部分分解物を含有しながらも強度に優れたフィルムとなる。
【0062】
本実施形態のフィルムにおいては、
さらにグリセリンを含有することが好ましい。
さらにグリセリンを含有することによって、柔軟性が高くなる。
【0063】
本実施形態のフィルムにおいては、
前記ポリフェノールが、茶抽出物であることが好ましい。
ポリフェノールが茶抽出物であることによって、ガラクトース部分分解物との反応性が向上するため、より強度が高くなる。
【0064】
本実施形態のフィルムの製造方法は、
本実施形態のフィルムを製造する方法であって、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物を水に溶解させて得られた溶液を乾燥してなるフィルム状組成物を、ポリフェノールと水とを含有する浸漬液に浸漬する工程を備える。
【0065】
本実施形態のフィルムを製造方法によれば、上記浸漬液に浸漬するだけで、浸漬前よりも強度が高く、ガラクトース部分分解物を含有しながらも強度に優れたフィルムが得られるため、簡便である。
また、浸漬液に種々の成分を含有させることによって、かかる成分をフィルムに含有させることができるため、浸漬液に浸漬させていないフィルム(上記フィルム状組成物)と比較して、幅広い成分を含有し得る。
【0066】
本実施形態のフィルムを製造方法においては、
前記浸漬液が、さらにグリセリンを含有することが好ましい。
これによって、より柔軟性が高いフィルムが得られる。
【0067】
本実施形態のフィルムを製造方法においては、
前記浸漬液における前記ポリフェノールの濃度を、0.05~2.0質量%とすることが好ましい。
ポリフェノール濃度が上記範囲であることによって、より強度が高められたフィルムを、より短時間で製造し得る。
【0068】
本実施形態のフィルムを製造方法においては、
前記ポリフェノールとして、茶抽出物を用いることが好ましい。
ポリフェノールが茶抽出物であることによって、ガラクトース部分分解物との反応性が向上するため、より強度が高いフィルムが得られる。
【0069】
以上の通り、本実施形態によれば、ガラクトース部分分解物を含有しながらも強度に優れたフィルム、及び、その製造方法が提供される。
【0070】
このような本実施形態のフィルムは、食品、医薬品、化粧品、工業用途に幅広く使用することができる。
【0071】
本実施形態のフィルムは、ポリフェノールを含まない脱イオン水中に保管するとポリフェノールが抜けて強度が低下する傾向にある。
この点を考慮すれば、ポリフェノール水溶液に浸漬してフィルムを形成した後、そのままポリフェノール水溶液に浸漬させた状態で保管してもよい。
この他、該ポリフェノール水溶液から取り出した後、そのまま濡れている状態で包装容器等に収容して保管してもよい。このようにポリフェノール水溶液によって濡れている状態が維持されていれば、強度の低下が抑制される。使用する際には、収納容器から取り出せば、そのまま使用できる。
【0072】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、フィルムの製造方法として、フィルム状組成物を浸漬液に浸漬させる方法を示したが、本発明のフィルムは、他の方法によっても製造され得る。
例えば、ガラクトース部分分解物、ポリフェノール、水、及び、任意の添加剤とを冷却しながら溶解して水溶液とした後、加熱してゲル状組成物とし、得られたゲル状組成物を乾燥することによってフィルムを製造してもよい。
【実施例
【0074】
以下、本発明について、実施例を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
(製造例1)ガラクトース部分分解物の製造
ガラクトキシログルカン(DSP五協フード&ケミカル(株)製、グリロイド(登録商標))1gを水99gに添加し、75℃で15分撹拌し、基質を1質量%含有する1質量%ガラクトキシログルカン水溶液を得た。精製酵素β-ガラクトシダーゼを用い、1質量%ガラクトキシログルカン水溶液を、酵素濃度2.4×10-5質量%、pH5.6、50℃で反応させた後、100℃で20分間加熱することにより、反応を停止させた。反応溶液は、反応開始後約15時間でゲル化し、これにより、ゲル状の組成物を得た。得られたゲル状の組成物におけるガラクトース除去率を、以下の方法で算出した。
【0076】
ゲル状の組成物(1質量%水溶液)7gにセルラーゼオノズカRS(ヤクルト薬品工業(株))0.15質量%溶液(50mM酢酸緩衝液、pH4.0)を1mL加え、50℃、オーバーナイトで反応させた。前述で調製した1質量%ガラクトキシログルカン水溶液も同様の方法で反応させ、対照とした。反応後、反応液を98℃で30分間加熱することによって酵素を失活させて、試料を得た。その後、得られた試料を前処理カートリッジ(東ソー(株)製、IC-SP)および0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルターにかけ、得られたろ液10μLを、アセトニトリル:水=60:40(v/v)を0.6mL/分で流しているHPLCのアミノカラムにアプライし、ガラクトキシログルカンのオリゴ糖(7糖(ガラクトース0個)、8糖(ガラクトース1個)、9糖(ガラクトース2個))の溶出面積を示差屈折率計で検出した。次いで、1ユニット(7糖)あたりのガラクトース量を、(8糖の面積+(9糖の面積×2))/(7糖の面積+8糖の面積+9糖の面積)により算出した。上記式を用いてゲル状の組成物について算出されたガラクトース量の、対照のガラクトキシログルカンについて算出されたガラクトース量からの減少率をガラクトース除去率(%)としてさらに算出したところ、約45%であった。
【0077】
そして、前述で得られたゲル状の組成物を送風乾燥した後、粉砕し、篩過して、粉状のガラクトース部分分解物を得た。
【0078】
(試験例1)
<ポリフェノールの有無とフィルムの強度との関係>
【0079】
(ガラクトース部分分解物水溶液の調製)
容量1000mLのステンレスビーカーに脱イオン水592.5gを入れ、製造例1で得られたガラクトース部分分解物7.5gを加えて室温で混合後、氷温水中で撹拌し、ガラクトース部分分解物の1.25質量%水溶液を調製した。
【0080】
(ポリフェノール水溶液の調製)
容量50mLのポリプロピレンチューブにポリフェノールとしてサンフェノンEGCg-OP(エピガロカテキンガレート、太陽化学(株)製)600mgを入れ、脱イオン水を加えて混合し、30gのサンフェノンEGCg-OPの2質量%水溶液を調製した。得られたサンフェノンEGCg-OPの2質量%水溶液を脱イオン水で希釈し、0.1、0.25、0.50、1.00質量%EGCg水溶液を調製した。
【0081】
(ガラクトース部分分解物とポリフェノールとを予め混合したフィルムの調製)
直径90mmのプラスチックディッシュに、上記ガラクトース部分分解物水溶液8g及び0.1質量%EGCg水溶液0.1mLを添加した(実施例1)。
直径90mmのプラスチックディッシュに、上記ガラクトース部分分解物水溶液8g、0.1質量%EGCg水溶液0.1mL、及び、50質量%グリセリン(グリセロール)水溶液80μLを添加した(実施例2)。
その後、各混合液を、35℃の乾燥機内に静置し、オーバーナイトで乾燥することによって、フィルムを調製した。
このようにディッシュ上に形成したフィルムを、市販のベルトポンチを用いて直径約24mmの円形状フィルムを切り出して試料とした。
得られた試料について、下記の方法で、強度の測定、柔軟性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例のフィルムの調製)
直径90mmのプラスチックディッシュに、上記ガラクトース部分分解物水溶液8gを添加した(比較例1)。
直径90mmのプラスチックディッシュに、上記ガラクトース部分分解物水溶液8g及び50質量%グリセリン水溶液80μLを添加した(比較例2)。
その後、35℃の乾燥機内に静置し、オーバーナイトで乾燥し、ガラクトース部分分解物フィルムを調製した。
このようにプラスチックディッシュ上に形成したフィルムを、プラスチックディッシュから取り出し、市販のベルトポンチを用いて直径約24mmの円形状フィルムに切り出して、試料とした。
得られた試料について、下記の方法で、破断強度の測定、柔軟性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(破断強度の測定方法)
直径18mmの穴を有するアクリル板を2枚重ね合わせて1組とし、下側のアクリル板の上に、アクリル板と同じ位置に同じ形状及び大きさの穴を有するシリコーンゴムを置き、シリコーンゴムの穴を覆うように試料(円形状フィルム)を置き、その上に上側のアクリル板を重ね合わせ、シリコーンゴムを挟む2枚のアクリル板の両端をダブルクリップ(左右各1個)で固定した後、固定された試料の破断応力を、クリープメーター(型式:RE2-33005S、(株)山電社製)を用いて測定した(5mmプランジャー、1mm/secの速度、単位:Pa)。結果を表1に示す。
なお、表1の破断応力については、それぞれ2回の試験結果の平均値を示す。
【0084】
(柔軟性の評価方法)
試料(円形状フィルム)を両手で掴み、左右外向きに力を加えながら曲げ、このときに試料が割れるか否かによって柔軟性を調べ、下記の評価基準で評価した。
試料が割れない:○(柔軟性がある)
試料が割れる :×(柔軟性がない)
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示すように、EGCgを含有するフィルムは、EGCgを含有しないフィルムに比べて、強度が高くなった。また、グリセリンを添加すると、グリセリンを添加しない場合よりもフィルムの強度が小さかったものの、柔軟性が高かった。
【0087】
(試験例2)
<フィルム状組成物のポリフェノール水溶液への浸漬によるフィルムの強度>
【0088】
(フィルム状組成物の調製)
直径90mmのプラスチックディッシュに、上記1.25質量%ガラクトース部分分解物水溶液16gを添加し、35℃の乾燥機内に静置し、オーバーナイトで乾燥することによって、フィルム状組成物を調製した。用いたフィルム状組成物の水分含量は、3.7±1.2%(平均値±標準偏差, n=10)であった。
フィルム状組成物の水分含量は、上記プラスチックディッシュに添加したガラクトース部分分解物水溶液に含まれるガラクトース部分分解物質の質量と、乾燥後のフィルム状組成物の質量との差を、乾燥後のフィルム状組成物の質量に対する百分率として算出した({(乾燥後のフィルム状組成物の質量-ガラクトース部分分解物の質量)/乾燥後のフィルム状組成物の質量}×100)。
【0089】
(実施例のフィルムの調製)
前述したEGCg-OPの2質量%水溶液を脱イオン水で希釈し、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2質量%のEGCg水溶液を調製した。
フィルム状組成物の調製で得られたプラスチックディッシュ上のフィルム状組成物に、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2質量%のEGCg水溶液をそれぞれ5mL添加した後、プラスチックディッシュのふたを閉め、表2に示す一定時間(浸漬時間)、室温で静置し、ポリフェノール溶液を浸漬させることによって、フィルムを作製した。
【0090】
(比較例のフィルムの調製)
フィルム状組成物の調製で得られたプラスチックディッシュ上のフィルム状組成物に、EGCg水溶液を添加せず(0質量%)、脱イオン水のみにフィルム状組成物を浸漬させることによってフィルムを調製した。
【0091】
得られたフィルムを、プラスチックディッシュから取り出し、市販のベルトポンチを用いて直径約24mmの円形状フィルムに切り出して、試料とした。
そして、切り出した試料の厚みと水分含量とを測定した(n=7)。結果を表2に示す。なお、厚みはノギスを用いて測定した。
【0092】
【表2】
【0093】
得られた試料の破断応力を、上記した方法によって測定した。結果を表3及び4に示す。なお、表3及び4の破断応力については、それぞれ1回の試験結果を示す。
【0094】
得られたフィルムを、表3及び4に示すポリフェノールの濃度ごとの浸漬時間に対する破断応力をプロットした。結果を図1図2に示す。
図1は、ポリフェノールの濃度ごと(0質量%~2質量%)に、浸漬時間と破断応力の関係を示したグラフであり、図2は、ポリフェノールの濃度ごと(0質量%~2質量%)に、10分以内の浸漬時間と破断応力の関係を示したグラフである。
【0095】
(強度の評価)
得られた試料(円形状のフィルム)を両手で持ち、ゲルに左右外向きに力を加えることによってフィルム強度を調べ、下記の評価基準で評価した。結果を表2に示す。
破れ難い:○
破れ易い:×
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
表2に示すように、浸漬するポリフェノール水溶液の濃度の増加に伴い、フィルムの厚みと水分含量の低下が見られた。特に0.5質量%~2.0質量%のポリフェノール水溶液に浸漬して得られたフィルムは、水(0質量%)に浸漬して得られたフィルムと比較して、厚みは約1/4程度のレベルまで減少し、また水分含量もおよそ約10%~40%程度減少した。
【0099】
表3及び4に示すように、ポリフェノール水溶液中のポリフェノールの濃度が0.05質量%でも、添加することによってフィルムの強度が高くなった。また、ポリフェノール濃度の増加に伴って、数倍~数100倍程度に強度が高くなった。
図1に示すように、ポリフェノール濃度が0.5質量%以上になると、濃度の増加に伴う強度の増加は小さくなった。この結果は、前述した表2に示される厚みの低下の傾向と類似している。
図2に示すように、ポリフェノールの浸漬による強度の向上は、短時間から発現したが、この後2日間まで測定しても、大きな強度の増加は見られなかった。
従って、強度の増加は、少なくとも数日間は、極めて安定であると考える。
よって、フィルム状組成物をポリフェノール水溶液に浸漬することによって、安定して強度が増加したフィルムを製造し得ることがわかった。
以上の結果から、ポリフェノール水溶液に浸漬して得られたフィルムでは、水のみに浸漬して得られたフィルムに比べて、比較的短時間でポリフェノールがガラクトース部分分解物の分子間内に入りこみ、これによって、分子間に存在する一部の水分子の排除や、それに伴うポリフェノールによる分子間の架橋や凝集が引き起こされ、その結果、強度が発現されると推測される。
【0100】
(試験例3)
<ガラクトース部分分解物水溶液の濃度を変えて作製したフィルム状組成物をポリフェノール水溶液に浸漬したときのフィルムの強度>
【0101】
(ガラクトース部分分解物水溶液の調製)
容量500mLのステンレスビーカーに脱イオン水298.5g、292.5g、285gをそれぞれ入れ、製造例1で得られたガラクトース部分分解物1.5g、7.5g、15gをそれぞれ加えて室温で混合後、氷温水中で撹拌し、ガラクトース部分分解物の0.5質量%、2.5質量%、5質量%水溶液をそれぞれ調製した。
【0102】
(フィルム状組成物の調製)
直径90mmのプラスチックディッシュに、上記ガラクトース部分分解物水溶液0.5質量%を40g、2.5質量%を8g、5質量%を16g、それぞれ添加し、35℃の乾燥機内に静置し、オーバーナイトで乾燥することによって、フィルム状組成物を調製した。
【0103】
(実施例のフィルムの調製)
前述した試験例1と同様に0.1質量%EGCg水溶液を調製後、フィルム状組成物の調製で得られたプラスチックディッシュ上の各フィルム状組成物に対し、0.5質量%および2.5質量%のフィルム状組成物には、0.1質量%EGCg水溶液をそれぞれ5mL添加し、一方、5質量%のフィルム状組成物には、0.1質量%EGCg水溶液を20mL添加し、各プラスチックディッシュのふたを閉め、30時間、室温で静置することによって、ポリフェノール溶液を浸漬させて、フィルムを作製した。
試験例1と同様に、得られたフィルムを、プラスチックディッシュから取り出し、市販のベルトポンチを用いて直径約24mmの円形状フィルムに切り出して、試料とした。
【0104】
得られた試料の破断応力を、試験例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。なお、表5の破断応力については、それぞれ1回の試験結果を示す。
【0105】
【表5】
【0106】
表5の実施例49および50に示すように、ガラクトース部分分解物水溶液の濃度を、1.25質量%(試験例1)から0.5質量%または2.5質量%に変えても、フィルム状組成物を作製できた。また、1.25質量%のガラクトース部分分解物水溶液から作製したフィルム状組成物を0.1質量%ポリフェノール水溶液に浸漬した場合(実施例12~20に対応)と同様の強度を示すフィルムを作製することができた。
また、実施例51に示すように、ガラクトース部分分解物水溶液の濃度を5質量%とさらに高くしても、強度に優れたフィルムを作製することができた。
図1
図2