(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】衝撃を受けた場合にボディシェルの開口部を閉塞し続ける、プラスチック製オープニングパネル
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20220210BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
B60J5/10 R
B60J5/04 R
(21)【出願番号】P 2018566434
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 FR2017051596
(87)【国際公開番号】W WO2017220903
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-05
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213049
【氏名又は名称】コンパニ プラスティック オムニウム
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】クドロン フィリップ
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-037294(JP,A)
【文献】特開2010-100226(JP,A)
【文献】特開2010-188792(JP,A)
【文献】特開2013-082235(JP,A)
【文献】特表2008-516833(JP,A)
【文献】国際公開第2010/071214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体構造外板を形成するプラスチック材料製の第1部品(20)と、前記第1部品(20)が取り付けられる内部構造部を形成するプラスチック材料製の第2部品(30)とを備える自動車サブアセンブリ(10)であって、第2部品(30)は、ヤング率が第2部品(30)のプラスチック材料のヤング率よりも低くかつ破断時の伸び率が第2部品(30)のプラスチック材料の破断時の伸び率よりも高い、熱可塑性プラスチック材料製の機械的補強部材(40)を少なくとも1つ備えることを特徴とする、自動車サブアセンブリ(10)。
【請求項2】
第1部品(20)は熱可塑性プラスチック材料製であり、第2部品(30)は熱硬化性プラスチック材料製である、請求項1に記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項3】
機械的補強部材(40)は以下の特性を有する、請求項1~2のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10):
・ ヤング率が、500MPa~3000MP
aである;
・ 破断時の伸び率が、20%
超である。
【請求項4】
機械的補強部材(40)は、ポリプロピレン(PP)製またはポリエチレン(PE)製である、請求項1~3のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項5】
機械的補強部材(40)は、サブアセンブリ(10)が衝撃を受ける場合に認識される少なくとも1つの破断ゾーン(50)に配置される、請求項1~4のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項6】
サブアセンブリ(10)が衝撃を受ける場合に認識される破断ゾーン(50)を全てカバーする単一の機械的補強部材(40)を備える、請求項1~5のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項7】
テールゲートを形成する、請求項6に記載のサブアセンブリ(10)であって、機械的補強部材(40)は、ループ(60)を形成するエレメントを備え、前記エレメントは、ロックゾーンに取り付けられて、これにより、テールゲートが閉じられる時ロックがループ(60)内に位置付けられる、サブアセンブリ(10)。
【請求項8】
破断ゾーン(50)は、第2部品(30)に対する実際の或いはシミュレーションによる高速衝撃試験において破断部分が観察される任意のゾーンからなる、請求項1~7のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項9】
テールゲートを形成する、請求項1~8のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10)であって、破断ゾーン(50)は、以下のゾーンから選択される、サブアセンブリ(10):
・ テールゲートの2つの側方底部角部;
・ テールゲート直立部をテールゲート基部につなぐゾーン;
・ 内部構造部(30)の基部に直交しかつロックゾーンを取り囲む2つのゾーン。
【請求項10】
機械的補強部材(40)は、以下の技法:ボンディング(bonding)、溶接(超音波、レーザー、ミラー等)、かしめ(staking)、オーバーモールディング、ねじ接合、リベット接合、クリッピング(clipping)、のり付け接合(gluing)の少なくとも1つを用い
て、第2部品(30)に取り付けられる、請求項1~9のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項11】
第1部品(20)は、ポリプロピレンと30重量%のタルクとを含む熱可塑性プラスチック材料製である、請求項1に記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項12】
第2部品(30)は、ポリプロピレンと40重量%のガラス長繊維とを含む熱可塑性プラスチック材料製である、請求項1に記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項13】
第2部品(30)は、補強長繊維を30重量%含むSMC等の熱硬化性プラスチック材料製である、請求項1に記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項14】
機械的補強部材(40)は、少なくとも2つのサブポーションを備える、請求項1~13のいずれか1つに記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項15】
各サブポーションは、ループ(60)を形成するエレメントを備え、前記エレメントは、ロックゾーンに取り付けられて、これにより、テールゲートが閉じられる時ロックがループ(60)内に位置付けられる、請求項14に記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項16】
機械的補強部材(40)は概ね、2つの「U」字形状を
有し、すなわち、車両の右側の「U」字形状と左側の「U」字形状とを有する、請求項
7に記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項17】
機械的補強部材(40)の各「U」字状ゾーンは、略水平「Y」字形状部分によって補完されている、請求項16に記載のサブアセンブリ(10)。
【請求項18】
機械的補強部材(40)は以下の特性を有する、請求項3に記載のサブアセンブリ(10):
・ ヤング率が、800MPa~2000MPaである。
【請求項19】
機械的補強部材(40)は以下の特性を有する、請求項3に記載のサブアセンブリ(10):
・ 破断時の伸び率が、20%~80%である。
【請求項20】
機械的補強部材(40)は以下の特性を有する、請求項3に記載のサブアセンブリ(10):
・ 破断時の伸び率が、80%超である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車産業の分野に関する。より具体的には、本発明は、オープニングパネルに影響を与える事故の際の安全要件に適合した、例えばテールゲート等の、プラスチック材料製の自動車サブアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のテールゲートは、ボディシェルの開口部を少なくとも部分的に閉塞し続けるために用いられるエレメントを形成するオープニングパネルボディを備えている。オープニングパネルボディは、開口部を閉塞する位置と、開口部へのフリーアクセスを許可する位置との間を移動可能になされている。
【0003】
特に、テールゲート等の、後部自動車オープニングパネルが知られており、これは、主に2つの部品:内部構造部であるインナーボックスと、車体構造外板であるアウタースキンとからなる。これらの部品は、一体型の或いは2つの部分からなるパネルを形成し、車両の外側から見えるか或いは見えない外部装置(ライトユニット、テールゲート又はリヤウインドウのオープニング制御部、エンブレム、洗浄・拭取システム、ロック、ストッパ(stops)、登録プレート等)の全て或いは幾つかがパネルに組み入れられている。
【0004】
最新技術のテールゲートのほとんどは、鋼鉄製である。しかしながら、熱可塑性および/または熱硬化性のプラスチック材料製のテールゲートも知られている。これらは、異なる機械的性能を提供しつつ、テールゲートの軽量化を図るために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱硬化性プラスチック材料は、熱可塑性プラスチック材料と比較すると、変形に対してより良好な耐性が提供されるという利点があるが、より高密度になるという不利な点がある。通常使用される熱可塑性プラスチック材料は、弾性限界(低応力での塑性変形の始まり)が低く、それ故、破壊強さが比較的低いため、使用中、機械的疲労をこうむる可能性がある。しかし、全ての車両用オープニングパネル同様、熱可塑性プラスチック材料製のオープニングパネルは、様々な基準を遵守しなければならない。
【0006】
仕様の一般的要件を満たすためには、オープニングパネルを車両に取り付けるために用いられるゾーン(ヒンジ、ロック、ガススプリング等)は特に、事故に際しオープニングパネルが車両から分離しないように補強されなければならない。
【0007】
他の要件を満たすためには、車両が高速衝撃(>20km/h)を受けた場合、オープニングパネルは、破断されたとしても、単一の実体のままでとどまっていなければならず、破片が無数に飛散することを防ぎ、かつ、追加的に一定の応力をかけ続けなければならない。言い換えれば、オープニングパネルは、分解してはならず、つまり、当初のアセンブリから完全に分離され或いは互いに接合されていない破片を生み出す程に、ばらばらに壊れてはならない。
【0008】
オープニングパネルを形成する部品は従って、破断することなく、大きな変形を受け入れなければならない。しかし、オープニングパネルを形成する部品は同時に、通常使用される際には、オープニングパネルの幾何的強度を保証するのに十分な剛性を有していなければならない。その結果、オープニングパネルを製造するためにプラスチック材料が使用される場合、少なくともインナーボックス(内部構造部)については、設計において、剛性を有するプラスチック材料の使用が規定されるであろう。しかしながら、このような材料は、高速衝撃を受ける場合、ほとんど伸張しない。
【0009】
伸張特性を与えるためには、オープニングパネルに、インナーボックスとアウタースキンとの他に、補完部品を加えることが知られている。補完部品は、鋼鉄製であってよく、或いはより一般的には、プラスチックのオープニングパネルに対し、ガラス、カーボンまたはアラミド繊維をベースとする織物製であってよい。この補完部品は、テールゲートの傷つきやすいゾーンに注意深く位置付けられており、衝撃を受ける際に破損するエレメントを結合させたままで保持させている。
【0010】
補完部品が鋼鉄製の場合、そのコストと重量は、間もなく、軽量化されたオープニングパネルを製造するためにプラスチック材料を用いるという関心事項と相容れなくなってくる可能性がある。
【0011】
織って作られた補強(繊維補強)品が使用される場合、破片は、結合されたままで保持されるであろう。
【0012】
衝撃を受けた際に破断したエレメントを結合されたままで保持するために、ケーブルまたは補強繊維の組みひもを、オープニングパネルのライニング上に加えて或いはオーバーモールディングさせて用いることも知られている。このタイプの補完部品(組みひも、ケーブル)は、通常、「きつく/調節して/伸張させる」ことなく、ライニング上に遊びを持たせて組み立てられる。その結果、オープニングパネルの部品が破断した場合、補完部品に施された遊びによって、オープニングパネルの部品は、単純に結合されたままで保持された状態であり、道路上に落下することなく、互いに(5~10cm)「隔てられた」状態でとどまる。これらの破片は従って、補完部品の柔軟性によって、「ほぼフリー」な状態である。
【0013】
しかし、基準の或いは自動車製造業者の他の要件を満たすために、オープニングパネルが高速衝撃(>20km/h)を受ける場合は、オープニングパネルは、破断されたとしても、ボディシェルの開口部を少なくとも部分的に閉塞し続けて、車両内部の乗客または物体が乗客コンパートメントの外部に放り出されることを回避しなければならない。
【0014】
このためには、結合された状態の破断片からなるアセンブリは、十分な剛性を保持していなければならず、言い換えると、結合された状態の破片からなるこの破断したアセンブリは、開口部を閉塞し続けるのに十分強力な物理的障害物を形成する可能性を維持していなければならない。
【0015】
しかし、織物、組みひも、またはケーブルが用いられる場合、結合された状態の破断片からなるアセンブリは、ボディシェルの開口部を閉塞するのに十分な剛性を有するアセンブリを形成していない。これでは、車両内部の乗客または物体が飛び出すのを回避することは出来ない。なぜなら、これらの結合材料は、ヤング率が非常に低いからである。
【0016】
このように、高速衝撃を受ける際に、以下の要件を同時に遵守するプラスチック材料製のオープニングパネルは現時点で存在しない:
― オープニングパネルは車両から分離しない;
― オープニングパネルの破断したエレメントは、単一の実体として結合したままで保持されている;
― オープニングパネルは、少なくとも部分的に、ボディシェルの開口部を閉塞し続ける。
【0017】
本発明は、車体構造外板を形成する第1部品と、前記車体構造外板が取り付けられる内部構造部(ライニング)を形成する第2部品とを備える自動車サブアセンブリを提供することによって、上記の不利な点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明において、内部構造部を形成する第2部品は、機械的補強部材を少なくとも1つ備える。機械的補強部材は、ヤング率が内部構造部のプラスチック材料のヤング率よりも低く、かつ、破断時の伸び率が内部構造部のプラスチック材料の破断時の伸び率よりも高い、熱可塑性プラスチック材料製である。
【0019】
このような自動車サブアセンブリは、満足のゆく質量バランスと適切な経済的バランスを保ちながら、衝撃を受けた後の内部構造部の一体性を保持する。
【0020】
更に、サブアセンブリは、以下の特徴の1つ以上を、単独で或いは組み合わせて備えていてもよい:
― 第1部品は熱可塑性プラスチック材料製であり、第2部品は熱硬化性プラスチック材料製である;
― 機械的補強部材は、以下の特性を有する:
― ヤング率が、500MPa~3000MPa、好ましくは800MPa~2000MPaである;
― 破断時の伸び率が、20%超、好ましくは20%~80%、より好ましくは80%超である;
― 機械的補強部材は、ポリプロピレン(PP)製またはポリエチレン(PE)製である;
― 機械的補強部材は、サブアセンブリが衝撃を受ける場合に認識される少なくとも1つの破断ゾーンに配置される;
― サブアセンブリは、サブアセンブリが衝撃を受ける場合に認識される破断ゾーンを全てカバーする単一の機械的補強部材を備える;
― サブアセンブリはテールゲートを形成し、機械的補強部材は、ループを形成するエレメントを備え、前記エレメントは、テールゲートが閉じられる時ロックがループ内に位置付けられるように、ロックゾーンに取り付けられている;
― 破断ゾーンは、第2部品に対する実際の或いはシミュレーションによる高速衝撃試験において破断部分が観察される任意のゾーンからなる;
― サブアセンブリはテールゲートを形成し、破断ゾーンは、以下のゾーンから選択される:
― テールゲートの2つの側方底部角部;
― テールゲート直立部をテールゲート基部につなぐゾーン;
― 内部構造部の基部に直交しかつロックゾーンを取り囲む2つのゾーン;
― 機械的補強部材は、以下の技法:ボンディング、溶接(超音波、レーザー、ミラー等)、かしめ(staking)、オーバーモールディング、ねじ接合、リベット接合、クリッピング(clipping)、のり付け接合(gluing)の少なくとも1つを用いて、第2部品に取り付けられる;
― 第1部品は、ポリプロピレンと30重量%のタルクとを含む熱可塑性プラスチック材料製である;
― 第2部品は、ポリプロピレンと40重量%のガラス長繊維とを含む熱可塑性プラスチック材料製である;
― 第2部品は、補強長繊維を30重量%含むSMC等の熱硬化性プラスチック材料製である;
― 機械的補強部材は、少なくとも2つのサブポーションを備える;
― 各サブポーションは、ループを形成するエレメントを備え、前記エレメントは、ロックゾーンに取り付けられて、これにより、テールゲートが閉じられる時ロックがループ内に位置付けられる;
― 機械的補強部材は概ね、2つの「U」字形状を有する;
― 機械的補強部材の各「U」字状ゾーンは、略水平「Y」字形状部分によって補完されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、添付の図面を参照すると、より良く理解することが出来るであろう。但し、これらの図面は、例示の為にのみ提供されるものであり、如何なる意味合いにおいても本発明を制限するものではない。
【0022】
図1は、自動車のテールゲートを示す。テールゲートは、車体構造外板を形成する第1部品と、車体構造外板が取り付けられる内部構造部を形成する第2部品とを備える。
【0023】
図2は、第2部品を示す。第2部品は、潜在的な破断ゾーンにおける機械的補強部材を備える内部構造部を形成する。
【0024】
図3は、高速衝撃を受けた後の
図2の細部を示す。
図3は、ボディシェルの開口部を閉塞するのに十分な剛性を保ちながら、第2部品の2つの破断片を、破断ラインのいずれかの側で保持する機械的補強部材の挙動を局所的に示す。
【0025】
図4は、非一体型の機械的補強部材を示す。これは、2つのサブポーション、すなわち、車両の右側に位置する第1のサブポーションと、車両の左側に位置する第2のサブポーションとを備える。
【0026】
図5は、機械的補強部材を示す。各「U」字状ゾーンは、略水平「Y」字形状部分によって補完されている。
【0027】
ここで、
図1を参照する。
図1は、自動車サブアセンブリ(10)を示す。自動車サブアセンブリ(10)は、例えばウインドウ(22)およびスポイラー(24)を支える第1の車体構造外板(20)と、前記車体構造外板(20)が取り付けられる内部構造部(30)(ライニング)を形成する第2部品とを備える。
【0028】
車体構造外板(20)および内部構造部(30)は、プラスチック材料製である。好ましい実施形態によると、車体構造外板(20)は熱可塑性プラスチック材料製であり、内部構造部(30)は熱硬化性プラスチック材料製である。
【0029】
内部構造部(30)を形成する第2部品は、機械的補強部材(40)を少なくとも1つ備える。機械的補強部材(40)は、ヤング率が内部構造部(30)のプラスチック材料のヤング率よりも低く、かつ、破断時の伸び率が内部構造部(30)のプラスチック材料の破断時の伸び率よりも高い熱可塑性プラスチック材料製である。
【0030】
好ましくは、機械的補強部材(40)は密度が低く、内部構造部(30)のプラスチック材料の密度よりも低い。このように、機械的補強部材(40)の密度は、好ましくは1.0kg/L未満である。
【0031】
図3に示されているように、このような機械的補強部材(40)は、高速衝撃(>20km/h)を受けた場合は、破断することなく大幅に変形し、内部構造部(30)の破断したエレメントを結合させて保持するようになされつつ、通常の使用時は、内部構造部(30)として要求される剛性を保持している。
【0032】
最後に、このような機械的補強部材(40)は、高速衝撃を受けた場合、後部開口部を閉鎖し、かつ、物体および/または乗客が車両の外側に放り出されることを防ぐ壁として作用する。
【0033】
高速衝撃時には、実際、内部構造部(30)は、様々な場所で破断するであろう。機械的補強部材(40)は、その後、その高い伸び率によって破断することなく、ライニングの破断ゾーンのいずれかの側に曲がる。このようにして、破断した部品間に連続性のあるつながりを保持して、特に、内部構造部(30)の十分な剛性を保持する。これにより、破断した部品が結合したままで維持され、乗客が放り出されることが回避される。十分な剛性とは、所与のエリアの所与のゾーンに対する基準値に相当し、これは所与の力の影響下での閾値未満の変位を示す。これらの値は、通常、自動車製造業者によって提供される。
【0034】
ここで、実施形態について説明する。サブアセンブリ(10)は、自動車オープニングパネル(10)であり、より正確には、
図1に示されたように、テールゲート型オープニングパネルである。
【0035】
機械的補強部材(40)の種類
以下の特性を有する熱可塑性プラスチック材料製の機械的補強部材が使用され得る:
― ヤング率が、500MPa~3000MPa、好ましくは800MPa~2000MPaである;
― 破断時の伸び率が、非常に高く、言い換えれば20%超、好ましくは20%~80%、より好ましくは80%超である。
【0036】
「破断時の伸び率」とは、標準試験片の両端部に長手方向の力をかける引張試験機を使用して引張力を印加する際における破断前の標準試験片の長さの、引張力が印加される前の標準試験片の長さに対する割合を意味する。破断時の伸び率は、百分率で表される。
【0037】
例えば、少なくとも1つの以下の材料が、単独で或いは組み合わせて使用され得る:
- ポリプロピレン材料(PP);
- ポリエチレン材料(PE)。
【0038】
機械的補強部材(40)の寸法
機械的補強部材(40)は任意の形態をとり得る。しかし、その形状および厚みを含む寸法は、その柔軟性および/または剛性および/または重量を増大または向上させるために定義され得る。
【0039】
一実施形態によると(
図2参照)、自動車のテールゲートに使用される機械的補強部材(40)は、以下の形態をとる:
― 30mm(U字形状部分の基部)×15mm(U字形状部分のサイド部)のU字状断面;
― 3mmの厚み。
【0040】
しかしながら、言うまでもなく、当業者であれば、実際の或いはシミュレーションでの高速衝撃試験において認められた基準に従って、重量、厚み、寸法、および断面を(例えばI字形状に)適合させることが可能であろう。
【0041】
機械的補強部材(40)の位置
オープニングパネル(10)は、内部構造部(30)に接続された機械的補強部材(40)をいくつか備えてもよい。各機械的補強部材(40)は、オープニングパネル(10)が衝撃を受ける場合に認識される少なくとも1つの破断ゾーン(50)に配置される。そのようなゾーンは、実際の或いはシミュレーションによる高速衝撃試験において、当業者によって特定されてもよい。
【0042】
テールゲートは、衝撃を受けている間においても、設計された3か所(ロックゾーンと2つのヒンジゾーン)によってボディに取り付けられているため、破断ゾーン(50A)は、とりわけ、機械的強度が最も低いゾーンに相当する、テールゲート2つの側方底部角部である(
図2参照)。
【0043】
これらの破断ゾーン(50A)は、実際、3つのアンカーポイントから遠く離れており、それ故に、テールゲートが直立部の底部(ウインドウの底部角部)で破断した場合、「フラップ(flap)」する可能性がある。
【0044】
図2に示されているように、破断ゾーン(50)はまた、以下の場合であってもよい:
― 側方直立部(70)をテールゲート基部につなぐゾーン(ウインドウの底部角部に対向する構造部分の一部)(50B);
― 内部構造部の基部に直交しかつロックゾーンを取り囲む2つのゾーン(50C);および
― 一般的に、内部構造部(30)に対する実際の或いはシミュレーションによる高速衝撃試験において破断部分が観察される任意のゾーン。
【0045】
特定の実施形態によると、
図2に示されているように、単一の一体化された機械的補強部材(40)が用いられて、種々のゾーン(50)がカバーされかつ連続的に接合されている。補強部材は、従って、テープ形状であってもよい。
【0046】
より一般的には、補強部材の断面は、それに続く内部構造部(30)の機械的設計、三次元的外形、利用可能な空間、および重量と取付方法の制約に応じて変わり得る。従って、補強部材は、U字、I字、H字、L字、およびW字等の形状の断面を有していてもよい。
【0047】
本実施形態の特定の例によると、全てのゾーン(50)をカバーする連続的な機械的補強部材(40)は、ループ(60)を形成するエレメントを備える。このエレメント(60)は、ロックゾーンに取り付けられ、これにより、テールゲートが閉じられる時、ロック部分は、ループ(60)内に位置付けられる。このように、高速衝撃を受けている間、ロックゾーンは、破断しないように設計されて、(例えば、鋼鉄製のインサートによって)補強されるため、機械的補強部材(40)全体がループに取り付けられたままとなる。こうして、ループ(60)は、ロックとともに、一体型の機械的補強部材(40)に対するアンカーポイントを形成する。
【0048】
別の実施形態(
図4)によると、前記機械的補強部材(40)は、一体型ではなく、少なくとも2つのサブポーション(42、44)を備える。これらのサブポーションは、2つの別個の実体であり、これらは、場合により、テールゲートへの組付の際、接触するように配置されてもよい。従って演繹的には、それらのサブポーションは、単一の成形操作から得られるものではなく、或いは、同一の金型キャビティから得られるものではない。従って、通常、サブポーションはそれぞれ、他方のサブポーションとは独立して製造される。例えば、機械的補強部材(40)は、車両の右側に位置する第1のサブポーション(44)と、車両の左側に位置する第2のサブポーション(42)とを備える。
【0049】
この構成において、かつ、第1実施形態によると、各サブポーション(42、44)は、ループ(60)を形成するエレメントをそれぞれ備える。各エレメント(60)は、ロックゾーンに取り付けられ、これにより、テールゲートが閉じられる時、ロック部分は、両ループ(60)内に位置付けられる。こうして、各ループ(60)は、ロックとともに、機械的補強部材(40)のサブポーションに対するアンカーポイントを形成する。
【0050】
この構成において、かつ、第2実施形態によると、各サブポーション(42、44)は、ループ(60)を形成するエレメントを備えるが、各エレメント(60)は、各サブポーション毎に別個であるか或いは共通しているアンカーポイントに取り付けられる。好ましくは、この或いはこれらのアンカーポイントは、車両のY0平面の近傍に位置する(Y0平面とは、車両の右側及び左側を隔てる車両の長手方向平面である)。共通のアンカーポイントは、ロックを取り付けるねじであるか或いはロック補強タブであってもよい。2つのサブポーション(42、44)は、必ずしも対称でなくてもよい。ロックをテールゲートに取り付ける別個のねじによって、別個のアンカーポイントを作り出してもよい。
【0051】
一実施形態によると、機械的補強部材(40)は概ね、2つの「U」字形状を有し、すなわち、例えば
図2に示されているように、車両の右側の「U」字形状と左側の「U」字形状とを有する。機械的補強部材(40)が幾つかのサブポーションを備える場合、各サブポーションは、略「U」字形状を有する。幾つかのサブポーションを備えるこの構成により、より小さい金型を用いて部品を製造することが可能となり、かつ、保管と組立時における取扱操作を単純化することが可能となる。
【0052】
別の実施形態によると、
図5に示されているように、機械的補強部材(40)の各「U」字状ゾーンは、略水平「Y」字形状によって補完されている。このような「Y」字形状の補強による補完は、機械的観点からみると、機能的な補完である。それは、各「U」字形状部分の内部に位置し、「Y」字の分岐部分は「U」字の分岐部分とつながっており、好ましくは、「U」字の分岐部分の両端部とつながっている。これらの対角線上の繋がりは、「Y」字の分岐部分によってもたらされるが、三角形分割効果により「U」字の分岐部分が結合され、従って、オープニングパネルが破断する際分離することが防がれる。
【0053】
機械的補強部材(40)が幾つかのサブポーション(42、44)を備える場合、各サブポーションは、「U」字形状と結合された略「Y」字形状を有する(
図4参照)。
【0054】
「U」字形状の分岐部分と「Y」字形状の分岐部分とは、モールディング(moulding)によって好ましくは同時に得られる:「U」字形状の分岐部分と「Y」字形状の分岐部分とによって単一の部品を形成する。しかしながら、別の実施形態によると、「Y」字状の分岐部分もまた、「U」字状の分岐部分から別個に得られてもよい。この場合、「Y」字を形成する分岐部分は、ボンディング、リベット接合、溶接等の任意の取付手段によって、「U」字部分に接続される。
【0055】
機械的補強部材(40)の取付
各機械的補強部材(40)は、以下の技法:ボンディング、溶接(超音波、振動、レーザー、ミラー等)、かしめ(staking)、オーバーモールディング、ねじ接合、リベット接合、クリッピング(clipping)、のり付け接合(gluing)の少なくとも1つを用いて、内部構造部(30)に取り付けられる。
【0056】
実施例
特定の実施形態によると、内部構造部(30)は、PPと40重量%のガラス長繊維とを含む熱可塑性プラスチック材料製である。長繊維は、一般的に、(実施前の)未使用時の長さが10mm超である。そのような材料は、ヤング率が5300MPa、破断時の伸び率が3.5%、密度が1.22kg/Lに実質上等しい。
【0057】
補強繊維はまた、ガラス、カーボン、アラミド、ケブラー(登録商標)繊維等であってもよい。
【0058】
別の特定の実施形態によると、内部構造部(30)は、補強長繊維を30%(重量による)含むSMC等の熱硬化性プラスチック材料製である。そのような材料は、ヤング率が11000MPa、破断時の伸び率が1.5%、密度が1.9kg/Lに実質上等しい。
【0059】
特定の実施形態によると、車体構造外板(20)は、PPと30重量%のタルクとを含む熱可塑性プラスチック材料製である。そのような材料は、ヤング率が3000MPa、破断時の伸び率が17%、密度が1.12kg/Lに実質上等しい。
【0060】
特定の実施形態によると、機械的補強部材(40)は、ポリプロピレンをベースとする熱可塑性プラスチック材料製であり、フィラーを含まない(ガラス繊維またはタルクを含まない)。例えば、SABIC(登録商標)によって製造されるPPコンパウンド108CSF10は、ヤング率が1300MPa、破断時の伸び率が500%、密度が0.96kg/Lに実質上等しい。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、当然ながら、当業者であれば、他の実施形態も適用可能であると判断するであろう。特に、機械的補強部材(40)は、鋼鉄製であってもよい。
【0062】
これまで、テールゲート型オープニングパネルを形成するサブアセンブリ(10)について説明してきた。しかしながら、本発明は、サブアセンブリが高速衝撃を受ける際に同様のタイプの応力を受ける別のタイプのオープニングパネルである場合に対しても、或いは全ての構造部品または準構造部品である場合に対しても、適用することができる。