(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】防蟻電線・ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/18 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
H01B7/18 W
(21)【出願番号】P 2019115597
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2020-02-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前山 真利子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 道朝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】堀 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 真之
(72)【発明者】
【氏名】加納 一啓
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-056245(JP,A)
【文献】特開平01-158060(JP,A)
【文献】特開平11-240992(JP,A)
【文献】特開2019-059885(JP,A)
【文献】特開平05-331338(JP,A)
【文献】特開2012-252869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、
0.01質量部以上
0.17質量部以下のクロチアニジンと、
20質量部以上
40質量部以下の可塑剤と、
を含有する防蟻コンパウンドを用いて形成され、
前記可塑剤は、少なくとも10質量部以上の脂肪族二塩基酸エステルを含み、
前記脂肪族二塩基酸エステルは、アジピン酸エステルとアゼライン酸エステルとセバシン酸エステルの少なくとも1つが用いられる、
防蟻電線・ケーブル。
【請求項2】
前記可塑剤は、前記脂肪族二塩基酸エステルと、前記脂肪族二塩基酸エステル以外の可塑剤とを含む、
請求項1記載の防蟻電線・ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電線などのケーブルにおいては、シロアリなどの蟻による食害を防止するために、たとえば、防蟻剤が添加された防蟻コンパウンドで形成された防蟻シースで周囲を被覆することが提案されている。防蟻剤としては、たとえば、クロチアニジンなどのネオニコチノイド系化合物が用いられている。
【0003】
クロチアニジンは、クロチアニジンの添加量を多くしすぎた場合、防蟻効果が飽和し、高価な材料であるので不経済になる。また、クロチアニジンの添加割合が増加するに伴って、耐寒性が低下する。これに対して、ケーブルの寿命を考慮して防蟻効果を長期的に持続させるように、クロチアニジンの初期添加量を設定する必要がある。このため、耐寒性と防蟻効果とを両立させることは容易でない。
【0004】
防蟻剤が添加された防蟻シースを使用せずに、ナイロン樹脂などのように硬く強靭な樹脂の被覆をケーブルの最外層に設けることが提案されている。しかし、この場合には、ケーブルの可撓性が低下し、許容曲げ半径が大きくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、従来の防蟻コンパウンドを用いた防蟻シースにおいては、耐寒性と防蟻効果とを両立させることが容易でない。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、耐寒性と防蟻効果とを容易に両立可能な防蟻電線・ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防蟻電線・ケーブルは、100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、0.01質量部以上0.17質量部以下のクロチアニジンと、20質量部以上40質量部以下の可塑剤と、を含有する防蟻コンパウンドを用いて形成され、前記可塑剤は、少なくとも10質量部以上の脂肪族二塩基酸エステルを含み、前記脂肪族二塩基酸エステルは、アジピン酸エステルとアゼライン酸エステルとセバシン酸エステルの少なくとも1つが用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐寒性と防蟻効果とを容易に両立可能な防蟻電線・ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る防蟻電線・ケーブル1の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の変形例に係る防蟻電線・ケーブル1の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の変形例に係る防蟻電線・ケーブル1の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下より、発明の実施形態について図面を用いて例示する。なお、発明は、図面の内容に限定されない。また、図面は、概略を示すものであって、各部の寸法比などは、現実のものとは必ずしも一致しない。
【0012】
[A]防蟻電線・ケーブル
図1は、実施形態に係る防蟻電線・ケーブル1の構成を模式的に示す断面図である。
図1では、防蟻電線・ケーブル1の延在方向zが直交する断面(xy面)を示している。
【0013】
実施形態の防蟻電線・ケーブル1は、
図1に示すように、ケーブルコア10とシース20と防蟻シース30とを有する。防蟻電線・ケーブル1を構成する各部について順次説明する。
【0014】
[A-1]ケーブルコア10
ケーブルコア10は、複数の絶縁線心11を含む。ここでは、3本の絶縁線心11を含むようにケーブルコア10が構成されている。
【0015】
ケーブルコア10において、絶縁線心11は、導体111の外周面が絶縁層112で被覆されている。絶縁線心11のうち、導体111は、銅、アルミニウムなどの導電材料で形成されており、絶縁層112は、ポリエチレン、架橋ポリエチレンなどの絶縁材料で形成されている。そして、ケーブルコア10では、複数の絶縁線心11が介在12と共に撚り合わされて構成されている。介在12は、紙、ジュートなどの絶縁材料で形成されている。
【0016】
[A-2]シース20
シース20は、ケーブルコア10の外周面を被覆するように設けられている。シース20は、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、塩化ビニル樹脂などの絶縁樹脂について押出成形を実行することによって形成されている。
【0017】
[A-3]防蟻シース30
防蟻シース30は、シース20を介してケーブルコア10の外周面を被覆するように設けられている。防蟻シース30は、厚みが、たとえば、0.2mm以上である。防蟻シース30は、防蟻剤を含む防蟻コンパウンドについて押出成形を実行することによって形成されている。
【0018】
[B]防蟻コンパウンド
防蟻シース30の形成で用いられる防蟻コンパウンドについて説明する。
【0019】
本実施形態において、防蟻コンパウンドは、塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)と防蟻剤と可塑剤とを含有している混合物(防蟻樹脂組成物)である。具体的には、本実施形態の防蟻コンパウンドは、100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、0.01質量部以上0.50質量部以下のクロチアニジンを防蟻剤として含有すると共に、脂肪族二塩基酸エステルを含む可塑剤を含有する。
【0020】
[B-1]防蟻剤
防蟻コンパウンドにおいて防蟻剤として添加されるクロチアニジンは、下記の化学式で示される。
【0021】
【0022】
クロチアニジンは、シロアリに対する防蟻効果(殺蟻効果)に優れる防蟻剤であって、蒸気圧が非常に低く環境へ容易に揮散しないので、環境汚染性が低い。また、クロチアニジンは、毒劇物取締法の適用も受けない。このため、クロチアニジンは、安全性が非常に高い。さらに、クロチアニジンは、防蟻コンパウンドの押出加工性を損なわず、ケーブルにおいて一般に要求される電気特性などの特性を低下させることもない。
【0023】
上述したように、防蟻コンパウンドでは、100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、0.01質量部以上0.50質量部以下のクロチアニジンが添加される。クロチアニジンの添加割合が上記範囲の下限値未満である場合には、防蟻シース30の防蟻効果に関する耐久性が不十分になる場合がある。クロチアニジンの添加割合が上記範囲の上限値を超える場合には、防蟻効果が上記範囲とほぼ同等であるにも関わらずに、クロチアニジンによる材料コストが上昇すると共に、耐寒性の低下が生ずる場合がある。
【0024】
防蟻コンパウンドにおいて、クロチアニジンは、たとえば、塩化ビニル樹脂に直接練り込まれている。この他に、クロチアニジンが徐々に外部へ放出する徐放性を有するように、クロチアニジンをマイクロカプセルの内部に包含した状態で塩化ビニル樹脂に混入されていてもよい。
【0025】
[B-2]可塑剤
防蟻コンパウンドにおいて、可塑剤は、少なくとも脂肪族二塩基酸エステルが用いられる。
【0026】
脂肪族二塩基酸エステルとしては、下記に示すように、アジピン酸エステルとアゼライン酸エステルとセバシン酸エステルの少なくとも1つを用いることが好適である。
【0027】
(アジピン酸エステル)
・アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOA)
・アジピン酸ジイソノニル(略号:DINA)
・アジピン酸ジイソデシル(略号:DIDA)
【0028】
(アゼライン酸エステル)
・アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)
【0029】
(セバシン酸エステル)
・セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOS)
【0030】
また、上記の脂肪族二塩基酸エステル以外の可塑剤を用いてもよい。たとえば、下記に示すように、一般的に用いられている可塑剤を、脂肪族二塩基酸エステルと併用してもよい。
・フタル酸ジイソノニル(略号:DINP)
・トリオクチルトリメリテート(略号:TOTM)
【0031】
防蟻コンパウンドにおいて、可塑剤を添加する添加割合は、防蟻シース30において必要な特性に応じて任意に設定可能であるが、たとえば、100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、20質量部以上60質量部以下の可塑剤を添加することが好ましい。これにより、防蟻シース30について強度と柔軟性とを両立可能である。
【0032】
また、脂肪族二塩基酸エステルについては、100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、2質量部以上を可塑剤として添加することが好ましい。詳細については後述するが、これにより、防蟻シース30の耐寒性について十分に向上可能である。
【0033】
[B-3]その他の添加剤
防蟻コンパウンドにおいては、必要な特性に応じて、防蟻剤および可塑剤以外の添加剤を塩化ビニル樹脂に添加してもよい。たとえば、防蟻シース30に難燃性を付与する場合には、難燃剤を防蟻コンパウンドに添加してよい。当然ながら、シース20が難燃剤を含有していてもよい。また、シース20が難燃剤を含有し、防蟻シース30が難燃剤を含有せずに、防蟻剤および可塑剤を含有するように構成してもよい。
【0034】
その他、添加剤として、充填剤や熱安定剤を、適宜、添加してもよい。
【0035】
[C]製造方法
本実施形態の防蟻電線・ケーブル1の製造方法について説明する。
【0036】
上記の防蟻電線・ケーブル1を製造する際には、たとえば、押出機を用いて、ケーブルコア10の外周面にシース20と防蟻シース30とを同時に形成する。この他に、ケーブルコア10の外周面にシース20を形成した後に、シース20の外周面に防蟻シース30を形成してもよい。
【0037】
[D]まとめ
以上のように、実施形態に係る防蟻コンパウンドで作製された防蟻シース30は、防蟻剤であるクロチアニジンの添加割合が上記した特定範囲であるので、環境汚染性が低く、押出加工性が高く、好適な電気特性を備える。また、詳細については後述の実施例等で説明するが、実施形態に係る防蟻コンパウンドで作製された防蟻シース30は、耐寒性と防蟻効果とを両立可能である。
【0038】
[E]変形例
上記の実施形態では、ケーブルコア10とシース20と防蟻シース30とを有する防蟻電線・ケーブル1について説明したが、これに限らない。
【0039】
図2および
図3は、実施形態の変形例に係る防蟻電線・ケーブル1の構成を模式的に示す断面図である。
図2および
図3では、
図1と同様に、防蟻電線・ケーブル1の延在方向zが直交する断面(xy面)を示している。
【0040】
図2に示すように、防蟻電線・ケーブル1は、シース20(
図1参照)を備えておらず、ケーブルコア10の外周面を防蟻シース30が直接被覆するように構成してもよい。この場合、防蟻シース30の厚みを、上記実施形態の場合(
図1参照)よりも厚くしてもよい。
【0041】
この他に、
図3に示すように、防蟻電線・ケーブル1は、絶縁線心11が複数でなく、単数であってもよい。この場合には、たとえば、絶縁線心11の外周面をシース20と防蟻シース30とが順次積層するように構成する。図示を省略しているが、防蟻電線・ケーブル1は、絶縁線心11の外周面を防蟻シース30が直接被覆する構成(
図3においてシース20を備えない構成)としてもよい。また、防蟻電線・ケーブル1は、導体111の外周面に防蟻コンパウンドを用いて形成される絶縁層からなる構成(
図3においてシース20、防蟻シース30を備えず、かつ、絶縁層112の材料が防蟻シース30の材料で形成される構成)としてもよい。
【実施例】
【0042】
以下より、実施例および比較例に関して、表1および表2を用いて説明する。なお、理解を容易にするため、実施例および比較例の説明では、上記の実施形態と同様に、各部の符号を適宜用いている。
【0043】
【0044】
【0045】
[1]試料の作製
[1-1]実施例A-1から実施例A-4
実施例A-1においては、表1に示すように、塩化ビニル樹脂に、可塑剤としてアゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)とフタル酸ジイソノニル(略号:DINP)とを添加し、防蟻剤としてクロチアニジンを添加し、充填剤として炭酸カルシウムを添加し、熱安定剤として非鉛安定剤を添加することによって、防蟻コンパウンドを作製した。
【0046】
具体的には、100質量部の塩化ビニル樹脂(重合度:1700)と、10質量部のアゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)と、30質量部のフタル酸ジイソノニル(略号:DINP)と、0.01質量部のクロチアニジンと、30質量部の炭酸カルシウム(平均粒径:1.8μm,比表面積:12000cm2/g)と、5質量部の非鉛安定剤(ステアリン酸亜鉛とハイドロタルサイトとの混合物)とを混合し、160℃のオープンロールを用いて均一に混練した後、180℃でプレス成形し、防蟻コンパウンドのシート試料を作製した。
【0047】
実施例A-2、参考例A-3、参考例A-4のそれぞれにおいては、表1に示すように、クロチアニジンの添加割合が実施例A-1の場合と異なる点を除き、実施例A-1の場合と同様に、防蟻コンパウンドを作製した後に、試料を形成した。
【0048】
[1-2]参考例B-1,実施例B-2
参考例B-1、実施例B-2のそれぞれにおいては、表1に示すように、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)およびフタル酸ジイソノニル(略号:DINP)との添加割合が実施例A-2の場合と異なる点を除き、実施例A-2の場合と同様に、防蟻コンパウンドを作製した後に、試料を形成した。
【0049】
[1-3]実施例C-1から実施例C-4
実施例C-1から実施例C-4のそれぞれにおいては、表2に示すように、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)以外の脂肪族二塩基酸エステルを用いた点を除き、実施例A-1の場合と同様に、防蟻コンパウンドを作製した後に、シート状の試料を形成した。
【0050】
具体的には、実施例C-1では、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOA)を用いた。実施例C-2では、アジピン酸ジイソノニル(略号:DINA)を用いた。実施例C-3では、アジピン酸ジイソデシル(略号:DIDA)を用いた。実施例C-4では、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOS)を用いた。
【0051】
[1-4]参考例D
参考例Dにおいては、表2に示すように、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)およびフタル酸ジイソノニル(略号:DINP)との添加割合が参考例A-4の場合と異なる点を除き、参考例A-4の場合と同様に、防蟻コンパウンドを作製した後に、試料を形成した。
【0052】
[1-5]比較例X-1,比較例X-2
比較例X-1においては、表2に示すように、クロチアニジンの添加割合が実施例A-1の場合と異なる点を除き、実施例A-1の場合と同様に、防蟻コンパウンドを作製した後に、試料を形成した。
【0053】
比較例X-2においては、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)およびフタル酸ジイソノニル(略号:DINP)との添加割合が実施例A-4の場合と異なる点を除き、実施例A-4の場合と同様に、防蟻コンパウンドを作製した後に、シート状の試料を形成した。比較例X-2では、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)が添加されていない。
【0054】
[2]試験方法
上記のように作製した各例の試料に関して、表1および表2に示すように、各種の試験を行った。
【0055】
[2-1]防蟻効果
防蟻効果を確認する試験を行う際には、まず、各例において作成した防蟻シート(50×50mm、厚さ1mm)の上面に塩化ビニル製のパイプ(直径25mm、高さ10mm)を設置した。ここでは、パイプの管軸がシートの上面に対して直交するように、パイプの設置を行った。その後、シートの上面に設置されたパイプの内部に、50頭のシロアリを入れた。そして、シロアリの挙動を経時的に観察し、シロアリのノックダウン率を求めた。なお、シロアリのノックダウン率とは、試験に使用したシロアリのうち死亡したシロアリの割合である。
【0056】
表1および表2においては、下記の判定基準に基づいて、防蟻効果の確認試験を行った結果を示した。
・○;シロアリのノックダウン率が24時間以内に80%を超えた場合
・×;シロアリのノックダウン率が24時間以内に80%以下の場合
【0057】
[2-2]耐寒性
耐寒性を確認する試験については、「JIS C 3005(2014) 4.22項 耐寒」に記載された内容に基づいて実行した。試験は、温度を1℃刻みで変えた条件で実行した。
【0058】
表1および表2においては、各例の試料において破壊が発生しない最低温度を示した。
【0059】
[3]試験結果
[3-1]実施例A-1、実施例A-2、参考例A-3、参考例A-4の試験結果について
実施例A-1、実施例A-2、参考例A-3、参考例A-4のそれぞれの防蟻コンパウンドは、100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、0.01質量部以上0.50質量部以下のクロチアニジンを防蟻剤として含有すると共に、脂肪族二塩基酸エステルを含む可塑剤を含有している。このため、実施例A-1、実施例A-2、参考例A-3、参考例A-4では、耐寒性と防蟻効果とを両立可能である。
【0060】
具体的には、実施例A-1、実施例A-2、参考例A-3、参考例A-4は、比較例X-1の場合よりも、優れた防蟻効果を備えている。そして、実施例A-1から実施例A-4では、-15℃以上の温度では破壊が発生しないので、比較例X-2の場合よりも優れた耐寒性を備えている。
【0061】
[3-2]参考例B-1、実施例B-2の試験結果について
参考例B-1と実施例B-2とのそれぞれの防蟻コンパウンドにおいては、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)およびフタル酸ジイソノニル(略号:DINP)との添加割合が、実施例A-2の場合と異なっている。
【0062】
参考例B-1では、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)の含有割合は、2質量部であり、実施例A-2の場合よりも少ない。しかし、表1に示すように、参考例B-1では、参考例B-1においても、実施例A-2の場合と同様に、優れた防蟻効果が得られている。これと共に、参考例B-1では、-15℃以上の温度で破壊が発生しないので、優れた耐寒性を備えている。
【0063】
実施例B-2では、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)の含有割合は、20質量部であり、実施例A-2の場合よりも多い。しかし、表1に示すように、実施例B-2では、実施例A-2の場合と同様に、優れた防蟻効果が得られている。これと共に、実施例B-2では、-15℃以上の温度で破壊が発生しないので、優れた耐寒性を備えている。
【0064】
[3-3]実施例C-1から実施例C-4の試験結果について
実施例C-1から実施例C-4の防蟻コンパウンドのそれぞれにおいては、表2に示すように、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)以外の脂肪族二塩基酸エステルを含む。実施例C-1から実施例C-4の結果から判るように、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)以外の脂肪族二塩基酸エステルを用いた場合においても、実施例A-2の場合と同様に、耐寒性と防蟻効果とを両立可能である。
【0065】
[3-4]参考例Dの試験結果について
参考例Dの防蟻コンパウンドにおいては、表2に示すように、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)(略号:DOZ)の含有割合が、1質量部であって、参考例A-4の場合よりも少ない。しかし、表2に示すように、参考例Dでは、参考例A-4の場合と同様に、優れた防蟻効果が得られている。参考例Dでは、耐寒性の試験において、参考例A-4の場合よりも高い温度で破壊が生ずるが、-5℃以上の温度では破壊が発生しないので、優れた耐寒性を備えている。
【符号の説明】
【0066】
1…防蟻電線・ケーブル、10…ケーブルコア、11…絶縁線心、12…介在、20…シース、30…防蟻シース、111…導体、112…絶縁層