(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】持続的薬物送達インプラントによる眼の状態の治療の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20220210BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220210BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220210BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220210BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A61K31/573
A61P27/02
A61K47/34
A61L27/18
A61L27/54
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019225503
(22)【出願日】2019-12-13
(62)【分割の表示】P 2016530991の分割
【原出願日】2014-11-14
【審査請求日】2020-01-10
(32)【優先日】2013-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】シーア ジェーン-ギュオ
(72)【発明者】
【氏名】バガット ラーフル
(72)【発明者】
【氏名】ブランダ ウェンディ エム
(72)【発明者】
【氏名】ニヴァッジョリ ティエリ
(72)【発明者】
【氏名】ペン リン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー デイヴィッド エイ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0244469(US,A1)
【文献】特表2007-535535(JP,A)
【文献】特表2007-535540(JP,A)
【文献】特表2010-540447(JP,A)
【文献】特表2008-509727(JP,A)
【文献】KUPPERMANN BARUCH D; BLUMENKRANZ MARK S; HALLER JULIA A ET AL,Randomized controlled study of an intravitreous dexamethasone drug delivery system in patients with persistent macular edema,ARCHIVES OF OPHTHALMOLOGY,米国,AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION,2007年03月01日,VOL:125 NR:3,PAGE(S):309 - 317
【文献】HALLER J A; KUPPERMANN B D; BLUMENKRANZ M S ET AL,Randomized controlled trial of an intravitreous dexamethasone drug delivery system in patients with diabetic macular edema,ARCHIVES OF OPHTHALMOLOGY,米国,AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION,2010年03月01日,VOL:128 NR:3,PAGE(S):289 - 296
【文献】JULIA A HALLER; FRANCESCO BANDELLO; RUBENS BELFORT ET AL,Dexamethasone intravitreal implant in patients with macular edema related to branch or central retinal vein occlusion,OPHTHALMOLOGY,米国,J. B. LIPPINCOTT CO.,2011年05月10日,VOL:118 NR:12,PAGE(S):2453 - 2460,http://dx.doi.org/10.1016/j.ophtha.2011.05.014
【文献】DAVID S BOYER; YOON YOUNG HEE; BELFORT RUBENS ET AL,Three-Year, Randomized, Sham-Controlled Trial of Dexamethasone Intravitreal Implant in Patients with Diabetic Macular Edema,OPHTHALMOLOGY,,ELSEVIER,2014年10月01日,VOL:121 NR:10,PAGE(S):1904 - 1914,http://dx.doi.org/10.1016/j.ophtha.2014.04.024
【文献】ELENA PACELLA; VESTRI ANNA RITA; TURCHETTI PAOLO ET AL,Preliminary results of an intravitreal dexamethasone implant (ozurdex tm ) in patients with persistent diabetic macular edema,CLINICAL OPHTHALMOLOGY,2013年07月16日,VOL:7,PAGE(S):1423 - 1428,http://dx.doi.org/10.2147/OPTH.S48364
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61L 15/00-33/18
A61P 27/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病黄斑浮腫(DME)を治療するための生体内分解性インプラントであって、
前記生体内分解性インプラントは、生分解性ポリマーマトリックス内に均一に分散した、前記インプラントの総重量に対して約60wt%のデキサメタゾンを含む連続的な二段押出された棒を含み、
前記生分解性ポリマーマトリックスは、約30wt%の、親水性末端基を有する50:50 ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)と、約10wt%の、疎水性末端基を有する50:50 ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)との混合物を含み、ここで、wt%は前記インプラントの総重量に基づく、
前記生体内分解性インプラントはヒトの硝子体に埋入するための大きさに作られ、
前記生体内分解性インプラントは、6ヶ月に1回から9ヶ月に1回の頻度で少なくとも3年間にわたってヒトの硝子体に注入され、
前記生体内分解性インプラントの注入は、DMEを治療するのに治療効果があり、かつ
前記生体内分解性インプラントの注入は、少なくとも3年間にわたって15文字以上のヒトの視力の増加をもたらす、前記生体内分解性インプラント。
【請求項2】
前記ヒトは、DMEに対する抗VEGF治療に抵抗性を示す、請求項1に記載の生体内分解性インプラント。
【請求項3】
前記ヒトは偽水晶体レンズを有し、前記ポリマーマトリックスが、約30wt%のResomer
(登録商標)RG502H及び約10wt%のResomer
(登録商標)RG502を含み、前記生体内分解性インプラントが、約350μg又は約700μgのデキサメタゾンを含む、請求項1または2に記載の生体内分解性インプラント。
【請求項4】
前記ヒトは有水晶体レンズを有し、前記ポリマーマトリックスが、約30wt%のResomer
(登録商標)RG502H及び約10wt%のResomer
(登録商標)RG502を含み、前記生体内分解性インプラントが、約350μg又は約700μgのデキサメタゾンを含む、請求項1または2に記載の生体内分解性インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年11月15日に出願された米国仮特許出願第61/904,887号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照によって本明細書に組み込んだものとする。
【0002】
分野
本出願の開示は、概して薬物送達インプラントに関し、特に、薬物送達インプラントを使用して眼の状態を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
黄斑浮腫(「ME」)とは、黄斑の腫脹を生じる場合がある眼の状態である。浮腫は、網膜血管から体液が漏れることよって引き起こされる。色を検知し、昼間視が依存する神経終末である錐体が多い黄斑の非常に小さな領域に弱い血管壁から血液が漏れ出す。その結果、中心視野の中央またはそのすぐ側にかすみが起こる。視力低下が何ヶ月にもわたって進行する場合がある。網膜血管閉塞、眼炎及び加齢黄斑変性はすべて、黄斑浮腫と関連づけられてきた。黄斑は、白内障摘出術後の腫脹の影響を受ける場合もある。MEの症状としては、中心視野のかすみ、視野の歪み、視野のピンク着色及び羞明が挙げられる。MEの原因としては、網膜静脈閉塞症、黄斑変性、糖尿病性黄斑漏出、眼炎、突発性中心性漿液性網脈絡膜症、前部または後部ぶどう膜炎、周辺部ぶどう膜炎、網膜色素変性、放射線網膜症、後部硝子体剥離、網膜上膜形成、突発性傍中心窩網膜毛細血管拡張症、Nd:YAG嚢切開または虹彩切開を挙げることができる。MEの一部の患者は、緑内障に対する局所エピネフリンまたはプロスタグランジンアナログの使用歴がある場合もある。
【0004】
黄斑浮腫は、毛細血管内皮のレベルで内側血液網膜関門の崩壊を伴い、結果として異常な網膜血管透過性及び近傍の網膜組織への漏出が生じる。黄斑が体液の蓄積により厚くなり、結果として視力に重大な障害が生じる。
【0005】
糖尿病網膜症などの長年にわたって累積した損傷を引き起こす疾患において、あるいは網膜中心静脈閉塞症または網膜静脈分枝閉塞症などのもっと急性の事象の結果として黄斑浮腫が生じる場合もある。
【0006】
糖尿病網膜症は、1型及び2型糖尿病で頻繁に起る微小血管合併症であり、世界中の失明の主な原因である。糖尿病に関連する中心視力の低下は、微小血管閉塞(黄斑虚血)または黄斑の厚化もしくは腫脹(黄斑浮腫)につながる内側血液網膜関門(BRB)の崩壊による微小血管漏出のいずれかにより生じる可能性がある。糖尿病黄斑浮腫(DME)は、世界中で推定21百万人の個人に発症している。
【0007】
硝子体内の抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)薬剤及びレーザー光凝固を含む、視力を向上させるいくつかの治療法の選択肢が出てきた。しかしながら、こうした治療法の選択肢には、いくつか欠点があり、すべての患者に対して効果的に作用する訳ではない。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、糖尿病黄斑浮腫(「DME」)を含む黄斑浮腫などの眼の状態の治療のためのインプラント及び方法に関し、それを対象とする。一部の実施形態において、本インプラントは、副腎皮質ステロイド薬を含んでもよい。一部の実施形態において、副腎皮質ステロイド薬はデキサメタゾンである。
【0009】
眼の状態としては、眼または眼の部分もしくは領域の1つを冒すか、またはそれに影響を与える疾患、病気あるいは状態を挙げることができる。大まかに言うと、眼は、眼球ならびに眼球を構成する組織及び体液、眼周囲筋(斜筋及び直筋など)ならびに眼球内またはその近傍にある視神経の部分を含む。前眼の状態とは、水晶体嚢胞の後壁もしくは毛様体筋の前部に位置する眼周囲筋、眼瞼または眼球組織もしくは眼内液などの前眼(すなわち、眼の前方)領域または部位を冒すか、またはそれに影響を与える疾患、病気あるいは状態である。したがって、前眼の状態は、主に結膜、角膜、結膜、前房、虹彩、後房(網膜の後ろであるが、水晶体嚢胞の後壁の前)、水晶体もしくは水晶体嚢胞及び前眼領域もしくは部位に血管形成するか、またはそれを神経支配する血管及び神経を冒すか、あるいは影響を与える。後眼の状態とは、主に(水晶体嚢胞の後壁を通り抜けた面に対して後方の位置にある)脈絡膜もしくは強膜、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(すなわち、視神経乳頭)、ならびに後眼の領域または部位に血管形成するか、またはそれを神経支配する血管及び神経などのなどの後眼の領域あるいは部位を冒すか、あるいはそれに影響を与える疾患、病気または状態である。
【0010】
後眼の状態としては、例えば、黄斑変性(非滲出型加齢黄斑変性及び滲出型加齢黄斑変性など);脈絡膜血管新生;急性黄斑神経網膜症;黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫及び糖尿病黄斑浮腫など);ベーチェット病、網膜障害、糖尿病網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞性疾患;網膜中心静脈閉塞症;ぶどう膜炎網膜疾患;網膜剥離;後眼部位または位置を冒す眼球損傷;眼のレーザー治療が引き起こしたか、または影響を与えた後眼の状態;光力学療法が引き起こしたか、または影響を与えた後眼の状態;光凝固;放射線網膜症;網膜上膜障害;網膜静脈分枝閉塞症;前部虚血性視神経症;網膜症でない糖尿病性網膜機能障害、網膜色素変性ならびに緑内障などの疾患、病気あるいは状態を挙げることができる。
【0011】
前眼の状態としては、例えば、無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;ドライアイ症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙道閉塞;近視;老視;瞳孔障害;屈折異常及び斜視などの疾患、病気または状態を挙げることができる。緑内障治療の臨床上の目的が眼の前房内にある房水の圧上昇を低下させる(すなわち、眼内圧を低下させる)ことである場合があるため緑内障も前眼の状態と考えることができる。
【0012】
デキサメタゾンなどの強力な副腎皮質ステロイド薬は、すべて炎症反応の重要な機能である、浮腫、フィブリン沈着、毛細血管漏出及び食細胞の遊走を阻害することによって炎症を抑制する。副腎皮質ステロイド薬は、そのいくつかが嚢胞様黄斑浮腫のメディエーターとして特定されたプロスタグランジンの放出を妨げる。
【0013】
副腎皮質ステロイド薬などの薬物を直接硝子体腔に送達することによって、血液眼関門を回避することができ、最小限の全身毒性のリスクで眼内の治療レベルを達成することができる。この投与経路は、徐放をもたらすことができる製剤を使用して薬物を送達できない限り、一般に半減期が短い。
【0014】
したがって、治療用薬剤を硝子体などの眼の領域に送達するための生分解性インプラントは、糖尿病黄斑浮腫などの眼の医学的状態に苦しむ患者に対して重大な医学的利益をもたらす可能性もある。
【0015】
ある実施形態によると、糖尿病黄斑浮腫を治療するための方法は、生体内分解性インプラントを、約6ヶ月に1回から約9ヶ月に1回の頻度でそれを必要とするヒトの硝子体に入れることを含む。本生体内分解性インプラントとしては、生分解性ポリマーマトリックス内に均一に分散した活性薬剤を含んでもよい連続的な二段押出成形された棒を挙げることができる。生分解性ポリマーマトリックスとしては、親水性末端基を有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)と疎水性末端基を有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)の混合物を挙げることができる。生体内分解性インプラントは、眼の領域に埋入するための大きさに作られてもよい。一部の実施形態において、活性薬剤は、副腎皮質ステロイド薬である。本方法は、DMEを治療するのに治療効果がある場合がある。一部の実施形態において、活性薬剤はデキサメタゾンである。一部の実施形態において、黄斑浮腫は糖尿病黄斑浮腫である。一部の実施形態において、デキサメタゾンは、生体内分解性インプラント中に生体内分解性インプラントの総重量に基づいて60重量%の量で存在する。一部の実施形態において、疎水性末端基を有するPLGAは、生体内分解性インプラント中に生体内分解性インプラントの総重量に基づいて10重量%の量で存在する。一部の実施形態において、親水性末端基を有するPLGAは、生体内分解性インプラント中に生体内分解性インプラントの総重量に基づいて30重量%の量で存在する。ある実施形態によると、ヒトは偽水晶体レンズを有する。別の実施形態によると、ヒトは有水晶体レンズを有する。
【0016】
これら及びその他の特徴を、ここで、以下に概要が示される図面を参照して記載する。これらの図面及び関連する説明は、1つまたは複数の実施形態を説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書中で開示される例の実施形態方法により例の実施形態生体内分解性インプラントを与えられた患者群においてBCVAが15文字以上改善したDME患者の割合を比較した棒グラフである。
【
図2】本明細書中で開示される例の実施形態方法により例の実施形態生体内分解性インプラントを与えられた患者群においてBCVAが20文字以上改善したDME患者の割合を比較した棒グラフである。
【
図3】本明細書中で開示される例の実施形態方法により例の実施形態生体内分解性インプラントを与えられたさまざまなDME患者群間におけるBCVAの平均変化を比較した線グラフである。
【
図4】本明細書中で開示される例の実施形態方法により例の実施形態生体内分解性インプラントを与えられたDME患者群におけるCSRTのベースラインからの平均代表値の低下を比較した棒グラフである。
【
図5】本明細書中で開示される例の実施形態方法により例の実施形態生体内分解性インプラントを与えられた患者群におけるBCVAが15文字以上改善したDME患者の割合を比較する棒グラフである。
【
図6】実施例による試験中に生じた一般的な有害事象を列挙した表である。
【
図7】実施例による試験中にIOPを調整するために行われた眼の手術を列挙した表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
以下の用語は、本明細書中で使用される場合、以下の意味を有する。
【0019】
「活性薬剤」及び「薬物」は、同義に使用され、眼の状態を治療するために使用されるあらゆる物質を指す。
【0020】
「生体内分解性ポリマー」とは、インビボにおいて分解するポリマー意味し、この場合、本発明による活性薬剤放出動態を達成するために、経時的なポリマーの崩壊が必要とされる。したがって、ポリマーの膨潤により薬物を放出するよう働くメチルセルロースなどのヒドロゲルは、「生体内分解性(または生分解性)ポリマー」という用語からは特に除外される。「生体内分解性」及び「生分解性」という語は、同義であり、本明細書中では同義に使用される。
【0021】
「外傷」または「損傷」は置き換え可能であり、例えば、炎症などの炎症が関係する状態の結果として生じる細胞の及び形態的な徴候及び症状を指す。
【0022】
「眼の状態」とは、眼または1つまたは眼の部分もしくは領域を冒すか、またはそれに影響を与える、網膜疾患などの疾患、病気あるいは状態を意味する。眼は、眼球ならびに眼球を構成する組織及び体液、眼周囲筋(斜筋及び直筋など)ならびに眼球内またはその近傍にある視神経の部分を含む。:「眼の状態」は、「眼の医学的状態」と同義である
【0023】
「複数」とは、2つ以上を意味する。
【0024】
「後眼の状態」とは、(水晶体嚢胞の後壁を通り抜けた面に対して後方の位置にある)脈絡膜または強膜、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(すなわち、視神経乳頭)、ならびに後眼の領域または部位に血管形成するか、またはそれを神経支配する血管及神経などの後眼の領域あるいは部位を冒すか、またはそれに影響を与える疾患、病気あるいは状態を意味する。
【0025】
「ステロイド系抗炎症剤」及び「グルココルチコイド」は、本明細書中では同義に使用され、治療効果のあるレベルで投与されると炎症を低減するステロイド系薬剤、化合物または薬物を含むことが意図される。
【0026】
インプラントに関して「眼の領域もしくは部位へ(または内へ)の挿入(または埋入)に適している」とは、過度の組織損傷を引き起こすことなく、インプラントが埋入または挿入される患者の既存の視野を過度に物理的に妨げることなく挿入あるいは埋入できるような大きさ(次元)のインプラントを意味する。
【0027】
「治療レベル」または「治療量」とは、眼の状態の症状を緩和または予防するよう、眼の状態を安全に治療するのに適した眼の領域に局所的に送達された活性薬剤の量または濃度を意味する。
【0028】
一部の実施形態によると、眼の医学的状態を治療するための生体内分解性インプラントは、生分解性ポリマーマトリックス内に分散した活性薬剤を含む。例となる生体内分解性インプラント及びそのようなインプラントを作製する方法は、米国特許第8,034,370号、米国特許第8,242,099号、米国特許第7,767,223号及び米国特許第8,257,7300号に記載されており、上記のすべての特許の全体を参照によって本明細書に組み込んだものとする。
【0029】
活性薬剤は、ACE阻害剤、内因性サイトカイン、基底膜に影響を与える薬剤、内皮細胞の増殖に影響を与える薬剤、アドレナリン作動薬または遮断剤、コリン作動薬または遮断剤、アルドース還元酵素阻害剤、鎮静剤、麻酔薬、抗アレルギー剤、抗炎症剤、ステロイド(ステロイド系抗炎症剤など)、降圧剤、昇圧剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、抗感染剤、抗腫瘍剤、代謝拮抗剤及び抗血管新生剤からなる群から選択されてもよい。したがって、活性薬剤は、コルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン及び任意のその誘導体であってもよい。
【0030】
本生体内分解性インプラントは、眼の領域に埋入するための大きさに作られる。眼の領域は、任意の1つまたは複数の前房、後房、硝子体腔、脈絡膜、上脈絡膜腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内腔、角膜外隙、強膜、毛様体扁平部、外科的に誘導された無血管領域、黄斑及び網膜であってもよい。
【0031】
眼の医学的状態を治療するための生体内分解性インプラントを作製するための方法は、生分解性ポリマーの複数の押出成形を含んでもよい。この方法はまた、押出成形に先立って生分解性ポリマーを粉砕する工程を含んでもよい。生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸-グリコール酸)(PLGA)コポリマーであってもよい。ポリマー中の乳酸モノマー対グリコール酸モノマーの比率は、約50/50重量百分率であってもよい。さらに、PLGAコポリマーは、生体内分解性インプラントの約20から約90重量パーセントであってもよい。交互に、PLGAコポリマーは、生体内分解性インプラントの約40重量パーセントであってもよい。
【0032】
本発明は、眼の医学的状態を治療するための生分解性眼用インプラント及び方法を提供する。通常、本インプラントは、一体構造で形成される。すなわち、活性薬剤の粒子が生分解性ポリマーマトリックス全体に分散している。さらに、本インプラントは、活性薬剤をさまざまな期間にわたって眼の眼球領域に放出するよう形成される。活性薬剤は、以下に限定されるものではないが、およそ12ヶ月、10ヶ月、9ヶ月、8ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、3ヶ月、1ヶ月または1ヶ月未満を含む、ある期間にわたって放出されてもよい。
【0033】
眼の医学的状態を治療するための生分解性インプラント
本発明のインプラントは、生分解性ポリマー内に分散した活性薬剤を含む。一部の実施形態において、抗炎症剤は、ステロイド系抗炎症剤、例えば、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド薬である。一部の実施形態において、デキサメタゾンは、インプラントに存在する唯一の活性薬剤である。
【0034】
デキサメタゾンなどのステロイド系抗炎症剤は、インプラントの約10重量%から約90重量%を構成してもよい。一変形において、この薬剤は、インプラントの約40重量%から約80重量%である。好ましい変形において、この薬剤は、インプラントの約60重量%を構成する。
【0035】
生分解性ポリマーマトリックス
一変形において、活性薬剤は、インプラントの生分解性ポリマーマトリックス中に均一に分散していてもよい。利用する生分解性ポリマーマトリックスの選択は、所望の放出動態、患者の寛容性、治療される疾患の性質及び同種のものにより変化することになる。考慮されるポリマー特性としては、埋入の部位における生体適合性及び生分解性、対象の活性薬剤との適合性ならびに加工温度が挙げられるが、これらに限定されるものではない。生分解性ポリマーマトリックスは、通常、インプラントの少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80または少なくとも約90重量パーセントを構成する。一変形において、生分解性ポリマーマトリックスは、インプラントの約40重量%を構成する。
【0036】
利用されてもよい生分解性ポリマーマトリックスとしては、分解されると生理学的に許容される分解生成物を生じる有機エステルまたはエーテルなどのモノマーで作られたポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。無水物、アミド、オルトエステルもしくは同種のもの単独で、または他のモノマーと組み合わせて使用されてもよい。ポリマーは、一般に縮合ポリマーである。ポリマーは、架橋または非架橋であってもよい。架橋の場合、ポリマーは、通常、多くても軽度に架橋しているだけであり、5%未満架橋、一般には1%未満架橋している。
【0037】
特に対象となるのは、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれかのヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びポリサッカライドのポリマーである。対象のポリエステルのうち含まれるのは、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、カプロラクトン及びそれらの組み合わせのホモポリマーまたはコポリマーである。グリコール酸と乳酸のコポリマーが特に対象となり、この場合、生分解速度は、グリコール酸対乳酸の比率によって制御される。ポリ(乳酸-グリコール酸)(PLGA)コポリマー中の各モノマーのパーセントは、0~100%、約15~85%、約25~75%または約35~65%であってもよい。好ましい変形において、50/50のPLGAコポリマーが使用される。より好ましくは、50/50のPLGAのランダムコポリマーが使用される。
【0038】
親水性及び疎水性末端のPLGAの混合物を含む生分解性ポリマーマトリックスも利用されてよく、ポリマーマトリックスの分解速度を調節する際に有用である。疎水性末端の(キャッピングされたまたはエンドキャッピングされたとも言及される)PLGAは、ポリマー末端に本質的に疎水性のエステル結合を有する。一般的な疎水性末端基としては、アルキルエステル及び芳香族エステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。親水性末端の(キャッピングされていないとも言及される)PLGAは、ポリマー末端に本質的に親水性の末端基を有する。加水分解を向上させるために組み込まれてもよい、適した親水性末端基の例としては、カルボキシル、ヒドロキシル及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の末端基は、一般に重合プロセスに利用される開始剤により生じる。例えば、開始剤が水またはカルボン酸である場合、結果として生じる末端基は、カルボキシル及びヒドロキシルとなる。同様に、開始剤が単官能アルコールである場合、結果として生じる末端基はエステルまたはヒドロキシルとなる。
【0039】
本インプラントは、すべての親水性末端PLGAまたはすべての疎水性末端PLGAから形成されてもよい。ただし、一般に、本発明の生分解性ポリマーマトリックス中の親水性末端PLGA対疎水性末端PLGAの比率は、重量で約10:1から約1:10で変動する。例えば、この比率は、重量で3:1、2:1または1:1であってもよい。好ましい変形において、3:1w/wの親水性末端PLGA対疎水性末端PLGAの比率を有するインプラントが使用される。
【0040】
追加の薬剤
さまざまな用途用の製剤にその他の薬剤が利用されてもよい。例えば、緩衝剤及び保存料が利用されてもよい。使用されてもよい保存料としては、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、ポリビニルアルコール及びフェニルエチルアルコールを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。利用されてもよい緩衝剤の例としては、投与の所望の経路に対してFDAに承認されたような炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び同種のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの電解質も製剤に含まれてよい。
【0041】
本生分解性眼用インプラントはまた、活性薬剤の放出を加速するか、または遅らせる追加の親水性または疎水性化合物を含んでもよい。さらに、本発明者らは、親水性末端PLGAがより容易に水を吸収する能力により疎水性末端PLGAより速い分解速度を有するため、インプラントのポリマーマトリックス中の親水性末端PLGAの量を増加させると、より速い溶解速度がもたらされると考える。
図9は、眼用インプラント中の親水性末端PLGAの量が減るにつれ、埋入から活性薬剤の著しい放出までの時間(遅延時間)が長くなることを示している。
図9において、親水性末端PLGAが0%のインプラント(40%w/w疎水性末端)に関する遅延時間は約21日であると示された。比較して、親水性末端PLGAを10%w/w及び20%w/wを含むインプラントを用いると遅延時間の著しい短縮が見られた。
【0042】
用途
本発明のインプラント及び方法によって治療され得る眼の医学的状態の例としては、ぶどう膜炎、黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫、黄斑変性、網膜剥離、眼の腫瘍、真菌症、ウイルス感染症、多巣性脈絡膜炎、糖尿病網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、フォークト・小柳・原田(VKH)症候群、ヒストプラスマ症、ぶどう膜拡散及び血管閉塞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一変形において、本インプラントは、ぶどう膜炎、黄斑浮腫、血管閉塞状態、増殖性硝子体網膜症(PVR)及びさまざまなその他の網膜症などの医学的状態を治療する際に特に有用である。
【0043】
埋入の方法
本生分解性インプラントは、さまざまな方法によって眼に挿入されてもよく、この方法は、強膜を切開した後に鉗子、トロカールまたはその他のタイプのアプリケータによって設置することを含む。場合によっては、切開せずに、トロカールまたはアプリケータを使用してもよい。ある変形において、1つまたは複数の生分解性インプラントを眼に挿入するためにハンドヘルド型アプリケータが使用される。ハンドヘルド型アプリケータは、一般に18~30GAステンレス鋼針、レバー、アクチュエータ及びプランジャーを備える。
【0044】
埋入の方法は、一般にまず眼の領域内の目的の場所へ針で到達することを含む。目的の場所、例えば、硝子体腔内に入ると、ハンドヘルド型デバイスのレバーが押し下げられて、アクチュエータにプランジャーを前方へ押し出させる。プランジャーが前方へ動くと、それがインプラントを目的の場所に押し進める。
【0045】
ある実施形態によると、ベベルを有する針を備えたアプリケータの長軸は、縁と平行に保持することができ、強膜を針上部のベベルと斜角で(強膜から離れる)固定して、緩やかに勾配した強膜の経路を作り出すことができる。針の先端部を、その後、強膜内を(縁と平行に)約1mm進めた後、再び中心または眼に向け、強膜を貫通し、患者の眼の硝子体腔に入るまで進めることができる。その後、アプリケータを作動させて生分解性インプラントを患者の硝子体内に送達することができる。
【0046】
DMEの治療の方法
ある実施形態において、眼の状態、例えば、糖尿病黄斑浮腫を治療する方法は、デキサメタゾンなどの活性成分及び生分解性ポリマーマトリックスを含む生体内分解性インプラントを、それを必要とする患者の眼に6ヶ月に1回から1年に1回の間の頻度で施すことを含む。生体内分解性インプラントは、本明細書中で開示されているタイプのものであってもよい。
【0047】
一部の実施形態によると、患者の眼にインプラントを施すことは、インプラントを、それを必要とする患者の眼に入れることを含んでもよい。一部の実施形態によると、眼の状態を治療する方法としては、生体内分解性インプラントを硝子体、前房、結膜下腔または眼のその他の適した任意の場所に入れることを含んでもよい。
【0048】
本方法は、虚血性網膜症、血管新生網膜症に関連する状態または虚血性網膜症及び血管新生網膜症の両方に関連する状態を含む特定の眼の状態を治療するために使用することができる。本明細書中で開示される方法によって治療され得る虚血性網膜症に関連するいくつかの状態としては、糖尿病黄斑浮腫、中心静脈閉塞及び分枝静脈閉塞を挙げることができる。本明細書中で開示される方法によって治療され得る血管新生網膜症に関連するいくつかの状態としては、増殖性糖尿病性網膜症、滲出型加齢黄斑変性、病理学的近視、脈絡膜血管新生、ヒストプラスマ症に続発する、ポリープ状脈絡膜血管新生及び網膜血管腫状増殖を挙げることができる。本方法は、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、病理学的近視、網膜静脈分枝閉塞症及び網膜中心静脈閉塞症を治療するために使用されてもよい。
【0049】
「治療する」こととは、ここで使用される場合、医学的に対処することを意味する。これは、例えば、DMEの重症度を緩和するだけでなくその発症を予防するために、本発明の生体内分解性インプラントを施すことも含む。
【0050】
一実施形態では、生体内分解性インプラントは、DMEを治療するためにそれを必要とする患者の眼に6ヶ月に1回施される。別の実施形態では、インプラントは、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月もしくは12ヶ月(または年)に1回施される。一部の実施形態において、本生体内分解性インプラントは、DMEを治療するためにそれを必要とする患者の眼に4ヶ月から12ヶ月、5ヶ月から10ヶ月、6ヶ月から9ヶ月または8ヶ月から12ヶ月に1回施される。一部の実施形態において、本生体内分解性インプラントは、1回または複数の上記の頻度で患者の残りの生涯の間、施される。他の実施形態において、本生体内分解性インプラントは、患者の生涯の2年間、3年間、4年間、5年間、10年間、15年間の期間または(DMEなどの)眼の状態が適切に治療されるまで1回または複数の上記の頻度で施される。上記のそのような投与計画においてかかる方法は、それを必要とする患者のDMEを治療するのに治療効果がある場合がある。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、DMEがある患者の視力を高める場合がある。
【0051】
本インプラントは生分解性であるため、既存のインプラントを外科的に除去する必要なく次のインプラント(複数可)を挿入することができる。頻繁に繰り返し入れる必要があるために生じるピーク硝子体中薬物濃度を避けることによって、本インプラントは、場合によっては、白内障形成、IOP上昇及び緑内障などの望ましくない副作用のリスクを低減することができ、水晶体外傷、網膜剥離及び感染性眼内炎などの入れることに関連した合併症のリスクを低減することもできる。
【0052】
一部の実施形態によると、本生体内分解性インプラントは、患者のレンズの状態とは無関係に糖尿病黄斑浮腫などの黄斑浮腫がある患者の眼の状態を治療することができる。例えば、一部の実施形態において、DMEの治療は、患者が有水晶体レンズまたは偽水晶体レンズを有するか否かにかかわらず、本明細書中で開示されるインプラント及び方法を使用して行うことができる。一部の実施形態によると、偽水晶体レンズを有する患者のDMEの治療を行うことができる。一部の実施形態によると、有水晶体レンズを有するが、白内障手術を予定または計画している患者のDMEの治療を行うことができる。
【0053】
一部の実施形態によると、本生体内分解性インプラントは、DMEに対するその他の既存の治療に抵抗性を示す患者の眼の状態を治療することができる。例えば、いくつかの方法によると、抗VEGFの眼内注射に対して屈折性を示すDMEがある患者は、本明細書中で開示される方法によって効果的に治療することができる。その他のいくつかの方法によると、レーザー光凝固に対して屈折性を示すDMEがある患者は、本明細書中で開示される方法によって効果的に治療することができる。
【実施例】
【0054】
本明細書に記載される実施形態をさらに説明する目的で以下の実施例を提供するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】
糖尿病黄斑浮腫(「DME」)がある患者において700μg及び350μgデキサメタゾン後眼部薬物送達システムの安全性及び有効性を評価するために、第III相多施設共同無作為化盲検シャム対照試験を行った。この試験を3年の期間にわたって行った。これらの試験の結果を
図1~7に示す。
【0056】
試験に使用したインプラントは、デキサメタゾンと、2つのグレードのPLGA(50:50 PLGAエステル及び50:50 PLGA酸)から構成される50:50 ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)PLGAのポリマーマトリックスとから成るものとした。詳細に関しては表1を参照されたい。表2に提示するとおりの2種類のPLGAの組み合わせを生分解性ポリマーマトリックスに選択した。選択したPLGAの概括的な特性を表3に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
この試験では、DMEがある患者に、700μgのデキサメタゾンを含む生体内分解性インプラント、350μgのデキサメタゾンを含む生体内分解性インプラントまたは0μgのデキサメタゾンを含む生体内分解性インプラント(シャム)のいずれかを与えた。インプラントを各患者の一方の眼の硝子体に入れた。6ヶ月目の診察後3ヶ月毎に患者を再治療に関して評価した。6ヶ月毎の再治療(すなわち、別のインプラントを施すこと)を許可した。患者の中心網膜厚が175μmを超えた場合または網膜浮腫が残ったままである何らかの証拠があった場合に再治療を許可した。患者は、3年の試験期間にわたって片眼あたり最大7個のインプラントを許可した。
【0061】
図1~2に示されるとおり、シャムインプラントを与えた患者と比較して、700μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者及び350μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者の最高矯正視力(「BCVA」)スコアが統計学的に有意に改善された。
図1は、700μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者の22.2%がBCVAの15文字以上の改善を示し、350μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者の18.4%がBCVAの15文字以上の改善を示したことを表わしている。
図2は、700μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者の8.5%がBCVAの20文字以上の改善を示し、350μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者の11.0%がBCVAの20文字以上の改善を示したことを表わしている。
【0062】
図3は、3年の試験期間にわたって、700μg及び350μgのデキサメタゾン含有インプラントを与えた群の患者が、一般にシャムインプラントを与えた患者よりもBCVAに大きな改善を示したことを表わしている。
図3に示されるとおり、デキサメタゾンインプラントを与えた患者においてBCVAの急速な増加が観察された。具体的には、350μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者に関しては、治療の最初の約3ヶ月にわたってベースラインから約6文字の平均BCVA増加が観察され、700μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者に関しては、治療の最初の約3ヶ月にわたってベースラインから約7文字の平均BCVA増加が観察された。
【0063】
図4に示されるとおり、傍中心網膜厚(「CSRT」)のベースラインからの平均代表値の減少は、シャムインプラントを与えた患者よりもデキサメタゾンインプラントを与えた患者において大きかった。
図4は、700μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者はベースラインから111.6μmのCSRT平均代表値の減少を示し、350μgのデキサメタゾンインプラントを与えた患者はベースラインから107.9μmのCSRT平均代表値の減少を示したことを表わしている。
【0064】
図5に示されるとおり、デキサメタゾンインプラントは、ベースラインにおける患者のレンズの状態にかかわらず著しくBCVAを改善した。
【0065】
試験の有害事象プロフィールを添付の
図6に示す。図に示される通り、この試験で経験した最も一般的な有害事象は白内障及び眼内圧であった。しかしながら、IOP上昇の有害事象は発生したにもかかわらず、驚くべきことに、試験中にIOPの管理のために手術を受けた患者は非常に少数であった(各試験群につき1手術タイプ当たり約0.3%)。手術を受けた患者の数及び受けた手術のタイプを
図7に示す。
【0066】
図のデータから示されるとおり、本明細書中で開示されるインプラント及び方法により、糖尿病黄斑浮腫がある患者の視力が著しく長期間改善された。3年目に15文字以上増加した患者の割合は、シャムによるものと比較して350μg及び700μgのデキサメタゾンインプラントによるものが著しく高かった。3年間にわたって平均4.1回入れることによる治療の利益が確認された。
【0067】
下記表4は、試験の39ヶ月目における視力の結果を示している。
【0068】
【0069】
下記表5は、偽水晶体及び有水晶体部分群に関する最高矯正視力の結果を示している。
【0070】
【0071】
本発明を特定の好適な実施形態及び例と関連して開示してきたが、本発明は、具体的に開示された実施形態を超えて本発明のその他の代替的実施形態及び/または使用ならびにそれらの自明な変更物及び等価物にまで広がることを当業者は理解するであろう。さらに、本発明の変形物の数を示し、詳細に記載してきたが、本発明の範囲内にあるその他の変更物が本開示に基づいて当業者には容易に明らかになろう。また、実施形態の特定の特徴及び態様をさまざまに組み合わせても、または部分的に組み合わせてもよく、それらも本発明の範囲内にあることが意図される。したがって、当然のことながら、開示された実施形態のさまざまな特徴及び態様は、本開示の発明の変化する様式を実施するために互いに組み合わされても、または置き換えられてもよい。したがって、本明細書中で開示される本発明の範囲は、上記の開示された特定の実施形態に限定されるべきでなく、請求項を公正に解釈することによってのみ決定されるべきであることが意図される。