(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】半導体構造と超格子とを用いた高度電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/06 20100101AFI20220210BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20220210BHJP
H01L 33/30 20100101ALI20220210BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220210BHJP
H01L 29/15 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L33/32
H01L33/30
H01L29/06 601W
H01L29/06 601S
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019228049
(22)【出願日】2019-12-18
(62)【分割の表示】P 2016568023の分割
【原出願日】2015-05-01
【審査請求日】2020-01-14
(32)【優先日】2014-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518236616
【氏名又は名称】シランナ・ユー・ブイ・テクノロジーズ・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SILANNA UV TECHNOLOGIES PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アタナコビク,ペタル
(72)【発明者】
【氏名】ゴッドフレイ,マシュー
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-059938(JP,A)
【文献】特開2000-244070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0235665(US,A1)
【文献】特開平06-097598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0155999(US,A1)
【文献】特開2005-064072(JP,A)
【文献】特開2005-136446(JP,A)
【文献】特開2007-157765(JP,A)
【文献】特開2012-146847(JP,A)
【文献】Simon, John et al.,"Polarization Induced Graded AlGaN p-n Junction grown by MBE",2008 Device Research Conference,米国,2008年,pages 289-290,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=4800843
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構造であって、
p型超格子領域と、
i型超格子領域と、
n型超格子領域とを備え、
分極の急激な変化が各領域間の界面において無く、
前記p型超格子領域と前記i型超格子領域と前記n型超格子領域とのうちの少なくとも1つが、第1のワイダーバンドギャップ(WBG)物質に対応する第1の平均組成から第1のナロワーバンドギャップ(NBG)物質に対応する第2の平均組成への、または、第2のNBG物質に対応する第3の平均組成から第2のWBG物質に対応する第4の平均組成への、成長軸に沿う平均組成の単調変化を示す複数の単位セルを含み、
前記複数の単位セルのうちの各単位セルは、少なくとも、第1の異なる層と第2の異なる層とを含み、
前記第1の異なる層は第1の実質的に単結晶半導体を含み、
前記第2の異なる層は第2の実質的に単結晶半導体を含み、
前記第1および第2の実質的に単結晶半導体は極性結晶構造を含み、前記半導体構造の成長軸は前記極性結晶構造の自然分極軸に実質的に平行である、半導体構造。
【請求項2】
前記p型超格子領域は、
陽イオン-極性結晶構造を含み、前記p型超格子領域において、前記単位セルの平均組成の単調変化は、前記成長軸に沿って前記第1の平均組成から前記第2の平均組成に単調に変化する、または、
陰イオン-極性結晶構造を含み、前記p型超格子領域において、前記単位セルの平均組成の単調変化は、前記成長軸に沿って前記第3の平均組成から前記第4の平均組成に単調に変化する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項3】
前記陰イオン-極性結晶構造は窒素-極性結晶構造または酸素-極性結晶構造であり、
前記陽イオン-極性結晶構造は金属-極性結晶構造である、請求項2に記載の半導体構造。
【請求項4】
前記n型超格子領域は、
陽イオン-極性結晶構造を含み、前記n型超格子領域において、前記単位セルの平均組成の単調変化は、前記成長軸に沿って前記第3の平均組成から前記第4の平均組成に単調に変化する、または、
陰イオン-極性結晶構造を含み、前記n型超格子領域において、前記単位セルの平均組成の単調変化は、前記成長軸に沿って前記第1の平均組成から前記第2の平均組成に単調に変化する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項5】
前記陽イオン-極性結晶構造は金属-極性結晶構造であり、
前記陰イオン-極性結晶構造は窒素-極性結晶構造または酸素-極性結晶構造である、請求項4に記載の半導体構造。
【請求項6】
前記単位セルの平均組成の単調変化は、前記成長軸に沿う段階的な変化を含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記平均組成の単調変化を示す前記複数の単位セルの厚さは前記成長軸に沿って一定である、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項8】
前記p型超格子領域は前記i型超格子領域に隣接し、
前記i型超格子領域は前記n型超格子領域に隣接する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項9】
前記単位セルの平均組成は、前記第1の異なる層の厚さ、前記第2の異なる層の厚さ、または前記第1および第2の異なる層双方の厚さを変化させることによって変化する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項10】
前記第1もしくは第2の異なる層の、または、前記第1および第2の異なる層の組成は、
窒化ガリウム(GaN)、
窒化アルミニウム(AlN)、
窒化アルミニウムガリウム(Al
xGa
1-xN)、式中0≦x≦1、
窒化ホウ素アルミニウムB
xAl
1-xN、式中0≦x≦1、および
窒化アルミニウムガリウムインジウム(Al
xGa
yIn
1-x-yN)、式中0≦x≦1、0≦y≦1、および0≦(x+y)≦1、
から選択される、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項11】
前記第1もしくは第2の異なる層の、または、前記第1および第2の異なる層の組成は、
酸化マグネシウム(MgO)、
酸化亜鉛(ZnO)、および
酸化マグネシウム亜鉛(Mg
xZn
1-xO)、式中0≦x≦1、
から選択される、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記第1および第2の異なる層は各々、各層内の電荷キャリアのド・ブロイ波長未満の厚さを有する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項13】
前記第1および第2の異なる層は各々、弾性ひずみを維持するために必要な限界層厚以下の厚さを有する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記第1もしくは第2の異なる層、または、前記第1および第2の異なる層は各々、不純物ドーパントを含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項15】
前記p型超格子領域に隣接するp型GaN領域をさらに備える、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項16】
基板と、
前記基板に隣接するバッファまたは転位フィルタ領域とをさらに備え、
前記p型超格子領域または前記n型超格子領域は、前記バッファまたは転位フィルタ領域に隣接し、
前記i型超格子領域は、前記p型超格子領域と前記n型超格子領域との間にある、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項17】
前記基板は、サファイア(Al
2O
3)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、シリコン基板、または窒化ガリウム(GaN)基板である、請求項16に記載の半導体構造。
【請求項18】
請求項1に記載の半導体構造を備える発光ダイオード(LED)であって、光は、前記i型超格子領域から放出され、前記LEDから放出される前に前記n型超格子領域または前記p型超格子領域を通る、発光ダイオード(LED)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年5月27日に出願された、「Advanced Electronic Device Structures Using Semiconductor Structures and Superlattices」という名称の、オーストラリア仮特許出願第2014902008号の優先権を主張し、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、通常、極性III-N半導体構造と超格子とを使用する、高度電子デバイス構造に関する。具体的には、本発明は、発光ダイオード(LED)構造、好適には、190~280nmの範囲の波長で動作する、紫外線(UV)LEDと深UV(DUV)LEDとのための発光ダイオード(LED)構造に特に適した半導体構造に関連するが、それに限定されない。本発明は、UV LEDとDUV LEDとを参照して主に説明されるが、これらが単に好適なアプリケーションであり、他のアプリケーションが当業者には明白であり得る、ということを理解するものである。
【背景技術】
【0003】
窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)などのワイドバンドギャップ半導体は、伝導率の悪いp型またはn型が作成されるという良く知られた限界を有し、特に、不純物原子置換ドーピング法を使用したp型物質では伝導率が悪い。現在、最も高いp型アクセプタ密度は、p型GaNで達成され、アルミニウムのモル分率が増加するに従い、バンドギャップが増加し、利用可能な正孔密度が大幅に減少する。これは、たとえば、AlGaN半導体、より一般的には、AlGaInN半導体の十分に広いバンドギャップ構成において、電子グレードの、高い、n型とp型との、ドナー密度とアクセプタ密度とを達成することに関して、DUV LEDの開発を制限する。
【0004】
DUV LEDは、通常、直接バンドギャップ結晶構造内における電子と正孔との有利な空間的再結合によって、光の発光を達成する。DUV LEDは、根本的に、二電気ポートデバイスとして動作し、p型領域とn型領域との間の領域に実質的に閉じ込められた発光領域を有する、p-i-nヘテロ接合ダイオードまたはp-nヘテロ接合ダイオードのうちの少なくとも1つから作られる。発光エネルギーが、ダイオードを備える、p型クラッド層とn型クラッド層とのうちの少なくとも1つのバンドギャップエネルギーよりも小さい場合、光キャリアが生成する光は、デバイス内から漏れ出し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
III-Nデバイス開発におけるP型ドーピングの制限は、商業的に実現可能なDUV
LEDを開発する際の最も大きな制約の1つである。したがって、特に、III-N物質におけるp型特性のための不純物ドーパントの改善に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
唯一の形態または実際に最も広い形態である必要はないが、一形態では、p型半導体構造またはn型半導体構造を形成する方法が提供される。方法は、
成長軸に沿って、極性結晶構造を有する半導体を成長させることであって、成長軸が、結晶構造の自然分極軸に実質的に平行である、成長させることと、
p型またはn型の伝導性を誘導するために、半導体の組成を、ワイダーバンドギャップ(WBG)物質からナロワーバンドギャップ(NBG)物質に、またはNBG物質からW
BG物質に、成長軸に沿って単調に変えることと、を備える。
【0007】
好適には、半導体の組成は、少なくとも2つの種類の金属原子の陽イオンと、非金属原子の陰イオンとを備える。
【0008】
好適には、非金属原子陰イオンは、窒素または酸素である。
好適には、半導体の組成を変えることは、組成内の少なくとも2つの種類の金属原子陽イオンのうちの1つまたは複数のモル分率を、成長軸に沿って変えることを備える。
【0009】
好適には、p型伝導率は、
陽イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、WBG物質からNBG物質に、成長軸に沿って単調に変えること、または
陰イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、NBG物質からWBG物質に、成長軸に沿って単調に変えること、によって誘導される。
【0010】
好適には、n型伝導率は、
陽イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、NBG物質からWBG物質に、成長軸に沿って単調に変えること、または
陰イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、WBG物質からNBG物質に、成長軸に沿って単調に変えること、によって誘導される。
【0011】
好適には、極性結晶構造は、極性ウルツ鉱型結晶構造である。
好適には、半導体の組成は、継続的な方法で、または段階的な方法で、成長軸に沿って変えられる。
【0012】
適切には、半導体の組成は、III族金属窒化組成物から選択される。
適切には、半導体の組成は、以下の、窒化アルミニウムガリウム(AlxGa1-xN)、式中0≦x≦1と、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlxGayIn1-x-yN)、式中0≦x≦1、0≦y≦1、及び0≦(x+y)≦1と、酸化マグネシウム亜鉛(MgxZnx-1O)、式中0≦x≦1と、から選択される。
【0013】
適切には、方法は、さらに、誘導p型伝導率または誘導n型伝導率を強化するために、不純物ドーパントを半導体の組成内に含むことを備える。
【0014】
別の形態では、実質的に単結晶半導体から形成された少なくとも2つの異なる層を各々が備える複数の単位格子を備える、p型半導体超格子またはn型半導体超格子を形成する方法が提供される。方法は、
成長軸に沿って、極性結晶構造を有する超格子を成長させることであって、成長軸が、結晶構造の自然分極軸に実質的に平行である、成長させることと、
p型伝導率またはn型伝導率を誘導するために、超格子の単位格子の平均組成を、ワイダーバンドギャップ(WBG)物質に対応する平均組成からナロワーバンドギャップ(NBG)物質に対応する平均組成に、またはNBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えることと、を備える。
【0015】
好適には、p型伝導率は、
陽イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、WBG物質に対応する平均組成からNBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えること、または
陰イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、NBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に
変えること、によって誘導される。
【0016】
好適には、n型伝導率は、
陽イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、NBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えること、または
陰イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、WBG物質に対応する平均組成からNBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えること、によって誘導される。
【0017】
好適には、陰イオン-極性結晶構造は、窒素-極性結晶構造または酸素-極性結晶構造である。
【0018】
好適には、陽イオン-極性結晶構造は、金属-極性結晶構造である。
好適には、単位格子の平均組成は、継続的な方法または段階的な方法で、成長軸に沿って、変えられる。
【0019】
適切には、単位格子の平均組成は、単位格子の少なくとも2つの異なる層のうちの1つまたは複数の厚さを変えることによって変えられる。
【0020】
適切には、単位格子の厚さは、成長軸に沿って一定である。
適切には、単位格子の少なくとも2つの異なる層のうちの1つまたは複数の組成物は、以下の、
窒化ガリウム(GaN)と、
窒化アルミニウム(AlN)と、
窒化アルミニウムガリウム(AlxGa1-xN)、式中0≦x≦1と、
窒化ホウ素アルミニウムBxAl1-xN、式中0≦x≦1と、
窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlxGayIn1-x-yN)、式中0≦x≦1、0≦y≦1、及び0≦(x+y)≦1と、から選択される。
【0021】
適切には、単位格子の少なくとも2つの異なる層のうちの1つまたは複数の組成物は、以下の、
酸化マグネシウム(MgO)と、
酸化亜鉛(ZnO)と、
酸化マグネシウム亜鉛(MgxZn1-xO)、式中0≦x≦1と、から選択される。
【0022】
好適には、各単位格子の少なくとも2つの異なる層は、それぞれが、各層内の電荷キャリアのド・ブロイ波長未満の厚さを有する。
【0023】
好適には、各単位格子の少なくとも2つの異なる層は、それぞれが、弾性ひずみを維持するために必要な限界層厚さ以下の厚さを有する。
【0024】
適切には、方法は、さらに、誘導p型伝導率または誘導n型伝導率を強化するために、不純物ドーパントを、各単位格子の少なくとも2つの異なる層のうちの1つまたは複数の中に含むことを備える。
【0025】
別の形態では、複雑な半導体構造を形成する方法が提供される。方法は、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子を形成することを備え、半導体構造及び/または半導体超格子は、それぞれが、本明細書で先に説明した方法にしたがって形成される。
【0026】
適切には、複雑な半導体構造を形成する方法は、さらに、物質の極性の型を、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子間で反転させることを備える。
【0027】
適切には、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第1のものは、より大きな組成の変化を、成長軸に沿って有し、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第2のものは、より小さな組成の変化を、成長軸に沿って有する。
【0028】
適切には、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第1のものは、大きなp型伝導率を誘導し、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第2のものは、小さいp型伝導率を誘導する。
【0029】
別の形態では、発光ダイオード(LED)構造を形成する方法が提供される。方法は、
成長軸に沿って、ワイダーバンドギャップ(WBG)n型領域とナロワーバンドギャップ(NBG)p型領域との間に、極性結晶構造を有する半導体構造を成長させることであって、極性結晶構造内では、自然分極軸が成長軸に平行であり、半導体構造が、組成を、WBGn型領域に隣接するワイダーバンドギャップ(WBG)物質から、NBGp型領域に隣接するナロワーバンドギャップ(NBG)物質に、単調に変える半導体を備える、成長させること、
を備える。
【0030】
別の形態では、発光ダイオード(LED)構造を形成する方法が提供される。方法は、
成長軸に沿って、ワイダーバンドギャップ(WBG)n型領域とナロワーバンドギャップ(NBG)p型領域との間に、実質的に単結晶半導体から形成された少なくとも2つの異なる層を各々が備える複数の単位格子を備える超格子を成長させることであって、超格子が、極性結晶構造を有し、極性結晶構造内では、自然分極軸が成長軸に平行であり、単位格子が、平均組成を、WBGn型領域に隣接する単位格子内のワイダーバンドギャップ(WBG)物質に対応する平均組成から、NBGp型領域に隣接する単位格子内のナロワーバンドギャップ(NBG)物質に対応する平均組成に、単調に変える、成長させること、を備える。
【0031】
好適には、バッファ領域または転位フィルタ領域は、WBGn型領域またはNBGp型領域より前に基板上に成長させられる。
【0032】
適切には、WBGn型領域をNBGp型領域より前に成長させる場合、基板は、サファイア(Al2O3)基板または窒化アルミニウム(AlN)基板として選択され、またはNBGp型領域をWBGn型領域より前に成長させる場合、基板は、シリコン基板または窒化ガリウム(GaN)基板として選択される。
【0033】
別の形態では、本明細書で先に説明した方法に従って形成される、p型半導体構造またはn型半導体構造が提供される。
【0034】
別の形態では、本明細書で先に説明した方法に従って形成される、p型半導体超格子またはn型半導体超格子が提供される。
【0035】
別の形態では、本明細書で先に説明した方法に従って形成される、複雑な半導体構造が提供される。
【0036】
別の形態では、本明細書で先に説明した方法に従って形成される、発光ダイオード(L
ED)構造が提供される。
【0037】
別の形態では、極性結晶構造を有するp型またはn型の半導体構造が提供され、半導体構造は、極性結晶構造の自然分極軸に実質的に平行な成長軸を有し、半導体構造は、p型伝導率またはn型伝導率を誘導するために、組成を、ワイダーバンドギャップ(WBG)物質からナロワーバンドギャップ(NBG)物質に、またはNBG物質からWBG物質に、成長軸に沿って、単調に変える。
【0038】
別の形態では、実質的に単結晶半導体から形成された少なくとも2つの異なる層を各々が備える複数の単位格子を備える、p型半導体超格子またはn型半導体超格子が提供され、超格子は、極性結晶構造を有し、超格子は、極性結晶構造の自然分極軸に実質的に平行な成長軸を有し、超格子の単位格子の平均組成は、p型伝導率またはn型伝導率を誘導するために、ワイダーバンドギャップ(WBG)物質に対応する平均組成からナロワーバンドギャップ(NBG)物質に対応する平均組成に、またはNBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変わる。
【0039】
別の形態では、本明細書で先に説明した、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子を備える複雑な半導体構造が提供される。
【0040】
別の形態では、ワイダーバンドギャップ(WBG)n型領域とナロワーバンドギャップ(NBG)p型領域との間に形成された半導体構造を備える発光ダイオード(LED)構造が提供され、半導体構造は、極性結晶構造を有し、極性結晶構造内では、自然分極軸が結晶構造の成長軸に平行であり、半導体構造は、組成を、WBGn型領域に隣接するワイダーバンドギャップ(WBG)物質からNBGp型領域に隣接するナロワーバンドギャップ(NBG)物質に、単調に変える半導体を備える。
【0041】
別の形態では、ワイダーバンドギャップ(WBG)n型領域とナロワーバンドギャップ(NBG)p型領域との間に形成された超格子を備える発光ダイオード(LED)構造が提供され、超格子は、実質的に単結晶半導体から形成された少なくとも2つの異なる層を各々が備える複数の単位格子を備え、超格子は、極性結晶構造を有し、極性結晶構造内では、自然分極軸が結晶構造の成長軸に平行であり、単位格子は、平均組成を、WBGn型領域に隣接する単位格子内のワイダーバンドギャップ(WBG)物質に対応する平均組成から、NBGp型領域に隣接する単位格子内のナロワーバンドギャップ(NBG)物質に対応する平均組成に、単調に変える。
【0042】
別の形態では、
p型超格子領域と、
i型超格子領域と、
n型超格子領域と、
を備える半導体構造が提供され、
p型超格子領域とi型超格子領域とn型超格子領域とのうちの少なくとも1つは、ワイダーバンドギャップ(WBG)物質に対応する平均組成から、ナロワーバンドギャップ(NBG)物質に対応する平均組成への、またはNBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成への、平均組成の単調な変化を備え、分極の急激な変化が各領域間の界面において無いようにする。
【0043】
好適には、半導体構造は、さらに、p型超格子領域に隣接するp型GaN領域を備える。
【0044】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。
同一の参照番号が別々の図を通して同一または機能的に類似の要素を指す、添付の図面は、以下の詳細な説明と共に、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成し、特許請求される発明を含む概念の実施形態をさらに例示し、それらの実施形態のさまざまな原理と利点とを説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】金属極性配向(左側)または窒素極性配向(右側)のいずれかを有する、ウルツ鉱型III族金属窒化物結晶のスラブの断面図である。
【
図2】等しいAlNとGaNとの比率の整列バルク合金または2層超格子を表す、金属-極性ウルツ鉱型構造の周期構造の図である。
【
図3A】バルク物質から成る線形勾配領域を有する構造の図である。
【
図3B】
図3Aに例示した構造に対するバンドギャップ図である。
【
図3C】
図3Aに例示した構造に対する、誘導圧電電荷密度の空間的変動の図である。
【
図3D】
図3Aに例示した構造に対する、誘導焦電電荷密度の空間的変動の図である。
【
図3E】
図3Aに例示した構造に対する、空間的バンド構造の図である。
【
図3F】
図3Aに例示した構造に対する、面電子キャリア密度と面ヘビーホール(HH)密度との予測空間的変化の図である。
【
図3G】
図3Aに例示した構造に対する、最も低いエネルギー伝導帯端のゾーンセンター変化の詳細図である。
【
図3H】3つの最も高い位置にある価電子帯端のゾーンセンター変化の詳細図である。
【
図3I】
図3Aに例示した構造に対する、全空間的ゾーンセンターバンド構造の図である。
【
図3J】
図3Aに例示した構造に対する、金属-極性配向または窒素-極性配向と対比させた、予測伝導の詳細図である。
【
図3K】
図3Aに例示した構造に対する、金属-極性配向または窒素-極性配向と対比させた、予測価電子ヘビーホール(HH)の詳細図である。
【
図3L】構造からの光子のアウトカップリングの好適な方向を示した、
図3Aに例示した構造に対するものなどの、線形グレーディングされたバンドギャップに対する任意の光学検波効果の図である。
【
図3M】
図3Aに例示した構造のXRDシミュレーションの図である。
【
図4A】バルク物質から成る段階的勾配領域を有する構造の図である。
【
図4C】
図4Aに例示した構造の空間依存性全バンド構造の図である。
【
図4D】
図4Aに例示した構造に対して、ゾーンセンター伝導帯変化を成長距離の関数として示した図である。
【
図4E】
図4Aに例示した、HHバンド構造とLHバンド構造とCHバンド構造とに対して、ゾーンセンター価電子帯端変化を成長距離の関数として示した図である。
【
図4F】
図4Aに例示した構造に対して、誘導圧電電荷密度の空間的変化を示した図である。
【
図4G】
図4Aに例示した、誘導焦電電荷密度構造の空間的変化を示した図である。
【
図4H】
図4Aに例示した構造内で生成される、電子キャリア密度とヘビーホール(HH)キャリア密度とを示した図である。
【
図5A】固定の周期を有する、非意図的ドープ線形チャープ超格子組成を有する構造の図である。
【
図5B】
図5Aに例示した構造に対する、バンドギャップ図である。
【
図5D】
図5Cに例示した構造の全ゾーンセンター空間的バンド構造の図である。
【
図8】AlN/GaNの2つの反復から作られた、半無限超格子の空間的帯エネルギー図である。
【
図9】二元2層超格子を備える意図的整列超格子の価電子帯分散の図である。
【
図10A】圧電場と焦電場とを有さない、線形チャープ超格子の空間的バンド構造の図である。
【
図10B】分極場を適用した線形チャープ超格子の空間的バンド構造の図である。
【
図11A】線形チャープ超格子の、電子とヘビーホール価電子との量子化エネルギーの図である。
【
図11B】線形チャープ超格子の限定空間波動関数の図である。
【
図12A】いくつかの実施形態による、p-nダイオードの電気部分と光学部分とを生成するためのスタックの図である。
【
図12B】所望の平均合金組成を達成するための、超格子の単位格子内のGaN層とAlN層との厚さの図である。
【
図12C】
図12Aのスタック内のn:SLとi:CSLとの各々に対して、平均合金含有量を周期の関数として、成長軸に沿って示した図である。
【
図12D】
図12Aのスタックの伝導帯とヘビーホール帯との、計算された空間的エネルギー帯構造の図である。
【
図12E】
図12Aのスタック内で誘導される、電子キャリア密度と正孔キャリア密度との図である。
【
図12F】
図12Aのスタック内の、計算された最も低いエネルギーn=1量子化電子空間波動関数の図である。
【
図12G】
図12Aのスタック内の、計算された最も低いエネルギーn=1量子化ヘビーホール空間波動関数の図である。
【
図12H】
図12Aのスタック内の、最も低いエネルギーn=1量子化電子空間波動関数とヘビーホール空間波動関数との間の、計算された重なり積分の図である。
【
図13A】いくつかの実施形態による、p-i-nダイオードの電子部分と光学部分とを生成するためのスタックの図である。
【
図13B】
図13Aのスタックの伝導帯とヘビーホール帯との、計算された空間的エネルギー帯構造の図である。
【
図13C】
図13Aのスタック内に誘導される、電子キャリア密度と正孔キャリア密度との図である。
【
図13D】
図13Aのスタック内の、最も低いエネルギーn=1量子化電子空間波動関数とヘビーホール空間波動関数との間の、計算された重なり積分の図である。
【
図13E】
図13Aのスタックに対する、計算された光発光スペクトラムの図である。
【
図15】チャープ周期で一定のx
aveの超格子の、勾配パターン成長シーケンスの図である。
【
図16】X2+型またはX4+型の原子種から選択した中間層を使用した、ウルツ鉱型整列AlN/GaN超格子の極性型反転の図である。
【
図17】半導体構造を形成する方法のフロー図である。
【
図18C】
図18Aの半導体構造による別のデバイスの帯エネルギー構造の図である。
【
図18G-18H】
図18Aの半導体構造によるデバイスの帯エネルギー構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
熟練の技術者は、図中の要素が、単純さと明確さとのために例示されており、必ずしも正確な縮尺で描かれていない、ということを理解するものである。たとえば、図中の要素のうちのいくつかの寸法は、本発明の実施形態の理解の向上を助けるために、他の要素に対して誇張され得る。
【0047】
図面の構成要素は、適切な場合には、慣習的な記号によって表されており、本発明の実施形態を理解することに関する特定の詳細のみを示して、本明細書の説明の恩恵を受ける当業者には容易に明確になる詳細で本開示を不明瞭にしないようにしている。
【0048】
一般に、本発明は、ウルツ鉱型極性結晶構造などの極性結晶構造を有し、成長軸に沿って(成長方向)成長し、成長軸に実質的に平行な結晶構造の自然分極軸を有する、半導体構造または半導体超格子の成長に関する。そのような極性結晶構造は、通常、非反転対称性を有する結晶格子と、自然分極軸と、分極軸に沿って堆積した時の異なる成長方向と、を有すると特徴付けられる。
【0049】
超格子は、実質的に単結晶半導体から形成された少なくとも2つの異なる層を各々が備える、複数の単位格子を備える。好適な実施形態では、半導体超格子は、短周期超格子(SPSL)である。半導体構造または半導体超格子の特性は、半導体構造内の半導体の組成、または超格子の単位格子のバルクまたは平均組成を、成長軸に沿って単調に変えることによって作られる。そのような組成の変更は、また、本明細書では、グレーディングパターンまたはグレーディング領域とも呼ばれる。たとえば、半導体構造内の半導体の組成、または単位格子の平均組成は、継続的な方法または段階的な方法で、成長軸に沿って変えられる。
【0050】
好適な実施形態では、半導体の組成は、少なくとも1つの種類の、好適には、少なくとも2つの種類の金属原子陽イオンと、非金属原子陰イオンとを備える。しかしながら、いくつかの実施形態では、半導体の組成は、2つ以上の種類の非金属原子陰イオンを備える。たとえば、非金属原子陰イオンは、窒素または酸素であってよい。いくつかの実施形態では、半導体の組成は、組成内の少なくとも2つの種類の金属原子陽イオンのうちの1つまたは複数のモル分率を、成長軸に沿って変えることによって、変更される。いくつかの実施形態では、超格子内の単位格子の平均組成は、単位格子の少なくとも2つの異なる層のうちの1つまたは複数の厚さを変えることによって、変更される。好適な実施形態では、各単位格子の少なくとも2つの異なる層は、それぞれ、各層内の、電荷キャリア、たとえば、電子キャリアまたは正孔キャリアのド・ブロイ波長未満の厚さを有する。好適な実施形態では、各単位格子の少なくとも2つの異なる層は、また、それぞれ、弾性ひずみを維持するために必要な限界層厚さ以下の厚さを有する。
【0051】
好適な実施形態では、半導体構造の組成は、ワイダーバンドギャップ(WBG)物質からナロワーバンドギャップ(NBG)物質に、NBG物質からWBG物質に、成長軸に沿って、単調に変えられる。これは、p型伝導率またはn型伝導率を誘導し、半導体構造を、p型またはn型にすることができる。
【0052】
たとえば、p型伝導率は、金属-極性結晶構造などの陽イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、WBG物質からNBG物質に、成長軸に沿って、単
調に変えることによって誘導され得る。代替的に、p型伝導率は、窒素-極性結晶構造または酸素-極性結晶構造などの陰イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、NBG物質からWBG物質に、成長軸に沿って、単調に変えることによって誘導され得る。
【0053】
たとえば、n型伝導率は、金属-極性結晶構造などの陽イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、NBG物質からWBG物質に、成長軸に沿って、単調に変えることによって誘導され得る。代替的に、n型伝導率は、窒素-極性結晶構造または酸素-極性結晶構造などの陰イオン-極性結晶構造を有する半導体を成長させ、半導体の組成を、WBG物質からNBG物質に、成長軸に沿って、単調に変えることによって誘導され得る。
【0054】
同様に、好適な実施形態では、半導体超格子は、たとえば、p型伝導率またはn型伝導率を誘導するために、超格子の単位格子の平均組成を、ワイダーバンドギャップ(WBG)物質に対応する平均組成から、ナロワーバンドギャップ(NBG)物質に対応する平均組成に、またはNBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えることによって設計される。
【0055】
たとえば、p型伝導率は、金属-極性結晶構造などの陽イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、WBG物質に対応する平均組成からNBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えることによって誘導され得る。代替的に、p型伝導率は、窒素-極性結晶構造または酸素-極性結晶構造などの陰イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、NBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えることによって誘導され得る。
【0056】
たとえば、n型伝導率は、金属-極性結晶構造などの陽イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、NBG物質に対応する平均組成からWBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えることによって誘導され得る。代替的に、n型伝導率は、窒素-極性結晶構造または酸素-極性結晶構造などの陰イオン-極性結晶構造を有する超格子を成長させ、単位格子の平均組成を、WBG物質に対応する平均組成からNBG物質に対応する平均組成に、成長軸に沿って、単調に変えることによって誘導され得る。
【0057】
たとえば、LEDなどの半導体デバイスで使用するための複雑な半導体構造は、2つ以上の半導体構造及び/または半導体超格子から形成され得る。たとえば、複雑な半導体構造は、2つ以上の半導体構造及び/または半導体超格子を、互いの上に隣接して積み上げることによって形成され得る。必要な場合、物質の極性の型は、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの2つの間で反転され得る。
【0058】
発光ダイオード(LED)構造は、グレーディング領域を、たとえば、i型領域として、WBGn型領域とNBGp型領域との間で使用して、及び/またはグレーディング領域を、n型領域またはp型領域として使用することによって、形成され得る。このようにして、発光ダイオード(LED)構造は、分極の急激な変化が各領域間の界面において無いように、形成され得る。
【0059】
好適な実施形態では、半導体構造または半導体超格子は、III族金属窒化物(III-N)化合物、たとえば、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlxGa1-xN)、式中0≦x≦1、窒化ホウ素アルミニウムBxAl1-xN、式中0≦x≦1、または窒化アルミニウムガリウムインジウム(A
lxGayIn1-x-yN)、式中0≦x≦1、0≦y≦1、及び0≦(x+y)≦1、から形成される。しかしながら、半導体構造または半導体超格子は、他の化合物、たとえば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化マグネシウム亜鉛(MgxZn1-xO)、式中0≦x≦1、から形成され得る。いくつかの実施形態では、不純物ドーパントも、誘導p型伝導率または誘導n型伝導率を強化するために、半導体の組成内または各単位格子の少なくとも2つの異なる層のうちの1つまたは複数の中に、含まれる。
【0060】
III-N化合物は、ウルツ鉱型構造として分類される安定した六方晶系構造に、容易に結晶化する。これらのIII-Nウルツ鉱型構造は、基板上に堆積され得る。たとえば、III-Nウルツ鉱型構造は、原子的に平坦な2次元六方晶系基板面上に、エピタキシャルに堆積され得、3次元バルク結晶の有利に終端化した平面によって形成され得る。理想的には、基板は、原子的に平坦であり、均質な原子種の最上位の原子層から成る。さらに、表面層原子結合型及びインプレーン格子定数は、形成する格子整合または疑似形態エピタキシャル成長に合っている。
【0061】
ウルツ鉱型III-N結晶の特徴的な特性は、金属-窒素結合の高極性特性であり、それは、ウルツ鉱型結晶構造内の非対称を、(「結晶面」または「c面」としてしばしば知られている)基板表面に垂直に強制する。非ネイティブ結晶面上のエピタキシャル層を形成する第1の原子種(たとえば、窒素または金属)により、
図1に示す通り、2つの、固有で、物理的に区別可能なウルツ鉱型結晶方位がある。
図1に示す2つの結晶方位は、金属-極性100または窒素-極性120として知られており、金属-極性エピタキシー102または窒素極性エピタキシー122をそれぞれ有する。
【0062】
結晶面内の分極効果は、本発明のヘテロ構造内の異なる特性を操作するために活用され得る。代替的に、ウルツ鉱型III-N(wz-III-N)バルク状基板または厚いIII-N膜は、好適な結晶極性配向を、c面に垂直な方向に対して有して形成され得る。
【0063】
意図的整列疑似合金は、たとえば、
図2に示す基板200上のGaN210とAlN220とから成る単層(ML)膜または部分的単層膜を形成するために、正確に制御された堆積プロセスを使用して形成され得る。0.5ML GaN210から0.5ML AlN220の反復的な単位格子を使用して形成された理想的な超格子は、例示する理想的な整列のAl
0.5Ga
0.5N合金を形成することができる。しかしながら、単位格子を備える、他の層厚のGaN及びAlNも堆積され得る、ということを理解するものである。
図2に例示した構造は、理想的とみなされ、バルク合金内の、同等な、ランダムに配置された金属陽イオンに比較して、優れた圧電分極と焦電分極とを示す。
【0064】
図3Aは、半導体構造を、バルク状物質を用いて形成されたダイオード300という形態で示している。ダイオード300は、成長軸310に沿った順序で、n型Al
0.8Ga
0.2N WBGエミッタ330を含む、金属-極性成長を有する下側ウルツ鉱型金属層320と、WBGウルツ鉱型金属層320からNBGp型GaN接触層350に線形に遷移する、成長軸に沿った組成の線形変化を有する、真性Al
xGa
1-xN合金340という形態の勾配領域と、最後に、上側ウルツ鉱型金属層360と、を有する。下側ウルツ鉱型金属層320及び上側ウルツ鉱型金属層360は、ダイオード300に対する2つの電気接点を形成する、効果的な抵抗金属接点である。
【0065】
図3Bは、
図3Aのダイオード300に対応する、空間的組成またはバンドギャップエネルギーを示しており、どのようにバンドギャップが、勾配領域342上で、WBG物質332からNBG物質352に線形に遷移するかを示している。指示線343は、非線形な継続的遷移に対して勾配領域342で達成され得る、例示的な変化を示している。理解
される通り、
図3Bの、WBG物質332、勾配領域342、及びNBG物質352は、
図3Aの、WBGエミッタ330と線形グレーディング合金340とNBG接触層350とに対応する。
【0066】
wz-III-N物質内の分極場の基本動作の理解から、成長軸に沿った、(格子変形による)誘導圧電電荷プロファイル及び(自然分極による)焦電電荷プロファイルは、
図3Aに例示したダイオード300に対して、
図3Cと
図3Dとでそれぞれ示す通りに決定され得る。
【0067】
遷移領域内における、x(z)によって与えられる組成プロファイルを有するAlx(z)Ga1-x(z)NのAl%変化では、圧電電荷密度及び焦電電荷密度は、zの関数として変化し、電荷は、NBGp型GaN層に近づくにつれて減少する。
【0068】
c軸である自然分極軸に沿って堆積した、金属-極性エピタキシャル構造と窒素-極性エピタキシャル構造という2つの場合は、対照的な分極場を生成する。膜極性型との電荷サインのこの相関は、電子キャリア密度及び/または正孔キャリア密度を改善するために、有利に使用される。
【0069】
明白ではないが、成長軸310に沿って変化するそのような面電荷密度が暗示するものは、伝導帯端と価電子帯端とのゆがみが、膜の成長極性により、伝導帯端または価電子帯端をフェルミ準位に、効果的に「固定する」または移動させる、ということである。x(z)における変化は、各物質組成のインプレーン格子定数の違いにより、同等の変化を、位置依存ひずみテンソルにおいて生成する。バルク結晶格子定数のこの変化は、2軸ひずみを生成し、結晶の弾性変形を生成すると推測され、したがって、圧電電荷を誘導する。これらの実施例では、エピタキシャルスタックは、厚く、弛緩AlNバッファ上に疑似形態的に堆積すると仮定され、したがって、スタックは、AlNの独立バルクインプレーン格子定数までひずむ。他のバッファ層定数及び格子定数も可能である。しかしながら、厚さを、格子不整合物質が疑似形態的に堆積し得る厚さに制限するものは、限界層厚(CLT)である。この制限は、それぞれの単位格子が少なくとも2つの層の格子不整合組成を備える、単位格子を備える超格子を使用して改善され得、各層の厚さは、バッファインプレーン格子定数に対して、その層のCLT未満である。つまり、超格子は、本発明の実施形態により、平均組成の大きな変化を空間的に形成する能力を向上することができる。
【0070】
図3Eは、
図3Aに例示したダイオード300の全空間的(k=0)エネルギー帯構造を示しており、線形グレーディング合金340によって提供されるWBGからNBGへの遷移の、線形組成変化の効果を示している。非意図的ドープ組成変化領域は、n型WBGスラブとp型NBGスラブとの間に挟まれている。誘導空乏領域は、金属-極性配向成長の場合、価電子帯のフェルミ準位固定を生成する、n型WBG領域またはi型組成変化領域に向かって局部集中されている。
【0071】
図3Fは、
図3Aに例示したダイオード300の、面電子キャリア密度と面ヘビーホール密度との空間的変化を示している。AlGaN合金組成x(z)の線形空間的変化は、非意図的ドープ領域において、大きな正孔キャリア密度を誘導する。正孔は、したがって、p型GaN接触領域によって供給され、誘導p型領域内に運ばれる。空乏領域は、n型WBG領域に拡張し、線形組成領域の誘導p型挙動が、意図的イオン化ドナー密度よりも高いことを示す。
【0072】
図3G及び
図3Hは、
図3Aのダイオード300のエピタキシャル構造の図を、最も低いエネルギー伝導帯端EC(k=0、z)におけるゾーンセンター空間的変化(
図3G)と、v=HH、LH、及びCHである、3つの最も高い位置にある価電子帯端E
v(
k=
0、z)におけるゾーンセンター空間的変化(
図3H)と、について示している。
図3Gは、AlGaNを使用して形成されたp-i-nダイオードを示しているが、圧電電荷及び焦電電荷が零に設定されている場合である。
図3Hは、圧電電荷と焦電電荷とを考慮した、比較の結果を示している。分極電荷は、極性デバイスを設計する時には考慮されるべきである、ということを理解することができる。また、バルク状物質について、範囲0.0≦x(z)≦0.8のx(z)による、Al
x(z)Ga
1-x(z)N内のAl%の変化は、x(z)~0.65で発生するk=0において、最も低いエネルギー価電子帯内にクロスオーバーを有する。x<0.65の値では、物質は、ヘビーホール価電子帯を、支配的な正孔の種類として有し、一方で、x>0.65では、結晶場分裂価電子帯が支配的になる。
図3Iは、
図3Aのダイオード300の全空間的ゾーンセンターバンド構造を、エピタキシャル成長の2つの対照的な場合、すなわち、成長軸310に対する金属-極性配向または窒素-極性配向について示している。結果は、WBGからNBGへの成長軸に沿った組成遷移が、金属-極性成長ではp型挙動、または窒素-極性成長ではn型挙動を誘導することを示している。
【0073】
図3J及び
図3Kは、
図3Aのダイオード300の伝導空間的ゾーンセンターバンド構造と価電子ヘビーホール空間的ゾーンセンターバンド構造との図を、それぞれ、エピタキシャル成長の2つの対照的な場合、すなわち、成長軸310に対する金属-極性配向または窒素-極性配向について示している。膜極性の例示の効果は、デバイスの電子挙動に劇的に影響を与える。金属-極性膜では、非意図的ドープ線形合金組成変化x(z)は、p型挙動を誘導し、窒素-極性配向は、n型挙動を誘導する。各空乏領域は、対比され、デバイスの動作を決定する。この基本効果は、半導体構造、特にLED構造のために、有利に使用され得る。
【0074】
図3Lは、ダイオード300で生じる、線形グレーディングバンドギャップ領域に対する光学検波効果を示しており、構造からの光子のアウトカップリングの好適な方向を概略的に示している。再結合領域内に注入された、電子及び正孔は、空間依存バンドギャップにより、広い光学発光スペクトラムを生成することができる。好適には、再結合領域は、ダイオードの空乏領域に空間的に一致する。空乏領域内でn型WBG領域よりも少ないエネルギーを用いて生成された高エネルギー光子(つまり、短波長λ
S)は、低損失で、n型WBG物質330と基板320とを通って伝播することができ、一方で、前方伝播光子は、p型NBG物質350に向かって空間的に減少するバンドギャップ内で再吸収される。より長い波長の光子(λ
L)は、したがって、最上部のNBG層を通って優先的に発光される。大きく、非対称の、ビルトイン伝導帯ポテンシャルは、電子の自由移動J
e(z)を構造内で妨げる。吸収プロセスを通して再循環するこの光子は、p型領域性能を向上させることができる。
【0075】
図3Mは、
図3Aのダイオード300のX線回折(XRD)予測を示し、線形グレーディング合金の勾配領域特性344を示している。XRD分析は、特に勾配領域特性344を見る時には、エピタキシャル成長シーケンスを確認し、空間的組成変化を調整するために使用され得る。
【0076】
図4Aは、半導体構造を、バルク状物質の段階的変化を用いて形成されたダイオード400という形態で示している。ダイオード400は、成長軸410に沿った順序で、n型Al
0.8Ga
0.2N WBGエミッタ430を含む、金属-極性成長を有する下側ウルツ鉱型金属層420と、WBGウルツ鉱型金属層420からNBGp型GaN接触層450へ個別の段階で遷移する、成長軸に沿った組成の段階的な変化を有する、真性Al
xGa
1-xN合金440という形態の勾配領域と、最後に、上側ウルツ鉱型金属層460と、を有する。下側ウルツ鉱型金属層420及び上側ウルツ鉱型金属層460は、ダイオード400の2つの電気接点を形成する、効果的な抵抗金属接点である。
【0077】
図4Bは、
図4Aのダイオード400に対応するバンドギャップ図を示しており、どのようにバンドギャップが、段階441から段階447で、WBG物質432からNBG物質452に遷移するかを示している。理解される通り、
図4Bの、WBG物質432、勾配領域441~447、及びNBG物質452は、WBGエミッタ430と、段階的グレーディング合金440と、NBG接触層450と、に対応する。勾配領域441から勾配領域447内の段階は、大きくてよく、または小さくてよいが、たとえば、段階は、Al
0.792Ga
0.208Nである第1の段階441と、Al
0.784Ga
0.216Nである第2の段階442と、Al
0.0.016Ga
0.984Nである最後から2番目の段階446までの多くの段階で徐々に増えていき、Al
0.008Ga
0.992Nである最後の段階447と、を用いてグレーディングされ得る。
【0078】
図4Cは、
図4Aで例示したダイオード400の全空間的バンド構造を示しており、段階的グレーディング合金440によって提供される、WBGからNBGへの遷移の段階的組成変化の効果を示している。空乏領域は、誘導p型特性を有する線形チャープx
ave(z)領域とのn型Al
0.8Ga
0.2N界面で、形成される。
図4Dは、
図4Cの伝導帯変化を示しており、
図4Eは、
図4Cの価電子帯変化を示している。
【0079】
図4Eは、さらに、構造内で空間的に、v=HH価電子帯、LH価電子帯、及びCH価電子帯という順序のエネルギーにおける、クロスオーバーを示している。LED機能への応用では、横電(TE)偏光が、層の平面に対して実質的に垂直な光学発光のために生成されることは有利である。x(z)>0.65を有する高Al%部分は、CH価電子によって支配され、したがって、横磁(TM)偏光される。この問題は、物質の有効合金を定めるために超格子を使用することによって、解決され得る。たとえば、AlN層とGaN層とを超格子単位格子内で独占的に使用することは、平均組成x
aveの全ての値に対して支配的になるために、TE光学発光を選択する。
【0080】
図4Fは、異なるAlGaN組成間の格子不整合に対する調整による、誘導圧電電荷密度の空間的変化を示している。
図4Gは、
図4Aのダイオード400の合金組成内の変化による、誘導焦電電荷密度の空間的変化を示している。
図4Hは、
図4Aのダイオード400内で生成される、電子キャリア密度とヘビーホールキャリア密度とを示している。
【0081】
非意図的ドープ物質内の誘導正孔密度は、p型GaNの小さな意図的ドープ接触層よりも著しく大きい、ということを理解することができる。これは、金属接点電極を用いて十分に低い抵抗接点を作成するために、通常、半導体はヘビードープされる必要がある、という先行技術における長年の問題を、部分的に解決する。このようなヘビードーピング密度は、ホスト物質の品質を低減し、通常、キャリア移動度及び結晶構造が、不利に損なわれる。
図4Hの誘導ドープ領域は、置換ドーパントの使用なしに高活性正孔密度を示し、したがって、低い正孔移動度または悪い正孔輸送によって妨害されない、改善された正孔注入器または正孔リザーバを表す。さらに、バンド図は、約z=200nmから始まり約z=300nmで終わる誘導空乏領域を示し、それは、意図的ドープn型WBG領域と誘導p型領域との間に優位に位置している。
【0082】
図5Aは、半導体構造を、2層超格子を用いて形成したダイオード500という形態で示している。具体的には、ダイオード500は、成長軸510に沿った順序で、WBGエミッタ530をn型Al
0.8Ga
0.2N物質という形態で含む、金属-極性成長を有する下側ウルツ鉱抵抗接触層または金属層520と、WBGエミッタ530からp型GaNから形成されたNBG接触層550に遷移する、2層超格子540という形態の勾配領域と、上側ウルツ鉱型金属層560と、を有する。下側ウルツ鉱型金属層520及び上側ウルツ鉱型金属層560は、ダイオード500の2つの電気接点を形成する、効果的な抵
抗金属接点である。
【0083】
2層超格子540は、好適には、AlNとGaNとの両極のIII-N終点から選択された、2つの異なる二元組成物を備える。たとえば、AlxGa1-xN/GaN、またはAlxGa1-xN/AlN、AlyGa1-yN/AlxGa1-xN、式中x≠yの、他の組み合わせも可能である。また、単位格子当たり3つ以上の層、たとえば、AlN/AlxGa1-xN/GaNという形態の3層スタックを使用することも可能である。二元成分物質の使用は、最も大きな面電荷シート密度を、各ヘテロ接合界面において生成する。2層超格子540内の各2層周期は、たとえば、5nm(1nmのLGaN及び4nmのLAlN)の固定の厚さと、可変の組成とを有して、組成が、WBGエミッタ530に隣接する0.8のxaveを有する[AlN/GaN]単位格子から、NBG接触層に隣接する0.01のxaveに遷移するようにする。単位格子の厚さは、至る所で一定に保たれ得、GaNとAlNとの厚さであるLGaNとLAlNとの割合は、所望のxaveを生成するように選択され得、単位格子は、組成AlxaveGa1-xaveN≡[LGaN/LAlN]xaveの同等バルク状合金として挙動する。
【0084】
図5Bは、
図5Aのダイオード500に対応する空間的バンドギャップの大きさを示しており、どのようにバンドギャップが、勾配領域542上で、WBG物質532からNBG物質552に遷移するかを示している。理解される通り、
図5の、WBG物質532、勾配領域542、及びNBG物質552は、WBGエミッタ530と、2層超格子540と、NBG接触層550とに対応する。
【0085】
図5Cは、半導体構造を、
図5Aのダイオード500の変形物であるダイオード501という形態で示している。
図5Cのダイオード501と
図5Aのダイオード500との間の違いは、ダイオード500のWBGエミッタ530が、x
ave=0.8の、n型超格子(n:SL)531、好適にはSPSLに置き換えられていることである。n:SL531は、一定周期を有し、n型伝導率のためにドープされている。いくつかの周期のみを例示しているが、n:SL531は、たとえば、50を超える周期を備えることができ、一方で、勾配領域、つまり、2層超格子540は、1000を超える周期を備えることができる。
図5Dは、
図5Cに例示したダイオード501の全空間的バンド構造を示しており、2層超格子540のグレーディングの効果を示している。伝導帯端及び価電子帯端は、成長軸に沿って、AlN層とGaN層との間の各ヘテロ接合を用いて変調される。n:SL531は、空乏領域を、グレーディングSLの誘導p型領域間に形成し、p型GaN層を用いて上限を決められる。i:SLグレーディング領域は、バルク状組成グレーディングを使用して達成され得るものよりもほぼ5倍大きい正孔密度を誘導する。
【0086】
ヘテロ接合と超格子とに対して、どのようにウルツ鉱型III-N膜極性が動作するかということに関する理解に基づいて、好適なエピタキシャル構造を、特定の極性型に対して決定することができる。設計目的が、合金組成グレーディングまたは有効合金組成グレーディングを使用することによる、正孔-キャリア密度の増加を達成することである場合、エピタキシャル成長シーケンスは、金属-極性配向または窒素-極性配向に対してそれぞれ、「p型UP」設計または「p型DOWN」設計のうちの1つから選択され得る。
【0087】
図6は、(時には、成長方向「z」と呼ばれる)成長軸610に対する金属-極性膜成長のための、金属-極性「p型UP」LED構造600を示している。不純物ドーピングのみを用いて達成可能なもの以上の誘導正孔密度を達成するために、LED構造600の中央部分は、勾配領域650を有し、勾配領域650は、WBG組成からNBG組成に、成長軸610に沿って成長を増加させながら遷移し、成長軸610は、自然分極軸、この場合は、ウルツ鉱型結晶構造のc軸に平行である。
【0088】
成長軸610に沿った順序で、LED構造600は、基板620と、バッファ領域または転位フィルタ領域630と、n型WBG領域640と、勾配領域650と、NBGp型領域660と、を備える。好適には、基板は、たとえば、c面配向サファイア(0001)表面を有する実質的に透明なサファイア(Al2O3)基板、またはウルツ鉱型AlNなどのネイティブIII-N基板である。抵抗金属接点670及び抵抗金属接点672が提供され、光窓680が、LED構造600の上部からの光の伝達を可能にするように提供され得る。光は、代わりに、または追加的に、基板620を通って伝達され得る、ということを理解するものである。さらに、バッファ領域630は、代わりに、またはむしろ、転位フィルタ領域であってよい。
【0089】
n型WBG領域640は、好適には、n型WBG層または、一定周期と一定有効合金組成とのn型ドープ超格子としてのドープ領域という形態である。勾配領域650は、その後、n型WBG領域640上に、成長軸610に沿った距離の関数として変化する有効合金組成を用いて形成され得る。勾配領域650は、所望の変化をバンド構造内に形成して、WBG組成からNBG組成への遷移を形成する。任意で、勾配領域650の少なくとも一部を、不純物ドーパントでドープすることができる。たとえば、p型不純物ドーパントは、任意で、勾配領域650内に統合され得る。好適な形態では、勾配領域650は、xave=x(z)=xWBG-[xWBG-xNBG]*(z-zs)k、式中zsはグレーディングの開始位置である、によって与えられる、各単位格子の平均合金組成の空間プロファイルを達成するために選択された組成プロファイル「k」を有する、Alx(z)Ga1-x(z)または[AlN/GaN]超格子を備える。
【0090】
NBGp型領域660は、勾配領域650上に堆積させられ、理想的には、勾配領域650によって達成される最終組成と同様の有効合金組成を有する。これは、勾配領域650とNBGp型領域660との間のヘテロ接合界面において誘導され、ポテンシャル障壁を軽減する。好適な形態では、NBGp型領域660は、ドープ超格子またはバルク型III-N層である。
【0091】
p型GaN層などのキャップ層は、任意で、最終キャップ層として堆積させられて、抵抗接触を改善し、正孔のソースを提供することができる。
【0092】
LED構造600の基板620の光学的透明性は、勾配領域650内から生成される光学発光が、有利に伝播して、n型WBG領域640を通り、バッファ領域630を通り、最終的に低吸収性損失を有する基板620を通って、デバイスから出ることを可能にする。光は、また、構造600の上部から垂直に逃げるが、NBGp型領域660は、光のより短い波長を効果的にフィルタにかけ、したがって、LED構造600の上部と下部とからの光出力に対では、波長応答の非対称があり得る。勾配領域650内から生成される光は、また、成長軸610の関数である勾配屈折率を有する「導波管」モードが、光を平面内にさらに閉じ込めるにしたがって横方向にも逃げる。
【0093】
図7は、成長軸710に対する窒素-極性ファイル成長のための、窒素-極性「p型DOWN」LED構造700を示している。不純物ドーピングのみを用いて達成可能なもの以上の誘導正孔密度を達成するために、LED構造700の中央部分は、勾配領域750を有し、勾配領域750は、NBG組成からWBG組成に、成長軸710に沿って成長を増加させながら遷移し、成長軸710は、自然分極軸、この場合、ウルツ鉱型結晶構造のc軸に実質的に平行である。
【0094】
成長軸710に沿った順序で、LED構造700は、Si(111)などの実質的に不透明な基板、またはGaNなどのNBGネイティブIII-N基板、という形態の基板720と、バッファ領域730と、NBGp型領域740と、勾配領域750と、WBGn
型領域760と、を備える。抵抗金属接点770及び抵抗金属接点772が提供され、光窓780は、LED構造700の上部からの光の伝達を可能にするように提供され得る。バッファ領域730は、代わりに、またはむしろ、転位フィルタ領域であってよい、ということを理解するものである。
【0095】
NBGp型領域740は、好適には、p型NBG層、または一定周期と(xave=NBG組成を有する)一定の有効合金組成または平均合金組成とのp型ドープ超格子という形態である。勾配領域750は、その後、NBGp型領域740上に、成長軸710の関数として変化する有効合金組成を用いて形成される。勾配領域750は、バンド構造内の所望の変化を形成して、NBG組成からWBG組成への遷移を形成する。任意で、勾配領域750の少なくとも一部を、不純物ドーパントでドープすることができる。好適な形態では、勾配領域750は、xave=x(z)=xNBG+[xWBG-xNBG]*(z-zs)kという組成プロファイル「k」を有する、Alx(z)Ga1-x(z)または[AlN/GaN]超格子を備える。
【0096】
WBGn型領域760は、前記勾配領域750上に堆積させられ、理想的には、勾配領域750によって達成される最終組成と同様の有効合金組成を有する。これは、ポテンシャル障壁が、勾配領域750とWBGn型領域760との間のヘテロ接合界面において誘導されることを軽減する。好適な形態では、WBG領域は、ドープ超格子またはバルク型III-N層である。
【0097】
n型AlxGa1-xN(x≧0)層などのキャップ層は、任意で、抵抗接触を改善し、電子のソースを提供するように堆積させられる。
【0098】
図7に例示したLED構造700は、Si(111)などの不透明基板720を使用して形成され得、不透明基板720は、勾配領域750内から生成される光波長に対して、高吸収係数を有する。光は、好適には、適切な抵抗接触物質772の開口部及び/または窓780という形態の、光の出口を通って垂直に逃げる。より短い波長光は、NBG領域内で優先的に吸収され、さらなる電子と正孔とを、再吸収を通して作成する。高品質なp型GaNネイティブ基板またはp型SiC基板も使用することができる、ということが予期される。
【0099】
超格子構造は、好適には、物質構造結晶品質を改善し(より低い欠陥密度)、電子と正孔とのキャリア輸送を改善し、そのような短い長さの規模でのみ入手可能な量子効果を生成するために、使用される。バルク型III-N物質とは異なり、超格子は、新しく、有利な物理的特性を、特に、
図6と
図7とに例示したものなどのダイオード構造とLED構造とに関して、導入する。AlNとGaNとの2層ペアなどの少なくとも2つの異なる半導体組成物を備える均一周期超格子は、(i)トンネル障壁形態内と障壁形態上との両方で、実質的に成長軸(z)に沿った超格子量子化ミニバンド輸送チャンネルと、(ii)エネルギー運動量分散を歪ませるための、周期性誘導バンド変形と2軸ひずみ誘導バンド変形との両方による、超格子層の平面内でのキャリア移動度の改善と、の両方を提供するように作られ得る。超格子は、また、構成要素層を、それらの限界層厚よりも少なく堆積させることによって、ひずみの蓄積を軽減することができる。適合した導電帯及び価電子帯が可能にする、エネルギーと空間波動関数確率とを有する超格子は、本明細書で説明する空乏場などの大きなビルトイン電場によって操作され得る。たとえば、一定周期SLは、高結合構造を示し、成長軸に沿って、構造を通る効率的なキャリア輸送チャンネルを生成するように、成長され得る。部分的非局在化波動関数の高連結特性は、大きな内部電場によって容易に壊され得、連結NBG領域を本質的に分離する(つまり、隣接するNBG領域間の通信がない)。これは、LEDアプリケーションにとっては有利であり得る。
【0100】
超格子量子化ミニバンド輸送チャンネルは、成長軸(z)に沿った輸送を改善し、選択的エネルギーフィルタを生成するために使用され得る。改善されたキャリア移動度は、メサ型構造を備える従来のデバイス設計における電流集中制限を劇的に減少させるために使用され得る。反対に、同じ超格子構造は、本明細書で開示する構造内に生成される空乏領域などの大きな電場に曝されることによって、動作を変えられ得る。
【0101】
バルクIII-N半導体は、直接バンド構造によって特徴付けられ得、直接バンド構造は、基となる原子対称性によって決定される物質のエネルギー運動量分散に、特に関連して定められる。直接バンドギャップIII-N物質は、したがって、ゾーンセンターk=0において最小エネルギーを有する、最も小さいエネルギー伝導帯分散と、その最大値がまたゾーンセンターk=0に位置する、最も高い位置にある価電子帯分散とを、同時に生成する構造である。
【0102】
光吸収プロセス及び光学発光プロセスは、したがって、エネルギー運動量空間における垂直遷移として、また、フォノン運動量保存のない主に第1オーダーのプロセスとして、発生する。ド・ブロイ波長の長さスケール上にもある超格子周期ポテンシャルは、原子結晶周期性を、重複超格子ポテンシャルを用いて変調し、それによって、エネルギー運動量バンド構造を、重要な方法で変える。
【0103】
図8は、1つの単分子層のGaNから3つの単分子層のAlNという反復単位格子を備える半無限2層二元超格子の予測空間的帯エネルギーを示している。超格子は、計算を単純化するために、周期的境界条件を用いて示されており、完全に弛緩したAlNバッファにひずんでいる。
図9は、バルク概算で使用された放物分散から大きく歪んだ逸脱を示している、疑似非局在化n
SL=1HH帯とLH帯とCH帯とを有する、予測価電子帯エネルギー運動量分散を示している。その結果、価電子帯キャリア、すなわち、HHとLHとCHとの有効質量は、バルク状合金におけるそれらの同等物から変えられている。説明する超格子の重要な態様は、最も低いエネルギー量子化導電状態と最も低いエネルギー量子化HH状態との間の光学発光遷移に対して、HHが支配的バンドのままである、ということである。したがって、超格子は、x~0.65でTEからTMへの遷移があるバルク状Al
xGa
1-xNとは異なり、0≦x
ave<1でTE特性を保持する。この特性は、垂直発光デバイスでは必須である。
【0104】
構成物質バルク物質の自由格子定数の10倍以下の周期を有する短周期超格子は、インプレーンエネルギー運動量が明白に異なる新しい疑似合金を、それらの同等なバルク状ランダム金属分散合金の対応物から形成する。さらに、二元AlN/GaN超格子は、新しく、同等バルク状合金よりも改善された特性を生成することができる、新しいクラスの整列合金を形成する。光吸収プロセス及び光学発光プロセスは、通常、超格子バンド構造のオフゾーンセンター(k≠0)の影響を考慮する必要がある。本場合では、k=0、及び最も低いエネルギー量子化、及び空間波動関数のみ(本明細書では、nSL=1状態として表示する)が、使用され、実験的に十分であることが分かっている。
【0105】
電気分極場は、チャープまたは意図的プロファイルバンド構造の光学的特性に対して効果を有し得る。たとえば、2つの反対の位置にあるAlNクラッド層の間に挟まれた線形チャープ2層[AlN/GaN]超格子を考える。
図10A及び
図10Bは、この非意図的ドープ構造の予測空間的バンド構造を示している。具体的には、
図10Aは、圧電場と焦電場とが無い、ゾーンセンターバンド構造を示しており、
図10Bは、成長軸(z)に沿って複雑なビルトイン電場を生成している、分極場を適用したゾーンセンターバンド構造を示している。結果として生じる成長軸(z)に沿ったビルトイン電場は、焦電(自然)効果と圧電効果とにより各ヘテロ接合で誘導された電荷に、もっぱら起因するものである。超格子の各周期は、一定に保たれ、i番目の周期での平均合金含有量は、Λ
i
SL=
L
i
AlN(z)+L
i
GaN(z)であるように、厚さL
i
AlN(z)と厚さL
i
GaN(z)とを有している。導電帯端とヘビーホール価電子帯端とにおける(つまり、ゾーンセンター波動ベクトルk=0における)急激な空間変調は、AlNとGaNとの各遷移のヘテロ接合において形成された、原子的に急激な界面を示す。原子的に粗い界面は、ポテンシャル井戸を効果的に広げるが、そうでなくても、同様な挙動になる。代替的な実施形態では、各ヘテロ接合での界面の粗さは、同等のAlGaN中間層を使用して、したがって、3層単位格子を形成して説明され得る。
【0106】
図11A及び
図11Bは、最も低いエネルギーの計算キャリア空間波動関数と、構造内で許される量子化エネルギーレベルとを示している。本実施例において明確さのために使用される比較的厚いAlN障壁は、障壁への波動関数トンネリングが、ヘビーホールと比較して、より軽い有効質量電子に対して顕著であることを示している。量子化n=1電子波動関数固有エネルギーと正孔波動関数固有エネルギーとでは、一般的な傾向は、NBG物質の厚さが増加するにつれて、NBGポテンシャル井戸の中にさらに落ちることである。
【0107】
非線形電場は、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を各GaN量子井戸で生成し、反対QCSEを各障壁(AlN)で生成する。ビルトイン電場の兆候は、物質の成長極性に依存する。ビルトイン場により各ポテンシャルエネルギーミニマム内に閉じ込められた、結果的な波動関数確率密度は、より低いポテンシャルエネルギー界面に向かって空間的にゆがめられる。
【0108】
電子波動関数最大値及びヘビーホール波動関数最大値は、ポテンシャルミニマムの両側に空間的に分けられ、より大きなGaN層の幅では悪化する、ということを理解することができる。これは、増加するGaNの厚さに対して、電子波動関数とHH波動関数との重なりが減少することを明らかにし、誘導励起子振動子強度の減少により、分極誘導透明性を作成する。反対に、より薄いGaN層は、n=1導電波動関数とHH波動関数との重なりを改善し、したがって、光学遷移の確率を高め、発光確率を高める。これは、
図12Hと
図13Dとに示されている。
【0109】
図12Aは、いくつかの実施形態による、p-nダイオードの電気部分と光学部分とを生成するためのスタック1200を示している。スタック1200は、基板SUBを備える。SUBは、成長軸1205に沿った金属-極性成長配向性を有するウルツ鉱型III-N組成の形成を促進する、物質1208から作られている。n型WBGバッファ層(n:WBG)1210は、バルク状合金として、または固定平均組成単位格子超格子として、SUB上に堆積される。次に、n型SL(n:SL)が、平均合金含有量x
ave_nを使用して、n:SL上に形成される。たとえば、n:SLは、x
ave_n=0.8を用いて形成された、50周期SLであってよい。好適には、単位格子厚1211及び層厚は、所望の発光波長λ
exまで実質的に透明な(吸収しない)n:SLを形成するように選択される。
【0110】
次に、意図的に不純物をドープされていないグレーディングSL(i:CSL)が形成される。i:CSLは、置換不純物ドーピング制限のないデバイス内の奥深くに、高い正孔密度を誘導するために使用される。i:CSLは、単位格子の少なくとも一平均組成を、成長軸に空間的に沿って、WBG組成からNBG組成に変える。たとえば、グレーディングは、平均Al%を変化させる間各単位格子の全体的な厚さ1212を一定に保ちながら、xave_CSL=0.8を有するWBG組成とxave_CSL=0.0を有するNBG組成とを有して、25単位格子(つまり、25周期)で発生するように選択される。p型GaN(p:NGB)を備える任意の接触層は、完成したi:CSL上に堆積される。i:CSLの単位格子厚さを、成長軸の関数として変化させることも可能であるが、
これは、前記単位格子の平均組成が、本明細書で開示する正しいグレーディングに従う限りにおいてである。
【0111】
i:CSL及びn:SLは、GaNの層1207とAlNの層1209とを備える2層単位格子から形成され得る。超格子組成の他の選択肢も可能であり、単位格子の組成は、また、周期毎に変えられてよい。たとえば、単位格子周期は、2MLのGaNと4MLのAlNとを合わせた厚さと同等であるように選択される。
図12Bは、2層単位格子x
aveの平均合金組成を達成するために必要な、GaNの層厚1220とAlNの層厚1222とを示している。
図12Cは、また、平均合金変化を、成長軸1205の関数として、n:SLとi:CSLとの各々について示している。曲線1223は、定数x
ave_n=0.8がn:SLに対して選択されていることを示しており、一方、曲線1224は、線形x
ave(z)グレーディングがi:CSLに対して選択されていることを示している。
【0112】
スタック1200の誘導空間的エネルギー帯構造は、
図12Dに示されている。1230で示されたn:SLは、Si不純物を用いて、N
D=50x10
18cm
-3のドーピングレベルに、意図的にドープされている。i:CSLは、誘導p型部分1233と、空乏領域1232とを示している。p:NGB1234に接しているi:CSLの部分は、フェルミエネルギーに固定されたヘビーホール価電子帯を示している。したがって、n:SL/i:CSL/P:GaNダイオードは、
図12Eでさらに示す通り、さらなる誘導p型領域を用いて形成される。
【0113】
図12Eは、空間的キャリア密度を、成長軸に沿って示している。キャリア密度は、意図的にドープされ、n:SLによる結果として生じる電子キャリア密度1235と、意図的p型GaNドーピング密度1239と、を含む。価電子帯の縮退が、活性ドーピング密度を、格子内の面ドーピングに対して減少させる、ということに留意する。大きな誘導HH密度1237を有するi:CSLの部分は、n-i-pダイオードを定める、結果として生じる空乏領域1236と共に示されている。
【0114】
最も低いエネルギー帯端量子化状態は、デバイスの電子特性と光学特性との大部分を決定するために十分である。
図12F及び
図12Gは、導電帯とHH価電子帯とにおける計算n=1状態を、それぞれ示している。導電帯及びHH帯は、両方とも、短周期n:SLにより部分的に非局在化された波動関数1242と波動関数1246とによって示される通り、ミニバンド形成を示す。i:CSLの誘導p型領域によって作られる空乏領域は、n:SLの部分の中まで貫通し、領域1241と領域1246とにおける波動関数カップリングを効果的に破壊する。領域1241と領域1246との中に閉じ込められた電子波動関数及びHH波動関数は、デバイスの再結合領域、したがって、n=1導電状態とn=1HH状態との間の直接遷移による発光エネルギースペクトルを決定する。
【0115】
図12Hは、n=1HH波動関数を有する全てのn=1導電状態間の、計算空間的重なり積分を示している。光学遷移に対する最も高い振動子強度は、領域1250で発生し、一方で、より広いGaN厚を有するi:CSLの部分は、比較的悪い重なり1255のみを作る。この効果は、分極誘導透明性をp型状領域内に作るために、非常に有利である。任意のp型GaN層は、また、より高いエネルギー光子が、構造の中に逆反射し、基板からアウトカップリングすることを可能にするために、取り除かれてよい。完全な発光スペクトラムが、
図12Iに示されており、デバイス内に作られ、n:SLとi:CSLとの間に局部集中する空乏領域による強励起子発光ピーク1256を示している。より小さな寄与1258は、i:CSL領域によるものである。
【0116】
図13Aは、いくつかの実施形態による、p-i-nダイオードの電気部分と光学部分
とを生成するためのスタック1300を示している。超格子は、やはり、二元ウルツ鉱型GaN層1207とAlN層1209と金属-極性成長とを有する単位格子から作られている。しかしながら、スタック1300は、意図的にドープされていない、追加的なi型SL(i:SL)を備える。i:SLは、n:SL上に形成されている。i:SLは、n:SLが吸収することができるエネルギーよりも著しく小さい光の発光エネルギーを達成するように、特に調整されている(つまり、n:SLの吸収端は、i:SLの発光エネルギーよりも大きいエネルギーを有するように設計されている)。たとえば、n:SLは、1ML GaNと2ML AlNとを、50反復で有する単位格子1310から成る。その後、i:SLは、2ML GaNと4ML AlNとを、25反復で備える単位格子1311を選択することによって、約246nmの発光エネルギーを有するように選択される。しかしながら、より長い周期またはより短い周期を、n:SLの作成とi:SLの作成との両方で使用することができる。
【0117】
n:SLとi:SLとの両方は、同じ平均合金組成、すなわち、xave_n=2/3とxave_i=4/6=2/3(つまり、xave_n=xave_i)とを有する。したがって、分極電荷は、平衡を保たれ、p型挙動またはn型挙動を誘導しない。これは、電子と正孔との改善された再結合領域をデバイス内に作るために、特に有利である。グレーディングSL(i:CSL)は、WBG平均組成からNBG平均組成に変化する単位格子を用いて形成される。i:CSL単位格子厚は、ほぼ一定に保たれ、3ML GaNと6ML AlNとの単位格子と同等である。各連続する単位格子内の層の厚さは、2/3≦xave_CSL(z)≦0という所望のグレーディングプロファイルを成長軸1205に沿って達成するために、厚さを1/2MLずつ増加させて変えられる。これは、わずか18単位格子で達成され得るが、より少ない単位格子またはより多い単位格子も使用することができる。
【0118】
図13Bは、n:SL1310とi:SL1312とi:CSL1314との中の空間的エネルギー帯構造を、任意のp型GaN領域1316にと共に示している。i:CSLは、フェルミエネルギーへのHH価電子帯の固定を誘導する。
【0119】
スタック1300内の誘導キャリア密度が
図13Cに示されており、大きな、電子キャリア密度1318及びHHキャリア密度1322が、空間的に生成されている。p型GaN領域1326内の意図的ドープ密度は、デバイスの空乏領域1320と共に示されている。
【0120】
図13Dは、励起子発光に対する、計算による空間的な導電とHHとの重なり積分(つまり、振動子強度)を示している。励起子発光は、i:SLと重なる領域1330に明らかに局所化されている。NBG組成を備えるi:CSLの大部分による分極誘導透明領域1332は、重なり積分に大きく寄与していない。
【0121】
図13Eは、スタック1300の発光スペクトラムを示しており、主ピーク1338は、i:SLにより、より小さな寄与1340は、i:CSL領域による。n:SLは、1336と表示された特徴を作り、それは、通常、位相空間吸収/発光クエンチングにより抑えられている(つまり、全ての状態が完全に占領されており、インプレーン波動ベクトルk
||~0に対する位相空間吸収充填により、光学的プロセスに参加することができない)。
【0122】
図14は、好適にはサファイアなどの透明基板である基板1420と、バッファ層及び/または転位フィルタ層1430と、一定周期と一定x
aveとのn型超格子(n:SL)という形態のn型領域1440と、i型超格子(i:SL)という形態の勾配領域1450と、p型超格子(p:SL)またはバルク型接触領域1460と、金属接点1470
及び金属接点1472と、光窓1480と、を有するLED構造1400を示している。
【0123】
光λLは、光窓1480から発光され得、光λSは、基板1420を通って発光され得る。さらに、光は、構造から、端部発光ベクトルλEを介して逃げることができる。成長軸(z)に沿った金属-極性配向上に成長した線形チャープ勾配領域1450では、勾配領域1450は、より長い波長の光λLを、光窓を通して発光し、一方で、より短い波長の光λSは、基板を通して発光される。これは、勾配領域1450によって提供される、空間的に変化する有効バンドギャップ領域内での光の発光に対する「光ダイオード」効果の直接の結果であり、DUV LEDアプリケーションには特に有益であり得る。
【0124】
別の勾配パターン成長シーケンスは、xaveの2層ペア定数を保ちながら、周期厚を、成長軸に沿った距離の関数として変化させることである。このような構造は、n型領域とp型領域との調整可能な光学特性を別々に形成して、i型領域内で再結合するために使用され得る。つまり、xaveを一定に保つが、超格子の周期を変化させることによって、
[n:SL xave1、Λ1]/[i:SL xave2、Λ2]/[p:SL xave3、Λ3]
という形式のLEDスタックの光学特性を調整することが可能であり、
各超格子の有効Al%は、xave1=xave2=xave3=定数であるように、p-n構造を通して一定に保たれ、成長方向(z)から独立している。この場合は、平均合金組成が保たれるため、誘導p型領域または誘導n型領域を作らない。
単位セルを繰り返す超格子の周期、たとえば、(Λ1=Λ3)<Λ2は、xave1=xave2=xave3であるように作られ、したがって、i:SLは、p:SLとn:SLとのうちの少なくとも1つの対応するn=1遷移よりもエネルギーが小さい、n=1電子とヘビーホール価電子帯との間の量子化エネルギー遷移を有する。利点は、超格子単位格子(たとえば、2層AlN/GaNペア)のインプレーン格子定数の効果的な格子整合であり、それは、ひずみの蓄積を軽減し、不整転位による欠陥密度を減少させる。
【0125】
上記の実施例の延長は、広帯域発光デバイスを形成するためのキャリアミニバンド注入と再結合とに適切な線形チャープバンド構造を形成するための、i:SLの周期の準連続的な変化である。
【0126】
[n:SL x
ave1=定数、Λ
1=定数]/[i:SL x
ave2(z)、Λ
2(z)]/[p型GaN]
を示している、
図14のLED構造を考える。
【0127】
i:SL領域の組成は、成長軸に沿って、単位格子を備える異なる組成層の厚さの割合によって制御される平均合金組成を用いて、変えられる。GaNとAlNとの2つの二元組成物の場合では、単位格子の平均Alモル分率は、本明細書では、xave=LAlN/(LGaN+LAlN)として定義され、AlxaveGa1-xaveNという同等バルク状整列合金を表している。周期から周期の単位格子厚ΛSL=(LGaN+LAlN)も、変えられ得る。このような場合では、各単位格子の平均合金組成は、誘導n型領域または誘導p型領域を達成するために必要な、または分極の平衡を保ち、帯端のゆがみを防ぐために必要な、勾配または傾向を、成長軸に沿って守る。
【0128】
図15は、チャープ周期と一定のx
ave超格子構造とを有する勾配領域1500に対する、さらなる勾配パターン成長シーケンスを示している。部分(Λ
1
SL-Λ
4
SL)の各々は、同期が増加しながら変化する、4つの順番に積み重ねられた超格子を有する、N
p=25の反復を備える。各超格子の平均合金含有量は、一定に保たれている。しかしながら、各スタック内の単位格子の周期は、厚さを変えることによって変えられる。
【0129】
多くの基板は、ウルツ鉱型III-Nエピタキシー、すなわち、(i)ネイティブ基板と(ii)非ネイティブ基板と、を達成するために調査されてきた。現在、バルクネイティブGaN基板及びバルクネイティブAlN基板は、存在する、しかしながら、それらは、非常にコストが高く、小さなウエハ径としてのみ利用可能であり、それは、たとえば、LEDや電力トランジスタなどの高ボリュームアプリケーションへの広い普及を大幅に制限している。
【0130】
非ネイティブ基板は、III-Nエピタキシーでは最も普及しており、単なるコスト削減と大きなウエハ径以外の他の利点を提供している。III-Nエピタキシーに対して最も人気のある非ネイティブ基板は、サファイア及びシリコンである。たとえば、MgO、CaF2、及びLiGaOなどの、多くの他の非ネイティブ基板が存在する。
【0131】
サファイアは、機械的硬度と、深UV光透過性と、非常に広いバンドギャップと、その絶縁特性とにより、高Al%III-Nエピタキシーのための、強力な商業的及び技術的な有用性を提供する。サファイアは、CZなどのバルク結晶成長法を使用して容易に成長し、非常に高品質な構造品質単結晶ウエハとして製造可能であり、主に、r面、c面、m面、及びa面で利用可能である。C面サファイアは、III-Nエピタキシーに適合する、重要なテンプレート面である。
【0132】
多くの研究がwz-III-N/c面Al2O3についてなされたにもかかわらず、これらの金属酸化物表面上のIII-Nのエピタキシャル品質をさらに改善するための大きな機会がまだ存在する。多くの試みが、r面とa面とm面とのサファイア上の、半極性III-Nエピタキシーと非極性III-Nエピタキシーとに対して行われ、限定的な改善が、六方晶系c面サファイアを使用して見つけられた。
【0133】
本明細書で説明するアプリケーションでは、高品質な金属-極性III-N膜または窒素-極性III-N膜を達成するための、c面サファイア面を作成するための好適な方法がある。ウルツ鉱型結晶と亜鉛鉱型結晶とは異なり、サファイアは、より複雑な結晶構造を有する。サファイアは、ゆがんだ2層のAl原子を間に挟んだ酸素面を備える、複雑な12単位格子によって表される。さらに、c面サファイアは、r面サファイアよりもさらに高い機械的硬度を示し、したがって、研磨ダメージ、または研磨による加工硬化は、原子的原始表面種の生成を容易に妨げる。化学洗浄を使用して汚染物質のない表面を作成することができ、バルクサファイア基板が優れた単結晶品質を示すにもかかわらず、反射高速電子回折(RHEED)によって調査された表面は、c面サファイアの特徴を示し、それは、常に、原子的に粗く、非均質な表面であることを示す。サファイアの表面の段差は、また、混合酸素領域と原子結晶領域とを容易に露出し、それらは、エピタキシー中にIII-N極性を開始することに直接影響を与え、通常、転極ドメイン(PID)という結果になる。
【0134】
開始テンプレートの第1の表面は、実質的に原子的に平坦で均質な表面終端種で終わり得る。たとえば、バルクSi(111)配向面は、均質な基板組成、すなわち、Si原子によるエピタキシャル極性制御の改善を可能にする。Si面への注意深い初期エピタキシャル膜堆積によって、Al極性AlNエピタキシャル成長またはN型極性AlNエピタキシャル成長を誘導することが可能である。
【0135】
図16は、意図的に反転されているが、それ以外は横方向に均質な、窒素極性領域1600と極性反転面1620と金属極性領域1640とを備える、III-N複雑構造の極性型を示している。全体構造は、複数の横方向に置かれた領域を、実質的に異なる極性型スラブのエピタキシャル成長シーケンス内に含むように設計され得る。つまり、第1極性
wz-III-N領域は、開始テンプレート上に成長させられる。その後、第1極性領域の最終面は、第2極性wz-III-N領域が反対の極性型領域になるように、変更または設計される。複数の分極型領域は、したがって、III-N特徴スラブの各々の極性を効果的に反転させることによって形成され得る。
【0136】
最終wz-III-N領域面の極性型反転は、界面活性剤型の吸着原子で覆われた、強飽和面を使用して可能である。幾何学的フラストレーションは、結果として生じる表面を有利に再構築するために使用され、その表面は、それ以降に堆積させるIII-N面に対する所望の極性の型を達成するために好適である。2D III-Nスラブ内で均質な極性の型を示す多層エピタキシャル構造のそのような転極は、単極性型エピタキシャルデバイスの性能を向上させた、新しいデバイス構造を作成するために有利である。たとえば、表面層の極性の反転は、金属抵抗接触のショットキー障壁制限を、極性wz-III-N物質まで下げるために有利に使用され得る。極性の型を反転させた2層は、縮退ドープトンネル接合として動作し、III-Nデバイスの性能を改善する。
【0137】
分極型反転構造は、より複雑な構造に拡張され得、さらに周期的であり得る反転変調構造を形成する。そのような構造は、デバイスの極性特性を強化すること、またはインビルト分極場を著しく減少させることのいずれかのために使用され得る。これは、非極性物質を、c軸に沿って成長したウルツ鉱型膜を使用して生成するための、新しい方法を提示する。
【0138】
図17は、勾配領域を有する半導体構造を形成するための、大まかなフロー図を示している。まず、勾配パターン成長シーケンスが選択され(ステップ10)、その後、適切な基板が選択され(ステップ20)、最後に、選択された勾配パターンが、基板上に形成される(ステップ30)。勾配パターン成長シーケンスは、それが、WBGからNBGに、またはNBGからWBG物質に、成長軸(z)に沿って遷移するように、選択される(ステップ10)。バッファ領域または転位フィルタ領域などの追加的な層も、また、所望の構造により成長させられ得る。
【0139】
図18Aは、p型GaN接触領域1820という形態の任意のp型GaN領域と、p型超格子(p:SL)領域1840と、i型超格子(i:SL)領域1860と、n型超格子(n:SL)領域1880と、を有する半導体構造1800を示している。p:SL領域1840、i:SL領域1860、及び/またはn:SL領域1880の各々は、SPSLの形態であってよい。
【0140】
i:SL領域1860と、p:SL領域1840またはp型GaN接触領域1820との間のヘテロ界面は、特に懸念され、それは、電子の移動度及び注入効率が、正孔のものよりもさらに高く、i:SL領域1860を抜ける電子のオーバーシュートになり、したがって、i-p界面近くで、より高い再結合になる。これは、約360nmでの光学発光特性によって、実験的に確認されている。加えて、p:SL領域1840内のMgドーパントの高密度は、また、非放射再結合場所としての役割を果たすことができる。分極電荷を使用してバンド構造を変えるために、特定の超格子組成とグレーディング/チャープ超格子とを選択することによって、再結合を、全ての非放射再結合場所から離して、アクティブまたは領域の中心に向かって移動させることが有益であることが分かっている。
【0141】
さらに、多数のバルク状構造と量子井戸構造とに基づいた、先行技術のLEDデバイスにおける電子透過は、高く、通常、電子ブロッキングポテンシャル障壁を、デバイスのp型側に導入することによって減少させられる。本方法における電子ブロッキングは、導電ミニバンドと、超格子ポテンシャルによるAlN導電端上の超伝導状態とによって、自動的に達成される。超格子ポテンシャルは、デバイス内での成長軸に沿った輸送のための電
子エネルギーフィルタとしての役割を果たす。
【0142】
図18Bは、半導体デバイス1800の帯エネルギー帯構造を示している。
図18Bから
図18Hの空間的エネルギー帯図は、超格子領域を、それらの同等なn=1量子化固有エネルギー遷移として表し、したがって、SLの同等整列合金を表している。
【0143】
2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子から成る複雑な半導体構造を、上記で説明した。いくつかの実施形態では、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第1のものは、組成のより大きな変化を、成長軸に沿って有することができ、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第2のものは、組成のより小さな変化を、成長軸に沿って有することができる。たとえば、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第1のものは、大きなp型伝導率を誘導し、2つ以上の隣接する半導体構造及び/または半導体超格子のうちの第2のものは、小さなp型伝導率を誘導する。
【0144】
図18Bは、p:SL領域1840全体のヘビーp型分極ドーピングという結果になる、組成のより大きな変化(たとえば、x
ave=0.6から0)を有して、p:SL領域1840が、チャープまたはグレーディングされていることと、低い正孔注入効率を補うために、ライトp型バルク分極ドーピングを真性領域に誘導する組成が、下から上にかけて減少する(たとえば、組成x
ave=0.66から0.6)ように、i:SL領域1860がチャープされていることと、n:SL領域1880が、高いAl含有量(たとえば、x
ave=0.66という均一な組成を有する、1ML GaN:2ML AlNというSL)を有するということと、を示している。
【0145】
組成の急激な変化は、領域間の界面のうちのいずれにおいても無く、それにより、分極誘導シート電荷をなくし、バンドオフセットによる障壁をなくし、また、格子定数の急激な変化がないために、より高い品質の界面という結果をもたらすことができる。p:SL領域とi:SL領域とにおける分極ドーピング密度は、領域の全体的な厚さを変えることによって、または組成をそれらの界面において変えることによってのいずれかで、変えられ得る。たとえば、i:SL/p:SL界面における組成を、(0.6から)0.5に変えることは、i:S領域内のp型ドーピングを増加させ、p:SL領域内のそれを減少させる。p:SL領域の厚さを(たとえば、25nmに)減少させることは、p:SL領域内のドーピング密度を、i:SL領域を変更せずに、増加させる。
【0146】
図18Cは、半導体デバイス1800の帯エネルギー帯構造を示しており、p:SL領域1840は、均一(たとえば、x
ave=0.66)であり、i:SL領域1860は、均一(たとえば、x
ave=0.66)であり、n:SL領域1880は、均一(たとえば、x
ave=0.66)である。全ての超格子領域が同じ組成を有しているため、p:SL/p型GaN界面を除き、分極効果はない。この設計の利点は、p:SL領域及びi:SL領域が格子整合である(つまり、ひずみ層を備える単位格子のインプレーン格子定数が、等しい)ことであり、したがって、非放射再結合場所としての役割を果たすこの界面において、欠陥がより少ないことである。p:SL/p型GaN界面における強いp型分極ドーピングと比較して、p:SL領域におけるドーピングは、
図18Cに示す通り、比較的効果が小さい。
【0147】
図18Dは、半導体デバイス1800の帯エネルギー帯構造を示しており、p:SL領域1840は、均一(たとえば、x
ave=0.2)であり、i:SL領域1860は、均一(たとえば、x
ave=0.66)であり、n:SL領域1880は、均一(たとえば、x
ave=0.66)である。p:SL領域1840の組成は、i:SL領域1860よりも低く(たとえば、2ML GaN:4ML AlNのi:SL、及び6ML G
aN:2ML AlNのp:SL)、i:SL/p:SL界面とp:SL/p型GaN界面とのp型分極ドーピングという結果になり、それにより、価電子帯を、
図18Dに示す通り、p:SL領域1840のいずれかの側で、フェルミエネルギー準位の上に固定する。これにより、正孔リザーバが、i:SL/p:SL界面において形成する。
図18Cで例示した形態とは異なり、インプレーン格子定数のいくらかの変化が、これらの単位格子間でまだあるが、p:SL領域1840のp型分極ドーピングは、完全に格子整合したp:SL領域1840よりも、より有益になり得る。上記の場合は、p:SLを圧縮の状態で有する。
【0148】
図18Eは、半導体デバイス1800の帯エネルギー帯構造を示しており、p:SL領域1840は、チャープ(たとえば、x
ave=0.66~0)されており、i:SL領域1860は、均一(たとえば、x
ave=0.66)であり、n:SL領域1880は、均一(たとえば、x
ave=0.66)である。i:SL領域1860とp型GaN領域1820との間のp:SL領域1840のチャーピングまたはグレーディングは、p:SL領域1840を通るp型伝導率を増加させ、正孔注入を改善する、界面の各々でのシート電荷よりも、p:SL領域1840のバルクp型分極ドーピングを引き起こす。それは、また、i:SL/p:SL界面とp:SL/P:GaN界面とにおけるバンド不連続をなくし、正孔注入効率をさらに増加させるという利点を有する。これは、格子定数の急激な変化がないために、p:SL領域1840全体ではなく、i:SL/p:SLヘテロ界面での転位密度を減少させることができる。
【0149】
p:SL領域1840におけるP型分極ドーピングは、非常に高く(~5x1018cm-3)、バンド構造及び正孔密度は、p:SL領域1840がMgで意図的ドープされているかにかかわらず、ほぼ同一である。したがって、この設計の変形は、チャープp:SL領域1840内の意図的Mgドーピングを除去し、それは、本質的に、真性領域または非意図的ドープ領域として成長する。混乱を避けるために、この領域は、それがまだ分極ドープp型であるために、誘導p:SL領域と呼ばれる。分極誘導ドーピング密度は、組成の変化と、領域がグレーディングされる距離と、に依存する。そのため、組成変化が、いずれかの側の領域によって戻された場合、ドーピング密度は、グレーディング領域の厚さを減らすことによって、増加され得る。この設計は、Mg不純物ドーパントを再結合領域の近くから除去し、それにより、移動度を高め、非放射再結合を減らすことができる、という利点を有する。一般に、p:SLのMgドーピングは、n:SLとi:SLほど高い構造品質を達成せず、それは、Mgドーパントが、置換的に合体し、原子的に粗い層になることを可能にするために、p:SLが窒素リッチに成長されなければならないからである。p:SL領域1840を、必要なMgなしに成長させることができる場合、その構造品質を改善することができ、したがって、所望のデバイス性能を有利に向上させることができる。
【0150】
図18Fは、半導体デバイス1800の帯エネルギー帯構造を示しており、p:SL領域1840は、均一(たとえば、x
ave=0.6)であり、i:SL領域1860は、均一(たとえば、x
ave=0.6)であり、n:SL領域1880は、均一(たとえば、x
ave=0.66)である。それを、
図18Cに示した格子整合構造と比較する。i:SL領域1860の組成は、n:SL領域1880よりも低くなるように選択されている。より低いi:SL領域1860の組成は、n:SL/i:SL界面のp型分極ドーピングを引き起こし、それにより、真性領域内にエネルギー帯を生じさせ、
図18Fに示す通り、真性領域正孔密度を増加させる。これは、チャープi:S領域構造の単純化であるが、真性領域内の正孔密度を増加させるという同様の結果を達成する。これは、層が全て均一であるために、より単純な成長を可能にする。
【0151】
図18G及び
図18Hは、半導体デバイス1800の帯エネルギー構造を示しており、
p:SL領域1840は、チャープ(たとえば、x
ave=0.5~0.1)されており、i:SL領域1860は、チャープ(たとえば、x
ave=0.7~0.6)されており、n:SL領域1880は、均一(たとえば、x=0.66)である。
図18Gは、n:SL/i:SL界面において意図的に導入された2D分極シート電荷を有し、
図18Hは、i:SL/p:SL界面において意図的に導入された2D分極シート電荷を有する。界面のうちの1つまたは複数における小さな組成変化は、シート分極電荷を誘導するために導入されている。たとえば、i:SL領域1860の上部が、0.6の組成を有し、p:SL領域1840の下部が、0.5の組成を有する場合、界面は、p型分極ドープされ、それは、二次元正孔ガス(2DHG)を誘導することができる。同様に、i:SL領域1860の下部が、66%n:SL領域1880上に0.7の組成(つまり、x
ave=0.66)を有する場合、小さなn型シート電荷が誘導される。このヘビーシートドーピングは、注入効率を改善し、キャリアオーバーシュートを減少させるための、キャリアのリザーバを提供するのに有益であり得る。それは、また、2DHG内における高い横方向移動度による電流の拡散を改善することができる。
【0152】
半導体構造1800の他の変形も、実装することができる。たとえば、i:SL領域のみを、ライト誘導p型分極、たとえば、xave=0.66からxave=0.55にチャープして、均一p:SL領域1840を成長させることができる。反対方向へのチャープ(つまり、高Ga含有量から低Ga含有量)は、p型の代わりにn型分極ドーピングを誘導することができる。これは、電子リザーバとして動作する非常にヘビーなドープ層を提供するために、n:SL領域1880の上部において使用され得る。n型分極チャープは、また、横方向電流拡散層のn:SL領域1880内に埋もれた層をヘビードープするために、または抵抗接触形成のための高ドーピング領域を提供するために、有益であり得る。
【0153】
p型GaNは、任意と考えられ、接触は、p:SL領域1840に、直接され得る。これは、p:SL領域1840が、動作波長において透明であり、p型接点が反射である場合、光抽出効率を著しく高めることができる。チャープp:SLでは、平均合金組成のグレーディングは、まだ十分に透明、たとえば、xave=0.4の組成において単に終わり、直接接触され得る。しかしながら、これは、チャープを実行し、したがって、ポテンシャル分極ドーピングを減らすことができる組成範囲を、減らすことができる。
【0154】
本発明は、広いアプリケーション、特にDUV LEDに関連したアプリケーションを有する半導体構造を有利に提供する。たとえば、本発明は、DUV LEDの商業的開発を制限する制約の多くを、有利に克服し、または少なくとも減らす。
【0155】
本発明は、本発明の好適な実施形態であるダイオードと、LEDに関して主に説明されたが、文脈が許す場合、他の半導体構造及びデバイスが考慮され得る、ということを理解するものである。
【0156】
本明細書では、「超格子」という用語は、2つ以上の層を含む複数の反復単位格子を備える層構造を指し、単位格子内の層の厚さは、隣接する単位格子の対応する層間で著しい波動関数侵入があるように十分に小さく、電子及び/または正孔の量子トンネリングが容易に発生するようにする。
【0157】
本明細書では、第1の及び第2の、左の及び右の、上部の及び下部の、及び同様なものなどの形容詞は、ある要素または動作を、別の要素または動作から区別するためのみに使用され得、必ずしも、実際のそのような関係または順序を必要とせず、または暗示しない。文脈が許す場合、整数または構成要素またはステップ(または同様なもの)への言及は、その整数、構成要素、またはステップのうちのただ1つに限定されると解釈されるもの
でなく、むしろ、その整数、構成要素、またはステップなどのうちの1つまたは複数であり得る。
【0158】
本発明のさまざまな実施形態の上記の説明は、関連技術分野における通常の技術を有する人への説明の目的のために提供されている。それは、網羅すること、または、本発明を1つの開示の実施形態に限定すること、を意図していない。上述の通り、本発明の対する多数の変更物及び変形物が、上記の教示の当業者にとっては明白である。したがって、いくつかの代替的な実施形態を具体的に説明したが、他の実施形態が明白であり、または当業者によって容易に開発される。本発明は、本明細書で説明した本発明の全ての代替物と変更物と変形物と、上記で説明した発明の趣旨と範囲との中に含まれる他の実施形態と、を包含することを意図している。
【0159】
本明細書では、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」という用語、または同様の用語は、非排他的包含を意味することを意図しており、要素の一覧を備える方法、システム、または装置は、それらの要素のみを含むのではなく、一覧にない他の要素もまた含むことができる。
【0160】
本明細書での任意の先行技術への参照は、その先行技術が、普及している一般常識の一部を形成している、ということを示唆する知識または任意の形態でなく、そうみなされるべきでない。