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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】インスリン製剤のためのバイオアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20220210BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220210BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20220210BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220210BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 38/28 20060101ALN20220210BHJP
   A61K 9/20 20060101ALN20220210BHJP
   A61K 9/08 20060101ALN20220210BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20220210BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
G01N33/50 Z ZNA
C12Q1/02
C12Q1/68
G01N33/68
G01N33/15 Z
A61K38/28
A61K9/20
A61K9/08
C07K14/62
C12N15/09 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019521689
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017077120
(87)【国際公開番号】W WO2018077851
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】16195387.2
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルイーセ・イェリル・ソイデン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・アムストルプ
(72)【発明者】
【氏名】トマス・アスコウ・ピーダスン
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/081670(WO,A2)
【文献】特表2014-532667(JP,A)
【文献】特表2009-500401(JP,A)
【文献】特表2011-515358(JP,A)
【文献】特表2016-525524(JP,A)
【文献】特表2016-516728(JP,A)
【文献】BERTACCA, A. et al.,Continually high insulin levels impair Akt phosphorylation and glucose transport in human myoblasts,Metabolism,2005年12月,Vol.54, No.12,pp.1687-1693
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
A61K 38/00 - 38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物製品の原薬と比較して前記薬物製品の効力を測定する方法であって、
(A)
(i)インスリン受容体を過剰発現している細胞を前記薬物製品と接触させる工程;及び
(ii)リン酸化Aktを定量化する工程;並びに
(B)
(i)インスリン受容体を過剰発現している細胞を前記原薬と接触させる工程;及び
(ii)リン酸化Aktを定量化する工程
含み、薬物製品が、経口製剤中のインスリンペプチド又は液体製剤中の低親和性インスリンペプチドである方法。
【請求項2】
前記Aktが、アイソフォームAkt1、Akt2及びAkt3を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Aktが、Akt1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記経口製剤中のインスリンペプチド又は前記液体製剤中の低親和性インスリンペプチドが、インスリン類似体又はインスリン誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記原薬が、経口製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記原薬が、薬学的に許容される賦形剤を更に含む経口製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記インスリン類似体又はインスリン誘導体が、
A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン;
A14E、B16H、B25H、B29K(Nεエイコサンジオイル-γGlu)、desB30ヒトインスリン;
A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン;及び
A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu)、desB30ヒトインスリン
からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記賦形剤が、保存剤、等張化剤、キレート化剤、安定剤及び界面活性剤からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記賦形剤が、保存剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記インスリン類似体又はインスリン誘導体が、錠剤に製剤化されている、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記原薬が、液体製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記原薬が、賦形剤を含む液体製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インスリン類似体又はインスリン誘導体が、ヒトインスリンと比較してインスリン受容体に対する親和性が低い、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記インスリン類似体又はインスリン誘導体が、A14E、B16E、B25H、B29K(N ε エイコサンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン及びA14E、B16H、B25H、B29K(N ε エイコサンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口製剤中のインスリンペプチド及び液体製剤中の低親和性インスリンペプチドのためのバイオアッセイに関する。
【0002】
配列表の参照による組み込み
「配列表」と題した6225バイトの配列表は、2016年10月24日に作成され、参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
バイオアッセイは、生物学的アッセイ(in vivoアッセイ、ex vivoアッセイ、細胞に基づくin vitroアッセイ、結合アッセイ、生化学アッセイその他)であり、プロセス開発、プロセス特徴分析、及び製品開発;原薬又は薬物製品の生産品放出試験;製造プロセス制御及び中間体試験;安定性及び生成物完全性試験、その他等様々な目的に使用される。バイオアッセイは、定性的試験、即ち効力又は生物同一性試験としても使用される。バイオアッセイは多くの変数の影響を受けやすいので、活性はアッセイ間で変動する場合がある。効力の絶対尺度は、標準と比較する活性の尺度より変動しやすい。従って、成分の活性が、類似の材料で構成されている指定の標準/参照と比較して測定される場合、相対的効力方法が使用される。
【0004】
効力は、所与の強さの効果を生じるために必要な量の観点で表される薬物活性の尺度である。高い効力がある薬物は、低濃度で所与の応答を喚起するが、より低い効力の薬物は、より高濃度でしか同じ応答を喚起しない。効力は、薬物の親和性及び有効性の両方で決まる。親和性は、受容体に結合する薬物の能力である。有効性は、受容体占有と分子レベルで応答を開始する能力との間の関係である。
【0005】
効力の決定は、マトリクスにしばしば影響され、このことは、製剤の賦形剤が、バイオアッセイの成績に干渉し得ることを意味する。これは、「マトリクス効果」としばしば呼ばれる。従来のアッセイでは賦形剤のマトリクス効果が、薬物の効力を試験することを妨げるので、「マトリクス効果」は技術的問題となっている。これら製剤の賦形剤は、アッセイの成績に干渉し、インスリン受容体リン酸化アッセイ及びレポータ遺伝子アッセイ等の従来のアッセイによる効力決定を妨げるので、経口製剤中のインスリン及び液体製剤中の低親和性インスリンは、バイオアッセイが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO90/13540
【文献】米国特許第5,932,462号
【文献】米国特許第5,643,575号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Shearwater Corp. 1997年及び2000年カタログ
【文献】R. F. Taylor、(1991年)、「Protein immobilisation. Fundamental and applications」、Marcel Dekker、N.Y.
【文献】S. S. Wong、(1992年)、「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」、CRC Press、Boca Raton
【文献】G. T. Hermanson等(1993年)、「Immobilized Affinity Ligand Techniques」、Academic Press、N.Y.
【文献】Handbook of Pharmaceutical Excipients、第6版、Rowe等編、American Pharmaceuticals Association and the Pharmaceutical Press、Royal Pharmaceutical Society of Great Britain出版部(2009年)
【文献】Remington: the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro編、Lippincott Williams & Wilkins (2005年)
【文献】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の短所の少なくとも1つを克服若しくは軽減する、又は有用な選択肢を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、経口製剤中のインスリンペプチド及び液体製剤中の低親和性インスリンペプチドのバイオアッセイに関する。
【0010】
一態様において、本発明は、原薬と比較して薬物製品の効力を測定する方法に関し、方法は、リン酸化Aktを定量化する工程を含み、薬物製品は、経口製剤中のインスリンペプチド又は液体製剤中の低親和性インスリンペプチドである。
【0011】
本発明は、例示的な実施形態の開示から明らかになる更なる問題も解決し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】経口製剤中のA14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのInsRリン酸化アッセイを示す図である。
図2】液体製剤中のA14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン(低親和性インスリン)のInsRリン酸化アッセイを示す図である。
図3】経口製剤中のA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのレポータ遺伝子アッセイを示す図である。
図4】液体製剤中のA14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン(低親和性インスリン)のpAktアッセイを示す図である。
図5a】経口製剤中のA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのpAktアッセイを示す図である。
図5b】経口製剤中のA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのpAktアッセイを示す図である。
図6】経口製剤中のA14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのpAktアッセイを示す図である。
図7】pAktアッセイにおける(i) A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン;(ii) A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン;(iii) A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン;及びヒトインスリンの効力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、経口製剤中のインスリンペプチド及び液体製剤中の低親和性インスリンペプチドのバイオアッセイに関する。
【0014】
リン酸化Akt(pAkt)バイオアッセイにより、従来のバイオアッセイ法が直面する賦形剤による干渉の問題が克服され、経口製剤中のインスリンペプチド又は液体製剤中の低親和性インスリンペプチドの効力の決定が可能になることを驚くべきことに見出した。
【0015】
本発明は、原薬と比較して薬物製品の効力を測定する方法に関し、方法は、リン酸化Aktを定量化する工程を含み、薬物製品は、経口製剤中のインスリンペプチド又は液体製剤中の低親和性インスリンペプチドである。
【0016】
本発明は、インスリンペプチドの効力を測定する方法に関する。本発明の有用性は、インスリンペプチドを含む経口製剤又は低親和性インスリンペプチドを含む液体製剤中の賦形剤の干渉を回避することである。
【0017】
明細書において別段の指示がない限り、単数形で提示される用語は、複数の状態も含む。
【0018】
バイオアッセイ、生物学的アッセイ、生物学的評価、生物学的標準化、生物同一性又は効力等の用語は、互換的に使用される。
【0019】
本発明は、例示的な実施形態の開示から明らかになる更なる問題も解決し得る。
【0020】
薬物製品
本明細書では用語「薬物製品」(DP)は、製剤中に含まれる賦形剤と共に薬理作用を発揮する医薬品有効成分(API)を意味する。
【0021】
原薬
本明細書では用語「原薬」(DS)は、薬理作用を発揮する医薬品有効成分(API)を意味する。
【0022】
インスリン
本明細書では用語「ヒトインスリン」は、構造及び特性が周知であるヒトインスリンホルモンを意味する。ヒトインスリンは、A鎖及びB鎖と呼ばれる2本のポリペプチド鎖を有する。A鎖は21アミノ酸ペプチドであり、B鎖は30アミノ酸ペプチドであり、2本の鎖は、ジスルフィド架橋: A鎖の7位にあるシステインとB鎖の7位にあるシステインと間の第1の架橋及びA鎖の20位にあるシステインとB鎖の19位にあるシステインと間の第2の架橋、により結合されている。第3の架橋は、A鎖の6位と11位にあるシステイン間に存在する。
【0023】
人体において、ホルモンは、その構成において24アミノ酸のプレペプチドに続いて86アミノ酸を含有するプロインスリン:プレペプチド-B-Arg Arg-C-Lys Arg-A[式中、Cは、31アミノ酸の結合ペプチドである]、からなる一本鎖前駆体プロインスリン(プレプロインスリン)として合成され。Arg-Arg及びLys-Argは、A及びB鎖から結合ペプチドを切断する切断部位である。
【0024】
本明細書では「インスリン」は、ヒトインスリン又はブタ若しくはウシインスリン等別の種由来のインスリンと理解されるべきである。
【0025】
本明細書では用語「親インスリン」は、本発明によるどんな修飾も適用される前のインスリンを意味するものとする。
【0026】
インスリンペプチド
本明細書では用語「インスリンペプチド」は、ヒトインスリン又はインスリン活性があるその類似体若しくは誘導体のいずれかであるペプチドを意味する。
【0027】
インスリン類似体
本明細書では用語「インスリン類似体」は、修飾されたヒトインスリンを意味し、インスリンの1つ又は複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基により置換されており、並びに/又は1つ又は複数のアミノ酸残基がインスリンから欠失されており並びに/又は1つ又は複数のアミノ酸残基がインスリンに付加されており及び/若しくは挿入されている。
【0028】
一実施形態において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して10個未満のアミノ酸修飾(置換、欠失、付加[挿入を含む]及びその任意の組合せ)、或いはヒトインスリンと比較して9、8、7、6、5、4、3、2又は1個未満の修飾を含む。
【0029】
インスリン分子における修飾は、鎖(A又はB)、位置、及び天然のアミノ酸残基を置換しているアミノ酸残基の1又は3文字コードを記述することで示される。
【0030】
「結合ペプチド」又は「Cペプチド」により、一本鎖プロインスリン分子のB-C-Aポリペプチド配列の結合部分「C」が意味される。ヒトインスリン鎖において、Cペプチドは、B鎖の30位とA鎖の1位とを結合し、長さ35アミノ酸残基である。結合ペプチドは、2つの末端二塩基性アミノ酸配列、例えば、Arg-Arg及びLys-Argを含み、それらは、A及びB鎖から結合ペプチドを切断する切断部位として働いてインスリン分子の鎖を2本形成する。
【0031】
「desB30」又は「B(1-29)」により、天然のインスリン「B」鎖又はB30アミノ酸を欠いているその類似体が意味され、「A(1-21)」は、天然のインスリンA鎖を意味する。従って、例えば、A21Gly、B28Asp、desB30ヒトインスリンは、ヒトインスリンの類似体であり、A鎖の21位のアミノ酸がグリシンで置換され、B鎖の28位のアミノ酸がアスパラギン酸で置換され、B鎖の30位のアミノ酸が欠失されている。
【0032】
本明細書において「A1」、「A2」及び「A3」等の様な用語は、それぞれインスリンA鎖の1、2及び3位等のアミノ酸を示す(N終末端から計数する)。同様に、B1、B2及びB3等の様な用語は、それぞれインスリンB鎖の1、2及び3位等のアミノ酸を示す(N終末端から計数する)。アミノ酸の1文字コードを使用する場合、A21A、A21G及びA21Qの様な用語は、それぞれ、A21位におけるアミノ酸がA、G及びQであることを示す。アミノ酸の3文字コードを使用する場合、対応する表現は、それぞれA21Ala、A21Gly及びA21Glnである。
【0033】
本明細書において、用語「A(0)」又は「B (0)」は、それぞれA1又はB1のN末端側のアミノ酸の位置を示す。用語A(-1)又はB(-1)は、それぞれA(0)又はB(0)のN末端側の第1のアミノ酸の位置を示す。従って、A(-2)及びB(-2)は、それぞれA(-1)及びB(-1)のN末端側のアミノ酸の位置を示し、A(-3)及びB(-3)は、例えば、それぞれA(-2)及びB(-2)のN末端側のアミノ酸の位置を示す。用語A22又はB31は、それぞれA21又はB30のC末端側のアミノ酸の位置を示す。用語A23又はB32は、それぞれA22又はB31のC末端側の第1のアミノ酸の位置を示す。従って、A24及びB33は、例えば、それぞれA23及びB32のC末端側のアミノ酸の位置を示す。
【0034】
本明細書において、用語「アミノ酸残基」は、ヒドロキシ基がカルボキシ基から形式的に除去され、及び/又は水素原子がアミノ基から形式的に除去されたアミノ酸である。
【0035】
インスリン類似体の例は、B鎖の28位のProが、Asp、Lys、Leu、Val若しくはAlaで置換され、及び/又はB29位のLysが、Pro、Glu若しくはAspで置換されるようなものである。更に、B3位のAsnは、Thr、Lys、Gln、Glu又はAspで置換され得る。A21位のアミノ酸残基は、Glyで置換され得る。また、1つ又は複数のアミノ酸、例えば、Lys等が、A鎖及び/又はB鎖のC末端に付加されてもよい。B1位のアミノ酸は、Gluで置換され得る。B16位のアミノ酸は、Glu又はHisで置換され得る。インスリン類似体の更なる例は、欠失類似体、例えば、ヒトインスリンのB30アミノ酸が欠失した(des(B30)ヒトインスリン)類似体、ヒトインスリンのB1アミノ酸が欠失された(des(B1)ヒトインスリン)インスリン類似体、des(B28-B30)ヒトインスリン及びdes(B27)ヒトインスリンである。A鎖及び/又はB鎖が、N末端伸長を有するインスリン類似体並びにA鎖及び/又はB鎖が、B鎖のC末端に付加された2つのアルギニン残基等のC末端伸長を有するインスリン類似体も、インスリン類似体の例である。更なる例は、前述の突然変異の組合せを含むインスリン類似体である。A14位のアミノ酸がAsn、Gln、Glu、Arg、Asp、Gly又はHisであり、B25位のアミノ酸がHisであり、1つ又は複数の追加の突然変異を任意選択で更に含むインスリン類似体は、インスリン類似体の更なる例である。A21位のアミノ酸残基がGlyであり、インスリン類似体がC末端において2つのアルギニン残基で更に伸長されているヒトインスリンのインスリン類似体もインスリン類似体の例である。
【0036】
インスリン類似体の更なる例には: DesB30ヒトインスリン; AspB28ヒトインスリン; AspB28、desB30ヒトインスリン; LysB3、GluB29ヒトインスリン; LysB28、ProB29ヒトインスリン; GlyA21、ArgB31、ArgB32ヒトインスリン; GluA14、HisB25ヒトインスリン; HisA14、HisB25ヒトインスリン; GluA14、HisB25、desB30ヒトインスリン; HisA14、HisB25、desB30ヒトインスリン; GluA14、HisB25、desB27、desB28、desB29、desB30ヒトインスリン; GluA14、HisB25、GluB27、desB30ヒトインスリン; GluA14、HisB16、HisB25、desB30ヒトインスリン; HisA14、HisB16、HisB25、desB30ヒトインスリン; HisA8、GluA14、HisB25、GluB27、desB30ヒトインスリン; HisA8、GluA14、GluB1、GluB16、HisB25、GluB27、desB30ヒトインスリン;及びHisA8、GluA14、GluB16、HisB25、desB30ヒトインスリンがある。
【0037】
インスリン誘導体
本明細書では用語「インスリン誘導体」は、化学修飾された親インスリン又はその類似体を意味し、修飾は、アミド、炭水化物、アルキル基、アシル基、エステル、PEG化等の結合の形態である。本発明によるヒトインスリンの誘導体の例は、ヒトインスリンB30トレオニンメチルエステル、GlyA21、ArgB31、Arg-アミドB32ヒトインスリン、NεB29-テトラデカノイルdesB30ヒトインスリン、NεB29-テトラデカノイルヒトインスリン、NεB29-デカノイルdesB30ヒトインスリン、NεB29-ドデカノイルdesB30ヒトインスリン、NεB29-3-(2-{2-(2-メトキシエトキシ)-エトキシ}-エトキシ)-プロピオニルヒトインスリン、LysB29(Nεヘキサデカンジオイル-γGlu) des(B30)ヒトインスリン;NεB29-(N-(Sar-OC(CH2)13CO)-γGlu) desB30ヒトインスリン、NεB29-カルボキシ-ペンタデカノイル-L-グルタミルアミドdesB30ヒトインスリン、NεB29-ヘキサデカンジオイル-アミノ-ブタノイルdesB30ヒトインスリン、NεB29-ヘキサデカンジオイル-L-Glu-アミドdesB30インスリン、A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン(配列番号1及び配列番号2)、A14E、B16H、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン(配列番号3及び配列番号4)、A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン(配列番号5及び配列番号6);A14E、B16H、B25H、B29K(Nεエイコサンジオイル-γGlu)、desB30ヒトインスリン(配列番号7及び配列番号8); A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン(配列番号9及び配列番号10); A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu)、desB30ヒトインスリン(配列番号11及び配列番号12)である。
【0038】
用語「PEG化インスリン/インスリン類似体/インスリン誘導体」は、インスリン/インスリン類似体/インスリン誘導体にコンジュゲートされたPEG分子を意味する。PEG分子が、インスリン/インスリン類似体/インスリン誘導体の任意のアミノ酸残基又は炭水化物部分を含めて、インスリン/インスリン類似体/インスリン誘導体ポリペプチドの任意の部分に結合され得ることは、理解されるべきである。
【0039】
用語「システインPEG化インスリン/インスリン類似体/インスリン誘導体」は、「インスリン/インスリン類似体/インスリン誘導体」に導入されたシステインのスルフヒドリル基にコンジュゲートされたPEG分子を有する「インスリン/インスリン類似体/インスリン誘導体」を意味する。
【0040】
用語「ポリエチレングリコール」又は「PEG」は、カップリング剤、カップリング若しくは活性化部分(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジリジン、オキシラン、又は好ましくはマレイミド部分を含む)を含む若しくは含まないポリエチレングリコール化合物又はその誘導体を意味する。マレイミドモノメトキシPEG等の化合物は、例示的な、本発明の活性化型PEG化合物である。
【0041】
PEGは、デキストラン等の多糖類と比較して架橋可能な反応基が殆どないので、適当なポリマー分子である。特に、単官能基PEG、例えばメトキシポリエチレングリコール(mPEG)は、そのカップリング化学反応が比較的単純なので(1つの反応基しかポリペプチド上の結合基とのコンジュゲートに利用できない)、興味深い。結果的に、架橋のリスクが排除され、得られるポリペプチドコンジュゲートはより均一になり、ポリマー分子とポリペプチドとの反応は一層容易に制御される。
【0042】
ポリペプチドへのポリマー分子の共有結合を実施するために、ポリマー分子のヒドロキシル末端基は、活性化型(即ち反応性官能基を持つ)で提供される。適当な活性化型ポリマー分子は、例えばShearwater Corp.、Huntsville、Ala.、USA、又はPolyMASC Pharmaceuticals plc、UKから市販されている。別法として、ポリマー分子は、例えばWO90/13540に開示されているように当業者に公知の従来通りの方法により活性化され得る。本発明に使用する活性化型直鎖状又は分枝状ポリマー分子の特定の例については、Shearwater Corp. 1997年及び2000年カタログに記載されている(Functionalized Biocompatible Polymers for Research and pharmaceuticals, Polyethylene Glycol and Derivatives、参照により本明細書に組み込まれている)。活性化型PEGポリマーの特定の例については、以下の直鎖状PEG:NHS-PEG(例えばSPA-PEG、SSPA-PEG、SBA-PEG、SS-PEG、SSA-PEG、SC-PEG、SG-PEG及びSCM-PEG)、及びNOR-PEG、BTC-PEG、EPOX-PEG、NCO-PEG、NPC-PEG、CDI-PEG、ALD-PEG、TRES-PEG、VS-PEG、IODO-PEG、及びMAL-PEG、及びPEG2-NHS等の分枝状PEG並びに米国特許第5,932,462号及び米国特許第5,643,575号に開示されているものがある。
【0043】
ポリペプチドと活性化型ポリマー分子のコンジュゲーションは、例えば以下の参照(ポリマー分子の活性化の適切な方法についても記載している)に記載の任意の従来方法を使用して行われる: R. F. Taylor、(1991年)、「Protein immobilisation. Fundamental and applications」、Marcel Dekker、N.Y.; S. S. Wong、(1992年)、「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」、CRC Press、Boca Raton; G. T. Hermanson等(1993年)、「Immobilized Affinity Ligand Techniques」、Academic Press、N.Y.)。使用される活性化方法及び/又はコンジュゲーション化学反応が、ポリペプチドの結合基(その例については、更に上で提供される)とポリマーの官能基(例えばアミン、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、スルフィドリル、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホン(vinysulfone)又はハロ酢酸塩である)とによって決まることを当業者は承知していよう。
【0044】
低親和性インスリン
本発明による低親和性インスリンは、pAktアッセイによって測定した場合に低い相対的効力、即ちヒトインスリンの効力の<0.08%を有するインスリン類似体及びインスリン誘導体を意味する。
【0045】
医薬品製剤
本発明による医薬組成物の投与は、そのような処置を必要とする(in of such a treatment)患者に対するいくつかの投与経路、例えば、舌、舌下、口腔、口内、経口、胃及び腸内、経鼻、肺、例えば細気管支及び肺胞又はその組合せによる、表皮、真皮、経皮、膣内、直腸、眼内、例えば結膜による、尿管、並びに非経口によることができる。
【0046】
医薬組成物は、そのような処置を必要とする患者にいくつかの部位、例えば、局所部位、例えば、表皮及び粘膜部位、吸収を迂回する部位、例えば、動脈内、静脈内、心臓内投与、並びに吸収を含む部位、例えば、表皮、皮下、筋肉内又は腹部内投与で投与され得る。
【0047】
本発明の一実施形態において、医薬品製剤は液体製剤である。本発明の一実施形態において、医薬品製剤は水性製剤、即ち水を含む製剤である。そのような製剤は、一般に溶液又は懸濁液である。本発明の更なる実施形態において、医薬品製剤は水性溶液である。
【0048】
用語「水性製剤」は、少なくとも50質量/質量%の水を含む製剤と定義される。同様に、用語「水性溶液」は、少なくとも50質量/質量%の水を含む溶液と定義され、用語「水性懸濁液」は、少なくとも50質量/質量%の水を含む懸濁液と定義される。
【0049】
本発明の一実施形態において、医薬品製剤は経口製剤である。一実施形態において、製剤は、乾式造粒により製造された顆粒を含む。一実施形態において、製剤は、ローラ圧縮により製造された顆粒を含む。一実施形態において、ローラ圧縮プロセスの成形品は、顆粒に粉砕される。一実施形態において、用語「顆粒体」は、1つ又は複数の顆粒のことを指す。一実施形態において、用語「顆粒」は、より大きな粒子へと集められた粒子のことを指す。
【0050】
一部の実施形態において、顆粒は、ラクトース(例えば噴霧乾燥ラクトース、-ラクトース、β-ラクトース、Tabletose[登録商標]、様々な品質のPharmatose[登録商標]、Microtose[登録商標]又はFast-FloC[登録商標])、結晶セルロース(様々な品質のAvicel[登録商標]、Elcema[登録商標]、Vivacel[登録商標]、Ming Ta[登録商標]又はSolka-Floc[登録商標])、他のセルロース誘導体、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、デキストラン、マルトデキストリン、デキストロース、フルクトース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、ショ糖、糖、デンプン又は加工デンプン(ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン及び米デンプンを含む)、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、又はアルギン酸ナトリウム等の充填材を含む。一部の実施形態において、充填材は、Avicel PH101等の結晶セルロースである。
【0051】
一部の実施形態において、顆粒は、ラクトース(例えば噴霧乾燥ラクトース、-ラクトース、β-ラクトース、Tabletose[登録商標]、様々な品質のPharmatose[登録商標]、Microtose[登録商標]又はFast-FloC[登録商標])、結晶セルロース(様々な品質のAvicel[登録商標]、Elcema[登録商標]、Vivacel[登録商標]、Ming Tai[登録商標]又はSolka-Floc[登録商標])、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、ヒプロメロース(HPMC) (例えば4000cps品質のメトセルE及びメトローズ60SH、4000cps品質のメトセルF及びメトローズ65SH、4000、15000及び100000cps品質のメトセルK;並びに4000、15000、39000及び100000品質のメトローズ90SH等、例えば信越化学工業株式会社のメトセルE、F及びK、メトローズSH)、メチルセルロースポリマー(例えば、メトセルA、メトセルA4C、メトセルA15C、メトセルA4M等)、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、他のセルロース誘導体、ショ糖、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン又は加工デンプン(ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン及び米デンプンを含む)、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、アカシア、アルギン酸ナトリウム、寒天、カラギーナン、ゼラチン、グアーゴム、ペクチン、PEG又はポビドン等の結合剤を含む。一部の実施形態において、結合剤は、ポビドンK90等のポビドンである。
【0052】
一部の実施形態において、顆粒は、アルギン酸、アルギン酸塩、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、アルファ化デンプン、又はカルボキシメチルデンプン(例えばPrimogel[登録商標]及びExplotab[登録商標])等の崩壊剤を含む。
【0053】
一部の実施形態において、顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又は他のステアリン酸金属塩、タルク、ワックス、グリセリド、軽油、ベヘン酸グリセリル、硬化植物油、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アルキル硫酸塩、又は安息香酸ナトリウム等の潤滑剤を含む。一部の実施形態において、組成物又は顆粒は、ケイ酸マグネシウム、タルク又はコロイド状シリカ等の潤滑剤を含む。一部の実施形態において、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0054】
一部の実施形態において、ポビドン等、等の結晶化抑制剤;陰イオン性界面活性剤(例えばプルロニック又はポビドン)、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び/若しくは両性イオン性界面活性等の可溶化剤(別名界面活性剤);酸化鉄赤若しくは酸化鉄黄、二酸化チタン、及び/若しくはタルク等の染料及び色素を含めた着色剤;並びに/又はクエン酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム及び/若しくはリン酸水素ナトリウム等のpH制御剤から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。
【0055】
一実施形態において、製剤は、固体剤形の形態である。一実施形態において、製剤は、錠剤の形態である。本発明の一実施形態において、経口製剤は、薬物製品が、800~10800nmol/錠剤として存在する製剤を意味する。一実施形態において、製剤は、カプセルの形態である。一実施形態において、製剤は、分包の形態である。
【0056】
別の実施形態において、医薬品製剤は、前もって溶解することなく使用する準備ができている乾燥製剤(例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥)である。
【0057】
製剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。本明細書では用語「賦形剤」は、医薬品有効成分以外の任意の成分のことを広く指す。賦形剤は、不活性物質であり得、それ自体にはいかなる治療的及び/又は予防的効果も実質的にないという意味で不活性である。賦形剤は、例えば送達剤、吸収エンハンサー、媒体、充填材(別名希釈剤)、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、結晶化抑制剤、酸性化剤、アルカリ化剤、保存剤、酸化防止剤、緩衝液若しくは緩衝化剤、等張剤、キレート化剤、錯化剤、界面活性剤、乳剤化及び/若しくは可溶化剤、甘味剤、湿潤剤、安定剤若しくは安定化剤、着色剤、賦香剤として、並びに/又は投与及び/若しくは活性物質の吸収を改善するために、様々な目的に働き得る。当業者は、日常の実験により及びいかなる過度の負担もなく医薬品製剤の所望の特定の特性に関連する上述した賦形剤を1つ又は複数選択できる。使用される各賦形剤の量は、当技術分野で通常の範囲内で変動し得る。
【0058】
経口剤形に製剤化するために使用され得る技術及び賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第6版、Rowe等編、American Pharmaceuticals Association and the Pharmaceutical Press、Royal Pharmaceutical Society of Great Britain出版部(2009年);及びRemington: the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro編、Lippincott Williams & Wilkins (2005年)に記載されている。
【0059】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、薬学的に許容される緩衝液を更に含む。緩衝液は、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リン酸塩、リン酸水素塩、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン(TRIS)、ビシン、トリシン、コハク酸、アスパラギン酸、アスパラギン又はその混合物からなる群から選択され得る。
【0060】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、薬学的に許容される保存剤を更に含む。本発明の更なる実施形態において、保存剤は、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、ベンジルアルコール、クロロブタノール、安息香酸、イミド尿素、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム又はその混合物からなる群から選択される。医薬組成物における保存剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、参照は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年になる。
【0061】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、等張剤を更に含む。等張剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、単糖、二糖若しくは多糖類、又は例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ラクトース、ショ糖、トレハロース、デキストランを含めた水溶性グルカン等の糖、又はアミノ酸(例えばL-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール[グリセリン]、1,2-プロパンジオール[プロピレングリコール]、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えばPEG400)等の糖アルコール、或いはその混合物からなる群から選択され得る。糖アルコールには、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール及びアラビトールがある。
【0062】
医薬組成物における等張剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、参照は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年になる。
【0063】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、キレート化剤を更に含む。本発明の更なる実施形態において、キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸及びアスパラギン酸、EGTA及びその混合物の塩から選択される。
【0064】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、安定剤を更に含む。医薬組成物における安定剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、参照は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年になる。
【0065】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、高分子量ポリマー又は低分子化合物の群から選択される安定剤を更に含む。本発明の更なる実施形態において、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ/ヒドロキシセルロース又はその誘導体(例えばHPC、HPC-SL、HPC-L及びHPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸及び2-メチルチオエタノールとしての含硫物質、並びに異なる塩(例えば塩化ナトリウム)から選択される。
【0066】
本発明の医薬組成物は、組成物を貯蔵する間のポリペプチド又はタンパク質による凝集体形成を低下させるのに十分な量のアミノ酸塩基を更に含み得る。
【0067】
「アミノ酸塩基」により、アミノ酸又はアミノ酸の組合せが意図され、どの所与のアミノ酸も、その遊離塩基形態又はその塩形態のいずれかで存在する。アミノ酸は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸、アミノグアニジン、オルニチン及びN-モノエチルL-アルギニン、エチオニン及びブチオニン並びにS-メチル-Lシステインであり得る。
【0068】
本発明の更なる実施形態において、治療的薬剤として作用するポリペプチドが、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化の影響を受けやすいメチオニン残基を少なくとも1つ含むポリペプチドである場合、メチオニン(又は他の硫黄アミノ酸若しくはアミノ酸類似体)を添加して、そのような酸化を阻害することができる。「阻害する」により、経時的なメチオニン酸化型種の蓄積が最小であることが意図される。メチオニン酸化を阻害することにより、適当な分子形状のポリペプチドがより多く保持される。メチオニンの任意の立体異性体(L又はD)又はその組合せが、使用され得る。添加される量は、メチオニンスルホキシドの量が管理機関に受け入れられるような、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量であるべきである。一般にこれは、組成物が約10%~約30%以下しかメチオニンスルホキシドを含有しないことを意味する。一般にこれは、添加されるメチオニンのメチオニン残基に対する比が、10:1~約100:1等、約1:1~約1000:1の範囲になるようにメチオニンを添加することにより達成され得る。
【0069】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、界面活性剤を更に含む。典型的な界面活性剤(商品名の例を括弧[]内に与える)は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート[Tween 20]、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート[Tween 40]又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート[Tween 80]等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー[プルロニックF68/ポロキサマー188]、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル[Triton X-100]又はポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル[Brij 35]等のポロキサマーである。医薬組成物における界面活性剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、参照は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年になる。
【0070】
本発明の更なる実施形態において、製剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)及びベンズアミジンHCl等のプロテアーゼ阻害剤を更に含むが、他の市販のプロテアーゼ阻害剤を使用することもできる。プロテアーゼ阻害剤の使用は、プロテアーゼの酵素原又はFVIIa等の活性化型酵素を含む医薬組成物において自触媒作用を阻害するために特に有用である。
【0071】
本発明の製剤を、例えば共有結合的、疎水的及び静電的相互作用によって薬物担体、薬物送達系及び先進の薬物送達系内に更に、調合する又はそれに結合させて、更に、化合物の安定性を増強し、生物学的利用能を高め、可溶性を高め、有害作用を低下させ、当業者に周知の時間治療を達成し、患者の服薬順守若しくはその任意の組合せを高めることができる。担体、薬物送達系及び先進の薬物送達系の例には、ポリマー、例えばセルロース及び誘導体、多糖類、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリレート及びメタクリレートポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えば、熱ゲル化系、例えば当業者に周知のブロックコポリマー系、ミセル、リポソーム、微小粒子、ナノ粒子、液晶及びその分散体、脂質-水系における相挙動の当業者に周知のL2相及びその分散体、重合ミセル、多重乳化剤、自己乳剤化、自己微乳剤化、シクロデキストリン及びその誘導体並びにデンドリマーがあるが、これに限定されない。
【0072】
非経口投与は、注射器、任意選択でペン様の注射器を用いる皮下、筋肉内、腹膜内又は静脈内注射により実行され得る。別法として、非経口投与は、注入ポンプを用いて実行され得る。更なる選択肢は、経鼻用又は肺用スプレーの形態で[化合物]を投与する溶液又は懸濁液であり得る組成物である。なお更なる選択肢として、本発明の[タンパク質]化合物を含有する医薬組成物は、経皮投与、例えば無針注射による、又はパッチ、任意選択でイオン導入パッチからの、又は経粘膜の、例えば口腔への投与にも適合され得る。治療用タンパク質及びポリペプチドの経口適用の医薬品製剤には、ナノ粒子、微小粒子又は他の種類の複数微粒子の剤形への活性化合物の封入があり得る。更なる選択肢は、表面活性化合物、細胞貫通性ペプチド、粘膜付着性薬物送達系、キレート化剤、その他等の浸透エンハンサーの使用である。なお更なる選択肢は、プロテアーゼ阻害剤の添加であり得る。別の選択肢は、SEDDS、SMEDDS、SNEDDS(自己乳剤化、自己微乳剤化又は自己ナノ乳剤化薬物送達系)等の脂質性薬物送達系の使用である。上記の薬物送達系は、錠剤に製剤化される又は適当な硬若しくは軟カプセル内に充填され得、それらは制御された様式又は好ましい腸の部分で活性化合物を放出するようにコーティングすることができる。
【0073】
効力
本明細書では用語「効力」は、該当する生物学的特性と関係する生成物の属性に基づいて適切な定量的生物学的アッセイ(効力アッセイ又はバイオアッセイとも呼ばれる)を使用する生物活性の尺度を意味する。
【0074】
連邦規則の米国コードによると「効力」は、所与の結果に影響を及ぼす、生成物の特定の能力又は容量と定義される。
【0075】
相対的効力(DP/DS)
本明細書では用語「生物活性」又は「活性」又は「相対的効力」(DP/DS)は、同じ条件下で試験した場合に、未知の効力の試験サンプル(原薬)が、薬物製品(参照)と比較して所望の応答を生じる能力を指すためにバイオアッセイにおいて使用される用語を意味する。薬物製品及び原薬の効力は、30%より多く逸脱すべきでなく、好ましくは、偏差は20%未満になるべきである。
【0076】
特定の実施形態
本発明は、以下の本発明の非限定的な実施形態により更に記載される:
【0077】
1. 原薬と比較して薬物製品の効力を測定する方法であって、本方法は、
(i)インスリン受容体を過剰発現している細胞を前記薬物製品又は前記原薬と接触させる工程と;
(ii)リン酸化Aktを定量化する工程と
を含み、薬物製品は、経口製剤中のインスリンペプチド又は液体製剤中の低親和性インスリンペプチドである。
【0078】
2. ELISAでリン酸化Aktを定量化する(ii)の工程を含む、実施形態1による方法。
【0079】
3. (i)インスリン受容体を過剰発現している細胞を播種する工程と;
(ii)細胞を添加し/前記薬物製品又は前記原薬と接触させる工程と;
(iii)細胞を溶解させる工程と;
(iv)溶解物をウサギ抗pAkt抗体でプレコートしたELISAプレートに移す工程と;
(v)マウス抗pAkt抗体により結合しているpAktを定量化する工程と;
(vi) HRP-抗マウスIgGによりマウス抗pAkt抗体を検出する工程と;
(vii) HRPの基質を添加する工程と;
(viii)顕色を測定する工程と
を含む、実施形態1による方法。
【0080】
4. 細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、実施形態1又は3による方法。
【0081】
5. 工程(i)後に、細胞が、終夜インキュベートされる、実施形態3による方法。
【0082】
6. 細胞が、37℃で終夜インキュベートされる、実施形態5による方法。
【0083】
7. 工程(ii)において、細胞が、2nM~20000nMの範囲の用量で薬物製品又は原薬と接触される、実施形態3による方法。
【0084】
8. 細胞が、薬物製品又は原薬と10分間接触される、実施形態1又は3による方法。
【0085】
9. 工程(iii)において、細胞が、30分間溶解される、実施形態3による方法。
【0086】
10. 工程(iv)において、ウサギ抗pAkt抗体が、リン酸-Akt(Ser473)(193H12)ウサギmAbである、実施形態3による方法。
【0087】
11. 工程(v)において、マウス抗pAkt抗体が、Akt1アイソフォーム特異的(2H10)マウスmAbである、実施形態3による方法。
【0088】
12. 工程(vi)において、HRP-抗マウスIgGである、実施形態3による方法。
【0089】
13. 工程(vii)において、HRPの基質が、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)である、実施形態3による方法。
【0090】
14. 工程(viii)において、顕色が、450nmで測定される、実施形態3による方法。
【0091】
15. Akt又はプロテインキナーゼb(PKB)が、アイソフォームAkt1、Akt2及びAkt3からなる群から選択される、実施形態1による方法。
【0092】
16. Aktが、Akt1である、実施形態15による方法。
【0093】
17. Aktが、Akt2である、実施形態15による方法。
【0094】
18. Aktが、Akt3である、実施形態15による方法。
【0095】
19. インスリンペプチドが、インスリン類似体又はインスリン誘導体である、実施形態1による方法。
【0096】
20. 原薬に対する薬物製品の効力が、30%より多く逸脱すべきでなく、好ましくは20%未満になるべきである、実施形態1による方法。
【0097】
21. インスリンペプチドが、経口製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、実施形態1による方法。
【0098】
22. インスリンペプチドが、薬学的に許容される賦形剤を更に含む経口製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、実施形態21による方法。
【0099】
23. インスリン誘導体が、
A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン;
A14E、B16H、B25H、B29K(Nεエイコサンジオイル-γGlu)、desB30ヒトインスリン;
A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン;及び
A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu)、desB30ヒトインスリン
からなる群から選択される、実施形態21による方法。
【0100】
24. インスリン誘導体が、A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンである、実施形態23による方法。
【0101】
25. インスリン誘導体が、A14E、B16H、B25H、B29K(Nεエイコサンジオイル-γGlu)、desB30ヒトインスリンである、実施形態23による方法。
【0102】
26. インスリン誘導体が、A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンである、実施形態23による方法。
【0103】
27. インスリン誘導体が、A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu)、desB30ヒトインスリンである、実施形態23による方法。
【0104】
28. 薬学的に許容される賦形剤が、保存剤、等張化剤、キレート化剤、安定剤及び界面活性剤からなる群から選択される、実施形態22による方法。
【0105】
29. インスリン類似体又はインスリン誘導体が、錠剤に製剤化される、実施形態21による方法。
【0106】
30. 錠剤が、緩衝液に可溶化される、実施形態29による方法。
【0107】
31. 緩衝液が、PBS又はアセトニトリルである、実施形態30による方法。
【0108】
32. A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンの効力が、ヒトインスリンと比較して0.0088である、実施形態24による方法。
【0109】
33. A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンの効力が、ヒトインスリンと比較して0.0064である、実施形態26による方法。
【0110】
34. インスリンペプチドが、液体製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、実施形態1による方法。
【0111】
35. インスリンペプチドが、薬学的に許容される賦形剤を含む液体製剤中のインスリン類似体又はインスリン誘導体である、実施形態34による方法。
【0112】
36. インスリン類似体又はインスリン誘導体が、ヒトインスリンと比較してインスリン受容体に対する親和性が低い、実施形態1による方法。
【0113】
37. pAktアッセイによって測定した場合にインスリン類似体又はインスリン誘導体が、低い相対的効力、即ちヒトインスリンの効力の<0.08%を有する、実施形態1による方法。
【0114】
38. インスリン誘導体が、A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン及びA14E、B16H、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンからなる群から選択される、実施形態34による方法。
【0115】
39. インスリン誘導体が、A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリンである、実施形態38による方法。
【0116】
40. インスリン誘導体が、A14E、B16H、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンである、実施形態38による方法。
【0117】
41. 薬学的に許容される賦形剤が、希釈剤、緩衝液、保存剤、等張化剤、等張剤、キレート化剤、界面活性剤、プロテアーゼ阻害剤、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、増量剤、金属イオン、油性媒体、タンパク質及び/又は両性イオン及び安定剤からなる群から選択される、実施形態35による方法。
【0118】
42. 賦形剤が、保存剤である、実施形態41による方法。
【0119】
43. 賦形剤が、フェノール又はクレゾールである、実施形態42による方法。
【0120】
44. A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリンの効力が、ヒトインスリンと比較して0.0006又は0.06%である、実施形態39による方法。
【0121】
45. 原薬と比較した薬物製品の効力が、原薬及び薬物製品のEC50値を使用することにより算出される、請求項1による方法。
【0122】
46. 原薬と比較した薬物製品の効力が、EC50原薬/ EC50原薬により算出される、請求項45による方法。
【実施例
【0123】
この実験的部分は、省略形の一覧から始まり、バイオアッセイに関する節が続く。例は、本発明を例示するために役立つ。
【0124】
省略形の一覧
AEBSF:フッ化4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩
BHK:ベビーハムスター腎臓細胞
CHO:チャイニーズハムスター卵巣
CHO HIR:ヒトインスリン受容体過剰発現チャイニーズハムスター卵巣細胞
DPBS:ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
DMEM:ダルベッコ変法イーグル培地
DP:薬物製品
DS:原薬
ELISA:酵素結合免疫吸着アッセイ
ERK:細胞外シグナル調節キナーゼ
FCS:ウシ胎仔血清
FOXO:フォークヘッドボックスO
HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ
HSA:ヒト血清アルブミン
pAkt:リン酸化Akt
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
P0、P1、P2:
MEM:最小必須培地
MEM NEAA:最小必須培地非必須アミノ酸
MTX:メトトレキサート
RFU:相対的蛍光単位
RT:室温
SC:皮下
SD:標準偏差
SEM:平均値の標準誤差
TMB: 3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン
【0125】
調製の一般的な方法
経口製剤中のインスリンペプチドをアッセイするために、錠剤(10800nmol/錠又は800nmol/錠)を、15mLファルコンチューブ内で0.5% FCSを含むDPBS(Gibco、カタログ番号14190)10mLに可溶化した。チューブを、血液チューブ回転器上で、RTで3時間回転させた。チューブを、4℃で終夜貯蔵した。ペレットを含まない懸濁液を新たなチューブへ移し、その後アッセイした。
【0126】
A.インスリン受容体(InsR)リン酸化アッセイ
細胞株及び培養
CHO細胞に、ヒトインスリン受容体(HIR、+エキソン11)をコードするDNAを含有するベクターを安定にトランスフェクトした。その後選択されたモノクローナル細胞株が、CHO-hIR-Aであった。細胞を、培養フラスコ中で、glutaMax、4.5g/L D-グルコース、Na-ピルビン酸、10% FBS、0.9%最小必須培地(MEM)及び0.004mg/mL MTXを含むDMEM中で、加湿した5% CO2インキュベーター内で維持し、常法通り2又は3日毎に継代した。細胞を、13~45継代の間にアッセイに使用した。
【0127】
化学物質及び試薬
CHO細胞を培養するための培地、FBS及び化学物質を、GIBCOから購入した。抗HIR抗体(Mab IR83-14)を自作した。ユウロピウム標識抗PY20抗体(DELFIA Eu-N1抗ホスホチロシン[PY20])を、PerkinElmer[登録商標]から購入した。DELFIA[登録商標] Assay Buffer、DELFIA[登録商標] Enhancement Solution及びDELFIA[登録商標] Wash Concentrateを、PerkinElmer[登録商標]から購入した。
【0128】
手順
CHO HIR細胞を、TrypLE[商標]Select試薬を使用してトリプシン処理し、アッセイ培地(glutamax、4.5g/L D-グルコース、Na-ピルビン酸、9% FBS及び0.9% MEMを含むDMEM)に希釈し、計数し、96ウェル平底組織培養プレートに播種し、37℃及び5% CO2で終夜インキュベートした。一方、96ウェルポリスチレンプレートを、Mab IR83-14(PBS、3μg/mL Mab83-14)で、+4~+8℃で終夜コーティングした。コーティング緩衝液を除去し、冷Sabuf緩衝液(49.5mM TRIS、150.6mM NaCl、329.4mMソルビトール、0.46% BSA及び0.05%アジ化ナトリウム)を添加して振盪機(約300rpm)上に少なくとも2時間置いた。CHO HIR細胞を、PBS中で洗浄し、インスリン型に応じてBSAを含有するKREBSインキュベーション緩衝液(0.11M NaCl、4.74mM KCl、1.2mM KH2PO4、1.2mM MgSO4、5.6% Weltmannの試薬、Tween20)中で、漸増量のインスリンで、37℃で20~30分間刺激し、その後溶解緩衝液(150.2mM NaCl、50mM Hepes、1% Triton-X100、0.2M Na-オルトバナジン酸、3000KIU/mLアプロチニン及び100mM AEBSF)中で、振盪機(約400rpm)上で、RTで2時間細胞を溶解した。適当な量の細胞溶解物を、Mab IR83-12コートしたプレートに移し、振盪機(約300rpm)上で1時間インキュベートし、その後DELFIA[登録商標] Washを使用して3回洗浄した。DELFIA[登録商標]Assay Buffer中で0.3μg/mLになるよう希釈した標識抗PY20を添加し、プレートを終夜インキュベートした(+2~+8℃)。プレートを、DELFIA[登録商標]Washを使用して3回洗浄し、その後DELFIA[登録商標]Enhancement Solutionを添加し、振盪機(約300rpm)上で最低1時間インキュベーションした。検出結果を、Synergy2 Multi-Mode Reader(Biotek[登録商標])を使用して時間分解モードで収集した。
【0129】
(実施例1)
経口製剤中のA14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのInsRリン酸化アッセイ
CHO細胞株にトランスフェクトして、ヒトインスリン受容体を過剰発現させた。細胞を、DP(アセトニトリル含有緩衝液に可溶化された、2700nmol/錠剤で錠剤に製剤化されたA14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)又はDS(A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)のいずれかで2分間刺激し、溶解した。ELISAを使用して、リン酸化されたインスリン受容体を定量化した。図1に見られる通り、各データポイントは、3つ組の平均及び標準偏差を表す。データは、最大プラトーに達するかなり前に、試験した最大濃度の上部において錠剤成分からの干渉を示し、従って曲線を適合させることができず、効力を算出できない。それ故、本アッセイは、錠剤に製剤化されたインスリンペプチドを試験するのにふさわしくない。
【0130】
(実施例2)
液体製剤中の低親和性インスリンA14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリンのInsRリン酸化アッセイ
CHO細胞株にトランスフェクトして、ヒトインスリン受容体を過剰発現させた。細胞を、DP(液体製剤中のA14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン)又はDS(A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン) のいずれかで2分間刺激し、溶解した。ELISAを使用して、リン酸化されたインスリン受容体を定量化した。図2に見られる通り、最大プラトーに達するかなり前に、曲線の上部においてフェノール/クレゾールからの干渉が存在する。それ故、本アッセイは、液体製剤中の低親和性インスリンペプチドを試験するのにふさわしくない。
【0131】
B.レポータ遺伝子アッセイ
細胞株及び培養
シリアンハムスター細胞株、BHK-21[C-13](ATCC[登録商標] CCL-10[商標])に、製造業者のマニュアルに従ってFuGeneトランスフェクション薬剤(Promega、カタログ番号E2691)を使用して3つのプラスミドをトランスフェクトした。3つのプラスミドは、上流活性化配列(UAS)の調節下にインスリン受容体、GAL4-ELK1融合タンパク質及びホタルルシフェラーゼ遺伝子をそれぞれコードする。選択薬剤(200μg/mLハイグロマイシン、400μg/mLゼオシン及び600μg/mL G418)を使用して、安定な細胞プールを生成した。単一細胞クローンを限界希釈により単離し、最も作動するクローンを選択した(クローン26)。選択したその後のモノクローナル細胞株を、培養フラスコ中で、glutaMax、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1% P/S及び上に述べた選択薬剤を含むDMEM中で、加湿した5% CO2インキュベーター内で維持し、常法通り2又は3日毎に継代した。
【0132】
化学物質及び試薬
細胞を培養するための培地、FBS及び化学物質を、GIBCOから購入した。
【0133】
手順
細胞を、バーゼン液5mLで細胞培養フラスコから剥離させた。細胞50000個を、白色96ウェル培養プレート(Perkin Elmer、カタログ番号TC96 6005680)中のアッセイ培地[DMEM、グルタミン、0.5% FBS]にウェル当たり150μLで播種した。プレートを、5% CO2インキュベーター内で、37℃で終夜インキュベートした。プレートを空にし、関連サンプル100μLを添加して細胞を刺激した。プレートを、5% CO2インキュベーター内で、37℃で5時間インキュベートした。プレートをインキュベーターから取り出し、15分間室温で放置した。Steady Glo(Promega、カタログ番号E2550)のアリコートを100μL/ウェル添加した。プレートを、TopSeal film(PerkinElmer、カタログ番号6050195)で密閉した。プレートをアルミニウムホイルで覆って、光から保護し、室温で15分間振盪した。プレートを、Envisionリーダーで分析した。
【0134】
(実施例3)
経口製剤中のA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのレポータ遺伝子アッセイ
BHK細胞株にトランスフェクトして、ヒトインスリン受容体を過剰発現させた。細胞株は、UAS(上流活性化配列)ルシフェラーゼプラスミド及びGAL4-ELK1を確実に過剰発現するプラスミドを含有する。細胞を、DP(錠剤中に10800nmol/錠剤のA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)又はDS(A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)のいずれかで4時間刺激した。図3に見られる通り、最大プラトーに達するかなり前に、試験した最大濃度の上部において錠剤成分からの干渉が存在し、従って曲線を適合させることができず、効力を算出できない。それ故、本アッセイは、錠剤に製剤化されたインスリンペプチドを試験するのにふさわしくない。
【0135】
C. pAktアッセイ
インスリンペプチド(類似体及び誘導体)は、用量依存的効果でインスリン受容体に結合する。特定の濃度未満では応答が低すぎて測定できないことになり(最小漸近線)、より高濃度では応答が増大し、十分に高い濃度では応答は更に増大しないことになる(最大漸近線)。用量応答曲線は、4パラメータロジスティック回帰(4PL非線形回帰モデル)で一般に適合される。それは、曲線の底部及び上部プラトー、EC50並びに傾斜係数(ヒルの傾斜)に適合するS字形により特徴付けられる。この曲線は、その変曲点の周りで対称形である。4PL方程式は: F(x) =D+(A-D)/(1+(x/C)^B)であり:式中、A =最小漸近線、B =ヒルの傾斜(曲線の勾配)、C =変曲点(弯曲が方向又は符号を変化させる曲線上の点、別名最大応答の50%に対応するEC50)、D =最大漸近線(Emaxは、アゴニストに対して考え得る最大の効果である)である。
【0136】
用語「効力」は、EC50値のことを指す。EC50が低いほど、最大効果の50%を生じるために必要な薬物の濃度がより少なくなり、効力がより高くなる。
【0137】
ヒトインスリン受容体を過剰発現しているCHO細胞、H4IIE細胞株及び初代ラット脂肪細胞におけるインスリン受容体の下流にある多くの細胞性応答の感度(EC50値)の評価。シグナル伝達については、細胞を、媒体又は用量を増大させながらインスリンで30分間処理した。細胞を、適当な緩衝液に溶解し、インスリン受容体、Erk、Akt又はFoxoのリン酸化を、指定した通りウェスタンブロッティング又はELISAにより決定した。マイトジェン活性については、H4IIE細胞を、媒体又は用量を増大させたインスリンとインキュベートし、細胞の成長を、チミジン取り込みの検出により測定した。ラット遊離脂肪細胞脂質生成については、コラゲナーゼ処理した精巣上体脂肪塊から単離した初代脂肪細胞を、H3標識グルコース、媒体又は用量を増大させながらヒトインスリンとインキュベートした。グルコースの取り込み及び脂質への転換を、Microscint-eへ脂質を抽出し、トップカウンター(top counter)を使用して放射活性を測定することにより2時間後に測定した。
【0138】
すべての方法について: EC50値を決定するために、データを、Graphpad Prismソフトウェアを使用して非線形4パラメータ回帰曲線に適合させた。
【0139】
【表1】
【0140】
Aktが、感度が高い読取りであると判明した。FOXOリン酸化アッセイに使用する抗体を増やすことが非常に困難なので、FOXO等の他の感度が高い読取りは使用できなかった。
【0141】
細胞株及び培養
CHO細胞に、ヒトインスリン受容体(HIR、+エキソン11)をコードするDNAを含有するベクターを安定にトランスフェクトした。その後選択されたモノクローナル細胞株が、CHO-hIR-Aであった。細胞を、培養フラスコ中で、glutaMax、4.5g/L D-グルコース、Na-ピルビン酸、10% FBS、0.9%最小必須培地(MEM)及び0.004mg/mL MTXを含むDMEM中で、加湿した5% CO2インキュベーター内で維持し、常法通り2又は3日毎に継代した。細胞を、13~45継代の間にアッセイに使用した。
【0142】
化学物質及び試薬
PTH CHO細胞を培養するための培地、FBS及び化学物質を、GIBCOから購入した。抗体及びTMBは、Cell Signaling Technology[登録商標]から購入した。
【0143】
手順
ウェル当たり10000個のFCW128-5細胞を、平底96ウェルプレート(Nunc)中で上述のDMEM培地100μLに播種した。プレートを、37℃、5% CO2で終夜インキュベートした。培地を、80μL/ウェル飢餓培地:0.5% HSA(Sigma)、1% P/S、1% MEM NEAA、4μg/mL MTXを含むDMEMと交換し、37℃、5% CO2で5時間インキュベートした。細胞を、飢餓培地中のウェル当たり5×終濃度の関連サンプル、ウェル当たり20μLで、37℃、5% CO2で10分間その後刺激した。プレートを氷上に置き、空にし、ウェル当たり冷PBS 100μLで洗浄し、再び空にした。冷溶解緩衝液[Biosource細胞抽出緩衝液(Life Tchnologies)、1mM AEBSF(Life Technologies)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)]20μLをウェル毎に添加した。プレートを、氷上で30分間インキュベートした(3回混合する)。溶解物を、プレコートしたELISAプレートに移して、pAktの含有量を測定した(下記参照)。
【0144】
96ウェルハーフエリアELISAプレート(Costar)を、ウェル当たり50μLのDPBS(Gibco)中の0.5μg/mL抗リン酸AktウサギmAb、クローン193H12(Cell Signalling)でコーティングし、4℃で終夜インキュベートした。ELISAプレートを、洗浄緩衝液(DPBS + 0.05% tween20)125μL/ウェルで4回洗浄した。ブロッキング緩衝液(DPBS、0.05% tween20、1% BSA)125μL/ウェルを添加し、プレートを室温で2時間インキュベートした。ELISAプレートを、4回洗浄した。細胞溶解50μL/ウェルを添加し、プレートを室温で振盪させながら終夜インキュベートした。ELISAプレートを、4回洗浄した。ブロッキング緩衝液中の0.7μg/mL抗リン酸AktマウスmAb、クローン2H10(Cell Signalling)50μLを、ウェル毎に添加した。プレートを、室温で1時間インキュベートした。ELISAプレートを、4回洗浄した。1:1000希釈した抗マウスIgG、HRP連結抗体(Cell Signalling)50μLを、ウェル毎に添加した。プレートを、室温で30分間インキュベートした。ELISAプレートを、4回洗浄した。TMB(Kem-En-Tec)50μLを、ウェル毎に添加した。およそ8分後に反応を、4Mリン酸ウェル当たり50μLにより停止させた。顕色を、ENVISIONリーダー(Perkin Elmer)により450nmで定量化した。分析結果は、「生物学的相違」に影響される(例えば、アッセイに対し約15%までのアッセイ結果の中間精度が、正常であると考えられる)。
【0145】
(実施例4)
液体製剤中の低インスリンA14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリンのpAktアッセイ
CHO細胞株にトランスフェクトして、ヒトインスリン受容体を過剰発現させた。細胞を、DP(SC送達のために25mMフェノール及び25mM m-クレゾールに4200nmol/mLで製剤化されたA14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン)又はDS(A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン)のいずれかで10分間刺激し、溶解した。ELISAを使用して、リン酸化されたAkt1を定量化した。図4に見られる通り、データポイントは、3つ組の平均+/- SDを表す。従って、バイオアッセイにおいて、賦形剤フェノール/クレゾールからの干渉はない。
【0146】
得られた相対的効力を、下表に示す。DPの効力は、DSから2%逸脱する。
【0147】
【表2】
【0148】
(実施例5)
経口製剤中のA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのpAktアッセイ
CHO細胞株にトランスフェクトして、ヒトインスリン受容体を過剰発現させた。細胞を、DP(アセトニトリル含有緩衝液に可溶化された錠剤のA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)又はDS(A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)のいずれかで10分間刺激し、溶解した。ELISAを使用して、リン酸化されたAkt1を定量化した。図5aに見られる通り、データポイントは、3つ組の平均+/- SDを表す。図5a)は、低用量錠剤(800nmol/錠剤)を表す。錠剤賦形剤からの干渉はない。
【0149】
得られた相対的効力を、下表に示す。DP(800nmol/錠剤)の効力は、DSから9%逸脱する。
【0150】
【表3】
【0151】
図5b)は、高用量錠剤(10800nmol/錠剤)を表す。錠剤賦形剤からの干渉はない。
【0152】
得られた相対的効力を、下表に示す。DP(10800nmol/錠剤)の効力は、DSから22%逸脱する。
【0153】
【表4】
【0154】
(実施例6)
経口製剤中のA14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンのpAktアッセイ
CHO細胞株にトランスフェクトして、ヒトインスリン受容体を過剰発現させた。細胞を、DP(アセトニトリル含有緩衝液に可溶化された2700nmol/錠剤のA14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)又はDS(A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン)のいずれかで10分間刺激し、溶解した。ELISAを使用して、リン酸化されたAkt1を定量化した。図6に見られる通り、データポイントは、3つ組の平均+/- SDを表す。従って、バイオアッセイにおいて、錠剤成分からの干渉はない。得られた相対的効力を、下表に示す。DPの効力は、DSから3%逸脱し、このことは相対的効力(DP/DS)が好ましいことを意味する。
【0155】
【表5】
【0156】
比較実施例7
(i) A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン; (ii) A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン; (iii) A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン;及びヒトインスリンのpAktアッセイ
3つのヒトインスリン類似体[(i)、(ii)及び(iii)]を、Aktのリン酸化レベルを定量化することにより、インスリン類似体の効力を測定するために使用されるアッセイにおいてヒトインスリンと比較した。CHO細胞株にトランスフェクトして、ヒトインスリン受容体を過剰発現させた。細胞を、インスリン及びこの類似体で10分間刺激し、溶解した。ELISAを使用して、リン酸化Aktを定量化した。効力を、SAS JMP 12.2.0の4パラメータロジスティック回帰(4PL)を使用して算出した。相対的効力を: EC50類似体又は誘導体/ EC50ヒトインスリンとしてその後算出した。類似体を、以下の、A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリン、A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン及びA14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイルl-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンの順序で順位付けし、後者が最も高い効力を示す。図7に見られる通り、ヒトインスリンと比較して、類似体A14E、B25H、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンは、相対的効力0.64%を示し、類似体A14E、B25H、desB27、B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリンは、相対的効力0.88%を示し、類似体A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリンは、相対的効力0.06%を示した。A14E、B16E、B25H、B29K(N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-2×OEG)、desB30ヒトインスリンが、低親和性及び低効力インスリンであることは、この例から明白である。データは、異なる類似体の効力に関して非常に広い範囲にわたって機能するこのアッセイの能力を例示する。
【0157】
【表6】
【0158】
効力の算出
実験を、異なる7つの濃度のヒトインスリン又はその類似体で細胞を刺激することにより実行し、上部及び底部プラトーを含む完全な滴定曲線を作った。各濃度を、3つ組で実行する。
【0159】
効力を、米国薬局方の節4.6及び欧州薬局方7.0の節5.3に従ってSAS JMP 12.2.0の4パラメータロジスティック回帰(4PL)を使用して算出した。効力は、当業者に公知の他のソフトウェアを使用することにより、算出することもできる。しかしながら、分析結果は、「生物学的相違」により影響される(例えば、アッセイに対して15%のアッセイ結果の中間精度が正常である)。
【0160】
4PLバイオアッセイにおいて、4パラメータロジスティック(4PL)関数を、研究している生成物の対数濃度の関数として、測定したアッセイ応答に適合させる。4PL関数は、JMPにおいて以下のパラメータ表示を有し、xは、用量の自然対数である。
【0161】
【数1】
【0162】
式中、
a 成長率
b 変曲点
c 下側漸近線
d 上側漸近線
【0163】
応答が、下側及び上側漸近線の間の中間値を達成する場合、変曲点bが対数用量を決定する。元の用量基準に対する対応値は、EC50を意味し、以下により得られる:
【0164】
【数2】
【0165】
曲線が平行である場合、原薬と比較した薬物製品の相対的効力は、EC50値の比である。
【0166】
【数3】
【0167】
相対的効力がパーセンテージとして考察される場合、上記の数は、100%で掛け算される。
【0168】
薬物製品及び原薬の効力は、30%より多く逸脱すべきでなく、好ましくは、偏差は20%未満になるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
【配列表】
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