(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】核酸ライブリーの速度論的排除増幅
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20220210BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALI20220210BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220210BHJP
C40B 40/06 20060101ALN20220210BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6834 Z
C12M1/00 A
C40B40/06
C12N15/09 200
(21)【出願番号】P 2019535305
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 US2017066751
(87)【国際公開番号】W WO2018128777
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-08-23
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ハンター
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マッキナーニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン バウテル
(72)【発明者】
【氏名】クレア ベヴィスーモット
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519084(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075204(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/193695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅サイトにてクローン集団を生成して、前記増幅サイトで前記クローン集団中のアンプリコンの数を増加させる方法であって、
第一溶液をフローセル上の増幅サイトのアレイ上に流し、続いて第二溶液を前記増幅サイトのアレイ上に流すことによって、前記第一溶液と、異なる前記第二溶液とを
、前記増幅サイトで前記フローセルに付着した複数のプライマーを含む前記フローセル上で反応させること、
前記第一溶液は多数のターゲット核酸と、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および1つ以上の複製酵素を含有する第一試薬混合物とを含み、前記第一溶液中の前記ターゲット核酸は、輸送速度で、前記増幅サイトに輸送されて、前記増幅サイトに結合し、
前記第一溶液は前記フローセル上で反応して、前記プライマーの第一サブセットに、前記ターゲット核酸およびアンプリコンを結合させ、前記第一試薬混合物は、前記増幅サイトに結合している前記ターゲット核酸を増幅して、対応するターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を生成し、前記アンプリコンは、前記輸送速度を超える増幅速度で生成されること、および
前記第二溶液は、前記
第一試薬混合物の前記NTPおよび前記1つ以上の複製酵素を含む第二試薬混合物を含み、前記ターゲット核酸を欠き、前記第二溶液は
前記フローセル上で反応して追加アンプリコンを生成して、前記増幅サイトで前記クローン集団中の前記アンプリコンの数を増加させ
、前記第一サブセットとは異なる前記プライマーの露出サブセット中の前記プライマーの少なくともいくつかに、前記追加アンプリコンを結合させて、前記輸送速度を超える増幅速度で排除増幅により前記追加アンプリコンが生成されること、を含
む、
方法。
【請求項2】
前記第二溶液が前記増幅サイトのアレイ上を流れるときに前記フローセル上にある前記ターゲット核酸だけが、前記フローセルに結合して、前記第一溶液中で自由に浮遊しないように、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に第二溶液を流す前に、前記フローセルから前記第一溶液を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増幅サイトのアレイは、前記フローセルの表面に沿って配置され、
前記第一溶液は、前記フローセルの入口ポートを通って、前記フローセルの前記表面を流れ、
前記第二溶液は続いて、前記入口ポートを通って、前記フローセルの前記表面を流れる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プライマーの少なくともいくつかは、前記増幅サイトのアレイ上に前記第一溶液を流すことに反応して、前記第一溶液中の前記ターゲット核酸に結合し、
続いて前記ターゲット核酸を欠く前記第二溶液を前記増幅サイトのアレイ上に流すことは、前記プライマーの前記ターゲット核酸へのさらなる結合をもたらさない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第二試薬混合物は、ポリメラーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第二試薬混合物は、ヘリカーゼおよびリコンビナーゼのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記増幅サイトは、前記フローセルの表面に沿ったウェルであり、
前記ウェルは、前記表面に沿った介在領域によって互いに分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
以下の1つ以上:
前記第一溶液中の前記ターゲット核酸の濃度を制御すること、
前記第一溶液の粘度を制御すること、
前記ターゲット核酸の平均サイズを制御すること、および
前記第一溶液中の分子クラウディング試薬の存在または非存在を制御すること、
を用いて、前記増幅サイトへの前記ターゲット核酸の前記輸送速度を制御することを更に 含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
以下の1つ以上:
前記第一試薬混合物中の前記NTP濃度を制御すること、
前記第一試薬混合物中の前記1つ以上の複製酵素の濃度を制御すること、および
前記増幅サイトの温度を制御すること、
を用いて、前記ターゲット核酸の前記増幅速度を制御することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一溶液および前記第二溶液は、前記増幅サイトのアレイ上に等温的に流される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
試薬マニホールドおよびコントローラを含む
、第一試薬混合物及び第二試薬混合物を用いた核酸ライブラリを生成するための流体システムであって、
前記第一試薬混合物は、フローセル上で反応して、増幅サイトにて、対応するターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を生成し、前記第二試薬混合物は、前記フローセル上で反応して、前記増幅サイトにて、前記アンプリコンの前記クローン集団における前記アンプリコンの数を増加させ、
前記試薬マニホールドは、
増幅サイトのアレイを含むフローセルの入口ポートと流体連通する少なくとも1つのバルブと、
前記少なくとも1つのバルブおよび対応する試薬リザーバの間で流体接続する複数のチャネルと、を含み、
前記試薬リザーバは、
多数のターゲット核酸と、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および1つ以上の複製酵素を含有する第一試薬混合物とを含有する第一溶液を含む第一試薬リザーバと、
前記
第一試薬混合物の前記NTPおよび前記1つ以上の複製酵素を含むが、対応する前記第一溶液中に含有される前記ターゲット核酸を欠く、第二溶液を含む第二試薬リザーバと、
を含み、
前記フローセルは、前記増幅サイトにて前記フローセルに付着した複数のプライマーを含み、
前記コントローラは1つ以上のプロセッサを含み、前記少なくとも1つのバルブおよび
前記フローセルに対して動作可能に連結され、前記試薬マニホールド内の溶液を規定するためにポンプを制御して、前記入口ポートを通して、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に第一溶液を流し、続いて前記入口ポートを通して、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に異なる第二溶液を流し、
前記第一溶液は、多数のターゲット核酸と、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および1つ以上の複製酵素を含有する第一試薬混合物とを含み、
前記第一溶液中の前記ターゲット核酸の数は、前記アレイ中の前記増幅サイトの数を超え、
前記第一溶液は前記フローセル上で反応して、
前記プライマーの第一サブセットに、前記ターゲット核酸および前記アンプリコンを結合させ、対応するターゲット核酸に由来する前記増幅サイトにアンプリコンのクローン集団を生成し、
前記第一溶液中の前記ターゲット核酸は、輸送速度で、前記増幅サイトに輸送されて、前記増幅サイトに結合し、
前記第一試薬混合物は、前記増幅サイトに結合している前記ターゲット核酸を増幅して、前記輸送前記速度を超える増幅速度で前記アンプリコンを生成し、
前記第二溶液は、前記第一試薬混合物の前記NTPおよび前記1つ以上の複製酵素を含む第二試薬混合物を含むが、前記ターゲット核酸を欠き、前記フローセル上で反応して、前記増幅サイトで前記アンプリコンのクローン集団中
にて追加アンプリコ
ンを生成し、
前記第一サブセットとは異なる前記プライマーの露出サブセット中の前記プライマーの少なくともいくつかに、前記追加アンプリコンを結合させて、前記輸送速度を超える増幅速度で排除増幅により前記追加アンプリコンを生成させる、流体システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記ターゲット核酸を含むサンプル鋳型を前記第一試薬混合物と混合して前記第一溶液を形成するために、少なくとも1つのバルブおよび前記ポンプを制御し、且つ、
前記コントローラは、前記サンプル鋳型を前記第二試薬混合物と混合することなく、前記第二試薬混合物を一緒に混合することによって前記第二溶液を形成するために、前記少なくとも1つのバルブおよび前記ポンプを制御する、請求項1
1に記載の流体システム。
【請求項13】
前記第二溶液が前記増幅サイトのアレイ上を流れるときに存在する前記ターゲット核酸だけが、前記フローセルに結合し、前記第一溶液中で自由に浮遊しないように、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に前記第二溶液を流す前に、前記コントローラは、前記少なくとも1つのバルブおよび前記ポンプを制御して、前記フローセルから前記第一 溶液を除去する、請求項1
1に記載の流体システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年1月5日に出願された米国仮特許出願第62/442,680号の利益を主張し、2017年3月24日に出願された英国(GB)特許出願第1704754.9号の優先権を主張し、該英国特許出願自体が2017年1月5日に出願された米国仮特許出願第62/442,680号の優先権を主張し、これらの全内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
遺伝子解析は現代社会においてますます重要性を帯びている。いくつか例を挙げると、遺伝子解析は、いくつかの病気にかかる個人のリスクを予測すること(診断)、特定の治療法を考えている人のために副作用のリスクに対する治療上の利益の可能性を決定すること(予後診断)、行方不明者、犯罪者の加害者、犯罪の被害者、および戦争の負傷者を特定すること(法医学)のために有用であることがすでに証明されている。しかしながら、多くの場合、適切な遺伝子検査はまだ利用可能ではないか、または高いエラー率に悩まされている。これらの問題の原因の一つは、診断、予後診断および法医学に現在使用されている遺伝子検査の多くが、人ゲノムのほんの一部しか探査しない技術に依存していることである。人の遺伝形質は、30億を超える塩基対を含むゲノムによってコードされているが、ほとんどの遺伝子検査は、これらの塩基対のわずか数個における突然変異を調査する。理想的にはゲノム中の全30億塩基対まで(全30億塩基対を含む)、探査されるゲノムの割合を増加させることによって、遺伝子検査の精度を改善することができ、遺伝子検査をより診断的および予後的状況のために発展させることができる。
【0003】
多くの遺伝子検査の構成要素は、検査されるべき遺伝物質の調製である。ゲノム全体を捕捉してその完全性を維持しようと試みるとき、これは些細なことではない。大量の遺伝物質を捕捉するために現在利用可能な2つの方法は、エマルジョンポリメラーゼ連鎖反応(ePCR)およびクラスター増幅(例えば、ブリッジ増幅による)である。臨床的用途および診断的用途におけるこれらの方法の使用は現在制限されている。
【0004】
ePCRでは、水性ドロップレットがゲノム断片および担体ビーズと共に油相中で形成される。各ドロップレットが個々のゲノム断片および単一の担体ビーズを単離する確率を最適化するように、条件が選択される。目標はドロップレットがマイクロリアクターを形成することで、該マイクロリアクターはドロップレット間、したがって異なるビーズ間でのゲノム断片の拡散を防ぐ。次いで、各ドロップレット中でビーズが現存するゲノム断片のクローンコピーでコーティングされるように、バルクエマルジョンについて数サイクルのPCR増幅を実施することができる。増幅後、ビーズは分析機器での評価のために検出基板に移される。ePCRに伴う1つの問題は、ビーズのいくつかがゲノム断片のないドロップレットになってしまうため、ブランクビーズが生成されることである。ビーズ濃縮プロセスを実施して、分析機器における使用前にブランクビーズを除去することができる;しかし、このプロセスは面倒で非効率的であり得る。ePCRに伴うもう1つの問題は、一部のドロップレットが複数のゲノム断片に行き着くため、混合クローンビーズが生成されることである。混合クローンビーズはしばしば分析中に同定されて無視され得るが、それらの存在は分析効率を低下させ、場合によっては分析精度を低下させる。
【0005】
クラスター増幅は、遺伝物質の捕捉および増幅に対するより合理化されたアプローチを提供する。商業的な例では、ゲノム断片は基板表面上に捕捉されて、ランダムな位置に「シード」を形成する。過剰なゲノム断片(すなわち捕捉されていないもの)を洗い流した後、数サイクルの増幅を行い、各シードの周囲の表面上にクラスターを形成するクローンコピーを作製する。ePCRと比較したクラスター増幅の利点には、ビーズ濃縮ステップの回避、(エマルジョンから検出基板への)ビーズ移動ステップの回避、および乱雑で(messy)、しばしば気難しい(finicky)オイルエマルジョンの回避が含まれる。しかしながら、市販のクラスター増幅技術の潜在的な問題は、それらが表面上にクラスターのランダムパターンを形成することである。ランダムに配置されたクラスターを見つけて区別するために、画像レジストレーションプロトコルが開発されてきたが、そのようなプロトコルは分析装置に余分な分析負担をかける。さらに、ランダムに配置されたクラスターは、空間的に秩序立ったクラスターのパターンに対して理論的に可能であるよりも、より非効率的に表面を埋める傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、診断的分析、予後的分析および法医学的分析のために遺伝物質を調製するための改良された方法に対する必要性が存在する。本開示はこの必要性に対処し、他の利点も提供する。
【0007】
一例では、第一溶液をフローセル上の増幅サイトのアレイ上に流し、続いて第二溶液を前記増幅サイトのアレイ上に流すことによって、前記第一溶液と、異なる前記第二溶液とを前記フローセル上で反応させることを含む、(例えば、核酸ライブラリーを増幅するための)方法が提供される。前記第一溶液は多数のターゲット核酸と、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および1つ以上の複製酵素を含有する第一試薬混合物とを含む。前記第一溶液中の前記ターゲット核酸は、輸送速度で、前記増幅サイトに輸送されて、前記増幅サイトに結合する。前記第一試薬混合物は、前記増幅サイトに結合している前記ターゲット核酸を増幅して、対応するターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を生成する。前記アンプリコンは、前記輸送速度を超える増幅速度で生成される。前記第二溶液は第二試薬混合物を含み、前記ターゲット核酸を欠く。前記第二溶液は、前記増幅サイトで前記クローン集団中の前記アンプリコンの数を増加させる。
【0008】
この方法の一例では、前記第二試薬混合物は、前記第一試薬混合物の前記NTPおよび前記1つ以上の複製酵素を含む。
【0009】
この方法の一例では、前記フローセルは、前記増幅サイトで前記フローセルに付着した複数のプライマーを含み、前記第一溶液は前記フローセル上で反応して、前記プライマーの第一サブセットに、前記ターゲット核酸および前記アンプリコンを結合させ、前記第二溶液は前記フローセル上で反応して、追加アンプリコンを生成し、前記第一サブセットとは異なる前記プライマーの露出サブセット中の前記プライマーの少なくともいくつかに、前記追加アンプリコンを結合させる。
【0010】
前記第二溶液が前記増幅サイトのアレイ上を流れるときに前記フローセル上にある前記ターゲット核酸だけが、前記フローセルに結合して、前記第一溶液中で自由に浮遊しないように、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に第二溶液を流す前に、前記フローセルから前記第一溶液を除去することを更に含み得る。
【0011】
この方法の一例では、前記増幅サイトのアレイは、前記フローセルの表面に沿って配置され、前記第一溶液は、前記フローセルの入口ポートを通って、前記フローセルの前記表面を横切って流れ、前記第二溶液は続いて、前記入口ポートを通って、前記フローセルの前記表面を横切って流れる。
【0012】
この方法の一例では、前記フローセルは、前記増幅サイトで前記フローセルに付着した複数のプライマーを含み、前記プライマーの少なくともいくつかは、前記増幅サイトのアレイ上に前記第一溶液を流すことに反応して、前記第一溶液中の前記ターゲット核酸に結合し、続いて前記ターゲット核酸を欠く前記第二溶液を前記増幅サイトのアレイ上に流すことは、前記プライマーの前記ターゲット核酸へのさらなる結合をもたらさない
【0013】
一例では、前記ターゲット核酸は、前記第一溶液を用いて、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上にのみ流される。この方法の別の例では、前記第一溶液および前記第二溶液は、前記増幅サイトのアレイ上に等温的に流される。
【0014】
いくつかの例では、前記第二試薬混合物は、前記NTPおよびポリメラーゼを含み、他の例では、前記第二試薬混合物は、ヘリカーゼおよびリコンビナーゼのうちの1つ以上を含み、さらに他の例では、前記第二試薬混合物は、P5プライマー配列およびP7プライマー配列の少なくとも一方を有するプライマーを含む。
【0015】
この方法の一例では、前記増幅サイトは、前記フローセルの表面に沿ったウェルであり、前記ウェルは、前記表面に沿った介在領域によって互いに分離されている。
【0016】
この方法の一例は、以下の1つ以上:前記第一溶液中の前記ターゲット核酸の濃度を制御すること、前記第一溶液の粘度を制御すること、前記ターゲット核酸の平均サイズを制御すること、および前記第一溶液中の分子クラウディング試薬の存在または非存在を制御すること、を用いて、前記増幅サイトへの前記ターゲット核酸の前記輸送速度を制御することを更に含む。
【0017】
この方法の別の例は、以下の1つ以上:前記第一試薬混合物中の前記NTP濃度を制御すること、前記第一試薬混合物中の前記1つ以上の複製酵素の濃度を制御すること、および前記増幅サイトの温度を制御すること、を用いて、前記ターゲット核酸の前記増幅速度を制御することを更に含む。
【0018】
本方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法および/または構成で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。
【0019】
別の例では、試薬マニホールドおよびコントローラを含む、(例えば、核酸ライブラリーを増幅するための)流体システムが提供される。前記試薬マニホールドは、増幅サイトのアレイを含むフローセルの入口ポートと流体連通する少なくとも1つのバルブを含む。試薬マニホールドは、前記少なくとも1つのバルブおよび対応する試薬リザーバの間で流体接続する複数のチャネルを更に含む。前記コントローラは1つ以上のプロセッサを含む。前記コントローラは、前記少なくとも1つのバルブおよびポンプを制御して、前記入口ポートを通して、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に第一溶液を流し、続いて前記入口ポートを通して、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に異なる第二溶液を流す。前記第一溶液は、多数のターゲット核酸と、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および1つ以上の複製酵素を含有する第一試薬混合物とを含む。前記第一溶液中の前記ターゲット核酸の数は、前記アレイ中の前記増幅サイトの数を超える。前記第一溶液は前記フローセル上で反応して、対応するターゲット核酸に由来する前記増幅サイトにアンプリコンのクローン集団を生成する。前記第一溶液中の前記ターゲット核酸は、輸送速度で、前記増幅サイトに輸送されて、前記増幅サイトに結合する。前記第一試薬混合物は、前記増幅サイトに結合している前記ターゲット核酸を増幅して、前記輸送速度を超える増幅速度で前記アンプリコンを生成する。前記第二溶液は第二試薬混合物を含み、前記ターゲット核酸を欠く。前記第二溶液は前記フローセル上で反応して、前記増幅サイトで前記アンプリコンのクローン集団中のアンプリコンの数を増加させる。
【0020】
この流体システムの一例では、前記第二試薬混合物は、前記第一試薬混合物と同じ組成を有する
【0021】
この流体システムの一例では、前記コントローラは、前記ターゲット核酸を含むサンプル鋳型を前記第一試薬混合物と混合して前記第一溶液を形成するために、少なくとも1つのバルブおよび前記ポンプを制御し、且つ、前記コントローラは、前記サンプル鋳型を前記第二試薬混合物と混合することなく、前記第二試薬混合物を一緒に混合することによって前記第二溶液を形成するために、前記少なくとも1つのバルブおよび前記ポンプを制御する。この流体システムの別の例では、前記第二溶液が前記増幅サイトのアレイ上を流れるときに存在する前記ターゲット核酸だけが、前記フローセルに結合し、前記第一溶液中で自由に浮遊しないように、前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に前記第二溶液を流す前に、前記コントローラは、前記少なくとも1つのバルブおよび前記ポンプを制御して、前記フローセルから前記第一溶液を除去する。
【0022】
本流体システムの任意の特徴を、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、本流体システムおよび/または本方法の特徴の任意の組み合わせを一緒に使用することができ、かつ/またはこれらの態様のいずれかまたは両方からの任意の特徴を、本明細書に開示の任意の例と組み合わせることができることを理解されたい。
【0023】
別の例では、(例えば、核酸ライブラリーを増幅するための)方法が提供され、該方法はリザーバ内で、第一試薬混合物をある量のターゲット核酸と混合して、第一溶液を規定するステップを備える。第一試薬混合物は、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および1つ以上の複製酵素を含む。本方法はまた、前記リザーバからフローセル上の増幅サイトのアレイ上に前記第一溶液を流すステップを備える。前記第一溶液中の前記ターゲット核酸は、輸送速度で、前記増幅サイトに輸送されて前記増幅サイトに結合する。前記第一試薬混合物は前記増幅サイトに結合している前記ターゲット核酸を増幅して、対応するターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を生成する。前記アンプリコンは前記輸送速度を超える増幅速度で生成される。本方法は、前記第一溶液を前記リザーバから流した後、追加量の前記ターゲット核酸を前記リザーバに添加することなく、第二試薬混合物を前記リザーバ内で混合して第二溶液を規定するステップを備える。前記第二試薬混合物は、フレッシュ量(fresh quantities)の前記NTPおよび前記1つ以上の複製酵素を含む。本方法は、前記リザーバから前記フローセル上の前記増幅サイトのアレイ上に前記第二溶液を流すステップを更に備える。前記第二試薬混合物は前記アンプリコンと反応して、前記増幅サイトで前記クローン集団中の前記アンプリコンの数を増加させる。
【0024】
前記第一試薬混合物および前記第二試薬混合物は、いずれもバッファー成分を含み、前記第二試薬混合物は、前記第二溶液中に前記追加量の前記ターゲット核酸を添加しないことを補うために、前記第一試薬混合物よりも多量の前記バッファー成分を含む
【0025】
本方法のこの例の任意の特徴を、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、この方法および/または本流体システムおよび/または他の方法からの特徴の任意の組み合わせを一緒に使用することができ、かつ/またはこれらの態様の一部またはすべてからの任意の特徴を、本明細書に開示の例の任意の特徴と組み合わせることができることを理解されたい。
【0026】
本開示の実施例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかになるであろう。詳細な説明および図面中、類似の参照番号(reference numerals)は、おそらく同一ではないが類似の構成要素に対応する。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関連して記載されてもされなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】速度論的排除によって生成された例示的なパターン化フローセルについて、一回目のシーケンシングサイクルの後に得られた合成画像(4色チャネル)を示す図である。
【
図1B】ランダムに配置されたクラスターを有する例示的なフローセルについて、単一のシーケンシングサイクルの後に得られた合成画像(4色チャンネル)を示す図である。
【
図2】速度論的排除によって生成された例示的なパターン化フローセルを用いて、一回目のシーケンシングサイクルの後に得られた合成画像についての対分布関数(PDF)および最近傍(NN)関数を示す図である。
【
図3】一例において、φXゲノムの最初の5つのゲノム位置に整列するクラスターの空間位置の散布図である。異なるゲノム位置は、エックス(exes)、アスタリスク、正方形、三角形および菱形によって示されている。
【
図4】(a)、(b)はフローセル表面からの化学種(species)の電気化学的脱着のための例示的なフローセル構造の概略的な部分断面図である。(c)は、デオキシリボ核酸(DNA)の電場アシストプルダウンのために使用された後における、(b)に示すフローセル構成からの電極表面の全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡画像を示す図である。電圧は、(a)に見られるように1つの導電性表面および電解質の間、または(b)に示す2つの導電性表面の間に印加され得る。(b)に示すフローセル構成はまた、(c)に示すように、リアルタイムでDNAの電場アシストプルダウンにも使用でき、数秒で電極表面上に100倍を超える濃度のDNAが達成される。
【
図5】生体分子パターンの電場アシスト形成のための例示的なワークフロー、ならびに電場印加前後における例示的なワークフローの概略的な部分断面図を示す。
【
図6】一例において、電場の存在下(a)、および電場の非存在下(b)における、酸化インジウムスズ(ITO)バックグラウンド上の2μmの金(Au)フィーチャ(features)上の鋳型のシーディングおよび鋳型のクラスター増幅を示す図である。対応するラインプロファイルは、標識された領域にわたる蛍光強度を示す。
【
図7】一例において、電場の存在下における、シーディングおよびクラスタリング後の大面積蛍光画像を示す図である。(a)は、2μmのAuドットを含むフローセルレーンを示し、(b)は、200nmのAuドットを含むレーンを示す。クラスターは広い範囲にわたってマイクロパターン化されたフィーチャおよびナノパターン化されたフィーチャに整列しており、これらのクラスターの空間的に秩序のある性質は対応するフーリエ変換(FFT)によって裏付けられる。
【
図8】電場の存在下における直径700nmのSiO
2サイト上での例示的なDNAクラスター形成を示す図である。クラスターは、介在領域からの蛍光がほとんどなく、非常に規則正しい。
【
図9】(a)は、一例において、(1)電場アシストP5プライマーおよびP7プライマーのグラフトの前、(2)電場アシストP5プライマーおよびP7プライマーのグラフトの後、(3)電場アシストP5プライマーおよびP7プライマーのグラフト、ならびにP5プライマーおよびP7プライマーの再グラフトの後、(4)電場アシストP5プライマーおよびP7プライマーのグラフト、シランフリーアクリルアミド(SFA)の再コーティング、ならびにP5プライマーおよびP7プライマーの再グラフトの後における、HISEQ(登録商標)機器フローセルでのハイブリダイゼーションアッセイの結果を示す図である。(b)は、一例において、各ステップ後のフローセルレーン当たりのメジアン蛍光強度(任意単位で、a.u.)を表すグラフである。
【
図10】一例において、(a)電場を用いた誘電体サイト上でのダイレクトハイブリダイゼーションの図式表現、(b)介在領域における核酸反発電場の存在下で形成された空間的にパターン化されたクラスター、(c)介在領域における核酸反発電場の不在下で形成されたランダムに並べられたクラスター、を示す図である。
【
図11】本明細書に開示する一例による、遺伝子クラスターを生成するための方法のフローチャートである。
【
図12】一例において、異なるクラスター生成方法について、フローセル上の遺伝子クラスターのシグナル強度(任意の単位で、a.u.)を示す棒グラフである。
【
図13】一例において、
図12に示されるクラスター生成方法について、フィルター通過率(%PF)の値を示す棒グラフである。
【
図14】本明細書に開示する一例による、遺伝子クラスターを生成するための流体システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、核酸ライブラリーおよび核酸ライブラリーを作製するための方法を提供する。特定の例において、本開示の核酸ライブラリーは、サイトのアレイ(an array of sites)の形態である。
【0029】
特許、特許出願、記事、書籍、論文、およびウェブページを含むがこれらに限定されない、本出願で引用したすべての文献および類似の資料は、そのような文献および類似の資料の形式にかかわらず、参照によりその全体が明示的に援用される。定義された用語、用語の使用法、記載された技術などを含むがこれらに限定されず、1つ以上の援用された文献および類似の資料が、本出願と異なるか、または矛盾する場合、本出願が優先する。
【0030】
アレイは、特定のヌクレオチド配列に関してクローンであるサイトを有することができる。したがって、アレイ中の個々のサイトはそれぞれ、単一のヌクレオチド配列の複数のコピーを有することができる。例えば、そのサイトは、生物学的サンプル由来の核酸のクローンコピー、例えば、ゲノムもしくはそのサブフラクション(例えば、エキソーム)、またはトランスクリプトーム(例えば、mRNAライブラリーまたはcDNAライブラリー)もしくはそのサブフラクションを有することができる。
【0031】
アレイ中におけるクローンであるサイトの割合は、ポアソン分布によって予測される割合を超えることができる。したがって、本明細書に記載の方法によって作製されたアレイは、クローンサイトのスーパーポアソン分布を有することができる。スーパーポアソン分布は、アレイの合成中に、その後のサイト濃縮ステップまたはサイト精製ステップを必要とせずに生じ得る(ただし、少なくともいくつかの例では、所望であれば、濃縮ステップおよび精製ステップを実施することができる。)。
【0032】
いくつかの例では、サイトは基板上(または基板中)にフィーチャ(features)として存在することができる。そのような例では、フィーチャはクローンであることができ、アレイ中のクローンであるフィーチャの割合はポアソン分布を超えることができ、フィーチャは繰り返しパターンで空間的に配置されることができる。したがって、サイトは、例えば、直線グリッド、六角形グリッド、または他の所望のパターンで空間的に並べられ得る。
【0033】
本開示の核酸ライブラリーは、速度論的排除を使用する方法を用いて作製することができる。速度論的排除は、別の事象またはプロセスの発生を効果的に排除するのに十分に速い速度でプロセスが生じるときに起こり得る。例えば、核酸アレイの作製について、アレイのサイトは溶液からのターゲット核酸で無作為にシーディングされ、シーディングされた各サイトを容量いっぱいまで満たすようにターゲット核酸のコピーが増幅プロセスにおいて生成される場合を考える。本開示の速度論的排除法に従って、シーディングプロセスおよび増幅プロセスは、増幅速度がシーディング速度を超える条件下で、同時に進行することができる。かくして、第一のターゲット核酸によってシーディングされたサイトでコピーが作製される比較的速い速度は、第二の核酸が増幅のためにそのサイトをシーディングすることを効果的に排除するであろう。核酸ライブラリーを増幅するための追加の速度論的排除法は、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2016/0053310 A1号に記載されている。
【0034】
速度論的排除は、ターゲット核酸または最初のコピーの後続コピーを作製するための比較的速い速度に対する、ターゲット核酸の最初のコピーを作製するための比較的遅い速度を利用することができる。前段落の例において、速度論的排除は、サイトを核酸シードのコピーで満たすために起こる増幅の比較的速い速度に対する、ターゲット核酸のシーディングの比較的遅い速度(例えば、比較的遅い拡散または輸送)によって起こる。別の例において、速度論的排除は、サイトを満たすためにに後続コピーが作製される比較的速い速度に対する、サイトにシーディングしたターゲット核酸の最初のコピーの形成の遅れ(例えば、遅延された活性化または遅い活性化)によって起こり得る。この例では、個々のサイトは、いくつかの異なるターゲット核酸によってシーディングされた可能性がある(例えば、増幅前にいくつかのターゲット核酸が各サイトに存在し得る)。しかしながら、後続コピーの生成速度と比較して、最初のコピー形成の平均速度が比較的遅いように、任意の所与のターゲット核酸についての最初のコピー形成はランダムに活性化され得る。この場合、個々のサイトはいくつかの異なるターゲット核酸によってシーディングされた可能性があるが、速度論的排除はそれらのターゲット核酸のうちの1つのみが増幅されることを可能にするであろう。より具体的には、第一ターゲット核酸が増幅のために活性化されると、サイトはそのコピーで容量まで急速に満たされ、それによってそのサイトで第二ターゲット核酸のコピーが作製されるのを防止する。
【0035】
本明細書に記載の方法によって作製されたアレイの利点は、サイトのクローン性がその後の分析における精度を提供することである。これにより、混合集団を有するサイトの検出時に生じる混乱を招くような結果が回避される。
【0036】
本明細書に記載のアレイの別の利点は、それらがクローンサイトのスーパーポアソン分布を有することである。このことは、さもなければ混合サイトへの隔離のために起こり得る遺伝的内容の損失を回避することによって、ライブラリーの複雑さを増加させる。
【0037】
本明細書に記載の方法およびアレイのさらなる利点は、基板上にフィーチャを有するアレイを提供することであり、ここでフィーチャは繰り返しパターンで空間的に配置されている。上述したように、クローンであるフィーチャの割合はポアソン分布を超えることができる。ポアソン分布は最大約37%の占有率を設定する。本明細書に記載の方法に従って、クローンであるフィーチャの相補体(complement)は、約40%、約50%、約60%、約75%以上を超えることができる。本明細書に記載の方法によって製造されたアレイは、ランダムクラスターアレイと比較して、より効率的な基板の充填(filling)を提供する。そのようなアレイはまた、ランダムクラスターアレイに使用される画像レジストレーション方法の複雑さを回避することによって、分析的に評価することがより容易である。
【0038】
さらに、本明細書に記載の方法は、検出を容易にするようにパターン化された基板上にアレイを作製するのに有利である。例えば、いくつかの市販のシーケンシングプラットフォームは、配列検出ステップ中に検出試薬(例えば、454 LifeSciences(Rocheの子会社、バーゼル、スイス)から入手可能なプラットフォームにおけるピロリン酸、またはIon Torrent(Life Technologiesの子会社、カールスバッド、カリフォルニア州)から入手可能なプラットフォームにおけるプロトン)の拡散に対する障壁を提供するウェルを有する基板に依存している。本明細書に記載の方法は、ポアソン制限される(Poisson limited)であろう標準的なクラスター増幅法と比較して、クローン集団でロードされるウェルの数を増加させるために有利であり得る。エマルジョンのハンドリングおよびビーズの操作を回避することによって、本開示の方法は同様にePCR法よりも有利である。
【0039】
本明細書中で使用される用語は、他に特定されない限り、関連技術におけるそれらの通常の意味をとると理解されるであろう。本明細書中で使用されるいくつかの用語およびそれらの意味を以下に記載する。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、用語「能動的シーディング(active seeding)」は、核酸をある場所に向かって、またはある場所から離れるように移動させるために、1つ以上の核酸に加えられる非拡散力を指す。その場所はアレイの増幅サイトであり得る。非拡散力は、電場または磁場を発生させるものなどの外部源、または反応体積内に分子クラウディングまたは化学的勾配を課す作用剤(agent)によって提供され得る。
【0041】
本明細書中で使用されるとき、用語「アンプリコン」は、核酸に関して使用される場合、その核酸をコピーした産物を意味し、該産物は、その核酸のヌクレオチド配列の少なくとも一部と同一または相補的なヌクレオチド配列を有する。アンプリコンは、例えば、ポリメラーゼ伸長、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、ライゲーション伸長、またはライゲーション連鎖反応を含む、核酸またはそのアンプリコンを鋳型として使用する任意の様々な増幅方法によって産生することができる。アンプリコンは、特定のヌクレオチド配列の単一コピーを有する核酸分子(例えば、PCR産物)、または該ヌクレオチド配列の複数コピーを有する核酸分子(例えば、RCAのコンカテマー産物)であり得る。ターゲット核酸の第一アンプリコンは、相補的コピーであり得る。後続アンプリコンは、第一アンプリコンの生成後に、ターゲット核酸または第一アンプリコンから作製されるコピーである。後続アンプリコンは、ターゲット核酸と少なくとも実質的に相補的であるか、またはターゲット核酸と少なくとも実質的に同一である配列を有し得る。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、用語「増幅サイト(amplification site)」は、1つ以上のアンプリコンが生成され得るアレイ内またはアレイ上のサイトを指す。増幅サイトは、そのサイトで生成される少なくとも1つのアンプリコンを含む、そのサイトで生成される少なくとも1つのアンプリコンを保持する、またはそのサイトで生成される少なくとも1つのアンプリコンに付着するようにさらに構成され得る。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、用語「アレイ」は、相対位置に従って互いに区別され得るサイトの集団を指す。アレイの異なるサイトにある異なる分子は、アレイ中のサイトの位置に従って互いに区別することができる。アレイの個々のサイトは、特定の種類の1つ以上の分子を含み得る。例えば、サイトは特定の配列を有する単一のターゲット核酸分子を含み得るか、またはサイトは同じ配列(および/またはその相補配列)を有するいくつかの核酸分子を含み得る。アレイのサイトは、同じ基板上に配置された異なるフィーチャであり得る。フィーチャの例には、限定されることなく、基板内のウェル、基板内または基板上のビーズ(または他の粒子)、基板からの突起、基板上のリッジ、または基板内のチャネルが含まれる。アレイのサイトは、それぞれが異なる分子を担持する別々の基板であり得る。別々の基板に付着した異なる分子は、基板が結合している表面上の基板の位置に従って、または液体もしくはゲル中の基板の位置に従って識別することができる。別々の基板が表面上に配置されているアレイの例には、限定されないが、ウェル内にビーズを有するものが含まれる。
【0044】
本明細書中で使用されるとき、用語「容量(capacity)」は、サイトおよび核酸物質に関して使用される場合、そのサイトを占有し得る核酸物質の最大量を意味する。例えば、本用語は、特定の条件でそのサイトを占めることができる核酸分子の総数を指すことができる。例えば、特定の条件でそのサイトを占めることができる特定のヌクレオチド配列の核酸物質の総質量または総コピー数を含む、他の尺度も使用することができる。ターゲット核酸に対するサイトの容量は、そのターゲット核酸のアンプリコンに対するサイトの容量と少なくとも実質的に同等であり得る。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「捕捉剤(capture agent)」は、ターゲット分子(例えば、ターゲット核酸)に対して付着、保持または結合することができる材料、化学物質、分子またはそれらの部分を指す。捕捉剤の例には、限定されないが、ターゲット核酸の少なくとも一部に相補的な捕捉核酸、ターゲット核酸(もしくはそれに結合したリンク部分)に結合することができる受容体-リガンド結合ペアのメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)、またはターゲット核酸(もしくはそれに結合したリンク部分)と共有結合を形成することができる化学試薬、が含まれる。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、用語「クローン集団(clonal population)」は、特定のヌクレオチド配列に関して均一な核酸の集団を指す。均一な配列(homogenous sequence)は、少なくとも約10ヌクレオチド長であり得るが、例えば、少なくとも約50、約100、約250、約500または約1000ヌクレオチド長を含めてさらに長くてもよい。クローン集団は、単一のターゲット核酸または鋳型核酸に由来し得る。クローン集団中のすべてではないにしても、ほとんどの核酸は同じヌクレオチド配列を有する。クローン性から逸脱することなく、クローン集団において少数の突然変異(例えば、増幅アーティファクトによる)が起こり得ることが理解されるであろう。
【0047】
本明細書中で使用されるとき、用語「変性サイクル(denaturation cycle)」は、相補的な核酸鎖が互いに分離されるように増幅反応のコース(course)を変える核酸増幅反応の操作を指す。操作の例には、例えば、核酸を変性させる化学試薬を導入すること、または加熱または他の操作によって該反応を物理的に変化させて核酸を変性させることが含まれる。いくつかの変性サイクルを、サイクル(cyclic)増幅反応に含めることができる。プライマーを核酸鎖にハイブリダイズさせるように誘導するためのサイクル操作などのいくつかの他のサイクルも含めることができる。本明細書に記載の方法では、1つ以上の変性サイクルまたは他のサイクルを省略することができる。かくして、少なくともいくつかの例では、本開示の増幅反応はサイクル操作なしに実施することができる。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、用語「異なる(different)」は、核酸に関して使用される場合、核酸が互いに同じではないヌクレオチド配列を有することを意味する。2つ以上の核酸は、それらの全長にわたって異なるヌクレオチド配列を有することができる。あるいは、2つ以上の核酸は、それらの長さの相当部分にわたって異なるヌクレオチド配列を有し得る。例えば、2つ以上の核酸は、互いに異なるターゲットヌクレオチド配列部分を有することができ、一方でに互いに同一のユニバーサル配列領域を有することもできる。
【0049】
本明細書中で使用されるとき、用語「流体アクセス(fluidic access)」は、流体中の分子および流体と接触するサイトに関して使用される場合、そのサイトに接触または入るために、流体中をまたは流体を通って移動する分子の能力を指す。本用語はまた、溶液に入るために分子がそのサイトから分離するかまたはそのサイトから出る能力を指すこともできる。分子がそのサイトに入ること、そのサイトに接触すること、そのサイトから分離すること、および/またはそのサイトから出ることを妨げる障壁がない場合に、流体アクセスが起こり得る。しかしながら、アクセスが完全に妨げられない限り、たとえ拡散が遅延、減少または変更されたとしても、流体アクセスは存在すると理解される。
【0050】
本明細書中で使用されるとき、用語「二本鎖(double stranded)」は、核酸分子に関して使用される場合、その核酸分子中の少なくとも実質的にすべてのヌクレオチドが相補的ヌクレオチドに水素結合していることを意味する。部分的二本鎖核酸は、そのヌクレオチドの少なくとも約10%、約25%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約95%が相補的ヌクレオチドと水素結合し得る。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、用語「それぞれ(each)」は、アイテムのコレクションに関して使用される場合、コレクション内の個々のアイテムを識別することを意図しているが、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、必ずしもコレクション内のすべてのアイテムを指すとは限らない。
【0052】
本明細書中で使用されるとき、用語「約(about)」は、数値に関して使用される場合、その値の±5%以内のように、概ね述べられている値を示す。
【0053】
本明細書中で使用されるとき、用語「少なくとも実質的に(at least substantially)」は、形容詞を修正することに関して使用される場合、±5%のマージン以内のように、主題形容詞またはその近くのいずれかである程度を示す。例えば、「少なくとも実質的に全ての核酸(at least substantially all of the nucleic acids)」という句は、全ての(例えば、100%)の核酸、または指定されたマージン以内で全ての核酸よりも少ない核酸、例えば核酸の95%~99.99%を指すことができる。
【0054】
本明細書中で使用されるとき、用語「微量(trace amount)」は、混合物または溶液中の分析物の非常に低い濃度、例えば、約100ppm以下を指す。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「排除体積(excluded volume)」は、他のそのような分子を排除して、特定の分子によって占められる空間の体積を指す。
【0056】
本明細書中で使用されるとき、用語「伸長可能な(extendible)」または「伸長可能な状態(extendible state)」は、プライマーなどの核酸に関して使用される場合、その核酸が(例えば、ポリメラーゼ触媒作用による)ヌクレオチドの付加または(例えば、リガーゼ触媒作用による)オリゴヌクレオチドの付加に対する能力があることを意味する。「伸長不可能(non-extendible)」であるか、または「伸長不可能な状態(non-extendible state)」にある核酸は、例えば、伸長ブロック部分の存在または3’ヒドロキシルの非存在のために、そのような能力がない。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「介在領域(interstitial region)」は、基板または表面の他の領域を分離する、基板内または表面上の領域を指す。例えば、介在領域は、アレイの1つのフィーチャを、アレイの別のフィーチャから分離することができる。互いに分離されている2つの領域は、互いの接触を欠いており、不連続であり得る。別の例では、介在領域は、フィーチャの第1の部分を、フィーチャの第2の部分から分離することができる。介在領域によって提供される分離は、部分的な分離または完全な分離であり得る。介在領域は、表面上のフィーチャの表面物質とは異なる表面物質を有することができる。例えば、アレイのフィーチャは、介在領域に存在する量または濃度を超える量または濃度の捕捉剤またはプライマーを有することができる。いくつかの例では、捕捉剤またはプライマーは介在領域に存在しなくてもよい。
【0058】
本明細書中で使用されるとき、用語「ポリメラーゼ」は、当技術分野におけるその使用と一致することを意図しており、例えば、核酸を鋳型鎖として使用して核酸分子の相補的複製物を生成する酵素を含む。DNAポリメラーゼは鋳型鎖に結合し、次いで鋳型鎖を下方に移動して、伸長する核酸鎖の3’末端の遊離ヒドロキシル基にヌクレオチドを順次付加し得る。DNAポリメラーゼはDNA鋳型から相補的DNA分子を合成し、リボ核酸(RNA)ポリメラーゼはDNA鋳型からRNA分子を合成する(転写)。ポリメラーゼは、鎖の伸長を開始するために、プライマーと呼ばれる短いRNAまたはDNA鎖を使用することができる。いくつかのポリメラーゼは、それらが鎖に塩基を付加しているサイトの上流の鎖を置換することができる。そのようなポリメラーゼは鎖置換型であると言われ、ポリメラーゼによって読み取られている鋳型鎖から相補鎖を除去する活性を有することを意味する。鎖置換活性を有するポリメラーゼの例には、例えば、Bst(Bacillus stearothermophilus)ポリメラーゼの大きな断片、エキソクレノウポリメラーゼ(exo-Klenow polymerase)、またはシーケンシンググレードのT7エキソポリメラーゼ(T7 exo-polymerase)が含まれる。いくつかのポリメラーゼはそれらの前の鎖を分解し、それを後ろの伸長鎖と効果的に置き換える(5’エキソヌクレアーゼ活性)。いくつかのポリメラーゼは、それらの後ろの鎖を分解する活性(3’エキソヌクレアーゼ活性)を有する。いくつかの有用なポリメラーゼは、3’および/または5’エキソヌクレアーゼ活性を低下または排除するために、突然変異または他の方法によって改変されている。
【0059】
本明細書中で使用されるとき、用語「核酸」は、当技術分野におけるその使用と一致することを意図しており、天然起源の核酸またはその機能的類似体を含む。特に有用な機能的類似体は、配列特異的様式で核酸にハイブリダイズすることができるか、または特定のヌクレオチド配列の複製のための鋳型として使用することができる。天然起源の核酸は、一般にホスホジエステル結合を含むバックボーン(backbone)を有する。類似体の構造は、当技術分野において公知の様々なもののうちのいずれかを含む別のバックボーン結合(backbone linkage)を有し得る。天然起源の核酸は、一般に、(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)中に見出される)デオキシリボース糖または(例えば、リボ核酸(RNA)中に見出される)リボース糖を有する。核酸は、当技術分野において公知のこれらの糖部分の様々な類似体のいずれかを含み得る。核酸は天然塩基または非天然塩基を含み得る。これに関して、天然のデオキシリボ核酸は、アデニン、チミン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択される1つ以上の塩基を有することができ、リボ核酸は、ウラシル、アデニン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択される1つ以上の塩基を有することができる。核酸に含まれ得る有用な非天然塩基は当技術分野で公知である。「ターゲット(target)」という用語は、核酸に関して使用される場合、本明細書に記載の方法または組成物の文脈におけるその核酸の意味上の識別子として意図され、その他の点で明示的に示されているものを超えて、その核酸の構造または機能を必ずしも限定するものではない。
【0060】
本明細書中で使用されるとき、用語「速度(rate)」は、輸送、増幅、捕捉または他の化学プロセスに関して使用される場合、化学反応速度論および生化学反応速度論におけるその意味と一致するように意図される。2つのプロセスの速度は、最大速度(例えば、飽和時)、前定常状態速度(例えば、平衡前)、速度論的速度定数、または当技術分野で公知の他の尺度に関して比較することができる。特定の例では、特定のプロセスの速度は、そのプロセスの完了のための合計時間に関して決定され得る。例えば、増幅速度は、増幅が完了するのにかかる時間に関して決定することができる。しかしながら、特定のプロセスについての速度は、そのプロセスの完了のための合計時間に関して決定される必要はない。
【0061】
本明細書中で使用されるとき、用語「リコンビナーゼ」は、当技術分野におけるその使用と一致することを意図しており、例えば、RecAタンパク質、T4 uvsXタンパク質、任意の系統(phyla)由来の任意の相同タンパク質もしくは任意の相同タンパク質複合体、またはそれらの機能的変異体を含む。真核生物のRecAホモログは一般に、同定されるべきこの群の最初のメンバーにちなんでRad51と命名されている。RecAの代わりに、他の非相同リコンビナーゼ、例えばRecTまたはRecOが利用され得る。
【0062】
本明細書中で使用されるとき、用語「一本鎖結合タンパク質(single stranded binding protein)」は、例えば、時期尚早なアニーリングを防ぐために、ヌクレアーゼ消化から一本鎖核酸を保護するために、核酸から二次構造を除去するために、または核酸の複製を容易にするために、一本鎖核酸に結合する機能を有する任意のタンパク質を指すことが意図される。本用語は、例えば、国際生化学分子生物学連合の命名委員会(NC-IUBMB)によって一本鎖結合タンパク質として正式に同定されているタンパク質を含むことを意図している。一本鎖結合タンパク質の例には、例えば、大腸菌SSB(E. coli SSB)、T4 gp32、T7遺伝子2.5 SSB(T7 gene 2.5 SSB)、ファージφ29 SSB(phage phi 29 SSB)、任意の系統(phyla)由来の任意の相同タンパク質もしくは任意の相同タンパク質複合体、またはそれらの機能的変異体が含まれる。
【0063】
本明細書中で使用されるとき、用語「輸送(transport)」は、流体を通る分子の移動を指す。本用語は、分子の濃度勾配に沿った分子の移動(例えば、受動拡散)などの受動輸送を含み得る。本用語は能動輸送も含むことができ、それによって分子は、その濃度勾配に沿って、またはその濃度勾配に逆らって移動することができる。したがって、輸送は、1つ以上の分子を所望の方向に、または増幅サイトなどの所望の位置に移動させるためにエネルギーを加えることを含み得る。
【0064】
本明細書中で使用されるとき、用語「ユニバーサル配列(universal sequence)」は、2つ以上の核酸分子に共通の配列領域を指し、ここで該分子は互いに異なる配列領域をも有する。分子のコレクションの異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、そのユニバーサル配列に相補的なユニバーサル捕捉核酸の集団を用いて、複数の異なる核酸の捕捉を可能にし得る。同様に、分子のコレクションの異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、そのユニバーサル配列に相補的なユニバーサルプライマーの集団を用いて、複数の異なる核酸の複製または増幅を可能にし得る。したがって、ユニバーサル捕捉核酸またはユニバーサルプライマーは、ユニバーサル配列に特異的にハイブリダイズすることができる配列を含む。ターゲット核酸分子は、例えば、異なるターゲット配列の一方または両方の末端に、ユニバーサルアダプターを結合するように改変することができる。
【0065】
本開示は、核酸を増幅するための方法を開示する。本方法は、(a)(i)増幅サイトのアレイおよび(ii)複数の異なるターゲット核酸を有する溶液を含む、増幅試薬を提供すること、ならびに(b)増幅試薬を反応させて複数の増幅サイトを生成し、該複数の増幅サイトのそれぞれは前記溶液からの個々のターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を含有すること、を含み、該反応は、同時に、(i)異なるターゲット核酸を増幅サイトに平均輸送速度で輸送すること、および(ii)増幅サイトでターゲット核酸を平均増幅速度で増幅することを含み、平均増幅速度は平均輸送速度を超える。特定の例では、溶液中の異なるターゲット核酸の数は、アレイ中の増幅サイトの数を超える。異なるターゲット核酸は、複数の増幅サイトへの流体アクセスを有する。さらに、各増幅サイトは、任意選択で、複数の異なる核酸中のいくつかの核酸に対する容量を有することができる。
【0066】
また、核酸を増幅するための方法が開示され、該方法は、(a)(i)増幅サイトのアレイおよび(ii)複数の異なるターゲット核酸を有する溶液を含む、増幅試薬を提供すること、ならびに(b)増幅試薬を反応させて複数の増幅サイトを生成し、該複数の増幅サイトのそれぞれは前記溶液からの個々のターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を含有すること、を含み、該反応は(i)各増幅サイトで個々のターゲット核酸から第一アンプリコンを生成すること、および(ii)各増幅サイトで個々のターゲット核酸から、または前記第一アンプリコンから、後続アンプリコンを生成することを含み、増幅サイトで後続アンプリコンが生成される平均速度は、増幅サイトで第一アンプリコンが生成される平均速度を超える。特定の例では、前記溶液中の異なるターゲット核酸の数は、アレイ中の増幅サイトの数を超える。異なるターゲット核酸は、複数の増幅サイトへの流体アクセスを有する。さらに、各増幅サイトは、任意選択で、複数の異なる核酸中のいくつかの核酸に対する容量を有することができる。
【0067】
本開示は、核酸を増幅させるための方法を更に開示し、該方法は、(a)(i)増幅サイトのアレイおよび(ii)複数の異なるターゲット核酸を有する溶液を含む、増幅試薬を提供すること、ならびに(b)増幅試薬を反応させて複数の増幅サイトを生成し、該複数の増幅サイトのそれぞれは前記溶液からの個々のターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を含有すること、を含む。前記反応は、同時に、(i)異なるターゲット核酸を増幅サイトにおいて平均捕捉速度で捕捉すること、および(ii)増幅サイトで捕捉されたターゲット核酸を平均増幅速度で増幅すること、を含む。平均増幅速度は平均捕捉速度を超える。
【0068】
また、核酸を増幅させるための方法が開示され、該方法は、(a)(i)増幅サイトのアレイおよび(ii)複数の異なるターゲット核酸を有する溶液を含む、増幅試薬を提供すること、ならびに(b)増幅試薬を反応させて複数の増幅サイトを生成し、該複数の増幅サイトのそれぞれは前記溶液からの個々のターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を含有すること、を含む。前記反応は、(i)増幅サイト(複数可)に捕捉された個々のターゲット核酸から第一アンプリコンを生成すること、および(ii)増幅サイトの各々で捕捉された個々のターゲット核酸から、または第一アンプリコンから、後続アンプリコンを生成すること、を含む。後続アンプリコンが増幅サイトで生成される平均速度は、第一アンプリコンが増幅サイトで生成される平均速度を超える。
【0069】
さらに、生体分子のパターン化表面を作製するための方法であって、(a)(i)表面上に非連続的なフィーチャを有し、その結果、該フィーチャが表面の介在領域によって分離されるアレイおよび(ii)複数の異なるターゲット生体分子を有する溶液、を含む試薬を提供すること、ならびに(b)生体分子をフィーチャに輸送し、個々の生体分子を各フィーチャに付着させるために、前記試薬を反応させること、を含む方法が開示される。介在領域から生体分子をはじくために、電場が介在領域に印加される。
【0070】
本明細書に記載の方法で使用される増幅サイトのアレイは、1つ以上の基板として存在し得る。アレイに使用できる基板材料の例には、ガラス(例えば、改質ガラス、機能化ガラス、無機ガラス)、ミクロスフェア(例えば、不活性粒子および/または磁性粒子)、プラスチック、多糖類、ナイロン、ニトロセルロース、セラミック、樹脂、シリカ、シリカ系材料、炭素、金属、光ファイバーもしくは光ファイバー束、ポリマー、およびマルチウェル(例えばマイクロタイター)プレートが含まれる。プラスチックの例には、アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、およびポリテトラフルオロエチレン(例えば、デュポン社のTEFLON(登録商標))が含まれる。シリカ系材料の例には、シリコンおよび様々な形態の変性シリコンが含まれる。
【0071】
特定の例では、基板は、ウェル、チューブ、チャネル、キュベット、ペトリ皿、ボトルなどの容器の中またはその一部であり得る。特に有用な容器は、例えば、米国特許出願公開第2010/0111768 A1号、またはBentley et al., Nature 456:53-59頁(2008年)に記載されているようなフローセルであり、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。フローセルの例は、Illumina、Inc.(サンディエゴ、カリフォルニア州)から市販されているものである。別の特に有用な容器は、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレート中のウェルである。
【0072】
いくつかの例では、アレイのサイトは表面上のフィーチャとして構成することができる。 フィーチャは、様々な所望のフォーマット(format)のいずれかで存在し得る。例えば、サイトは、ウェル、ピット、チャネル、リッジ、盛り上げられた領域(raised region)、ペグ(pegs)、ポストなどであり得る。上記のように、サイトはビーズを含み得る。しかしながら、特定の例では、サイトはビーズまたは粒子を含む必要はない。サイトの例には、454 LifeSciences(Rocheの子会社、バーゼル、スイス)またはIon Torrent(Life Technologiesの子会社、カールスバッド、カリフォルニア州)によって販売されている市販のシーケンシングプラットフォームに使用される基板中に存在するウェルが含まれる。ウェルを有する他の基板には、例えば、米国特許第6,266,459号、米国特許第6,355,431号、米国特許第6,770,441号、米国特許第6,859,570号、米国特許第6,210,891号、米国特許第6,258,568号、米国特許第6,274,320号、米国特許出願公開第2009/0026082 A1号、米国特許出願公開第2009/0127589 A1号、米国特許出願公開第2010/0137143 A1号、米国特許出願公開第2010/0282617 A1号、または国際公開第00/63437号に記載のエッチングされた光ファイバーならびに他の基板が含まれ、これらの文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの場合には、ウェル内でビーズを使用する用途について、これらの参考文献に基板が例示されている。本開示の方法または組成物では、ウェルを含有する基板をビーズと共に、またはビーズなしで使用することができる。いくつかの例では、基板のウェルは、米国特許第9,512,422号に記載されているような、(ビーズを含有するまたは含有しない)ゲル材料を含むことができ、当該文献はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0073】
アレイのサイトは、ガラス、プラスチック、または上に例示された他の材料などの非金属表面上の金属フィーチャであり得る。金属層は、湿式プラズマエッチング、乾式プラズマエッチング、原子層堆積、イオンビームエッチング、化学気相成長(chemical vapor deposition)、真空スパッタリングなどの当技術分野で公知の方法を使用して、表面上に堆積させることができる。例えば、FLEXAL(登録商標)、OPAL(登録商標)、IONFAB(登録商標)300plus、またはOPTOFAB(登録商標)3000システム(Oxford Instruments、イギリス)を含む、任意の様々な市販の機器を適切に使用することができる。金属層はまた、Thornton, Ann. Rev. Mater. Sci. 7:239-60頁(1977年)に記載されているように、電子ビーム蒸着またはスパッタリングによって堆積することができ、当該文献はその全体が参照により本明細書に援用される。上に例示したものなどの金属層堆積技術をフォトリソグラフィー技術と組み合わせて、表面上に金属領域またはパッチを作成することができる。金属層堆積技術とフォトリソグラフィー技術とを組み合わせるための方法の例は、以下の実施例1および2、ならびに米国特許第8,778,848号において提供されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0074】
フィーチャのアレイは、スポットまたはパッチのグリッドとして現れることができる。フィーチャは、繰り返しパターンまたは不規則な非繰り返しパターンに配置することができる。特に有用なパターンは、六角形パターン、直線パターン、グリッドパターン、反射対称性(reflective symmetry)を有するパターン、回転対称性を有するパターンなどである。非対称パターンも有用あり得る。ピッチは最近傍フィーチャの異なるペアの間で同じであり得るか、またはピッチは最近傍フィーチャの異なるペアの間で変化し得る。特定の例では、アレイのフィーチャはそれぞれ、約100nm2、約250nm2、約500nm2、約1μm2、約2.5μm2、約5μm2、約10μm2、約100μm2、または約500μm2より大きい面積を有することができる。代替的または追加的に、アレイのフィーチャはそれぞれ、約1mm2、約500μm2、約100μm2、約25μm2、約10μm2、約5μm2、約1μm2、約500nm2、または約100nm2よりも小さい面積を有することができる。実際、領域は、上に例示したものから選択される上限と下限との間の範囲内のサイズを有することができる。
【0075】
表面上にフィーチャのアレイを含む例では、フィーチャは不連続的であることができ、介在領域によって分離されている。フィーチャのサイズおよび/または領域間の間隔は、アレイが高密度、中密度または低密度であり得るように変動し得る。高密度アレイは、約15μm未満離れている領域を有することを特徴とする。中密度アレイは、約15μm~約30μm離れている領域を有し、一方、低密度アレイは、約30μm超離れている領域を有する。1つ以上の例において有用なアレイは、約100μm未満、約50μm未満、約10μm未満、約5μm未満、約1μm未満、または約0.5μm離れている領域を有することができる。
【0076】
特定の例では、アレイはビーズまたは他の粒子のコレクションを含むことができる。粒子は溶液中に懸濁させることができ、または粒子は基板の表面上に配置することができる。溶液中のビーズアレイの例は、Luminex(オースティン、テキサス州)によって商品化されているものである。表面上に配置されたビーズを有するアレイの例には、BEADCHIP(商標)アレイ(Illumina Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)のようなビーズがウェル内に配置されているもの、または454 LifeSciences(Rocheの子会社、バーゼル、スイス)またはIon Torrent(Life Technologiesの子会社、カールスバッド、カリフォルニア州)からのシーケンシングプラットフォームで使用される基板内にビーズが配置されているもの、が含まれる。表面上に配置されたビードを有する他のアレイは、米国特許第6,266,459号、米国特許第6,355,431号、米国特許第6,770,441号、米国特許第6,859,570号、米国特許第6,210,891号、米国特許第6,258,568号、米国特許第6,274,320号、米国特許出願公開第2009/0026082 A1号、米国特許出願公開第2009/0127589 A1号、米国特許出願公開第2010/0137143 A1号、米国特許出願公開第2010/0282617 A1号、または国際公開第00/63437号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。上記の参考文献のいくつかは、ビーズをアレイ基板内またはアレイ基板上にロードする前に、ターゲット核酸をビーズに付着させるための方法を記載している。しかしながら、ビーズは増幅プライマーを含むように作製することができ、次いでビーズを使用してアレイをロードすることができ、それによって本明細書に記載の方法で使用するための増幅サイトを形成することができることが理解されよう。本明細書で前述したように、基板はビーズなしで使用することができる。例えば、増幅プライマーはウェルに直接付着させるか、またはウェル中のゲル材料に直接付着させることができる。したがって、これらの参考文献は、本明細書に記載の方法および組成物における使用のために改変することができる材料、組成物または装置の例示である。
【0077】
アレイの増幅サイトは、ターゲット核酸に結合することができる複数の捕捉剤を含み得る。捕捉剤の例には、ターゲット核酸に結合したそれぞれの結合パートナーを有する受容体および/またはリガンドが含まれ、それらの例は本明細書において前述されている。特に有用な捕捉剤は、1つ以上のターゲット核酸の配列に相補的な捕捉核酸である。例えば、増幅サイトに存在する捕捉核酸は、各ターゲット核酸のアダプター配列中に存在するユニバーサル配列に相補的なユニバーサル捕捉配列を有することができる。いくつかの例では、捕捉核酸は、ターゲット核酸の増幅のためのプライマーとしても機能することができる(それが、ユニバーサル配列も含むかどうかにかかわらず)。
【0078】
特定の例では、捕捉核酸などの捕捉剤を増幅サイトに付着させることができる。例えば、捕捉剤をアレイのフィーチャの表面に付着させることができる。付着は、ビーズ、粒子またはゲルなどの中間構造物を介してもよい。ゲルを介した捕捉核酸のアレイへの付着は以下の実施例1に示され、Illumina Inc.(サンディエゴ、カリフォルニア州)から市販されているか、または国際公開第2008/093098号に記載されているフローセルによってさらに例示され、国際公開第2008/093098号はその全体が参照により本明細書に援用される。本明細書に記載の方法および装置で使用することができるゲルの例には、アガロースなどのコロイド構造を有するもの、ゼラチンのようなポリマーメッシュ構造を有するもの、またはポリアクリルアミド、SFA(例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許出願公開第2011/0059865 A1号を参照)もしくはポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド)(PAZAM)(例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第9,012,022号を参照)などの架橋ポリマー構造を有するものが含まれるが、これらに限定されない。ビーズを介した付着は、本明細書において前述した説明および引用文献に例示されているように達成することができる。
【0079】
いくつかの例では、アレイ基板の表面上のフィーチャは不連続であり、表面の介在領域によって分離されている。アレイのフィーチャと比較して、実質的により少量または低濃度の捕捉剤を有する介在領域が有利である。捕捉剤を欠く介在領域が特に有利である。例えば、介在領域における比較的少量の捕捉部分の存在または捕捉部分の非存在は、ターゲット核酸およびその後に生成されるクラスターの所望のフィーチャへの局在化を支持する。特定の例では、フィーチャは表面における凹状フィーチャ(例えば、ウェル)であることができ、フィーチャはゲル材料を含むことができる。ゲルを含有するフィーチャは、表面上の介在領域によって互いに分離され得、該表面にはゲルが少なくとも実質的に非存在であるか、または存在する場合は、ゲルは少なくとも実質的に核酸の局在化をサポートすることができない。ウェルなどのゲル含有フィーチャを有する基板を作製および使用するための方法および組成物は、米国特許第9,512,442号に記載されており、当該文献はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0080】
本開示の方法または組成物において使用されるターゲット核酸は、DNA、RNAまたはそれらの類似体から構成され得る。ターゲット核酸の供給源は、ゲノムDNA、メッセンジャーRNA、または天然供給源由来の他の核酸であり得る。いくつかの場合には、そのような供給源に由来するターゲット核酸は、本明細書の方法または組成物で使用する前に増幅することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、またはランダムプライム増幅(RPA)を含むがこれらに限定されない、任意の様々な既知の増幅技術を使用することができる。本明細書に記載の方法または組成物における使用前のターゲット核酸の増幅は、任意選択であることが理解されよう。かくして、本明細書に記載の方法および組成物のいくつかの例において使用する前に、ターゲット核酸は増幅されないであろう。ターゲット核酸は場合によっては合成ライブラリーに由来することができる。合成核酸は、天然のDNAまたはRNA組成物を有することができ、またはその類似体であり得る。
【0081】
ターゲット核酸が由来し得る生物学的サンプルの例には、例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、有蹄動物(ungulate)、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ネコ、イヌ、霊長類、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物由来のもの、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、トウモロコシ、モロコシ(sorghum)、オートムギ、コムギ、イネ、キャノーラまたはダイズなどの植物由来のもの、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)などの藻類由来のもの、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)などの線虫由来のもの、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、蚊、ミバエ、ミツバチまたはクモなどの昆虫由来のもの、ゼブラフィッシュなどの魚類由来のもの、爬虫類由来のもの、カエルやアフリカツメガエルなどの両生類由来のもの、キイロタマホコリカビ(dictyostelium discoideum)由来のもの、ニューモシスチス・カリニ(pneumocystis carinii)、トラフグ(Takifugu rubripes)、酵母(yeast)、出芽酵母(Saccharamoyces cerevisiae)または分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)などの真菌由来のもの、あるいは熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)由来のものが含まれる。ターゲット核酸は、細菌、大腸菌(Escherichia coli)、ブドウ球菌(staphylococci)または肺炎マイコプラズマ(mycoplasma pneumoniae)などの原核生物、古細菌、C型肝炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスなどのウイルス、あるいはウイロイドにも由来し得る。ターゲット核酸は、上記の生物の均一な培養物もしくは集団に由来するか、あるいは例えばコミュニティまたは生態系中のいくつかの異なる生物のコレクションに由来することができる。
【0082】
ターゲット核酸は天然供給源に由来する必要はなく、代わりに公知の技術を用いて合成することができる。例えば、本明細書に記載の方法でアレイを作製するために、遺伝子発現プローブまたは遺伝子型決定プローブを合成および使用することができる。
【0083】
いくつかの例では、ターゲット核酸は、1つ以上のより大きな核酸の断片として得ることができる。断片化は、例えば、噴霧化、超音波処理、化学的切断、酵素的切断、または物理的剪断を含む、当技術分野において公知の様々な技術のいずれかを使用して実施することができる。断片化はまた、より大きな核酸の一部のみをコピーすることによってアンプリコンを生成する特定の増幅技術の使用からも生じ得る。例えば、PCR増幅は、増幅に使用されるフランキングプライマー間の断片の長さによって規定されるサイズを有する断片を生成する。
【0084】
ターゲット核酸の集団、またはそのアンプリコンは、本明細書に記載の方法または組成物の特定の用途にとって望ましいかまたは適当である平均鎖長を有することができる。例えば、平均鎖長は、約100,000ヌクレオチド未満、約50,000ヌクレオチド未満、約10,000ヌクレオチド未満、約5,000ヌクレオチド未満、約1,000ヌクレオチド未満、約500ヌクレオチド未満、約100ヌクレオチド未満、または約50ヌクレオチド未満であり得る。代替的または追加的に、平均鎖長は、約10ヌクレオチド超、約50ヌクレオチド超、約100ヌクレオチド超、約500ヌクレオチド超、約1,000ヌクレオチド超、約5,000ヌクレオチド超、約10,000ヌクレオチド超、約50,000ヌクレオチド超、または約100,000ヌクレオチド超であり得る。ターゲット核酸の集団またはそのアンプリコンの平均鎖長は、上記の最大値と最小値の間の範囲内であり得る。増幅部サイトで生成された(または、本明細書で別の方法で作製または使用された)アンプリコンは、上で例示したものから選択される上限と下限の間の範囲内の平均鎖長を有することができる。
【0085】
いくつかの場合において、ターゲット核酸の集団は、条件下で産生され得るか、またはそうでなければそのメンバーについて最大長を有するように構成され得る。例えば、本明細書に記載の方法で使用されるか、または特定の組成物中に存在するメンバーについての最大長は、約100,000ヌクレオチド未満、約50,000ヌクレオチド未満、約10,000ヌクレオチド未満、約5,000ヌクレオチド未満、約1,000ヌクレオチド未満、約500ヌクレオチド未満、約100ヌクレオチド未満または約50ヌクレオチド未満であり得る。代替的または追加的に、ターゲット核酸の集団、またはそのアンプリコンは、条件下で産生され得るか、またはそうでなければそのメンバーについて最小長を有するように構成され得る。例えば、本明細書に記載の方法で使用されるか、または特定の組成物中に存在するメンバーについての最小長は、約10ヌクレオチド超、約50ヌクレオチド超、約100ヌクレオチド超、約500ヌクレオチド超、約1,000ヌクレオチド超、約5,000ヌクレオチド超、約10,000ヌクレオチド超、約50,000ヌクレオチド超、または約100,000ヌクレオチド超であり得る。集団中のターゲット核酸についての最大鎖長および最小鎖長は、上記の最大値と最小値の間の範囲内であり得る。増幅サイトで生成された(または、本明細書で別の方法で作製または使用された)アンプリコンは、上で例示した上限と下限の間の範囲内の最大鎖長および/または最小鎖長を有し得ることが理解されよう。
【0086】
特定の例において、ターゲット核酸は、例えば速度論的排除を容易にするために、増幅サイトの面積に対してサイズ決めされる。例えば、速度論的排除を達成するために、アレイの各サイトの面積は、ターゲット核酸の排除体積の直径より大きくなり得る。例えば、表面上のフィーチャのアレイを利用する例をとると、各フィーチャの面積は、増幅サイトに輸送されるターゲット核酸の排除体積の直径よりも大きくなり得る。ターゲット核酸についての排除体積およびその直径は、例えば、ターゲット核酸の長さから決定することができる。核酸の排除体積および排除体積の直径を決定するための方法は、例えば、米国特許第7,785,790号、Rybenkov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5307-5311頁(1993年)、Zimmerman et al., J. Mol. Biol. 222:599-620頁(1991年)またはSobel et al., Biopolymers 31:1559-1564頁(1991年)に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0087】
アレイの増幅サイトは、ターゲット核酸からアンプリコンを生成するために使用される複数のプライマーを含み得る。いくつかの例では、増幅サイトに存在するプライマーは、各ターゲット核酸のアダプター配列中に存在するユニバーサル配列に相補的なユニバーサルプライミング配列を有することができる。特定の例では、複数のプライマーを増幅サイトに付着させることができる。プライマーは、捕捉核酸について上述したように、増幅サイトに付着させることができる。
【0088】
本明細書で前述したように、アレイ基板の表面上のフィーチャは、表面の介在領域によって分離されて、不連続であり得る。特定の例では、介在領域は、アレイのフィーチャと比較して、実質的により少ない量または濃度のプライマーを有するであろう。プライマーを欠く介在領域が特に有利である。例えば、介在領域における比較的少量のプライマーの存在またはプライマーの非存在は、アレイの表面上のフィーチャへのアンプリコンの局在化を支持する。この構成は、各アレイのフィーチャについて境界を作り、それによって、本明細書に記載の方法においてシーディングされたターゲット核酸の増幅によって産生されるアンプリコン対する有限容量を、フィーチャに付与する。
【0089】
本開示の方法は、増幅試薬を反応させて複数の増幅サイトを生成することができ、各増幅サイトは、そのサイトにシーディングした個々のターゲット核酸由来のアンプリコンのクローン集団を含む。いくつかの例では、増幅反応は、それぞれの増幅サイトの容量を満たすのに十分な数のアンプリコンが生成されるまで進行する。このようにして既にシーディングされたサイトを容量いっぱいまで満たすことは、後続のターゲット核酸がそのサイトにランディング(landing)することを排除し、それによってそのサイトにアンプリコンのクローン集団が産生される。したがって、いくつかの例では、増幅サイトの容量を満たすためにアンプリコンが生成される速度は、個々のターゲット核酸が個々の増幅サイトにそれぞれ輸送される速度を超えることが望ましい。
【0090】
いくつかの例では、たとえ第二ターゲット核酸が増幅サイトに到達する前に、その増幅サイトが容量いっぱいまで満たされていなくても、見かけのクローン性を達成することができる。いくつかの条件下で、第一ターゲット核酸の増幅は、そのサイトに輸送される第二ターゲット核酸からのコピーの生産を効果的に打ち負かすか、または圧倒するのに十分な数のコピーが作られる点まで進み得る。例えば、直径が約500nmよりも小さい円形フィーチャ上でブリッジ増幅プロセスを使用する例では、第一ターゲット核酸についての14サイクルの指数関数的増幅の後では、同じサイトにおける第二ターゲット核酸からの汚染は、イルミナシーケンシングプラットフォーム上でのシーケンシング・バイ・シンサシス(sequencing-by-synthesis)分析に悪影響を及ぼすには不十分な数の汚染アンプリコンしか生成しないと決定された。
【0091】
上記の例によって実証されたように、アレイ内の増幅サイトは、すべての例において完全にクローンである必要はない。むしろ、いくつかの用途では、個々の増幅サイトは、第一ターゲット核酸由来のアンプリコンで優勢に占められることができ、かつ、また第二ターゲット核酸由来の低レベルの汚染アンプリコンを有することができる。汚染レベルがその後のアレイの使用に許容できない影響を及ぼさない限り、アレイは、低レベルの汚染アンプリコンを有する1つ以上の増幅サイトを有することができる。例えば、アレイが検出用途に使用される場合、許容可能な汚染レベルは、検出技術のシグナル対ノイズ比または分解能に許容できない方法で影響を与えることのないレベルであろう。したがって、見かけのクローン性は、一般に、本明細書に記載の方法によって作製されたアレイの特定の使用または用途に関連するであろう。特定の用途に対して個々の増幅サイトで許容され得る汚染レベルの例には、限定されないが、約0.1%以下、約0.5%以下、約1%以下、約5%以下、約10%以下または約25%以下の汚染アンプリコンが含まれる。アレイは、これらの例示的なレベルの汚染アンプリコンを有する1つ以上の増幅サイトを含み得る。例えば、アレイ中の増幅サイトの最大で約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、さらには約100%までが、いくつかの汚染アンプリコンを有し得る。
【0092】
特定の例では、本開示の方法は、(i)ターゲット核酸を平均輸送速度で増幅サイトに輸送すること、および(ii)増幅サイトにあるターゲット核酸を平均増幅速度で増幅すること、を同時に行うように実施され、平均増幅速度は平均輸送速度を超える。したがって、そのような例では、比較的遅い輸送速度を使用することによって、速度論的排除を達成することができる。例えば、所望の平均輸送速度を達成するために、十分に低い濃度のターゲット核酸を選択することができ、より低い濃度はより低い平均輸送速度をもたらす。代替的または追加的に、高粘度溶液および/または溶液中の分子クラウディング試薬(本明細書ではクラウディング剤と呼ばれる)の存在を使用して、輸送速度を低下させることができる。有用なクラウディング剤の例には、ポリエチレングリコール(PEG)、FICOLL(登録商標)、デキストラン、またはポリビニルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。クラウディング剤および配合組成(formulations)の例は、米国特許第7,399,590号に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。所望の輸送速度を達成するために調整され得る別のファクターは、ターゲット核酸の平均サイズである。
【0093】
本方法のいくつかの例では、増幅開始前に、ターゲット核酸は、例えば拡散または他のプロセスによって増幅サイトに輸送され得る。この場合、後続アンプリコンが作製される速度と比較して、第一アンプリコンを作製する比較的遅い速度を利用することによって、速度論的排除を達成することができる。例えば、最初は一時的に伸長不可能な状態にある第一アンプリコン形成のための第一プライマーと、増幅反応を通して伸長可能な状態にある後続アンプリコン形成のための他のプライマーとを使用することによって、異なるアンプリコン形成速度を達成できる。かくして、第一プライマーの伸長可能な状態への変換における遅延は、第一アンプリコン形成における遅延を引き起こすが、後続アンプリコン形成はそのような遅延を経験しない。このようにして、後続アンプリコンが増幅サイトで生成される平均速度は、第一アンプリコンが増幅サイトで生成される平均速度を超える。
【0094】
異なるアンプリコン形成速度を介した速度論的排除のより詳細な例は、以下の通りである。増幅サイトは、それに結合したプライマーの3つの亜集団を含み得る。プライマーの第一の亜集団は、(捕捉配列を介して)ターゲット核酸を捕捉するように機能し、第一アンプリコン形成のためのプライマーとして機能する。プライマーの第一の亜集団は、例えば、3’末端のジデオキシヌクレオチドを介して、伸長から可逆的にブロックされる。プライマーの第二の亜集団はP5プライマー配列を有することができ、プライマーの第三の亜集団はP7プライマー配列を有することができる。第一および第二の亜集団のプライマーはジデオキシヌクレオチドを含まず、したがって完全に伸長可能である。ターゲット核酸は、(5’から3’の順に)P7プライマー結合配列、いくつかの異なるターゲットヌクレオチド配列のうちの1つ、P5プライマー結合配列、および捕捉配列相補体(complement)を含むように構築することができる。いくつかの異なるターゲット核酸を、(捕捉配列を介して)プライマーの第一の亜集団にハイブリダイズさせることができる。次いで、例えば、加ピロリン酸分解(pyrophosphorolysis)条件下において(例えば、過剰のピロリン酸の存在下で)ポリメラーゼで処理することによって、捕捉プライマーを伸長可能な状態に変換することができる。後続アンプリコンが増幅サイトを満たすように産生される期間中に、平均して、捕捉プライマーのうちの1つのみが伸長可能な形態に変換されるであろう条件を使用することができる。したがって、いくつかの潜在的に汚染性のターゲット核酸が個々の増幅サイトに存在し得るが、速度論的排除は、ターゲット核酸のうちの1つのみからのアンプリコン形成をもたらし、それによってその増幅サイトにアンプリコンのクローン集団を作り出す。説明の目的のために、この例は単一の増幅サイトに関して記載されているが、反応は、増幅サイトのアレイにおけるターゲット核酸の付着および増幅を含み得ることが理解されよう。
【0095】
任意の様々な一時的に伸長不可能なプライマーが、それらのプライマーを伸長可能な状態に変換するためのそれぞれの技術および試薬と共に、本明細書に記載の方法で使用され得る。上記の例は、加ピロリン酸分解によって除去されるジデオキシヌクレオチドの使用を記載している。他の伸長不可能なヌクレオチドがプライマー上に存在することができ、加ピロリン酸分解によって除去され得る。さらに、ジデオキシヌクレオチドまたは他の伸長不可能なヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼまたは他の適切な酵素のエキソヌクレアーゼ活性を含む他の公知の技術によって除去することができる。他の例では、プライマーは、ターミネーターベースのシーケンシング・バイ・シンサシス(sequencing-by-synthesis)法において使用されるもののような可逆的ターミネーターを含み得る。可逆的ターミネーターおよびそれらを除去するための技術の例は、例えばBentley et al.,Nature 456:53-59頁(2008年)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第91/06678号、国際公開第07/123744号、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7,405,281号、米国特許出願公開第2008/0108082 A1号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0096】
増幅前にターゲット核酸が増幅サイトに存在する例について、第一アンプリコン形成および後続アンプリコン形成の異なる速度を引き起こすための、活性に差のあるプライマーの使用を上に例示したが、本方法はまた、増幅が起こっているときに、ターゲット核酸が増幅サイトに(例えば拡散によって)輸送される条件下で実施することもできる。したがって、速度論的排除は、後続アンプリコン形成と比較して、比較的遅い輸送速度と比較的遅い第一アンプリコン産生との両方を利用することができる。したがって、本明細書に記載の増幅反応は、(i)第一アンプリコンの産生と、(ii)アレイの他のサイトにおける後続アンプリコンの産生と同時に、ターゲット核酸が溶液から増幅サイトに輸送されるように実施することができる。特定の例では、後続アンプリコンが増幅サイトで生成される平均速度は、ターゲット核酸が溶液から増幅サイトへ輸送される平均速度を超えることができる。いくつかの場合には、それぞれの増幅サイトの容量を満たすのに十分な数のアンプリコンが、個々の増幅サイトにおいて単一のターゲット核酸から生成され得る。それぞれの増幅サイトの容量を満たすためにアンプリコンが生成される速度は、例えば、個々のターゲット核酸が溶液から増幅サイトに輸送される速度を超えることができる。
【0097】
本明細書に記載の方法で使用される増幅試薬は、好ましくは増幅サイトでターゲット核酸のコピーを迅速に作製することができる。本開示の方法において使用される1つ以上の増幅試薬は、ポリメラーゼおよびヌクレオシド三リン酸(NTP)を含むであろう。当技術分野において公知の様々なポリメラーゼのいずれも使用することができるが、いくつかの例では、エキソヌクレアーゼ活性のない(exonuclease negative)ポリメラーゼを使用することが望ましいかもしれない。NTPは、DNAコピーが作られる場合の例としては、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)であり得る。dATP、dTTP、dGTPおよびdCTPを含むdNTPの4つの天然種は、DNA増幅試薬中に存在し得る;しかしながら、所望であれば、類似体を使用することができる。NTPは、RNAコピーが作られる場合の例としては、リボヌクレオシド三リン酸(rNTP)であり得る。rATP、rUTP、rGTPおよびrCTPを含むrNTPの4つの天然種は、RNA増幅試薬中に存在し得る;しかしながら、所望であれば、類似体を使用することができる。
【0098】
増幅試薬は、アンプリコン形成を容易にし、いくつかの場合にはアンプリコン形成速度を増加させる、さらなる成分を含むことができる。一例はリコンビナーゼである。リコンビナーゼは、繰り返しの侵入/伸長を可能にすることによって、アンプリコン形成を容易にすることができる。より具体的には、リコンビナーゼは、ターゲット核酸をアンプリコン形成のための鋳型として用いて、ポリメラーゼによるターゲット核酸の侵入と、ポリメラーゼによるプライマーの伸長とを容易にすることができる。このプロセスは連鎖反応として繰り返すことができ、そこでは各ラウンドの侵入/伸長から生成されたアンプリコンが次のラウンドの鋳型として役立つ。(例えば、加熱または化学変性による)変性サイクルが必要とされないので、このプロセスは標準的なPCRよりも迅速に起こり得る。かくして、リコンビナーゼ促進増幅は等温的に実施することができる。増幅を容易にするために、リコンビナーゼ促進増幅試薬中に、ATPまたは他のヌクレオチド(または、いくつかの場合にはその非加水分解性類似体)を含めることが一般に望ましい。リコンビナーゼおよび一本鎖結合(SSB)タンパク質の混合物は、SSBが増幅をさらに容易にすることができるので、特に有用である。リコンビナーゼ促進増幅のための製剤(formulations)の例には、TwistDx(ケンブリッジ、イギリス)によりTWISTAMP(登録商標)キットとして市販されているものが含まれる。リコンビナーゼ促進増幅試薬の有用な成分および反応条件は、米国特許第5,223,414号および米国特許第7,399,590号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0099】
アンプリコン形成を容易にし、いくつかの場合にはアンプリコン形成速度を増加させるために増幅試薬に含めることができる成分の別の例は、ヘリカーゼである。ヘリカーゼは、アンプリコン形成の連鎖反応を可能にすることによって、アンプリコン形成を容易にすることができる。(例えば、加熱または化学変性による)変性サイクルが必要とされないので、このプロセスは標準的なPCRよりも迅速に起こり得る。かくして、ヘリカーゼ促進増幅は等温的に実施することができる。ヘリカーゼおよび一本鎖結合(SSB)タンパク質の混合物は、SSBが増幅をさらに容易にすることができるので、特に有用である。ヘリカーゼ促進増幅のための製剤(formulations)の例には、Biohelix(ビバリー、マサチューセッツ州)によりISOAMP(登録商標)キットとして市販されているものが含まれる。さらに、ヘリカーゼタンパク質を含む有用な製剤の例は、米国特許第7,399,590号および米国特許第7,829,284号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0100】
アンプリコン形成を容易にし、いくつかの場合にはアンプリコン形成速度を増加させるために増幅試薬に含めることができる成分のさらに別の例は、起点結合タンパク質(origin binding protein)である。
【0101】
増幅反応が起こる速度は、増幅反応の1つ以上の活性成分の濃度または量を増加させることによって増加させることができる。例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、プライマー、リコンビナーゼ、ヘリカーゼもしくはSSBの量または濃度を増加させて、増幅速度を増加させることができる。いくつかの場合には、量または濃度が増加される(あるいは、そうでなければ本明細書に記載の方法で操作される)増幅反応の1つ以上の活性成分は、増幅反応の非核酸成分である。
【0102】
増幅速度は、本明細書に記載の方法において、温度を調整することによっても増加させることができる。例えば、1つ以上の増幅サイトでの増幅速度は、そのサイトにおける温度を、変性または他の有害事象のために反応速度が低下する最高温度まで上昇させることによって増加させることができる。最適または所望の温度は、使用中の増幅成分の既知の特性から、または経験的に、所与の増幅反応混合物について決定することができる。増幅に使用されるプライマーの特性はまた、増幅速度を増加させるために調整され得る。例えば、プライマーの配列および/または長さを調整することができる。そのような調整は、プライマー融解温度(Tm)の先験的予測に基づいて、または経験的に行うことができる。
【0103】
増幅サイトにおける増幅速度を増加させるための別の選択肢は、増幅サイトにおける増幅反応の1つ以上の活性成分の局所濃度を高めることである。活性成分は、1つ以上の非核酸成分を含み得る。いくつかの例では、増幅反応の1つ以上の活性成分は、電気泳動、等速電気泳動(isotachophoresis)、電流もしくは電圧の直接パルスなどの電気的操作を使用して、増幅サイトに引き付けることができる。代替的または追加的に、1つ以上の増幅成分は、それを増幅サイトにリクルートするアフィニティータグを含むことができる。電気的操作が適切にタグ付けされた成分を増幅サイトに引き付けるように、アフィニティータグは帯電させることができる。非荷電アフィニティータグも同様に使用することができる。例えば、捕捉剤の例として本明細書に記載されているものなどの当技術分野において公知の様々なリガンドまたは受容体のいずれも、増幅反応の成分に対するアフィニティータグとして使用することができる。核酸に使用される捕捉剤の場合のように、増幅サイトは増幅成分のアフィニティータグに対する結合パートナーを含み得る。したがって、アフィニティータグ付き増幅成分の局所濃度は、増幅サイトにおける適切なパートナーとの相互作用によって増加し得る。増幅サイトが基板の表面である特定の例では、アフィニティータグに対する結合パートナーはその表面に付着させることができる。
【0104】
さらに、磁気的な力または光学的な力(magnetic or optical forces)を使用して、増幅試薬の局所濃度を増加させることができる。そのような場合、1つ以上の増幅試薬は、そのような力によって操作され得る磁気タグまたは光学タグを含むことができる。
【0105】
増幅反応が起こる速度は、1つ以上の増幅試薬の活性を高めることによって増加させることができる。例えば、ポリメラーゼの伸長速度を増加させる補因子を、ポリメラーゼが使用されている反応に加えることができる。いくつかの例では、マグネシウム、亜鉛またはマンガンなどの金属補因子をポリメラーゼ反応に添加することができ、あるいは他の例ではベタインを添加することができる。
【0106】
本明細書に記載の方法のいくつかの例では、二本鎖であるターゲット核酸の集団を使用することが望ましい。驚くべきことに、速度論的排除条件下におけるサイトのアレイでのアンプリコン形成は、二本鎖ターゲット核酸に対して効率的であることが観察された。例えば、アンプリコンのクローン集団を有する複数の増幅サイトは、リコンビナーゼおよび一本鎖結合タンパク質の存在下で、(同じ濃度の一本鎖ターゲット核酸と比較して)二本鎖ターゲット核酸からより効率的に産生され得る。それにもかかわらず、一本鎖ターゲット核酸が、本明細書に記載の方法のいくつかの例において使用され得ることが理解されるであろう。
【0107】
本明細書に記載の方法は、任意の様々な増幅技術を使用することができる。使用され得る技術の例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、またはランダムプライム増幅(RPA)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例において、例えば、増幅サイトが所望の容量を有する体積中にアンプリコンを含有することができるとき、増幅は溶液中で行われ得る。好ましくは、本開示の方法において速度論的排除の条件下で使用される増幅技術は、固相上で行われるであろう。例えば、増幅に使用される1つ以上のプライマーは、増幅サイトで固相に付着させることができる。PCRの例では、増幅に使用されるプライマーの一方または両方を固相に付着させることができる。二本鎖アンプリコンが、コピーされた鋳型配列に隣接する2つの表面付着プライマーの間にブリッジ様構造を形成するので、表面に付着した2種類のプライマーを利用するフォーマットはしばしばブリッジ増幅と呼ばれる。ブリッジ増幅に使用することができる試薬および条件の例は、例えば、米国特許第5,641,658号、米国特許出願公開第2002/0055100号、米国特許第7,115,400号、米国特許出願公開第2004/0096853号、米国特許出願公開第2004/0002090号、米国特許出願公開第2007/0128624号、および米国特許出願公開第2008/0009420号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。固相PCR増幅はまた、固体支持体に付着した増幅プライマーの片方と溶液中の第2のプライマーとを用いて実施することができる。表面結合プライマーと可溶性プライマーの組み合わせを使用するフォーマットの例は、例えば、Dressman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:8817-8822頁(2003年)、国際公開第05/010145号、米国特許出願公開第2005/0130173号または米国特許出願公開第2005/0064460号に記載されているようなエマルジョンPCRであり、これらの参考文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。エマルジョンPCRはそのフォーマットの例示であり、本明細書に記載の方法の目的のためにはエマルジョンの使用は任意であり、実際、いくつかの例ではエマルジョンは使用されないことが理解されるであろう。上記で例示されたPCR技術は、増幅速度を促進または増加させるために本明細書の他の箇所で例示された成分(構成要素)を使用して、非サイクル性増幅(例えば、等温増幅)のために改変され得る。したがって、上に例示したPCR技術は速度論的排除条件下で使用することができる。
【0108】
RCA技術は、本開示の方法における使用のために改変することができる。RCA反応において使用され得る成分の例、およびRCAがアンプリコンを生成する原理は、例えば、Lizardi et al., Nat. Genet. 19:225-232頁(1998年)および米国特許出願公開第2007/0099208 A1号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。RCAのために使用されるプライマーは溶液中にあるか、または増幅サイトで固体支持体表面に付着させることができる。上記の参考文献に例示されているRCA技術は、例えば、特定の用途に適するように増幅速度を増加させるために、本明細書の教示に従って改変することができる。したがって、RCA技術は速度論的排除条件下で使用することができる。
【0109】
MDA技術は、本開示の方法における使用のために改変することができる。MDAに関するいくつかの基本原理および有用な条件は、例えば、Dean et al., Proc Natl.Acad.Sci.USA 99:5261-66頁(2002年)、Lage et al., Genome Research 13:294-307頁(2003年)、Walker et al., Molecular Methods for Virus Detection, Academic Press, Inc., 1995年、Walker et al., Nucl. Acids Res. 20:1691-96頁(1992年)、米国特許第5,455,166号、米国特許第5,130,238号、および米国特許第6,214,587号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。MDAのために使用されるプライマーは溶液中にあるか、または増幅サイトで固体支持体表面に付着させることができる。上記の参考文献に例示されているMDA技術は、例えば、特定の用途に適するように増幅速度を増加させるために、本明細書の教示に従って改変することができる。したがって、MDA技術は速度論的排除条件下で使用することができる。
【0110】
特定の例では、上記で例示した増幅技術の組み合わせを使用して、速度論的排除条件下でアレイを作製することができる。例えば、RCAおよびMDAは組み合わせて使用することができ、その組合せではRCAが溶液中でコンカテマーアンプリコンを生成するために使用される(例えば、液相プライマーを用いて)。次いで、アンプリコンは、増幅サイトで固体支持体表面に付着しているプライマーを用いて、MDAの鋳型として使用することができる。この例では、RCAおよびMDA組合せステップの後に産生されたアンプリコンが、増幅サイトの表面に付着されるであろう。
【0111】
上記のいくつかの例に関して例示したように、本開示の方法は、サイクル性増幅技術を使用する必要はない。例えば、ターゲット核酸の増幅は、変性サイクルなしで、増幅サイトで実施することができる。変性サイクルの例には、増幅反応への化学変性剤の導入および/または増幅反応の温度の上昇が含まれる。したがって、ターゲット核酸の増幅は、増幅溶液をターゲット核酸およびアンプリコンを変性させる化学試薬で置き換えることを含む必要はない。同様に、ターゲット核酸の増幅は、ターゲット核酸およびアンプリコンを変性させる温度に溶液を加熱することを含む必要はない。したがって、増幅サイトでのターゲット核酸の増幅は、本明細書に記載の方法の期間中、等温的に実施することができる。実際、本明細書に記載の増幅方法は、標準的な条件下でいくつかの増幅技術について行われる1つ以上のサイクル操作なしで起こり得る。さらに、いくつかの標準的な固相増幅技術では、ターゲット核酸が基板上にロードされる後であって、かつ増幅が開始される前に、洗浄が行われる。しかしながら、本方法の例において、洗浄ステップは、反応サイトへのターゲット核酸の輸送と増幅サイトにおけるターゲット核酸の増幅との間に実施される必要はない。代わりに、(例えば、拡散による)輸送および増幅を同時に起こらせて、速度論的排除を提供することが可能になる。
【0112】
いくつかの例では、速度論的排除条件下で起こる増幅サイクルを繰り返すことが望ましいかもしれない。したがって、ターゲット核酸のコピーは、化学変性剤または加熱を含むサイクル操作なしに、速度論的排除増幅を介して個々の増幅サイトで作製され得るが、増幅サイトのアレイをサイクリックに(cyclically)処理して、速度論的排除増幅の各サイクル後に、アンプリコンを含むサイトの数および/または各サイトにおけるアンプリコンの数を増加させることができる。
図11~14を参照して本明細書に記載される1つ以上の例では、ターゲット核酸なしの試薬(例えば、活性成分)を含むフレッシュな(fresh)ターゲットレス溶液を、増幅サイトの上に流すことによって、最初の排除増幅の後に二次増幅またはブースト(boost)を行うことができる。ターゲットレス溶液中の試薬は、増幅サイトにおけるクローンクラスター中のアンプリコンの数を増加させることができる。ターゲットレス溶液中におけるターゲット核酸の欠如のため、試薬は増幅サイトでターゲット核酸のさらなるシーディングを引き起こさないかもしれない。特定の例では、増幅条件はサイクルごとに変更することができる。例えば、輸送速度を変えるための、または増幅速度を変えるための上記の1つ以上の条件は、サイクル間で調節することができる。かくして、輸送速度はサイクルごとに増加させることができ、輸送速度はサイクルごとに減少させることができ、増幅速度はサイクルごとに増加させることができ、または増幅速度はサイクルごとに減少させることができる。
【0113】
本明細書に記載の方法は、アレイの増幅サイトへのターゲット核酸の電場(e-field)アシスト輸送を使用するように改変することができる。例えば、アレイの各増幅サイトは、ターゲット核酸を引き付ける電荷を生成するために、電源に電気的に結合することができる。一構成において、増幅サイトでの正電荷は、負に帯電した糖-リン酸バックボーンを介して核酸を引き付けることができる。アレイのサイトに核酸を引き付けるために電場アシストを使用するための方法および装置の例は、米国特許出願公開第2009/0032401 A1号に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。電場アシストは、例えば、各増幅ステップの間にターゲット核酸が増幅サイトのアレイへの流体アクセスを有するように、複数の異なるターゲット核酸が溶液中にある条件下で、本開示の方法において使用され得る。各増幅サイトでの電荷は、速度論的排除を達成するために調整することができる。電荷を調整することに加えてまたはその代わりに、ターゲット核酸の輸送速度を変更するため、または増幅速度を変更するための本明細書中に記載される他の条件は、速度論的排除を達成するために調整され得る。したがって、アレイの増幅サイトでの電荷は、増幅がアレイの様々な増幅サイトで同時に起こる間にターゲット核酸を引き付けるように調整することができ、ここで平均増幅速度は、ターゲット核酸が増幅サイトに輸送される(即ち、電場アシスト輸送下で)平均速度を超える。
【0114】
増幅サイトへのターゲット核酸の電場アシスト輸送を利用する特定の例では、電場は、増幅反応の過程を通して一貫して印加され得る。あるいは、増幅反応が進行するにつれて、および増幅サイトがアンプリコンで満たされるにつれて、電場は変化させ得る(例えば、増強または減弱させる)。例えば、電場を増強させることは、ターゲット核酸(次に各サイトでアンプリコンのクローン集団を生成するために増幅される)を獲得する増幅サイトの数を増加させるという利益を提供することができる。電場が増強される速度、およびその増強の振幅範囲は、経時的なターゲット核酸輸送の速度の増加と、その同じ期間にわたって効果的に満たされるようになった増幅サイトの数の増加とのバランスをとるように選択できる。また、本方法によって産生されたアレイの用途によっては、有効な充填は、増幅サイトが第一ターゲット核酸のコピーで容量いっぱいに満たされ、それによってそのサイトにおけるいかなる二次ターゲット核酸の増幅も妨げられる時点であり得る。あるいは、有効な充填は、特定の増幅サイトでの二次ターゲット核酸の増幅が、アレイの所望の用途にとって無視できる、またはそうでなければ許容可能であると見なされるほどに十分に低い割合の汚染アンプリコンを生成する時点であり得る。
【0115】
一般に、電場アシストは、アレイの1つ以上の増幅サイトへのターゲット核酸の輸送に対するさらなるレベルの制御を可能にする。アレイの様々なサイトで起こる増幅と共に、同時にターゲット核酸を増幅サイトのアレイに輸送するという文脈において、電場アシストの使用が上で例示されてきたが、別の例では、増幅サイトでの増幅の開始前に、ターゲット核酸をその増幅サイトに輸送するために、電場アシストを使用することができる。本明細書に記載の方法または組成物において電場アシストを使用して、ターゲット核酸以外のターゲット生体分子を、アレイのフィーチャなどの目的のサイトに輸送することができる。
【0116】
特定の例では、電場は、アレイの増幅サイトのすべてに、少なくとも実質的に均一に印加することができる。したがって、溶液中にあるターゲット核酸は、任意の所与の増幅サイトに輸送される可能性が等しい。別の例では、電場は、アレイ中に存在する増幅サイトのサブセットだけに印加され得る。このようにして、電場アシストを使用して、いくつかのサイトを他のサイトよりも選択的に満たすことができる。さらに、所望であれば、誘引電荷を増幅サイトの第一サブセットに印加して、ターゲット核酸をそのサイトの第一サブセットに輸送することができ、一方では、忌避電荷を増幅サイトの第二サブセットに印加して、ターゲット核酸がそれらのサイトに輸送されるのを防止するか、または(例えば、脱着または分解により)ターゲット核酸をサイトの第二サブセットから除去することができる。同様に、以下および実施例3にさらに詳細に記載されるように、忌避電荷をアレイの介在領域に印加して、ターゲット核酸が介在領域に輸送されるのを防止するか、または(例えば、脱着または分解により)ターゲット核酸を介在領域から除去することができる。
【0117】
特定の例では、ターゲット核酸または他の生体分子の結合を阻害するか、またはターゲット核酸または他の生体分子を除去する電荷を生成するために、アレイの介在領域は電源に電気的に結合され得る。一構成において、介在領域における負電荷は、負に帯電した糖-リン酸バックボーンを介して、核酸をはじくことができる。代替的または追加的に、介在領域における電荷を使用して、核酸および生体分子を電気化学的に損傷する表面局在化pH変化を作り出すことができる。
【0118】
電場反発は、例えば、各増幅ステップの間にターゲット核酸が増幅サイトのアレイへの流体アクセスを有するように複数の異なるターゲット核酸が溶液中にある条件下で、本開示の方法において使用され得る。核酸がアレイのフィーチャで捕捉され、場合によっては速度論的排除条件下においてフィーチャで増幅されている間に、(例えば、除去または結合阻害により)アレイの介在領域の電荷を調節して核酸をはじくことができる。電荷を調節することに加えてまたはその代わりに、フィーチャへのターゲット核酸の輸送速度を変化させるための、または増幅速度を変化させるための本明細書中に記載される他の条件は、速度論的排除を達成するために調節され得る。したがって、アレイの介在領域における電荷は、増幅がアレイの様々な増幅サイトで同時に起こる間にターゲット核酸をはじくように調整することができ、ここで平均増幅速度は、ターゲット核酸が増幅サイトに輸送される平均速度を超える。したがって、介在領域での電場反発は、核酸(または他の生体分子)をアレイのフィーチャに輸送して速度論的排除を達成するために、本明細書に記載の他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0119】
本明細書に記載の方法および装置を用いた介在領域での電場反発は、介在領域ではなく、フィーチャにおける核酸(または他の生体分子)の特異的局在化を改善するという利点を提供することができる。そのような利点は、反発が、核酸または他の生体分子の結合を阻害する電荷反発のメカニズムを介して、核酸または他の生体分子の表面局在化電気化学的損傷を介して、または他のメカニズムを介して作用するかどうかにフォローすることができる。介在領域での電場反発は、特に目的のフィーチャが表面局在化電気化学的損傷の範囲よりも高い高さを有する場合、核酸または他の生体分子の目的のフィーチャへの特異的局在化を改善するために使用することができる。
【0120】
いくつかの例は、アレイの介在領域からの核酸(または他の生体分子)の電場アシスト反発と組み合わせて、アレイのフィーチャへの核酸(または他の生体分子)の電場アシスト輸送を利用することができる。誘引電場および反発電場は、アレイに同時に印加され得るか、またはそれら2つの電場は別々に印加され得る。例えば、それら2つの場を別々に印加して、それらの場が交互の繰り返しで印加されるようにすることができる(例えば、反発場がオフである間に、誘引場をフィーチャに印加することができ、次に反発場が介在領域に印加されている間に誘引場をオフにすることができ、そしてこのシーケンスを1回以上繰り返すことができる。)。
【0121】
電場は、アレイの領域と電解質との間に印加され得るか、またはアレイの領域と第2の表面との間に印加され得る。例えば、
図4(a)は、電場がアレイの介在領域と電解質との間に印加され得る構成を示し、
図4(b)は、電場がアレイの介在領域と第2の表面との間に印加され得る構成を示す。同様の構成を用いて、誘引場をアレイのフィーチャに印加することができる。さらに、フィーチャに印加されるか介在領域に印加されるかにかかわらず、アレイの適当な領域に交流(AC)または直流(DC)を印加することによって電場を作り出すことができる。
【0122】
したがって、本開示は、生体分子のパターン化表面を作製するための方法を提供し、該方法は、(a)(i)表面上に非連続的なフィーチャを有するアレイであって、該フィーチャは表面上の介在領域によって分離されるものである該アレイ、および(ii)複数の異なるターゲット生体分子を有する溶液、を含む試薬を提供すること、ならびに(b)生体分子をフィーチャに輸送し、個々の生体分子を各フィーチャに付着させるために、前記試薬を反応させること、を含むことができ、介在領域から生体分子をはじくために電場が介在領域に印加される。本方法で使用するのに特に有用な生体分子は核酸である。核酸は、本明細書の他の箇所に記載されているような速度論的排除条件下において、この方法におけるフィーチャで増幅することができる。電場を使用するいくつかの例では、アレイに使用される基板は透明な電気伝導体の層を含むことができる。電気伝導体の層は、電池またはシグナル発生器などの電源を接続するための電極として使用することができる。所望であれば、アレイのフィーチャ(例えば、ウェルのアレイ中のウェルの内面)は、露出または絶縁された導電層を含むことができ、その導電層にかかる電圧を用いて、核酸および/または増幅試薬にかかる力を操作して、そのサイトへの輸送速度、そのサイトでの捕捉速度、そのサイトからの除去速度、および/またはそのサイトでの増幅速度を制御することができる。特定の例では、容器壁を貫通する電場が容器内の試薬に電気的な力を誘導するように、ウェルの外面に電場を印加することができ、輸送速度、捕捉速度、除去速度および/または増幅速度に対するある程度の制御が提供される。
【0123】
例えば、本明細書に記載の方法によって製造された本開示のアレイは、任意の様々な用途に使用することができる。特に有用な用途は、核酸のシーケンシングである。一例は、シーケンシング・バイ・シンサシス(SBS)である。SBSでは、核酸鋳型(例えば、ターゲット核酸またはそのアンプリコン)に沿った核酸プライマーの伸長をモニターして、その鋳型中のヌクレオチドの配列を決定する。基礎となる化学プロセスは、(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒されるような)重合(polymerization)であり得る。特定のポリメラーゼベースのSBSの例では、プライマーに付加されたヌクレオチドの順序および種類の検出を用いて鋳型の配列を決定することができるように、蛍光標識ヌクレオチドが鋳型に依存した様式でプライマーに付加される(それによってプライマーを伸長させる)。本明細書に記載のアレイの異なるサイトにある複数の異なる鋳型は、異なる鋳型について発生するイベントをアレイ内のそれらの位置によって区別することができる条件下で、SBS技術に供することができる。
【0124】
フローセルは、本開示の方法によって製造され、SBSまたは試薬を周期的に(in cycles)繰り返し送達することを含む他の検出技術に供されるアレイを収容するための便利なフォーマットを提供する。例えば、最初のSBSサイクルを開始するために、1つ以上の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどを、核酸鋳型のアレイを収容するフローセル内に/フローセルを通して流すことができる。プライマー伸長によって標識ヌクレオチドが取り込まれるアレイのそれらのサイトを検出することができる。場合により、ヌクレオチドは、ヌクレオチドがプライマーに付加されると、さらなるプライマー伸長を終結させる可逆的停止特性(reversible termination property)をさらに含み得る。例えば、可逆的ターミネーター部分を有するヌクレオチド類似体は、デブロッキング剤が送達されてその部分が除去されるまでその後の伸長が起こり得ないように、プライマーに付加され得る。したがって、可逆的停止を使用する例では、デブロッキング剤は(検出が行われる前後に)フローセルに送達され得る。洗浄は様々な送達ステップの間に実施することができる。次いでサイクルをn回繰り返してプライマーをnヌクレオチド伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。本開示の方法によって産生されたアレイと共に使用するために容易に適合させることができるSBS手順、流体システムおよび検出プラットフォームの例は、例えば、Bentley et al., Nature 456:53-59頁(2008年)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第91/06678号、国際公開第07/123744号、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7,405,281号、および米国特許出願公開第2008/0108082号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0125】
パイロシーケンシング(pyrosequencing)などの、サイクル反応を使用する他のシーケンシング手順を使用することができる。特別なヌクレオチドが新生核酸鎖に組み込まれているため、パイロシーケンシングは無機ピロリン酸(PPi)の放出を検出する(Ronaghi, et al., Analytical Biochemistry 242(1), 84-9頁(1996年); Ronaghi, Genome Res. 11(1), 3-11頁(2001年); Ronaghi et al. Science 281(5375), 363頁(1998年);米国特許第6,210,891号;米国特許第6,258,568号;米国特許第6,274,320号、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。)。パイロシーケンシングにおいて、放出されたPPiは、ATPスルフリラーゼによって直ちにアデノシン三リン酸(ATP)に変換されることによって検出されることができ、生成されたATPのレベルはルシフェラーゼ生成光子によって検出されることができる。従って、シーケンシング反応はルミネセンス検出システムによってモニターすることができる。蛍光ベースの検出システムに使用される励起放射線源は、パイロシーケンシング手順には必要でない。パイロシーケンシングを本開示のアレイに適用するために使用することができる有用な流体システム、検出器および手順は、例えば、米国特許第9,096,899号、米国特許出願公開第2005/0191698 A1号、米国特許第7,595,883号、米国特許第7,244,559号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0126】
例えば、Shendure et al. Science 309:1728-1732頁(2005年)、米国特許第5,599,675号、および米国特許第5,750,341号に記載されているものを含む、シーケンシング・バイ・ライゲーション(sequencing-by-ligation)反応もまた有用であり、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの例は、例えば、Bains et al., Journal of Theoretical Biology 135(3), 303-7頁(1988年)、Drmanac et al., Nature Biotechnology 16, 54-58頁(1998年)、Fodor et al., Science 251(4995), 767-773頁(1995年)、および国際公開第1989/10977号に記載されるようなシーケンシング・バイ・ハイブリダイゼーション手順を含むことができ、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。シーケンシング・バイ・ライゲーション手順およびシーケンシング・バイ・ハイブリダイゼーション手順の両方において、アレイのサイトに存在するターゲット核酸(またはそのアンプリコン)は、オリゴヌクレオチドの送達および検出の繰り返しサイクルに供される。本明細書または本明細書に引用した参考文献に記載のSBS法のための流体システムは、シーケンシング・バイ・ライゲーション手順またはシーケンシング・バイ・ハイブリダイゼーション手順のための試薬の送達に容易に適合させることができる。オリゴヌクレオチドを蛍光標識し、本明細書または本明細書に引用した参考文献においてSBS手順に関して記載されたのものと同様の蛍光検出器を用いて、検出することができる。
【0127】
いくつかの例は、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリングを含む方法を利用することができる。例えば、ヌクレオチドの取り込みは、フルオロフォア含有ポリメラーゼとγ-リン酸標識ヌクレオチドとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)相互作用によって、またはゼロモード導波路(ZMW)を用いて検出することができる。FRETベースのシーケンシングのための技術および試薬は、例えば、Levene et al. Science 299, 682-686頁(2003年)、Lundquist et al. Opt. Lett. 33, 1026-1028頁(2008年)、Korlach et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105, 1176-1181頁(2008年)に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0128】
いくつかのSBSの例は、ヌクレオチドが伸長産物に組み込まれると放出されるプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づくシーケンシングは電気的検出器を使用することができ、関連技術はIon Torrent(Life Technologiesの子会社、ギルフォード、コネチカット州)から市販されているか、またはシーケンシングの方法およびシステムは米国特許出願公開第2009/0026082 A1号、米国特許出願公開第2009/0127589 A1号、米国特許出願公開第2010/0137143 A1号、または米国特許出願公開第2010/0282617 A1号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。速度論的排除を用いてターゲット核酸を増幅するための本明細書に記載の方法は、プロトンを検出するために用いられる基板に容易に適用することができる。より具体的には、本明細書に記載の方法を使用して、プロトンを検出するために使用されるアレイのサイトにアンプリコンのクローン集団を生成することができる。
【0129】
例えば本明細書に記載の方法によって作製された、本開示のアレイのための別の有用な用途は、遺伝子発現分析である。遺伝子発現は、デジタルRNAシーケンシング(digital RNA sequencing)と呼ばれるものなどのRNAシーケンシング技術を使用して、検出または定量化することができる。RNAシーケンシング技術は、上記のものなどの当技術分野において公知のシーケンシング方法論を用いて実施することができる。遺伝子発現はまた、アレイへのダイレクトハイブリダイゼーションによって行われるハイブリダイゼーション技術を用いて、またはその産物がアレイ上で検出される多重アッセイ(multiplex assay)を用いて、検出または定量化することができる。例えば、本明細書に記載の方法によって作製された本開示のアレイはまた、1人以上の個人からのゲノムDNAサンプルについての遺伝子型を決定するために使用され得る。本開示のアレイ上で実行することができるアレイベースの発現分析および遺伝子型分析のための方法の例は、米国特許第7,582,420号、米国特許第6,890,741号、米国特許第6,913,884号、米国特許第6,355,431号、米国特許出願公開第2005/0053980 A1号、米国特許出願公開第2009/0186349 A1号または米国特許出願公開第2005/0181440 A1号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0130】
本明細書に記載の方法の利点は、それらが任意の様々な核酸ライブラリーからの迅速かつ効率的なアレイの作製を提供することである。したがって、本開示は、本明細書に記載の1つ以上の方法を用いてアレイを作製することができ、且つさらに上に例示したものなどの当技術分野で公知の技術を用いてアレイ上の核酸を検出することができる統合システムを提供する。したがって、本開示の統合システムは、ポンプ、バルブ、リザーバ、流体ラインなどの増幅サイトのアレイに増幅試薬を送達することができる流体構成要素を含み得る。特に有用な流体構成要素はフローセルである。フローセルは、本開示のアレイを作製するため、およびそのアレイを検出するために、統合システムにおいて構成および/または使用され得る。フローセルの例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0111768 A1号および米国特許第8,951,781号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。フローセルについて例示されているように、統合システムの1つ以上の流体構成要素は、増幅方法および検出方法のために使用され得る。核酸シーケンシングの例を挙げると、統合システムの1つ以上の流体構成要素は、本明細書に記載の増幅方法、および上記に例示したようなシーケンシング方法におけるシーケンシング試薬の送達のために使用され得る。あるいは、統合システムは、増幅方法を実行するため、および検出方法を実行するための別々の流体システムを含み得る。核酸のアレイを作製することができ、また核酸の配列を決定することもできる統合シーケンシングシステムの例には、限定されないが、MISEQ(登録商標)機器プラットフォーム(Illumina、Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)および米国特許第8,951,781号(上記の参考文献)に記載の装置が含まれる。そのような装置は、本明細書に記載の指針に従って速度論的排除を用いてアレイを作製するように改変することができる。
【0131】
本明細書に記載の方法を実行することができるシステムは、検出装置と統合される必要はない。むしろ、スタンドアロンシステムまたは他の装置と統合されたシステムもまた可能である。統合システムに関して上に例示したものと同様の流体構成要素が、そのような例で使用され得る。
【0132】
検出能力(detection capabilities)と統合されているか否かにかかわらず、本明細書に記載の方法を実行可能なシステムは、本明細書に記載の1つ以上の方法、技術またはプロセスを実行するための一組の命令を実行可能なシステムコントローラを含むことができる。例えば、命令は、速度論的排除条件下でアレイを作製するためのステップの実行を指示することができる。任意選択で、命令はさらに、本明細書で前述した方法を用いて核酸を検出するためのステップの実行を指示することができる。有用なシステムコントローラは、任意のプロセッサベースシステムまたはマイクロプロセッサベースシステムを含み得、それにはマイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ロジック回路、および本明細書に記載の機能を実行可能な任意の他の回路もしくはプロセッサを使用するシステムが含まれる。システムコントローラに対する一組の命令は、ソフトウェアプログラムの形態であり得る。本明細書で使用されるとき、用語「ソフトウェア(software)」および「ファームウェア(firmware)」は互換可能であり、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、および不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含むコンピュータによる実行のためにメモリに格納された任意のコンピュータプログラムを含む。ソフトウェアは、システムソフトウェアまたはアプリケーションソフトウェアなどの様々な形態であり得る。さらに、ソフトウェアは、別々のプログラムの集合、またはより大きなプログラム内のプログラムモジュールもしくはプログラムモジュールの一部の形態であり得る。ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態のモジュラープログラミングを含み得る。
【0133】
本開示のアレイについてのいくつかの用途は、各増幅サイトに存在する複数のアンプリコンが一緒に検出されるアンサンブル検出の文脈で、上記に例示されている。別の例では、ターゲット核酸かそのアンプリコンであるかにかかわらず、単一の核酸が各増幅サイトで検出され得る。例えば、増幅サイトは、検出されるべきターゲットヌクレオチド配列を有する単一の核酸分子および複数のフィラー核酸(filler nucleic acids)を含むように構成され得る。この例では、フィラー核酸は増幅サイトの容量を満たすように機能し、それらは必ずしも検出されることを意図されていない。検出されるべき単一分子は、フィラー核酸のバックグラウンドにおいて単一分子を識別することができる方法によって検出され得る。例えば、増加したゲインでまたはより高感度の標識を使用してサイトを検出するための、上記のアンサンブル検出技術の改変を含む、任意の様々な単一分子検出技術が使用され得る。使用され得る単一分子検出方法の他の例は、米国特許出願公開第2011/0312529 A1号、米国特許第9,279,154号および米国特許出願公開第2013/0085073 A1号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0134】
単一分子核酸検出(single molecule nucleic acid detection)に有用なアレイは、以下の改変を伴って本明細書に記載の1つ以上の方法を使用して作製することができる。複数の異なるターゲット核酸は、検出されるべきターゲットヌクレオチド配列およびフィラーアンプリコンを作製するために増幅されるべき1つ以上のフィラーヌクレオチド配列の両方を含むように構成され得る。複数の異なるターゲット核酸は、本明細書の他の場所に記載のもののような増幅試薬中に含めることができ、フィラーヌクレオチド配列が増幅サイトを満たすように、速度論的排除条件下で増幅サイトのアレイと反応させることができる。ターゲット配列の増幅を禁止しながらフィラー配列を増幅させるために使用し得る構成の例には、例えば、第一領域および第二領域を有する単一のターゲット分子が含まれ、第一領域は増幅サイトに存在する増幅プライマーのための結合サイトにより隣接されたフィラー配列を有し、第二領域は隣接領域の外側にターゲット配列を有する。別の構成において、ターゲット核酸は、ターゲット配列およびフィラー配列をそれぞれ有する別々の分子または鎖を含み得る。別々の分子または鎖は、粒子に結合させ得るか、または核酸デンドリマーまたは他の分岐構造のアームとして形成され得る。
【0135】
特定の例において、各々がフィラー配列およびターゲット配列の両方を含む増幅サイトを有するアレイは、プライマー伸長アッセイまたはシーケンシング・バイ・シンサシス技術を使用して検出され得る。そのような場合、適切に配置されたプライマー結合サイトを使用することによって、大量のフィラー配列ではなくターゲットヌクレオチド配列で特異的伸長を達成することができる。例えば、シーケンシングプライマーのための結合サイトは、ターゲット配列の上流に配置することができ、フィラー配列のいずれにも存在しないことができる。代替的または追加的に、ターゲット配列は、標準的なヌクレオチドに水素結合することができない1つ以上の非天然ヌクレオチド類似体を含み得る。非天然ヌクレオチド(複数可)は、プライマー結合サイトの下流(例えば、ターゲット配列内、またはターゲット配列とプライマー結合サイトとの間に介在する領域内)に配置することができ、かくして、適切なヌクレオチドパートナー(即ち、ターゲット配列中の非天然類似体(複数可)に水素結合することができるもの)が付加されるまで伸長またはシーケンシング・バイ・シンサシスを妨げるであろう。ヌクレオチド類似体であるイソシトシン(イソC)およびイソグアニン(イソG)は互いに特異的に対合するが、大部分の伸長およびシーケンシング・バイ・シンサシス技術において使用される他の標準的ヌクレオチドとは対合しないので、特に有用である。ターゲット配列内またはターゲット配列の上流にイソCおよび/またはイソGを使用することのさらなる利点は、増幅に使用されるヌクレオチド混合物からそれぞれのパートナーを除外することによって、増幅ステップ中のターゲット配列の不所望な増幅を防ぐことである。
【0136】
例えば、本明細書に記載の方法によって製造された本開示のアレイは、検出方法のために使用される必要はないことが理解されるであろう。むしろ、アレイは核酸ライブラリーを保存するために使用され得る。したがって、アレイは、その中に核酸を保存する状態で保存され得る。例えば、アレイは、乾燥状態、凍結状態(例えば、液体窒素中)、または核酸を保護する溶液中に保存することができる。代替的はまたは追加的に、アレイを用いて核酸ライブラリーを複製することができる。例えば、アレイを使用して、そのアレイ上の1つ以上のサイトから複製アンプリコンを作製することができる。
【0137】
本明細書では、アレイの増幅サイトにターゲット核酸を輸送すること、および増幅サイトで捕捉されたターゲット核酸のコピーを作製することに関して、いくつかの例が例示されている。非核酸ターゲット分子についても同様の方法を用いることができる。したがって、本明細書に記載の方法は、例示されたターゲット核酸の代わりに他のターゲット分子と共に使用することができる。例えば、本開示の方法は、異なるターゲット分子の集団から個々のターゲット分子を輸送するために実施することができる。各ターゲット分子は、捕捉サイトで反応を開始させるために、アレイの個々のサイトに輸送され(且つ場合によっては捕捉され)得る。各サイトでの反応は、例えば、捕捉分子のコピーを生成することができ、または反応は捕捉分子を単離または隔離するためにサイトを変えることができる。いずれの場合も、最終結果は、異なる種類のターゲット分子を含んでいた集団から存在するターゲット分子の種類に関してそれぞれ純粋なアレイのサイトであり得る。
【0138】
核酸以外のターゲット分子を使用する特定の例では、速度論的排除を利用する方法を使用して、異なるターゲット分子のライブラリーを作製することができる。例えば、アレイのサイトが溶液からのターゲット分子で無作為にシーディングされ、且つシーディングされたサイトのそれぞれを容量いっぱいに満たすようにターゲット分子のコピーが生成される条件下で、ターゲット分子アレイは作製され得る。本開示の速度論的排除方法に従って、シーディングプロセスおよびコピープロセスは、コピーが作製される速度がシーディング速度を超える条件下で、同時に進行することができる。かくして、第一ターゲット分子によってシーディングされたサイトでコピーが作製される比較的速い速度は、第二ターゲット分子をそのサイトをシーディングすることから効果的に排除するであろう。いくつかの場合において、ターゲット分子のシーディングは、ターゲット分子のコピー以外のプロセスによってサイトを容量いっぱいまで満たす反応を開始させるであろう。例えば、サイトでのターゲット分子の捕捉は、最終的にそのサイトが第二ターゲット分子を捕捉できなくなる連鎖反応を開始させることができる。連鎖反応は、ターゲット分子が捕捉される速度を超える速度で起こり得、それによって、速度論的排除の条件下で起こる。
【0139】
ターゲット核酸について例示されるように、他のターゲット分子に適用された場合の速度論的排除は、一旦開始された反復反応を継続するための比較的速い速度に対する、アレイのサイトで反復反応(例えば、連鎖反応)を開始するための比較的遅い速度を利用することができる。前段落の例では、速度論的排除は、例えば、ターゲット分子のシードのコピーでサイトを満たすために起こる反応の比較的速い速度に対する、ターゲット分子のシーディングの比較的遅い速度(例えば、比較的遅い拡散)によって起こる。別の例では、速度論的排除は、サイトを埋めるために後続コピーが作られる比較的速い速度に対する、そのサイトにシーディングしたターゲット分子の最初のコピーの形成の遅れ(例えば、遅延された活性化または遅い活性化)によって起こり得る。この例では、個々のサイトは、いくつかの異なるターゲット分子でシーディングされている可能性がある。しかしながら、後続コピーが生成される速度と比較して、最初のコピー形成の平均速度が比較的遅いように、任意の所与のターゲット分子についての最初のコピー形成は、ランダムに活性化され得る。この場合、個々のサイトはいくつかの異なるターゲット分子でシーディングされているかもしれないが、速度論的排除はそれらのターゲット分子のうちの1つのみがコピーされることを可能にするであろう。
【0140】
したがって、本開示は、分子のアレイを作製するための方法を提供し、該方法は、(a)(i)サイトのアレイおよび(ii)複数の異なるターゲット分子を有する溶液、を含む試薬を提供することを含み、溶液中のターゲット分子の数はアレイ中のサイトの数を超え、異なるターゲット分子は複数のサイトへの流体アクセスを有し、各サイトは複数の異なるターゲット分子中のいくつかのターゲット分子に対する容量を含み、該方法は、さらに(b)それぞれが複数のターゲット分子から単一のターゲット分子を有する複数のサイトを生成するため、または溶液からの個々のターゲット分子に由来する純粋なコピーの集団をそれぞれ有する複数のサイトを生成するために、試薬を反応させることを含み、該反応は、同時に、(i)平均輸送速度でサイトに異なる分子を輸送すること、および(ii)平均反応速度でサイトを容量いっぱいに満たす反応を開始することを含み、平均反応速度は平均輸送速度を超える。いくつかの例では、ステップ(b)は代わりに、それぞれが複数のターゲット分子から単一のターゲット分子を有する複数のサイトを生成するため、または溶液からの個々のターゲット分子に由来する純粋なコピーの集団をそれぞれ有する複数のサイトを生成するために、前記試薬を反応させることによって実施でき、該反応は、(i)各サイトでターゲット分子から生成物を形成するために、反復反応(例えば、連鎖反応)を開始すること、および(ii)次の生成物を形成するために、各サイトで該反応を継続することを含み、サイトで反応が起こる平均速度は、そのサイトで反応が開始される平均速度を超える。
【0141】
上記の非核酸の例では、ターゲット分子は、アレイの各サイトで起こる反復反応のイニシエーター(initiator)であり得る。例えば、反復反応は、他のターゲット分子がそのサイトを占有するのを妨げるポリマーを形成し得る。あるいは、反復反応は、そのサイトに輸送されたターゲット分子の分子コピーを構成する1つ以上のポリマーを形成し得る。
【実施例】
【0142】
以下の実施例は例示を意図したものであり、本発明の主題を限定するものではない。
【0143】
(実施例1)
【0144】
フローセル上のクラスターアレイのスーパーポアソン形成
【0145】
本実施例は、Illumina(サンディエゴ、カリフォルニア州)シーケンシングプラットフォームのためのフローセル上のクラスターアレイのスーパーポアソン形成を達成するための方法を記載する。ここに記載の方法は、フィーチャ上のライブラリー要素(例えば、ゲノム断片)を捕捉し、同時にそのライブラリー要素をクローン的に増幅するためのプロセスである。本実施例におけるプロセスの重要な特徴は、捕捉速度対増幅速度を制御し、かつそれを均一なプロセスで行うことである。イルミナ(Illumina)フローセルの高密度シーディング用に開発された多くの先行プロセスは、クローン増幅プロセスからライブラリー要素の捕捉を分離している。本実施例では、捕捉イベントは、フィーチャ上のクローン増幅イベントを開始させる。
【0146】
パターン化フローセルは以下のように調製される。ガラスフローセル(Illumina、Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)は、リフトオフ法を用いて金パッチでコーティングされる。簡単に説明すると、フォトレジスト層をガラスフローセルの表面上に均一にコーティングし、フォトレジストのパッチをフォトリソグラフィーによって除去してガラス表面のパッチを露出させる。次いで、金の層を表面上に堆積させて、フォトレジスト領域およびガラスパッチ上に連続薄膜を形成する。Thornton, Ann. Rev. Mater. Sci. 7:239-60頁(1977年)に記載されているように、電子ビーム蒸着またはスパッタリングを用いて金を堆積させることができ、当該文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。次にフォトレジスト層をアセトンリフトオフによって除去して、形状が円形で、直径が1ミクロン未満であり、ガラス表面の介在領域によって囲まれている金パッチを残す。次に、(本明細書に援用される)国際公開第2008/093098号に記載されているように、金パターン化フローセルはシランフリーアクリルアミド(SFA)でコーティングされる。P5プライマーおよびP7プライマーは、ニトロベンジルUV開裂性部分(Glenn Research、スターリング、バージニア州)を介して重合SFAにグラフトされる。金パッチがパッチ上に付着したプライマー用のマスクを形成し、一方で介在領域上に付着したすべてのプライマーは紫外線露光によって切断されるように、フローセルはUV(302nm)光源上に配置される。金パッチに残るP5プライマーおよびP7プライマーは、ライブラリーのクローン増幅をサポートすることができる(P5/P7)。
【0147】
ライブラリー要素は以下のようにして作製される。ゲノムDNA(gDNA)ライブラリーは断片化され、P5プライマーおよびP7プライマーに相補的なプライマー結合サイトを有する分岐型アダプターが、イルミナ(Illumina)の市販サンプル調製プロトコルに従ってgDNA断片に連結される。
【0148】
スーパーポアソンクラスターアレイ形成は、以下のように実行される。ライブラリー要素(二本鎖形態)およびTWISTAMP(登録商標)Basic試薬(TwistDx、ケンブリッジ、イギリス)を含有する溶液を調製する。TWISTAMP(登録商標)Basic試薬は、表面上での鋳型依存性増幅をサポートできる酵素混合物(DNAポリメラーゼ、一本鎖結合タンパク質およびリコンビナーゼ)を含む。溶液中のライブラリー要素の濃度は、任意のフィーチャによるライブラリー要素のハイブリダイゼーション捕捉の速度がクローン増幅速度よりもはるかに低く、かつ別のライブラリー要素を捕捉するためにフィーチャ上で利用可能なオリゴの十分な枯渇があるように制御される。
【0149】
溶液に対するライブラリー要素の最適濃度、さもなけれ所望の濃度は、上記のスーパーポアソンクラスターアレイ形成プロトコルを用いた滴定と、それに続くイルミナシーケンシング装置(例えば、GENOMEANALYZER(登録商標)、HISEQ(登録商標)またはMISEQ(登録商標)などの機器)でのシーケンシングランによって経験的に決定することができる。
【0150】
(実施例2)
【0151】
速度論的排除条件下で作製されたパターン化クラスターアレイのキャラクタリゼーション
【0152】
本実施例は、速度論的排除条件を用いた、パターン化されたフィーチャ上へのモノクローナルクラスターのスーパーポアソンローディングを実証する。
【0153】
パターン化フローセルは以下のように調製された。ガラスフローセル(Illumina、Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第8,778,848号に記載されているようなリフトオフ法を用いて金パッドでコーティングされた。簡単に説明すると、フォトレジスト層をガラスフローセルの表面上に均一にコーティングし、フォトレジストのパッチをフォトリソグラフィーによって除去してガラス表面のパッチを露出させた。次いで、金の層を表面上に堆積させて、フォトレジスト領域およびガラスパッチ上に連続薄膜を形成した。参照によりその全体が本明細書に援用されるThornton, Ann. Rev. Mater. Sci. 7:239-60頁(1977年)に記載されているように、電子ビーム蒸着を用いて金を堆積させた。次にフォトレジスト層をアセトンリフトオフにより除去して、金パッドの六角形パターンを残した。ここで各金パッドは円形であり、直径が500nmであり、ガラス表面の介在領域により囲まれていた。次に、(本明細書に援用される)国際公開第2008/093098号に記載されているように、金パターン化フローセルはシランフリーアクリルアミド(SFA)でコーティングされた。プライマーは、ニトロベンジルUV開裂性部分(Glenn Research、スターリング、バージニア州)を介して重合SFAにグラフトされた。金パッドがパッド上に付着したプライマー用のマスクを形成し、一方で介在領域上に付着したすべてのプライマーは紫外線露光によって切断されるように、フローセルはUV(302nm)光源上に配置された。切断されたプライマーを洗い流し、金パッド上に付着したプライマーを残した。
【0154】
以下のようにTWISTAMP(登録商標)Basic キット(TwistDx、ケンブリッジ、イギリス)を用いて、クラスターを金パッド上で成長させた。二本鎖φX DNAライブラリーを、TWISTAMP(登録商標)Basic Rehydrationバッファーおよび酢酸マグネシウム試薬中に異なる濃度で混合した。試験したφX DNAの濃度は、約72pM、約144pM、約432pMおよび約864pMであった。これらの濃度は、イルミナフローセルの標準的なシーディングに使用される約9~10pMのDNAの典型的な範囲を超えていた。また、鋳型DNAが一本鎖形態であるイルミナフローセルの標準的なシーディングとは対照的に、φX DNAは二本鎖であった。φX DNA含有混合物を用いてTWISTAMP(登録商標)Basic凍結乾燥ペレットを再水和させ、次いで約38℃でパターン化フローセルのそれぞれのレーンに流し込んだ。インキュベーションを約38℃で約1時間続けた後、HT2 wash buffer(Illumina、Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)で洗浄し、SyBr Greenでクラスターを染色した。次いで、クラスターは、クラスター中のDNAをリニアライズする(linearize)ための約30分間のLMX1処理、約0.1N NaOH変性、およびシーケンシングプライマーのハイブリダイゼーションによって、シーケンシングのために処理された。フローセルはその後、Illumina HISEQ(登録商標)2000機器で26サイクルの間シーケンスされた。
【0155】
フローセル画像の目視検査は、表面上の金パッドのパターンに対応するパターンで、クラスターが空間的に並べられることを示した。
図1(a)は、上述した速度論的排除法によって製造されたフローセルを用いて、一回目のシーケンシングサイクルの後に得られた4色チャンネル全てについての合成画像を示す。比較のために、
図1(b)は、ランダムに配置されたクラスターを有する標準的なフローセルについての単一のシーケンシングサイクルの後に得られた合成画像を示す。
【0156】
フローセルの合成画像についての対分布関数(PDF)および最近傍(NN)関数の分析もまた高い秩序度を示した。未処理クラスター密度(raw cluster density)は、画像の平方ミリメートルあたり約640,000クラスターであると計算された。NN関数を使用して、画像内の最近傍クラスター間の平均距離を測定した。
図2に示すように、NN関数は主に2.3ピクセル付近に単一のピークを生じた。これはパッドに対して予想される1ミクロンピッチのパターンと一致しており、それによって非常に規則正しいクラスターのアレイが示唆された。対照的に、ランダムクラスタリングははるかにブロードなピークを生成し、低い方の値はクラスタピッキングアルゴリズムの検出限界(1.2ピクセル)に近づく。
図2のPDFは、規則正しい六角形アレイについて予想される構造と一致している。例えば、PDF関数は、約2.66ピクセルに予想される一次ピークを示し、最近傍を超える近傍に対応する高次ピークがはっきりと見え、予想されるピーク比で存在した。NN関数とPDF関数との間のピーク位置のわずかなシフトのみが観察された。この低レベルのジッタ(jitter)は、理論的に完全な位置からの偏差が非常に小さく、十分に許容範囲内であることを示していた。
【0157】
4色合成画像の目視検査もまた、不所望のパッドホッピング(pad hopping)がないことを明らかにした。パッドホッピングは、いくつかの隣接パッドが同じ鋳型配列から増幅されるプロセスを指す。パッドホッピングは、4色画像において、同じ色を有する連続したクラスターのパッチとして視覚的に特徴付けられる。本実施例に示されるような速度論的排除条件下で作製されたフローセルについて、同じカラーパッチが存在しないことは、不所望なレベルのパッドホッピングが生じなかったことを示していた。
図3は、クラスターの色および空間位置のより定量的な表示を与え、パッドホッピングが問題ではなかったことを示している。具体的には、
図3は、φXゲノムの最初の5つのゲノム位置に整列するクラスターの空間位置の散布図を示す。異なるゲノム位置は、エックス(exes)、アスタリスク、正方形、三角形および菱形によって示されている。この図では5つのシンボルタイプがランダムに分布していて固まっておらず、パッドホッピングが問題ではなかったことを示している。
【0158】
速度論的排除条件を用いて製造されたフローセルについて、26サイクルのデータについての配列分析を実施した。結果は、パッドの約64%が占有され、パッドの約56%がクローンであるクラスターを有することを示した。従って、本方法は、パッドの約64%が占有された場合にパッドの約36%がクローンであると予測したであろうポアソンローディングから予想されるものに対して、クローンクラスターの約2倍の増加を生じた。これらの結果は、明らかにスーパーポアソンローディングを示した。
【0159】
(実施例3)
【0160】
生体分子の能動的電気脱着およびパターニング
【0161】
本実施例は、電場を用いて生体分子を空間的にパターン化する方法を実証する。本実施例に記載された方法は、ターゲットサイトに迅速にDNAをシーディングし、かつ介在領域から生体分子を電気化学的にはじき出し、高度にパターン化されたアドレス可能な(addressable)DNAクラスターのアレイをもたらす。ここに示された結果は、モノクローナル核酸クラスターのパターンを有するフローセルの形成を実証する。
【0162】
本実施例に記載の方法は、1つの導電性表面と電解質との間、または2つの導電性表面の間に印加される電圧を用いて、電気的にバイアスされた表面の一方または両方から、物理吸着分子または化学共役分子(physadsorbed or chemically conjugated molecules)を能動的に脱着する。この能動的脱着法は、いかなる表面化学/表面修飾も必要とせず、非常に迅速に(5分未満で)分子を脱着することができ、受動的脱着法よりもプロセス条件に対する感受性が低い。導電性表面は、本質的に金属性(例えば、チタン、酸化インジウムスズ)または半導体性であり得、印加電圧は交流または直流であり得、電極/電解質の界面で電気化学反応を生じる。電場を印加することは、(目的サイトにおける)シグナル対(介在領域からの)ノイズを一桁改善する。本実施例に記載された方法はまた、選択的脱着、電極の選択的再官能化(refunctionalization)および化学種(species)の電気化学的パターニングのために平面電極にも適用することができる。
【0163】
フローセル構造
【0164】
生体分子の電気化学的脱着について上述した2つの構造は、
図4(a)および
図4(b)に示されている。具体的には、酸化インジウムスズ(ITO)が導電性透明電極材料として使用された。ITOは、高周波スパッタリングによって、D263表面上に堆積させた。
図4(a)は、導電性ITO層と電解質との間に印加される電圧を示す。
図4(b)は、液体媒体によって分離された2つの平行な導電性ITOプレートの間に印加される電圧を示す。両方の構造は、ITOの表面から化学種(species)を電気的に脱着するために使用され得る。金(Au)ナノパターン化サイトは、チオール化生体分子(例えば、チオール化アビジン)のターゲット捕捉に有用である。Au上での電気化学を防止するために、Auサイトは、誘電スペーサ(例えば、SiO
2、SiN、ダイヤモンドライクカーボン)を用いて、下層のITOから分離される。
【0165】
図4(b)の構造は、
図4(c)のタイムラプス画像に示すように、電場を用いてフローセル表面に同時に、急速にDNAを(例えば、100倍)濃縮するためにも使用することができる。これらの実験では、約2Vの電圧(V)が、2つのITO表面を隔てる約100μmのギャップ間に印加された。
図4(c)の全反射照明蛍光(TIRF)イメージングを用いて観察されるような経時的な蛍光の増加は、フローセルの上面に印加された電場下での、(YOYO色素で標識された)φXコントロールDNAの表面濃度の大幅な増加によるものである。したがって、ここに概説された技術は、迅速なシーディングを容易にしながら、同時に介在領域から生体分子を電気化学的に脱着するために使用することができる。
【0166】
実験ワークフロー
【0167】
能動的脱着実験のための実験ワークフローが
図5に概説されている。本方法は、アビジンをフローセルの表面にコーティングすること、続いてシランフリーアクリルアミド(SFA)でコーティングすること、およびプライマーをSFAにグラフトすることを含む。SFAコーティングならびにP5プライマーおよびP7プライマーのグラフト化は、(参照によりその全体が本明細書に援用される)国際公開第2008/093098号に記載されているように行われる。しかしながら、本発明の方法では、アビジンは、SFAコーティングの前に電気的脱着ステップを使用して、フローセル表面上に存在する、(ITO介在領域によって分離される)Auまたは誘電体サイト上に電気化学的にパターン化される。また、P5およびP7プライマーのグラフト化に続いて、Auまたは誘電体サイト上にDNAを迅速にシーディングすること、およびITO介在(ITO interstitials)から生体分子(DNA、アビジン、プライマー)を電気化学的に脱着することの両方のために、電場が印加される。一例では、分子を効果的に脱着させるために約2Vが印加される。約5分程度の短時間の電場持続時間で、介在領域内の大部分の分子を効果的に脱着することができる。さらに、結果は、介在領域におけるプライマー濃度も電場ステップ後に減少することを示唆している。次に、Bentley et al. Nature 456:53-59頁(2008年)に記載されているようにクラスター増幅を実施し、続いて二本鎖DNA挿入色素(intercalating dye)を用いてクラスター染色し、顕微鏡撮像した。次いで、HISEQ(登録商標)2000 DNAシーケンサー機器(Illumina、Inc.、サンディエゴ)を用いて、フローセルをシ-ケンシングして、クラスターのクローン性を決定した。電場アシストシーディングおよび電気化学的脱着の効果を示す概略図を
図5に示す。
【0168】
実験結果
【0169】
図6は、電場あり(
図6(a))および電場なし(
図6(b))の両方で、
図4(b)のフローセル構造を使用して達成された結果を示す。電場の存在下では、クラスターは約2μmのAuサイトに高度に制限されており、介在領域にはほとんど蛍光が観察されない。約2μmのサイトでは、Auパッドのサイズが大きいため、クラスターは高度に多クローン性である。パッドサイズを減少させて、立体的排除を介して複数の鋳型がシーディングするのを阻害することによって、多クローン性の程度を減少させることができ、あるいは速度論的排除条件を使用して多クローン性を減少させることができる。また、介在領域のピクセル強度は0に近いことに注意されたい(
図6(a)のラインプロファイル)。対照的に、電場が存在しない場合には、クラスターはAu表面と介在ITO表面の両方に存在する。
図6(a)のラインプロファイルに見られる周期的パターンは、
図6(b)のラインプロファイルには見られず、クラスター制限が電場の結果であることが裏付けられる。
【0170】
電場技術を使用して、ミクロンサイズのサイトと、広い面積にわたるナノパターン化されたサイトの両方の上に、クラスターを空間的にパターニングすることができる。直径約2μmのAuサイトおよび直径約200nmのAuサイト上にシーディングされたパターン化クラスターの大面積画像を、対応するフーリエ変換(FFT)と共に、それぞれ
図7(a)および
図7(b)に示す。クラスターははっきりとしており、また高度にパターン化されていて、ITO介在領域における非特異的結合は極めて少ない。これは、FFTにおいて見られるはっきりしたスポットによってさらに裏付けられ、規則的またはパターン化されたネットワークが示唆される。
図7(b)のナノパターン化フィーチャにおけるクラスター占有率は、は約40~50%であるが、より高いアビジン濃度を使用することにより、または電圧波形を操作することにより、さらに増加させることができる。同じケミストリー/プロセスを使用して、誘電体サイト上でも高い空間精度でクラスター化することができる。直径約700nmのSiO
2サイト上の規則正しいクラスターを
図8に示す。
【0171】
メカニズム
【0172】
データは、クラスターの空間的パターニングが電場の存在下で促進されることを示唆している。これは、介在領域における生体分子(例えば、DNA、タンパク質およびプライマー)の電気化学的除去による可能性が高い。テキサスレッド(TR)で標識されたプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイを使用して見られるように、電場が印加されると、グラフトされたプライマー強度は減少することが見られる。
図9(a)は、電場印加前後のフローセル内で行われたハイブリダイゼーションアッセイについてのTR蛍光強度(
図9(b)で定量化されている)を示すTyphoonスキャンを示す。電場の印加後に、蛍光強度が2倍以上減少し、SFAからのプライマーの除去が裏付けられる。クラスター強度を増加させるために、フローセルはSFAで再コーティングされ、P5、P7プライマーで再グラフトされた。これはTR強度のかなりの増加をもたらした。したがって、DNAをシーディングし、介在領域内の非特異的に結合した分子を電気化学的に除去し、SFAを再コーティングし、プライマーを再グラフトして、高強度の空間的にパターン化されたクラスターを得ることができる可能性が高い。
【0173】
ダイレクトDNAハイブリダイゼーション
【0174】
クラスターの空間的パターンニングはまた、φX 一本鎖DNAのP5、P7プライマーのローン(P5, P7 primer lawn)へのダイレクトハイブリダイゼーションを含む実験においても観察された。プロセスの概略図を
図10(a)に示す。これらの実験は、ITO上の約2μmのSiftサイト上で行われた。サイトを形成する様々な誘電材料を用いて、同じプロセスをナノパターン化サイトに適用することができる。これらの実験では、ビオチン化DNAもアビジンも必要とされず、したがってサイト上のクラスター特異性を維持しながら、より少ない化学ステップをもたらす。特異性は、おそらく介在領域におけるプライマーの電気化学的脱着の結果である。
図10(b)は、ダイレクトハイブリダイゼーション法を用いて、電場(約2V、約0.1Hz)の存在下で約2μmのSiftサイト上に形成されたクラスターを示す。よくパターン化されたクラスターは、介在領域ではほとんど見られない。
図10(c)は電場がない場合の同じ実験であり、電場がない場合に明確な秩序が存在せず、クラスターがSFAおよびITO介在領域の両方の上においてランダムに配向していることを示す。これらの結果は、核酸クラスター形成の空間的パターニングをアシストするために、電場が使用され得ることを裏付けている。
【0175】
図11は、一例による、フローセル上に遺伝子クラスターを生成するための方法100のフローチャートである。方法100は、本明細書に記載の教示に従って実行される。102で、第一試薬混合物はある量のターゲット核酸と混合され、第一溶液が規定される。第一溶液は、相当量の、微量ではない量のターゲット核酸を含むため、本明細書ではターゲット溶液とも呼ばれる。
【0176】
ターゲット核酸は、シーケンスされるべき遺伝子ライブラリー由来のDNAであり得る。ターゲット核酸は、フローセルの増幅サイトで対応するプライマーに結合するように構成されているアダプターを末端に有する鎖として調製される。第一試薬混合物は、限定されないが、NTPおよび1つ以上の複製酵素を含む様々な試薬成分からなる。1つ以上の複製酵素は、ポリメラーゼ、リコンビナーゼ、ヘリカーゼなどを含み得る。試薬混合物は、NTPおよび1つ以上の複製酵素の他に、プライマー、一本鎖結合タンパク質、流体輸送のためのバッファー(例えば、水、界面活性剤など)、クラウディング剤、マグネシウムなどの追加の試薬成分を含み得る。一例では、第一試薬混合物は、フローセルに流体接続されている試薬マニホールド上の混合リザーバまたはキャッシュリザーバ内で、ターゲット核酸と混合される。ターゲット核酸は、ターゲット溶液内で自由に浮遊している。
【0177】
104において、ターゲット溶液はフローセル上の増幅サイトのアレイ上に流され、フローセル上にアンプリコンのクローン集団が生成される。増幅サイト上にターゲット溶液を流すことは、本明細書に記載の速度論的排除増幅の条件に従って、その増幅サイトにアンプリコンのクローン集団を生成する。アンプリコンのクローン集団は、本明細書においてクローンクラスターおよび遺伝子クラスターとも呼ばれる。一例では、ターゲット溶液は、試薬マニホールドの混合リザーバからフローセルへ、かつフローセルの入口ポートを通って流され、増幅サイトのアレイと接触する。
【0178】
増幅サイトは、フローセルの表面に沿った構造的フィーチャに位置してもよい。構造的フィーチャは、一例では表面に沿った凹状のウェルであるが、他の例ではビーズのような他のフィーチャであり得る。ウェルは、フローセルの表面の介在領域によって互いに分離される。一例では、増幅サイト上にターゲット溶液を流す前に、P5プライマーおよびP7プライマーを増幅サイトでフローセルの表面に付着させることによって、フローセルが調製される。一例では、パターン化フローセルをシランフリーアクリルアミド(SFA)でコーティングし、次いでニトロベンジルUV開裂性部分を介してプライマーを重合SFAにグラフトすることによって、プライマーはフローセルに付着され得る。プライマーは場合により、電場アシスト輸送によって、増幅サイトに誘導され得、かつ介在領域から離れるように誘導され得る。あるいは、プライマーはウェルと介在領域の両方にグラフトされ得るが、介在領域のプライマーは、UV光への曝露、研磨(polishing)、またはウェル内に位置するプライマーを除去することなく介在領域からプライマーを除去する別のプロセスによって除去される。調製されたフローセルは、各増幅サイト(例えば、各ウェル内)にプライマーのローン(a lawn of primers)を含み、介在領域内には、たとえあるとしても少量のプライマーしか有さない。
【0179】
フローセルに対してターゲット溶液を進ませるためにエネルギー源を必要とする1つ以上のポンプを使用して、ターゲット溶液は増幅サイト上を能動的に流され得る。別の例では、1つ以上のバルブを開き、重力および/または拡散がターゲット溶液を増幅サイト上に移動させることを可能にすることによって、ターゲット溶液は増幅サイト上を受動的に流され得る。ターゲット溶液が増幅サイト上を流されるとき、ターゲット核酸はターゲット溶液内で自由に浮遊している。ターゲット溶液中のターゲット核酸の数は、フローセル上の増幅サイトの数、例えばウェルの数を超える。
【0180】
106において、ターゲット溶液はフローセル上でインキュベートされる。ターゲット溶液は、指定の条件(例えば、温度、圧力、湿度など)で指定の期間、フローセル上の増幅サイトのアレイと接触して保持されることによってインキュベートされる。例えば、ターゲット溶液は、、約20℃から約50℃の間の温度(例えば、約30℃から約42℃の間の温度)で、約30分から約90分の間の時間(例えば、約40分から約60分の間の時間)、フローセル上でインキュベートされ得る。インキュベーション条件は、別の例では異なり得る。
【0181】
インキュベーション中に、ターゲット溶液はフローセル上で反応して、増幅サイトにおいてアンプリコンのクローン集団を生成する。アンプリコンのクローン集団は、対応するターゲット核酸に由来する。例えば、ターゲット核酸は、アダプター末端とプライマーとの間のハイブリダイゼーションを介して増幅サイトに付着したプライマーに結合して、ターゲット核酸をフローセルに付着させる。ターゲット核酸は輸送速度で、増幅サイトに輸送されてプライマーに結合する。輸送速度は、ウェルなどの増幅サイトにおけるターゲット核酸のシーディング速度を表す。輸送速度は、増幅サイト上を流されるターゲット溶液中のターゲット核酸の濃度に依存し得る。例えば、ターゲット溶液中のより高い濃度のターゲット核酸は、ターゲット溶液中のより低い濃度のターゲット核酸から生じる輸送速度と比較して、輸送速度を増加させ得る。ターゲット溶液中のターゲット核酸の濃度を制御することによって、輸送速度を制御することができる。輸送速度はまた、ターゲット溶液の粘度を制御すること、ターゲット核酸の平均サイズを制御すること、および/またはターゲット溶液中に分子クラウディング試薬を添加するかどうかを決定することによって制御することができる。例えば、輸送速度は、ターゲット溶液の粘度を増加させること、ターゲット核酸の鎖の平均サイズもしくは平均長さを増加させること、および/または(増幅サイトで、自由に浮遊する核酸がプライマーに移動して結合する能力を妨げる)分子クラウディング試薬を添加することによって減少させることができる。輸送速度は、ターゲット溶液の粘度を低下させること、ターゲット核酸の平均サイズを低下させること、および/または分子クラウディング試薬を使用しないことによって増加させることができる。
【0182】
ターゲット溶液中の試薬混合物の存在は、ターゲット核酸の増幅サイトへの輸送および増幅サイトに既に結合しているターゲット核酸の増幅を同時に可能にする。例えば、酵素はNTPのヌクレオチドを使用して、ターゲット核酸のコピーであるアンプリコンを生成する。アンプリコンは増幅サイトに結合している。アンプリコンは増幅速度で生成され、該増幅速度は第一試薬混合物中の試薬成分の濃度、例えば、NTPおよび1つ以上の複製酵素の濃度に基づいて制御され得る。例えば、より高濃度のポリメラーゼおよびリコンビナーゼは、より低濃度のポリメラーゼおよびリコンビナーゼから生じる増幅速度と比較して、増幅速度を増加させ得る。増幅速度はまた、増幅サイトにおける温度の制御および/または増幅サイトにおけるプライマーの性質の制御によっても影響され得る。例えば、プライマーの配列、長さ、および/または種類は、増幅速度に影響を与えるように改変または選択することができる。
【0183】
速度論的排除増幅を提供するために、増幅速度は輸送速度を超えるように制御される。例えば、第一ターゲット核酸が増幅サイトで1つのプライマーに結合すると、他のターゲット核酸が同じ増幅サイトでプライマーに結合することができる前に、第一ターゲット核酸に由来する多くのアンプリコンが増幅サイトで他のプライマー上に形成されるように、増幅速度は輸送速度を大幅に超える可能性がある。その結果は、第一ターゲット核酸に由来する増幅サイトおけるアンプリコンのクローン集団(またはクラスター)である。第二の増幅サイトにおけるアンプリコンのクローン集団は、第一ターゲット核酸とは異なる第二ターゲット核酸に由来するように、異なる増幅サイトは、異なるターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を有する。したがって、フローセルに沿った1つのウェルは、第一ターゲット核酸に由来するアンプリコンで満たされ得、第2のウェルは、ターゲット溶液中の第二ターゲット核酸に由来するアンプリコンで満たされ得る。第一ターゲット核酸が特定の増幅サイトに到達した後にそのサイトに到達する後続のターゲット核酸が、その特定のサイトにシーディングすることから速度論的に排除されるように、増幅速度は所定の量または程度だけ輸送速度を超える。
【0184】
空間的に分離されたアンプリコンのクローンクラスターは、遺伝子シーケンシング(genetic sequencing)に使用される。例えば、アンプリコンの鎖は、シ-ケンシング・バイ・シンサシス手順において蛍光標識ヌクレオチドを受け取る鋳型として使用され得る。蛍光標識ヌクレオチドは励起時に特徴的なシグナルを発し、それはターゲット核酸の配列を決定するために使用される。
【0185】
108において、ターゲット溶液がフローセルから除去される。例えば、フローセルの表面に結合していない自由に浮遊するターゲット核酸が、フローセルの表面に沿って存在しないように、ターゲット溶液がフローセルから除去される。したがって、フローセルの表面上のプライマーの1つにハイブリダイズしないターゲット溶液中のターゲット核酸は、フローセルから洗い流される。フローセルからターゲット溶液をポンプで汲み出すこと、フローセルからターゲット溶液を洗い流すためにフローセルに中性溶液を流すこと、および重力を用いてフローセルからターゲット溶液を排出することなどによって、ターゲット溶液は除去され得る。増幅サイトでフローセルに結合したアンプリコンのクローンクラスターおよびターゲット核酸は、ターゲット溶液が除去された後もフローセル上に残る。
【0186】
一例では、フローセル上の増幅サイトにおけるクローンクラスター中のアンプリコンの数を増加させるために、最初の排除増幅ステップに続いて二次排除増幅ステップが行われる。増幅サイトにおけるクラスター中のアンプリコンの数が増加すると、より少ないアンプリコンを有するクラスターよりも、シーケンシング・バイ・シンサシス中により多くのシグナルおよびより良好なシグナル対ノイズ比が与えられる。例えば、バックグラウンドノイズが一定のままである一方で、シグナル強度はクラスター中のより多数のアンプリコンのために増加し得、より良好なシグナル対ノイズ比がもたらされる。シグナル対ノイズ比が優れていると、ベースレベルでのエラーの可能性が少なくなるため、より高精度かつ効率的なシーケンシングが可能になる。
【0187】
110において、第二試薬混合物が混合され、追加のターゲット核酸を欠く第二ターゲットレス溶液が規定される。一例では、ターゲットレス溶液はターゲット核酸を含まない。例えば、第二試薬混合物は、第一試薬混合物をターゲット核酸と混合してターゲット溶液を規定するために使用される混合リザーバとは異なる第二混合リザーバ内で混合され得る。この混合ステップ110は、方法100においては、ターゲット溶液がフローセルから除去される後に示されているが、場合により、ターゲット溶液がフローセルから除去される前に第二試薬混合物を混合してもよく、例えば、ターゲット溶液がフローセル上でインキュベートされているときなどに、ターゲット溶液を規定するための第一試薬混合物とターゲット核酸との混合と同時に行うことができる。ターゲットレス溶液は、一例では、増幅サイト上を既に流れたターゲット溶液の再循環部分を一切含まないフレッシュな溶液である。
【0188】
別の例では、ターゲットレス溶液は、ゼロではない微量のターゲット核酸を含み得る。例えば、第一ターゲット溶液が混合リザーバからフローセルに流されるとき、残留量のターゲット溶液がフローセルに流れることなく混合リザーバ内に保持され得る。さらに、残留量のターゲット溶液が第二試薬混合物と混合してターゲットレス溶液を規定するように、第二試薬混合物は同じ混合リザーバ内で続いて混合され得る。得られたターゲットレス溶液は、混合リザーバ内の残留量のターゲット溶液に由来する微量のターゲット核酸を含み得る。ターゲットレス溶液中のターゲット核酸の濃度は100ppm未満であり、これは、追加アンプリコンを生成するための増幅サイト上でのターゲットレス溶液の反応に無視できるほどの影響しか与えないほどに十分に低い可能性がある。
【0189】
ターゲットレス溶液中の第二試薬混合物は、ターゲット溶液中の第一試薬混合物と同じまたは異なる種類の試薬成分を含み得る。例えば、第二試薬混合物は、第一試薬混合物と同じ種類のNTPおよび同じ種類の複製酵素を含み得る。同じ種類の試薬成分の少なくともいくつかを両方の溶液に使用することができるが、第二試薬混合物はフレッシュ量の試薬成分からなることに留意されたい。例えば、フローセルを通って流れた後の第一ターゲット溶液のいかなる部分も、ターゲットレス溶液を規定するために混合リザーバ内に再循環されない。
【0190】
第二試薬混合物中の試薬成分は、NTP、ポリメラーゼ、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、一本鎖結合タンパク質、クラウディング剤、バッファーなどのうちの1つ以上を含み得る。第二試薬混合物は、ターゲット溶液中の第一試薬混合物と比較して、異なる量および/または濃度の試薬成分を含み得る。例えば、第二試薬混合物は、アンプリコンが増幅サイトで形成される複製速度を増加させるために、第一試薬混合物と比較して、より高い濃度のポリメラーゼ、リコンビナーゼ、および/またはヘリカーゼなどの複製酵素を含み得る。別の例では、第二試薬混合物は、ターゲット核酸を第二試薬混合物に添加しないことを補うために、第一試薬混合物と比較して、より多量のバッファー成分(例えば、水、界面活性剤、または水-界面活性剤混合物)を含み得る。第二試薬混合物は、異なるタンパク質、プライマーなどのような、第一試薬混合物とは異なる1種類以上の試薬成分を任意に含み得る。例えば、第二試薬混合物は、第一試薬混合物中に存在しないプライマーを含み得る。プライマーは、P5プライマー配列を有するP5プライマーおよび/またはP7プライマー配列を有するP7プライマーであり得る。
【0191】
112において、ターゲットレス溶液がフローセル上の増幅サイトのアレイ上に流される。ターゲットレス溶液は、該ターゲットレス溶液を含有するそれぞれのリザーバからフローセルに、ポンプで汲み出しまたは排出され得る。上記のように、ターゲットレス溶液はターゲット核酸を完全に含まなくてもよく、あるいは、ターゲットレス溶液の調製に使用された混合リザーバ内に残留量のターゲット溶液を保持する結果、微量のターゲット核酸のみを含んでもよい。ターゲットレス溶液は微量を超えるターゲット核酸を含まないので、増幅サイト上にターゲットレス溶液を流しても、ターゲット核酸の増幅サイトへの感知できるほどのさらなるシーディングは引き起こされない。より具体的には、追加のターゲット核酸は増幅サイトでプライマーに結合しない。一般的にはターゲット溶液をフローセルを通して流したときにのみ、遺伝子ライブラリーのターゲット核酸は増幅サイトでプライマーに結合する。
【0192】
114において、ターゲットレス溶液がフローセル上でインキュベートされる。ターゲットレス溶液は、特定の指定の条件(例えば、温度、湿度、圧力など)で、指定の期間、フローセル上の増幅サイトのアレイと接触して保持され得る。期間および/または条件は、ターゲット溶液のインキュベーションと類似または同一であり得る。他の例ではインキュベーション条件は異なり得るが、一例では、ターゲットレス溶液は、約38℃の温度で約20~約60分間、フローセル上でインキュベートされ得る。
【0193】
フローセル上でのターゲットレス溶液のインキュベーションは、増幅サイトにおけるクローン集団またはクラスター中のアンプリコンの数を増加させ、より完全なクラスタリング増幅(clustering amplification)を提供する。例えば、最初の排除増幅反応の間、ターゲット核酸および生成されたアンプリコンは、各増幅サイトでプライマーの全部ではないがその一部に結合し得る。したがって、ターゲット核酸およびアンプリコンのいずれにも結合しておらず、そして結合のために露出されている多数のプライマーが増幅サイトに存在し得る。そのようなプライマーは、各増幅サイトにおいてプライマーの露出サブセットを規定する。ターゲットレス溶液中の試薬混合物は、露出プライマー上で追加アンプリコンを生成し、露出サブセット中のプライマーの数を減少させる。例えば、第二試薬混合物はクローンクラスター中の既存のアンプリコンと反応して、露出プライマーに結合する新しいアンプリコンを生成する。
【0194】
増幅サイトにおいて既存の露出プライマー上にアンプリコンを生成する代わりに、またはそれに加えて、第二試薬混合物は追加のプライマーを含み得る。一例では、第二試薬混合物は、P5プライマーなどのプライマーを含む。ターゲットレス溶液をフローセル上に流す前に、増幅サイトに存在するP5プライマー(クラスター中のアンプリコンのP5鎖を含む)はリニアライズおよび除去され、主にクラスター中のアンプリコンのP7鎖と、使い残りの露出した(例えば、未使用の)表面結合P7プライマーが残される。ターゲットレス溶液は、その中に第二試薬混合物からのP5プライマーを含むので、フローセル上にターゲットレス溶液を流すことは、露出した表面結合P7プライマー上へのクラスターのさらなる増幅を促進する。DNAクラスター鎖はブリッジを形成して(bridge over)、両端で表面に結合したままである必要があるので、最初の排除増幅後に、表面P7プライマーの一部は露出された。立体障害は、すべての利用可能な露出した表面プライマーへのアクセスを制限し得る。第一ターゲット溶液を用いた最初の排除増幅ステップの後に、表面からプライマーの一つ(例えば、P5プライマー)を除去することにより、表面上に残っているもう一方のプライマー(例えば、P7プライマー)に対するアクセス性が増大する。さらに、アンプリコンクラスター鎖の一端は、増幅のために表面結合する必要から解放される。
【0195】
別の例では、二次増幅は、追加のプライマーを含まない第二試薬混合物を用いて達成することができる。例えば、クラスターのP5鎖が表面結合したままであるように、アンプリコンクラスターを変性させることなく、ターゲットレス溶液を流す前に、表面結合P5プライマーをリニアライズし、増幅サイトから除去することができる。この状態で増幅サイト上に流されるターゲットレス溶液は、未使用のP7プライマーを線形増幅様式(linear amplification manner)で用いる鎖侵入(strand invasion)によって、より多くのP5鎖のコピーを生成することができる。この例における二次増幅は、クラスターの一端をリニアライズすることを介して、未使用のP7プライマーをよりアクセス容易にすることによって可能になる。
【0196】
任意選択で、第二試薬混合物は、特にグラフト化に適した安定した条件において、フローセルの表面に第二グラフト化ステップと同様に付着するプライマーを含む。例えば、BCN(ビシクロノニン)結合P5/P7は、水中または低塩バッファー条件下で、PAZAMにグラフトすることができる。この第二グラフト化ステップは、第一ターゲット溶液を流した後で、かつ第二ターゲットレス溶液を流す前に実施され得る。あるいは、グラフト化が第二試薬混合物と適合する(compatible)限り、この第二グラフト化ステップにおけるプライマーは第二試薬混合物中に混合され得る。ターゲットレス溶液中のプライマーは、増幅サイトにおけるプライマーの総数を増加させ、クラスター中のアンプリコンの数を増加させるために追加のアンプリコンが形成され得る新しい場所を提供する。
【0197】
ターゲットレス溶液を形成するために追加のターゲット核酸を使用しないので、試薬成分よりも得るのが比較的困難および/または費用がかかる可能性がある追加の遺伝物質を必要とせずに、クラスター中のアンプリコンの数を増加させることができる。
【0198】
116において、遺伝子ライブラリーのシーケンシングのためにフローセルを用いて次のシ-ケンシングステップを実施する前に、第二ターゲットレス溶液はフローセルから除去される。例えば、ターゲットレス溶液は、フローセルからポンプで汲み出されても、中性溶液を用いてフローセルから洗い流されても、あるいはフローセルから排出されてもよい。
【0199】
任意選択で、溶液もフローセルも能動的に加熱されないように、ターゲット溶液およびターゲットレス溶液はいずれも等温条件で増幅サイト上に流される。さらに、クローンクラスターは、フローセル上のターゲット核酸およびアンプリコンを変性するための化学変性剤を使用せずに形成される。したがって、ブリッジ増幅、RCA技術、およびMDA技術などのいくつかの他の増幅技術とは異なり、方法100は、加熱または化学変性剤を必要とすることなく、フローセル上のクローンクラスター内のヌクレオチド鎖の収率および/または品質を向上させることができる。
【0200】
クローンクラスターを生成するための方法100の別の例では、第二ターゲットレス溶液をフローセルに導入する前に、第一ターゲット溶液はフローセルから除去されない。したがって、方法100は、フローセルからターゲット溶液を除去することを目的とするステップ108をスキップし得る。代わりに、ステップ106においてフローセル上にターゲット溶液を第1期間インキュベートした後、ターゲット溶液がフローセル上にまだ存在している間に、112においてターゲットレス溶液をフローセル上の増幅サイトのアレイ上に流す。例えば、ターゲットレス溶液をフローセルに導入する前に、ターゲット溶液はフローセル上で約20分、約40分、約60分などの間インキュベートされ得る。112においてターゲットレス溶液が増幅サイトのアレイ上を流されると、ターゲットレス溶液はフローセル上でターゲット溶液と混合する。ターゲットレス溶液中の第二試薬混合物はフローセル内の試薬の総濃度を増加させ、それはアンプリコンが産生される増幅速度を増加させ得る。114において、ターゲット溶液が存在する状態で、ターゲットレス溶液がフローセル上で第2期間インキュベートされる。したがって、ターゲット溶液は、106における第1期間と114における第2期間との合計である総時間の間、フローセル上でインキュベートされる。116において、フローセルを用いて次のシーケンシングステップを実施する前に、第一ターゲット溶液および第二ターゲットレス溶液の両方からなる混合溶液は、ポンピング、中性溶液によるフラッシング、排出などによってフローセルから除去される。
【0201】
図12は、一例において、クラスター生成の異なるアプローチについて、フローセル上の遺伝子クラスターのシグナル強度を示す、棒グラフ200である。グラフ200は、アプローチが類似の環境条件下で実行されるときに、シグナル強度が異なるクラスター生成アプローチ間でどのように比較され得るかを示す。グラフ200は、アプローチを相対的な観点で比較しており、実際の試験結果を表していない。y軸202は、蛍光標識ヌクレオチドを有するクラスターが励起されるときの、シーケンシング・バイ・シンサシス中のクラスターの検出シグナル強度を表し、200~550でラベル付けされている。3つの異なるクラスター生成方法が比較され、グラフ200上の対応する棒(bars)によって表される。棒204は、クラスター中のアンプリコンの数を増加させるために、追加の増幅ステップを一切行わなかった速度論的排除増幅(ExAmp)を表す。棒206は、従来のブリッジ増幅が後に続く速度論的排除増幅を表す。棒208は、本明細書に記載の例による速度論的排除増幅を表し、そこでは、第1ラウンドの速度論的排除増幅の後に、ターゲット核酸を欠くターゲットレス溶液を用いた第2ラウンドの速度論的排除増幅が続く。
【0202】
図12に示すように、第2ラウンドの速度論的排除増幅が後に続く速度論的排除増幅(例えば、棒208)が最大の強度を有し、続いてブリッジ増幅(例えば、棒206)と二次増幅なしの排除増幅(例えば、棒204)が続き、二次増幅なしの排除増幅(例えば棒204)が最小の強度を有する。例えば、204の1ラウンドだけの速度論的排除増幅が、約285のシグナル強度を有する遺伝子クラスターを生成する場合、206のブリッジ増幅が後に続く速度論的排除増幅は、約320のシグナル強度を有する遺伝子クラスターを生成し、208の第2ラウンドの速度論的排除増幅が後に続く速度論的排除増幅は、約420のシグナル強度を有する遺伝子クラスターを生成する。より大きいシグナル強度は、第2ラウンドの排除増幅が後に続く排除増幅が他の2つの方法よりも良好なシグナル対ノイズ比を与えることができることを示す。より良いシグナル対ノイズ比は、他の2つの方法と比較して、遺伝子ライブラリーのシーケンシングおよび分析の精度および/または効率を高め得る。
【0203】
図13は、一例において、棒グラフ200と同じクラスター生成方法についてのフィルター通過率(%PF)の値を示す、棒グラフ300である。グラフ300は、これらのアプローチが類似の環境条件下で実行されるときに、異なるクラスター生成手法に起因する%PF値がどのように比較され得るかを示す。グラフ300は、アプローチを相対的な観点で比較しており、実際の試験結果を表していない。y軸302は、指定された純正フィルター条件を上回る、3つの方法のそれぞれによって生成されたクラスターのパーセンテージを表し、それらのクラスターがシーケンシングに使用されるのに十分な品質を有することを示し、60%~78%でラベル付けされている。棒304は、二次増幅ステップなしの速度論的排除増幅を表し、棒306は、ブリッジ増幅が後に続く速度論的排除増幅を表し、棒308は、第2ラウンドの速度論的排除増幅が後に続く速度論的排除増幅を表す。
図13に示すように、304の1ラウンドだけの速度論的排除増幅が、約65%のクラスターがフィルターを通過する遺伝子クラスターを生成するとき、306のブリッジ増幅が後に続く速度論的排除増幅は、約71%のクラスターがフィルターを通過する遺伝子クラスターを生成し、308の第2ラウンドの速度論的排除増幅が後に続く速度論的排除増幅は、約73%のクラスターがフィルターを通過する遺伝子クラスターを生成する。したがって、ターゲットフリーの溶液を用いた第2ラウンドの速度論的排除増幅が後に続く速度論的排除増幅が、同様の環境条件下における他のクラスタリングアプローチと比較して、最高収率の高品質クラスターを提供することができる。
【0204】
図14は、一例による、クローンクラスターを生成するための流体システム400の概略図である。流体システム400は、方法100を実行するために使用され得る。流体システム400は、米国特許第9,410,977号に記載されている流体システムと同様であり得、当該文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。図示の例における流体システム400は、パターン化フローセル402、試薬マニホールド404、試薬トレイまたはカートリッジ406、コントローラ408、およびポンプ410を含む。あるいは、流体システム400は、図示の例と比較して、追加の構成要素、より少ない構成要素、および/または少なくとも1つの異なる構成要素を含み得る。
【0205】
フローセル402は、フローセル402の入口ポート414と出口ポート416との間に延在し、これらと流体接続された複数のレーン412を含む。レーン412は、その表面上にウェルまたは他のフィーチャを含み、増幅サイトを規定することができ、その増幅サイト上にはアンプリコンのクローン集団またはクラスターが生成される。試薬マニホールド404は、フローセル402の入口ポート414と流体連通する(例えば、流体接続さる)バルブ418を含む。バルブ418は、少なくとも1つの混合リサーバ(本明細書ではキャッシュリザーバとも呼ばれる)を含むか、またはそれに接続されてもよく、該少なくとも1つの混合リサーバは
図14に示されていない。試薬マニホールド404はさらに、複数のチャネル420およびポート422を含む。チャネル420は、ポート422とバルブ418(およびバルブ418に伴う任意の混合リザーバ)との間に延在し、それらを流体接続する。他の例では、試薬マニホールド404は複数のバルブ418を有することができる。図示されていないが、試薬マニホールド404は、対応するポート422に配置されるシッパー(sippers)を含み得る。
【0206】
試薬トレイ406は、異なる試薬を含有する複数の試薬リザーバ(図示せず)を含む。シッパーが対応する試薬リザーバに入ってその中の試薬と接触するように、シッパーの位置を試薬リザーバに合わせるために、試薬マニホールド404は試薬トレイ406の上に取り付けられる。シッパーはトレイ406の試薬リザーバから試薬を抽出して、チャネル420およびバルブ418を介して試薬をフローセル402に供給する。
【0207】
コントローラ408は、有形で非一時的なコンピュータ可読記憶媒体またはメモリ(図示せず)に格納された命令に基づいて動作を実行する、1つ以上のプロセッサ(図示せず)または他の論理ベースの装置を含む。コントローラ408は、追加的または代替的に、装置のハードワイヤードロジックに基づいて動作を実行する1つ以上のハードワイヤード装置を含み得る。コントローラ408は、ソフトウェアまたはハードワイヤード命令に基づいて動作するハードウェア、動作を実行するようにハードウェアに指示するソフトウェア、またはそれらの組み合わせを表すことができる。コントローラ408は、(例えば、1つ以上の有線接続または無線接続を介して)ポンプ410およびバルブ418に通信可能に結合されている。例えば、コントローラ408は、有線接続または無線接続を通してそれぞれの装置に制御シグナルを通信することによって、ポンプ410およびバルブ418の動作を制御することができる。コントローラ408は、チャネル420内の流体がバルブ418を通ってフローセル402に流れるのを、どのチャネル420に許可するかを制御することによって、バルブ418を制御することができる。コントローラ408は、流体システム400に沿って流体を進ませるためにポンプ410によって作られた差圧を制御することによって、ポンプ410を制御する。図示の例におけるポンプ410は、フローセル402に動作可能に連結されているが、ポンプ410は試薬マニホールド404に接続されてもよい。
【0208】
一例では、コントローラ408は、ポンプ410およびバルブ418を制御し、入口ポート414を通して、フローセル402上の増幅サイトのアレイ上に第一ターゲット溶液を混合して流す。ターゲット溶液は、ターゲット核酸および第一試薬混合物を含む。ターゲット核酸は、試薬マニホールド404内、例えば、バルブ418に付随する混合リザーバ(図示せず)の1つの中で、第一試薬混合物と組み合わされ得る。例えば、チャネル420の第1チャネル420Aは、水または他の溶媒などのバッファー中にターゲット核酸を含む遺伝子サンプル鋳型を含有し得る。サンプル鋳型は、シッパーによって試薬トレイ406から抽出されてもよく、あるいはトレイ406以外の他の供給源からチャネル420A内に流れ込んでもよい。チャネル420の第2チャネル420Bは、NTP、ポリメラーゼ、一本鎖結合タンパク質、および1つ以上のバッファー(例えば、水、界面活性剤など)などの、第一試薬混合物の1つ以上の試薬成分を含有し得る。第3チャネル420Cおよび第4チャネル420Dは、第3チャネル420C内のリコンビナーゼならびに第4チャネル420D内のマグネシウムおよびクラウディング剤などの、第一試薬混合物の他の試薬成分を含有し得る。特に言及されていないが、全ての試薬成分は、水や他のバッファーのような溶媒中に溶解され得る。試薬成分のいくつかは他の試薬成分と混合されると不安定になり得るので、ターゲット溶液を使用する準備が整うまで試薬成分のいくつかを分離したままにしておくことは、試薬混合物の使用寿命を延ばし得る。
【0209】
一例では、マニホールド404内でターゲット溶液を規定するために、フローセル402の入口ポート414を通してターゲット溶液を流す前に、コントローラ408はポンプ410およびバルブ418を制御して、ある指定量のサンプル鋳型を異なるチャネル420A~D内の試薬成分と混合する。例えば、ターゲット溶液の成分は、混合リザーバのうちの1つの中で混合され得る。あるいは、ターゲット溶液の成分は、該成分がバルブ418を入口ポート414に接続する入口導管(例えば、チューブ、パイプ、またはチャネル)424内またはフローセル402内で混合することが許されるまで、分離され得る。
【0210】
上記のように、ターゲット溶液はフローセル402上で反応して、増幅サイトにおいて対応するターゲット核酸に由来するアンプリコンのクローン集団を生成する。排除増幅プロセスの間、すでに増幅サイトに結合しているターゲット核酸の増幅と同時に、ターゲット核酸が増幅サイトに輸送され、アンプリコンが産生される。コントローラ408はポンプ410および/またはバルブ418を操作して、増幅速度が輸送速度を超えるようにターゲット溶液中のターゲット核酸の濃度および第一試薬混合物の濃度を制御することができる。例えば、速度論的排除のために、増幅速度を輸送速度よりも著しく高い速度に維持するために、コントローラ408は、サンプル鋳型の濃度を低下させることができ、かつ/または第一試薬混合物の1つ以上の成分の濃度を上昇させることができる。
【0211】
コントローラ408はまた、フローセル402内の温度、圧力、湿度など、フローセル402上におけるターゲット溶液のインキュベーション条件を制御するように構成され得る。指定された量のインキュベーション時間の後、コントローラ408はポンプ410を制御して、フローセル402からターゲット溶液を除去することができる。ターゲット溶液は、出口ポート416を通って、廃棄物リザーバ426に流れ込むことができる。任意選択で、導管428を通してターゲット溶液の一部を試薬マニホールド404および/またはトレイ406に再循環させて、リフレッシュポンピング(refresh pumping)などのために使用することができる。ターゲット溶液の除去後に、自由に浮遊する(free-floating)ターゲット核酸がフローセル402内に存在しないように、ターゲット溶液はフローセル402から除去される。例えば、ターゲット溶液の除去後に増幅サイトに存在する全てのターゲット核酸は、クローンクラスター内のプライマーに結合する。
【0212】
一例では、フローセル402を通してターゲット溶液を流した後、コントローラ408はポンプ410および/またはバルブ418を制御して、入口ポート414を通してフローセル402上の増幅サイトのアレイ上にターゲットレス溶液を混合して流す。ターゲットレス溶液は、第二試薬混合物を含み、追加のターゲット核酸を欠く(例えば、含まない)。例えば、コントローラ408は、マニホールド404上の混合リザーバ(図示せず)内の第2、第3、および第4チャネル420B~D内の試薬成分の混合を制御して、ターゲットレス溶液を規定することができる。得られたターゲットレス溶液が追加のターゲット核酸を含まないように、コントローラ408はバルブ418を制御して、第1チャネル420A内のサンプル鋳型が混合リザーバに添加されるのを防ぐ。一例では、第一試薬混合物をサンプル鋳型と混合してターゲット溶液を規定するために使用される混合リザーバとは異なる混合リザーバ内で、第二試薬混合物は混合される。別の例では、第二試薬混合物は、(微量のターゲット核酸を含む)残留量のターゲット溶液がターゲットレス溶液内に存在し得るように、以前にターゲット溶液を含有していたのと同じ混合リザーバ内で混合される。したがって、第二ターゲットレス溶液は、ターゲット核酸を含まないか、またはフローセル402の増幅サイトにおいてさらなるシーディングを引き起こさない微量のターゲット核酸を含む。
【0213】
第二試薬混合物は、試薬成分の種類、量、および/または濃度において第一試薬混合物と異なり得る。例えば、第一試薬混合物および第二試薬混合物はいずれも、水、界面活性剤、または水-界面活性剤溶液などのバッファー成分を含み得る。ターゲットレス溶液はサンプル鋳型を欠くので、コントローラ408は、第一試薬混合物内の同じバッファー成分の量と比較して、ターゲットレス溶液内により多量のバッファー成分を任意に含み得る。追加量のバッファーは、サンプル鋳型の欠如によって引き起こされる減少した量を補う。バッファーの体積が増加した結果として、ターゲットレス溶液の体積は、ターゲット溶液の体積と類似または同一であり得る。さらに、バッファーの量を制御することはまた、第二試薬混合物中の試薬成分の濃度に影響を及ぼし、その結果、濃度はターゲット溶液内の試薬成分の濃度と類似または同一になるように制御され得る。任意選択で、コントローラ408は、例えば増幅速度を変更するために、第一試薬混合物に対する第二試薬混合物の試薬成分の種類(例えば、異なる酵素、タンパク質、オリゴなど)、量、および/または濃度のうちの少なくともいくつかを変更し得る。
【0214】
コントローラ408は、ポンプ410および/またはバルブ418を制御して、ターゲットレス溶液をフローセル402に流す。ターゲットレス溶液はフローセル402上でインキュベートされ、そこで該溶液はフローセル402内の増幅サイトでアンプリコンと反応して、クローンクラスター内に追加アンプリコンを生成する。上述のように、ターゲットレス溶液を使用する第2ラウンドの排除増幅は、ターゲットレス溶液をフローセル402を通して流さない場合と比較して、より高い収率の合格品質のクラスターをもたらす。シーケンシング・バイ・シンサシス中に蛍光シグナルを生成する追加のヌクレオチド鎖がクラスター中に存在するので、高品質クラスターの収率の増加は、シーケンシングの精度および/または効率を増加させ得る。第2ラウンドの排除増幅はまた、ターゲット核酸を含む追加量のサンプル鋳型を使用することなく達成される。
【0215】
追記
本出願を通して、様々な刊行物、特許および特許出願が参照されてきた。本発明の主題が属する最新技術をより完全に説明するために、これらの刊行物の全体の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0216】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「含有する(contain)」など、およびその変形は、列挙された要素を含むだけでなく、さらに任意の追加要素を含むオープン・エンドであることが意図される。本明細書を通して「一例(one example)」、「別の例(another example)」、「一例(an example)」などへの言及は、その例に関連して記載された特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特質)が本明細書に記載の少なくとも1つの例に含まれ、他の例には存在しても存在しなくてもよいことを意味する。さらに、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、任意の例について記載された要素は、様々な例において、任意の適切な方法で組み合わされ得ることを理解されたい。
【0217】
前述の概念および以下でさらに詳細に説明される追加の概念のすべての組み合わせ(そのような概念が互いに矛盾しない限り)が、本明細書に開示される発明の主題の一部であると考えられることを理解されたい。特に、本開示の終わりに現れる特許請求された主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示された発明の主題の一部であると考えられる。また、参照により援用される任意の開示にも現れる可能性がある本明細書で明示的に使用される用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も矛盾しない意味を与えられるべきであることも理解されたい。
【0218】
本明細書で提供される範囲は、記載の範囲、および記載の範囲内の任意の値または部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約20℃から約50℃の間の範囲は、明示的に列挙された約20℃から約50℃の間の範囲だけではなく、約28℃、約35℃、約46.5℃などの個々の値、および約25℃~約49℃、約30℃~約40℃などの部分範囲も含むと解釈されるべきである。さらに、「約(about)」および/または「実質的に(substantially)」が値を記載するために利用されるとき、それらは記載された値からのわずかな変動(最大±10%まで)を包含することを意味する。
【0219】
いくつかの実施例が詳細に説明されてきたが、開示された実施例は修正され得ることが理解されるべきである。したがって、前述の説明は非限定的であると見なされるべきである。本発明の主題を上記の実施例を参照して説明したが、本発明の主題の範囲から逸脱することなく、実施例に様々な修正を加えることができることを理解されたい。したがって、本発明の主題の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。