(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】緩衝シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/05 20060101AFI20220210BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220210BHJP
B29C 48/12 20190101ALI20220210BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20220210BHJP
【FI】
B65D81/05
H01M50/20
B29C48/12
B29C48/00
(21)【出願番号】P 2020112903
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2021-11-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】牧野 啓二
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄治
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126430(JP,A)
【文献】特開2017-183071(JP,A)
【文献】特開2015-69768(JP,A)
【文献】特開2016-192520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/05
B65D 57/00
H01M 50/20-50/298
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料により形成され、対向する第一部材と第二部材との間に挟まれる緩衝シートであって、
前記緩衝シートの面方向における所定の基準方向に延在し、前記基準方向に直交する断面において背向する幅広面および幅狭面を有する先細形状に形成され、前記幅広面の少なくとも一部が前記第一部材に接触した状態で且つ前記幅狭面が前記第二部材に接触した状態で配置される複数の主支持部と、
隣接する前記主支持部において前記先細形状の傾斜側面における前記幅広面側同士を連結し、前記第一部材に接触した状態で且つ前記第二部材から距離を有した状態で配置される帯状の連結部と、
を備え、
前記主支持部の前記幅広面における前記先細形状の幅方向の中央部には、前記基準方向に延在し、前記第一部材の側に開口する主凹部が形成され、
前記主支持部と前記連結部との境界部分には、前記基準方向に延在し、前記第一部材および前記第二部材の少なくとも一方の側に開口し、前記主凹部よりも開口幅が小さい副凹部が形成される、緩衝シート。
【請求項2】
前記副凹部は、前記主凹部よりも開口からの深さが浅い、請求項1に記載の緩衝シート。
【請求項3】
前記第一部材と前記第二部材との離間距離が短くなった場合に、
前記主支持部は、圧縮変形すると共に、前記幅広面の幅が幅方向に拡大するように変形をし、
前記連結部は、前記主支持部の変形に伴って、前記副凹部を起点として帯幅方向の断面が前記第二部材側に凸状に湾曲変形する、請求項1または2に記載の緩衝シート。
【請求項4】
前記副凹部は、前記第一部材の側に開口し、
前記連結部は、前記副凹部の開口幅が変化する変形を起点として前記凸状に湾曲変形する、請求項3に記載の緩衝シート。
【請求項5】
前記副凹部は、前記第二部材の側に開口し、
前記連結部は、前記副凹部の開口幅が変化する変形を起点として前記凸状に湾曲変形する、請求項3に記載の緩衝シート。
【請求項6】
前記連結部は、前記凸状に湾曲変形した状態において前記第二部材を押圧する、請求項3-5の何れか1項に記載の緩衝シート。
【請求項7】
前記連結部は、前記第二部材側の面に、前記主支持部の突出高さより小さな小突起を備え、
前記連結部が前記凸状に湾曲変形した状態において、前記小突起が前記第二部材を押圧する、請求項6に記載の緩衝シート。
【請求項8】
前記連結部の前記第二部材側の面は、非変形状態において平面状に形成され、
前記連結部は、前記凸状に湾曲変形した状態において、前記第二部材側の面が前記第二部材を押圧する、請求項6に記載の緩衝シート。
【請求項9】
前記緩衝シートは、さらに、
複数の前記主支持部の両外側に位置し、前記連結部を介して両端の前記主支持部に連結され、前記基準方向に延在し、前記基準方向に直交する断面において背向する幅広面および幅狭面を有する先細形状に形成され、前記幅広面の少なくとも一部が前記第一部材に接触した状態で且つ前記幅狭面が前記第二部材に接触した状態で配置され、前記主支持部の突出高さの高い外支持部を備える、請求項1-8の何れか1項に記載の緩衝シート。
【請求項10】
前記緩衝シートは、さらに、
複数の前記主支持部の両外側に位置し、前記連結部を介して両端の前記主支持部に連結され、前記基準方向に延在し、前記基準方向に直交する断面において背向する幅広面および幅狭面を有する先細形状に形成され、前記幅広面の全面が前記第一部材に接触した状態で且つ前記幅狭面の全面が前記第二部材に接触した状態で配置される外支持部を備える、請求項1-8の何れか1項に記載の緩衝シート。
【請求項11】
それぞれの前記主支持部は、前記基準方向に延在する1本の長尺体により形成される、請求項1-10の何れか1項に記載の緩衝シート。
【請求項12】
それぞれの前記主支持部は、前記基準方向において所定の間隔をおいて複数の長尺体により形成される、請求項1-10の何れか1項に記載の緩衝シート。
【請求項13】
前記緩衝シートは、複数の電池セルの積層体と前記積層体の積層方向の両端から前記積層体を拘束する拘束部材とを備える電池モジュールに適用され、
前記第一部材および前記第二部材は、対向する前記電池セルおよび前記拘束部材、または、対向する2つの前記電池セルである、請求項1-12の何れか1項に記載の緩衝シート。
【請求項14】
複数の前記電池セルの満充電時には、前記基準方向に直交する断面において、前記主凹部の面積よりも、湾曲変形した前記連結部と前記第一部材とにより形成される空間面積の方が大きい、請求項3-8の何れか1項を引用する請求項13に記載の緩衝シート。
【請求項15】
請求項1-14の何れか1項に記載の緩衝シートの製造方法であって、
樹脂またはエラストマーを母材とする弾性材料を用いて、押出機により押出方向を前記基準方向に一致させて、押出方向に直交する断面形状をC字状またはU字状に押出成形し、
前記主凹部および前記副凹部を起点として、押出成形された前記C字状または前記U字状のスリットが両端となるように広げる、緩衝シートの製造方法。
【請求項16】
前記主凹部が径方向外側に位置するように前記C字状または前記U字状に押出成形する、請求項15に記載の緩衝シートの製造方法。
【請求項17】
前記副凹部は、前記第二部材の側に開口し、
前記主凹部が径方向外側に、且つ、前記副凹部が径方向内側に位置するように前記C字状または前記U字状に押出成形する、請求項16に記載の緩衝シートの製造方法。
【請求項18】
前記副凹部は、前記第一部材の側に開口し、
前記主凹部を径方向内側に、且つ、前記副凹部が径方向内側に位置するように前記C字状または前記U字状に押出成形する、請求項15に記載の緩衝シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1-3には、複数の電池セルを積層した電池モジュールにおいて、電池セルの間に電池セルの変形を吸収する緩衝シートを配置することが記載されている。特許文献3に記載の緩衝シート(スペーサと称する)は、電池セルに接触する凸状部を備えており、凸状部の裏面側には凹部(スペース部、空間部と称する)が形成されている。凸状部が裏面側に凹部を有することにより、電池セルが膨張変形した場合に、凸状部が厚み方向に弾性変形可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-59380号公報
【文献】特開2018-81790号公報
【文献】特開2019-128991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池セルの膨張変形に伴って、緩衝シートを挟む2つの電池セルの離間距離が短くなる場合には、緩衝シートの凸状部の圧縮変形量が大きくなる。凸状部の圧縮変形に伴って、凸状部の裏面側の凹部の体積が小さくなる。このように、凹部の体積分の弾性変形を吸収することができる。しかし、凹部が充填された状態になると、凸状部による支持力は急激に大きくなる。
【0005】
そこで、緩衝シートの厚み方向の変形量をさらに大きくするためには、凸状部の裏面側の凹部を大きくすることにより達成できる。しかし、凸状部の剛性(凸状部による支持力)を確保するためには、凹部を大きくすることは容易ではない。
【0006】
本発明は、緩衝シートによる支持力を十分に有しつつ、緩衝シートの厚み方向の変形量を大きくすることができる緩衝シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1.緩衝シート)
緩衝シートは、弾性材料により形成され、対向する第一部材と第二部材との間に挟まれる。緩衝シートは、前記緩衝シートの面方向における所定の基準方向に延在し、前記基準方向に直交する断面において背向する幅広面および幅狭面を有する先細形状に形成され、前記幅広面の少なくとも一部が前記第一部材に接触した状態で且つ前記幅狭面が前記第二部材に接触した状態で配置される複数の主支持部と、隣接する前記主支持部において前記先細形状の傾斜側面における前記幅広面側同士を連結し、前記第一部材に接触した状態で且つ前記第二部材から距離を有した状態で配置される帯状の連結部とを備える。
【0008】
そして、前記主支持部の前記幅広面における前記先細形状の幅方向の中央部には、前記基準方向に延在し、前記第一部材の側に開口する主凹部が形成される。また、前記主支持部と前記連結部との境界部分には、前記基準方向に延在し、前記第一部材および前記第二部材の少なくとも一方の側に開口し、前記主凹部よりも開口幅が小さい副凹部が形成される。
【0009】
主支持部の幅広面側に、主凹部が形成されている。従って、第一部材と第二部材との離間距離が短くなった場合には、主凹部の体積を小さくするように、主支持部が高さ方向に変形する。このように、主凹部が、主支持部の変形を吸収する領域として機能する。
【0010】
また、副凹部が、主支持部と連結部との境界部分に形成されている。従って、第一部材と第二部材との離間距離が短くなった場合には、主凹部に加えて副凹部が、主支持部の変形を吸収する領域として機能する。
【0011】
さらに、主支持部の幅広面側に主凹部が形成されていることによって、第一部材と第二部材との離間距離が短くなった場合に、主支持部は、幅広面の幅が拡大するように変形しようとする。その結果、連結部は、隣接する主支持部から連結部の帯幅方向に圧縮荷重を受けることになる。このとき、連結部は、副凹部を起点として帯幅方向に座屈しやすくなる。つまり、連結部は、主支持部の幅広面の拡大に伴って、副凹部を起点として第二部材側に凸状に湾曲変形する状態となる。連結部の湾曲変形によって、主支持部は、面方向にさらに変形可能となり、主支持部の高さ方向の変形量を大きくすることができる。
【0012】
このように、主凹部および副凹部が形成されることによって、主凹部、副凹部、主支持部の傾斜側面の隣接空間が、主支持部の変形を吸収する領域として機能する。その結果、主支持部の高さ方向の変形量を大きくすることができる。また、主凹部のみが主支持部の変形を吸収する領域として機能する構造ではないため、主支持部の幅方向両側の傾斜脚部の剛性を確保することができ、結果として主支持部による支持力を十分に確保することができる。
【0013】
(2.緩衝シートの製造方法)
上述した緩衝シートの製造方法は、樹脂またはエラストマーを母材とする弾性材料を用いて、押出機により押出方向を前記基準方向に一致させて、押出方向に直交する断面形状をC字状またはU字状に押出成形し、前記主凹部および前記副凹部を起点として、押出成形された前記C字状または前記U字状のスリットが両端となるように広げる。
【0014】
仮に、押出機により平板状の緩衝シートを押出成形する場合には、押出機の金型の最大幅は、緩衝シートの幅以上とする必要がある。従って、緩衝シートの幅が大きくなると、押出機の金型が大型化する。しかし、上記のように、押出機により押出方向に直交する断面形状をC字状またはU字状に押出成形し、その後にC字状またはU字状のスリットが両端となるように広げることにより、緩衝シートを製造している。従って、押出機の金型は、緩衝シートの幅に比べて小さくすることが可能となる。
【0015】
また、押出成形されたC字状またはU字状の断面形状を有する予備成形品を広げる際に、主凹部および副凹部を起点としている。従って、押出機によりC字状またはU字状に押出成形した後に広げたとしても、緩衝シートを所望の形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】緩衝シートを適用した電池モジュールを示す図であって、電池セルが膨張していない状態を示す。
【
図2】
図1に示す電池モジュールにおいて、電池セルが満充電に伴う最大膨張状態を示す。
【
図4】第一例の緩衝シートの拡大正面図であって、基準状態(非変形時の状態)を示す。
【
図5】第一例の緩衝シートの拡大正面図であって、変形時の状態を示す。
【
図6】第二例の緩衝シートの拡大正面図であって、基準状態(非変形時の状態)を示す。
【
図7】第二例の緩衝シートの拡大正面図であって、変形時の状態を示す。
【
図8】第三例の緩衝シートの拡大正面図であって、基準状態(非変形時の状態)を示す。
【
図9】第四例の緩衝シートの拡大正面図であって、基準状態(非変形時の状態)を示す。
【
図10】第五例の緩衝シートの拡大正面図であって、基準状態(非変形時の状態)を示す。
【
図13】緩衝シートの製造方法を示すフローチャートである。
【
図14】押出成形後の緩衝シートを示す斜視図である。
【
図15】押出成形後の緩衝シートの拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1.緩衝シートの適用対象)
緩衝シートは、対向する第一部材と第二部材との間に挟まれており、第一部材と第二部材とが接近した場合に第一部材および第二部材にかかる荷重を緩和する機能を有する。特に、緩衝シートは、第一部材と第二部材とに接触した状態を基準状態とし、当該基準状態から第一部材と第二部材とが接近した場合に緩衝機能を発揮する。第一部材および第二部材は、受ける荷重を緩和する対象であれば良く、任意の部材とすることができる。例えば、第一部材および第二部材は、金属や樹脂等により形成された筐体とすることができる。
【0018】
(2.緩衝シートの適用対象の例)
緩衝シートの適用対象の例として、電池モジュール1をあげる。電池モジュール1について、
図1および
図2を参照して説明する。電池モジュール1は、自動車や家庭用におけるリチウムイオン二次電池等の蓄電池、燃料電池システムのセルスタックを例にあげることができる。
【0019】
電池モジュール1は、複数の電池セル11を積層された積層体12と、拘束部材13と、第一緩衝シート14と、第二緩衝シート15とを備える。ただし、電池モジュール1は、第一緩衝シート14と第二緩衝シート15の両者を備える構成を例にあげるが、第一緩衝シート14と第二緩衝シート15の何れか一方のみを備える構成としても良い。
【0020】
積層体12を構成する各電池セル11は、例えば、直方体形状の扁平状に形成されている。積層体12は、扁平状の電池セル11を、扁平面方向に直交する方向(扁平法線方向)に積層されている。
【0021】
電池セル11は、直方体形状の扁平箱形状に形成された筐体11aと、筐体11aの内部に巻回された電極体11bとを備える。筐体11aは、例えばアルミニウム等の金属、または、硬質樹脂等により形成されている。以下において、筐体11aにおいて、扁平面方向に直交する面を対象面11a1と称する。電極体11bは、正極電極と、負極電極と、正極電極と負極電極との間に挟まれたセパレータとを備え、扁平状に巻回されている。
【0022】
図2に示すように、電極体11bは、充電に伴って発熱することによって、主として扁平法線方向に膨張する。電極体11bは、放電に伴って膨張量が減少する。従って、電極体11bを収容する電池セル11の筐体11aは、充電時には、扁平法線方向に膨張する。特に、筐体11aが直方体形状の扁平箱形状に形成されているため、対象面11a1が湾曲凸状に膨張変形しやすい。電池セル11の満充電時には、筐体11aの対象面11a1の膨張量が最大となる。電池セル11の放電時には、電極体11bの膨張量が減少すること伴って、筐体11aの対象面11a1は、理想的には、平面状に復帰する。ただし、電極体11bの劣化によって、徐々に元の形状にまで戻らなくなり、電池性能が低下していく。
【0023】
拘束部材13は、積層体12を、積層体12の積層方向の両端から拘束する。つまり、拘束部材13は、各電池セル11が充電によって膨張した場合に各電池セル11に対して反力を付与することにより、電池セル11を基準状態(膨張していない状態)に戻すように作用する。
【0024】
拘束部材13は、例えば、第一拘束部材13a、第二拘束部材13b、および、連結部材13cを備える。第一拘束部材13aは、L字状に形成されており、積層体12を載置する台座部分と、積層体12の積層方向の第一端(
図1の右側)を支持する部分(端部拘束部分)とに配置される。詳細には、第一拘束部材13aの端部拘束部分は、積層体12の積層方向の第一端に位置する電池セル11の対象面11a1に対向するように配置される。さらに、第一拘束部材13aの端部拘束部分において、電池セル11に対向する面は、平面状に形成されている。
【0025】
第二拘束部材13bは、平板状に形成されており、積層体12の積層方向において第一端の反対である第二端側(
図1の左側)に配置される。詳細には、第二拘束部材13bは、積層体12の積層方向の第二端に位置する電池セル11の対象面11a1に対向するように配置される。さらに、第二拘束部材13bにおいて、電池セル11に対向する面は、平面状に形成されている。
【0026】
従って、積層体12は、第一拘束部材13aの端部拘束部分と第二拘束部材13bとによって、積層方向に挟まれる状態となる。連結部材13cは、第一拘束部材13aの端部拘束部分と第二拘束部材13bとを連結する。拘束部材13を構成する各部材13a,13b,13cは、十分な拘束力を発揮するために、金属が好適に用いられるが、硬質樹脂を適用することも可能である。
【0027】
第一緩衝シート14は、積層体12の積層方向の第二端に位置する電池セル11の対象面11a1と、第二拘束部材13bとの間に挟まれている。つまり、第一緩衝シート14は、第一部材および第二部材のうちの一方の部材としての電池セル11と、第一部材および第二部材のうちの他方の部材としての第二拘束部材13bとの間に挟まれている。
【0028】
第一緩衝シート14は、弾性材料により形成されることにより、電池セル11の膨張量の増減に伴う変形を吸収する。そして、第一緩衝シート14は、
図1に示すように、電池セル11が膨張していない基準状態において、電池セル11の対象面11a1と第二拘束部材13bとに接触することにより電池セル11を弾性支持する。さらに、第一緩衝シート14は、
図2に示すように、電池セル11の充電に伴う膨張時において、電池セル11を弾性支持すると共に、電池セル11の放電に伴う膨張量減少時に電池セル11に対して押圧力を付与する。
【0029】
第二緩衝シート15は、積層方向に隣接する電池セル11,11の対象面11a1,11a1の間に挟まれている。つまり、第二緩衝シート15は、第一部材としての隣接する一方の電池セル11と第二部材としての隣接する他方の電池セル11との間に挟まれている。
【0030】
第二緩衝シート15は、第一緩衝シート14と同様に、弾性材料により形成されており、電池セル11の膨張量の増減に伴う変形を吸収する。そして、第二緩衝シート15は、
図1に示すように、電池セル11が膨張していない基準状態において、対向する電池セル11,11の対象面11a1,11a1に接触することにより電池セル11を弾性支持する。さらに、第二緩衝シート15は、
図2に示すように、電池セル11の充電に伴う膨張時において、電池セル11を弾性支持すると共に、電池セル11の放電に伴う膨張量減少時に電池セル11に対して押圧力を付与する。
【0031】
そして、積層体12を構成する電池セル11の数が多いほど、電池セル11の膨張量の増減に伴う積層体12の全長の変化は大きくなる。従って、積層体12の全長の変化を確実に吸収するために、第一緩衝シート14および第二緩衝シート15が上記機能を好適に発揮する。
【0032】
本例においては、第一緩衝シート14と第二緩衝シート15とは、同一構成を有する。ただし、第一緩衝シート14と第二緩衝シート15とは、異なる構成を有するようにしても良い。
【0033】
第一緩衝シート14および第二緩衝シート15は、対向する第一部材および第二部材に常時接触して弾性支持する複数の主支持部21と、隣接する主支持部を連結する連結部22とを備える。
図1および
図2に示すように、電池セル11の膨張に伴って、主支持部21は、主として圧縮変形する。そして、連結部22は、主支持部21の圧縮変形に伴って湾曲変形する。
【0034】
(3.緩衝シートの例)
緩衝シート14,15の具体例について説明する。以下には、第一例乃至第七例の緩衝シート30,40,50,60,70,80,90について説明する。
【0035】
(3-1.第一例の緩衝シート30)
(3-1-1.緩衝シート30の構成)
第一例の緩衝シート30の構成について
図3および
図4を参照して説明する。
図3に示すように、緩衝シート30は、X-Y平面に平行な面方向に延在する形状(面状)に形成されている。緩衝シート30は、弾性材料により形成されている。例えば、緩衝シート30は、樹脂またはエラストマーを母材する弾性材料により形成されている。緩衝シート30には、例えば、EPDM等の低温環境下に優れたエラストマーが好適に用いられる。
【0036】
緩衝シート30は、全てを同種の弾性材料により形成しても良いし、複数種の弾性材料により形成しても良い。後者の場合には、例えば、緩衝シート30の面状の厚み方向(Z方向)において、表面層、裏面層、中間層が、それぞれ異なる弾性材料を適用しても良いし、表面層と裏面層とが同種材料で、中間層が他と異なる材料としても良い。
【0037】
緩衝シート30は、複数の主支持部31(
図1および
図2の主支持部21に相当)と、複数の連結部32(
図1および
図2の連結部22に相当)とを備える。
【0038】
主支持部31は、緩衝シート30のX-Y平面の面方向における所定の基準方向(Y方向)に延在する。つまり、それぞれの主支持部31は、Y方向に延在する長尺体により形成される。特に、本例では、
図3に示すように、それぞれの主支持部31は、緩衝シート30の基準方向(Y方向)の全長に亘って延在する1本の長尺体により形成される。さらに、複数の主支持部31は、X方向に等間隔に離間して並列されている。
【0039】
主支持部31は、
図4に示すように、基準方向(Y方向)に直交する断面(X-Z平面に平行な断面)において、先細形状に形成されている。先細形状には、台形、先端が湾曲凸状の山形等が含まれる。本例では、主支持部31は、等脚台形に形成されているが、不等脚台形でも良い。
【0040】
主支持部31は、背向する幅広面31aおよび幅狭面31bを有する先細形状に形成されている。先細形状の基端面が、幅広面31aとなり、先端面が幅狭面31bとなる。本例では、幅広面31aおよび幅狭面31bは、X-Y平面に平行な面である。つまり、幅広面31aおよび幅狭面31bは、緩衝シート30の面方向に平行な面である。
【0041】
なお、幅狭面31は、基準方向(Y方向)に直交する断面(X-Z平面に平行な断面)が、Z方向に凸となる湾曲面であっても良い。本構成も、幅広面31aおよび幅狭面31bは、緩衝シート30の面方向に平行な面である構成に含まれる。
【0042】
さらに、主支持部31の幅広面31aにおける幅方向(X方向)の中央部には、基準方向(Y方向)に延在する主凹部31cが形成されている。主凹部31cは、主支持部31の全長に亘って形成されている。主凹部31cの幅は、開口部が最も大きく、底部ほど小さくなる。つまり、主凹部31cは、深さ方向に徐々に幅が狭くなっている。
【0043】
図4に示すように、主支持部31の幅広面31aの少なくとも一部が、第一部材A(
図1において電池セル11または第二拘束部材13b)に接触している。本例では、幅広面31aには、主凹部31cが形成されている。そして、主凹部31cは、第一部材A側に開口する。従って、主支持部31の幅広面31aのうち、主凹部31cが開口する部分を除く部分が、第一部材Aに接触する。
【0044】
また、主支持部31の幅狭面31bが第二部材Bに接触している。ここで、幅狭面31bには、凹部は形成されていない。従って、幅狭面31bの幅方向全面が、第二部材Bに接触する。
【0045】
このように、第一部材Aおよび第二部材Bが基準状態(最も離れた状態)である場合において、主支持部31は、幅広面31aが第一部材Aに接触した状態で且つ幅狭面31bが第二部材Bに接触した状態で配置されている。
図1に示すように、緩衝シート30の適用対象が電池モジュール1である場合には、電池セル11が膨張していない基準状態において、幅広面31aが電池セル11と第二拘束部材13bとの一方の部材に接触し、幅狭面31bが他方の部材に接触する。
【0046】
連結部32は、帯状に形成されており、隣接する主支持部31,31を連結する。連結部32の帯幅方向の両端が、隣接する主支持部31,31に接続される。連結部32は、X-Y平面に平行な扁平状に形成されている。つまり、連結部32は、非変形状態において、扁平な両面共に平面状に形成されている。連結部32の帯幅は、例えば、主支持部31の幅広面31aの幅と同程度に形成されている。
【0047】
連結部32の厚み(Z方向厚み)は、主支持部31の高さ(Z方向高さ)に比べて十分に小さい。そして、連結部32は、隣接する主支持部31,31において、先細形状の傾斜側面(例えば、台形脚面)における幅広面31a側同士を連結する。より詳細には、連結部32の一方面(第一部材A側の面)は、主支持部31の幅広面31aと同一面上に位置する。一方、連結部32の他方面(第二部材B側の面)は、主支持部31の幅狭面31bよりも第一部材A側に位置する。つまり、主支持部31と連結部32とは、主支持部31が連結部32から第二部材B側に突出しているような位置関係となる。
【0048】
つまり、第一部材Aおよび第二部材が基準状態(最も離れた状態)である場合において、連結部32は、一方面が第一部材Aに接触した状態で且つ他方面が第二部材Bから距離を有した状態で配置されている。
【0049】
ここで、連結部32は、変形を許容する形状に形成されている。連結部32は、帯幅方向の両端の距離が短くなるように変形することができる。例えば、連結部32は、帯幅方向に座屈して湾曲変形する。
【0050】
主支持部31と連結部32との境界部分には、副凹部33,34が形成されている。本例では、副凹部33,34は、連結部32の第二部材B側の面と主支持部31の傾斜側面との境界部分に形成されている。つまり、副凹部33,34は、第二部材B側に開口する。副凹部33,34は、基準方向(Y方向)に延在する。本例では、副凹部33,34は、主支持部31の全長に亘って形成されている。また、副凹部33,34の開口幅は、主凹部31cの開口幅よりも小さい。さらに、副凹部33,34の開口からの深さは、主凹部31cの開口からの深さよりも浅い。
【0051】
(3-1-2.緩衝シート30の作用)
次に、第一例の緩衝シート30の作用について
図4および
図5を参照して説明する。第一部材Aと第二部材Bとの離間距離が短くなった場合には、緩衝シート30は、
図5に示すように変形する。ここで、
図5には、第一部材Aと第二部材Bとは、平行を保ったまま離間距離が短くなる場合を図示する。ただし、第一部材Aと第二部材Bとの離間距離は、当該場合に限られるものではない。
【0052】
第一部材Aと第二部材Bとの離間距離が短くなった場合には、主支持部31が、圧縮変形する。特に、主支持部31は、第一部材A側に開口する主凹部31cを有するため、主支持部31の幅方向両側の傾斜脚部が、圧縮変形する。つまり、主凹部31cの体積を小さくするように、主支持部31が高さ方向(Z方向)に変形する。このように、主凹部31cが、主支持部31の変形を吸収する領域として機能する。
【0053】
また、副凹部33,34が、主支持部31と連結部32との境界部分に形成されている。従って、第一部材Aと第二部材Bとの離間距離が短くなった場合には、主凹部31cに加えて副凹部33,34が、主支持部31の変形を吸収する領域として機能する。
【0054】
また、主支持部31は、断面が先細形状(例えば、台形)で、且つ、幅広面31a側に主凹部31cが形成されている。さらに、連結部32は、帯幅方向に座屈することが許容されている。そのため、第一部材Aと第二部材Bとの離間距離が短くなった場合に、主支持部31は、幅広面31aの幅(X方向幅)が幅方向に拡大するように変形する。つまり、主支持部31は、X-Z平面に平行な断面において、高さが低くなり、且つ、幅広面31aの幅が拡大するように変形する。従って、主支持部31の傾斜側面(例えば、台形脚面)の隣接空間が、主支持部31の変形を吸収する境域として機能する。
【0055】
以上のように、主凹部31c、副凹部33,34、および、主支持部31の傾斜側面(例えば、台形脚面)の隣接空間が、主支持部31の変形を吸収する領域として機能する。その結果、主支持部31の高さ方向の変形量を大きくすることができる。つまり、第一部材Aと第二部材Bとの離間距離を短くすることが可能となる。ここで、主凹部31cのみが主支持部31の変形を吸収する領域として機能する場合に比べて、主凹部31cを大きくしすぎる状態とはならない。つまり、主凹部31cのみが主支持部31の変形を吸収する領域として機能する構造ではないため、主支持部31の幅方向両側の傾斜脚部の剛性を確保することができ、結果として主支持部31による支持力を十分に確保することができる。
【0056】
上述したように、主支持部31の幅広面31a側に主凹部31cが形成されることによって、第一部材Aと第二部材Bとの離間距離が短くなった場合に、主支持部31は、幅広面31aの幅が拡大するように変形しようとする。その結果、連結部32は、隣接する主支持部31から連結部32の帯幅方向(X方向)に圧縮荷重を受けることになる。
【0057】
このとき、連結部32は、副凹部33,34を起点として帯幅方向に座屈しやすくなる。つまり、連結部32は、
図5に示すように、主支持部の31の幅広面31aの拡大に伴って、副凹部33,34を起点として第二部材B側に凸状に湾曲変形する状態となる。より詳細には、連結部32は、副凹部33,34の開口幅が変化する変形を起点として、第二部材B側に凸状に湾曲変形する。
【0058】
さらに詳細には、連結部32は、主支持部31の変形に伴って、副凹部33,34を起点として帯幅方向(X方向)の断面が第二部材B側に凸状に湾曲変形する。つまり、副凹部33,34は、連結部32が座屈する側に形成されているため、副凹部33,34が連結部32の変形の起点として効果的に発揮する。そして、連結部32の湾曲変形によって、主支持部31は、面方向(X方向)にさらに変形可能となり、主支持部31の高さ方向の変形量を大きくすることができる。
【0059】
連結部32の第一部材A側の面は湾曲凹状に変形し、第一部材Aとにより空間が形成される。一方、連結部32の第二部材B側の面は湾曲凸状に変形し、第二部材Bに接近する。連結部32が凸状に湾曲変形した状態において、連結部32の第二部材B側の面を、第二部材Bに接触させるようにしても良いし、第二部材Bに接触させないようにしても良い。連結部32を第二部材Bに接触させる場合には、連結部32が第二部材Bを押圧する。つまり、連結部32が支持力を発揮することになる。このように、連結部32による支持力を利用することで、緩衝シート30の支持力特性を自由に設計することができる。
【0060】
ここで、例えば、
図1に示す電池モジュール1において、緩衝シート30は、電池セル11の満充電時の最大膨張量に基づいて設計することができる。電池セル11の満充電時に、連結部32の第二部材B側の面が第二部材Bに接触するようにしても良いし、第二部材Bに接触しないようにしても良い。また、電池セル11の満充電時には、X-Z方向に平行な断面において、主凹部31cの面積よりも、湾曲変形した連結部32と第一部材Aとにより形成される空間面積の方が大きくなるように設計しても良い。
【0061】
(3-2.第二例の緩衝シート40)
第二例の緩衝シート40について
図6および
図7を参照して説明する。第二例の緩衝シート40において、第一例の緩衝シート30と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
図6に示すように、緩衝シート40は、複数の主支持部31と、複数の連結部42とを備える。主支持部31は、第一例の主支持部31と同一構成を有する。連結部42は、連結部本体42aと小突起42bとを備える。連結部本体42aは、第一例の連結部32と同一構成を有する。小突起42bは、連結部本体42aのうち第二部材B側の面に形成されており、主支持部31の突出高さより小さな突出高さを有する。小突起42bは、連結部本体42aの帯幅方向の中央部に形成されている。
【0063】
第一部材Aと第二部材Bとの離間距離が短くなった場合には、
図7に示すように、主支持部31が変形する。主支持部31の変形に伴って、連結部本体42aが湾曲変形する。このとき、連結部本体42aの第二部材B側の面が凸状となるように湾曲変形する。連結部本体42aの変形量が大きくなると、小突起42bが、第二部材Bに接触し、圧縮変形する。つまり、小突起42bが圧縮変形することによって、緩衝シート40の支持力特性を自由に設計することができる。
【0064】
(3-3.第三例の緩衝シート50)
第三例の緩衝シート50について
図8を参照して説明する。第三例の緩衝シート50において、第一例の緩衝シート30と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、緩衝シート50は、複数の主支持部31と、複数の連結部32とを備える。主支持部31および連結部32は、第一例の主支持部31および連結部32と同一構成を有する。
【0065】
緩衝シート50において、主支持部31と連結部32との境界部分には、副凹部53,54が形成されている。本例では、副凹部53,54は、連結部32の第一部材A側の面と主支持部31の幅広面31aとの境界部分に形成されている。つまり、副凹部53,54は、第一部材A側に開口する。副凹部53,54は、基準方向(Y方向)に延在する。本例では、副凹部53,54は、主支持部31の全長に亘って形成されている。また、副凹部53,54の開口幅は、主凹部31cの開口幅よりも小さい。さらに、副凹部53,54の開口からの深さは、主凹部31cの開口からの深さよりも浅い。
【0066】
第一部材Aと第二部材Bとの離間距離が短くなった場合に、主支持部31は、幅広面31aの幅が拡大するように変形しようとする。その結果、連結部32は、隣接する主支持部31から連結部32の帯幅方向(X方向)に圧縮荷重を受けることになる。
【0067】
このとき、連結部32は、副凹部53,54を起点として帯幅方向に座屈しやすくなる。つまり、連結部32は、
図8に示すように、主支持部の31の幅広面31aの拡大に伴って、副凹部53,54を起点として第二部材B側に凸状に湾曲変形する状態となる。より詳細には、連結部32は、副凹部53,54の開口幅が変化する変形を起点として、第二部材B側に凸状に湾曲変形する。
【0068】
(3-4.第四例の緩衝シート60)
第四例の緩衝シート60について
図9を参照して説明する。第四例の緩衝シート60において、第一例の緩衝シート30と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、緩衝シート60は、複数の主支持部31と、複数の連結部32と、一対の外支持部65,65とを備える。主支持部31および連結部32は、第一例の主支持部31および連結部32と同一構成を有する。
【0069】
一対の外支持部65,65は、複数の主支持部31の並列方向の両外側に位置する。外支持部65は、連結部32を介して両端の主支持部31に連結される。さらに、外支持部65は、基準方向(Y方向)に延在する。つまり、外支持部65は、主支持部31と平行な方向に延在する。外支持部65,65のそれぞれは、主支持部31と同様に、緩衝シート60の基準方向(Y方向)の全長に亘って延在する1本の長尺体により形成される。
【0070】
外支持部65は、基準方向(Y方向)に直交する断面(X-Z平面に平行な断面)において、主支持部31と近似した先細形状(例えば、台形)に形成されている。本例では、外支持部65は、等脚台形に形成されているが、不等脚台形でも良い。
【0071】
詳細には、外支持部65は、背向する幅広面65aおよび幅狭面65bを有する先細形状に形成されている。幅広面65aの一部は第一部材Aに接触し、幅狭面65bは第二部材Bに接触する。外支持部65の高さ、すなわち幅広面65aと幅狭面65bとの距離は、主支持部31の高さよりも高く形成されている。つまり、外支持部65は、主支持部31の突出高さよりも高い。
【0072】
さらに、外支持部65は、主支持部31と同様に、凹部65cを備える。外支持部65の凹部65cは、主支持部31の主凹部31cと同一形状としても良いし、主凹部31cと異なる形状としても良い。
【0073】
例えば、緩衝シート60の適用対象として
図1および
図2に示す電池モジュール1とする場合において、電池モジュール1の膨張変形形状に鑑みると、緩衝シート60のシート幅方向中央部(
図9の左右方向中央部)は厚み方向の変形量を大きくし、緩衝シート60のシート幅方向両端部(
図9の左右方向両端部)は厚み方向の変形量を小さくすると良い。
【0074】
そこで、膨張変形量の小さい両端には、外支持部65が位置し、膨張変形量の大きい中央部には、主支持部31が位置する。従って、緩衝シート60は、電池モジュール1の膨張変形量に応じて適切な支持力を発揮することができる。
【0075】
(3-5.第五例の緩衝シート70)
第五例の緩衝シート70について
図10を参照して説明する。第五例の緩衝シート70において、第一例の緩衝シート30と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、緩衝シート70は、複数の主支持部31と、複数の連結部32と、一対の外支持部75,75とを備える。主支持部31および連結部32は、第一例の主支持部31および連結部32と同一構成を有する。
【0076】
一対の外支持部75,75は、複数の主支持部31の並列方向の両外側に位置する。外支持部75は、連結部32を介して両端の主支持部31に連結される。さらに、外支持部75は、基準方向(Y方向)に延在する。つまり、外支持部75は、主支持部31と平行な方向に延在する。外支持部75,75のそれぞれは、主支持部31と同様に、緩衝シート70の基準方向(Y方向)の全長に亘って延在する1本の長尺体により形成される。
【0077】
外支持部75は、基準方向(Y方向)に直交する断面(X-Z平面に平行な断面)において、主支持部31と同様の先細形状(例えば、台形)に形成されている。本例では、外支持部75は、等脚台形に形成されているが、不等脚台形でも良い。
【0078】
詳細には、外支持部75は、背向する幅広面75aおよび幅狭面75bを有する先細形状に形成されている。ただし、外支持部75は、幅広面75aにも幅狭面75bにも、凹部を有しない。そして、幅広面75aの全面が第一部材Aに接触し、幅狭面75bの全面が第二部材Bに接触する。外支持部75の高さ、すなわち幅広面75aと幅狭面75bとの距離は、主支持部31の高さと同一である。
【0079】
例えば、緩衝シート70の適用対象として
図1および
図2に示す電池モジュール1とする場合において、電池モジュール1の膨張変形形状に鑑みると、緩衝シート70のシート幅方向中央部(
図10の左右方向中央部)は厚み方向の変形量を大きくし、緩衝シート70のシート幅方向両端部(
図10の左右方向両端部)は厚み方向の変形量を小さくすると良い。
【0080】
そこで、膨張変形量の小さい両端には、外支持部75が位置し、膨張変形量の大きい中央部には、主支持部31が位置する。外支持部75は、主支持部31に比べて、主凹部31cを有しない分、許容変形量が小さい。従って、緩衝シート70は、電池モジュール1の膨張変形量に応じて適切な支持力を発揮することができる。
【0081】
(3-6.第六例の緩衝シート80)
第六例の緩衝シート80について
図11を参照して説明する。第六例の緩衝シート80において、第一例の緩衝シート30と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、緩衝シート80は、複数の主支持部81と、複数の連結部32とを備える。
【0082】
第一例の緩衝シート30においては、それぞれの主支持部31は、緩衝シート30の基準方向(Y方向)の全長に亘って延在する1本の長尺体により形成されるものとした。一方、第六例の緩衝シート80においては、それぞれの主支持部81は、基準方向(Y方向)において所定の間隔をおいて複数の長尺体81a,81b,81cにより形成されている。
【0083】
主支持部81は、基準方向(Y方向)に直交する断面(X-Z平面に平行な断面)において、第一例の主支持部31と同様の先細形状(例えば、台形)に形成されている。つまり、主支持部81は、幅広面31aおよび幅狭面31bを有し、主凹部31cが形成されている。
【0084】
また、主凹部31cおよび副凹部33,34は、緩衝シート80の全長に亘って形成されている。つまり、主凹部31cおよび副凹部33,34は、主支持部81を構成する長尺体の存在しない部位にも形成されている。ただし、主凹部31cおよび副凹部33,34は、主支持部81を構成する長尺体の存在する部位のみに形成しても良い。
【0085】
(3-7.第七例の緩衝シート90)
第七例の緩衝シート90について
図12を参照して説明する。第七例の緩衝シート90において、第一例の緩衝シート30と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
図12に示すように、緩衝シート90は、複数の主支持部31と、複数の連結部32と、外枠部95とを備える。主支持部31および連結部32は、第一例の主支持部31および連結部32と同一構成を有する。
【0086】
外枠部95は、緩衝シート90の外周縁全周に形成され、弾性材料により充填されて形成されている。外枠部95の延在方向に直交する断面形状は、例えば、長方形、台形、山形等の任意の形状とすることができる。外枠部95は、第五例の緩衝シート70における外支持部75と同様の機能を発揮する。
【0087】
(4.緩衝シートの製造方法)
(4-1.緩衝シートの製造方法の例)
緩衝シートの製造方法の例について、
図13-
図15を参照して説明する。以下に説明する製造方法は、上述した第一例乃至第五例の緩衝シート30,40,50,60,70に適用可能である。以下には、第一例の緩衝シート30を例にあげる。
【0088】
まず、樹脂またはエラストマーを母材とする弾性材料を用いて、押出機(図示せず)により、
図14および
図15に示す予備成形品100を成形する(
図13のステップS1:押出成形工程)。予備成形品100は、押出方向を基準方向(Y方向)に一致させて、押出方向に直交する断面形状をC字状またはU字状に成形する。
図14および
図15は、C字状の断面形状の場合を示す。つまり、予備成形品100は、C字状またはU字状における断絶部分であるスリット101を全長に亘って有する。
【0089】
ここで、本例では、
図14および
図15に示すように、予備成形品100は、主凹部31cを径方向外側に位置するように、C字状またはU字状に押出成形される。つまり、主支持部31の突出方向が、径方向内側を向く。この場合、第一例、第二例、第四例、第五例の緩衝シート30,40,60,70においては、予備成形品100は、副凹部33,34が径方向内側に位置するように、C字状またはU字状に押出成形される。また、第三例の緩衝シート50においては、予備成形品100は、副凹部53,54が径方向外側に位置するように、C字状またはU字状に押出成形される。
【0090】
上記の他に、予備成形品100は、主凹部31cを径方向内側に位置するように、C字状またはU字状に押出成形されるようにしても良い。つまり、主支持部31の突出方向が、径方向外側を向く。この場合、第一例、第二例、第四例、第五例の緩衝シート30,40,60,70においては、予備成形品100は、副凹部33,34が径方向外側に位置するように、C字状またはU字状に押出成形される。また、第三例の緩衝シート50においては、予備成形品100は、副凹部53,54が径方向内側に位置するように、C字状またはU字状に押出成形される。
【0091】
続いて、押出成形された予備成形品100を、C字状またはU字状のスリットが両端となるように広げる(
図13のステップS2:展開工程)。このとき、予備成形品100は、主凹部31cおよび副凹部33,34,53,54を起点として広げられる。従って、容易に広げることができる。続いて、加硫設備により、広げた状態の予備成形品100を加硫することで、緩衝シート30,40,50,60,70が製造される(
図13のステップS3:加硫工程)。
【0092】
仮に、押出機により平板状の緩衝シート30等を押出成形する場合には、押出機の金型の最大幅は、緩衝シート30等の幅以上とする必要がある。従って、緩衝シート30等の幅が大きくなると、押出機の金型が大型化する。しかし、上記の製造方法においては、押出機により押出方向に直交する断面形状をC字状またはU字状に押出成形し、その後にC字状またはU字状のスリットが両端となるように広げることにより、緩衝シート30等を製造している。従って、押出機の金型は、緩衝シート30等の幅に比べて小さくすることが可能となる。
【0093】
また、押出成形されたC字状またはU字状の断面形状を有する予備成形品100を広げる際に、主凹部31cおよび副凹部33,34,53,54を起点としている。従って、押出機によりC字状またはU字状に押出成形した後に広げたとしても、緩衝シート30等を所望の形状とすることができる。
【0094】
ここで、予備成形品100において主支持部31の突出方向を径方向内側とする場合には、連結部32と主支持部31の幅広面31a側の部分とにより囲まれる領域に、主支持部31の突出部分を収容することができる。従って、予備成形品100の幅をより小さくすることができる。
【0095】
また、緩衝シート30,40,60,70において、予備成形品100は、主凹部31cが径方向外側に開口する場合において、副凹部33,34が径方向内側に開口する。この場合、予備成形品100は、副凹部33,34が拡大変形することにより広げられる。つまり、副凹部33,34が、拡大変形の起点として容易に作用する。その結果、予備成形品100を、C字状またはU字状から容易に広げることができる。
【0096】
また、緩衝シート50において、予備成形品100は、主凹部31cおよび副凹部53,54が径方向内側に開口すると良い。この場合、予備成形品100は、主凹部31cおよび副凹部53,54が拡大変形することにより広げられる。つまり、主凹部31cおよび副凹部53,54が、拡大変形の起点として容易に作用する。その結果、予備成形品100を、C字状またはU字状から容易に広げることができる。
【0097】
(4-2.その他の製造方法)
第六例および第七例の緩衝シート80,90は、基準方向(Y方向)全長に亘って、基準方向に直交する断面(X-Z平面に平行な断面)が同一ではないため、押出成形を適用して成形することは容易ではない。そこで、緩衝シート80,90は、射出成形により製造すると良い。なお、他の緩衝シート30-70についても射出成形により製造しても良い。
【符号の説明】
【0098】
1:電池モジュール、 11:電池セル、 12:積層体、 13:拘束部材、 14,15,30,40,50,60,70,80,90:緩衝シート、 21,31,81:主支持部、 22,32,42:連結部、 31a:幅広面、 31b:幅狭面、 31c:主凹部、 33,34,53,54:副凹部、 42a:連結部本体、 42b:小突起、 65:外支持部、 65a:幅広面、 65b:幅狭面、 65c:凹部、 75:外支持部、 75a:幅広面、 75b:幅狭面、 81a,81b,81c:長尺体、 95:外枠部、 100:予備成形品、 101:スリット、 A:第一部材、 B:第二部材