(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20220210BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20220210BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220210BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H01L23/46 B
F28D15/02 101H
F28D15/02 101L
F28D15/02 L
H05K7/20 H
H05K7/20 R
G06F1/20 B
G06F1/20 C
(21)【出願番号】P 2020205700
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 央
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003973(JP,A)
【文献】特開2007-281214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427
F28D 15/02
H05K 7/20
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
ディスプレイを搭載した第1筐体と、
CPUと、前記ディスプレイの制御基板とを搭載し、前記第1筐体に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体と、
前記第2筐体に搭載され、前記CPU及び前記制御基板を冷却する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
冷却フィンと、
前記冷却フィンに送風する送風ファンと、
密閉空間に作動流体が封入され、前記CPUを覆うように配置された熱輸送装置と、
前記制御基板を覆うように配置された熱伝導シートと、
を有し、
前記冷却フィン、前記熱輸送装置、及び前記熱伝導シートは、互いに積層された状態で互いに熱的に接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記熱輸送装置は、2枚の金属プレートの間に前記密閉空間を形成したプレート型のベーパーチャンバであり、
前記冷却フィンは、前記ベーパーチャンバの第1面に固定され、
前記熱伝導シートは、前記ベーパーチャンバの第2面に固定されると共に、前記冷却フィンと積層方向にオーバーラップしている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記熱伝導シートは、グラファイトシートであり、
前記グラファイトシートは、一部が前記制御基板を覆うように設けられ、別の一部が前記冷却フィンと積層されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第2筐体は、後端部がヒンジを用いて前記第1筐体と連結され、
前記第2筐体の内部で前記後端部から前方に向かって順に、前記制御基板と、前記CPUと、当該電子機器の電源となるバッテリ装置と、が並んでいる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第1筐体は、前記ディスプレイとして、
前記第1筐体の正面に臨む第1ディスプレイと、
前記第1筐体の背面に臨む第2ディスプレイと、
を搭載しており、
前記第2筐体は、前記制御基板として、
前記第1ディスプレイに接続された第1制御基板と、
前記第2ディスプレイに接続された第2制御基板と、
を搭載しており、
前記熱伝導シートは、前記第1制御基板及び前記第2制御基板を覆うように設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記第2筐体は、後端部がヒンジを用いて前記第1筐体と連結され、
前記冷却フィン、前記第1制御基板、及び前記第2制御基板は、前記第2筐体の後端部に沿って左右に並んで配置され、
前記熱伝導シートは、前記第2筐体の内部で左右方向に沿って延在すると共に、前記冷却フィン、前記第1制御基板、及び前記第2制御基板をまとめて覆うように設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU等の発熱体を冷却するための冷却モジュールを搭載している(例えば特許文献1参照)。冷却モジュールには、例えばCPUの発生する熱を吸熱するベーパーチャンバのような熱輸送装置と、この熱輸送装置が輸送した熱を外部に排出する冷却フィン及び送風ファンとを備えた構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6469183号公報
【文献】特許第6698144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、ディスプレイの制御用の基板(制御基板)をディスプレイ側の筐体のベゼル裏に収容した構成が一般的である(例えば特許文献2参照)。このような構成では、ベゼル部材がディスプレイ基板の分だけ幅広になり、外観品質が低下する。
【0005】
そこで、ディスプレイの制御基板をCPUやマザーボードを搭載した筐体に搭載する構成も考えられる。ところが、このような構成とした場合、CPUのような発熱量の大きな発熱体の影響により、何らかの冷却手段を用いなければ制御基板の放熱が間に合わなくなる可能性があることが分かってきた。しかしながら、上記のような熱輸送装置は、制御基板に直接的に接続することは難しい。熱輸送装置及び制御基板がいずれもある程度の厚みを有するため、両者を重ねると筐体の薄型化が損われるからである。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、十分な冷却性能を確保しつつ、筐体の薄型化が阻害されることを抑制可能な冷却モジュールを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、ディスプレイを搭載した第1筐体と、CPUと、前記ディスプレイの制御基板とを搭載し、前記第1筐体に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体と、前記第2筐体に搭載され、前記CPU及び前記制御基板を冷却する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、冷却フィンと、前記冷却フィンに送風する送風ファンと、密閉空間に作動流体が封入され、前記CPUを覆うように配置された熱輸送装置と、前記制御基板を覆うように配置された熱伝導シートと、を有し、前記冷却フィン、前記熱輸送装置、及び前記熱伝導シートは、互い積層された状態で互いに熱的に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、十分な冷却性能を確保しつつ、筐体の薄型化が阻害されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器の第1筐体の角度を変更し、その背面側を示した平面図である。
【
図3】
図3は、第2筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す構成に熱伝導シートを配置した状態を示す底面図である。
【
図6】
図6は、冷却モジュール及びマザーボードの模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、
図4中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、熱伝導シート、ベーパーチャンバ、及び冷却フィンの熱的な接続構造を概略的に示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2は、
図1に示す電子機器10の第1筐体12の角度を変更し、その背面12b側を示した平面図である。
図1及び
図2に示すように、電子機器10は、第1筐体12と第2筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、第1筐体12の表裏にディスプレイ18,19を搭載したデュアルディスプレイ構造である。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、携帯電話、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
先ず、第1筐体12の構成を説明する。第1筐体12は、薄い扁平な箱体である。第1ディスプレイ18は、表示面が第1筐体12の正面12aを臨むように搭載されている。第2ディスプレイ19は、表示面が第1筐体12の背面12bを臨むように搭載されている。
【0013】
第1ディスプレイ18は、映像を表示するディスプレイ部18aと、タッチ操作のためのタッチパネル部18bとを有する。第2ディスプレイ19は、映像を表示するディスプレイ部19aと、タッチ操作のためのタッチパネル部19bとを有する。ディスプレイ部18a,19aは、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。タッチパネル部18b,19bは、省略されてもよい。電子機器10は、第2ディスプレイ19を持たない構成でもよい。
【0014】
次に、第2筐体14の構成を説明する。以下、第2筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体12,14間を
図1に示すように開き、キーボード20を操作しながら第1筐体12の正面12aの第1ディスプレイ18を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向を上下、と呼んで説明する。
【0015】
第2筐体14は、薄い扁平な箱体である。第2筐体14は、上面及び四周側面を形成する上カバー材14aと、下面を形成する下カバー材14bとで構成されている。第2筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。第2筐体14の内部には、冷却モジュール22が搭載されている。第2筐体14は、その後端部14cがヒンジ16を用いて第1筐体12と連結されている。
【0016】
次に、第2筐体14の内部構造を説明する。
図3及び
図4は、第2筐体14の内部構造を模式的に示す底面図である。
図3及び
図4は、下カバー材14bを取り外して上カバー材14aの内面側から第2筐体14内を見た図である。
図3は、冷却モジュール22を構成する熱伝導シート40について輪郭のみを2点鎖線で図示し、熱伝導シート40で覆われる制御基板26,27等を示した図である。
図4は、熱伝導シート40を実線で示した図である。
【0017】
図3に示すように、第2筐体14の内部には、マザーボード24と、バッテリ装置25と、制御基板26,27やタッチパネル基板28,29等の各種電子部品と、冷却モジュール22と、が搭載されている。
【0018】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、第2筐体14の前方寄りに配置され、左右に亘って延在している。マザーボード24は、CPU(Central Processing Unit)30、通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、SSD(Solid State Drive)33等が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、キーボード20の底面或いは上カバー材14aの内面にねじ止めされている。マザーボード24は、上面24aが上カバー材14aに対する取付面となり、下面24bがCPU30や通信モジュール31等の電子部品の実装面となる。電子部品の一部は、上面24aに実装されていてもよい。
【0019】
CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。CPU30は、第2筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱体である。通信モジュール31は、第1筐体12や第2筐体14に搭載されたアンテナを介して送受信される無線通信の情報処理を行うデバイスである。通信モジュール31は、例えば第5世代移動通信システムに対応している。DC/DCコンバータ32は、バッテリ装置25から供給される直流電力の電圧をCPU30等の各電子部品に要求される電圧に変換する。SSD33は、ディスクドライブの代わりに半導体メモリを用いた記憶装置である。これら通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、及びSSD33は、CPU30に次ぐ発熱体である。
【0020】
マザーボード24は、CPU30、DC/DCコンバータ32、SSD33が略横一列に並んで配置され、通信モジュール31がCPU30の前側に配置されている。これらCPU30等の配置は適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0021】
バッテリ装置25は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置25は、マザーボード24の前方に配置され、第2筐体14の前方略半分の面積を占めている。
【0022】
第1制御基板26は、第1ディスプレイ18のディスプレイ部18aでの映像表示を制御するためのサブボードである。第2制御基板27は、第2ディスプレイ19のディスプレイ部19aでの映像表示を制御するためのサブボードである。制御基板26,27は、それぞれヒンジ16を通過するフレキシブル基板26a,27aによってディスプレイ部18a,19aと接続されている。また、制御基板26,27は、第2筐体14内でマザーボード24と接続されている。タッチパネル基板28,29は、それぞれタッチパネル部18b,19bの制御用のサブボードである。タッチパネル基板28,29は、ヒンジ16を通過するフレキシブル基板を介してタッチパネル部18b,19bと接続されている。
【0023】
制御基板26,27及びタッチパネル基板28,29は、第1筐体12との接続の都合上、マザーボード24と後端部14cとの間に挟まれた後端領域に配置されている。具体的には、制御基板26,27は、第2筐体14内で左右略中央の最も後方寄りの位置に配置され、後端部14cに沿って左右に並んでいる。タッチパネル基板28,29は、互いに前後に並んで配置され、第2制御基板27の側部に位置している。なお、電子機器10が第2ディスプレイ19を持たない構成の場合、第2制御基板27は省略される。
【0024】
ところで、ディスプレイ18,19の表示制御を行う制御基板26,27は、ある程度の発熱を生じる。従来の電子機器では、この種の制御基板はディスプレイ側の筐体(本実施形態では第1筐体12)に搭載されていたため、冷却モジュールによる冷却を必要としていなかった。ディスプレイ側の筐体にはCPU30のような発熱体が搭載されておらず、筐体内部での放熱で十分であったためである。
【0025】
ところが、本実施形態の電子機器10は、CPU30等の発熱体と同じ第2筐体14内に制御基板26,27を搭載している。このため、制御基板26,27は、冷却手段を用いない場合、放熱が間に合わず、チップの不具合や下カバー材14bの局所的な高温部(ホットスポット)の発生に繋がる可能性がある。特に、第2筐体14は、CPU30等による発熱を伴うマザーボード24がバッテリ装置25の後方に配置されている。つまり第2筐体14内は、後端部14cから前方に向かって順に、制御基板26,27、マザーボード24(CPU30)、バッテリ装置25が配置されている。このため、制御基板26,27は、どうしてもCPU30と近い位置に配置され、CPU30からの熱の影響を受け易くなっている。しかも当該電子機器10は、デュアルディスプレイに対応する2枚の制御基板26,27を備えるため、制御基板自体の合計発熱量も大きい。
【0026】
そこで、本実施形態の冷却モジュール22は、CPU30等に加えて、さらに制御基板26,27が発生する熱を吸熱及び拡散し、第2筐体14外へと放熱可能な構成を備える。冷却モジュール22の冷却対象となる電子部品は、制御基板26,27、CPU30、通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、SSD33以外であっても勿論よく、例えばGPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算装置、カメラ用の画像チップや部品等、電子機器10の動作中に発熱する各種発熱体を例示できる。
【0027】
冷却モジュール22の具体的な構成を説明する。
図5は、冷却モジュール22の斜視図である。
図6は、冷却モジュール22及びマザーボード24の模式的な断面図である。
図7は、
図4中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
図6は、上下左右に沿う平面で冷却モジュール22及びマザーボード24を切断した断面の模式図であり、冷却モジュール22の機能を明示するため、受熱部34a及び放熱部34bを左右方向に沿って図示し、さらに通信モジュール31をCPU30の左側に並べて図示している。
【0028】
図5~
図7に示すように、冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ34と、金属フレーム35を一体形成した金属プレート36と、熱伝導プレート37と、冷却フィン38と、送風ファン39と、熱伝導シート40と、を備える。
【0029】
図3及び
図5に示すように、ベーパーチャンバ34は、第2筐体14の中央付近に配置される受熱部34aと、受熱部34aの右端から後方に屈曲した放熱部34bとを有する。これによりベーパーチャンバ34は、平面視略クランク形状を成している。受熱部34aは、CPU30が接続される部分であり、CPU30を覆うように配置される。放熱部34bは、冷却フィン38が接続される部分であり、冷却フィン38と送風ファン39の一部を覆うように配置される。このようにベーパーチャンバ34は、CPU30と冷却フィン38との間に亘って延在し、CPU30の熱を冷却フィン38へと輸送する。
【0030】
図6に示すように、ベーパーチャンバ34は、金属プレート41と金属プレート36とで挟まれた部分に密閉空間34cを形成し、この密閉空間34cに作動流体を封入したものである。
【0031】
金属プレート41は、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。金属プレート41は、ベーパーチャンバ34の蓋板(上板)であり、略バスタブ形状を有する。金属プレート36は、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。金属プレート36は、金属プレート41よりも大きな外形(表面積)を有する。金属プレート36は、ベーパーチャンバ34の底板(下板)であり、ベーパーチャンバ34と熱伝導プレート37とに亘って広がっている。
【0032】
金属プレート36,41間は、金属プレート41の外周縁部が金属プレート36の表面36aに対して溶接等によって接合されて封止されることで、内部に密閉空間34cが形成される。金属プレート41は、金属プレート36の表面36aの一部のみを覆うように設けられる。
図6に示す模式図とは異なり、実際の製品での金属プレート36,41間の接合部は、例えば金属プレート41の外周縁部を板厚方向に潰して表面36aに接合することで、薄いフランジ形状を成す。
【0033】
ベーパーチャンバ34は、ヒートパイプの一種類であるプレート型の熱輸送装置である。密閉空間34cは、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。本実施形態の作動流体は水である。密閉空間34c内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ウイックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等で形成される。
【0034】
図6に示すように、ベーパーチャンバ34の受熱部34aは、金属プレート36の密閉空間34cを形成する部分の裏面36bがCPU30と熱的に接続される。CPU30は、裏面36bに対して受熱部材30aを介して接続される。受熱部材30aは、アルミニウムや銅のような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。ベーパーチャンバ34の放熱部34bは、金属プレート36の裏面36bに対して冷却フィン38が接合される。ベーパーチャンバ34は、作動流体が受熱部34aでCPU30からの熱を受けて蒸発して拡散移動し、放熱部34bで冷却フィン38に放熱して凝縮した後、再び受熱部34aまで戻る相変化を繰り返しながら熱輸送を行う。
【0035】
図3、
図5及び
図6に示すように、金属フレーム35は、ベーパーチャンバ34の受熱部34aの左縁部及び前縁部を囲むように設けられ、平面視略クランク形状を成している。金属フレーム35は、金属プレート36の一部であり、金属プレート36が金属プレート41の外形(外周縁部)から張り出した部分に形成されている。金属フレーム35は、熱伝導プレート37を支持するためのものである。金属フレーム35は、金属プレート36の各所に矩形状等の切抜き孔35aが形成されることで格子状を成している。
【0036】
図3、
図5及び
図6に示すように、熱伝導プレート37は、金属フレーム35の外形と略同一形状に形成され、略クランク形状を成している。熱伝導プレート37は、金属プレート36の裏面36bのうち、密閉空間34cと重なる部分の金属フレーム35側の縁部から金属フレーム35の略全面に亘って延在している。熱伝導プレート37は、グラフェンを含むプレートであり、高い熱伝導率を有する。熱伝導プレート37は、例えばグラフェンを含む炭素同位体(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン等を含む)が配合された樹脂を溶融させ、この樹脂を加熱圧縮してプレート状に硬化させたものである。
【0037】
このように熱伝導プレート37は炭素系の薄いプレートである。そこで、熱伝導プレート37は、十分な取付剛性を担保するため、金属フレーム35で支持している。熱伝導プレート37は、取付面37aが両面テープ等で金属フレーム35の枠部に固定されている。熱伝導プレート37は、CPU30に次ぐ発熱体である通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、及びSSD33等と重なるように配置される。
図6に示す構成例では、熱伝導プレート37は、金属フレーム35に対する取付面37aの裏面37bが、通信モジュール31等の発熱体の頂面との間に僅かな隙間を介して対向している。熱伝導プレート37の裏面37bと通信モジュール31等の発熱体との間は、CPU30と同様な受熱部材30aやサーマルラバー等を介在させてもよい。
【0038】
熱伝導プレート37は、一部が金属フレーム35から金属プレート36の密閉空間34cを形成する部分まで延在することで、密閉空間34cと上下方向にオーバーラップしている(
図6参照)。これにより熱伝導プレート37は、ベーパーチャンバ34へと直接的に伝熱可能である。
【0039】
図3~
図7に示すように、熱伝導シート40は、第2筐体14の後端部14cに沿って配置され、第2筐体14の左右方向に亘って延在した帯状のシート状部材である。熱伝導シート40は、送風ファン39の吸込口を避けた部分は円弧状に切り欠かれているが、全体として略矩形状を成している。熱伝導シート40は、薄いグラファイトシートである。熱伝導シート40は、銅やアルミニウム等の金属シートで形成されてもよい。
【0040】
熱伝導シート40は、冷却フィン38から制御基板26,27までをまとめて覆う。具体的には、制御基板26,27を覆う部分は、受熱部34a及び金属フレーム35の後縁部と、後端部14cとの間に配置されている。冷却フィン38を覆う部分は、ベーパーチャンバ34の放熱部34bの表面(金属プレート41の表面41a)に両面テープ等で固定されている。これにより熱伝導シート40は、制御基板26,27が発生する熱を吸熱・拡散し、さらに冷却フィン38へと放熱する。
【0041】
図3及び
図4に示す構成例では、熱伝導シート40の右端部は冷却フィン38よりも右側に張り出し、左端部は第2制御基板27よりも左側に張り出している。これにより熱伝導シート40は、表面積が増大し、熱拡散効率が向上する。熱伝導シート40は、このような両端の張り出し部分を持たない構成でもよい。
【0042】
図3~
図7に示すように、冷却フィン38は、第2筐体14の後端部14cに形成された排気口に面して配置される。冷却フィン38は、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属のブロックに第2筐体14の内外方向に貫通する複数のスリットを形成したものである。冷却フィン38は、金属プレート36の密閉空間34cを形成する部分の裏面36bに対して溶接等によって接合されている。
【0043】
送風ファン39は、金属プレート36の裏面36bに取り付けられている。送風ファン39は、冷却フィン38と近接し、第2筐体14内から吸い込んだ空気を冷却フィン38のスリットを通して第2筐体14外へと排気する。
【0044】
図8は、熱伝導シート40、ベーパーチャンバ34、及び冷却フィン38の熱的な接続構造を概略的に示す模式的な断面図であり、金属プレート35等の図示は省略している。
図6~
図8に示すように、本実施形態の冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ34の表裏両面のうち、第1面(金属プレート36の裏面36b)に冷却フィン38が接合され、第2面(金属プレート41の表面41a)に熱伝導シート40が両面テープ等で貼り付けられた積層構造を有する。熱伝導シート40は、冷却フィン38と積層方向(上下方向)にオーバーラップしている。
【0045】
これによりベーパーチャンバ34は、直接的に冷却フィン38に熱を伝達することができる。熱伝導シート40は、ベーパーチャンバ34を介して間接的に冷却フィン38に熱を伝達する。熱伝導シート40は、冷却フィン38に直接的に貼り付けてもよく、この場合、例えば冷却フィン38が熱伝導シート40とベーパーチャンバ34とでサンドイッチされた積層構造となる。
【0046】
以上のように、本実施形態の冷却モジュール22は、冷却フィン38と、送風ファン39と、CPU30を覆うように設けられたベーパーチャンバ34と、制御基板26,27を覆うように設けられた熱伝導シート40とを備える。冷却フィン38、ベーパーチャンバ34、及び熱伝導シート40は、互いに積層された状態で互いに熱的に接続されている。
【0047】
すなわち、上記した通り、当該電子機器10は、CPU30と制御基板26,27とが近い位置に配置されているため、制御基板26,27の冷却が問題となる。この点、当該電子機器10は、熱伝導シート40が制御基板26,27を覆うように設けられ、その一部が冷却フィン38にオーバーラップしている。これにより熱伝導シート40は、制御基板26,27の熱を吸熱して拡散するパッシブな冷却作用と、制御基板26,27の熱を冷却フィン38へと輸送して放熱するアクティブな冷却作用とを発揮する。その結果、当該電子機器10は、CPU30とディスプレイ18,19の制御基板26,27を同一の第2筐体14に収容した構成ではあるが、十分な冷却性能が得られる。なお、制御基板26,27は、互いに隣接していなくてもよく、例えば後端部14cに沿って第1制御基板26、冷却フィン38、第2制御基板27の順で並んだ構成等でもよく、この場合も熱伝導シート40でこれらを覆えばよい。
【0048】
また、ベーパーチャンバ34の板厚は、0.5mm程度である。一方、熱伝導シート40の厚みは、例えばグラファイトシートである場合に0.1mm程度に形成できる。このため、一般にCPU30等に比べて板厚が大きい制御基板26,27に熱伝導シート40を重ねたとしても、第2筐体14の薄型化を阻害することを抑制できる。
【0049】
次に、冷却モジュール22でのより具体的な冷却作用を説明する。
図6~
図8中に1点鎖線で示す矢印は、熱の移動を模式的に示したものである。冷却モジュール22において、ベーパーチャンバ34の熱伝導率は、5000~10000(W/mK)程度である。熱伝導シート40を形成するグラファイトシート及び熱伝導プレート37を形成するグラフェンプレートの熱伝導率は、1000~1800(W/mK)程度である。金属プレート36が銅である場合の熱伝導率は、400(W/mK)程度である。
【0050】
従って、CPU30が発生した熱は、受熱部材30aからベーパーチャンバ34へと伝達され、極めて高効率に冷却フィン38へと伝達される。一方、制御基板26,27が発生した熱は、高い熱伝導率を持つ熱伝導シート40へと伝達され、高効率に拡散して放熱される。さらに、制御基板26,27からの熱は、熱伝導シート40からベーパーチャンバ34を介して冷却フィン38へと伝達される。なお、通信モジュール31等が発生した熱は、高い熱伝導率を持つ熱伝導プレート37に伝達され、高効率に拡散して放熱される。その結果、当該電子機器10は、各発熱体が発生する熱が効率よく放熱される。
【0051】
特に、冷却モジュール22において、冷却フィン38は、その上面が送風ファン39と共に例えば上カバー材14aの内面或いはキーボード20の底面に固定又は近接される。このため、冷却フィン38は、下面にのみベーパーチャンバ34や熱伝導シート40を取り付けることができる。他方、ベーパーチャンバ34は、最大級の発熱体であるCPU30が発する熱を冷却フィン38に伝達する必要がある。そこで、本実施形態では、ベーパーチャンバ34を冷却フィン38に直接的に接合してベーパーチャンバ34から冷却フィン38への熱伝達効率を最大化している。一方、制御基板26,27が発する熱はCPU30よりは相当に小さい。そこで、熱伝導シート40は、冷却フィン38に接合されたベーパーチャンバ34の放熱部34bに対して積層し、間接的に冷却フィン38に接続している。これにより熱伝導シート40から冷却フィン38への熱伝達効率も担保されている。
【0052】
さらに、当該冷却モジュール22は、通信モジュール31等が発生した熱は、銅プレートよりも4倍程度の熱伝導率を持つ熱伝導プレート37に伝達され、高効率に拡散して放熱される。この際、熱伝導プレート37は、一部が金属プレート36を挟んで密閉空間34cと上下方向にオーバーラップしている。このため、通信モジュール31等の熱は、一部がベーパーチャンバ34を介して冷却フィン38へと高効率に輸送されるため、一層高い放熱性能が得られる。
【0053】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 電子機器
12 第1筐体
14 第2筐体
18 第1ディスプレイ
19 第2ディスプレイ
22 冷却モジュール
24 マザーボード
26 第1制御基板
27 第2制御基板
30 CPU
34 ベーパーチャンバ
38 冷却フィン
39 送風ファン
40 熱伝導シート
【要約】
【課題】十分な冷却性能を確保しつつ、筐体の薄型化が阻害されることを抑制可能な冷却モジュールを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、ディスプレイを搭載した第1筐体と、CPUと前記ディスプレイの制御基板とを搭載し、第1筐体に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体と、第2筐体に搭載され、CPU及び制御基板を冷却する冷却モジュールと、を備える。冷却モジュールは、冷却フィンと、冷却フィンに送風する送風ファンと、密閉空間に作動流体が封入され、前記CPUを覆うように配置された熱輸送装置と、制御基板を覆うように配置された熱伝導シートと、を有する。冷却フィン、熱輸送装置、及び熱伝導シートは、互いに積層された状態で互いに熱的に接続されている。
【選択図】
図6