(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】トランスアミナーゼ突然変異体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20220210BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20220210BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220210BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20220210BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220210BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220210BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220210BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220210BHJP
C12P 13/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N9/10
C12N15/63 Z
C12N15/70 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P13/00
(21)【出願番号】P 2020515646
(86)(22)【出願日】2017-11-06
(86)【国際出願番号】 CN2017109500
(87)【国際公開番号】W WO2019084950
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519153028
【氏名又は名称】アシムケム ライフ サイエンス (ティエンジン) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LIFE SCIENCE (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】ル,ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,シュエチェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ナ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ケジャン
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/024104(WO,A2)
【文献】Accession: A0A1X0ITL2, Aminotransferase IV, Mycobacterium rhodesiae, [online], 2017.10.25, [2021.5.18検索], Database: UniProt, <URL: https://www.uniprot.org/uniprot/A0A1X0ITL2.txt?version=4>
【文献】Accession: A0A1Y5P4G5, Branched-chain amino acid aminotransferase/4-amino-4-deoxychorismate lyase, Mycobacterium sp., [online], 2017.10.25, [2021.5.18検索], Database: UniProt, <URL: https://www.uniprot.org/uniprot/A0A1Y5P4G5.txt?version=3>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00-9/99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスアミナーゼ突然変異体であって、
アミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12
、配列番号21
又は配列番号29
に示されるアミノ酸配列であ
る、
ことを特徴とす
るトランスアミナーゼ突然変異体。
【請求項2】
請求項
1に記載のトランスアミナーゼ突然変異体をコードすることを特徴とするDNA分子。
【請求項3】
前記DNA分子の配列は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42
、配列番号51
又は配列番号59
に示される配列であ
る、
ことを特徴とする請求項
2に記載のDNA分子。
【請求項4】
請求項
2又は
3に記載のDNA分子を含有することを特徴とする組換えプラスミド。
【請求項5】
pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19である、
ことを特徴とする請求項
4に記載の組換えプラスミド。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の組換えプラスミドを含有することを特徴とする宿主細胞。
【請求項7】
前記宿主細胞は、原核細
胞又は真核細胞を含
む、
ことを特徴とする請求項
6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5α形質転換受容性細胞であり、前記真核細胞は、酵母である、
ことを特徴とする請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
ケトン系化合物からのキラルアミンの生産における請求項
1に記載のトランスアミナーゼ突然変異体の使用。
【請求項10】
トランスアミナーゼでケトン系化合物及びアミノドナーのアミノ基転移反応を触媒するステップを含むキラルアミンの生産方法であって、
前記トランスアミナーゼは、請求項
1に記載のトランスアミナーゼ突然変異体である、
ことを特徴とするキラルアミンの生産方法。
【請求項11】
前記ケトン系化合物は、
【化1】
であり、ここでは、R
1とR
2は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基、C5~C10シクロアルキル基、C5~C10アリール基又はC5~C10ヘテロアリール基であり、又はR
1とR
2とは、カルボニル基上の炭素と共にC5~C10複素環式基、C5~C10炭素環式基又はC5~C10ヘテロアリール基を形成し、前記C5~C10複素環式基とC5~C10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子は、それぞれ独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1種であり、前記C5~C10アリール基のうちのアリール基、C5~C10ヘテロアリール基のうちのヘテロアリール基、C5~C10炭素環式基のうちの炭素環式基又はC5~C10複素環式基のうちの複素環式基は、それぞれ独立して置換されていないか又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つの基によって置換されて
いる、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ケトン系化合物は、
【化2】
【化3】
又は
【化4】
であり、アミノ基転移反応生成物は、
【化5】
【化6】
又は
【化7】
である、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノドナーは、イソプロピルアミンであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ技術分野に関し、具体的には、トランスアミナーゼ突然変異体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルアミンは、自然に幅広く存在しており、多くの重要な生体活性分子の構造単位でありながら、天然産物とキラル医薬品の合成に重要な中間体である。多くのキラルアミンは、1つ又は複数のキラル中心を含み、異なるキラル医薬品は、薬理学的活性、代謝プロセス、代謝レート及び毒性において有意差があり、一般的には、1種のエナンチオマーは有効であるが、ほかのエナンチオマーは、効果が低く又は無効であり、ひいては有毒である。従って、如何にキラル中心を含む化合物を効率的で、立体特異的に構築するかは、医薬品の研究開発において重要な意味を持っている。
【0003】
ω-トランスアミナーゼ(ω-TA)は、トランスフェラーゼ類に属し、その他のトランスアミナーゼ類と同様に、1つのアミノ基とケト基との間の交換プロセスを触媒する。ほとんどの場合に、ω-トランスアミナーゼは、1種類の酵素を意味し、ある酵素で触媒されるアミノ基転移反応においては、反応の基質又は生成物にα-アミノ酸が含まれない限り、該酵素をω-トランスアミナーゼと呼ぶことができる。ω-トランスアミナーゼは、ケトン系化合物を原料として、立体特異的なアミノ基転移作用により、キラルアミンを効率よく生産できる。その基質が相対的に安く、生成物の純度が高いという特徴により、研究者からますます注目されている(Green Chemistry,2017,19(2):333-360.)。
【0004】
しかしながら、野生型のトランスアミナーゼは、基質耐性が低く、活性が低く、安定性が低いなどの欠陥が存在することが多く、産業用アプリケーションと大きな距離がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術における野生型のトランスアミナーゼが工業化生産に適用されないという技術的課題を解決するために、トランスアミナーゼ突然変異体及びその使用を提供することを主旨とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、トランスアミナーゼ突然変異体を提供している。該トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列が突然変異して得られたアミノ酸配列であり、突然変異は、少なくとも、第19位、第41位、第43位、第72位、第76位、第92位、第107位、第125位、第132位、第226位、第292位、第295位、第308位、第332位の突然変異部位の1つを含み、且つ第19位がセリンに突然変異し、第41位がセリンに突然変異し、第43位がアスパラギンに突然変異し、第72位のグリシンがロイシンに突然変異し、第76位のロイシンがアラニンに突然変異し、第92位のリジンがグリシンに突然変異し、第107位のロイシンがイソロイシンに突然変異し、第125位のセリンがアラニンに突然変異し、第132位のセリンがアラニンに突然変異し、第226位のアラニンがグリシンに突然変異し、第292位のバリンがシステインに突然変異し、第295位のアラニンがグリシンに突然変異し、第308位がセリンに突然変異し、第332位がセリンに突然変異し、又はトランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、突然変異したアミノ酸配列における突然変異部位を有し、且つ突然変異したアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
【0007】
さらに、トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29又は配列番号30に示されるアミノ酸配列であり、又は、トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29又は配列番号30に示されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
【0008】
本発明の他の態様によれば、DNA分子を提供する。該DNA分子は、上記いずれか1種のトランスアミナーゼ突然変異体をコードする。
【0009】
さらに、DNA分子の配列は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59又は配列番号60に示される配列であり、又は、DNA分子の配列は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59又は配列番号60と95%以上の相同性を有する配列である。
【0010】
本発明の一態様によれば、組換えプラスミドを提供する。該組換えプラスミドは、上記いずれか1種のDNA分子を含有する。
【0011】
さらに、組換えプラスミドは、pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19である。
【0012】
本発明の一態様によれば、宿主細胞を提供する。該宿主細胞は、上記いずれか1種の組換えプラスミドを含有する。
【0013】
さらに、宿主細胞は、原核細胞、酵母又は真核細胞を含み、好ましくは、原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5a形質転換受容性細胞である。
【0014】
本発明の一態様によれば、キラルアミンの生産方法を提供している。該方法は、上記いずれか1種のトランスアミナーゼ突然変異体であるトランスアミナーゼでケトン系化合物及びアミノドナーに対してアミノ基転移反応を触媒するステップを含む。
【0015】
前記ケトン系化合物は、
【化1】
であり、ここでは、R
1とR
2は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基、C5~C10シクロアルキル基、C5~C10アリール基又はC5~C10ヘテロアリール基であり、又は、R
1とR
2とは、カルボニル基上の炭素と共にC5~C10複素環式基、C5~C10炭素環式基又はC5~C10ヘテロアリール基を形成し、前記C5~C10複素環式基とC5~C10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子は、それぞれ独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1種であり、前記C5~C10アリール基のうちのアリール基、C5~C10ヘテロアリール基のうちのヘテロアリール基、C5~C10炭素環式基のうちの炭素環式基又はC5~C10複素環式基のうちの複素環式基は、それぞれ独立して置換されていないか又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つの基で置換されており、好ましくは、前記ケトン系化合物は、
【化2】
【化3】
又は
【化4】
であり、アミノ基転移反応生成物は、
【化5】
【化6】
又は
【化7】
であり、より好ましくは、ケトン系化合物は、
【化8】
であり、アミノ基転移反応生成物は、
【化9】
であり、好ましくは、アミノドナーは、イソプロピルアミンである。
【0016】
本発明の上記トランスアミナーゼ突然変異体は、配列番号1に示されるトランスアミナーゼを基礎として、部位特異的な突然変異の方法によって突然変異することによって、そのアミノ酸配列を変え、タンパク質の構造及び機能を変化させることを実現し、さらに標的スクリーニングの方法によって、上記突然変異部位を有するトランスアミナーゼを得る。本発明のトランスアミナーゼ突然変異体は、酵素活性が大幅に向上するという利点を有し、その酵素活性がトランスアミナーゼの母本に比べて数倍向上され、且つ酵素特異性もその分向上され、それによりキラルアミンの工業的生産コストを大幅に削減させた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、衝突しない限り、本願の実施例及び実施例の特徴は、互いに組み合わせることができる。以下、実施例を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0018】
放線菌Actinobacteria sp.に由来のアミノトランスフェラーゼ(アミノ基転移酵素とも呼ばれる)は、
【化10】
を
【化11】
への変換を高選択的に触媒できるが、その活性が低く、安定性が悪く、反応時に添加する酵素量が多い。本発明の発明者は、指向性進化方法によりActinobacteria sp.に由来のアミノトランスフェラーゼの活性及び安定性を向上し、酵素の使用量を低減させる。まず、全プラスミドPCRの方式でActinobacteria sp.に由来のアミノトランスフェラーゼに突然変異部位を導入して、突然変異体に対して活性及び安定性の検出を行い、活性又は安定性が向上された突然変異体を選択する。
【0019】
Actinobacteria sp.に由来のアミノトランスフェラーゼをテンプレートとして、53対の部位特異的な突然変異プライマー(P19S、F71Y、G72Y、G72L、H73T、L76A、L76V、V80T、K92G、K92D、L105I、L105M、L107I、F133M、N135T、N135S、T137S、G147F、Y161S、I163C、I163V、A180L、S210I、S210V、T220L、T220A、A226C、A226G、N228G、P234S、S280L、Y284L、T293S、A295G、P308S、V317I、P332S、V31Y、E41S、S43N、G101S、K121V、R122D、C123M、S125A、S132A、S156N、H185T、A208R、K245V、L260K、F273V、V292C)を設計しており、部位特異的な突然変異手段を用いて、pET-22b(+)を発現ベクターとして、標的遺伝子を持っている突然変異プラスミドを取得する。
【0020】
ここでは、部位特異的な突然変異とは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法で標的DNA断片(ゲノムであってもよいし、プラスミドであってもよい)に、塩基の添加、削除、部位突然変異などを含む所望の変化(一般的には、有利な方向への変化を表徴する)を導入することを指す。部位特異的な突然変異は、DNAで発現された標的タンパク質の性状及び表徴を迅速で効率的に向上させることができ、遺伝子研究において非常に有用な方法である。
【0021】
全プラスミドPCRで部位特異的な突然変異を導入する手段は、簡単かつ効率的であり、現在多く使われている手段である。その原理は、突然変異部位を含む一対のプライマー(フォワード、リバース)と、テンプレートプラスミドとをアニーリングした後、ポリメラーゼで「サイクル伸長」することである。いわゆるサイクル伸長とは、ポリメラーゼでテンプレートに従ってプライマーが伸長し、1回り伸長させた後、ポリメラーゼがプライマーの5’端に戻って伸長が終止し、さらに、加熱、アニール、伸長というサイクルを繰り返すことを経ることを指す。この反応は、ローリングサークル増幅とは異なり、複数のタンデムコピーを形成することがない。フォワードのプライマーの伸長生成物とリバースのプライマーの伸長生成物とがアニーリングされた後に、切れ込みを有する開環状プラスミドとなるようにペアリングする。DpnIで伸長生成物を酵素消化し、元のテンプレートプラスミドが通常の大腸菌に由来し、damメチル化で修飾されているので、DpnIに高感受性で切断されやすく、一方、生体外で合成した突然変異配列を有するプラスミドは、メチル化されていないので、切られておらず、従って、それ以降の形質転換において形質転換に成功にし、突然変異プラスミドのクローンが得られ可能である。
【0022】
上記突然変異プラスミドを大腸菌細胞に形質転換し、大腸菌で過剰発現させる。次に、超音波細胞破砕方法で粗酵素を取得する。トランスアミナーゼ誘導発現の最適な条件は、25℃で、0.1mMのIPTGにより一晩誘導することである。
【0023】
ソフトウェアを用いてトランスアミナーゼの三次元構造に対してコンピュータシミュレート分析を行った結果、G72Lが活性ポケットの近傍に位置し、且つタンパク質二量化体の界面近傍に位置し、従って、タンパク質二量体の結合能力を強化させ、タンパク質をより安定化させる。V292Cが補因子PLPの結合領域にあるため、PLPの結合能力を強化させる可能性がある。A226G、A295Gが基質結合ポケットの近傍にあるため、基質の向き方向に影響を与え、触媒効率を強化させる可能性がある。
【0024】
本発明の典型的な実施形態によれば、トランスアミナーゼ突然変異体を提供する。該トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列が突然変異して得られたアミノ酸配列であり、突然変異は、第19位、第41位、第43位、第72位、第76位、第92位、第107位、第125位、第132位、第226位、第292位、第295位、第308位、第332位の突然変異部位の少なくとも1つを含み、且つ第19位がセリンに突然変異し、第41位がセリンに突然変異し、第43位がアスパラギンに突然変異し、第72位のグリシンがロイシンに突然変異し、第76位のロイシンがアラニンに突然変異し、第92位のリジンがグリシンに突然変異し、第107位のロイシンがイソロイシンに突然変異し、第125位のセリンがアラニンに突然変異し、第132位のセリンがアラニンに突然変異し、第226位のアラニンがグリシンに突然変異し、第292位のバリンがシステインに突然変異し、第295位のアラニンがグリシンに突然変異し、第308位がセリンに突然変異し、第332位がセリンに突然変異し、又は、トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、突然変異したアミノ酸配列における突然変異部位を有し、且つ突然変異したアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
【0025】
本明細書で用いられる用語「相同性」とは、本分野における公知の意味を有し、当業者にとっては、異なる配列間の相同性を測定する規則、標準も知られている。本発明では、異なる程度の相同性で限定される配列は、改良したトランスアミナーゼ活性を兼ねる必要がある。当業者は、本願で開示される内容の教示でトランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は上記突然変異したアミノ酸配列における突然変異部位を有し、且つ突然変異したアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を取得することができる。
【0026】
好ましくは、トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29又は配列番号30に示されるアミノ酸配列であり、又はトランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29又は配列番号30に示されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
【0027】
本明細書で用いられる用語「相同性」は、本分野における公知の意味を有し、当業者にとっては、異なる配列間の相同性を測定する規則、標準も知られている。本発明では、異なる程度の相同性で限定される配列は、改良したトランスアミナーゼ活性を兼ねる必要がある。上記実施形態では、好ましくは、トランスアミナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29又はSEQID NO:30と95%以上の相同性を有し、また、改良したトランスアミナーゼ活性を有するアミノ酸配列を有しまたはコードする。当業者は、本願で開示される内容の教示で、このような突然変異体配列を取得できる。
【0028】
本発明の上記トランスアミナーゼ突然変異体は、配列番号1(コードするDNAは、配列番号31である)に示されるトランスアミナーゼを基礎として、部位特異的な突然変異の方法によって突然変異することによって、そのアミノ酸配列を変え、タンパク質構造と機能を変化させることを実現し、さらに標的スクリーニングの方法によって、上記突然変異部位を有するトランスアミナーゼを得る。本発明のトランスアミナーゼ突然変異体は、酵素活性が大幅に向上するという利点を有し、その酵素活性がトランスアミナーゼの母本に比べて6倍向上され、且つ酵素特異性もその分向上され、それにより、キラルアミンの工業的生産のコストを大幅に削減させた。
【0029】
本発明の典型的な実施形態によれば、Actinobacteria sp.に由来のトランスアミナーゼでは、第72位のグリシンがロイシンに突然変異し;又は第76位のロイシンがアラニンに突然変異し;又は第107位のロイシンがイソロイシンに突然変異し;又は第125位のセリンがアラニンに突然変異し;又は第132位のセリンがアラニンに突然変異し;又は第76位のロイシンがアラニンに突然変異し、第125位のセリンがアラニンに突然変異し、及び第226位のアラニンがグリシンに突然変異し;又は第76位のロイシンがアラニンに突然変異し、第107位のロイシンがイソロイシンに突然変異し、第125位のセリンがアラニンに突然変異し、及び第226位のアラニンがグリシンに突然変異し;又は第76位のロイシンがアラニンに突然変異し、第125位のセリンがアラニンに突然変異し、第132位のセリンがアラニンに突然変異し、及び第226位のアラニンがグリシンに突然変異し;又は第76位のロイシンがアラニンに突然変異し、第107位のロイシンがイソロイシンに突然変異し、第125位のセリンがアラニンに突然変異し、第132位のセリンがアラニンに突然変異し、及び第226位のアラニンがグリシンに突然変異する。
【0030】
本発明の典型的な実施形態によれば、DNA分子を提供する。該DNA分子は、上記トランスアミナーゼ突然変異体をコードする。好ましくは、DNA分子の配列は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59又は配列番号60に示される配列であり、又はDNA分子の配列は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59又は配列番号60と95%以上の相同性を有する配列である。上記DNAでコードして得られたトランスアミナーゼは、酵素活性及び酵素の安定性を向上させ、キラルアミンの工業生産中において加える酵素量を減少させ、後処理の難度を軽減させることができる。
【0031】
本発明の上記DNA分子は、「発現カセット」の形態として存在してもよい。「発現カセット」は、線状又は環状の核酸分子を意味し、特定のヌクレオチド配列の適切な宿主細胞の中での発現を指導可能なDNA及びRNA配列を含む。一般的には、標的ヌクレオチドに効果的に連結され、非強制的には終止信号及び/又はその他の制御素子に効果的に連結されたプロモータを含む。発現カセットは、さらに、ヌクレオチド配列が正確に翻訳されるのに所要の配列を含んでもよい。コード領域は、一般的に、標的タンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向において標的機能RNA、たとえばアンチセンスRNA又は非翻訳RNAもコードする。標的ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであってもよく、キメラとは、少なくとも1つの成分が少なくとも1つの他の成分と異種であることを意味する。発現カセットは、天然に存在してもよいが、異種発現のための有効組換えにより得られる。
【0032】
本発明の典型的な実施形態によれば、組換えプラスミドを提供する。該組換えプラスミドは、上記いずれか1種のDNA分子を含有する。上記組換えプラスミドのDNA分子は、組換えプラスミドの適切な位置に配置されたところ、上記DNA分子がコピー、転写又は発現を正確で順調に行うことができる。
【0033】
本発明では、上記DNA分子を限定するときに、「含有」という単語を用いるが、DNA配列の両端にその機能と関係がない他の配列を任意に加えることができるわけではない。当業者にとっては、組換え操作の要件を満たすために、DNA配列の両端に適切な制限エンドヌクレアーゼの酵素切断サイトを加え、又は開始コドン、停止コドンなどを余分に増加する必要があり、従って、密閉式表現で限定すると、これらの状況を確実にカバーすることができない。
【0034】
本発明に用いられる用語「プラスミド」は、二本鎖又は一本鎖の線状又は環状形態の任意のプラスミド、コスミド、ファージ又は、アグロバクテリウムの二元核酸分子を含み、好ましくは、組換え発現プラスミドであり、原核発現プラスミドであってもよいし、真核発現プラスミドであってもよいが、原核発現プラスミドが好適であり、いくつかの実施態様では、組換えプラスミドは、pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19から選択される。より好ましくは、上記組換えプラスミドは、pET-22b(+)である。
【0035】
本発明の典型的な実施形態によれば、上記いずれか1種の組換えプラスミドを含有する宿主細胞を提供する。本発明に適用できる宿主細胞は、原核細胞、酵母又は真核細胞を含むが、これらに限られない。好ましくは、原核細胞は、真正細菌、たとえばグラム陰性菌又はグラム陽性菌である。より好ましくは、原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は、大腸菌DH5a形質転換受容性細胞である。
【0036】
本発明の典型的な実施形態によれば、キラルアミンの生産方法を提供する。該方法は、上記いずれか1種のトランスアミナーゼ突然変異体であるトランスアミナーゼでケトン系化合物及びアミノドナーに対してアミノ基転移反応を触媒するステップを含む。本発明の上記トランスアミナーゼ突然変異体がより高い酵素触媒活性を有するため、本発明のトランスアミナーゼ突然変異体で製造されるキラルアミンは、生産コストを削減できるだけではなく、得られたキラルアミンは、ee値が99%より大きく、de値が98%である。
【0037】
本発明の典型的な実施形態によれば、前記ケトン系化合物は、
【化12】
であり、ここでは、R
1とR
2は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基、C5~C10シクロアルキル基、C5~C10アリール基又はC5~C10ヘテロアリール基であり、又はR1とR2とは、カルボニル基上の炭素と共にC5~C10複素環式基、C5~C10炭素環式基又はC5~C10ヘテロアリール基を形成し、前記C5~C10複素環式基とC5~C10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子は、それぞれ独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1種であり、前記C5~C10アリール基のうちのアリール基、C5~C10ヘテロアリール基のうちのヘテロアリール基、C5~C10炭素環式基のうちの炭素環式基又はC5~C10複素環式基のうちの複素環式基は、それぞれ独立して置換されていないか又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つの基で置換されており、好ましくは、前記ケトン系化合物は、
【化13】
【化14】
又は
【化15】
であり、アミノ基転移反応生成物は、
【化16】
【化17】
又は
【化18】
であり、より好ましくは、ケトン系化合物は、
【化19】
であり、アミノ基転移反応生成物は、
【化20】
であり、好ましくは、アミノドナーは、イソプロピルアミンである。
【0038】
以下、実施例を参照しながら本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0039】
当業者に知られるように、本発明の精神を逸脱しない限り、本発明に対して様々な修正を行うことができ、このような修正も本発明の範囲に落ちる。また、下記実験方法は、特に指定がない限り、いずれも従来の方法であり、用いられた実験材料は、特に指定がない限り、いずれも商業会社から簡単に入手できる。
【0040】
下記実施例で言及される主原料は、以下のとおりである。
【化21】
主原料1:(S)-2-メチル-4-オキソピペリジン-1-t-ブチルカルボキシレート(tert-butyl(2S)-2-methy1-4-oxopiperdine-1-carboxylate)、CAS 790667-43-5。
【0041】
【化22】
主原料2:(S)-3-メチル-4-オキソピペリジン-1-t-ブチルカルボキシレート((S)tert-butyl-3-methy1-4-oxopiperdine-1-carboxylate)。
【0042】
【化23】
主原料3:N-tert-ブトキシカルボニル基-3-ピペリジノン(N-Boc-3-piperidone)、CAS 98977-36-7。
【0043】
実施例1
10mLの反応フラスコにおいて、40mgのイソプロピルアミンを1mLの0.2Mのリン酸塩緩衝液に加え、pHを7.0~7.5に調整し、120mgの配列番号1トランスアミナーゼを加え、0.4mgのリン酸ピリドキサールを加え、均一に混合し後、DMSO 0.2mLに溶解した40mgの
【化24】
を滴下し、体系のpHを7.0~7.5にし、35℃±3℃の恒温で16h撹拌した。GC検出により体系の変換率を検出した。上記ステップに従って順に配列番号配列番号13~26の突然変異体トランスアミナーゼで反応したデータを以下の表1に示した。
【0044】
【0045】
ここでは、16hは、16hの反応を指し、パーセンテージは、変換率であり、2wtは、加える酵素の重量が基質の重量の2倍であることを指す。
【0046】
単一部位突然変異体の変換効果は、母本よりも向上したが、理想的な効果が得られなかった。
【0047】
実施例2
一般的には、単一部位突然変異による突然変異体の性能は、母本と大きな差がある可能性が低く、突然変異部位の組み合わせにより、より優れた突然変異体が得られ可能である。従って、DNA shufflingの方法によって突然変異部位をランダムに組換え、突然変異ライブラリーを構築し、次に、より優れた突然変異体を取得するように、スクリーニングした。
【0048】
DNA shufflingは、遺伝子の分子レベルでの有性組み換えである。1群の相同遺伝子をヌクレアーゼIで消化してランダム断片にし、これらのランダム断片からライブラリーを構築し、互いにプライマーとテンプレートとしてPCR増幅を行った。1つ遺伝子コピー断片が他の遺伝子コピーのプライマーとなると、テンプレート交換及び遺伝子組換えが発生した。
【0049】
酵素液の調製方法:96ウェルプレートを遠心して上清培地を除去し、各ウェルに200μlの酵素分解溶液(リゾチーム2mg/mL、ポリミキシン0.5mg/mL、pH=7.0)を加え、37℃で3h保温しながら破砕した。
【0050】
ハイスループットスクリーニング方法:
250μLの活性測定系:
【化25】
の最終濃度は0.27mg/mL、4-ニトロフェニルエチルアミン塩酸塩の最終濃度は12.24mg/mL、PLPの最終濃度は0.01mg/mL、破砕酵素液の添加量は45μL、pH=8.0、温度は30℃である。
【0051】
スクリーニングして得られた突然変異体に対して振盪フラスコ培養を行い、次に増幅反応を行った。
【0052】
トランスアミナーゼ誘導発現の最適な条件:25℃で、0.1mMのIPTGにより一晩誘導する。
【0053】
配列番号1及び製造された多部位突然変異体配列番号2~12及び27~30を、以下のように反応させた。
【0054】
10mLの反応フラスコにおいて、40mgのイソプロピルアミンを1mLの0.2Mのリン酸塩緩衝液に加え、pHを7.0~7.5に調整し、40mgのトランスアミナーゼ、0.4mgのリン酸ピリドキサールを加え、均一に混合した後、DMSO 0.2mLに溶解した40mgの主原料1を滴下し、体系のpHを7.0~7.5にし、35℃±3℃の恒温で16h~64h撹拌した。GC検出により体系の変換率を検出し、突然変異体の反応データを以下の表2に示した。
【0055】
【0056】
実施例3
2つのトランスアミナーゼ配列番号1をそれぞれ40mg用意し、一つを4℃で2h放置し、もう1つを50℃で2h保温し、次に以下の体系のように反応させた。
【0057】
10mLの反応フラスコにおいて、40mgのイソプロピルアミンを1mLの0.2Mのリン酸塩緩衝液に加え、pHを7.0~7.5に調整し、40mgの配列番号7トランスアミナーゼ、0.4mgのリン酸ピリドキサールを加え、均一に混合した後、DMSO 0.2mLに溶解した40mgの主原料1を滴下し、体系のpHを7.0~7.5にし、35℃±3℃の恒温で16h撹拌した。
【0058】
GC検出により体系の変換率を検出し、突然変異体安定性は、50℃で保温したトランスアミナーゼの変換率が、4℃で保温したトランスアミナーゼの変換率に占める百分率として示される。
【0059】
配列番号1~30の安定性データは、以下の表3に示される。
【0060】
【0061】
実施例4
1000mLの反応フラスコにおいて、4gのイソプロピルアミンを100mLの0.2Mのリン酸塩緩衝液に加え、pHを7.0~7.5に調整し、凍結乾燥粉質量が0.4gの配列番号7トランスアミナーゼ、40mgのリン酸ピリドキサールを加え、均一に混合し後、DMSO 20mLに溶解した4gの主原料1を滴下し、体系のpHを7.0~7.5にし、35℃±3℃の恒温で64h撹拌した。HPLCで検出したところ、変換率は、98.2%であり、反応終了後、100mLの酢酸エチルを加えて3回抽出し、抽出した有機相を合併した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、乾燥するまで回転蒸発し、3.62gの製品を得て、収率は90.2%、e.e.値は99%であった。
【0062】
上記ステップに従って順に行われた、配列番号配列番号6、7、10、12の突然変異体トランスアミナーゼで反応したデータを、以下の表4に示した。
【0063】
【0064】
実施例5
1000mLの反応フラスコにおいて、4gのイソプロピルアミンを100mLの0.2Mのリン酸塩緩衝液に加え、pHを7.0~7.5に調整し、凍結乾燥粉質量が0.4gの配列番号7トランスアミナーゼ、40mgのリン酸ピリドキサールを加え、均一に混合し後、DMSO 20mLに溶解した4gの主原料2を滴下し、体系のpHを7.0~7.5にし、35℃±3℃の恒温で64h撹拌した。HPLCで検出したところ、変換率は、99.1%であり、反応終了後、100mLの酢酸エチルを加えて3回抽出し、抽出した有機相を合併した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、乾燥するまで回転蒸発し、3.75gの製品を得て、収率は93.8%、e.e.値は99%であった。
【0065】
実施例6
1000mLの反応フラスコにおいて、4gのイソプロピルアミンを100mLの0.2Mのリン酸塩緩衝液に加え、pHを7.0~7.5に調整し、凍結乾燥粉質量が0.2gの配列番号7トランスアミナーゼ、40mgのリン酸ピリドキサールを加え、均一に混合し後、DMSO 20mLに溶解した4gの主原料3を滴下し、体系のpHを7.0~7.5にし、35℃±3℃の恒温で64h撹拌した。HPLCで検出したところ、変換率は、99.5%であり、反応終了後、100mLの酢酸エチルを加えて3回抽出し、抽出した有機相を合併した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、乾燥するまで回転蒸発し、3.79gの製品を得て、収率は94.8%、e.e.値は99%であった。
【0066】
以上の説明からわかるように、本発明の上記実施例は、以下の技術的効果を実現した。本発明の上記トランスアミナーゼ突然変異体は、配列番号1に示されるトランスアミナーゼを基礎として、部位特異的な突然変異の方法によって突然変異することによって、そのアミノ酸配列を変え、タンパク質構造及び機能を変えることを実現し、さらに標的スクリーニングの方法によって、上記突然変異部位を有するトランスアミナーゼを得る。本発明のトランスアミナーゼ突然変異体は、酵素活性が大幅に向上するという利点を有し、その酵素特異性もその分向上され、それにより、キラルアミンの工業的生産のコストを大幅に削減させた。
【0067】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、当業者にとっては、本発明は様々な変更や変化が可能である。本発明の精神及び原則を逸脱しない限り、行われた任意の修正、等価置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]トランスアミナーゼ突然変異体であって、
アミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列が突然変異して得られたアミノ酸配列であり、前記突然変異は、第72位、第76位、第92位、第107位、第125位、第132位、第226位、第292位、第295位、第308位及び第332位の突然変異部位の少なくとも1つを含み、且つ第19位がセリンに突然変異し、第41位がセリンに突然変異し、第43位がアスパラギンに突然変異し、前記第72位のグリシンがロイシンに突然変異し、第76位のロイシンがアラニンに突然変異し、第92位のリジンがグリシンに突然変異し、第107位のロイシンがイソロイシンに突然変異し、第125位のセリンがアラニンに突然変異し、第132位のセリンがアラニンに突然変異し、第226位のアラニンがグリシンに突然変異し、第292位のバリンがシステインに突然変異し、第295位のアラニンがグリシンに突然変異し、第308位がセリンに突然変異し、第332位がセリンに突然変異し、又は、アミノ酸配列は、前記突然変異したアミノ酸配列中の前記突然変異部位を有し、且つ前記突然変異したアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列である、
ことを特徴とするトランスアミナーゼ突然変異体。
[実施形態2]アミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29又は配列番号30に示されるアミノ酸配列であり、又は
アミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29又は配列番号30に示されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列である、
ことを特徴とする実施形態1に記載のトランスアミナーゼ突然変異体。
[実施形態3]実施形態1又は2に記載のトランスアミナーゼ突然変異体をコードすることを特徴とするDNA分子。
[実施形態4]前記DNA分子の配列は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59又は配列番号60に示される配列であり、又は
前記DNA分子の配列は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59又は配列番号60と95%以上の相同性を有する配列である、
ことを特徴とする実施形態3に記載のDNA分子。
[実施形態5]実施形態3又は4に記載のDNA分子を含有することを特徴とする組換えプラスミド。
[実施形態6]pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19である、
ことを特徴とする実施形態5に記載の組換えプラスミド。
[実施形態7]実施形態5又は6に記載の組換えプラスミドを含有することを特徴とする宿主細胞。
[実施形態8]前記宿主細胞は、原核細胞、酵母又は真核細胞を含み、好ましくは、前記原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5α形質転換受容性細胞である、
ことを特徴とする実施形態7に記載の宿主細胞。
[実施形態9]ケトン系化合物からのキラルアミンの生産における実施形態1又は2に記載のトランスアミナーゼ突然変異体の使用。
[実施形態10]トランスアミナーゼでケトン系化合物及びアミノドナーのアミノ基転移反応を触媒するステップを含むキラルアミンの生産方法であって、
前記トランスアミナーゼは、実施形態1又は2に記載のトランスアミナーゼ突然変異体である、
ことを特徴とするキラルアミンの生産方法。
[実施形態11]前記ケトン系化合物は、
【化26】
であり、ここでは、R
1
とR
2
は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基、C5~C10シクロアルキル基、C5~C10アリール基又はC5~C10ヘテロアリール基であり、又はR
1
とR
2
とは、カルボニル基上の炭素と共にC5~C10複素環式基、C5~C10炭素環式基又はC5~C10ヘテロアリール基を形成し、前記C5~C10複素環式基とC5~C10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子は、それぞれ独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1種であり、前記C5~C10アリール基のうちのアリール基、C5~C10ヘテロアリール基のうちのヘテロアリール基、C5~C10炭素環式基のうちの炭素環式基又はC5~C10複素環式基のうちの複素環式基は、それぞれ独立して置換されていないか又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つの基によって置換されており、好ましくは、前記ケトン系化合物は、
【化27】
【化28】
又は
【化29】
であり、アミノ基転移反応生成物は、
【化30】
【化31】
又は
【化32】
であり、より好ましくは、ケトン系化合物は、
【化33】
であり、アミノ基転移反応生成物は、
【化34】
であり、好ましくは、アミノドナーは、イソプロピルアミンである
ことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
【配列表】