(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】オイルセパレータ
(51)【国際特許分類】
B04B 1/08 20060101AFI20220210BHJP
B04B 7/14 20060101ALI20220210BHJP
B01D 45/14 20060101ALI20220210BHJP
F01M 13/04 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B04B1/08
B04B7/14
B01D45/14
F01M13/04 A
(21)【出願番号】P 2020533993
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2018029010
(87)【国際公開番号】W WO2020026407
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220804
【氏名又は名称】東京濾器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤志
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/046944(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/145646(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0136649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/12-14
B04B 1/04-08、5/08、7/12-14
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを分離するオイルセパレータであって、
中央に開口をそれぞれ有し、前記開口が重なるように軸
の方向に隙間を置いて積み重ねられ、前記軸の回りに回転する複数枚の分離ディスクと、
前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられることに伴って形成されるとともに前記開口からなる中央空間
において、前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられている範囲に亘って設けられ、前記中央空間を内側の領域と外側の領域に区切る整流部と、を備え、
前記整流部に、前記内側の領域と前記外側の領域とを連通する連通部が形成され、
前記連通部が、前記軸の方向における前記整流部の一端から他端にかけて前記軸の方向に細長く設けられたスリットであり、
前記ガスが前記内側の領域に供給されて、前記連通部を通って前記外側に領域に流れて、前記外側の領域から前記複数枚の分離ディスクの間の隙間に流れ込む
オイルセパレータ。
【請求項2】
ミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを分離するオイルセパレータであって、
中央に開口をそれぞれ有し、前記開口が重なるように軸
の方向に隙間を置いて積み重ねられ、前記軸の回りに回転する複数枚の分離ディスクと、
前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられることに伴って形成されるとともに前記開口からなる中央空間
において、前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられている範囲に亘って設けられ、前記中央空間を内側の領域と外側の領域に区切る整流部と、を備え、
前記整流部に、前記内側の領域と前記外側の領域とを連通する連通部が形成され、
前記連通部が、前記軸の方向に間隔を置いて前記軸の方向に配列された複数の穴からなり、
前記ガスが前記内側の領域に供給されて、前記連通部を通って前記外側に領域に流れて、前記外側の領域から前記複数枚の分離ディスクの間の隙間に流れ込む
オイルセパレータ。
【請求項3】
ミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを分離するオイルセパレータであって、
中央に開口をそれぞれ有し、前記開口が重なるように軸
の方向に隙間を置いて積み重ねられ、前記軸の回りに回転する複数枚の分離ディスクと、
前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられることに伴って形成されるとともに前記開口からなる中央空間
において、前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられている範囲に亘って設けられ、前記中央空間を内側の領域と外側の領域に区切る整流部と、を備え、
前記整流部に、前記内側の領域と前記外側の領域とを連通する連通部が形成され、
前記連通部が、前記軸の方向に間隔を置いて前記軸の方向に配列されるとともに周方向に細長く設けられた複数のスリットからなり、
前記ガスが前記内側の領域に供給されて、前記連通部を通って前記外側に領域に流れて、前記外側の領域から前記複数枚の分離ディスクの間の隙間に流れ込む
オイルセパレータ。
【請求項4】
前記中央空間において前記軸の回りに回転するスピンドルと、
前記スピンドルに外装されたハブと、
前記ハブから径方向外方に延出し、周方向に間隔を置いて配列された複数のスポークと、を更に備え、
前記整流部が前記複数のスポークの間において前記ハブから外側に離間し且つ前記分離ディスクから内側に離間して設けられ、
前記複数枚の分離ディスクが前記スポークに固定されることによって前記スピンドル、前記ハブ、前記複数のスポーク、前記複数枚の分離ディスク及び前記整流部が一体となって前記軸の回りに回転する
請求項1から
3の何れか一項に記載のオイルセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスに含まれるミスト状オイルをそのガスから分離するオイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブローバイガスからミスト状オイルを分離するオイルセパレータが開示されている。以下、特許文献1において使用した符号を括弧書きにして用い、特許文献1に開示されたオイルセパレータについて簡単に説明する。
【0003】
ハウジング(20)が内部空間を有し、その内部空間が隔壁部材(31)によって区切られることによって隔壁部材(31)の上方の分離室(43)と隔壁部材(31)の下方の噴射室(44)が形成されている。噴射室(44)の底にはスピンドルシャフト(51)が立設されており、そのスピンドルシャフト(51)が隔壁部材(31)を上下に貫通する。そのスピンドルシャフト(51)がスピンドル(52)に挿入されており、そのスピンドル(52)がスピンドルシャフト(51)に回転可能に支持されている。分離室(43)内では、スピンドル(52)の周囲に複数枚の分離ディスク(63)が取り付けられており、それら分離ディスク(63)がスピンドル(52)の軸方向に積み重ねられている。
【0004】
噴射室(44)内では、ノズル(53)がスピンドル(52)の外周面に突設されており、エンジンからノズル(53)にオイルが供給されると、そのノズル(53)からオイルが周方向に噴射される。オイルの噴射圧力によってスピンドル(52)とともに分離ディスク(63)が回転駆動される。
エンジンから分離ディスク(63)のスタックの中央空間にブローバイガスが供給されると、そのブローバイガスが分離ディスク(63)の間の各隙間を外側に通過するが、その際にブローバイガス中のミスト状オイルが捕捉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分離ディスク(63)の間の各隙間を比較すると、ブローバイガスの流量が低い隙間では大量のオイルが分離されるが、ブローバイガスの流量が高い隙間では少量のオイルしか分離されない。全体としてオイルの分離効率の向上を図るためには、何れの隙間もオイルの分離に平均的に利用される必要がある。そのためには、分離ディスク(63)のスタックの中央空間に供給されたブローバイガスが、分離ディスク(63)の間の各隙間になるべく均等に分散して流れ込むことが好ましい。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、分離ディスクの間の各隙間になるべく均等に分散して流れ込むようにすることによって、オイルの分離効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、ミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを分離するオイルセパレータは、中央に開口をそれぞれ有し、前記開口が重なるように軸の方向に隙間を置いて積み重ねられ、前記軸の回りに回転する複数枚の分離ディスクと、前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられることに伴って形成されるとともに前記開口からなる中央空間において、前記複数枚の分離ディスクが積み重ねられている範囲に亘って設けられ、前記中央空間を内側の領域と外側の領域に区切る整流部と、を備え、前記整流部に、前記内側の領域と前記外側の領域とを連通する連通部が形成され、前記ガスが前記内側の領域に供給されて、前記連通部を通って前記外側に領域に流れて、前記外側の領域から前記複数枚の分離ディスクの間の隙間に流れ込む。
ここで、前記連通部が、前記軸の方向における前記整流部の一端から他端にかけて前記軸の方向に細長く設けられたスリットである。或いは、前記連通部が、前記軸の方向に間隔を置いて前記軸の方向に配列された複数の穴からなる。或いは、前記連通部が、前記軸の方向に間隔を置いて前記軸の方向に配列されるとともに周方向に細長く設けられた複数のスリットからなる。
【0009】
以上のように、中央空間に流れたガスは、内側の領域において整流部によって下方へ整流されながら、内側の領域から連通部を通って外側の領域へ流れる。従って、ガスが分離ディスクの間の各隙間にほぼ均等に分散して流れ込み、何れの隙間もオイルの分離にほぼ平均的に利用される。よって、全体としてオイルの分離効率が向上する。
【0013】
好ましくは、前記オイルセパレータが、前記中央空間において前記軸の回りに回転するスピンドルと、前記スピンドルに外装されたハブと、前記ハブから径方向外方に延出し、周方向に間隔を置いて配列された複数のスポークと、を更に備え、前記整流部が前記複数のスポークの間において前記ハブから外側に離間し且つ前記分離ディスクから内側に離間して設けられ、前記複数枚の分離ディスクが前記スポークに固定されることによって前記スピンドル、前記ハブ、前記複数のスポーク、前記複数枚の分離ディスク及び前記整流部が一体となって前記軸の回りに回転する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分離ディスクの間の各隙間にほぼ均等に分散して流れ込むため、何れの隙間もオイルの分離にほぼ平均的に利用される。よって、全体としてオイルの分離効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】クランクケース換気システムを示す概略図である。
【
図3】オイルセパレータを分解して俯瞰した分解斜視図である。
【
図5】
図4において切断箇所をV-Vによって示した断面の断面図である。
【
図9】
図5中にIX-IXによって切断箇所を示した断面の断面図である。
【
図10】
図5中にX-Xによって切断箇所を示した断面の断面図である。
【
図12】シミュレーション結果を示したグラフである。
【
図13】設計変更した整流板及び連通部が設けられた上部ホルダの斜視図である。
【
図14】設計変更した整流板及び連通部が設けられた上部ホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
1.クランクケース換気システム
図1に示すように、クランクケース換気システム1は、オイルセパレータ2と、ブリーザーパイプ3と、ガス供給管5と、オイル供給管10とを有する。オイルセパレータ2はエンジン4の側面に取り付けられている。ガス供給管5はエンジン4とオイルセパレータ2とに接続されている。エンジン4のクランクケース内のブローバイガスがガス供給管5に排出されて、ガス供給管5を通ってオイルセパレータ2に供給される。ブローバイガスにはミスト状オイルが含まれており、オイルセパレータ2がそのブローバイガスからミスト状オイルを分離する。
【0018】
ブリーザーパイプ3はオイルセパレータ2の上部とエンジン4の吸気側流路6との間に接続されている。ミスト状オイルが分離されたブローバイガスがオイルセパレータ2からブリーザーパイプ3に排出されて、ブリーザーパイプ3を通って吸気側流路6に環流される。環流されたブローバイガスは、エアフィルタ7からターボチャージャー8へ流れる新鮮な空気と混合される。ブローバイガスと新鮮な空気の混合気はターボチャージャー8によって圧縮される。その後、混合気は、チャージクーラー9によって冷却された上で、エンジン4に供給される。
【0019】
オイル供給管10はオイルセパレータ2の下部とエンジン4との間に接続されている。エンジン4内の作動オイルがエンジン4からオイル供給管10に送出されて、オイル供給管10を通ってオイルセパレータ2に供給される。オイルセパレータ2に供給された作動オイルの流動がオイルセパレータ2の動力に利用され、その動力によってオイルセパレータ2(特に、後述のローターユニット50)が動作する。エンジン4からオイルセパレータ2に供給される作動オイルは、エンジン4で用いられる潤滑オイルである。オイルセパレータ2が作動オイルによって動作すると、ミスト状オイルがブローバイガスから分離される。分離後のミスト状オイルは、オイルセパレータ2の内部において作動オイルに混合される。その混合されたオイルがオイルセパレータ2からエンジン4に排出される。
なお、クランクケース換気システム1は閉鎖型であるが、開放型であってもよい。開放型の場合、ブリーザーパイプ3がエンジン4の吸気側流路6に接続されず、そのブリーザーパイプ3の端部が開放されている。そのため、オイルセパレータ2によってミスト状オイルが分離されたブローバイガスは、ブリーザーパイプ3を通って大気に排出される。
【0020】
2.オイルセパレータの概要
図2~
図11を参照して、オイルセパレータ2について説明する。
図2~
図5に示すように、このオイルセパレータ2はハウジング20、下部隔壁部材31、中部隔壁部材32、上部隔壁部材33、ローターユニット50及びPCVバルブ90を備える。ハウジング20は下部ケース21、上部ケース22及びトップカバー23を有する。ハウジング20は下部ケース21、上部ケース22及びトップカバー23を組み立てて成り、ハウジング20の内側に内部空間が形成されている。下部隔壁部材31、中部隔壁部材32、隔壁部22a及び上部隔壁部材33がハウジング20の内側に設けられ、ハウジング20の内部空間が下部隔壁部材31、中部隔壁部材32、隔壁部22a及び上部隔壁部材33によって区切られている。ローターユニット50及びPCVバルブ90等は、ハウジング20の内部空間内に収容された状態でハウジング20に組み付けられている。
【0021】
以下では、特に断りのない限り、軸方向とは、ローターユニット50の回転軸に平行な方向を示し、周方向とは、ローターユニット50の回転軸を中心とした周方向を示し、径方向とは、ローターユニット50の回転軸に直交する方向を示すものとする。オイルセパレータ2がエンジン4に取り付けられた状態では、ローターユニット50の回転軸が鉛直な上下方向に延びる。
【0022】
3.ハウジング及びその内側の区画
ハウジング20及びその内部空間について説明するとともに、下部隔壁部材31、中部隔壁部材32、隔壁部22a及び上部隔壁部材33によるハウジング20の内部空間の区切りについて説明する。
【0023】
図3及び
図5~
図8に示すように、上部ケース22が筒状に設けられ、上部ケース22の上面及び下面が開放されている。上部ケース22の内側の上部に隔壁部22aが設けられ、上部ケース22の中空が隔壁部22aによって隔壁部22aよりも上側の空間と下側の空間に仕切られている。
【0024】
上部ケース22のうち隔壁部22aよりも下側の部分には、インレットポート24が設けられている。このインレットポート24はガス供給管5(
図1及び
図3参照)に接続されている。従って、ブローバイガスがエンジン4からガス供給管5及びインレットポート24を通ってハウジング20の内部空間のうち隔壁部22aよりも下側の部分(具体的には、後述の導入路41)に導入される。
【0025】
上部ケース22の内側には、円盤状の隔壁部22aから下方の離れた位置に中部隔壁部材32が設けられている。中部隔壁部材32の周縁部が上部ケース22の内周面に取り付けられ、上部ケース22の中空が中部隔壁部材32によって上下に区切られている。中部隔壁部材32の下面の中央部には、円筒状の嵌合部32bが下方に向けて突設されている。嵌合部32bの中空は、中部隔壁部材32の上面において開口するとともに、嵌合部32bの下端においても開口する。嵌合部32bの下端の開口には、支持部32dが嵌合部32bの下端の開口の中心から嵌合部32bの内周面まで放射状に設けられており、隣接する支持部32dの間に流通穴32eが形成されている。そのため、嵌合部32bの中空は流通穴32eを介して下に通じている。なお、支持部32dは、後述のスピンドルシャフト51の上端を支持する。
【0026】
隔壁部22aの下面には仕切り部22cが突出した状態で設けられ、仕切り部22cの下端が中部隔壁部材32の上面に突き当てられている。
図9に示すように、この仕切り部22cによって中部隔壁部材32と隔壁部22aの間の空間が導入路41とその導入路41を囲う第1チャンバー42とに区分けされている。
図5及び
図6に示すように、導入路41は、インレットポート24によってガス供給管5に連通しているとともに、流通穴32eによって中部隔壁部材32の下側の空間に連通している。ブローバイガスがエンジン4からガス供給管5及びインレットポート24を通って導入路41に導入され、導入されたブローバイガスが導入路41及び嵌合部32bを経由して、流通穴32eを通って中部隔壁部材32の下側へ流れる。
【0027】
隔壁部22aには第2連通孔22dが形成され(特に
図9参照)、その第2連通孔22dが隔壁部22aを上下に貫通する。第2連通孔22dの位置は仕切り部22cの外側であり、第1チャンバー42が第2連通孔22dによって隔壁部22aの上側の中空に連通している。一方、導入路41の上側が隔壁部22aによって塞がれ、隔壁部22aの上側の中空と導入路41が隔壁部22aによって仕切られている。
【0028】
図5及び
図6に示すように、中部隔壁部材32の周縁部を複数の第1連通孔32cが上下に貫通している。第1連通孔32cの位置は仕切り部22cの外側であり、第1チャンバー42が第1連通孔32cによって中部隔壁部材32の下側の中空に連通している。
【0029】
図5、
図7及び
図8に示すように、上部ケース22の下端には下部隔壁部材31が取り付けられ、上部ケース22の下側開口が下部隔壁部材31によって塞がれている。下部隔壁部材31は中部隔壁部材32から下方に離れており、中部隔壁部材32と下部隔壁部材31との間に分離室43が形成されている。この分離室43は上部ケース22内の中空の一部である。この分離室43内において、インレットポート24から導入路41、嵌合部32b及び流通穴32eを通って後述のローターユニット50のローター60に導入されたブローバイガスからミスト状オイルガスがローター60によって分離される。
【0030】
図5及び
図6に示すように、上部ケース22の上端には上部隔壁部材33が取り付けられ、上部ケース22の上側開口が上部隔壁部材33によって塞がれている。上部隔壁部材33は隔壁部22aから上方に離れており、上部隔壁部材33と隔壁部22aの間に第2チャンバー45が形成されている。上部隔壁部材33の中央部には開口部33aが形成され、その開口部33aが上部隔壁部材33を上下に貫通する。
【0031】
上部ケース22の上端にはトップカバー23が取り付けられている。このトップカバー23が上部隔壁部材33の上から上部隔壁部材33に覆い被さって、上部隔壁部材33の周縁部がトップカバー23の下端と上部ケース22の上端との間に挟持されている。トップカバー23がドーム状に形成されていて、トップカバー23の内側に第3チャンバー46が形成されている。第3チャンバー46と第2チャンバー45が上部隔壁部材33によって仕切られ、第3チャンバー46が開口部33aによって第2チャンバー45に連通している。
【0032】
トップカバー23にはアウトレットポート23aが設けられ、このアウトレットポート23aがトップカバー23の外側と第3チャンバー46とを連通させる。このアウトレットポート23aがブリーザーパイプ3に接続され、第3チャンバー46内の分離後のブローバイガスがアウトレットポート23a及びブリーザーパイプ3を通って吸気側流路6へ排出される。
【0033】
図5、
図7及び
図8に示すように、上部ケース22の下端には下部ケース21が取り付けられている。この下部ケース21が下部隔壁部材31にその下から覆い被さった状態で、下部ケース21の上端部が上部ケース22の下端の開口に嵌め込まれ、下部ケース21と上部ケース22がボルト等によって固定されている。そして、下部ケース21はその上面が開放された有底の箱状に形成されており、下部隔壁部材31の周縁部が下部ケース21の上端と上部ケース22の下端との間に挟持されており、下部隔壁部材31が下部ケース21内の噴射室44と上部ケース22内の分離室43を仕切っている。下部隔壁部材31の中央部には、ローターユニット50が通される通し孔31aが形成されている。
【0034】
下部隔壁部材31の下面には、下方へ垂下する筒状のオイルガード31gが設けられている。オイルガード31gは通し孔31aの周囲を囲繞する。
下部隔壁部材31には、複数のオイル穴31cが周方向に所定間隔で形成されている。これらオイル穴31cはオイルガード31gの周囲に配置されている。ブローバイガスから分離されたオイルが分離室43からこれらオイル穴31cを通って噴射室44に流れ込む。
【0035】
4.ブローバイガスの経路
図5に矢印で示すように、エンジン4からインレットポート24に導入されたブローバイガスは、導入路41、嵌合部32b、流通穴32e、ローター60、分離室43、第1連通孔32c、第1チャンバー42、第2連通孔22d、第2チャンバー45、開口部33a、第3チャンバー46の順に流れて、アウトレットポート23aからブリーザーパイプ3へ排出される。
【0036】
5.オイル導入路及びオイル排出口
図5及び
図8に示すように、下部ケース21にはオイル排出口21aが形成されている。オイル排出口21aは下部ケース21の側面において開口して、噴射室44内に通じている。オイル排出口21aがエンジン4に接続され、噴射室44内のオイルがオイル排出口21aを通ってエンジン4に排出される。
【0037】
下部ケース21の内底21dは、オイル排出口21aに向かって下りに傾斜する。下部ケース21の内底21dには、ボス21bが凸設されている。ボス21bにはオイル導入路21cが形成されている。このオイル導入路21cはボス21bの上面から下向きに穿設されて、横向きに分岐して下部ケース21の側面に開口している。この開口にオイル供給管10(
図1及び
図3参照)が接続されている。従って、作動オイルがエンジン4からオイル供給管10を通ってオイル導入路21cに導入される。
【0038】
オイル導入路21cの中途部には、作動オイルを濾過する網状のストレーナ35が設けられている。下部ケース21の下端からプラグ35aを取り外すことによって、オイル導入路21cの下端が開いて、ストレーナ35をオイル導入路21cから取り外すことができる。
【0039】
6.ローターユニット及び作動オイルについて
図3、
図5、
図7及び
図8に示すように、ローターユニット50は、ブローバイガスからミスト状オイルを分離するための機構である。ローターユニット50は、スピンドルシャフト51、スピンドル52、ローター60及び複数のノズル53等を備える。
【0040】
スピンドルシャフト51は、下部ケース21及び上部ケース22内において上下に延在して、下部隔壁部材31の通し孔31aを上下に貫通している。スピンドルシャフト51の下端部がオイル導入路21cの上端部に挿入されている。スピンドルシャフト51の上端部が支持部32dに支持されている。スピンドルシャフト51の内部には、第1オイル供給路51bがスピンドルシャフト51の中心線に沿って形成されている。第1オイル供給路51bの下端がスピンドルシャフト51の下端面において開口して、第1オイル供給路51bがオイル導入路21cに通じている。第1オイル供給路51bの上部がスピンドルシャフト51の中間部において径方向外方に向けて複数に分岐し、第1オイル供給路51bの端がスピンドルシャフト51の外周面において開口する。
【0041】
スピンドルシャフト51が筒状のスピンドル52に挿入され、このスピンドル52も下部隔壁部材31の通し孔31aを上下に貫通している。スピンドルシャフト51の上部がスピンドル52の上端から上方に突き出ているとともに、スピンドルシャフト51の下部がスピンドル52の下端から下方に突き出ている。スピンドルシャフト51の外周面とスピンドル52の内周面との間には隙間が形成されており、その隙間が第2オイル供給路52aである。この第2オイル供給路52aには、オイル導入路21cに導入された作動オイルが第1オイル供給路51bを通って供給される。
【0042】
スピンドル52の下端部においてスピンドルシャフト51が下側ブッシュ55に挿入され、その下側ブッシュ55がスピンドルシャフト51の外周面とスピンドル52の内周面との間に挟まれている。スピンドル52の上端部においてスピンドルシャフト51が上側ブッシュ56に挿入され、その上側ブッシュ56がスピンドルシャフト51の外周面とスピンドル52の内周面との間に挟まれている。
【0043】
スピンドル52のラジアル荷重がブッシュ55,56を介してスピンドルシャフト51に受けられ、スピンドル52が回転可能な状態でスピンドルシャフト51に支持されている。スピンドルシャフト51の上端部にナット58が螺合し、スピンドルシャフト51の下部がボス21bの上面に設けられたブッシュ54に挿入されている。そして、ナット58とブッシュ54との間にはワッシャー57、上側ブッシュ56、スピンドル52及び下側ブッシュ55が挟まれており、スピンドル52のスラスト荷重がブッシュ54及びナット58に受けられる。
【0044】
スピンドル52及びブッシュ55,56が軸方向に僅かに移動できるように、僅かな隙間が下側ブッシュ55とブッシュ54との間や上側ブッシュ56とワッシャー57との間やワッシャー57とナット58との間に存在する。具体的には、ローター60の回転時にはスピンドル52及びブッシュ55,56が軸方向に沿って上昇し、ローター60の停止時にはスピンドル52及びブッシュ55,56が下降する。
また、スピンドル52の内周面と上側ブッシュ56との間に僅かな隙間が存在し、第2オイル供給路52a内の作動オイルの一部がその隙間を通じてスピンドル52の外に流出する。以下、この流出した作動オイルを分離用オイルという。
【0045】
スピンドル52がスピンドルシャフト51に支持された状態では、スピンドル52が下部隔壁部材31の通し孔31aに通されており、そのスピンドル52が通し孔31aから上方へ延び出ているとともに、通し孔31aから下方へ延び出ている。
【0046】
スピンドル52の下部の外周面には、複数のノズル53が周方向に等間隔(例えば、120°の間隔)で突設されている。これらノズル53は外向き斜め下に取り付けられている。ノズル53の先端寄りの周面には、噴射口53aが形成されている。噴射口53aは、スピンドル52の軸を中心とした周方向に向けられている。ノズル53の基端部においてノズル53の中空が第2オイル供給路52aに連通している。第2オイル供給路52a内の作動オイルがノズル53内に供給されて、噴射口53aから噴出される。作動オイルの噴射圧によってスピンドル52が回転する。従って、これらノズル53は、オイルを噴射して、オイルの噴射圧によってスピンドル52の回転の動力を発生させるものである。
【0047】
これらノズル53は噴射室44内に配置されているとともに、オイルガード31gの内側に配置されている。ノズル53の噴射口53aから噴射された作動オイルがオイルガード31gに吹き付けられる。よって、作動オイルがオイルガード31gの外側に飛散せず、オイル穴31cにも入り込まない。
【0048】
オイルガード31gに吹き付けられた作動オイルはオイルガード31gから噴射室44内の底へ滴下する。滴下した作動オイルがオイル排出口21aに流れ込んで、エンジン4へ排出される。
【0049】
続いて、
図3、
図5~
図7、
図10及び
図11を参照して、ローター60について説明する。ローター60は分離室43内においてブローバイガスからミスト状オイルを分離する部分である。このローター60の外観形状が筒状に呈しており、ローター60の中心部が空間とされている。この空間にはスピンドル52が挿入されており、スピンドル52とローター60とは互いに結合されている。従って、ローター60は、ノズル53によるオイルの噴射圧によってスピンドル52とともに回転する。
【0050】
このローター60は、ディスクスタック61、上部ホルダ71、下部ホルダ72、ハブ73、複数のスポーク74及び複数の整流板75を備える。
【0051】
ディスクスタック61は上部ホルダ71と下部ホルダ72の間に挟み込まれている。ディスクスタック61は複数枚の分離ディスク63から構成され、これら分離ディスク63がスピンドル52の軸方向に積み重ねられている。分離ディスク63の中央には、開口62aが形成されている。分離ディスク63は開口62aが上下に重なるようにして積み重ねられることに伴って、これら開口62aからなる中央空間62が形成され、その中央空間62内にスピンドル52が配されている。分離ディスク63は、スピンドル52の軸から径方向外向きに離れた上下逆V字を軸周りに回転することによって得られた形状に設けられている。
【0052】
分離ディスク63が上下逆V字の回転体であるので、分離ディスク63の外周側部分64が分離ディスク63の中心の上方を頂点とした裁頭円錐面型に形作られ、分離ディスク63の内周側部分65が分離ディスク63の中心の下方を頂点とした裁頭円錐面型に形作られている。内周側部分65は径方向外方に向けて上向きに傾斜し、外周側部分64は内周側部分65の外縁から径方向外方に向けて下りに傾斜する。分離ディスク63が内周側部分65と外周側部分64との間の境界部で曲折しているので、分離ディスク63の剛性が向上する。また、分離ディスク63の内周縁から分離ディスク63の表面に沿って分離ディスク63の外周縁までの長さを長くとることができ、分離ディスク63の表面積を大きくとることができる。
【0053】
分離ディスク63の上面若しくは下面又はこれらの両面には、複数の凸状部(例えば、リブ、突起等)が設けられている。凸状部が隣りの分離ディスク63に当接し、隣り合う分離ディスク63の間に隙間が形成され、その隙間の幅が凸状部の高さによって決められる。なお、
図3、
図5~
図8、
図10及び
図11では、分離ディスク63の間隔を空けて描いているが、実際の間隔は極めて狭い。
【0054】
ディスクスタック61の中央空間62内には、ハブ73、スポーク74及び整流板75が設けられている。ハブ73はリング状に形成されており、そのハブ73がスピンドル52に外装され、ハブ73とスピンドル52が互いに固定されている。ハブ73の外周面には、複数のスポーク74が周方向に間隔を置いて設けられている。これらスポーク74がハブ73から外方に延出して、更に上下に延びている。スポーク74の上端が上部ホルダ71に連接し、スポーク74の下端が下部ホルダ72に取り付けられている。上部ホルダ71の中央部には開口71aが形成され、下部ホルダ72の中央部には開口72aが形成されており、これら開口71a,72aが上下に相対する。開口71a,72aの縁に沿ってスポーク74が周方向に配列されている。
【0055】
スポーク74の間には整流板75が設けられており、整流板75によって整流板75よりも内側の領域81と外側の領域82が仕切られている。整流板75には、整流板75の上端から下端まで細長く設けられた連通スリット76が形成されている。連通スリット76によって内側の領域81と外側の領域82が通じている。上部ホルダ71、ハブ73、スポーク74及び整流板75が一体形成されている。
【0056】
スポーク74の外周側の端部が分離ディスク63の内周縁に押し付けられることによって分離ディスク63とスポーク74が固定されている。整流板75は分離ディスク63の内周縁から内側に離間しているとともに、ハブ73の外周面から外側に離間している。
【0057】
下部ホルダ72の中央部に形成された開口72aは、最下層の分離ディスク63の中央の開口の下に重なっている。スピンドル52が下部ホルダ72の開口72a及びハブ73に嵌合し、下部ホルダ72及びハブ73がスピンドル52の外周面に固定される。下部ホルダ72と上部ホルダ71がスポーク74によって連結されている。上部ホルダ71、下部ホルダ72、ハブ73、スポーク74、整流板75、ディスクスタック61及びスピンドル52が一体となってスピンドルシャフト51を中心にして回転する。
【0058】
上部ホルダ71の中央部に形成された開口71aは、最上層の分離ディスク63の中央開口の上に重なっている。この開口71aには、中部隔壁部材32の嵌合部32bが挿入されており、嵌合部32bの中空が流通穴32eによってディスクスタック61の中央空間62に通じている。従って、インレットポート24を通ってハウジング20の内側に導入されたブローバイガスが、導入路41、嵌合部32bの中空及び流通穴32eを通ってディスクスタック61の中央空間62に流れる。
【0059】
ディスクスタック61の中央空間62に流れ込んだブローバイガスは、整流板75の内側の領域81において整流板75によって下方へ整流されながら、内側の領域81から連通スリット76を通って外側の領域82へ流れる。ブローバイガスが整流板75によって整流されるため、径方向外方へのブローバイガスの流量が上下に亘って均等化する。
【0060】
整流板75の外側の領域82のブローバイガスは分離ディスク63の間の隙間に流れ込む。分離ディスク63の間の隙間に流れ込んだブローバイガスは径方向外方へ流動する。整流板75によりブローバイガスの流量が上下に亘って均一化したため、分離ディスク63の間の何れの隙間にも、ブローバイガスの流量が均等化する。
【0061】
分離ディスク63の間の隙間に流れ込んだブローバイガスに対しては、上流側からの圧力が作用する上、ローター60の回転による遠心力も作用する。また、導入路41内のブローバイガスを中央空間62へ吸引する吸引圧がローター60の回転による遠心力によって生じ、ブローバイガスの流速が上昇する。
【0062】
一方、スピンドル52の内周面と上側ブッシュ56との間に僅かな隙間から中央空間62内に流出した分離用オイルも、ブローバイガスとともに、連通スリット76を径方向外方に向けて流動して、更に分離ディスク63の間の隙間に流れ込む。分離ディスク63の間の隙間に存在するオイルが遠心力によって分離ディスク63の表面に広がって、油膜が分離ディスク63の表面に形成されるが、油膜の形成される箇所は主に分離ディスク63の内周側部分65の上面と外周側部分64の下面である。
【0063】
ブローバイガスが分離ディスク63の間の隙間を流動していると、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルが分離ディスク63の表面の油膜に吸収される。これにより、ブローバイガス中のミスト状オイルが分離ディスク63によって捕捉されて、ブローバイガスからミスト状オイルが分離される。上述したように分離ディスク63の表面積が大きく、分離ディスク63の積み重ね枚数も多いため、ミスト状オイルが分離されやすい。
【0064】
また、ブローバイガスから分離されたオイルのみならず、第2オイル供給路52aから流れ出た分離用オイルも、分離ディスク63の表面の油膜の成分となっているため、分離ディスク63の表面に十分な油膜が形成される。そのような油膜にブローバイガス中のミスト状オイルが吸収されるので、ミスト状オイルの分離効率が高い。
【0065】
分離ディスク63の表面に付着したオイルは遠心力によって分離ディスク63の表面に沿って外周側へ流れる。分離ディスク63の外周縁では、分離ディスク63の表面に付着したオイルが遠心力によって分離ディスク63の間の隙間から外側に飛翔する。
【0066】
図8に矢印で示すように、飛翔したオイルが上部ケース22の内周面に付着する。そのオイルは上部ケース22の内周面に付着した状態で流れ落ちる。そのオイルは、オイル穴31cを通って噴射室44内に流れ込む。そのオイルの一部は、噴射室44内の作動オイルと混合して、オイル排出口21aに流れ込む
【0067】
7.分離後のブローバイガスの排出経路及びPCVバルブについて
分離ディスク63の間の隙間においてミスト状オイルが分離されたブローバイバスは、分離ディスク63の間の隙間から外方に噴出する。そのブローバイガスは、
図5に示すように、分離室43内にて上昇して、第1連通孔32cを通って第1チャンバー42に流れ込む。そのブローバイガスは第1チャンバー42から第2連通孔22dを通って第2チャンバー45に流れ込む。そして、ブローバイガスは、第2チャンバー45から上部隔壁部材33の開口部33a、第3チャンバー46及びアウトレットポート23aを通ってブリーザーパイプ3に排出される。これにより、ブローバイガスがエンジン4へと環流される。
【0068】
図5及び
図6に示すように、第2チャンバー45から第3チャンバー46に流れるブローバイガスの流量がPCVバルブ90によって調整される。これにより、エンジン4の吸気圧力やクランクケース側の圧力が適切に調整される。
【0069】
PCVバルブ90は第2チャンバー45内に取り付けられている。このPCVバルブ90はダイヤフラム91、上側スプリング92及び下側スプリング93を備える。ダイヤフラム91は、弾性変形する円盤状の弁体である。このダイヤフラム91は、第2チャンバー45内に収容されているとともに、上部隔壁部材33の開口部33aの下に配置されている。このダイヤフラム91の外縁部が隔壁部22aの上面に接合されている。隔壁部22aの第2連通孔22dがダイヤフラム91の外縁部よりも外側に配置されているため、第2連通孔22dを通過したブローバイガスがダイヤフラム91の上を流れる。
【0070】
上側スプリング92は、ダイヤフラム91の中央部の上においてダイヤフラム91と上部隔壁部材33との間に挟まれている。下側スプリング93は、ダイヤフラム91の中央部の下においてダイヤフラム91と隔壁部22aとの間に挟まれている。これらの上側スプリング92と下側スプリング93がこれらの間にダイヤフラム91の中央部を挟み込んで、ダイヤフラム91の中央部が上側スプリング92及び下側スプリング93によって移動可能な状態で支持されている。
【0071】
上部ケース22には調圧孔22bが形成されており、その調圧孔22bはダイヤフラム91の下側の空間と上部ケース22の外側を連通させる。従って、ダイヤフラム91の下側の空間が調圧孔22bによって大気圧とされている。
【0072】
開口部33aを通過するブローバイガスの流量は以下のようにして調整される。つまり、エンジン4の吸気圧力(負圧)が過度に大きい場合には、ダイヤフラム91の中央部が上方へ移動するため、開口部33aの開き度合いが小さくなり、ブローバイガスの流量が低下する。一方、クランクケース側の圧力が高い場合には、ダイヤフラム91の中央部が下方へ移動して開口部33aの開き度合いが大きくなって、ブローバイガスの流量が上昇する。これにより、ブローバイガスの流量がダイヤフラム91によって適切に調整される。また、エンジン4、特にクランクケースの圧力も適切に調整される。
なお、PCVバルブ90が設けられていなくてもよい。
【0073】
8.有利な効果
ディスクスタック61の中央空間62が整流板75によって内側の領域81と外側の領域82に区分けされ、その整流板75に連通スリット76が形成されているため、内側の領域81に流れ込んだブローバイガスは整流板75によって下方へ整流されながら、連通スリット76を通って外側の領域82へ流れる。従って、ブローバイガスが分離ディスク63の間の各隙間にほぼ均等に分散して流れ込み、何れの隙間もオイルの分離に平均的に利用される。よって、全体としてオイルの分離効率が向上する。
【0074】
ここで、整流板75がスポーク74の間に設けられることによって、オイルの分離効率が向上することをシミュレーションによって検証した。その結果を
図12に示す。
図12のグラフにおいて、縦軸は分離効率を表し、横軸は中央空間62に供給されるブローバイガスの流量をそれに含有するミスト状オイルの流量で換算したものを表す。実線は整流板75が設けられた場合のシミュレーション結果を表し、破線は整流板75が設けられた場合のシミュレーション結果を表す。
図12から明らかなように、整流板75が設けられることによって分離効率が向上することが分かる。
【0075】
9.変形例
以上に幾つかの実施形態について説明したが、以上の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。以上の実施形態からの変更点について以下に説明する。
【0076】
(1) 以上の実施形態では、軸方向に細長い連通スリット76が整流板75に形成されている。それに対して、
図13に示すように、各整流板75に複数の連通穴77が形成されていてもよい。
図13に示す例では、各整流板75に連通穴77が2列に軸方向に配列されているが、整流板75ごとの連通穴77の列数は2列に限るものではない。
【0077】
(2) 以上の実施形態では、軸方向に細長い連通スリット76が整流板75に形成されている。それに対して、
図14に示すように、各整流板75に複数の連通スリット78が形成されていてもよい。連通スリット78は、周方向に細長く、間隔を置いて軸方向に配列されている。
【符号の説明】
【0078】
2…オイルセパレータ
20…ハウジング
52…スピンドル
53…ノズル
63…分離ディスク
73…ハブ
74…スポーク
75…整流板(整流部)
76…連通スリット(連通部)
77…連通穴(連通部)
78…連通スリット(連通部)