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特許70228713次元プリンタ用フィラメント、巻取体、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法および成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】3次元プリンタ用フィラメント、巻取体、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20220210BHJP
   B29C 64/259 20170101ALI20220210BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220210BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220210BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220210BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/259
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021542796
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031383
(87)【国際公開番号】W WO2021039557
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2019154329
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236609
【氏名又は名称】フドー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓人
(72)【発明者】
【氏名】生櫻 和也
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 伸樹
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094746(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126476(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/118,64/259,64/314,70/16,
70/40
B29K 101/10,105/08
B33Y 10/00,30/00,40/00,70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続強化繊維に、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸させた、25℃における粘度が10000mPa・sより大きい、25℃で固体状の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項2】
23℃、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値が0~3kPaである、請求項1に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項3】
40~250℃のいずれか温度において、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値が3kPa以上である、請求項1または2に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項4】
前記3次元プリンタ用フィラメントにおける前記連続強化繊維の体積含有率が10~80体積%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項5】
前記連続強化繊維の単繊維数が100本以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項6】
前記連続強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量が200~50000である、請求項1~6のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂の軟化点が40~250℃である、請求項1~7のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は25℃で固体状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂は、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項11】
前記3次元プリンタ用フィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状が円形状、扁平状または楕円状である、請求項1~10のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメントが芯材に巻き取られた巻取体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメントの製造方法であって、連続強化繊維に、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸させる工程を含む、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法。
【請求項14】
3次元プリンタのノズルから請求項1~11のいずれか1項に記載の3次元プリンタ用フィラメントを基板上に吐出して立体造形物を製造し、前記立体造形物を加熱する、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元プリンタ用フィラメントに関する。より詳しくは、3次元プリンタでの立体造形物の製造に用いられる3次元プリンタ用フィラメントに関する。また、本発明は、3次元プリンタ用フィラメントが芯材に巻き取られた巻取体、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元プリンタは、ラピッドプロトタイピング(3次元造形機)の一種で、コンピュータ上で作成したCAD、CGなどの3次元データを設計図として、プラスチック等からなる立体造形物を製造する立体プリンタである。
【0003】
3次元プリンタの造形方式の一つとして、材料押出堆積法での造形方式が知られている。材料押出堆積法の原理は、造形材料を熱で溶融させる等して流動化させた後、3次元データに基づいてヘッドノズルから所定の位置に吐出し、それを繰り返して積層させて立体造形を行う方法である。
【0004】
材料押出堆積法では、造形材料として、連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させたフィラメント形状の材料などが用いられている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-518267号公報
【文献】特表2016-520459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3次元プリンタ用フィラメントの材料には、3次元プリンタでの立体造形のしやすさなどの理由により、従来より熱可塑性樹脂が用いられており、熱硬化性樹脂を使用した3次元プリンタ用フィラメントについてはこれまで知られていなかった。
【0007】
よって、本発明は、新規な3次元プリンタ用フィラメント、巻取体、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法および成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を提供する。
<1> 連続強化繊維に、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸させた25℃で固形状の3次元プリンタ用フィラメント。
<2> 23℃、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値が0~3kPaである、<1>に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<3> 40~250℃のいずれかの温度において、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値が3kPa以上である、<1>または<2>に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<4> 上記3次元プリンタ用フィラメントにおける上記連続強化繊維の体積含有率が10~80体積%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<5> 上記連続強化繊維の単繊維数が100本以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<6> 上記連続強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<7> 上記熱硬化性樹脂の重量平均分子量が200~50000である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<8> 上記熱硬化性樹脂の軟化点が40~250℃である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<9> 上記熱硬化性樹脂は25℃で固体状である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<10> 上記熱硬化性樹脂は、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<11> 上記3次元プリンタ用フィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状が円形状、扁平状または楕円状である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメントが芯材に巻き取られた巻取体。
<13> <1>~<11>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメントの製造方法であって、連続強化繊維に、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸させる工程を含む、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法。
<14> 3次元プリンタのノズルから<1>~<11>のいずれか1つに記載の3次元プリンタ用フィラメントを基板上に吐出して立体造形物を製造し、上記立体造形物を加熱する、成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な3次元プリンタ用フィラメント、巻取体、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法および成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
<3次元プリンタ用フィラメント>
本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、連続強化繊維に、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸させた25℃で固形状の材料である。
【0012】
本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、3次元プリンタのノズルから吐出される、いわゆる3次元プリンタ用インクである。本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、熱硬化性樹脂を含むので、3次元プリンタを用いて強度などの機械特性などに優れた成形品を製造することができる。また、本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、適度に硬化反応を促進し作製することで、常温(例えば20~30℃)でのべたつきが少ないものとすることができる。このため、3次元プリンタ内の汚染(例えば搬送ローラなど)やノズル詰まりなどを抑制することもできる。このため3次元プリンタのメンテナンスの手間などを簡略なものとすることができる。
【0013】
本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、23℃、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値(T23)が0~3kPaであることが好ましく、0~2kPaであることがより好ましく、0~1kPaであることがさらに好ましい。23℃でのタック値が上記範囲であれば、常温でのべたつきがより少ないものとすることができ、3次元プリンタ内の汚染やノズル詰まりなどをより効果的に抑制することができる。更には、フィラメントの巻取時に工程紙が不要になるという効果も期待できる。
【0014】
本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、35℃、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値が0~3kPaであることが好ましく、0~2kPaであることがより好ましく、0~1kPaであることがさらに好ましい。35℃でのタック値が上記範囲であれば、保管性に優れる。
【0015】
本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、40~250℃のいずれかの温度において、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値が3kPa以上であることが好ましく、4kPa以上であることがより好ましく、5kPa以上であることがさらに好ましい。この態様によれば、プリント性の向上、造形物の層間強度の向上という効果が期待できる。また、プリント性および造形物の層間強度をより向上できるという理由から、本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、100℃または150℃において(好ましくは100℃において)、プローブ押付荷重20kPaで測定したタック値が3kPa以上であることが好ましく、4kPa以上であることがより好ましく、5kPa以上であることがさらに好ましい。
【0016】
なお、本明細書において、3次元プリンタ用フィラメントのタック値の値は、プローブタック試験法にて測定した粘着力ピーク値である。プローブタック試験法とは、一定の接地面積を持つ測定子(プローブ)を一定荷重で一定の時間押し付けた後、一定の速度で引き剥がすのに必要な力を測定する方法である。粘着力ピーク値とは、プローブと試料の接触面を引きはがす際に生じる抵抗の最大値のことであり、以下に述べる条件で行うプローブタック試験により得られる値である。
【0017】
(試験条件)
プローブ径:直径10mm
プローブ押付荷重:20kPa
プローブ押付時間:30秒
プローブ押付速度:30mm/分
プローブ引き上げ速度:10mm/分
(手順)
1)引き揃えたフィラメントを所定温度に調整した試料台に固定する。フィラメントのサイズがプローブ径よりも小さい場合は、10mm×10mmのサイズとなるように複数本のフィラメントを隙間なく引き揃えて試料台に固定する。
2)試料台のフィラメントにプローブを30mm/分の押しつけ速度で押付け、20kPaの荷重を加え、30秒間押し当てる。
3)プローブを10mm/分の引き上げ速度で引き上げる。
4)プローブ引き上げ時の粘着力の最大値を粘着力ピークとし、合計3回測定して得られた粘着力ピークの平均値をタック値とする。
【0018】
3次元プリンタ用フィラメントの弾性率は10~700MPaであることが好ましい。3次元プリンタ用フィラメントの弾性率が上記範囲であれば、3次元プリンタでの立体造形性が良好である。さらには、巻取体としての保管性にも優れる。弾性率の下限は、15MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることが更に好ましい。弾性率の上限は、650MPa以下であることが好ましく、600MPa以下であることがより好ましく、550MPa以下であることが更に好ましい。
【0019】
3次元プリンタ用フィラメントにおける、連続強化繊維と熱硬化性樹脂との合計の体積含有率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることがより一層好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
【0020】
3次元プリンタ用フィラメントに含まれる熱硬化性樹脂は未硬化状態であることが好ましい。この態様によれば、3次元プリンタでの立体造形性が良好である。なお、本明細書において、熱硬化性樹脂が未硬化状態であるとは、熱硬化性樹脂の硬化が完全に完了する前の状態のことを意味し、完全未硬化の状態のみならず、硬化(架橋)反応が完全に完了しない程度に進んだ半硬化状態(部分硬化状態)も含むものである。
【0021】
3次元プリンタ用フィラメントの形態としては、ファイバー状、テープ状、ロープ状、組紐状などが挙げられる。
【0022】
3次元プリンタ用フィラメントにおける長さ方向と直行する方向での切断面の形状が円形状、扁平状または楕円状であることが好ましく、扁平状または楕円状であることがより好ましい。切断面が円形状、扁平状または楕円状であれば、3次元プリンタのノズルからの吐出時においてノズル押付圧力による繊維破断などを抑制でき、機械特性などの各種性能に優れた立体造形物を製造しやすい。なお、3次元プリンタ用フィラメントにおける長さ方向と直行する方向での切断面の形状は、上記以外の形状(例えば、不定形、正方形など)とすることもできる。
【0023】
(連続強化繊維)
本発明の3次元プリンタ用フィラメントは連続強化繊維を含む。本明細書において、連続強化繊維とは、30mm以上の平均繊維長を有する強化繊維のことを意味し、50mm以上の平均繊維長を有する強化繊維であることが好ましい。連続強化繊維の平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性の観点から、1~20000mであることが好ましく、100~10000mであることがより好ましく、1000~7000mであることが更に好ましい。本発明における繊維の長さは、特に述べない限り、重量平均繊維長である。
【0024】
3次元プリンタ用フィラメントにおける連続強化繊維の体積含有率は10~80体積%であることが好ましく、20~70体積%であることがより好ましく、40~65体積%であることが更に好ましい。連続強化繊維の体積含有率が上記範囲であれば、機械強度に優れた成形品を得ることができる。更には、プリント性の向上、得られる立体造形物の層間強度の向上という効果も期待できる。
【0025】
なお、3次元プリンタ用フィラメントにおける連続強化繊維の体積含有率とは、以下の式から算出される値のことである。
連続強化繊維の体積含有率=(3次元プリンタ用フィラメントに含まれる連続強化繊維の体積/3次元プリンタ用フィラメントの体積)×100
【0026】
3次元プリンタ用フィラメントに用いられる連続強化繊維の単繊維数は、100本以上であることが好ましく、100~60000本であることがより好ましく、100~24000本であることが更に好ましい。すなわち、3次元プリンタ用フィラメントに用いられる連続強化繊維は100本以上の単繊維を集束した繊維束であることが好ましい。連続強化繊維の単繊維数が100本以上であれば、3次元プリンタのノズルからの吐出時においてノズル押付圧力による繊維破断などを抑制でき、機械特性などの各種性能に優れた立体造形物を製造しやすい。また、連続強化繊維の単繊維数が100~24000本であれば、上記効果に加え、立体造形物の微細な部位まで効果的な繊維配向を施すことができるという効果も期待できる。また、繊維数が6000本より多ければ、立体造形時間を短縮することができるという効果も期待できる。また、上記繊維束は撚りをかけられていてもよい。この態様によれば、3次元プリントの軌跡に対し、曲線部での内径、外径の差による繊維のねじれを補正でき、より機械特性などの各種特性に優れた立体造形物が得られやすい。
【0027】
上記単繊維の平均繊維径は、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましい。また、平均繊維径は、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることが更に好ましい。なお、単繊維の平均繊維径とは、単繊維の直径の平均値のことである。
【0028】
連続強化繊維の種類としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、炭素繊維およびガラス繊維から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。特に、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維が好ましく用いられる。
【0029】
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが挙げられる。
【0030】
連続強化繊維は、処理剤で処理されていてもよい。処理剤としては、集束剤や表面処理剤が挙げられる。例えば、処理剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、水不溶性ポリアミド樹脂及び水溶性ポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むものなどが挙げられる。また、処理剤には、特許第4894982号の段落番号0093、0094に記載のものを用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。処理剤の量は、連続強化繊維の0.001~1.5質量%であることが好ましく、0.1~1.2質量%であることがより好ましく、0.5~1.1質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明の3次元プリンタ用フィラメントに用いられる熱硬化性樹脂組成物は熱硬化性樹脂を含む。この熱硬化性樹脂組成物は、3次元プリンタ用フィラメントのマトリックスである。熱硬化性樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることがより一層好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、90質量%以上とすることもでき、95質量%以上とすることもでき、99質量%以上とすることもできる。また、熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂は、25℃で固体状の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0032】
なお、本明細書において25℃で固体状とは、25℃における粘度が10000mPa・sより大きいものを言う。
【0033】
40~250℃のいずれかの温度において、熱硬化性樹脂の溶融粘度は1~8500mPa・sであることが好ましく、1~5000mPa・sであることがより好ましく、1~3000mPa・sであることが更に好ましい。
【0034】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は200~50000であることが好ましく、200~40000であることがより好ましく、200~30000であることが更に好ましく、200~25000であることがより一層好ましい。また、熱硬化性樹脂の軟化点は40~250℃であることが好ましく、70~250℃であることがより好ましく、80~250℃であることが更に好ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂の種類としては、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、尿素性樹脂、メラミン樹脂などが挙げられ、その中でもシアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。なかでも、硬化反応時の発生ガスが少ないという観点から、熱硬化性樹脂はシアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂およびエポキシ樹脂が好ましく、シアネート樹脂およびビスマレイミドトリアジン樹脂がより好ましい。また、硬化速度や硬化温度域を調整しやすいという観点から、熱硬化性樹脂はジアリルフタレート樹脂および不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
上記の熱硬化性樹脂は、単一の熱硬化性樹脂のみを用いてもよく、二種以上の熱硬化性樹脂を混合して用いても良い。
【0036】
シアネート樹脂としては、式(1)で表されるものが挙げられる。
【化1】
【0037】
式(1)中、Arは、ベンゼン環、ナフタレン環又は2つのベンゼン環が単結合したものを表す。複数ある場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。Raは各々独立に水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシル基、炭素数1~6のアルキル基と炭素数6~12のアリール基とが結合された基を示す。Raにおける芳香環は置換基を有していてもよく、Ar及びRaにおける置換基は任意の位置を選択できる。pはArに結合するシアナト基の数を示し、各々独立に1~3の整数である。qはArに結合するRaの数を示し、Arがベンゼン環のときは4-p、ナフタレン環のときは6-p、2つのベンゼン環が単結合したもののときは8-pである。tは平均繰り返し数を示し、0~50の整数であり、シアネート樹脂は、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Zは、複数ある場合は各々独立に、単結合、炭素数1~50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。)、窒素数1~10の2価の有機基(例えば-N-R-N-(ここでRは有機基を示す。))、カルボニル基(-CO-)、カルボキシ基(-C(=O)O-)、カルボニルジオキサイド基(-OC(=O)O-)、スルホニル基(-SO-)、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれかを示す。
【0038】
式(1)のRaにおけるアルキル基は、直鎖もしくは分枝の鎖状構造、及び、環状構造(例えばシクロアルキル基等)のいずれを有していてもよい。また、式(1)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。アルキル基の具体例としては、以下に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-エチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、以下に限定されないが、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o-,m-又はp-フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo-,m-又はp-トリル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0039】
式(1)のZにおける炭素数1~50の2価の有機基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン-フェニレン-ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基等が挙げられる。該2価の有機基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0040】
式(1)のZにおける窒素数1~10の2価の有機基の例としては、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
【0041】
また、式(1)中のZの有機基として、例えば、下記式(2)又は式(3)で表される構造であるものも挙げられる。
【0042】
【化2】
式(2)中、Arはベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基又はビフェニルテトライル基を示し、uが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rb、Rc、Rf、及びRgは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基を示す。Rd及び、Reは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシル基、又はヒドロキシ基を示す。uは0~5の整数を示す。
【0043】
【化3】
式(3)中、Arはベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基又はビフェニルテトライル基を示し、vが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ri、及びRjは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、ベンジル基、炭素数1~4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、又はシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基を示す。vは0~5の整数を示す。
【0044】
さらに、式(1)中のZとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【0045】
【化4】
【0046】
上記式中、zは4~7の整数を示す。Rkは各々独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0047】
式(2)のAr及び式(3)のArの具体例としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、2,4’-ビフェニレン基、2,2’-ビフェニレン基、2,3’-ビフェニレン基、3,3’-ビフェニレン基、3,4’-ビフェニレン基、2,6-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、1,8-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基等が挙げられる。
式(2)のRb、Rc、Rd、Re、Rf及びRg、並びに式(3)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は、上記式(1)中のRaにおけるアルキル基及びアリール基と同義である。
【0048】
シアネート樹脂としては、フェノールノボラック型シアネート樹脂、ビフェニルアラルキル型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ジアリルビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、ビスフェノールM型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ナフチレンエーテル型シアネート樹脂、キシレン型シアネート樹脂、トリスフェノールメタン型シアネート樹脂及びアダマンタン骨格型シアネート樹脂などが挙げられる。ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ノボラック型シアンシアネート樹脂およびビフェニルアラルキル型シアネート樹脂が好ましく、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂およびノボラック型シアネート樹脂がより好ましい。
【0049】
シアネート樹脂の重量平均分子量は200~25000であることが好ましく、250~20000であることがより好ましく、300~15000であることが更に好ましい。
【0050】
シアネート樹脂としては、三菱ガス化学社製CYTESTER(登録商標) TA-1500、ロンザジャパン株式会社製プリマセットPT-15、PT-30などが挙げられる。
【0051】
ビスマレイミドトリアジン樹脂としては、ビスマレイミド化合物とシアン酸エステル化合物とを架橋して得られるものが挙げられる。ビスマレイミド化合物としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、これらマレイミド化合物のプレポリマーなどが挙げられる。シアン酸エステル化合物としては、上述したシアネート樹脂などが挙げられる。
【0052】
ビスマレイミドトリアジン樹脂の重量平均分子量は200~25000であることが好ましく、250~20000であることがより好ましく、300~15000であることが更に好ましい。
【0053】
ビスマレイミドトリアジン樹脂としては、三菱ガス化学社製BT-2160、BT-2170などが挙げられる。
【0054】
ジアリルフタレート樹脂としては、大阪ソーダ製イソダップ、ダップA、ダップSなどが挙げられる。
【0055】
熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤成分もしくは触媒成分(以下、硬化剤類ともいう)をさらに含有することができる。硬化剤類の種類は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
【0056】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合の硬化剤類としては、イミダゾール化合物及びその誘導体;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、イミダゾール化合物及びその誘導体又はリン系化合物を用いてもよい。イミダゾール化合物としては、例えば、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等)等が挙げられ、イソシアネートマスクイミダゾールが好ましい。
【0057】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を用いる場合の硬化剤類としては、イミダゾール化合物及びその誘導体;マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩;マンガン、コバルト、亜鉛等の遷移金属のアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、有機金属化合物が好ましい。
【0058】
熱硬化性樹脂としてビスマレイミドトリアジン樹脂を用いる場合の硬化剤類としては、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン化合物;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等)等のイミダゾール化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物;マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、イミダゾール化合物、有機過酸化物、カルボン酸塩が好ましい。耐熱性、ガラス転移温度、弾性率及び熱膨張係数の観点から、イミダゾール化合物と有機過酸化物とを併用することが好ましい。また、有機過酸化物の中でも、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンが特に好ましい。
【0059】
熱硬化性樹脂としてベンゾオキサジン樹脂を用いる場合の硬化剤類としては、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤などが挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。リン系硬化促進剤としては、例えばトリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
熱硬化性樹脂としてジアリルフタレート樹脂または不飽和ポリエステル樹脂を用いる場合の硬化剤類としては、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物が硬化剤類を含有する場合、硬化剤類の含有割合は特に制限されるものではないが、例えば、熱硬化性樹脂Aの100質量部に対して0.01~20質量部であってもよく、0.01~10質量部であってもよい。このような範囲で硬化剤類を用いると、より良好なプリント性及び保存安定性が得られる。
【0062】
熱硬化性樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等を加えることが出来る。詳細は、特許第4894982号、特許第6645777号の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0063】
<巻取体>
本発明の巻取体は、上述した3次元プリンタ用フィラメントが芯材に巻き取られたものである。本発明の巻取体は、3次元プリンタに取り付け、3次元プリンタでの立体造形物の製造時に、巻取体から3次元プリンタ用フィラメントを引き出して用いられる。
【0064】
芯材の材質としては、紙、樹脂、金属などが挙げられ、特に限定はない。芯材の直径は、3次元プリンタの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、強度などの観点から100mm以上であることが好ましく、200mm以上であることがより好ましく300mm以上であることが更に好ましい。上限は、1000mm以下とすることができ、1500mm以下とすることもできる。
【0065】
巻取体における3次元プリンタ用フィラメントの巻取長は、3次元プリンタ用フィラメントの形状や、サイズにより異なるが、3m以上であることが好ましく、5m以上であることがより好ましく、10m以上であることが更に好ましい。
【0066】
<3次元プリンタ用フィラメントの製造方法>
本発明の3次元プリンタ用フィラメントは、連続強化繊維に、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸させる行程を経て製造することができる。連続強化繊維および熱硬化性樹脂組成物としては、上述したものが挙げられる。
【0067】
なお、常温で含浸に適さない性状の熱硬化性樹脂組成物の場合は、熱硬化性樹脂組成物を加熱して含浸に適した粘度となるように流動性を高めて用いてもよく、含浸に適した粘度となるように溶剤で希釈して樹脂溶液として用いてもよい。
【0068】
樹脂溶液の調製に用いられる溶剤としては、熱硬化性樹脂を溶解させるものであればいずれも好ましく用いられる。溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類などの極性溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。溶剤の沸点は、30~160℃であることが好ましい。溶剤の沸点が上記範囲であれば、乾燥工程において溶剤の除去が容易である。上限は150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましい。下限は、35℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。
【0069】
樹脂溶液中の熱硬化性樹脂の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることがより一層好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
【0070】
樹脂溶液の温度は、10~50℃であることが好ましく、10~40℃であることがより好ましく、10~35℃であることが更に好ましく、15~30℃であることがより一層好ましく、20~30℃であることが更に一層好ましく、20~25℃であることが特に好ましい。
【0071】
樹脂溶液の25℃での粘度は、1~2000mPa・sであることが好ましい。下限は5mPa・s以上とすることもでき、50mPa・s以上とすることもできる。上限は、1500mPa・s以下とすることもでき、1200mPa・s以下とすることもでき、1000mPa・s以下とすることもできる。樹脂溶液の25℃での粘度の好ましい一態様として、5~1500mPa・sである態様が挙げられる。また、樹脂溶液の25℃での粘度の好ましい別の態様として、50~1200mPa・sである態様が挙げられる。また、樹脂溶液の25℃での粘度の別の好ましい態様として、1~1000mPa・sである態様が挙げられる。
【0072】
連続強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸させる前に、連続強化繊維に対して開繊処理、予熱処理、サイジング処理などを行ってもよい。このような処理を行うことで、熱硬化性樹脂組成物の含浸性を高めることができる。
【0073】
連続強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸させる方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、連続強化繊維を引きながら熱硬化性樹脂組成物に浸漬させて熱硬化性樹脂組成物を含浸させる方法などが挙げられる。
【0074】
連続強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸させたのち、溶剤の除去もしくは熱硬化性組成物の硬化反応促進による常温での粘着性の除去もしくは熱硬化性組成物の硬化反応促進によるプリント性の調整などを目的として、加熱を行うことも好ましい。加熱温度は、特に限定はないが、70~300℃であることが好ましく、90~250℃であることがより好ましく、100~200℃であることが更に好ましい。加熱時間は、特に限定はないが、生産性の観点から1~270秒であることが好ましく、1~180秒であることがより好ましく、1~120秒であることが更に好ましい。また、加熱を行う場合、熱硬化性樹脂が完全に硬化しない条件で行うことが好ましい。
【0075】
このようにして本発明の3次元プリンタ用フィラメントを製造することができる。そして、このようにして製造された3次元プリンタ用フィラメントを、芯材に巻き取ることで上述した本発明の巻取体を製造することができる。
【0076】
<成形品の製造方法>
本発明の成形品の製造方法は、3次元プリンタのノズルから上述した本発明の3次元プリンタ用フィラメント(以下、単にフィラメントともいう)を基板上に吐出して立体造形物を製造し、この立体造形物を加熱することを特徴とする。
【0077】
3次元プリンタとしては、材料押出堆積法での造形方式の3次元プリンタであればいずれも好ましく用いられる。
【0078】
立体造形物の製造に際し、フィラメントの一端を基板に固定してノズルから吐出することも好ましい。フィラメントの吐出の際には、基板を移動させて所望の形状となるように積層しても良いし、ノズルを移動させて積層しても良いし、基板とノズルの両方を移動させて積層してもよい。生産性の向上の観点からは、ノズルを移動させて積層することが好ましい。
【0079】
また、ノズルの先端と基盤の距離は近くても良いし(例えば、3mm以下)、遠くても良い(例えば、5mmを超える)が、近い方がフィラメントの追従性をより向上させることができる。吐出速度は特に定めるものではないが、例えば、0.5~100mm/秒とすることができ、1~50mm/秒とすることもでき、1~20mm/秒とすることもでき、1~10mm/秒とすることもできる。また、高速化した場合には、20mm/秒を超え100mm/秒以下とすることもできる。
【0080】
フィラメントをノズルから吐出する際に、フィラメントを加熱して吐出することが好ましい。フィラメントの加熱温度は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜定めることができる。フィラメントに含まれる熱硬化性樹脂の軟化点以上、軟化点+150℃以下であることが好ましく、軟化点+120℃以内であることがより好ましい。また、フィラメントの加熱は、ノズル内で行われることが好ましい。
【0081】
プリント性の向上のため、立体造形物の造形において、基板も加熱することが好ましい。基板の加熱温度は、20~150℃であることが好ましく、20~130℃であることがより好ましく、20~100℃であることが更に好ましい。
【0082】
立体造形物の製造に際し、立体造形物の空間部分をサポートするサポート材を用いてもよい。
【0083】
本発明の成形品の製造方法では、上記立体造形物を製造したのち、立体造形物を加熱する。加熱によって、熱硬化性樹脂の硬化が完了し、優れた機械特性を有する成形品が得られる。立体造形物の加熱温度は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜定めることができる。加熱温度は、50~400℃であることが好ましく、100~350℃であることがより好ましい。加熱時間は、特に限定はないが、10~36000秒であることが好ましく、20~14400秒であることがより好ましく、30~10800秒であることが更に好ましい。
【0084】
立体造形物の加熱は、加圧して行ってもよい。加圧の際の圧力は、立体造形物の形状や大きさによって、適宜定めることができる。例えば、1kPa以上であることが好ましく、5kPa以上であることがより好ましく100kPa以上であることがさらに好ましい。上限は、1000000kPa以下であることが好ましく、500000kPa以下であることがより好ましく、100000kPa以下であることがさらに好ましい。
【0085】
本発明で得られる成形品は、繊維強化樹脂成形品に広く用いられる。利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。また、これらの試作品にも好ましく用いられる。
【実施例
【0086】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
シアネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、TA-1500、25℃で固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量3824)を75質量部と、触媒(ビスオクタン酸亜鉛)を0.05質量部と、メチルエチルケトンを25質量部とを混合して樹脂溶液を調製した。樹脂溶液の25℃での粘度は543mPa・sであった。
【0088】
1m以上の長さを有する炭素繊維(単繊維数6000本、単繊維の平均繊維径4~7μm)の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながら機械的に張力を付加することで開繊し、25℃の上記樹脂溶液で満たされた幅80mm、長さ100mmの槽へ導入し、100mm/分の速度で槽から引き出した。槽から引き出されたフィラメントを2つのゴムローラで挟み、余剰樹脂を絞った後、160℃で20秒間加熱して、フィラメントを製造した。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が55体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は扁平であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0089】
(実施例2)
ナフトールアラルキル型シアネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、25℃で固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量600)を75質量部と、触媒(ビスオクタン酸亜鉛)を0.05質量部と、メチルエチルケトンを25質量部とを混合して調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてフィラメントを製造した。樹脂溶液の25℃での粘度は450mPa・sであった。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が55体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は扁平であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0090】
(実施例3)
ビスマレイミドトリアジン樹脂(三菱ガス化学株式会社製、製品名BT-2170、25℃で固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量2100)を75質量部と、触媒(ビスオクタン酸亜鉛)を0.05質量部と、メチルエチルケトンを25質量部とを混合して調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてフィラメントを製造した。樹脂溶液の25℃での粘度は550mPa・sであった。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が50体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は楕円であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0091】
(実施例4)
フェノール樹脂(アイカ工業株式会社製、製品名BRM-416T、25℃で固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量2880)を67質量部と、メタノールを33質量部とを混合して調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてフィラメントを製造した。樹脂溶液の25℃での粘度は476mPa・sであった。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が48体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は楕円であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0092】
(実施例5)
ベンゾオキサジン樹脂(四国化成工業株式会社製、製品名P-d型ベンゾオキサジン、25℃で固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量440)を67質量部と、メチルエチルケトンを33質量部とを混合して調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてフィラメントを製造した。樹脂溶液の25℃での粘度は1203mPa・sであった。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が48体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は楕円であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0093】
(実施例6)
ビスマレイミドトリアジン樹脂(三菱ガス化学株式会社製、製品名BT-2160、25℃で半固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量1200)を120℃に加熱して用いた以外は実施例1と同様にしてフィラメントを製造した。120℃での粘度は100mPa・sであった。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が50体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は楕円であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0094】
(実施例7)
イソブチルアルコール変性メラミン樹脂(日立化成株式会社製、製品名メラン265、25℃で液状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量5130)を樹脂溶液として用いた。25℃での粘度は550mPa・sであった。1m以上の長さを有する炭素繊維(単繊維数6000本、単繊維の平均繊維径4~7μm)の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながら機械的に張力を付加することで開繊し、25℃の上記樹脂溶液で満たされた幅80mm、長さ100mmの槽へ導入し、100mm/分の速度で槽から引き出した。槽から引き出されたフィラメントを2つのゴムローラで挟み、余剰樹脂を絞った後、100℃で20秒間加熱して、フィラメントを製造した。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0095】
(実施例8)
イソブチルアルコール変性メラミン樹脂(日立化成株式会社製、製品名メラン265、25℃で液状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量5130)を樹脂溶液として用いた。25℃での粘度は550mPa・sであった。1m以上の長さを有する炭素繊維(単繊維数6000本、単繊維の平均繊維径4~7μm)の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながら機械的に張力を付加することで開繊し、25℃の上記樹脂溶液で満たされた幅80mm、長さ100mmの槽へ導入し、100mm/分の速度で槽から引き出した。槽から引き出されたフィラメントを2つのゴムローラで挟み、余剰樹脂を絞った後、250℃で100秒間加熱して、フィラメントを製造した。
【0096】
(実施例9)
シアネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、TA-1500、25℃で固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量3824)を50質量部と、触媒(ビスオクタン酸亜鉛)を0.05質量部と、メチルエチルケトンを50質量部とを混合して樹脂溶液を調製した。樹脂溶液の25℃での粘度は9mPa・sであった。
【0097】
1m以上の長さを有する炭素繊維(単繊維数6000本、単繊維の平均繊維径4~7μm)の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながら機械的に張力を付加することで開繊し、25℃の上記樹脂溶液で満たされた幅144mm、長さ240mmの槽へ導入し、200mm/分の速度で槽から引き出した。槽から引き出されたフィラメントを180℃で18秒間加熱して、フィラメントを製造した。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が55体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は扁平であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0098】
(実施例10)
ベンゾオキサジン樹脂(四国化成工業株式会社製、製品名P-d型ベンゾオキサジン、25℃で固体状の熱硬化性樹脂、重量平均分子量440)を50質量部と、メチルエチルケトンを50質量部とを混合して調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてフィラメントを製造した。樹脂溶液の25℃での粘度は8mPa・sであった。このフィラメントは、連続強化繊維である炭素繊維の体積含有率が50体積%であった。また、このフィラメントの長さ方向と直行する方向での切断面の形状は楕円であった。また、フィラメント中の熱硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0099】
(タックの測定)
以下の方法でフィラメントのタック値を測定した。
(試験条件)
プローブ径:直径10mm
プローブ押付荷重:20kPa
プローブ押付時間:30秒
プローブ押付速度:30mm/分
プローブ引き上げ速度:10mm/分
(手順)
1)引き揃えたフィラメントを23℃、35℃、100℃または150℃に温度調整した試料台に固定する。フィラメントのサイズがプローブ径よりも小さい場合は、10mm×10mmのサイズとなるように複数本のフィラメントを隙間なく引き揃えて試料台に固定する。
2)試料台のフィラメントにプローブを30mm/分の押しつけ速度で押付け、20kPaの荷重を加え、30秒間押し当てる。
3)プローブを10mm/分の引き上げ速度で引き上げる。
4)プローブ引き上げ時の粘着力の最大値を粘着力ピークとし、合計3回測定して得られた粘着力ピークの平均値をタック値とする。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例7については、23℃でのタック値が高かったため、35℃でのタック値、100℃でのタック値および150℃でのタック値は未測定である。
【0102】
実施例1~10のフィラメントは23℃で固体状であった。このうち、実施例1~6、9、10のフィラメントは23℃でのタック値が小さく、かつ、100℃および150℃でのタック値が高いものであった。そして、23℃でのタック値が0~3kPaである実施例1~6、9、10のフィラメントは、23℃でのタック値が3kPaを超える実施例7のフィラメントよりも巻取体からの引き出しがスムーズであった。また、実施例1~6、9、10のフィラメントを用いて3次元プリンタにて立体造形物を製造することで、実施例7のフィラメントを用いて3次元プリンタにて立体造形物を製造した場合よりもクリールなどの3次元プリンタ内の汚染などの発生を抑制することもできた。また、100℃および150℃でのタック値が3kPa以上である実施例1~6、9、10のフィラメントは、100℃および150℃でのタック値が3kPa未満である実施例8のフィラメントよりも、3次元プリンタでの立体造形性に優れていた。
【0103】
[成形品の製造]
(製造例1)
実施例1~3、6、9のフィラメントを、3次元プリンタ(Velleman社製)にセットし、フィラメントの一部を引き出して、3次元プリンタの基板に固定した。次いで、吐出温度(ノズル内部の加熱温度)190℃、吐出速度15mm/秒にて、幅方向のピッチが1.0mmとなるようにフィラメントを基板上に並列に吐出して、幅15mm、長さ100mmの層状物(を形成した。さらに、層状物の表面に、高さ方向のピッチが0.3mmとなるように、フィラメントを層状に吐出し立体造形物を得た。立体造形物の厚さは2mmとなるように、フィラメントを繰り返し吐出して積層した。得られた立体造形物は、厚さ2mm、幅15mm、長さ100mmであった。次に、この立体造形物を、180℃で30分加熱、250℃で2時間加熱して成形品を製造した。
【0104】
(製造例2)
実施例4、5、10のフィラメントを、3次元プリンタ(Velleman社製)にセットし、フィラメントの一部を引き出して、3次元プリンタの基板に固定した。次いで、吐出温度(ノズル内部の加熱温度)120℃、吐出速度15mm/秒にて、幅方向のピッチが1.0mmとなるようにフィラメントを基板上に並列に吐出して、幅15mm、長さ100mmの層状物(を形成した。さらに、層状物の表面に、高さ方向のピッチが0.3mmとなるように、フィラメントを層状に吐出し立体造形物を得た。立体造形物の厚さは2mmとなるように、フィラメントを繰り返し吐出して積層した。得られた立体造形物は、厚さ2mm、幅15mm、長さ100mmであった。次に、この立体造形物を、180℃で30分加熱して成形品を製造した。