IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人会津大学の特許一覧 ▶ ソニックス株式会社の特許一覧

特許7022957心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム
<>
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図1
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図2
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図3
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図4
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図5
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図6
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図7
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図8
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図9
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図10
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図11
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図12
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図13
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図14
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図15
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図16
  • 特許-心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20220214BHJP
【FI】
A61B5/346 ZDM
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020137240
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2021-06-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
(73)【特許権者】
【識別番号】514322858
【氏名又は名称】SIMPLEX QUANTUM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】陳 エイ
(72)【発明者】
【氏名】陳 文西
(72)【発明者】
【氏名】三上 芳宏
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0135585(US,A1)
【文献】特開2018-086278(JP,A)
【文献】特開2018-153487(JP,A)
【文献】特開2019-201886(JP,A)
【文献】特開2018-102518(JP,A)
【文献】特開2018-149318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0156614(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111067505(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276156(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0201951(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0167567(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105686801(CN,A)
【文献】特表2008-515486(JP,A)
【文献】特表2003-531656(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110638430(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電信号の波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知処理をコンピュータに実行させる心房細動検知プログラムであって、
前記心房細動の検知を行うために必要な波形データの時間として予め決定された所定時間以上の第1時間に対応する学習用波形データを、前記所定時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割し、
分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成
前記第1時間に対応する新たな波形データを、前記第2時間に対応する複数の第4波形データに分割し、
分割した前記複数の第4波形データのそれぞれを前記学習モデルに入力することによって、前記複数の第4波形データのそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を取得し、
連続する所定数の前記複数の第4波形データに対応する前記情報のそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであることを示していると判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであることを示す情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする心房細動検知プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記学習用波形データを分割する処理では、
前記第1時間に対応する前記学習用波形データに対してトレンド除去を行うことによって第2波形データを生成し、
生成した前記第2波形データに対して運動アーチファクト除去を行うことによって第3波形データを生成し、
生成した前記第3波形データを、前記第2時間に対応する前記複数の第1波形データに分割する、
ことを特徴とする心房細動検知プログラム。
【請求項3】
請求項において、
前記新たな波形データを分割する処理では、
前記第1時間に対応する前記新たな波形データに対してトレンド除去を行うことによって第5波形データを生成し、
生成した前記第5波形データに対して運動アーチファクト除去を行うことによって第6波形データを生成し、
生成した前記第6波形データを、前記第2時間に対応する前記複数の第4波形データに分割する、
ことを特徴とする心房細動検知プログラム。
【請求項4】
請求項において、
前記連続する所定数の波形データに対応する時間は、前記所定時間以上の時間である、
ことを特徴とする心房細動検知プログラム。
【請求項5】
請求項において、
前記出力する処理では、
前記新たな波形データに対応する人の心拍数が所定以上でないと判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであると判定する、
ことを特徴とする心房細動検知プログラム。
【請求項6】
請求項において、
前記出力する処理では、
前記新たな波形データに対応する人の心拍数が所定以上であると判定した場合、前記新たな波形データに対応する人の心拍数の標準偏差が所定以下であるか否かを判定し、
前記新たな波形データに対応する人の心拍数の標準偏差が所定以下でないと判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであると判定する、
ことを特徴とする心房細動検知プログラム。
【請求項7】
心電信号の波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知装置であって、
前記心房細動の検知を行うために必要な波形データの時間として予め決定された所定時間以上の第1時間に対応する学習用波形データを、前記所定時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割するデータ分割部と、
分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成するモデル生成部と、を有
前記データ分割部は、前記第1時間に対応する新たな波形データを、前記第2時間に対応する複数の第4波形データに分割し、さらに、
分割した前記複数の第4波形データのそれぞれを前記学習モデルに入力することによって、前記複数の第4波形データのそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を取得するデータ判定部と、
連続する所定数の前記複数の第4波形データに対応する前記情報のそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであることを示していると判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであることを示す情報を出力する結果出力部と、を有する、
ことを特徴とする心房細動検知装置。
【請求項8】
心電信号の波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知処理をコンピュータに実行させる心房細動検知方法であって、
前記心房細動の検知を行うために必要な波形データの時間として予め決定された所定時間以上の第1時間に対応する学習用波形データを、前記所定時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割し、
分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成
前記第1時間に対応する新たな波形データを、前記第2時間に対応する複数の第4波形データに分割し、
分割した前記複数の第4波形データのそれぞれを前記学習モデルに入力することによって、前記複数の第4波形データのそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を取得し、
連続する所定数の前記複数の第4波形データに対応する前記情報のそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであることを示していると判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであることを示す情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする心房細動検知方法。
【請求項9】
心電信号の波形データを採取する操作端末と、前記波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知装置とを有する心房細動検知システムであって、
前記心房細動検知装置は、
前記心房細動の検知を行うために必要な波形データの時間として予め決定された所定時間以上の第1時間に対応する学習用波形データを、前記所定時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割し、
分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成
前記第1時間に対応する新たな波形データを、前記第2時間に対応する複数の第4波形データに分割し、
分割した前記複数の第4波形データのそれぞれを前記学習モデルに入力することによって、前記複数の第4波形データのそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を取得し、
連続する所定数の前記複数の第4波形データに対応する前記情報のそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであることを示していると判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであることを示す情報を出力する、
ことを特徴とする心房細動検知システム。
【請求項10】
請求項において、
前記操作端末は、
前記第1時間に対応する新たな波形データを対象者から採取し、
採取した前記新たな波形データを前記心房細動検知装置に送信し、
前記心房細動検知装置は、
前記操作端末が送信した前記新たな波形データを受信した場合、受信した前記新たな波形データを、前記第2時間に対応する複数の第4波形データに分割る、
ことを特徴とする心房細動検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AF:Atrial Fibrillation)は、心房における異常な動作に起因して生じる不整脈の一種である。このような心房細動は、例えば、心房内において血栓を発生させる原因となり、さらには、脳梗塞等の原因となる可能性がある病気である。
【0003】
そして、このような心房細動の検出は、一般的に、医師が知識と経験に基づいて、患者から採取された脈波や心電図から心房細動に関連する波形パターン(異常波形パータン)を検出することで行われている(特許文献1乃至5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-086278号公報
【文献】特開2018-153487号公報
【文献】特開2019-201886号公報
【文献】特開2018-102518号公報
【文献】特開2018-149318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のような心房細動が早期発見された場合、医師は、アブレーション等を活用することによって心房細動を完治させることが可能になる。
【0006】
しかしながら、上記のような医師による検出は、利用できる場所が病院等に限られており、心房細動の早期発見を行うことができない場合がある。そのため、近年では、患者自身によって心房細動の発見を手軽に行うことができる方法が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、心房細動の発症を自動的に検知できる心房細動検知プログラム、心房細動検知装置及び心房細動検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、心電信号の波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知処理をコンピュータに実行させる心房細動検知プログラムであって、前記心房細動の検知に要する波形データの時間以上の第1時間に対応する前記波形データを、前記心房細動の検知に要する波形データの時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割し、分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、一つの態様では、前記第1時間に対応する前記波形データに対してトレンド除去を行うことによって第2波形データを生成し、生成した前記第2波形データに対して運動アーチファクト除去を行うことによって第3波形データを生成し、生成した前記第3波形データを、前記第2時間に対応する前記複数の第1波形データに分割する、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、一つの態様では、前記第1時間に対応する新たな波形データを、前記第2時間に対応する複数の第4波形データに分割し、分割した前記複数の第4波形データのそれぞれを前記学習モデルに入力することによって、前記複数の第4波形データのそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を取得し、取得した前記情報に基づいて、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであるか否かについての判定を行い、前記判定の結果を出力する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、一つの態様では、前記第1時間に対応する前記新たな波形データに対してトレンド除去を行うことによって第5波形データを生成し、生成した前記第5波形データに対して運動アーチファクト除去を行うことによって第6波形データを生成し、生成した前記第6波形データを、前記第2時間に対応する前記複数の第4波形データに分割する、ことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、一つの態様では、前記複数の第4波形データのうち、連続する所定数の波形データのそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであると判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであると判定する、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、一つの態様では、前記連続する所定数の波形データに対応する時間は、前記心房細動の検知に要する波形データに対応する時間以上の時間である、ことを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、一つの態様では、前記新たな波形データに対応する人の心拍数が所定以上でないと判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであると判定する、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知プログラムは、一つの態様では、前記新たな波形データに対応する人の心拍数が所定以上であると判定した場合、前記新たな波形データに対応する人の心拍数の標準偏差が所定以下であるか否かを判定し、前記新たな波形データに対応する人の心拍数の標準偏差が所定以下でないと判定した場合、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであると判定する、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知装置は、心電信号の波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知装置であって、前記心房細動の検知に要する波形データの時間以上の第1時間に対応する前記波形データを、前記心房細動の検知に要する波形データの時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割するデータ分割部と、分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成するモデル生成部と、を有する、ことを特徴とする。
【0017】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知方法は、心電信号の波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知処理をコンピュータに実行させる心房細動検知方法であって、前記心房細動の検知に要する波形データの時間以上の第1時間に対応する前記波形データを、前記心房細動の検知に要する波形データの時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割し、分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知システムは、心電信号の波形データを採取する操作端末と、前記波形データを用いた機械学習を行うことによって心房細動の検知を行う心房細動検知装置とを有する心房細動検知システムであって、前記心房細動検知装置は、前記心房細動の検知に要する波形データの時間以上の第1時間に対応する前記波形データを、前記心房細動の検知に要する波形データの時間未満の第2時間に対応する複数の第1波形データに分割し、分割した前記複数の第1波形データと、前記複数の第1波形データのそれぞれが前記心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成する、ことを特徴とする。
【0019】
また、上記目的を達成するための本発明における心房細動検知システムは、一つの態様では、前記操作端末は、前記第1時間に対応する新たな波形データを対象者から採取し、採取した前記新たな波形データを前記心房細動検知装置に送信し、前記心房細動検知装置は、前記操作端末が送信した前記新たな波形データを受信した場合、受信した前記新たな波形データを、前記第2時間に対応する複数の第4波形データに分割し、分割した前記複数の第4波形データのそれぞれを前記学習モデルに入力することによって、前記複数の第4波形データのそれぞれが前記心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を取得し、取得した前記情報に基づいて、前記新たな波形データが前記心房細動に対応する波形データであるか否かについての判定を行い、前記判定の結果を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明における心房細動検知プログラム、心房細動検知装置、心房細動検知方法及び心房細動検知システムによれば、心房細動の発症を自動的に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1の実施の形態における情報処理装置1の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施の形態における患者端末2の構成例を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態における情報処理装置1の構成例を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態における情報処理装置1の構成例を示す図である。
図5図5は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の概略を説明する図である。
図6図6は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の概略を説明する図である。
図7図7は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明するフローチャート図である。
図8図8は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明するフローチャート図である。
図9図9は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明するフローチャート図である。
図10図10は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明するフローチャート図である。
図11図11は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明するフローチャート図である。
図12図12は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明する図である。
図13図13は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明する図である。
図14図14は、S14の処理で分割した複数の分割波形データの具体例を示す図である。
図15図15は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明する図である。
図16図16は、S34の処理で分割した複数の分割波形データのうちの1つの具体例を示す図である。
図17図17は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の性能評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
初めに、第1の実施の形態における情報処理装置1の構成例について説明を行う。図1は、第1の実施の形態における情報処理装置1の構成例を示す図である。
【0024】
情報処理装置1(以下、心房細動検知装置1とも呼ぶ)は、コンピュータ装置であって、例えば、汎用的なPC(Personal Computer)である。そして、情報処理装置1は、例えば、患者端末2(以下、操作端末2とも呼ぶ)から送信された患者の心電信号についての時系列データ(以下、心電波形データまたは波形データとも呼ぶ)を用いることにより、心房細動の検知を行う処理(以下、心房細動検知処理とも呼ぶ)を行う。
【0025】
情報処理装置1は、汎用的なコンピュータ装置のハードウエア構成を有し、例えば、図1に示すように、プロセッサであるCPU101と、メモリ102と、通信インタフェース103と、記憶媒体104とを有する。各部は、バス105を介して互いに接続される。
【0026】
記憶媒体104は、例えば、心房細動検知処理を行うためのプログラム(図示しない)を記憶するプログラム格納領域(図示しない)を有する。
【0027】
また、記憶媒体104は、例えば、心房細動検知処理を行う際に用いられる情報を記憶する記憶部110(以下、記憶領域110とも呼ぶ)を有する。なお、記憶媒体104は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0028】
CPU101は、記憶媒体104からメモリ102にロードされたプログラムを実行して心房細動検知処理を行う。
【0029】
通信インタフェース103は、例えば、インターネット網等のネットワークNWを介してアクセスポイントAPと有線通信を行う。そして、アクセスポイントAPは、例えば、WiFi等を用いることによって患者端末2と無線通信を行う。すなわち、情報処理装置1は、例えば、クラウド上に設けられたコンピュータ装置(クラウドサーバ)であってもよい。
【0030】
次に、第1の実施の形態における患者端末2の構成例について説明を行う。図2は、第1の実施の形態における患者端末2の構成例を示す図である。
【0031】
患者端末2は、例えば、患者自身が所有する心電計、ウェアラブルウォッチまたはスマートフォン等の携帯端末であり、患者の心電波形データを採取できる端末である。具体的に、患者端末2は、例えば、定期的なタイミングにおいて、患者の心電波形データを採取して情報処理装置1に送信する。
【0032】
患者端末2は、汎用的なコンピュータ装置のハードウエア構成を有し、例えば、図2に示すように、プロセッサであるCPU201と、メモリ202と、通信インタフェース203と、記憶媒体204とを有する。各部は、バス205を介して互いに接続される。
【0033】
記憶媒体204は、例えば、心房細動検知処理を行うためのプログラム(図示しない)を記憶するプログラム格納領域(図示しない)を有する。
【0034】
また、記憶媒体204は、例えば、心房細動検知処理を行う際に用いられる情報を記憶する記憶部210(以下、記憶領域210とも呼ぶ)を有する。なお、記憶媒体204は、例えば、HDDやSSDであってよい。
【0035】
CPU201は、記憶媒体204からメモリ202にロードされたプログラムを実行して心房細動検知処理を行う。
【0036】
通信インタフェース203は、例えば、WiFi等を用いることによってアクセスポイントAPと無線通信を行う。そして、アクセスポイントAPは、例えば、インターネット網等のネットワークNWを介して情報処理装置1と有線通信を行う。
【0037】
また、図1に示す管理者端末3は、例えば、情報処理装置1の管理者(以下、単に管理者とも呼ぶ)が必要な情報を入力するPCである。具体的に、管理者は、例えば、管理者端末3を用いることによって、学習モデルの生成に用いる複数の波形データ(学習用の波形データ)を情報処理装置1に送信する。
【0038】
なお、情報処理装置1は、例えば、スマートフォン等の携帯端末であってもよい。この場合、通信インタフェース103は、図3に示すように、例えば、操作端末2と直接無線通信を行うものであってもよい。
【0039】
また、情報処理装置1は、例えば、患者端末2の機能(患者の心電波形データを採取する機能)についても有するものであってもよい。この場合、情報処理装置1は、図4に示すように、患者端末2との間における通信を行う必要がなくなる。
【0040】
さらに、患者端末2は、例えば、12誘導心電計やベッドサイドモニタ等の据え置き型の機器であってもよい。
【0041】
[第1の実施の形態の概略]
図5及び図6は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の概略を説明する図である。具体的に、図5は、第1の実施の形態における心房細動検知処理のうち、学習段階の処理について説明する図である。また、図6は、第1の実施の形態における心房細動検知処理のうち、判定段階の処理について説明する図である。
【0042】
初めに、第1の実施の形態における心房細動検知処理のうち、学習段階の処理について説明を行う。
【0043】
情報処理装置1のデータ受信部111は、図5に示すように、例えば、管理者が管理者端末3を介して送信した複数の波形データ(学習用の波形データ)を受信する。複数の波形データは、例えば、心房細動の検知を行うために要する波形データの時間以上の時間(以下、第1時間とも呼ぶ)に対応する波形データである。すなわち、第1時間は、心房細動の検知を行う学習モデル(後述する学習モデル)を生成するために必要な波形データの時間以上の時間であり、かつ、学習モデルを用いることによって患者が心房細動であるか否かを判定するために必要な波形データの時間以上の時間である。具体的に、心房細動の検知を行うために要する時間は、例えば、30秒等の時間であってよい。また、第1時間は、例えば、10分や1時間等の時間であってよい。
【0044】
続いて、情報処理装置1のデータ前処理部112(以下、データ分割部112とも呼ぶ)は、データ受信部111が受信した複数の波形データのそれぞれに対して前処理を行う。
【0045】
具体的に、データ前処理部112は、例えば、データ受信部111が受信した波形データのそれぞれを、心房細動の検知を行うために要する波形データの時間未満の時間(以下、第2時間とも呼ぶ)に対応する複数の分割波形データ(以下、第1波形データとも呼ぶ)に分割する。すなわち、第2時間は、心房細動の検知を行う学習モデル(後述する学習モデル)を生成するために必要な波形データの時間未満の時間であり、かつ、学習モデルを用いることによって患者が心房細動であるか否かを判定するために必要な波形データの時間未満の時間である。具体的に、第2時間は、例えば、10秒等の時間であってよい。
【0046】
そして、情報処理装置1のデータ生成部113は、データ前処理部112が分割した複数の分割波形データごとに、各分割波形データと、各分割波形データが心房細動に対応する分割波形データであるか否かを示す情報(以下、ラベルとも呼ぶ)とを含む学習データを生成する。
【0047】
その後、情報処理装置1のモデル生成部114は、データ生成部113が生成した複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成する。
【0048】
具体的に、モデル生成部114は、例えば、データ生成部113が生成した複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって、CNN(Convolution Neural Network)を生成する。
【0049】
なお、データ受信部111は、特定の患者が所有する患者端末2から連続的に送信される波形データ(すなわち、特定の患者についての心電波形データ)を随時受信するものであってもよい。そして、データ前処理部112及びデータ生成部113は、データ受信部111が波形データを受信するごとに、学習データの生成を行うものであってもよい。この場合、データ前処理部112及びデータ生成部113は、例えば、データ受信部111が受信した波形データのうち、医師によって心房細動に対応する波形データであると判断された波形データのみを用いることによって、学習データの生成を行うものであってもよい。さらに、モデル生成部114は、データ生成部113が学習データの生成を行うごとに、生成された学習データを学習モデルに順次学習させるものであってもよい。
【0050】
次に、第1の実施の形態における心房細動検知処理のうち、判定段階の処理について説明を行う。
【0051】
データ受信部111は、図6に示すように、例えば、患者が患者端末2を介して送信した新たな波形データ(判定対象の波形データ)を受信する。
【0052】
具体的に、患者端末2は、例えば、第1時間に対応する波形データを患者から採取する。そして、患者端末2は、採取した波形データを情報処理装置1に対して送信する。その後、データ受信部111は、患者端末2から送信された波形データを受信する。
【0053】
続いて、情報処理装置1のデータ前処理部112は、データ受信部111が受信した新たな波形データに対して前処理を行う。
【0054】
具体的に、データ前処理部112は、例えば、データ受信部111が受信した新たな波形データを、第2時間に対応する複数の分割波形データ(以下、第2波形データとも呼ぶ)に分割する。
【0055】
そして、情報処理装置1のデータ判定部115は、データ前処理部112が分割した複数の分割波形データのそれぞれを学習モデル(モデル生成部114が生成した学習モデル)に入力することによって、複数の分割波形データのそれぞれが心房細動に対応する波形データであるか否かを示す判定値を計算する。
【0056】
具体的に、データ判定部115は、例えば、モデル生成部114によって生成されたCNNのモデルパラメータセットを用いることによって、データ前処理部112が分割した複数の分割波形データごとに、各分割波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かを判定する。
【0057】
さらに、データ判定部115は、取得した判定値のそれぞれに基づいて、データ受信部111が受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かについての判定を行う。
【0058】
その後、情報処理装置1の結果出力部116は、例えば、データ判定部115による判定の結果を患者端末2に出力(送信)する。
【0059】
具体的に、結果出力部116は、データ受信部111が受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を患者端末2に出力する。
【0060】
すなわち、本実施の形態における情報処理装置1は、例えば、患者端末2から送信された新たな波形データを受信した場合、予め生成した学習モデルを用いることで、新たな波形データに対応する患者が心房細動を発症しているか否かについての判定を行う。
【0061】
これにより、患者は、医師による診察等を受けることなく、心房細動が発症している否かの判定を行うことが可能になる。そのため、患者は、心房細動の早期発見を行うことが可能になる。
【0062】
また、本実施の形態における情報処理装置1は、学習段階において、心房細動の検知を行うために要する時間よりも長い時間(第1時間)に対応する学習用の波形データをそのまま学習データとして用いる代わりに、心房細動の検知を行うために要する時間よりも短い時間(第2時間)に対応する複数の分割波形データ(学習用の波形データを分割して生成した複数の分割波形データ)を学習データとして用いる。
【0063】
そして、本実施の形態における情報処理装置1は、判定段階において、心房細動の検知を行うために要する時間よりも短い時間に対応する複数の分割波形データ(判定対象の波形データを分割して生成した複数の分割波形データ)を学習モデルに入力することによって、判定対象の波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を出力する。
【0064】
これにより、本実施の形態における情報処理装置1は、心房細動の検知を行うために要する時間よりも長い時間に対応する学習用の波形データをそのまま学習データを用いる場合と比較して、規模の小さい学習モデル(畳込み層や全結合層の数が少ない学習モデル)を生成することが可能になる。そのため、情報処理装置1は、処理能力が弱い場合であっても、学習モデルの生成処理や新たな波形データについての判定処理を短時間で行うことが可能になる。
【0065】
[第1の実施の形態の詳細]
次に、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細について説明を行う。図7から図11は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明するフローチャート図である。また、図12から図17は、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細を説明する図である。
【0066】
[学習段階における処理]
初めに、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細のうち、学習段階における処理の詳細について説明を行う。図7及び図8は、学習段階における処理の詳細について説明する図である。
【0067】
データ受信部111は、図7に示すように、例えば、管理者端末3から送信された複数の波形データ(学習用の波形データ)、または、特定の患者の患者端末2から送信された複数の波形データ(特定の患者の心電波形データ)を受信するまで待機する(S11のNO)。
【0068】
そして、複数の波形データを受信した場合(S11のYES)、データ前処理部112は、S11の処理で受信した複数の波形データのそれぞれに対してトレンド除去を行う(S12)。
【0069】
続いて、データ前処理部112は、この場合、S12の処理でトレンド除去を行った複数の波形データのそれぞれに対して運動アーチファクト除去を行う(S13)。
【0070】
さらに、データ前処理部112は、S13の処理で運動アーチファクト除去を行った複数の波形データのそれぞれを、複数の分割波形データに分割する(S14)。
【0071】
具体的に、データ前処理部112は、例えば、各分割波形データに対応する時間が10秒になるように、S13の処理で運動アーチファクト除去を行った複数の波形データ(例えば、30秒以上の時間に対応する複数の波形データ)のそれぞれを分割する。
【0072】
そして、データ前処理部112は、S14の処理で分割した複数の分割波形データのそれぞれに対してダウンサンプリングを行う(S15)。さらに、データ前処理部112は、S15の処理でダウンサンプリングを行った複数の分割波形データのそれぞれを正規化する(S16)。
【0073】
すなわち、情報処理装置1は、S11の処理で受信した波形データが学習モデルの生成に適した形になるように前処理を行う。以下、S11の処理からS16の処理の具体例について説明を行う。
【0074】
[S11の処理からS16の処理の具体例]
図12は、S11の処理からS16の処理の具体例を説明する図である。図12に示す各波形データにおける横軸及び縦軸は、データの番号及び振幅のそれぞれを示している。
【0075】
データ受信部111は、例えば、図12(A)に示す波形データを受信する(S11)。具体的に、図12(A)に示す波形データは、30秒間採取された心電波形データである。
【0076】
そして、データ前処理部112は、図12(A)に示す波形データに対してトレンド除去を行うことによって、図12(B)に示す波形データを生成する(S12)。
【0077】
続いて、データ前処理部112は、図12(B)に示す波形データに対して運動アーチファクト除去を行うことによって、図12(C)に示す波形データを生成する(S13)。
【0078】
次に、データ前処理部112は、図12(C)に示す波形データを分割することによって、例えば、図12(D)に対応する3つの分割波形データを生成する(S14)。具体的に、図12(D)に示す分割波形データのそれぞれは、10秒間採取された心電波形データである。
【0079】
そして、データ前処理部112は、図12(D)に分割示す波形データのそれぞれに対してダウンサンプリングを行うことによって、図12(E)に示す分割波形データのそれぞれを生成する(S15)。
【0080】
その後、データ前処理部112は、図12(E)に示す分割波形データのそれぞれを正規化することによって、図12(F)に示す分割波形データのそれぞれを生成する(S16)。
【0081】
図8に戻り、情報処理装置1のデータ生成部113は、S16の処理で正規化を行った複数の分割波形データが心房細動に対応する分割波形データであるか否かを示す情報(ラベル)の入力を受け付ける(S21のNO)。
【0082】
具体的に、学習データの生成を行う担当者(例えば、医師)は、S16の処理で正規化を行った複数の分割波形データごとに、各分割波形データが心房細動に対応する分割波形データであるか否かを判定する。そして、担当者は、S16の処理で正規化を行った複数の分割波形データのそれぞれが心房細動に対応する分割波形データであるか否かの判定結果を示すラベルを、担当者端末(図示しない)を介して情報処理装置1に入力する。
【0083】
そして、S16の処理で正規化を行った複数の分割波形データが心房細動に対応する分割波形データであるか否かを示す情報(ラベル)の入力を受け付けた場合(S21のYES)、データ生成部113は、S16の処理で正規化を行った分割波形データごとに、各分割波形データと、各分割波形データに対応するラベルとを含む学習データを生成する(S22)。
【0084】
すなわち、情報処理装置1は、S11の処理で受信した波形データ(心房細動の検知が可能な長さの波形データ)をそのまま学習データとして用いる代わりに、S11の処理で受信した波形データを分割して生成した分割波形データを学習データとして用いる。
【0085】
その後、データ生成部113は、S22の処理で生成した学習データのそれぞれを記憶領域110に記憶する(S23)。
【0086】
なお、学習モデルの生成に用いる学習データが予め記憶領域110に記憶されている場合、情報処理装置1は、S11からS23の処理を行わないものであってもよい。
【0087】
そして、情報処理装置1のモデル生成部114は、モデル生成タイミングになったか否かについて判定する(S24)。モデル生成タイミングは、例えば、S22の処理において生成された学習データの数が所定数に到達したタイミングであってよい。すなわち、モデル生成タイミングは、例えば、S22の処理において生成された学習データの数が、十分な判定精度を有する学習モデルを生成するために必要な学習データの数に到達したタイミングであってよい。
【0088】
その結果、モデル生成タイミングになっていないと判定した場合(S24のNO)、情報処理装置1は、S11以降の処理を再度行う。すなわち、情報処理装置1は、この場合、モデル生成タイミングになるまでS11以降の処理を繰り返す。
【0089】
その後、モデル生成タイミングになった場合(S24のYES)、モデル生成部114は、記憶領域110に記憶した学習データのそれぞれを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成する(S25)。以下、S25の処理の具体例について説明を行う。
【0090】
[S25の処理の具体例]
図13は、S25の処理の具体例を説明する図である。また、図14は、S14の処理で分割した複数の分割波形データの具体例を示す図である。具体的に、図13は、学習モデルとしてCNNを生成する際の具体例である。
【0091】
モデル生成部114は、例えば、図13に示すように、記憶領域110に記憶した学習データに含まれる複数の分割波形データ(図14に示す複数の分割波形データ)のそれぞれを、入力層の各ノードから順次入力することによって、畳込み層(Conv層)において畳込み演算を行い、複数の分割波形データのそれぞれに対応する特徴パターンを自動的に抽出する。そして、モデル生成部114は、抽出した特徴パターンのそれぞれと、学習データに含まれるラベルのそれぞれとを用いることにより、最適なモデルパラメータセットを学習する。
【0092】
ここで、学習モデルの生成に用いられる学習データは、S14の処理において分割された分割波形データを含む学習データである。そのため、モデル生成部114は、S25の処理において、比較的規模の小さい学習モデル(例えば、入力ノードの数や畳込み層等の数を抑えた学習モデル)を生成する。具体的に、モデル生成部114は、S25の処理において、例えば、2つの畳込み層と1つの全結合層とを有するCNNの生成を行う。
【0093】
これにより、情報処理装置1は、処理能力が弱い場合であっても、学習モデルの生成処理や新たな波形データについての判定処理を短時間で行うことが可能になる。
【0094】
また、情報処理装置1は、S14の処理において分割された分割波形データをそのまま学習データとして用いることで、波形データからの特徴量の抽出等を自動化することができる。
【0095】
[判定段階における処理]
次に、第1の実施の形態における心房細動検知処理の詳細のうち、判定段階における処理の詳細について説明を行う。図9から図11は、判定段階における処理の詳細について説明する図である。
【0096】
データ受信部111は、図9に示すように、例えば、患者端末2から送信された新たな波形データ(判定対象の波形データ)を受信するまで待機する(S31のNO)。
【0097】
そして、新たな波形データを受信した場合(S31のYES)、データ前処理部112は、S31の処理で受信した新たな波形データに対してトレンド除去を行う(S32)。
【0098】
続いて、データ前処理部112は、この場合、S32の処理でトレンド除去を行った新たな波形データに対して運動アーチファクト除去を行う(S33)。
【0099】
さらに、データ前処理部112は、S33の処理で運動アーチファクト除去を行った新たな波形データを、複数の分割波形データに分割する(S34)。
【0100】
具体的に、データ前処理部112は、例えば、各分割波形データに対応する時間が10秒になるように、S33の処理で運動アーチファクト除去を行った新たな波形データ(例えば、30秒以上の時間に対応する波形データ)を分割する。
【0101】
そして、データ前処理部112は、S34の処理で分割した複数の分割波形データのそれぞれに対してダウンサンプリングを行う(S35)。さらに、データ前処理部112は、S35の処理でダウンサンプリングを行った複数の分割波形データのそれぞれを正規化する(S36)。
【0102】
すなわち、情報処理装置1は、S31の処理で受信した新たな波形データが学習モデルの入力に適した形になるように前処理を行う。
【0103】
次に、情報処理装置1のデータ判定部115は、図10に示すように、S36の処理で正規化を行った複数の分割波形データのそれぞれを学習モデルに入力することによって、分割波形データのそれぞれが心房細動に対応するか否かを示す判定値を取得する(S41)。
【0104】
具体的に、データ判定部115は、S36の処理で正規化を行った複数の分割波形データごとに、各分割波形データを入力することに伴ってモデル生成部114から出力される判定値を、各分割波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報として取得する。以下、S41の処理の具体例について説明を行う。
【0105】
[S41の処理の具体例]
図15は、S41の処理の具体例を説明する図である。また、図16は、S34の処理で分割した複数の分割波形データのうちの1つの具体例を示す図である。具体的に、図15は、S34の処理で分割した複数の分割波形データのうちの1つの分割波形データについての判定を行う際の具体例である。
【0106】
モデル生成部114は、例えば、図15に示すように、S36の処理で正規化を行った分割波形データ(図16に示す分割波形データ)を、S25の処理で生成したCNNにおける入力層の各ノードから入力する。そして、モデル生成部114は、CNNの出力層から出力された判定値を取得する。
【0107】
図10に戻り、データ判定部115は、S36の処理で正規化を行った分割波形データのうち、S41の処理で取得した判定値に基づいて、心房細動に対応する分割波形データを特定する(S42)。
【0108】
続いて、データ判定部115は、S36の処理で正規化を行った分割波形データにおいて、S42の処理で特定した分割波形データが所定数以上連続しているか否かを判定する(S43)。
【0109】
すなわち、S36の処理で正規化を行った分割波形データのそれぞれは、心房細動の検知に必要な長さを有していない波形データである。そのため、データ判定部115は、例えば、S36の処理で正規化を行った分割波形データにおいて、心房細動の検知に必要な長さに対応する複数の連続する分割波形データが存在する場合に、S31の処理で受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データであると判定する。
【0110】
具体的に、例えば、S31の処理で受信した新たな波形データが30秒に対応する波形データであり、S36の処理で正規化を行った分割波形データは10秒に対応する波形データである場合、データ判定部115は、S36の処理で正規化を行った分割波形データにおいて、S42の処理で特定した分割波形データが3以上連続しているか否かについての判定を行う。
【0111】
その結果、S42の処理で特定した分割波形データが所定数以上連続していると判定した場合(S44のYES)、データ判定部115は、S31の処理で受信した新たな波形データに対応する患者の心拍数が所定以上であるか否かを判定する(S45)。
【0112】
具体的に、データ判定部115は、例えば、S31の処理で受信した新たな波形データに対応する患者の心拍数が100(bpm)以上であるか否かについての判定を行う。
【0113】
そして、図11に示すように、S31の処理で受信した波形データに対応する患者の心拍数が所定以上であると判定した場合(S51のYES)、データ判定部115は、S31の処理で受信した新たな波形データに対応する患者の心拍数の標準偏差が所定以上であるか否かを判定する(S52)。
【0114】
具体的に、データ判定部115は、例えば、S31の処理で受信した新たな波形データに対応する患者の心拍数の標準偏差が11(bpm)以上であるか否かについての判定を行う。
【0115】
その結果、S31の処理で受信した波形データに対応する患者の心拍数が所定以上であると判定した場合(S53のYES)、データ判定部115は、S31の処理で受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データであると判定する(S54)。
【0116】
また、データ判定部115は、S31の処理で受信した波形データに対応する患者の心拍数が所定以上でないと判定した場合についても同様に(S51のNO)、S54の処理を行う。
【0117】
すなわち、情報処理装置1は、S36の処理で正規化を行った分割波形データにおいて、S42の処理で特定した分割波形データが所定数以上連続している場合であっても、S31の処理で受信した新たな波形データに対応する患者の心拍数が所定以上である場合、例えば、S31の処理で受信した新たな波形データが頻脈等(心房細動以外の症状)に対応する波形データである可能性があると判定する。
【0118】
そして、情報処理装置1は、例えば、S31の処理で受信した新たな波形データに対応する患者の心拍数が所定以上である場合において、S31の処理で受信した新たな波形データに対応する患者の心拍数の標準偏差(ばらつき)が所定以上でない場合、S31の処理で受信した新たな波形データが頻脈等に対応する波形データであると判定する。
【0119】
これにより、情報処理装置1は、S31の処理で受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かについての判定をより精度良く行うことが可能になる。
【0120】
図11に戻り、S54の処理の後、情報処理装置1の結果出力部116は、S54の処理における判定結果を患者端末2に出力する(S55)。
【0121】
すなわち、結果出力部116は、S54の処理が行われた場合、S31の処理で受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データであることを示す情報を患者端末2(S31の処理で受信した新たな波形データを送信した患者端末2)に送信する。
【0122】
また、S42の処理で特定した分割波形データが所定数以上連続していないと判定した場合(S43のNO)、結果出力部116は、S31の処理で受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データでないことを示す情報を患者端末2に送信する。
【0123】
さらに、S31の処理で受信した波形データに対応する患者の心拍数が所定以上でないと判定した場合についても同様に(S53のNO)、結果出力部116は、S31の処理で受信した新たな波形データが心房細動に対応する波形データでないことを示す情報を患者端末2に送信する。
【0124】
[心房細動検知処理の性能評価結果]
次に、心房細動検知処理の性能評価結果について説明を行う。図17は、心房細動検知処理の性能評価結果を示す図である。具体的に、図17は、第1DBに予め格納された波形データ(学習用の波形データ)を含む学習データを用いることによって生成した学習モデル(以下、第1学習モデルとも呼ぶ)の判定精度と、第2DBに予め格納された波形データ(学習用の波形データ)を含む学習データを用いることによって生成した学習モデル(以下、第2学習モデルとも呼ぶ)の判定精度とを示す情報について説明する図である。
【0125】
なお、第1及び第2学習モデルの生成に用いられる学習データのうち、異常ラベルに対応する学習データは、心房細動に対応する波形データを含む学習データであり、正常ラベルに対応する学習データは、心房細動以外の症状に対応する波形データを含む学習データである。すなわち、正常ラベルに対応する学習データには、正常洞調律に対応する波形データを含む学習データの他、心房粗動に対応する波形データを含む学習データや房室接合部調律に対応する波形データを含む学習データが含まれている。
【0126】
図17に示す情報は、心房細動検知の感度を示すTP(true positive rate)と、心房細動検知の特異度を示すTN(true negative rate)と、心房細動検知の精度を示すACC(accurary)とを項目として有する。また、図17に示す情報は、心房細動検知の陽性予測値を示すPPV(positive predictive value)と、心房細動検知の陰性予測値を示すNPV(negative predict value)とを項目として有する。
【0127】
具体的に、図17に示す情報は、第1学習モデルに対応する情報に対応するTP、TN、ACC、PPV及びNPVのそれぞれが「92.07(%)」、「93.53(%)」、「97.10(%)」、「73.90(%)」及び「93.16(%)」であることを示している。
【0128】
また、図17に示す情報は、第2学習モデルに対応する情報に対応するTP、TN、ACC、PPV及びNPVのそれぞれが「94.51(%)」、「87.10(%)」、「92.21(%)」、「20.12(%)」及び「96.82(%)」であることを示している。
【0129】
このように、本実施の形態における情報処理装置1は、心房細動の検知に要する波形データに対応する時間以上の第1時間に対応する波形データを、第1時間よりも短い第2時間に対応する複数の分割波形データに分割し、分割した複数の分割波形データと、分割した複数の分割波形データのそれぞれが心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成する。
【0130】
すなわち、本実施の形態における情報処理装置1は、例えば、患者端末2から送信された新たな波形データを受信した場合、予め生成した学習モデルを用いることで、新たな波形データに対応する患者が心房細動を発症しているか否かについての判定を行う。
【0131】
これにより、患者は、医師による診察等を受けることなく、心房細動が発症している否かの判定を行うことが可能になる。そのため、患者は、心房細動の早期発見を行うことが可能になる。
【0132】
また、本実施の形態における情報処理装置1は、学習段階において、心房細動の検知を行うために要する時間よりも長い時間に対応する学習用の波形データをそのまま学習データとして用いる代わりに、心房細動の検知を行うために要する時間よりも短い時間に対応する複数の分割波形データ(学習用の波形データを分割して生成した複数の分割波形データ)を学習データとして用いる。
【0133】
そして、本実施の形態における情報処理装置1は、判定段階において、心房細動の検知を行うために要する時間よりも短い時間に対応する複数の分割波形データ(判定対象の波形データを分割して生成した複数の分割波形データ)を学習モデルに入力することによって、判定対象の波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かを示す情報を出力する。
【0134】
これにより、本実施の形態における情報処理装置1は、心房細動の検知を行うために要する時間よりも長い時間に対応する学習用の波形データをそのまま学習データを用いる場合と比較して、規模の小さい学習モデル(例えば、畳込み層や全結合層の数が少ない学習モデル)を生成することが可能になる。そのため、情報処理装置1は、処理能力が弱い場合であっても、学習モデルの生成処理や学習モデルを用いることによる新たな波形データの判定処理を短時間で行うことが可能になる。
【0135】
なお、上記の例では、情報処理装置1が患者端末2において採取された波形データを用いることによって心房細動検知処理を行う場合について説明を行ったが、心房細動検知処理が患者端末2において行われるものであってもよい。
【0136】
具体的に、患者端末2は、データ前処理部112、データ生成部113、モデル生成部114、データ判定部115及び結果出力部116と同じ機能を有するものであってもよい。
【0137】
さらに具体的に、患者端末2は、例えば、管理者端末3から受信した学習用の学習データを用いることによって、学習モデルの生成を行うものであってもよい。そして、患者端末2は、患者から新たな波形データを採取した場合、学習モデルを用いることによって、新たな波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かについての判定を行うものであってもよい。
【0138】
また、患者端末2は、例えば、情報処理装置1において生成された学習モデルを記憶領域210に記憶するものであってもよい。そして、患者端末2は、患者から新たな波形データを採取した場合、学習モデルを用いることによって、新たな波形データが心房細動に対応する波形データであるか否かについての判定を行うものであってもよい。
【0139】
この点、本実施の形態における心房細動検知処理では、上記のように規模の小さい学習モデルが用いられる。そのため、患者端末2は、自端末の処理能力が十分でない場合であっても、心房細動検知処理を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0140】
1:心房細動検知装置
2:患者端末
3:管理者端末
101:CPU
102:メモリ
103:通信インタフェース
104:記憶媒体
105:バス
【要約】
【課題】心房細動の発症を自動的に検知できる心房細動検知プログラム、心房細動検知装置及び心房細動検知方法を提供する。
【解決手段】心房細動の検知に要する波形データに対応する時間以上の第1時間に対応する波形データを、第1時間よりも短い第2時間に対応する複数の第1波形データに分割し、分割した複数の第1波形データと、複数の第1波形データのそれぞれが心房細動に対応するか否かを示す情報とを含む複数の学習データを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを生成する。
【選択図】図12
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17