(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】生体情報測定装置のプローブ及び生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20220214BHJP
【FI】
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2018073901
(22)【出願日】2018-04-06
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591027008
【氏名又は名称】株式会社小池メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】513045552
【氏名又は名称】株式会社TRアンドK
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 友春
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-279398(JP,A)
【文献】特開2011-163953(JP,A)
【文献】特開2009-233404(JP,A)
【文献】特開平08-308813(JP,A)
【文献】特開2016-137011(JP,A)
【文献】米国特許第05786592(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
F21S 2/00
F21V 8/00
G01N 33/48 -33/98
H01L 33/00 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出した光が生体の内部に伝搬した伝搬光を検出し、伝搬光の強度に基づき生体情報を算出する生体情報算出手段を備えた生体情報測定装置のプローブであって、
円周状に配置され、互いに異なる波長の光を発光する複数の砲弾型LEDと、
前記複数の砲弾型LEDのリードフレームが円周状に取り付けられた基板と、
前記複数の砲弾型LEDからの光を生体に向けて射出する環状の射出口と、
前記複数の砲弾型LEDに対面する環状端面を有し、前記環状端面から前記射出口まで延びる円筒状の第1の光ファイバーと、
前記第1の光ファイバーの外周面を覆う円筒状の第1の遮光壁と、
前記射出口の径方向内方に配置され、前記射出口から射出した光が生体の内部に伝搬した伝搬光を入射させる円形の入射口と、
前記基板における円周状の前記リードフレームの中心部に設置され、前記入射口から入射した伝搬光を受光して伝搬光の強度に応じた電気信号を前記生体情報算出手段に出力する単一の受光素子と、
前記第1の光ファイバーを貫通して前記入射口から前記受光素子まで延び、前記第1の光ファイバーよりも軸方向に長い円柱状の第2の光ファイバーと、
前記第2の光ファイバーの周面を覆い、外方に前記複数の砲弾型LEDが配置された円筒状の第2の遮光壁と、を備えるプローブ。
【請求項2】
前記生体情報測定装置が、前記複数の砲弾型LEDの温度により、前記生体情報算出手段で算出する生体情報を補正する補正手段を有しており、
前記基板における円周状の前記リードフレームの中心部には、前記受光素子の裏面側に前記複数の砲弾型LEDの温度を検出する温度検出手段が設置されている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
請求項2に記載のプローブを有する生体情報測定装置であって、
前記補正手段は、前記複数の砲弾型LEDの発光強度の温度特性が予め記憶された記憶手段を備えており、前記温度特性に基づいて、前記温度検出手段によって検出された温度における前記複数の砲弾型LEDの発光強度と基準温度における前記複数の砲弾型LEDの発光強度との比率を算出し、次いで、前記受光素子から出力された電気信号に基づいて算出した生体情報を前記比率に応じて補正する生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、黄疸の診断に使用される、射出した光が生体の内部に伝搬した伝搬光を検出して生体情報を測定する生体情報測定装置において、光を生体に射出すると共に伝搬光を受光するためのプローブ等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新生児に発症事例の多い黄疸は、赤血球の分解により生じたビリルビンが血液中に過剰に存在することが原因であり、黄疸の診断のために、皮膚に射出された光が皮膚の内部で伝搬した伝搬光を検出し、ビリルビンの濃度を計測する測定装置が知られている。この装置は、血液の採取等の必要のないいわゆる非侵襲型の診断装置であって、安全性が高い簡便な装置である。また、複数の波長の光を射出してその伝搬光を検出・分析することにより、血液中のビリルビン濃度に限らず、ヘモグロビン濃度等の各種の生体情報を測定することが可能である。
【0003】
伝搬光を検出する生体情報測定装置として、下記特許文献1には、血液中のビリルビン濃度を皮膚の表面から測定する経皮的ビリルビン濃度測定装置が開示されている。この経皮的ビリルビン濃度測定装置は、ビリルビンによる吸収率が互いに異なる第1及び第2の波長の光を発光する発光手段と、発光手段からの光を生体に向けて射出する射出口と、射出口から射出された光が生体の内部に伝搬した伝搬光が入射する第1の入射口と、射出口との距離が第1の入射口と異なり、射出口から射出された光が生体の内部に伝搬した伝搬光が入射する第2の入射口と、を備える。さらに、第1の入射口に入射した第1、第2の波長の光をそれぞれ受光して、受光強度に応じたレベルの第1、第2の電気信号をそれぞれ出力する第1の受光手段と、第2の入射口に入射した第1、第2の波長の光をそれぞれ受光して、受光強度に応じたレベルの第3、第4の電気信号をそれぞれ出力する第2の受光手段と、第1、第2の電気信号と第3、第4の電気信号とを用いてビリルビン濃度を算出する濃度演算手段と、を備えている。
【0004】
そして、特許文献1には、「第1及び第2の波長の光を発光する発光手段」として、青色及び緑色のLED(Light Emitting Diode)を設置し、これを順次発光させる発光手段が記載されている。また、この経皮的ビリルビン濃度測定装置の奏する効果として、「第1の入射口に入射する光の生体内部を通過する第1光路の光路長と、第2の入射口に入射する光の生体内部を通過する第2光路の光路長との差の大きさは、生体の表皮および真皮の厚さに関わりなく一定と考えられることから、第1光路に関する第1、第2の電気信号と、第2光路に関する第3、第4の電気信号とを用いることにより、生体の表皮および真皮の厚さによる影響を打ち消すことができ、生体の皮膚の成熟度による測定誤差をなくすことが可能になり、したがってビリルビン濃度の測定精度を向上することが可能になる」旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ビリルビン濃度等の生体情報を測定する生体情報測定装置においては、操作性やコスト等の観点からコンパクトな構造が求められている。しかし、上記特許文献1に開示された経皮的ビリルビン濃度測定装置においては、複数の入射口と、複数の受光手段と、伝搬光を異なる波長の複数の光に分離する分離手段としてのダイクロイックミラーとが設けられていると共に、発光手段と射出口との間に配置された導光手段としての光ファイバー、第1の入射口から第1の受光手段との間に配置された導光手段としての光ファイバー及び第2の入射口から第2の受光手段との間に配置された導光手段としての光ファイバーが曲げられている等複雑な形状に構成されているため、光学系のコンパクト化が困難な構造となっている。
【0007】
生体情報測定装置の光学系のコンパクト化を図るために、たとえば、発光手段と射出口との間に配置される光ファイバーや、入射口と受光手段との間に配置される光ファイバーを設けないことが考えられる。しかし、光ファイバーが設けられていないと、発光手段の温度や生体表面の温度、湿度等の影響によって発光手段の表面及び受光手段の表面に結露が生じ、生体情報の測定に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
他方、生体情報測定装置における発光手段には、キセノンランプのような照射光の強度が大きい光源が求められるが、省電力という観点からは、キセノンランプよりもLEDの使用が好ましい。LEDとしては、薄板状のチップ型LEDよりも指向性が強く生体に向けて比較的大きい強度で光を照射することができる砲弾型LEDを発光手段として用いるのが望ましいところ、砲弾型LEDはチップ型LEDよりも寸法が大きいので、光学系のコンパクト化の観点からは生体情報測定装置の発光手段として砲弾型LEDを用いるのが困難であるという実情がある。
【0009】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、発光手段と射出口との間及び入射口と受光手段との間に光ファイバーが設けられ、かつ発光手段として砲弾型LEDが用いられているにもかかわらず、光学系のコンパクト化が可能となる生体情報測定装置のプローブ及びこのプローブを有する生体情報測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは、特許請求の範囲の請求項1に記載された生体情報測定装置のプローブである。すなわち、「射出した光が生体の内部に伝搬した伝搬光を検出し、伝搬光の強度に基づき生体情報を算出する生体情報算出手段を備えた生体情報測定装置のプローブであって、円周状に配置され、互いに異なる波長の光を発光する複数の砲弾型LEDと、前記複数の砲弾型LEDのリードフレームが円周状に取り付けられた基板と、前記複数の砲弾型LEDからの光を生体に向けて射出する環状の射出口と、前記複数の砲弾型LEDに対面する環状端面を有し、前記環状端面から前記射出口まで延びる円筒状の第1の光ファイバーと、前記第1の光ファイバーの外周面を覆う円筒状の第1の遮光壁と、前記射出口の径方向内方に配置され、前記射出口から射出した光が生体の内部に伝搬した伝搬光を入射させる円形の入射口と、前記基板における円周状の前記リードフレームの中心部に設置され、前記入射口から入射した伝搬光を受光して伝搬光の強度に応じた電気信号を前記生体情報算出手段に出力する単一の受光素子と、前記第1の光ファイバーを貫通して前記入射口から前記受光素子まで延び、前記第1の光ファイバーよりも軸方向に長い円柱状の第2の光ファイバーと、前記第2の光ファイバーの周面を覆い、外方に前記複数の砲弾型LEDが配置された円筒状の第2の遮光壁と、を備えるプローブ」である。
【0011】
本発明の実施形態として、請求項2に記載のとおり、前記生体情報測定装置が、前記複数の砲弾型LEDの温度により、前記生体情報算出手段で算出する生体情報を補正する補正手段を有しており、前記基板における円周状の前記リードフレームの中心部には、前記受光素子の裏面側に前記複数の砲弾型LEDの温度を検出する温度検出手段が設置されているように構成するのが好ましい。
また、請求項2に記載の実施形態においては、請求項3に記載のとおり、前記補正手段は、前記複数の砲弾型LEDの発光強度の温度特性が予め記憶された記憶手段を備えており、前記温度特性に基づいて、前記温度検出手段によって検出された温度における前記複数の砲弾型LEDの発光強度と基準温度における前記複数の砲弾型LEDの発光強度との比率を算出し、次いで、前記受光素子から出力された電気信号に基づいて算出した生体情報を前記比率に応じて補正するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明が提供する生体情報測定装置のプローブ及びこのプローブを有する生体情報測定装置においては、複数の砲弾型LEDのリードフレームが円周状に取り付けられた基板に、円周状のリードフレームの中心部に単一の受光素子が設置されていることから、第1及び第2の光ファイバーが同軸に真直に配置され得ると共に、第1及び第2の遮光壁も真直に形成され得る。したがって、本発明の生体情報測定装置のプローブ及びこのプローブを有する生体情報測定装置によれば、発光手段と射出口との間及び入射口と受光手段との間に光ファイバーが設けられ、かつ発光手段として砲弾型LEDが用いられているにもかかわらず、光学系のコンパクト化が可能となる。
【0013】
請求項2の実施形態の生体情報測定装置においては、砲弾型LEDの温度により、生体情報算出手段で算出する生体情報を補正する補正手段が備えられ、そのプローブには、基板における円周状の砲弾型LEDのリードフレームの中心部の、受光素子の裏面側にサーミスタ等の温度検出手段が設けてある。LEDの発光する光の強度は、LEDの温度が上昇すると低下する特性があるが、この実施形態の生体情報測定装置では、算出した生体情報をLEDの温度特性により補償して、精度の高い情報を得ることができる。そして、温度検出手段が円周状のLEDのリードフレームの中心部に設置してあるため、1個の温度検出手段により複数のLEDの温度を正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って構成された生体情報測定装置の正面図。
【
図3】
図1に示す生体情報測定装置のプローブの分解斜視図。
【
図4】(a)
図3に示すプローブの基板の平面図、(b)(a)に示す基板の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された生体情報測定装置のプローブ及びこのプローブを有する生体情報測定装置の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1及び
図2を参照して説明すると、全体を符号2で示す生体情報測定装置は、生体血液中のビリルビン濃度や総ヘモグロビン濃度等の生体情報を測定するための装置であり、本体4と、本体4の下端に装着されたプローブ6とを備える。
図1に示すとおり、本体4は、正面視長方形状の本体ケース8と、本体ケース8の前面上端側部分に配置された長方形状の画面10と、本体ケース8の前面下端側部分に摺動自在に装着された長方形状のスライドカバー12とを含む。液晶ディスプレイ等から構成される画面10には、ビリルビン濃度(mg/dL)や総ヘモグロビン濃度(g/dL)等の生体情報の測定結果が表示される。スライドカバー12を上昇位置から
図1に示す下降位置に摺動させると、生体情報測定装置2を操作するための複数の操作スイッチ14が露出するようになっている。
図2に示すとおり、本体ケース8は上下方向中間部において屈曲しており、本体ケース8の上端側部分が後方に向かって傾斜している。また、本体ケース8の側面上端側部分には電源スイッチ16が配置され、本体ケース8の内部には電源用電池(図示していない。)が格納されている。
【0017】
図3ないし
図5を参照してプローブ6について説明する。プローブ6は本体ケース8に接続されるプローブケース18を含む。
図3に示すとおり、プローブケース18には、互いに間隔をおいて配置された一対の雌ねじ20と、一対の雌ねじ20間に配置された貫通開口22とが形成されている。一対の雌ねじ20には、プローブケース18に基板24を固定するための一対のねじ26が締結される。
図3及び
図4に示すとおり、プローブケース18にねじ26によって固定される長方形状の基板24には、互いに異なる波長の光を発光する複数の砲弾型LED28のリードフレーム28aが円周状に取り付けられている。すなわち、複数の砲弾型LED28は円周状に配置されていて、基板24にはリードフレーム28aに給電するための配線がプリントされている。図示の実施形態では、6個の砲弾型LED28が基板24に取り付けられており、具体的には、光の波長が短い順に、青色LED(波長λ
1)と、緑色LED(波長λ
2)と、黄緑色LED(波長λ
3)と、黄色LED(波長λ
4)と、オレンジ色LED(波長λ
5)と、赤色LED(波長λ
6)とが基板24に取り付けられている。
【0018】
図5に示すとおり基板24には、円周状のリードフレーム28aの中心部に単一の受光素子30が設置され、受光素子30は、受光強度に応じた電気信号を出力するようになっている。また、図示の実施形態では
図4及び
図5に示すとおり、基板24における円周状のリードフレーム28aの中心部には、受光素子30の裏面側に複数の砲弾型LED28の温度を検出するサーミスタ等の温度検出手段32が設置されている。そして、基板24がプローブケース18に固定されると、
図5に示すとおり、複数の砲弾型LED28の発光部28b及び受光素子30と共に、後述する導光部材34がプローブケース18の貫通開口22内に収容される。
【0019】
図6に示すとおり、プローブケース18の下面には、複数の砲弾型LED28からの光を生体に向けて射出する環状の射出口36と、射出口36の径方向内方に配置され、射出口36から射出した光が生体の内部に伝搬した伝搬光を入射させる円形の入射口38とが設けられている。
図3及び
図5を参照して説明すると、プローブケース18の貫通開口22内に収容される導光部材34は、複数の砲弾型LED28に対面する環状上端面40aを有し、上端面40aから射出口36まで延びる円筒状の第1の光ファイバー40と、第1の光ファイバー40の外周面を覆う円筒状の第1の遮光壁42と、第1の光ファイバー40を貫通して入射口38から受光素子30まで延びる円柱状の第2の光ファイバー44と、第2の光ファイバー44の周面を覆う円筒状の第2の遮光壁46とを有する。第2の光ファイバー44の上端面44aは第1の光ファイバー40の上端面40aよりも突出している一方、第1の光ファイバー40の下端面40bと第2の光ファイバー44の下端面44bとは上下方向位置が整合しており、第2の光ファイバー44は第1の光ファイバー40よりも軸方向に長い。
【0020】
図5を参照することによって理解されるとおり、基板24がプローブケース18に固定され、かつ導光部材34がプローブケース18の貫通開口22内に収容された際には、第2の光ファイバー44の周面を覆う第2の遮光壁46の径方向外方に複数の砲弾型LED28が配置されると共に、第2の光ファイバー44の上端面44aと受光素子30とが対面する。そして、複数の砲弾型LED28の光は、第1の光ファイバー40の環状端面40aに入射して下端面40bから射出され生体内部に入射する。すなわち、図示の実施形態では第1の光ファイバー40の下端面40bによって射出口36が構成されている。
【0021】
生体内部に入射した光は生体内部において吸収され、かつ散乱しながら伝搬する。そして、生体内部に伝搬した伝搬光は、生体表面から第2の光ファイバー44の下端面44bに入射して上端面44aに導かれた後、受光素子30によって受光される。すなわち、図示の実施形態では第2の光ファイバー44の下端面44bによって入射口38が構成されている。また、適宜の遮光材料(たとえばアルミニウム合金)から形成されている第1の遮光壁42及び第2の遮光壁46によって、外光が入射口38に入射するのが防止されていると共に、砲弾型LED28の光が導光部材34及び生体内部を介さずに受光素子30に直接入射するのが防止されている。
【0022】
次に、上述のプローブ6を備えた本発明の生体情報測定装置2における生体情報の測定方法等について説明する。
生体情報測定装置2の本体4には、射出口36から射出した光が生体の内部に伝搬した伝搬光を検出し、伝搬光の強度に基づき生体情報を算出する生体情報算出手段(図示していない。)が設けられている。生体情報算出手段は、たとえば、制御プログラムに従って演算処理するマイクロプロセッサと、制御プログラムや演算結果等を格納するEEPROM等の不揮発性メモリとを含む構成でよい。マイクロプロセッサには、受光素子30が電気的に接続され、受光強度(伝搬光強度)に応じた電気信号が受光素子30から入力される。また、発光制御手段としても機能するマイクロプロセッサは、マルチプレクサ(図示していない。)を介して複数の砲弾型LED28にも電気的に接続され、複数の砲弾型LED28のそれぞれに対して発光制御信号を出力し、複数の砲弾型LED28を時分割で発光させる。
【0023】
生体情報測定装置2は、複数の砲弾型LED28の温度により、生体情報算出手段で算出する生体情報を補正する補正手段(図示していない。)を有しているのが好ましい。この補正手段は、複数の砲弾型LED28のそれぞれの発光強度の温度特性が予め記憶された記憶手段を備えており、記憶された温度特性に基づいて、温度検出手段32によって検出された温度における複数の砲弾型LED28のそれぞれの発光強度と、基準温度(たとえば25℃)における複数の砲弾型LED28のそれぞれの発光強度との比率を算出し、次いで、受光素子30から出力された電気信号に基づいて算出した生体情報を前記比率に応じて補正するのが好適である。
これによって、砲弾型LED28の発熱や周囲温度によって砲弾型LED28の発光強度が変化した場合でも、正確な生体情報の値を求めることができる。このような補正手段及び記憶手段は、上記マイクロプロセッサ及び上記不揮発性メモリに含めて構成することができる。図示の実施形態では、マイクロプロセッサは温度検出手段32にも電気的に接続され、検出温度に応じた電気信号が温度検出手段32からマイクロプロセッサに入力されるようになっている。
【0024】
上述したとおりの生体情報測定装置2を用いて生体情報を測定する際は、まず、電源スイッチ16を操作して生体情報測定装置2を作動させる。次いで、射出口36及び入射口38が設けられているプローブケース18の下面を生体の皮膚表面(たとえば人体の額)に接触させる。次いで操作スイッチ14を操作することにより、複数の砲弾型LED28を時分割で発光させ、各砲弾型LED28の波長の異なる光を射出口36から順次生体表面に向けて射出する。そうすると、射出口36から順次射出した波長の異なる光は生体の内部に伝搬する。生体の内部に伝搬した波長の異なる各伝搬光は、順次入射口38に入射して受光素子30によって受光される。受光素子30は受光した各伝搬光の強度に応じた電気信号を生体情報算出手段に順次出力する。そして生体情報算出手段は、受光素子30で受光した各伝搬光の強度に基づいて生体情報を算出する。
【0025】
生体情報算出手段が算出する生体情報としては、たとえばビリルビン濃度Cbil、メラニン濃度Cm、総ヘモグロビン濃度Cthb、総酸素飽和度StO2を挙げることができる。ビリルビン濃度Cbilは下記式1によって算出することができる。
Cbil=a×A1+b・・・式1
式1におけるA1は、複数の砲弾型LED28のうちの青色LED(波長λ1)の光吸光度であり、下記式2によって算出する。
A1=log10(1/R)・・・式2
式2におけるRは、波長λ1の光の反射率であり、青色LED(波長λ1)の発光強度Iと、受光素子30で受光した波長λ1の伝搬光強度I0とによって規定される(R=I/I0)。また、式1におけるa及びbはそれぞれ下記式3及び式4によって算出する。
a=α1×Cm+α2×Cthb+α3×StO2+α0・・・式3
b=β1×Cm+β2×Cthb+β3×StO2+β0・・・式4
メラニン濃度Cm、総ヘモグロビン濃度Cthb、総酸素飽和度StO2Cは、それぞれ下記式5ないし式7によって算出することができる。
Cm=γ1×A2+γ2×A3+γ3×A4+γ4×A5+γ5×A6+γ0・・・式5
Cthb=δ1×A2+δ2×A3+δ3×A4+δ4×A5+δ5×A6+δ0・・・式6
StO2=ω1×A2+ω2×A3+ω3×A4+ω4×A5+ω5×A6+ω0・・・式7
式5ないし式7におけるA2は複数の砲弾型LED28のうちの緑色LED(波長λ2)の光吸光度であり、A3は黄緑色LED(波長λ3)の光吸光度であり、A4は黄色LED(波長λ4)の光吸光度であり、A5はオレンジ色LED(波長λ5)の光吸光度であり、A6は赤色LED(波長λ6)の光吸光度であり、青色LEDの光吸光度と同様に算出する。また、式3ないし式7におけるα0~α3、β0~β3、γ0~γ5、δ0~δ5、ω0~ω5のそれぞれは実験データから統計計算によって算出する。また、生体情報算出手段が算出した生体情報は、温度検出手段32が検出した温度に基づいて補正手段によって適宜補正された上で画面10に表示される。
【0026】
以上のとおり図示の実施形態では、複数の砲弾型LED28のリードフレーム28aが円周状に取り付けられた基板24に、円周状のリードフレーム28aの中心部に単一の受光素子30が設置されていることから、第1の光ファイバー40及び第2の光ファイバー44が同軸に真直に配置され得ると共に、第1の遮光壁42及び第2の遮光壁46も真直に形成され得る。また、円周状に配置された複数の砲弾型LED28のそれぞれの光は真直に延びる第1の光ファイバー40を通って射出口36に導かれるため、ダイクロイックミラー等の光路変換手段は不要である。
また、複数の砲弾型LED28は波長の異なる光を時分割で発光し、受光素子30においては波長の異なる光を順次受光するため、入射口38から入射した伝搬光を波長ごとに分離する伝搬光分離手段や特定の波長範囲の光を透過させる光学フィルタは不要であると共に受光素子30は単一でよい。したがって図示の実施形態では、発光手段と射出口36との間及び入射口38と受光素子30との間に光ファイバーが設けられ、かつ発光手段として砲弾型LED28が用いられているにもかかわらず、光学系のコンパクト化が可能となる。
【符号の説明】
【0027】
2:生体情報測定装置
6:プローブ
24:基板
28:砲弾型LED
28a:リードフレーム
30:受光素子
32:温度検出手段
36:射出口
38:入射口
40:第1の光ファイバー
40a:上端面(環状端面)
42:第1の遮光壁
44:第2の光ファイバー
46:第2の遮光壁