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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/32 20060101AFI20220214BHJP
   B63J 2/06 20060101ALI20220214BHJP
   B63B 15/00 20060101ALI20220214BHJP
   B63B 29/02 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
B63H21/32 A
B63J2/06
B63B15/00 Z
B63B29/02 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021096633
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2021-06-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500304578
【氏名又は名称】株式会社エクセノヤマミズ
(73)【特許権者】
【識別番号】509063144
【氏名又は名称】本田重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸一
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-090685(JP,U)
【文献】特開平06-294509(JP,A)
【文献】実開昭53-000425(JP,U)
【文献】特開昭53-116696(JP,A)
【文献】実開昭62-82295(JP,U)
【文献】実開昭62-165197(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/32
B63J 2/06
B63B 15/00
B63B 29/00 - 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が上甲板より上に位置し、機関室から船外へ排気を導く排気管を覆う筒状の構造物であるファンネルと、
前記上甲板の上に、前記ファンネルの前記上甲板より上の部分の少なくとも一部を船首側、右舷側及び左舷側から囲むように配置された上部構造物と
を備え、
前記上部構造物は、居住用空間を画定する構造物である居住区を含むブロックと、前記ブロックより船尾側、かつ、前記ファンネルより左舷側及び右舷側の各々に設けられている構造物であって、居住用ではない収容空間を画定する構造物である非居住区とを有し、
前記ブロックと前記ファンネルは空間で隔てられており、
前記非居住区は、前記ファンネルの上甲板より上の部分において直接連結されている
船舶。
【請求項2】
舷側からみた前記ファンネルの船首側縁部が、船首側から船尾側に向かい高くなるように傾斜しており、
前記ファンネルの上側において開口している部分が、前記機関室より船尾側に位置し、
前記上部構造物の少なくとも一部は、前記機関室の直上に位置し、
前記上部構造物より船首側に、前記機関室に外気を取り込むための吸気口を備える
請求項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物船等の船舶の多くにおいては、船倉の上部に荷役のための空間を確保するために、居住区が機関室の直上付近に配置されている。
【0003】
また、貨物船等の船舶の多くにおいては、機関室から船外へ排気を導く排気管を覆う筒状の構造物であるファンネルが上甲板を貫くように配置されている。
【0004】
ファンネルは、その役割上、必然的に機関室の直上付近に配置されることになる。従って、貨物船等の船舶の多くにおいては、居住区がファンネルを囲むように配置されている。
【0005】
居住区がファンネルを囲むように配置されている船舶について記載している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、ファンネルの船首側及び右舷側を囲むように配置された「L」の字形状の居住区を有する船舶と、ファンネルの船首側、右舷側及び左舷側を囲むように配置された「コ」の字形状の居住区を有する船舶(従来技術)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭60-184799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
船員の快適な住環境を確保するために、船舶の居住区における騒音及び振動の低減が望まれている。
【0008】
特許文献1に記載の船舶のように、ファンネルを囲むように居住区が配置されている船舶においては、機関室で発生する騒音及び振動がファンネルを介して居住区に伝搬する。そのため、居住区の床や壁に防音防振材を取り付ける等の対策により、居住区における騒音及び振動の低減が図られている。
【0009】
ただし、機関室で発生する騒音及び振動が大きい場合、防音防振材を大量に用いなければ居住区における騒音及び振動が十分に低減されない場合がある。また、防音防振材を大量に用いてもなお、居住区における騒音及び振動が十分に低減されない場合がある。
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明は、ファンネルを囲むように配置された上部構造物を備える船舶であって、従来技術と比較し、居住区における騒音及び振動の低減が容易な船舶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも一部が上甲板より上に位置し、機関室から船外へ排気を導く排気管を覆う筒状の構造物であるファンネルと、前記上甲板の上に、前記ファンネルの前記上甲板より上の部分の少なくとも一部を船首側、右舷側及び左舷側から囲むように配置された上部構造物とを備え、前記上部構造物は、居住用空間を画定する構造物である居住区を含むブロックと、前記ブロックより船尾側、かつ、前記ファンネルより左舷側及び右舷側の各々に設けられている構造物であって、居住用ではない収容空間を画定する構造物である非居住区とを有し、前記ブロックと前記ファンネルは空間で隔てられており、前記非居住区は、前記ファンネルの上甲板より上の部分において直接連結されている船舶を第1の態様として提案する。
【0012】
第1の態様に係る船舶においては、ファンネルと居住区が空間で隔てられる。そのため、ファンネルと居住区が、例えばファンネルと居住区の間に設けられた通路の床等の部材で直接連結されている場合と比較し、機関室で発生しファンネルにより伝搬してくる騒音及び振動が居住区に伝搬しにくい。また、ファンネルが非居住区により支持され安定する。
【0017】
上記の第の態様に係る船舶において、舷側からみた前記ファンネルの船首側縁部が、船首側から船尾側に向かい高くなるように傾斜しており、前記ファンネルの上側において開口している部分が、前記機関室より船尾側に位置し、前記上部構造物の少なくとも一部は、前記機関室の直上に位置し、前記上部構造物より船首側に、前記機関室に外気を取り込むための吸気口を備え、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0018】
の態様に係る船舶によれば、上層階ほど居住区がファンネルから離れる。従って、
上層階ほど居住区における騒音及び振動が低減される。また、居住区を貫通するように機関室に外気を取り込むための吸気管を設ける場合と比較し、吸気に伴う騒音及び振動が居住区に伝搬しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る船舶を右舷側から見た模式図。
図2】一実施形態に係る船舶が備えるファンネルの役割を説明するための図。
図3】一実施形態に係る船舶が備える上部構造物の各層とファンネルとの位置関係を示した平面図。
図4】一実施形態に係る船舶が備える上部構造物の第2層の構造を模式的に示した図。
図5】一実施形態に係る船舶において、ファンネルと居住区が分離されている様子を模式的に示した図。
図6】一実施形態に係る船舶において、ファンネルと非居住区が連結されている様子を模式的に示した図。
図7】一実施形態に係る船舶において、非居住区がファンネルを支持する役割を果たすことを説明するための図。
図8】一変形例に係る船舶において、ファンネルと居住区が実質的に分離されている様子を模式的に示した図。
図9】一変形例に係る船舶が備える上部構造物の第2層の構造を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態]
以下に、本発明の一実施形態に係る船舶1を説明する。なお、本願において上下とは、船舶が水上に通常の姿勢で浮かんでいる状態における上下を意味する。
【0021】
図1は、右舷側から見た船舶1を模式的に示した図である。なお、船舶1は、図1に示す構成物の他に、スクリュー、舵、その他の構成物があるが、本発明の説明において重要でないそれらの構成物については図示を省略している。
【0022】
船舶1は、船体11と、船体11内に設けられた機関室111と通じ船体11の上面を覆う上甲板112から上に突出するように配置された筒状の構造物であるファンネル12と、ファンネル12の一部を船首側、右舷側及び左舷側から囲むように配置された居住区を含む上部構造物13と、機関室111と通じ上甲板112上の上部構造物13より船首側において上前方に開口する吸気口を成す吸気口構造物14を備える。
【0023】
本願において居住区とは、上部構造物のうち船員等が主に居住のために使用する空間(以下、居住用空間という)を画定する構造物を意味する。
【0024】
船舶1は、例えば貨物船であり、船体11内の大半が船倉113により占められている。船倉113を大きく確保するために、機関室111は船尾端付近に配置されている。
【0025】
上甲板112のうち船倉113の直上の領域には船倉113に対する積荷の出し入れを行うための開口部が設けられ、その開口部がハッチカバーにより覆われている。なお、上甲板112の船倉113の直上の領域のうち開口していない部分には、荷役のためのクレーンが設置されていてもよい。
【0026】
上記のように、上甲板112のうち船倉113の直上の領域は、荷役のための構造物で占められているため、居住区を含む上部構造物をその領域に配置することはできない。そのため、上部構造物13は機関室111の直上の領域に配置されている。
【0027】
ファンネル12は、機関室111内に配置された主機(メインエンジン)、補機(ボイラー、発電機等)等が運転に伴い排出する気体(以下、その気体を排気という)を機関室111から船外へ導く排気管を覆う筒状の構造物であり、下側において機関室111に対し開口しており、上側において外部空間に対し開口している。
【0028】
図2は、ファンネル12の役割を説明するための図である。図2は、機関室111と、機関室111に外気を取り込む吸気口構造物14と、ファンネル12と、機関室111内に配置されている主機15、右舷発電機16R、左舷発電機16L及びボイラー17と、それらの装置から排出される排気を船外へ導く排気管を示した3次元図である。なお、実際には排気管はファンネル12の上側の開口部まで達しているが、図2においては排気管の一部の図示が省略されている。
【0029】
吸気口構造物14は上甲板112の上部構造物13より船首側の上部構造物13に近い位置(図1参照)に設けられた吸気用の開口(吸気口)の上側を覆い、前方から後方へと流れる空気を機関室111へと導くように配置されたフードである。なお、吸気口構造物14の近辺には、機関室111へ外気を強制的に取り込むためのファン(図示略)が配置されている。
【0030】
ファンネル12は、機関室111から上甲板112より上へと延びる排気管を風波等から保護する役割を果たすとともに、吸気口構造物14から機関室111へと流れ込んだ空気を上側の開口から排出することで、機関室111において発生した熱を船外へ逃がし、機関室111内の主機等の温度を下げる役割を果たす。
【0031】
すなわち、機関室111内には、図2に破船の矢印Xで示すように、V字を描く空気の流れが生じる。
【0032】
従来技術に係る同種の船舶の多くにおいては、居住区上面のファンネル周辺に設けられた吸気口から機関室へと空気を取り込み、その空気をファンネルの上側の開口から排出する、という構造が採用されている。この場合、機関室内を通過する空気の流れはU字を描くことになり、強力なファンによる吸気が必要となる。そのため、ファンが発生する騒音及び振動も大きなものとなる。これに対し、船舶1においては、機関室111を通過する空気の流れが抵抗の少ないV字を描くため、従来技術に係る船舶と比較し、必要なファンの出力が小さく、騒音及び振動が低減される。また、船舶1においては、従来技術に係る船舶と比較し、ファンの位置が居住区から離れるため、ファンが発生し居住区に伝搬する騒音及び振動が低減される。
【0033】
上記のようなV字を描く空気の流れを生じさせるために、ファンネル12は、船首側の側面の実質的に全体が、上にいくほど船尾側に位置するように傾斜している。すなわち、図1に示すように、右舷側からみた場合、ファンネル12の船首側面が、右下から左上に向かうラインを描くように、ファンネル12の形状が設計されている。
【0034】
上記のように、ファンネル12の形状が、船首側面が船首側に下がるように(もしくは船尾側に上がるように)傾斜しているために、上部構造物13に含まれる居住区は上層に配置されるもの程、ファンネル12から離れる。そのため、居住区のうち上層に配置される部分においては、ファンネル12を介して機関室111から伝搬する騒音及び振動が低減される。
【0035】
図1に例示の船舶1においては、上部構造物13は5層の階層構造を備える。以下、それらの5層を下から第1層、第2層、・・・、第5層と呼ぶ。第1層~第4層は主に居住区で占められる階層である。第5層は操舵室が配置される階層であるが、一部が居住区となっている。
【0036】
図3は、上部構造物13の第1層~第5層の各々とファンネル12との位置関係を示した平面図である。図3(A)~(E)はそれぞれ、第1層~第5層に対応している。なお、図3(A)~(E)におけるファンネル12の位置は、各々、図1の破線A~Eの高さにおける位置を示している。
【0037】
また、図3(A)~(E)には、上部構造物13のうち居住区131、非居住区132、操舵室130、及び、通路Rが占める領域が示されている。居住区131は、上部構造物13のうち居住用空間を画定する部分の構造物である。非居住区132は、倉庫、食堂、シャワールーム、階段等の構造物である。
【0038】
図4は、上部構造物13の第2層の構造を模式的に示した図である。ファンネル12は、金属等で製造された筒状の構成部である本体121と、本体121の内側を覆うように本体121に取り付けられた断熱材122を備える。
【0039】
本実施形態において、上部構造物13の特に第1層~第3層に配置されている居住区131の一部は、通路Rを挟んでファンネル12に近接している。ファンネル12には機関室111において発生する騒音及び振動が伝搬してくる。従来技術に係る同種の船舶の多くにおいては、ファンネルに対し各階層の床板が直接連結される構造が採用されている。そのため、機関室で発生した騒音及び振動がファンネルと床板を通じて居住区に伝搬する。このように、材料内伝搬をする騒音及び振動は、空気中を伝搬してきて壁等を透過する騒音及び振動と比較し、防音防振材による低減効果が低い。従って、居住区の床や壁に防音防振材を配置しても、騒音及び振動の低減効果に限界がある。
【0040】
上記の問題の対策として、船舶1においては、上部構造物13のうち居住区131を含むブロックB(図4において斜線が付された部分)をファンネル12から分離する構成が採用されている。図5は、船舶1において、ファンネル12と上部構造物13のブロックBが分離されている様子を模式的に示した図である。図5は、図4の破線Pで示す部分を鉛直方向に切断した場合の断面を示している。
【0041】
図5に示すように、第2層の例では、上部構造物13のブロックBとファンネル12は空間Sで隔てられている。従って、ファンネル12から床板135を通じて居住区131へ騒音及び振動が材料内伝搬することはない(図4の矢印N1参照)。
【0042】
ブロックBの壁体133は、床板135を支持する役割、外部から居住区131等への風雨の流入を防ぐ役割、ファンネル12から居住区131等に向かう熱を遮断する役割に加え、ファンネル12から空気中を伝搬して居住区131等に向かう騒音及び振動の一部を反射又は吸収する役割も果たす。そのため、壁体133に防音防振性能を有する素材が用いられてもよい。
【0043】
図5に示すように、居住区131の居住用空間Tを外部空間から隔てる壁体1311と壁体133との間には通路R用の空間が空けられている。このように、居住区131はファンネル12から離れているため、ファンネル12から居住区131へ伝搬する騒音及び振動がさらに低減される。
【0044】
上部構造物13の第2層には、ブロックBより船尾側の左舷側及び右舷側に、非居住区132L及び非居住区132Rが設けられている。非居住区132L及び132Rには、例えば、ポンプ、発電機、空調設備の一部など、騒音や振動を発生するが居住区131に配置する必要のない各種装置が収容される。
【0045】
非居住区132L及び132Rは、ブロックBと異なり、ファンネル12と連結されている。図6は、ファンネル12と非居住区132L及び132Rが連結されている様子を模式的に示した図である。図6は、図4の破線Qで示す部分を鉛直方向に切断した場合の断面を示している。なお、壁体139は、収容空間Uに非常用発電機が配置される場合、規則に従い設置される壁体であり、ファンネル12と共に二重壁を構成する。従って、収容空間Uに非常用発電機が配置されない場合、壁体139は設けられなくてもよい。
【0046】
図6に示すように、非居住区132L及び132Rの床を構成する床板136は、ファンネル12の本体121に直接連結されている。従って、非居住区132L及び132R内の収容空間Uには、ファンネル12から空気内を伝搬する騒音及び振動に加え、ファンネル12から床板136へ材料内伝搬する騒音及び振動が生じる。非居住区132L及び132R内の収容空間Uは船員が長時間滞在する空間ではないため、それらの騒音及び振動が生じても問題はない。
【0047】
非居住区132L及び132Rの床を構成する床板136は、ブロックBの通路Rの床を構成する床板135とは分離されている。従って、ファンネル12から床板136を通じて居住区131へ騒音及び振動が材料内伝搬することはない(図4の矢印N2参照)。
【0048】
非居住区132L及び132Rは、ファンネル12と連結されていることで、ファンネル12を支持する役割を果たす。図7は、非居住区132L及び132Rがファンネル12を支持する役割を果たすことを説明するための図である。図7は、船尾側から見たファンネル12及び上部構造物13を模式的に示した図である。
【0049】
従来技術に係る同種の船舶においては、ファンネルを囲むように配置されている居住区を含む上部構造物が、ファンネルと接する部分においてファンネルに連結されている。その結果、上部構造物がファンネルを支持する役割を果たす。
【0050】
これに対し、本実施形態に係る船舶1において、居住区131を含むブロックBはファンネル12から分離されている。従って、仮に非居住区132L及び132Rがファンネル12に連結されていなければ、ファンネル12は上甲板112との連結部によってのみ支持されることになる。そのため、ファンネル12が強風を受けた場合、その風圧により動揺が生じやすい。
【0051】
しかしながら、船舶1においては、ファンネル12が非居住区132L及び132Rと図8の太線で示す部分で連結されているため、非居住区132L及び132Rがファンネル12を左舷側及び右舷側から支持する役割を果たす。そのため、ファンネル12が風圧を受けても大きな動揺が生じにくい。
【0052】
[変形例]
上述した実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下にそれらの変形例を示す。なお、以下に示す変形例の2以上が適宜組み合わされてもよい。
【0053】
(1)上述した実施形態において、上部構造物13のブロックBはファンネル12と完全に分離されている。すなわち、ファンネル12と壁体133の間の空間Sには何も配置されていない。ただし、ファンネル12とブロックBは実質的に分離していればよく、完全に分離していなくてもよい。実質的に分離とは、ファンネル12とブロックBが完全に分離されている状態に限られず、ファンネル12とブロックBが各々、他方によらずに自立していることを意味する。そのため、仮に空間Sに物体が配置され、その物体がファンネル12とブロックBとに連結されていたとしても、その連結は弱いため、その物体を介してファンネル12から居住区131へ材料内伝搬する騒音及び振動は小さい。
【0054】
図8は、ファンネルとブロックBが完全には分離していないが実質的に分離している例に関し、図4の破線Pで示す部分を鉛直方向に切断した場合の断面を示している。
【0055】
図8の例では、空間Sの一部に緩衝部材134が配置されている。緩衝部材134は、各々独立して自立しているファンネル12とブロックBが、風等を受けて個別に揺れる際に、それらの揺れを低減するために配置されている。緩衝部材134は、例えば、ゴム製の中空部材であるが、その素材、形状等は図8に例示のものに限られない。例えば、金属製のバネ(弦巻バネ、板バネ等)が緩衝部材134として用いられてもよい。
【0056】
緩衝部材134の一方の側面はファンネル12に接着等により連結され、緩衝部材134の他方の側面はブロックBの壁体133に接着等により連結されている。その結果、ファンネル12とブロックBは緩衝部材134を介して連結されている。しかしながら、仮に緩衝部材134が取り去らわれても、ファンネル12とブロックBは自立できる。この場合、ファンネル12とブロックBは実質的に分離されていることになる。
【0057】
緩衝部材134を介してファンネル12から居住区131に伝搬する騒音及び振動を低減するために、緩衝部材134に防音防振性能を有する素材が用いられてもよい。例えば、緩衝部材134の少なくとも一部に多孔体を用いることで、ファンネル12から壁体133に材料内伝搬する騒音及び振動を小さくできる。
【0058】
また、緩衝部材134に加えて、もしくは代えて、防音防振材、断熱材等の物体が空間S内に配置されてもよい。
【0059】
(2)上述した実施形態において、上部構造物13は船首側、右舷側及び左舷側の三方からファンネル12を囲むように配置されている。上部構造物13とファンネル12の位置関係はこれに限られない。例えば、上部構造物13が、船首側と右舷側(又は左舷側)の二方からファンネル12を囲むように配置されてもよい。
【0060】
(3)上述した実施形態において、上部構造物13は5つの階層で構成され、第1層~第5層に居住区131を含むブロックBが配置され、第2層にブロックBと分離された非居住区132L及び132Rが配置される。上部構造物13が備える階層の数、各階層における間取り等は様々に変更されてよい。
【0061】
(4)上述した実施形態において、非居住区132L及び132Rの床を構成する床板136と、ブロックBの通路Rの床を構成する床板135とは分離されている。これに代えて、床板136と床板135が連結されていてもよい。
【0062】
図9は、この変形例に係る上部構造物13の第2層の構造を模式的に示した図である。図9に例示の上部構造物13においては、矢印N3に示されるように、ファンネル12から床板136及び床板135を通じて居住区131へ騒音及び振動が材料内伝搬するが、その伝搬の距離が長いため、居住区131に到達する騒音及び振動が低減される。
【0063】
(5)上述した実施形態の説明において、船舶1は貨物船であることを想定したが、船舶1の種別は貨物船に限られない。
【符号の説明】
【0064】
1…船舶、11…船体、12…ファンネル、13…上部構造物、14…吸気口構造物、15…主機、16R…右舷発電機、16L…左舷発電機、17…ボイラー、111…機関室、112…上甲板、113…船倉、121…本体、122…断熱材、130…操舵室、131…居住区、132…非居住区、133…壁体、134…緩衝部材、135…床板、136…床板、139…壁体、1311…壁体。
【要約】
【課題】ファンネルを囲むように配置された上部構造物を備える船舶であって、従来技術と比較し、居住区における騒音及び振動の低減が容易な船舶を提供する。
【解決手段】本発明に係る船舶は、ファンネルを船首側、右舷側及び左舷側の三方から囲むように配置された上部構造物を備える。この上部構造物に含まれる居住区は、機関室で主機等から発生される騒音及び振動がファンネルから居住区へ材料内伝搬しないように、ファンネルから実質的に分離されている。すなわち、居住区及びその周りの通路Rの床を構成する床板135はファンネル12には連結されず、ファンネル12と空間Sで隔てられた壁体133に連結されている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9