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特許7022972ドラム用残響音調整具およびドラムセット
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  • 特許-ドラム用残響音調整具およびドラムセット 図1
  • 特許-ドラム用残響音調整具およびドラムセット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】ドラム用残響音調整具およびドラムセット
(51)【国際特許分類】
   G10D 13/02 20200101AFI20220214BHJP
   G10D 13/10 20200101ALI20220214BHJP
【FI】
G10D13/02 100
G10D13/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017142694
(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公開番号】P2019023698
(43)【公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】508033753
【氏名又は名称】株式会社ナイスカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】有松 益男
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-138686(JP,U)
【文献】米国特許第5986197(US,A)
【文献】実開昭54-133827(JP,U)
【文献】実開昭61-135385(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/00-13/24
G10G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音性を有する部材からなる吸音部と、
前記吸音部をその一端側で支持する支持部と、からなり、
前記吸音部が、ドラムの打面の反対側の面に対向して配置され
前記支持部は、前記ドラムの打面の反対側の面と前記吸音部との角度を調整可能であることを特徴とするドラム用残響音調整具。
【請求項2】
前記支持部の他端側は、ドラムセットの所定位置に取り付け可能、または、床面に設置可能であることを特徴とする請求項1に記載のドラム用残響音調整具。
【請求項3】
前記吸音部は、前記ドラムの前記反対側の面に対して、所定の間隔を有するように配置される所定の厚みを有した円盤状の部材であることを特徴とする請求項1または2に記載のドラム用残響音調整具。
【請求項4】
前記支持部は、
前記支持部の長さ、
前記支持部の一端側での前記吸音部に対する角度、
および、前記支持部の他端側での前記ドラムセットの所定位置または前記床面に対する角度、
の少なくとも1つが調整可能であることを特徴とする請求項2に記載のドラム用残響音調整具。
【請求項5】
前記支持部と前記吸音部は取り外し可能であり、1の前記支持部に対し、形状、大きさ、および厚みの少なくとも1つが異なる2以上の前記吸音部が取り付け可能であることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のドラム用残響音調整具。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載のドラム用残響音調整具を備えることを特徴とするドラムセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム用残響音調整具およびドラムセットに関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムセットを用いた演奏時に大音量での演奏を回避する場合など、演奏時の音量を低減させる必要がある環境下において、ドラムの打撃音(打音)を低減させるためにドラム用消音具を用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アコースティックドラムに取り付けられ、アコースティックドラムのドラムヘッドの代わりに打撃されることによって演奏時に発生する音を低減させるドラム用消音具において、演奏者に打撃されると共に所定の弾性を有する打面部、及び、その打面部の周縁部分を支持すると共に打面部よりも剛性が高く設定された環状の枠部を有する被打撃体と、その被打撃体の枠部に取着されると共に被打撃体をドラムヘッドに吸着させる吸盤部材とを備えたドラム用消音具が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、スネアドラム等の打面に載置して用いられ、演奏時の打音を調整するための打音調整シートであって、打面に対する位置決めを行う位置決め部を有し、かつ、打点の目安となる領域を示す打点マークを記した打音調整シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015- 68851号公報
【文献】特開2017-102235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドラムセットを用いた演奏では、タムタム、スネアドラム、バスドラム、フロアタム等の打撃時に生じる打撃音とともに、打撃後に残響音(リバーブ)が生じるが、この残響音について、音量や残響時間を低減したり、演奏者や聴衆者の所望の音量や残響時間に調整したいという要求がある。
【0007】
しかしながら、これまで特許文献1,2のように、打撃音を低減、調整するための器具は知られているものの、残響音を低減、調整するための器具はなく、演奏者独自の方法、例えば、ドラムの下部に毛布などを敷いて残響音を調整する等の対応がなされていた。
【0008】
そこで本発明は、ドラム演奏時における残響音を調整することができるドラム用残響音調整具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明に係るドラム用残響音調整具は、吸音性を有する部材からなる吸音部と、前記吸音部をその一端側で支持する支持部と、からなり、前記吸音部が、ドラムの打面の反対側の面に対向して配置され、前記支持部は、前記ドラムの打面の反対側の面と前記吸音部との角度を調整可能である
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドラム演奏時における残響音を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ドラムセットの一例を示す概略構成図である。
図2】残響音調整具の一例を示す斜視説明図である。
図3】吸音部の一例を示す斜視説明図である。
図4】支持部の一例を示す説明図である。
図5】残響音調整具の他の例を示す斜視説明図である。
図6】残響音調整具を備えるドラムセットの一例を示す説明図である。
図7】残響音調整具を備えるドラムセットの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る構成を図1から図7に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
(ドラムセット)
図1は、ドラムセット1の一例を示す概略構成図である。ドラムセット1は、バスドラム10、フロアタム20、スネアドラム30、タムタム40、ハイハットシンバル50、クラッシュシンバル60、ライドシンバル70、等を備えている。なお、図1に示すドラムセット1の配置例は、右利きの演奏者の一般的な配置例を示すものであって、ドラムセット1の配置例はこれに限られるものでないのは勿論である。また、ドラムセット1を構成するドラムやシンバルの種類や、その数も一例であって、これに限られるものでないのは勿論である。
【0014】
バスドラム10は、演奏者の前面に配置され、図示しないドラムペダルを踏むことによって打つドラムである。ドラムセット1において最も口径が大きく、最も低音を出すドラムである。
【0015】
フロアタム20は、演奏者から見て右側に設置される。バスドラム10の次に低音を出すドラムであって、主にフレーズ(フィルイン)に使われるドラムである。
【0016】
スネアドラム30は、演奏者の目前の膝の高さ付近に設置される。主にリズムのアクセントを付けるために利用するドラムであって、ドラムセット1において、最も使用頻度が高いドラムである。
【0017】
タムタム40は、バスドラム10の上にホルダー41を用いて取り付けられる。演奏者から見て左側に音程の高いハイタム、右側に音程の低いロータムが配置される。フロアタム20と同様に、主に、フレーズ(フィルイン)に使われるドラムである。
【0018】
ハイハットシンバル50は、演奏者の左足側のスネアドラム30の近くにスタンド51を用いて設置し、下部のペダルを踏むことで2枚のシンバルのオープンとクローズを切り替えるものである。
【0019】
クラッシュシンバル60は、演奏者の左足側のスネアドラム30の近くにスタンド61を用いて設置される。主にアクセントを付けるために使われる。
【0020】
ライドシンバル70は、フロアタム20の上付近にスタンド71を用いて設置される。ハイハットシンバル50とともに主にリズムを刻む際に使われる。ドラムセット1の中で最も大きなシンバルである。
【0021】
(ドラム用残響音調整具)
図2は、本発明に係るドラム用残響音調整具の一実施形態である残響音調整具100を示す斜視説明図である。本実施形態に係る残響音調整具100は、吸音性を有する部材からなる吸音部110と、吸音部110をその一端側で支持する支持部120と、からなり、吸音部110が、ドラムの打面の反対側の面(以下、裏面ともいう)に対向して配置されるものである。
【0022】
残響音調整具100は、図2に示すように、所定の厚みを有した円盤状の吸音部110と、一端側に吸音部110が取り付けられ、吸音部110を支持する支持部120と、で構成される。
【0023】
図3は吸音部110の一例を示す斜視説明図であって、図3(A)は吸音部110の表面の斜視図、(B)は吸音部110の裏面の斜視図を示している。なお、残響音調整具100の使用時において、ドラムの裏面に対向して配置される面を吸音部110の表面と呼ぶ。
【0024】
吸音部110は、吸音性を有する吸音部材111をシート部材112で被覆してなる。吸音部材111としては、吸音効果を有する材料、材質(吸音材)を広く用いることができる。例えば、バージンウールと医療用ポリエステルを原料とした羊毛断熱材サーモウール(株式会社コスモプロジェクト製)等を用いることが好適である。
【0025】
シート部材112は、吸音部材111の全体を被覆するシート状の部材であって、不織布、織布など広く用いることが可能である。例えば、フェルトを用いることが好適である。
【0026】
また、図3(B)に示すように、吸音部110の裏面の中央部には、支持部120の端部の部材が嵌合する凹部113が設けられている。凹部113は、例えば、吸音部材111の中央部に埋め込まれたナット部材で構成される。本実施形態では、ナット部材からなる凹部113に支持部120のねじ形状の凸部122(図4)を締結可能とすることで吸音部110と支持部120を着脱可能としている。なお、着脱可能であれば、凹部113や凸部122の構成は特に限られるものではない。また、吸音部110は支持部120に対し着脱可能とすることが好ましいが、これに限られず、固着したものとしてもよい。
【0027】
吸音部110の形状は、ドラムの打面および裏面と同様に円形状を有することが好ましが、これに限られるものではなく、様々な形状とすることができる。また、複数の大きさの異なる吸音部110を用意しておき、使用するドラムや所望の吸音効果に応じて適宜選択して使用することが好ましい。このとき、1の支持部120に対して、複数の吸音部110を着脱可能であることが好ましい。
【0028】
また、吸音部材111の厚みは、例えば、1cm程度とすることができる。吸音部材111の厚みに比例して吸音効果は大きくなるため、使用するドラムや所望の吸音効果に応じて、厚みを選択すればよい。また、残響音調整具100の使用時においては、吸音部110とドラムの裏面との間の間隔により吸音効果は変化するため、ドラムの裏面との間隔は、使用するドラムや所望の吸音効果に応じて適宜設定するものとすればよい。また、ドラムの裏面に対して残響音調整具100の表面を接触させて使用するものであってもよい。
【0029】
図4は支持部120の一例を示す説明図である。支持部120は、吸音部110を取り付ける取付部121と、取付部121を変位させる第1角度調整部123と、長さ調整可能なアーム部125と、挟持部128を変位させる第2角度調整部126と、ドラムセット1の所定位置(例えば、各シンバル50,60,70のスタンド51,61,71)を挟持する挟持部128と、を有している。
【0030】
取付部121には、吸音部110の凹部113に嵌合する凸部122が設けられている。本実施形態では、凸部122はねじ形状を有しているが、これに限られるものではない。
【0031】
第1角度調整部123には、調整具124が設けられており、調整具124を締めた状態では、取付部121は第1角度調整部123に対して固定され、調整具124を緩めた状態では、第1角度調整部123に対して変位可能としている。角度調整時に調整具124を緩めて取付部121の第1角度調整部123に対する角度を所望の角度として、調整具124を締めることで、取付部121の第1角度調整部123に対する角度を所望の角度に調整可能となっている。
【0032】
アーム部125は、図4に示したような一段のアームの状態と、図2に示したような複数段のアームの状態との間で長さを調整可能としている。本実施形態では、第1角度調整部123をアーム部125に対して回動させることでロックの解除が解除が可能となっており、ロックを解除した状態でアーム部125の長さの調整が可能となっている。アーム部125を所望の長さとした後、第1角度調整部123をアーム部125に対して回動させて再びロックをすることで、アーム部125(すなわち、支持部120)の長さ調整が可能となっている。
【0033】
第2角度調整部126には、調整具127が設けられており、調整具127を締めた状態では、第2角度調整部126および挟持部128はアーム部125に対して固定され、調整具127を緩めた状態では、第2角度調整部126および挟持部128は、アーム部125に対して変位可能としている。角度調整時に調整具127を緩めて挟持部128のアーム部125に対する角度を所望の角度として、調整具127を締めることで、挟持部128のアーム部125に対する角度を所望の角度に調整可能となっている。
【0034】
挟持部128には、調整具129が設けられており、挟持部128で対象物(例えば、スタンド71)を挟んだ状態で、調整具129を締めることで、挟持部128(すなわち、支持部120)は対象物に対して固定される。
【0035】
図5は、残響音調整具100の他の例を示す斜視説明図である。図5に示す残響音調整具100の支持部120は、吸音部110を支持しない他端側が、床面に設置可能な床面設置部130となっている。
【0036】
この残響音調整具100は、床面設置部130を床面に設置し、吸音部110をドラムの裏面側に配置して使用される。例えば、フロアタム20の下部の床面に設置して使用される。
【0037】
なお、残響音調整具100の支持部120も、図4に示した残響音調整具100の支持部120と同様に、支持部120の吸音部110に対する角度が調整可能となっており、吸音部110のドラムの裏面に対する設置角度を調整可能となっている。また、支持部120の長さや、支持部120の床面設置部130に対する角度等の調整も可能であることが好ましい。
【0038】
(ドラム用残響音調整具を用いたドラムセット)
図6および図7は、本実施形態に係る残響音調整具100をドラムセット1に取り付けた例を示す説明図である。
【0039】
図6に示すドラムセット1は、タムタム40に対して残響音調整具100(図2)を設けた例を示している。このドラムセット1においては、支持部120の挟持部128でライドシンバル70のスタンド71を挟んで固定するとともに、吸音部110がタムタム40の裏面に対して所望の位置および間隔等となるように、支持部120の長さや、タムタム40の裏面に対する角度、スタンド71に対する角度等を調整して設置したものである。
【0040】
これにより、タムタム40の打撃時に生じる残響音を低減することが可能となる。また、吸音部110の大きさや厚み、タムタム40の裏面との間隔や設置角度等を適宜調整して、演奏者や聴衆者等の所望の残響音に調整することが可能となる。
【0041】
図7に示すドラムセット1は、フロアタム20に対して残響音調整具100(図5)を設けた例を示している。このドラムセット1においては、床面設置部130をフロアタム20の下部の床面に設置して、吸音部110がフロアタム20の裏面に対して所望の位置および間隔等となるように、支持部120の長さ等を調整して設置したものである。
【0042】
これにより、フロアタム20の打撃時に生じる残響音を低減することが可能となる。また、吸音部110の大きさや、フロアタム20の裏面との間隔を調整することで、演奏者や聴衆者等の所望の残響音に調整することが可能となる。
【0043】
なお、図6および図7の例では、ドラムセット1のタムタム40、フロアタム20に響音調整具100を適用する例を説明したが、他のドラムに残響音調整具100を適用してもよいのは勿論である。例えば、バスドラム10に対して、残響音調整具100を設置することも可能である。この場合、吸音部110をバスドラム10の裏面に対向させて設置するものであればよい。また、ドラムセット1において残響音調整具100を適用するドラムは1つのドラムに限られず、複数のドラムに複数の残響音調整具100を用いてもよいのは勿論である。
【0044】
また、本実施形態では、複数のドラムを有するドラムセット1に残響音調整具100を適用する例を説明したが、1つのドラムを単独で使用する場合に用いてもよいのは勿論である。また、残響音調整具100は、ドラムセット1に限らず、和太鼓などの他の打楽器にも適用可能である。
【0045】
なお、室内であるか屋外であるか、室内の場合の壁との距離、等のドラムセット1の設置環境に応じて残響音は変化するため、設置環境に応じて、所望の残響音を得られるように残響音調整具100の設置状態を適宜調整するものであればよい。
【0046】
また、ドラムセット1を用いた演奏者による演奏は、聴衆者に対してなされることが多いものであり、残響音調整具100も聴衆者の目に触れるものであるため、ドラムセット1の外観(見た目)も重要である。このため、残響音調整具100は、例えば、ドラムセット1のデザイン、色合いに合わせて目立たないような色とすることが好ましい。例えば、シート部材112の色をドラムセット1のデザイン、色合いに合わせて目立たない色を選択することができる。また、反対に、残響音調整具100にデザイン性を持たせ目立たせるようにしてもよく、例えば、ドラムセット1のデザイン、色合いに応じた模様やロゴなどを付したものであってもよい。
【0047】
以上説明した残響音調整具100により、ドラム演奏時における残響音を調整することができる。
【0048】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ドラムセット
10 バスドラム
20 フロアタム
30 スネアドラム
40 タムタム
41 ホルダー
50 ハイハットシンバル
51 スタンド
60 クラッシュシンバル
61 スタンド
70 ライドシンバル
71 スタンド
100 残響音調整具
110 吸音部
111 吸音部材
112 シート部材
113 凹部
120 支持部
121 取付部
122 凸部
123 第1角度調整部
124 調整具
125 アーム部
126 第2角度調整部
127 調整具
128 挟持部
129 調整具
130 床面設置部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7