(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】充填装置
(51)【国際特許分類】
B65B 31/04 20060101AFI20220214BHJP
B65B 3/10 20060101ALI20220214BHJP
B65B 3/22 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
B65B31/04 Z
B65B3/10
B65B3/22
(21)【出願番号】P 2018097164
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2017113207
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594069764
【氏名又は名称】三星工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 宏
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012535(JP,A)
【文献】特開2009-113862(JP,A)
【文献】特開2010-126245(JP,A)
【文献】特開昭63-033202(JP,A)
【文献】特開2012-136284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 31/04
B65B 3/10
B65B 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバーを備え、減圧された前記真空チャンバー内において、相対的に大きな外径に形成されて第1開口部を有する大径部が一端に設けられ、相対的に小さな外径に形成されて第2開口部を有する小径部が他端に設けられたシリンジにペースト状の材料を充填する充填装置であって、
一端に第1嵌合突起と、他端に前記シリンジの前記第1開口部に内嵌される第2嵌合突起とを有すると共に、内部に一端から他端にかけて貫通形成される第1貫通孔を有するシリンジ充填口部材と、
前記大径部を鉛直方向下方に向けると共に前記小径部を鉛直方向上方に向けて、前記大径部の前記第1開口部に前記シリンジ充填口部材が嵌合された状態の前記シリンジを、鉛直方向下方側で保持する下部プレート、および、鉛直方向上方側で保持する上部プレートと、
前記下部プレートと前記上部プレートとが一本もしくは複数本の前記シリンジを挟み込むように配置されると共にポストにより連結されて構成されるシリンジ固定アッセンブリーと、
前記シリンジ固定アッセンブリーを前記真空チャンバー内の所定位置において保持するホルダーと、
前記真空チャンバーの下部パネルに挿通され、シールされた状態で上下動可能に配設されたシャフトと、
前記シャフトの上端に固定され、前記シリンジ固定アッセンブリーに対して鉛直方向下方の位置において前記材料が収容された容器を載置する容器台と、を備え、
前記下部プレートは、前記シリンジ充填口部材の前記第1嵌合突起が内嵌される嵌合溝を有し、前記嵌合溝に前記シリンジ充填口部材が嵌合された状態で前記シリンジ充填口部材の前記第1貫通孔に連通する第2貫通孔が設けられており、
前記上部プレートは、前記シリンジの前記小径部を進入させる、前記大径部の外径よりも小さな内径を有する第3貫通孔が設けられており、
前記容器が載置された前記容器台を前記シャフトにより鉛直方向の下方から上方へ移動させることによって、前記シリンジ固定アッセンブリーを前記下部プレート側から前記容器内に進入させ、前記容器内の前記材料を前記第2貫通孔および前記第1貫通孔から前記シリンジ内に充填させること
を特徴とする充填装置。
【請求項2】
前記ポストは、複数本が設けられ、
前記上部プレートは、第1プレートと第2プレートとを有し、
前記第1プレートおよび前記第2プレートのそれぞれの領域に少なくとも一本の前記ポストが配設されて、前記第1プレートおよび前記第2プレートが個別に取外し可能に前記ポストにより連結されて構成されており、
前記第1プレートおよび前記第2プレートのうち所定の一方のみが取外された状態で、全ての前記シリンジが前記シリンジ固定アッセンブリーから取外し可能となるように、前記第1プレートと前記第2プレートとの境界位置が設定されていること
を特徴とする請求項1記載の充填装置。
【請求項3】
前記容器台もしくは前記シャフトに固定される支持部と、前記支持部に設けられて前記容器の外方から中心方向へ向かう方向に突出する係合部と、を有する容器サポートをさらに備え、
前記係合部は、平面視において前記容器の把手部と重なる位置で且つ正面視において前記把手部よりも鉛直方向上方となる位置、もしくは、平面視において前記容器の上端縁と重なる位置で且つ正面視において前記上端縁よりも鉛直方向上方となる位置、に配設されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の充填装置。
【請求項4】
前記下部プレートの外縁部に配設されて、斜め下方に突出して前記容器の内壁と摺接する鍔状部を有するリング状で樹脂材料を用いて形成されたスクレーパーをさらに備え、
前記スクレーパーは、径方向に所定量、移動可能なように前記下部プレートに固定されていること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項5】
前記シリンジ固定アッセンブリーが前記ホルダーにより保持された状態において、前記シリンジ固定アッセンブリーと、前記真空チャンバーの上部パネルもしくは該上部パネルに取り付けられた係止部との間に隙間なく進入および進出可能に設けられた板状部材からなり、前記シリンジ固定アッセンブリーの鉛直方向上方への移動を規制するストッパーをさらに備えること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項6】
前記真空チャンバーの上部パネルに設けられたガラスプレートを介在させて取り付けられ、前記シリンジ内に充填される前記材料の上面位置の変位を検出するレーザ変位センサーをさらに備えること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項7】
前記シリンジは、前記小径部に装着可能なキャップを有し、
前記上部プレートは、前記第3貫通孔の内径が前記キャップの外径よりも大きく形成されていること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填装置に関し、さらに詳細には、減圧された真空チャンバー内においてシリンジにペースト状の材料を充填する充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、減圧された真空チャンバー内においてシリンジにペースト状の材料を充填する充填装置が知られている。当該材料の例としては、医薬品、化学材料、食料品、塗料、半導体装置材料等の分野で用いられるペースト状すなわち液体と比較して粘度の高い流動体等が挙げられる。
【0003】
ここで、上記の材料に気泡が混入した場合、シリンジからの吐出量のばらつきや不吐出、あるいはそれらに起因する製品不良の発生等の原因となるため、シリンジに充填する際に気泡が混入しにくい充填装置が研究されてきた。そのような充填装置の一例として、特許文献1:特開2010-126245号公報に開示された装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、シリンジは相対的に大きな径の開口部が形成された大径部と相対的に小さな径の開口部が形成された小径部とを有している。ここで、特許文献1に例示されるような充填装置においては、ペースト状の材料を小径部からシリンジ内へ充填する構成となっている。これによれば、小径部は外周にキャップ嵌合用のネジ山等が形成されている場合が多いため、材料収容容器内へ進入させて材料を押圧する押圧部材にシリンジを固定することが容易となる。しかしながら、本願発明者の研究によって、小径部から材料を充填すると、シリンジ内における小径部の寸法から大径部の寸法へと内部形状が変化する位置において気泡溜まりが生じ易く、材料への気泡混入の原因となり得ることが明らかとなった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、シリンジにペースト状の材料を充填する際に、シリンジ内に充填される材料に気泡が混入してしまうことを防止できる充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
この充填装置は、真空チャンバーを備え、減圧された前記真空チャンバー内において、相対的に大きな外径に形成されて第1開口部を有する大径部が一端に設けられ、相対的に小さな外径に形成されて第2開口部を有する小径部が他端に設けられたシリンジにペースト状の材料を充填する充填装置であって、一端に第1嵌合突起と、他端に前記シリンジの前記第1開口部に内嵌される第2嵌合突起とを有すると共に、内部に一端から他端にかけて貫通形成される第1貫通孔を有するシリンジ充填口部材と、前記大径部を鉛直方向下方に向けると共に前記小径部を鉛直方向上方に向けて、前記大径部の前記第1開口部に前記シリンジ充填口部材が嵌合された状態の前記シリンジを、鉛直方向下方側で保持する下部プレート、および、鉛直方向上方側で保持する上部プレートと、前記下部プレートと前記上部プレートとが一本もしくは複数本の前記シリンジを挟み込むように配置されると共にポストにより連結されて構成されるシリンジ固定アッセンブリーと、前記シリンジ固定アッセンブリーを前記真空チャンバー内の所定位置において保持するホルダーと、前記真空チャンバーの下部パネルに挿通され、シールされた状態で上下動可能に配設されたシャフトと、前記シャフトの上端に固定され、前記シリンジ固定アッセンブリーに対して鉛直方向下方の位置において前記材料が収容された容器を載置する容器台と、を備え、前記下部プレートは、前記シリンジ充填口部材の前記第1嵌合突起が内嵌される嵌合溝を有し、前記嵌合溝に前記シリンジ充填口部材が嵌合された状態で前記シリンジ充填口部材の前記第1貫通孔に連通する第2貫通孔が設けられており、前記上部プレートは、前記シリンジの前記小径部を進入させる、前記大径部の外径よりも小さな内径を有する第3貫通孔が設けられており、前記容器が載置された前記容器台を前記シャフトにより鉛直方向の下方から上方へ移動させることによって、前記シリンジ固定アッセンブリーを前記下部プレート側から前記容器内に進入させ、前記容器内の前記材料を前記第2貫通孔および前記第1貫通孔から前記シリンジ内に充填させることを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリンジにペースト状の材料を充填する際に、シリンジ内に充填される材料に気泡が混入してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る充填装置の例を示す斜視図である。
【
図3】
図1の充填装置を用いて材料が充填されるシリンジの例を示す斜視図である。
【
図5】
図1の充填装置を用いて材料を充填する際に材料が収容される容器の例を示す斜視図である。
【
図6】
図1の充填装置のシリンジ固定アッセンブリーの例を示す斜視図である。
【
図8】
図1の充填装置のシリンジ固定アッセンブリーの他の例を示す斜視図である。
【
図9】
図1の充填装置のシリンジ充填口部材の例を示す概略図である。
【
図10】
図1の充填装置の下部プレートの例を示す斜視図である。
【
図11】
図1の充填装置のスクレーパーの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る充填装置1の例を示す斜視図(概略図)であり、
図2は、その正面断面図(概略図)である。ここで、
図2における紙面の上下方向が「鉛直方向の上下方向」に対応する。また、
図3、
図4は、充填装置1を用いて材料Mが充填されるシリンジ2の例を示す斜視図(概略図)、正面断面図(概略図)であり、
図5は、充填する材料Mが収容される容器の例を示す斜視図(概略図)である。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、装置の構造材料としては、特に明示しない限り一般構造材料(金属材料、樹脂材料)が用いられる。
【0012】
本実施形態に係る充填装置1は、
図1、
図2に示すように、真空ポンプ20と接続されて減圧可能な真空チャンバー12が架台10上に固定された構成を備えており、所定気圧(一例として、50~100[Pa]程度)まで減圧された真空チャンバー12内において、複数本(一例として四本)のシリンジ2に同時に、容器3に収容されたペースト状の材料Mを充填する装置である。なお、同時に充填するシリンジ2の本数は特に限定されるものではない。また、一本のシリンジ2に充填する構成としてもよい。ここで、真空チャンバー12へのシリンジ2および容器3の出し入れは、正面に取り付けられた開閉扉22を開けて行われる。なお、充填作業は真空チャンバー12内を減圧しない状態で行うことも可能である。
【0013】
本実施形態に係る充填装置1を用いてペースト状の材料Mが充填されるシリンジ2は、次の構成を備えている。具体的には、
図3、
図4に示すように、一端に相対的に大きな内径の第1開口部2Aを有することにより相対的に大きな外径に形成された大径部2aと、他端に相対的に小さな内径の第2開口部2Bを有することにより相対的に小さな外径に形成された小径部2bとを備える構成である。一例として、樹脂材料を用いて形成されている。ここで、前述の通り、特許文献1に例示される従来装置のように小径部2b(第2開口部2B)からシリンジ2内に材料Mを充填する構成の場合、シリンジ2内における小径部2bの寸法から大径部2aの寸法へと内部形状が変化する位置(以下、径変化部と称し符号2cで示す)において気泡溜まりが生じ易く、材料Mへの気泡混入の原因となり得る課題があることを本願発明者は究明した。
【0014】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。具体的には、シリンジ2の大径部2aを鉛直方向下方とし、小径部2bを鉛直方向上方とする配置でシリンジ2を保持して、大径部2a(第1開口部2A)からシリンジ2内に材料Mを充填する構成である。
【0015】
この構成によれば、大径部2a(第1開口部2A)から材料Mを充填することにより、充填された材料Mはシリンジ2内の径変化部2cの位置において大径部2aの寸法から小径部2bの寸法へと内部形状が変化する方向に進行することとなる。その結果、当該径変化部2cの位置において材料Mが徐々に縮径する内壁によって絞り込まれるため、隙間を埋める作用が生じ、気泡溜まりの発生を防止することが可能となる。
【0016】
ここで、シリンジ2内に充填される材料Mが過少の場合には小径部2bまで到達せずに空間ができ空気(気泡)が混入する原因となる。一方、シリンジ2内に充填される材料Mが過多の場合には小径部2bから溢れ出してシリンジ2の外部を汚損する原因となる。したがって、如何に過不足なく材料Mをシリンジ2内に充填するかが課題となる。
【0017】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。具体的には、真空チャンバー12の上部パネル12a上に、シリンジ2内に充填される材料Mの上面位置の変位を検出するレーザ変位センサー14を備える構成となっている。本実施形態においては、真空チャンバー12の上部パネル12aに内部を透視可能なように固定されたガラスプレート24に密着もしくは近接する配置でレーザ変位センサー14を取り付ける構成としている。
【0018】
この構成によれば、シリンジ2内に充填される材料Mの上面位置の変位を検出することができるため、シリンジ2内の小径部2b(第2開口部2B)の上端すれすれまで過不足なく材料Mを充填することが可能となる。このとき、レーザ変位センサー14が、ガラスプレート24に密着もしくは近接する配置で取り付けられているため、射出されるレーザ光の反射・錯乱が防止でき、検出精度を高めることが可能となる。
【0019】
ここで、特許文献1に例示される従来装置のように、シリンジを固定した押圧部材を鉛直方向下方に向けて移動させる(押し下げる)構成とした場合には、シリンジ自体が移動してしまうため、仮に真空チャンバー12の上部パネル12aにレーザ変位センサー14を設けても、シリンジ内における材料Mの変位の検出が困難となる、もしくは検出精度が低下するという課題が生じる。
【0020】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。具体的には、シリンジ2の鉛直方向下方の位置に、材料Mが収容された容器3を載置する容器台16を備えて、当該容器台16および容器3を鉛直方向上方へ向けて移動させることにより、大径部2aが鉛直方向下方となるように保持されたシリンジ2を容器3内に相対的に進入させるようにして、当該シリンジ2内に材料Mを充填させる構成である。本実施形態においては、真空チャンバー12の下部パネル12bに配設されたシールハウジング28に挿通され、シールされた状態で上下動可能に配設されたシャフト18を備えると共に、当該シャフト18の上端に容器台16が固定される構成としている。なお、シャフト18は、一例として電気モーター54によって駆動されるウォームギア(不図示)等を介して上下動するシリンダー(ジャッキ)56に連結される構成としているが、これに限定されるものではない。また、レーザ変位センサー14による検出や、電気モーター54の駆動等、一連の工程は、制御部(不図示)によって制御される。
【0021】
この構成によれば、シリンジ2内に材料Mを充填させる際に、シリンジ2自体が移動しない構造が実現できるため、真空チャンバー12の上部パネル12aに取り付けたレーザ変位センサー14によって、シリンジ2内に充填される材料Mの上面位置の変位の検出を高精度に行うことが可能となる。
【0022】
なお、一例として、レーザ変位センサー14は、保持する各シリンジ2の位置に対応させて(すなわち平面視において一致する位置において)、当該シリンジ2の本数(一例として四本)と同数設ける構成とすればよい。
【0023】
本実施形態においては、さらに当該複数のレーザ変位センサー14の中心となる位置に別途レーザ変位センサー15を設ける構成としている。これによれば、例えば、比較的大きなサイズのシリンジ2に充填を行う場合等において、当該中心位置にシリンジ2を一本のみ配置した充填作業の実行時に変位の検出を行うことが可能となる。
【0024】
ここで、容器台16および容器3を鉛直方向上方へ向けて移動させることによってシリンジ2を容器3内に相対的に進入させる構成とする場合、シリンジ2を如何にして保持するかが課題となると共に、シリンジ2を保持した部材に対して下方から容器3が押し上げられた際に如何にして荷重を支持するかが課題となる。
【0025】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。ここで、シリンジ2の保持構造について説明する。
図6(
図6(a)は所定の組立て状態の斜視図、
図6(b)は後述の第1プレート33Xを取外した状態の斜視図)、および
図7(
図6(a)におけるA-A線断面図)に示すように、大径部2aを鉛直方向下方とし、小径部2bを鉛直方向上方とする配置としたシリンジ2を、鉛直方向下方から保持する下部プレート32と、鉛直方向上方から保持する上部プレート33とを備えている。さらに、下部プレート32と上部プレート33とを連結するポスト34を備えており、下部プレート32と上部プレート33とでシリンジ2を挟み込んでポスト34により連結された状態で保持を行うシリンジ固定アッセンブリー30が構成される。このとき、シリンジ2の第1開口部2Aにシリンジ充填口部材31(詳細は後述)が嵌合された状態となっている。したがって、シリンジ2は、シリンジ充填口部材31を介して鉛直方向下方側から下部プレート32によって保持される構成となる。
【0026】
なお、
図6、
図7に示すシリンジ固定アッセンブリー30は、複数本(一例として四本)のシリンジ2を保持する場合の例である(前述の通り、シリンジ2の本数は四本に限定されない)。また、他の例として、一本のシリンジ2を保持する場合のシリンジ固定アッセンブリー30の構成を
図8(
図8(a)は所定の組立て状態の斜視図、
図8(b)は後述の第1プレート33Xを取外した状態の斜視図)に示す。
【0027】
一例として、シリンジ固定アッセンブリー30は、ポスト34の下端部をボルトにより下部プレート32に固定し、上端部を上部プレート33を挿通させると共に作業者が手で容易に着脱可能なローレットノブ36により上部プレート33に固定される構成としている。なお、ポスト34の本数と配置については後述する。
【0028】
なお、上記のシリンジ固定アッセンブリー30は、真空チャンバー12内の所定位置に設けられたホルダー40によって保持される。本実施形態においては、真空チャンバー12における対向する二つの側部パネル12c、12dから内部へ突出するようにそれぞれ固定された板状部材を用いて構成されている。シリンジ固定アッセンブリー30は、両端部(ここではシリンジ固定アッセンブリー30を構成する上部プレート33の両端部33a、33b)がそれぞれ対向する二つのホルダー40A、40Bに係合されることによって、所定位置に位置決めされると共に、鉛直方向下方に落下しないように保持される。
【0029】
次に、シリンジ充填口部材31について、斜視図を
図9(a)に、そのB-B線断面図を
図9(b)にそれぞれ示す(シール溝31c、31dに配設されるシール部材(一例として、ゴム材料からなるOリング)については図示を省略している)。本実施形態に係るシリンジ充填口部材31は、一端に円錐台形状の第1嵌合突起31aを有すると共に、他端に円柱(円筒)形状の第2嵌合突起31bを有している。また、その内部には一端から他端にかけて貫通形成される第1貫通孔31Aを有している。当該第2嵌合突起31bが、シリンジ2の第1開口部2Aに隙間なく内嵌される構成となる(その際、シール溝31dに配設されるシール部材が第1開口部2Aの内壁に隙間なく密着する)。一方、第1嵌合突起31aは、後述の下部プレート32に設けられる嵌合溝32aに内嵌されて保持される。
【0030】
なお、本実施形態に係る第1貫通孔31Aは、第1嵌合突起31a側の内径を相対的に小さく、第2嵌合突起31b側の内径を相対的に大きく構成している。これによれば、シリンジ2にペースト状の材料Mを充填する際の工程においては、第2嵌合突起31b側の内径が大きいため(シリンジ2の第1開口部2Aの内径に近い程度まで拡径されるように構成されているため)、第1貫通孔31Aと第1開口部2Aとの接続部分に大きな段差が生じず、シリンジ充填口部材31から材料Mがシリンジ2内へ進入する際に気泡溜まりが発生してしまうことの防止が図れる。一方、シリンジ2にペースト状の材料Mが充填された後の工程として、大径部2aにシリンジ充填口部材31が嵌合されたままシリンジ2を取外す工程が実施されるが、その際に、材料Mの粘度が低い場合であっても、第1嵌合突起31a側の内径が小さいため、第1貫通孔31Aを通過して材料Mがシリンジ2外へ漏出してしまうことの防止が図れる。
【0031】
次に、下部プレート32について、斜視図を
図10に示す(後述のスクレーパー42、固定用部材45については図示を省略している)。本実施形態に係る下部プレート32は一面(上面となる面)に、シリンジ充填口部材31の第1嵌合突起31aが内嵌される嵌合溝32aが設けられている。嵌合溝32aは、第1嵌合突起31aの形状に対応させて、円錐台形状に穿設されている。これによれば、シリンジ2(大径部2a)に嵌合された状態のシリンジ充填口部材31を、その第1嵌合突起31a部分を嵌合溝32aに内嵌させて保持することができる。このとき、シール溝31cに配設されるシール部材が嵌合溝32aの内壁に隙間なく密着する。
【0032】
ここで、下部プレート32は、嵌合溝32aにシリンジ充填口部材31(第1嵌合突起31a)が嵌合された状態となったときに、シリンジ充填口部材31の第1貫通孔31Aと連通するように配設された第2貫通孔32Aを有している。
【0033】
これにより、下部プレート32の嵌合溝32aにシリンジ充填口部材31の第1嵌合突起31aを嵌合させることによって、下部プレート32でシリンジ2の下部(大径部2a)を動かないように保持することができると共に、下部プレート32の第2貫通孔32Aおよびシリンジ充填口部材31の第1貫通孔31Aを介して、容器3内の材料Mを第1開口部2Aからシリンジ2内に充填することが可能となる。
【0034】
このように、シリンジ充填口部材31が別体に形成されている構成によって、大きさ(ここでは、第1開口部2Aの内径)が異なるシリンジ2に対しても、シリンジ充填口部材31のみを交換、すなわち、シリンジ2の第1開口部2Aの内径に合った第2嵌合突起31bの外径を有するシリンジ充填口部材31に交換するだけで対応可能となるため、装置の汎用性を向上させることができる。
【0035】
一方、上部プレート33には、当該上部プレート33を鉛直方向上下方向に貫通し且つシリンジ2の小径部2bを進入させる第3貫通孔33Aが設けられている。本実施形態に係る第3貫通孔33Aは、シリンジ2の大径部2aの外径よりも小さな内径を有するように形成されている。さらに、第3貫通孔33Aの下部に鉛直方向下方に向かって内径が徐々に拡径する傘状部33cを備える構成としている。
【0036】
これにより、第3貫通孔33Aの内径がシリンジ2の大径部2aの外径よりも小さいため、シリンジ2が第3貫通孔33Aから上方へ抜け出してしまうことなく保持することができる。このとき、シリンジ2の径変化部2cの外周部を第3貫通孔33Aの傘状部33cに当接させて保持する構成によって、小径部2bを第3貫通孔33Aの内壁に接触させない状態で、且つ、シリンジ2の上部が動かない状態で保持することができる。また、第3貫通孔33Aを介してシリンジ2の上部(第2開口部2B)からシリンジ2内の空気を排出することができるため、シリンジ2の下部(第1開口部2A)から材料Mを充填することが可能となる。
【0037】
また、内径が徐々に変化する傘状部33cが形成されている構成によって、大きさ(ここでは、径変化部2cの外径)が異なるシリンジ2に対しても、保持することが可能となるため、装置の汎用性を向上させることができる。
【0038】
なお、上部プレート33の第3貫通孔33Aは、下部プレート32の嵌合溝32a共々、保持するシリンジ2の位置に対応させて(すなわち平面視において一致する位置において)、当該シリンジ2の本数と同数設ける構成とすればよい。
【0039】
ここで、本実施形態に特徴的な構成として、
図6、
図8に示すように、上部プレート33は、第1プレート33Xと第2プレート33Yとを備えて構成されている。より詳しくは、第1プレートおよび第2プレートのそれぞれの領域に少なくとも一本のポスト34が配設されて、それぞれが下部プレート32と連結される構成となっている。したがって、対応する位置のポスト34のローレットノブ36を取外すことにより、第1プレートおよび第2プレートを個別に取外すことが可能な構成が実現されている。
【0040】
このとき、第1プレート33Xと第2プレート33Yとの境界位置33Zは、
図6(b)、
図8(b)に示すように、所定の一方(ここでは、第1プレート33X)のみが取外された状態において、保持されていた全てのシリンジ2がシリンジ固定アッセンブリー30から取外し可能となる位置に設定されている。換言すれば、所定の一方(ここでは、第1プレート33X)のみが取外された状態において、保持されていた全てのシリンジ2の小径部2bが第3貫通孔33Aから脱出した状態もしくは脱出可能な状態となるように、第1プレート33Xと第2プレート33Yとの境界位置33Zが設定されている。すなわち、所定の一方(ここでは、第1プレート33X)のみによって、全てのシリンジ2の上部が保持可能な構成となっている。ここで言う「保持」には、シリンジ2の上部の全体(全周)を保持する場合(例えば
図6(b)における手前側の三本)と、一部を保持する場合(例えば
図6(b)における奥側の一本)との両方が含まれる。
【0041】
仮に、上部プレート33が一体構造で形成されている場合を想定すると、シリンジ固定アッセンブリー30からシリンジ2を取外す工程は、上部プレート33全体を取外した後で実施しなければならない。その場合、上部プレート33が取外されているため、シリンジ固定アッセンブリー30をホルダー40に保持させておくことができず、シリンジ固定アッセンブリー30(ここでは、下部プレート32上にシリンジ2が載置された状態)が自重によって容器3内を下方に降下してしまう現象が発生する。その結果、シリンジ2内にさらに材料Mが充填されてしまう作用が生じ、適量に充填されていた状態を超えて、小径部2bから材料Mがあふれ出てしまう問題をもたらすこととなる。
【0042】
これに対して、本実施形態における上記の構成によれば、第1プレート33Xおよび第2プレート33Yの所定の一方(ここでは、第1プレート33X)のみを取外すことにより、保持されていた全てのシリンジ2がシリンジ固定アッセンブリー30から取外すことができる。すなわち、他方(ここでは、第2プレート33Y)は、ポスト34を介して下部プレート32に連結されたままの状態とすることができる。したがって、充填完了後に全てのシリンジ2をシリンジ固定アッセンブリー30から取外す工程を実施する際においても、他方(ここでは、第2プレート33Y)はホルダー40に保持された状態が維持できるため、上記のような問題を解決することが可能となる。
【0043】
次に、下方から容器3が押し上げられた際のシリンジ固定アッセンブリー30における荷重支持構造に関して説明する。シリンジ固定アッセンブリー30が、二つのホルダー40A、40Bに係合されることによって、鉛直方向下方に落下しないように所定位置で保持されることは前に述べた通りであるが、下方から押動される荷重に対しては、さらに、上記の所定位置で保持されたシリンジ固定アッセンブリー30と、真空チャンバー12の上部パネル12aに取り付けられた係止部26との間に隙間なく進入させるストッパー38を備える構成によって、その支持が行われる。
【0044】
一例として、ストッパー38は、シリンジ固定アッセンブリー30と係止部26との間にスライド移動によって進入・進出可能に設けられた板状部材を用いて構成されている。また、係止部26は、上部パネル12aから内部へ突出する板状部材であって下端部にスライド溝が形成された構成である。さらに、シリンジ固定アッセンブリー30(上部プレート33)の両端部33a、33bにおける上端部にもスライド溝が形成されている。なお、ストッパー38、係止部26はいずれも板状部材に限定されるものではない。また、変形例として、ストッパー38の上部は、係止部26によって支持される構成に代えて、真空チャンバー12の上部パネル12aによって直接、支持される構成としてもよい。
【0045】
この構成によれば、下方から容器3が押し上げられてシリンジ固定アッセンブリー30に鉛直方向上方へ向かう荷重が印加された際に、シリンジ固定アッセンブリー30が上方へ押動されてホルダー40から外れてしまうことなく、所定位置に固定することが可能となる。したがって、容器台16および容器3を鉛直方向上方へ向けて移動させて、シリンジ2を保持させた状態のシリンジ固定アッセンブリー30を下部プレート32側から容器3内に相対的に進入させることによって、当該シリンジ2内に材料Mを充填させる構成を実現することが可能となる。さらに、その場合において、シリンジ固定アッセンブリー30の鉛直方向上下方向の移動が規制できるため、レーザ変位センサー14による材料Mの位置検出を高精度に行うことが可能となる。
【0046】
ここで、特許文献1に例示される従来装置のように、シリンジを固定した押圧部材を鉛直方向下方に向けて移動させる(押し下げる)構成においては、押圧部材の容器との摺接部に密着性を高めるためのゴム製Oリングが用いられていた。しかし、当該Oリングを用いる構成の場合、材料の一部がOリングの取付溝の内部や周辺に付着、固化する等によって、装置(ここでは押圧部材)を繰り返し使用することが困難になってしまう課題があることを本願発明者は究明した。
【0047】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。具体的には、
図7に示すように、下部プレート32の外縁部に、斜め下方に突出して容器3の内壁と摺接する鍔状部44を有するスクレーパー42が固定された構成としている。本実施形態に係るスクレーパー42は、
図11、
図12(
図11におけるC-C線断面図)に示すように、樹脂材料を用いてリング状に形成されていると共に、鍔状部44の先端が作業者の手を傷つけない程度に鋭利な先細り形状に形成されている。一例として、当該樹脂材料にはフッ化炭素樹脂(フッ素樹脂)を用いることが好適である。
【0048】
この構成によれば、容器3内に進入するシリンジ固定アッセンブリー30(ここでは、下部プレート32)における容器3の内壁との摺接部にOリングを用いない構造が実現できる。したがって、従来装置において材料の一部がOリングの取付溝の内部や周辺に付着、固化する等の課題の解決が可能となる。加えて、先端が鋭利で且つ斜め下方に突出する鍔状部44によって、容器3の内壁に付着した材料Mを全て容器3の底部に向けてかき落とすことが可能となる。したがって、材料Mを無駄なくシリンジ2内に充填することが可能となる。また、当該スクレーパー42を特にフッ化炭素樹脂(フッ素樹脂)等を用いて形成すれば、装置使用後のメンテナンス、すなわち、付着した材料Mの拭き取りが極めて容易となり、材料Mの残留や固化が防止できるため、長期に亘って装置(特に下部プレート32)を繰り返し使用することが可能となる。
【0049】
しかし、シリンジ固定アッセンブリー30を真空チャンバー12内の所定位置に保持する(位置決めする)上部プレート33と、容器3内部に進入させる下部プレート32とは、連結を行うポスト34およびその固定部分等における寸法公差に起因して、所定の連結位置から相互に微小寸法のズレが生じてしまう場合がある。これは、容器3の内壁と下部プレート32(ここでは、外縁部に配設されたスクレーパー42)との間に、隙間が大きい箇所と隙間が小さい箇所とを生じさせてしまう原因となる。その結果、容器3を上昇させてシリンジ2内に材料Mの充填を行う際に、隙間が大きい箇所から、材料Mが噴出してしまう問題をもたらすこととなる。
【0050】
これに対して、本実施形態においては、スクレーパー42が径方向に所定量、移動可能となるように、リング状の固定用部材45を用いて下部プレート32に固定される構成を備えている。すなわち、固定位置において、スクレーパー42の内壁と下部プレート32の外壁との間に所定隙間が設けられ、且つ、スクレーパー42の上面と下部プレート32の対向面との間、およびスクレーパー42の下面と固定用部材45の対向面との間にも所定隙間が設けられる構成である。この構成によれば、シリンジ固定アッセンブリー30によってシリンジ2を保持した際に、上部プレート33に対して下部プレート32の連結位置に微小寸法のズレが生じ、容器3の中心に対して下部プレート32の中心が偏心していた場合であっても、下部プレート32が容器3内に進入して、下部プレート32のスクレーパー42(鍔状部44)が容器3の内壁と接触することによって、偏心量に応じて内壁から受ける力によってスクレーパー42が径方向に移動して、スクレーパー42の中心が容器3の中心と一致するように矯正されるため、上記のような問題を解決することが可能となる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る充填装置1によれば、容器台16および容器3を鉛直方向上方へ向けて移動させて、シリンジ固定アッセンブリー30を下部プレート32側から容器3内に密着させながら(すなわち所定の寸法公差で隙間なく)進入させることによって、当該シリンジ固定アッセンブリー30によって保持されたシリンジ2内に大径部2a側から材料Mを充填させる構成の実現が可能となった。しかしながら、本願発明者が鋭意研究した結果、上記構成を備える充填装置1において、新たな課題が生じ得ることを究明した。
【0052】
新たな課題の一つは、容器台16および容器3を鉛直方向上方へ向けて移動させてシリンジ2内への材料Mの充填が完了し、シリンジ2をシリンジ固定アッセンブリー30から取外した後に、容器台16および容器3を鉛直方向下方へ向けて移動させる際において、容器台16のみが降下し、容器3はシリンジ固定アッセンブリー30に密着した状態となって降下しない状態、すなわち取り外せない状態となってしまうことである。これは、充填により容器3内の材料Mが減少して容器全体の重量が軽くなることに加えて、本実施形態に係るシリンジ固定アッセンブリー30(下部プレート32)がスクレーパー42を備えていることにより容器3との密着性が格段に高まったこと等に起因するものと考えられる。
【0053】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。具体的には、容器台16に固定される支持部47と、支持部47に設けられて容器3の外方から中心方向へ向かう方向に突出する係合部48とを有する容器サポート46を備えている。本実施形態に係る容器サポート46は板状部材の端部を90[°]折曲させて支持部47と係合部48とを設ける構成となっている。一例として、容器3を挟んで対向する位置に二つの容器サポート46A、46Bが設けられている。ここで、容器サポート46の係合部48は、平面視において容器の把手部3Aと重なる位置で且つ正面視において把手部3Aよりも鉛直方向上方となる位置に配設されている。なお、変形例として、容器サポート46は真空チャンバー12内に位置するシャフト18に固定される構成としてもよい(不図示)。また、係合部48が係合する部位は把手部3Aに代えて容器3の上端縁としてもよい(不図示)。
【0054】
この構成によれば、シャフト18により容器台16を鉛直方向下方へ向けて移動させた際に、容器3が容器台16に伴って移動しない状況が発生した場合には、容器サポート46の係合部48が把手部3Aと当接することとなり、容器3を鉛直方向下方へ引き下げて移動させることができる。したがって、容器3がシリンジ固定アッセンブリー30に密着して降下しない状態、すなわち取り外せない状態となってしまう課題の解決が可能となる。なお、容器3を容器台16上に載置する場合には、平面視において容器の把手部3Aと容器サポート46の係合部48とが重ならない配置とすることで、係合部48が把手部3Aに当接することなく載置することが可能となる。
【0055】
ここで、上記のように容器3が容器台16に伴って移動しない状況が発生した場合に、当該容器3を鉛直方向下方へ引き下げる作用効果を確実に奏するためには、係合部48と把手部3Aとが確実に当接することが重要となる。したがって、容器台16を鉛直方向上下方向に移動させる際に、容器台16がシリンジ固定アッセンブリー30に対して回動してしまうことの防止が重要な課題となる。
【0056】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。具体的には、鉛直方向上下方向に移動されるシリンダー56とシャフト18とを連結する際に、両者の間に板状部材を用いた昇降板50を挟んで連結する構成としている。さらに、昇降板50の両端部に貫通孔50A、50Bを設け、当該貫通孔50A、50Bにそれぞれ挿通させると共に架台10に固定させたガイド52(52A、52B)を設ける構成としている。なお、一例として、ガイド52は円柱状部材を用いて形成されているが、これに限定されるものではない。
【0057】
この構成によれば、仮にシリンダー56が軸中心に回動してしまうおそれがある構造の場合であっても、昇降板50がガイド52によって回動することが規制されるため、シャフト18の回動を防止することができ、ひいては、シャフト18に連結される容器台16の回動を防止することができる。したがって、容器サポート46の作用効果を確実に奏することが可能となる。
【0058】
もう一つの新たな課題として、材料Mの粘度が比較的低い場合においては、シリンジ2内への材料Mの充填が完了し、シリンジ2をシリンジ固定アッセンブリー30から取外した後、容器台16および容器3を鉛直方向下方へ向けて移動させる際に、容器3が降下しない問題は発生しにくくなるものの、その一方で、粘度が低いが故に、シリンジ2をシリンジ固定アッセンブリー30から取外す時点で、材料Mがシリンジ2下部の第1開口部2Aから(すなわち、嵌合されているシリンジ充填口部材31の第1貫通孔31Aから)流れ出してしまう問題が発生し易くなる。特に、真空チャンバー12内が大気開放された状態では、当該問題の発生リスクが高くなる。
【0059】
本実施形態においては、以下の特徴的な構成を備えることによって、当該課題の解決を可能としている。具体的には、上部プレート33に設けられる第3貫通孔33Aの内径がシリンジ2の小径部2bに装着されるキャップ(不図示)の外径よりも大きく形成された構成を備えている。
【0060】
通常、シリンジ2は小径部2bに装着可能なキャップを備えているのが一般的であるが、上記の構成によれば、シリンジ2をシリンジ固定アッセンブリー30に保持させた状態のままで、第3貫通孔33Aの内部に位置するシリンジ2の小径部2bにキャップを装着することが可能となる。これにより、容器台16および容器3を鉛直方向上方へ向けて移動させてシリンジ2内に材料Mを充填させた後、シリンジ2をシリンジ固定アッセンブリー30から取外す前に、シリンジ2の小径部2bにキャップを装着することが可能となる。したがって、材料Mの粘度が比較的低い場合であっても、シリンジ2の小径部2bにキャップが装着されていることによって、シリンジ2をシリンジ固定アッセンブリー30から取外す際に、シリンジ2の第1開口部2Aから(すなわち、嵌合されているシリンジ充填口部材31の第1貫通孔31Aから)材料Mが流れ出てしまうことが防止できる。
【0061】
続いて、上記の構成を備える充填装置1を用いて、容器3に収容されたペースト状の材料Mをシリンジ2に充填する工程の概略について説明する。
【0062】
先ず、空のシリンジ2を所定本数用意して、
図6もしくは
図8に例示されるように、シリンジ固定アッセンブリー30の組立てを行う(ステップ1)。
【0063】
次いで、充填装置1の真空チャンバー12の開閉扉22を開いて、所定量の材料Mが収容された容器3を真空チャンバー12内に入れ、容器台16上の所定位置に載置する(ステップ2)。
【0064】
次いで、シリンジ固定アッセンブリー30を真空チャンバー12内に入れ、所定位置に保持する(ステップ3)。このとき、シリンジ固定アッセンブリー30の下部プレート32側を容器3に入れるようにしながら、上部プレート33をホルダー40の所定位置に位置決めして保持させる。
【0065】
次いで、シリンジ固定アッセンブリー30と、真空チャンバー12の上部パネル12aに取り付けられた係止部26との間に、ストッパー38をスライド移動で進入させて隙間なく取付ける(ステップ4)。
【0066】
次いで、開閉扉22を閉めて、真空ポンプ20を駆動し、真空チャンバー12内を設定気圧(一例として、50~100[Pa]程度)まで減圧する(ステップ5)。
【0067】
次いで、真空チャンバー12内が設定気圧の真空状態となったところで、真空ポンプ20を停止する。この状態で、電気モーター54を駆動して、シリンダー56を上昇させる。これに伴い、シャフト18の上端の容器台16に載置された容器3が上昇する。これによって、シリンジ固定アッセンブリー30が容器3内の底部に向かってさらに進入し、シリンジ固定アッセンブリー30によって保持されたシリンジ2内への材料Mの充填が行われる(ステップ6)。
【0068】
ここで、シリンジ2内への材料Mの充填は、真空チャンバー12の上部パネル12aに取り付けたレーザ変位センサー14によって、シリンジ2内に充填される材料Mの上面位置の変位を検出しながら行う。シリンジ2内に充填される材料Mの上面位置が所定位置となった時点で、容器3の上昇を停止することによって、シリンジ2内への材料Mの充填が完了する(ステップ7)。
【0069】
次いで、真空チャンバー12内を大気開放した後、開閉扉22を開ける(ステップ8)。ここで、ストッパー38をスライド移動で進出させて取外す(ステップ9)。
【0070】
次いで、シリンジ固定アッセンブリー30に保持された状態の全てのシリンジ2の小径部2bに、当該小径部2bを封止するキャップを嵌合する(ステップ10)。ただし、材料Mの粘度が高い場合等においては、キャップを嵌合しない場合もあり得る。
【0071】
次いで、第1プレート33Xの領域にあるポスト34を固定しているローレットノブ36を取外すことによって、第1プレート33Xのみを取外す(ステップ11)。このとき、シリンジ2は上部で保持されない状態となるが、下部に嵌合されているシリンジ充填口部材31が嵌合溝32aに密着して嵌合されているため、倒れずに自立した状態が維持される。なお、第2プレート33Yは依然、下部プレート32と連結されたままであるため、下部プレート32が自重で落下することはない。
【0072】
次いで、各シリンジ2を取外して、真空チャンバー12内から取出す(ステップ12)。このとき、シリンジ2の小径部2bにはキャップが嵌合された状態であるため、下部から材料Mが漏出してしまうことの防止が図られている。なお、大径部2aにシリンジ充填口部材31が嵌合された状態であることも、材料Mの漏出を抑制する効果を生じさせる。
【0073】
次いで、電気モーター54を駆動して、シリンダー56を降下させて、容器3を所定位置まで降下させる(ステップ13)。この状態で、第2プレート33Yと下部プレート32とが連結された状態のシリンジ固定アッセンブリー30を真空チャンバー12内から取出し(ステップ14)、次いで、容器3を真空チャンバー12内から取出し(ステップ15)、一連の工程が終了する。
【0074】
以上、説明した通り、本発明に係る充填装置によれば、シリンジにペースト状の材料を充填する際に、シリンジ内における小径部の寸法から大径部の寸法へと内部形状が変化する位置において気泡溜まりが発生することの防止が可能な構成を実現することができる。また、当該構成の実現に際して生じる種々の課題を同時に解決することができる。したがって、材料への気泡混入を確実に防止することが可能な充填装置を提供することができる。
【0075】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、真空チャンバー内で同時に充填を行うシリンジが複数本(一例として四本)の場合を例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、それ以外の本数の場合においても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 充填装置
2 シリンジ
2A 第1開口部
2B 第2開口部
2a 大径部
2b 小径部
2c 径変化部
3 容器
10 架台
12 真空チャンバー
14、15 レーザ変位センサー
16 容器台
18 シャフト
20 真空ポンプ
22 開閉扉
26 係止部
30 シリンジ固定アッセンブリー
31 シリンジ充填口部材
31A 第1貫通孔
32 下部プレート
32A 第2貫通孔
32a 嵌合溝
33 上部プレート
33A 第3貫通孔
33X 第1プレート
33Y 第2プレート
33Z 境界位置
34 ポスト
36 ローレットノブ
38 ストッパー
40、40A、40B ホルダー
42 スクレーパー
44 鍔状部
46、46A、46B 容器サポート
50 昇降板
52、52A、52B ガイド
56 シリンダー
M 材料