IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タイキの特許一覧

<図1>
  • 特許-化粧品 図1
  • 特許-化粧品 図2
  • 特許-化粧品 図3
  • 特許-化粧品 図4
  • 特許-化粧品 図5
  • 特許-化粧品 図6
  • 特許-化粧品 図7
  • 特許-化粧品 図8
  • 特許-化粧品 図9
  • 特許-化粧品 図10
  • 特許-化粧品 図11
  • 特許-化粧品 図12
  • 特許-化粧品 図13
  • 特許-化粧品 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】化粧品
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20220214BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20220214BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A45D34/04 535B
A61K8/00
A61Q1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018526395
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2017024509
(87)【国際公開番号】W WO2018008641
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2019-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2016134772
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591254958
【氏名又は名称】株式会社タイキ
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】山中 麗子
(72)【発明者】
【氏名】原 悠佳
(72)【発明者】
【氏名】金 紀愛
(72)【発明者】
【氏名】土居 元子
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】木戸 優華
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-157333(JP,A)
【文献】特開2010-131055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04 535B
A61K 8/00
A61Q 1/00
D04H 1/4374
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元立体構造を有する化粧料保持用弾性体であって、少なくとも密な繊維状表面層および疎な繊維状基材を有し、密な繊維状表面層および疎な繊維状基材がいずれも複合繊維および合成繊維を含有し、前記複合繊維および前記合成繊維が混繊されており、前記複合繊維および前記合成繊維の双方の繊維がウェブシートの厚さ方向に並行するように積層されているウェブシートで形成されており、前記複合繊維が樹脂Aおよび樹脂Bを有し、樹脂Aの溶融温度が樹脂Bの溶融温度よりも低い複合繊維であって、芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維および海島型複合繊維から選ばれた複合繊維であり、前記合成繊維がポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維および酢酸セルロース繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維であり、前記複合繊維と前記合成繊維との質量比(複合繊維/合成繊維)が30/70~80/20であることを特徴とする化粧料保持用弾性体。
【請求項2】
密な繊維状表面層の密度が45~60kg/m3であり、疎な繊維状基材の密度が13~20kg/m3である請求項1に記載の化粧料保持用弾性体。
【請求項3】
密な繊維状表面層の密度を疎な繊維状基材の密度で除した値(圧縮比)が2~4である請求項1または2に記載の化粧料保持用弾性体。
【請求項4】
密な繊維状表面層と疎な繊維状基材とが一体化されているか、または疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層が載置されている請求項1~3のいずれかに記載の化粧料保持用弾性体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の化粧料保持用弾性体および化粧料を有し、化粧料保持用弾性体に化粧料が含有されていることを特徴とする化粧料含有弾性体。
【請求項6】
請求項5に記載の化粧料含有弾性体を有する化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品に関する。さらに詳しくは、本発明は、化粧料を保持するために用いられる化粧料保持用弾性体、当該化粧料保持用弾性体に化粧料を含有する化粧料含有弾性体、当該化粧料含有弾性体を有する化粧品に関する。本発明の化粧料保持用弾性体は、例えば、化粧料を皮膚などに塗布する際に用いられるパフなどの各種化粧品に好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、ファンデーションなどの液状化粧料をコンパクトなどの化粧品容器内に収容されている化粧用品が市販されている。当該化粧品容器は、容器本体および蓋体を有し、容器本体内に液状化粧料を保持するための化粧料保持用弾性体が収納されている。前記化粧料保持用弾性体には、ポリウレタンフォーム、特に化粧料を含浸させたときの安定性、含浸性および化粧料を取る際のクッション性を向上させる観点から、ポリエーテル系ウレタンフォームが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、ポリエーテル系ポリウレタンフォームは、液状化粧料をその内部に取り込むことができる。しかし、当該ポリウレタンフォームに取り込まれた化粧料をパフなどに付着させたとき、使用初期に一度に大量の化粧料がパフに付着することから、当該ポリエーテル系ポリウレタンフォームには、早期に化粧料がなくなるという欠点、化粧料中に含まれる薬剤などによって膨潤するという欠点などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5465357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を使用初期に一度に大量の化粧料が取れることを抑制することができる化粧料保持用弾性体、当該化粧料保持用弾性体に化粧料を含有する化粧料含有弾性体、および当該化粧料含有弾性体を有する化粧品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1) 三次元立体構造を有する化粧料保持用弾性体であって、少なくとも密な繊維状表面層および疎な繊維状基材を有し、密な繊維状表面層および疎な繊維状基材がいずれも複合繊維および合成繊維を含有し、前記複合繊維および前記合成繊維が混繊されており、前記複合繊維および前記合成繊維の双方の繊維がウェブシートの厚さ方向に並行するように積層されているウェブシートで形成されており、前記複合繊維が樹脂Aおよび樹脂Bを有し、樹脂Aの溶融温度が樹脂Bの溶融温度よりも低い複合繊維であって、芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維および海島型複合繊維から選ばれた複合繊維であり、前記合成繊維がポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維および酢酸セルロース繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維であり、前記複合繊維と前記合成繊維との質量比(複合繊維/合成繊維)が30/70~80/20であることを特徴とする化粧料保持用弾性体、
(2) 密な繊維状表面層の密度が45~60kg/m3であり、疎な繊維状基材の密度が13~20kg/m3である前記(1)に記載の化粧料保持用弾性体、
(3) 密な繊維状表面層の密度を疎な繊維状基材の密度で除した値(圧縮比)が2~4である前記(1)または(2)に記載の化粧料保持用弾性体、
(4) 密な繊維状表面層と疎な繊維状基材とが一体化されているか、または疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層が載置されている前記(1)~(3)のいずれかに記載の化粧料保持用弾性体、
(5) 前記(1)~(4)のいずれかに記載の化粧料保持用弾性体および化粧料を有し、化粧料保持用弾性体に化粧料が含有されていることを特徴とする化粧料含有弾性体、および
(6) 前記(5)に記載の化粧料含有弾性体を有する化粧品
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化粧料保持用弾性体は、当該化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制することができる。本発明の化粧料含有弾性体は、前記化粧料保持用弾性体を有するので、当該化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を使用初期に一度に大量の化粧料が取れることを抑制することができる。本発明の化粧品は、前記化粧料含有弾性体を有するので、当該化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を使用初期に一度に大量の化粧料が取れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の化粧料保持用弾性体を製造する際に用いられるウェブシートを製造する方法の一実施態様を示す概略説明図である。
図2】実施例1で得られた化粧料保持用弾性体の厚さ方向の断面における図面代用光学顕微鏡写真である。
図3】実験例において、実施例1で得られた化粧料保持用弾性体を用いて取れ回数(接触回数)と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図4】実験例において、実施例2で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図5】実験例において、実施例3で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図6】実験例において、実施例4で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図7】実験例において、実施例5で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図8】実験例において、実施例6で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図9】実験例において、実施例7で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図10】実験例において、実施例8で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図11】実験例において、実施例9で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図12】実験例において、比較例1で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図13】実験例において、比較例2で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
図14】実験例において、比較例3で得られた化粧料保持用弾性体を用いて接触回数と取れ量との関係を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化粧料保持用弾性体は、前記したように、三次元立体構造を有する化粧料保持用弾性体であって、少なくとも密な繊維状表面層および疎な繊維状基材を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の化粧料保持用弾性体は、前記構成を有することから、当該化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を使用初期に一度に大量の化粧料が取れることを抑制することができる。また、本発明の化粧料保持用弾性体を用いた場合には、1回の使用に適した量の化粧料を使用当初から取ることができることから、化粧料を繰り返して使用することができる回数を向上させることができる。
【0011】
本発明の化粧料保持用弾性体において、密な繊維状表面層および疎な繊維状基材の原料には、複合繊維を用いることができる。
【0012】
複合繊維としては、例えば、芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維、海島型複合繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、構成繊維同士の接触部を効率よく一体化させる観点から、芯鞘型複合繊維が好ましく、加熱によって捲縮を発生させる場合には、サイド・バイ・サイド型複合繊維が好ましい。
【0013】
複合繊維は、複数の樹脂で構成させることができる。代表的な複合繊維として、2種類の樹脂が用いられている複合繊維が挙げられる。例えば、複合繊維に用いられる2種類の樹脂を樹脂Aおよび樹脂Bとした場合、樹脂Aの溶融温度は、樹脂Bの溶融温度よりも低いことが好ましい。樹脂Aの溶融温度は、複合繊維のへたりを防止する観点から、樹脂Bの溶融温度よりも20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。樹脂Aの溶融温度は、複合繊維のへたりを防止し、構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、130~220℃であることが好ましい。
【0014】
なお、樹脂Aの溶融温度および樹脂Bの溶融温度、ならびに後述する合成繊維の溶融温度を明確に測定することができない場合には、当該溶融温度は、軟化温度に置き換えられる。
【0015】
樹脂Aとしては、例えば、ポリエステル、熱可塑性エラストマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0016】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ1,4-ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロラクトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリエステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの熱可塑性ポリエステルのなかでは、耐光性に優れていることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリヘキサメチレンテレフタレートが好ましい。
【0017】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどが挙げられる。これらのなかでは、本発明の化粧料保持用弾性体の耐光性を向上させる観点から、ポリエステル系エラストマーが好ましい。
【0018】
ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系エラストマーなどのポリエステル系エラストマー、ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテル-エステルブロックコポリマーなどが挙げられる。ポリエーテル-エステルブロックコポリマーは、例えば、ジカルボン酸とジオールとポリ(アルキレンオキシド)グリコールとを反応させることによって調製することができる。
【0019】
前記ジカルボン酸としては、例えば、o-フタル酸、m-フタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジオールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
前記ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3-プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、エチレンオキシド-テトラヒドロフランコポリマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、通常、400~5000程度であることが好ましい。
【0022】
ポリエステル系エラストマーの固有粘度は、構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、好ましくは0.8~1.7、より好ましくは0.9~1.5である。
【0023】
ポリウレタン系エラストマーは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを鎖延長剤の存在下で重合させることによって得ることができる。
【0024】
ポリオールとしては、例えば、ジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミドなどの分子量が500~6000程度のポリオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリオールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの分子量が500以下のジイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジイソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、アミノアルコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-ブタンジオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの鎖延長剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、熱可塑性エラストマーとして、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルポリエステルを用いることができる。
【0028】
前記ハードセグメントにおいて、ポリブチレンテレフタレートの原料として用いられる酸成分の一部は、本発明の目的が阻害されない範囲内で、テレフタル酸以外のジカルボン酸、オキシカルボン酸などの酸で置換されていてもよい。また、ポリオキシブチレングリコールの原料として用いられるブチレングリコールの一部は、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の多価アルコールと置換されていてもよい。
【0029】
前記ソフトセグメントにおいて、ポリオキシブチレングリコールの原料として用いられるブチレングリコールの一部は、本発明の目的が阻害されいな範囲内で他の多価アルコールと置換されていてもよい。
【0030】
樹脂Bとしては、例えば、熱可塑性ポリエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0031】
熱可塑性ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ1,4-ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロラクトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの熱可塑性ポリエステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの熱可塑性ポリエステルのなかでは、耐光性に優れていることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリヘキサメチレンテレフタレートが好ましい。
【0032】
樹脂Bの溶融温度は、複合繊維のへたりを防止する観点から、樹脂Aの溶融温度よりも20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。樹脂Bの溶融温度は、複合繊維のへたりを防止し、構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、150~270℃であることが好ましく、160~270℃であることがより好ましい。
【0033】
複合繊維は、耐光性を向上させ、複合繊維のへたりを防止し、構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、樹脂Aがポリエステルまたはポリエステル系エラストマーであり、樹脂Bが熱可塑性ポリエステルであることが好ましい。
【0034】
複合繊維のへたりを防止し、構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、複合繊維の表面積の30~70%が樹脂Aで構成され、複合繊維の表面積の70~30%が樹脂Bで構成されていることが好ましい。
【0035】
複合繊維は、樹脂Aおよび当該樹脂Aよりも溶融温度が高い樹脂Bを含有するが、本発明の目的が阻害されない範囲内で樹脂Aおよび樹脂B以外の樹脂が含まれていてもよい。
【0036】
複合繊維が芯鞘型複合繊維またはサイド・バイ・サイド型複合繊維である場合、当該複合繊維には、通常、樹脂Aおよび樹脂Bの2種類の樹脂が用いられ、海島型複合繊維である場合当該複合繊維には、通常、樹脂Aおよび樹脂Bを含む2~4種類、好ましくは2または3種類、より好ましくは樹脂Aおよび樹脂Bが用いられる。
【0037】
芯鞘型複合繊維においては、構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、芯成分には樹脂Bが使用され、鞘成分には樹脂Aが使用される。
【0038】
芯鞘型複合繊維において、芯成分が複合繊維の表面に露出していないことが好ましい。また、芯成分の繊維径方向の中心と鞘成分の繊維径方向の中心とが一致していることがより好ましい。芯鞘型複合繊維は、同心円状で芯鞘構造が形成されていてもよく、偏心状で芯鞘構造が形成されていてもよい。偏心状で芯鞘構造が形成されている芯鞘構造を有する複合繊維は、加熱によって捲縮を生じることから、捲縮が要求される用途に適している。芯鞘型複合繊維の断面形状としては、例えば、円形、三角形、四角形などの多角形状、楕円、長円などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの形状のなかでは、円形が好ましい。また、芯鞘型複合繊維の芯成分と鞘成分との容量比は、単繊維強度を向上させるとともに構成繊維同士の接触部を樹脂Aによって強固に一体化させる観点から、芯成分:鞘成分(容量比)は、30:70~70:30であることが好ましい。
【0039】
複合繊維が芯鞘型複合繊維である場合、当該芯鞘型複合繊維は、例えば、芯成分および鞘成分をそれぞれ構成する樹脂Bおよび樹脂Aを加熱溶融させ、芯鞘型複合繊維製造用複合紡糸装置に導入し、芯鞘型複合ノズルから押し出し、紡糸することによって製造することができる。なお、樹脂Aおよび樹脂Bを加熱溶融させる際には、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどを用いることができる。また、芯鞘型複合ノズルとして、例えば、千鳥配列または環状配列で口金細孔が配列された芯鞘型複合ノズルを用いることができる。
【0040】
次に、紡糸された芯鞘型複合繊維に例えば冷風を吹き付けるなどにより、当該芯鞘型複合繊維を冷却し、固化させることができる。
【0041】
複合繊維の繊度は、化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を効率よく外部に取り出すことができ、機械的強度に優れた化粧料保持用弾性体を得る観点から、0.5~15デニールであることが好ましく、1~10デニールであることがより好ましい。なお、本発明において、繊維の繊度は、繊維長さ9000mあたりの繊維(フィラメント)の質量(g)を意味する。
【0042】
複合繊維の繊維長さは、化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を効率よく外部に取り出すことができ、機械的強度に優れた化粧料保持用弾性体を得る観点から、20~150mm程度であることが好ましい。
【0043】
複合繊維には、化粧品に使用される化粧料などを防腐する観点から、必要により、例えば、防菌加工、抗菌加工などの加工が施されていてもよい。これらの加工には種々の方法を採用することができ、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。
【0044】
なお、本発明の化粧料保持用弾性体は、構成繊維として複合繊維を含有するものであり、当該構成繊維が複合繊維のみで構成されていてもよく、複合繊維および当該複合繊維以外のその他の繊維で構成されていてもよい。
【0045】
その他の繊維としては、例えば、綿、麻、絹などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、合成繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の繊維のなかでは、内部に取り込まれた化粧料の付着量を徐々に低減させて当該化粧料をパフなどに付着させることができ、機械的強度に優れた化粧料保持用弾性体を得る観点から、合成繊維が好ましい。
【0046】
合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ナイロン6などに代表されるポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、酢酸セルロース繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの繊維は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの合成繊維のなかでは、内部に取り込まれた化粧料の付着量を徐々に低減させて当該化粧料をパフなどに付着させることができ、耐光性に優れた化粧料保持用弾性体を得る観点から、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。
【0047】
合成繊維には、化粧品に使用される化粧料などの防腐の観点から、必要により、例えば、防菌加工、抗菌加工などの加工が施されていてもよい。これらの加工には種々の方法を採用することができ、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。
【0048】
合成繊維の溶融温度は、複合繊維のへたりを防止する観点から、樹脂Aの溶融温度よりも20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。合成繊維の溶融温度は、複合繊維のへたりを防止し、複合繊維と合成繊維との交差部で複合繊維と合成繊維を効率よく熱融着させる観点から、150~270℃であることが好ましく、160~270℃であることがより好ましい。
【0049】
合成繊維の繊度は、化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を効率よく外部に取り出すことができる化粧料保持用弾性体を得る観点から、0.5~15デニールであることが好ましく、1~10デニールであることがより好ましい。
【0050】
合成繊維維の繊維長さは、化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を効率よく外部に取り出すことができ、機械的強度に優れた化粧料保持用弾性体を得る観点から、20~150mm程度であることが好ましい。
【0051】
本発明においては、化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料が当該使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、複合繊維とその他の繊維として合成繊維とが併用されていることが好ましく、複合繊維と合成繊維としてポリエステル繊維またはポリアミド繊維とが併用されていることがより好ましく、複合繊維とポリエステル繊維とが併用されていることがさらに好ましい。
【0052】
複合繊維と合成繊維との質量比(複合繊維/合成繊維)は、複合繊維と合成繊維との交差部で複合繊維と合成繊維とを効率よく熱融着させるとともに、内部に取り込まれた化粧料の付着量を徐々に低減させて当該化粧料をパフなどに付着させることができる化粧料保持用弾性体を得る観点から、10/90~100/0であることが好ましく、30/70~80/20であることがより好ましい。
【0053】
以下に、化粧料保持用弾性体を製造する際に用いられるウェブシートを製造する方法を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施態様のみに限定されるものではない。なお、以下においては、複合繊維と合成繊維とを併用した場合の例が示されているが、複合繊維のみを用いてもよく、複合繊維と合成繊維以外の他の繊維とを併用してもよい。
【0054】
図1は、本発明の化粧料保持用弾性体を製造する際に用いられるウェブシートを製造する方法の一実施態様を示す概略説明図である。
【0055】
図1(a)に示されるように、ウェブ1が積層されている。ウェブ1は、例えば、複合繊維および合成繊維をそれぞれ解繊し、両者を所定の比率となるように秤量し、両者を均一な組成となるように混繊することによって形成させることができる。形成されたウェブの厚さは、使用される化粧料保持用弾性体の大きさに応じて適宜調整することが好ましい。
【0056】
次に、例えば、ウェブ1を2枚の平板間(図示せず)に挟み、必要により、当該ウェブ1を所定の厚さとなるように押圧し、その状態でウェブ1に含まれている複合繊維を構成している樹脂Aの溶融温度以上の温度でかつ複合繊維を構成している樹脂Bおよび合成繊維の溶融温度よりも低い温度でウェブ1を加熱し、樹脂Aを溶融させ、複合繊維および合成繊維を含有する構成繊維同士の接触部を溶融した樹脂Aによって融着一体化させることにより、図1(b)に示されるように、ウェブシート2を得ることができる。その際、必要により、ウェブシート2が所定の密度を有するように成形型内に入れ、前記と同様にしてウェブシート2を加熱し、樹脂Aを溶融させることにより、構成繊維同士の交差部を溶融した樹脂Aで融着させ、当該交差部で樹脂Aからなる塊状(アメーバー状)の融着部を形成させることができる。図1(b)において、前記融着部は、符号Aで示される。
【0057】
前記で得られたウェブシート2は、構成繊維同士の交差部が溶融した樹脂Aによって点状で接合し、接合された繊維同士がウェブシート2の平面方向に揃えられている。
【0058】
次に、前記で得られたウェブシート2は、図1(c)の矢印Bで示されるように垂直方向に裁断される。裁断されたウェブシート2は、図1(d)に示されるように、裁断面が上面または下面となるように配置される。当該ウェブシート2は、厚さ方向においてジャングルジムのような構造体を形成していることから、ウェブシート2の上面からの圧力に対して反発が大きいので、クッション性に優れており、「へたり」に対する抵抗性にも優れているものと考えられる。
【0059】
なお、複合繊維および合成繊維を混合する際、複合繊維および合成繊維の双方の繊維を繊維の長さ方向に並行するように並べて積層させることによってウェブシート2を製造した場合には、当該ウェブシート2を図1(d)の矢印Cに示されるように引き伸ばしたとき、複合繊維および合成繊維の双方の繊維が並行していることを示す縞が現れる。当該縞は、ウェブシート2が前記方法によって製造されたものであることを示す指標となる。
【0060】
次に、前記で得られたウェブシート2を用いることにより、本発明の化粧料保持用弾性体を製造することができる。
【0061】
本発明の化粧料保持用弾性体としては、例えば、
(1)密な繊維状表面層と疎な繊維状基材とが一体化されている化粧料保持用弾性体(以下、化粧料保持用弾性体Aという)、
(2)疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層が載置されている化粧料保持用弾性体(以下、化粧料保持用弾性体Bという)
などが挙げられるが、本発明は、かかる化粧料保持用弾性体のみによって限定されるものではない。
【0062】
前記化粧料保持用弾性体Aは、前記ウェブシートからなる密な繊維状表面層と、前記ウェブシートからなる疎な繊維状基材とを一体化させる方法(以下、方法Aという)によって製造することができ、前記化粧料保持用弾性体Bは、前記ウェブシートからなる疎な繊維状基材上に、前記ウェブシートからなる密な繊維状表面層を載置させる方法(以下、方法Bという)によって製造することができるが、本発明は、かかる方法のみによって限定されるものではない。
【0063】
前記方法Aにおいて、前記ウェブシートを裁断面側から押圧し、圧縮した状態でその押圧面を加熱し、樹脂Aを溶融させた後、冷却し、除圧することにより、密な繊維状表面層と疎な繊維状基材とが一体化されている化粧料保持用弾性体Aを得ることができる。密な繊維状表面層の密度は、加熱温度、押圧時間および当該ウェブシートを押圧するときの押圧力を適宜調整することにより、制御することができる。ここで密な繊維状表面層と疎な繊維状基材との一体化は、疎な繊維状基材の表面に直接密な繊維状表面層を形成させることを意味する。
【0064】
ウェブシートを押圧し、圧縮した状態でその押圧面を加熱する際の加熱温度は、樹脂Aが溶融する温度以上である。当該加熱温度は、他の繊維と接合させ、緻密な表面構造を形成させる観点から、150℃以上であることが好ましい。加熱時間および押圧力は、ウェブシートが所定の厚さを有するように適宜調整することができる。ウェブシートを押圧し、圧縮した状態でその押圧面を加熱する際に、例えば、ウェブシートを樹脂Aの溶融温度付近の温度で数分間加熱することにより、密な繊維状表面層を形成させることができる。また、ウェブシートを高温(樹脂A以外の樹脂の溶融温度以上の温度)に数十秒間加熱することによっても密な繊維状表面層を形成させることができる。
【0065】
化粧料保持用弾性体Aにおいて、密な繊維状表面層の厚さは、弾性体の内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、50μm~5mm程度であることが好ましい。また、疎な繊維状基材の厚さは、内部に取り込まれる化粧料の保持量を増加させる観点から、500μm~10cm程度であることが好ましく、5mm~20mmであることがより好ましい。
【0066】
前記方法Aによれば、例えば、厚さが16mmの疎な繊維状基材を押圧し、圧縮した状態でその押圧面を加熱し、冷却し、除圧することにより、全体の厚さが11mmであり、密な繊維状表面層の厚さが1.5mmである化粧料保持用弾性体Aを製造することができる。
【0067】
化粧料保持用弾性体Aにおいては、当該化粧料保持用弾性体Aの内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、密な繊維状表面層の密度が45~60kg/m3程度であり、疎な繊維状基材の密度が13~20kg/m3程度であることが好ましい。
【0068】
また、密な繊維状表面層の密度を疎な繊維状基材の密度で除した値(以下、「圧縮比」という)は、化粧料保持用弾性体Aの内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、2~4であることが好ましく、2.5~3.5であることがより好ましい。
【0069】
化粧料保持用弾性体Aの密な繊維状表面層の通気抵抗は、化粧料保持用弾性体Aの内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、0.0125~0.0275kPa・s/mであることがましく、0.0145~0.0255kPa・s/mであることがより好ましい。
【0070】
前記方法Bにおいては、前記ウェブシートからなる密な繊維状表面層と、前記ウェブシートからなる疎な繊維状基材とを別々に製造し、疎な繊維状基材の上に密な繊維状表面層を載置することにより、化粧料保持用弾性体Bを得ることができる。
【0071】
化粧料保持用弾性体Bにおいて、密な繊維状表面層の厚さは、弾性体の内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、50μm~5mm程度であることが好ましい。また、疎な繊維状基材の厚さは、内部に取り込まれる化粧料の保持量を増加させる観点から、500μm~10cm程度であることが好ましく、5~20mmであることがより好ましい。
【0072】
前記方法Bによって密な繊維状表面層を製造する際には、前記方法Aで製造するのと同様に、所定の厚さを有する疎な繊維状基材を裁断面側から圧縮した状態でその押圧面を加熱し、冷却し、除圧することにより、密な繊維状表面層を作製することができる。また、疎な繊維状基材を圧縮した状態で両面を加熱しても密な繊維状表面層を作製することができる。例えば、厚さが4~8mmの疎な繊維状基材を用いた場合には、前記方法Bによって厚さが2~4mmの密な繊維状表面層を製造することができる。
【0073】
前記方法Bにおいては、疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層を載置することにより、化粧料保持用弾性体Bを製造することができる。なお、疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層を載置することには、疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層を置くこと、および化粧料の通過を阻害しない程度に疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層を例えば、接着、熱融着などによって接合させることが含まれる。
【0074】
前記方法Bにおいて、疎な繊維状基材を圧縮した状態でその押圧面を加熱する際の加熱温度は、他の繊維と接合し、密な表面構造を形成させる観点から、樹脂Aが溶融する温度以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。なお、加熱時間および押圧する際の圧力は、繊維状基材が所定の厚さを有するように適宜調整することが好ましい。
【0075】
化粧料保持用弾性体Bでは、弾性体の内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、密な繊維状表面層の密度が25~45kg/m3程度であり、疎な繊維状基材の密度が15~22.5kg/m3程度であることが好ましい。
【0076】
また、化粧料保持用弾性体Bにおいて、前記圧縮比は、当該化粧料保持用弾性体Bの内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、1.2~2.5であることが好ましく、1.3~2.0であることがより好ましい。
【0077】
化粧料保持用弾性体Bの密な繊維状表面層の通気抵抗は、化粧料保持用弾性体Bの内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることを抑制する観点から、0.01~0.045kPa・s/mであることが好ましく、0.01~0.04kPa・s/mであることがより好ましい。なお、前記通気抵抗は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0078】
化粧料保持用弾性体Aと化粧料保持用弾性体Bとが密度、通気抵抗などの点で相違しているのは、当該方法が相違していることに起因するものと考えられる。より具体的には、前記方法Aでは、厚さが大きい疎な繊維状基材から疎な繊維状基材の表面および密な繊維状表面層を形成させることによって化粧料保持用弾性体Aが製造されているのに対し、前記方法Bでは、疎な繊維状基材および密な繊維状表面層を用いて化粧料保持用弾性体Bが製造されていることに起因するものと考えられる。なお、いずれの方法によって製造された化粧料保持用弾性体AおよびBにおいても、使用開始時に化粧料が大量に取れることを防止することができる。
【0079】
化粧料保持用弾性体Aおよび化粧料保持用弾性体Bは、いずれも、当該化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を使用初期に一度に大量の化粧料が取れることを抑制することができるが、これらの化粧料保持用弾性体のなかでは、疎な繊維状基材上に密な繊維状表面層が載置されている化粧料保持用弾性体Bが好ましい。
【0080】
化粧料保持用弾性体Bでは、化粧料を疎な繊維状基材に含有させ、当該化粧料を含有する疎な繊維状基材の上に密な繊維状表面層が載置されている場合には、当該化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料が使用初期に一度に大量に取れることをさらに一層抑制することができ、密な繊維状表面層から化粧料を徐々にパフなどによって取ることができるという利点がある。
【0081】
以上のようにして三次元立体構造を有する化粧料保持用弾性体を得ることができる。本発明の化粧料保持用弾性体においては、化粧料保持用弾性体の表面が圧縮加工によって密になっていること、および密な繊維状表面層が適度な厚さを有することから、化粧料の取れ量が抑制され、化粧料が使用開始時に大量に取れることを防止することができるものと考えられる。
【0082】
なお、本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲内で密な繊維状表面層および疎な繊維状基材以外の繊維層、樹脂層、フィルムが含まれていてもよい。
【0083】
また、本発明の化粧料保持用弾性体は、必要により、所望の大きさおよび形状となるように裁断した後に用いることができる。化粧料保持用弾性体の大きさおよび形状は、当該化粧料保持用弾性体の用途によって異なるので一概には決定することができない。したがって、化粧料保持用弾性体の大きさおよび形状は、当該化粧料保持用弾性体の用途に応じて適宜調整することが好ましい。
【0084】
化粧料保持用弾性体の一例として、例えば、平面形状が直径3~15cm程度の円形であり、厚さが0.5~5cm程度の円柱状の化粧料保持用弾性体などが挙げられる。当該化粧料保持用弾性体は、例えば、ファンデーションなどの液状化粧料を保持するための化粧料保持用弾性体として好適に使用することができる。
【0085】
本発明の化粧料保持用弾性体の全体の密度は、当該化粧料保持用弾性体の用途などによって異なることから一概には決定することができないが、通常、6~50kg/m3程度であることが好ましい。
【0086】
なお、本発明の化粧料保持用弾性体は、使用時におけるへたりを防止する観点から、図1(d)に示されるように、複合繊維および合成繊維の双方の繊維がウェブシート2の厚さ方向に並行するように積層させてウェブシート2を作製し、化粧料保持用弾性体の厚さ方向に各繊維が並列していることが好ましい。
【0087】
本発明の化粧料保持用弾性体は、三次元立体構造を有し、少なくとも密な繊維状表面層および疎な繊維状基材を有することから、従来のポリウレタンフォームと対比して、弾性体の内部に取り込まれた化粧料が使用初期から取れる量を抑制することができる。
【0088】
本発明の化粧料保持用弾性体を用いた場合には、疎な繊維状基材に含浸されている化粧料を取る際に当該化粧料保持用弾性体をパフで押圧したときに疎な繊維状基材中に貯留されている化粧料が、押圧されることにより、当該疎な繊維状基材から押し出され、密な繊維状表面層に到達する。密な繊維状表面層は、疎な繊維状基材よりも緻密な構造を有することから吐出量が制限されるので、使用初期に一度に大量の化粧料が採れるという現象が抑制され、使用初期後の使用においてもほぼ使用に適した量の化粧料をパフに取ることができる。
【0089】
また、本発明の化粧料保持用弾性体は、化粧料に含まれている紫外線吸収剤の保持性(非吸着性)にも優れており、さらに繰り返しの使用による「へたり」が小さいことから、耐久性にも優れている。
【0090】
したがって、本発明の化粧料保持用弾性体は、当該化粧料保持用弾性体に化粧料を保持させることにより、化粧料含有弾性体として好適に使用することができ、当該化粧料含有弾性体は、各種化粧品に好適に使用することができる。
【0091】
また、本発明の化粧料保持用弾性体において、当該弾性体の表面が熱処理されている場合には、例えば、その表面が平滑であることから、パフで化粧料を取るときに円滑に化粧料を取ることができ、さらに使用時に繊維くずが発生することを抑制することができる。また、装飾性を向上させる観点から、当該弾性体の表面に模様などを付与することもできる。
【0092】
本発明の化粧料含有弾性体は、前記化粧料保持用弾性体が用いられているので、前記化粧料保持用弾性体に基づく効果が発現される。また、本発明の化粧品は、前記化粧料含有弾性体が用いられているので、前記化粧料含有弾性体に基づく効果が発現される。
【0093】
本発明の化粧料含有弾性体に使用することができる化粧料としては、例えば、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、頬紅、おしろい、眉墨、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングリキッド、洗顔クリーム、洗顔フォーム、マッサージクリーム、コールドクリーム、バニシングクリーム、スキンクリーム、スキンジェル、乳液、化粧水、美容液、各種ローション、日焼け止め料、ボディクリーム、ボディオイル、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリキッド、ヘアトニックなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの化粧料のなかでは、本発明の化粧料含有弾性体は、液状化粧料に対して優れた効果を奏することから、液状化粧料が好ましい。
【0094】
化粧料の粘度は、特に限定されないが、本発明においては、25℃における化粧料の粘度は、500~50000mPa・sであることが好ましく、500~30000mPa・sであることがより好ましく、1000~20000mPa・sであることがさらに好ましい。なお、化粧料の粘度は、BM型粘度計を用いて25℃で測定したときの値である。
【0095】
本発明の化粧料含有弾性体に使用される化粧料の量は、化粧品の種類によって異なるので一概には決定することができないが、例えば、化粧品がリキッドファンデーションである場合、直径が5cmで、厚さが1.5cmである化粧料含有弾性体に、25℃における粘度が6000mPa・sであるリキッドファンデーションを10~20g程度の量で使用することができる。
【実施例
【0096】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
実施例1
芯鞘型複合繊維〔芯成分:ポリエチレンテレフタレート、鞘成分:熱可塑性ポリエチレンテレフタレート、繊度:6デニール〕とポリエステル繊維(樹脂:ポリエチレンテレフタレート、繊度:3デニール)とを70:30の質量比で各繊維が並行となるように混紡したウェブを押圧した状態で鞘成分を加熱溶融させることにより、ウェブシート(密度:18kg/m3)を得た。
【0098】
前記で得られたウェブシートを図1(d)に示される矢印C方向に延伸させたとき、繊維が並行していることに基づく縞が観察されたが、当該矢印C方向と直角方向に延伸させても縞が観察されなかった。
【0099】
次に、前記で得られたウェブシートの平面および側面を光学顕微鏡で観察したところ、繊維密度は、ウェブシートの平面よりも側面のほうが高く、構成繊維同士の接触部で塊状(アメーバー状)の融着部が形成されていることが確認された。
【0100】
次に、前記方法Aにより、前記で得られたウェブシートを所定の形状(直径:47.5mm、厚さ:16mm、密度:18kg/m3)に成形し、当該成形されたウェブシートをプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを150℃に加熱し、前記ウェブシート全体の厚さが11mmとなるように裁断面側から押圧した状態で300秒間加熱することにより、当該ウェブシートの一方表面に厚さが1.5mmの緻密層を形成させ、前記ウェブシートからなる密な繊維状表面層と前記ウェブシートからなる疎な繊維状基材とが一体化した化粧料保持用弾性体を得た。
【0101】
前記ウェブシートの表面層を1.5mmの厚さでスライスした後、当該スライスされた繊維状表面層の密度を測定したところ、当該密度は、46.18kg/mであった。また、前記ウェブシートの疎な繊維状基材を厚さが1.6mmとなるようにスライスした後、当該スライスされた繊維状表面層の密度を測定したところ、当該密度は、17.9kg/mであった。
【0102】
前記密度の測定結果に基づいて圧縮比(密な繊維状表面層の密度/疎な繊維状基材の密度)を求めたところ、当該圧縮比は2.58であった。また、通気抵抗を以下の方法に基づいて測定したところ、当該通気抵抗は、0.0163kPa・s/mであった。
【0103】
(通気抵抗)
通気測定機〔カトーテック(株)製、品番:KES-F8-AP1〕を用い、試験片を縦50mm、横50mmの正方形状に裁断したものの通気抵抗を測定した。
【0104】
前記で得られた化粧料保持用弾性体の側面を光学顕微鏡で観察した。その結果を図2に示す。図2は、前記で得られた化粧料保持用弾性体の厚さ方向の断面における顕微鏡写真である。なお、前記顕微鏡写真のスケールバーは、当該顕微鏡写真の右下部に示されており、その1目盛は100μmである。
【0105】
図2に示された結果から、前記で得られた化粧料保持用弾性体の表面に密な繊維状表面層が形成されており、当該繊維状表面層の下部に疎な繊維状基材が当該繊維状表面層と連続して形成されていることがわかる。
【0106】
実施例2
実施例1で用いたのと同様のウェブシート(直径:47.5mm、厚さ:20mm、密度:18kg/m3)を成形し、前記方法Aによって成形されたウェブシートをプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを150℃に加熱し、前記ウェブシート全体の厚さが11mmとなるように裁断面側から押圧した状態で450秒間加熱することによって当該ウェブシートの一方表面に厚さが1.5mmの緻密層を形成させ、前記ウェブシートからなる密な繊維状表面層と前記ウェブシートからなる疎な繊維状基材とが一体化した化粧料保持用弾性体を得た。
【0107】
前記ウェブシートの表面層を1.5mmの厚さでスライスした後、当該スライスされた繊維状表面層の密度を測定したところ、当該密度は、58.4kg/m3であった。また、前記ウェブシートの疎な繊維状基材を厚さが1.6mmとなるようにスライスした後、当該スライスされた繊維状表面層の密度を測定したところ、当該密度は、18.2kg/mであった。
【0108】
前記密度の測定結果に基づいて圧縮比(密な繊維状表面層の密度/疎な繊維状基材の密度)を求めたところ、当該圧縮比は2.58であった。また、通気抵抗を実施例1と同様にして測定したところ、当該通気抵抗は、0.0163kPa・s/mであった。
【0109】
実施例3
芯鞘型複合繊維〔芯成分:ポリエチレンテレフタレート、鞘成分:熱可塑性ポリエチレンテレフタレート、繊度:6デニール〕とポリエステル繊維(樹脂:ポリエチレンテレフタレート、繊度:3デニール)とを70:30の質量比で各繊維が並行となるように混紡したウェブを押圧した状態で鞘成分を加熱溶融させることにより、ウェブシート(密度:20kg/m3)を得た。このウェブシートの密度は、20.2kg/m3であった。
【0110】
前記で得られたウェブシートを厚さが8mmとなるようにスライスした後、当該スライスされたウェブシートをプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを219℃に加熱し、前記ウェブシートをスライス面側から押圧した状態で72秒間加熱することにより、当該ウェブシートの厚さを4mmとした後、直径47.5mmに打ち抜くことにより、密な繊維状表面層を得た。前記で得られた密な繊維状表面層の密度は、40.7kg/m3であった。前記密度の測定結果に基づいて圧縮比(密な繊維状表面層の密度/疎な繊維状基材の密度)を求めたところ、当該密な繊維状表面層の圧縮比は、2.01であった。また、当該密な繊維状表面層の通気抵抗を実施例1と同様にして測定したところ、当該通気抵抗は、0.0377kPa・s/mであった。
【0111】
芯鞘型複合繊維〔芯成分:ポリエチレンテレフタレート、鞘成分:熱可塑性ポリエチレンテレフタレート、繊度:6デニール〕とポリエステル繊維(樹脂:ポリエチレンテレフタレート、繊度:3デニール)とを70:30の質量比で各繊維が並行となるように混紡したウェブを押圧した状態で鞘成分を加熱溶融させることにより、ウェブシート(密度:18kg/m3)を得た。得られたウェブシートから直径47.5mm、厚さ9mmの疎な繊維状表面層を切り出した。
【0112】
次に、前記で得られた疎な繊維状表面層の上に、前記で得られた密な繊維状表面層を載置することにより、化粧料保持用弾性体を得た。
【0113】
実施例4
実施例3で用いたのと同様のウェブシート(密度:20kg/m3)を厚さが4mmとなるようにスライスした後、当該スライスされたウェブシート(密度:20.2kg/m3)をプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを219℃に加熱し、スライス面側から押圧した状態で72秒間加熱することにより、当該ウェブシートの厚さを3mmとし、直径47.5mmに打ち抜くことにより、密な繊維状表面層を得た。前記で得られた密な繊維状表面層の密度は、27.5kg/m3であった。前記密度の測定結果に基づいて圧縮比(密な繊維状表面層の密度/疎な繊維状基材の密度)を求めたところ、当該密な繊維状表面層の圧縮比は、1.36であった。また、当該密な繊維状表面層の通気抵抗を実施例1と同様にして測定したところ、当該通気抵抗は、0.0117kPa・s/mであった。
【0114】
次に、実施例3と同様にしてウェブシート(直径:47.5mm、厚さ:9mm、密度:18kg/m3)の上に前記で得られた密な繊維状表面層を載置することにより、化粧料保持用弾性体を得た。
【0115】
実施例5
実施例1で用いたのと同様のウェブシート(直径:47.5mm、厚さ:15mm、密度:18kg/m3)を成形し、前記方法Aによって成形されたウェブシートをプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを150℃に加熱し、前記ウェブシート全体の厚さが11mmとなるように裁断面側から押圧した状態で450秒間加熱することによって当該ウェブシートの一方表面に厚さが1.5mmの緻密層を形成させ、前記ウェブシートからなる密な繊維状表面層と前記ウェブシートからなる疎な繊維状基材とが一体化した化粧料保持用弾性体を得た。
【0116】
実施例6
実施例1で用いたのと同様のウェブシート(直径:47.5mm、厚さ:12mm、密度:18kg/m3)を成形し、前記方法Aによって成形されたウェブシートをプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを150℃に加熱し、前記ウェブシート全体の厚さが11mmとなるように裁断面側から押圧した状態で450秒間加熱することによって当該ウェブシートの一方表面に厚さが0.5mmの緻密層を形成させ、前記ウェブシートからなる密な繊維状表面層と前記ウェブシートからなる疎な繊維状基材とが一体化した化粧料保持用弾性体を得た。
【0117】
実施例7
実施例3で用いたのと同様のウェブシート(密度:20kg/m3)を厚さが6mmとなるようにスライスした後、当該スライスされたウェブシート(密度:20.2kg/m3)をプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを220℃に加熱し、スライス面側から押圧した状態で72秒間加熱することにより、当該ウェブシートの厚さを4mmとし、直径47.5mmに打ち抜くことにより、密な繊維状表面層を得た。
【0118】
次に、実施例3と同様にしてウェブシート(直径:47.5mm、厚さ:9mm、密度:18kg/m3)の上に前記で得られた密な繊維状表面層を載置することにより、化粧料保持用弾性体を得た。
【0119】
実施例8
実施例3で用いたのと同様のウェブシート(密度:20kg/m3)を厚さが4mmとなるようにスライスした後、当該スライスされたウェブシート(密度:20.2kg/m3)をプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを220℃に加熱し、スライス面側から押圧した状態で72秒間加熱することにより、当該ウェブシートの厚さを2.8mmとし、直径47.5mmに打ち抜くことにより、密な繊維状表面層を得た。
【0120】
次に、実施例3と同様にしてウェブシート(直径:47.5mm、厚さ:9mm、密度:18kg/m3)の上に前記で得られた密な繊維状表面層を載置することにより、化粧料保持用弾性体を得た。
【0121】
実施例9
実施例3で用いたのと同様のウェブシート(密度:20kg/m3)を厚さが4mmとなるようにスライスした後、当該スライスされたウェブシート(密度:20.2kg/m3)をプレスラミネータ(熱プレス機)に挟み、当該プレスラミネータの一方表面のみを220℃に加熱し、スライス面側から押圧した状態で72秒間加熱することにより、当該ウェブシートの厚さを2mmとし、直径47.5mmに打ち抜くことにより、密な繊維状表面層を得た。
【0122】
次に、実施例3と同様にしてウェブシート(直径:47.5mm、厚さ:9mm、密度:18kg/m3)の上に前記で得られた密な繊維状表面層を載置することにより、化粧料保持用弾性体を得た。
【0123】
比較例1
芯鞘型複合繊維〔芯成分:ポリエチレンテレフタレート、鞘成分:熱可塑性ポリエチレンテレフタレート、繊度:6デニール〕とポリエステル繊維(樹脂:ポリエチレンテレフタレート、繊度:3デニール)とを70:30の質量比で各繊維が並行となるように混紡したウェブを押圧した状態で鞘成分を加熱溶融させることにより、ウェブシート(密度:18kg/m3)を得た。
【0124】
前記で得られたウェブシートを直径47.5mm、厚さ12mmとなるように切り出すことにより、表面層未加工の化粧料保持用弾性体を得た。
【0125】
比較例2
ポリエーテル系ポリレタンフォームからなり、直径47.5mm、厚さ12mmの化粧料保持用弾性体を用意した。
【0126】
比較例3
ニトリルゴム(NBR)スポンジからなり、直径47.5mm、厚さ12mmの化粧料保持用弾性体を用意した。
【0127】
実験例
各実施例または各比較例で得られた化粧料保持用弾性体にそれぞれミネラルウォーターファンデーション〔(株)資生堂製〕15gを含浸させ、1時間静置させることにより、試験体を作製した。前記で得られた試験体に含まれているミネラルウォーターファンデーションを実使用と同様の押力(人力)にてパフで拭き取り、パフで拭き取られたミネラルウォーターファンデーションを不織布に転写することにより、パフに付着したミネラルウォーターファンデーションを十分に拭き取った。この操作を繰り返し、化粧料の取れ量の減少が3回見られなくなった時点で終了した。
【0128】
パフで拭き取られたミネラルウォーターファンデーションの量(以下、取れ量という)は、式:
〔取れ量(g)〕=〔拭き取り前の試験体の質量(g)〕-〔拭き取り後の試験体の質量(g)〕に基づいて求めた。
【0129】
実施例1~9および比較例1~3で得られた化粧料保持用弾性体の取れ回数(接触回数)と取れ量との関係を調べた結果をそれぞれ順に図3~14に示す。なお、「接触回数」とは、ミネラルウォーターファンデーションをパフで拭き取る操作の回数をいう。
【0130】
図3~14に示された結果から、各実施例で得られた化粧料保持用弾性体は、いずれも、化粧料保持用弾性体の内部に取り込まれた化粧料を使用初期に一度に大量の化粧料が取れることを抑制することができるという優れた効果を奏し、1回の使用に適した量の化粧料を使用当初から取ることができることから、使用することができる回数が向上することがわかる。
【0131】
また、各実施例で得られた化粧料保持用弾性体に対して前記操作の繰り返しを終了した時点で、当該化粧料保持用弾性体を目視にて観察したが、いずれの化粧料保持用弾性体においても、へたりが殆ど観察されなかった。このことから、各実施例で得られた化粧料保持用弾性体は、継続使用によるへたりが小さいものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の化粧料保持用弾性体は、化粧料を使用初期に一度に大量の化粧料が取れることを抑制することができるという優れた効果を奏することから、化粧品、なかでも液状メイクアップ化粧品(例えば、液状ファンデーション、チークなど)を含浸させて用いられる化粧品に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 ウェブ
2 ウェブシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14