(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】マスターバッチ、樹脂成形品、マスターバッチの製造方法及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20220214BHJP
【FI】
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
(21)【出願番号】P 2017021643
(22)【出願日】2017-02-08
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2016053973
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593149926
【氏名又は名称】レジノカラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 篤史
(72)【発明者】
【氏名】今村 寿子
(72)【発明者】
【氏名】大仁田 優
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/076112(WO,A1)
【文献】特開2011-122120(JP,A)
【文献】特開平09-052956(JP,A)
【文献】国際公開第01/090242(WO,A1)
【文献】国際公開第01/094472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28
C08J99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含み、
前記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、前記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.05~120重量部含み、
前記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とするマスターバッチ(但し、赤燐及び無水亜鉛化合物を含むものを除く。)。
【請求項2】
前記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、前記無機粒子を0.01~250重量部含むことを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
前記無機粒子100重量部に対し、前記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項4】
前記無機粒子の平均粒子径は0.005~10μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマスターバッチ。
【請求項5】
樹脂成形品であって、
前記樹脂成形品は、樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含み、
前記樹脂成形品は、前記樹脂100重量部に対し、前記無機粒子を0.001~200重量部含み、
前記樹脂成形品は、前記樹脂100重量部に対し、前記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.005~100重量部含み、
前記樹脂は、マスターバッチ由来のマスターバッチ用樹脂を含み、
前記マスターバッチ
用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とする樹脂成形品(但し、赤燐及び無水亜鉛化合物を含むものを除く。)。
【請求項6】
前記樹脂は、更にマスターバッチにより着色された樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形品。
【請求項7】
前記マスターバッチにより着色された樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形品。
【請求項8】
前記マスターバッチは、請求項1~4のいずれかに記載のマスターバッチであることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法であって、
マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練し、樹脂混練物を作製する混練工程を含み、
前記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とするマスターバッチの製造方法。
【請求項10】
前記混練工程では、前記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、前記無機粒子を0.01~250重量部用いることを特徴とする請求項9に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項11】
前記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項12】
前記無機粒子と前記高耐熱性リン酸エステル化合物とを混合し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製する混合工程をさらに含み、
前記混練工程では、前記マスターバッチ用樹脂と、前記無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物とを混練することを特徴とする請求項11に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項13】
前記混練工程では、前記マスターバッチ用樹脂と、前記無機粒子と、前記高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練することを特徴とする請求項11に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項14】
前記混練工程では、130~300℃で混練することを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項15】
前記樹脂混練物を、押出成形してペレット状にする押出成形工程をさらに含むことを特徴とする請求項11~14のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項16】
着色用樹脂に、マスターバッチを加えて樹脂成形品を製造する方法であって、
前記マスターバッチは、請求項1~4のいずれかに記載のマスターバッチであり、
前記マスターバッチに含まれるマスターバッチ用樹脂及び前記着色用樹脂の合計100重量部に対し、前記マスターバッチに含まれる無機粒子が0.001~200重量部となるように、前記着色用樹脂に前記マスターバッチを加えて混練し、成形品原料樹脂を作製する成形品原料樹脂作製工程と、
前記成形品原料樹脂を所定の形状に成形する成形工程とを含み、
前記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項17】
前記成形品原料樹脂作製工程では、前記マスターバッチ用樹脂及び前記着色用樹脂の合計
100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005~100重量部となるように、前記着色用樹脂に前記マスターバッチを加えて混練することを特徴とする請求項16に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項18】
前記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹を含むことを特徴とする請求項16又は17に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項19】
前記着色用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項16~18のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項20】
前記成形品原料樹脂作製工程では、前記着色用樹脂に前記マスターバッチを加えて130~340℃で混練することを特徴とする請求項18又は19に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項21】
前記マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項16又は17に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項22】
前記着色用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項21に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項23】
前記成形工程の後、前記成形品原料樹脂を20~130℃に加熱し、硬化させる熱硬化工程をさらに含むことを特徴とする請求項21又は22に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチ、樹脂成形品、マスターバッチの製造方法及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂は、加工が容易であることから様々な樹脂成形品の原料として用いられている。
例えば、ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性に優れ、また、成形性等に優れることから、電子機器や精密機器の部品、大型機械の部品の樹脂成形品等の製造用原料樹脂として広く用いられている。さらに、透明性にも優れることから一般建築物の窓や自動車の窓等にも用いられている。また、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂も、樹脂成形品の原料にされている。
このような樹脂成形品を装飾する目的で、樹脂を着色したり、樹脂に断熱性等の更なる機能を持たせる目的で、樹脂に機能性物質を加えることが従来より行われている。
【0003】
熱可塑性樹脂は、高温に加熱されて加工される。
通常、樹脂を着色する場合には染料、有機顔料、無機顔料を加えて加工することになるが、染料及び有機顔料は耐熱性及び耐気候性が低く、高温に加熱されると染料及び有機顔料の化学構造が変化し褪色する場合がある。そのため、熱可塑性樹脂の着色には、耐熱性及び耐気候性に優れた無機顔料(無機粒子)を用いられることになる。
また、機能性物質としても耐熱性が高い無機粒子が用いられることになる。
【0004】
しかし、熱可塑性樹脂に対する無機粒子の親和性は低いので、熱可塑性樹脂を加工する際に、熱可塑性樹脂と無機粒子との混合物を加熱して混練するだけでは無機粒子が凝集して充分に分散しないという問題点があった。
このような問題を解決するために、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂における無機粒子の凝集を防止し、無機粒子を分散させるためにエステル系添加剤を用いることが開示されている。
すなわち、特許文献1には、芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料及びエステル系添加剤を含有する着色剤組成物であり、該エステル系添加剤が芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16~26の直鎖状のアルキル鎖である着色剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/027593号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のエステル系添加剤は耐熱性が充分といえず、ポリカーボネート樹脂の加工時に、熱により分解してしまうという問題があった。このような分解が生じると、ポリカーボネート樹脂の加工時の無機粒子の凝集の原因、ポリカーボネート樹脂の成形時のドローダウンや変色の原因、樹脂成形品の強度低下や外観不良やヘイズが生じる原因となり得る。
【0007】
さらに、ポリカーボネート樹脂を加工する場合に限らず、他の熱可塑性樹脂に着色用無機粒子を分散させる場合も、エステル系添加剤の耐熱性は充分といえなかった。
【0008】
また、熱硬化性樹脂を加工する際には、熱硬化性樹脂は加熱されることになる。熱硬化性樹脂に無機粒子を分散させる目的で上記エステル系添加剤する場合、硬化時の熱によりエステル系添加剤が分解し、樹脂成形品の強度低下や外観不良やヘイズが生じる原因となり得る。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、無機粒子が充分に分散し、樹脂成形品に強度低下や外観不良やヘイズが生じにくいマスターバッチ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、分散剤として高耐熱性リン酸エステル化合物を用いることにより、無機粒子が充分に分散し、樹脂成形品に強度低下や外観不良やヘイズが生じにくいマスターバッチとすることができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の第1の態様は、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含むマスターバッチに関する。
なお、本明細書において、「高耐熱性リン酸エステル化合物」とは、窒素雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの300℃到達時点における熱重量減量が5%未満であるリン酸エステル化合物を意味する。
【0012】
本発明のマスターバッチは、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.01~250重量部含むものである。
【0013】
本発明のマスターバッチは、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、上記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.05~120重量部含むものである。
【0014】
本発明のマスターバッチは、好ましくは、上記無機粒子100重量部に対し、上記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上含むものである。
【0015】
本発明のマスターバッチは、好ましくは、上記無機粒子の平均粒子径が0.005~10μmであるものである。
【0016】
本発明のマスターバッチは、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン共重合化合物)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PMMA樹脂(ポリメタクリル酸メチル)及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体化合物)樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むものである。
【0017】
本発明のマスターバッチは、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むものである。
【0018】
本発明の第2の態様は、樹脂成形品であって、上記樹脂成形品は、樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含み、上記樹脂成形品は、上記樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.001~200重量部含む樹脂成形品に関する。
【0019】
本発明の樹脂成形品は、好ましくは、上記樹脂100重量部に対し、上記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.005~100重量部含むものである。
【0020】
本発明の樹脂成形品は、好ましくは、上記樹脂は、マスターバッチ由来のマスターバッチ用樹脂と、上記マスターバッチにより着色された樹脂とを含むものである。
【0021】
本発明の樹脂成形品は、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むものである。
【0022】
本発明の樹脂成形品は、好ましくは、上記マスターバッチにより着色された樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むものである。
【0023】
本発明の樹脂成形品は、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むものである。
【0024】
本発明の樹脂成形品は、好ましくは、上記マスターバッチにより着色された樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むものである。
【0025】
本発明の樹脂成形品は、好ましくは、上記マスターバッチは、上記本発明のマスターバッチであるものである。
【0026】
本発明の第3の態様は、上記本発明のマスターバッチの製造方法であって、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練し、樹脂混練物を作製する混練工程を含むマスターバッチの製造方法に関する。
【0027】
本発明のマスターバッチの製造方法は、好ましくは、上記混練工程では、上記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.01~250重量部用いることである。
【0028】
本発明のマスターバッチの製造方法は、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むものである。
【0029】
本発明のマスターバッチの製造方法は、好ましくは、上記無機粒子と上記高耐熱性リン酸エステル化合物とを混合し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製する混合工程をさらに含み、上記混練工程では、上記マスターバッチ用樹脂と、上記無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物とを混練するものである。
【0030】
本発明のマスターバッチの製造方法は、好ましくは、上記混練工程では、上記マスターバッチ用樹脂と、上記無機粒子と、上記高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練するものである。
【0031】
本発明のマスターバッチの製造方法は、好ましくは、上記混練工程では、130~300℃で混練するものである。
【0032】
本発明のマスターバッチの製造方法は、好ましくは、上記樹脂混練物を、押出成形してペレット状にする押出成形工程をさらに含むものである。
【0033】
本発明のマスターバッチの製造方法は、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むものである。
【0034】
本発明の第4の態様は、着色用樹脂に、マスターバッチを加えて樹脂成形品を製造する方法であって、上記マスターバッチは、上記本発明のマスターバッチであり、上記マスターバッチに含まれるマスターバッチ用樹脂及び上記着色用樹脂の合計100重量部に対し、上記マスターバッチに含まれる無機粒子が0.001~200重量部となるように、上記着色用樹脂に上記マスターバッチを加えて混練し、成形品原料樹脂を作製する成形品原料樹脂作製工程と、上記成形品原料樹脂を所定の形状に成形する成形工程とを含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法に関する。
【0035】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、好ましくは、上記成形品原料樹脂作製工程では、上記マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005~100重量部となるように、上記着色用樹脂に上記マスターバッチを加えて混練するものである。
【0036】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むものである。
【0037】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、好ましくは、上記着色用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むものである。
【0038】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、好ましくは、上記成形品原料樹脂作製工程では、上記着色用樹脂に上記マスターバッチを加えて130~340℃で混練するものである。
【0039】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、好ましくは、上記マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むものである。
【0040】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、好ましくは、上記着色用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むものである。
【0041】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、好ましくは、上記成形工程の後、上記成形品原料樹脂を20~130℃に加熱し、硬化させる熱硬化工程をさらに含むものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明のマスターバッチは、高耐熱性リン酸エステル化合物を含む。高耐熱性リン酸エステル化合物は、リン酸が有する1個以上の水素が所定の有機基で置き換わった構造をしている。高耐熱性リン酸エステル化合物のリン部分は無機粒子になじみやすい一方で、有機基は親油性を有し、樹脂になじみやすい。すなわち、高耐熱性リン酸エステル化合物は、無機粒子及び樹脂の両方に親和性を持つ。そのため、マスターバッチにおいて、充分に無機粒子を樹脂に分散させることができる。
さらに、高耐熱性リン酸エステル化合物は、耐熱性が高いため、樹脂の加工時に130~300℃に加熱されたとしても、熱重量減量が少なく、分解されにくい。それゆえ、無機粒子を樹脂に分散させる機能が失われにくく、また、分解物が樹脂成形品の強度や外観に影響を及ぼすことを防ぐことができる。
従って、本発明のマスターバッチでは、無機粒子が充分に分散されており、本発明のマスターバッチを用いて樹脂成形品を製造する際に、樹脂成形品に強度低下や外観不良やヘイズが生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明のマスターバッチについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0044】
本発明のマスターバッチは、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含むことを特徴とする。
【0045】
高耐熱性リン酸エステル化合物は、リン酸が有する1個以上の水素が所定の有機基で置き換わった構造をしている。高耐熱性リン酸エステル化合物のリン部分は無機粒子になじみやすい一方で、有機基は親油性を有し、樹脂になじみやすい。すなわち、高耐熱性リン酸エステル化合物は、無機粒子及び樹脂の両方に親和性を持つ。そのため、マスターバッチにおいて、充分に無機粒子を樹脂に分散させることができる。
さらに、高耐熱性リン酸エステル化合物は、耐熱性が高いため、樹脂の加工時に130~300℃に加熱されたとしても、熱重量減量が少なく、分解されにくい。それゆえ、無機粒子を樹脂に分散させる機能が失われにくく、また、分解物が樹脂成形品の強度や外観に影響を及ぼすことを防ぐことができる。
従って、本発明のマスターバッチでは、無機粒子が充分に分散され、樹脂成形品に強度低下や外観不良やヘイズが生じにくい。
【0046】
「高耐熱性リン酸エステル化合物」とは、窒素雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの300℃到達時点における熱重量減量が5%未満であるリン酸エステル化合物のことである。
【0047】
(熱重量減量測定試験)
リン酸エステル化合物が、高耐熱性リン酸エステル化合物であるか否かは以下の熱重量減量測定試験において判定される。
まず、リン酸エステル化合物10mgを試料とし、示差熱、熱重量同時測定器(機種名:DTG-60、株式会社島津製作所製)の加熱炉にセットする。
次に、窒素雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱炉を昇温させる。
【0048】
この熱重量減量測定試験において、300℃到達時点における熱重量減量が5%未満である場合、そのリン酸エステル化合物は、「高耐熱性リン酸エステル化合物」である。
なお、300℃到達時点における熱重量減量とは、以下の式(1)により算出される値のことを意味する。
300℃到達時点における熱重量減量={1-(300℃到達時点の試料の重量)/(加熱炉にセット時の試料の重量)}×100・・・(1)
【0049】
また、本発明のマスターバッチにおいて、高耐熱性リン酸エステル化合物は、上記熱重量減量測定試験において、340℃到達時点における熱重量減量が15%未満であることが望ましい。
本発明のマスターバッチは、樹脂成形品の製造に用いられることになる。
樹脂成形品が熱可塑性樹脂からなる場合、マスターバッチを着色用樹脂に均一に分散させるため、これらは、240~340℃で混練される。
また、樹脂成形品が熱硬化性樹脂からなる場合、熱硬化性樹脂を硬化させるため、これらは、20~130℃で加熱される。
マスターバッチに含まれる高耐熱性リン酸エステル化合物の340℃到達時点における熱重量減量が15%未満であると、上記樹脂成形品を製造する際に高耐熱性リン酸エステル化合物が熱を受けたとしても分解しにくい。そのため、製造される樹脂成形品にヘイズ等が生じにくくなり外観が良好となる。
なお、340℃到達時点における熱重量減量とは、以下の式(2)により算出される値のことを意味する。
340℃到達時点における熱重量減量={1-(340℃到達時点の試料の重量)/(加熱炉にセット時の試料の重量)}×100・・・(2)
【0050】
本発明のマスターバッチは、上記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、上記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.05~120重量部含むことが望ましく、0.5~60重量部含むことがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が、0.05重量部以上であると、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子とがなじみやすくなり、充分に無機粒子をマスターバッチ用樹脂に分散させることができる。また、マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造する際に、無機粒子を着色用樹脂に充分に分散させることができる。
マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が、120重量部以下であると、マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造する際に、高耐熱性リン酸エステル化合物が樹脂成形品の透明性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0051】
高耐熱性リン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、芳香族縮合リン酸エステル、リン酸トリフェニル、リン酸トリス(2-エチルへキシル)、リン酸トリクレジル、リン酸トリ-o-クレジル、リン酸トリス(ジメチルフェニル)、リン酸クレジルフェニル、リン酸2-エチルへキシルジフェニル、リン酸トリス(ブトキシエチル)、リン酸トリス(2-クロロエチル)、リン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)、リン酸トリス(2-クロロプロピル)等があげられる。これらの中では、芳香族縮合リン酸エステル及び/又はリン酸トリフェニルであることが望ましい。
また、これら化合物は、単独で用いても併用してもよい。
【0052】
本発明のマスターバッチでは、上記無機粒子100重量部に対し、上記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上含むことが望ましく、0.1~200重量部含むことがより望ましい。
無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上含むと、無機粒子をマスターバッチ用樹脂に均一により分散させることができる。
【0053】
本発明のマスターバッチは、上記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.01~250重量部含むことが望ましく、0.05~120重量部含むことがより望ましい。
本発明のマスターバッチは、高耐熱性リン酸エステル化合物を含むので、このように無機粒子を多く含んだとしても、無機粒子が充分に分散させることができる。
マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、無機粒子が0.01重量部以上であると、無機粒子の量が充分であるので、無機粒子が有する機能が発揮されやすくなる。すなわち、マスターバッチとしてより有効に使用しやすくなる。
マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、無機粒子が250重量部を超えると、無機粒子の量が多すぎ、無機粒子がマスターバッチ用樹脂に充分に分散されにくくなり、無機粒子が凝集し粗大粒子が発生しやすくなる。このような粗大粒子が発生すると、マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造した際に、樹脂成形品の表面に粗大粒子が発生することもあり、樹脂成形品表面の平滑性が失われ外観不良となる。また、樹脂成形品の強度が低下しやすくなり、ヘイズが増大しやすくなる。さらに、無機粒子が持つ機能の効率が低下しやすくなる。
しかし、マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、無機粒子が250重量部以下であると、無機粒子が好適に分散する。その結果、粗大粒子が発生しにくくなり、樹脂成形品の強度が高く、外観も良好となる。
【0054】
本発明のマスターバッチでは、無機粒子の種類は特に限定されないが、例えば、無機顔料となる無機粒子や、熱線吸収性を有する無機粒子等であってもよい。
【0055】
無機顔料となる無機粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、パール顔料等があげられる。
【0056】
無機顔料となる無機粒子がカーボンブラックであると、マスターバッチにおいて、高耐熱性リン酸エステル化合物によりカーボンブラックが充分に分散し、マスターバッチの着色力が向上する。そのため、当該マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造すると、樹脂成形品の漆黒性が良好になる。
【0057】
無機顔料となる無機粒子が酸化チタンであると、マスターバッチにおいて、高耐熱性リン酸エステル化合物により酸化チタンが充分に分散し、マスターバッチの着色力が向上する。そのため、当該マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造すると、樹脂成形品の白色度が良好になる。
【0058】
熱線吸収性を有する無機粒子としては、金属酸化物及びホウ化物があげられる。これらの中では、アンチモン添加酸化錫、インジウム添加酸化錫、六ホウ化ランタンであることが望ましい。
これらは、好適な熱線吸収性を有するので、当該マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造すると、樹脂成形品の日射遮蔽性が向上する。
【0059】
本発明のマスターバッチでは、上記無機粒子の平均粒子径は0.005~10μmであることが望ましく、0.008~1μmであることがより望ましい。
無機粒子の平均粒子径が、0.005μm以上であると、無機粒子の比表面積が大きくなりすぎず、粒子同士が接触しにくくなる。そのため、無機粒子が凝集することを防ぐことができる。
無機粒子の平均粒子径が、10μmを超えると、無機粒子間の隙間容積が大きくなる。そのため、マスターバッチを使用した際に、無機粒子が存在しない樹脂の割合が多くなる。
しかし、無機粒子の平均粒子径が10μm以下であると、無機粒子間の隙間容積が大きくなりにくい。そのため、マスターバッチを使用した際に、無機粒子が存在しない樹脂の割合が少なくなり、充分に無機粒子の機能が発揮される。
【0060】
本発明のマスターバッチでは、マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
これらの熱可塑性樹脂は、樹脂成形品を製造するのに適した樹脂である。
本発明のマスターバッチにおけるマスターバッチ用樹脂がこれらの熱可塑性樹脂であると、これらの熱可塑性樹脂を着色用樹脂として用い、樹脂成形品を製造する際に、マスターバッチが着色用樹脂に混ざりやすくなる。
【0061】
本発明のマスターバッチのマスターバッチ用樹脂が上記熱可塑性樹脂である場合、本発明のマスターバッチでは、下記測定方法により得られた滞留前メルトフローレート及び滞留後メルトフローレートから算出されたマスターバッチのメルトフローレート変動率が50%以下であることが望ましく、1~20%であることがより望ましい。
マスターバッチのメルトフローレート変動率が50%以下であるということは、マスターバッチの使用時にマスターバッチのメルトフローレートが変動しにくいことを意味する。
マスターバッチのメルトフローレート変動率が50%以下である場合、当該マスターバッチを用いた樹脂成形品の成形時に、樹脂成形品の形状が崩れにくくなる。つまり、加工安定性が向上する。
【0062】
(滞留前メルトフローレートの測定方法)
滞留前メルトフローレート(g/10分)の測定は、JIS K 7210付属書B表1に準拠し、メルトインデクサを用い以下の条件で測定する。
なお、マスターバッチ用樹脂がポリカーボネート樹脂である場合の条件は以下の通りである。
シリンダ内の温度:300℃
荷重:1.2kg
シリンダにマスターバッチを充填した後の滞留時間:予熱5分のみ
【0063】
(滞留後メルトフローレートの測定方法)
滞留後メルトフローレート(g/10分)の測定は、JIS K 7210付属書B表1に準拠し、メルトインデクサを用い以下の条件で測定する。
なお、マスターバッチ用樹脂がポリカーボネート樹脂である場合の条件は以下の通りである。
シリンダ内の温度:300℃
荷重:1.2kg
シリンダにマスターバッチを充填した後の滞留時間:予熱5分+滞留5分
【0064】
マスターバッチのメルトフローレート変動率は、得られた滞留前メルトフローレート及び滞留後メルトフローレートの値から、以下の式(3)により算出される。
メルトフローレート変動率={(滞留後メルトフローレート)-(滞留前メルトフローレート)}の絶対値×100/(滞留前メルトフローレート)・・・(3)
【0065】
本発明のマスターバッチでは、マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。
これらの熱硬化性樹脂は、樹脂成形品を製造するのに適した樹脂である。
本発明のマスターバッチにおけるマスターバッチ用樹脂がこれらの熱硬化性樹脂であると、これらの熱硬化性樹脂を着色用樹脂として用い、樹脂成形品を製造する際に、マスターバッチが着色用樹脂に混ざりやすくなる。
【0066】
本発明のマスターバッチは、マスターバッチ用樹脂、無機粒子、及び、高耐熱性リン酸エステル化合物以外に、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤等を含んでいてもよい。
【0067】
以下に、マスターバッチ用樹脂がポリカーボネート樹脂である場合の本発明のマスターバッチについて説明する。
この場合、本発明のマスターバッチは、ポリカーボネート樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含むことになる。
【0068】
高耐熱性リン酸エステル化合物は、リン酸が有する1個以上の水素が所定の有機基で置き換わった構造をしている。高耐熱性リン酸エステル化合物のリン部分は無機粒子になじみやすい一方で、有機基は親油性を有し、ポリカーボネート樹脂になじみやすい。すなわち、高耐熱性リン酸エステル化合物は、無機粒子及びポリカーボネート樹脂の両方に親和性を持つ。そのため、マスターバッチにおいて、充分に無機粒子をポリカーボネート樹脂に分散させることができる。
さらに、高耐熱性リン酸エステル化合物は、耐熱性が高いため、ポリカーボネート樹脂の加工時に240~300℃に加熱されたとしても、熱重量減量が少なく、分解されにくい。それゆえ、無機粒子をポリカーボネート樹脂に分散させる機能が失われにくく、また、分解物が樹脂成形品の強度や外観に影響を及ぼすことを防ぐことができる。
従って、本発明のマスターバッチでは、無機粒子が充分に分散され、樹脂成形品に強度低下や外観不良やヘイズが生じにくい。
【0069】
また、本発明のマスターバッチにおいて、高耐熱性リン酸エステル化合物は、上記熱重量減量測定試験において、340℃到達時点における熱重量減量が15%未満であることが望ましい。
本発明のマスターバッチは、樹脂成形品の製造に用いられることになる。着色用樹脂としてポリカーボネート樹脂を用い樹脂成形品を製造する際、マスターバッチを着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂に均一に分散させるため、これらは、240~340℃で混練される。
マスターバッチに含まれる高耐熱性リン酸エステル化合物の340℃到達時点における熱重量減量が15%未満であると、上記樹脂成形品を製造する際に高耐熱性リン酸エステル化合物が分解しにくい。そのため、製造される樹脂成形品にヘイズ等が生じにくくなり外観が良好となる。
【0070】
本発明のマスターバッチは、上記ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、上記高耐熱性リン酸エステル化合物を0.05~120重量部含むことが望ましく、0.5~60重量部含むことがより望ましい。
ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が、0.05重量部以上であると、ポリカーボネート樹脂と、無機粒子とがなじみやすくなり、充分に無機粒子をポリカーボネート樹脂に分散させることができる。また、マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造する際に、無機粒子を樹脂成形品に分散させることができる。
ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が、120重量部以下であると、相対的なポリカーボネート樹脂の量が充分となり、マスターバッチが充分な強度となる。また、マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造する際に、高耐熱性リン酸エステル化合物が樹脂成形品の透明性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0071】
本発明のマスターバッチは、上記ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.01~250重量部含むことが望ましく、0.05~120重量部含むことがより望ましい。
本発明のマスターバッチは、高耐熱性リン酸エステル化合物を含むので、このように無機粒子を多く含んだとしても、無機粒子が充分に分散させることができる。
ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が0.01重量部以上であると、無機粒子の量が充分であるので、無機粒子が有する機能が発揮されやすくなる。すなわち、マスターバッチとしてより有効に使用しやすくなる。
ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が250重量部を超えると、無機粒子の量が多すぎ、無機粒子がポリカーボネート樹脂に充分に分散されにくくなり、無機粒子が凝集し粗大粒子が発生しやすくなる。このような粗大粒子が発生すると、マスターバッチを用いて樹脂成形品を製造した際に、樹脂成形品の表面に粗大粒子が発生することもあり、樹脂成形品表面の平滑性が失われ外観不良となる。また、樹脂成形品の強度が低下しやすくなり、ヘイズが増大しやすくなる。さらに、無機粒子が持つ機能の効率が低下しやすくなる。
しかし、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が250重量部以下であると、無機粒子が好適に分散する。その結果、ポリカーボネート樹脂の変質が生じにくくなり、樹脂成形品の強度が高く、外観も良好となる。
【0072】
次に、本発明のマスターバッチの製造方法について説明する。
【0073】
本発明のマスターバッチの製造方法は、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練し、樹脂混練物を作製する混練工程を含むことを特徴とする。
【0074】
本発明のマスターバッチの製造方法の混練工程では、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練する。
後述するように、マスターバッチ用樹脂が熱可塑性樹脂である場合、混練は、通常、130~300℃で行われる。そのため、耐熱性の低い分散剤を用いると、分散剤が分解し、充分に無機粒子を分散させにくくなる。また、分散剤が分解すると、製造されるマスターバッチが変色したり、ヘイズが生じる原因となる。また、製造されるマスターバッチに炭化物等の異物が生じやすくなる。また、マスターバッチの成形時にドローダウンしたり、発泡しベントアップしたりするので、加工不良が生じやすくなる。
しかし、本発明のマスターバッチの製造方法では、高耐熱性リン酸エステル化合物を用いる。高耐熱性リン酸エステル化合物は、130~300℃に加熱されたとしても分解されにくく、分散剤として機能する。従って、無機粒子を充分に分散させることができる。
【0075】
上記混練工程では、上記マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.01~250重量部用いることが望ましく、0.05~120重量部用いることがより望ましい。
本発明のマスターバッチの製造方法では、高耐熱性リン酸エステル化合物と共にマスターバッチ用樹脂及び無機粒子を混練するので、このように無機粒子を多く使用したとしても、無機粒子を充分に分散させることができる。
【0076】
また、上記混練工程では、無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合することが望ましく、0.1~200重量部混合することがより望ましい。
無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合すると、無機粒子をマスターバッチ用樹脂に均一に分散させることができる。
【0077】
本発明のマスターバッチの製造方法では、マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。
この場合、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練し、樹脂混練物を作製する混練工程を行うことによりマスターバッチを製造することができる。すなわち、樹脂混練物がマスターバッチとなる。
【0078】
また、本発明のマスターバッチの製造方法では、マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であってもよい。
【0079】
マスターバッチ用樹脂が、上記熱可塑性樹脂である場合、上記混練工程では、130~300で混練することが望ましく、240~300℃で混練することがより望ましく、260~280℃で混練することがさらに望ましい。
130℃以上で混練すると、マスターバッチ用樹脂が充分に柔らかくなり、無機粒子が充分に分散しやすくなる。
300℃を超えて混練すると、マスターバッチ用樹脂が変性したり、高耐熱性リン酸エステル化合物が分解しやすくなる。
しかし、300℃以下で混練すると、マスターバッチ用樹脂が変性することや、高耐熱性リン酸エステル化合物が分解することを防ぐことができる。そのため、製造されるマスターバッチの強度が向上し、ヘイズが生じることを防ぐことができ、マスターバッチの物性を向上させることができる。
【0080】
マスターバッチ用樹脂が熱可塑性樹脂である場合の本発明のマスターバッチの製造方法について、2つの例をあげてより詳しく説明する。
【0081】
(第1のマスターバッチの製造方法)
第1のマスターバッチの製造方法は、(1)無機粒子と高耐熱性リン酸エステル化合物とを混合し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製する混合工程と、(2)マスターバッチ用樹脂と、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物とを混練することにより、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練し、樹脂混練物を作製する混練工程と、(3)樹脂混練物を押出成形してペレット状にする押出成形工程からなる。
【0082】
(1)混合工程
まず、無機粒子と高耐熱性リン酸エステル化合物とを混合し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製する。
混合方法は、乾式混合であっても湿式混合であってもよく、例えば、ロールミル等を用いて混合してもよい。
この際、トルエン等の溶剤を加えてもよい。
【0083】
また、本工程では、無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合することが望ましく、0.1~200重量部混合することがより望ましい。
無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合すると、無機粒子をマスターバッチ用樹脂に均一に分散させることができる。
【0084】
(2)混練工程
次に、マスターバッチ用樹脂に、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を加え混練し、樹脂混練物を作製する。
この際、マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、無機粒子を0.01~250重量部用いることが望ましく、0.05~120重量部用いることがより望ましい。
また、混練工程における温度は130~300℃であることが望ましく、240~300℃であることがより望ましく、260~280℃であることがさらに望ましい。
【0085】
(3)押出成形工程
次に、得られた樹脂混練物を押出成形機で押出成形し、所定の大きさに切断してペレット状にすることによりマスターバッチを製造する。
製造するマスターバッチの大きさは、特に限定されないが、平均長軸径2.0~4.0mm、平均短軸径2.0~4.0mmであることが望ましい。
【0086】
(第2のマスターバッチの製造方法)
第2のマスターバッチの製造方法は、(1)マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練して樹脂混練物を作製する混練工程と、(2)樹脂混練物を押出成形してペレット状にする押出成形工程からなる。
【0087】
(1)混練工程
まず、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練して樹脂混練物を作製する。
混練方法は、特に限定されず、例えば、加圧ニーダーを用いることができる。また、酸化防止剤、滑剤等を加えてもよい。
この際、マスターバッチ用樹脂100重量部に対し、無機粒子を0.01~250重量部用いることが望ましく、0.05~120重量部用いることがより望ましい。
また、無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合することが望ましく、0.1~200重量部混合することがより望ましい。
また、混練工程における温度は130~300℃であることが望ましく、240~300℃であることがより望ましく、260~280℃であることがさらに望ましい。
【0088】
(2)押出成形工程
次に、得られた樹脂混練物を押出成形機で押出成形し、所定の大きさに切断してペレット状にすることによりマスターバッチを製造する。
製造するマスターバッチの大きさは、特に限定されないが、平均長軸径2.0~4.0mm、平均短軸径2.0~4.0mmであることが望ましい。
【0089】
上記第1のマスターバッチの製造方法及び第2のマスターバッチの製造方法で説明したように、本発明のマスターバッチの製造方法では、無機粒子と高耐熱性リン酸エステル化合物とを先に混合してからマスターバッチ用樹脂と混練してもよく、マスターバッチ用樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練してもよい。
【0090】
特に、マスターバッチ用樹脂として熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂を用いる場合について以下に説明する。
【0091】
この場合、上記混練工程では、ポリカーボネート樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練することになる。
ポリカーボネート樹脂を混練する際は、通常、240~300℃に加熱されて加工される。そのため、耐熱性の低い分散剤を用いると、分散剤が分解し、充分に無機粒子を分散させにくくなる。また、分散剤が分解すると、製造されるマスターバッチが変色したり、ヘイズが生じる原因となる。また、製造されるマスターバッチに炭化物等の異物が生じやすくなる。また、マスターバッチの成形時にドローダウンしたり、発泡しベントアップしたりするので、加工不良が生じやすくなる。
しかし、マスターバッチ用樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合、高耐熱性リン酸エステル化合物を用いる。高耐熱性リン酸エステル化合物は、240~300℃に加熱されたとしても分解されにくく、分散剤として機能する。従って、無機粒子を充分に分散させることができる。
【0092】
上記混練工程では、上記ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.01~250重量部用いることが望ましく、0.05~120重量部用いることがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合、高耐熱性リン酸エステル化合物と共にポリカーボネート樹脂及び無機粒子を混練するので、このように無機粒子を多く使用したとしても、無機粒子を充分に分散させることができる。
【0093】
また、上記混練工程では、無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合することが望ましく、0.1~200重量部混合することがより望ましい。
無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合すると、無機粒子をポリカーボネート樹脂に均一に分散させることができる。
【0094】
上記混練工程では、240~300℃で混練することが望ましく、260~280℃で混練することがより望ましい。
240℃以上で混練すると、ポリカーボネート樹脂が充分に柔らかくなり、無機粒子が充分に分散しやすくなる。
300℃を超えて混練すると、ポリカーボネート樹脂が変性したり、高耐熱性リン酸エステル化合物が分解しやすくなる。
しかし、300℃以下で混練すると、ポリカーボネート樹脂が変性することや、高耐熱性リン酸エステル化合物が分解することを防ぐことができる。そのため、製造されるマスターバッチの強度が向上し、ヘイズが生じることを防ぐことができ、マスターバッチの物性を向上させることができる。
【0095】
このようなマスターバッチ用樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合の本発明のマスターバッチの製造方法について、以下に2つの例をあげてより詳しく説明する。
【0096】
(第1のマスターバッチの製造方法)
第1のマスターバッチの製造方法は、(1)無機粒子と高耐熱性リン酸エステル化合物とを混合し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製する混合工程と、(2)ポリカーボネート樹脂と、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物とを混練することにより、ポリカーボネート樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを混練し、樹脂混練物を作製する混練工程と、(3)樹脂混練物を押出成形してペレット状にする押出成形工程からなる。
【0097】
(1)混合工程
まず、無機粒子と高耐熱性リン酸エステル化合物とを混合し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製する。
混合方法は、乾式混合であっても湿式混合であってもよく、例えば、ロールミル等を用いて混合してもよい。
この際、トルエン等の溶剤を加えてもよい。
【0098】
また、本工程では、無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合することが望ましく、0.1~200重量部混合することがより望ましい。
無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合すると、無機粒子をポリカーボネート樹脂に均一に分散させることができる。
【0099】
(2)混練工程
次に、ポリカーボネート樹脂に、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を加え混練し、樹脂混練物を作製する。
この際、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子を0.01~250重量部用いることが望ましく、0.05~120重量部用いることがより望ましい。
また、混練工程における温度は240~300℃であることが望ましく、260~280℃であることがより望ましい。
【0100】
(3)押出成形工程
次に、得られた樹脂混練物を押出成形機で押出成形し、所定の大きさに切断してペレット状にすることによりマスターバッチを製造する。
製造するマスターバッチの大きさは、特に限定されないが、平均長軸径2.0~4.0mm、平均短軸径2.0~4.0mmであることが望ましい。
【0101】
(第2のマスターバッチの製造方法)
第2のマスターバッチの製造方法は、(1)ポリカーボネート樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練して樹脂混練物を作製する混練工程と、(2)樹脂混練物を押出成形してペレット状にする押出成形工程からなる。
【0102】
(1)混練工程
まず、ポリカーボネート樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練して樹脂混練物を作製する。
混練方法は、特に限定されず、例えば、加圧ニーダーを用いることができる。また、酸化防止剤、滑剤等を加えてもよい。
この際、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子を0.01~250重量部用いることが望ましく、0.05~120重量部用いることがより望ましい。
また、無機粒子100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.1重量部以上混合することが望ましく、0.1~200重量部混合することがより望ましい。
また、混練工程における温度は240~300℃であることが望ましく、260~280℃であることがより望ましい。
【0103】
(2)押出成形工程
次に、得られた樹脂混練物を押出成形機で押出成形し、所定の大きさに切断してペレット状にすることによりマスターバッチを製造する。
製造するマスターバッチの大きさは、特に限定されないが、平均長軸径2.0~4.0mm、平均短軸径2.0~4.0mmであることが望ましい。
【0104】
上記第1のマスターバッチの製造方法及び第2のマスターバッチの製造方法で説明したように、本発明のマスターバッチの製造方法では、無機粒子と高耐熱性リン酸エステル化合物とを先に混合してからポリカーボネート樹脂と混練してもよく、ポリカーボネート樹脂と、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを同時に混練してもよい。
【0105】
次に、本発明のマスターバッチの使用方法である本発明の樹脂成形品の製造方法について説明する。
【0106】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、着色用樹脂に、マスターバッチを加えて樹脂成形品を製造する方法であって、上記マスターバッチは、上記本発明のマスターバッチであり、上記マスターバッチに含まれるマスターバッチ用樹脂及び上記着色用樹脂の合計100重量部に対し、上記マスターバッチに含まれる無機粒子が0.001~200重量部となるように、上記着色用樹脂に上記マスターバッチを加えて混練し、成形品原料樹脂を作製する成形品原料樹脂作製工程と、上記成形品原料樹脂を所定の形状に成形する成形工程とを含むことを特徴とする。
【0107】
以下に、本発明の樹脂成形品の製造方法の一例について、着色用樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む場合について説明する。
【0108】
(1)成形品原料樹脂作製工程
まず、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が0.001~200重量部となるように、着色用樹脂に本発明のマスターバッチを加え、着色用樹脂とマスターバッチとの混合物を作製する。
【0109】
この際にマスターバッチでは、マスターバッチ用樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、AS樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂及びABS樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。
【0110】
無機粒子の量は、上記範囲であれば特に限定されないが、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、0.005~100重量部加えることがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が0.001重量部以上であると、無機粒子の量が充分に多くなるので、製造される樹脂成形品において、無機粒子が有する機能が発揮されやすくなる。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が200重量部を超えると、製造される樹脂成形品において、樹脂成分の量が相対的に少なくなる。そのため、製造される樹脂成形品の強度が弱くなりやすく、外観不良が生じやすくなる。しかし、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が200重量部以下であると、製造される樹脂成形品の強度が充分に強く、外観も良好になる。
【0111】
また、本工程では、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005~100重量部となるように、着色用樹脂に本発明のマスターバッチを加えることが望ましく、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.01~50重量部となるように、着色用樹脂に本発明のマスターバッチを加えることがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005重量部以上であると、樹脂と、無機粒子とがなじみやすくなり、充分に無機粒子を樹脂に分散させることができる。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が100重量部以下であると、高耐熱性リン酸エステル化合物が樹脂成形品の透明性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0112】
また、着色用樹脂とマスターバッチとを混合する際には、他に酸化防止剤、滑剤等を加えてもよい。
【0113】
次に、着色用樹脂と本発明のマスターバッチとの混合物を混練して成形品原料樹脂を作製する。
この混練の温度は、130~340℃であることが望ましく、240~340℃であることがより望ましく、270~320℃であることがさらに望ましい。
混練する際の温度が、130℃以上であると、着色用樹脂及びマスターバッチが充分に溶融し、高分子特有の粘度を低下させることができる。そのため、着色用樹脂と、マスターバッチとが充分に混ざり合い、マスターバッチに含まれる無機粒子を、着色用樹脂に均一に分散させることができる。さらに、後の成形工程において、成形不良が生じにくくなる。
混練する際の温度が、340℃を超えると、着色用樹脂や、マスターバッチに含まれる高耐熱性リン酸エステル化合物が分解しやすくなるが、340℃以下であれば、このような分解は生じにくい。そのため、製造される樹脂成形品の強度が充分に強くなり、外観も良好になる。
【0114】
なお、本工程では、あらかじめ着色用樹脂を加熱して溶融させてから、マスターバッチを加え、着色用樹脂とマスターバッチとを混練してもよい。
【0115】
(2)成形工程
次に、成形品原料樹脂を所定の形状に成形する。
成形の方法は特に限定されず、射出成形、押出成形、圧縮成形、回転成形等を採用することができる。
これらの中では、効率的に所望の形状に成形できる射出成形又は押出成形を採用することが望ましい。
【0116】
特に、押出成形により板状、シート状、フィルム状の成形体を得る場合には、Tダイ等の押出機を用いて溶融状態の成形品原料樹脂を押し出し、冷却ロールで冷却しながら引き取る方法がある。
【0117】
なお、上記(1)成形品原料樹脂作製工程及び(2)成形工程は、同じ機械を用いて連続的に行ってもよく、別々の機械を用いて分けて行ってもよい。
また、同じ機械を用いて連続的にこれら工程を行う場合は、着色用樹脂にマスターバッチを加えて混練して成形品原料樹脂を作製しながら、成形を行ってもよい。
また、別々の機械を用いて分けてこれら工程を行う場合には、着色用樹脂とマスターバッチとの混練物を押出成形してコンパウンドとし、そのコンパウンドを、射出成形機を用いて射出成形してもよい。この場合、コンパウンドが成形品原料樹脂である。
【0118】
以上の工程を経て、樹脂成形品を製造することができる。
また、このようにして製造された樹脂成形品は、本発明の樹脂成形品である。
すなわち、上記方法により製造された樹脂成形品は、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含み、上記樹脂成形品は、上記マスターバッチ用樹脂及び上記着色用樹脂由来の樹脂の合計100重量部に対し、上記無機粒子を0.001~200重量部含むことになる。
なお、上記樹脂成形品において、着色用樹脂由来の樹脂を、以下、「マスターバッチにより着色された樹脂」とも記載する。
【0119】
また、本発明の樹脂成形品では、マスターバッチ用樹脂及びマスターバッチにより着色された樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子を0.005~100重量部含むことが望ましい。
さらに、本発明の樹脂成形品では、マスターバッチ用樹脂及びマスターバッチにより着色された樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.005~100重量部含むことが望ましく、0.01~50重量部含むことがより望ましい。
【0120】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子の種類は特に限定されないが、例えば、無機顔料となる無機粒子や、熱線吸収性を有する無機粒子等であってもよい。
【0121】
無機顔料となる無機粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、パール顔料等があげられる。
熱線吸収性を有する無機粒子としては、金属酸化物及びホウ化物があげられる。これらの中では、アンチモン添加酸化錫、インジウム添加酸化錫、六ホウ化ランタンであることが望ましい。
【0122】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子がカーボンブラックである場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、カーボンブラックが0.01~2重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
【0123】
さらに、当該成形品原料樹脂を射出成形し、厚さ1mmのプレート成形品を作製し、顕微鏡を用いて透過観察を行った際に、カーボンブラックの凝集物の数は、5個/2.2mm視野未満であることが望ましく、1~3個/2.2mm視野であることがより望ましい。
なお、「カーボンブラックの凝集物」とは、複数のカーボンブラックの一次粒子が互いに接触し、10μm以上の粗大粒子となっている状態のもののことを意味する。
上記プレート成形品におけるカーボンブラックの凝集物の数が、5個/2.2mm視野未満であると、カーボンブラックの凝集が抑制され、色斑が生じることを抑制することができる。
【0124】
当該プレート成形品の発色濃さ(L*値)は2以下であることが望ましく、1.5以下であることがより望ましい。
当該プレート成形品のL*値が2以下であると、漆黒性がより向上する。
なお、「L*値」とは、JIS Z 8722:2009及びJIS Z 8730:2009の方法に従って測定される値である。
【0125】
このように、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、カーボンブラックが0.01~2重量部含まれる成形品原料樹脂を成形して製造される樹脂成形品は、色斑が生じにくく、漆黒性も充分に高い。
【0126】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子が酸化チタンである場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、酸化チタンが1~10重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
【0127】
さらに、当該成形品原料樹脂を射出成形し、厚さ1mmのプレート成形品を作製した際に、白色度は、85以上であることが望ましく、90~95であることがより望ましい。
当該プレート成形品の白色度が85以上であると、鮮やかな白色となる。
なお、「白色度」とは、JIS Z 8722:2009及びJIS Z 8715:1999の方法に従って測定される白色度の値である。
【0128】
このように、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、酸化チタンが1~10重量部含まれる成形品原料樹脂を成形して製造される樹脂成形品は、白色値が充分に高い。
【0129】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子がアンチモン添加酸化錫又はインジウム添加酸化錫である場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、アンチモン添加酸化錫又はインジウム添加酸化錫が0.01~1重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
また、本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子が六ホウ化ランタンである場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、六ホウ化ランタンが0.001~0.1重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
【0130】
さらに、当該成形品原料樹脂を射出成形し、厚さ2mmのプレート成形品を作製した際に、当該プレート成形品の日射透過率は、60%以下であることが望ましい。
なお、「日射透過率」とは、JIS R 3106:1998の方法に従って測定される値である。
また、当該成形品原料樹脂を射出成形し、厚さ1mmのプレート成形品を作製した際に、当該プレート成形品のヘイズは、0.5~5%であることが望ましい。
なお、「ヘイズ」とは、JIS K 7136:2000の方法に従って測定される値である。
【0131】
このように、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、アンチモン添加酸化錫、インジウム添加酸化錫又は六ホウ化ランタンが上記割合で含まれる成形品原料樹脂を成形して製造される樹脂成形品は、日射透過率が充分に低く、熱線吸収性材料として好適に用いることができる。
【0132】
次に、着色用樹脂として熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂、及び、マスターバッチ用樹脂としてポリカーボネート樹脂を含むマスターバッチを用いる場合の本発明の樹脂成形品の製造方法について、以下により詳しく説明する。
【0133】
この場合、本発明の樹脂成形品の製造方法では、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が0.001~200重量部となるように、上記ポリカーボネート樹脂に上記本発明のマスターバッチを加えて混練し成形品原料樹脂を作製する成形品原料樹脂作製工程と、上記成形品原料樹脂を所定の形状に成形する成形工程とを含むことになる。
以下、各工程について詳述する。
【0134】
(1)成形品原料樹脂作製工程
まず、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が0.001~200重量部となるように、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂に本発明のマスターバッチを加え、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂とマスターバッチとの混合物を作製する。
無機粒子の量は、上記範囲であれば特に限定されないが、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.005~100重量部加えることがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が0.001重量部以上であると、無機粒子の量が充分に多くなるので、製造されるポリカーボネート樹脂成形品において、無機粒子が有する機能が発揮されやすくなる。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が200重量部を超えると、製造されるポリカーボネート樹脂成形品において、ポリカーボネート樹脂成分の量が相対的に少なくなる。そのため、製造されるポリカーボネート樹脂成形品の強度が弱くなりやすく、外観不良が生じやすくなる。しかし、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子が200重量部以下であると、製造されるポリカーボネート樹脂成形品の強度が充分に強く、外観も良好になる。
【0135】
また、本工程では、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005~100重量部となるように、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂に本発明のマスターバッチを加えることが望ましく、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.01~50重量部となるように、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂に本発明のマスターバッチを加えることがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005重量部以上であると、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂と、マスターバッチに含まれる無機粒子とがなじみやすくなり、充分に無機粒子をポリカーボネート樹脂に分散させることができる。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が100重量部以下であると、高耐熱性リン酸エステル化合物がポリカーボネート樹脂成形品の透明性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0136】
また、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂とマスターバッチとを混合する際には、他に酸化防止剤、滑剤等を加えてもよい。
【0137】
次に、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂と本発明のマスターバッチとの混合物を混練して成形品原料樹脂を作製する。
この混練の温度は、240~340℃であることが望ましく、270~320℃であることがより望ましい。
混練する際の温度が、240℃以上であると、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂及びマスターバッチが充分に溶融し、高分子特有の粘度を低下させることができる。そのため、マスターバッチと着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂とが充分に混ざり合い、マスターバッチに含まれる無機粒子を、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂に均一に分散させることができる。さらに、後の成形工程において、成形不良が生じにくくなる。
混練する際の温度が、340℃を超えると、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂や、マスターバッチに含まれる高耐熱性リン酸エステル化合物が分解しやすくなるが、340℃以下であれば、このような分解は生じにくい。そのため、製造されるポリカーボネート樹脂成形品の強度が充分に強くなり、外観も良好になる。
【0138】
なお、本工程では、あらかじめ着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂を加熱して溶融させてから、マスターバッチを加え、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂とマスターバッチとを混練してもよい。
【0139】
(2)成形工程
次に、成形品原料樹脂を所定の形状に成形する。
成形の方法は特に限定されず、射出成形、押出成形、圧縮成形、回転成形等を採用することができる。
これらの中では、効率的に所望の形状に成形できる射出成形又は押出成形を採用することが望ましい。
【0140】
特に、押出成形により板状、シート状、フィルム状の成形体を得る場合には、Tダイ等の押出機を用いて溶融状態の成形品原料樹脂を押し出し、冷却ロールで冷却しながら引き取る方法がある。
【0141】
なお、上記(1)成形品原料樹脂作製工程及び(2)成形工程は、同じ機械を用いて連続的に行ってもよく、別々の機械を用いて分けて行ってもよい。
また、同じ機械を用いて連続的にこれら工程を行う場合は、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂にマスターバッチを加えて混練して成形品原料樹脂を作製しながら、成形を行ってもよい。
また、別々の機械を用いて分けてこれら工程を行う場合には、着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂とマスターバッチとの混練物を押出成形してコンパウンドとし、そのコンパウンドを、射出成形機を用いて射出成形してもよい。この場合、コンパウンドが成形品原料樹脂である。
【0142】
以上の工程を経て、ポリカーボネート樹脂成形品を製造することができる。
また、このようにして製造されたポリカーボネート樹脂成形品は、本発明の樹脂成形品である。
すなわち、上記方法により製造された樹脂成形品は、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含み、上記樹脂成形品は、上記ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、上記無機粒子を0.001~200重量部含むことになる。
また、本発明の樹脂成形品では、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、無機粒子を0.005~100重量部含むことが望ましい。
さらに、本発明の樹脂成形品では、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.005~100重量部含むことが望ましく、0.01~50重量部含むことがより望ましい。
【0143】
次に、本発明の樹脂成形品の製造方法の一例について、着色用樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含む場合について説明する。
【0144】
(1)成形品原料樹脂作製工程
まず、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が0.001~200重量部となるように、着色用樹脂に本発明のマスターバッチを加え、着色用樹脂とマスターバッチとの混合物を作製する。
【0145】
この際にマスターバッチでは、マスターバッチ用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むことが望ましい。
【0146】
無機粒子の量は、上記範囲であれば特に限定されないが、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、0.005~100重量部加えることがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が0.001重量部以上であると、無機粒子の量が充分に多くなるので、製造される樹脂成形品において、無機粒子が有する機能が発揮されやすくなる。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が200重量部を超えると、製造される樹脂成形品において、樹脂成分の量が相対的に少なくなる。そのため、製造される樹脂成形品の強度が弱くなりやすく、外観不良が生じやすくなる。しかし、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子が200重量部以下であると、製造される樹脂成形品の強度が充分に強く、外観も良好になる。
【0147】
また、本工程では、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005~100重量部となるように、着色用樹脂に本発明のマスターバッチを加えることが望ましく、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.01~50重量部となるように、着色用樹脂に本発明のマスターバッチを加えることがより望ましい。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が0.005重量部以上であると、樹脂と、無機粒子とがなじみやすくなり、充分に無機粒子を樹脂に分散させることができる。
マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物が100重量部以下であると、高耐熱性リン酸エステル化合物が樹脂成形品の透明性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0148】
また、着色用樹脂とマスターバッチとを混合する際には、他に酸化防止剤、滑剤、硬化剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、無機繊維補強材、有機繊維補強材、熱可塑性樹脂、消泡剤等を加えてもよい。
硬化剤としては、メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等を用いることができる。
硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルト、オクトエ酸コバルト、アセト酢酸エチルエステル等を用いることができる。
【0149】
(2)成形工程
次に、成形品原料樹脂を所定の形状に成形する。
成形品原料樹脂の成形の方法は特に限定されず、熱硬化性樹脂を成形する際の通常の方法を採用することができる。
【0150】
(3)硬化工程
上記成形工程の後、成形品原料樹脂を20~130℃に加熱し硬化させる。
加熱温度は、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の熱硬化温度に合わせて調節することが望ましい。
【0151】
以上の工程を経て、樹脂成形品を製造することができる。
また、このようにして製造された樹脂成形品は、本発明の樹脂成形品である。
すなわち、上記方法により製造された樹脂成形品は、無機粒子と、高耐熱性リン酸エステル化合物とを含み、上記樹脂成形品は、上記マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、上記無機粒子を0.001~200重量部含むことになる。
【0152】
また、本発明の樹脂成形品では、マスターバッチ用樹脂及びマスターバッチにより着色された樹脂の合計100重量部に対し、無機粒子を0.005~100重量部含むことが望ましい。
さらに、本発明の樹脂成形品では、マスターバッチ用樹脂及びマスターバッチにより着色された樹脂の合計100重量部に対し、高耐熱性リン酸エステル化合物を0.005~100重量部含むことが望ましく、0.01~50重量部含むことがより望ましい。
【0153】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子の種類は特に限定されないが、例えば、無機顔料となる無機粒子や、熱線吸収性を有する無機粒子等であってもよい。
【0154】
無機顔料となる無機粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、パール顔料等があげられる。
熱線吸収性を有する無機粒子としては、金属酸化物及びホウ化物があげられる。これらの中では、アンチモン添加酸化錫、インジウム添加酸化錫、六ホウ化ランタンであることが望ましい。
【0155】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子がカーボンブラックである場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、カーボンブラックが0.01~2重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
【0156】
さらに、当該成形品原料樹脂を成形し、厚さ1mmのプレート成形品を作製し、顕微鏡を用いて透過観察を行った際に、カーボンブラックの凝集物の数は、5個/2.2mm視野未満であることが望ましく、1~3個/2.2mm視野であることがより望ましい。
なお、「カーボンブラックの凝集物」とは、複数のカーボンブラックの一次粒子が互いに接触し、10μm以上の粗大粒子となっている状態のもののことを意味する。
上記プレート成形品におけるカーボンブラックの凝集物の数が、5個/2.2mm視野未満であると、カーボンブラックの凝集が抑制され、色斑が生じることを抑制することができる。
【0157】
当該プレート成形品の発色濃さ(L*値)は2以下であることが望ましく、1.5以下であることがより望ましい。
当該プレート成形品のL*値が2以下であると、漆黒性がより向上する。
なお、「L*値」とは、JIS Z 8722:2009及びJIS Z 8730:2009の方法に従って測定される値である。
【0158】
このように、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、カーボンブラックが0.01~2重量部含まれる成形品原料樹脂を成形して製造される樹脂成形品は、色斑が生じにくく、漆黒性も充分に高い。
【0159】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子が酸化チタンである場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、酸化チタンが1~10重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
【0160】
さらに、当該成形品原料樹脂を成形し、厚さ1mmのプレート成形品を作製した際に、白色度は、85以上であることが望ましく、90~95であることがより望ましい。
当該プレート成形品の白色度が85以上であると、鮮やかな白色となる。
なお、「白色度」とは、JIS Z 8722:2009及びJIS Z 8715:1999の方法に従って測定される白色度の値である。
【0161】
このように、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、酸化チタンが1~10重量部含まれる成形品原料樹脂を成形して製造される樹脂成形品は、白色値が充分に高い。
【0162】
本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子がアンチモン添加酸化錫又はインジウム添加酸化錫である場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、アンチモン添加酸化錫又はインジウム添加酸化錫が0.01~1重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
また、本発明の樹脂成形品の製造方法で用いるマスターバッチに含まれる無機粒子が六ホウ化ランタンである場合、上記(1)成形品原料樹脂作製工程において、成形品原料樹脂中のマスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、六ホウ化ランタンが0.001~0.1重量部含まれるように、着色用樹脂とマスターバッチとを混練することが望ましい。
【0163】
さらに、当該成形品原料樹脂を成形し、厚さ2mmのプレート成形品を作製した際に、当該プレート成形品の日射透過率は、60%以下であることが望ましい。
なお、「日射透過率」とは、JIS R 3106:1998の方法に従って測定される値である。
また、当該成形品原料樹脂を射出成形し、厚さ1mmのプレート成形品を作製した際に、当該プレート成形品のヘイズは、0.5~5%であることが望ましい。
なお、「ヘイズ」とは、JIS K 7136:2000の方法に従って測定される値である。
【0164】
このように、マスターバッチ用樹脂及び着色用樹脂の合計100重量部に対し、アンチモン添加酸化錫、インジウム添加酸化錫又は六ホウ化ランタンが上記割合で含まれる成形品原料樹脂を成形して製造される樹脂成形品は、日射透過率が充分に低く、熱線吸収性材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0165】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0166】
(分散剤の熱重量減量測定試験)
芳香族縮合リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、製品名:PX-200)、リン酸トリフェニル(大八化学工業株式会社製、製品名:TPP)、リン酸トリメチル(大八化学工業株式会社製、製品名:TMP)、アクリル系分散剤(ALANA社製、製品名:DISPER BYK-116)、及び、ポリエステル系分散剤(日本ルーブリゾール株式会社製、製品名:ソルスパース32000)を、それぞれ10mgを準備した。
その後、各分散剤を、示差熱、熱重量同時測定器(機種名:DTG-60、株式会社島津製作所製)の加熱炉にセットした。
次に、窒素雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱炉を昇温させ、300℃到達時点及び340℃到達時点の各分散剤の重量を測定し、各分散剤の300℃到達時点、及び、340℃到達時点の熱重量減量を算出した。
結果を表1に示す。
【0167】
【0168】
表1に示すように、芳香族縮合リン酸エステル及びリン酸トリフェニルは、300℃到達時点の熱重量減量が5.0%未満であり、これら分散剤は、高耐熱性リン酸エステル化合物と判別された。
さらに、これら分散剤は、340℃到達時点の熱重量減量が15.0%未満であった。
【0169】
(カーボンブラックを含むマスターバッチの製造)
(実施例1-1)
(1)混合工程
無機粒子としてカーボンブラックを10重量部及び高耐熱性リン酸エステル化合物として芳香族縮合リン酸エステルを15重量部準備し、これらをロールミルにより混合・分散し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製した。
【0170】
(2)混練工程
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名:ユーピロンS3000)を100重量部準備し、これに無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を25重量部加え、押出成形機を用いて280℃で混練し、樹脂混練物を作製した。
【0171】
(3)押出成形工程
樹脂混練物を押出成形し、平均長軸径3.0mm、平均短軸径3.0mmの実施例1-1に係るマスターバッチを製造した。
【0172】
(実施例1-2)
(1)混練工程
ポリカーボネート樹脂を100重量部、無機粒子としてカーボンブラックを95重量部、及び、高耐熱性リン酸エステル化合物として芳香族縮合リン酸エステルを42重量部準備し、これらを加圧ニーダーにより分散加工し、押出成形機を用いて280℃で混練し、樹脂混練物を作製した。
【0173】
(2)押出成形工程
樹脂混練物を押出成形し、平均長軸径3.0mm、平均短軸径3.0mmの実施例1-2に係るマスターバッチを製造した。
【0174】
(比較例1-1)
(1)混練工程
ポリカーボネート樹脂を100重量部、及び、無機粒子としてカーボンブラックを67重量部準備し、これらを加圧ニーダーにより分散加工し、押出成形機を用いて280℃で混練し、樹脂混練物を作製した。
【0175】
(2)押出成形工程
樹脂混練物を押出成形し、平均長軸径3.0mm、平均短軸径3.0mmの比較例1-1に係るマスターバッチを製造した。
【0176】
(比較例1-2)
上記実施例1-1の(1)混合工程において、芳香族縮合リン酸エステルの代わりにリン酸トリメチルを用いた以外は、実施例1-1と同様にして比較例1-2に係るマスターバッチを製造した。
【0177】
(比較例1-3)
上記実施例1-1の(1)混合工程において、芳香族縮合リン酸エステルの代わりにアクリル系分散剤(ALANA社製、製品名:DISPER BYK-116)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして比較例1-3に係るマスターバッチを製造した。
【0178】
(比較例1-4)
上記実施例1-2の(1)混練工程において、芳香族縮合リン酸エステルの代わりにアクリル系分散剤(ALANA社製、製品名:DISPER BYK-116)を用いた以外は、実施例1-2と同様にして比較例1-4に係るマスターバッチを製造した。
【0179】
(メルトフローレート変動率の測定)
実施例1-1、比較例1-2及び比較例1-3に係るマスターバッチについて、JIS K 7210付属書B表1に準拠し、メルトインデクサ(東洋精機製作所社製)を用い以下の条件で、滞留前メルトフローレート及び滞留後メルトフローレートを測定し、メルトフローレート変動率を算出した。結果を表2に示す。
【0180】
(滞留前メルトフローレートの測定条件)
シリンダ内の温度:300℃
荷重:1.2kg
シリンダにマスターバッチを充填した後の滞留時間:予熱5分のみ
【0181】
(滞留後メルトフローレートの測定条件)
シリンダ内の温度:300℃
荷重:1.2kg
シリンダにマスターバッチを充填した後の滞留時間:予熱5分+滞留5分
【0182】
【0183】
(カーボンブラックを含む樹脂成形品の製造1)
(実施例2-1)
(1)成形品原料樹脂作製工程
マスターバッチ由来のポリカーボネート樹脂及び着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名:ユーピロンS3000)の合計100重量部に対し、無機粒子が0.02重量部となるように、ポリカーボネート樹脂と実施例1-1に係るマスターバッチとを混合した。
次に、ポリカーボネート樹脂とマスターバッチとの混合物を、射出成形機を用いて300℃で混練し、成形品原料樹脂を作製した。
【0184】
(2)成形工程
次に、成形品原料樹脂を、長さ×幅×厚さ=50mm×60mm×1mmとなるように射出成形し、実施例2-1に係るプレート成形品を製造した。
【0185】
(実施例2-2)及び(比較例2-1)~(比較例2-4)
上記実施例2-1の(1)成形品原料樹脂作製工程において、実施例1-1に係るマスターバッチを、表3に示すマスターバッチに変更した以外は、実施例2-1と同様に実施例2-2及び比較例2-1~比較例2-4に係るプレート成形品を製造した。
【0186】
(凝集物の数の測定)
実施例2-1及び実施例2-2、並びに、比較例2-1~比較例2-4に係るプレート成形品について、顕微鏡(オリンパス製実体顕微鏡BX60)を用いて透過観察を行い、2.2mm視野におけるカーボンブラックの凝集物の数を測定した。
測定方法は以下の通りである。結果を表3に示す。
【0187】
【0188】
実施例2-1及び実施例2-2に係るプレート成形品では、カーボンブラックの凝集物が5個/2.2mm視野未満であり、色斑が確認されなかった。一方、比較例2-1~比較例2-4に係るプレート成形品では、カーボンブラックの凝集物が5個/2.2mm視野以上であり、色斑が生じていた。
【0189】
(カーボンブラックを含む樹脂成形品の製造2)
(実施例3-1)及び(実施例3-2)、並びに、(比較例3-1)~(比較例3-4)
上記実施例2-1の(1)成形品原料樹脂作製工程において、実施例1-1に係るマスターバッチを表4に示すマスターバッチに変更し、上記実施例2-1に係るプレート成形品中のポリカーボネート樹脂と無機粒子との割合を表4に示す割合とした以外は、実施例2-1と同様に実施例3-1及び実施例3-2、並びに、比較例3-1~比較例3-4に係るプレート成形品を製造した。
【0190】
(L*値の測定)
実施例3-1及び実施例3-2、並びに、比較例3-1~比較例3-4に係るプレート成形品について分光測色器(機種名:CM-3700d、製造元:コニカミノルタ株式会社製)を用いて、L*値を測定した。測定条件はJIS Z 8722:2009及びJIS Z 8729:2013の方法に従った。結果を表4に示す。
【0191】
【0192】
実施例3-1及び実施例3-2に係るプレート成形品では、L*値が2以下であり、漆黒性が高かった。一方、比較例3-1~比較例3-4に係るプレート成形品では、L*値が2を超え、漆黒性が不充分であった。
【0193】
(熱線吸収性を有する無機粒子を含むマスターバッチの製造1)
(実施例4-1)
(1)混合工程
無機粒子としてアンチモン添加酸化錫を10重量部及び高耐熱性リン酸エステル化合物として芳香族縮合リン酸エステルを15重量部準備し、これらをロールミルにより混合・分散し、無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製した。
【0194】
(2)混練工程
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名:ユーピロンS3000)を100重量部準備し、これに無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を25重量部加え、押出成形機を用いて280℃で混練し、樹脂混練物を作製した。
【0195】
(3)押出成形工程
樹脂混練物を押出成形し、平均長軸径3.0mm、平均短軸径3.0mmの実施例4-1に係るマスターバッチを製造した。
【0196】
(実施例4-2)
(1)混練工程
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名:ユーピロンS3000)を100重量部、無機粒子としてアンチモン添加酸化錫を95重量部、及び、高耐熱性リン酸エステル化合物として芳香族縮合リン酸エステルを42重量部準備し、これらを加圧ニーダーにより分散加工し、押出成形機を用いて280℃で混練し、樹脂混練物を作製した。
【0197】
(2)押出成形工程
樹脂混練物を押出成形し、平均長軸径3.0mm、平均短軸径3.0mmの実施例4-2に係るマスターバッチを製造した。
【0198】
(実施例4-3)
(1)混合工程
無機粒子として六ホウ化ランタンを15重量部及び高耐熱性リン酸エステル化合物としてリン酸トリフェニルを5重量部、トルエンを80重量部準備し、ビーズミルにより混合・分散した。その後、40℃で加熱することによりトルエンを揮発させ無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製した。
【0199】
(2)混練工程
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名:ユーピロンS3000)を100重量部準備し、これに無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を2重量部加え、押出成形機を用いて280℃で混練し、樹脂混練物を作製した。
【0200】
(3)押出成形工程
樹脂混練物を押出成形し、平均長軸径3.0mm、平均短軸径3.0mmの実施例4-3に係るマスターバッチを製造した。
【0201】
(比較例4-1)
上記実施例4-1の(1)混合工程において、芳香族縮合リン酸エステルの代わりにアクリル系分散剤(ALANA社製、製品名:DISPER BYK-116)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして比較例4-1に係るマスターバッチを製造した。
【0202】
(比較例4-2)
上記実施例4-2の(1)混練工程において、芳香族縮合リン酸エステルの代わりにアクリル系分散剤(ALANA社製、製品名:DISPER BYK-116)を用いた以外は、実施例4-2と同様にして比較例4-2に係るマスターバッチを製造した。
【0203】
(比較例4-3)
上記実施例4-3の(1)混合工程において、リン酸トリフェニルの代わりにアクリル系分散剤(ALANA社製、製品名:DISPER BYK-116)を用いた以外は、実施例3-3と同様にして比較例4-3に係るマスターバッチを製造した。
【0204】
(比較例4-4)
上記実施例4-3の(1)混合工程において、リン酸トリフェニルの代わりにポリエステル系分散剤(日本ルーブリゾール株式会社製、製品名:ソルスパース32000)を用いた以外は、実施例4-3と同様にして比較例4-4に係るマスターバッチを製造した。
【0205】
(メルトフローレート変動率の測定)
実施例4-1及び実施例4-3、並びに、比較例4-1、比較例4-3及び比較例4-4に係るマスターバッチについて、JIS K 7210付属書B表1に準拠し、メルトインデクサ(東洋精機製作所社製)を用い以下の条件で、滞留前メルトフローレート及び滞留後メルトフローレートを測定し、メルトフローレート変動率を算出した。結果を表5に示す。
【0206】
(滞留前メルトフローレートの測定条件)
シリンダ内の温度:300℃
荷重:1.2kg
シリンダにマスターバッチを充填した後の滞留時間:予熱5分のみ
【0207】
(滞留後メルトフローレートの測定条件)
シリンダ内の温度:300℃
荷重:1.2kg
シリンダにマスターバッチを充填した後の滞留時間:予熱5分+滞留5分
【0208】
【0209】
(熱線吸収性を有する無機粒子を含む樹脂成形品の製造1)
(実施例5-1)
(1)成形品原料樹脂作製工程
マスターバッチ由来のポリカーボネート樹脂及び着色用樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名:ユーピロンS3000)の合計100重量部に対し、無機粒子が0.2重量部となるように、ポリカーボネート樹脂と実施例4-1に係るマスターバッチとを混合した。
次に、ポリカーボネート樹脂とマスターバッチとの混合物を、射出成形機を用いて300℃で混練し、成形品原料樹脂を作製した。
【0210】
(2)成形工程
次に、成形品原料樹脂を射出成形し、長さ×幅×厚さ=50mm×60mm×1mmのプレート成型品、及び、長さ×幅×厚さ=50mm×60mm×2mmのプレート成形品を製造した。
これら2種類の厚さのプレート成形品は、実施例5-1に係るプレート成形品である。
【0211】
(実施例5-2)及び(実施例5-3)並びに(比較例5-1)~(比較例5-4)
上記実施例5-1の(1)成形品原料樹脂作製工程において、実施例4-1に係るマスターバッチを、表6に示すマスターバッチに変更し、上記実施例5-1に係るプレート成形品中のポリカーボネート樹脂と無機粒子との割合を表6に示す割合とした以外は、実施例5-1と同様に2種類の厚さの実施例5-2及び実施例5-3、並びに、比較例5-1~比較例5-4に係るプレート成形品を製造した。
【0212】
(日射透過率の測定)
実施例5-1~実施例5-3、及び、比較例5-1~比較例5-4に係るプレート成形品の内、厚さが2mmのプレート成形品を用いて、日射透過率を測定した。測定条件は、JIS R 3106:1998の方法に従った。結果を表6に示す。
【0213】
(ヘイズの測定)
実施例5-1~実施例5-3、及び、比較例5-1~比較例5-4に係るプレート成形品の内、厚さが1mmのプレート成形品を用いて、ヘイズを測定した。測定条件は、JIS K 7136:2000の方法に従った。結果を表6に示す。
【0214】
【0215】
実施例5-1~実施例5-3に係るプレート成形品では、日射透過率が60%以下であり、日射遮蔽性が良好であった。一方、比較例5-1~比較例5-4に係るプレート成形品では、日射透過率が60%を超えており、日射遮蔽性が不充分であった。
実施例5-1~実施例5-3に係るプレート成形品では、ヘイズが0.5~5%の範囲に入っており良好であった。一方、比較例5-1~比較例5-4に係るプレート成形品では、ヘイズが5%を超えており不充分であった。
【0216】
(熱線吸収性を有する無機粒子を含むマスターバッチの製造2)
(実施例6-1)
(1)混練工程
無機粒子としてアンチモン添加酸化錫を10重量部、高耐熱性リン酸エステル化合物として芳香族縮合リン酸エステルを15重量部、及び、不飽和ポリエステル樹脂(昭和電工株式会社製、製品名:リゴラック150HRBQTNW)を100重量部準備し、これらをロールミルにより混合・分散し、ペースト状の樹脂混練物を作製した。この樹脂混練物は、実施例6-1に係るマスターバッチである。
【0217】
(実施例6-2)
(1)混合工程
無機粒子として六ホウ化ランタンを15重量部及び高耐熱性リン酸エステル化合物としてリン酸トリフェニルを5重量部、トルエンを80重量部準備し、ビーズミルにより混合・分散し無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を作製した。
【0218】
(2)混練工程
不飽和ポリエステル樹脂(昭和電工株式会社製、製品名:リゴラック150HRBQTNW)を100重量部準備し、これに無機粒子-高耐熱性リン酸エステル化合物混合物を10重量部加え、ディスパーにより均一に混練し、ペースト状の樹脂混練物を作製した。この樹脂混練物は、実施例6-2に係るマスターバッチである。
【0219】
(比較例6-1)
上記実施例6-1の(1)混練工程において、芳香族縮合リン酸エステルの代わりにポリエステル系分散剤(日本ルーブリゾール株式会社製、製品名:ソルスパース32000)を用いた以外は、実施例6-1と同様にして比較例6-1に係るマスターバッチを製造した。
【0220】
(比較例6-2)
上記実施例6-2の(1)混合工程において、リン酸トリフェニルの代わりにポリエステル系分散剤(日本ルーブリゾール株式会社製、製品名:ソルスパース32000)を用いた以外は、実施例6-2と同様にして比較例6-2に係るマスターバッチを製造し
【0221】
(熱線吸収性を有する無機粒子を含む樹脂成形品の製造2)
(実施例7-1)
(1)成形品原料樹脂作製工程
マスターバッチ由来の不飽和ポリエステル樹脂及び着色用樹脂である不飽和ポリエステル樹脂(昭和電工株式会社製、製品名:リゴラック150HRBQTNW)の合計100重量部に対し、無機粒子が0.2重量部となるように、不飽和ポリエステル樹脂と実施例6-1に係るマスターバッチとを混合した。
その後、ナフテン酸コバルト1.0重量部、及び、55質量%メチルエチルケトンパーオキシド2.0重量部を混合し、成形品原料樹脂を作製した。
【0222】
(2)成形工程
次に、成形品原料樹脂を、長さ×幅×厚さ=50mm×60mm×1mm、及び、長さ×幅×厚さ=50mm×60mm×2mmの板状物が得られるような型に流し込み、25℃で16時間静置した。
【0223】
(3)硬化工程
次に、型に流し込んだ成形品原料樹脂を、120℃にて2時間加熱し硬化させ、厚さ1mmの板状のプレート成形品及び厚さ2mmのプレート成形品を製造した。
これら2種類の厚さのプレート成形品は、実施例7-1に係るプレート成形品である。
【0224】
(実施例7-2)、(比較例7-1)及び(比較例7-2)
上記実施例7-1の(1)成形品原料樹脂作製工程において、実施例6-1に係るマスターバッチを、表7に示すマスターバッチに変更し、上記実施例7-1に係るプレート成形品中の不飽和ポリエステル樹脂と無機粒子との割合を表7に示す割合とした以外は、実施例7-1と同様に2種類の厚さの実施例7-2、比較例7-1及び比較例7-2に係るプレート成形品を作製した。
【0225】
(日射透過率の測定)
実施例7-1及び実施例7-2、並びに、比較例7-1及び比較例7-2に係るプレート成形品の内、厚さが2mmのプレート成形品を用いて、日射透過率を測定した。測定条件は、JIS R 3106:1998の方法に従った。結果を表7に示す。
【0226】
(ヘイズの測定)
実施例7-1及び実施例7-2、並びに、比較例7-1及び比較例7-2に係るプレート成形品の内、厚さが1mmのプレート成形品を用いて、ヘイズを測定した。測定条件は、JIS K 7136:2000の方法に従った。結果を表7に示す。
【0227】
【0228】
実施例7-1及び実施例7-2に係るプレート成形品では、日射透過率が60%以下であり、日射遮蔽性が良好であった。一方、比較例7-1及び比較例7-2に係るプレート成形品では、日射透過率が60%を超えており、日射遮蔽性が不充分であった。
実施例7-1及び実施例7-2に係るプレート成形品では、ヘイズが0.5~5%の範囲に入っており良好であった。一方、比較例7-1及び比較例7-2に係るプレート成形品では、ヘイズが5%を超えており不充分であった。