(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20220214BHJP
H01M 10/38 20060101ALI20220214BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220214BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20220214BHJP
【FI】
H01M10/36 Z
H01M10/38
H01M4/48
H01M4/52
(21)【出願番号】P 2017051499
(22)【出願日】2017-03-16
【審査請求日】2020-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友和
(72)【発明者】
【氏名】高野 光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】津國 和之
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014128(JP,A)
【文献】特開2016-127166(JP,A)
【文献】特開2016-082125(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208116(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199618(WO,A1)
【文献】特開2018-022719(JP,A)
【文献】特開2017-182969(JP,A)
【文献】特開2017-195283(JP,A)
【文献】特開2018-037261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/36-10/38
H01M 4/48
H01M 4/52
H01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型の第1酸化物半導体層と、
前記第1酸化物半導体層上に配置され、第1金属酸化物からなり、充電時に発生した水素を蓄積する第1充電層と、
前記第1充電層上に配置されるとともに、水素イオンを透過可能であり且つ
電子を導通しない第1分離層と、
前記第1分離層上に配置された、酸化ニッケルを含むp型の第2酸化物半導体層と
を備え、
前記第1充電層上に、前記第1分離層と前記第1充電層との間に配置されるとともに、水素イオンを透過可能であり且つ
電子を導通しない第2分離層を更に備え、
前記第1充電層は、多孔質構造を備えるとともに、シリコンを含む材料で構成されないことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記第1酸化物半導体層上に、前記第1酸化物半導体層と前記第1充電層との間に配置された、第2絶縁物と第2金属酸化物からなり、充電時に発生した水素を蓄積する第2充電層を備えることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1充電層は、組成が互いに相違する層を少なくとも2層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1分離層は、第1絶縁物を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1分離層は、更に電気導電率調整材を備えることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記電気導電率調整材は、n型の半導体、若しくは金属の酸化物を備えることを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電気導電率調整材は、Sn、Zn、Ti、Al、Mg、若しくはNbの酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1絶縁物はSiO
xを備え、前記電気導電率調整材はSnO
xを備えることを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1分離層は、SiO
xを主体に構成されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1分離層は、SiO
xとSnO
xを主体に構成されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1分離層はSiO
xとSnO
xを主体に構成され、前記第2分離層はSiO
xとTiO
xを主体に構成されることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項12】
前記第1金属酸化物は、Ti、Sn、Zn、若しくはMgの酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物を備えることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第1金属酸化物は、TiO
xを備えることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記第2酸化物半導体層は、NiO
xから構成されることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項15】
前記第2酸化物半導体層は、更に水素を備えることを特徴とする請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
前記第2充電層は、SiO
xとTiO
xを主体に構成されることを特徴とする請求項2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二次電池として、電解液・希少元素を用いないこと、及び薄膜化可能であるため、第1電極/絶縁物・n型酸化物半導体層/p型酸化物半導体層/第2電極が積層された二次電池が提案されている。
【0003】
また、この二次電池に類似した構造として、酸化ニッケルなどを正極活物質として含む正極活物質膜を備える正極と、含水多孔質構造を有する固体電解質と、酸化チタンなどを負極活物質として含む負極活物質膜を備える負極とを備える二次電池が提案されている。
【0004】
また、n型半導体層、充電層、絶縁層、p型半導体層を積層し、上下に電極を形成した構造の二次電池も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5508542号公報
【文献】特許第5297809号公報
【文献】特開2015-82445号公報
【文献】特開2016-82125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施の形態は、内部抵抗を低減可能で、単位体積(重さ)当たりの蓄電容量を増大可能な二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の一態様によれば、n型の第1酸化物半導体層と、前記第1酸化物半導体層上に配置され、第1金属酸化物からなり、充電時に発生した水素を蓄積する第1充電層と、前記第1充電層上に配置されるとともに、水素イオンを透過可能であり且つ電子を導通しない第1分離層と、
前記第1分離層上に配置された、酸化ニッケルを含むp型の第2酸化物半導体層とを備え、前記第1充電層上に、前記第1分離層と前記第1充電層との間に配置されるとともに、水素イオンを透過可能であり且つ電子を導通しない第2分離層を更に備え、前記第1充電層は、多孔質構造を備えるとともに、シリコンを含む材料で構成されない、二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本実施の形態によれば、内部抵抗を低減可能で、単位体積(重さ)当たりの蓄電容量を増大可能な二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る二次電池の模式的断面構造図。
【
図2】第1の実施の形態に係る二次電池において、充電層を多層化した模式的断面構造図。
【
図3】第2の実施の形態に係る二次電池の模式的断面構造図。
【
図4】(a)第3の実施の形態に係る二次電池の模式的断面構造図、(b)第3の実施の形態の変形例1に係る二次電池の模式的断面構造図。
【
図5】第3の実施の形態の変形例2に係る二次電池の模式的断面構造図。
【
図6】比較例、第2の実施の形態および第3の実施の形態に係る二次電池のエネルギー密度比の特性比較。
【
図7】実施の形態に係る二次電池において、シリコーンオイル量と充電層抵抗との関係を示すデータ例。
【
図8】第3の実施の形態に係る二次電池(C)と比較例に係る二次電池(A)において、エネルギー密度比とサイクル回数との関係(サイクル特性評価電力密度比較)を示すデータ例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを特定するものではない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
以下の実施の形態の説明において、第1導電型とは、例えば、n型、第2導電型とは、第1導電型と反対導電型のp型であることを示す。
【0013】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係る二次電池30の模式的断面構造は、
図1に示すように表され、第1の実施の形態に係る二次電池30において、充電層16Tを多層化した模式的断面構造は、
図2に示すように表される。
【0014】
第1の実施の形態に係る二次電池30は、
図1に示すように、第1電極(E1)12と、第2電極(E2)26との間に積層化され、第1導電型の第1酸化物半導体層14と、第1酸化物半導体層14上に配置され、第1金属酸化物からなる第1充電層16Tと、第1充電層16T上に配置された第1分離層18SNSと、第1分離層18SNS上に配置された第2導電型の第2酸化物半導体層24とを備える。
【0015】
ここで、第1導電型の第1酸化物半導体層14とは、第1導電型の第1酸化物半導体からなる酸化物半導体層であることを表す。第2導電型の第2酸化物半導体層24とは、第2導電型の第2酸化物半導体からなる酸化物半導体層であることを表す。以下同様である。
【0016】
ここで、第1充電層16Tは、シリコンを含む材料で構成されない。
【0017】
第1分離層18SNSは、第1絶縁物を備えていても良い。
【0018】
また第1分離層18SNSは、更に電気導電率調整材を備えていても良い。
【0019】
ここで、電気導電率調整材は、第1導電型の半導体、若しくは金属の酸化物を備えていても良い。
【0020】
また、電気導電率調整材は、Sn、Zn、Ti、Al、Mg若しくはNbの酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物を備えていても良い。
【0021】
また、第1絶縁物はSiOxを備え、電気導電率調整材はSnOxを備えていても良い。
【0022】
また、第1絶縁物は、シリコーンオイルから成膜したSiOxを備えていても良い。
【0023】
また、第1分離層18SNSは、SiOxを主体に構成されていても良い。
【0024】
また、第1分離層18SNSは、SiOxとSnOxを主体に構成されていても良い。
【0025】
また、n型酸化物半導体層14が、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、若しくはマグネシウム(Mg)の酸化物層であっても良い。
【0026】
また、第1金属酸化物は、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物を備えていても良い。
【0027】
また、第1充電層16Tは、組成がほぼ同じ層を少なくとも2層備えていても良い。
【0028】
また、第1充電層16Tは、
図2に示すように、組成がほぼ同じで、薄い充電層(TiO
x)16T
2、16T
3、…、16T
nの積層構造によって形成されていても良い。第1充電層16Tを、充電層16T
2、16T
3、…、16T
nを積層させた積層構造で形成する場合、致命的欠陥を発生させること無く第1充電層16Tを形成可能である。ここで致命的欠陥とは、例えば、第1充電層16Tを貫通するピンホールである。第1充電層16Tを積層構造によって形成した場合、例えば、第1充電層16Tを構成する任意の層にピンホールが発生しても、他の層にピンホールが発生していなければ、第1充電層16Tを貫通するピンホール(致命的欠陥)が発生することを防止することができる。
【0029】
また、第1充電層16Tは、組成が互いに相違する層を少なくとも2層を備えていても良い。
【0030】
第1金属酸化物は、例えば、酸化チタン(TiOx)を備えていても良い。したがって、充電層16Tは、TiOxによって形成されていても良い。
【0031】
また、第1充電層16Tは更に水素を備えていても良い。
【0032】
また、第1充電層16Tは、多孔質構造を備えていても良い。
【0033】
また、第2酸化物半導体層24は、NiOxから構成されていても良い。第2酸化物半導体層24は、更に水素を備えていても良い。
【0034】
第1の実施の形態に係る二次電池30においては、第1充電層16Tにシリコン酸化膜が含まれないため、内部抵抗を低減可能であり、電池性能が向上する。
【0035】
(第1分離層)
第1分離層18SNSは、水素イオンを透過可能な膜であり、かつ電子を実質的に導通しない絶縁膜であることが望ましい。また、第1分離層18SNSには、更に電気導電率調整材を添加して、水素イオンの透過性能を調整可能である。
【0036】
(第1充電層)
第1充電層16Tは、充電時に発生した水素を蓄積する層である。第1充電層16Tは、充電時は、MOx+H2O+e-→MH+OH-の反応が進行し、放電時は、MOxH+OH-→M+H2O+e-の反応が進行する。多孔質化することで、水素蓄積の効率を増大可能である。また、複数層とすることで、水素蓄積と導電性を最適化できる。第1金属酸化物を、Ti、Sn、Zn若しくはMgの酸化物とすることで、最適化可能である。
【0037】
(n型酸化物半導体層)
第1の実施の形態に係る二次電池30は、
図1に示すように、第1電極12と、第2電極26とを備え、第1酸化物半導体層14はn型酸化物半導体層を備え、かつ第1電極12に接続され、第1金属酸化物はn型金属酸化物を備え、第2酸化物半導体層24はp型第2酸化物半導体層を備え、かつ第2電極26に接続されていても良い。
【0038】
(第1の実施の形態の製造方法)
第1の実施の形態に係る二次電池30の製造方法は、第1導電型の第1酸化物半導体層14を形成する工程と、第1酸化物半導体層14上に、第1金属酸化物からなる第1充電層16Tを形成する工程と、第1充電層16T上に第1分離層18SNSを形成する工程と、第1分離層18SNS上に第2酸化物半導体層24を形成する工程とを有する。
【0039】
ここで、第2酸化物半導体層24を形成する工程は、スパッタデポジション法を適用し、スパッタリング時のターゲット材料として、金属ニッケルNiを使用し、スパッタリングガスに酸素を加えた反応性スパッタリング技術を用いて形成しても良い。
【0040】
―n型酸化物半導体層14―
第1電極12上にTiOx膜を例えば、スパッタデポジション法で成膜する。ここで、TiまたはTiOxをターゲットとして使用可能である。n型酸化物半導体層14の膜厚は、例えば、約50nm-200nm程度である。なお、第1電極12は、例えば、タングステン(W)電極などを適用可能である。
【0041】
―第1充電層16T―
第1充電層16Tは、n型第1酸化物半導体層14上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液は脂肪酸チタンを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、n型酸化物半導体層14上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は、例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は、例えば約5分-30分程度である。乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。ここで、大気中で焼成することにより、充電層16Tを構成するTiOxには、水素(H)が添加されていても良い。
【0042】
これにより、脂肪族酸塩が分解して二酸化チタンの微粒子層が形成される。二酸化チタンを層形成した上記製造(作製)方法は、塗布熱分解法である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。第1充電層16Tの厚さは、例えば、約50nm-200nm程度である。また、積層化形成し、より厚く形成しても良い。
【0043】
―第1分離層18SNS―
第1分離層18SNSは、第1充電層16T上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液は脂肪酸スズとシリコーンオイルを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、充電層16T上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は例えば、約5分-30分程度である。さらに、乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。UV照射後の分離層18SNSの膜厚は、例えば、約50nm-300nm程度である。
【0044】
―p型第2酸化物半導体層24―
第1分離層18SNS上にp型酸化物半導体層(NiO)24を例えば、スパッタデポジション法で成膜する。ここで、NiまたはNiOをターゲットとして使用可能である。第2酸化物半導体層24は、アルゴンイオンAr+によるイオン衝撃によって、ターゲットからNi原子が励起されると共に、励起されたNi原子は、スパッタデポジション反応により、第2酸化物半導体層24を堆積して形成しても良い。
【0045】
―第2電極26―
第2電極26は、例えばAlをスパッタデポジション法若しくは真空蒸着法で成膜する。p型酸化物半導体層(NiO)24上にAlターゲットを使用して成膜可能である。第2電極26は、例えば、ステンレスマスクを用い、指定領域のみ成膜しても良い。
【0046】
第1の実施の形態によれば、内部抵抗を低減可能で、単位体積(重さ)当たりの蓄電容量を増大可能な二次電池を提供することができる。
【0047】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る二次電池30の模式的断面構造は、
図3に示すように表され、第2の実施の形態に係る二次電池30において、充電層16Tを多層化した模式的断面構造は、
図2と同様に表される。
【0048】
第2の実施の形態に係る二次電池30は、
図3に示すように、第1電極(E1)12と、第2電極(E2)26との間に積層化され、第1導電型の第1酸化物半導体層14と、第1酸化物半導体層14上に配置され、第1金属酸化物からなる第1充電層16Tと、第1充電層16T上に配置された第1分離層18Sと、第1分離層18S上に配置された第2導電型の第2酸化物半導体層24とを備える。
【0049】
ここで、第1充電層16Tは、シリコンを含む材料で構成されない。
【0050】
第1分離層18Sは、第1絶縁物を備えていても良い。
【0051】
また、第1分離層18Sは、SiOxを主体に構成されていても良い。
【0052】
また、第1絶縁物は、シリコーンオイルから成膜したSiOxを備えていても良い。
【0053】
また、第1絶縁物はSiOxを備えていても良い。
【0054】
また、n型の第1酸化物半導体層14が、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、若しくはマグネシウム(Mg)の酸化物層であっても良い。
【0055】
また、第1金属酸化物は、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物を備えていても良い。
【0056】
また、第1充電層16Tは、組成がほぼ同じ層を少なくとも2層備えていても良い。
【0057】
また、第1充電層16Tは、
図2に示すように、組成がほぼ同じで、薄い充電層(TiO
x)16T
2、16T
3、…、16T
nの積層構造によって形成されていても良い。第1充電層16Tを充電層16T
2、16T
3、…、16T
nを重ねた積層構造で形成する場合、致命的欠陥を発生させることなく第1充電層16Tを形成可能である。
【0058】
また、第1充電層16Tは、組成が互いに相違する層を少なくとも2層を備えていても良い。
【0059】
第1金属酸化物は、例えば、酸化チタン(TiOx)を備えていても良い。したがって、第1充電層16Tは、TiOxによって形成されていても良い。
【0060】
また、第1充電層16Tは更に水素を備えていても良い。
【0061】
また、第1充電層16Tは、多孔質構造を備えていても良い。
【0062】
また、第2酸化物半導体層24は、NiOxから構成されていても良い。第2酸化物半導体層24は、更に水素を備えていても良い。
【0063】
第2の実施の形態に係る二次電池30においては、第1充電層16Tにシリコン酸化膜が含まれないため、内部抵抗を低減可能であり、電池性能が向上する。
【0064】
(第1分離層)
分離層18Sは、水素イオンを透過可能な膜であり、かつ電子を実質的に導通しない絶縁膜であることが望ましい。
【0065】
(第1充電層)
第1充電層16Tは、充電時に発生した水素を蓄積する層である。第1充電層16Tは、充電時は、MOx+H2O+e-→MH+OH-の反応が進行し、放電時は、MOxH+OH-→M+H2O+e-の反応が進行する。多孔質化することで、水素蓄積の効率を増大可能である。また、複数層とすることで、水素蓄積と導電性を最適化できる。第1金属酸化物を、Ti、Sn、Zn若しくはMgの酸化物とすることで、水素蓄積と導電性を最適化可能である。
【0066】
(n型酸化物半導体層)
第2の実施の形態に係る二次電池30は、
図3に示すように、第1電極12と、第2電極26とを備え、第1酸化物半導体層14はn型酸化物半導体層を備え、かつ第1電極12に接続され、第1金属酸化物はn型金属酸化物を備え、第2酸化物半導体層24はp型第2酸化物半導体層を備え、かつ第2電極26に接続されていても良い。
【0067】
(第2の実施の形態の製造方法)
第2の実施の形態に係る二次電池30の製造方法は、第1導電型の第1酸化物半導体層14を形成する工程と、第1酸化物半導体層14上に、第1金属酸化物からなる充電層16Tを形成する工程と、充電層16T上に分離層18Sを形成する工程と、分離層18S上に第2酸化物半導体層24を形成する工程とを有する。
【0068】
ここで、第2酸化物半導体層24を形成する工程は、スパッタデポジション法を適用し、スパッタリング時のターゲット材料として、金属ニッケルNiを使用し、スパッタリングガスに酸素を加えた反応性スパッタリング技術を用いて形成しても良い。
【0069】
―n型酸化物半導体層14―
第1電極12上にTiOx膜を例えば、スパッタデポジション法で成膜する。ここで、TiまたはTiOxをターゲットとして使用可能である。n型酸化物半導体層14の膜厚は、例えば、約50nm-200nm程度である。なお、第1電極12は、例えば、タングステン(W)電極などを適用可能である。
【0070】
―第1充電層16T―
第1充電層16Tは、n型第1酸化物半導体層14上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液は脂肪酸チタンを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、n型酸化物半導体層14上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は、例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は、例えば約5分-30分程度である。乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。ここで、大気中で焼成することにより、第1充電層16Tを構成するTiOxには、水素(H)が添加されていても良い。
【0071】
これにより、脂肪族酸塩が分解して二酸化チタンの微粒子層が形成される。二酸化チタンを層形成した上記製造(作製)方法は、塗布熱分解法である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。充電層16Tの厚さは、例えば、約50nm-200nm程度である。また、積層化形成し、より厚く形成しても良い。
【0072】
―第1分離層18S―
第1分離層18Sは、第1充電層16T上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液はシリコーンオイルを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、第1充電層16T上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は例えば、約50℃-200℃程度、乾燥時間は例えば、約5分-30分程度である。さらに、乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-60分程度である。UV照射後の分離層18Sの膜厚は、例えば、約5nm-30nm程度である。
【0073】
―p型第2酸化物半導体層24―
第1分離層18S上にp型酸化物半導体層(NiO)24を例えば、スパッタデポジション法で成膜する。ここで、NiまたはNiOをターゲットとして使用可能である。第2酸化物半導体層24は、アルゴンイオンAr+によるイオン衝撃によって、ターゲットからNi原子が励起されると共に、励起されたNi原子は、スパッタデポジション反応により、第2酸化物半導体層24を堆積して形成しても良い。
【0074】
―第2電極26―
第2電極26は、例えばAlをスパッタデポジション法若しくは真空蒸着法で成膜する。p型酸化物半導体層(NiO)24上にAlターゲットを使用して成膜可能である。第2電極26は、例えば、ステンレスマスクを用い、指定領域のみ成膜しても良い。
【0075】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同等の電池性能を示し、同等のエネルギー密度比を得ることができる。
【0076】
第2の実施の形態によれば、内部抵抗を低減可能で、単位体積(重さ)当たりの蓄電容量を増大可能な二次電池を提供することができる。
【0077】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係る二次電池30の模式的断面構造は、
図4(a)に示すように表され、第3の実施の形態の変形例1に係る二次電池の模式的断面構造は、
図4(b)に示すように表される。第3の実施の形態およびその変形例1に係る二次電池30において、第1充電層16Tを多層化した模式的断面構造は、
図2と同様に表される。
【0078】
第3の実施の形態に係る二次電池30は、
図4(a)に示すように、第1電極(E1)12と、第2電極(E2)26との間に積層化され、第1導電型の第1酸化物半導体層14と、第1酸化物半導体層14上に配置され、第1金属酸化物からなる第1充電層16Tと、第1充電層16T上に配置された第2分離層18TSと、第2分離層18TS上に配置された第1分離層18SNSと、第1分離層18SNS上に配置された第2導電型の第2酸化物半導体層24とを備える。
【0079】
すなわち、第3の実施の形態に係る二次電池30は、
図4(a)に示すように、第1充電層16T上に、第1分離層18SNSと第1充電層16Tとの間に配置された第2分離層18TSを備えていても良い。
【0080】
また、第3の実施の形態の変形例1に係る二次電池30は、
図4(b)に示すように、第1酸化物半導体層14上に、第1酸化物半導体層14と第1充電層16Tとの間に配置された、第2絶縁物と第2金属酸化物からなる第2充電層16TSを備えていても良い。
【0081】
ここで、第1充電層16Tは、シリコンを含む材料で構成されない。
【0082】
第1分離層18SNSおよび第2分離層18TSは、第1絶縁物を備えていても良い。
【0083】
また第1分離層18SNSは、更に電気導電率調整材を備えていても良い。
【0084】
ここで、電気導電率調整材は、第1導電型の半導体、若しくは金属の酸化物を備えていても良い。
【0085】
また、電気導電率調整材は、Sn、Zn、Ti、Al、Mg若しくはNbの酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物を備えていても良い。
【0086】
また、第1絶縁物はSiOxを備え、電気導電率調整材はSnOxを備えていても良い。
【0087】
第1分離層18SNSおよび第2分離層18TSの第1絶縁物は、シリコーンオイルから成膜したSiOxを主体に構成されていても良い。
【0088】
分離層は、SiOxとSnOxを主体とする層とSiOxとTiOxを主体に構成されていても良い。すなわち、例えば、第1分離層18SNSは、SiOxとSnOxを主体に構成され、第2分離層18TSは、SiOxとTiOxを主体に構成されていても良い。
【0089】
また、第2充電層は、SiOxとTiOxを主体に構成されていても良い。
【0090】
また、n型酸化物半導体層14が、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、若しくはマグネシウム(Mg)の酸化物層であっても良い。
【0091】
また、第1金属酸化物は、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物を備えていても良い。
【0092】
また、第1充電層16Tは、組成がほぼ同じ層を少なくとも2層備えていても良い。
【0093】
また、第1充電層16Tは、
図2に示すように、組成がほぼ同じで、薄い充電層(TiO
x)16T
2、16T
3、…、16T
nの積層構造によって形成されていても良い。第1充電層16Tを、充電層16T
2、16T
3、…、16T
nを重ねた積層構造で形成する場合、致命的欠陥を発生させること無く第1充電層16Tを形成可能である。
【0094】
また、第1充電層16Tは、組成が互いに相違する層を少なくとも2層を備えていても良い。
【0095】
第1金属酸化物は、例えば、酸化チタン(TiOx)を備えていても良い。したがって、第1充電層16Tは、TiOxによって形成されていても良い。
【0096】
また、第1充電層16Tは更に水素を備えていても良い。
【0097】
また、第1充電層16Tは、多孔質構造を備えていても良い。
【0098】
また、第2酸化物半導体層24は、NiOxから構成されていても良い。第2酸化物半導体層24は、更に水素を備えていても良い。
【0099】
第3の実施の形態に係る二次電池30においては、第1充電層16Tにシリコン酸化膜が含まれないため、内部抵抗を低減可能であり、電池性能が向上する。
【0100】
(分離層)
第1分離層18SNSおよび第2分離層18TSは、水素イオンを透過可能な膜であり、かつ電子を実質的に導通しない絶縁膜であることが望ましい。また、第1分離層18SNSには、更に電気導電率調整材を添加して、水素イオンの透過性能を調整しても良い。
【0101】
第1分離層18SNSの下に第2分離層18TSを追加することで、耐圧を向上可能であり、サイクル劣化を改善可能であり、また、自然放電をより良好に抑制可能である。
【0102】
(充電層)
第1充電層16T及び第2充電層16TSは、充電時に発生した水素を蓄積する層である。第1充電層16T及び第2充電層16TSは、充電時は、MOx+H2O+e-→MH+OH-の反応が進行し、放電時は、MOxH+OH-→M+H2O+e-の反応が進行する。多孔質化することで、水素蓄積の効率を増大可能である。また、複数層とすることで、水素蓄積と導電性を最適化できる。第1金属酸化物を、Ti、Sn、Zn若しくはMgの酸化物とすることで、最適化可能である。また、第2充電層は、SiOxとTiOxを主体に構成される。
【0103】
(n型酸化物半導体層)
第3の実施の形態およびその変形例1に係る二次電池30は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、第1電極12と、第2電極26とを備え、第1酸化物半導体層14はn型酸化物半導体層を備え、かつ第1電極12に接続され、第1金属酸化物はn型金属酸化物を備え、第2酸化物半導体層24はp型第2酸化物半導体層を備え、かつ第2電極26に接続されていても良い。
【0104】
(第3の実施の形態の製造方法)
第3の実施の形態に係る二次電池30の製造方法は、第1導電型の第1酸化物半導体層14を形成する工程と、第1酸化物半導体層14上に、第1金属酸化物からなる第1充電層16Tを形成する工程と、第1充電層16T上に第2分離層18TSを形成する工程と、第2分離層18TS上に第1分離層18SNSを形成する工程と、第1分離層18SNS上に第2酸化物半導体層24を形成する工程とを有する。
【0105】
また、第3の実施の形態の変形例1に係る二次電池30の製造方法は、
図4(b)に示すように、第1酸化物半導体層14上に、第1酸化物半導体層14と第1充電層16Tとの間に配置された、第2絶縁物と第2金属酸化物からなる第2充電層16TSを形成する工程を有していても良い。
【0106】
ここで、第2酸化物半導体層24を形成する工程は、スパッタデポジション法を適用し、スパッタリング時のターゲット材料として、金属ニッケルNiを使用し、スパッタリングガスに酸素を加えた反応性スパッタリング技術を用いて形成しても良い。
【0107】
―n型酸化物半導体層14―
第1電極12上にTiOx膜を例えば、スパッタデポジション法で成膜する。ここで、TiまたはTiOxをターゲットとして使用可能である。n型酸化物半導体層14の膜厚は、例えば、約50nm-200nm程度である。なお、第1電極12は、例えば、タングステン(W)電極などを適用可能である。
【0108】
―第1充電層16T―
第3の実施の形態に係る二次電池30の製造方法においては、
図4(a)に示すように、第1充電層16Tは、n型酸化物半導体層14上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。また、第3の実施の形態の変形例1に係る二次電池30の製造方法においては、
図4(b)に示すように、第1充電層16Tは、第2充電層16TS上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液は脂肪酸チタンを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、n型酸化物半導体層14上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は、例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は、例えば約5分-30分程度である。乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。ここで、大気中で焼成することにより、充電層16Tを構成するTiO
xには、水素(H)が添加されていても良い。
【0109】
これにより、脂肪族酸塩が分解して二酸化チタンの微粒子層が形成される。二酸化チタンを層形成した上記製造(作製)方法は、塗布熱分解法である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。充電層16Tの厚さは、例えば、約50nm-200nm程度である。また、積層化形成し、より厚く形成しても良い。
【0110】
―第2充電層16TS―
第3の実施の形態の変形例1に係る二次電池30の製造方法において、第2充電層16TSは、
図4(b)に示すように、n型第1酸化物半導体層14上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液は脂肪酸チタンとシリコーンオイルを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、n型酸化物半導体層14上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は、例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は、例えば約5分-30分程度である。乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。
【0111】
これにより、脂肪族酸塩が分解してシリコーンの絶縁膜に覆われた二酸化チタンの微粒子層が形成される。シリコーンの絶縁膜で覆われた二酸化チタンを層形成した上記製造(作製)方法は、塗布熱分解法である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。UV照射後の第2充電層16TSの膜厚は、例えば、約50nm-300nm程度である。
【0112】
―第2分離層18TS―
第2分離層18TSは、第1充電層16T上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液は脂肪酸チタンとシリコーンオイルを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、充電層16T上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は、例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は、例えば約5分-30分程度である。乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。
【0113】
これにより、脂肪族酸塩が分解してシリコーンの絶縁膜に覆われた二酸化チタンの微粒子層が形成される。シリコーンの絶縁膜で覆われた二酸化チタンを層形成した上記製造(作製)方法は、塗布熱分解法である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。UV照射後の第2分離層18TSの膜厚は、例えば、約5nm-30nm程度である。
【0114】
―第1分離層18SNS―
第1分離層18SNSは、第2分離層18TS上に薬液をスピンコート法で塗布することにより形成する。具体的に、薬液は脂肪酸スズとシリコーンオイルを溶媒と共に攪拌して形成する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、充電層16T上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は例えば、約5分-30分程度である。さらに、乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。UV照射後の第1分離層18SNSの膜厚は、例えば、約5nm-30nm程度である。
【0115】
―p型第2酸化物半導体層24―
第1分離層18SNS上にp型酸化物半導体層(NiOx)24を例えば、スパッタデポジション法で成膜する。ここで、NiまたはNiOをターゲットとして使用可能である。p型第2酸化物半導体層24は、アルゴンイオンAr+によるイオン衝撃によって、ターゲットからNi原子が励起されると共に、励起されたNi原子は、スパッタデポジション反応により、第2酸化物半導体層24を堆積して形成しても良い。
【0116】
―第2電極26―
第2電極26は、例えばAlをスパッタデポジション法若しくは真空蒸着法で成膜する。p型酸化物半導体層(酸化ニッケル(NiO))24上にAlターゲットを使用して成膜可能である。第2電極26は、例えば、ステンレスマスクを用い、指定領域のみ成膜しても良い。
【0117】
第3の実施の形態およびその変形例1によれば、第1分離層の下に第2分離層を追加することで、第1の実施の形態に比べ、耐圧を向上可能であり、サイクル劣化を改善可能であり、また、自然放電をより良好に抑制可能である。
【0118】
第3の実施の形態およびその変形例1によれば、内部抵抗を低減可能で、単位体積(重さ)当たりの蓄電容量を増大可能な二次電池を提供することができる。
【0119】
(変形例2)
第3の実施の形態の変形例2に係る二次電池30の模式的断面構造は、
図5に示すように表される。
【0120】
第3の実施の形態の変形例2に係る二次電池30は、
図5に示すように、第1酸化物半導体層14と、第1酸化物半導体層14上に配置された第2絶縁物と第2金属酸化物からなる第2充電層16TSと、第2充電層16TS上に配置され、第1金属酸化物からなる第1充電層16Tと、第1充電層16T上に配置された第2分離層18TSPと、第2分離層18TSP上に配置された第1分離層18SNSと、第1分離層18SNS上に配置された第2導電型の第2酸化物半導体層24とを備える。
【0121】
第1充電層16Tは、充電層16T1、16T2、16T3からなる3層構造で形成されている。
【0122】
また、充電層16T1、16T2、16T3は、組成がほぼ同じであっても良い。
【0123】
また、第1充電層16Tは、組成がほぼ同じで、薄い充電層(TiOx)16T1、16T2、16T3の積層構造によって形成されていても良い。第1充電層16Tを、充電層16T2、16T3を重ねた積層構造で形成する場合、致命的欠陥を発生させること無く第1充電層16Tを形成可能である。
【0124】
また、充電層16T1、16T2、16T3は、組成が互いに相違していても良い。
【0125】
第2絶縁物と第2金属酸化物からなる第2充電層16TSおよび第2分離層18TSPは、第3の実施の形態における第2充電層16TSおよび第2分離層18TSと同様に形成可能である。
【0126】
第2分離層18TSPおよび第1分離層18SNSは、は、水素イオンを透過可能な膜であり、かつ電子を実質的に導通しない絶縁膜であることが望ましい。その他の構成は、第3の実施の形態と同様である。
【0127】
第3の実施の形態の変形例2によれば、第1充電層を多層化することで、歩留りおよび耐圧を向上可能であり、サイクル劣化を改善可能であり、また、自然放電をより良好に抑制可能である。
【0128】
(エネルギー密度)
比較例、第2の実施の形態および第3の実施の形態に係る二次電池のエネルギー密度比の特性比較例は、
図6に示すように表される。
【0129】
図6において、横軸のA、B、Cに対応する各プロットは、それぞれ比較例、第2の実施の形態、第3の実施の形態のエネルギー密度比を表す。
【0130】
ここで、比較例に係る二次電池とは、第1の実施の形態に係る二次電池において、第1充電層16Tを脂肪酸チタンとシリコーンオイルを用いて形成した構造を備える例に対応している。
【0131】
比較例に係る二次電池(A)においては、第1分離層/第1充電層がSnOx+SiOx/TiOx+SiOxの構造を備える。第2の実施の形態に係る二次電池(B)においては、第1分離層/第1充電層がSiOx/TiOxの構造を備える。第3の実施の形態に係る二次電池(C)においては、分離層がSnOx+SiOx/TiOx+SiOxの2層構造、充電層がTiOxの構造を備える。
【0132】
第1充電層の形成においてシリコーンオイルを抜き、かつ第1分離層をSnO
x+SiO
xからSiO
xとした第2の実施の形態に係る二次電池(B)においては、エネルギー密度比は、
図6に示すように、比較例(A)に比べて若干低い。一方、第1充電層の形成においてシリコーンオイルを抜き、かつ分離層をSnO
x+SiO
x/TiO
x+SiO
xの2層構造とした第3の実施の形態に係る二次電池(B)においては、
図6に示すように、比較例(A)に比べて若干高いエネルギー密度比が得られている。
【0133】
(充電層の内部抵抗)
ここで、充電層の形成時に使用するシリコーンオイル量C
sと充電層の内部抵抗との関係を示すデータ例は、
図7に示すように表される。シリコーンオイル量C
sの増加と共に、充電層の内部抵抗(充電層抵抗)は、増加する傾向が見られる。シリコーンオイル量C
sがゼロのデータが第3の実施の形態に係る二次電池の充電層抵抗に対応する。
【0134】
(サイクル特性)
第3の実施の形態に係る二次電池(C)と比較例に係る二次電池(A)において、エネルギー密度比とサイクル回数NCとの関係(サイクル特性評価電力密度比較)を示すデータ例は、
図8に示すように表される。
【0135】
比較例に係る二次電池(A)においては、サイクル回数の増加と共に、エネルギー密度比の低下が観測される。一方、第3の実施の形態に係る二次電池(C)においては、サイクル回数NCが増加しても、エネルギー密度比は平坦な特性を示す。
【0136】
比較例に係る二次電池(A)は、充電層の形成においてシリコーンオイルを用いるため、充電層にSiOx層が含まれる。このため、充電層の内部抵抗が高くなり、サイクル特性等の電池性能の妨げとなる。
【0137】
一方、第3の実施の形態に係る二次電池(C)は、充電層の形成においてシリコーンオイルを用いないため、充電層には、SiOx層が含まれず、TiOx層のままである。このため、充電層の内部抵抗の増加が抑制され、良好なサイクル特性を示し、電池性能が向上する。
【0138】
[その他の実施の形態]
上記のように、いくつかの実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0139】
例えば、ステンレス箔を基板として、実施の形態に係る二次電池30の構造をシート状に作製する。その後、このシートを積層し、必要な容量の二次電池30を作製しても良い。
【0140】
例えば、2枚のシートの第2電極を対向し、間に電極(薄い金属箔)を挿入し、2枚のシートを多層に重ねることで、必要な容量の二次電池を作製しても良い。後はラミネートなどで封止しても良い。
【0141】
このように、本実施の形態は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本実施の形態の二次電池は、様々な民生用機器、産業機器に利用することができ、通信端末、無線センサネットワーク向けの二次電池など、各種センサ情報を低消費電力伝送可能なシステム応用向けの二次電池など、幅広い応用分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0143】
12…第1電極(E1)
14…第1酸化物半導体層
16T、16TS、16T1、16T2、16T3、…、16Tn…充電層
18SNS、18S、18TS、18TSP…分離層
24…第2酸化物半導体層
26…第2電極(E2)
30…二次電池