IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社松風の特許一覧

特許7023053ウレトジオン基を含有するカップリング性有機化合物および、それらを含む医科歯科用硬化性組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】ウレトジオン基を含有するカップリング性有機化合物および、それらを含む医科歯科用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/30 20200101AFI20220214BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220214BHJP
   C07D 229/00 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
A61K6/30
A61P1/02
C07D229/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017071752
(22)【出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2018172336
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】渕上 清実
(72)【発明者】
【氏名】山本 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】信野 和也
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0037275(US,A1)
【文献】特開2015-002079(JP,A)
【文献】特開平05-297588(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168828(WO,A1)
【文献】特開平10-251115(JP,A)
【文献】特開2015-196685(JP,A)
【文献】特開2018-172337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の分子構造で示されるカップリング性有機化合物を含むことを特徴とする歯科用硬化性組成物。
【化1】
式中Aは、H 2 C=CH-, H 2 C=C(CH 3 )-, H 2 C=CH-C 6 H 4 - 基から選ばれる1種を表し(C 6 H 4 はフェニレン基を示す)、Bは、-C(O)-O-, -C(O)-S-, - C(O)-NH-, -NH-C(O)-NH-, -NH-C(O)-S-, -NH-C(O)-O- 基から選ばれる1種を表し、Rは、それぞれ独立してC1~C60の直鎖または分岐鎖のアルキレン基で、炭素原子間に-C(O)-O-, -C(O)-S-, -C(O)-NH-, -NH-C(O)-NH-, -NH-C(O)-S-, -NH-C(O)-O-, -O-, -S- 基を挿入し得る。なお、aはそれぞれ独立した1~6の整数である。
【請求項2】
前記カップリング性有機化合物以外に、ホスホン酸基含有重合性単量体、多価カルボン酸基含有重合性単量体、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項3】
さらに重合性単量体、水、水溶性有機溶媒、重合開始剤、光酸発生剤を含む事を特徴とする、請求項2に記載の歯科用硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物に関する。さらに、本発明は、修復材料、歯冠材料、補綴材料、審美材料、矯正材料、予防材料、支台築造材料、根管材料等の医科歯科用材料をポーセレンセラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント、生体硬組織(天然歯牙のエナメル質や象牙質)等に接着するための医科歯科分野で用いられる医科歯科用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンポジットレジンは長期的な耐久性や機械的特性が飛躍的に向上し、さらにフッ素徐放性やX線造影性等の特性も有してきたことから、う蝕の発症により歯質に欠損が生じた場合や歯冠修復物の破折や脱落等が生じた場合における歯質の機能的・審美的回復に使用されるようになってきた。また、このコンポジットレジンは歯面コーティング材、フィーシャーシーラント、矯正用接着材、レジンコア材等の用途にまで使用が拡大してきている。しかし、これらのコンポジットレジン自体は歯質だけでなく、ポーセレンセラミックスや金属に対しても接着性を有していないことから、種々の接着材を併用することが必須となっている。特に歯質に対してはヒドロキシアパタイト等の無機成分を主成分とするエナメル質とコラーゲン等の有機成分を主成分とする象牙質の両方に対して優れた接着性を有することが接着材に求められてきている。さらに最近では、ポーセレンセラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント等に対しても強固に接着し、かつ接着耐久性を有することが課題となってきている。
【0003】
従来の接着材においては、歯質表面をリン酸等の強力なエッチング材によって歯面処理を施した後、ボンディング材を塗布して歯質とコンポジットレジンを接着してきた。しかし、酸エッチング材による歯面処理方法は歯面に塗布した酸を水洗により十分に取り除くことが必要であり、さらにその後乾燥させることも必要である等、煩雑な操作ステップが欠点とされていた。また酸エッチング材を用いた接着方法は、エナメル質に対しては、酸エッチング材の脱灰による粗造面の形成とボンディング材の十分な浸透および硬化に基づくマクロな機械的嵌合により十分な接着性を示していた。一方、象牙質に対しては、酸エッチング材の脱灰によりスポンジ状のコラーゲン繊維が露出するために、ボンディング材のコラーゲン繊維への浸透が十分でなく、十分な接着性を得ることが困難であった。そこで、象牙質に対して高い接着性を得るためにリン酸エッチング材に代わる酸歯面処理材が提案されている。例えば、特開昭62-33109号公報にはスルホン酸基含有ポリマーを含む歯質表面処理材、特開昭62-231652号公報にはハロゲン化金属を含む歯質表面処理材、特開昭63-279851号公報には両性アミノ化合物を含む歯質表面処理材、特開平1-279815号公報には有機カルボン酸と金属塩化物を含む歯質表面処理材、特開平5-163111号公報には有機カルボン酸とリン酸鉄を含む歯質表面処理材等が挙げられる。しかし、これら酸歯面処理材の使用においても象牙質に対して十分な接着力を得ることは困難であった。
【0004】
また、特許第2865794号明細書には、酸基を含有する重合性化合物として、(a)化1:[式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数5~10のアルキレン基、R3は炭素原子数1~6のアルキレン基を示す。]で示されるホスホン酸基を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(b)少なくとも一種のラジカル重合性単量体および(c)少なくとも一種の重合開始剤を含有する接着剤組成物が開示されている。
【0005】
【化1】
【0006】
(メタ)アクリル酸エステル誘導体に含まれるホスホン酸基を歯質に塗布すると、ホスホン酸基が歯質のカルシウム成分と化学結合し、その結果、歯質表面に重合性基を付与することができる。その後、歯面に塗布した酸歯面処理材により露出したコラーゲン繊維への浸透にはプライマーが有効であることが発表[Journal of Dental Research Vol.63, P1087-1089, 1984:グルタルアルデヒド/2-HEMA/水からなるプライマー組成物]されて以来、酸処理材/プライマー/ボンディング材からなる3ステップ術式が行われるようになってきた。この3ステップ術式を伴う接着方法の提案としては、特許第3399573号公報および特許第2962628号公報等に記載の方法が挙げられる。また、プライマーに含まれる水溶性重合性単量体である2-HEMAが粘膜刺激性を有していることから、2-HEMAに代わる他の水溶性重合性単量体を含むプライマー組成物も開示されている。例えば、特開2004-137211号公報にはポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレートを含むプライマー組成物、特許第2782694号公報にはグリセリルモノ(メタ)アクリレートを含むプライマー組成物等が挙げられている。しかし、これらの接着術式はステップ数が多く操作が煩雑であること、またエナメル質への接着性は高いものの、象牙質への接着性は未だ十分なレベルには到達していなかった。
【0007】
近年、酸性基を分子内に有する接着性モノマーが開発され、歯面を脱灰する酸処理とコラーゲン繊維に浸透させるプライマー処理を同時に行うことができる複雑な操作ステップを簡略化したセルフエッチングプライマーが提案されてきた。このプライマーを用いる場合の術式としては、歯面への酸処理を必要とせず、セルフエッチングプライマーを歯面に処理(塗布・放置)後、乾燥させてからボンディング材を塗布するものである。すなわち、窩洞形成した歯面にセルフエッチングプライマーを処理することにより、窩洞形成によって生じたスメアー層を溶解しながら、歯質(エナメル質・象牙質)に浸透する。乾燥後、そこにボンディング材を塗布することにより、セルフエッチングプライマーとボンディング材とが一体化して硬化することにより、強固な接着層が得られものである。
【0008】
これらのセルフエッチングプライマー組成に関して多数の提案がなされている。例えば特開平1-113057号公報には水/水溶性フィルム形成剤/酸の塩からなるプライマー組成物、特許第2634276号公報には水/水酸基を有する重合性化合物/酸基を有する重合性化合物/硬化剤からなるプライマー組成物、特許第3480654号公報および特許第3487389号公報には水/リン酸基含有重合性単量体/多価カルボン酸基含有重合性単量体からなる歯科用プライマー、特開平7-82115号公報には酸性基を有するビニル化合物/水酸基を有する水溶性ビニル化合物/水/芳香族スルフィン酸塩・芳香族アミンからなるプライマー組成物、特開昭62
-223289号公報には有機酸または無機酸を含む2-HEMA/水からなるプライマー組成物、特開平4-8368号公報には水/酸基を有する重合性化合物/水酸基を有する重合性化合物/酸基を有するアミノ化合物からなるプライマー組成物等が挙げられる。これらの組成物は象牙質に対してある程度の接着力を示すものの、エナメル質に対しては無機成分への脱灰作用が乏しいいために十分な接着力を有するには至っていなかった。またプライマー組成物には重合性に乏しい酸性基含有重合性単量体や水溶性重合性単量体等を含むために、ボンディング材塗布後の硬化が不十分であり、その結果過酷な口腔内環境下における接着耐久性等において問題が生じていた。さらに、これらのプライマー組成物は基本的に水/酸性基含有重合性単量体が共存する酸性雰囲気下であるため、プライマー組成物中に含まれている成分における分子内主鎖や官能基の加水分解による劣化や変質等が起こり、貯蔵安定性や材料安定性において大きな問題があった。そのため、包装形態を分割する必要があった。
【0009】
これらの問題を解決するために、プライマーとボンディング材を組み合わせることにより、それらの接着層を十分硬化させて歯質接着性を向上させる数々の提案がなされている。例えば、特開2000-212015号公報および特開2000-16911号公報にはアシルホスフィンオキサイド化合物を光重合開始剤として含むボンディング材とプライマー組成物(酸性基を有する重合性単量体/水酸基を有する重合性単量体/水を含有)からなる歯科用接着剤システム、特開2004-26838号公報にはリン酸基含有重合性単量体/水を含有するプライマー組成物と多価がルボン酸基含有重合性単量体/重合開始剤を含有するボンディング材からなる歯科用接着キット、特許第3236030号公報にはカルボキシル基またはその酸無水物を有
した特定の分子構造を有するビニルモノマーを含むプライマー溶液と酸性基を有するビニルモノマーからなる接着組成物からなる新規な接着方法、特開2000-204010号公報にはスルホン酸基含有重合性単量体/水溶性重合性単量体/水を含むプライマー組成物と酸性リン酸エステル系多官能性重合性単量体を含む接着材からなる歯科用接着キット、特開平9-295313号公報にはスルホン酸基含有重合性単量体/水溶性重合性単量体/水を含むプライマー組成物と多価カルボン酸基含有多官能性重合性単量体を含む接着材からなる歯科用接着キット、特開平11-180814号公報には酸性基含有(メタ)アクリレート/水溶性有機溶媒/水を含むセルフエッチングプライマーと酸性基および水酸基を有しない(メタ)アクリレート/光重合開始剤/光重合促進剤/フィラーを含む歯質接着剤からなる歯質接着剤セット、特開平6-24928号公報には特定の金属化合物/酸性基含有重合性単量体/重合性単量体を含有するプライマー溶液組成物とトリアルキルホウ素またはその部分酸化物を重合開始剤として含有する硬化性組成物からなる接着剤、特許第3449755号公報には酸性基含有ビニル重合化合物/水酸基含有水溶性ビニル化合物/水/芳香族アミンを含むプライマー組成物と酸性基含有アクリル系モノマー/酸性基非含有アクリル系モノマー/重合開始剤を含むアクリル系接着剤からなる接着剤キット等が挙げられる。
【0010】
これらの提案はいずれも、重合性の乏しい酸性基含有重合性単量体や水溶性重合性単量体を含むプライマー組成物の硬化性を向上させるために特定のボンディング材と組み合わせて用いることにより、歯質(エナメル質および象牙質)への接着性を実現している。しかし、プライマー組成物の構成成分に起因した低い硬化性は根本的に改善できておらず、そのためエナメル質および象牙質の両者に対する接着性と共に、その接着耐久性においても不十分な点が認められていた。
【0011】
特開平10-251115号公報には、酸基を含有する重合性化合物として、(A)-C-O-Pエステル結合を有するリン酸基含有重合性単量体、(B)多価カルボン酸基含有重合性単量体及び(C)水を主成分とする歯科用プライマーが開示されている。この歯科用プライマーによれば、象牙質およびエナメル質双方に20MPa以上の高い接着強さが得られる。しかしながら、このプライマーに用いられるリン酸基含有重合性単量体中のエステル結合は加水分解を受けやすく、貯蔵安定性や接着耐久性に問題があった。また、ポーセレンセラミックスなどの無機素材への接着に対しては、例えば3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が有用である。しかしながら、前述した様に、医科歯科用硬化性組成物にはエナメル質や象牙質などの骨・歯質などへの接着性が同時に求められるため、酸性を示す化合物と水が共存している。したがって、酸による加水分解を受けやすい従来技術の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤は共存出来なかった。よって、個別包装形態での供給をせざるを得ない状況であった。すなわち、ポーセレンセラミックスなどの無機素材への接着に対しては、まず3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング処理を行った後に、再度、医科歯科用硬化性組成物を塗布するなどの煩雑な術式が要求されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開昭62-33109号公報
【文献】特開昭62-231652号公報
【文献】特開昭63-279851号公報
【文献】特開平1-279815号公報
【文献】特開平5-163111号公報
【文献】特許第2865794号明細書
【文献】特許第3399573号公報
【文献】特許第2962628号公報
【文献】特開2004-137211号公報
【文献】特許第2782694号公報
【文献】特開平1-113057号公報
【文献】特許第2634276号公報
【文献】特許第3480654号公報
【文献】特許第3487389号公報
【文献】特開平7-82115号公報
【文献】特開昭62-223289号公報
【文献】特開平4-8368号公報
【文献】特開2000-212015号公報
【文献】特開2000-16911号公報
【文献】特開2004-26838号公報
【文献】特許第3236030号公報
【文献】特開2000-204010号公報
【文献】特開平9-295913号公報
【文献】特開平11-180814号公報
【文献】特開平6-24928号公報
【文献】特許第3449755号公報
【文献】特開平10-251115号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】Journal of Dental Research Vol.63, P1087-1089, 1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、揮発成分の除去後は十分に硬化して、ポーセレンセラミックス、骨、エナメル質および象牙質などの生体硬組織に強固に接着する接着性と過酷な口腔内環境下においても耐えうる接着耐久性を発現させることができる医科歯科用硬化性組成物を提供することにある。本発明が解決しようとするさらなる課題は、環境の温度や溶液の酸性度等により構成成分の加水分解による劣化や変質を受けにくい貯蔵安定性に優れた1液型の包装形態も可能とする医科歯科用硬化性組成物をも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、ウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物を、医科歯科用硬化性組成物に用いることで、上記課題を解決できることを見出した。より具体的には、分子中に炭素原子に直結した少なくとも一つのホスホン酸基(-PO(OH)2)またはホスホン酸モノエステル基(-PO(OH)(OR))と、少なくとも一つの重合性不飽和基とを有するホスホン酸基含有重合性単量体、および分子中に少なくとも2つ以上のカルボン酸基、あるいは水と容易に反応して2つ以上のカルボン酸基を生じる基と、少なくとも一つの重合性不飽和基とを持つ多価カルボン酸基含有重合性単量体と、ウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物を組み合わせて用いることにより、ポーセレンセラミックス、骨、エナメル質および象牙質などの生体硬組織の何れに対しても強固に接着することができ、かつ、過酷な口腔内環境下においても耐えうる接着耐久性も有していることを見出し、本発明を完成させた。さらに、ホスホン酸基含有重合性単量体、多価カルボン酸基含有重合性単量体と、ウレトジオン基および少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物とを組合せた医科歯科用硬化性組成物は水を共存させたpH2からpH3の酸性雰囲気下においても、構成成分の加水分解による劣化や変質を受けにくい優れた貯蔵安定性も有していることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0016】
本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物を、医科歯科用硬化性組成物に用いることで、ポーセレンセラミックス、骨、エナメル質および象牙質などの生体硬組織の何れに対しても強固に接着することができ、かつ、過酷な口腔内環境下においても耐えうる接着耐久性も有する。より具体的には、本発明の、ウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物と、ホスホン酸基含有重合性単量体、多価カルボン酸基含有重合性単量体、重合性単量体、水、水溶性有機溶媒、重合開始剤および光酸発生剤を含む医科歯科用硬化性組成物は、優れた接着性と接着耐久性を示し、加えて、水が共存した酸性雰囲気下においても、優れた貯蔵安定性も有していることも認められた。
【0017】
ここで、従来技術のポーセレンセラミックスへの接着機構と1液型の医科歯科用硬化性組成物調製の可能性について、また、本発明のウレトジオン基および少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物の、ポーセレンセラミックスへの接着機構と1液型の医科歯科用硬化性組成物調製の可能性について詳細に記述する。
【0018】
1級アミノ基を含有する化合物は酸性下にてカチオン性を示し正に帯電している。対してポーセレンセラミックスやガラス等の無機材料は表面にシラノール基が存在し、アニオン性を示し負に帯電している(ζ電位が負である)。したがって、1級アミノ基を含有する化合物とポーセレンセラミックスやガラス等の無機材料はそれらの静電的効果により結合(接着)する。ここで、骨、エナメル質および象牙質などの生体硬組織への接着にはホスホン酸基含有重合性単量体、多価カルボン酸基含有重合性単量体が有効である事は既に述べた通りである。よって、ポーセレンセラミックス、骨、エナメル質および象牙質などの生体硬組織の何れに対しても強固に接着させるためには、ホスホン酸基含有重合性単量体、多価カルボン酸基含有重合性単量体および1級アミノ基を含有する化合物を共存させ、1液型の医科歯科用硬化性組成物を調製すれば良い事になるが、これらを共存させた場合には1級アミノ基を含有する化合物はホスホン酸基含有重合性単量体や多価カルボン酸基含有重合性単量体と錯体形成し、接着能は失われる。したがって、1液型の医科歯科用硬化性組成物の調製は困難である。また、3-メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤は脱アルコールを経てシラノール基との縮合反応によりシロキサン結合を形成し接着する。これらシランカップリング剤は水および酸性モノマー共存の環境下にて容易に脱アルコールおよび縮合が進行するため、共存は困難である。よって、1液型の医科歯科用硬化性組成物の調製は困難である。さらに、2-イソシアナートエチルメタアクリレート等のイソシアナート基を有するラジカル重合性モノマーは、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基およびシラノール基等の活性水素を有する官能基と容易に反応する。したがって、ポーセレンセラミックスやガラス表面の改質に有効である。しかしながら、その活性の高さゆえ、水やアルコール共存下にて容易にそれらと反応が進行するため、共存は困難である。よって、1液型の医科歯科用硬化性組成物の調製は困難である。本発明のウレトジオン基および少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物はpH2からpH3の酸性雰囲気下において安定であるが、熱エネルギー付与、電磁波照射、光酸発生剤によるpHの著しい低下でウレトジオン基の分解が進行し、イソシアナート基が生成する。この生成したイソシアナート基を含有する化合物がポーセレンセラミックスやガラス等の無機材料のシラノール基と反応し強固な接着を示すと言う効果がある。したがって、本発明のウレトジオン基および少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物は水および酸性モノマーとの共存が可能で、1液型の医科歯科用硬化性組成物の調製が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物は[化2]に示した分子構造を持つものであれば何等制限なく用いることができる。またこのカップリング性有機化合物は1種だけでなく、複数を組み合わせで用いても良い。
【0020】
【化2】
【0021】
[化2]に示される構造をより詳しく説明すると、式中Aは、H2C=CH-, H2C=C(CH3)-, H2C=CH-C6H4- 基を表し(C6H4はフェニレン基を示す)、Bは、-C(O)-O-, -C(O)-S-, - C(O)-NH-, -NH-C(O)-NH-, -NH-C(O)-S-, -NH-C(O)-O- 基を表し、Rは、C1~C60の直鎖または分岐鎖のアルキレン基で、-C(O)-O-, -C(O)-S-, -C(O)-NH-, -NH-C(O)-NH-, -NH-C(O)-S-, -NH-C(O)-O-, -O-, -S- 基を含み得る。なお、aは1~6の整数である。
以下に本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物の代表的な化学構造をに記載する。
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
本発明のカップリング性有機化合物を医科歯科用硬化性組成物に用いる場合は、医科歯科用硬化性組成物100重量部において、1重量部~10重量部含むことが好ましく、より好ましくは4重量部~6重量部である。カップリング性有機化合物が1重量部より少ない場合には被着面のシラノール基に対しカップリング性有機化合物が少なすぎるため十分な接着強度が得られない。また逆に、10重量部を超える場合には、カップリング性有機化合物の相互の脆弱な結合(キセロゲル構造の未縮合部位の増大)が増大するため、十分な接着強度が得られない。
【0028】
本発明の医科歯科用硬化性組成物に用いるウレトジオン基および少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物以外の成分としては
(a) ホスホン酸基含有重合性単量体;
(b) 多価カルボン酸基含有重合性単量体;
(c) 重合性単量体;
(d) 水;
(e) 水溶性有機溶媒
(f) 重合開始剤
(g) 光酸発生剤
が挙げられ、それらの各成分の詳細について示す。
【0029】
(a) ホスホン酸基含有重合性単量体
本発明の医科歯科用硬化性組成物に必須成分として含まれるホスホン酸基含有重合性単量体(a)とは、分子中に少なくとも炭素原子に直結した一つの(-PO(OH)2)またはホスホン酸モノエステル基(-PO(OH)(OR))および少なくとも一つの重合性不飽和基を持つ重合性単量体を意味する。つまり、これらの条件を満たすものであれば、いかなる官能基を分子内に有するものであっても何等制限なく使用することができる。また、ホスホン酸基含有重合性単量体は分子内に有するホスホン酸基またはホスホン酸モノエステル基の数や(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等のラジカル重合可能な不飽和基の種類や数においても特に限定されない。本発明の医科歯科用硬化性組成物中にホスホン酸基含有重合性単量体を含有することにより、リン酸モノエステル基またはリン酸ジエステル基を有した重合性単量体と比較して、特にエナメル質に対して優れた歯質接着性能を発揮することができる。また、ホスホン酸基含有重合性単量体はホスホン酸基がエステル結合により酸素原子と結合していないことから、水を共存させた酸性雰囲気下においても分子内における加水分解を受けにくく、貯蔵安定性に優れている。そのため、包装形態も2分割された2液型の包装形態だけでなく、1液型の包装形態にすることも可能である。
【0030】
これらのホスホン酸基含有重合性単量体の中でも、歯質接着性と貯蔵安定性に優れた化8[式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数5~10のアルキレン基、R3は炭素原子数1~6のアルキレン基を示す。]で示されるホスホン酸基含有重合性単量体を用いることが好ましい。一般式(I)で示されるホスホン酸基含有重合性単量体を具体的に例示すると、[化21]の化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
これらのホスホン酸基含有重合性単量体は、単独で、もしくは複数を組み合わせて使用することができる。これらのホスホン酸基含有重合性単量体の中でも、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3-ホスホノプロピオネート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-3-ホスホノアセテート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホノプロピオネート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3-ホスホノプロピオネ-ト等を用いることがより好ましい。
【0036】
これらのホスホン酸基含有重合性単量体の含有量は、医科歯科用硬化性組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.1~40.0重量部の範囲である。
これらホスホン酸基含有重合性単量体の含有量が40.0重量部を越えると、重合性に基因した硬化性が低下するために、接着特性に悪影響を与える。一方、ホスホン酸基含有重合性単量体の含有量が0.1重量部未満になると、エナメル質に対する接着性において効果が認められない。
【0037】
(b) 多価カルボン酸基含有重合性単量体
本発明の医科歯科用硬化性組成物に必須成分として含まれる多価カルボン酸基含有重合性単量体(b)とは、分子中に少なくとも2つ以上のカルボン酸基、あるいは水と容易に反応して2つ以上のカルボン酸基を生じる基と、少なくとも一つの重合性不飽和基を持つ重合性単量体を意味する。つまり、これらの条件を満たすものであれば、いかなる官能基を分子に有していても何等制限なく使用することができる。また、多価カルボン酸基含有重合性単量体は分子内に有する(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等のラジカル重合可能な不飽和基の種類や数においても特に限定されない。本発明の医科歯科用硬化性組成物中に多価カルボン酸基含有重合性単量体を含有することにより、象牙質に対して優れた歯質接着性能を発揮することができる。
【0038】
多価カルボン酸基含有重合性単量体を具体的に例示すると、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1,4-ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸、1-ブテン1,2,4-トリカルボン酸、3-ブテン1,2,3-トリカルボン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ-ト、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエ-ト、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸およびこれらの無水物、6-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ヘキサンジカルボン酸、8-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-オクタンジカルボン酸、10-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-デカンジカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの多価カルボン酸基含有重合性単量体は単独で、もしくは複数を組み合わせて使用することができる。これらの多価カルボン酸基含有重合性単量体の中でも、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4-アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物等を用いることがより好ましい。
【0039】
これらの多価カルボン酸基含有重合性単量体の含有量は、医科歯科用硬化性組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.1~40.0重量部の範囲である。これら多価カルボン酸基含有重合性単量体の含有量が40.0重量部を越えると重合性
に基因した硬化性が低下するために、接着特性に悪影響を与える。一方、多価カルボン酸基含有重合性単量体の含有量が0.1重量部未満になると象牙質に対する接着性において効果が認められない。
【0040】
また、本発明の医科歯科用硬化性組成物において生体硬組織に対する接着性をさらに増強させる場合、または貴金属等を含む各種被着体に対する接着性を付与する場合は、ホスホン酸基含有重合性単量体や多価カルボン酸基含有重合性単量体以外の酸性基含有重合性単量体、分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体を組み合わせて含むことができる。ホスホン酸基含有重合性単量体や多価カルボン酸基含有重合性単量体以外の酸性基含有重合性単量体としては、分子内に少なくとも1つ以上の酸性基を有するものであれば、特に酸性基の種類は限定されず、いずれの酸性基を有する酸性基含有重合性単量体であっても用いることができる。それらの酸性基含有重合性単量体が有する酸性基を具体的に例示すると、リン酸基(モノエステルまたはジエステル)、モノカルボン酸基、ピロリン酸基、スルホン酸基、チオリン酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの酸性基を含有する重合性単量体が有するラジカル重合可能な不飽和基の数(単官能性基または多官能性基)やその種類においても何等制限なく用いることができる。酸性基含有重合性単量体が有する不飽和基を具体的に例示すると、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、これら不飽和基の中でも(メタ)アクリロイル基を有している酸性基含有重合性単量体であることが好ましい。さらにこれらの酸性基含有重合性単量体は、分子内にアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基および水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもできる。
【0041】
不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した酸性基含有重合体を具体的に例示すると以下の通りである。リン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシブチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキシルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシオクチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシノニルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシデシルハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2-ジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2’-ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、モノカルボン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、2-クロロ(メタ)アクリル酸、3-クロロ(メタ)アクリル酸、2-シアノ(メタ)アクリル酸、N-(メタ)アクリロイル-p-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-5-アミノサリチル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、p-ビニル安息香酸、5-(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
また、ピロリン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、ピロリン酸ジ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ピロリン酸ジ[3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル]、ピロリン酸ジ[4-(メタ)アクリロイルオキシブチル]、ピロリン酸ジ[5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル]、ピロリン酸ジ[6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]、ピロリン酸ジ[7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチル]、ピロリン酸ジ[8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル]、ピロリン酸ジ[9-(メタ)アクリロイルオキシノニル]、ピロリン酸ジ[10-(メタ)アクリロイルオキシデシル]、ピロリン酸ジ[12-(メタ)アクリロイルオキシドデシル]、ピロリン酸テトラ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ピロリン酸トリ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
また、スルホン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレ-ト、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
また、チオリン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンジチオホスフェ-ト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
以上に酸性基含有重合性単量体を示したが、これらに限定されるものではなく、またこれらの酸性基を有した重合性単量体を単独または複数を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの酸性基含有重合性単量体は主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー、およびポリマー等も何等制限なく用いることができる。これらの酸性基含有重合性単量体が有する酸性基を部分的に中和された金属塩やアンモニウム塩または酸塩化物等の酸性基含有重合性単量体の誘導体も種々の被着体への接着性に悪影響を与えない程度であれば用いることができる。
【0047】
本発明の医科歯科用硬化性組成物に貴金属に対する接着性を付与するためには、分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体を使用することも本発明にとって有効である。分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体であれば、不飽和基の種類や数およびその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体を具体的に例示するとトリアジンチオール基を有する(メタ)アクリレート、メルカプト基を有する(メタ)アクリレート、ポリスルフィド基を有する(メタ)アクリレート、チオリン酸基を有する(メタ)アクリレート、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリレート、メルカプトジアチアゾール基を(メタ)アクリレート、チオウラシル基を有する(メタ)アクリレート、チイラン基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体を単独または複数を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(c) 重合性単量体
本発明の医科歯科用硬化性組成物に用いることができる重合性単量体(c)としては、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。重合性単量体が有するラジカル重合可能な不飽和基の種類としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルミド基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、特に(メタ)アクリロイル基や(メタ)アクリルミド基を不飽和基として有している重合性単量体を用いることが好ましい。具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等の窒素含有化合物、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)-2(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2, 2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1, 3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。脂肪族系四官能基含有の疎水性重合性単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する重合性単量体とメチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能または三官能以上の重合性基を有し、かつウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等、2,2-ビス(4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis-GMA)、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン(D-2.6E)、ジ(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジウレタン(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル-1,3-ジ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル-1,2-ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2-トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリルクロライド、(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9以上のもの)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9のもの)、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が14のもの)、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が23のもの)等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明の医科歯科用硬化性組成物に必須成分として含まれる水(d)は、医科歯科用硬化性組成物中に含まれているホスホン酸基含有重合性単量体や多価カルボン酸基含有重合性単量体等が有する酸性基を活性化して、生体硬組織への脱灰作用を助長したり、生体硬組織への浸透を促進させたりする働きがある。そのため、水は貯蔵安定性、生体適合性、重合性および生体硬組織接着性等に対して悪影響を及ぼすような不純物を含有していないものであれば何等制限なく使用することができる。好ましくは蒸留水またはイオン交換水を使用することである。水は、本発明の医科歯科用硬化性組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.1~80.0重量部の範囲である。水の含有量が80.0重量部を越えると組成物が均一な状態を維持できずに分離する等の貯蔵安定性に悪影響を与える。一方、水の含有量が0.1重量部未満になると生体硬組織を含めた各種被着体に対して十分な接着性を得ることができない。
【0050】
(e) 水溶性有機溶媒
本発明の医科歯科用硬化性組成物に必須成分として含まれる水溶性有機溶媒(e)は、医科歯科用硬化性組成物中に含まれているホスホン酸基含有重合性単量体や多価カルボン酸基含有重合性単量体を含む種々の重合性単量体、水、重合開始剤およびその他の配合成分を任意の割合で相溶させる溶解促進材的な役割を有しているとともに、医科歯科用硬化性組成物の歯質への浸透を促進させる働きがある。また、医科歯科用硬化性組成物の液粘度を低下させ、容器からの滴下や接着させる部位への塗布等の操作性を向上させることができる。この水溶性有機溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノ-ル等のアルコール類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物類等の水溶性有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではなく何等制限なく使用することができる。また、これらの水溶性有機溶媒は単独または数種を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性有機溶媒の中でも水との相溶性に優れるメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトンが好ましく、より好ましくはアセトン、エタノールである。
【0051】
有機溶媒の含有量は、本発明の医科歯科用硬化性組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.1~80.0重量部の範囲である。有機溶媒の含有量が80.0重量部を越えると歯質に対する接着性が低下する。一方、有機溶媒の含有量が0.1重量部未満になると組成物が均一な状態を維持できずに分離する等の貯蔵安定性に悪影響を与える。
【0052】
(f) 重合開始剤
本発明の医科歯科用硬化性組成物に必須成分として含まれる重合開始剤(f)は特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。重合開始剤の種類としては、一般に使用直前に混合することにより重合を開始させるもの(化学重合開始剤)、加熱や加温により重合を開始させるもの(熱重合開始剤)、光照射により重合を開始させるもの(光重合開始剤)に大別されるが、いずれも単独または複数を組み合わせて用いることができる。
【0053】
前述の化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン化合物または有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合開始剤系、酸素や水と反応して重合を開始する有機ホウ素化合物類、過硼酸塩類、過マンガン酸塩類、過硫酸塩類等の重合開始剤系が挙げられ、さらにスルフィン酸塩類、ボレート化合物類およびバルビツール酸類も水および/または酸性基を有する重合性単量体と共存させることにより重合を開始させることもできる。
【0054】
有機過酸化物を具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記有機過酸化物を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
アミン化合物としては、アミン基がアリール基に結合した第2級または第三級アミンが好ましく、具体的に例示すると、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアニリン、N-β-ヒドロキシエチル-アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N-メチル-アニリン、N-メチル-p-トルイジン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記アミン化合物を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
【0056】
スルフィン酸塩類として具体的に例示すると、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記スルフィン酸塩類を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
【0057】
ボレート化合物として具体的に例示すると、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p-フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn-ブチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記ボレート化合物を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
【0058】
バルビツール酸類として具体的に例示すると、バルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3-ジフェニルバルビツール酸、1,5-ジメチルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、5-エチルバルビツール酸、5-イソプロピルバルビツール酸、5-シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-エチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-n-ブチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-イソブチルバルビツール酸、1,3―ジメチル―バルビツール酸、1,3-ジメチル-5-シクロペンチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-シクロヘキシルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸およびチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属類が好ましい)、例えば、5-ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5-トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5-トリメチルバルビツール酸カルシウムおよび1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸ナトリウムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記バルビツール酸類を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
【0059】
本発明の医科歯科用硬化性組成物を単独で使用する場合は、これらの化学重合開始剤を少なくとも二つ以上の包装形態に分割して含ませる必要がある。また、本発明の医科歯科用硬化性組成物を他の組成物ともに使用する場合は医科歯科用硬化性組成物が他の組成物と接触することにより化学重合が開始するように化学重合開始剤を本発明の医科歯科用硬化性組成物と他の組成物の両方にそれぞれ含ませることもできる。これらの化学重合開始剤の中でも、スルフィン酸塩類、バルビツール酸類、有機過酸化物-第3級アミン等をそれぞれ単独または組み合わせて用いることが好ましく、より好ましくは有機過酸化物-第3級アミン、有機過酸化物-第3級アミン-バルビツール酸類、有機過酸化物-第3級アミン-スルフィン酸塩類を用いることである。これらの化学重合開始剤は医科歯科用硬化性組成物100重量部に対して0~15.0重量部の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.1~10.0重量部の範囲で含有することである。
【0060】
光重合開始剤としては、光増感剤のみの系からなるものまたは光増感剤/光重合促進剤の組み合わせからなるもの等が挙げられる。また、上記光増感剤としては紫外線により重合が開始するものと可視光線により重合が開始するものに大別される。
【0061】
光重合開始剤として用いることができる光増感剤を具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α-ナフチル、アセトナフセン、p,p’-ジメトキシベンジル、p,p’-ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2-フェナントレンキノン、1,4-フェナントレンキノン、3,4-フェナントレンキノン、9,10-フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα-ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-メトキシチオキサントン、2-ヒドロキシチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、アセトインベンゾフェノン、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2-ベンジル―ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ベンジル―ジエチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-プロパノン-1等のα-アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2-メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピロリル)フェニル]-チタン、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(ペンタンフルオロフェニル)-チタン、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ジシロキシフェニル)-チタン等のチタノセン類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記光増感剤を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
【0062】
光重合開始剤として用いることができる光重合促進剤を具体的に例示すると、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-n-ブチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、m-クロロ-N,N-ジメチルアニリン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N-ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-ジメチルアミノフェニルアルコール、p-ジメチルアミノスチレン、N,N-ジメチル-3,5-キシリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-α-ナフチルアミン、N,N-ジメチル-β-ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’-(n-ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、N-フェニルグリシン等の第2級アミン類、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5-トリメチルバルビツール酸カルシウム酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル-1,3-ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾオキサゾール、1-デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記光重合促進剤を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
【0063】
さらに、光重合促進能の向上のために、上記光重合促進剤に加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α-オキシイソ酪酸、2-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類を添加することが効果的である。
【0064】
また、光重合開始剤を用いる場合は一つの包装形態または二つ以上に分割された包装形態であっても特に制限はない。これらの光重合開始剤の中でも、α-ジケトンと第三級アミンまたはα-ジケトンとスズ化合物類の組み合わせが好ましく、より好ましくはカンファーキノンとp-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミノ基がベンゼン環に直結した芳香族第三級アミンまたはN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート等の分子内に二重結合を有した脂肪族第三級アミン等の組み合わせ、さらにはカンファーキノンとジブチルスズジラウレートやジオクチルスズジラウレート等のスズ化合物類の組み合わせである。これらの光重合開始剤の含有量はそれぞれの医科歯科用硬化性組成物100重量部に対して0.1~15.0重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1~10.0重量部の範囲で含有することである。最も好ましくは0.1~8.0重量部の範囲で含有することである。
【0065】
また、加熱や加温による熱重合開始剤としては、上記有機過酸化物の他にアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用されるが、これに限定されるものではない。また、これらの熱重合開始剤を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。さらに、使用用途に応じて他に、クマリン系、シアニン系、チアジン系等の増感色素類、ハロメチル基置換-s-トリアジン誘導体、ジフェニルヨードニウム塩化合物等の光照射によりブレンステッド酸またはルイス酸を生成する光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等も適宜使用することができる。
【0066】
(g) 光酸発生剤
本発明の医科歯科用硬化性組成物に必須成分として含まれる光酸発生剤(g)は特に限定されず、公知の光酸発生剤が何等制限なく用いられる。光酸発生剤の種類としては、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、2-メチル-2-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-1-プロパノン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム‐p-トルエンスルホネート、ジフェニル(4-メトキシフェニル)スルホニウム‐トリフルオロメタンスルホネート、Tris(4-メチルフェニル)スルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(1R,2S,5R)-5-メチル-2-(プロパン-2-イル)シクロヘキシル‐4-メチルベンゼンスルホネート、2,4,6-tris(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン 等が挙げられるが、いずれも単独または複数を組み合わせて用いることができる。
【0067】
また、光酸発生剤(g)とあわせて、光増感剤を用いることができる。光増感剤を具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α-ナフチル、アセトナフセン、p,p’-ジメトキシベンジル、p,p’-ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2-フェナントレンキノン、1,4-フェナントレンキノン、3,4-フェナントレンキノン、9,10-フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα-ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-メトキシチオキサントン、2-ヒドロキシチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、アセトインベンゾフェノン、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2-ベンジル―ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ベンジル―ジエチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-プロパノン-1等のα-アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2-メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピロリル)フェニル]-チタン、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(ペンタンフルオロフェニル)-チタン、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ジシロキシフェニル)-チタン等のチタノセン類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記光増感剤を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。また、光増感剤の中には光重合開始剤としても働くものもあり、本発明の医科歯科用硬化性組成物に用いる場合には、重合開始剤として配合することもできる。
【0068】
本発明の医科歯科用硬化性組成物を増粘させて操作性を向上させる、または接着界面層に機械的な強度を付与して接着性を向上させることを目的として医科歯科用硬化性組成物にフィラーを含むことができる。フィラーとしては特に限定されることなく、歯科用フィラーとして公知なものを用いることができる。例えば、無機フィラーおよび/または有機フィラーおよび/または有機-無機複合フィラー等が挙げられ、これらは1種または数種を組み合わせても何等制限なく用いることができる。また、これらのフィラーの形状は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状で良く特に限定されない。さらにこれらのフィラーの粒子径も特に制限はないが、沈降や分離等の問題から0.001~10μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.01~5μmの範囲である。これらのフィラーの中でも超微粒子である気相法により生成したアエロジルまたは超微粒子シリカ複合粒子であるゾル-ゲル反応等の溶液中から生成したシリカージルコニア酸化物粒子等は医科歯科用硬化性組成物中に配合することにより増粘剤として働くために、本発明にとっては効果的である。アエロジルを具体的に例示するとアエロジル200、アエロジルOX50、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR8200、アエロジルR711、アエロジルDT4、酸化アルミニウムC、二酸化チタンP25等が挙げられる。また、意図的にそれらの超微粒子を凝集させた凝集性無機フィラー等を用いても何等問題はない。
【0069】
また、医科歯科用硬化性組成物の中には、2-ヒドロキシ-4-メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5-ジ-ターシャリーブチル-4-メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加することができる。
【0070】
本発明の医科歯科用硬化性組成物における使用方法は特に制限されずに、単独での使用だけでなく、エッチング材、プライマー、ボンディング材、セルフエッチングプライマー、セラミックプライマー、メタルプライマー、貴金属プライマー等のその他の組成物と適宜組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明の医科歯科用硬化性組成物は組成物中に含まれる成分の構成により、貯蔵安定性に優れていることが特徴である。そのため1包装形態にすることができる。また、本発明の医科歯科用硬化性組成物に配合される成分割合、重合開始剤の種類、使用方法または使用目的等により、二つ以上の複数の包装形態にすることもでき、適宜選択することができる。
【実施例
【0072】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例にて調製した医科歯科用硬化性組成物の性能を評価する試験方法は次の通りである。
【0073】
(1)接着性試験
評価目的:医科歯科用硬化性組成物を用いたエナメル質および象牙質に対する歯質接着性、およびポーセレンへの接着性の評価。

評価方法:屠殺後、抜去した牛歯下顎永久歯中切歯を24時間以内に冷凍保存したものを解凍後、歯根部の除去および歯冠部の切断を行って牛歯細片を作製し、その牛歯細片をエポキシ樹脂にて包埋を行う。その包埋牛歯を注水下、#600番の耐水研磨紙にてエナメル質または象牙質を露出させて水洗・乾燥する。この露出したエナメル質または象牙質に直径4mmの穴の空いた両面テープを貼って接着面を規定する。その規定した接着面に実施例または比較例で調製した医科歯科用硬化性組成物を塗布し光重合照射器(グリップライトII、株式会社松風製)を用いて30秒間光照射を行い硬化させ接着処理を行った。その後、その接着処理した面にプラスチックモールド(内径4mm、高さ2mm)を固定して、光重合型コンポジットレジン(ビューティフィル、株式会社松風製)をそのモールド内部に充填し、光重合照射器(グリップライトII、株式会社松風製)を用いて30秒間光照射を行い硬化させる。硬化後、モールドを除去し、それを接着試験体とする。この接着試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用いてクロスヘッドスピード1mm/分で剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。また、牛歯下顎永久歯中切歯に代え陶材料円盤状平板(直径15.0、高さ5.0mm:ヴィンテージハロー、株式会社松風製)への接着性試験を行った。すなわち、陶材被着体(#600番研磨済)にサンドブラスト処理(0.2MPa)を行い、超音波洗浄後に自然乾燥させたサンプルに歯質同様の試験を行った。
【0074】
(2)接着耐久性試験
評価目的:医科歯科用硬化性組成物を用いたエナメル質および象牙質に対する歯質接着性、およびポーセレンへの接着性の評価。

評価方法:接着性試験と同様に接着試験体を作製した後、その接着性試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬する。その後、4℃および60℃の恒温水槽に各1分間ずつ交互に浸漬するサーマルサイクルを2000サイクル実施する。サーマルサイクル終了後、この接着試験体をインストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分で剪断接着強さによる歯質接着性試験およびポーセレン接着性試験を行う。
【0075】
(3)貯蔵安定性試験
評価目的:調製した各種医科歯科用硬化性組成物を50℃の環境下で4週間保存し、その組成物を用いたエナメル質および象牙質に対する接着性の評価。

評価方法: 接着性試験と同様の方法にて剪断接着強さによる接着性試験を行う。
【0076】
本発明の実施例および比較例の各医科医科歯科用硬化性組成物に用いた材料の略号は以下の通りである。

ウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物
UDN1:(2,4-ジオキソ-1,3-ジアゼチジン-1,3-ジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル) ビス(2-メタクリレート)
UDN2:(2,4-ジオキソ-1,3-ジアゼチジン-1,3-ジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル) ビス(2-アクリレート)
UDN:(((2,4-ジオキソ-1,3-ジアゼチジン-1,3-ジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-2,1-ジイル) ビス(2-メタクリレート)
UDN4:(2,4-ジオキソ-1,3-ジアゼチジン-1,3-ジイル)ビス(2-メチルプロパン-2,1,3-トリイル) テトラアクリレート
UDN5:2-(3-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアゼチジン-1-イル)-2-メチルプロパン-1,3-ジイル ジアクリレート

その他
SC_C1: 3-アミノプロピルトリメトキシシラン
SC_C2: 3-メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン

(a) ホスホン酸基含有重合性単量体;
MHPA:6-メタクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート
その他
MHP:6-メタクリロイルオキシヘキシルジハイドロジエンホスフェート
MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジエンホスフェート
(b) 多価カルボン酸基含有重合性単量体;
AET:4-アクリロイルオキシエチルトリメリット酸
(c) 重合性単量体;
Bis-GMA:2,2-ビス(4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
UDMA:ジ(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジウレタン
TGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチル(メタ)メタクリレート
(f) 重合開始剤
CQ:カンファーキノン
DMBE:p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル
(e) 水溶性有機溶媒
EtOH:エタノール
(d) 水;
DW:蒸留水
(g) 光酸発生剤
PA:2,4,6-tris(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン
その他
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
【0077】
医科歯科用硬化性組成物の調製
表1.医科歯科用硬化性組成物の組成表 に示した組成にて、1液型医科歯科用硬化性組成物(調合例1~7)をそれぞれ調製し、実施例および比較例に用いた。
【0078】
【表1】

【0079】
評価結果
本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物を含有した医科歯科用硬化性組成物の接着性試験に関して、表2に接着性試験結果、表3に接着耐久性試験結果、表4に貯蔵安定性試験結果を示す。
これらの結果より分かるように、本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物を含有した医科歯科用硬化性組成物は歯質およびポーセレンに対し良好な接着性能を有する事が分る。しかしながら、1級アミノ基を末端に有するシランカップリング剤(比較例1)や従来から医科歯科分野で使用されているシランカップリング剤(比較例2)では調製直後から既に著しく接着能が低い事が分る。これは、比較例1の場合、1級アミノ基はホスホン酸基やカルボン酸基を有する重合性単量体と錯体形成するために、歯質およびポーセレンに対する接着活性を失うためと推察される。また、比較例2の場合はシランカップリング剤の脱アルコール(加水分解反応)が進行し、縮合するために、同様に接着活性を失うためと推察される。対して、本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物は貯蔵安定性試験後も分解する事無く安定した接着性を示した。これは、本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物は耐酸性が高く加水分解反応が抑制されたためと考えられる。以上の評価結果より、本発明のウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物は耐酸性が高く、従来技術では貯蔵困難なpH2から3の酸性下でも安定に存在が可能となった。これにより、1液性の医科歯科用硬化性組成物の製造が可能となった。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によるウレトジオン基および、少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を分子内に併せ持つカップリング性有機化合物は従来技術では1液化が困難であったpH2から3の酸性下での共存が可能となった。これに伴い、骨、歯質およびポーセレン等への接着がワンポット組成で可能となった。この技術開発は困難とされてきた1液性の医科歯科用硬化性組成物の進展に大きく寄与するものと考えられ、産業上での利用価値は高いと言える。