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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20220214BHJP
【FI】
B43K3/00 J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017134849
(22)【出願日】2017-07-10
(65)【公開番号】P2019014192
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】チャン ダン フォン
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159173(JP,A)
【文献】特開2006-199024(JP,A)
【文献】特開2008-068524(JP,A)
【文献】特開2003-001992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材及び該第1部材の外面を覆うように形成された第2部材を有するキャップと、筆記具本体と、を具備する筆記具であって、
前記第1部材と前記第2部材とが二色成形によって形成され、前記第1部材が一次成形品であり、前記第2部材が二次成形品であり、
前記第1部材が第1当接面を有し、前記筆記具本体が第2当接面を有し、前記キャップと前記筆記具本体との嵌合時には、前記第1当接面と前記第2当接面とが当接し、
前記第1当接面近傍における前記第1部材と前記第2部材との境界部において、凹部又は凸部が形成され
前記凹部又は前記凸部が前記第1部材の後端面の外周縁に形成され、前記凹部又は前記凸部が前記第2部材によって覆われ且つ前記第1当接面が前記第2部材によって覆われていないことを特徴とする筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質樹脂から形成される第1部材と、第1部材の外面を覆うように形成された、エラストマー等の軟質樹脂から形成される第2部材とを備えたキャップを有し、第1部材と第2部材とが二色成形によって形成された筆記具が公知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の筆記具では、筒状の第1部材(クリップ部材2)の後端面(後端面4c)が筆記具本体の当接面(係止面7c)と当接し、キャップと筆記具本体との嵌合が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-159173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、第1部材を一次成形した後、第2部材を二次成形するまでの間に、第1部材が僅かばかり成形収縮した結果、型との間に間隙が生じ、二次成形時に間隙に樹脂が流入することによって、バリが形成されてしまう場合がある。バリが形成されないように、成形収縮量を考慮して、金型を製作する方法もあるが、収縮率を完全に予測することは困難である。
【0006】
これに関し、図13を参照しながら簡単に説明する。図13は、キャップの成形収縮及び二次成形の様子を説明する図である。図13において、(A)は、本来、二次成形を行いたい状態の一次成形品100とコアピン110とを示す概略図であり、(B)は、一次成形品100とコアピン110と二次成形品120とを示す概略図である。成形収縮によって、間隙Gが生じた結果、二次成形の樹脂が間隙に流入し、バリ130が形成されている。
【0007】
一次成形品100である第1部材の当接面140の一部が、バリ130によって覆われてしまうと、キャップを筆記具本体に嵌合させる際に、筆記具本体の当接面が、当接面140よりも先にバリ130と当接してしまい、嵌合が不良となる。それによって、キャップ内の気密性が失われた結果、ペン先からインクが揮発して筆記不能となってしまったり、キャップの筆記具本体からの脱落が生じたりする。また、ユーザーが、筆記具本体に対するキャップ装着時にクリック感が得られないという問題もある。
【0008】
本発明は、キャップの嵌合を阻害するようなバリの形成を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、第1部材及び該第1部材の外面を覆うように形成された第2部材を有するキャップと、筆記具本体と、を具備する筆記具であって、前記第1部材と前記第2部材とが二色成形によって形成され、前記第1部材が一次成形品であり、前記第2部材が二次成形品であり、前記第1部材が第1当接面を有し、前記筆記具本体が第2当接面を有し、前記キャップと前記筆記具本体との嵌合時には、前記第1当接面と前記第2当接面とが当接し、前記第1当接面近傍における前記第1部材と前記第2部材との境界部において、前記第1部材に凹部又は凸部が形成されていること特徴とする筆記具が提供される。
【0010】
また、別の態様によれば、前記第1当接面が前記第2部材によって覆われていなくてもよい。
【0011】
また、別の態様によれば、前記凹部又は前記凸部が段差又は斜面であってもよい。
【0012】
また、別の態様によれば、前記第2部材が、軟質樹脂で形成してもよい。
【0013】
また、別の態様によれば、当該筆記具が熱変色性筆記具であり、前記第2部材によって擦過した際に生じる摩擦熱によって当該筆記具の筆跡を容易に熱変色可能であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、キャップの嵌合を阻害するようなバリの形成を防止するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による筆記具の縦断面図である。
図2】転がり防止部材の斜視図である。
図3】キャップ本体の斜視図である。
図4】キャップの拡大縦断面図である。
図5】キャップと筆記具本体との嵌合部分の拡大縦断面図である。
図6】キャップの一次成形時の分割面における縦断面図である。
図7】キャップの二次成形時の分割面における縦断面図である。
図8】キャップの成形収縮及び二次成形の様子を説明する図である。
図9】第2実施形態による筆記具のキャップの成形収縮及び二次成形の様子を説明する図である。
図10】第2実施形態による筆記具の転がり防止部材の第1当接面の拡大縦断面図である。
図11】第3実施形態による筆記具の転がり防止部材の第1当接面の拡大縦断面図である。
図12】第4実施形態による筆記具の転がり防止部材の第1当接面の拡大縦断面図である。
図13】キャップの成形収縮及び二次成形の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態による筆記具1の縦断面図である。筆記具1は、キャップ2と、キャップ2を嵌合させる筆記具本体3と、筆記具本体3内に配置され且つ一端に筆記部4を備えた筆記体であるリフィル5と、を有している。本明細書中では、筆記具1の軸線方向において、筆記部4側を「前」側と規定し、筆記部4とは反対側を「後」側と規定する。
【0018】
キャップ2は、第1部材である転がり防止部材10と、転がり防止部材10の外面を覆うように形成された第2部材であるキャップ本体20とを有している。転がり防止部材10とキャップ本体20とは二色成形によって形成され、転がり防止部材10が、硬質樹脂から形成される一次成形品であり、キャップ本体20が、エラストマー等の軟質樹脂から形成される二次成形品である。なお、ここで述べる軟質樹脂とは、ゴム弾性を有する粘弾性材料を示し、材料の表面硬度がJIS K6203に規定されるデュロメータA硬度で0~90、又はデュロメータD硬度で40未満を示す。また、転がり防止部材10とキャップ本体20は、同一の材料で形成してもよい。
【0019】
図2は、転がり防止部材10の斜視図であり、図3は、キャップ本体20の斜視図であり、図4は、キャップ2の前側の拡大縦断面図である。
【0020】
転がり防止部材10は、筒状の部材であり、一端には、径線方向の略中心に円形の貫通孔が設けられた端面11が形成されている。キャップ2の軸線方向において、端面11が形成されている側を「前」側と規定し、端面11とは反対側の完全に開口している側を「後」側と規定する。
【0021】
転がり防止部材10の外周面には、軸線方向に亘って延び且つ径方向外方へ突出する板状突起12が形成されている。板状突起12には、3つの貫通孔13が軸線方向に沿って等間隔に形成されている。二色成形の際には、貫通孔13内に二次成形の樹脂が流入し、転がり防止部材10及びキャップ本体20の結合を高めている。また、転がり防止部材10の外周面には、その他の溝や穴が形成され、転がり防止部材10及びキャップ本体20の結合力をさらに高めている。
【0022】
転がり防止部材10の端面11近傍の内周面には、複数のリブ14が形成されている。複数のリブ14は、キャップ2に挿入された筆記具本体3の筆記先端を案内し且つ保持する。また、転がり防止部材10の後端の開口近傍の内周面には、複数の嵌合突起15が形成されている。複数の嵌合突起15は、キャップ2に挿入された筆記具本体3の後部を案内し且つ保持する。転がり防止部材10の後端面の外周縁には、後述するように、第1当接面16と、第1当接面16に対して前方に向かって窪んだ凹部17が環状に形成されている。
【0023】
キャップ本体20は、筒状の部材であり、一端には、円形の貫通孔が設けられた端面21が形成されている。キャップ本体20は、転がり防止部材10の外面を覆い、転がり防止部材10の後端を越えてさらに後方へ延びている。キャップ本体20の外周面は円滑に形成されており、転がり防止部材10の板状突起12に相当する部分には、板状突起12の周囲に二次成形の樹脂が充填されることで、緩やかな突状部22が形成されている。キャップ2が突状部22を有することによって、キャップ2、ひいては筆記具1が机上等で転がることを防止できる。キャップ本体20の内周面には、係止突起23が全周に亘って形成されている。
【0024】
図5は、キャップ2と筆記具本体3との嵌合部分の拡大縦断面図であり、具体的には図1のA部の拡大図である。転がり防止部材10は、第1当接面16と、前方に向かって窪んだ凹部17とを有している。嵌合部分近傍の筆記具本体3の外周面には、嵌合突起6が全周に亘って形成されている。嵌合突起6の前方部分は段差状に形成され、この段差部分には、前方に面した環状の第2当接面7が形成されている。図5において、転がり防止部材10の第1当接面16と筆記具本体3の第2当接面7とが、一致するように当接する。
【0025】
ここで、嵌合の過程を簡単に説明する。キャップ2内に筆記具本体3を挿入すると、筆記具本体3の嵌合突起6が、キャップ本体20の係止突起23と当接し係止する。この状態からさらに筆記具本体3を押し込むと、キャップ本体20が径方向外側に向かって弾性変形し、筆記具本体3の嵌合突起6が、キャップ本体20の係止突起23を乗り越え、筆記具本体3の第2当接面7が、転がり防止部材10の第1当接面16に衝突し、嵌合が完了する。この衝突の際に、ユーザーにとって心地の良いクリック音を生じさせる。
【0026】
図6は、キャップ2の一次成形時の分割面における縦断面図である。一次成形では、第1金型30を用いることによって、転がり防止部材10が成形される。第1金型30は、転がり防止部材10の内面と相補的な形状である第1コアピン31と、第1コアピン31の先端と突合する第2コアピン32と、第1コアピン31及び第2コアピン32の周囲を囲む第1型部33とを有している。図6は、第1金型30の分割面における断面であることから、図6では、第1型部33は、断面ではなくてその表面が示されている。すなわち、図6に示された面で、同一形状の他方の第1型部33と型合わせされる。
【0027】
第1コアピン31、第2コアピン32及び2つの第1型部33が型合わせされた状態の隙間は、転がり防止部材10の外形に対応するように形成される。したがって、射出成形機のノズル(図示せず)から射出された成形材料(樹脂)をスプルー(図示せず)から第1型部33内のゲート34を通してこの隙間に流し込むことによって、転がり防止部材10を射出成形することができる。
【0028】
図7は、キャップ2の二次成形時の分割面における縦断面図である。二次成形では、第2金型40を用いることによって、キャップ本体20が成形される。第2金型40は、キャップ本体20の内面と相補的な形状である第3コアピン41と、第3コアピン41の先端と突合する第4コアピン42と、第3コアピン41及び第4コアピン42の周囲を囲む第2型部43とを有している。図7は、第2金型40の分割面における断面であることから、図7では、第2型部43は、断面ではなくてその表面が示されている。すなわち、図7に示された面で、同一形状の他方の第2型部43と型合わせされる。
【0029】
第3コアピン41、第4コアピン42及び2つの第2型部43が型合わせされた状態の隙間は、キャップ本体20の外形に対応するように形成される。したがって、射出成形機のノズル(図示せず)から射出された成形材料(樹脂)をスプルー(図示せず)から第4コアピン42のゲート44を通してこの隙間に流し込むことによって、キャップ本体20を射出成形することができる。
【0030】
図8は、キャップ2の成形収縮及び二次成形の様子を説明する図である。図8において、(A)は、本来、二次成形を行いたい状態の転がり防止部材10と第3コアピン41とを示す概略図であり、(B)は、転がり防止部材10と第3コアピン41とキャップ本体20とを示す概略図である。転がり防止部材10の成形収縮によって、転がり防止部材10と第3コアピン41との間に間隙が生じている。
【0031】
これに関し、第3コアピン41には、設計上は転がり防止部材10の凹部17に相補的な突状のシール凸部45が、凹部17に対向して設けられている。シール凸部45の高さ、すなわち設計上の転がり防止部材10における第1当接面16と凹部17の底面18との距離、さらに言い換えると、第3コアピン41における設計上の転がり防止部材10の第1当接面16に当接する面と凹部17の底面18に当接する面との距離は、想定される間隙の幅よりも大きく設計される。その結果、転がり防止部材10の凹部17と第3コアピン41のシール凸部45との間で微小キャビティ46が形成される。二次成形時には、微小キャビティ46内へは樹脂が流入するものの、転がり防止部材10の第1当接面16に及ぶような、すなわちシール凸部45を越えるような樹脂の流入が防止される。
【0032】
よって、本実施形態によれば、転がり防止部材10の第1当接面16と筆記具本体3の第2当接面7との当接、すなわちキャップ2と筆記具本体3との嵌合を阻害するような、転がり防止部材10の第1当接面16上へのバリの形成を防止することができるという効果を奏する。
【0033】
以下、同様の効果を奏する別の実施形態について説明する。
【0034】
図9は、第2実施形態による筆記具のキャップの成形収縮及び二次成形の様子を説明する図であり、図10は、第2実施形態による筆記具の転がり防止部材50の第1当接面51の拡大縦断面図である。
【0035】
第1実施形態による筆記具では、転がり防止部材10の後端面に、第1当接面16に対して前方に向かって窪んだ凹部17が環状に形成されていたのに対し、第2実施形態による筆記具では、転がり防止部材50の後端面に、第1当接面51に対して後方に向かって突出する凸部52が環状に形成されている点においてのみ、これら実施形態は異なっている。
【0036】
図9において、(A)は、本来、二次成形を行いたい状態の転がり防止部材50と第3コアピン53とを示す概略図であり、(B)は、転がり防止部材50と第3コアピン53とキャップ本体54とを示す概略図である。転がり防止部材50の成形収縮によって、転がり防止部材50と第3コアピン53との間に間隙が生じている。
【0037】
これに関し、第3コアピン53には、設計上は転がり防止部材50の凸部52に相補的な突状のシール凹部55が、凸部52に対向して設けられている。シール凹部55の深さ、すなわち設計上の転がり防止部材50における第1当接面51と凸部52の頂面56との距離、さらに言い換えると、第3コアピン53における設計上の転がり防止部材50の第1当接面51に当接する面と凸部52の頂面56に当接する面との距離は、想定される間隙の幅よりも大きく設計される。その結果、転がり防止部材50の凸部52と第3コアピン53のシール凹部55との間で微小キャビティ57が形成される。二次成形時には、微小キャビティ57内へは樹脂が流入するものの、転がり防止部材50の第1当接面51に及ぶような、すなわちシール凹部55を越えるような樹脂の流入が防止される。
【0038】
図11は、第3実施形態による筆記具の転がり防止部材60の第1当接面61の拡大縦断面図である。本実施形態は、転がり防止部材60の後端面に、第1当接面61に対して前方に向かって窪んだ凹部62が環状に形成されている点においてのみ、第1実施形態と異なっている。凹部62は、転がり防止部材60の外周面に形成された先細りの斜面63によって画成される。
【0039】
図12は、第4実施形態による筆記具の転がり防止部材70の第1当接面71の拡大縦断面図である。本実施形態は、転がり防止部材70の後端面に、第1当接面71に対して後方に向かって突出する凸部72が環状に形成されている点においてのみ、第1実施形態と異なっている。凸部72は、転がり防止部材70の後端面の外周縁に沿って抉られた斜面73によって画成される。
【0040】
上述した実施形態によれば、第1当接面近傍における転がり防止部材とキャップ本体との境界部において、転がり防止部材に凹部又は凸部が形成されている。すなわち、筆記具本体の第2当接面と当接する転がり防止部材の第1当接面が、筆記具本体の一部によって覆われないように成形できる限りにおいて、任意形状の凹部又は凸部を採用することができる。凹部又は凸部は、第1実施形態及び第2実施形態のような段差であってもよく、第3実施形態及び第4実施形態のような斜面であってもよく、その他形状であってもよい。
【0041】
なお、上述した実施形態では、筆記具1におけるキャップ2と筆記具本体3との嵌合部について説明したが、第1部材及び第2部材において同様の嵌合が行われる別の部材についても、上記構成は適用可能である。
【0042】
ところで、キャップのキャップ本体は、筆記具の筆跡を消去可能な材料によって形成してもよい。この場合、キャップ本体は、筆記具の筆跡のための消去部材として使用することができる。
【0043】
上述した実施形態におけるリフィル5は、熱変色性色材を含有する熱変色性インクを収容してもよい。この場合、筆記具1は熱変色性筆記具であり、消去部材としての摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、筆記具1の筆跡を熱変色可能である。
【0044】
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2筆記具1色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0045】
熱変色性色材となる熱変色性マイクロカプセル顔料としては、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
【0046】
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という。)用いることができる。
【0047】
具体的には、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1(3H)-イソベンゾフラノン、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジメチルアミノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジブチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-エチルイソアミルアミノフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(N-フェニル-N--メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(3’-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、3-メトキシ-4-ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられる。
【0048】
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
【0049】
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
【0050】
具体的には、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1-フェニル-1,1-ビス( 4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0051】
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、上述したロイコ色素1質量部に対して、0.1~100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0052】
用いることができる変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
【0053】
より具体的には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C715)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C1123)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C1327)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C1327)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C1530)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C2143)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C1327)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0054】
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1~100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
【0055】
熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2~3μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0056】
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、イソシアネート系樹脂溶液などを徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0057】
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1~100、変色温度調整剤1~100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1~1である。
【0058】
熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
【0059】
熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア/ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
【0060】
熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2~5μm、さらに好ましくは、0.3~3μmである。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
【0061】
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、振動によるインクバックが発生しやすくなり好ましくない。さらには90%径が8μm以下、好ましくは6μm以下である。径が大きい粒子が一定割合以上存在すると、上述した影響がより顕著になる傾向がみられる。なお、上述した平均粒子径の範囲(0.2~5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
【0062】
熱変色性マイクロカプセル顔料の比重は、0.9~1.3、好ましくは1.0~1.2の範囲である。比重がこの範囲外であると、マイクロカプセル顔料の分散安定性が低下しやすい。また、比重が1.3を超えるマイクロカプセル顔料は、振動によってインクバックが発生しやすい。
【0063】
筆記具用水性インク組成物において、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、その効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
【0064】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
【0065】
これらのうち、インクバックによる筆記部でのインク固化を抑制する目的として、グリセリンを用いることが好ましく、その添加量はインク全量に対して1~10質量%であることが好ましい。グリセリンによる作用のメカニズムは不明だが、乾燥状態における顔料及びインク成分との凝集力を低下させる効果があるものと推察される。
【0066】
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
【0067】
これらのうち、多糖類を使用することが好ましい。多糖類はそのレオロジー特性から、振動による流動性への影響を受けにくい傾向があり、インクバックに起因する筆記不良等の不具合が生じにくい。特にキサンタンガムは、筆記具インクに要求されるその他の特性とのバランスに優れており好ましい。
【0068】
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0069】
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性、光変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。さらに必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0070】
筆記具用水性インク組成物の粘度値は、25℃、剪断速度3.83/sにおいて、500~2000mPa・s、剪断速度383/sにおいて20~100mPa・sであることが好ましい。上記粘度範囲に設定することによって、筆記性と経時安定性に優れたインクとすることができる。さらに、S=αDn(但し、1>n>0)(Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数)で示される粘性式で求められる非ニュートン粘性指数nが、0.2~0.6であることが好ましい。上記粘度範囲に加えて非ニュートン粘性指数nを上記範囲とすることで、振動に対するインクの流動性を適切に設定することが可能となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
【0071】
筆記具用水性インク組成物の表面張力は、25~45mN/m、さらには30~40mN/mであることが好ましい。この範囲内であれば、ペン先内部とインクの濡れ性のバランスが適切となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
【0072】
リフィル内においては、インクのすぐ後方にインク追従体を配置してもよい。追従体を構成する材料としては、少なくとも、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、増粘剤とにより構成することができる。インク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα-オレフィン、エチレンα-オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
【0073】
用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS-100、PW-32、PW-90、NR-68、AH-58(出光興産社製)などが挙げられる。
【0074】
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV-15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
【0075】
用いることができる具体的なポリα-オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P-26、P-46,P-56、P-150,P-350,P-1500、P-2200、(P-10000、P-37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
【0076】
用いることができる具体的なエチレンα-オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC-10、HC-20、HC-100、HC-150、(HC-600、HC-2000) (以上、三井化学社製)などが挙げられる。
【0077】
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
【0078】
インク追従体に使用する増粘剤としては、例えば、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、ポリスチレン-ポリエチレン/ブチレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチレン/プロピレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマー、水添スチレン-ブタジエンラバー、スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー及びアセトアルコキシアルミニウムジアルキレートなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
【0079】
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP-301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-300、AEROSIL-380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-974D、AEROSIL-972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0080】
また、ポリスチレン-ポリエチレン/ブチレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGFG-1901X、クレイトンGG-1650(以上、シェルジャパン社製)、セプトン8007、セプトン8004(以上、クラレ社製)などが挙げられる。さらに、ポリスチレン-ポリエチレン/プロピレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG-1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
【0081】
水添スチレン-ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
【0082】
スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
【0083】
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL-M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
【0084】
これらの増粘剤の中で、スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が好ましい。
【0085】
さらに、インクバックの発生を防止するインク追従体を得る点から、周波数領域1~63rad/sで指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることが好ましく、1.7~3.4とすることがさらに好ましい。
【0086】
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1~63rad/s」で指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていた。本発明では、上記1~63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、振動を吸収してインクバックの発生を防止することが可能となる。
【0087】
摩擦体を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物を用いることができ、これを、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪H-22でのテーバー摩耗量が15mg未満となるように構成し、摩擦体を形成する。
【0088】
さらに、摩擦体とする場合は、JIS K6203に規定されたデュロメータA硬度が70以上90以下であることが好ましい。それによって、所定の硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、摩擦体は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能であり、導電性を付与してもよい。
【0089】
また、摩擦体の輝度値を70以下とすることによって、摩擦体の使用に伴う表面の汚れも目立たなくすることができる。
【0090】
輝度値は汎用型色差計(TC-8600A、東京電色株式会社製)等の測定装置を用いてHLS色空間系を使用し、摩擦体の輝度値は表面を測定することによって求められる。
【符号の説明】
【0091】
1 筆記具
2 キャップ
3 筆記具本体
4 筆記具
5 リフィル
6 嵌合突起
7 第2当接面
10 転がり防止部材
16 第1当接面
17 凹部
20 キャップ本体
23 係止突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図13