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  • 特許-遮熱透湿防水シート及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】遮熱透湿防水シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20220214BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
E04B1/64 D
B32B27/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017155817
(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公開番号】P2019035218
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000214043
【氏名又は名称】蝶理株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597073014
【氏名又は名称】ロータリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 意法
(72)【発明者】
【氏名】西川 嘉徳
(72)【発明者】
【氏名】藤村 英之
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121779(JP,A)
【文献】特開2010-043496(JP,A)
【文献】特開2011-084970(JP,A)
【文献】特開2010-240965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0040104(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64 - 1/66
E04B 1/76
B32B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布層及び多孔性ポリオレフィンフィルム層を有する透湿防水性積層体と、該透湿防水性積層体の一方の面に形成された遮熱層と、を備え、
前記遮熱層は、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含有し、前記透湿防水性積層体の一方の面に対して被覆率70~95%の面積割合で形成されており、
波長2~14μmにおける赤外線反射率の平均値が40%以上、JIS A6111に従って測定した透湿抵抗値が0.19m・s・Pa/μg以下であり、
前記アルミニウム粉末は、ノンリーフィングタイプであり、
JIS Z 2371:1994に基づく塩水噴霧試験後のグロス値の減少率で表される耐久性が0.8%以上、2.2%以下の範囲であることを特徴とする遮熱透湿防水シート。
【請求項2】
前記アルミニウム粉末は、平均粒径が1μm以上40μm以下のアルミニウム粒子からなることを特徴とする請求項1記載の遮熱透湿防水シート。
【請求項3】
前記遮熱層の前記アルミニウム粉末の前記ポリアミド樹脂100質量部に対する含有量は、60質量部以上、140質量部以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の遮熱透湿防水シート。
【請求項4】
前記アルミニウム粉末は、前記遮熱層の厚み方向に沿って、前記ポリアミド樹脂に対して均一に分散されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項記載の遮熱透湿防水シート。
【請求項5】
前記遮熱層は、前記アルミニウム粉末の個々のアルミニウム粒子を予め樹脂で被覆したものを前記ポリアミド樹脂に分散させたものからなることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項記載の遮熱透湿防水シート。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか一項記載の遮熱透湿防水シートの製造方法であって、不織布層及び多孔性ポリオレフィンフィルム層を積層して前記透湿防水性積層体を作製する透湿防水性積層体作製工程と、
前記透湿防水性積層体の一方の面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含有する遮熱層形成用インクを、前記透湿防水性積層体の一方の面に対して被覆率70~95%の面積割合で印刷して前記遮熱層を形成する遮熱層形成工程と、を有することを特徴とする遮熱透湿防水シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性、透湿性及び防水性を有する遮熱透湿防水シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築物においては、屋外からの熱線の透過と屋内への雨水の侵入を抑制しつつ、室内の湿気を屋外に透過させるために、遮熱性、透湿性及び防水性を備えた遮熱透湿防水シートを屋根下地及び外壁下地に設置することがある。
遮熱透湿防水シートとしては、例えば、透湿防水シートの一方の面に、金属粒子を含む遮熱層が部分的に設けられたシートが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-84970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の遮熱透湿防水シートは、耐候性が低く、遮熱層が経時劣化しやすい傾向にあった。
そこで、本発明は、遮熱性、透湿性及び防水性を有し、しかも耐候性が高い遮熱透湿防水シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の遮熱透湿防水シートは、以下の構成を有する。
不織布層及び多孔性ポリオレフィンフィルム層を有する透湿防水性積層体と、該透湿防水性積層体の一方の面に形成された遮熱層と、を備え、前記遮熱層は、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含有し、前記透湿防水性積層体の一方の面に対して被覆率70~95%の面積割合で形成されており、波長2~14μmにおける赤外線反射率の平均値が40%以上、JIS A6111に従って測定した透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下であり、前記アルミニウム粉末は、ノンリーフィングタイプであり、JIS Z 2371:1994に基づく塩水噴霧試験後のグロス値の減少率で表される耐久性が0.8%以上、2.2%以下の範囲であることを特徴とする。
【0006】
本発明の遮熱透湿防水シートによれば、従来、一般的であった遮熱体としてのアルミニウム層(アルミニウム薄膜)の代わりに、アルミニウム粉末(遮熱剤)をポリアミド樹脂(バインダ樹脂)に分散させた遮熱層によって遮熱性を発揮する。これにより、例えば、分光光度計等の反射率測定装置を用いて測定したの赤外線の反射率を高めることができる。アルミニウム粉末(遮熱剤)をポリアミド樹脂(バインダ樹脂)に分散させた遮熱層によって遮熱性を得ることにより、製造コストを低く抑えることも可能になる。
【0007】
そして、本発明の遮熱透湿防水シートによれば、バインダ樹脂としてポリアミド樹脂を用い、このポリアミド樹脂にアルミニウム粉末を均一に分散させることによって、アルミニウム粉末を構成する個々のアルミニウム粒子がポリアミドに確実に固着される。これにより、経時変化によるアルミニウム粉末の脱落による遮熱性能の低下を確実に防止することができる。
【0008】
また、本発明では、前記アルミニウム粉末は、平均粒径が1μm以上40μm以下のアルミニウム粒子からなることが好ましい。
【0009】
また、本発明では、前記遮熱層の前記アルミニウム粉末の前記ポリアミド樹脂100質量部に対する含有量は、60質量部以上、140質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0010】
また、本発明では、前記アルミニウム粉末は、前記遮熱層の厚み方向に沿って、前記ポリアミド樹脂に対して均一に分散されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明では、前記遮熱層は、前記アルミニウム粉末の個々のアルミニウム粒子を予め樹脂で被覆したものを前記ポリアミド樹脂に分散させたものからなることが好ましい。
【0012】
本発明の遮熱透湿防水シートの製造方法は、以下の構成を有する。
前記各項記載の遮熱透湿防水シートの製造方法であって、不織布層及び多孔性ポリオレフィンフィルム層を積層して前記透湿防水性積層体を作製する透湿防水性積層体作製工程と、前記透湿防水性積層体の一方の面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含有する遮熱層形成用インクを、前記透湿防水性積層体の一方の面に対して被覆率70~95%の面積割合で印刷して前記遮熱層を形成する遮熱層形成工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遮熱透湿防水シートは、遮熱性、透湿性及び防水性を有し、しかも耐候性が高い。
本発明の遮熱透湿防水シートの製造方法によれば、遮熱性、透湿性及び防水性を有し、しかも耐候性が高い遮熱透湿防水シートを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の遮熱透湿防水シートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の遮熱透湿防水シート及びその製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
本発明の遮熱透湿防水シートの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の遮熱透湿防水シート1は、不織布層11及び多孔性ポリオレフィンフィルム層12を有する透湿防水性積層体10と、遮熱層20とを備えている。
本実施形態では、多孔性ポリオレフィンフィルム層12の露出面に遮熱層20が形成されている。
本実施形態の遮熱透湿防水シート1は、屋根や外壁に取り付けられる際、不織布層11が屋内側に配置され、遮熱層20が屋外側に配置される。
【0017】
透湿防水性積層体10を構成する不織布層11は、遮熱透湿防水シート1の剛性及び破断強度を補強する補強材として機能するものである。
不織布層11を構成する不織布の種類としては、特に制限はなく、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらのなかでも、防水性がより高まることから、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布が好ましい。
【0018】
不織布層11を構成する繊維の材質としては特に制限はないが、価格と強度の点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドが好ましい。
不織布層11の目付量は、例えば、10~80g/mであることが好ましく、20~50g/mであることがより好ましい。不織布層11の目付量が前記下限値以上であれば、充分な補強効果が得られ、前記上限値以下であれば、より軽量化できる。
【0019】
透湿防水性積層体10を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層12は、遮熱透湿防水シート1において防水性及び透湿性を発現させるために主要な役割を果たす層である。
多孔性ポリオレフィンフィルム層12としては特に限定されないが、例えば、多孔性ポリエチレンフィルム又は多孔性ポリプロピレンフィルムから構成されるのが好ましい。更には、透湿性をより高める点では、多孔性ポリオレフィンフィルム層12は多孔性ポリエチレンフィルムにより構成することがより好ましい。
【0020】
多孔性ポリオレフィンフィルム層12の多孔性は、例えば無機粒子(炭酸カルシウム等)を含有することにより付与される。すなわち、例えば、多孔性ポリオレフィンフィルムを作製する際に、延伸性がないため破断点になりやすい無機粒子(炭酸カルシウム等)を含有させたフィルムを延伸させ、無機粒子の存在位置で微小な亀裂を生させることにより微小孔を形成することができる。このような微小孔の形成により、防水性を有しつつ透湿性を付与することができる。レーザ回折・散乱法により測定した無機粒子の体積平均粒子は5μm以下であることが好ましい。
【0021】
また、多孔性ポリオレフィンフィルム層12に多孔性を付与する方法として、一軸延伸したポリオレフィンフィルムに、延伸方向に沿って多数の切り込みを入れた後、延伸方向に対して直交方向に延伸することにより、ポリオレフィンフィルムを、破断しない程度に裂けさせて開口させる方法が挙げられる。
【0022】
多孔性ポリオレフィンフィルム層12の目付量は1~50g/mであることが好ましく、10~30g/mであることがより好ましい。多孔性ポリオレフィンフィルム層12の目付量が前記下限値以上であれば、充分に高い防水性を確保でき、前記上限値以下であれば、充分に高い透湿性を確保できる。
【0023】
多孔性ポリオレフィンフィルム層12の透湿度は、3000g/(m・24hr)以上であることが好ましい。ここで透湿度は、JIS L1099の4.1のA法(繊維製品の透湿度試験方法)に準拠して測定される値である。多孔性ポリオレフィンフィルム層12の透湿度が前記下限値以上であれば、遮熱透湿防水シート1の透湿性をより高めることができる。しかし、透湿度が高すぎると、防水性が低下するおそれがあるため、多孔性ポリオレフィンフィルム層12の透湿度は12000g/(m・24hr)以下であることが好ましい。
【0024】
遮熱層20は、赤外線を反射して遮熱する層であり、遮熱剤及びバインダ樹脂を含有する。
遮熱剤としては、アルミニウム粉末を用いる。こうしたアルミニウム粉末は、赤外線(波長2~14μm)の反射率が20%以上である。アルミニウム粉末の含有量は、目的の遮熱性(波長2~14μmにおける赤外線反射率の平均値が40%以上、好ましくは42%以上となる遮熱性)が得られるように適宜調整される。
【0025】
アルミニウム粉末は、遮熱層20の厚み方向において、バインダ樹脂に対して均等に分散されている。アルミニウム粉末を構成するアルミニウム粒子は、粒子形状が球形や多角形状の粒状体(ノンリーフィングタイプ)であることが好ましい。鱗片状のアルミニウム粒子(リーフィングタイプ)からなるアルミニウム粉末を用いると、遮熱層20の厚み方向においてアルミニウム粒子が不均一に分散し、遮熱層20の表面に偏在しやすくなるため好ましくない。
【0026】
また、アルミニウム粉末を構成するアルミニウム粒子は、レーザ回折・散乱法により測定した体積平均粒子径が1μm以上40μm以下の範囲であることが好ましく、2μm以上20μm以下の範囲、例えば10μmであることがより好ましい。
また、バインダ樹脂に混合するアルミニウム粉末としては、遮熱性を高めるために、純度が90質量%以上のものを用いることが好ましく、純度が95質量%以上であることがより好ましく、純度が99質量%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
また、アルミニウム粉末として、アルミニウム粒子が樹脂で被覆されたものを用いることも好ましい。アルミニウム粒子を被覆する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。このように、アルミニウム粒子を樹脂によって被覆したアルミニウム粉末(樹脂被覆アルミニウム粉末)を用いることにより、バインダ樹脂に分散させる際に、バインダ樹脂とアルミニウム粒子との親和性が高められ、より均一にアルミニウム粒子をバインダ樹脂に分散させることができる。
【0028】
バインダ樹脂としては、ポリアミド樹脂を用いる。ポリアミド樹脂としては、環状ラクタム(-CO-NH-)の開環重合または、ω-アミノカルボン酸の重縮合で得られるものとして、ナイロン6(登録商標)、ナイロン11(登録商標)、ナイロン12(登録商標)などが挙げられる。また、ジアミン(HN-R-NH)と二塩基酸(HOOC-R’COOH)の重縮合で得られるものとして、ナイロン66(登録商標)、ナイロン610(登録商標)、ナイロン612(登録商標)などが挙げられる。
【0029】
バインダ樹脂としては、遮熱性をより高めるという点で、透明性が低いポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
遮熱層20に含まれる遮熱剤であるアルミニウム粉末は、遮熱性を容易に確保しながら、遮熱層20の材料費を低く抑えることできる。
【0030】
アルミニウム粉末のポリアミド樹脂100質量部に対する含有量は、60質量部以上、140質量部以下の範囲(アルミニウム粉末の純度を100%とした場合)が好ましい。アルミニウム粉末のポリアミド樹脂に対する含有量を上述した範囲にすることによって、遮熱層20の透湿防水性積層体10に対する固着力を高く保ち、経時変化によるアルミニウム粉末の脱落を防止できる。
【0031】
遮熱層20は、透湿防水性積層体10の一方の面の面積を100%とした際、被覆率70~95%の面積割合で形成されている(すなわち、透湿防水性積層体10の一方の面のうち5~30%には遮熱層20が形成されていない。)。遮熱層20の被覆率が前記下限値未満であると、遮熱性を確保できないことがあり、前記上限値を超えると、透湿性を確保できないことがある。前記被覆率は、80~90%であることが好ましい。
【0032】
透湿防水性積層体10の表面において、遮熱層20は均一に形成されていることが好ましい。例えば、透湿防水性積層体10の表面を5cm四方の領域に分割した際、各領域において、遮熱層20が被覆率70~95%の面積割合で形成されていることが好ましく、被覆率80~90%の面積割合で形成されていることが好ましい。
また、透湿防水性積層体10の表面において、遮熱層20は例えば、厚みが0.5~1.5μm程度に形成されている。
【0033】
上記遮熱透湿防水シート1は、透湿防水性積層体作製工程と遮熱層形成工程を有する製造方法により製造される。
透湿防水性積層体作製工程は、不織布層11及び多孔性ポリオレフィンフィルム層12を積層して透湿防水性積層体10を作製する工程である。
不織布層11及び多孔性ポリオレフィンフィルム層12との積層では、接着剤を用いてもよい。
接着剤として用いられるものとしては、例えば、ポリエチレン樹脂等のオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂のホットメルト系接着剤、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、又は、ポリビニルアルコールのエマルジョン系接着剤等が挙げられる。
接着剤の塗工は、スプレーを用いてもよいし、コーターを用いてもよい。
【0034】
遮熱層形成工程は、前記透湿防水性積層体の一方の面に、遮熱剤(アルミニウム粉末)及びバインダ樹脂(ポリアミド樹脂)を含有する遮熱層形成用インクを印刷して遮熱層20を形成する工程である。本実施形態では、多孔性ポリオレフィンフィルム層12の露出面に遮熱層20を形成する。
【0035】
遮熱層形成用インクを印刷する方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等を適用することができ、簡便に遮熱層20を形成できる点では、グラビア印刷又はオフセット印刷が好ましい。
【0036】
グラビア印刷又はオフセット印刷を適用する場合に、遮熱層20の被覆率を調整する方法としては、例えば、グラビア印刷版の凹部面積率を調整する方法、オフセット印刷版の網点面積率を調整する方法等が挙げられる。
【0037】
遮熱層形成用インクの塗布量は、例えば、1.0~2.0g/m程度であればよい。これにより、透湿防水性積層体10の表面において、遮熱層20は、例えば、厚みが0.5~1.5μm程度に形成される。
【0038】
以上説明した本発明の遮熱透湿防水シート1によれば、従来、一般的であった遮熱体としてのアルミニウム層(アルミニウム薄膜)の代わりに、アルミニウム粉末(遮熱剤)をポリアミド樹脂(バインダ樹脂)に分散させた遮熱層20によって遮熱性を発揮している。これにより、例えば、分光光度計等の反射率測定装置を用いて測定した、波長2~14μmの赤外線の反射率を40%以上にできる。なお、反射率が高すぎると、他の性能が低下するおそれがあるから、反射率の平均値の上限値は、60%とすることが好ましい。
【0039】
また、従来、一般的であった遮熱体としてのアルミニウム層の代わりに、アルミニウム粉末(遮熱剤)をポリアミド樹脂(バインダ樹脂)に分散させた遮熱層20によって遮熱性を得ることにより、製造コストを低く抑えることが可能になる。
【0040】
そして、本発明の遮熱透湿防水シート1によれば、バインダ樹脂としてポリアミド樹脂を用い、このポリアミド樹脂に体積平均粒子径が1μm以上40μm以下の範囲のアルミニウム粒子からなるアルミニウム粉末を、遮熱層20の厚み方向に均一に分散させることによって、アルミニウム粒子がポリアミド樹脂によって確実に固着される。これにより、経時変化によるアルミニウム粉末の脱落による遮熱性能の低下を確実に防止することができる。
【0041】
更に、本発明の遮熱透湿防水シート1では、多孔性ポリオレフィンフィルム層12を備えるため、防水性及び透湿性の両方を向上させることができる。具体的には、JIS A6111:2004で示される透湿防水シートの透湿性及び防水性を容易に満足させることができる。例えば、JIS A6111における遮熱透湿防水シート1全体の透湿抵抗値を容易に0.19m・s・Pa/μg以下となる。この透湿抵抗にするためには、遮熱層20が設けられている部分の透湿抵抗が0.26~0.30m・s・Pa/μgであることが好ましく、遮熱層20が設けられていない部分の透湿抵抗が0.05~0.12m・s・Pa/μgであることが好ましい。
【0042】
なお、本発明の遮熱透湿防水シートは、上記実施形態のものに限定されない。
例えば、上記実施形態では、多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に遮熱層が形成されていたが、不織布層の露出面に遮熱層が形成されてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例
【0044】
以下、本発明例と、従来の比較例の遮熱透湿防水シートについて、その効果を検証した。検証に用いたサンプルと、検証方法を以下に示す。
(本発明例1)
不織布層と多孔性ポリエチレンフィルム層とを、接着剤を用いて貼合して、透湿防水性積層体を得た。ここで、不織布層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の不織布であって、目付量が45g/mのものを用いた。多孔性ポリオレフィンフィルム層としては、目付量27g/mで、JIS L1099の4.1のA法(繊維製品の透湿度試験方法)に準拠して測定される値が10000g/(m・24hr)のものを用いた。
上述した透湿防水性積層体を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含む遮熱層形成用インク(ノンリーフィングタイプアルミニウム粉末(体積平均粒子径5μm、純度99質量%以上)とポリアミド樹脂とを含む。)を、被覆率80%になるようにグラビア印刷して、遮熱層を形成した。遮熱層のポリアミド樹脂100質量部に対するアルミニウム粉末の含有量は、50重量部とした。これにより、本発明例1の遮熱透湿防水シートを得た。こうした遮熱透湿防水シートは、アルミニウム粉末が遮熱層の厚み方向に沿ってポリアミド樹脂に対して均一に分散されている。
【0045】
(本発明例2)
上述した本発明例1と同様の構成の透湿防水性積層体を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含む遮熱層形成用インク(ノンリーフィングタイプアルミニウム粉末(体積平均粒子径5μm、純度99質量%以上)とポリアミド樹脂とを含む。)を、被覆率95%になるようにグラビア印刷して、遮熱層を形成した。遮熱層のポリアミド樹脂100質量部に対するアルミニウム粉末の含有量は、80重量部とした。これにより、本発明例2の遮熱透湿防水シートを得た。
【0046】
(本発明例3)
上述した本発明例1と同様の構成の透湿防水性積層体を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含む遮熱層形成用インク(ノンリーフィングタイプアルミニウム粉末(体積平均粒子径5μm、純度99質量%以上)とポリアミド樹脂とを含む。)を、被覆率70%になるようにグラビア印刷して、遮熱層を形成した。遮熱層のポリアミド樹脂100質量部に対するアルミニウム粉末の含有量は、80重量部とした。これにより、本発明例3の遮熱透湿防水シートを得た。
【0047】
(本発明例4)
上述した本発明例1と同様の構成の透湿防水性積層体を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含む遮熱層形成用インク(ノンリーフィングタイプアルミニウム粉末(体積平均粒子径5μm、純度99質量%以上)とポリアミド樹脂とを含む。)を、被覆率80%になるようにグラビア印刷して、遮熱層を形成した。遮熱層のポリアミド樹脂100質量部に対するアルミニウム粉末の含有量は、60重量部とした。これにより、本発明例4の遮熱透湿防水シートを得た。
【0048】
(本発明例5)
上述した本発明例1と同様の構成の透湿防水性積層体を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含む遮熱層形成用インク(ノンリーフィングタイプアルミニウム粉末(体積平均粒子径5μm、純度99質量%以上)とポリアミド樹脂とを含む。)を、被覆率80%になるようにグラビア印刷して、遮熱層を形成した。遮熱層のポリアミド樹脂100質量部に対するアルミニウム粉末の含有量は、140重量部とした。これにより、本発明例5の遮熱透湿防水シートを得た。
【0049】
(比較例1)
不織布層と多孔性ポリエチレンフィルム層とを、接着剤を用いて貼合して、透湿防水性積層体を得た。ここで、不織布層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の不織布であって、目付量が45g/mのものを用いた。多孔性ポリオレフィンフィルム層としては、目付量27g/mで、JIS L1099の4.1のA法(繊維製品の透湿度試験方法)に準拠して測定される値が10000g/(m・24hr)のものを用いた。
上述した透湿防水性積層体を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に、アルミニウム粉末及びアクリル樹脂を含む遮熱層形成用インク(リーフィングタイプアルミニウム粉末(純度99質量%以上)とアクリル酸アルキルエステル共重合体とを含む。)を、被覆率80%になるようにグラビア印刷して、遮熱層を形成した。遮熱層のアクリル樹脂100質量部に対するアルミニウム粉末の含有量は、140重量部とした。これにより、比較例1の遮熱透湿防水シートを得た。
【0050】
(比較例2)
上述した比較例1と同様の構成の透湿防水性積層体を構成する多孔性ポリオレフィンフィルム層の露出面に、アルミニウム粉末及びポリアミド樹脂を含む遮熱層形成用インク(ノンリーフィングタイプアルミニウム粉末(体積平均粒子径5μm、純度99質量%以上)とポリアミド樹脂とを含む。)を、被覆率98%になるようにグラビア印刷して、遮熱層を形成した。遮熱層のポリアミド樹脂100質量部に対するアルミニウム粉末の含有量は、80重量部とした。これにより、比較例2の遮熱透湿防水シートを得た。
【0051】
【表1】
【0052】
<評価>
[遮熱性]
各例の遮熱透湿防水シートについて、波長2~20μmの光線の反射率を、反射率測定装置(株式会社島津製作所製UV-3101PC型自記分光光度計)を用いて測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。反射率の平均値が大きい程、遮熱性が高い。
[透湿抵抗]
各例の遮熱透湿防水シートについて、JIS A6111:2004に規定の透湿性試験方法に基づいて透湿抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。透湿抵抗の値が小さい程、透湿性が高い。
[耐候性]
各例の遮熱透湿防水シートについて、JIS Z 2371:1994に記載の塩水噴霧試験法に準拠した試験を行い、遮熱層の剥落(遮熱層の外観)を評価した。評価結果を表1に示す。
○:剥落率10%未満。
△:剥落率10%以上、40%未満。
×:剥落率40%以上。
[耐久性]
上述した耐候性試験の実施前および実施後の試験片(サイズ100mm×100mm)のグロス値を測定し、その減少率によって評価した。試験方法としては、イオン水を入れ、水温90℃に保持した恒温水槽中に、上述した試験片を30分浸漬し、その後試験片を取り出し、取出し後の光沢度を光沢計(株式会社堀場製作所製IG-320グロスチェッカ)を用いて測定した。
【0053】
本発明例1-5の遮熱透湿防水シートは、波長2~14μmの赤外線の反射率が40%以上であり、遮熱性が高かった。
また、本発明例1-5の遮熱透湿防水シートの透湿抵抗は、0.19m・s・Pa/μg以下の範囲にあり、高い透湿性を有していた。
また、本発明例1-4の遮熱透湿防水シートは、耐候性に優れていた。一方、リーフィングタイプのアルミニウム粉末を用いた比較例1や、被覆率を98%にした比較例2は、耐候性が低かった。
また、本発明例1-5の遮熱透湿防水シートは、5%以下が目安とされるグロス値の減少率が、最大でも2.2%(本発明例5)であり、耐久性に優れていた。一方、リーフィングタイプのアルミニウム粉末を用いた比較例1は、グロス値の減少率が7.5%に達し、耐久性に課題がある。
【0054】
以上のような検証結果によれば、本発明の遮熱透湿防水シートは、経時変化によっても反射率がほぼ維持された優れた耐久性を示し、また、遮熱層の剥落が少なく、良好な耐候性が確保されていることが確認された。
【符号の説明】
【0055】
1…遮熱透湿防水シート
10…透湿防水性積層体
11…不織布層
12…多孔性ポリオレフィンフィルム層
20…遮熱層
図1