(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20220214BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
H01L21/68 F
B25J9/22 A
(21)【出願番号】P 2017233453
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲カク▼
(72)【発明者】
【氏名】栗林 保
(72)【発明者】
【氏名】猪股 徹也
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-076097(JP,A)
【文献】特開2006-060135(JP,A)
【文献】特開2001-217303(JP,A)
【文献】特開平08-148546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
B25J 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持するハンドと昇降機構とを少なくとも備え、前記ワークを搬送するロボットであって、
前記ワークをロード/アンロードするときに前記ハンドの移動方向を第1方向とし、前記第1方向と上下方向とに直交する方向を第2方向として、
前記ハンドに取り付けられ発光部と受光部とを備えて前記第2方向に平行な光軸を有する第1センサと、
前記ハンドに取り付けられ前記ワークの外縁を検出する第2センサと、
を有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記ハンドに取り外し可能に取り付けられる治具に搭載され、
前記ハンドに前記ワークの回転防止用の突起を有し、前記治具の外周に前記突起と係合する切り欠き部を有し、
前記ハンドを前記上下方向への往復移動させることによる前記第1センサでの遮光によって前記ワークの高さ方向の端部を検出し、前記第2センサによって前記ワークの異なる外縁を検出して、前記ワークの中心位置を算出するロボット。
【請求項2】
前記第1センサは、前記第1方向に沿って前記第2センサよりも前記ワークに近い位置に取り付けられている、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記ハンドの前記ワークに向かう先端は、前記ワークが前記ハンド及び前記第1センサに接触することなく前記ワークによって前記第1センサの光軸を遮ることができるように、前記先端に向かってV字型またはU字型に広がるように分岐している、請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第2センサは、前記上下方向に配置した発光素子及び受光素子を備え、
前記発光素子及び前記受光素子は、前記ワークに近づく向きでの前記第1方向に沿った前記ハンドの動きに伴って前記発光素子及び前記受光素子の間の空間に前記ワークの前記外縁を受け入れることができるように配置されている、請求項1乃至3のいずれかに記載のロボット。
【請求項5】
前記第2センサは、前記第1方向から前記ワークの中心側に傾いた方向に対して前記第2センサの取り付け位置から延びる上腕及び下腕を有し、前記上腕及び前記下腕の一方に前記発光素子が、他方に前記受光素子が設けられ、全体としてコの字型の断面を有し、
前記上腕及び前記下腕は前記ワークの中心に向けて延びている、請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記治具の外形が前記ワークの外形の一部と一致する、請求項
1乃至5のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項7】
ワークを支持するハンドと昇降機構とを少なくとも備え、前記ワークを搬送するロボットであって、
前記ワークをロード/アンロードするときに前記ハンドの移動方向を第1方向とし、前記第1方向と上下方向とに直交する方向を第2方向として、
前記ハンドに取り付けられ発光部と受光部とを備えて前記第2方向に平行な光軸を有する第1センサと、
前記ハンドに取り付けられ前記ワークの外縁を検出する2つの第2センサと、
を有し、
前記2つの第2センサは前記第2方向に沿って相互に離隔して配置されており、
前記ハンドを前記上下方向への往復移動させることによる前記第1センサでの遮光によって前記ワークの高さ方向の端部を検出し、前記2つの第2センサによって前記ワークの異なる外縁を検出し、
前記第1方向をY軸方向として前記第2方向をX軸方向とするXY座標系において、一方の前記第2センサが遮光されたことによって検出される前記ワークの外縁のXY座標を(Xa,Ya)とし、他方の前記第2センサが遮光されたことによって検出される前記ワークの外縁のXY座標を(Xb,Yb)とし、前記ワークは半径Rの円板形状であるとして、
前記ワークの中心位置として、前記ワークの中心の座標(Xo,Yo)を
【数1】
によって算出す
るロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搬送するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを搬送するロボットは、一般に、ワークを保持するハンドと、ハンドを先端に備えて連結した複数のアームと、アーム及びハンドを全体として昇降させる昇降機構とを備えている。このようなロボットは、ワークのロード/アンロードの対象であるステージの相互間でワークを搬送する。ステージには、ワークの搬送元及び搬送先となる例えば、カセットやワーク処理装置などが含まれる。ステージに対してワークをロード/アンロードする際には、ハンドは、ステージの正面となる位置において、ステージに対して前後する方向で移動する。以下の説明においてこの方向をハンドの移動方向と呼ぶ。例えば特許文献1には、ワークの搬送に用いられる水平多関節型ロボットの一例が開示されている。
【0003】
ワークの搬送に用いられるロボットを使用する際には、予めワークの搬送経路をロボットに教示する必要があり、教示には、ステージ内のワークの格納位置をロボットに覚えさせることも含まれる。これまで教示は、作業員による手動操作で行なわれてきた。しかしながら、手動操作であるので、教示効率や教示の確かさには作業員の操作経験に大きく依存する。また、近年、ロボットが設けられてアームやハンドを移動させることが可能な空間が狭くなってきており、このため作業員がロボットを教示するときの視界が悪くなって手動教示を行うことが難しくなる傾向にある。そこで、この様な状況を打開するために、各種の自動教示方法が提案されている。例えば特許文献2には、水平面内かつハンドの移動方向に垂直な方向に沿って照射された光を検出する第1の光学センサと、水平面内かつハンドの移動方向に対して斜めの方向に沿って照射された第2の光センサとを用いて教示用のワーク(ダミーワーク)を検出し、この検出結果に基づいて教示を行なうことが開示されている。特許文献3には、水平面内において、ステージに対するハンドの移動方向に対して直交する方向に間隔をあけて2つのセンサを配置し、この2つのセンサを用いてワークのエッジを検出し、この検出結果に基づいてずれ量の算出と座標系変換とを行なって教示ポイントを取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5199117号公報
【文献】特開2016-107378号公報
【文献】特開2009-160679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークを搬送するロボットの自動教示の方法として各種の方法が提案されているが、これらの方法では、特殊な構造のダミーワークを使用したり、ロボットとは別個にセンサを設けたり、あるいは教示用の治具付きステージを使用したりする。その結果、教示のための機構や手順が複雑化する。また、教示の精度においても改良の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、ダミーワークなどを必要とせず、簡単な機構で正確な自動教示を行うことができるロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロボットは、ワークを支持するハンドと昇降機構とを少なくとも備え、ワークを搬送するロボットであって、ワークをロード/アンロードするときにハンドの移動方向を第1方向とし、第1方向と上下方向とに直交する方向を第2方向として、ハンドに取り付けられ発光部と受光部とを備えて第2方向に平行な光軸を有する第1センサと、ハンドに取り付けられワークの外縁を検出する第2センサと、を有し、第1センサ及び第2センサは、ハンドに取り外し可能に取り付けられる治具に搭載され、ハンドにワークの回転防止用の突起を有し、治具の外周に突起と係合する切り欠き部を有し、ハンドを上下方向への往復移動させることによる第1センサでの遮光によってワークの高さ方向の端部を検出し、第2センサによってワークの異なる外縁を検出して、ワークの中心位置を算出する。
【0008】
本発明のロボットでは、第1センサによりワークの高さ方向の端部を検出するので、検出された高さ方向の端部の位置に基づき、第2センサによるワークの外縁の検出のために適切な高さ位置を設定できる。このため、ハンドに取り付けられた第2センサによってワークの異なる外縁を検出する処理を自動的に実行でき、自動教示によって、ワークの高さ位置と水平面内でのワークの中心位置とを容易に求めることができるようになる。
【0009】
本発明のロボットでは、第1方向に沿って第2センサよりもワークに近い位置に第1センサを取り付けることができる。このような構成によれば、ワークに近い側に配置された第1センサによってワークの高さ位置を検出できるとともに、第2センサを第1センサから離すことができて各センサの配置の自由度が向上する。このとき、ハンドのワークに向かう先端は、ワークがハンド及び第1センサに接触することなくワークによって第1センサの光軸を遮ることができるように、先端に向かってV字型またはU字型に広がるように分岐していることが好ましい。このようにV字型あるいはU字型に広がるようにワークの先端を分岐させることによって、ワークとの衝突を確実に避けながらワークの高さ方向の端部の位置を決定できるようになる。
【0010】
本発明のロボットでは、上下方向に配置した発光素子及び受光素子を備える第2センサを使用し、ワークに近づく向きでの第1方向に沿ったハンドの動きに伴って発光素子及び受光素子の間の空間にワークの外縁を受け入れることができるように発光素子及び受光素子を配置してもよい。この構成によれば、第2センサでの発光素子から受光素子に向かう光軸の向きが上下方向となってワークの外縁をワークの外縁を確実に検出できるようになる。このような第2センサの一例としては、第1方向からワーク中心側に傾いた方向に対して第2センサの取り付け位置から延びる上腕及び下腕を有し、上腕及び下腕の一方に発光素子が、他方に受光素子が設けられ、全体としてコの字型の断面を有するものが挙げられる。このとき、上腕及び下腕はワークの中心に向けて延びていることが好ましい。上腕及び下腕がワークの中心に向けて延びることにより、コの字断面の最奥部にまで第2センサと干渉することなくワークを受け入れることが可能になり、ワークの外縁の検出を確実に行なえるようになる。
【0011】
本発明のロボットでは、ハンドに取り外し可能に取り付けられる治具に第1センサ及び第2センサが搭載される。治具を用いることにより、センサの取り付けを容易に行うことができ、かつ、教示の終了後にセンサを容易に取り外すことができるようになる。このとき、治具の外形がワークの外形の一部と一致するようにすれば、ハンドに沿うようにして治具をハンドに容易に取り付けられるようになる。
【0012】
本発明のロボットでは、ハンドにワークの回転防止用の突起が設けられ、治具の外周にハンドの突起と係合する切り欠き部が設けられる。治具の外周にハンドの突起と係合する切り欠き部を設けることにより、治具の回転を防止できてこの回転に伴う教示結果におけるずれを抑制することができる。
【0013】
本発明の別のロボットは、ワークを支持するハンドと昇降機構とを少なくとも備え、前記ワークを搬送するロボットであって、前記ワークをロード/アンロードするときに前記ハンドの移動方向を第1方向とし、前記第1方向と上下方向とに直交する方向を第2方向として、前記ハンドに取り付けられ発光部と受光部とを備えて前記第2方向に平行な光軸を有する第1センサと、前記ハンドに取り付けられ前記ワークの外縁を検出する2つの第2センサと、を有し、前記2つの第2センサは前記第2方向に沿って相互に離隔して配置されており、前記ハンドを前記上下方向への往復移動させることによる前記第1センサでの遮光によって前記ワークの高さ方向の端部を検出し、前記2つの第2センサによって前記ワークの異なる外縁を検出して、第1方向をY軸方向として第2方向をX軸方向とするXY座標系において、一方の第2センサが遮光されたことによって検出されるワークの外縁のXY座標を(Xa,Ya)とし、他方の第2センサが遮光されたことによって検出されるワークの外縁のXY座標を(Xb,Yb)とし、ワークは半径Rの円板形状であるとして、ワークの中心位置として、ワークの中心の座標(Xo,Yo)を下記の式によって算出する。
【0014】
【0015】
本発明の別のロボットでも、第1センサによりワークの高さ方向の端部を検出するので、検出された高さ方向の端部の位置に基づき、第2センサによるワークの外縁の検出のために適切な高さ位置を設定できる。このため、ハンドに取り付けられた第2センサによってワークの異なる外縁を検出する処理を自動的に実行でき、自動教示によって、ワークの高さ位置と水平面内でのワークの中心位置とを容易に求めることができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、搬送用ロボットについて、ダミーワークなどを必要とせず、簡単な機構で正確な自動教示を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a),(b)は、それぞれ本発明の実施の一形態のロボットの構成を示す平面図と正面図である。
【
図2】ハンドの先端と教示用の治具を説明する斜視図である。
【
図3】Z軸(上下方向)の教示を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】Z軸方向の教示の具体的手順を説明する図である。
【
図5】(a),(b)は、X軸及びY軸方向での教示を説明する正面図である。
【
図6】(a),(b)は、2つの第2センサの間での遮光タイミングのずれを説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の一形態のロボットを示している。ここでは、水平面内方向をX軸方向及びY軸方向とし、垂直方向(上下方向)をZ軸方向とする直交座標系が設定されているものとする。この直交座標系は、ロボットに固定された座標系である。特に、説明のため、ステージに対してワークをロード/アンロードする際のハンドの移動方向をY軸方向すなわち第1方向と定める。X軸方向は第2方向となる。このロボットは、例えば特許文献1に記載される3リンクの水平多関節型ロボットであり、基台2に対して第1アーム3の一端が接続し、第1アーム3の他端に第2アーム4の一端が接続し、第2アーム4の他端に第3アーム5の一端が接続し、第3アーム5の他端にはワークを保持するための2つのハンド6,7が接続している。ハンド6,7は上下方向に重なるように設けられており、ハンド6は下ハンド、ハンド7は上ハンドである。基台2と第1アーム3の接続部、アーム3~5の相互の接続部、アーム5に対するハンド6,7も接続部はいずれもロボット関節として構成されており、それらの接続部を通る垂直な軸の周りでアーム3~5、ハンド6,7が回転可能となっている。
【0021】
基台2の内部には、アーム3~5、ハンド6,7を一体のものとしてZ軸方向に移動させる昇降機構8が設けられている。さらに
図1(b)に示すように、ロボットを制御するロボットコントローラ11と、ロボットコントローラ11に接続して操作者から動作コマンドが入力するティーチングペンダント12も設けられている。本実施形態のロボットは自動教示を行うものであるが、自動教示を開始するなどのコマンドはティーチングペンダント12から入力される。また自動教示に必要なロボットの移動制御や位置の演算は、ロボットコントローラ11あるいはティーチングペンダントで実行される。図示されるロボットは、例えば、半導体ウエハのような、ほぼ円形で薄い形状のワークの搬送を想定して構成されたものであるが、本発明が適用可能なロボットは、半導体ウエハの搬送に用いられるロボットに限定されるものではなく、3リンクのロボットに限定されるものでもなく、水平多関節型ロボットに限定されるものでもない。
【0022】
本実施形態では、教示のための治具20を使用する。治具20は上側のハンド7に取り付けられるものである。
図2は、上側のハンド7と治具20とを説明する図である。治具20を説明する前に、まず、ハンド7について説明する。ハンド7は、例えば半導体ウエハなどの薄い円板状のワークを保持し搬送するものであるが、搬送の途中でワークが回転したりしないように、ハンド7の中央部上面には突起17が設けられている。突起17の位置から先端側(アーム5との接続部とは反対側の端部側)においてハンド7は、突起17の位置から先端側に向けて、V字型に分岐して広がるように形成されている。V字型に分岐する代わりにU字型に分岐していてもよい。図において一点鎖線Tは、ハンド7におけるV字の両方の先端部18,19を結ぶ直線であり、一点鎖線Lはハンド7の長手方向の中心線である。この構成では、円形の物体に対して正面から直線的にハンド7を接近させた場合、その物体が先端部18,19と衝突する前に、その物体は両方の先端部18,19を結ぶ線Tよりもハンド7の中央側に入り込めることになる。この構成は、後述するZ軸方向での教示を行なうために必要な構成である。ワークは、ワークの外周部に設けられた円弧状の切り欠き部が突起17に係合するようにして、突起17の位置からハンド7の先端側の位置でハンド7によって保持される。ハンド6もハンド7と同様の構成を有する。
【0023】
治具20は、ハンド7でのワークの載置位置に合わせてハンド7に取り付けられる板状のものである。治具20には、第1センサと2つの第2センサ24,25が設けられている。治具20を用いることにより、第1センサ及び第2センサ24,25のハンド7への取り付けを容易に行うことができ、かつ、教示の終了後に第1センサ及び第2センサ24,25をハンド7から容易に取り外すことができるようになる。このとき、治具20の外形がワークの外形の一部と一致するようにすれば、ハンド7に沿うようにして治具20をハンド7に容易に取り付けられるようになる。
【0024】
第1センサは、ハンド7のV字の両方の先端部18,19に対応するそれぞれ位置に設けられた発光部22及び受光部23からなっており、発光部22は、図示矢印で示すように、先端部18,19を結ぶ直線Tに沿ったレーザ光線を発し、受光部23はこの光線を受光する。治具20の外周には、ハンド7の突起17に係合する円弧状の切り欠き部26が設けられており、治具20のハンド7への固定を確実なものとしている。治具20も、ハンド7と同様に、その先端側(切り欠き部26とは反対側)がV字形状に形成されており、直線Tからハンド7の中央側に物体が入り込むことを阻止しない形状となっている。
【0025】
第2センサ24,25は、水平面内すなわちXY平面内でのワークの外縁を検出するために発光素子から上下方向に光軸を有する光を出射してこの光を受光素子で受ける遮光センサであり、突起17の位置よりはやや先端側であって、ハンド7の長手方向の中心線Lに対して対称となる位置に設けられている。すなわち第2センサ24,25は、X軸方向に沿って相互に離隔して配置していることになる。このとき、ワークに近づく向きでのY軸方向に沿ったハンド7の動きに伴って発光素子及び受光素子の間の空間にワークの外縁を受け入れることができるように、発光素子及び受光素子が配置されている必要がある。第2センサ24,25の一例として、Y軸方向からワーク中心側に傾いた方向に対して第2センサ24,25の取り付け位置から延びる上腕及び下腕を有し、上腕及び下腕の一方に発光素子が、他方に受光素子が設けられ、全体としてコの字型の断面を有するものが挙げられる。このとき、上腕及び下腕はワークの中心に向けて延びていることが好ましい。上腕及び下腕がワークの中心に向けて延びることにより、コの字断面の最奥部にまで第2センサ24,25と干渉することなくワークを受け入れることが可能になり、ワークの外縁の検出を確実に行なえるようになる。具体的には第2センサ24,25としては、例えばコの字型の断面形状を有するフォトインタラプタと称される安価なセンサを使用することができる。ワークと接触しない状態でワークによって遮光されるように、第2センサ24,25における発光素子と受光素子との間隔は、ワークの厚さよりも大きいことが必要である。コの字の断面形状を有するフォトインタラプタを第2センサ24,25として使用した場合、これらのフォトインタラプタは、治具20上に載置されるワークの中心を向いて開口するように設けられる。
【0026】
最近では、マッピング用センサを設けたロボット用ハンドが実用化されている。マッピング用センサは、V字形状に形成されたハンドの両方の先端にそれぞれ発光素子と受光素子とを設けて構成されたものであるから、マッピング用センサを有するハンドをハンド7として用いる場合には、治具20には第1センサを設ける必要はない。この場合、治具20を介さずにハンド7そのものに第2センサ24,25を取り付けてもよく、そうすれば、治具20そのものが不要となる。
【0027】
次に、本実施形態のロボットでの教示動作について説明する。本実施形態のロボットはワークを搬送するものであるので、教示の目標は、ステージに収納されているワークの位置、具体的にはワークの高さ方向の端部の位置とワークの水平面内での中心位置とをロボットに固定された座標系で求めることである。本実施形態では、自動教示として、ワークの高さ方向の端部の位置とワークの水平面内での中心位置とを自動的に決定する。教示では、ロボットのハンド7に取り付けられた第1センサ(発光部22及び受光部23)及び第2センサ24,25での検出結果を用いてロボットを移動させ、ステージに格納されたワークを検出し、これによってステージに格納されたワークとロボットとの間の位置関係を精密に決定する。教示に用いるワークは、実際の工程で使用されるワークであってもダミーワークであってもよい。第1センサ及び第2センサ24,25が冶具20に取り付けられている場合、冶具20に取り付けられているセンサの位置から得られるロボットのハンド7の教示位置は、冶具20を取り外して実際にワークを搬送するときにハンド7の位置からはオフセットしていることになる。冶具20の形状や設計寸法に応じてこのオフセットに関する情報をパラメータとして予め算出しておき、冶具20を用いて得た教示位置に対してオフセットによる補正を行って、ロボットによりワークを搬送するときに実際に使用する教示位置とする。
【0028】
本実施形態での教示では、まず、Z軸方向(高さ方向でのワーク位置)の教示を行う。
図3はZ軸方向の教示を説明する図である。教示に先立って、ステージ31内の理想的な位置にワーク30を設置しておく。そのステージ31の正面となる位置であってワーク30のロード/アンロードの際の待機する位置に、ロボットのハンド7を移動させる。ステージの大まかな位置とステージに対する待機位置とは、予めロボットに対して入力しておく必要がある。この状態が
図3(a)に示されている。この状態から自動教示が開始し、ハンド7をステージ31に向けて徐々に移動させる。このときのハンド7の移動方向はY軸方向である。ワーク30の底面の高さ位置を第1センサによって検出するために、ハンド7をY軸方向に移動させつつ、
図3(b)に示すように、ロボットの基台2に設けられた昇降機構8(
図1(b)参照)によりハンド7を一定の振幅でZ軸方向すなわち上下方向で往復移動させる。図示した例では、ハンド7の先端が矩形波状にZ軸方向に振動しながらY軸方向に移動するように、ハンド7を、Y軸方向に所定の第1の距離だけ移動させ、次にZ軸方向に所定の第2の距離だけ動かし、再び第1の距離だけY軸方向に移動させ、そののち、先にZ軸方向に動かした方向とは逆方向に第2の距離だけ移動させる。このような移動は、ロボットコントローラ11あるいはティーチングペンダント12による制御によって自動的に行なわれる。この移動工程を繰り返すことによって、ハンド7は徐々にワーク30に接近し、第1センサの発光部22から受光部23に向けられているレーザ光が、ハンド7がZ軸方向に上下移動しているときに遮られ、第1センサによってワーク30が検出されることになる。ワーク30を検出する過程でハンド7がワーク30に接触するとワーク30に位置が動いて教示がうまく行なえなくなるので、円板状のワーク30に接触しないようにハンド7を動かす必要があり、このため、ハンド7の先端側がV字形状に広がっていることが重要である。Z軸方向でハンド7がどの位置(すなわちZ高さ)にあるときにレーザ光が遮られて第1センサによってワーク30が検出されたかを求めることによって、ワーク30のZ軸方向での位置を求めることができ、これに基づいてZ軸方向でのロボットの教示が行なわれたことになる。ワーク30のZ高さが決定したら、ハンド7は自動的に待機位置まで後退する。
【0029】
図4は、Z軸方向の教示を行なっているときにおけるワーク30とハンド7の先端との位置関係を示す図であり、図において太線35は、第1センサの光軸位置で表されるハンド7の先端の位置を示している。ハンド7がY軸方向に動きつつZ軸方向(上下方向)に往復運動していると、第1センサにおいてレーザ光がワーク30によって遮光される現象は、いくつかの場合に分類することができる。ワーク30によって第1センサのレーザ光が遮光されるときは、ハンド7の先端がワーク30の位置に達した後、ハンド7の上下運動に応じて遮光される。ハンド7の上下運動は繰り返して行なわれるので、遮光は周期的に起こることになる。
図4(a)は、1回目の遮光がハンド7の下降動作中に起きた場合を示しており、この例では、遮光開始時のタイミングからは、ワーク30の上面のZ高さが得られることになる。本実施形態で教示を行なっているロボットは、ワーク30を下から支持して搬送する搬送用のロボットであるから、ワーク30の上面のZ高さを求めても教示を行なったことにはならない。
図4(b)は、1回目の遮光がハンド7の下降動作中に起きた場合の別の例を示している。ワーク30の外縁(エッジ)は、通常、丸みを帯びた断面形状となっており、
図4(b)に示したものは、ワーク30の外縁をZ高さをして検出したことを示している。この場合も教示を行なったことにならない。
図4(c)は、2回目の遮光がハンド7の上昇動作中に起きた例を示している。この場合、
図4(c)に示すように、ワーク30の下面ではなくワーク30の外縁をZ高さとして検出することがあり、教示に用いるには不適切である。これに対し、
図4(d)は、遮光が発生する上昇動作のうち2回目の上昇動作によりワーク30のZ高さを求めた場合を示している。2回目の上昇動作で検出されるZ高さは、ワーク30の下面のZ高さすなわちZ軸方向での真の位置を示しているので、これをZ軸方向の教示結果として用いればよい。
【0030】
以上説明したZ軸方向での教示では、ハンド7をY軸方向に動かしつつ、ハンド7の先端の軌跡が矩形波状となるようにハンド7を上下方向(Z軸方向)に往復移動させているが、ハンド7の上下方向への往復移動の形態はこれに限られるものではない。ハンド7の先端が三角波状の軌跡を描くようにハンド7を動かしてもよいし、あるいは、正弦波状の軌跡を描くようにハンド7を動かしてもよい。
【0031】
Z軸方向の教示に引き続いて、X軸及びY軸方向の自動教示(水平面内位置についての教示)を行なう。X軸及びY軸方向の教示では、ハンド7を実際にカセット31内に挿入してワーク30のX軸方向及びY軸方向の位置を検出する。このとき、ハンド7がワーク30と衝突したり接触したりしないように、Z軸方向での教示で求めたワーク30の下面のZ高さに基づいて、ハンド7のZ軸方向の位置を決定する。
図5はX軸及びY軸方向の教示を説明する図である。まず、
図5(a)に示すように、Z方向の教示で得られた結果に基づいてハンド7の高さを設定し、ハンド7をステージ31に対する待機位置に移動させる。続いて、
図5(b)に示すように、ハンド7をY軸方向に直線的に前進させる。その結果、ハンド7がワーク30に接触することなく、第2センサ24,25の少なくとも一方においてワーク30がその第2センサ24,25の開口に入り込んで遮光が発生する。このとき、ハンド7がワーク30に対して正確に位置づけられていれば第2センサ24,25での遮光が同時に発生するが、実際には第2センサ24,25の一方において先に遮光が発生する。第2センサ24,25のどちらで先に遮光が発生するかによって、X軸及びY軸方向の教示における動作パターンが2通りのものとなる。
【0032】
図6(a)は、ハンド7の進行方向に対して左側にある第2センサ24において右側にある第2センサ25よりも先に遮光が生じた場合を示している。この場合、第2センサ24において遮光を検出した段階でハンド7の前進(Y軸方向への移動)を停止し、その後、X軸に沿って図示矢印で示すようにハンド7を左方向に移動させる。その結果、右側の第2センサ25において遮光が発生するから、第2センサ25での遮光の発生を検出した後、ハンド7を待機位置に後退させる。一方、
図6(b)は、右側にある第2センサ25において左側の第2センサ24よりも先に遮光が生じた場合を示している。この場合、第2センサ25において遮光を検出した段階でハンド7の前進を停止し、その後、X軸に沿って図示矢印で示すように、左側の第2センサ24において遮光が発生するまでハンド7を右方向に移動させ、第2センサ24での遮光の発生を検出した後、ハンド7を待機位置に後退させる。
【0033】
図6(a)または
図6(b)に示す処理を行なうことにより、第2センサ24,25において遮光が起きたときのワーク30の外縁のXY座標が取得される。ハンド7の前進方向に対して左側の第2センサ24によって取得される座標を(Xa,Ya)とし、右側の第2センサ25によって取得される座標を(Xb,Yb)とし、円板状のワーク30の半径をRとすると、ワーク30の中心のXY座標(Xo,Yo)は、下記の式によって計算される。ワーク30の中心のXY座標(Xo,Yo)を取得することによって、X軸及びY軸方向についての教示が行なわれたことになる。
【0034】
【0035】
ところで、本実施形態における自動教示は、治具20に取り付けた第1センサ(発光部22及び受光部23)と第2センサ24,25とにおける検出結果に基づいている。ロボットを実際に稼動してワーク30を搬送するときには治具20を使用しないから、上述したように治具20の形状や設計寸法に応じてこのオフセット値を算出し、上記の手順で取得した教示位置に対してオフセット値に基づく補正を行って、ロボットによりワークを搬送するときに実際に使用する教示位置としている。しかしながら、治具20の取り付け誤差や各センサにおける検知誤差などのために、治具20の形状や設計寸法から求めたオフセット値で教示位置を補正するだけでは不十分となる場合がある。特に、X軸方向及びY軸方向の位置において、取り付け誤差や検知誤差の影響が強く現れる。そこで本実施形態では、教示対象のステージの数などによらず、全体で1回だけキャリブレーションを行なう必要がある。1回のキャリブレーションの結果が全てのステージに対して適用される。以下、キャリブレーションについて説明する。
【0036】
図7及び
図8はキャリブレーションを説明する図である。
図7に示すようにキャリブレーションでは、操作者などの人間によって、ハンド7における理想とされる位置にワーク30を配置する。そして、ロボットを操作していずれかのステージ31にワーク30を収納する。ワーク30が収納されるステージ31に制限はなく、仮設のステージ31に対してワーク30を収納してもよい。次に、上述したZ軸方向の自動教示を行って、ハンド7のステージ31に対する挿入高さを計算し、その後、キャリブレーションモードとして上述したX軸及びY軸方向の自動教示と同様の処理により、XY座標におけるワーク30の位置を決定する。
図8は、このとき得られるワーク30の位置を説明する図である。ロボットを操作してステージ31にワーク30を収納するときにはロボットの移動経路が記録されているから、ステージ31に収納されたワーク30についてロボットに固定された座標系における実際の位置が取得されることになる。
図8において実線で示す円41は、ワーク30の実際の位置を示している。一方、
図8において破線で示す円42は、キャリブレーションモードにおいて決定されたワーク30の位置を示している。これらの2つの円41,42のずれDは、補正すべきずれであってキャリブレーション結果となるものである。
図8に示すようなずれDは、各ステージについての教示を行なっているときに常に存在するが、ステージごとに大きさとずれの方向は同一である。したがって、1回のキャリブレーションによってずれDを決定し、このずれDに基づいて教示結果を補正すれば、各ステージにおいて治具20の取り付け誤差やセンサの検知誤差による影響を完全に排除でき、X軸及びY軸についての実際の教示座標を得ることができる。
【0037】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、第1センサの発光部22及び受光部23と第2センサ24,25とを有する治具20をハンド7に取り付けるだけで、各ステージ31側には治具やセンサ類を必要とせず、また、特別な教示用ワークも使用することなく、搬送用ロボットにおける自動教示を低コストかつ簡単な事前準備で実行することができる。また、Z軸方向の教示と、この教示結果を用いたX軸及びY軸方向の教示との2段階で自動教示を行なうため、高い精度かつ高い効率で教示を行なうことができる。
【符号の説明】
【0038】
2…基台、3~5…アーム、6,7…ハンド、8…昇降機構、17…突起、20…治具、22…発光部、23…受光部、24,25…第2センサ、26…切り欠き部、30…ワーク、31…ステージ。