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特許7023108組み換えAAVバリアントおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】組み換えAAVバリアントおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20220214BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220214BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220214BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K31/7088
A61K48/00
C07K14/015 ZNA
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/35
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017521515
(86)(22)【出願日】2015-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 US2015056659
(87)【国際公開番号】W WO2016065001
(87)【国際公開日】2016-04-28
【審査請求日】2018-10-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/066,856
(32)【優先日】2014-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507088266
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
【住所又は居所原語表記】One Beacon Street,31st Floor,Boston,Massachusetts 02108
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,グアンピン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】フロット,テレンス
【合議体】
【審判長】中島 庸子
【審判官】平林 由利子
【審判官】上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6156303(US,A)
【文献】国際公開第2012/057363(WO,A1)
【文献】特表2008-523093(JP,A)
【文献】特表2002-516295(JP,A)
【文献】国際公開第99/61601(WO,A2)
【文献】特表2013-531471(JP,A)
【文献】国際公開第2013/123094(WO,A2)
【文献】Hepatologic and Immunologic Gene & Cell Therapy I,2010,Vol.18,Suppl.1,S85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 48/00
A61K 31/33-33/44
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号54~61からなる群から選択される配列を含む、単離されたAAVカプシドタンパク質。
【請求項2】
異種の導入遺伝子をコードする単離された核酸および請求項1に記載のカプシドタンパク質を含む、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項3】
異種の導入遺伝子が、コード配列に作動的に連結された組織特異的なプロモーターを含む、請求項2に記載のrAAV。
【請求項4】
コード配列が、治療用タンパク質をコードする、請求項3に記載のrAAV。
【請求項5】
治療用タンパク質が、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)である、請求項4に記載のrAAV。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載のrAAVを含む組成物。
【請求項7】
薬学的に許容し得るキャリアをさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
配列番号80~83、94、96および97からなる群から選択される配列を含む、単離されたAAVカプシドタンパク質。
【請求項9】
異種の導入遺伝子をコードする単離された核酸および請求項8に記載のカプシドタンパク質を含む、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項10】
異種の導入遺伝子が、コード配列に作動的に連結された組織特異的なプロモーターを含む、請求項9に記載のrAAV。
【請求項11】
コード配列が、治療用タンパク質をコードする、請求項10に記載のrAAV。
【請求項12】
治療用タンパク質が、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)である、請求項11に記載のrAAV。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載のrAAVを含む組成物。
【請求項14】
薬学的に許容し得るキャリアをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
対象に導入遺伝子を送達するための方法における使用のための、請求項2~5および9~12のいずれか一項に記載のrAAV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2014年10月21日に出願された米国仮特許出願USSN 62/066,856、表題「Recombinant AAV Variants And Uses Thereof」の35 U.S.C.§119(e)下における利益を主張し、該仮出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。
発明の分野
いくつかの側面の開示は、細胞においてアデノ随伴ウイルスを同定するために有用な、単離された核酸、組成物およびキットに関する。いくつかの側面において、本開示は、新規のAAVおよびその使用の方法、ならびに関連するキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、小さい、ヘルパー依存的なウイルスである。それは、1960年代に、アデノウイルス(感冒を引き起こすウイルス)調製物中の混入物として発見された。細胞中でのその増殖は、アデノウイルスの存在に依存的であり、したがって、それはアデノ随伴ウイルスと命名された。AAVベクターは、in vivoでの遺伝子導入のための効果的なプラットフォームとして登場してきた。しかし、遺伝子送達のための新たなAAVベクターについての必要性はなお存在する。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの側面の開示は、遺伝子治療適用のための新規のAAVに関する。
いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVは、1以上のカプシドタンパク質において、新たなまたは増強された組織向性特性を付与するアミノ酸バリエーションを含む。幾つかの態様によれば、有用な組織ターゲティング特性を有するAAV3B、AAV4およびAAV5のバリアントが、同定され、本明細書において開示される。例えば、細胞、例えばヒト肝細胞(例えば肝臓組織中に存在する)その他に形質導入するために有用な、AAV3Bのバリアントが提供される。中枢神経系(CNS)、心肺組織、眼組織、および他の組織の細胞を標的とするために有用な、AAV4およびAAV5のバリアントが提供される。いくつかの態様において、本明細書において記載されるバリアントAAVは、それらの対応する野生型AAVによりターゲティングされる組織以外の組織を標的とする。いくつかの態様において、AAV3Bバリアントは、中枢神経系(CNS)または心臓の細胞を標的とする。いくつかの態様において、AAV4バリアントは、肝臓または腎臓の細胞を標的とする。いくつかの態様において、AAV5バリアントは、CNS、肝臓、脾臓または心臓の細胞を標的とする。
【0004】
いくつかの側面の開示は、AAVカプシドタンパク質をコードする配列番号1~47からなる群より選択される配列を含む単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸のフラグメントが提供される。ある態様において、単離された核酸のフラグメントは、配列番号98~100のうちのいずれか1つの配列と同一のペプチドをコードしない。
いくつかの側面の開示は、配列番号51~61からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたAAVカプシドタンパク質を提供する。いくつかの態様において、単離されたAAVカプシドタンパク質は、配列番号51~61からなる群より選択される配列を含み、ここで、配列番号98として記載される配列の対応するアミノ酸と同一ではない配列のアミノ酸は、保存的置換により置き換えられる。いくつかの態様において、単離されたAAVカプシドタンパク質は、配列番号62~67からなる群より選択される配列を含み、ここで、配列番号99として記載される配列の対応するアミノ酸と同一でない配列のアミノ酸は、保存的置換により置き換えられる。いくつかの態様において、単離されたAAVカプシドタンパク質は、配列番号68~97からなる群より選択される配列を含み、ここで、配列番号100として記載される配列の対応するアミノ酸と同一でない配列のアミノ酸は、保存的置換により置き換えられる。
【0005】
本開示のある側面において、前述の単離されたAAVカプシドタンパク質のいずれかを含む組成物が提供される。いくつかの態様において、組成物はさらに、薬学的に許容し得るキャリアを含む。いくつかの態様において、本開示の単離されたAAVカプシドタンパク質のうちの1つ以上および生理学的に適合し得るキャリアの組成物が提供される。
本開示のある側面において、前述の単離されたAAVカプシドタンパク質のいずれかを含む組み換えAAV(rAAV)が提供される。いくつかの態様において、rAAVを含む組成物が提供される。ある態様において、rAAVを含む組成物はさらに、薬学的に許容し得るキャリアを含む。組み換えAAVもまた提供され、ここで、組み換えAAVは、本開示の単離されたAAVカプシドタンパク質のうちの1つ以上を含む。
【0006】
本開示のいくつかの側面において、プロモーターに作動的に連結した配列番号1~47からなる群より選択されるコード配列を含む核酸を含む、宿主細胞が提供される。いくつかの態様において、宿主細胞および無菌の細胞培養培地を含む組成物が提供される。いくつかの態様において、宿主細胞および凍結保存剤を含む組成物が提供される。
【0007】
本開示のいくつかの側面によれば、対象に導入遺伝子を送達するための方法が提供される。いくつかの態様において、方法は、前述のrAAVのいずれかを対象に投与することを含み、ここで、rAAVは、少なくとも1つの導入遺伝子を含み、およびここで、rAAVは、対象の標的組織の細胞に感染する。いくつかの態様において、対象は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、および非ヒト霊長類から選択される。一態様において、対象は、ヒトである。いくつかの態様において、少なくとも1つの導入遺伝子は、タンパク質コード遺伝子である。ある態様において、少なくとも1つの導入遺伝子は、低分子干渉核酸をコードする。ある態様において、低分子干渉核酸は、miRNAである。ある態様において、低分子干渉核酸は、対象において、少なくとも1つのmiRNAの活性を阻害するmiRNAスポンジまたはTuD RNAである。ある態様において、miRNAは、標的組織の細胞において発現される。ある態様において、標的組織は、骨格筋、心臓、肝臓、膵臓、脳または肺である。いくつかの態様において、導入遺伝子は、miRNAのための少なくとも1つの結合部位を含む転写物を発現し、ここで、miRNAは、標的組織以外の組織において、結合部位にハイブリダイズすることにより、導入遺伝子の活性を阻害する。ある態様において、rAAVは、静脈内で、経皮で、眼内で、髄腔内で、脳内で、経口で、筋肉内で、皮下で、鼻内で、または吸入により、対象に投与される。
【0008】
本開示のいくつかの側面によれば、体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するための方法が提供される。いくつかの態様において、方法は、前述のrAAVのいずれかを非ヒト動物に投与することを含み、ここで、rAAVは、少なくとも1つの導入遺伝子を含み、およびここで、rAAVは、非ヒト動物の標的組織の細胞に感染する。いくつかの態様において、少なくとも1つの導入遺伝子は、タンパク質コード遺伝子である。ある態様において、少なくとも1つの導入遺伝子は、低分子干渉核酸をコードする。いくつかの態様において、少なくとも1つの導入遺伝子は、レポーター分子をコードする。ある態様において、低分子干渉核酸は、miRNAである。ある態様において、低分子干渉核酸は、動物において少なくとも1つのmiRNAの活性を阻害するmiRNAスポンジまたはTuD RNAである。ある態様において、miRNAは、標的組織の細胞において発現される。ある態様において、標的組織は、骨格筋、心臓、肝臓、膵臓、脳または肺である。いくつかの態様において、導入遺伝子は、miRNAのための少なくとも1つの結合部位を含む転写物を発現し、ここで、miRNAは、標的組織以外の組織において、結合部位にハイブリダイズすることにより、導入遺伝子の活性を阻害する。
【0009】
本開示のいくつかの側面によれば、前述のrAAVのいずれかを非ヒト動物に投与することを含む、体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するための方法が提供され、ここで、rAAVは、少なくとも1つの導入遺伝子を含み、ここで、導入遺伝子は、miRNAのための少なくとも1つの結合部位を含む転写物を発現し、ここで、miRNAは、標的組織以外の組織において、転写物の結合部位にハイブリダイズすることにより、導入遺伝子の活性を阻害する。いくつかの態様において、導入遺伝子は、組織特異的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含む。ある態様において、組織特異的プロモーターは、肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、α-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、または心筋トロポニンT(cTnT)プロモーターである。ある態様において、rAAVは、静脈内で、経皮で、眼内で、髄腔内で、経口で、筋肉内で、皮下で、鼻内で、または吸入により、動物に投与される。本開示のいくつかの側面によれば、前述の方法のいずれかにより作製される、体細胞トランスジェニック動物モデルが提供される。
【0010】
本開示の他の側面において、rAAVを作製するためのキットが提供される。いくつかの態様において、キットは、配列番号1~47のいずれか1つの配列を有する単離された核酸を収容する容器を含む。いくつかの態様において、キットはさらに、rAAVを作製するための説明を含む。いくつかの態様において、キットはさらに、組み換えAAVベクターを収容する少なくとも1つの容器を含み、ここで、組み換えAAVベクターは、導入遺伝子を含む。
本開示の他の側面において、前述の単離されたAAVカプシドタンパク質のいずれかを有する組み換えAAVを収容する容器を含むキットが提供される。いくつかの態様において、キットの容器は、シリンジである。
【0011】
他の側面において、本開示は、遺伝子の送達、治療、予防および研究目的、ならびに体細胞トランスジェニック動物モデルの開発のためのビヒクルとしての、AAVベースのベクターの使用に関する。いくつかの側面において、本開示は、別個の組織/細胞型の向性を示したAAV血清型であって、動物組織において、アデノウイルスベクターのものと類似のレベル(例えば、標的組織およびベクター用量に依存して100%までのin vivoでの組織形質導入)で、ベクターに関連する毒性学を伴うことなく、安定な体細胞遺伝子導入を達成することができるものに関する。他の側面において、本開示は、肝臓、心臓、骨格筋、脳および膵臓組織を標的とする能力を有するAAV血清型に関する。これらの組織は、多様な代謝性、心血管性および糖尿病性疾患を含む広範囲のヒト疾患に関連する。いくつかの態様において、rAAVは、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。導入遺伝子は、病理学的状態を引き起こすものであってよい。いくつかの態様において、導入遺伝子は、病理学的状態を処置するタンパク質をコードする。
【0012】
他の側面において、本開示の新規AAVは、対象に導入遺伝子を送達するための方法において用いることができる。方法は、本開示のrAAVを対象に投与することにより行われ、ここで、rAAVは、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。いくつかの態様において、rAAVは、対象の予め決定された組織を標的とする。
他の側面において、本開示のAAVは、体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するための方法において用いることができる。方法は、本開示のrAAVを動物に投与することにより行われ、ここで、rAAVは、少なくとも1つの導入遺伝子を含み、ここで、導入遺伝子は、病理学的状態を引き起こし、およびここで、rAAVは、動物の予め決定された組織を標的とする。
一態様において、rAAVは、配列番号51~97からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するAAVカプシドを有する。
【0013】
導入遺伝子は、がん関連遺伝子、アポトーシス促進遺伝子およびアポトーシス関連遺伝子を含む、多数の遺伝子を発現することができる。いくつかの態様において、導入遺伝子は、がん関連遺伝子の発現を阻害することができる低分子干渉核酸を発現する。他の態様において、導入遺伝子は、アポトーシス関連遺伝子の発現を阻害することができる低分子干渉核酸を発現する。低分子干渉核酸は、他の態様において、miRNAまたはshRNAである。他の態様によれば、導入遺伝子は、トキシンを発現し、任意にここで、トキシンはDTAである。他の態様において、導入遺伝子は、レポーター遺伝子を発現し、これは任意に、ベータ-ガラクトシダーゼまたはGFPなどの蛍光タンパク質などのレポーター酵素である。
【0014】
導入遺伝子は、miRNAを発現してもよい。他の態様において、導入遺伝子は、miRNAスポンジを発現し、ここで、miRNAスポンジは、動物において1以上のmiRNAの活性を阻害する。miRNAは、内在miRNAであっても、またはいくつかの態様においては、心臓、肝臓、骨格筋、脳もしくは膵臓組織の細胞において発現されてもよい。
一態様において、AAVの標的組織は、生殖腺、横隔膜、心臓、胃、肝臓、脾臓、膵臓、または腎臓である。rAAVは、筋線維、扁平上皮細胞、腎臓の近位または遠位の曲尿細管細胞、粘膜腺細胞、血管内皮細胞または平滑筋細胞などの、多くの異なる型の組織に形質導入することができる。
【0015】
いくつかの態様において、rAAVは、対象あたり1010、1011、1012、1013、1014または1015ゲノムコピーの用量で投与される。いくつかの態様において、rAAVは、1kgあたり1010、1011、1012、1013または1014ゲノムコピーの用量で投与される。rAAVは、任意の経路により投与することができる。例えば、それは、いくつかの態様においては、静脈内で(例えば門脈注射により)投与してもよい。
いくつかの態様において、導入遺伝子は、肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、α-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、または心筋トロポニンT(cTnT)プロモーターなどの、組織特異的プロモーターを含む。
【0016】
体細胞トランスジェニック動物モデルは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、非ヒト霊長類などの哺乳動物であってよい。
いくつかの態様において、動物における病理学的状態に対する推定治療剤の効果を決定するために、推定治療剤を、体細胞トランスジェニック動物モデルに投与してもよい。
他の側面において、本開示は、本明細書において記載される方法により作製される、体細胞トランスジェニック動物である。
【0017】
本開示の別の側面により、予め決定された組織において病理学的状態を有する体細胞トランスジェニック動物を作製する、rAAVを作製するためのキットが提供される。キットは、組み換えAAVベクターを収容する少なくとも1つの容器、rAAVパッケージング成分を収容する少なくとも1つの容器、ならびに組み換えAAVを構築およびパッケージングするための説明を含む。
rAAVパッケージング成分は、少なくとも1つのrep遺伝子および/または少なくとも1つのcap遺伝子を発現する宿主細胞を含んでもよい。いくつかの態様において、宿主細胞は、293細胞である。他の態様において、宿主細胞は、組み換えAAVベクターを含むrAAVの生成に影響を及ぼす、少なくとも1つのヘルパーウイルスの遺伝子産物を発現する。少なくとも1つのcap遺伝子は、予め決定された組織を標的とするAAV血清型からのカプシドタンパク質をコードしていてもよい。
【0018】
他の態様において、rAAVパッケージング成分は、ヘルパーウイルスを含み、任意にここで、ヘルパーウイルスは、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスである。
rAAVベクターおよびその中の成分は、本明細書において記載されるエレメントのうちの任意のものを含んでよい。例えば、いくつかの態様において、rAAVベクターは、導入遺伝子、例えば本明細書において記載される導入遺伝子のうちの任意のものを含む。いくつかの態様において、導入遺伝子は、miRNA阻害剤(例えば、miRNAスポンジまたはTuD RNA)を発現し、ここで、miRNA阻害剤は、体細胞トランスジェニック動物において、1以上のmiRNAの活性を阻害する。
【0019】
本開示の限定の各々は、本開示の多様な態様を包含することができる。したがって、任意の1つの要素または要素の組み合わせを含む本開示の限定の各々が、本開示の各々の側面において含まれ得ることが理解される。本開示は、その適用において、以下の説明において記載されるか、図面において説明される構成および成分の配置の詳細に限定されない。本開示は、他の態様が可能であり、多様な方法において実施されるかまたは実行されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、AAV 3Bバリアントカプシド配列のアラインメントを表す;
図2図2は、AAV 4バリアントカプシド配列のアラインメントを表す;
図3図3は、AAV 5バリアントカプシド配列のアラインメントを表す;および
図4図4は、組み換えAAV形質導入アッセイの結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、小さい(~26nm)複製欠損の非エンベロープウイルスであって、一般に、細胞内での増殖について、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどの第2のウイルスの存在に依存する。AAVは、疾患を引き起こすとは知られておらず、非情に温和な免疫応答を誘導する。AAVは、分裂中および非分裂中の両方の細胞に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のものに組み込むことができる。これらの特徴は、AAVを、遺伝子治療のためのウイルスベクターを作製するための魅力的な候補にする。血清型2に基づくプロトタイプのAAVベクターは、マウスおよび大動物モデルにおける非毒性かつ安定な遺伝子導入のための概念証明を提供したが、多くの主要な標的組織において低い遺伝子導入効率を示した。いくつかの側面の開示は、遺伝子治療および研究用途のための別個の組織ターゲティング能力を有する新規のAAVを提供することにより、この弱点を克服するよう努める。
【0022】
本開示のいくつかの側面において、別個の組織ターゲティング能力を有する新たなAAVカプシドタンパク質が提供される。いくつかの態様において、AAVカプシドタンパク質は、カプシドタンパク質を含むAAVが標的とする組織から単離される。いくつかの側面において、導入遺伝子を対象中の標的組織に送達するための方法が提供される。導入遺伝子送達方法は、遺伝子治療(例えば疾患を処置するため)または研究(例えば体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するため)用途のために用いることができる。
【0023】
AAVを発見するための方法
AAVの生物学の大部分は、そのカプシドにより影響を受ける。その結果として、新規のAAVを発見するための方法は、AAVカプシドについてのDNA配列を単離することに概ね焦点を当てて来た。アデノ随伴ウイルス(AAV)潜在型生活環の中心的特徴は、宿主細胞において、組み込まれたゲノムおよび/またはエピソームゲノムの形態において存続する。新規AAVを単離するために用いられる方法として、潜在型AAV DNAゲノムのPCRベースの分子レスキュー、in vitroでのアデノウイルスヘルパー機能の存在下における組織DNAからの潜在型プロウイルスゲノムの感染性ウイルスレスキュー、および、等温ファージPhi-29ポリメラーゼにより媒介されるローリングサークルリニア(rolling-circle-linear)増幅による組織DNAからの環状プロウイルスゲノムのレスキューが挙げられる。これらの単離方法の全ては、AAVプロウイルスDNAゲノムの潜在性を利用し、存続性のウイルスゲノムDNAをレスキューすることに焦点を当てる。
【0024】
内在型の潜在型AAVゲノムは、哺乳動物細胞(例えば、非ヒト霊長類の組織、例えば肝臓、脾臓およびリンパ節の細胞)において転写活性である。理論に拘束されることは望まないが、宿主中でAAVの存続性を維持するために、AAV遺伝子からの低レベルの転写が必要とされ得、結果として生じるcap RNAが、ベクターの開発のための機能的cap配列を回収するための、より好適かつ豊富な基質として役立ち得ると仮定される。repおよびcap遺伝子転写物はいずれも、RNA検出方法(例えばRT-PCR)により、多様な量により検出される。cap遺伝子転写物の存在、およびin vitroで逆転写(RT)を通してcap RNAのcDNAを生成する能力は、組織からの新規cap配列のPCRベースのレスキューのための鋳型の量を著しく増加させ、新規のAAVの発見の感度を増強する。
【0025】
新規のcap配列は、また、細胞に、プロウイルスAAVゲノムを非常に低い量で保有する組織から単離された全細胞DNAをトランスフェクトすることにより、同定され得る。細胞に、さらに、ヘルパーウイルス機能を提供する遺伝子(例えばアデノウイルス)をトランスフェクトして、トランスフェクトされた細胞においてAAV遺伝子の転写を引き起こすか、および/またはブーストしてもよい。本開示の新規のcap配列は、トランスフェクトされた細胞からcap mRNAを単離し、mRNAからcDNAを生成して(例えばRT-PCRにより)、cDNAをシークエンシングすることにより、同定することができる。
【0026】
単離されたカプシドタンパク質およびそれをコードする核酸
哺乳動物、特に非ヒト霊長類から単離されたAAVは、臨床開発およびヒト遺伝子治療適用のための遺伝子導入ベクターを作製するために有用である。本開示は、いくつかの側面において、多様な非ヒト霊長類組織において本明細書において開示される方法を用いて発見された、新規AAVを提供する。これらの新規AAVのカプシドタンパク質をコードする核酸は、非ヒト霊長類組織から単離されたウイルスゲノムDNAおよびmRNAの両方において発見された。AAVに関する核酸およびタンパク質配列、ならびに他の情報は、表1および2において、ならびに配列リストにおいて記載される。
【0027】
AAVカプシドタンパク質をコードする本開示の単離された核酸は、配列番号1~47のいずれか1つにおいて記載される配列を有する任意の核酸、ならびにそれらに対して実質的な相同性を有する配列を有する任意の核酸を含む。いくつかの態様において、本開示は、配列番号1~47のいずれか1つにおいて記載される配列を有する核酸と実質的な相同性を有するが、配列番号98~100のいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしない、単離された核酸を提供する。
さらに、本開示の単離されたAAVカプシドタンパク質は、配列番号51~98のいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列を有する任意のタンパク質、ならびにそれらに対して実質的な相同性を有する任意のタンパク質を含む。いくつかの態様において、本開示は、配列番号98~100のいずれか1つにおいて記載される配列を有するタンパク質と実質的な相同性を有するが、配列番号98~100のいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列を有しない、単離されたカプシドタンパク質を提供する。
【0028】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド部分の間のパーセント同一性を指す。用語「実質的な相同性」とは、核酸、またはそのフラグメントに言及する場合、適切なヌクレオチドの挿入または欠失により別の核酸(またはその相補鎖)と至適にアラインメントされた場合に、アラインメントされた配列の約90~100%においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。ポリペプチド、またはそのフラグメントに言及する場合、用語「実質的な相同性」とは、適切なギャップ、挿入または欠失により、別のポリペプチドと至適にアラインメントされた場合に、アラインメントされた配列の約90~100%においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。用語「高度に保存される」とは、少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも90%同一、およびより好ましくは、97%を超えて同一であることを意味する。いくつかの場合において、高度に保存されるとは、100%同一を指してもよい。同一性は、当業者により、例えば当業者に公知のアルゴリズムおよびコンピュータープログラムの使用により、容易に決定される。
【0029】
本明細書において記載されるとおり、核酸またはポリペプチドの配列間のアラインメントは、多様な公共または市販で入手可能な多重配列アラインメントプログラムのうちの任意のもの、例えばインターネット上のウェブサーバーを通してアクセス可能な「Clustal W」などを用いて行う。あるいは、Vector NTIユーティリティーもまた用いることができる。また、ヌクレオチド配列同一性を測定するために用いることができる、当該分野において公知の多数のアルゴリズムが存在し、これらは、上記のプログラム中に含まれるものを含む。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、BLASTNを用いて比較することができ、これは、クエリーとサーチ配列との間の最良のオーバーラップの領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性を提供する。類似のプログラムが、アミノ酸配列の比較のために利用可能であり、例えば「Clustal X」プログラム、BLASTPがある。典型的には、これらのプログラムのうちの任意のものを、デフォルトのセッティングで用いるが、当業者は、これらのセッティングを、必要に応じて変更することができる。あるいは、当業者は、少なくとも同一性のレベルまたはアラインメントを、参照されたアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるものとして提供する、別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用することができる。アラインメントは、2つのタンパク質またはペプチド間の対応するアミノ酸を同定するために用いることができる。「対応するアミノ酸」とは、タンパク質またはペプチド配列のアミノ酸であって、別のタンパク質またはペプチド配列のアミノ酸とアラインメントされたものである。対応するアミノ酸は、同一であっても非同一であってもよい。非同一なアミノ酸である対応するアミノ酸は、バリアントアミノ酸として言及される場合がある。多様なAAVバリアントの中の対応するアミノ酸の表は、表4~6において提供される。
【0030】
代替的に、核酸について、相同領域の間で安定な二本鎖を形成する条件下におけるポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションと、その後の一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化、および消化されたフラグメントのサイズ決定により、相同性を決定することができる。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定の系について定義されるようなストリンジェントな条件下において、サザンハイブリダイゼーション実験において同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件を定義することは、当該分野における技術のうちである。
【0031】
「核酸」配列とは、DNAまたはRNA 配列を指す。いくつかの態様において、用語、核酸は、限定されないが、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチル-アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュード-ウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチル-グアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチル-シトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノ-メチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトオキソシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリンなどの、既知のDNAおよびRNAの塩基アナログのいずれかを含む配列をキャプチャーする。
【0032】
いくつかの態様において、本開示のタンパク質および核酸は、単離されている。本明細書において用いられる場合、用語「単離された」とは、人工的に得られるかまたは生成されることを意味する。本明細書において核酸に関して用いられる場合、用語「単離された」とは、一般に:(i)in vitroで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、増幅されること;(ii)クローニングにより組み換え的に生成されること;(iii)切断およびゲル分離などにより、精製されること;または(iv)例えば化学合成により、合成されることを意味する。単離された核酸は、当該分野において周知の組み換えDNA技術により容易に操作可能であるものである。したがって、5’および3’制限部位が知られているか、それらについてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクター中に含まれるヌクレオチド配列は、単離されていると考えられるが、その宿主中でそのネイティブの状態において存在する核酸配列はそうではない。単離された核酸は、実質的に精製されていてもよいが、必ずしもそうである必要はない。例えば、クローニングまたは発現ベクター中で単離されている核酸は、それらが存在する細胞中で、僅かなパーセンテージの物質のみを含む点において、純粋ではない。しかし、当該用語が本明細書において用いられる場合、かかる核酸は単離されている。なぜならば、それらは、当業者に公知の標準的な技術により、容易に操作可能であるからである。本明細書においてタンパク質またはペプチドに関して用いられる場合、用語「単離された」とは、一般に、人工的に得られたかまたは生成された(例えば化学合成により、組み換えDNAテクノロジーにより、など)タンパク質またはペプチドを指す。
【0033】
カプシドタンパク質の機能的に等価なバリアントまたは相同体を提供するために、保存的アミノ酸置換を行ってもよいことが、理解されるべきである。いくつかの側面において、本開示は、保存的アミノ酸置換をもたらす配列の変更を包含する。本明細書において用いられる場合、保存的アミノ酸置換とは、当該アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的な電荷またはサイズの特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。バリアントは、ポリペプチド配列を変更するための方法を収集する参考文献、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrookら編、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor, New York, 1989年)、またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.(New York)において見出されるような、当業者に公知のかかる方法に従って、調製することができる。アミノ酸の保存的置換は、以下の群内のアミノ酸の間で行われる置換を含む:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D。したがって、本明細書において開示されるタンパク質およびポリペプチドのアミノ酸配列に対して、保存的アミノ酸置換を行うことができる。
【0034】
AAVカプシドタンパク質をコードする単離された核酸の例は、配列番号1~47からなる群より選択される配列を有する核酸である。AAVカプシド配列をコードする単離された核酸のフラグメントは、所望されるカプシド配列をコードする核酸を構築するために有用である。フラグメントは、任意の適切な長さのものであってよい。いくつかの態様において、AAVカプシド配列をコードする単離された核酸のフラグメント(部分)が、所望されるカプシド配列をコードする核酸を構築するために有用であり得る。フラグメントは、任意の適切な長さのものであってよい(例えば少なくとも6、少なくとも9、少なくとも18、少なくとも36、少なくとも72、少なくとも144、少なくとも288、少なくとも576、少なくとも1152ヌクレオチド長またはそれより長く)。例えば、AAVカプシドの特性を改変するために、第1のAAVカプシドタンパク質のポリペプチドをコードする核酸配列のフラグメントを、第2のAAVカプシド配列をコードする核酸配列を構築するために用いても、またはこれの中に組み込んでもよい。いくつかの態様において、いくつかの態様において、複数のAAV血清型からのカプシド配列フラグメントを含むAAVカプシドタンパク質は、キメラAAVカプシドとして言及される。フラグメントは、配列番号98~100のうちのいずれか1つの配列と同一のペプチドをコードしないフラグメントであってよい。例えば、AAVカプシドの特性を改変するために、(既知のAAV血清型と比較して)バリアントアミノ酸をコードする核酸配列のフラグメントを、AAVカプシド配列をコードする核酸配列を構築するために用いても、または、その中に組み込んでもよい。いくつかの態様において、AAVバリアントをコードする核酸配列は、既知のAAV血清型(例えばAAV血清型3B、AAV4またはAAV5)と比較して、約1~約100個のアミノ酸バリアントを含んでもよい。いくつかの態様において、AAVバリアントをコードする核酸配列は、既知のAAV血清型(例えばAAV血清型3B、AAV4またはAAV5)と比較して、約5~約50個のアミノ酸バリアントを含んでもよい。いくつかの態様において、AAVバリアントをコードする核酸配列は、既知のAAV血清型(例えばAAV血清型3B、AAV4またはAAV5)と比較して、約10~約30個のアミノ酸バリアントを含んでもよい。いくつかの態様において、AAVバリアントをコードする核酸配列は、既知のAAV血清型(例えばAAV血清型3B、AAV4またはAAV5)と比較して、1、または2、または3、または4、5、または6、または7、または8、または9、または10、または11、または12、または13、または14、または15、または16、または17、または18、または19、または20個のアミノ酸バリアントを含んでもよい。例えば、AAVバリアントをコードする核酸配列(例えば配列番号92は、既知のAAV血清型(例えばAAV5)と比較して、3個のアミノ酸バリアントを含む。バリアントアミノ酸をコードする領域を含む核酸配列のフラグメントを、既知のAAV血清型をコードする核酸の配列中に組み込むことにより、当該3個のアミノ酸バリアントのうちの1以上を有する組み換えcap配列を構築することができる。フラグメントは、部位特異的変異誘発を用いることを含む、任意の適切な方法により組み込むことができる。このようにして、新たな特性を有する新たなAAVバリアントを作製することができる。
【0035】
組み換えAAV
いくつかの側面において、本開示は、単離されたAAVを提供する。AAVに関して本明細書において用いられる場合、用語「単離された」とは、人工的に得られたかまたは生成されたAAVを指す。単離されたAAVは、組み換え方法を用いて生成することができる。かかるAAVは、本明細書において、「組み換えAAV」として言及される。組み換えAAV(rAAV)は、好ましくは、rAAVの導入遺伝子が、1以上の予め決定された組織に特異的に送達されるような、組織特異的ターゲティング能力を有する。AAVカプシドは、これらの組織特異的ターゲティング能力を決定することにおける重要なエレメントである。したがって、ターゲティングされている組織に適切なカプシドを有するrAAVを選択することができる。いくつかの態様において、rAAVは、配列番号51~97のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質、またはそれに対して実質的な相同性を有するタンパク質を含む。
【0036】
所望されるカプシドタンパク質を有する組み換えAAVを得るための方法は、当該分野において周知である(例えば、US 2003/0138772を参照;その内容は、本明細書においてその全体において参考として援用される)。典型的には、方法は、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列(例えば、配列番号1~47のいずれか1つにおいて記載される配列を有する核酸またはそのフラグメント;機能的rep遺伝子;AAV末端逆位反復配列(ITR)および導入遺伝子から構成される組み換えAAVベクター;ならびにAAVカプシドタンパク質中への組み換えAAVベクターパッケージングを可能にするために十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、AAVのcap遺伝子によりコードされる構造タンパク質である。いくつかの態様において、AAVは、3つのカプシドタンパク質、ビリオンタンパク質1~3(VP1、VP2およびVP3と命名される)を含み、これらの全てを、単一のcap遺伝子から発現させることができる。したがって、いくつかの態様において、VP1、VP2およびVP3タンパク質は、共通のコア配列を共有する。いくつかの態様において、VP1、VP2およびVP3の分子量は、それぞれ、約87kDa、約72kDaおよび約62kDaである。いくつかの態様において、翻訳の後で、カプシドタンパク質は、ウイルスゲノムの周囲に球形の60アミノ酸長のタンパク質シェルを形成する。いくつかの態様において、タンパク質シェルは、主に、VP3カプシドタンパク質からなる。いくつかの態様において、カプシドタンパク質の機能は、ウイルスゲノムを保護し、ゲノムを送達し、宿主と相互作用することである。いくつかの側面において、カプシドタンパク質は、組織特異的様式において、ウイルスゲノムを宿主に送達する。いくつかの態様において、VP1および/またはVP2カプシドタンパク質は、パッケージングされたAAVの組織向性に寄与し得る。いくつかの態様において、パッケージングされたAAVの組織向性は、VP3カプシドタンパク質により決定される。いくつかの態様において、AAVの組織向性は、カプシドタンパク質中に生じる変異により増強または変更される。
【0037】
いくつかの側面において、本開示は、野生型AAV血清型のバリアントを記載する。いくつかの態様において、バリアントは、改変された組織向性を有する。いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、cap遺伝子中にアミノ酸バリエーション(例えば置換、欠失、挿入)を含む。上で議論されたとおり、3つ全てのカプシドタンパク質は、単一のcap遺伝子から転写される。したがって、いくつかの態様において、cap遺伝子中のアミノ酸バリエーションは、前記cap遺伝子によりコードされる3つ全てのカプシドタンパク質において存在する。あるいは、いくつかの態様において、アミノ酸バリエーションは、3つ全てのカプシドタンパク質において存在しなくともよい。いくつかの態様において、アミノ酸バリエーションは、VP1カプシドタンパク質においてのみ生じる。いくつかの態様において、アミノ酸バリエーションは、VP2カプシドタンパク質においてのみ生じる。いくつかの態様において、アミノ酸バリエーションは、VP3カプシドタンパク質中でのみ生じる。いくつかの態様において、AAVバリアントは、cap遺伝子中に1つより多くのバリエーションを含む。いくつかの態様において、1つより多くのバリエーションは、同じカプシドタンパク質中で(例えばVP3中で)生じる。いくつかの態様において、1つより多くのバリエーションが、異なるカプシドタンパク質中で生じる(例えば、VP2において少なくとも1つのバリエーション、およびVP3において少なくとも1つのバリエーション)。
【0038】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、AAV3B、AAV4またはAAV5のバリアントである。AAV3Bは、ヒト肝細胞(例えば肝臓組織)に効率的に形質導入することが知られている。また、AAV3Bは、癌性のヒト肝細胞に効率的に形質導入することが知られている。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAV3Bバリアントは、癌性のまたは正常なヒト肝細胞に遺伝子治療薬を送達するために有用であり得る。AAV4およびAAV5は、中枢神経系(CNS)、心肺組織および眼の組織を標的とすることが知られている。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAV4およびAAV5バリアントは、CNS、心肺組織または眼に遺伝子治療薬を送達するために有用であり得る。
【0039】
本明細書において記載されるAAV3B、AAV4およびAAV5バリアントは、cap遺伝子中に、対応する野生型AAVと比較して、1以上のバリエーションを含んでもよいことが理解されるべきである。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAV3B、AAV4およびAAV5バリアントは、野生型AAV3B、AAV4またはAAV5によっては標的とされないさらなる組織型に遺伝子治療剤を送達するために有用な組織向性を有していてもよい。いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAV3Bバリアント(例えばCBr-7.4、CBr-7.5、CBr-7.8)は、中枢神経系(CNS)に遺伝子治療薬を送達するために有用であり得る。いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAV4バリアントは、腎臓の細胞または肝臓の細胞を標的とするために有用であり得る。いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAV5バリアントは、遺伝子治療薬を肝臓、脾臓、心臓または脳にターゲティングするために有用であり得る。AAVバリアントおよびそれらの標的組織の非限定的な例は、表1において見出すことができる。
【0040】
いくつかの側面において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、CNS関連障害の処置のために有用であり得る。本明細書において用いられる場合、「CNS関連障害」とは、中枢神経系の疾患または状態である。CNS関連障害は、脊髄(例えば脊髄症)、脳(例えば脳症)または脳および脊髄の周囲の組織において発症し得る。CNS関連障害は、遺伝子起源のものであり得、これは遺伝性であるか、または体細胞変異を通しての後天的なものであり得る。CNS関連障害は、心理学的な状態または障害、例えば、注意欠陥多動障害、自閉症スペクトラム症、気分障害、統合失調症、うつ状態、レット症候群などであってよい。CNS関連障害は、自己免疫性障害であってもよい。CNS関連障害はまた、CNSのがん、例えば脳がんであってもよい。がんであるCNS関連障害は、CNSの原発がん、例えば、星細胞腫、膠芽腫などであっても、またはCNS組織に転移したがん、例えば脳に転移した肺がんであってもよい。CNS関連障害のさらなる非限定的な例として、パーキンソン病、リソソーム蓄積症、虚血、神経障害性疼痛、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、およびカナバン病(CD)が挙げられる。
【0041】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、心臓の細胞(例えば心臓組織)に遺伝子治療薬を送達するために有用であり得る。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、心血管障害の処置のために有用であり得る。本明細書において用いられる場合、「心血管障害」とは、心血管系の疾患または状態である。心血管疾患は、心臓、循環系、動脈、静脈、血管および/または毛細管において発症し得る。心血管障害は、遺伝子起源のものであり得、これは遺伝性であるか、または体細胞変異を通しての後天的なものであり得る。心血管障害の非限定的な例として、リウマチ性心臓疾患、弁膜性心臓疾患、高血圧性心臓疾患、動脈瘤、アテローム動脈硬化症、高血圧(例えば高い血圧)、末梢動脈疾患(PAD)、虚血性心臓疾患、狭心症、冠動脈心臓疾患、冠動脈疾患、心筋梗塞、脳血管疾患、一過性虚血発作、炎症性心臓疾患、心筋症、心膜疾患、先天性心臓疾患、心不全、脳卒中、およびシャーガス病に起因する心筋炎が挙げられる。
【0042】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、肺(lung)および/または肺系(pulmonary system)の組織を標的としてもよい。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、肺疾患(pulmonary disease)の処置のために有用であり得る。本明細書において用いられる場合、「肺疾患」とは、肺系の疾患または状態である。肺疾患は、肺または呼吸に関与する筋肉において発症し得る。肺疾患は、遺伝子起源のものであり得、これは遺伝性であるか、または体細胞変異を通しての後天的なものであり得る。肺疾患は、限定されないが、非小細胞肺癌、小細胞肺癌および肺カルチノイド腫瘍を含む肺のがんであってよい。肺疾患のさらなる非限定的な例として、急性気管支炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、石綿肺、喘息、気管支拡張症、細気管支炎、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、気管支肺異形成症、綿肺症、慢性気管支炎、コクシジオイデス症(Cocci)、慢性閉塞性肺障害(COPD)、特発性器質化肺炎(COP)、嚢胞性線維症、肺気腫、ハンタウイルス肺症候群、ヒストプラスマ症、ヒトメタニューモウイルス、過敏性肺炎、インフルエンザ、リンパ管腫症、中皮腫、中東呼吸器症候群、非結核性マイコバクテリウム、百日咳、塵肺症(黒色肺疾患(Black Lung Disease))、肺炎、原発性線毛機能不全、原発性肺高血圧症、肺動脈性肺高血圧症、肺線維症、肺血管疾患、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、サルコイドーシス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、珪肺症、睡眠時無呼吸、乳児突然死症候群(SIDS)、および結核が挙げられる。
【0043】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、肝臓組織を標的としてもよい。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、肝疾患の処置のために有用であり得る。本明細書において用いられる場合、「肝疾患」とは、肝臓の疾患または状態である。肝疾患は、遺伝子起源のものであり得、これは遺伝性であるか、または体細胞変異を通しての後天的なものであり得る。肝疾患は、限定されないが、肝細胞癌(HCC)、線維層板型細胞腫、胆管細胞癌、血管肉腫および肝芽腫を含む肝臓のがんであってよい。肺疾患のさらなる非限定的な例として、アラジール症候群、アルファ1アンチトリプシン欠損、自己免疫性肝炎、胆道閉鎖症、硬変、肝臓の嚢胞性疾患、脂肪肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ジルベール症候群、ヘモクロマトーシス、妊娠中の肝疾患、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、1型糖原病、チロシン血症、ウイルス性A、B、C型肝炎、ウィルソン病および住血吸虫症が挙げられる。
【0044】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、腎臓組織を標的としてもよい。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、腎疾患の処置のために有用であり得る。本明細書において用いられる場合、「腎疾患」とは、肝臓の疾患または状態である。肝疾患は、遺伝子起源のものであり得、これは遺伝性であるか、または体細胞変異を通しての後天的なものであり得る。肝疾患は、腎臓のがんであってよく、これは、限定されないが、腎細胞癌、明細胞癌、1型乳頭癌、2型乳頭癌、嫌色素性がん(chromophobe cancer)、オンコサイト細胞癌、集合管がん、腎盂の移行細胞癌(transitional cell cancer)およびウィルムス腫瘍を含む。腎疾患のさらなる非限定的な例として、アブデルハルデン・カウフマン・リグナック症候群(腎障害性シスチン症)、急性腎不全/急性腎損傷、急性腎小葉性腎炎(Lobar Nephronia)、急性リン酸腎障害(Phosphate Nephropathy)、急性尿細管壊死、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損、アデノウイルス腎炎、アルポート症候群、アミロイドーシス、血管筋脂肪腫、鎮痛薬腎症、アンギオテンシン抗体および巣状分節性糸球体硬化症、抗リン脂質抗体症候群、抗TNF-α治療剤関連糸球体腎炎、APOL1変異、AME症候群(Apparent Mneralocorticoid Excess Syndrome)、アリストロキア酸腎症、バルカン地方腎症、バーター症候群、ビート尿(Beeturia)、β-サラセミア腎疾患、胆汁円柱腎症(Bile Cast Nephropathy)、BKポリオーマ、C1q腎症、心腎症候群、CFHR5腎症、コレステロール塞栓症、チャーグ・ストラウス症候群、乳び尿、虚脱性糸球体症、CMVに関連する虚脱性糸球体症、先天性ネフローゼ症候群、腎錐体症候群(Conorenal syndrome)(Mainzer-Saldino症候群またはSaldino-Mainzer病)、造影剤腎症、硫酸銅中毒、皮質壊死、クリオグロブリン血症、結晶性急性腎損傷、嚢胞性腎疾患、後天性、シスチン尿症、デンスデポジット病(2型MPGN)、デント病(X連鎖性劣性遺伝性腎結石症)、透析不均衡症候群、糖尿病性腎疾患、尿崩症、EAST症候群、異所性尿管、浮腫、エルトハイム・チェスター病、ファブリー病、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、ファンコニー症候群、フレイザー症候群、フィブロネクチン糸球体症、線維性糸球体腎炎およびイムノタクトイド糸球体症、フレーリー症候群、巣状分節性糸球体硬化症、巣状硬化症(Focal Sclerosis)、巣状糸球体硬化症、ギャロウェイ・モワト症候群、ギテルマン症候群、糸球体疾患、糸球体尿細管逆流症(Glomerular Tubular Reflux)、糖尿、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、血球貪食症候群、出血性膀胱炎、発作性夜間ヘモグロビン尿症および溶血性貧血に関連するヘモジデリン沈着症、肝静脈閉塞症、類洞閉塞症候群、C型肝炎関連腎疾患、肝腎症候群、HIV関連腎症(HIVAN)、馬蹄腎(腎臓の融合)、ハンナ潰瘍(Hunner’s Ulcer)、高アルドステロン症、高カルシウム血症、高カリウム血症、高マグネシウム血症、高ナトリウム血症、高しゅう酸尿症、高リン血症、低カルシウム血症、低カリウム血症、低カリウム血症に誘導される腎臓機能不全、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、低リン血症、IgA腎症、IgG4腎症、間質性膀胱炎、疼痛性膀胱症候群、間質性腎炎、イーヴェマルク症候群(Ivemark's syndrom)、腎結石、腎結石症、レプトスピラ腎疾患、軽鎖沈着症(Light Chain Deposition Disease)、モノクローナル免疫グロブリン沈着症、リドル症候群、ライトウッド・オルブライト症候群、リポタンパク質糸球体症、リチウム腎毒症、LMX1B変異により引き起こされる遺伝性FSGS、腰腹痛血尿症(Loin Pain Hematuria)、ループス、全身性エリテマトーデス、ループス性腎疾患、ループス腎炎、ライム病関連糸球体腎炎、マラリア腎症、悪性高血圧、マラコプラキア、外尿道口狭窄、髄質嚢胞腎疾患、海綿腎、巨大尿管、メラミン中毒および腎臓、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性腎症、メソアメリカ腎症、代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシス、顕微鏡的多発血管炎、ミルク・アルカリ症候群、微小変化型ネフローゼ症候群(Minimal Change Disease)、多嚢胞性異形性腎、多発性骨髄腫、骨髄増殖性腫瘍および糸球体症、爪膝蓋骨症候群、腎石灰化症、腎性全身性線維症、腎下垂症(遊走腎、腎臓の下垂症)、ネフローゼ症候群、神経因性膀胱、結節性糸球体硬化症、非淋菌性、ナッツクラッカー症候群、口腔・顔面・指趾症候群(Orofaciodigital Syndrome)、起立性低血圧症、起立性蛋白尿症、浸透圧利尿、ページ腎(Page Kidney)、乳頭壊死(Papillary Necrosis)、乳頭腎症候群(Papillorenal Syndrome)(腎コロボーマ症候群、孤発性の腎臓の発育不全)、腹腔腎臓症候群、後部尿道弁、感染後糸球体腎炎、連鎖球菌感染後糸球体腎炎、結節性多発動脈炎、多発性嚢胞腎疾患、後部尿道弁、妊娠高血圧腎症(Preeclampsia)、モノクローナルIgG沈着を伴う増殖性糸球体腎炎(Nasr病)、蛋白尿(尿中のタンパク質)、偽性高アルドステロン症(Pseudohyperaldosteronism)、偽性副甲状腺機能低下症、肺腎臓症候群、腎盂腎炎(腎臓の感染症)、膿腎症、放射線腎症、リフィーディング症候群、逆流性腎症、急速進行性糸球体腎炎、腎膿瘍、腎臓周囲の膿瘍、腎無発生、腎動脈瘤、腎動脈狭窄症、腎細胞癌、腎嚢胞、運動誘発性急性腎不全を伴う腎性低尿酸血症、腎梗塞、腎性骨ジストロフィー、腎尿細管性アシドーシス、リセット・オスモスタット(Reset Osmostat)、下大静脈後尿管、後腹膜線維症、横紋筋融解症、肥満外科手術に関連する横紋筋融解、関節リウマチ関連腎疾患、サルコイドーシス腎疾患、腎臓および大脳の塩喪失、シムケ免疫性骨形成不全(Schimke immuno-osseous dysplasia)、強皮症腎クリーゼ、蛇状腓骨・多発性嚢胞腎症候群(Serpentine Fibula-Polycystic Kidney Syndrome)、Exner症候群、鎌状赤血球腎症、シリカ暴露および慢性腎疾患、造血細胞移植後の腎疾患、幹細胞移植に関連する腎疾患、薄基底膜疾患(Thin Basement Membrane Disease)、良性家族性血尿、膀胱三角部炎、結節性硬化症、尿細管異形成、腫瘍崩壊症候群、尿毒症、尿毒性視神経症、尿管瘤、尿道カルンクル、尿道狭窄症、尿失禁、尿路感染症、尿路閉塞症、膀胱腸瘻、膀胱尿管逆流症、フォンヒッペル・リンダウ病、ワルファリン関連腎症、ウェゲナー肉芽腫症、多発血管炎性肉芽腫症(Granulomatosis with Polyangiitis)、ならびにWunderlich症候群が挙げられる。
【0045】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、眼組織に遺伝子治療薬を送達するために有用であり得る。したがって、いくつかの態様において、本明細書において記載されるAAVバリアントは、眼の障害の処置のために有用であり得る。本明細書において用いられる場合、「眼の障害」とは、眼の疾患または状態である。心血管疾患は、眼、強膜、角膜、前眼房、後眼房(posterior chamber)、虹彩、瞳孔、水晶体、硝子体液、網膜または視神経において発症し得る。眼の障害は、遺伝子起源のものであり得、これは遺伝性であるか、または体細胞変異を通しての後天的なものであり得る。眼の疾患および障害の非限定的な例として、これらに限定されないが、加齢黄斑変性、網膜症、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫(macula edema)、緑内障、網膜色素変性症および眼のがんが挙げられる。
【0046】
rAAVベクターをAAVカプシド中にパッケージングするために宿主細胞において培養されるべき成分は、宿主細胞にトランスで提供してもよい。あるいは、必要とされる成分(例えば、組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)のうちの任意の1以上を、当業者に公知の方法を用いて必要とされる成分のうちの1以上を含むように操作された、安定な宿主細胞により提供させることができる。最も好適には、かかる安定な宿主細胞は、必要とされる成分を誘導性プロモーターの制御下に含むであろう。しかし、必要とされる成分は、構成的プロモーターの制御下にあってもよい。好適な誘導性および構成的プロモーターの例は、本明細書において、導入遺伝子と共に用いるために好適な調節エレメントの議論において提供される。なお別の選択肢において、選択される安定な宿主細胞は、選択される成分を構成的プロモーターの制御下に、他の選択される成分を1以上の誘導性プロモーターの制御下に含んでもよい。例えば、293細胞(これは、E1ヘルパー機能を構成的プロモーターの制御下に含む)に由来するが、repおよび/またはcapタンパク質を誘導性プロモーターの制御下に含む、安定な宿主細胞を作製することができる。当業者は、なお他の安定な宿主細胞を作製することができる。
【0047】
本開示のrAAVを生成するために必要とされる組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、任意の適切な遺伝子エレメント(ベクター)を用いて、パッケージング宿主細胞に送達することができる。いくつかの態様において、3つ全てのカプシドタンパク質(例えばVP1、VP2およびVP3)をコードする単一の核酸を、単一のベクターにおいて、パッケージング宿主細胞中に送達する。いくつかの態様において、カプシドタンパク質をコードする核酸を、2つのベクターによりパッケージング宿主細胞中に送達する;2つのカプシドタンパク質(例えばVP1およびVP2)をコードする第1の核酸を含む第1のベクター、ならびに、単一のカプシドタンパク質(例えばVP3)をコードする第2の核酸を含む第2のベクター。いくつかの態様において、各々が異なるカプシドタンパク質をコードする核酸を含む3つのベクターを、パッケージング宿主細胞に送達する。選択される遺伝子エレメントは、本明細書において記載されるものを含む任意の好適な方法により送達することができる。本開示の任意の態様を構築するために用いられる方法は、核酸操作における技術を有する当業者に公知であり、遺伝子工学、組み換え工学および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)を参照。同様に、rAAVビリオンを作製する方法は、周知であり、好適な方法の選択は、本開示に対する限定ではない。例えば、K. Fisher et al, J. Virol., 70:520-532 (1993)および米国特許第5,478,745号を参照。
【0048】
いくつかの態様において、組み換えAAVは、三重トランスフェクション(triple transfection)法(米国特許第6,001,650号において詳細に記載される)を用いて生成することができる。典型的には、組み換えAAVは、宿主細胞を、AAV粒子中にパッケージングされるべき、組み換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクターおよびアクセサリー機能ベクターでトランスフェクトすることにより、生成することができる。AAVヘルパー機能ベクターは、「AAVヘルパー機能」配列(例えば、repおよびcap)をコードし、これらは、増殖性AAVの複製およびカプシド形成のために、トランスに機能する。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能な野生型AAVビリオン(例えば、機能的repおよびcap遺伝子を含むAAVビリオン)を作製することのない、効率的なAAVベクター生成を支持する。本開示による使用のために好適なベクターの非限定的な例として、米国特許第6,001,650号において記載されるpHLP19、および米国特許第6,156,303号において記載されるpRep6cap6 ベクターが挙げられ、これらの特許の両方の全体は、本明細書において参考として援用される。アクセサリー機能ベクターは、非AAV由来のウイルスについてのヌクレオチド配列および/または複製のためにAAVが依存する細胞の機能(例えば、「アクセサリー機能」)をコードする。アクセサリー機能として、AAVの複製のために必要とされる機能が挙げられ、これは、限定することなく、AAV 遺伝子転写の活性化、ステージ特異的なAAVのmRNAスプライシング、AAVのDNA複製、cap発現生成物の合成、およびAAVカプシドのアセンブリーに関与する部分を含む。ウイルスベースのアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(1型単純ヘルペスウイルス以外のもの)、およびワクシニアウイルスなどの公知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0049】
いくつかの側面において、本開示は、トランスフェクトされた宿主細胞を提供する。用語「トランスフェクション」とは、細胞による外来DNAの取り込みを指すように用いられ、細胞は、外因性DNAが細胞膜の内部に導入された場合に、「トランスフェクトされ」ている。多数のトランスフェクション技術が、当該分野において一般的に公知である。例えば、Graham et al. (1973) Virology, 52:456、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier、およびChu et al. (1981) Gene 13:197を参照。かかる技術は、ヌクレオチド組み込みベクターおよび他の核酸分子などの1以上の外因性核酸を、好適な宿主細胞中に導入するために用いることができる。
【0050】
「宿主細胞」とは、目的の物質を内部に持つか、またはこれを内部に持つことができる、任意の細胞を指す。しばしば、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。宿主細胞は、AAVヘルパーコンストラクト、AAVミニ遺伝子プラスミド、アクセサリー機能ベクター、または組み換えAAVの生成に関連する他のトランスファーDNAのレシピエントとして用いることができる。この用語は、それがトランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、「宿主細胞」とは、本明細書において用いられる場合、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞を指し得る。単一の親細胞の子孫は、天然の、偶発的な、または計画的な変異に起因して、形態学において、またはゲノムもしくは全DNAの補完物(complement)において、元の親と必ずしも完全に同一でなくともよい。
【0051】
本明細書において用いられる場合、用語「細胞株」は、in vitroでの持続的または長期の増殖および分裂が可能な細胞の集団を指す。しばしば、細胞株は、単一の前駆細胞に由来するクローンの集団である。さらに、当該分野において、かかるクローン集団の貯蔵またはトランスファーの間に、核型において自発的なまたは誘導される変化が起こり得ることが知られている。したがって、言及される細胞株に由来する細胞は、祖先の細胞または培養物と正確に同一でない場合があり、言及される細胞株は、かかるバリアントを含む。
本明細書において用いられる場合、用語「組み換え細胞」とは、生物学的に活性なポリペプチドの転写またはRNAなどの生物学的に活性な核酸の産生をもたらすDNAセグメントなどの外因性DNAセグメントが導入されている細胞を指す。
【0052】
細胞に、また、ヘルパー機能をAAVに提供するベクター(例えばヘルパーベクター)をトランスフェクトしてもよい。ヘルパー機能を提供するベクターは、例えばE1a、E1b、E2a、E4ORF6を含むアデノウイルス機能を提供してもよい。これらの機能を提供するアデノウイルス遺伝子の配列は、血清型2、3、4、7、12および40など、およびさらに当該分野において公知の現在同定されているヒト型のいずれかを含む、任意の既知のアデノウイルス血清型から得ることができる。したがって、いくつかの態様において、方法は、細胞に、AAVの複製、AAVの遺伝子転写、および/またはAAVのパッケージングのために必要な1以上の遺伝子を発現するベクターをトランスフェクトすることを含む。
【0053】
本明細書において用いられる場合、用語「ベクター」は、適切な制御エレメントと結合した場合に複製が可能であり、細胞間で遺伝子配列をトランスファーすることができる、任意の遺伝子エレメント、例えばプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどを含む。したがって、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。いくつかの態様において、有用なベクターは、転写されるべき核酸セグメントが、プロモーターの転写制御下に配置されるベクターであることを企図される。「プロモーター」とは、遺伝子の特異的転写を開始させるために必要な細胞の合成機構または導入される合成機構により認識される。句「作動的に配置される」、「制御下」または「転写制御下」とは、プロモーターが、核酸に対して、RNAポリメラーゼ開始および遺伝子の発現を制御するために正しい位置および向きにあることを意味する。用語「発現ベクターまたはコンストラクト」とは、当該核酸のコード配列の一部またはすべてが転写されることができる核酸を含む、任意の型の遺伝子コンストラクトを意味する。いくつかの態様において、発現は、例えば、転写された遺伝子から、生物学的に活性なポリペプチド生成物または阻害的RNA(例えば、shRNA、miRNA、miRNA阻害剤)を生成するための、核酸の転写を含む。
【0054】
幾つかの場合において、単離されたカプシド遺伝子は、当該遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質に関連する機能的特徴を決定するために、当該分野において周知の方法を用いて組み換えAAVを構築およびパッケージングするために用いることができる。例えば、単離されたカプシド遺伝子は、レポーター遺伝子(例えばB-ガラクトシダーゼ、GFP、ルシフェラーゼなど)を含む組み換えAAV(rAAV)を構築およびパッケージングするために用いることができる。RAAVは、次いで、動物(例えばマウス)に送達することができ、動物の多様な組織(例えば心臓、肝臓、腎臓)におけるレポーター遺伝子の発現を試験することにより、新規の単離されたカプシド遺伝子の組織ターゲティング特性を、決定することができる。新規の単離されたカプシド遺伝子を特徴づけるための他の方法は、本明細書において開示され、なお他のものは、当該分野において周知である。
本開示のrAAVを生成するために組み換えベクターを所望されるAAVカプシド中にパッケージングするための前述の方法は、限定的であることを意図されず、他の好適な方法は、当業者に明らかであろう。
【0055】
組み換えAAVベクター
本開示の「組み換えAAV(rAAV) ベクター」は、典型的には、最低でも、導入遺伝子およびその調節配列、ならびに5’および3’AAV末端逆位反復配列(ITR)から構成される。カプシドタンパク質中にパッケージングされて、選択された標的細胞に送達されるのは、この組み換えAAVベクターである。いくつかの態様において、導入遺伝子は、ベクター配列に対して異種の核酸配列であって、目的のポリペプチド、タンパク質、機能的RNA分子(例えば、miRNA、miRNA阻害剤)または他の遺伝子産物をコードするものである。核酸コード配列は、標的組織の細胞における導入遺伝子転写、翻訳および/または発現を可能にする様式において、調節成分に作動的に連結している。
【0056】
ベクターのAAV配列は、典型的には、シス作動性の5’および3’末端逆位反復配列(例えば、B. J. Carter、「Handbook of Parvoviruses」(P. Tijsser編)中、CRC Press, pp. 155 168 (1990)を参照)を含む。ITR配列は、約145bpの長さである。好ましくは、ITRをコードする配列の実質的に全体が、分子中で用いられるが、これらの配列のある程度の微量の改変は許容可能である。これらのITR配列を改変する能力は、当該分野における技術のうちである(例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning. A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989);およびK. Fisher et al., J Virol., 70:520 532 (1996)などの教科書を参照)。本開示において用いられる分子の例は、導入遺伝子を含む「シス作動性」プラスミドであって、選択される導入遺伝子配列および関連する調節エレメントが、5’および3’AAV ITR配列と隣接しているものである。AAV ITR配列は、本発明により同定される哺乳動物AAV型を含む、任意の既知のAAVから得ることができる。
【0057】
いくつかの態様において、本開示のrAAVは、シュードタイプ化したrAAVである。シュードタイプ化は、外来ウイルスのエンベロープタンパク質と組み合わせたウイルスまたはウイルスベクターを生成するプロセスである。結果は、シュードタイプ化したウイルス粒子である。この方法により、外来のウイルスのエンベロープタンパク質を、宿主の向性またはウイルス粒子の安定性の増大/減少を改変するために用いることができる。いくつかの側面において、シュードタイプ化したrAAVは、2以上の異なるAAVからの核酸を含み、ここで、1つのAAVからの核酸は、カプシドタンパク質をコードし、少なくとも1つの他のAAVの核酸は、他のウイルスタンパク質および/またはウイルスゲノムをコードする。いくつかの態様において、シュードタイプ化したrAAVとは、1つのAAV血清型の末端逆位反復配列(ITR)および異なるAAV血清型のカプシドタンパク質を含むAAVを指す。例えば、Yのタンパク質でカプシド形成された血清型XのITRを含むシュードタイプ化したAAVベクターは、AAVX/Yとして命名されるであろう(例えば、AAV2/1は、AAV2のITRおよびAAV1のカプシドを有する)。いくつかの態様において、シュードタイプ化したrAAVは、1つのAAV血清型からのカプシドタンパク質の組織特異的ターゲティング能力を、別のAAV血清型からのウイルスDNAと組み合わせて、それにより、標的組織への導入遺伝子のターゲティングされた送達を可能にするために有用であり得る。
【0058】
組み換えAAVベクターについて上で定義された主要エレメントに加えて、ベクターはまた、必要な慣用的な制御エレメントを含み、これらは、プラスミドベクターでトランスフェクトされた、または本開示により作製されるウイルスに感染した細胞において、その転写、翻訳および/または発現を可能にする様式において、導入遺伝子に作動的に連結されている。本明細書において用いられる場合、「作動的に連結された」配列は、目的の遺伝子に近接した発現制御配列と、トランスで、または離れて、目的の遺伝子を制御するために作動する発現制御配列との両方を含む。
【0059】
発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセッシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増大させる配列(例えば、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増大させる配列;および、所望される場合、コードされる生成物の分泌を増大させる配列を含む。ネイティブ、構成的、誘導性および/または組織特異的なプロモーターを含む多数の発現制御配列が、当該分野において公知であり、利用することができる。
【0060】
本明細書において用いられる場合、核酸配列(例えばコード配列)と調節配列とは、それらが、核酸配列の発現または転写を調節配列の影響または制御下に置くように共有結合的に連結される場合に、「作動的に」連結されると言われる。核酸配列が機能的タンパク質に翻訳されることが所望される場合、2つのDNA配列は、5’調節配列中のプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、ならびに2つのDNA配列の間の連結の性質が(1)フレームシフト変異の導入をもたらさない、(2)コード配列の転写を指揮するプロモーター領域の能力に干渉しない、または(3)タンパク質に翻訳されるべき対応するRNA転写物の能力に干渉しない場合に、作動的に連結されると言われる。したがって、プロモーター領域は、プロモーター領域が、生じる転写物が、所望されるタンパク質またはポリペプチドに翻訳されることができるように、そのDNA配列の転写を引き起こすことができた場合に、核酸配列に作動的に連結している。同様に、2ま以上のコード領域は、それらが、共通のプロモーターからのそれらの転写がインフレームで翻訳された2以上のタンパク質の発現をもたらすように連結される場合に、作動的に連結している。いくつかの態様において、作動的に連結したコード配列は、融合タンパク質を生じる。いくつかの態様において、作動的に連結したコード配列は、機能的RNA(例えば、shRNA、miRNA、miRNA阻害剤)を生じる。
【0061】
タンパク質をコードする核酸について、ポリアデニル化配列は、一般に、導入遺伝子配列の後ろであって3’AAV ITR配列の前に挿入される。本開示において有用なrAAVコンストラクトはまた、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子との間に配置されるイントロンを含んでもよい。1つの可能なイントロン配列は、SV-40に由来し、SV-40Tイントロン配列として言及される。用いることができる別のベクターエレメントは、配列内リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写物から1つより多くのポリペプチドを生成するために用いられる。IRES配列は、1つより多くのポリペプチド鎖を含むタンパク質を生成するために用いられるであろう。これらのおよび他の一般的なベクターエレメントの選択は、慣用的であり、多くのかかる配列が利用可能である[例えば、Sambrookら、およびそれにおいて引用される参考文献、例えば、頁3.18 3.26および16.17 16.27ならびにAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, New York, 1989を参照]。いくつかの態様において、口蹄疫ウイルス2A配列は、ポリタンパク質中に含まれる;これは、小さいペプチドであり(約18アミノ酸長)、ポリタンパク質の切断を媒介することが示されている(Ryan, M D et al., EMBO, 1994;4:928-933;Mattion, N M et al., J Virology, November 1996;p. 8124-8127;Furler, S et al., Gene Therapy, 2001;8:864-873;およびHalpin, C et al., The Plant Journal, 1999;4:453-459)。2A配列の切断活性は、プラスミドおよび遺伝子治療ベクター(AAVおよびレトロウイルス)を含む人工的な系において、先に示されている(Ryan, M D et al., EMBO, 1994;4:928-933;Mattion, N M et al., J Virology, November 1996;p. 8124-8127;Furler, S et al., Gene Therapy, 2001;8:864-873;およびHalpin, C et al., The Plant Journal, 1999;4:453-459;de Felipe, P et al., Gene Therapy, 1999;6:198-208;de Felipe, P et al., Human Gene Therapy, 2000;11:1921-1931.;およびKlump, H et al., Gene Therapy, 2001;8:811-817)。
【0062】
宿主細胞における遺伝子発現のために必要とされる調節配列の正確な性質は、種、組織または細胞型の間で異なり得るが、一般に、必要に応じて、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列、エンハンサーエレメントなどを含むであろう。特に、かかる5’非転写調節配列は、作動的に結合した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含むであろう。調節配列はまた、所望される場合、エンハンサー配列または上流のアクチベーター配列を含んでもよい。本開示のベクターは、任意に、5’リーダーまたはシグナル配列を含んでもよい。適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量の内である。
【0063】
構成的プロモーターの例として、限定することなく、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意にRSVエンハンサーと共に)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意にCMVエンハンサーと共に)[例えば、Boshart et al, Cell, 41:521-530 (1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーター[Invitrogen]が挙げられる。
【0064】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の制御を可能にし、外因的に供給される化合物、温度などの環境要因、または特定の生理学的状態(例えば急性期、細胞の特定の分化状態、または複製中の細胞においてのみ)の存在により制御され得る。誘導性プロモーターおよび誘導性の系は、限定することなく、Invitrogen、ClontechおよびAriadを含む、多様な市販のソースから入手可能である。多くの他の系が記載されており、当業者は容易にこれを選択することができる。外因的に供給されるプロモーターにより制御される誘導性プロモーターの例として、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO 98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(No et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:3346-3351 (1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossen et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossen et al, Science, 268:1766-1769 (1995)、またHarvey et al, Curr. Opin. Chem. Biol., 2:512-518 (1998)を参照)、RU486誘導系(Wang et al, Nat. Biotech., 15:239-243 (1997) および Wang et al, Gene Ther., 4:432-441 (1997))およびラパマイシン誘導系(Magari et al, J. Clin. Invest., 100:2865-2872 (1997))が挙げられる。この文脈において有用であり得るなお他の型の誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態において、または複製中の細胞においてのみ調節されるものである。
【0065】
別の態様において、導入遺伝子のためのネイティブなプロモーターが用いられる。ネイティブなプロモーターは、導入遺伝子の発現がネイティブな発現を模倣すべきことが所望される場合に好ましい場合がある。ネイティブなプロモーターは、導入遺伝子の発現が、時間的もしくは発生的に、または組織特異的様式において、または特異的な転写刺激に応答して制御されなければならない場合に、用いることができる。さらなる態様において、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはKozakコンセンサス配列などの他のネイティブな発現制御エレメントもまた、ネイティブな発現を模倣させるために用いることができる。
【0066】
いくつかの態様において、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能力を付与する。いくつかの場合において、組織特異的調節配列は、組織特異的な様式において転写を誘導する組織特異的転写因子に結合する。かかる組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は、当該分野において周知である。例示的な組織特異的調節配列として、これらに限定されないが、以下の組織特異的プロモーターが挙げられる:肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、α-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、または心筋トロポニンT(cTnT)プロモーター。他の例示的なプロモーターとして、ベータ-アクチンプロモーター、B型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandig et al., Gene Ther., 3:1002-9 (1996));アルファ-フェトプロテイン(AFP)プロモーター(Arbuthnot et al., Hum. Gene Ther., 7:1503-14 (1996))、骨オステオカルシンプロモーター(Stein et al., Mol. Biol. Rep., 24:185-96 (1997));骨シアロタンパク質プロモーター(Chen et al., J. Bone Miner. Res., 11:654-64 (1996))、CD2プロモーター(Hansal et al., J. Immunol., 161:1063-8 (1998));免疫グロブリン重鎖プロモーター;T細胞受容体α鎖プロモーター、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターなどのニューロンのもの(Andersen et al., Cell. Mol. Neurobiol., 13:503-15 (1993))、神経フィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:5611-5 (1991))、およびニューロン特異的vgf 遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Neuron, 15:373-84 (1995))、および当業者に明らかな他のもの。
【0067】
いくつかの態様において、導入遺伝子を内部に持つ対象の1以上の組織において導入遺伝子の発現を阻害するために、1以上のmiRNAのための1以上の結合部位が、rAAVベクターの導入遺伝子中に組み込まれる。当業者は、導入遺伝子の発現を組織特異的様式において制御するために、結合部位を選択することができることを理解するであろう。例えば、肝臓における導入遺伝子の発現を阻害するために、肝臓特異的miR-122のための結合部位を、その導入遺伝子中に組み込むことができる。mRNA中の標的部位は、5’UTR、3’UTR、またはコード領域中にあってよい。典型的には、標的部位は、mRNAの3’UTR中にある。さらに、導入遺伝子は、複数のmiRNAが、同じまたは複数の部位を認識することにより、mRNAを制御するように設計することができる。複数のmiRNA結合部位の存在により、複数のRISCの共同的作用がもたらされ、高度に効率的な発現の阻害を提供することができる。標的部位配列は、合計で5~100、10~60またはそれより多くのヌクレオチドを含んでもよい。標的部位配列は、標的遺伝子結合部位の配列のうちの少なくとも5個のヌクレオチドを含んでもよい。
【0068】
組み換えAAVベクター:導入遺伝子コード配列
rAAVベクターの導入遺伝子配列の組成は、生じるベクターが使用される用途に依存するであろう。例えば、導入遺伝子配列の1つの型は、発現の際に検出可能シグナルを生成するレポーター配列を含む。別の例において、導入遺伝子は、治療用タンパク質または治療用機能的RNAをコードする。別の例において、導入遺伝子は、研究目的のため、例えば、(例えば導入遺伝子産物の機能を研究するための)内部に導入遺伝子を有する体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するために用いられることを意図される、タンパク質または機能的RNAをコードする。別の例において、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを作製するために用いられることを意図されるタンパク質または機能的RNAをコードする。適切な導入遺伝子コード配列は、当業者には明らかであろう。
【0069】
導入遺伝子中に提供されることができるレポーター配列として、限定することなく、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、および当該分野において周知の他のものをコードするDNA配列が挙げられる。それらの発現を駆動する調節エレメントと結合すると、レポーター配列は、酵素、X線、比色、蛍光または他の分光分析アッセイ、蛍光励起細胞分取アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学法を含む免疫学的アッセイを含む慣用的な手段により検出可能な、シグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを担持しているベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを担持しているベクターは、ルミノメーターにおける色または光の生成により、視覚的に測定することができる。かかるレポーターは、例えば、rAAVの組織特異的ターゲティング能力および組織特異的プロモーター調節活性を検証することにおいて有用であり得る。
【0070】
いくつかの側面において、本開示は、哺乳動物における1以上の遺伝子欠損または機能不全、例えば哺乳動物におけるポリペプチド欠損またはポリペプチド過剰などを予防または処置する方法における使用のため、特に、細胞および組織におけるかかるポリペプチドの欠損に関連する障害のうちの1以上を呈するヒトにおける欠損の重篤度または程度を処置または軽減するための、rAAVベクターを提供する。方法は、薬学的に許容し得るキャリア中の、1以上の治療用ペプチド、ポリペプチド、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスヌクレオチドなどをコードするrAAVベクターの、対象への、欠損または障害を罹患する対象においてかかる障害を処置するために十分な量におけるおよびこれのために十分な期間にわたる、投与を含む。
【0071】
したがって、本開示は、哺乳動物対象における疾患状態の処置または予防のために有用である1以上のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードするrAAVベクターの送達を包含する。例示的な治療用タンパク質として、増殖因子、インターロイキン、インターフェロン、抗アポトーシス因子、サイトカイン、抗糖尿病因子、抗アポトーシス剤、凝固因子、抗腫瘍因子からなる群より選択される1以上のポリペプチドが挙げられる。治療用タンパク質の他の非限定的な例として、BDNF、CNTF、CSF、EGF、FGF、G-SCF、GM-CSF、ゴナドトロピン、IFN、IFG-1、M-CSF、NGF、PDGF、PEDF、TGF、VEGF、TGF-B2、TNF、プロラクチン、ソマトトロピン、XIAP1、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-10(187A)、ウイルスIL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16 IL-17、およびIL-18が挙げられる。
【0072】
rAAVベクターは、遺伝子の発現の低下、発現の欠失または機能不全に関連する疾患を処置するために対象に導入されるべき遺伝子を含んでもよい。例示的な遺伝子および関連する疾患状態として、これらに限定されないが、以下が含まれる:糖原病1A型に関連するグルコース-6-ホスファターゼ;Pepck(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)欠損に関連するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ;ガラクトース血症に関連するガラクトース-1ホスファートウリジルトランスフェラーゼ;フェニルケトン尿症に関連するフェニルアラニンヒドロキシラーゼ;メープルシロップ尿症に関連する分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ;チロシン血症1型に関連するフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ;メチルマロン酸血症に関連するメチルマロニルCoAムターゼ;中鎖アセチルCoA欠損に関連する中鎖アシルCoA デヒドロゲナーゼ;オルニチントランスカルバミラーゼ欠損に関連するオルニチントランスカルバミラーゼ;シトルリン血症に関連するアルギニノコハク酸シンテターゼ;家族性高コレステロール血症に関連する低密度リポタンパク質受容体タンパク質;クリグラー・ナジャー病に関連するUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ;重症複合免疫不全症に関連するアデノシンデアミナーゼ;痛風およびレッシュ・ナイハン症候群に関連するヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;ビオチニダーゼ欠損に関連するビオチニダーゼ;ゴーシェ病に関連するベータ-グルコセレブロシダーゼ;スライ症候群に関連するベータ-グルクロニダーゼ;ツェルウェーガー症候群に関連するペルオキシソーム膜タンパク質70kDa;急性間欠性ポルフィリン症に関連するポルフォビリノーゲンデアミナーゼ;アルファ-1アンチトリプシン欠損(肺気腫)の処置のためのアルファ-1アンチトリプシン;サラセミアまたは腎不全に起因する貧血の処置のためのエリスロポエチン;虚血性疾患の処置のための血管内皮増殖因子、アンギオポエチン-1、および線維芽細胞増殖因子;例えばアテローム動脈硬化症、血栓症または塞栓症において見られるような閉塞血管の処置のためのトロンボモジュリンおよび組織因子経路阻害剤;パーキンソン病の処置のための芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH);ベータアドレナリン受容体、ホスホランバンに対するアンチセンスまたはこれの変異形態、筋小胞体アデノシントリホスファターゼ-2(SERCA2)、およびうっ血性心不全の処置のための心臓アデニリルシクラーゼ;多様ながんの処置のためのp53などの腫瘍抑制因子の遺伝子;炎症性障害および免疫障害ならびにがんの処置のための多様なインターロイキンのうちの1つなどのサイトカイン;筋ジストロフィーの処置のためのジストロフィンまたはミニジストロフィン(minidystrophin)およびユートロフィンまたはミニユートロフィン(miniutrophin);ならびに、糖尿病の処置のためのインスリン。
【0073】
いくつかの態様において、本開示は、中枢神経系(CNS)に関連する状態、疾患または障害の処置のために有用なタンパク質または機能的RNAをコードする核酸を含むAAVに関する。以下は、CNSの疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:アルツハイマー病に関連するDRD2、GRIA1、GRIA2、GRIN1、SLC1A1、SYP、SYT1、CHRNA7、3Rtau/4rTUS、APP、BAX、BCL-2、GRIK1、GFAP、IL-1、AGER;パーキンソン病に関連するUCH-L1、SKP1、EGLN1、Nurr-1、BDNF、TrkB、gstm1、S106β;ハンチントン病に関連するIT15、PRNP、JPH3、TBP、ATXN1、ATXN2、ATXN3、アトロフィン1、FTL、TITF-1;フリードリヒ運動失調に関連するFXN;カナバン病に関連するASPA;筋ジストロフィーに関連するDMD;および脊髄性筋萎縮症に関連するSMN1、UBE1、DYNC1H1。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上またはそのフラグメントを発現する核酸を含む、組み換えAAVに関する。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上の発現を阻害する1以上の機能的RNAを発現する核酸を含む、組み換えAAVに関する。
【0074】
いくつかの態様において、本開示は、心血管系に関連する状態、疾患または障害の処置のために有用なタンパク質または機能的RNAをコードする核酸に関する。以下は、心血管疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:VEGF、FGF、SDF-1、コネキシン40、コネキシン43、SCN4a、HIF1α、SERCa2a、ADCY1およびADCY6。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上またはそのフラグメントを発現する核酸を含む組み換えAAVに関する。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上の発現を阻害する1以上の機能的RNAを発現する核酸を含む、組み換えAAVに関する。
【0075】
いくつかの態様において、本開示は、肺系に関連する状態、疾患または障害の処置のために有用なタンパク質または機能的RNAをコードする核酸を含むAAVに関する。以下は、肺疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:TNFα、TGFβ1、SFTPA1、SFTPA2、SFTPB、SFTPC、HPS1、HPS3、HPS4、ADTB3A、IL1A、IL1B、LTA、IL6、CXCR1およびCXCR2。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上またはそのフラグメントを発現する核酸を含む組み換えAAVに関する。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上の発現を阻害する1以上の機能的RNAを発現する核酸を含む、組み換えAAVに関する。
【0076】
いくつかの態様において、本開示は、肝臓に関連する状態、疾患または障害の処置のために有用なタンパク質または機能的RNAをコードする核酸を含むAAVに関する。以下は、肝臓疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:α1-AT、HFE、ATP7B、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)、グルコース-6-ホスファターゼ、NCAN、GCKR、LYPLAL1、およびPNPLA3。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上またはそのフラグメントを発現する核酸を含む組み換えAAVに関する。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上の発現を阻害する1以上の機能的RNAを発現する核酸を含む、組み換えAAVに関する。
【0077】
いくつかの態様において、本開示は、腎臓に関連する状態、疾患または障害の処置のために有用なタンパク質または機能的RNAをコードする核酸を含むAAVに関する。以下は、腎疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:PKD1、PKD2、PKHD1、NPHS1、NPHS2、PLCE1、CD2AP、LAMB2、TRPC6、WT1、LMX1B、SMARCAL1、COQ2、PDSS2、SCARB3、FN1、COL4A5、COL4A6、COL4A3、COL4A4、FOX1C、RET、UPK3A、BMP4、SIX2、CDC5L、USF2、ROBO2、SLIT2、EYA1、MYOG、SIX1、SIX5、FRAS1、FREM2、GATA3、KAL1、PAX2、TCF2およびSALL1。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上またはそのフラグメントを発現する核酸を含む組み換えAAVに関する。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上の発現を阻害する1以上の機能的RNAを発現する核酸を含む、組み換えAAVに関する。
【0078】
いくつかの態様において、本開示は、眼に関連する状態、疾患または障害の処置のために有用なタンパク質または機能的RNAをコードする核酸を含むAAVに関する。以下は、眼の疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:CFH、C3、MT-ND2、ARMS2、TIMP3、CAMK4、FMN1、RHO、USH2A、RPGR、RP2、TMCO、SIX1、SIX6、LRP12、ZFPM2、TBK1、GALC、ミオシリン、CYP1B1、CAV1、CAV2、オプチニューリンおよびCDKN2B。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上またはそのフラグメントを発現する核酸を含む組み換えAAVに関する。いくつかの態様において、本開示は、前述の遺伝子のうちの1つ以上の発現を阻害する1以上の機能的RNAを発現する核酸を含む、組み換えAAVに関する。
【0079】
本開示のrAAVは、対象において発現が低下したか、サイレンシングされたか、または他の理由で機能不全である遺伝子(例えば、がんを有する対象においてサイレンシングされている腫瘍抑制因子)の発現を回復させるために用いることができる。本開示のrAAVはまた、対象において異常に発現している遺伝子(例えば、がんを有する対象において発現される癌遺伝子)の発現をノックダウンするために用いることができる。いくつかの態様において、がんに関連する遺伝子産物(例えば腫瘍抑制因子)をコードする核酸を含むrAAVベクターを、がんを有する対象に当該rAAVベクターを内部に有するrAAVを投与することにより、癌を処置するために用いることができる。いくつかの態様において、がんに関連する遺伝子産物(例えば癌遺伝子)の発現を阻害する低分子干渉核酸(例えば、shRNA、miRNA)をコードする核酸を含むrAAVベクターを、がんを有する対象に当該rAAVベクターを内部に有するrAAVを投与することにより、癌を処置するために用いることができる。いくつかの態様において、がんに関連する遺伝子産物(またはがんに関連する遺伝子の発現を阻害する機能的RNA)をコードする核酸を含むrAAVベクターを、例えば、がんを研究するために、またはがんを処置する治療剤を同定するために、研究目的のために用いることができる。以下は、癌の発生に関連することが知られている例示的な遺伝子(例えば、癌遺伝子および腫瘍抑制因子)の非限定的なリストである:AARS、ABCB1、ABCC4、ABI2、ABL1、ABL2、ACK1、ACP2、ACY1、ADSL、AK1、AKR1C2、AKT1、ALB、ANPEP、ANXA5、ANXA7、AP2M1、APC、ARHGAP5、ARHGEF5、ARID4A、ASNS、ATF4、ATM、ATP5B、ATP5O、AXL、BARD1、BAX、BCL2、BHLHB2、BLMH、BRAF、BRCA1、BRCA2、BTK、CANX、CAP1、CAPN1、CAPNS1、CAV1、CBFB、CBLB、CCL2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCT5、CCYR61、CD24、CD44、CD59、CDC20、CDC25、CDC25A、CDC25B、CDC2L5、CDK10、CDK4、CDK5、CDK9、CDKL1、CDKN1A、CDKN1B、CDKN1C、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2D、CEBPG、CENPC1、CGRRF1、CHAF1A、CIB1、CKMT1、CLK1、CLK2、CLK3、CLNS1A、CLTC、COL1A1、COL6A3、COX6C、COX7A2、CRAT、CRHR1、CSF1R、CSK、CSNK1G2、CTNNA1、CTNNB1、CTPS、CTSC、CTSD、CUL1、CYR61、DCC、DCN、DDX10、DEK、DHCR7、DHRS2、DHX8、DLG3、DVL1、DVL3、E2F1、E2F3、E2F5、EGFR、EGR1、EIF5、EPHA2、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC3、ETV1、ETV3、ETV6、F2R、FASTK、FBN1、FBN2、FES、FGFR1、FGR、FKBP8、FN1、FOS、FOSL1、FOSL2、FOXG1A、FOXO1A、FRAP1、FRZB、FTL、FZD2、FZD5、FZD9、G22P1、GAS6、GCN5L2、GDF15、GNA13、GNAS、GNB2、GNB2L1、GPR39、GRB2、GSK3A、GSPT1、GTF2I、HDAC1、HDGF、HMMR、HPRT1、HRB、HSPA4、HSPA5、HSPA8、HSPB1、HSPH1、HYAL1、HYOU1、ICAM1、ID1、ID2、IDUA、IER3、IFITM1、IGF1R、IGF2R、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP5、IL1B、ILK、ING1、IRF3、ITGA3、ITGA6、ITGB4、JAK1、JARID1A、JUN、JUNB、JUND、K-ALPHA-1、KIT、KITLG、KLK10、KPNA2、KRAS2、KRT18、KRT2A、KRT9、LAMB1、LAMP2、LCK、LCN2、LEP、LITAF、LRPAP1、LTF、LYN、LZTR1、MADH1、MAP2K2、MAP3K8、MAPK12、MAPK13、MAPKAPK3、MAPRE1、MARS、MAS1、MCC、MCM2、MCM4、MDM2、MDM4、MET、MGST1、MICB、MLLT3、MME、MMP1、MMP14、MMP17、MMP2、MNDA、MSH2、MSH6、MT3、MYB、MYBL1、MYBL2、MYC、MYCL1、MYCN、MYD88、MYL9、MYLK、NEO1、NF1、NF2、NFKB1、NFKB2、NFSF7、NID、NINJ1、NMBR、NME1、NME2、NME3、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH4、NPM1、NQO1、NR1D1、NR2F1、NR2F6、NRAS、NRG1、NSEP1、OSM、PA2G4、PABPC1、PCNA、PCTK1、PCTK2、PCTK3、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDPK1、PEA15、PFDN4、PFDN5、PGAM1、PHB、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、PIM1、PKM2、PKMYT1、PLK2、PPARD、PPARG、PPIH、PPP1CA、PPP2R5A、PRDX2、PRDX4、PRKAR1A、PRKCBP1、PRNP、PRSS15、PSMA1、PTCH、PTEN、PTGS1、PTMA、PTN、PTPRN、RAB5A、RAC1、RAD50、RAF1、RALBP1、RAP1A、RARA、RARB、RASGRF1、RB1、RBBP4、RBL2、REA、REL、RELA、RELB、RET、RFC2、RGS19、RHOA、RHOB、RHOC、RHOD、RIPK1、RPN2、RPS6KB1、RRM1、SARS、SELENBP1、SEMA3C、SEMA4D、SEPP1、SERPINH1、SFN、SFPQ、SFRS7、SHB、SHH、SIAH2、SIVA、SIVA TP53、SKI、SKIL、SLC16A1、SLC1A4、SLC20A1、SMO、SMPD1、SNAI2、SND1、SNRPB2、SOCS1、SOCS3、SOD1、SORT1、SPINT2、SPRY2、SRC、SRPX、STAT1、STAT2、STAT3、STAT5B、STC1、TAF1、TBL3、TBRG4、TCF1、TCF7L2、TFAP2C、TFDP1、TFDP2、TGFA、TGFB1、TGFBI、TGFBR2、TGFBR3、THBS1、TIE、TIMP1、TIMP3、TJP1、TK1、TLE1、TNF、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF6、TNFSF7、TNK1、TOB1、TP53、TP53BP2、TP53I3、TP73、TPBG、TPT1、TRADD、TRAM1、TRRAP、TSG101、TUFM、TXNRD1、TYRO3、UBC、UBE2L6、UCHL1、USP7、VDAC1、VEGF、VHL、VIL2、WEE1、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT5A、WT1、XRCC1、YES1、YWHAB、YWHAZ、ZAP70、およびZNF9。
【0080】
いくつかの態様において、本開示は、CNS関連障害に関連する遺伝子産物をコードする核酸を含むrAAVベクターに関する。以下は、CNS関連障害に関連する遺伝子の非限定的なリストである:アルツハイマー病に関連するDRD2、GRIA1、GRIA2、GRIN1、SLC1A1、SYP、SYT1、CHRNA7、3Rtau/4rTUS、APP、BAX、BCL-2、GRIK1、GFAP、IL-1、AGER;パーキンソン病に関連するUCH-L1、SKP1、EGLN1、Nurr-1、BDNF、TrkB、gstm1、S106β;ハンチントン病に関連するIT15、PRNP、JPH3、TBP、ATXN1、ATXN2、ATXN3、アトロフィン1、FTL、TITF-1;フリードリヒ運動失調に関連するFXN;カナバン病に関連するASPA;筋ジストロフィーに関連するDMD;および脊髄性脊髄性筋萎縮症に関連するSMN1、UBE1、DYNC1H1。
【0081】
rAAVベクターは、導入遺伝子として、アポトーシスを調節するタンパク質または機能的RNAをコードする核酸を含んでもよい。以下は、アポトーシスに関連する遺伝子の非限定的なリストであって、これらの遺伝子およびその相同体の産物をコードする核酸、ならびにこれらの遺伝子およびその相同体の発現を阻害する低分子干渉核酸(例えば、shRNA、miRNA)をコードする核酸は、本開示の特定の態様において導入遺伝子として有用である:RPS27A、ABL1、AKT1、APAF1、BAD、BAG1、BAG3、BAG4、BAK1、BAX、BCL10、BCL2、BCL2A1、BCL2L1、BCL2L10、BCL2L11、BCL2L12、BCL2L13、BCL2L2、BCLAF1、BFAR、BID、BIK、NAIP、BIRC2、BIRC3、XIAP、BIRC5、BIRC6、BIRC7、BIRC8、BNIP1、BNIP2、BNIP3、BNIP3L、BOK、BRAF、CARD10、CARD11、NLRC4、CARD14、NOD2、NOD1、CARD6、CARD8、CARD9、CASP1、CASP10、CASP14、CASP2、CASP3、CASP4、CASP5、CASP6、CASP7、CASP8、CASP9、CFLAR、CIDEA、CIDEB、CRADD、DAPK1、DAPK2、DFFA、DFFB、FADD、GADD45A、GDNF、HRK、IGF1R、LTA、LTBR、MCL1、NOL3、PYCARD、RIPK1、RIPK2、TNF、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF10C、TNFRSF10D、TNFRSF11B、TNFRSF12A、TNFRSF14、TNFRSF19、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF21、TNFRSF25、CD40、FAS、TNFRSF6B、CD27、TNFRSF9、TNFSF10、TNFSF14、TNFSF18、CD40LG、FASLG、CD70、TNFSF8、TNFSF9、TP53、TP53BP2、TP73、TP63、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、DRD2、GRIA1、GRIA2、GRIN1、SLC1A1、SYP、SYT1、CHRNA7、3Rtau/4rTUS、APP、BAX、BCL-2、GRIK1、GFAP、IL-1、AGER、UCH-L1、SKP1、EGLN1、Nurr-1、BDNF、TrkB、gstm1、S106β、IT15、PRNP、JPH3、TBP、ATXN1、ATXN2、ATXN3、アトロフィン1、FTL、TITF-1、FXN、ASPA、DMD、およびSMN1、UBE1、DYNC1H1。
【0082】
当業者はまた、タンパク質またはポリペプチドをコードする導入遺伝子の場合、タンパク質またはポリペプチドの機能的に等価なバリアントまたは相同体を提供するために、導入遺伝子において保存的アミノ酸置換をもたらす変異を行ってもよいことを了解するであろう。いくつかの側面においては、本開示は導入遺伝子の保存的アミノ酸置換をもたらす配列の変更を包含する。いくつかの態様において、導入遺伝子は、ドミナントネガティブ変異を有する遺伝子を含む。例えば、導入遺伝子は、野生型タンパク質と同じエレメントと相互作用して、それにより野生型タンパク質の機能のいくつかの側面を遮断する、変異体タンパク質を発現してもよい。
【0083】
有用な導入遺伝子産物はまた、miRNAを含む。miRNAおよび他の低分子干渉核酸は、標的RNA転写物の切断/分解または標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の抑制を介して遺伝子発現を制御する。miRNAは、典型的には最終的に19~25の翻訳されないRNA産物として、天然に発現される。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との配列特異的相互作用を通して、それらの活性を示す。これらの内因的に発現されるmiRNAは、ヘアピン型前駆体を形成し、これらは、その後、miRNA二本鎖へ、およびさらに「成熟した」一本鎖miRNA 分子へとプロセッシングされる。この成熟miRNAは、標的mRNAの(例えば3’UTR領域中の)標的部位を、成熟miRNAに対するそれらの相補性に基づいて同定する、多タンパク質複合体miRISCをガイドする。
【0084】
miRNA遺伝子およびそれらの相同体の以下の非限定的なリストは、方法の特定の態様において、導入遺伝子として、または導入遺伝子によりコードされる低分子干渉核酸の標的(例えば、miRNAスポンジ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TuD RNA)として、有用である:hsa-let-7a、hsa-let-7a*、hsa-let-7b、hsa-let-7b*、hsa-let-7c、hsa-let-7c*、hsa-let-7d、hsa-let-7d*、hsa-let-7e、hsa-let-7e*、hsa-let-7f、hsa-let-7f-1*、hsa-let-7f-2*、hsa-let-7g、hsa-let-7g*、hsa-let-7i、hsa-let-7i*、hsa-miR-1、hsa-miR-100、hsa-miR-100*、hsa-miR-101、hsa-miR-101*、hsa-miR-103、hsa-miR-105、hsa-miR-105*、hsa-miR-106a、hsa-miR-106a*、hsa-miR-106b、hsa-miR-106b*、hsa-miR-107、hsa-miR-10a、hsa-miR-10a*、hsa-miR-10b、hsa-miR-10b*、hsa-miR-1178、hsa-miR-1179、hsa-miR-1180、hsa-miR-1181、hsa-miR-1182、hsa-miR-1183、hsa-miR-1184、hsa-miR-1185、hsa-miR-1197、hsa-miR-1200、hsa-miR-1201、hsa-miR-1202、hsa-miR-1203、hsa-miR-1204、hsa-miR-1205、hsa-miR-1206、hsa-miR-1207-3p、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1208、hsa-miR-122、hsa-miR-122*、hsa-miR-1224-3p、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-1225-3p、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1226、hsa-miR-1226*、hsa-miR-1227、hsa-miR-1228、hsa-miR-1228*、hsa-miR-1229、hsa-miR-1231、hsa-miR-1233、hsa-miR-1234、hsa-miR-1236、hsa-miR-1237、hsa-miR-1238、hsa-miR-124、hsa-miR-124*、hsa-miR-1243、hsa-miR-1244、hsa-miR-1245、hsa-miR-1246、hsa-miR-1247、hsa-miR-1248、hsa-miR-1249、hsa-miR-1250、hsa-miR-1251、hsa-miR-1252、hsa-miR-1253、hsa-miR-1254、hsa-miR-1255a、hsa-miR-1255b、hsa-miR-1256、hsa-miR-1257、hsa-miR-1258、hsa-miR-1259、hsa-miR-125a-3p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-125b、hsa-miR-125b-1*、hsa-miR-125b-2*、hsa-miR-126、hsa-miR-126*、hsa-miR-1260、hsa-miR-1261、hsa-miR-1262、hsa-miR-1263、hsa-miR-1264、hsa-miR-1265、hsa-miR-1266、hsa-miR-1267、hsa-miR-1268、hsa-miR-1269、hsa-miR-1270、hsa-miR-1271、hsa-miR-1272、hsa-miR-1273、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-1274a、hsa-miR-1274b、hsa-miR-1275、hsa-miR-127-5p、hsa-miR-1276、hsa-miR-1277、hsa-miR-1278、hsa-miR-1279、hsa-miR-128、hsa-miR-1280、hsa-miR-1281、hsa-miR-1282、hsa-miR-1283、hsa-miR-1284、hsa-miR-1285、hsa-miR-1286、hsa-miR-1287、hsa-miR-1288、hsa-miR-1289、hsa-miR-129*、hsa-miR-1290、hsa-miR-1291、hsa-miR-1292、hsa-miR-1293、hsa-miR-129-3p、hsa-miR-1294、hsa-miR-1295、hsa-miR-129-5p、hsa-miR-1296、hsa-miR-1297、hsa-miR-1298、hsa-miR-1299、hsa-miR-1300、hsa-miR-1301、hsa-miR-1302、hsa-miR-1303、hsa-miR-1304、hsa-miR-1305、hsa-miR-1306、hsa-miR-1307、hsa-miR-1308、hsa-miR-130a、hsa-miR-130a*、hsa-miR-130b、hsa-miR-130b*、hsa-miR-132、hsa-miR-132*、hsa-miR-1321、hsa-miR-1322、hsa-miR-1323、hsa-miR-1324、hsa-miR-133a、hsa-miR-133b、hsa-miR-134、hsa-miR-135a、hsa-miR-135a*、hsa-miR-135b、hsa-miR-135b*、hsa-miR-136、hsa-miR-136*、hsa-miR-137、hsa-miR-138、hsa-miR-138-1*、hsa-miR-138-2*、hsa-miR-139-3p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-140-3p、hsa-miR-140-5p、hsa-miR-141、hsa-miR-141*、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-143、hsa-miR-143*、hsa-miR-144、hsa-miR-144*、hsa-miR-145、hsa-miR-145*、hsa-miR-146a、hsa-miR-146a*、hsa-miR-146b-3p、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-147、hsa-miR-147b、hsa-miR-148a、hsa-miR-148a*、hsa-miR-148b、hsa-miR-148b*、hsa-miR-149、hsa-miR-149*、hsa-miR-150、hsa-miR-150*、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-151-5p、hsa-miR-152、hsa-miR-153、hsa-miR-154、hsa-miR-154*、hsa-miR-155、hsa-miR-155*、hsa-miR-15a、hsa-miR-15a*、hsa-miR-15b、hsa-miR-15b*、hsa-miR-16、hsa-miR-16-1*、hsa-miR-16-2*、hsa-miR-17、hsa-miR-17*、hsa-miR-181a、hsa-miR-181a*、hsa-miR-181a-2*、hsa-miR-181b、hsa-miR-181c、hsa-miR-181c*、hsa-miR-181d、hsa-miR-182、hsa-miR-182*、hsa-miR-1825、hsa-miR-1826、hsa-miR-1827、hsa-miR-183、hsa-miR-183*、hsa-miR-184、hsa-miR-185、hsa-miR-185*、hsa-miR-186、hsa-miR-186*、hsa-miR-187、hsa-miR-187*、hsa-miR-188-3p、hsa-miR-188-5p、hsa-miR-18a、hsa-miR-18a*、hsa-miR-18b、hsa-miR-18b*、hsa-miR-190、hsa-miR-190b、hsa-miR-191、hsa-miR-191*、hsa-miR-192、hsa-miR-192*、hsa-miR-193a-3p、hsa-miR-193a-5p、hsa-miR-193b、hsa-miR-193b*、hsa-miR-194、hsa-miR-194*、hsa-miR-195、hsa-miR-195*、hsa-miR-196a、hsa-miR-196a*、hsa-miR-196b、hsa-miR-197、hsa-miR-198、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-199a-5p、hsa-miR-199b-5p、hsa-miR-19a、hsa-miR-19a*、hsa-miR-19b、hsa-miR-19b-1*、hsa-miR-19b-2*、hsa-miR-200a、hsa-miR-200a*、hsa-miR-200b、hsa-miR-200b*、hsa-miR-200c、hsa-miR-200c*、hsa-miR-202、hsa-miR-202*、hsa-miR-203、hsa-miR-204、hsa-miR-205、hsa-miR-206、hsa-miR-208a、hsa-miR-208b、hsa-miR-20a、hsa-miR-20a*、hsa-miR-20b、hsa-miR-20b*、hsa-miR-21、hsa-miR-21*、hsa-miR-210、hsa-miR-211、hsa-miR-212、hsa-miR-214、hsa-miR-214*、hsa-miR-215、hsa-miR-216a、hsa-miR-216b、hsa-miR-217、hsa-miR-218、hsa-miR-218-1*、hsa-miR-218-2*、hsa-miR-219-1-3p、hsa-miR-219-2-3p、hsa-miR-219-5p、hsa-miR-22、hsa-miR-22*、hsa-miR-220a、hsa-miR-220b、hsa-miR-220c、hsa-miR-221、hsa-miR-221*、hsa-miR-222、hsa-miR-222*、hsa-miR-223、hsa-miR-223*、hsa-miR-224、hsa-miR-23a、hsa-miR-23a*、hsa-miR-23b、hsa-miR-23b*、hsa-miR-24、hsa-miR-24-1*、hsa-miR-24-2*、hsa-miR-25、hsa-miR-25*、hsa-miR-26a、hsa-miR-26a-1*、hsa-miR-26a-2*、hsa-miR-26b、hsa-miR-26b*、hsa-miR-27a、hsa-miR-27a*、hsa-miR-27b、hsa-miR-27b*、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-28-5p、hsa-miR-296-3p、hsa-miR-296-5p、hsa-miR-297、hsa-miR-298、hsa-miR-299-3p、hsa-miR-299-5p、hsa-miR-29a、hsa-miR-29a*、hsa-miR-29b、hsa-miR-29b-1*、hsa-miR-29b-2*、hsa-miR-29c、hsa-miR-29c*、hsa-miR-300、hsa-miR-301a、hsa-miR-301b、hsa-miR-302a、hsa-miR-302a*、hsa-miR-302b、hsa-miR-302b*、hsa-miR-302c、hsa-miR-302c*、hsa-miR-302d、hsa-miR-302d*、hsa-miR-302e、hsa-miR-302f、hsa-miR-30a、hsa-miR-30a*、hsa-miR-30b、hsa-miR-30b*、hsa-miR-30c、hsa-miR-30c-1*、hsa-miR-30c-2*、hsa-miR-30d、hsa-miR-30d*、hsa-miR-30e、hsa-miR-30e*、hsa-miR-31、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hsa-miR-619、hsa-miR-620、hsa-miR-621、hsa-miR-622、hsa-miR-623、hsa-miR-624、hsa-miR-624*、hsa-miR-625、hsa-miR-625*、hsa-miR-626、hsa-miR-627、hsa-miR-628-3p、hsa-miR-628-5p、hsa-miR-629、hsa-miR-629*、hsa-miR-630、hsa-miR-631、hsa-miR-632、hsa-miR-633、hsa-miR-634、hsa-miR-635、hsa-miR-636、hsa-miR-637、hsa-miR-638、hsa-miR-639、hsa-miR-640、hsa-miR-641、hsa-miR-642、hsa-miR-643、hsa-miR-644、hsa-miR-645、hsa-miR-646、hsa-miR-647、hsa-miR-648、hsa-miR-649、hsa-miR-650、hsa-miR-651、hsa-miR-652、hsa-miR-653、hsa-miR-654-3p、hsa-miR-654-5p、hsa-miR-655、hsa-miR-656、hsa-miR-657、hsa-miR-658、hsa-miR-659、hsa-miR-660、hsa-miR-661、hsa-miR-662、hsa-miR-663、hsa-miR-663b、hsa-miR-664、hsa-miR-664*、hsa-miR-665、hsa-miR-668、hsa-miR-671-3p、hsa-miR-671-5p、hsa-miR-675、hsa-miR-7、hsa-miR-708、hsa-miR-708*、hsa-miR-7-1*、hsa-miR-7-2*、hsa-miR-720、hsa-miR-744、hsa-miR-744*、hsa-miR-758、hsa-miR-760、hsa-miR-765、hsa-miR-766、hsa-miR-767-3p、hsa-miR-767-5p、hsa-miR-768-3p、hsa-miR-768-5p、hsa-miR-769-3p、hsa-miR-769-5p、hsa-miR-770-5p、hsa-miR-802、hsa-miR-873、hsa-miR-874、hsa-miR-875-3p、hsa-miR-875-5p、hsa-miR-876-3p、hsa-miR-876-5p、hsa-miR-877、hsa-miR-877*、hsa-miR-885-3p、hsa-miR-885-5p、hsa-miR-886-3p、hsa-miR-886-5p、hsa-miR-887、hsa-miR-888、hsa-miR-888*、hsa-miR-889、hsa-miR-890、hsa-miR-891a、hsa-miR-891b、hsa-miR-892a、hsa-miR-892b、hsa-miR-9、hsa-miR-9*、hsa-miR-920、hsa-miR-921、hsa-miR-922、hsa-miR-923、hsa-miR-924、hsa-miR-92a、hsa-miR-92a-1*、hsa-miR-92a-2*、hsa-miR-92b、hsa-miR-92b*、hsa-miR-93、hsa-miR-93*、hsa-miR-933、hsa-miR-934、hsa-miR-935、hsa-miR-936、hsa-miR-937、hsa-miR-938、hsa-miR-939、hsa-miR-940、hsa-miR-941、hsa-miR-942、hsa-miR-943、hsa-miR-944、hsa-miR-95、hsa-miR-96、hsa-miR-96*、hsa-miR-98、hsa-miR-99a、hsa-miR-99a*、hsa-miR-99b、およびhsa-miR-99b*。
【0085】
miRNAは、それが標的とするmRNAの機能を阻害し、結果として、当該mRNAによりコードされるポリペプチドの発現を阻害する。したがって、miRNAの活性を(部分的にまたは完全に)遮断する(例えばmiRNAをサイレンシングする)ことにより、発現が阻害されているポリペプチドの発現を、効果的に誘導するかまたは回復させる(当該ポリペプチドを抑制解除する)ことができる。一態様において、miRNAのmRNA標的によりコードされるポリペプチドの抑制解除は、多様な方法のうちのいずれか1つを通して、細胞におけるmiRNA活性を阻害することにより達成される。例えば、miRNAの活性を遮断することは、当該miRNAに対して相補的または実質的に相補的な低分子干渉核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNAスポンジ、TuD RNA)とのハイブリダイゼーションを行い、それによりmiRNAとその標的mRNAとの相互作用を遮断することにより、達成することができる。本明細書において用いられる場合、miRNAに対して実質的に相補的な低分子干渉核酸とは、miRNAとハイブリダイズすること、およびmiRNAの活性を遮断することができるものである。いくつかの態様において、miRNAに対して実質的に相補的な低分子干渉核酸は、当該miRNAと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18塩基を除いて完全に相補的な低分子干渉核酸である。いくつかの態様において、miRNAに対して実質的に相補的な低分子干渉核酸配列は、当該miRNAと、少なくとも1塩基において相補的な低分子干渉核酸配列である。
【0086】
「miRNA阻害剤」とは、miRNAの機能、発現および/またはプロセッシングを遮断する剤である。例えば、これらの分子は、これらに限定されないが、マイクロRNA特異的アンチセンス、マイクロRNAスポンジ、タフ・デコイ(tough decoy)RNA(TuD RNA)およびドローシャ複合体とのmiRNAの相互作用を阻害するマイクロRNAオリゴヌクレオチド(二本鎖のヘアピン型の短いオリゴヌクレオチド)を含む。マイクロRNA阻害剤は、上で議論されるとおり、細胞において、rAAVベクターの導入遺伝子から発現させることができる。マイクロRNAスポンジは、相補的な七量体のシード配列(seed sequence)を通してmiRNAを特異的に阻害する(Ebert, M.S. Nature Methods, Epub August, 12, 2007)。いくつかの態様において、単一のスポンジ配列を用いて、miRNAの全ファミリーをサイレンシングすることができる。TuD RNAは、哺乳動物細胞において効率的かつ長期の特異的miRNAの抑制を達成する(例えば、Takeshi Haraguchi, et al., Nucleic Acids Research, 2009, Vol. 37, No. 6 e43を参照;TuD RNAに関するその内容は、本明細書において参考として援用される)。細胞においてmiRNAの機能をサイレンシング(miRNAの標的の抑制解除)するための他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0087】
いくつかの態様において、組み換えRNA ベクターのクローニング能力が限定される場合があり、所望されるコード配列が、ウイルスの4.8キロベースのゲノムの完全な置き換えを必要とする場合がある。したがって、大きな遺伝子は、いくつかの場合においては、標準的な組み換えAAVベクターにおける使用のためには好適ではない。当業者は、限定されたコード能力を克服するために、当該分野において選択肢が利用可能であることを理解するであろう。例えば、2つのゲノムのAAV ITRをアニーリングして、ヘッドトゥテイルのコンカテマーを形成させて、ベクターの能力をほぼ2倍にすることができる。スプライス部位の挿入により、転写物からのITRの除去が可能になる。限定されたクローニング能力を克服するための他の選択肢は、当業者には明らかであろう。
【0088】
rAAVベースの遺伝子導入を用いて作製された体細胞トランスジェニック動物モデル
本開示はまた、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベースの方法を用いる疾患の体細胞トランスジェニック動物モデルの作製に関する。方法は、少なくとも部分的に、AAV血清型およびそのバリアントが、成体動物において、組織特異的様式において、効率的かつ安定な遺伝子導入を媒介するという観察に基づく。rAAVエレメント(カプシド、プロモーター、導入遺伝子産物)を組み合わせて、安定な導入遺伝子を時間および組織に特異的な様式において発現する体細胞トランスジェニック動物モデルを達成する。本開示の方法により作製される体細胞トランスジェニック動物は、ヒトの疾患、病理学的状態の有用なモデルとして、および/または機能(例えば、組織特異的、疾患の役割)が未知であるか、完全には理解されていない遺伝子の効果を特徴づけるために役立ち得る。例えば、動物(例えばマウス)に、特異的組織ターゲティング能力(例えば、肝臓、心臓、膵臓)を有するカプシド、および疾患に関与する遺伝子の発現を駆動する組織特異的プロモーターを有する導入遺伝子を含むrAAVを、別個の発達段階(例えば年齢)において感染させることができる。感染すると、rAAVは、標的組織の別個の細胞に感染し、導入遺伝子の産物を生成する。
【0089】
いくつかの態様において、導入遺伝子のコード領域の配列が改変される。改変は、導入遺伝子によりコードされる産物の機能を変更してもよい。次いで、本明細書において開示される方法を用いて体細胞トランスジェニック動物モデルを作製することにより、改変の効果をin vivoで研究することができる。いくつかの態様において、コード領域の配列の改変は、フラグメント(例えば、短縮型バージョン)をもたらすナンセンス変異である。他の場合において、改変は、アミノ酸置換をもたらすミスセンス変異である。他の改変が可能であり、当業者には明らかであろう。
【0090】
いくつかの態様において、導入遺伝子は、病理学的状態を引き起こす。病理学的状態を引き起こす導入遺伝子は、その産物が疾患または障害において役割を有し(例えば、疾患または障害を引き起こすか、動物を疾患または障害に罹患しやすくし)、動物において当該疾患または障害を誘導し得る遺伝子である。次いで、動物を観察して、疾患の任意の数の側面(例えば、進行、処置に対する応答など)を評価する。これらの例は、限定的であることは意図されず、他の側面および例が本明細書において開示され、以下により詳細に記載される。
【0091】
本開示は、いくつかの側面において、特定の細胞型のターゲティングされた破壊を通して体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するための方法を提供する。例えば、1型糖尿病のモデルは、膵臓のベータ島のターゲティングされた破壊により作製することができる。他の例において、特定の細胞型のターゲティングされた破壊は、ヒト疾患に対する特定の細胞型の役割を評価するために用いることができる。このことに関して、細胞毒素(例えばジフテリア毒素A(DTA))をコードする導入遺伝子またはアポトーシス促進遺伝子(NTR、Boxなど)が、特定の細胞型の機能の消失のための導入遺伝子として有用であり得る。その産物が細胞を殺傷する他の例示的な導入遺伝子は、本明細書において開示される方法により包含され、当業者には明らかであろう。
【0092】
本開示は、いくつかの側面において、遺伝子の過剰発現またはノックダウンの長期効果を研究するために、体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するための方法を提供する。特定の標的組織における遺伝子の長期の過剰発現またはノックダウン(例えば、shRNA、miRNA、miRNA阻害剤などによるもの)により、正常な代謝バランスを妨害し、病理学的状態を確立し、それにより、例えばがんなどの疾患の動物モデルを作製することができる。本開示は、いくつかの側面において、ターゲティングされた組織における腫瘍発生および遺伝子の機能を研究するために、潜在的癌遺伝子および他の遺伝子の遺伝子の過剰発現またはノックダウンの長期効果を研究するために、体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するための方法を提供する。有用な導入遺伝子産物は、がんに関連することが知られているタンパク質およびかかるタンパク質の発現を阻害する低分子干渉核酸を含む。
当業者は、それらが組織特異的病理学的状態および/または疾患の動物モデルを作製するために有用であることを前提として、他の好適な導入遺伝子を容易に選択することができる。
【0093】
組み換えAAV投与方法
rAAVは、当該分野において公知の任意の適切な方法に従って、組成物中で、対象に送達することができる。好ましくは生理学的に適合可能なキャリア中で(例えば組成物中で)懸濁されたrAAVは、対象、例えば宿主動物、例えばヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、または非ヒト霊長類(例えばマカク)に投与することができる。いくつかの態様において、宿主動物は、ヒトを含まない。
【0094】
哺乳動物対象へのrAAVの送達は、例えば、筋肉内注射による、または哺乳動物対象の血流中への投与によるものであってよい。血流中への投与は、静脈、動脈、または任意の他の脈管導管中への注射によるものであってもよい。いくつかの態様において、rAAVは、外科の分野において周知の技術である分離式肢灌流により、血流中に投与される。この方法は、本質的に、当業者が、rAAVビリオンの投与に先立って、全身の循環から肢を分離することを可能にする。米国特許第6,177,403号において記載される分離式肢灌流技術のバリアントもまた、当業者により、筋肉の細胞または組織中への形質導入を潜在的に増強するために、分離された肢の脈管構造中にビリオンを投与するために用いられ得る。さらに、ある例においては、ビリオンを対象のCNSに送達することが望ましい場合がある。「CNS」により、脊椎動物の脳および脊髄の全ての細胞および組織が意味される。したがって、この用語は、これらに限定されないが、神経細胞、膠細胞、星状膠細胞、脳脊髄液(CSF)、間質の空間、骨、軟骨などを含む。組み換えAAVは、例えば脳室領域中への、ならびに線条体(例えば、線条体の尾状核もしくは被殻)、脊髄および神経筋接合部、または小脳小葉への注射により、針、カテーテルまたは関連するデバイスにより、定位注射などによる当該分野において公知の神経外科技術を用いて、CNSまたは脳に直接的に送達することができる(例えば、Stein et al., J Virol 73:3424-3429, 1999;Davidson et al., PNAS 97:3428-3432, 2000;Davidson et al., Nat. Genet. 3:219-223, 1993;およびAlisky and Davidson, Hum. Gene Ther. 11:2315-2329, 2000を参照)。
【0095】
本開示の組成物は、rAAVを単独で含んでも、または1以上の他のウイルス(例えば、1以上の異なる導入遺伝子を有する第2のrAAV)と組み合わせて含んでもよい。いくつかの態様において、組成物は、各々が1以上の異なる導入遺伝子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの異なるrAAVを含む。
当業者は、rAAVが向けられた適応症を考慮して、好適なキャリアを容易に選択することができる。例えば、1つの好適なキャリアは食塩水を含み、これは多様な緩衝液(例えばリン酸緩衝化食塩水)と共に処方することができる。他の例示的なキャリアとして、無菌食塩水、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油および水が挙げられる。キャリアの選択は、本開示の限定要因ではない。
【0096】
任意に、本開示の組成物は、rAAVおよびキャリアに加えて、他の慣用的な医薬用成分、例えば保存剤または化学安定化剤を含んでもよい。好適な例示的な保存剤として、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールが挙げられる。好適な化学安定化剤として、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。
rAAVは、所望される組織の細胞をトランスフェクトするために、ならびに過度の有害効果を伴わずに遺伝子導入および発現の十分なレベルを提供するために、十分な量で投与される。慣用的なおよび薬学的に許容し得る投与の経路として、これらに限定されないが、選択される器官への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻内および気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、および他の非経口の投与の経路が挙げられる。投与の経路は、所望される場合には組み合わせてもよい。
【0097】
特定の「治療効果」を達成するために必要とされるrAAVビリオンの用量、例えば体重1キログラムあたりのゲノムコピー数(GC/kg)における用量の単位は、これらに限定されないが、rAAVビリオン投与の経路、治療効果を達成するために必要とされる遺伝子またはRNAの発現のレベル、処置される特定の疾患または障害、および遺伝子またはRNA産物の安定性を含むいくつかの要因に基づいて異なるであろう。当業者は、前述の因子、ならびに当該分野において周知の他の因子に基づいて、特定の疾患または障害を有する患者を処置するためのrAAVビリオンの用量の範囲を容易に決定することができる。
【0098】
rAAVの有効量は、動物に感染し、所望される組織をターゲティングするために十分な量である。いくつかの態様において、rAAVの有効量は、安定な体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するために十分な量である。有効量は、主に、対象の種、年齢、体重、健康、およびターゲティングされるべき組織などの要因に依存し、したがって、動物および組織の間で異なり得る。例えば、rAAVの有効量は、一般に、約10~1016のゲノムコピーを含む溶液の約1ml~約100mlの範囲である。いくつかの態様において、rAAVは、対象あたり1010、1011、1012、1013、1014、または1015ゲノムコピーの用量で投与される。いくつかの態様において、rAAVは、対象1kgあたり1010、1011、1012、1013、または1014ゲノムコピーの用量で投与される。いくつかの場合においては、約1011~1012のrAAVゲノムコピーの投与量が適切である。ある態様においては、1012のrAAVゲノムコピーが、心臓、 肝臓および膵臓組織をターゲティングするために有効である。いくつかの場合において、安定なトランスジェニック動物は、複数の用量のrAAVにより作製される。
【0099】
いくつかの態様において、rAAV組成物は、高いrAAV濃度(例えば、約1013GC/mlまたはそれより高い)が存在する場合は特に、組成物中のAAV粒子の凝集を軽減するように処方される。rAAVの凝集を軽減するための方法は、当該分野において周知であり、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整などを含む(例えば、Wright FR, et al., Molecular Therapy (2005) 12, 171-178を参照;その内容は、本明細書において参考として援用される)。
薬学的に許容し得る賦形剤およびキャリア溶液の処方は、当業者に周知であり、多様な処置レジメンにおいて本明細書において記載される特定の組成物を用いるための好適な投与および処置のレジメンの開発も同じである。
【0100】
典型的には、これらの処方物は、少なくとも約0.1%またはそれより多くの活性化合物を含んでもよいが、活性成分のパーセンテージは、無論、変更されてもよく、便利に、全処方物の重量または容積の約1または2%と約70%または80%との間、またはそれより多くであってよい。自然に、各々の治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、当該化合物の任意の所与の単位用量において好適な投与量が得られるように調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与の経路、製品の有効期間、ならびに他の薬理学的考慮点などの要因は、かかる医薬処方物を調製する分野における当業者により企図され、したがって、多様な投与量および処置レジメンが望ましい場合がある。
【0101】
ある状況において、rAAVベースの治療用コンストラクトは、本明細書において開示される好適に処方された医薬組成物中で、皮下で、膵臓内で、鼻腔内で、非経口で、静脈内で、筋肉内で、髄腔内で、または経口で、腹腔内で、または吸入により、送達することが望ましい。いくつかの態様において、米国特許第5,543,158号;同第5,641,515号および同第5,399,363号(各々が本明細書においてその全体において特に参考として援用される)において記載されるような投与モダリティーを、rAAVを送達するために用いてもよい。いくつかの態様において、好ましい投与の経路は、門脈注射によるものである。
【0102】
注射可能な用途のために好適な医薬形態は、無菌の水溶液または分散液、および無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌の粉末を含む。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中で、ならびに油中で、調製することができる。通常の貯蔵および使用の条件下において、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含む。多くの場合、形態は無菌であり、容易な注射針通過性が存在する程度に液体である。それは、製造および貯蔵の条件下において安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。キャリアは、溶媒または分散媒であってよく、これは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および/または植物油を含む。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の防止は、多様な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物中の、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらすことができる。
【0103】
注射可能な水溶液の投与のために、例えば、溶液は、必要な場合には好適に緩衝化されていてもよく、液体希釈剤は、初めに十分な食塩水またはブドウ糖により等張性を与えられていてもよい。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与のために特に好適である。このことに関連して、使用することができる無菌の水性の媒質は、当業者には公知であろう。例えば、1回の投与量を、1mlの等張NaCl溶液中で溶解して、1000mlの皮下点滴液に添加しても、または提案される注入の位置に注射してもよい(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第15版、頁1035~1038および1570~1580を参照)。投与量におけるいくつかのバリエーションが、ホストの条件に依存して、必然的に生じる。投与の責任者は、いずれにせよ、個々のホストについての適切な用量を決定するであろう。
【0104】
無菌の注射可能な溶液は、必要とされる量の活性なrAAVを、必要に応じて本明細書において列挙される多様な他の成分と共に、適切な溶媒中に組み込み、その後、無菌濾過することにより、調製される。一般に、分散液は、多様な滅菌された活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む無菌のビヒクル中に組み込むことにより、調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、好ましい調製の方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これは、先に無菌濾過されたその溶液から、活性成分に任意のさらなる所望される成分を加えた粉末を生じる。
【0105】
本明細書において開示されるrAAV 組成物はまた、中性または塩の形態において処方することができる。薬学的に許容し得る塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ酸により形成される)を含み、これは、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸により形成される。遊離のカルボキシル基により形成される塩もまた、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。処方に際して、溶液は、投与処方物と適合可能な様式において、および治療上有効な量において、投与する。処方物は、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどの多様な投与形態において、容易に投与される。
【0106】
本明細書において用いられる場合、「キャリア」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、緩衝化剤、キャリア溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。医薬活性物質のためのかかる媒質および剤の使用は、当該分野において周知である。補足活性成分もまた、組成物中に組み込むことができる。句「薬学的に許容し得る」とは、ホストに投与された場合に、アレルギー性のまたは類似の有害な反応を生じない、分子の実体および組成物を指す。
【0107】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、ベジクルなどの送達ビヒクルは、好適な宿主細胞中への本開示の組成物の導入のために用いることができる。特に、導入遺伝子を送達するrAAVベクターは、脂質粒子、リポソーム、ベジクル、ナノスフェアまたはナノ粒子などの中に封入して、送達のために処方することができる。
かかる処方物は、本明細書において開示される核酸またはrAAVコンストラクトの薬学的に許容し得る処方物の導入のための好ましい場合がある。リポソームの形成および使用は、当業者に一般的に公知である。最近、血清安定性および循環半減期が改善されたリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的薬物キャリアとしてのリポソームおよびリポソーム様調製物の多様な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号;同第5,552,157号;同第5,565,213号;同第5,738,868号および同第5,795,587号)。
【0108】
リポソームは、他の手順によるトランスフェクションに対して通常では耐性の多数の細胞型により、首尾よく用いられてきた。加えて、リポソームは、ウイルスベースの送達系の典型であるDNAの長さの制約を有さない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射性治療剤、ウイルス、転写因子およびアロステリックエフェクターを多様な培養細胞株および動物中に導入するために、効果的に用いられてきた。加えて、リポソーム媒介薬物送達の有効性を検証するいくつかの首尾よい臨床治験が完了している。
リポソームは、水性の溶媒中に分散して、多重膜の求心性二層ベジクル(多重膜ベジクル(MLV)とも称される)を自発的に形成するリン脂質から形成される。MLVは、一般に、25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、200~500.ANG.の範囲の直径を有し、コア中に水溶液を含む、小さい単層膜ベジクル(SUV)の形成をもたらす。
【0109】
あるいは、rAAVのナノカプセル処方物を用いてもよい。ナノカプセルは、一般に、物質を安定かつ再現可能な方法において封入することができる。細胞内でのポリマーの過負荷に起因する副作用を回避するために、かかる超微粒子(約0.1μmのサイズ)は、in vivoで分解することができるポリマーを用いて設計すべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキルシアノアクリラートナノ粒子が、使用のために企図される。
【0110】
上記の送達の方法に加えて、以下の技術もまた、rAAV組成物をホストに送達する代替的方法として企図される。ソノフォレーシス(すなわち、超音波)は、米国特許第5,656,016号において、循環系中への、およびこれを通しての、薬物の透過性の速度および効力を増強するためのデバイスとして、用いられ、記載されている。企図される他の薬物送達の選択肢は、骨内注射(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼用処方物(Bourlais et al., 1998)、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号および同第5,783,208号)ならびにフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)である。
【0111】
キットおよび関連する組成物
本明細書において記載される剤は、いくつかの態様において、治療、診断または研究用途におけるそれらの使用を容易にするために、医薬または診断または研究用のキットに組み立てられてもよい。キットは、本開示の成分を収容する1以上の容器および使用のための説明を含んでもよい。特に、かかるキットは、本明細書において記載される1以上の剤を、意図される用途およびこれらの剤の適切な使用を記載する説明と共に含んでもよい。ある態様において、キット中の剤は、医薬処方物中で、当該剤の特定の用途のために、および投与の方法のために好適な投与量であってよい。研究目的のための剤は、成分を、多様な実験を行うために適切な濃度または量で含んでよい。
【0112】
キットは、研究者による本明細書において記載される方法の使用を容易にするように設計されてもよく、多くの形態をとることができる。キットの組成物の各々は、適用可能である場合、液体の形態において(例えば溶液中で)、または固体の形態(例えば乾燥粉末)において提供されてもよい。ある場合において、組成物のうちのいくつかは、例えば、キットと共に提供されても提供されなくともよい好適な溶媒または他の種(例えば水もしくは細胞培養培地)の添加により、構成可能(constitutable)または他に処理可能(例えば活性形態に)であってよい。本明細書において用いられる場合、「説明」は、説明および/または宣伝の成分を定義することができ、典型的には、本開示の包装の上に書かれた、またはこれに付随する書面の説明を含む。説明はまた、ユーザーが、説明がキットに付随すべきであることを明らかに理解するような任意の様式において提供される、任意の口頭または電子的説明、例えば、視聴覚的(例えば、ビデオテープ、DVDなど)、インターネット、および/またはウェブベースの伝達などを含む。書面の説明は、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態におけるものであってよく、この説明はまた、動物投与のための製造、使用または販売の機関による承認を反映するものであってもよい。
【0113】
キットは、本明細書において記載される成分のうちの任意の1以上を、1以上の容器中に含んでもよい。例として、一態様において、キットは、キットの1以上の成分を混合する、および/または試料を単離および混合する、ならびに対象に適用するための説明を含んでもよい。キットは、本明細書において記載される剤を収容する容器を含んでもよい。剤は、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態であってよい。剤は、無菌的に調製し、シリンジ中に包装して、冷蔵で輸送することができる。あるいは、それは、貯蔵のためのバイアルまたは他の容器中に収容してもよい。第2の容器が、無菌的に調製された他の剤を有してもよい。あるいは、キットは、予め混合され、シリンジ、バイアル、チューブまたは他の容器中で輸送される活性剤を含んでもよい。キットは、特定の体細胞動物モデルを作製するためのキットの場合は特に、シリンジ、局所投与デバイス、またはiv用の針、管およびバッグなどの、剤を動物に投与するために必要とされる成分のうちの1以上または全てを有してもよい。
【0114】
キットは、パウチ内に緩やかに包装されたアクセサリー、1以上のチューブ、容器、箱またはバッグと共に、ブリスターパウチ、シュリンク包装されたパウチ、真空密封可能なパウチ、密封可能な熱成型トレイ、または類似のパウチもしくはトレイの形態などの多様な形態を有していてよい。キットを、アクセサリーが付加された後で滅菌してもよく、それにより、容器中の個々のアクセサリーを別途開封することを可能にする。キットは、放射線照射滅菌、熱滅菌または当該分野において公知の他の滅菌方法などの任意の適切な滅菌技術を用いて、滅菌することができる。キットはまた、具体的な用途に依存して、他の成分、例えば容器、細胞培地、塩、バッファー、試薬、シリンジ、針、消毒剤を適用または除去するためのガーゼなどのファブリック、ディスポーザブル手袋、投与前の剤のための支持体などを含んでもよい。
【0115】
キット内に含まれる説明は、細胞中の潜在型AAVを検出するための方法を含んでもよい。加えて、本開示のキットは、説明、陰性および/または陽性対照、容器、試料のための希釈剤およびバッファー、試料調製用チューブ、および配列比較のための参照AAV配列の印刷されたまたは電子的な表を含んでもよい。
【0116】

例1:ベクター開発のためのチンパンジー組織からの転写的に活性な新規のAAVカプシド配列の単離
霊長類に感染する性質を有する新規のAAVについて探索するために、多様なチンパンジー組織を、AAVプロウイルスゲノムおよびcap RNAの存在について、初めにqPCRおよびqRT-PCRにより、保存されたcap配列のうちの短い一続きを標的とするプライマーおよびプローブのセットを用いて分析した。2個体のチンパンジーからの6種の組織(脳、心臓、腎臓、肝臓、肺および脾臓)を、AAVのcap配列ついて評価した。データは、全ての組織がAAVを様々な量で保有し、肝臓において最も高いコピー数を有することを示した。その後、PCRおよびRT-PCRクローニングを行って、チンパンジーのDNAおよびRNAの両方から全長カプシド配列をレスキューした。cDNAクローン(例えばVP1のクローン)を、シークエンシングにより分析した。RT-PCRおよびPCRにより、合計で24個のVP1のDNAクローンおよび23個のRNAクローンを単離し、全長をシークエンシングした。興味深いことに、これらの47個のクローンのうちの30個はAAV5に類似し、そのうちの14個のクローンは、RT-PCRの生成物であった。
【0117】
系統発生学的分析は、カプシドクローンを、多様な組織(例えばCNS、腎臓、脾臓、肝臓および心臓の標的)への遺伝子送達のために有用なAAV3B、AAV4およびAAV5に緊密に関係する3つの主要な群に分けた。表1は、同定されたAAVカプシドバリアントを列記する。表2は、同定されたバリアント配列に関係する野生型AAV血清型のNCBI受託番号を提供する。
AAV3B、AAV4またはAAV5との、およびそれら自体の間にアミノ酸の相違を有するバリアントcap cDNAクローンを、BLAST分析および多重配列アラインメントによるさらなる特徴づけのために選択した(表3)。バリアントカプシドタンパク質と野生型AAV血清型との間のアミノ酸置換を、表4~6においてまとめる。
【0118】
例のカプシド(すなわち、CBr-7.4、CBr-7.5およびCBr-7.8カプシド)を含む組み換えAAVを構築し、ルシフェラーゼを発現するベクターゲノムを含むようにパッケージングした。作成されたrAAVの力価は、CBr-7.4、CBr-7.5およびCBr-7.8についてそれぞれ、1.3×1010、1.2×1010および1.2×1010ゲノムコピー/mlであった。Huh-7.5ヘパトーマ細胞に、組み換えAAVで形質導入し、ルシフェラーゼ発現を試験して、形質導入および発現を確認した(図4)。AAV9およびAAV3Bを、対照として試験した。
【0119】
【表1-1】
【表1-2】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5-1】
【表5-2】
【0124】
本開示は、その適用において、本説明において記載されるかまたは図面において例示される構成の詳細および成分の配置に限定されない。本開示は、他の態様が可能であり、多様な方法において実施されるかまたは実行されることが可能である。また、本明細書において用いられる語法および用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものとしてみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」およびそれらのバリエーションの使用は、その後に列記される項目およびその等価物ならびにさらなる項目を包含することを意味する。
【0125】
本開示の少なくとも1つの態様のいくつかの側面をこのようにして記載したが、当業者は、多様な改変、修飾および改善を容易に想起するであろう。かかる改変、修飾および改善は、本開示の一部であるものと意図され、本開示の精神および範囲のうちであることが意図される。したがって、前述の説明および図面は、単に例のためのものである。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図3-8】
図3-9】
図3-10】
図3-11】
図4
【配列表】
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