(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】手術用ロボット
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20220214BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J18/06
(21)【出願番号】P 2017526787
(86)(22)【出願日】2015-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2015003488
(87)【国際公開番号】W WO2017006377
(87)【国際公開日】2017-01-12
【審査請求日】2018-06-14
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「未来医療を実現する先端医療機器・システム研究開発 先端医療機器の開発 高い安全性と更なる低侵襲化及び高難度治療を可能にする軟性内視鏡手術システムの研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 和俊
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】津田 真吾
【審判官】平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-178988(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体駆動機構と、
中空の可撓シャフトと、
前記可撓シャフトの遠位端に連なって設けられ、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて曲げ動作を行う曲げ関節
及び前記曲げ関節の遠位端側に設けられた手首関節を含
む関節部と、前記
手首関節に設けられた
鉗子と、前記ロボット本体駆動機構に着脱可能に接続され、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を前記曲げ関節
及び前記手首関節に伝達する駆動力伝達機構と、を有するロボット本体と、
前記ロボット本体駆動機構を前記可撓シャフトの近位端の軸線周りに回転可能に支持し、長手方向が常に前記軸線と平行に配置される支持台、及び、前記ロボット本体駆動機構を前記軸線周りに回転させるための回転駆動部を備える回転駆動機構と、
前記支持台を前記軸線方向に並進可能に支持し、長手方向が前記支持台の長手方向と平行に配置される支持部、及び、前記支持台を前記軸線方向に並進させるための並進駆動部を備える並進駆動機構と、
前記支持部を支持する基台と、を備え、
前記並進駆動部は、前記ロボット本体の遠位端の前記
鉗子を前進または後退させるために、前記支持台、前記ロボット本体駆動機構および前記ロボット本体を一体的に前記軸線方向に並進させ
、
前記手首関節は、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて前記曲げ関節の遠位端の軸線周りに回転するように構成され、
前記鉗子は、前記手首関節によって前記曲げ関節の遠位端の軸線周りに回転可能である、手術用ロボット。
【請求項2】
前記並進駆動機構は、前記支持部によって支持され前記
可撓シャフトの近位端の軸線方向に延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動するスライダと、を含み、前記スライダは前記支持台に取り付けられている、請求項1に記載の手術用ロボット。
【請求項3】
前記駆動力伝達機構は、曲げ関節操作ケーブルと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記曲げ関節操作ケーブルを前記曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記曲げ関節の曲げ動作を行う曲げ関節操作ケーブル作動部と、
遠位端が前記手首関節に接続されたトルク伝達チューブと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記トルク伝達チューブの近位端を回動させるトルク伝達チューブ回動部と、遠位端が前記鉗子に取り付けられている鉗子操作ケーブルと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記鉗子操作ケーブルを前記鉗子操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記鉗子を動作させる鉗子作動部と、を備える、請求項1又は2に記載の手術用ロボット。
【請求項4】
前記関節部は、第1曲げ関節及び第2曲げ関節を含み、
前記第1曲げ関節は、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて所定の向きに曲げ動作を行い、
前記第2曲げ関節は、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて前記第1曲げ関節が曲げ動作を行う向きと反対向きに曲げ動作を行う、請求項1又は2に記載の手術用ロボット。
【請求項5】
前記駆動力伝達機構は、
第1曲げ関節操作ケーブルと、
前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記第1曲げ関節操作ケーブルを前記第1曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記第1曲げ関節の曲げ動作を行う第1曲げ関節操作ケーブル作動部と、
第2曲げ関節操作ケーブルと、
前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記第2曲げ関節操作ケーブルを前記第2曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記第2曲げ関節の曲げ動作を行う第2曲げ関節操作ケーブル作動部と、を備える、請求項4に記載の手術用ロボット。
【請求項6】
手術台に設けられた支持レールに取り付け可能に構成されている手術用ロボット支持台を更に有し、
前記並進駆動機構は、前記手術用ロボット支持台に支持されている、請求項1乃至
5の何れかに記載の手術用ロボット。
【請求項7】
前記鉗子操作ケーブルは、前記トルク伝達チューブに挿通されている、請求項3に記載の手術用ロボット。
【請求項8】
前記手術用ロボットは、複数の前記ロボット本体駆動機構と、複数の前記ロボット本体と、前記複数の前記ロボット本体の前記可撓シャフトを集束する集束菅と、を備える、請求項1乃至
7の何れかに記載の手術用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から医療用のマニピュレータシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このマニピュレータシステムは、先端部に縫合糸や針等を把持する把持部を有するマニピュレータと、マニピュレータ本体と、一端にマニピュレータが取り付けられるアームとを有している。アームは、軸方向中間部がジンバル部を介してマニピュレータ本体に取り付けられている。また、アームは、他端がジンバル部を介してマニピュレータ本体に取り付けられている。そして、マニピュレータ本体は、アームの他端のジンバル部を動作させ、アームの軸方向中間部のジンバル部を支点にして、アーム先端を移動させ、マニピュレータの把持部を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のマニピュレータシステムは、マニピュレータの把持部を移動させる機構が大掛かりなものとなり、製造に不利であり、製造コストが高いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る手術用ロボットは、ロボット本体駆動機構と、中空の可撓シャフトと、前記可撓シャフトの遠位端に連なって設けられ、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて曲げ動作を行う曲げ関節及び前記曲げ関節の遠位端側に設けられた手首関節を含む関節部と、前記手首関節に設けられた鉗子と、前記ロボット本体駆動機構に着脱可能に接続され、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を前記曲げ関節及び前記手首関節に伝達する駆動力伝達機構と、を有するロボット本体と、前記ロボット本体駆動機構を前記可撓シャフトの近位端の軸線周りに回転可能に支持し、長手方向が常に前記軸線と平行に配置される支持台、及び、前記ロボット本体駆動機構を前記軸線周りに回転させるための回転駆動部を備える回転駆動機構と、前記支持台を前記軸線方向に並進可能に支持し、長手方向が前記支持台の長手方向と平行に配置される支持部、及び、前記支持台を前記軸線方向に並進させるための並進駆動部を備える並進駆動機構と、前記支持部を指示する基台と、を備え、前記並進駆動部は、前記ロボット本体の遠位端の前記鉗子を前進または後退させるために、前記支持台、前記ロボット本体駆動機構および前記ロボット本体を一体的に前記軸線方向に並進させ、前記手首関節は、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて前記曲げ関節の遠位端の軸線周りに回転するように構成され、前記鉗子は、前記手首関節によって前記曲げ関節の遠位端の軸線周りに回転可能である。
【0007】
この構成によれば、回転駆動機構によってロボット本体を可撓シャフトの近位端の軸線周りに回動させることによって、エンドエフェクタを可撓シャフトの遠位端の軸線を中心とする円周方向に移動させることができる。よって、手術用ロボットをコンパクトにすることができ、手術用ロボットの製造コストを安価なものとすることができる。
【0009】
また、簡素な構成でロボット本体を可撓シャフトの近位端の軸線周りに回動させることができる。更に、エンドエフェクタを可撓シャフトの遠位端の軸線方向に移動させることができる。また、簡素な構成でロボット本体を可撓シャフトの遠位端の軸線方向に並進させることができる。更に、鉗子を用いた作業に手術用ロボットを用いることができる。
【0010】
前記並進駆動機構は、前記支持部によって支持され前記可撓シャフトの近位端の軸線方向に延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動するスライダと、を含み、前記スライダは前記支持台に取り付けられていてもよい。
【0011】
前記駆動力伝達機構は、曲げ関節操作ケーブルと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記曲げ関節操作ケーブルを前記曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記曲げ関節の曲げ動作を行う曲げ関節操作ケーブル作動部と、遠位端が前記手首関節に接続されたトルク伝達チューブと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記トルク伝達チューブの近位端を回動させるトルク伝達チューブ回動部と、遠位端が前記鉗子に取り付けられている鉗子操作ケーブルと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記鉗子操作ケーブルを前記鉗子操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記鉗子を動作させる鉗子作動部と、を備えていてもよい。
【0012】
前記関節部は、第1曲げ関節及び第2曲げ関節を含み、前記第1曲げ関節は、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて所定の向きに曲げ動作を行い、前記第2曲げ関節は、前記ロボット本体駆動機構の駆動力を受けて前記第1曲げ関節が曲げ動作を行う向きと反対向きに曲げ動作を行ってもよい。
【0013】
この構成によれば、エンドエフェクタを内側に向かう姿勢とすることができ、作業を容易に行うことができる。
【0014】
前記駆動力伝達機構は、第1曲げ関節操作ケーブルと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記第1曲げ関節操作ケーブルを前記第1曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記第1曲げ関節の曲げ動作を行う第1曲げ関節操作ケーブル作動部と、第2曲げ関節操作ケーブルと、前記ロボット本体駆動機構の駆動力によって前記第2曲げ関節操作ケーブルを前記第2曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させることにより前記第2曲げ関節の曲げ動作を行う第2曲げ関節操作ケーブル作動部と、を備えていてもよい。
【0017】
手術台に設けられた支持レールに取り付け可能に構成されている手術用ロボット支持台を更に有し、前記並進駆動機構は、前記手術用ロボット支持台に支持されていてもよい。
【0018】
前記鉗子操作ケーブルは、前記トルク伝達チューブに挿通されていてもよい。
【0019】
前記手術用ロボットは、複数の前記ロボット本体駆動機構と、複数の前記ロボット本体と、前記複数の前記ロボット本体の前記可撓シャフトを集束する集束菅と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、手術用ロボットをコンパクトにすることができ、手術用ロボットの製造コストを安価なものとすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る手術用ロボットを備える手術用ロボットシステムの構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の手術用ロボットの構成例を示す図である。
【
図3A】
図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体の関節部を真っ直ぐに伸ばした状態を示す図である。
【
図3B】
図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体の関節部を曲げた状態を示す図である。
【
図4】
図1の手術用ロボットのロボット本体の手首関節の構成例を示す一部破断図である。
【
図5A】
図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、第1曲げ関節操作ケーブルの構成例を示す図である。
【
図5B】
図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、第2曲げ関節操作ケーブルの構成例を示す図である。
【
図6A】
図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示すB-B矢視図である。
【
図6B】
図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示すC-C矢視図である。
【
図7】
図1の手術用ロボットの制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図8】
図1の手術用ロボットの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る手術用ロボット1を備える手術用ロボットシステム100の構成例を概略的に示す図である。
図2は、手術用ロボット1の構成例を示す図である。
【0024】
図1に示すように、手術用ロボットシステム100は、術者Wが手術台111上の患者Pの体内に挿入した手術用ロボット1の遠位端に設けられた術具を外部から遠隔的に操作することによって、低侵襲手術を行うシステムである。
【0025】
手術用ロボットシステム100は、例えば、1以上の手術用ロボット1と、内視鏡101と、を備える。
【0026】
手術用ロボット1は、手術台111に設けられている支持レール112に取り付けられた手術用ロボット支持台113に支持されている。そして、手術用ロボット1は、細長く形成されたアームを有し、アームの遠位端に術具を有する。そして、この術具によって、患者Pの体内の処置部位の処置を行う。本実施の形態において、手術用ロボット1は、アームの遠位端に鉗子を有するロボットである。しかし、アームの遠位端の術具は鉗子に限られるものではなく、種々の術具を適用することができる。
【0027】
内視鏡101は、術者Wが患者Pの体内を視認するためのものであり、遠位端にビデオカメラ及び照明を有する。そして、内視鏡101のビデオカメラによって撮影した画像は、表示装置114に表示される。これによって、術者Wは、患者Pの体内に位置する手術用ロボット1のアームの遠位端及び術具の状態、並びに処置部位の状態を視認しながら、手術用ロボット1を操作し、手術を行うことができる。
【0028】
そして、
図2に示すように、手術用ロボット1は、集束管102に挿入され、集束される。集束管102は、可撓性を有し、中空の筒状に形成されている。
【0029】
[ロボット本体の構成例]
図3Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体2の関節部を真っ直ぐに伸ばした状態を示す図である。
図3Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体2の関節部を曲げた状態を示す図である。
【0030】
図2に示すように、手術用ロボット1は、ロボット本体2と、駆動部3と、制御器4(
図1参照)と、操作部5(
図1参照)とを備える。また、本実施の形態において、手術用ロボット1は、案内管6を備える。
【0031】
図2に示すように、ロボット本体2は、アーム21と、アーム21の遠位端21bに設けられたエンドエフェクタと、駆動力伝達機構24と、を有する。更に、ロボット本体2は、ベース23を有する。ベース23は、駆動部3に取り付けることができるように構成されている。そして、ベース23を駆動部3に取り付けることによって、ロボット本体2を駆動部3に連結することができる。
【0032】
図3A及び
図3Bに示すように、アーム21は、可撓性を有する中空の可撓シャフト25と、関節部26とを有する。
【0033】
可撓シャフト25は、例えば、筒状体である。そして、
図2に示すように、可撓シャフト25の近位端25aは、ベース23に取り付けられ、固定されている。
【0034】
可撓シャフト25は、曲げ方向には可撓性を有する一方で、軸線方向には高い剛性を有する。また、可撓シャフト25は、軸線周りの回転トルクに対しても剛性を有する。
【0035】
関節部26は、近位端(第1曲げ関節27の近位端27a)が可撓シャフト25の遠位端25bに連なる。関節部26は、中空の筒状体であり、内部空間は、可撓シャフト25の内部空間と連通している。
【0036】
関節部26は、第1曲げ関節27と、第2曲げ関節28と、接続部29と、手首関節30とを有する。第1曲げ関節27と、第2曲げ関節28と、接続部29と、手首関節30とは、同一軸線上に配設されている。関節部26は、外周面が図示しないカバーによって覆われ、可撓シャフト25と略同一の径を有する。
【0037】
第1曲げ関節27は、中空の筒状体であり、近位端27aが可撓シャフト25の遠位端25bに連なるように取り付けられている。なお、「連なる」とは、2つのものが直接接続されている場合のみならず、2つのものの間に他のものが介在し、間接的に接続されている場合も含む。
【0038】
図6Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示すB-B矢視図である。
図6Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示すC-C矢視図である。
【0039】
第1曲げ関節27は、関節部26の軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材31を有する。コマ部材31は、関節部26の軸線方向に延在する円柱状に形成されている。そして、コマ部材31は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て(すなわち、後述するピン31fの延在方向から見て)、コマ部材31の軸線から離れるに従ってコマ部材31の軸線方向の厚さ寸法が小さくなるテーパー状に形成されている。すなわち、コマ部材31は、
図3Aにおいて、上方及び下方に向かうに従って薄くなるように形成されている。これによって、第1曲げ関節27を曲げたときにコマ部材31の端面と当該端面に対峙する隣接するコマ部材31の端面との干渉を回避している。
【0040】
そして、
図6A及び
図6Bに示すように、コマ部材31は、第1挿通孔31aと、一対の第2挿通孔31bと、一対の第3挿通孔31cとを有する。
【0041】
第1挿通孔31aは、コマ部材31の軸線上に形成され、後述するトルク伝達チューブ44が挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の第1挿通孔31aがアーム21の延在方向に延在する第1経路R1を構成している。
【0042】
一対の第2挿通孔31bは、コマ部材31の両端面を接続し、コマ部材31の軸線と平行に延在している。一対の第2挿通孔31bのうち一方は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て(すなわち、後述するピン31fの延在方向から見て)、コマ部材31の軸線に対して一対の第2挿通孔31bのうち他方が位置する側と反対側に位置している。すなわち、
図3Aにおいて、一対の第2挿通孔31bのうち一方は、後述するピン31fよりも上方に形成され、他方は後述するピン31fよりも下方に形成されている。そして、後述する第1曲げ関節操作ケーブル41の両端部が一対の第2挿通孔31bにそれぞれ挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の一対の第2挿通孔31bがアーム21の延在方向に延在する一対の第2経路R2を構成している。したがって、一対の第2経路R2のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第2経路R2のうち他方が位置する側と反対側に位置している。
【0043】
一対の第3挿通孔31cは、コマ部材31の両端面を接続し、コマ部材31の軸線と平行に延在している。一対の第3挿通孔31cのうち一方は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3挿通孔31cのうち他方が位置する側と反対側に位置している。すなわち、
図3Aにおいて、一対の第3挿通孔31cのうち一方は、後述するピン31fよりも上方に形成され、他方は後述するピン31fよりも下方に形成されている。そして、後述する第2曲げ関節操作ケーブル42の両端部が一対の第3挿通孔31cにそれぞれ挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の一対の第3挿通孔31cがアーム21の延在方向に延在する一対の第3経路R3を構成している。したがって、一対の第3経路R3のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3経路R3のうち他方が位置する側と反対側に位置している。
【0044】
また、コマ部材31の一方の端面からコマ部材31の延在方向外側に向かって突出する一対の第1突出部31dが形成され、更に、コマ部材31の他方の端面からコマ部材31の延在方向外側に向かって突出する一対の第2突出部31eが形成されている。一対の第1突出部31dと隣り合うコマ部材31の一対の第2突出部31eとは、一直線上に並ぶ一対のピン31fによって連結されている。これによって、各コマ部材31は、隣接するコマ部材31に対して一対のピン31fの軸線(揺動軸線)周りに揺動可能に連結されている。そして、コマ部材31の各揺動軸線は互いに平行となるように構成され、第1曲げ関節27は、コマ部材31の軸線及び揺動軸線と直交する方向(以下、曲げ方向ともいう。)に第1曲げ関節27の遠位端27bが向かうように曲げ動作を行うように構成されている。なお、
図3Aにおいて、コマ部材31の軸線とは紙面の左右方向に延在する軸線であり、揺動軸線とは紙面の奥行方向に延在する軸線である。
【0045】
上述の通り、一対の第2経路R2のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第2経路R2のうち他方が位置する側と反対側に位置しているので、第1曲げ関節27が曲げ動作を行うと一対の第2経路R2のうち曲げ方向内側に位置する第2経路R2の経路長は短くなり、曲げ方向外側に位置する第2経路R2は長くなる。同様に、一対の第3経路R3のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3経路R3のうち他方が位置する側と反対側に位置しているので、第1曲げ関節27が曲げ動作を行うと一対の第3経路R3のうち曲げ方向内側に位置する第3経路R3の経路長は短くなり、曲げ方向外側に位置する第3経路R3は長くなる。
【0046】
第2曲げ関節28は、第1曲げ関節27と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0047】
接続部29は、中空の筒状体であり、第1曲げ関節27と第2曲げ関節28とを接続している。
【0048】
そして、第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28は、同一平面上において曲げ動作を行うように構成されている。したがって、
図3Aに示すように、第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28を真っ直ぐに伸ばした状態においては、対象物に向かって前方から対象物を把持することができる。また、
図3Bに示すように、第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28を曲げることによって、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2を中心とする径方向に移動させることができる。そして、この状態から例えば鉗子22を軸線L2に向かう側に向けると、対象物に向かって側方から対象物の外周縁を把持することができる。
【0049】
手首関節30は、鉗子22をアーム21の軸線周りに回動させる。アーム21(関節部26)の軸線と直交する平面上に延在する板状体であり、中央部に貫通孔30aが設けられている。貫通孔30aは、後述する鉗子操作ケーブル43が挿通される孔であり、アーム21の軸線上に形成されている。そして、手首関節30は、図示しない軸受けを介して、アーム21の軸線周りに回動可能に第2曲げ関節28の遠位端28bに連なるように取り付けられている。したがって、手首関節30は、可撓シャフト25、第1曲げ関節27、及び第2曲げ関節28に対して、アーム21の遠位端21bの軸線周りに回動可能に構成されている。
【0050】
また、手首関節30の近位端側の面であって、貫通孔30aの周縁部には、後述するトルク伝達チューブ44の遠位端44aが固定されている(
図4参照)。したがって、トルク伝達チューブ44の近位端を回動させることによって、トルク伝達チューブ44の遠位端44aが回動し、これによって手首関節30が回動する。
【0051】
エンドエフェクタは、術具であり、本実施の形態において、鉗子22である。鉗子22は、手首関節30に取り付けられている。すなわち、鉗子22は、関節部26の遠位端(第2曲げ関節28の遠位端28b)に連なる。したがって、トルク伝達チューブ44の近位端を回動させると、手首関節30を介して、鉗子22がアーム21(関節部26)の軸線周りに回動するように構成されている。これによって、対象物の姿勢に応じて鉗子22の姿勢を調整し、対象物を把持することができる。
【0052】
また、鉗子22は、操作ケーブル連結部を有する開閉動作作動機構(図示せず)を備える。操作ケーブル連結部は、後述する鉗子操作ケーブル43の遠位端43aが連結される部分である。鉗子22の開閉動作作動機構は、操作ケーブル連結部が所定方向に動かされると、その移動量に応じて鉗子を所定量開閉する機構である。また、操作ケーブル連結部は、図示しない付勢機構によって、鉗子操作ケーブル43の近位端から遠位端43aに向かう方向に付勢されている。これによって、鉗子操作ケーブル43を遠位端43aから近位端に向かう方向に牽引すると、操作ケーブル連結部は、上記付勢機構の付勢力に抗して鉗子操作ケーブル43の遠位端43aの移動方向に動かされ、例えば閉動作を行い、対象物の把持動作を行う。また、鉗子操作ケーブル43を近位端から遠位端43aに向かう方向に送り出すと、鉗子操作ケーブル43は撓むが、付勢機構がこの撓みを吸収するように、操作ケーブル連結部を上記鉗子操作ケーブル43の遠位端43aの移動方向とは反対方向に移動させ、例えば開動作を行い、対象物の解放動作を行う。
【0053】
このように、アーム21の近位端21aから遠位端21bまでの内部空間は連通しており、内部に後述する駆動力伝達機構24の第1曲げ関節操作ケーブル41、第2曲げ関節操作ケーブル42、鉗子操作ケーブル43、及びトルク伝達チューブ44が挿通されている。
【0054】
駆動力伝達機構24は、駆動部3の後述するロボット本体駆動機構51の駆動力を可撓シャフト25の遠位端25bに連なる機構に伝達する機構である。すなわち、駆動力伝達機構24は、ロボット本体駆動機構51と第1曲げ関節27、ロボット本体駆動機構51と第2曲げ関節28、ロボット本体駆動機構51と手首関節30、及びロボット本体駆動機構51と鉗子22とをそれぞれ接続し、ロボット本体駆動機構51の駆動力を、第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、手首関節30、及び鉗子22に伝達する機構である。
図3及び
図4に示すように、駆動力伝達機構24は、第1曲げ関節操作ケーブル41と、第1曲げ関節操作ケーブル作動部(図示せず)と、第2曲げ関節操作ケーブル42と、第2曲げ関節操作ケーブル作動部(図示せず)と、鉗子操作ケーブル43と、鉗子操作ケーブル作動部(図示せず)と、トルク伝達チューブ44と、トルク伝達チューブ回動部(図示せず)と、を有する。
【0055】
図5Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、第1曲げ関節操作ケーブル41の構成例を示す図である。
【0056】
第1曲げ関節操作ケーブル41は、
図5Aに示すように、両端部41aが第1曲げ関節27の遠位端27bに位置するコマ部材31に固定されている。
【0057】
そして、第1曲げ関節操作ケーブル41は、一方の端部41aから中間部に向かって延びる部分が、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち一方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。また、他方の端部41aから中間部に向かって延びる部分が、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち他方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。
【0058】
第1曲げ関節操作ケーブル作動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、ベース23の内部空間に位置する第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部を第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向に移動させる機構である。そして、駆動部3の駆動力によって第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部が第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向における一方側に移動すると、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から何れか一方の端部41aに亘る部分が牽引され、当該一方の端部41aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から前記一方の端部41a側の部分が挿通されている一方の経路長が短くなり、第1曲げ関節27は、当該一方の第2経路R2が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から他方の端部41aに亘る部分は送り出され、一対の第2経路R2のうち経路長が長くなった他方の経路に送り込まれる。
【0059】
一方、駆動部3の駆動力によって第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部が第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向における他方側に移動すると、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から他方の端部41aに亘る部分が牽引され、当該他方の端部41aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から前記他方の端部41aが挿通されている他方の経路長が短くなり、第1曲げ関節27は、当該他方の第2経路R2が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から一方の端部41aに亘る部分は送り出され、経路長が長くなった一対の第2経路R2のうち一方の経路に送り込まれる。
【0060】
図5Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、第2曲げ関節操作ケーブル42の構成例を示す図である。
【0061】
第2曲げ関節操作ケーブル42は、
図5Bに示すように、両端部42aが第2曲げ関節28の遠位端28bに位置するコマ部材31に固定されている。そして、第2曲げ関節操作ケーブル42は、一方の端部42aから近位端に向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち一方、接続部29、第1曲げ関節27の一対の第3経路R3のうち一方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。また、他方の端部42aから中間部に向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち他方、接続部29、第1曲げ関節27の一対の第3経路R3のうち他方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。
【0062】
第2曲げ関節操作ケーブル作動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、ベース23の内部空間に位置する第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部を第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向に移動させる機構である。そして、駆動部3の駆動力によって第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部が第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向における一方側に移動すると、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から何れか一方の端部42aに亘る部分が牽引され、当該一方の端部42aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から前記一方の端部42a側の部分が挿通されている一方の経路長が短くなり、第2曲げ関節28は、当該一方の第3経路R3が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から他方の端部42aに亘る部分は送り出され、一対の第3経路R3のうち経路長が長くなった他方の経路に送り込まれる。
【0063】
一方、駆動部3の駆動力によって第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部が第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向における他方側に移動すると、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から他方の端部42aに亘る部分が牽引され、当該他方の端部42aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から前記他方の端部42aが挿通されている他方の経路長が短くなり、第2曲げ関節28は、当該他方の第3経路R3が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から一方の端部42aに亘る部分は送り出され、経路長が長くなった一対の第3経路R3のうち一方の経路に送り込まれる。
【0064】
鉗子操作ケーブル43は、上述の通り、遠位端43aが鉗子22に取り付けられている。そして、鉗子操作ケーブル43は、遠位端43aから近位端に向かって延びる部分が、手首関節30の貫通孔30a(
図4参照)、及びトルク伝達チューブ44の内部空間(関節部26及び可撓シャフト25の内部空間)を通り、近位端が、ベース23の内部空間に位置している。すなわち、鉗子操作ケーブル43は、トルク伝達チューブ44に挿通されている。
【0065】
鉗子操作ケーブル作動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、ベース23の内部空間に位置する鉗子操作ケーブル43の近位端をアーム21の軸線方向に牽引する機構である。そして、駆動部3の駆動力によって鉗子操作ケーブル43の近位端が牽引されると、鉗子操作ケーブル43が鉗子操作ケーブル43の延在方向に移動し、その結果鉗子22が動作するように構成されている。
【0066】
図4は、手首関節30の構成例を示す一部破断図である。
【0067】
トルク伝達チューブ44は、可撓性を有し、筒状に形成されている。そして、トルク伝達チューブ44は、近位端にかかるトルクを任意の方向に向けた遠位端44aに伝達することができるものである。すなわち、トルク伝達チューブ44は、近位端を回動させることによって、任意の形状に曲げた中間部分を介して、遠位端44aを近位端の回動量に応じて回動させるように構成されている。そして、トルク伝達チューブ44は、
図4に示すように、遠位端44aが手首関節30の貫通孔30aの周縁部に固定されている。そして、トルク伝達チューブ44は、遠位端44aから近位端に向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の第1経路R1、接続部29、第1曲げ関節27の第1経路R1、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、トルク伝達チューブ44の近位端は、ベース23の内部空間に位置している。
【0068】
トルク伝達チューブ回動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、トルク伝達チューブ44の近位端を回動させる機構である。そして、トルク伝達チューブ44の近位端が回動すると、トルク伝達チューブ44の遠位端44aが従動して回動し、手首関節30が回動するように構成されている。
【0069】
そして、トルク伝達チューブ44は、可撓性を有しているので、可撓シャフト25、と共に曲げることができる。
【0070】
図2に示すように、案内管6は、可撓性の筒状体であり、可撓シャフト25が挿通されている。そして、
図2に示す使用状態において、可撓シャフト25の遠位端25bは、案内管6の遠位端6bから突出している。よって、関節部26及び鉗子22は、案内管6の遠位端6bから突出した状態にある。また、案内管6の長さ寸法は、可撓シャフト25の長さ寸法よりも短く形成されている。更に、案内管6は、可撓シャフト25、関節部26、及び鉗子22を挿通することができる大きさに形成されている。したがって、案内管6の近位端6aから鉗子22、関節部26、及び可撓シャフト25を挿入し、ロボット本体2の遠位端を送り込むことによって、ロボット本体2の遠位端を案内管6の遠位端6bに向かって送り込み、案内管6の遠位端6bから鉗子22、関節部26、及び可撓シャフト25の遠位端25bを突出させることができる。そして、案内管6は、挿入された各手術用ロボット1及び内視鏡101を案内管6の延在方向に滑らかに動かすことができるように構成され、また、挿入された各手術用ロボット1及び内視鏡101を案内管6の軸線周りに滑らかに回動させることができるように構成されている。
【0071】
更に、案内管6は、曲げ方向の剛性が可撓シャフト25の曲げ方向の剛性よりも大きく構成されている。これによって、可撓シャフト25をその軸線周りに回動させたときに、案内管6が変形することを防止することができ、可撓シャフト25の延在方向を維持した状態で、可撓シャフト25の角度位置を変更することができる。
【0072】
本実施の形態において、案内管6は、集束管102と別体であるが、集束管102と一体的に構成されていてもよい。
【0073】
[駆動部の構成例]
図2に示すように、駆動部3は、ロボット本体2を駆動するロボット本体駆動機構51と、回転並進ユニット52とを有する。
【0074】
ロボット本体駆動機構51は、駆動力伝達機構24の第1曲げ関節操作ケーブル作動部、第2曲げ関節操作ケーブル作動部、鉗子操作ケーブル作動部、及びトルク伝達チューブ回動部(何れも図示せず)を個別に駆動するように構成されている。そして、ロボット本体駆動機構51とロボット本体2のベース23とは着脱可能に構成されている。したがって、ロボット本体2を交換するときは、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51を取り外し、他のロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に装着することができる。したがって、ロボット本体2の交換を迅速に行うことができる。
【0075】
そして、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることにより、ロボット本体駆動機構51と駆動力伝達機構24とが連結され、ロボット本体駆動機構51の駆動力が駆動力伝達機構24の第1曲げ関節操作ケーブル作動部、第2曲げ関節操作ケーブル作動部、鉗子操作ケーブル作動部、及びトルク伝達チューブ回動部を介して、第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、鉗子22、及び手首関節30に伝達されるように構成されている。
【0076】
回転並進ユニット52は、回転駆動機構53と、並進駆動機構54とを有する。
【0077】
回転駆動機構53は、ロボット本体2が可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1周りに回動するよう、ロボット本体2を駆動する機構である。本実施の形態において、回転駆動機構53は、ロボット本体2及びロボット本体駆動機構51を一体的に可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1周りに回動させる。回転駆動機構53は、回転駆動機構支持部61と、回転駆動部62とを有する。
【0078】
回転駆動機構支持部61は、ロボット本体駆動機構51を可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1周りに回動可能に支持する。回転駆動機構支持部61は、支持台60と、図示しない軸受けを介してロボット本体駆動機構51を可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1周りに回動可能に支持する第1支持部58と、軸線が可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1と同軸に配設され、ロボット本体駆動機構51に取り付けられた回動軸63と、図示しない軸受けを介して回動軸63を可撓シャフト25の近位端25aをその軸線L1周りに回動可能に支持する第2支持部59と、を含む。
【0079】
回転駆動部62は、例えばサーボモータであり、駆動軸に主動側ギヤ64が嵌着されている。そして主動側ギヤ64は、回転駆動機構支持部61の回動軸63に嵌着された従動側ギヤ65と歯合している。したがって、回転駆動部62の駆動軸が回動すると、可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1周りにロボット本体駆動機構51を回動させ、更にこのロボット本体駆動機構51に取り付けられているロボット本体2を可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1周りに回動させる。
【0080】
並進駆動機構54は、ロボット本体2を可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に並進駆動する機構である。本実施の形態において、並進駆動機構54は、ロボット本体2及びロボット本体駆動機構51を一体的に可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に並進させる。並進駆動機構54は、並進駆動機構支持部66と、ガイドレール機構71と、ボールねじ機構67と、並進駆動部68とを有する。
【0081】
ガイドレール機構71は、ガイドレール72と、ガイドレール72上を移動するスライダ73とを有する。ガイドレール72は、可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1と平行に延在するよう配設された棒状体であり、両端部が並進駆動機構支持部66に固定されている。スライダ73は、ガイドレール72上を摺動するように構成されている。そして、スライダ73は、回転駆動機構支持部61の支持台60に取り付けられている。これによって、回転駆動機構支持部61は、ガイドレール機構71に支持され、並進駆動機構支持部66に対して相対的に可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に進退動するように構成されている。したがって、並進駆動機構支持部66に取り付けられているロボット本体駆動機構51及びロボット本体2は、並進駆動機構支持部66に対して、可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に進退動可能に構成されている。
【0082】
ボールねじ機構67は、回転駆動機構支持部61を並進駆動機構支持部66に対して相対的に可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に進退動させる。ボールねじ機構67は、ボールねじ69と、スライダ70とを有する。ボールねじ69は、可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1と平行に延在するよう配設され、両端部が並進駆動機構支持部66にボールねじ69の軸線周りに回動可能に支持されている。スライダ70は、ボールねじ69の回動によって、ボールねじ69が延在する方向、すなわち可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に進退動するように構成されている。そして、スライダ70は、回転駆動機構支持部61の支持台60に取り付けられている。
【0083】
並進駆動部68は、例えばサーボモータであり、図示しない減速機を介して、駆動軸がボールねじ69と接続されている。したがって、並進駆動部68の駆動軸が回動すると、ボールねじ69が回動し、スライダ70をボールねじ69の延在方向、すなわち可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に移動させる。これによって、ロボット本体2及びロボット本体駆動機構51を一体的に可撓シャフト25の軸線方向に並進させる。
【0084】
なお、本実施の形態において、回転駆動機構53がロボット本体2及びロボット本体駆動機構51を直接支持し、並進駆動機構54がロボット本体2、ロボット本体駆動機構51及び回転駆動機構53を並進させるように構成されているがこれに限られるものではない。これに代えて、並進駆動機構54がロボット本体2及びロボット本体駆動機構51を直接支持し、回転駆動機構53がロボット本体2、ロボット本体駆動機構51及び並進駆動機構54を回動させるように構成してもよい。
【0085】
そして、本実施の形態において、回転並進ユニット52は、傾斜ユニット55に支持されている。傾斜ユニット55は、手術台111に対する可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1の傾斜角度を調整する機構である。
【0086】
本実施の形態において、傾斜ユニット55は、基台75と、ヒンジ76と、傾斜角度調整部77とを有する。
【0087】
基台75は、手術用ロボット支持台113(
図1参照)に固定されている。
【0088】
ヒンジ76は、上下方向から見て可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向と交差する方向、且つ水平方向に延在する軸線周りに並進駆動機構支持部66を基台75に対して傾動自在に連結する。
【0089】
傾斜角度調整部77は、細長い板状に形成され、基端部が基台75に水平方向に延在する軸線周りに揺動自在に連結されている。そして、傾斜角度調整部77の基端部から先端部に向かって延びる部分には、傾斜角度調整部77の延在方向に一列に並ぶ複数の貫通孔が形成されている。そして、並進駆動機構支持部66には、図示しないボルトと螺合する図示しない雌ねじが形成されており、傾斜角度調整部77の何れか一の貫通孔に挿通したボルトと並進駆動機構支持部66の雌螺子とを螺合させることによって、基台75に対する並進駆動機構支持部66の傾斜角度、すなわち手術台111に対する可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1の傾斜角度を所定の傾斜角度に保持することができる。これによって、可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1の傾斜角度を適切な角度に調整することができ、アーム21を円滑に案内管6に送り込んだり、案内管6から引き出したりすることができる。
【0090】
[制御器及び操作部の構成例]
図8は、制御器4の構成例を示すブロック図である。
【0091】
ロボット本体2が備える制御器4は、例えば、CPU等の演算器を有する制御部81と、ROM及びRAM等のメモリを有する記憶部82とを備えている。制御部81は、集中制御する単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。制御部81は、操作部5から受信したデータに基づいて各手術用ロボット1のロボット本体駆動機構51、回転駆動機構53の回転駆動部62、及び並進駆動機構54の並進駆動部68の動作を制御し、手術用ロボット1の動作を制御する。また、制御部81は、内視鏡101から受信した画像データを処理し、表示装置114に送信する。記憶部82には所定の制御プログラムが記憶されていて、制御部81がこれらの制御プログラムを読み出して実行することにより、手術用ロボット1の動作が制御される。
【0092】
操作部5は、術者Wが操作して、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令を入力するためのものである。操作部5は、制御器4と通信可能に構成されている。そして、操作部5は、術者Wによって入力された手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令をデータに変換し、制御部81に送信する。
【0093】
[使用例]
次に、手術用ロボット1の使用例を説明する。
【0094】
図8は、手術用ロボット1の使用例における動作例を示す図である。
【0095】
まず、
図2に示すように、1以上の案内管6を集束管102の近位端102aの開口から集束管102に挿入し、集束管102の遠位端102bから案内管6の遠位端6bが突出するまで送り込む。また、内視鏡101についても同様に、集束管102の遠位端102bから内視鏡101の遠位端が突出するまで送り込む。
【0096】
次に、患者Pの体表の1以上の手術用ロボット1及び内視鏡101を挿入する部位にトロッカー110を留置する。
【0097】
次に、患者Pの体表に留置したトロッカー110に集束管102を挿入し、内視鏡101によって患者Pの体内を視認し、集束管102の遠位端102bを患者Pの処置部位の近傍に位置させる。なお、集束管102、内視鏡101、及び案内管6は、可撓性を有するので、トロッカー110が留置されている部位と処置部位とを通る仮想の直線上に、例えば患者Pの臓器が位置する場合であっても、集束管102、内視鏡101、及び案内管6を湾曲させることによって、この臓器を迂回し集束管102の遠位端102bを処置部位の近傍に導入することができる。
【0098】
次に、1以上の手術用ロボット1のロボット本体2のアーム21を案内管6の近位端6aの開口から案内管6に挿入し、案内管6の遠位端6bからアーム21の遠位端21bが突出するまで送り込む。これによって、1以上の手術用ロボット1及び内視鏡101は、集束管102によって集束され、これらを一体的に患者Pの処置部位の近傍に導入することができる。
【0099】
次に、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付け、ロボット本体2の駆動力伝達機構24と、ロボット本体駆動機構51とを連結する。これによって、ロボット本体駆動機構51の駆動力が駆動力伝達機構24の第1曲げ関節操作ケーブル作動部、第2曲げ関節操作ケーブル作動部、鉗子操作ケーブル作動部、及びトルク伝達チューブ回動部を介して、第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、鉗子22、及び手首関節30に伝達されるようになる。そして、傾斜ユニット55を操作し、手術台111に対する可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1の傾斜角度を適切な角度に調整する。
【0100】
次に、術者Wは、内視鏡101のビデオカメラによって撮影され、表示装置114に表示される画像を確認しながら、操作部5を操作する。そして、制御部81は、操作部5から受信したデータに基づいてロボット本体駆動機構51、回転駆動機構53の回転駆動部62、及び並進駆動機構54の並進駆動部68の動作を制御し、手術用ロボット1の動作を制御する。
【0101】
このとき、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2を中心とする径方向に移動させる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51を駆動し、第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28を曲げる。これによって、鉗子22は、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2を中心とする径方向に移動する。
【0102】
また、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2(
図3,
図4参照)を中心とする円周方向に移動させる動作命令が含まれると判定すると、制御部81は、回転並進ユニット52の回転駆動部62を駆動し、可撓シャフト25の近位端をその軸線L1周りに回動させる。これによって、
図8に示すように、可撓シャフト25は、案内管6の内部空間において、可撓シャフト25の軸線方向の姿勢を維持した状態で、全体が可撓シャフト25の軸線周りに回動する。その結果、可撓シャフト25の遠位端25bに連なる関節部26は、可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2周りに回動する。すなわち、例えば、第1曲げ関節27をB1方向に曲げ、第2曲げ関節28をB1と反対方向であるB2方向に曲げている状態においては、鉗子22は、可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2を中心とする円周上を移動する。よって、術者Wが操作部5を操作することによって、鉗子22が対象物を把持する位置を変更することができる。
【0103】
更に、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、案内管6の遠位端から突出する手術用ロボット1の遠位端の突出量を変化させる動作命令が含まれると判定すると、制御部81は、回転並進ユニット52の並進駆動部68を駆動し、ロボット本体2を可撓シャフト25の近位端25aの軸線L1方向に移動させる。
【0104】
これによって、可撓シャフト25は、案内管6に送り込まれ(挿し込まれ)又は引き出される。アーム21を案内管6に送り込むことによって、案内管6の遠位端から突出する手術用ロボット1の遠位端の突出量を大きくすることができ、鉗子22を例えば患者Pの処置部位に近づけることができる。また、アーム21を案内管6から引き出すことによって、案内管6の遠位端から突出する手術用ロボット1の遠位端の突出量を小さくすることができ、鉗子22を例えば患者Pの処置部位から遠ざけることができる。このように、術者Wが操作部5を操作することによって、案内管6の遠位端から突出する手術用ロボット1の遠位端の突出量を変化させ、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2方向に移動させることができる。
【0105】
そして、上述の通り、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2を中心とする径方向に移動させる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51を駆動し、第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28を曲げるが、このとき、鉗子22は、可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2方向において可撓シャフト25に近づく側に移動する。この移動をキャンセルするために、制御部81は、第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28を曲げる動作を行ったときに、鉗子22が可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2方向において可撓シャフト25に近づく側に移動した距離に応じて、アーム21を案内管6に送り込んでもよい。これによって、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2方向と直交する平面上において移動させることができる。
【0106】
そして、手術中に一の術具を別の術具に交換するときは、ベース23をロボット本体駆動機構51から取り外し、案内管6から上記一の術具を備える手術用ロボット1を引き抜く。そして、上記別の術具を備える手術用ロボット1を案内管6に挿し込む。このように、交換する術具以外の術具を備える他の手術用ロボット及び内視鏡101を処置部位の近傍に位置させたまま、一部の術具を交換することができるので、術具の交換を速やかに行うことができ、患者Pの身体の負担を軽減することができる。また、術者Wの作業負担を軽減することができる。
【0107】
以上に説明したように、本発明の手術用ロボット1は、回転駆動機構53によってロボット本体2をアーム21の近位端21aの軸線周りに回動させ、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2を中心とする円周方向に移動させることができる。すなわち、アーム21の近位端21aを3次元空間において並進移動させることなく、鉗子22を可撓シャフト25の遠位端25bの軸線L2を中心とする円周方向に移動させることができるので、アーム21の近位端21aを3次元空間において並進移動させるための大掛かりな装置を要しない。よって、手術用ロボット1をコンパクトなものとすることができ、手術用ロボット1の製造コストを安価なものとすることができる。
【0108】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0109】
L1 軸線
L2 軸線
O 術者
P 患者
W 術者
1 手術用ロボット
2 ロボット本体
3 駆動部
4 制御器
5 操作部
6 案内管
21 アーム
22 鉗子
22a 作動軸
23 ベース
24 駆動力伝達機構
25 可撓シャフト
26 関節部
27 第1曲げ関節
28 第2曲げ関節
29 接続部
30 手首関節
30a 貫通孔
31 コマ部材
32 操作ケーブル連結部
33 操作ケーブル連結部
41 第1曲げ関節操作ケーブル
42 第2曲げ関節操作ケーブル
43 鉗子操作ケーブル
44 トルク伝達チューブ
51 ロボット本体駆動機構
52 回転並進ユニット
53 回転駆動機構
54 並進駆動機構
55 傾斜ユニット
58 第1支持部
59 第2支持部
60 支持台
61 回転駆動機構支持部
62 回転駆動部
63 回動軸
64 主動側ギヤ
65 従動側ギヤ
66 並進駆動機構支持部
67 ボールねじ機構
68 並進駆動部
69 ボールねじ
70 スライダ
71 ガイドレール機構
72 ガイドレール
73 スライダ
75 基台
76 ヒンジ
77 傾斜角度調整部
81 制御部
82 記憶部
100 手術用ロボットシステム
111 手術台
112 支持レール
113 手術用ロボット支持台