(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】低結晶化度フルオロポリマー粒子のための粘着防止処理
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20220214BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
C08L27/12
C08J3/12 CEW
(21)【出願番号】P 2017561373
(86)(22)【出願日】2016-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2016061695
(87)【国際公開番号】W WO2016189000
(87)【国際公開日】2016-12-01
【審査請求日】2019-04-24
(32)【優先日】2015-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】メルロ, ルカ
(72)【発明者】
【氏名】コラーサニティ, マルティーナ
(72)【発明者】
【氏名】デル ガウディオ, ミケーレ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533763(JP,A)
【文献】特開昭61-258839(JP,A)
【文献】特開2006-063176(JP,A)
【文献】特表昭64-500357(JP,A)
【文献】特表2014-521820(JP,A)
【文献】特表2011-505444(JP,A)
【文献】特表2004-507571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 3/00- 3/28
C08J99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の複合粒子の形態での固体組成物であって、各複合粒子は、コア(A)であって、前記コア(A)の重量平均粒子サイズ(D50)よりも少なくとも10倍小さいD50を有する基本粒子(B)で少なくとも部分的に被覆されている、コア(A)を含み、
-前記コア(A)は、4J/g以下の融解熱を有する低結晶化度フルオロポリマー(フルオロポリマー(a))を含み、かつ
-前記基本粒子(B)は、1~1000nmのD50を有し、10J/g超の融解熱を有する高結晶化度フルオロポリマー(フルオロポリマー(b))を含み、
フルオロポリマー(a)とフルオロポリマー(b)の重量比が、
98:
2~99.99:0.01であり、
フルオロポリマー(a)が、SO
2F形態でのフッ素化アイオノマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルと式(I):
(式中、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、フッ素原子、1個以上の酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6フルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)の1種以上のフッ素化ジオキソールとに由来する繰り返し単位を含むコポリマー、二フッ化ビニリデン(VDF)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、またはVDFとトリフルオロエチレン(T
rFE)とのコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、
固体組成物。
【請求項2】
基本粒子(B)で部分的に被覆されたコア(A)を含む前記複合粒子の平均サイズが、少なくとも400マイクロメートル、好ましくは700マイクロメートル、より好ましくは少なくとも1000マイクロメートル、少なくとも1200μm、もしくは少なくとも1500μm、および/または5000マイクロメートル以下、より好ましくは3000マイクロメートル以下である、請求項
1に記載の固体組成物。
【請求項3】
フルオロポリマー(b)を含む前記基本粒子(B)が、1~700nm、好ましくは10~500nm、より好ましくは100~200nmの重量平均サイズ(D50)を有する、請求項1
又は2に記載の固体組成物。
【請求項4】
フルオロポリマー(a)が、
-少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(フッ素化モノマー(a1))に由来する繰り返し単位;および
-少なくとも1個のイオン交換基を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以後、官能性モノマー(a2))に由来する相当量の繰り返し単位
を含むSO
2F形態でのフッ素化アイオノマー前駆体からなる群から選択され、
i.前記少なくとも1種のフッ素化官能性モノマー(a2)は、
-CF
2=CF(CF
2)
pSO
2F(式中、pは、0~10、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは、pは2または3に等しい);
-CF
2=CF-O-(CF
2)
mSO
2F(式中、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは2に等しい);
-CF
2=CF-(OCF
2CF(R
F1))
w-O-CF
2(CF(R
F2))
ySO
2F(式中、wは、0~2の整数であり、R
F1およびR
F2は、互いに等しいかまたは異なり、独立して、F、Clまたは、1個以上のエーテル酸
素で任意選択的に置換されたC
1~C
10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは1であり、R
F1は、-CF
3であり、yは、1であり、R
F2は、Fである);
-CF
2=CF-Ar-SO
2F(式中、Arは、C
5~C
15芳香族またはヘテロ芳香族置換基である)からなる群から選択され;
好ましくは、前記モノマー(a2)は、CF
2=CF-O-(CF
2)
m-SO
2F(式中、mは、1~6、好ましくは2~4の整数である)であり、より好ましくは、前記モノマー(a2)は、CF
2=CFOCF
2CF
2-SO
2Fであり、;
ii.少なくとも1種のモノマー(a1)は、
-C
2~C
8フルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびヘキサフルオロイソブチレン;フッ化ビニリデン;
-C
2~C
8クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレンおよびブロモトリフルオロエチレン;
-式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)のフルオロアルキルビニルエーテル;
-式CF
2=CFOR
O1(式中、R
O1は、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
12フルオロ-オキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)のフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
-式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1~C
6フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7であるか、または1個以上のエーテル基を有するC
1~C
6フルオロオキシアルキル基、例えば、-C
2F
5-O-CF
3である)のフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
-式(I):
(式中、R
f3、R
f4、R
f5およびR
f6のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、フッ素原子;1個以上の酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6フルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)のフルオロジオキソール
を含む群から選択され;好ましくは、前記モノマー(a1)は、C
3~C
8フルオロオレフィン;より好ましくはテトラフルオロエチレンおよび/またはヘキサフルオロプロピレン;クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C
2~C
6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレンおよび/またはブロモトリフルオロエチレン;
式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)のフルオロアルキルビニルエーテル;式CF
2=CFOR
O1(式中、R
O1は、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
12フルオロオキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である)のフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル
を含む群から選択され;より好ましくは、前記モノマー(a1)は、テトラフルオロエチレン(TFE)である、請求項1に記載の固体組成物。
【請求項5】
フルオロポリマー(b)が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)ポリマー、および-SO
2F基を有するフッ素化アイオノマー前駆体からなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の固体組成物。
【請求項6】
フルオロポリマー(b)が、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテルの少なくとも1種に由来する繰り返し単位、およびテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位、ならびにそれらの混合物を含む、パーフルオロアルコキシ(PFA)溶融加工性コポリマーである、請求項
5に記載の固体組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物の調製のための方法であって、
i.フルオロポリマー(a)を含む複数の粒子コア(A)を調製する工程と;
ii.工程iの前記粒子コア(A)を、高結晶化度フルオロポリマー(b)を含み、1~1000nmの重量平均粒子サイズ(D50)を有する基本粒子(B)の懸濁液または分散液と液体媒体中で接触させて、2相系を得る工程と;
iii.前記液体媒体を工程iiの前記2相系から除去する工程と
を含む、方法。
【請求項8】
前記液体媒体が、水である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
工程iiiにおいて、前記液体媒体が、30~80℃、好ましくは50~70℃の温度で乾燥させることによって除去される、請求項
7または
8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~
6の何れか一項に記載の固体組成物の溶融押出しによって得られた組成物を含む物品の調製のための方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の方法によって得られ得る物品。
【請求項12】
フィルムまたは管の形態での請求項
11に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月27日に出願された欧州特許出願第15169393.4号の優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容は、あらゆる目的のため参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、低結晶化度を有するフルオロポリマーの粒子のための粘着防止処理に関する。
【背景技術】
【0003】
熱溶融性フルオロポリマーは、一般にポリマーペレットから出発して溶融押出しによって加工される。しかしながら、これは、ある特定のクラスのフルオロポリマーにとって、それらの低い結晶化度および低いガラス転移温度のために困難となることがある。このような材料の非限定的な例は、一般に、すべての熱可塑性エラストマー(TPE)、SO2F形態のフッ素化アイオノマー、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)と2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソールとのコポリマー、およびVDF-CTFEのコポリマーである。
【0004】
それらの低い結晶化度のために、これらのポリマーは、低い融点および軟化点を有し、これは、それらの調製および加工において困難をもたらす。押出し前にペレットから水/揮発物質を除去することが意図される、これらの材料の乾燥プロセスは、ペレットの粘着を避けるために、低温で行われなければならないものとされ、揮発性汚染物質は、高温が適用されない限り、有効に除去されない。
【0005】
このような材料のペレットを室温(20~30℃)で保存することは、ペレットが互いに粘着し、集塊を形成し、これは標準的な技術を使用して処理することは非常に困難であるので可能でない。これは、ペレットを低温で保存することによって一部解決することができるが、これは、温度制御に関連した高コストの明らかな欠点を伴う。
【0006】
ペレット押出し中に、メルトフローは、ペレットが溶融前に凝集する傾向によって影響され、したがって、粘着ペレットの押出しは、しばしば押出部品の不均一なメルトフローをもたらす。
【0007】
米国特許出願公開第2014/0213730号明細書(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY,S.P.A.)2014年7月31日には、フルオロエラストマーとVDFホモポリマーまたはコポリマーとを、フルオロエラストマーおよびポリマーの総重量に対して重量で5%超の量で含む組成物が開示されており、これは、固体形態のエラストマーとVDFポリマーの粉末との混合物を極低温ミリングし、このようにして2種のポリマーの均一ブレンドを得ることによって調製される。-20~-50の温度が、ミリング工程に適すると示されている。
【0008】
粘着防止剤は、凝集を防止するために添加することができるが、しかしながら、これらの物質は、最終生成物を変性させる。高溶融性固体も使用することができるが、しかしながら、ポリマーマトリックスとのそれらの相溶性は、一般に不十分である。
【0009】
特に、上述の物質は、水に対する材料の親和性を増加させる傾向があり、起こり得る水分吸収の増加、揮発性物質放出の増加、または添加剤とマトリックスとの非相溶性のために、押出しにおける欠陥の形成および品質問題につながり得る。
【0010】
米国特許第4,720,397号明細書(GENERAL TECHNOLOGY APPLICATIONS, INC.)1988年1月19日には、無機物質、例えば、リン酸三カルシウムの層で被覆された、高分子量熱可塑性または粘弾性ポリマー、例えば、ポリオレフィンまたはエラストマーから形成された中央部分を含み、中央部分のポリマーをそのガラス転移温度未満の温度(-10℃~-100℃)で冷却し、それを衝撃型ミルによって同じ温度で粉砕し、そのように得られた粒子を無機物質で被覆することによって得られた、組成物が記載されている。
【0011】
低結晶化度フルオロポリマーを含むペレットが粘着することを防止し、特に押出しによる、それらの作業性を改善するための簡単かつ費用効果的な方法は、現在満たされていない要求である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、複数の複合粒子の形態での固体組成物を提供することによって上記問題を解決し、ここで、各複合粒子は、コア(A)の重量平均粒子サイズ(D50)よりも少なくとも10倍小さいD50を有する基本粒子(B)で少なくとも部分的に被覆されているコア(A)を含み、
-コア(A)は、4J/g以下の融解熱を有する低結晶化度フルオロポリマー(フルオロポリマー(a))を含み、および
-基本粒子(B)は、1~1000nmのD50を有し、10J/g超の融解熱を有する高結晶化度フルオロポリマー(フルオロポリマー(b))を含む。
【0013】
本発明はさらに、上に記載されたとおりの組成物の調製のための方法であって、
i.フルオロポリマー(a)を含む複数の粒子コア(A)を調製する工程と;
ii.工程iの粒子コア(A)を、高結晶化度フルオロポリマー(b)を含み、1~1000nmの重量平均粒子サイズ(D50)を有する基本粒子(B)の懸濁液または分散液と、液体媒体中で接触させて、二相系を得る工程と;
iii.液体媒体を工程iiの2相系から除去する工程と
を含む、方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、上で定義されたとおりの複数の粒子の形態の固体組成物の溶融押出しによって得られた組成物を含む物品を調製するための方法、および前記方法によって得られ得る物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による処理前の、PFSAアイオノマー前駆体を含む非被覆ペレットのSEM画像。
【
図2】本発明による、PFSAアイオノマー前駆体を含む部分被覆ペレットのSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の文脈において、用語「懸濁液」、「エマルション」および「ラテックス」は、液体媒体、好ましくは水、およびフルオロポリマー固体から本質的になる安定な混合物を示し、界面活性剤および/または他の添加剤、開始剤(および/または開始剤の分解生成物)ならびに重合反応に由来する試薬/触媒からの残留物を任意選択で含む。一般に、ラテックス、懸濁液またはエマルションは、約1~約99重量パーセントのフルオロポリマー固体、好ましくは10~80重量パーセントのフルオロポリマー固体を含有する。ラテックス中のポリマーは、例えば、光子相関分光法、例えば、ISO13321:1996法などによって、決定して、約1nm~約1000nm、好ましくは5~700nm、好ましくは10~500nm、より好ましくは100~200nmの重量平均粒子サイズ範囲を有する小粒子の形態である。
【0017】
本発明による組成物において、低結晶化度フルオロポリマー(a)を含むコア(A)は、当業者に公知の方法によって得られ得る任意の形状であり得る。非限定的な例として、低結晶化度フルオロポリマー(a)を含むコア(A)は、顆粒、ペレットまたは粗粉末(例えば、重量平均粒子サイズ50~500マイクロメートル)であり得る。
【0018】
フルオロポリマー(b)を含む基本粒子(B)で少なくとも部分的に被覆された、フルオロポリマー(a)を含むコア(A)、を含む複合粒子は、一般に使用され、当業者に公知の方法、例えば、篩分析(例えば、ASTM D1921-12法に従う)によって決定して、好ましくは少なくとも400マイクロメートル、または少なくとも700マイクロメートル、典型的には少なくとも1000マイクロメートル、より好ましくは少なくとも1200マイクロメートルまたは少なくとも1500マイクロメートル、かつ5000マイクロメートル未満、より好ましくは3000マイクロメートル未満の重量平均粒子サイズを有する。
【0019】
平均粒子サイズの計算は、当業者に公知の方法に従って、例えば、ISO 9276-5(2004およびその後の改訂版)によって行うことができる。
【0020】
非限定的な例として、複合粒子の形状は、約5000マイクロメートル以下の軸長さ、少なくとも約1.5、より一般的には約2~30のアスペクト比の長方形外皮を有する断面形状を有し、約0.25~30より一般的には2~20または5~10の軸長さ/断面幅の比(L:W)を有するようであり得る。
【0021】
好ましくは、本発明による固体組成物において、フルオロポリマー(a)とフルオロポリマー(b)の重量比は、95:5または96:4~99.99:0.01、より好ましくは98:2~99.99:0.01、最も好ましくは99:1~99.98:0.02,99.2:0.8~99.95:0.05または99.9:0.1である。0.1.言い換えれば、フルオロポリマー(b)の量は、(a)および(b)の合計の総重量に対して、好ましくは5重量%または4重量%または2重量%~0.01重量%、より好ましくは1重量%~0.02重量%、0.8重量%~0.05重量%または0.1重量%である。
【0022】
本発明の文脈において、「少なくとも部分的に被覆された複合粒子」は、フルオロポリマーaを含む、それらのコア(A)の外表面の概して80%以下を、異なるフルオロポリマー(フルオロポリマー(b))のより小さい粒子で被覆させた、フルオロポリマーを含む粒子、例えば、ペレット、顆粒または粗粉末を示す。好ましくは、このようなコア(A)の外表面の50%未満、より好ましくは30%未満または10%未満は、例えば、SEM分析によって検出され得るとおりに、異なるフルオロポリマーの基本の、すなわち、より小さい、粒子(B)によって被覆されている。明確さのために、本発明の組成物中の複合粒子は、「コア-シェル」構造を有しており、上に記載されたとおりのタイプ(a)のフルオロポリマーとタイプ(b)のフルオロポリマーとを単純にブレンドすることによって得られる組成物は、本発明の一部はない。
【0023】
本発明の文脈において、フルオロポリマー(a)は、フルオロポリマー(b)と比べて低い結晶化度を有し、すなわち、それは、4J/gを超えない、好ましくは3J/gを超えない、より好ましくは2J/gを超えない融解熱を示す。フルオロポリマー(a)の融解熱は、ASTM D3418-08の手順に従ってDSCによって決定され得る。
【0024】
本発明の文脈において、フルオロポリマー(b)は、より高い結晶化度を有し、すなわち、それは、10J/gを超える、好ましくは20J/gを超える、より好ましくは30J/gを超える融解熱を示す。フルオロポリマー(b)の融解熱は、ASTM D3418-08の手順に従ってDSCによって決定され得る。この規格によって具体的に与えられるとおりに、ポリマー(a)およびポリマー(b)の融解熱は、明確な条件で第1の加熱サイクルおよびその後の冷却で試料の熱履歴の効果を抑制した後、10℃/分の加熱速度での第2の加熱曲線から決定される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、上で定義されたとおりのフルオロポリマー(a)は、少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[モノマー(a1)]および少なくとも1個の-SO2F基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[モノマー(a2)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0026】
より好ましくは、本発明による組成物中で、フルオロポリマー(a)は、
-少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以後、フッ素化モノマー(a1))に由来する繰り返し単位;および
-少なくとも1個のイオン交換基を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以後、官能性モノマー(a2))に由来する相当量の繰り返し単位
を含み、
ここで、フルオロポリマー(a)は、CF2=CF(CF2)pSO2F(式中、pは、0~10、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは、pは2または3に等しい);CF2=CF-O-(CF2)mSO2F(式中、mは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは2に等しい);
CF2=CF-(OCF2CF(RF1))w-O-CF2(CF(RF2))ySO2F(式中、wは、0~2の整数であり、RF1およびRF2は、互いに等しいかまたは異なり、独立して、F、Cl、または1個以上のエーテル酸素原子で任意選択的に置換されたC1~C10フルオロアルキル基であり、yは0~6の整数であり;好ましくは、wは1であり、RF1は、-CF3であり、yは1であり、RF2は、Fである);
CF2=CF-Ar-SO2F(式中、Arは、C5-C15からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素化官能性モノマー(a2)に由来する繰り返し単位を含む。
【0027】
上記定義によるフルオロポリマー(a)は、パーフルオロスルホン酸(PFSA)アイオノマーの前駆体であり得、さらにより好ましくは、前記モノマー(a2)は、CF2=CF-O-(CF2)m-SO2F(式中、mは、1~6、好ましくは2~4の整数である)である。
【0028】
好ましい実施形態において、前記モノマー(a2)は、CF2=CFOCF2CF2-SO2Fである。
【0029】
好ましくは、前記モノマー(a1)は、C
2~C
8フルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレン;フッ化ビニリデン;C
2~C
8クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレンおよびブロモトリフルオロエチレン;式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)のフルオロアルキルビニルエーテル;式CF
2=CFOR
O1(式中、R
O1は、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
12フルオロ-オキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)のフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1~C
6フルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7または、1個以上のエーテル基を有するC
1~C
6フルオロオキシアルキル、例えば、C
2F
5-O-CF
3である)のフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;式(I):
(式中、R
f3、R
f4、R
f5およびR
f6のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、フッ素原子;1個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C
1~C
6フルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)
のフルオロジオキソール
を含む群から選択される。
【0030】
より好ましくは、前記モノマー(a1)は、
C3~C8フルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレンおよび/またはヘキサフルオロプロピレン;
クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C2~C6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレンおよび/またはブロモトリフルオロエチレン;
式CF2=CFORf1(式中、Rf1は、C1~C6フルオロアルキル、例えば-CF3、-C2F5、-C3F7である)のフルオロアルキルビニルエーテル;
式CF2=CFORO1(式中、RO1は、1個以上のエーテル基を有するC1~C12フルオロオキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)のフロオロ-オキシアルキルビニルエーテル
を含む群から選択される。
【0031】
最も好ましい実施形態において、前記モノマー(a1)は、テトラフルオロエチレン(TFE)である。
【0032】
任意選択的に、モノマー(a1)およびモノマー(a2)に加えて、フルオロポリマー(a)は、ビス-オレフィンに由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0033】
適当なビス-オレフィンの非限定的な例は、以下の式:
-R1R2C=CH-(CF2)j-CH=CR3R4(式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、R1、R2、R3、R4は、互いに等しいかまたは異なり、-H、-FまたはC1~C5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である);
-A2C=CB-O-E-O-CB=CA2(式中、Aのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、-F、-Cl、および-Hから独立して選択され;Bのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、-F、-Cl、-Hおよび-ORB(ここで、RBは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化または塩素化され得る分岐鎖または直鎖アルキル基である)から独立して選択され;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくは、Eは-(CF2)z-基(zは、3~5の整数である);および
-R6R7C=CR5-E-O-CB=CA2(式中、E、AおよびBは、上で定義されたものと同じ意味を有し;R5、R6、R7は、互いに等しいかまたは異なり、-H、-FまたはC1~C5アルキルもしくはフルオロアルキル基である)
のものから選択される。
【0034】
ビス-オレフィンが本発明の組成物中のフルオロポリマー(a)で用いられる場合、得られたポリマーは典型的には、ポリマー中の単位の総量に対して、ビス-オレフィンに由来する0.01モル%~5モル%の単位を含む。
【0035】
フルオロポリマー(a)の当量(EW)(すなわち、官能基1モル当たりのフルオロポリマー(a)のグラム数)は、フッ素化アイオノマー前駆体などの官能化ポリマーの場合、特に限定されず、好ましくは、フルオロポリマー(a)は、500g/当量~1400g/当量のEWを有する。
【0036】
本発明の組成物中のフルオロポリマー(a)としての使用に適するフッ素化アイオノマーは、当技術分野で公知の任意の重合方法によって都合よく得られてもよい。スルホニルフルオリドポリマーの調製のための適当な方法は、例えば、欧州特許出願公開第1323751A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)および欧州特許出願公開第1172382A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)に記載されたものである。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明の組成物中の上で定義されたとおりのフルオロポリマー(a)は、非晶質パーフルオロポリマー、すなわち、少なくとも1種のパーフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位から本質的になる非晶質完全フッ素化ポリマーである。
【0038】
表現「少なくとも1種のパーフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位から本質的になる」は、非パーフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位の少量(例えば、ポリマー中の総繰り返し単位の5%未満、2%未満、または1%未満)が、パーフルオロポリマー中に許容されることを示すことが意図される。
【0039】
好ましくは、前記少なくとも1種のフッ素化モノマーは、
-C3~C8パーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP);
-CF2=CFORf(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(式中、Rfは、C1~C6パーフルオロアルキル基、例えばCF3、C2F5、C3F7である);
-クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C2~C6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);ならびに
-パーフルオロジオキソール
を含む群から選択される。
【0040】
より好ましくは、前記フルオロポリマー(a)は、C3~C8パーフルオロレフィンおよびCF2=CFORf(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(式中、Rfは、C1~C6パーフルオロアルキル基である)に由来する繰り返し単位を含む。
【0041】
さらにより好ましくは、前記フルオロポリマー(a)は、テトラフルオロエチレン(TFE)およびパーフルオロメチル-ビニル-エーテル(MVE)に由来する繰り返し単位を含む。
【0042】
好ましくは、前記フルオロポリマー(a)は、少なくとも1個のヨウ素または臭素原子、より好ましくは少なくとも1個のヨウ素原子を含む硬化部位を含む。前記硬化部位は、パーフルオロポリマーの繰り返し単位中にペンダント基として含まれることができるか、またはそれの中に末端鎖として存在することができる。フルオロポリマー(a)がヨウ素原子をその末端鎖中に含む実施形態が好ましい。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明の組成物中のフルオロポリマー(a)は、テトラフルオロエチレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、および式(I):
(式中、R
f3、R
f4、R
f5およびR
f6のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、フッ素原子、1個以上の酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6フルオロ(ハロ)フルオロアルキル基、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)
の1種以上のフッ素化ジオキソール
に由来する繰り返し単位を含むコポリマーを含む。より好ましくは、式(I)のフッ素化ジオキソールは、2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール(MDO)である。
【0044】
より好ましい実施形態において、本発明の組成物中のフルオロポリマー(a)は、重量/a)の総重量で、式(I)のフッ素化ジオキソール、最も好ましくは(MDO)に由来する10~60%、より好ましくは20~40%の繰り返し単位を含むコポリマーである。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明の組成物中のフルオロポリマー(a)は、二フッ化ビニリデン(VDF)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマーまたはVDFとトリフルオロエチレン(TrFE)とのコポリマーである。
【0046】
好ましい実施形態において、フルオロポリマー(a)は、室温でその元の長さの少なくとも2倍に伸張させることができ、5分間応力下で保持され、そして応力が除かれた後、同じ時間でそれらの初期の長さの10%以内に戻る物質である、ASTM,Special Technical Bulletin,No.184の定義に従う(パー)フルオロエラストマーとは異なるフルオロポリマーである。
【0047】
好ましくは、本発明の組成物中のフルオロポリマー(b)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)ポリマーおよび-SO2F基を有する高結晶化度フッ素化アイオノマーからなる群から選択される。
【0048】
より好ましくは、フルオロポリマー(b)は、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテルの少なくとも1種に由来する繰り返し単位およびテトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位を含むパーフルオロアルコキシ(PFA)溶融加工性コポリマーである。
【0049】
より好ましくは、フルオロポリマー(b)は、
1.一般式CF2=CFORf1(式中、Rf1は、C1~C6パーフルオロアルキルである)に従うパーフルオロアルキルビニルエーテル;
2.一般式CF2=CFOX01(式中、X01は、1個以上のエーテル基を有するC1~C12パーフルオロオキシアルキルである)に従うパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
3.C3~C8パーフルオロオレフィン;および
4.それらの混合物
からなる群の中から選択される少なくとも1種のパー(ハロ)フルオロモノマー(PFM)に由来する繰り返し単位を含む、TFEコポリマーの中から選択される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリマー(b)は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)および任意選択的に、一般式CF2=CFORf1’(式中、Rf1’は、C1~C6パーフルオロアルキルである)に従う少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含む、TFEポリマーの中から選択される。
【0051】
この実施形態による好ましいポリマー(b)は、テトラフルオロエチレン(TFE)、および3~15重量%の範囲の量でのヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ならびに任意選択的に、上で定義されたとおりの、0.5~3重量%の少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含む(好ましくは、それらから本質的になる)、TFEコポリマーの中から選択される。
【0052】
このようなポリマーの非限定的な例は、パーフルオロアルキルビニルエーテルが、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、式CF2=CFOCF3)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、式CF2=CFOC2F5)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE、式CF2=CFOC3F7)およびそれらの混合物である、TFEコポリマーである。
【0053】
好ましい実施形態において、フルオロポリマー(b)は、有利には、
(a)PMVEに由来する3~13重量%、好ましくは5~12重量%の繰り返し単位;
(b)PMVEとは異なり、かつ一般式CF2=CFORf1’(式中、Rf1’は、C1~C6パーフルオロアルキルである)に従うパーフルオロアルキルビニルエーテルおよび一般式CF2=CFOX01’(式中、X01’は、1個以上のエーテル基を有するC1~C12パーフルオロオキシアルキルである)に従うパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテルからなる群から選択される1種または2種以上のフッ素化コモノマーに由来する;好ましくはPEVEおよび/またはPPVEに由来する0~6重量%の繰り返し単位;
(c)繰り返し単位(a)、(b)および(c)の百分率の合計が100重量%に等しいような量での、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位
から本質的になるTFEコポリマーである。
【0054】
別の好ましい実施形態において、フルオロポリマー(b)は、有利には、
(a)PMVEに由来する0~6重量%の繰り返し単位、
(b)PMVEとは異なる1種または2種以上のフッ素化PAVEコモノマーに由来する、好ましくはPEVEおよび/またはPPVEに由来する0.4~5重量%の繰り返し単位;
(c)少なくとも1種のC3~C8パーフルオロオレフィンに由来する、好ましくはヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する0~6重量%の繰り返し単位、ならびに
(d)繰り返し単位(a)、(b)、(c)および(d)の百分率の合計が100重量%に等しいような量でのTFEに由来する繰り返し単位
から本質的になるTFEコポリマーである。
【0055】
ある態様において、本発明は、上で定義されたとおりの組成物を調製するための方法であって、
i.フルオロポリマー(a)を含む複数の粒子コア(A)を調製する工程と;
ii.工程iの粒子コア(A)を、高結晶化度フルオロポリマー(b)を含み、1~1000nmの重量平均粒子サイズ(D50)を有する基本粒子(B)の懸濁液または分散液と液体媒体中で接触させて、2相系を得る工程と;
iii.工程iiの2相系から液体媒体を除去する工程と
を含む方法を提供する。
【0056】
好ましくは、本発明による方法の工程iiにおいて、液体媒体は、水性媒体であり、より好ましくは、前記液体媒体は、水からなるか、または80%以上の水を含む。有利には、本発明による複数の部分被覆粒子の形態での固体組成物は、1~1000nmの重量平均粒子サイズ(D50)を有するフルオロポリマー粒子を含む水性ラテックス、例えば、エマルション技術によりフルオロポリマーの重合後に通常得られるものを使用して調製され得る。
【0057】
好ましくは、本発明による方法の工程iiiにおいて、液体媒体は、30℃より高い、例えば、80℃、50℃または40℃の温度で、任意選択的に減圧、すなわち、1000ミリバール未満、例えば、400ミリバール未満、100ミリバール未満、または20ミリバール未満で乾燥させることによって除去される。
【0058】
ある態様において、本発明は、複数の複合粒子の形態での上で定義されたとおりの固体組成物の溶融押出しによって得られる組成物を含む物品の調製の方法を提供する。
【0059】
有利には、上に記載されたとおりの組成物の複合粒子(例えば、ペレット)は、自由流動性であり、連続で一様な方式で、光学選別機によって選別され、および/または押出しプロセス(例えば、標準ラム、単軸または二軸押出機)で使用される装置に供給され得る。保存中に形成してしまうことがあり得る集塊を脱凝集させるための追加の操作は、本発明による方法で必要とされず、したがって、加工は、比較的容易であり、生成物汚染の可能性が低減される。
【0060】
さらに、非被覆ペレットの代わりに上に記載されたとおりの部分被覆(複合)粒子から出発して、押出しプロセスはより一様であり、そのようにして得られた物品は、優れた外観および機械的特性を有する。
【0061】
ある態様において、本発明は、上で定義されたとおりの方法によって得られ得る物品を提供する。上に記載されたとおりの部分被覆粒子の形態での組成物の押出しは、非処理ペレットから出発して押出し中に認められるものよりも均一である、押出部品のメルトフローをもたらすことが判明した。
【0062】
特に、本発明による粒子の押出しは、最終材料の特性を変性し得る、すなわち、水に対する材料の親和性を増加させ得る、通常使用される粘着防止(「ダスティング」とも呼ばれる)剤を使用する必要がなく、均一な物品を最終的にもたらす。このような剤には、ステアリン酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウムが含まれる。
【0063】
好ましくは、このようなダスティング剤は、本発明による固体組成物にまったく添加されない。
【0064】
好ましくは、上で定義されたとおりの方法によって得られる物品は、フィルムまたは管、すなわち、パイプの形態である。
【0065】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0066】
以下の実施例は、その範囲を限定する意図なしに、本発明の形態を例証するために提供される。
【0067】
実験の部
ペレット処理手順:
出発材料:
(A1):上で定義されたとおりのPFSAアイオノマーの前駆体(=SO2F形態)(EW=650、融解熱1.5J/g)のペレット、平均粒子サイズ=2000マイクロメートル:2kg。
(B1)重量で38%の固体を含有する、水中MFA(ポリテトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー)、融解熱=20J/g、のラテックス。
【0068】
手順:
MFAラテックス(B1、5.5g)の5リットルの脱塩水中分散液を、容器中で調製し、機械的に攪拌する。
PFSA前駆体ペレット(A1、2kg)をラテックス分散液にすこしずつ(20~25の等しい部分)25℃で添加し、そのようにして得られた懸濁液を同じ温度で30分間攪拌する。
ペレットをストレーナによって回収し、液相は廃棄し、ペレットを脱塩水で洗浄する。
そのようにして得られたペレットを、最初にオーブン中窒素または空気の軽い流れ下40℃で48時間乾燥させ、次いで、それを真空下50℃で約5日間乾燥させる。
乾燥の最後に、処理されたペレットを、標準的な(未処理)アイオノマーペレットと同様に、乾燥剤材料(例えば、シリカゲル)の小袋が任意選択的に入っている二重ポリエチレン袋に充填する。
【0069】
ペレット特徴付け:
オーブン乾燥後、PFSAアイオノマーの前駆体の標準ペレットは、互いに接着し、分離するために手で処理しなければならい。本発明によるペレットは、50℃で乾燥後、およびまた、80℃で乾燥後に自由流動性である。
【0070】
ペレットの含水量は、標準的な技術を使用して、乾燥後に測定し、標準(粘着防止剤なし)の場合と処理ペレットの場合の両方で、測定値は、100ppm未満の水である。水吸収の速度も測定し(23℃、50%相対湿度で)、標準ペレット(粘着防止添加剤なし)と本発明によるペレットの両方ともは、曝露数日後に200ppm未満の水レベルを維持する。
【0071】
ペレットを乾燥剤材料が入っているポリエチレン袋に充填し、袋を真空下で閉じ、周囲温度で保存した。3週後、袋を開け、標準ペレットが鋼容器中で振とうする(ペレットの一部の断片化を引き起こす)ことによって脱凝集させることができる独特の凝集体を形成する一方で、本発明による処理ペレットは、自由流動性の脱凝集挙動を維持することが認められた。
【0072】
利用可能なSEM分析(標準および処理)から、本発明によるペレットの表面は、フルオロポリマーナノ粒子によって部分的に被覆されている。
【0073】
押出し試験は、得られたフィルムの品質(表面外観、ポリマー性能)が、標準ペレットによって得られたものと等しいかまたはそれより優れている、すなわち、表面処理は、押出物品の特性に有害でないことを示した。特に、標準ペレットから出発して得られたフィルムと比較して、本発明によって得られたフィルムは、粒子の凝集および無機物質の存在ならびに粘着防止剤の揮発に起因する視覚的欠陥がない。