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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220214BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220214BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220214BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220214BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0566
H01M50/184 E
H01M50/403 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018041805
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019160451
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】三浦 研
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-297054(JP,A)
【文献】特開2004-186117(JP,A)
【文献】特開昭59-029359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00- 50/198
H01M 10/05- 10/39
H01M 6/00- 6/22
H01M 50/40- 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状の正極缶と、
前記正極缶の開口部内側にガスケットを介在し固定され、前記正極缶との間に収容空間を形成する負極缶とを備え、
前記正極缶の開口部を前記負極缶側にかしめたかしめ部を設けることで前記収容空間が密封され、前記収容空間に正極と負極と電解液とセパレータが収容された非水電解質二次電池であって、
前記正極缶の内底部側に前記ガスケットの底面と前記正極缶の内底面との間に位置するリング部を有するスペーサーが設けられ、
前記リング部は、その外周面を前記正極缶の底部側内周面に接触させ、その底面を前記正極缶の内底面に接触させ、その上面を前記ガスケットの底面のほぼ全面に接触させる厚肉円環状に形成されていることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記ガスケットが前記負極缶の側壁開口端の外周面に密着する外縁部と、前記負極缶の側壁開口端の内周面に密着する内縁部と、前記負極缶の側壁開口端に密着して前記外縁部と前記内縁部を接続する底壁部を具備してなり、前記リング部が前記底壁部に接することを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記リング部が複数の補助リングの積層体からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記リング部の内側に前記正極が配置されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、電子機器の電源部、発電装置の発電量の変動を吸収する蓄電部などに利用されている。特に、コイン型(ボタン型)などの小型の非水電解質二次電池は、従来から、時計機能のバックアップ電源や、半導体のメモリのバックアップ電源、マイクロコンピュータやICメモリ等の電子装置予備電源、ソーラ時計の電池の他、モーター駆動用の電源等、携帯型のデバイスなどに広く採用されている。
このようなコイン型の非水電解質二次電池は、例えば、有底円筒状の正極缶および負極缶に囲まれた収容空間に、正極、負極、及び電解質が収容された構造が採用され、正極缶に正極が電気的に接続されるとともに、負極缶に負極が電気的に接続されて構成される。
また、正極缶と負極缶との間にはガスケットが介在され、正極缶と負極缶との間をかしめ加工することにより封口し、非水電解質二次電池の収容空間が密封される。
【0003】
この種のコイン型非水電解質二次電池において、高容量とするためには、電池高さを大きくして正極と負極の体積を増加する必要がある。
また、リフロー実装可能なコイン型電池において電池高さを大きくした場合は、リフロー実装時の熱の影響により、電池の内部圧力が上昇し、ガスケットの変形を生じるおそれがある。
【0004】
電池の内部圧力上昇に耐える構造であり、ガスケットの変形を防止できる構造として以下の特許文献1に開示されているように、電池の正極ケースの底部側に鍔板を有するカップ状の電池内ケースを設けた構造が知られている。特許文献1に記載の構造では、電池内ケースの側面に補強リブを設けて鍔板を補強し、ガスケットの底部を鍔板で支持することによってガスケットの変形を防止し、長期間安定な封口状態を得ている。
また、以下の特許文献2には、正極ケースと正極との間に逆ハット型の正極リングを介在させ、正極リングの鍔板状の円周部によってガスケットの底部を支持した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-129253号公報
【文献】特開2007-200593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載の技術ではカップ状の電池内ケースの鍔板を用いるか、逆ハット型の正極リングの円周部によりガスケットを支持する構造であるが、いずれの構造であっても、ガスケットを支持する部分が板材からなるため、支持部分が変形し易い問題がある。例えば、かしめ加工により正極ケースの開口部をガスケット側に押圧して封口する場合、かしめ加工に伴う圧力がガスケットを介し鍔板や円周部に作用するので、これらが変形するおそれがある。
ガスケットを支持する鍔板や円周部に変形を生じるとガスケットの変形あるいは電池内ケースの変形に帰結し、耐漏液性が低下するおそれがある。
【0007】
耐漏液性を向上するためには、鍔板や円周部の肉厚を増加し、ガスケット支持部分の強度を向上させる必要がある。ところが、電池内ケースの肉厚や逆ハット型の正極リング全体の肉厚を増加すると、電池内ケース底板の肉厚や逆ハット型の正極リングの底板の肉厚も増加するので、正極缶の内部に収容可能な正極の高さあるいは電極の厚さが制限される結果、電池の高容量化に充分に対応できない問題を生じるおそれがある。加えて、正極は正極缶に電気的に接続するので、正極と電極缶体との間に電池内ケースの底板あるいは逆ハット型の正極リングの底板が介在することとなり、電池の内部抵抗が上昇するおそれもある。
【0008】
本発明は、以上説明した従来の実情に鑑みなされたものであり、リフロー実装時などの熱の影響を受けても耐久性の高い封口構造を実現でき、耐漏液性を向上させた高容量タイプの非水電解質二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
「1」上記課題を解決するため、本発明の一形態に係る非水電解質二次電池は、有底円筒状の正極缶と、前記正極缶の開口部内側にガスケットを介在し固定され、前記正極缶との間に収容空間を形成する負極缶とを備え、前記正極缶の開口部を前記負極缶側にかしめたかしめ部を設けることで前記収容空間が密封され、前記収容空間に正極と負極と電解液とセパレータが収容された非水電解質二次電池であって、前記正極缶の内底部側に前記ガスケットの底面と前記正極缶の内底面との間に位置するリング部を有するスペーサーが設けられ、前記リング部は、その外周面を前記正極缶の底部側内周面に接触させ、その底面を前記正極缶の内底面に接触させ、その上面を前記ガスケットの底面のほぼ全面に接触させる厚肉円環状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本形態のスペーサーのリング部は、ガスケットの底面と正極缶の底面との間に位置するため、正極缶の開口部周縁をかしめ加工する場合のかしめ力が作用しても、リング部が変形することなくセパレータの底部を支える。よって、かしめ加工による正極缶と負極缶とガスケットによる封口構造を変形や歪みを含まない目的通りの形状の確実な封口構造に形成できる。また、高容量化によって正極缶の高さが高くなったとしても、リング部の厚さを正極缶の高さに合わせて増加することで対応できる。
このため、本形態により、リフロー実装時などの熱の影響を受けてもかしめ部によりガスケットを介し封口した構造の耐久性が高く、耐漏液性を向上させた高容量タイプの非水電解質二次電池を提供できる効果がある。
リング部の外周面を正極缶の底部側内周面に接触させ、リング部の底面を正極缶の内底面に接触させ、リング部の上面をガスケットの底面のほぼ全面に接触させる厚肉円環状に形成した構成であるならば、リング部が正極缶の内底部側において隙間無く安定支持されるので、かしめ加工時に安定支持されているリング部がガスケット底部を安定支持する。このため、かしめ加工時に余計な変形や歪みを有していない目的の形状の封口構造を得ることができる。
【0011】
「2」前記一形態の非水電解質二次電池では、前記ガスケットが前記負極缶の側壁開口端の外周面に密着する外縁部と、前記負極缶の側壁開口端の内周面に密着する内縁部と、前記負極缶の側壁開口端に密着して前記外縁部と前記内縁部を接続する底壁部を具備してなり、前記リング部が前記底壁部に接する構成を採用できる。
「3」前記一形態の非水電解質二次電池では、前記リング部が複数の補助リングの積層体からなる構成を採用できる。
【0012】
補助リングの積層体からリングを構成することにより、ガスケットを支えることができるため、かしめ加工による正極缶と負極缶とガスケットによる封口構造を変形や歪みを含まない目的通りの確実な封口構造に形成できる。
また、高容量化によって正極缶の高さが高くなったとしても、補助リングの積層枚数を調整し、リング部の厚さを正極缶の高さに合わせて増加することで容易に対応できる。
【0013】
「4」前記一形態の非水電解質二次電池では、前記リング部の内側に前記正極が配置された構成を採用できる。
【0014】
外縁部と内縁部と底壁部を有するガスケットに対し、リング部が底壁部に接する構成であると、リング部が確実にガスケット底部を支持するとともに、外縁部と内縁部に挟まれて底壁部の上に位置する負極缶体の外周端部も含め、これらをかしめ加工時にリング部でもって確実に支え、余計な変形や歪みを有していない目的の形状の封口構造を得ることができる。
【0018】
リング部の内側に正極が配置されていると、正極側に設けた正極集電体を正極缶の内底面に容易に接続することができ、内部抵抗の不要な上昇を来すことのない非水電解質二次電池を提供できる。また、正極と正極缶との電気的接続を容易に実施できる。
【発明の効果】
【0019】
本形態によれば、ガスケットの底面と正極缶の底面との間に位置するリング部を備えたため、正極缶の開口部周縁をかしめ加工する場合のかしめ力が作用しても、リング部が変形することなくセパレータの底部を支える。よって、かしめ加工による正極缶と負極缶とガスケットによる封口構造を余計な変形や歪みを含まない目的通りの形状であり、確実な封口構造として形成できる。また、高容量化によって正極缶の高さが高くなったとしても、リング部の厚さを正極缶の高さに合わせて増加することで対応できる。
このため、本形態により、リフロー実装時などの熱の影響を受けてもかしめ部によりガスケットを介し封口した構造の耐久性が高く、耐漏液性を向上させた高容量タイプの非水電解質二次電池を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るかしめ加工前の非水電解質二次電池を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係るかしめ加工後の非水電解質二次電池を示す断面図である。
図3】第2実施形態に係るかしめ加工前の非水電解質二次電池を示す断面図である。
図4】従来の非水電解質二次電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態である非水電解質二次電池の例を挙げ、その構成について図1及び図2を参照しながら詳述する。なお、本発明で説明する非水電解質二次電池とは、具体的には、正極または負極として用いる活物質と電解液とが容器内に収容されてなる非水電解質二次電池である。また、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し表示しているため、各部材の相対的な大きさが図面に示す形態に限らないのは勿論である。
【0022】
[非水電解質二次電池の第1実施形態]
図1及び図2に示す本実施形態の非水電解質二次電池1は、いわゆるコイン(ボタン)型の電池である。この非水電解質二次電池1は、収納容器2内に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極10と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極20と、正極10と負極20との間に配置されたセパレータ30と、少なくとも支持塩及び有機溶媒を含む電解液50と、リング型のスペーサー15を備える。なお、図1は正極缶12の開口部をかしめる前の状態を示し、図2は正極缶12の開口部をかしめた後の状態を示す。
より具体的に、非水電解質二次電池1は、有底円筒状の正極缶12と、正極缶12の開口部12aにガスケット40を介在し固定され、正極缶12との間に収容空間を形成する有蓋円筒状(ハット状)の負極缶22とを有し、図1に示す正極缶12の開口部の周縁部12bを内側、即ち負極缶22側にかしめることで収容空間を密封する収納容器2を備える。
【0023】
収納容器2によって密封された収容空間には、正極缶12の内底面側に設けられる正極10と、負極缶22側に設けられる負極20とがセパレータ30を介し上下に対向配置され、さらに、電解液50が充填され、収容空間の底部を占めるようにスペーサー15が配置されている。
図1に示すように、ガスケット40は、正極缶12の内周面に沿って狭入されるとともに、セパレータ30の外周と接続され、セパレータ30が保持されている。
また、図2に示す正極10、負極20及びセパレータ30には、収納容器2内に充填された電解液50が含浸されている。
【0024】
図1図2に示す非水電解質二次電池1において、正極缶12の底面中央部上に正極10が設置され、その上にセパレータ30と2層構造の負極20が順次配置されている。
なお、図1図2では正極10を単層構造として略記しているが、正極10は正極活物質を正極集電体に積層した構造などが採用され、正極集電体が正極缶12に電気的に接続されている。
負極20は図1図2では2層構造のように略記されているが、負極活物質を負極集電体に積層した構造などが採用され、負極集電体が負極缶22に電気的に接続されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、正極集電体及び負極集電体を備えた非水電解質二次電池を例に挙げて説明しているが、これには限定されず、例えば、正極缶12が正極集電体を兼ねるとともに、負極缶22が負極集電体を兼ねた構成を採用しても構わない。また、負極20とセパレータ30との界面にリチウムフォイルなどを介装した構造を採用しても良い。
【0026】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、上記のように概略構成されることにより、正極10と負極20の一方から他方へリチウムイオンが移動することで、電荷を蓄積(充電)したり、電荷を放出(放電)することができる。
【0027】
(正極缶及び負極缶)
本実施形態において、収納容器2を構成する正極缶12は、上述したように、有底円筒状に構成され、平面視で円形の開口部12aを有する。このような正極缶12の材質としては、従来公知のものを何ら制限無く用いることができ、例えば、SUS316L、SUS329J4L、NAS64等のステンレス鋼を採用できる。
【0028】
また、負極缶22は、上述したように、有蓋円筒状(ハット状)に構成され、その外周端部22aが、開口部12aから正極缶12に若干入り込むように構成される。このような負極缶22の材質としては、正極缶12の材質と同様、従来公知のステンレス鋼を採用でき、例えば、SUS316L、SUS329J4L、SUS304-BA等を用いることができる。また、負極缶22として、例えば、ステンレス鋼に銅やニッケル等を圧接してなるクラッド材を用いることもできる。
【0029】
図2に示すように、正極缶12と負極缶22とは、ガスケット40を介在させた状態で、正極缶12の開口部12aの周縁を負極缶22側にかしめ加工してかしめ部12cを形成することで封口され、収容空間を形成した状態の非水電解質二次電池1が密封構造とされている。このため、正極缶12の最大内径は、負極缶22の最大外径よりも大きい寸法とされている。
【0030】
なお、非水電解質二次電池1において、直径dが4.0~6.0mm程度、高さh1が2.1~2.8mm程度の高容量タイプである場合、正極缶12や負極缶22に用いられる金属板材の板厚は、一般に0.1~0.3mm程度であり、例えば、正極缶12や負極缶22の全体における平均板厚で0.15mm程度とすることができる。
【0031】
(ガスケット)
ガスケット40は、図1図2に示すように、正極缶12の内周面に沿って円環状に形成され、その環状溝41の内部に負極缶22の外周端部22aが配置されている。
ガスケット40は、正極缶12の開口部内周側に隙間無く挿入される外径を有するリング状の外縁部40Aと、リング状の内縁部40Bと、これら外縁部40Aおよび内縁部40Bの下端部どうしを接続した底壁部40Cからなる。従って、ガスケット40の外周縁上面側には負極缶22の外周端部22aを挿入可能な環状溝41が形成されている。
図1は、正極缶12の開口部12aをかしめ加工する前の状態を示すが、図1の状態から開口部の周縁部12bをかしめ加工して開口部の周縁部12bを内側向きに絞ることにより、ガスケット40の外縁部40Aの上縁部を負極缶22の外周部に押し付けて収納容器2が封口されている。
【0032】
また、ガスケット40は、例えば、熱変形温度230℃以上の樹脂からなることが好ましい。ガスケット40に用いる樹脂材料の熱変形温度が230℃以上であるならば、非水電解質二次電池1を高温環境下で使用又は保管した場合や、非水電解質二次電池1の使用中における発熱が生じた場合でも、ガスケットが著しく変形して電解液50が漏出することを防止できる。
【0033】
このようなガスケット40の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの中でも、ガスケット40にポリプロピレン樹脂を用いることが、高温環境下における使用や保管時にガスケットが著しく変形するのを防止でき、非水電解質二次電池の封止性がさらに向上する観点から好ましい。
【0034】
また、ガスケット40には、上記樹脂にガラス繊維、マイカ、ウイスカー、セラミックなどの微粉末等を、30質量%以下の添加量で添加したものを好適に用いることができる。このような材質を用いることで、高温によってもガスケットが著しく変形し難くなり、電解液50が漏出するのを防止できる。
また、ガスケット40の環状溝41の内側面には、シール剤を塗布してもよい。このようなシール剤としては、アスファルト、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチルゴム系接着剤等を用いることができる。また、シール剤は、環状溝41の内部に塗布した後、乾燥させて用いることができる。
【0035】
(セパレータ)
セパレータ30は、正極10と負極20との間に介在され、大きなイオン透過度を有するとともに耐熱性に優れ、かつ、所定の機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。
セパレータ30としては、従来から非水電解質二次電池のセパレータに用いられ、上記特性を満たす材質からなるものを何ら制限無く適用でき、例えば、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、アラミド、セルロース、フッ素樹脂、セラミックス等の樹脂からなる不織布や繊維等が挙げられる。セパレータ30としては、上記の中でも、ガラス繊維からなる不織布を用いることがより好ましい。
ガラス繊維は、機械強度に優れるとともに、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量の向上を図ることが可能となる。
セパレータ30の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさや、このセパレータ30の材質等を勘案して決定され、例えば5~300μm程度とすることができる。
【0036】
(スペーサー)
図1図2に示す構造において、正極缶12の内底部側にリング状のスペーサー15が設置されている。
スペーサー15は正極缶12の内底部に隙間無く挿入可能な外径を有し、ガスケット40の底面40aのほぼ全面に接触してガスケット40を支持可能な上面15aを有する厚肉円環型のリング部15Aからなる。
スペーサー15が正極缶12の内底部に隙間無く挿入可能であることから、スペーサー15の外周面15bは正極缶12の底部内周面に接し、スペーサー15の底面15cは正極缶12の内底面に接している。スペーサー15の内径は正極10の外径より若干大きく形成され、スペーサー15の内側に正極10が配置されている。スペーサー15の外径と内径が上述した大きさであることから、スペーサー15はガスケット40の底面40aと正極缶12の内底面との間の空間を占有する大きさに形成されている。
スペーサー15の厚さ(図1図2に示すように水平に設置した状態におけるスペーサー1の上下方向の厚さ)は正極10の厚さより若干小さくされているので、スペーサー15の上面15aはセパレータ30の若干下方に位置されている。
【0037】
図1図2に示す実施形態の構造において、負極缶22の外周端部22aはセパレータ30と同等高さ位置まで延出されている。このため、ガスケット40の底面40aは正極缶12の周壁12Aの高さの半分ほどの高さに配置されている。従って、スペーサー1の厚さは正極缶12の周壁12Aの高さの半分ほどの厚さに形成されている。
【0038】
スペーサー15は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニルサルファイド(PPS)などの硬質で強度と耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックから、あるいは、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属材料からなることが好ましい。
スペーサー15をエンジニアリングプラスチックから形成した場合、スペーサー15は正極10、正極缶12、ガスケット40と良好な密着性を確保でき、収容容器2の封止性を向上できる。
スペーサー15を金属から形成した場合、スペーサー15は収容容器2の封止性を向上させると同時に封止構造の耐久性を高くすることができる。なお、スペーサー15において正極缶12の内底面コーナー部分と接する部分は正極缶12の内底面のコーナー部分のR形状に合わせた面取り加工を行って、正極缶12の内底面に対する密着性を確保することが好ましい。
スペーサー15のサイズは、一例としてφ4.75mm×t2.55mmのボタン型電池において、外周4.5mm、内周3.3mm、高さ1.1mm程度である。
なお、スペーサー15の内径を正極10の外径と略同等程度に形成しても良く、スペーサー15の内側に正極10を隙間無く埋め込む構成としてもよい。
【0039】
(電解液)
本実施形態の非水電解質二次電池1は、電解液50として、少なくとも有機溶媒及び支持塩を含むものを用いる。そして、電解液50は、有機溶媒として、リフロー耐熱性を有するような高沸点型のものが好ましい。例えば、溶媒がTEG(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)+DEE(エチレングリコールジメチルエーテル)の混合溶媒、あるいは、DEEの代わりに、EC(エチレンカーボネート)またはVC(ビニレンカーボネート)をTEGに添加した混合溶媒を用いることができる。
このような電解液は、通常、支持塩を、有機溶媒等の非水溶媒に溶解させたものからなり、電解液に求められる耐熱性や粘度等を勘案して、その特性が決定される。
【0040】
(正極)
正極10において正極活物質の種類は特に限定されず、リチウム化合物を含み、従来からこの分野で公知の正極活物質を用い、さらに、結着剤としてポリアクリル酸を、導電助剤としてグラファイト等を混合したものを用いることができる。特に、正極活物質として、リチウムマンガン酸化物(LiMn12)、チタン酸リチウム(LiTi12)、MoO、LiFePO、Nbのうちの少なくとも何れかを含有してなることが好ましく、これらの中でも、リチウムマンガン酸化物、又は、チタン酸リチウムを含有してなることがより好ましい。
本実施形態において、正極活物質として、上記の材料のうちの1種のみならず、複数を含有していても構わない。
また、正極10にはケッチェンブラック等の炭素質材料からなる正極導電助剤が含まれていても良く、ポリアクリル酸などの正極バインダが含まれていても良い。
正極集電体は炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等を用いることができるが従来公知の正極用集電体を広く適用できる。
【0041】
(負極)
負極20において負極活物質の種類は特に限定されないが、例えば、炭素、Li-Al等の合金系負極や、シリコン酸化物等、従来からこの分野で公知の負極活物質を用い、さらに、適当なバインダと、結着剤としてポリアクリル酸を、導電助剤としてグラファイト等を混合したものを用いることができる。特に、負極活物質として、SiO、SiO、Si、WO、WO及びLi-Al合金のうちの少なくとも何れかを含有してなることが好ましい。
負極集電体は正極集電体と同様の材料を用いて構成することができる。
【0042】
以上説明の如く構成される非水電解質二次電池1は、図1に示すように正極缶12をかしめ加工する前の状態において、正極缶12の底部にスペーサー15を配置し、更に正極10、セパレータ30、負極20を配置するとともに、ガスケット40、負極缶22を配置し、電解液50を充填する。この後、かしめ加工により正極缶12の開口部の周縁部12bを絞ることにより、開口部12aを形成し、収容容器2を封口することができる。
【0043】
ここで、かしめ加工を行う場合、かしめ力の印加によりガスケット40と負極缶22の外周端部22aが下向きに押圧されるが、スペーサー15の上面15aがガスケット40の底面40aを支持しているので、ガスケット40は図2に示す目的の形状に変形しながら正極缶12の開口部周縁と負極缶22の外周端部22aとの間に介在する結果、形状の整った歪みや欠陥部分の無い優れた封口構造を実現できる。
このため、本実施形態により、リフロー実装時などの熱の影響を受けてもかしめ部によりガスケット40を介し封口した構造の耐久性が高く、耐漏液性を向上させた高容量タイプの非水電解質二次電池1を提供できる効果がある。
【0044】
図4は非水電解質二次電池の従来例において、正極100を逆ハット型の電池内ケース101に収容し、電池内ケース101の開口部に鍔部102を設け、この鍔部102によってガスケット103の底部を支持した構造を示す。
図4に示す構造において、正極缶105の開口部106の内側に負極缶107の外周部108が挿入され、この外周部108の先端側を囲繞するようにガスケット103が設けられている。
この構造において、正極缶105の開口周縁部がかしめ加工によりかしめられてかしめ部110が形成され、正極缶105が封口されている。
【0045】
図4に示す構造では正極缶105の開口周縁部をかしめてかしめ部110を形成した場合、図4の鎖線に示すように鍔部102が変形するおそれがある。
この構造に対し図1図2に示す構造では、スペーサー15がガスケット40を底部側から支持するのでガスケット40による封口部分の構造に歪みや変形などの欠陥は生じない。
【0046】
[非水電解質二次電池の第2実施形態]
図3は、非水電解質二次電池の第2実施形態の構造を示すもので、この第2実施形態の非水電解質二次電池60において、先の第1実施形態の非水電解質二次電池1の構成と異なるのは、スペーサー65の構造である。
この第2実施形態においてスペーサー65は複数枚(図3では7枚)の補助リング65aの積層体であるリング部65Aからなる。補助リング65aの積層体からなるリング部65Aを有するスペーサー65は先の第1実施形態のスペーサー15と同等の外径と内径を有し、同等の厚さに形成されている。
その他の構造は先の非水電解質二次電池1と同等である。
なお、図3はかしめ加工前の状態を示しているので、正極缶12の周縁部12bをかしめることで第2実施形態の非水電解質二次電池が完成される。
【0047】
スペーサー65を構成する補助リング65aは先のスペーサー15を構成する材料と同じ材料からなる。
その他の部分の構造は先の第1実施形態の構造と同等であるため、その他の部分の構造説明は省略する。
【0048】
第2実施形態の構造においても、スペーサー65がガスケット40の底部を支持するため、かしめ加工によりかしめ部を形成しても、封口部分の構造は目的通りの構造を維持する。このため、第2実施形態の構造であっても第1実施形態の構造と同等の作用効果を得ることができる。
なお、スペーサー65は複数の補助リング65aの積層体であるため、高さ調節が容易な特徴を有する。非水電解質二次電池60が図3に示すよりも更に高い構造となった場合であっても、高さに合わせて必要枚数の補助リング65aを用意し、これらを積層すればよい。非水電解質二次電池60が図3に示すよりも低い構造となった場合、積層枚数を少なくすれば対応できる。
【0049】
また、スペーサー65を構成する補助リング65aは全て同じ厚さである必要はない。例えば、一部の補助リング65aを薄く形成しておき、薄い補助リング65aを高さの微調整用として使用することができる。
薄い補助リング65aを用いてスペーサー65の全体厚を微調整することで、ガスケット40の底面40aと正極缶12の内底面との距離が設計通りになっていない場合であっても、ガスケット40の底面40aと正極缶12の内底面との間に隙間無くスペーサー65を配置することができる。
スペーサー65を正極缶12の内底面側に隙間無く配置することで、正極缶の開口部をかしめ加工した場合、ガスケット40周りの構造に無用な歪みや負荷をかけることなく目的の形状を維持した封口構造を実現できる。
【0050】
ところで、図1図3に示す実施形態では、スペーサー15、65を単純なリング形状に描いたが、スペーサー15、65は単純なリング形状に限らず、それらの外周部や内周部に補強リブや突起などを設けた形状としても良い。
例えば、図2に示す構造では、正極10の外周面とスペーサー15の内周面との間に隙間があるので、スペーサー15の内周面に補強リブや突起などを形成しても良い。また、スペーサー15の外周面15bが全て正極缶12の内周面に接する必要は無く、スペーサー15の外周面に沿って凹凸や補強リブなどを設けても良い。この場合、ガスケット40の底面40aの全面をスペーサー15の上面が支持する訳ではなくなるが、かしめ加工による圧力によってガスケット40が不要な変形を来さない程度、スペーサー15がガスケット40の底面40aを支持していればよい。このため、図2に示すスペーサー15のリング部15Aはかしめ加工の圧力で変形しない程度の充分な強度を有するならば、凹凸や補強リブを有していても良く、リング部15Aの周壁自体が中空構造であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1…非水電解質二次電池、2…収容容器、10…正極、12…正極缶、12A…周壁、12a…開口部、12b…周縁部、15…スペーサー、15A…リング部、15a…上面、15b…外周面、15c…底面、20…負極、22…負極缶、22a…外周端部、30…セパレータ、40…ガスケット、40A…外縁部、40a…底面、40B…内縁部、40C…底壁部、41…環状溝、50…電解液、60…非水電解質二次電池、65…スペーサー、65a…補助リング。
図1
図2
図3
図4