(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20220214BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2018049494
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】真瀬 史理
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊介
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226387(JP,A)
【文献】特開2011-098610(JP,A)
【文献】特開2014-034331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って延設されるロアレールと、
前記ロアレールの長手方向に沿って相対移動するアッパレールと、
前記アッパレールに揺動支点を中心として前後方向に揺動自在に取り付けられ、前記ロアレールに形成されたロック溝に係合してロック方向に付勢されたロック歯を備えたロック部材と、
を有し、
前記ロック溝は、前記ロアレールの左右両側においてそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられ、
前記ロック歯は、前記ロック部材の左右両側においてそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられ、
前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯のいずれか一方と、当該いずれか一方のロック歯が係合する前記ロック溝との間には、車両前後方向の隙間が無く、
前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯のいずれか他方と、当該いずれか他方のロック歯が係合する前記ロック溝との間には、前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯を除く他のロック歯と、当該他のロック歯が係合する前記ロック溝との間に形成した隙間よりも狭い隙間が車両前後方向に形成されて
おり、
車両前後方向に沿って形成される前記複数のロック溝は、車両前後方向の間隔が設計上互いに等しく、
前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯の前記いずれか一方の車両前後方向の幅が、他のロック歯の車両前後方向の幅に比較して最も大きく、
前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯の前記いずれか他方の車両前後方向の幅が、前記いずれか一方のロック歯の車両前後方向の幅の次に大きく形成されていることを特徴とす
るシートスライド装置。
【請求項2】
前記ロック部材は板ばねで構成され、当該板ばねに前記複数のロック歯が一体的に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートスライド装置は、車体に固定したロアレールに対し、シートに固定したアッパレールをスライド移動自在に設け、アッパレールに取り付けたロック部材のロック部(ロック歯)を、ロアレールのロック溝に係合させてロック状態となる。
【0003】
特許文献1のロック部材は、車両前後方向に沿って複数設けられたロック部のうち最前部のロック部を、ロック溝との係合時に隙間の無い嵌合となるように設定し、他のロック部とロック溝との係合は、遊嵌となるように設定している。これにより、アッパレールのロアレールに対する車両前後方向のガタ付きを防止するとともに、ロック部がロック溝に入り込む位置を安定化させ、ロック強度の安定化を図るようにしている。一方、特許文献2には、ロック部を左右両側にそれぞれ形成したロック部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-329594号公報
【文献】特開2011-98610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のように、最前部のロック部を、ロック溝との係合時に隙間の無い嵌合となるように設定するにあたり、特許文献2に開示されている左右両側のロック部を、それぞれ隙間の無い嵌合とした場合には、ロック部のロック溝への進入性が低下する。このため、隙間の無い嵌合は、左右両側のロック部のうち一方のみに設定することが望ましい。
【0006】
しかし、隙間の無い嵌合が左右いずれか一方のみの場合には、車両前後方向に衝撃を受けたときに、ロック部材が、隙間の無い嵌合部を支持点として車両前後方向を軸線とした捩じれ変形が発生し、最前部のロック部から離れた部分の上記隙間の無い嵌合部とは左右が逆の位置のロック部がロック溝に接触することが考えられる。このような現象は、ロック部やロック溝に製造時の寸法ばらつきがあるために、隙間の無い嵌合部以外の他の複数の嵌合部が同時に接触せずに、上記した左右が逆の位置にある複数のロック部のいずれか一つに起こり得る。ここで例えば右側の最前部のロック部及び左側の最後部のロック部が接触した際には、この二つのロック部を支持点として、ロック部材が回転するように上下方向に変形して傾きが生じることで、ロアレールから外れる方向に移動する力を受ける場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、前後方向に衝撃荷重を受けたときに、ロック部材の変形量を抑制してロック強度の安定と向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両前後方向に沿って延設されるロアレールと、前記ロアレールの長手方向に沿って相対移動するアッパレールと、前記アッパレールに揺動支点を中心として前後方向に揺動自在に取り付けられ、前記ロアレールに形成されたロック溝に係合してロック方向に付勢されたロック歯を備えたロック部材と、を有する。前記ロック溝は、前記ロアレールの左右両側においてそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられ、前記ロック歯は、前記ロック部材の左右両側においてそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられている。前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯のいずれか一方と、当該いずれか一方のロック歯が係合する前記ロック溝との間には、車両前後方向の隙間が無く、前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯のいずれか他方と、当該いずれか他方のロック歯が係合する前記ロック溝との間には、前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯を除く他のロック歯と、当該他のロック歯が係合する前記ロック溝との間に形成した隙間よりも狭い隙間が車両前後方向に形成されている。車両前後方向に沿って形成される前記複数のロック溝は、車両前後方向の間隔が設計上互いに等しい。前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯の前記いずれか一方の車両前後方向の幅が、他のロック歯の車両前後方向の幅に比較して最も大きい。前記複数のロック歯のうち前記揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯の前記いずれか他方の車両前後方向の幅が、前記いずれか一方のロック歯の車両前後方向の幅の次に大きく形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前後方向に衝撃荷重を受けたときに、揺動支点に最も近い側の左右一対のロック歯が、揺動支点から遠い側の他のロック歯よりも先にロック溝に接触した状態となる。この場合、揺動支点に最も近い側の左右のロック歯がロック溝と係合することで、ロック部材のその他のロック歯が上下方向に変形するような力の発生を防止できるため、ロック部材の変形量を抑制してロック強度の安定と向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係わるシートスライド装置のアッパレールに、ロック部材、解除レバー及び操作ハンドルを組み付けた状態をロアレールとともに示す斜視図である。
【
図3】
図2のロアレールを省略したA-A断面図である。
【
図4】アッパレールとロアレールとの間に配置される下方ガイドボール及び上方ガイドボールを含む断面図である。
【
図5】
図4の下方ガイドボール及び上方ガイドボールを含むボールリテーナ及び、ロアレールの斜視図である。
【
図15】解除レバーにロック部材を組み付けた状態を操作ハンドルも含めて示す斜視図である。
【
図16A】操作ハンドルの一部を示す平面図である。
【
図16B】操作ハンドルの一部を示す側面図である。
【
図19】ロック部材のロック歯が、ロアレールのロック溝に係合した状態を示す平面図である。
【
図20】
図19の係合状態を、アッパレールの右側のアッパ側壁の内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0012】
図1~
図4に示す本発明の実施形態に係わるシートスライド装置101は車両用シートの前後方向への調節を手動で行う手動式である。シートスライド装置101は、車両の床面上に設置され、車両前後方向に沿って延設されるロアレール103と、シート座部(図示せず)の裏面に設置され、ロアレール103の長手方向に沿って、ロアレール103内を相対移動自在に組付けられるアッパレール105とを備えている。ロアレール103とアッパレール105とでレール体106を構成しており、レール体106は左右一対設けられている。
図2、
図3では、ロアレール103を省略している。なお、以下の説明で、「前」は
図2、
図3中で左側の車両前方FR側で、「後」は
図2、
図3中で右側の車両後方RR側であり、「左右」は車両後方から車両前方を見たときの左右方向である。
【0013】
ロアレール103は、
図4に示すように、車両前後方向に延びる長方形の板形状を具備するロア底壁103aを備えている。ロア底壁103aの車幅方向の両端縁から、左右一対のロア外側壁103bが、ロア底壁103aから上方に向けてやや外側に傾斜するように立ち上がっている。左右一対の両ロア外側壁103bの下端とロア底壁103aとの間にはロア斜壁103cが形成されている。左右一対の両ロア外側壁103bの上端縁から、互いに近づく方向にロア底壁103aと平行に延在する左右一対のロア上壁103dが設けられている。
【0014】
左右一対のロア上壁103dの内端縁からロア底壁103aに向かって下方に垂下する、左右一対のロア内側壁103eが設けられている。なお、互いに平行な状態で対向するロア内側壁103e間の間隔は、ロアレール103内に収容されるアッパレール105が移動可能なように設定されている。
【0015】
アッパレール105は、車体前後方向に延びる長方形の板形状を具備するアッパ天壁105aを備えている。アッパ天壁105aの車幅方向の両端縁から、左右一対のアッパ側壁105bが下方に向けて垂下している。両アッパ側壁105bの下端縁から、アッパ下方斜壁105cがそれぞれの外側斜め上方に向けて立ち上がっている。左右一対の両アッパ下方斜壁105cの上端縁から、屈曲部105dを介してアッパ上方斜壁105eがロア上壁103dに向かって斜め上方に向けて立ち上がっている。
【0016】
ロアレール103のロア底壁103aとロア斜壁103cとの間の下方円弧部103fと、アッパレール105のアッパ下方斜壁105cとの間に、下方ガイドボール107を転動自在に配置している。ロアレール103のロア外側壁103bとロア上壁103dとの間の上方円弧部103gと、アッパレール105のアッパ上方斜壁105eとの間に上方ガイドボール109を転動自在に配置している。
【0017】
下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109は、
図5に示すように、
図4では省略しているボールリテーナ111に回転自在に支持されている。ボールリテーナ111は、下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を2個ずつ、計4個を支持している。これら下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を支持した状態のボールリテーナ111は、ロア外側壁103b、ロア斜壁103c、ロア上壁103d及びロア内側壁103eに囲まれた収容部113(
図4)内に、前後2カ所配置され、左右一対のレール体106に対して計4カ所配置される。
【0018】
図2に示すように、アッパレール105の前方側におけるアッパ天壁105aには、リベットなどの固定具115によってロック部材117を固定している。ロック部材117は、板状のばね部材で構成している。ロック部材117は、固定具115によって固定される固定部119に、固定具115が挿入される固定孔119aを備えている。ここで、アッパレール105のアッパ天壁105aには、アッパ固定孔105fの周辺部分が、他のアッパ天壁105aの部分に対して下方に窪んで形成されている。これにより、固定具115の頭部がアッパレール105のアッパ天壁105aの他の上面よりも突出しないように設定される。
【0019】
図8A、
図8Bは取付け前の固定具115を示している。固定具115は、
図2のB部の拡大図である
図9にも示すように、固定孔119a及びアッパ固定孔105fに下方から挿入される挿入軸部115aと、挿入軸部115aの下部に形成されて挿入軸部115aよりも直径が大きい大径部115bと、大径部115bの挿入軸部115aと反対側の下部に形成されるフランジ部115cとを備えている。フランジ部115cは、側方に向けて突出する突部を構成している。
【0020】
フランジ部115cは、
図9及び
図9のE-E断面図である
図10に示すように、後述する
図11に示す解除レバー131の左右の側壁147に設けてある係止突部147eの下方に位置している。係止突部147eは、
図11に示すように、前後方向の中央位置よりもやや前方に位置し、解除レバー131の一部である側壁147から内側に向けて切起こして形成されたものである。
【0021】
係止突部147eは、
図10に示すように、上部が側壁147につながっていて、下部が側壁147に対して切断され、切断された下端面147e1がフランジ部115cの上面115c1に対向している。下端面147e1と上面115c1との間には隙間Tが形成されている。隙間Tを備えることで、解除レバー131の固定具115を設けた部分の揺動支点部151を支点とする前後方向の揺動を可能にしている。
【0022】
図7に示すロック部材117の固定部119は、
図2に示すアッパ天壁105aとほぼ平行に前後方向に延在し、固定部119の後端から後方斜め下方に傾斜する後方傾斜部121が形成される。後方傾斜部121の後端から固定部119とほぼ平行に後方に向けて延在する後方弾性変形部123が形成されている。後方弾性変形部123の後端部125は、
図3にも示すように、後方弾性変形部123よりも左右方向(
図3中で上下方向)の幅が広く、平面視で矩形となっている。後方弾性変形部123は後方付勢部を構成している。
【0023】
後端部125には、左右両側縁部付近に前後方向に沿って二つずつの矩形の孔125aが形成されている。ここで、後端部125における各孔125aの前後方向に隣接する部分は、左右両側方に突出するロック部としてのロック歯125bを構成する。ロック歯125bは、左右両側にそれぞれ三箇所形成される。左右両側のそれぞれ三箇所のロック歯125bは、先端側が、前後方向に延びる接続部125cで接続された構成となる。
【0024】
図6に示すように、アッパレール105の前後方向のほぼ中央付近において、左右両アッパ側壁105bから両アッパ下方斜壁105cにわたり、ロック歯受入凹部129を、前後方向に沿って左右それぞれ三箇所形成している。
図2に示すように、三箇所のロック歯受入凹部129にロック部材117の三つのロック歯125bが下方から入り込んでいる。ロック歯受入凹部129の前後方向の幅は、後述するロアレール103のロック溝127の前後方向の幅よりも大きい。
【0025】
このとき、ロック歯受入凹部129相互間の突起126が、ロック部材117の孔125aに挿入される。その際、後端部125の接続部125c付近が、アッパレール105に干渉するのを避けるために、ロック歯受入凹部129の下部に連続する開口部128や、アッパ上方斜壁105eに形成した切欠開口130を、アッパレール105の左右両側に設けてある。
【0026】
一方、
図5に示すように、ロアレール103の左右のロア内側壁103eの前部付近及び後部付近を除く位置には、被ロック部としてのロック溝127を前後方向に沿って複数設けている。ロック溝127にロック部材117のロック歯125bが、ロック歯受入凹部129に位置している状態で下方から入り込むことで、ロック部材117がロアレール103に対してロックした状態となる。これにより、ロック部材117を取り付けてあるアッパレール105は、ロアレール103に対して前後方向の移動が規制される。
【0027】
ロック部材117は、アッパレール105に取り付けた状態で、後方弾性変形部123が上方に弾性力を付与することで、ロック歯125bがロック溝127に入り込んだ状態が維持される。この状態から、
図1、
図2に示す操作ハンドル133を上方に向けて操作することで、解除レバー131を介してロック部材117の後端部125が下方に押され、ロックが解除される。操作ハンドル133は、アッパレール105内に前部から挿入されて解除レバー131と連動可能に配置される。
【0028】
図19は、ロック部材117のロック歯125bが、ロアレール103のロック溝127にそれぞれ係合した状態を示す平面図である。
図20は、
図19の係合状態を、アッパレール105の右側のアッパ側壁105bの内側から見た側面図であり、ロアレール103のロア底壁103aを省略している。なお、
図19、
図20では、右側(
図19中で上側)の三つのロック歯125bを、前側(
図19中で左側)から順にロック歯125b1,125b2,125b3とし、左側(
図19中で下側)の三つのロック歯125bを、前側(
図19中で左側)から順にロック歯125b4,125b5,125b6としている。
【0029】
ここで、ロック溝127は、前後方向(
図19中で左右方向、以下同)の幅が、設計上同等である。これに対してロック歯125bは、前後方向の幅に関し、右側最前部のロック歯125b1及び左側最前部のロック歯125b4が、他の四つのロック歯125b2,125b3,125b5,125b6よりも大きい。さらに、ロック歯125b1の幅L1は、ロック歯125b4の幅L2よりも大きい(L1>L2)。つまり、ロック歯125b1の幅L1が最も大きく、ロック歯125b4の幅L2がロック歯125b1の次に大きい。他の四つのロック歯125b2,125b3,125b5,125b6の前後方向の幅Lは、幅L2より小さく互いに同等である(L1>L2>L)。
【0030】
上記構成とすることで、ロック歯125b1は、前後両端が、ロック溝127の前後両端縁にそれぞれ接触し、ロック溝127に対して前後方向の隙間が無い状態である。ロック歯125b4は、ロック溝127に対し前後方向に僅かな隙間を形成している。他の四つのロック歯125b2,125b3,125b5,125b6は、ロック溝127に対して形成される前後方向の隙間が、ロック歯125b4とロック溝127との間に形成される前後方向の隙間よりも大きい。
【0031】
ロック部材117は、
図3、
図7に示すように、固定部119の固定孔119aに対応する位置の左右両側部から、それぞれ側方に向けて突出する被支持部としての突出部119bを備えている。突出部119bは、固定部119を含むロック部材117の板厚と同じ厚さで側方に突出していて、平面視で矩形状である。
図2、
図7に示すように、ロック部材117は、固定部119を境にして後方傾斜部121と反対側の前方に前方傾斜部135が形成されている。前方傾斜部135は、前方ほど下方となるよう傾斜している。
【0032】
前方傾斜部135の前端(下端)から前方に向けて固定部119とほぼ平行に延在する前方弾性変形部141が形成されている。弾性変形部141は前方付勢部を構成している。
【0033】
前方弾性変形部141の前端には、上方に向けて屈曲する嵌合突起としての前端爪部145が形成されている。前端爪部145は、
図2、
図15に示すように、操作ハンドル133の下面に形成してある嵌合凹部133aに下方から嵌合している。前方弾性変形部141は、前端爪部145を介して嵌合凹部133aを上方に向けて押圧している。前方弾性変形部141の嵌合凹部133aに対する押圧力は、後方弾性変形部123のロック歯125bによるロック溝127への押圧力よりも弱く設定している。
【0034】
ロック部材117は、
図2に示すように、アッパレール105に取り付けた状態で、前方弾性変形部141の前後方向のほぼ中央から前方側が、アッパレール105から前方に突出している。
【0035】
図11~
図14に示すように、解除レバー131は、左右の側壁147と、左右の側壁147の後方側の端部付近の領域において、左右の側壁147の上端相互をつなぐ上壁149とを備えている。ロック部材117は、前部付近及び後部付近を除く部位が、解除レバー131の左右の側壁147相互間に配置される。すなわち、解除レバー131は、ロック部材117とアッパレール105の長手方向及び上下方向で重なる位置に設けられている。
【0036】
解除レバー131の前後方向の中間位置より前方側の側壁147の上側端部には、支持部としての凹所147aを形成している。凹所147aは、係止突部147eの上方に位置しており、上方が開放した円弧形状の凹曲面状となっている。凹所147aは、
図15に示すように、ロック部材117の左右の突出部119bの下側に配置されて、突出部119bの下部が凹所147aに係合される。ロック部材117の突出部119b及び解除レバー131の凹所147aは、解除レバー131と操作ハンドル133とが一体的に上下に揺動する際の揺動支点部151を構成する。揺動支点部151は、ロック部材117によるアッパレール105に対する固定部位と前後方向で一致している。
【0037】
解除レバー131は、上壁149から後方に延びる解除押圧部153を備えている。解除押圧部153の先端側の下部には、下方に湾曲するようにして突出する湾曲凸部153aが形成されている。湾曲凸部153aは、ロック部材117における後方弾性変形部123の後端部125の上面に当接している。上壁149には、上方に向けて切起こしにより形成した突起149aを形成している。突起149aは、解除レバー131及び操作ハンドル133が揺動支点部151を支点として
図2中で反時計回り方向に揺動回転するときにアッパレール105のアッパ天壁105aに当接するストッパの役目を果たす。
【0038】
解除レバー131の前端部の上端相互は、前部上壁157によりつながっている。左右両側壁147の前端下部には切欠部147fが形成され、左右両切欠部147fの上部には、両側壁147から互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する前方上側ガイド突起147gが形成されている。左右の前方上側ガイド突起147gの先端相互は互いに離間していて相互間には隙間が形成されている。
【0039】
切欠部147fの後方の下部には後部切欠部147hが形成され、左右両後部切欠部147hの上部には、両側壁147から互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する前方下側ガイド突起147iが形成されている。前方上側ガイド突起147gと前方下側ガイド突起147iとの間には、上下方向に間隙S1(
図13、
図14)が形成されている。
【0040】
前方上側ガイド突起147gの後方の両側壁147の上部には、互いに対向する側に向けて突出する後方上側ガイド突起147jが形成されている。後方上側ガイド突起147jは、側壁147の上端を長手方向に沿ってブリッジ状に突出させたものであり、前後方向に長く形成されている。前方下側ガイド突起147iの後方の両側壁147の下部には、互いに対向する側に向けて突出する後方下側ガイド突起147kが形成されている。後方下側ガイド突起147kは、側壁147の下端を長手方向に沿ってブリッジ状に突出させたものであり、後方上側ガイド突起147jの後方側の下方に位置している。
【0041】
図13に示すように、後方下側ガイド突起147kは、後方上側ガイド突起147jに対向する上端縁に、前部よりも後部が上方位置となるよう傾斜する傾斜ガイド面147k1が形成されている。傾斜ガイド面147k1の後端に続く上端面147k2と、後方上側ガイド突起147jとの間には、上下方向に間隙S2が形成されている。
【0042】
後方下側ガイド突起147kの上端面147k2は、上下方向で前方上側ガイド突起147gと前方下側ガイド突起147iとの間に位置し、傾斜ガイド面147k1の前端に続く前部上端面147k3は、下側ガイド突起147iの上端面よりも下方に位置している。後方上側ガイド突起147jの下端面は、前方上側ガイド突起147gの下端面よりも上方に位置している。したがって、間隙S2は間隙S1よりも全体として上方に位置している。
【0043】
間隙S1は間隙S2よりも大きい(S1>S2)。間隙S1及び間隙S2に、解除レバー131の後述するフランジ169b3(
図16A~
図18)が挿入される。解除レバー131の左右の側面169b2相互間に対応する部分は、
図14に示す左右の前方上側ガイド突起147g相互間及び、左右の後方上側ガイド突起147j相互間に挿入される。
【0044】
前方上側ガイド突起147gは、操作ハンドル133が上方のロック解除方向に向けて回動操作されるときの力が、フランジ169b3を介して下方から上方に向けて付与される。このとき、操作ハンドル133の後端側は、後方下側ガイド突起147kの上端面147k2に対し、フランジ169b3を介して上方から下方へ向けて押し付ける。したがって、解除レバー131の前方上側ガイド突起147g及び後方下側ガイド突起147kが設けられた前端部周辺は、操作ハンドル133が操作されるときの力が付与される作動部159となる。すなわち、作動部159には、前方の上側、下側各ガイド突起147g,147i及び、後方の上側、下側各ガイド突起147j,147kがそれぞれ設けられている。作動部159は、揺動支点部151を境にして後方の解除押圧部153と反対の前方に位置している。
【0045】
図16A、
図16Bに示すように、操作ハンドル133は、
図1に示す左右一対のレール体106に対応して設けられる左右一対のアーム部167と、一対のアーム部167同士をつないで車幅方向に延在する把持部168とを備えて、全体としてほぼU字状を有している。なお、
図16A、
図16Bでは、左側のアーム部167周辺を示し、右側は省略している。一対のアーム部167は、前後方向に延在し、左右それぞれのアッパレール105内に前端から挿入される。把持部168は、操作ハンドル133を乗員が操作するときに把持する。
【0046】
アーム部167は、
図2及び
図15に示すように、後端部分が、解除レバー131の左右の側壁147相互間に挿入されている。アーム部167は、把持部168を含めた全体が円筒部材で構成しており、前述した嵌合凹部133aを備える部分より後方側が、円筒部分を上下から押し潰した形状の連結部169となっている。
【0047】
図16A~
図18に示すように、連結部169は断面ほぼハット形状となっている。すなわち、連結部169は、上面169b1と、上面169b1の左右の両端部から下方に延びる側面169b2と、左右の側面169b2の下端から左右両側に向けて上面169b1とほぼ平行に延びるフランジ169b3とを備えている。ハット形状の下部は、開口していて、
図18に示すように、ロック部材117の前方弾性変形部141の上方に位置する凹部170となっている。
【0048】
フランジ169b3は、前述したように、間隙S1及び間隙S2に挿入配置された状態となっている。この状態で、操作ハンドル133を上方に向けて操作したときの力が、フランジ169b3を介して前方上側ガイド突起147gの下面に下方から付与される。また、前述したように、操作ハンドル133は、フランジ169b3より上に位置する側面169b2を備える部分が、左右の前方上側ガイド突起147g相互間及び、左右の後方上側ガイド突起147j相互間に入り込んでいる。このため、ハット形状の左右の側面169b2相互の間隔は、左右の前方上側ガイド突起147g相互間の間隔及び、左右の後方上側ガイド突起147j相互間の間隔よりも狭くなっている。
【0049】
連結部169は、
図17,
図18に示すように、上面169b1の左右方向の幅に関し、ロック部材117の前端爪部145が入り込む前端部側(
図16BのF-F断面に対応する
図17に示す部分)が広く、当該前端部側より後方側(
図16BのG-G断面に対応する
図18に示す部分)が狭くなっている。このため、嵌合凹部133aに嵌合した状態の前端爪部145は、操作ハンドル133に対し前後方向の移動が規制される。
【0050】
図11~
図13に示すように、解除レバー131の左右の側壁147には、連結部169の後端の後方に対向する位置に、左右一対の凸部147cを設けてある。凸部147cは、解除レバー131の側壁147から内側に向けて切起こしにより突出しており、嵌合凹部133aに前端爪部145が嵌合した操作ハンドル133の組付け状態で、連結部169の後端面に対して離間している。
【0051】
解除レバー131の前端におけるフランジ169b3の下方には、
図15に示すように前方下側ガイド突起147iが位置している。この状態で、操作ハンドル133の把持部168が下方に押されたときに、操作ハンドル133が、前方弾性変形部141を弾性変形させながら、前方下側ガイド突起147iを支点として
図2中で反時計回り方向に揺動する。このとき、前方下側ガイド突起147iより後方側の連結部169が上方に変位し、フランジ169b3が後方上側ガイド突起147jに下方から当接する。これにより、操作ハンドル133の把持部168の必要以上の下方への移動を規制する。ここで、解除レバー131は、係止突部147eが固定具115のフランジ部115cに当接して凹所147aがロック部材117の突出部119bから外れるのを規制するとともに、後部側の上壁149に設けてある突起149aが、アッパレール105のアッパ天壁105aに下方から当接して揺動を規制する。
【0052】
次に、上記のように構成されたシートスライド装置101の動作を説明する。
【0053】
図1~
図3は、ロック部材117のロック歯125bがロアレール103のロック溝127に係合してロックされたロック保持状態である。この状態から、乗員が操作ハンドル133を上方に向けて操作すると、操作ハンドル133は、フランジ169b3の後方側が後方下側ガイド突起147kの上端面147k2を下方に向けて押し付ける一方、フランジ169b3の前方側が前方上側ガイド突起147gの下端面を上方に向けて押し付ける。このとき、操作ハンドル133の上方に向けての操作力が、解除レバー131に作動部159を介して伝達される。
【0054】
これにより操作ハンドル133は、解除レバー131とともに、揺動支点部151を中心として
図2中で時計回り方向に一体的に揺動回転する。このとき、解除レバー131は、揺動回転によって後方の解除押圧部153の湾曲凸部153aが、ロック部材117のロック部周辺に相当する後端部125を下方に押し下げ、後方弾性変形部123が下方に向けて弾性変形する。その結果、ロック歯125bがロアレール103のロック溝127から外れてロックが解除される。ロックが解除されることで、図示しないシートをアッパレール105とともに、ロアレール103側の車両の床面に対して前後に移動させることができ、乗員の希望とするシート位置を確保できる。
【0055】
シート位置を決定した状態で、乗員が操作ハンドル133から手を離すと、ロック部材117の後方弾性変形部123が解除押圧部153を上方に押し付け、解除レバー131を揺動回転させて
図2のロック保持状態に戻る。このとき、解除レバー131は、操作ハンドル133とともに、揺動支点部151を中心として
図2中で反時計回り方向に揺動回転する。
【0056】
図2の状態で、例えば車両が後方から衝突され、乗員の踵が操作ハンドル133に後方に向けて衝突した場合を想定する。この場合、操作ハンドル133が受ける荷重で、前端爪部145が嵌合凹部133aから外れ、操作ハンドル133が後方に移動する。操作ハンドル133の後方への移動によって、フランジ169b3が、
図2、
図3に示す解除レバー131の凸部147cに当接し、操作ハンドル133の解除レバー131に対する後方への移動を規制する。解除レバー131は、凸部147cが操作ハンドル133から後方に向けて荷重を受けることで、揺動支点部151における凹所147aがロック部材117の突出部119bから外れ、操作ハンドル133とともに後方に移動する。
【0057】
これにより、乗員の踵が操作ハンドル133に衝突したときの衝撃が緩和される。
【0058】
図15に示すように、ロック部材117と解除レバー131とは、これらをアッパレール105に組み付ける前に、互いに組み付けることができる。解除レバー131は、下部が長手方向全長にわたり開口しているので、下部の開口側から、ロック部材117を傾けた状態で左右の側壁147相互間に挿入する。突出部119bを備える固定部119が側壁147より上方位置となるまで挿入した状態で、ロック部材117を水平に戻し、その後下方に移動させることで、ロック部材117の突出部119bを解除レバー131の凹所147aに入り込ませる。
【0059】
このとき、ロック部材117の後端部125の上に解除押圧部153の湾曲凸部153aが当接し、前方弾性変形部141の前後方向中央位置付近から前方部分が、解除レバー131の前端から前方に突出する。このようにして組み付けたロック部材117及び解除レバー131を、
図1~
図3に示すように、アッパレール105の左右のアッパ側壁105b相互間に入り込ませ、固定具115によってロック部材117の固定部119をアッパレール105のアッパ天壁105aに固定する。このように、ロック部材117と解除レバー131とは、あらかじめ互いに組み付けた状態で、アッパレール105に組み付けることができるので、組み付け作業性が向上する。
【0060】
操作ハンドル133は、ロック部材117及び解除レバー131をアッパレール105に組み付けた状態で、ロック部材117の前方弾性変形部141を下方に撓ませつつ、連結部169を解除レバー131の前端開口から挿入する。操作ハンドル133は、凹部170を前方弾性変形部141に沿って移動させるように差し込む。ここで、ロック部材117の前端爪部145の左右の幅は、凹部170の左右の幅よりも大きい。
【0061】
このため、前端爪部145は、凹部170に係合することなく、凹部170の下をすべり移動する。そして、連結部169のフランジ169b3が
図13、
図14に示す間隙S1,S2に挿入されるとともに、ロック部材117の前端爪部145が嵌合凹部133aに対応する位置まで挿入される。その結果、前端爪部145が嵌合凹部133aに係合して組み付けが完了する。このように、操作ハンドル133は、ロック部材117の前方弾性変形部141を下方に撓ませた状態で解除レバー131内に挿入するだけでよく、操作ハンドル133の組み付け作業性も向上する。
【0062】
フランジ169b3を間隙S1,S2に挿入する際には、挿入方向先端(後方端部)が
図13に示す傾斜ガイド面147k1に当接してガイドされることで、後方側の間隙S2への挿入が容易となる。このとき、後方下側ガイド突起147kの前部上端面147k3が、前方下側ガイド突起147iの上端面よりも下方に位置していることで、フランジ169b3の挿入方向先端(後方端部)は、後方下側ガイド突起147kの前端に干渉するのが抑制されて傾斜ガイド面147k1により確実に当接する。
【0063】
間隙S2が間隙S1よりも全体として上方に位置していることで、操作ハンドル133の連結部169は、前方弾性変形部141により上方へ付勢された状態で、解除レバー131の軸線方向に対してほぼ平行となる。このとき、フランジ169b3の上面が、前方上側ガイド突起147gの下面に当接して、前方下側ガイド突起147iとの間に隙間を形成する。一方、フランジ169b3の後端側の下面は、後方下側ガイド突起147kの上端面147k2に当接して、後方上側ガイド突起147jとの間に隙間を形成する。
【0064】
解除レバー131は、左右の側壁147が、アッパレール105の左右のアッパ側壁105bに沿って配置され、解除押圧部153と凹所147a(揺動支点部151)と作動部159における前方上側ガイド突起147gとが、前後方向に沿ってほぼ一直線上に配置される。このため、解除レバー131の上下方向の高さを小さくでき、アッパレール105内の狭いスペースに効率よく配置することができ、装置全体の小型化を達成できる。
【0065】
本実施形態は、車両前後方向に沿って延設されるロアレール103と、ロアレール103の長手方向に沿って相対移動するアッパレール105と、アッパレール105に揺動支点部151を中心として前後方向に揺動自在に取り付けられ、ロアレール103に形成されたロック溝127に係合してロック方向に付勢されたロック歯125bを備えたロック部材117と、を有する。ロック溝127は、ロアレール103の左右両側においてそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられ、ロック歯125bは、ロック部材117の左右両側においてそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられている。
【0066】
複数のロック歯125bのうち揺動支点部151に最も近い側の右側のロック歯125b1と、当該ロック歯125b1が係合するロック溝127との間には、車両前後方向の隙間が無く、前記複数のロック歯125bのうち揺動支点部151に最も近い側の左側のロック歯125b4と、当該ロック歯125b4が係合するロック溝127との間には、前記揺動支点151に最も近い側の左右一対のロック歯125b1,125b4を除く他のロック歯125b2,125b3,125b5,125b6と、当該他のロック歯が係合するロック溝127との間に形成した隙間よりも狭い隙間が車両前後方向に形成されている。すなわち、ロック歯125b4とロック溝127との間の車両前後方向の隙間は、ロック歯125b2,125b3,125b5,125b6とロック溝127との間の車両前後方向の隙間よりも狭い。
【0067】
なお、ロック溝127は、
図20に示すように、前後方向の間隔が上部に比べて下部が広くなっており、ロック歯125b1とロック溝127とが接触する位置は、ロック溝127の上下方向の中間位置付近である。この中間位置付近で、他のロック歯125b2~125b6とロック溝127との間に前後方向の隙間が形成される。
【0068】
この場合、通常時は、右側最前部のロック歯125b1のみが、ロック溝127に対し、前後両端が接触していて隙間を形成していない。これに対して、他の五つのロック歯125b2~125b6は、ロック溝127に対し、前後両端が接触しておらず、隙間を形成している。このため、ロック歯125bのロック溝127への進入性が確保されている。但し、ロック歯125bのロック溝127に対する前後方向の隙間は、五つのロック歯125b2~125b6のうち、ロック歯125b4が他の四つのロック歯125b2,125b3,125b5,125b6よりも狭い。
【0069】
この状態で、例えば車両が前後方向に衝突し、ロアレール103とアッパレール105とからなるレール体106が前後方向に衝撃荷重を受けると、ロアレール103とアッパレール105との間で、前後方向に相対的なずれが発生する方向に力を受ける。すると、ロアレール103(ロック溝127)と、アッパレール105に取り付けられたロック部材117(ロック歯125b)との間にも、前後方向に相対的なずれが発生する方向に力を受ける。
【0070】
ここで、右側最前部のロック歯125b1とロック溝127との間には前後方向に隙間が無い状態で係合しているため、当該係合部で上記した力を最初に受ける。その後、ロック溝127との間の前後方向の隙間が他の四つのロック歯125b2,125b3,125b5,125b6よりも狭いロック歯125b4が、ロック溝127に接触して力を受ける。
【0071】
このように、本実施形態では、レール体106が前後方向に衝撃荷重を受けたときに、左右両側において前後方向に複数設けられたロック歯125bのうち、左右最前部のロック歯125b1,125b4が、他の後方側のロック歯125b2,125b3,125b5,125b6よりも先にロック溝127に接触した状態となる。この場合、ロック部材117は、左右最前部のロック歯125b1,125b4が、ロアレール103の左右のロック溝127に対し前後方向に押し付けられて支持される状態となるので、前後方向を軸心とする捩じれ回転による変形が抑制される。
【0072】
このため、右側最前部のロック歯125b1がロック溝127に接触した状態で、例えば左側最後部のロック歯125b6がロック溝127に次に接触することによるロック部材117の捩じれ回転を抑制でき、ロック歯125b4がロック溝127から外れる方向に変形するのを抑制できる。これにより、ロック部材117とロアレール103との間のロック強度が安定しかつ向上する。
【0073】
本実施形態は、車両前後方向に沿って形成される複数のロック溝127は、車両前後方向の間隔が設計上互いに等しく、複数のロック歯125bのうち揺動支点部151に最も近い右側最前部のロック歯125b1の車両前後方向の幅L1が、他のロック歯125b2~125b6の車両前後方向の幅L2,Lに比較して最も大きい。複数のロック歯125bのうち揺動支点部151に最も近い左側最前部のロック歯125b4の車両前後方向の幅L2が、ロック歯125b1の車両前後方向の幅L1の次に大きく形成されている。
【0074】
この場合、例えロック歯やロック溝に製造時の寸法ばらつきが多少あっても、幅L1,L2がLよりも大きい左右最前部のロック歯125b1,125b4が、他の後方側のロック歯125b2,125b3,125b5,125b6よりも先にロック溝127に接触した状態となる。このため、前述したように、右側最前部のロック歯125b1がロック溝127に接触した状態で、例えば左側最後部のロック歯125b6がロック溝127に接触することによるロック部材117の捩じれ回転を抑制でき、ロック歯125b4がロック溝127から外れる方向に変形するのを抑制できる。
【0075】
本実施形態は、ロック部材117が板ばねで構成され、当該板ばねに複数のロック歯125bが一体的に形成されている。板ばねで構成されたロック部材117は、弾性変形によって上記した捩じれ回転が発生しやすい。このため、左右最前部のロック歯125b1,125b4が、他の後方側のロック歯125b2,125b3,125b5,125b6よりも先にロック溝127に接触した状態となることで、ロック歯125bのロック溝127からの外れを抑制するのに極めて有効である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
【0077】
上記した実施形態では、右側最前部のロック歯125b1の幅L1を最も大きくし、左側最前部のロック歯125b4の幅L2を幅L1の次に大きくしているが、左側最前部のロック歯125b4の幅L2を最も大きくし、右側最前部のロック歯125b1の幅L1を幅L2の次に大きくしてもよい。すなわち、左右最前部のロック歯125b1,125b4のうちいずれか一方の前後方向の幅を最も大きくし、いずれか他方の前後方向の幅を次に大きくしてもよい。
【0078】
上記した実施形態では、ロック部材117のロック歯125bが前後方向に延在する接続部125cによって互いに接続されて孔125aが形成されている。しかし、接続部125cを形成せずに、孔125aに代えて左右外側が開放した凹部として、ロック歯を形成してもよい。上記した実施形態では、ロック歯125bを左右両側でそれぞれ前後方向に三つ設けているが、左右両側でそれぞれ四つ以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
103 ロアレール
105 アッパレール
117 ロック部材
125b ロック部材のロック歯
127 ロアレールのロック溝
151 揺動支点部(揺動支点)