(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】開口部建材
(51)【国際特許分類】
E06B 7/16 20060101AFI20220214BHJP
E06B 1/12 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
E06B7/16 Z
E06B1/12 Z
(21)【出願番号】P 2018081322
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100210826
【氏名又は名称】土肥 千里
(72)【発明者】
【氏名】面谷 智久
(72)【発明者】
【氏名】保坂 純平
(72)【発明者】
【氏名】若松 英司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝也
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-092345(JP,A)
【文献】特開2007-126851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00 - 7/36
E06B 1/00 - 1/70
E06B 3/04 - 3/46,
3/50 - 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦材と、縦枠とを備え、
縦材の内周側面は略フラットで縦枠の外周側面に当接し、縦材の内周側面に形成した係合凹部に縦枠の外周側面に形成した係合凸部が係合し、両者の位置決め部とされていると共に、縦枠の外周側面に形成した内周側に凹む溝部と縦材の内周側面とで止水のための空間部が形成されており、
位置決め部と空間部は室内外方向に配設されていることを特徴とする開口部建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌め殺し窓等の開口部建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開口部建材において、上枠及び下枠は左右の縦枠の間に挟み込まれるように、縦枠の上下端部の内周側にそれぞれ取り付けられる。縦枠は、内周側がパネルを保持可能な形状としてあるため、長さを切り縮めなければならない場合、切断後に上枠と下枠を取り付けるための加工が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「晴れもよう3(土間仕様) 施工要領書(HZ0202R)」三協立山株式会社、2016年12月、p.80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の開口部建材には、縦材と縦枠が一体となった縦枠が用いられており、この一体型の縦枠が外周側を柱等に固定されるとともに内周側にパネルを保持していたが、外周側を固定される縦材と内周側にパネルを保持する縦枠との別体とすることで、切り縮める場合はそれぞれの部材を切断するだけで良いという効果が得られる。しかしながら、別体としたことで、縦材と縦枠との間の止水性が求められた。
本発明は上記課題を鑑み、施工性に優れ、止水性の良い開口部建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、縦材と、縦枠とを備え、縦材の内周側面は略フラットで縦枠の外周側面に当接し、縦材の内周側面に形成した係合凹部に縦枠の外周側面に形成した係合凸部が係合し、両者の位置決め部とされていると共に、縦枠の外周側面に形成した内周側に凹む溝部と縦材の内周側面とで止水のための空間部が形成されており、位置決め部と空間部は室内外方向に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、縦材と縦枠が別体となっているため、切り縮めが必要な場合もそれぞれの部材を切断して取り付けるだけで良いので施工性に優れる。また、縦材と縦枠の間は、位置決めのための係合部と止水のための空間部が設けてあるため、より施工性に優れ、止水性も良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明の開口部建材を適用した簡易構造物であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図5】縦材と縦枠を分解した状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここでは、本発明の開口部建材が、
図2に示すような、建物の外壁Xに隣接して設置される簡易構造物Yの欄間部Z1,Z2に用いられる嵌め殺し窓である場合の実施形態を示す。以下の説明において、前後方向とは外壁Xから簡易構造物Yが突出する方向を示し、室内側及び室外側とは簡易構造物Yの室内側及び室外側を示す。
【0009】
簡易構造物Yは、
図2に示すように、建物の外壁Xから間隔をあけて前側に柱1a,1a、外壁Xに当接する後側に躯体方立1b,1bを有する。柱1aと躯体方立1bの上端には、前後方向に妻垂木1cが架設してあり、二本の柱1a,1aの上端には、前桁1dが左右方向に架設してある。なお、妻垂木1cは後側から前側に向かって下方へ傾斜しており、前桁1dと同じ高さにおいて、柱1aと躯体方立1bの間には前後方向に腕木1eが設けてある。前桁1dの下方には、二本の柱1a,1a間に無目1fが設けてあり、左右方向の略中間部において、前桁1dと無目1fの間には、上下方向に方立1gが設けてある。また、無目1fと同じ高さにおいて、柱1aと躯体方立1bの間には前後方向に側面無目1hが設けてある。簡易構造物Yの正面において前桁1d、無目1f、柱1a及び方立1gによって枠組みされた欄間部Z1と、簡易構造物Yの側面において腕木1e、側面無目1h、柱1a及び躯体方立1bによって枠組みされた欄間部Z2に嵌め込まれている嵌め殺し窓に本実施形態における開口部建材を適用してある。なお、正面と側面の欄間部Z1,Z2に用いる開口部建材は同じ構成であるので、以下では正面の欄間部Z1における開口部建材について詳述し、側面の欄間部Z2については説明を省略する。
【0010】
開口部建材は、
図2及び
図4に示すように、上下の横枠11,12と、左右の縦材2及び縦枠3によって枠組みされており、その内周にパネル4を保持している。縦材2と縦枠3の間には、
図1及び
図3に示すように、互いの位置決めのための係合部6と、止水のための空間部7が長手方向に沿って形成されている。係合部6と空間部7は室内外方向に配設されており、縦枠3は係合部6及び空間部7よりも室内側において縦材2に固定されている。
【0011】
縦材2は上下方向に延びるアルミニウム合金の押出形材であって、
図1及び
図3に示すように、内周側に縦枠3が取り付けられ、外周側が柱1a又は方立1gの内周側面に当接してネジ止めされる。縦材2の長手方向の寸法は、
図4に示すように、欄間部Z1の上下幅に略等しく、上側の横枠11の上端から下側の横枠12の下端に亘っている。縦材2は、
図5に示すように、柱1a又は方立1gの内周側面を覆う縦材本体2aと、縦材本体2aの室外側端部から外周側に向かって延出する係止片2bを有する。縦材本体2aは、室内外方向中央よりもやや室外側に、外周側に凹む係合凹部2cを長手方向に沿って形成してある。係合凹部2cから間隔をあけて室内側には、縦枠3を取り付けるためのネジ孔2dが設けてある。また、係合凹部2cよりも室外側とネジ孔2dよりも室内側の二箇所において、柱1a又は方立1gへ固定するためのネジ孔2eが設けてある。係止片2bは、室内側面が柱1a又は方立1gの室外側面に当接することによって、欄間部Z1の内周へ開口部建材を嵌め込む際の位置決めとなる。
【0012】
縦枠3は上下方向に延びるアルミニウム合金の押出形材であって、
図1及び
図3に示すように、内周側にパネル4を保持し、外周側が縦材2に固定される。
図4に示すように、縦枠3の上端は、縦材2の上端から上側の横枠11の寸法分あけて下方に位置し、下端は、縦材2の下端から下側の横枠12の寸法分あけて上方に位置するため、縦枠3の長手方向の寸法は縦材2よりも短い。そして、縦枠3の室内外の幅は縦材2に設けたネジ孔2e,2e間の幅よりも短く、
図5に示すように、縦材2に当接する縦枠本体3aと、縦枠本体3aの室外側端部から内周側に向かって延出するパネル保持片3bを有する。パネル保持片3bの室内側には、パネル4との間にタイト材8が取り付けてある。縦枠本体3aは、縦材2の係合凹部2cと対向する位置に、外周側に向かって突出する係合凸部3cを長手方向に沿って設けてある。係合凸部3cは縦材2の係合凹部2cとともに係合部6を構成し、係合部6は縦材2と縦枠3の位置決めを可能とする。また、縦枠本体3aには係合凸部3cの室内側に隣接して、内周側に凹む溝部3dが設けてある。溝部3dは縦材本体2aとともに空間部7を形成している。室外から縦材2と縦枠3との間に雨水等が浸入した場合、空間部7を伝って下方へ落ちるため、空間部7によって室内への浸入を防ぐことが可能となる。空間部7には止水材を充填してもよい。なお、係合部6の凹凸によっても止水できるため、係合部6と空間部7が室内外方向に位置していることによって、より確実に止水が可能となる。そして、溝部3dの底部からは内周側に向かって、押縁係止部3eが形成してある。押縁係止部3eは中間部が室内側へ屈折して溝部3dの内周側とともに室内側に開口する凹部を形成し、後述する押縁5の側壁5b端部を挿入可能である。溝部3dの室内側には、縦材2のネジ孔2dと対向する位置に縦枠3を縦材2へ固定するためのネジ孔3fが設けてある。ネジ孔2d,3fは、係合部6及び空間部7より室内側に設けてあるため、ネジ孔2d,3fから雨水等が浸入することがない。また、縦枠本体3aの室内側端部には内周側に向かって延びる押縁係止部3gが形成してあり、押縁係止部3gは溝部3dに形成された押縁係止部3eとともに、押縁5を係止する。
【0013】
パネル4は、上下の横枠11,12と左右の縦材2及び縦枠3によって構成される枠の内周に室内側から嵌め込んであり、室外側をパネル保持片3b、室内側を押縁5に支持されることによって、左右の縁部を縦枠3と押縁5に挟持されている。
【0014】
押縁5は縦枠3の長手方向に沿って延びる樹脂製部材であって、見付面5aと見付面5aの両端から延出する側壁5b,5dによって平面視コ字形状をなし、開口を室外側へ向けて縦枠3に取り付けられる。外周側の側壁5bは、見付面5aとの角部が内側に凹んで被係止部5cが形成してあり、端部が室外側の押縁係止部3eに係止され、被係止部5cが室内側の押縁係止部3gに係止されて縦枠3に取り付けられる。内周側の側壁5dは、外周側の側壁5bよりも室内外方向の長さが短く、端部とパネル4との間にタイト材9が挿入される。
【0015】
次に、本発明の開口部建材の要部の施工手順について説明する。
縦材2及び縦枠3の長さを欄間部Z1の高さに合わせる必要がある場合は、まず縦材2及び縦枠3をそれぞれ切り縮める。縦材2は、欄間部Z1の高さに切り縮め、縦枠3は、縦材2に取り付けられる上下の横枠11,12の幅を考慮して、縦材2よりも短く切り縮める。そして、縦枠3の係合凸部3cが縦材2の係合凹部2cへ嵌まるように位置決めし、内周側からネジ孔3f,2dに縦枠固定ネジ10を挿入して、縦材2に縦枠3を取り付ける。次に、上下の横枠11,12と、左右の縦材2及び縦枠3を枠組みして固定する。枠内にパネル4を入れ、押縁5を室内側から縦枠3に嵌め込んだ後、パネル4と押縁5の間にタイト材9を挿入することによってパネル4が枠内に固定され、開口部建材が完成する。この開口部建材を室外側から欄間部Z1に嵌め込むと、縦材2の係止片2bによって柱1a及び方立1gに対して縦材2及び縦枠3が位置決めされ、縦材2のネジ孔2eにおいて柱1a及び方立1gに固定することによって、欄間部Z1へ開口部建材が取り付けられる。
【0016】
このように構成した開口部建材によれば、縦材2と縦枠3が別体となっているため、切り縮めが必要な場合もそれぞれの部材を切断して取り付けるだけで良いので施工性に優れる。縦材2と縦枠3の間は、位置決めのための係合部6と止水のための空間部7が設けてあるため、より施工性に優れ、止水性も良い。
また、縦枠3は係合部6及び空間部7よりも室内側において縦材2に固定されていることにより、ネジ孔2d,3fから雨水等が浸入するおそれがない。係合部6は縦材2の係合凹部2cと縦枠3の係合凸部3cによって構成されるため、止水の効果もある。そして、係合部6と空間部7が室内外方向に位置することで室内外の止水を確実に行うことができる。
【0017】
本発明は、上記の実施形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、簡易構造物に設けた欄間部に限らず、建物や構造物の開口部に広く適用可能なものである。
【符号の説明】
【0018】
1a 柱
1b 躯体方立
1g 方立
2 縦材
3 縦枠
4 パネル
5 押縁
6 係合部
7 空間部
X 外壁
Y 簡易構造物
Z1 欄間部(正面)
Z2 欄間部(側面)