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特許7023173音声明瞭度に基づく聴覚機器とそれに関連した方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】音声明瞭度に基づく聴覚機器とそれに関連した方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20220214BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220214BHJP
   H04R 3/04 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
H04R25/00 K
H04R25/00 L
H04R3/00 310
H04R3/04
【請求項の数】 31
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018089447
(22)【出願日】2018-05-07
(65)【公開番号】P2018207480
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】17170175.8
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー ビー. ボルト
(72)【発明者】
【氏名】シャーロット セーレンセン
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ブルマント ヨハネス
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0325250(US,A1)
【文献】Taal et al.,A SHORT-TIME OBJECTIVE INTELLIGIBILITY MEASURE FOR TIME-FREQUENCY WEIGHTED NOISY SPEECH,ICASSP 2010,2010年03月19日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00- 3/14
H04R 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置からの第1無線入力信号を受信するアンテナと、
前記アンテナに接続されている送受信機であって、第1無線入力信号に基づく送受信機入力信号を提供する送受信機と、
第1マイクロフォンを有しており、マイクロフォン信号を有する第1入力信号を提供する入力モジュールと、
処理済出力信号を提供する第1処理ユニットと、
前記処理済出力信号に基づいて、音響出力信号を提供するレシーバと、
前記入力モジュールと前記送受信機に動作可能に接続されており、前記第1入力信号に基づいてプリ処理出力信号を提供する第2処理ユニットと、
前記送受信機に動作可能に接続されており、前記送受信機入力信号と、前記プリ処理出力信号と前記処理済出力信号のうちの1つの信号とに基づいて音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを決定するための音声明瞭度推定部を有し、前記音声明瞭度インジケータに基づいて決定された第1ゲインパラメータと第2ゲインパラメータを提供するコントローラと、を備える聴覚機器であって、
前記第2処理ユニットは、第1ゲインパラメータと第2ゲインパラメータに基づいて、前記第1入力信号、前記送受信機入力信号、又は前記第1入力信号と前記送受信機入力信号の双方を処理するとともに、前記マイクロフォン信号と前記送受信機入力信号の双方に基づく混合出力信号を提供し、
前記送受信機入力信号は、前記第1無線入力信号に基づくデジタル音響信号を有している、聴覚機器。
【請求項2】
前記音声明瞭度推定部は、前記第1入力信号にも基づき前記音声明瞭度インジケータを決定する、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項3】
前記音声明瞭度推定部は、前記送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較することによって前記音声明瞭度インジケータを決定する、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項4】
前記音声明瞭度推定部は、前記送受信機入力信号の変調と前記第1コントローラ入力信号の変調に基づいて、前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号を比較する、請求項3に記載の聴覚機器。
【請求項5】
前記音声明瞭度推定部は、前記送受信機入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、前記第1コントローラ入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、の相関に基づいて、前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号を比較する、請求項3に記載の聴覚機器。
【請求項6】
前記音声明瞭度推定部は、短時間客観明瞭度推定部を使用して前記音声明瞭度インジケータを決定し、
前記短時間客観明瞭度推定部は、1つ以上の短時間セグメントにおいて、前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号を比較する、請求項3に記載の聴覚機器。
【請求項7】
前記コントローラは、前記音声明瞭度インジケータに基づいて第1ゲインパラメータと第2ゲインパラメータを決定する、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項8】
前記1つ以上の第1ゲインパラメータは、第1フィルタ係数セットを有し、
前記1つ以上の第2ゲインパラメータは、第2フィルタ係数セットを有する、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項9】
前記コントローラは、前記音声明瞭度インジケータに基づいて、前記1つ以上の第1ゲインパラメータと前記1つ以上の第2ゲインパラメータを決定する、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項10】
前記コントローラは、複数の周波数帯のうちの1つ以上の周波数帯における音声明瞭度インジケータを測定し、複数の周波数帯のうちの1つ以上の周波数帯における音声明瞭度インジケータに基づいて1つ以上の第1周波数依存ゲインパラメータと1つ以上の第2周波数依存ゲインパラメータを生成するように構成されている、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項11】
前記外部装置は、スパウスマイクロフォン装置であり、
前記送受信機入力信号は、前記スパウスマイクロフォン装置からの会話音声信号である、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項12】
前記第2処理ユニットは、前記送受信機入力信号にも基づいて前記プリ処理出力信号を提供するように構成されている、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項13】
聴覚機器によって実行される方法であって、
アンテナによって外部装置から第1無線入力信号を受信することと、
送受信機によって第1無線入力信号に基づく送受信機入力信号を提供することと、
入力モジュールによって音響信号を受信することと、
前記入力モジュールによってマイクロフォン信号を有する第1入力信号を含む1つ以上の入力信号を提供することと、
第1処理ユニットによって処理済出力信号を提供することと、
前記第1入力信号に基づいてプリ処理出力信号を提供することと、
前記聴覚機器によって送受信機入力信号と、前記プリ処理出力信号と前記処理済出力信号のうちの1つの信号とに基づく音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを決定することと、
前記音声明瞭度インジケータに基づいて、第1ゲインパラメータと第2ゲインパラメータを決定することと、
前記第1ゲインパラメータと前記第2ゲインパラメータに基づいて、前記第1入力信号、前記送受信機入力信号、又は前記第1入力信号と前記送受信機入力信号の双方を処理することと、
前記マイクロフォン信号と前記送受信機入力信号の双方に基づく混合出力信号を提供することと、
前記処理済出力信号に基づくレシーバによって音響出力信号を提供することと、
を備えており、
前記送受信機入力信号は、前記第1無線入力信号に基づくデジタル音響信号を有している、方法。
【請求項14】
前記コントローラは、前記聴覚機器の内側から前記第1コントローラ入力信号を受信するように構成されている、請求項3に記載の聴覚機器。
【請求項15】
前記第2処理ユニットは、前記コントローラと前記第1処理ユニットの間に通信可能の結合されている、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項16】
前記コントローラは、前記送受信機と前記第2処理ユニットの間に通信可能の結合されている、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項17】
前記聴覚機器が補聴器であり、前記補聴器は、前記補聴器の前記送受信機によって提供される前記デジタル音響信号に基づいて前記音声明瞭度インジケータを決定するように構成されている、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項18】
前記補聴器は、ユーザが聴力損失を補償するために前記補聴器を装着している間、前記音声明瞭度インジケータを決定するように構成されている、請求項17に記載の聴覚機器。
【請求項19】
前記聴覚機器は、ユーザが前記聴覚機器を装着している間、前記音声明瞭度インジケータを決定するように構成されている、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項20】
前記音声明瞭度インジケータは、前記聴覚機器の前記送受信機によって提供されるデジタル音響信号に基づいている、請求項1に記載の聴覚機器。
【請求項21】
前記聴覚機器は補聴器であり、前記音声明瞭度インジケータは、前記補聴器の前記送受信機によって提供される前記デジタル音響信号に基づいて前記補聴器によって決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記音声明瞭度インジケータは、ユーザが聴力損失を補償するために前記補聴器を装着している間、前記補聴器によって決定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記音声明瞭度インジケータは、ユーザが前記聴覚機器を装着している間、前記聴覚機器によって決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記音声明瞭度インジケータは、第1コントローラ入力信号にも基づいて決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記音声明瞭度インジケータは、前記第1入力信号にも基づいて決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記音声明瞭度インジケータは、前記聴覚機器の前記送受信機によって提供される前記デジタル音響信号に基づいて、前記聴覚機器によって決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
前記第1コントローラ入力信号は、前記第1入力信号、前記プリ処理出力信号又は前記処理済出力信号を備えている、請求項3に記載の聴覚機器。
【請求項28】
前記第1処理ユニットと前記第2処理ユニットは各々異なる機能を実行し、
前記第1処理ユニットが、聴力損失の補償のための信号処理を実行するように構成されている、請求項1記載の聴覚機器。
【請求項29】
前記第1コントローラ入力信号は、前記聴覚機器内の部品から前記聴覚機器内のコントローラに送信される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記聴覚機器は、第2処理ユニットをさらに備えており、
前記コントローラは、前記送受信機と第2処理ユニットの間に通信可能の結合されている、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2処理ユニットは、前記コントローラと第1処理ユニットの間に通信可能の結合されている、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
聴覚機器ユーザの使用感向上のため、聴覚システムにおけるスパウスマイクロフォン等の外部マイクロフォンが使用される機会が増えている。聴覚システムにおいて無線通信技術が広く用いられるようになったことも、この傾向を後押ししている。
【背景技術】
【0002】
EP2,840,807A1は、補聴器と使用されるように構成された外部マイクロフォンアレイを開示している。このマイクロフォンアレイは、音源から1つ以上の音声信号を検出するように構成される多数のマイクロフォンと、検出された音声信号を少なくとも1つの補聴器に無線送信する手段とを有する。
【0003】
しかし、外部マイクロフォンを使用した場合、やはり聴覚機器処理が困難になってしまうため、音声の明瞭度や音響環境等に関するユーザの使用感の向上に必ずしもつながらない。
【発明の概要】
【0004】
したがって、背景技術に記載の欠点を解消する聴覚機器、方法、および聴覚システムが求められている。
【0005】
開示の聴覚機器は、外部装置からの第1無線入力信号をアンテナ出力信号に変換するように構成されるアンテナを備える。その聴覚機器は、アンテナに接続されて、アンテナ出力信号を送受信機入力信号に変換する無線送受信機を備える。聴覚機器は、第1マイクロフォンを含み、第1入力信号を提供する入力モジュールを備える。聴覚機器は、入力信号を処理して、入力信号に基づくプロセッサ出力信号を提供するプロセッサを備える。聴覚機器は、プロセッサ出力信号に基づいて、出力信号を音響出力信号に変換するレシーバを備える。聴覚機器は、プリプロセッサ(pre-processor)を備える。プリプロセッサは、入力モジュールと無線送受信機に動作可能に接続され、第1入力信号と送受信機入力信号に基づいてプリプロセッサ出力信号を提供する。聴覚機器は、コントローラを備える。コントローラは、無線送受信機に動作可能に接続され、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号に基づいて音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定する音声明瞭度推定部を含み、音声明瞭度インジケータに基づいてコントローラ出力信号を提供するように構成される。プリプロセッサは、コントローラ出力信号に基づき、第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方に対して前処理方式を適用するように構成される。
【0006】
本開示はさらに、聴覚機器の動作方法に関する。その方法は、聴覚機器または聴覚システムで実行されていてよい。上記方法は、外部装置から第1無線入力信号を受信し、第1無線入力信号を送受信機入力信号に変換することを含む。上記方法は、音響信号を受信し、音響信号を第1入力信号を含む1つ以上の入力信号に変換することを含む。上記方法は、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号に基づいて、音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定することを含む。上記方法は、音声明瞭度インジケータに基づいてコントローラ出力信号を提供することと、コントローラ出力信号に基づいて第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方に対して前処理方式を適用することを含む。
【0007】
本開示の利点として、聴覚機器において、受信信号および/または(前)処理された信号に基づいて音声明瞭度を測定可能となり、測定された音声明瞭度に基づいて入力信号の処理を制御可能となる。本開示は、音声明瞭度に基づいた入力信号の適応処理を提供する。特に、本開示は音声明瞭度推定精度を向上し、入力信号の処理を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上述の本発明の特徴及び利点と、他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の例示的な実施形態の詳細な記載によって当業者には容易に明らかになるだろう。
図1図1は、本開示に係る例示的な聴覚機器を概略的に示す。
図2図2は、第1コントローラ入力信号が第1入力信号である、本開示に係る例示的な聴覚機器を概略的に示す。
図3図3は、第1コントローラ入力信号がプリプロセッサ出力信号である、本開示に係る例示的な聴覚機器を概略的に示す。
図4図4は、第1コントローラ入力信号がプロセッサ出力信号である、本開示に係る例示的な聴覚機器を概略的に示す。
図5図5は、第1ゲイン制御モジュールと第2ゲイン制御モジュールを有する、本開示に係る例示的なプリプロセッサを示すブロック図である。
図6図6は、第1フィルタと第2フィルタを有する、本開示に係る例示的なプリプロセッサを示すブロック図である。
図7図7は、本開示に係る例示的な聴覚機器の動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
関連する場合に図面を参照しながら、各種実施形態および詳細を以下で説明する。図面は縮尺通りに描写されていてもされていなくてもよく、類似の構造または機能の要素は図面全体にわたって同じ参照番号により表されるという点に留意すべきである。また、図面は実施形態の説明を容易にすることを意図するものに過ぎないことに留意すべきである。図面は、本発明の包括的な説明としても、または本発明の範囲に対する制限としても意図されていない。加えて、図示した実施形態は、示されるすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態とともに記載される態様または利点は必ずしも、その実施形態に限定されず、示されていない、または明示的に説明されていなくても、任意の他の実施形態で実施可能である。
【0010】
スパウスマイクロフォン等の外部マイクロフォンが使用される場合、外部マイクロフォンからの無線信号と、聴覚機器マイクロフォンからの音声信号の混合は、通常は固定の所定値となる。例えば、聴覚機器マイクロフォンが取得した音声信号は、ユーザのニーズや音響環境に関わらず、同じ値(例えば6dB)で減衰される。本発明者らにより、音響環境からの音声信号レベルが中程度であれば、補聴器マイクロフォンに対して6dBの減衰は必要ないことが確認されている。一方、近傍で非常に多くの音声が飛び交う状況では、補聴器マイクロフォンに対して6dBの減衰では不十分であることがある。補聴器マイクロフォンに対する過度の減衰は、難聴者の音響環境に対するつながりを希薄にし得る。一方で、補聴器マイクロフォンに対する減衰が足りなければ、ストリーミングされた音声が聞き取れなくなってしまうことがある。いずれの状況も、補聴器ユーザの孤立を招くため、好ましくない。
【0011】
ユーザが混合レベルを制御、調整できるようにすることも考えられるが、煩雑である上に、理想的な聴覚的使用感を実現できるとは限らない。
【0012】
本発明者らは、聴覚機器ユーザにとって、明瞭度推定が有利であることを確認した。聴覚機器マイクロフォンからの音声信号に対する処理が、推定された音声明瞭度に基づいて制御できるのである。本発明者らは、聴覚機器の音声信号に対する処理の最適化のために、音声明瞭度インジケータを使用することで以下の利点が得られることを確認した。即ち、入力信号を最適な処理方式により前処理し(例えば、入力信号を最適なレベルで減衰する)、ユーザが、外部装置からの音声を理解しながら音響環境につながることが可能となるのである。
【0013】
さらに、本発明者らは、受信信号(例えば、送受信機入力信号、第1入力信号)および/または処理された信号(例えばプリプロセッサ出力信号、プロセッサ出力信号)を利用することで、より有利な明瞭度推定が実現できることを確認した。EP2,840,807A1では、音声明瞭度について言及されていない。
【0014】
本明細書では聴覚機器が開示される。聴覚機器は、補聴器であってよく、プロセッサは、ユーザの聴力損失を補償するように構成される。例えば、聴覚機器は耳かけ(BTE)型、耳あな(ITE)型、外耳道挿入(ITC)型、外耳道挿入レシーバ(RIC)型又は耳挿入レシーバ(RITE)型の補聴器であってよい。
【0015】
聴覚機器は人工内耳であってよい。本開示は、プロセッサとレシーバを有する人工内耳に適用できる。プロセッサは、プロセッサ出力信号を有線または無線でレシーバに提供するように構成される。レシーバは、プロセッサ出力信号を電気インパルス(electrical impulse)に変換するように構成される。
【0016】
聴覚機器は、1つ以上の無線入力信号、例えば第1無線入力信号と任意で第2無線入力信号を、アンテナ出力信号に変換するアンテナを備える。無線入力信号は外部装置から発せられる。外部装置は、スパウスマイクロフォン装置(パートナーマイクロフォン装置と称することもある)、無線テレビ音声トランスミッタ、および/または無線トランスミッタに対応付けられた分散型マイクロフォンアレイ等である。外部装置は、音声を示す信号を聴覚機器に無線送信可能な装置である。外部装置の例として、スパウスマイクロフォン装置、無線テレビ音声トランスミッタ、および/または無線トランスミッタに対応付けられた分散型マイクロフォンアレイ等が挙げられる。外部装置は、パーソナルコンピュータ(携帯型パーソナルコンピュータ)、テーブルマイクロフォン装置、別の聴覚機器、テレビ、および/または電球マイクロフォン装置を含んでいてよい。
【0017】
聴覚機器は、アンテナに接続され、アンテナ出力信号を送受信機入力信号に変換する無線送受信機を備える。異なる複数の信号源からの複数の無線信号は、無線送受信機において多重化されて送受信機入力信号となってよいし、無線送受信機の別々の送受信機出力端子に対する別々の送受信機入力信号として提供されてよい。聴覚機器は、複数のアンテナを有していてよいし、および/または、アンテナが1つ以上のアンテナモードで動作するように構成されていてよい。送受信機入力信号は、第1外部装置からの第1無線信号を示す第1送受信機入力信号を含んでいてよい。例えば送受信機入力信号は、外部装置からアンテナおよび無線レシーバを介して聴覚機器にストリーミングされる音声信号であってよい。即ち、送受信機入力信号は、ストリーミング音声信号を含んでいてよい。ストリーミング音声信号は、実質的におよび主に会話音声を含むものである。任意で、アンテナが1つ以上の追加外部装置から1つ以上の追加無線入力信号を受信するように構成され、無線送受信機が1つ以上の追加送受信機入力信号を提供するように構成されていてよい。追加外部装置は、第1追加外部装置、第2追加外部装置、第3追加外部装置等を含んでいてよい。
【0018】
聴覚機器は、第1入力信号を提供する入力モジュールを備えており、その入力モジュールはマイクロフォンセットの第1マイクロフォンを備える。例えば、入力信号は、マイクロフォンにより処理された音響音声信号である。マイクロフォンセットは、1つ以上のマイクロフォンを含んでいてよい。マイクロフォンセットは、第1入力信号を提供するための第1マイクロフォン、および/または第2入力信号を提供するための第2マイクロフォンを含む。マイクロフォンセットは、N個のマイクロフォン信号を提供するためのN個のマイクロフォンを含んでいてよい。Nは1から10の範囲内の整数である。1つ以上の例示的な聴覚機器では、マイクロフォンの個数Nは、2,3,4,5またはそれ以上である。マイクロフォンセットは、第3入力信号を提供するための第3マイクロフォンを含んでいてよい。
【0019】
聴覚機器は、マイクロフォン入力信号等の入力信号を処理するプロセッサを備える。プロセッサは、当該プロセッサへの入力信号に基づいて、プロセッサ出力信号を提供するように構成される。プロセッサは、ユーザの聴力損失を補うように構成されていてよい。
【0020】
聴覚機器は、プロセッサ出力信号を音響出力信号に変換するためのレシーバを備える。レシーバは、プロセッサ出力信号を聴覚機器ユーザの鼓膜に送られる音響出力信号に変換するように構成されていてよい。
【0021】
聴覚機器はプリプロセッサを備えており、プリプロセッサは、入力モジュールと無線送受信機に動作可能に接続されて、第1入力信号と送受信機入力信号に基づいてプリプロセッサ出力信号を提供する。
【0022】
聴覚機器は、コントローラを備える。コントローラは、無線送受信機に動作可能に接続されていてよい。コントローラは、プリプロセッサに動作可能に接続されていてよい。任意で、コントローラは、入力モジュールとプロセッサに動作可能に接続されていてよい。コントローラは音声明瞭度推定部を備えており、音声明瞭度推定部は、第1コントローラ入力信号と、1つ以上の送受信機入力信号等の送受信機入力信号とに基づいて、音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定する。コントローラは、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号に基づいて音声明瞭度インジケータを推定するように構成されてよい。コントローラは、音声明瞭度推定部により推定された音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号を提供するように構成される。
【0023】
プリプロセッサは、コントローラ出力信号に基づいて、第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方に対して前処理方式を適用するように構成される。例えば、1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサは、コントローラ出力信号に基づいて、第1入力信号と送受信機入力信号に対して前処理方式を適用するように構成される。言い換えると、プリプロセッサは、混合プリプロセッサ出力信号を提供するように構成されていてよい。
【0024】
即ち、コントローラは、コントローラ出力信号に基づいてプリプロセッサを制御するように構成されていると看做すこともできる。
【0025】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサはコントローラを有する。1つ以上の例示的な聴覚機器において、コントローラはプリプロセッサに併設される。
【0026】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、前処理方式は、自動ゲイン制御方式等のゲイン制御方式および/またはフィルタリング方式を含む。
【0027】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、第1コントローラ入力信号は第1入力信号である。例えば、コントローラまたは音声明瞭度推定部は、送受信機入力信号と第1入力信号に基づいて、音声明瞭度インジケータを推定するように構成されていてよい。音声明瞭度推定において、送受信機入力信号がクリーンな参照信号であって、第1入力信号が高ノイズ音声信号であってよい。開示の技術は、迅速かつ効率的な聴覚機器信号処理が実現できるという利点がある。
【0028】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、外部装置はスパウスマイクロフォン装置であり、送受信機入力信号はスパウスマイクロフォン装置からストリーミングされた会話音声信号等の、スパウスマイクロフォン装置からの会話音声信号である。スパウスマイクロフォン装置からストリーミングされた会話音声信号は、コントローラにより音声明瞭度インジケータの推定に使用される。ストリーミングされた会話音声信号は、プリプロセッサにおいて、推定された音声明瞭度インジケータに基づいて選択された前処理方式によりさらに処理される。これにより、ユーザの全体的な聴覚的使用感の向上が図られる。
【0029】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、第1コントローラ入力信号はプリプロセッサ出力信号である。例えば、コントローラまたは音声明瞭度推定部は、送受信機入力信号とプリプロセッサ出力信号に基づいて、音声明瞭度インジケータを推定するように構成されていてよい。音声明瞭度推定において、送受信機入力信号がクリーンな参照信号であって、プリプロセッサ出力信号が高ノイズ音声信号であってよい。プリプロセッサ出力信号は、混合プリプロセッサ出力信号と看做してよい。混合プリプロセッサ出力信号は、第1入力信号と送受信機入力信号を混合したものである。
【0030】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、第1コントローラ入力信号はプロセッサ出力信号である。例えば、コントローラまたは音声明瞭度推定部は、送受信機入力信号とプロセッサ出力信号に基づいて、音声明瞭度インジケータを推定するように構成されていてよい。音声明瞭度推定において、送受信機入力信号がクリーンな参照信号であって、プロセッサ出力信号が高ノイズ音声信号であってよい。プロセッサ出力信号は、混合プロセッサ出力信号と看做してよい。
【0031】
開示の技術は、音声明瞭度推定の信頼性、精度の向上が実現できるという利点がある。
【0032】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、音声明瞭度推定部は、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較することで、音声明瞭度インジケータを推定するように構成される。送受信機入力信号がクリーンな参照信号であって(第1無線入力信号に基づくため)、第1コントローラ入力信号が高ノイズ音声信号であってよい。例えば、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号(例えば、第1入力信号、プリプロセッサ出力信号、またはプロセッサ出力信号)の比較は、時間領域および/または周波数領域で行われてよい。音声明瞭度推定部は、比較の結果に基づき音声明瞭度インジケータを提供するように構成されていてよい。
【0033】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、音声明瞭度推定部は、送受信機入力信号の変調と第1コントローラ入力信号の変調に基づいて、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較するように構成される。例えば、送受信機入力信号の変調と第1コントローラ入力信号(例えば、第1入力信号、プリプロセッサ出力信号、またはプロセッサ出力信号)の変調は、異なる周波数帯における緩やかな変動を示すものであって、音声明瞭度の推定のために比較される。送受信機入力信号の変調と第1コントローラ入力信号の変調は、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号の時間的標示と看做すことができる。
【0034】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、音声明瞭度推定部は、送受信機入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、第1コントローラ入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関に基づいて、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較するように構成される。
【0035】
例えば、音声明瞭度推定部は、以下の何れかの技術を用いて、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を、それらの全体または全長さにわたって比較するように構成されていてよい。明瞭度指数技術(1/3オクターブ帯域において、正規化SN比の加重和が計算される)、SII(Speech Intelligibility Index)技術、ESII(Extended SII)技術、CSII(Coherence SII)技術(クリップングからの非線形歪を扱う)、STI(Speech Transmission Index)技術(音声明瞭度に最も影響が大きいと考えられる周波数および変調帯域の範囲にわたる変調深度の減少として明瞭度インジケータを推定)、NCM(Normalized Covariance Metric technique)技術(全ての周波数帯域において、時間を揃えた基準と処理された第1コントローラ入力信号との包絡線間の共分散の加重和に基づいて音声明瞭度インジケータを推定)、sEPSM(speech-based Envelope Power Spectrum Model,音声ベースの包絡線電力スペクトルモデル)技術(理想的なオブザーバへの変調フィルタバンクの出力における音声対雑音包絡線電力比として音声明瞭度インジケータを推定)、HASPI(Hearing Aid Speech Perception Index)技術、およびこれらの任意の変形。
【0036】
典型的には、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号(例えば、第1入力信号、プリプロセッサ出力信号、またはプロセッサ出力信号)等の信号は、数十秒単位の長さを有する。
【0037】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、音声明瞭度推定部は、短時間客観明瞭度推定部により音声明瞭度インジケータを推定するように構成される。短時間客観明瞭度推定部は、1つ以上の短時間セグメントにおいて、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較するように構成される。例えば、短時間セグメントは、200から400ミリ秒、100ミリ秒等、100から500ミリ秒の範囲内であってよい。また、短時間セグメントは150ミリ秒未満、100ミリ秒未満等、200ミリ秒未満であってよい。短時間客観明瞭度推定部は、短時間重複セグメントにおける送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号(例えば、第1入力信号、プリプロセッサ出力信号、またはプロセッサ出力信号)との時間包絡線(temporal envelop)間の相関係数を求めることで、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較するように構成されてよい。
【0038】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、コントローラは、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定するように構成される。例えば、1つ以上の例示的な聴覚機器において、コントローラは、前処理方式の1つ以上の第1ゲインパラメータと、前処理方式の1つ以上の第2ゲインパラメータを判定することで、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定するように構成される。
【0039】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、コントローラは、前処理方式のパラメータ等、前処理方式を反映するコントローラ出力信号を提供するように構成される。例えば、コントローラ出力信号は、1つ以上の第1ゲインパラメータおよび/または1つ以上の第2ゲインパラメータを含んでいてよい。1つ以上の例示的な聴覚機器において、1つ以上の第1ゲインパラメータが1つ以上の第2ゲインパラメータに関連してよい。例えば、1つ以上の第2ゲインパラメータは1つ以上の第2ゲインパラメータから求めることが可能である。第2ゲインパラメータβと第1ゲインパラメータαは、例えばβ=1-αの関係であってよい。例えば、第1ゲインパラメータαおよび/または第2ゲインパラメータβは、コントローラにより、推定された音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号の一部としてプリプロセッサに提供されてよい。
【0040】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサは、第1入力信号に1つ以上の第1ゲインパラメータを適用し、送受信機入力信号に1つ以上の第2ゲインパラメータを適用する、または逆の組み合わせにより適用するように構成される。言い換えると、音声明瞭度インジケータが、第1入力信号と送受信機入力信号のゲイン制御に使用される。
【0041】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、1つ以上の第1ゲインパラメータは第1広帯域ゲインを含んでいてもよく、1つ以上の第2ゲインパラメータは第2広帯域ゲインを含んでいてよい。例えば、広帯域ゲインは送受信機入力信号と第1入力信号の少なくとも一方の、周波数帯全体等の所定の周波数帯に対して適用されるゲインパラメータである。1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサは第1広帯域ゲインを第1入力信号に適用し、第2広帯域ゲインを送受信機入力信号に適用するように構成されるが、組み合わせはこの逆であってよい。
【0042】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサは第1入力信号のフィルタリング用の第1フィルタと、送受信機入力信号のフィルタリング用の第2フィルタを有する。
【0043】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、1つ以上の第1ゲインパラメータは第1フィルタ係数セットを含み、1つ以上の第2ゲインパラメータは第2フィルタ係数セットを含む。例えば、コントローラ出力信号は、第1フィルタ係数セットおよび/または第2フィルタ係数セットを含んでいてよい。例えば、第1および/または第2フィルタは、適応フィルタであってよい。プリプロセッサは、第1フィルタにおいて第1フィルタ係数セットを使用し、および/または第2フィルタにおいて第2フィルタ係数セットを使用する、前処理方式を適用するように構成されていてよい。
【0044】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、音声明瞭度インジケータに基づいて1つ以上の第1ゲインパラメータと1つ以上の第2ゲインパラメータを決定することは、各周波数帯における音声明瞭度インジケータを測定することと、各周波数帯における音声明瞭度インジケータに基づいて1つ以上の第1周波数依存ゲインパラメータと1つ以上の第2周波数依存ゲインパラメータを生成することを含む。各周波数帯における音声明瞭度インジケータは、帯域可聴関数(例えば米国国家規格協会ANSI S3.5-1997の4.7項)の加重和を使用して測定されてよい。
【0045】
本開示は、聴覚機器の制御、入力信号処理の制御等、聴覚機器の動作方法に関する。方法は、聴覚機器または聴覚システムにおいて実行されてよい。方法は、外部装置から第1無線入力信号を受信することと、第1無線入力信号を送受信機入力信号に変換し、音響信号を受信することと、音響信号を第1入力信号を含む1つまたは複数の入力信号に変換することとを含む。
【0046】
方法は、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号に基づいて、音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定することを含む。
【0047】
方法は、音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号を提供することを含む。
【0048】
方法は、コントローラ出力信号に基づき第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方に対して前処理方式を適用することを含む。1つ以上の例示的な方法において、コントローラ出力信号に基づき第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方に対して前処理方式を適用することは、コントローラ出力信号に基づき前処理方式を第1入力信号と送受信機入力信号に適用することを含む。
【0049】
1つ以上の例示的な方法において、第1コントローラ入力信号は、第1入力信号である。例えば、音声明瞭度インジケータを推定することは、送受信機入力信号と第1入力信号に基づいて実行されてよい。音声明瞭度推定において、送受信機入力信号がクリーンな参照信号であって、第1入力信号が高ノイズ音声信号であってよい。
【0050】
1つ以上の例示的な方法において、第1コントローラ入力信号は、プリプロセッサ出力信号である。例えば、音声明瞭度インジケータを推定することは、送受信機入力信号とプリプロセッサ出力信号に基づいて実行されてよい。音声明瞭度推定において、送受信機入力信号がクリーンな参照信号であって、プリプロセッサ出力信号が高ノイズ音声信号であってよい。プリプロセッサ出力信号は、混合出力信号と看做してよい。即ち、音声明瞭度インジケータを推定することは、プリプロセッサからの送受信機入力信号と混合出力信号に基づいて実行されるものと看做してよい。
【0051】
1つ以上の例示的な方法において、第1コントローラ入力信号は、プロセッサ出力信号である。例えば、音声明瞭度インジケータを推定することは、送受信機入力信号とプロセッサ出力信号に基づいて実行されてよい。
【0052】
1つ以上の例示的な方法において、音声明瞭度インジケータを推定することは、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較することを含んでいてよい。例えば、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較することは、送受信機入力信号の変調と第1コントローラ入力信号の変調に基づいて実行されてよい。例えば、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較することは、送受信機入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、第1コントローラ入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関を判定することを含んでいてよい。
【0053】
1つ以上の例示的な方法において、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較することは、短時間客観明瞭度(STOI)推定部を使用して実行されてよい。短時間客観明瞭度推定部は、1つ以上の短時間セグメントにおいて、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較するように構成される。例えば、短時間セグメントは、200から400ミリ秒、100ミリ秒等、100から500ミリ秒の範囲内であってよい。セグメントは、1つ以上のフレームを含んでいてよい。各フレームの長さは、25.6ミリ秒等、10から40ミリ秒の間であってよい。STOI推定部は、1つ以上のセグメントに分散された20から30フレームを処理してよい。例えば、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較することは、短時間重複セグメントにおいて、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号(例えば、第1入力信号、プリプロセッサ出力信号、またはプロセッサ出力信号)の間の時間包絡線の相関係数を求めることを含んでいてよい。
【0054】
1つ以上の例示的な方法において、送受信機入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、第1コントローラ入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関を判定することは、短時間客観明瞭度を使用して実行されてよい。
【0055】
1つ以上の例示的な方法は、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定することを含む。例えば、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定することは、前処理方式の1つ以上の第1ゲインパラメータと、前処理方式の1つ以上の第2ゲインパラメータを判定することを含んでいてよい。例えば、1つ以上の第1ゲインパラメータは第1広帯域ゲインを含んでいてもよく、1つ以上の第2ゲインパラメータは第2広帯域ゲインを含んでいてよい。
【0056】
1つ以上の例示的な方法において、コントローラ出力信号に基づいて前処理方式を第1入力信号および送受信機入力信号に適用することは、1つ以上の第1ゲインパラメータを第1入力信号に適用し、1つ以上の第2ゲインパラメータを送受信機入力信号に適用することを含む。
【0057】
1つ以上の例示的な方法において、コントローラ出力信号に基づいて前処理方式を第1入力信号および送受信機入力信号に適用することは、第1入力信号をフィルタリングすることと、送受信機入力信号をフィルタリングすることを含んでいてよい。例えば、第1フィルタにより第1入力信号をフィルタリングし、第2フィルタにより送受信機入力信号をフィルタリングしてもよく、逆の組み合わせであってよい。
【0058】
1つ以上の例示的な方法において、1つ以上の第1ゲインパラメータは第1フィルタ係数セットを含み、1つ以上の第2ゲインパラメータは第2フィルタ係数セットを含む。例えば、コントローラ出力信号は第1フィルタ係数セットおよび/または第2フィルタ係数セットを含んでよい。
【0059】
本明細書に開示の聴覚機器および方法は、音声明瞭度インジケータの推定、推定された音声明瞭度インジケータに基づく前処理の入力信号と送受信機入力信号への適用を可能とする。これにより、1つ以上のマイクロフォンからの入力信号(例えば音響音声信号)を、送受信機入力信号(例えば、1つ以上の外部/配偶者のマイクロフォン装置からの会話音声信号)の処理に適用できるという利点が得られる。
【0060】
図面は、模式図であり、明確性のために簡略化されており、図面は、単に、本発明の理解にとって本質的な詳細を示すが、他の詳細は省略されている。全体的に、同一の部分または対応する部分には、同じ参照番号が使用される。
【0061】
図1は、本開示に係る例示的な聴覚機器2のブロック図である。聴覚機器2は、外部装置30からの第1無線入力信号5をアンテナ出力信号に変換するアンテナ4を備える。聴覚機器2は、無線送受信機7を備える。無線送受信機7は、アンテナ4に接続されており、アンテナ出力信号を送受信機入力信号10に変換する。例えば、送受信機入力信号10は、スパウスマイクロフォン装置からストリーミングされた会話音声信号と看做すことができる。
【0062】
聴覚機器2は、第1マイクロフォン8を有する入力モジュール6を備える。入力モジュール6は、マイクロフォンセットを備えていてよい。マイクロフォンセットは、第1入力信号9を提供するための第1マイクロフォン8、および/または第2入力信号を提供するための第2マイクロフォンを備える。例えば、第1入力信号9は、音響音声信号と看做すことができる。
【0063】
聴覚機器2は、入力信号を処理するプロセッサ16を備える。プロセッサ16は、当該プロセッサ16への入力信号に基づいて、プロセッサ出力信号17を提供する。プロセッサ16は、ユーザの聴力損失を補い、入力信号に基づいてプロセッサ出力信号17を提供するように構成される。
【0064】
聴覚機器は、プロセッサ出力信号17を音響出力信号に変換するためのレシーバ18を備える。レシーバ18は、プロセッサ出力信号17を聴覚機器ユーザの鼓膜に送られる音響出力信号に変換する。
【0065】
聴覚機器は、プリプロセッサ14を備える。プリプロセッサ14は、入力モジュール6と無線送受信機7に動作可能に接続されている。プリプロセッサ14は、第1入力信号9と送受信機入力信号10に基づいてプリプロセッサ出力信号15を提供するように構成される。
【0066】
聴覚機器は、コントローラ12を備える。コントローラ12は、無線送受信機7に動作可能に接続される。コントローラ12は、入力モジュール6、プリプロセッサ14、および/またはプロセッサ16に動作可能に接続されてよい。コントローラ12は、送受信機入力信号10と第1コントローラ入力信号20に基づいて音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定するように構成される。第1コントローラ入力信号20は第1入力信号9であってよい。第1コントローラ入力信号20はプリプロセッサ出力信号15であってよい。第1コントローラ入力信号20はプロセッサ出力信号17であってよい。コントローラ12は、送受信機入力信号10に基づいて音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定する音声明瞭度推定部12aを備える。コントローラ12は、音声明瞭度推定部12aにより推定された音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号13を提供するように構成される。
【0067】
コントローラ12は、コントローラ出力信号13に基づいてプリプロセッサ14を制御するように構成される。
【0068】
音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10と、第1入力信号9、プリプロセッサ出力信号15またはプロセッサ出力信号17であってよい第1コントローラ入力信号20とを比較することで、音声明瞭度インジケータを推定するように構成される。よって、音声明瞭度推定部12aは比較モジュール12abを備えていてよい。送受信機入力信号10がクリーンな参照信号であって(第1無線入力信号に基づくため)、第1コントローラ入力信号20が高ノイズ音声信号であってよい。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の変調および第1コントローラ入力信号20の変調に基づいて、送受信機入力信号10と第1コントローラ入力信号20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、第1コントローラ入力信号20の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関に基づいて、送受信機入力信号10と第1コントローラ入力信号20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、短時間客観明瞭度推定部12acを使用して音声明瞭度インジケータを推定するように構成されていてよい。短時間客観明瞭度推定部12acは、短時間重複セグメントにおける送受信機入力信号10と第1コントローラ入力信号20(例えば、第1入力信号9、プリプロセッサ出力信号15、またはプロセッサ出力信号17)との時間包絡線間の相関係数を求めること等によって、1つ以上の短時間セグメントにおける送受信機入力信号10と第1コントローラ入力信号20を比較するように構成される。
【0069】
コントローラ12は、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定するように構成されていてよい。例えば、1つ以上の例示的な聴覚機器において、コントローラは、前処理方式の1つ以上の第1ゲインパラメータと、前処理方式の1つ以上の第2ゲインパラメータを判定することで、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定するように構成されていてよい。コントローラ出力信号13は、前処理方式のパラメータ等、前処理方式を反映すると考えられる。例えば、コントローラ出力信号13は、1つ以上の第1ゲインパラメータおよび/または1つ以上の第2ゲインパラメータを含んでいてよい。
【0070】
プリプロセッサ14は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9と送受信機入力信号10の内の少なくとも一方に対して前処理方式を適用するように構成される。1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサ14は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9と送受信機入力信号10に対して前処理方式を適用するように構成される。
【0071】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサ14は、第1入力信号9に1つ以上の第1ゲインパラメータを適用し、送受信機入力信号10に1つ以上の第2ゲインパラメータを適用する、または逆の組み合わせに適用するように構成される。1つ以上の第1ゲインパラメータは第1広帯域ゲインを含み、1つ以上の第2ゲインパラメータは第2広帯域ゲインを含んでいてよい。1つ以上の第1ゲインパラメータは第1フィルタ係数セットを含み、1つ以上の第2ゲインパラメータは第2フィルタ係数セットを含んでいてよい。言い換えると、コントローラ出力信号13は、第1広帯域ゲインおよび/または第2広帯域ゲインを含んでいてよい。コントローラ出力信号13は、第1フィルタ係数セットおよび/または第2フィルタ係数セットを含んでいてよい。
【0072】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、コントローラ12は、各周波数帯における音声明瞭度インジケータを測定し、各周波数帯において測定された音声明瞭度インジケータに基づいて1つ以上の第1周波数依存ゲインパラメータと1つ以上の第2周波数依存ゲインパラメータを生成することにより、1つ以上の第1ゲインパラメータと1つ以上の第2ゲインパラメータを決定するように構成される。
【0073】
1つ以上の例示的な聴覚機器において、マイクロフォンセットは、第2入力信号を提供するための第2マイクロフォンを含む。
【0074】
図2は、本開示に係る例示的な聴覚機器2Aのブロック図であり、第1コントローラ入力信号20は第1入力信号9、20である。聴覚機器2Aはコントローラ12を備える。コントローラ12は、無線送受信機7と入力部6に動作可能に接続される。コントローラ12は、送受信機入力信号10(例えば外部装置からストリーミングされた音声信号)および第1入力信号9、20(例えばマイクロフォンからの音響信号)に基づいて、音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定するように構成される。コントローラ12は、送受信機入力信号10および第1入力信号9、20に基づいて音声明瞭度インジケータを推定するための音声明瞭度推定部12aを備える。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10と第1入力信号9、20とを比較することにより、音声明瞭度インジケータを推定するように構成される。送受信機入力信号10がクリーンな参照信号であって(第1無線入力信号に基づくため)、第1入力信号9、20が高ノイズ音声信号である。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の変調と第1入力信号9、20の変調に基づいて、送受信機入力信号10と第1入力信号9、20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、第1入力信号9、20の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関に基づいて、送受信機入力信号10と第1入力信号9、20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、短時間客観明瞭度推定部12acを使用して音声明瞭度インジケータを推定するように構成されていてよい。短時間客観明瞭度推定部12acは、短時間重複セグメントにおける送受信機入力信号10と第1コントローラ入力信号9、20との時間包絡線間の相関係数を求めること等によって、1つ以上の短時間セグメントにおける送受信機入力信号10と第1コントローラ入力信号9、20を比較するように構成される。
【0075】
コントローラ12は、音声明瞭度推定部12aによって推定された音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号13を提供するように構成される。
【0076】
プリプロセッサ14は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9と送受信機入力信号10に対して前処理方式を適用するように構成される。
【0077】
図3は、本開示に係る例示的な聴覚機器2Bのブロック図であり、第1コントローラ入力信号20はプリプロセッサ出力信号15、20である。聴覚機器2Bはコントローラ12を備える。コントローラ12は、無線送受信機7とプリプロセッサ14に動作可能に接続される。コントローラ12は、送受信機入力信号10とプリプロセッサ出力信号15、20に基づいて、音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定するように構成されている。コントローラ12は、送受信機入力信号10およびプリプロセッサ出力信号15、20に基づいて音声明瞭度インジケータを推定するための音声明瞭度推定部12aを備えている。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10とプリプロセッサ出力信号15、20を比較することにより、音声明瞭度インジケータを推定するように構成されている。送受信機入力信号10がクリーンな参照信号であって(第1無線入力信号に基づくため)、プリプロセッサ出力信号15、20が高ノイズ音声信号である。言い換えると、音声明瞭度インジケータは、送受信機信号(例えば外部装置からストリーミングされた音声信号)とプリプロセッサによって出力された混合信号(即ち、送受信機入力信号と第1入力信号を混合したもの)に基づいて推定される。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の変調とプリプロセッサ出力信号15、20の変調に基づいて、送受信機入力信号10とプリプロセッサ出力信号15、20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、プリプロセッサ出力信号15、20の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関に基づいて、送受信機入力信号10とプリプロセッサ出力信号15、20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、短時間客観明瞭度推定部12acを使用して音声明瞭度インジケータを推定するように構成されていてよい。短時間客観明瞭度推定部12acは、短時間重複セグメントにおける送受信機入力信号10とプリプロセッサ出力信号15、20との時間包絡線間の相関係数を求めること等によって、1つ以上の短時間セグメントにおける送受信機入力信号10とプリプロセッサ出力信号15、20を比較するように構成される。
【0078】
コントローラ12は、音声明瞭度推定部によって推定された音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号13を提供するように構成される。
【0079】
プリプロセッサ14は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9と送受信機入力信号10に対して前処理方式を適用するように構成されている。送受信機入力信号10とプリプロセッサ出力信号15、20に基づいて音声明瞭度を推定することにより、音声明瞭度推定の信頼性、精度の向上が実現する。
【0080】
図4は、本開示に係る例示的な聴覚機器2Cのブロック図であり、第1コントローラ入力信号20はプロセッサ出力信号17、20である。聴覚機器2Cはコントローラ12を備える。コントローラ12は、無線送受信機7とプリプロセッサ14に動作可能に接続される。コントローラ12は、送受信機入力信号10とプロセッサ出力信号17、20に基づいて、音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定するように構成されている。コントローラ12は、送受信機入力信号10とプロセッサ出力信号17、20に基づいて音声明瞭度インジケータを推定するための音声明瞭度推定部12aを備えている。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10とプロセッサ出力信号17、20を比較することにより、音声明瞭度インジケータを推定するように構成されている。送受信機入力信号10がクリーンな参照信号であって(第1無線入力信号に基づくため)、プロセッサ出力信号17、20が高ノイズ音声信号である。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の変調とプロセッサ出力信号17、20の変調に基づいて、送受信機入力信号10とプロセッサ出力信号17、20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、送受信機入力信号10の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、プロセッサ出力信号17、20の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関に基づいて、送受信機入力信号10とプロセッサ出力信号17、20を比較するように構成されていてよい。音声明瞭度推定部12aは、短時間客観明瞭度推定部12acを使用して音声明瞭度インジケータを推定するように構成されていてよい。短時間客観明瞭度推定部12acは、短時間重複セグメントにおける送受信機入力信号10とプロセッサ出力信号17、20との時間包絡線間の相関係数を求めること等によって、1つ以上の短時間セグメントにおける送受信機入力信号10とプロセッサ出力信号17、20とを比較するように構成される。
【0081】
コントローラ12は、音声明瞭度推定部によって推定された音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号13を提供するように構成される。プリプロセッサ14は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9と送受信機入力信号10に対して前処理方式を適用するように構成されている。
【0082】
図5は、本開示に係る例示的なプリプロセッサ14’を示すブロック図であり、プリプロセッサ14’は第1ゲイン制御モジュール14aと第2ゲイン制御モジュール14bを備える。プリプロセッサ14’は、第1入力信号9と送受信機入力信号10の内の少なくとも一方を前処理するように構成される。プリプロセッサ14’は、1つ以上の第1ゲインパラメータと1つ以上の第2ゲインパラメータを備えるコントローラ出力信号13を受信するように構成されている。プリプロセッサ14’は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9と送受信機入力信号10に対して前処理方式を適用するように構成される。言い換えると、プリプロセッサ14’は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9のゲインと送受信機入力信号10のゲインを制御する。
【0083】
図5に示す例では、コントローラ出力信号13は、第1広帯域ゲインαと第2広帯域ゲインβを有する。第1広帯域ゲインαと第2広帯域ゲインβは、音声明瞭度を測定することによってコントローラで求められる。1つ以上の例示的な聴覚機器において、プリプロセッサ14’は、第1入力信号9に対して第1ゲインパラメータαを適用し、送受信機入力信号10に対して第2ゲインパラメータβを適用するように構成されている。プリプロセッサ14’は、第1ゲイン制御モジュール14aと第2ゲイン制御モジュール14bを備える。プリプロセッサ14’は、第1ゲイン制御モジュール14aを使用して、第1入力信号9に対して第1広帯域ゲインαを適用するように構成されている。プリプロセッサ14’は、第2ゲイン制御モジュール14bを使用して、送受信機入力信号10に対して第2広帯域ゲインβを適用するように構成されている。第2ゲインパラメータβと第1ゲインパラメータαは、例えばβ=1-αの関係であることが考えられる。プリプロセッサ14’は、プリプロセッサ出力信号15を提供するために、第1ゲイン制御モジュール14aによって提供された信号と第2ゲイン制御モジュール14bによって提供された信号を混合するように構成される混合モジュール14cを備える。
【0084】
図6は、本開示に係る例示的なプリプロセッサ14’’を示すブロック図であり、プリプロセッサ14’’は第1フィルタ14dと第2フィルタ14eを備える。
【0085】
プリプロセッサ14’’は、第1入力信号9と送受信機入力信号10の少なくとも一方を前処理するように構成されている。プリプロセッサ14’’は、1つ以上の第1ゲインパラメータと1つ以上の第2ゲインパラメータを備えるコントローラ出力信号13を受信するように構成されている。プリプロセッサ14’’は、コントローラ出力信号13に基づいて、第1入力信号9と送受信機入力信号10に対して前処理方式を適用するように構成されている。コントローラ出力信号13は前処理方式を示している。
【0086】
図6に示す例では、プリプロセッサ14’’は、第1入力信号9をフィルタリングするための第1フィルタ14dと、送受信機入力信号10をフィルタリングするための第2フィルタ14eを備えている。例えば、第1フィルタ14dおよび/または第2フィルタ14eは適応フィルタであってよい。コントローラ出力信号13の1つ以上の第1ゲインパラメータは、第1フィルタ係数セットを含む。コントローラ出力信号13の1つ以上の第2ゲインパラメータは、第2フィルタ係数セットを含む。プリプロセッサ14’’は、第1フィルタ14dにおいて第1フィルタ係数セットを使用することによって、前処理方式を適用するように構成されている。プリプロセッサ14’’は、第2フィルタ14eにおいて第2フィルタ係数セットを使用することによって、前処理方式を適用するように構成されている。プリプロセッサ14’’は、プリプロセッサ出力信号15を提供するために、第1フィルタ14dによって提供された信号と第2フィルタ14eによって提供された信号を混合するように構成されている混合モジュール14fを備える。プリプロセッサ14’’を備える例示的な聴覚機器は、第1入力信号および送受信機入力信号の混合を最適な明瞭度とするように、第1入力信号と送受信機入力信号の周波数整形(frequency shaping)を実行可能である。即ち、マイクロフォンにより取得された音響音声信号と、外部装置からストリーミングされた音声信号を、これらの混合の明瞭度が最適となるように周波数整形可能である。
【0087】
図7は、本開示に係る例示的な聴覚機器の動作方法100を示すフローチャートである。聴覚機器の動作方法100は、本開示の聴覚機器または聴覚システムにおいて実行されてよい。方法100は、例えば聴覚機器のアンテナにより、外部装置からの第1無線入力信号を受信し102、例えば聴覚機器の無線送受信機において第1無線入力信号を送受信機入力信号に変換することを含む。
【0088】
方法100は、例えば聴覚機器の入力モジュールにおいて音響信号を受信し102、音響信号を第1入力信号を含む1つ以上の入力信号へ変換すること104を含む。
【0089】
方法は、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号に基づいて、音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定すること106を含む。音声明瞭度インジケータを推定すること106は、聴覚機器の音声明瞭度推定部および/または聴覚機器のコントローラにおいて実行できる。1つ以上の例示的な方法において、第1コントローラ入力信号は第1入力信号である。例えば、音声明瞭度インジケータを推定すること106は、送受信機入力信号および第1入力信号に基づいて実行されてよい。1つ以上の例示的な方法において、第1コントローラ入力信号はプリプロセッサ出力信号である。例えば、音声明瞭度インジケータを推定すること106は、送受信機入力信号とプリプロセッサ出力信号に基づいて実行されてよい。1つ以上の例示的な方法において、第1コントローラ入力信号はプロセッサ出力信号である。例えば、音声明瞭度インジケータを推定すること106は、送受信機入力信号およびプロセッサ出力信号に基づいて実行されてよい。
【0090】
方法は、コントローラ出力信号を聴覚機器のコントローラから聴覚機器のプリプロセッサへ提供すること108等、音声明瞭度インジケータに基づいてコントローラ出力信号を提供すること108を含む。
【0091】
方法は、コントローラ出力信号に基づき、第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方へ前処理方式を適用すること110を含む。第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方へ前処理方式を適用すること110は、聴覚機器のプリプロセッサにおいて実行されてよい。1つ以上の例示的な方法において、コントローラ出力信号に基づき、第1入力信号と送受信機入力信号の少なくとも一方へ前処理方式を適用すること110は、コントローラ出力信号に基づき、第1入力信号と送受信機入力信号へコントローラ出力信号に基づく前処理方式を適用すること110aを含む。
【0092】
1つ以上の例示的な方法において、音声明瞭度インジケータを推定すること106は、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較すること106aを含んでいてよい。例えば、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較すること106aは、送受信機入力信号の変調106bと第1コントローラ入力信号の変調に基づいて実行されてよい。例えば、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較すること106aは、送受信機入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、第1コントローラ入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との相関を判定すること106cを含んでいてよい。
【0093】
1つ以上の例示的な方法において、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較すること106aは、1つ以上の短時間セグメントにおいて受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較するように構成される短時間客観明瞭度推定部を使用すること106dによって実行される。例えば、1つ以上の短時間セグメントにおいて受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較すること106dは、短時間重複セグメントにおいて、送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号(例えば、第1入力信号、プリプロセッサ出力信号、またはプロセッサ出力信号)との時間包絡線間の相関係数を求めることを含んでいてよい。
【0094】
1つ以上の例示的な方法100は、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定すること107を含む。音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定すること107は、聴覚機器のコントローラモジュールで実行されてよい。例えば、音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定すること107は、前処理方式の1つ以上の第1ゲインパラメータと、前処理方式の1つ以上の第2ゲインパラメータを決定すること107aを含む。コントローラ出力信号は、前処理方式の1つ以上の第1ゲインパラメータおよび/または前処理方式の1つ以上の第2ゲインパラメータを含んでいてよい。コントローラ出力信号は、選択された前処理方式を示す。例えば、1つ以上の第1ゲインパラメータは第1広帯域ゲインを含んでいてよく、第2ゲインパラメータは第2広帯域ゲインを含んでいてよい。
【0095】
1つ以上の例示的な方法において、コントローラ出力信号に基づいて、第1入力信号と送受信機入力信号へ前処理方式を適用すること110は、1つ以上の第1ゲインパラメータを第1入力信号に適用し、1つ以上の第2ゲインパラメータを送受信機入力信号に適用すること110bを含む。
【0096】
1つ以上の例示的な方法において、コントローラ出力信号に基づいて、第1入力信号と送受信機入力信号へ前処理方式を適用すること110は、第1入力信号をフィルタリングし、送受信機入力信号をフィルタリングすること110cを含んでいてよい。例えば、第1フィルタにより第1入力信号をフィルタリングし、第2フィルタにより送受信機入力信号をフィルタリングしてもよく、逆の組み合わせであってよい。1つ以上の例示的な方法において、1つ以上の第1ゲインパラメータは第1フィルタ係数セットを含み、1つ以上の第2ゲインパラメータは第2フィルタ係数セットを含む。例えば、コントローラ出力信号は第1フィルタ係数セットおよび/または第2フィルタ係数セットを含んでいてよい。
【0097】
本明細書に開示の聴覚機器および方法は、音声明瞭度インジケータの推定、推定された音声明瞭度インジケータに基づく前処理の入力信号と送受信機入力信号への適用を可能とする。これにより、1つ以上のマイクロフォンからの入力信号を、送受信機入力信号(例えば、1つ以上の外部/スパウスマイクロフォン装置からの信号)の処理に適用できるという利点が得られる。例えば、本開示は聴覚機器が入力信号を最適なレベルに減衰可能とするという利点がある。本開示の利点として、聴覚機器ユーザが音響環境から隔離されることを防止しながら、聴覚機器ユーザが外部装置からの送受信機入力信号を介して受信された音声を理解可能となる。
【0098】
本明細書で使用される「第1」、「第2」、「第3」、「第4」等の用語は、具体的な順序を示すものではなく、各要素の特定に使用されている。さらに、本明細書で使用される第1、第2等の用語は、何らかの順序や重要性を示すものではない。本明細書で使用される第1、第2等の用語は、要素同士の区別に用いられている。本明細書および他部で使用される第1、第2という用語は、あくまで参照符号として付されるものであって、特定の空間的、時間的順序を示すものではない。さらに、第1要素、第2要素と称されたということで、必ずしも他方の存在が示唆されているとは限らない。
【0099】
特定の特徴を示し、記載してきたが、これらの特徴は、特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図していないことが理解され、特許請求の範囲に記載された発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更及び改変が行われてよいことが当業者に明らかになるだろう。従って、明細書及び図面は、限定するという観点ではなく、実例であると考えるべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、全ての代替例、改変及び均等物を包含することを意図している。
【0100】
例示的な聴覚機器が以下の項目に記載される。
(項目1)
外部装置からの第1無線入力信号をアンテナ出力信号に変換するアンテナと、
前記アンテナに接続されており、前記アンテナ出力信号を送受信機入力信号に変換する無線送受信機と、
第1マイクロフォンを有しており、第1入力信号を提供する入力モジュールと、
入力信号を処理し、入力信号に基づくプロセッサ出力信号を提供するプロセッサと、
前記プロセッサ出力信号に基づいて、出力信号を音響出力信号に変換するレシーバと、
前記入力モジュールと前記無線送受信機に動作可能に接続されており、前記第1入力信号と前記送受信機入力信号に基づいてプリプロセッサ出力信号を提供するプリプロセッサと、
前記無線送受信機に動作可能に接続されており、前記送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号に基づいて音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定する音声明瞭度推定部を有し、前記音声明瞭度インジケータに基づいてコントローラ出力信号を提供するコントローラと、を備え、
前記プリプロセッサは、前記コントローラ出力信号に基づいて、前記第1入力信号と前記送受信機入力信号の少なくとも一方に対して前処理方式を適用する、聴覚機器。
(項目2)
前記第1コントローラ入力信号は前記第1入力信号である、項目1に記載の聴覚機器。
(項目3)
前記第1コントローラ入力信号は前記プリプロセッサ出力信号である、項目1に記載の聴覚機器。
(項目4)
前記第1コントローラ入力信号は前記プロセッサ出力信号である、項目1に記載の聴覚機器。
(項目5)
前記音声明瞭度推定部は、前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号を比較することによって前記音声明瞭度インジケータを推定する、項目1から4のいずれか一項に記載の聴覚機器。
(項目6)
前記音声明瞭度推定部は、前記送受信機入力信号の変調と前記第1コントローラ入力信号の変調に基づいて、前記前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号を比較する、項目5に記載の聴覚機器。
(項目7)
前記音声明瞭度推定部は、前記送受信機入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、前記第1コントローラ入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と、の相関に基づいて、前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号を比較する、項目5に記載の聴覚機器。
(項目8)
前記音声明瞭度推定部は、短時間客観明瞭度推定部を使用して前記音声明瞭度インジケータを推定し、
前記短時間客観明瞭度推定部は、1つ以上の短時間セグメントにおいて、前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号を比較する、項目1から7のいずれか一項に記載の聴覚機器。
(項目9)
前記コントローラは、前記音声明瞭度インジケータに基づいて前記前処理方式を決定する、項目1から8のいずれか一項に記載の聴覚機器。
(項目10)
前記コントローラは、前記前処理方式の1つ以上の第1ゲインパラメータと、前記前処理方式の1つ以上の第2ゲインパラメータとを決定することによって、前記音声明瞭度インジケータに基づいて前記前処理方式を決定する、項目9に記載の聴覚機器。
(項目11)
前記プリプロセッサは、前記第1入力信号に前記1つ以上の第1ゲインパラメータを適用し、前記送受信機入力信号に前記1つ以上の第2ゲインパラメータを適用する、項目10に記載の聴覚機器。
(項目12)
前記1つ以上の第1ゲインパラメータは、第1フィルタ係数セットを有し、
前記1つ以上の第2ゲインパラメータは、第2フィルタ係数セットを有する、項目10または11に記載の聴覚機器。
(項目13)
前記音声明瞭度インジケータに基づいて前記1つ以上の第1ゲインパラメータと前記1つ以上の第2ゲインパラメータを決定することが、各周波数帯における音声明瞭度インジケータを測定することと、各周波数帯で測定された前記音声明瞭度インジケータに基づいて1つ以上の第1周波数依存ゲインパラメータと1つ以上の第2周波数依存ゲインパラメータを生成することを含む、項目10から12のいずれか一項に記載の聴覚機器。
(項目14)
前記外部装置は、スパウスマイクロフォン装置であり、
前記送受信機入力信号は、前記スパウスマイクロフォン装置からの会話音声信号である、、項目1から13のいずれか一項に記載の聴覚機器。
(項目15)
聴覚機器の動作方法であって、
外部装置から第1無線入力信号を受信し、前記第1無線入力信号を送受信機入力信号に変換することと、
音響信号を受信し、前記音響信号を第1入力信号を含む1つ以上の入力信号に変換することと、
前記送受信機入力信号と前記第1コントローラ入力信号に基づいて音声明瞭度を示す音声明瞭度インジケータを推定することと、
前記音声明瞭度インジケータに基づいて、コントローラ出力信号を提供することと、
前記コントローラ出力信号に基づいて、前記第1入力信号と前記送受信機入力信号の少なくとも一方に前処理方式を適用することを備える、方法。
【符号の説明】
【0101】
2:聴覚機器
2A:聴覚機器
2B:聴覚機器
2C:聴覚機器
4:アンテナ
5:第1無線入力信号
6:入力モジュール
7:無線送受信機
8:第1マイクロフォン
9:第1入力信号
10:送受信機入力信号
12:コントローラ
12a:音声明瞭度推定部
12ab:比較モジュール
12ac:短時間客観明瞭度推定部
13:コントローラ出力信号
14、14’、14’’:プリプロセッサ
14a:第1ゲイン制御モジュール
14b:第2ゲイン制御モジュール
14c、14f:混合モジュール
14d:第1フィルタ
14e:第2フィルタ
15:プリプロセッサ出力信号
16:プロセッサ
17:プロセッサ出力信号
18:レシーバ
20:第1コントローラ入力信号
30:外部装置
100:聴覚機器の動作方法
102:第1無線入力信号を受信
104:音響信号を受信および変換
106:音声明瞭度インジケータを推定
106a:送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号を比較
106b:変調された送受信機入力信号と変調された第1コントローラ入力信号を比較
106c:送受信機入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示と第1コントローラ入力信号の1つ以上のスペクトルおよび/または時間的標示との間の相関を判定
106d:1つ以上の短時間セグメントにおいて送受信機入力信号と第1コントローラ入力信号とを比較
107:音声明瞭度インジケータに基づいて前処理方式を決定
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7