(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】超極細繊維状炭素、超極細繊維状炭素集合体、炭素系導電助剤、非水電解質二次電池用電極材料、非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池、並びに超極細繊維状炭素の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20220214BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2018149617
(22)【出願日】2018-08-08
(62)【分割の表示】P 2017102990の分割
【原出願日】2014-01-24
【審査請求日】2018-08-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2013012667
(32)【優先日】2013-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013074845
(32)【優先日】2013-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013100755
(32)【優先日】2013-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013100757
(32)【優先日】2013-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】谷内 一輝
(72)【発明者】
【氏名】小村 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】兼松 亜沙美
(72)【発明者】
【氏名】大道 高弘
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】境 周一
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-13742(JP,A)
【文献】特開2007-311279(JP,A)
【文献】特開2008-34376(JP,A)
【文献】国際公開第2011/002013(WO,A1)
【文献】特開平8-190912(JP,A)
【文献】特開2009-272041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
D01F 9/08-9/32
C01B 32/00-32/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐度が0.01個/μm以下である直線構造を有し、
平均繊維長が10μm超50μm以下であり、かつ平均繊維径が200nm超900nm以下の範囲である超極細繊維状炭素であって、
前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が
、界面活性剤によって修飾されて
おり、かつ/又は酸化処理され
ている、
超極細繊維状炭素。
【請求項2】
前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が、界面活性剤によって修飾されており、かつ酸化処理されている、請求項1記載の超極細繊維状炭素。
【請求項3】
解砕されてなる、請求項1
又は2に記載の超極細繊維状炭素。
【請求項4】
乾式粉砕装置及び/又は湿式粉砕装置により解砕されてなる、請求項1
~3のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素。
【請求項5】
アスペクト比が5~1000である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素が集合して成る、超極細繊維状炭素集合体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素、及び/又は請求項6に記載の超極細繊維状炭素集合体を含む、炭素系導電助剤。
【請求項8】
請求項7に記載の炭素系導電助剤と、電極活物質と、を少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料。
【請求項9】
溶媒として水を更に含む、請求項8に記載の非水電解質二次電池用電極材料。
【請求項10】
集電体及び前記集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、前記活物質層が請求項8又は9に記載の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極。
【請求項11】
請求項10に記載の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池。
【請求項12】
水分散性を有する超極細繊維状炭素の製造方法であって、
前記超極細繊維状炭素は、分岐度が0.01個/μm以下である直線構造を有し、
平均繊維長が10μm超50μm以下であり、かつ平均繊維径が200nm超900nm以下の範囲であり
前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部を
、界面活性剤によって修飾すること、及び/又
は酸化処理すること、
を含む、超極細繊維状炭素の製造方法。
【請求項13】
前記超極細繊維状炭素を有機溶剤に分散させ、次いで界面活性剤を添加することにより、前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾される、請求項12に記載の超極細繊維状炭素の製造方法。
【請求項14】
解砕処理する、請求項12
又は13に記載の超極細繊維状炭素の製造方法。
【請求項15】
乾式粉砕装置及び/又は湿式粉砕装置により解砕処理する、請求項12
~14のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素の製造方法。
【請求項16】
炭素原料としてメソフェーズピッチを加熱処理することをさらに含む、請求項12~
15のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用、特にはリチウムイオン二次電池用の超極細繊維状炭素及び超極細繊維状炭素集合体、複合体、並びに、それらを用いた炭素系導電助剤、電極活物質層、電極材料、及び電極に関する。また、本発明は、その電極を用いた非水電解質二次電池、特にはリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
〈第1及び第2の本発明の背景技術〉
非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池は、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池であり、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極にグラファイトなどの炭素材を用いるものが主流の二次電池である。リチウムイオン二次電池は、二次電池の中でもエネルギー密度が高い特徴を持つことから、携帯電話などの小型機器から、電気自動車などの大型機器まで、応用範囲が広がってきている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の課題の一つとして、充放電の繰り返しによる電池容量の低下(劣化)を防止する点が挙げられる(サイクル特性の向上)。サイクル特性の低下の原因としては、電極活物質、電解質、電解液などの変性(劣化)や、電極箔と電極活物質の剥離による電極抵抗の上昇などが考えられるが、その中でも一つの大きな原因として活物質自身の膨張・収縮が挙げられる。その改良方法の一つとして、繊維状の炭素材料を電極内に加えることにより、サイクル特性が向上することが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、加える炭素材料が電極内で凝集してしまうとその特性が十分に活かされないため、電極内での分散性が改善された繊維状の炭素材料を用いることでサイクル特性が向上することが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
〈第3及び第4の本発明の背景技術〉
第1及び第2の本発明の背景技術の記載のように、リチウムイオン二次電池の課題の一つとして、充放電の繰り返しによる電池容量の低下(劣化)を防止する点が挙げられる(サイクル特性の向上)。
【0006】
例えば、特許文献1では、リチウムを吸蔵・放出できる負極活物質、導電性炭素材料、及びバインダーを含むリチウム二次電池用負極であって、負極活物質が、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)が0.335~0.337nmの天然黒鉛または人造黒鉛を用いた黒鉛質材料であり、導電性炭素材料が、平均繊維径1~200nmで、内部に中空構造を有し、繊維の長さ方向に対して垂直方向にグラフェンシートが積層した構造を持ち、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)が0.336~0.345nmの範囲にある気相法炭素繊維であり、上記気相法炭素繊維が10μm以上の大きさの凝集体を形成することなく負極全体の0.1~10質量%含まれているリチウム二次電池用負極が提案されている。また、例えば、特許文献3では、鱗片状黒鉛または球状黒鉛の少なくともいずれか1つの黒鉛材料と、平均粒子径が10μm以上30μm以下の二次粒子を形成する繊維状炭素とを含有することを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-42620号公報
【文献】特開2012-003985号公報
【文献】特開2000-133267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
〈第1の本発明の課題〉
本発明の目的は、機械的強度に優れた電極活物質層、その電極活物質層を含む非水電解質二次電池、及びその電極活物質層に含まれる炭素系導電助剤を提供することにある。また、本発明の目的は、電極活物質層の機械的強度を向上させることで、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池を提供することにある。
【0009】
〈第2の本発明の課題〉
本発明は、高導電性と優れた機械的強度とを有する複合体、その複合体を含む炭素系導電助剤、その導電助剤を含む非水電解質二次電池用電極材料、及びその電極材料を含む非水電解質二次電池用電極を提供することを目的とする。また、本発明は、複合体、その複合体を含む炭素系導電助剤、複合体を含む電極活物質層、及びその電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極の導電性と機械的強度とを向上させることで、優れたレート特性を有する非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【0010】
〈第3の本発明の課題〉
特許文献1に記載の発明は、繊維状の炭素材料を電極内に加えることにより、サイクル特性の向上を図っているが、繊維状の炭素材料として気相法炭素繊維を使用しており、気相法炭素繊維は分岐構造を有しているため、電極内の分散性を高めることが難しく、繊維状の炭素材料が凝集してしまうことがあり、それによってサイクル特性の向上が不充分なものとなる問題点があった。また、特許文献3に記載の発明は、気相法炭素繊維を0.5~22.5質量部の添加し、電極中に平均粒径12~48μmの気相法炭素繊維からなる二次粒子を含んでいることを特徴としてサイクル特性の向上を図っているが、気相法炭素繊維が局在していると、電流がその二次粒子に集中してしまい、その部分のみが集中的に劣化することが予想されて、サイクル特性の向上が不充分なものとなる問題点があった。
【0011】
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意検討した結果、非水電解質二次電池用の超極細繊維状炭素及び超極細繊維状炭素集合体の水分散性を改良することで、非水電解質二次電池、特にはリチウムイオン二次電池用のサイクル特性の向上、さらには高容量化を達成することができることを見出した。
【0012】
本発明は、優れた水分散性を有する超極細繊維状炭素及び超極細繊維状炭素集合体を提供することを目的とする。また、本発明は、超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性を改良することで、高導電性を有する炭素系導電助剤、非水電解質二次電池用電極材料、及び非水電解質二次電池用電極を提供することを目的とする。さらに、本発明は、超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性を改良することで、優れたサイクル特性であって、かつ高容量である非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【0013】
〈第4の本発明の課題〉
本発明者らは、第3の本発明の課題に記載した上記問題点に鑑みて鋭意検討した結果、非水電解質二次電池用の超極細繊維状炭素集合体の水分散性と機械的強度とを改良することで、非水電解質二次電池、特にはリチウムイオン二次電池用のサイクル特性の向上、さらには高容量化を達成することができることを見出した。
【0014】
本発明は、優れた水分散性と優れた機械的強度とを有する超極細繊維状炭素集合体を提供することを目的とする。また、本発明は、超極細繊維状炭素集合体の水分散性及び機械的強度を改良することで、高導電性と優れた機械的強度とを有する炭素系導電助剤、非水電解質二次電池用電極材料、及び非水電解質二次電池用電極を提供することを目的とする。さらに、本発明は、超極細繊維状炭素集合体の水分散性及び機械的強度を改良することで、優れたサイクル特性であって、かつ高容量である非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
〈第1の本発明〉
上記目的を解決するために、本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、電極活物質と、炭素系導電助剤と、バインダーとを少なくとも含む電極活物質層であって、その炭素系導電助剤が、直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、かつ面方向の最大引張強度σM、及び上記最大引張強度σMに対して面内垂直方向の引張強度σTが、下記の関係式(a)を満たす、電極活物質層である。
σM/σT≦1.6 (a)
【0016】
〈第2の本発明〉
上記目的を解決するために、本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、超極細繊維状炭素と球状炭素とを含む複合体であって、超極細繊維状炭素が直線構造を有し、超極細繊維状炭素と球状炭素とが一体的に互いに付着されて、上記超極細繊維状炭素と上記球状炭素が均一に混合されてなる、複合体である。
【0017】
〈第3の本発明〉
上記課題を解決するために、本発明は、直線構造を有する超極細繊維状炭素であって、上記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾される、及び/又は上記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理される、超極細繊維状炭素を提供し、また、その超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体を提供する。
【0018】
〈第4の本発明〉
上記課題を解決するために、本発明は、直線構造を有する超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体であって、超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の上記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾された、及び/又は超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理されて、体積換算粒度分布測定により得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長15μm以下の第一ピークと繊維長15μm超の第二ピークとを有し、第一ピークの体積換算粒度分布(%)の第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が3/1以上である、超極細繊維状炭素集合体を提供する。
したがって、本発明の態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
電極活物質と、炭素系導電助剤と、バインダーとを少なくとも含む電極活物質層であって、
前記炭素系導電助剤が、直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、かつ
面方向の最大引張強度σM、及び前記最大引張強度σMに対して面内垂直方向の引張強度σTが、下記の関係式(a)を満たす、電極活物質層:
σM/σT≦1.6 (a)
《態様2》
前記電極活物質層の総質量に対して、10質量%以下の前記炭素系導電助剤を含む、態様1に記載の電極活物質層。
《態様3》
前記電極活物質層の総質量に対して、1質量%以上、25質量%以下のバインダーを含む、態様1又は2に記載の電極活物質層。
《態様4》
前記超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~15μmである、態様1~3のいずれか1項に記載の電極活物質層。
《態様5》
前記超極細繊維状炭素が、平均繊維長が1μm~15μmである超極細繊維状炭素と、平均繊維長が15μm超~50μmである超極細繊維状炭素とを含む、態様1~4のいずれか1項に記載の電極活物質層。
《態様6》
態様1~5のいずれか1項に記載の電極活物質層を含む、非水電解質二次電池。
《態様7》
直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、
前記超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~15μmである、
炭素系導電助剤。
《態様8》
直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、
前記超極細繊維状炭素が、平均繊維長が1μm~15μmである超極細繊維状炭素と、平均繊維長が15μm超~50μmである超極細繊維状炭素とを含む、
炭素系導電助剤。
《態様9》
前記超極細繊維状炭素と球状炭素とが一体的に互いに付着されて、前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素が均一に混合されてなる複合体を含む、態様1~5のいずれか1項に記載の電極活物質層。
《態様10》
超極細繊維状炭素と球状炭素とを含む複合体であって、
前記超極細繊維状炭素が直線構造を有し、
前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素とが一体的に互いに付着されて、前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素が均一に混合されてなる、
複合体。
《態様10-2》
超極細繊維状炭素と球状炭素とを含む複合体であって、
前記超極細繊維状炭素が直線構造を有し、
前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素とを乾式で複合化をすることによって得られており、
前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素とが一体的に互いに付着されて、前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素が均一に混合されてなる、
複合体。
《態様11》
前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素とを乾式複合をすることによって得られる、態様10に記載の複合体。
《態様11-2》
前記複合化が乾式ジェットミルで行われている、態様10に記載の複合体。
《態様12》
前記複合体の密度と前記超極細繊維状炭素の密度とが略同一であるときに、前記複合体が、前記超極細繊維状炭素に対して略同等から50倍の体積抵抗率を有する、態様10又は11に記載の複合体。
《態様13》
前記複合体の密度と前記球状炭素の密度とが略同一であるときに、前記複合体が、前記球状炭素に対して略同等~1/100倍以下の体積抵抗率を有する、態様10~12のいずれか1項に記載の複合体。
《態様14》
前記超極細繊維状炭素と前記球状炭素との質量比が、1:9~5:5である、態様10~13のいずれか1項に記載の複合体。
《態様15》
前記超極細繊維状炭素の平均繊維長が10μm超~50μmである、態様10~14のいずれか1項に記載の複合体。
《態様16》
前記超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~10μmである、態様10~14のいずれか1項に記載の複合体。
《態様17》
前記球状炭素がカーボンブラックである、態様10~16のいずれか1項に記載の複合体。
《態様18》
態様10~17のいずれか1項に記載の複合体を含む、炭素系導電助剤。
《態様19》
態様9に記載の電極活物質層を含む、非水電解質二次電池。
《態様20》
直線構造を有する超極細繊維状炭素であって、
前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾される、
及び/又は前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理される、
超極細繊維状炭素。
《態様20-2》
超極細繊維状炭素であって、
直線構造を有し、
解砕されており、
前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾されており、及び/又は前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理されている、
超極細繊維状炭素。
《態様21》
解砕されてなる、態様20に記載の超極細繊維状炭素。
《態様21-2》
粉砕されている、態様20に記載の超極細繊維状炭素。
《態様22》
乾式粉砕装置及び/又は湿式粉砕装置により解砕されてなる、態様21に記載の超極細繊維状炭素。
《態様22-2》
乾式粉砕装置及び/又は湿式粉砕装置により解砕されてなる、態様20又は21に記載の超極細繊維状炭素。
《態様23》
アスペクト比が1~1000である、態様20~22のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素。
《態様24》
態様20~23のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素が集合して成る、超極細繊維状炭素集合体。
《態様25》
態様20~23のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素、及び/又は態様24に記載の超極細繊維状炭素集合体を含む、炭素系導電助剤。
《態様26》
態様25に記載の炭素系導電助剤と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料。
《態様27》
溶媒として水を更に含む、態様26に記載の非水電解質二次電池用電極材料。
《態様28》
集電体及び前記集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、前記活物質層が態様26又は27に記載の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極。
《態様29》
態様28に記載の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池。
《態様30》
直線構造を有する超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体であって、
前記超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の前記超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾された、及び/又は前記超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理されて、
体積換算粒度分布測定により得られた前記超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長15μm以下の第一ピークと繊維長15μm超の第二ピークとを有し、前記第一ピークの体積換算粒度分布(%)の前記第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が、3/1以上である、
超極細繊維状炭素集合体。
《態様31》
前記超極細繊維状炭素集合体の前記超極細繊維状炭素の平均繊維長が25μm以下である、態様30に記載の超極細繊維状炭素集合体。
《態様32》
超遠心粉砕機により処理されて形成される、態様30又は31に記載の超極細繊維状炭素集合体。
《態様33》
前記超極細繊維状炭素集合体の前記超極細繊維状炭素のアスペクト比が1~1000である、態様30~32のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素集合体。
《態様34》
態様30~33のいずれか1項に記載の超極細繊維状炭素集合体を含む、炭素系導電助剤。
《態様35》
態様34に記載の炭素系導電助剤と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料。
《態様36》
溶媒として水を更に含む、態様35に記載の非水電解質二次電池用電極材料。
《態様37》
集電体及び前記集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、前記活物質層が態様35又は36に記載の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極。
《態様38》
態様37に記載の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0019】
〈第1の本発明の効果〉
本発明によれば、機械的強度に優れた電極活物質層、その電極活物質層を含む非水電解質二次電池、及びその電極活物質層に含まれる炭素系導電助剤を提供される。また、本発明によれば、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池が提供される。
【0020】
〈第2の本発明の効果〉
本発明によれば、高導電性と優れた機械的強度とを有する複合体、その複合体を含む炭素系導電助剤、その複合体を含む電極活物質層、及びその電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極が提供される。また、本発明は、複合体、その複合体を含む炭素系導電助剤、その複合体を含む電極活物質層、及びその電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極の導電性と機械的強度とを向上させることで、優れたサイクル特性であって、かつ高容量である非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池が提供される。
【0021】
〈第3の本発明の効果〉
本発明によれば、優れた水分散性を有する超極細繊維状炭素及び超極細繊維状炭素集合体が提供される。また、本発明によれば、超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性を改良することで、高導電性を有する炭素系導電助剤、非水電解質二次電池用電極材料、及び非水電解質二次電池用電極が提供される。さらに、本発明によれば、超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性を改良することで、優れたサイクル特性であって、かつ高容量である非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池が提供される。
【0022】
〈第4の本発明の効果〉
本発明によれば、優れた水分散性と優れた機械的強度とを有する超極細繊維状炭素集合体が提供される。また、本発明によれば、超極細繊維状炭素集合体の水分散性及び機械的強度を改良することで、高導電性と優れた機械強度とを有する炭素系導電助剤、非水電解質二次電池用電極材料、及び非水電解質二次電池用電極が提供される。さらに、本発明によれば、超極細繊維状炭素集合体の水分散性及び機械的強度を改良することで、優れたサイクル特性であって、かつ高容量である非水電解質二次電池、特には、リチウムイオン二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である。
【
図2】参考例A1で作製された評価電極活物質層の引張試験結果を示す応力―ひずみ曲線図である(CNF)。
【
図3】実施例A2で作製された評価電極活物質層の引張試験結果を示す応力―ひずみ曲線図である(S-CNF)。
【
図4】実施例A3で作製された評価電極活物質層の引張試験結果を示す応力―ひずみ曲線図である(CNF/S-CNF)。
【
図5】実施例A4で作製された評価電極活物質層の引張試験結果を示す応力―ひずみ曲線図である(CNF/AB)。
【
図6】比較例A1で作製された評価電極活物質層の引張試験結果を示す応力―ひずみ曲線図である(VGCF)。
【
図7】比較例A2で作製された評価電極活物質層の引張試験結果を示す応力―ひずみ曲線図である(AB)。
【
図8】参考例A1、実施例A2~4及び比較例A1~2で作製された電極活物質層の0.2%(0.1mm)伸長時にかかる応力(MPa)のMD方向(電極作製時に電極材料(スラリー)を塗布するときの塗布方向)の結果を示す図である。
【
図9】参考例A1、実施例A2~4及び比較例A1~2で作製された電極活物質層の0.2%(0.1mm)伸長時にかかる応力(MPa)の)のTD方向(電極作製時に電極材料(スラリー)を塗布するときの塗布方向に対する面内垂直方向)の結果を示す図である。
【
図10】参考例A1、実施例A3及び実施例A4で用いられた超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である(CNF)。
【
図11】実施例A2及び実施例A3で用いられた超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像((a)2,000倍と(b)8,000倍)である(S-CNF)。
【
図12】実施例A4で用いられたアセチレンブラックの走査型電子顕微鏡像(8,000倍)である(AB)。
【
図13】実施例A3で作製された電極活物質層の走査型電子顕微鏡像((a)5,000倍と(b)8,000倍)である(CNF/S-CNF)。
【
図14】実施例A4で作製された電極活物質層の走査型電子顕微鏡像((a)5,000倍と(b)8,000倍)である(CNF/AB)。
【
図15】超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である。
【
図16】実施例B1-1及び実施例B1-2、並びに比較例B1-1で用いられた超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である(CNF)。
【
図17】実施例B1-1で得られた複合体1-1の走査型電子顕微鏡象(500倍)の観察結果を示す写真である。
【
図18】実施例B1-1で得られた複合体1-1の走査型電子顕微鏡象(1000倍)の観察結果を示す写真である。
【
図19】実施例B1-2で得られた複合体1-2の走査型電子顕微鏡象(500倍)の観察結果を示す写真である。
【
図20】実施例B1-2で得られた複合体1-2の走査型電子顕微鏡象(1000倍)の観察結果を示す写真である。
【
図21】実施例B3及び比較例B2を実施することによって得られた、密度と体積抵抗率との関係の結果を示す図である。
【
図22】実施例B3-2で作製したセルの放電レート特性チャートである(CNF/AB)。
【
図23】実施例B3-3で作製したセルの放電レート特性チャートである(CNF/AB(ボールミル))。
【
図24】比較例B3-1で作製したセルの放電レート特性チャートである(CNF)。
【
図25】比較例B3-2で作製したセルの放電レート特性チャートである(AB)。
【
図26】超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である。
【
図27】実施例C1及び比較例C1で用いられた超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である(CNF)。
【
図28】実施例C1で得られたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図29】実施例C2で得られたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図30】実施例C3で得られたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図31】比較例C1で得られたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図32】実施例C4で得られたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図33】実施例C5で得られたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図34】実施例C6で得られたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図35】実施例C1で得られた電極中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図36】実施例C4で得られた電極中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図37】実施例C5で得られた電極中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図38】実施例C6で得られた電極中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性を示す図である。
【
図39】超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である。
【
図40】実施例D1~2及び比較例D1~2で用いられた超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡像(2,000倍)である(CNF)。
【
図41】実施例D1で得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を示す図である。
【
図42】実施例D2で得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を示す図である。
【
図43】比較例D1で得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を示す図である。
【
図44】比較例D2で得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〈第1の本発明〉
本発明による電極活物質層は、電極活物質と、炭素系導電助剤と、バインダーとを少なくとも含み、炭素系導電助剤が、直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、かつ面方向の最大引張強度σM、及び上記最大引張強度σMに対して面内垂直方向の引張強度σTが、下記の関係式(a)を満たす(態様1)。
σM/σT≦1.6 (a)
【0025】
態様1によれば、最大引張強度σMと面内垂直方向の引張強度σTとが同等であることによって、充放電の際に電極活物質が膨張・収縮しても電極活物質層の割れ、あるいは電極活物質層の集電体からの剥離を抑制できることから、優れたサイクル特性の効果を奏することができる。
【0026】
態様1において、電極活物質層の総質量に対して、10質量%以下の炭素系導電助剤を含むことが好ましい(態様2)。態様2によれば、電極材料を塗布するときの塗布方向(MD方向)及び/又は塗布方向に対する面内垂直方向(TD方向)に対して機械的強度が大きく、優れた補強効果を奏する。
【0027】
態様1又は2において、電極活物質層の総質量に対して、1質量%以上、25質量%以下のバインダーを含むことが好ましい(態様3)。態様3によれば、電極材料を塗布するときの塗布方向(MD方向)及び/又は塗布方向に対する面内垂直方向(TD方向)に対して機械的強度が大きく、優れた補強効果を奏する。
【0028】
態様1~3のいずれか1の態様において、超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~15μmであることが好ましい(態様4)。態様4によれば、電極材料を塗布するときの塗布方向(MD方向)及び/又は塗布方向に対する面内垂直方向(TD方向)に対して機械的強度が大きく、優れた補強効果を奏する。
【0029】
態様1~4のいずれか1の態様において、超極細繊維状炭素が、平均繊維長が1μm~15μmである超極細繊維状炭素と、平均繊維長が15μm超~50μmである超極細繊維状炭素とを含むことが好ましい(態様5)。態様5によれば、電極材料を塗布するときの塗布方向(MD方向)及び/又は塗布方向に対する面内垂直方向(TD方向)に対して機械的強度が大きく、優れた補強効果を奏する。
【0030】
本発明による電極活物質層において、態様1~5のうち2以上の態様を組み合わせることができる。
【0031】
また、本発明による電極活物質層は、超極細繊維状炭素の平均繊維長が異なる少なくとも2種の超極細繊維状炭素を含むことが好ましく、少なくとも2種の超極細繊維状炭素のうち少なくとも1種の超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~15μmであることがより好ましい。ここで、超極細繊維状炭素をCNFと称する場合がり、平均繊維長が短い超極細繊維状炭素、例えば、平均繊維長が1μm~15μmである超極細繊維状炭素をS-CNFと称する場合がある。
【0032】
さらに、本発明による電極活物質層は、超極細繊維状炭素と、超極細繊維状炭素以外の少なくとも1種の炭素系材料とを含むことが好ましく、さらにまた、超極細繊維状炭素の平均繊維長が異なる少なくとも2種の超極細繊維状炭素と、超極細繊維状炭素以外の少なくとも1種の炭素系材料とを含むことが好ましい。超極細繊維状炭素以外の少なくとも1種の炭素系材料は例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0033】
本発明による非水電解質二次電池は、態様1~5に記載の電極活物質層を含む非水電解質二次電池である(態様6)。態様1~5に記載の電極活物質層を用いた非水電解質二次電池用の電極は機械的強度を向上させることができるので、態様6の非水電解質二次電池は、充放電の際に活物質の膨張・収縮が起こったとしても導電パスを維持することができることから、優れたサイクル特性の効果を奏することができる。
【0034】
本発明による炭素系導電助剤は、直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、上記超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~15μmである(態様7)。また、本発明による他の炭素系導電助剤は、直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、超極細繊維状炭素が、平均繊維長が1μm~15μmである超極細繊維状炭素と、平均繊維長が15μm超~50μmである超極細繊維状炭素とを含む(態様8)。態様7及び8に記載の炭素系導電助剤を含む電極活物質層は、電極材料を塗布するときの塗布方向(MD方向)及び塗布方向に対する面内垂直方向(TD方向)に対して機械的強度が大きく、優れた補強効果を奏する。
【0035】
また、本発明による炭素系導電助剤は、超極細繊維状炭素の平均繊維長が異なる少なくとも2種の超極細繊維状炭素を含むことが好ましく、少なくとも2種の超極細繊維状炭素のうち少なくとも1種の超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~15μmであることがより好ましい。
【0036】
さらに、本発明による炭素系導電助剤は、超極細繊維状炭素と、超極細繊維状炭素以外の少なくとも1種の炭素系材料とを含むことが好ましく、さらにまた、超極細繊維状炭素の平均繊維長が異なる少なくとも2種の超極細繊維状炭素と、超極細繊維状炭素以外の少なくとも1種の炭素系材料とを含むことが好ましい。超極細繊維状炭素以外の少なくとも1種の炭素系材料は例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0037】
まず、本発明の電極活物質層に含まれる炭素系導電助剤に含まれる超極細繊維状炭素について詳細に説明する。
【0038】
[超極細繊維状炭素]
・易黒鉛化性炭素
本発明による非水電解質二次電池用電極材料に含まれる超極細繊維状炭素は易黒鉛化性炭素であることが好ましい。易黒鉛化性炭素とは、2,500℃以上の高温での加熱処理によって三次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成しやすい炭素原料である。軟質炭素、ソフトカーボンなどとも呼ばれる。易黒鉛化性炭素としては、石油コークス、石炭ピッチコークス、ポリ塩化ビニル、3,5-ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0039】
中でも、メソフェ-ズピッチと呼ばれる、溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうる化合物又はその混合物が、高結晶性、高導電性が期待されることから好ましい。メソフェ-ズピッチとしては、石油残渣油を水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石油系メソフェ-ズピッチ;コールタールピッチを水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石炭系メソフェ-ズピッチ;ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素を原料として超強酸(例えばHF、BF3等)の存在下で重縮合させて得られる合成液晶ピッチ等が挙げられる。中でも、合成液晶ピッチが、不純物を含まない点でより好ましい。
【0040】
・平均繊維径
本発明における超極細繊維状炭素の平均繊維径は、200nm超900nm以下の範囲にある。この平均繊維径は、電界放射型走査電子顕微鏡によって倍率2,000倍にて撮影した写真図より測定された値である。上記超極細繊維状炭素の平均繊維径は、230nm超600nm以下の範囲にあることが好ましく、250nm超500nm以下の範囲にあることがより好ましく、250nm超400nm以下の範囲にあることが更に好ましい。
【0041】
本発明における超極細繊維状炭素は直線構造を有する。ここで、直線構造とは分岐度が0.01個/μm以下であることをいう。分岐とは、超極細繊維状炭素が末端部以外の場所で他の超極細繊維状炭素と結合した粒状部をいい、超極細繊維状炭素の主軸が中途で枝分かれしていること、及び超極細繊維状炭素の主軸が枝状の副軸を有することをいう。
【0042】
・平均繊維長
本発明における超極細繊維状炭素の平均繊維長は、1~100μmの範囲にあることが好ましく、1~50μmの範囲にあることがより好ましい。超極細繊維状炭素の平均繊維長が長いほど、非水電解質二次電池用電極内の導電性、電極の強度、電解液保液性が増し好ましいが、長すぎると、電極内の繊維分散性が損なわれるという問題が生じる。そのため、本発明における超極細繊維状炭素の平均繊維長は上記範囲内にあることが好ましい。
【0043】
・平均面間距離
【0044】
本発明における超極細繊維状炭素は、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d(002)が0.335~0.340nmであることがより好ましい。
【0045】
ここで、本発明における、代表的な超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図1に示す。
図1から明らかなように、本発明における超極細繊維状炭素は直線構造を有して、平均繊維長が1~100μmであることが確認される。
【0046】
次に、本発明による非水電解質二次電池用電極材料に含まれる電極活物質(正極活物質、負極活物質)について詳細に説明する。
【0047】
[正極活物質]
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる正極活物質としては、非水電解質二次電池において、正極活物質として知られている従来公知の材料の中から、任意のものを一種又は二種以上適宜選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有金属酸化物が好適である。このリチウム含有金属酸化物としては、リチウムと、Co、Mg、Mn、Ni、Fe、Al、Mo、V、W及びTiなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む複合酸化物を挙げることができる。
【0048】
具体的には、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixCobV1-bOz、LixCobFe1-bO2、LixMn2O4、LixMncCo2-cO4、LixMncNi2-cO4、LixMncV2-cO4、LixMncFe2-cO4(ここで、x=0.02~1.2、a=0.1~0.9、b=0.8~0.98、c=1.6~1.96、z=2.01~2.3である。)などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。好ましいリチウム含有金属酸化物としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixMn2O4、LixCobV1-bOz(ここで、x、a、b及びzは上記と同じである。)からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。なお、xの値は充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0049】
上記正極活物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記正極活物質の平均粒子径は、10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.05μm(50nm)~7μmとすることが好ましく、1μm~7μmとすることがより好ましい。
【0050】
[負極活物質]
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる負極活物質としては、非水電解質二次電池において、負極活物質として知られている従来公知の材料の中から、一種又は二種以上選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料、Si及びSnのいずれか、又はこれらの少なくとも一種を含む合金や酸化物などを用いることができる。これらの中でも炭素材料が好ましい。
【0051】
上記炭素材料としては、天然黒鉛、石油系及び石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛、樹脂を炭素化したハードカーボン、メソフェーズピッチ系炭素材料などを代表例として挙げることができる。天然黒鉛や人造黒鉛を用いる場合、電池容量の増大の観点から、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)が0.335~0.337nmの範囲にあるものが好ましい。
【0052】
天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛質材料のことをいう。天然黒鉛は、その外観と性状によって、結晶化度の高い鱗状黒鉛と結晶化度が低い土状黒鉛の二種類に分けられる。鱗状黒鉛はさらに外観が葉状の鱗片状黒鉛と、塊状である鱗状黒鉛とに分けられる。黒鉛質材料となる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に制限されない。また、天然黒鉛又は天然黒鉛を原料として製造した粒子に熱処理を施して用いてもよい。
【0053】
また、人造黒鉛とは、広く人工的な手法で作られた黒鉛及び黒鉛の完全結晶に近い黒鉛質材料をいう。代表的な例としては、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣などから得られるタールやコークスを原料にして、500~1000℃程度の焼成工程、2000℃以上の黒鉛化工程を経て得たものが挙げられる。また、溶解鉄から炭素を再析出させることで得られるキッシュグラファイトも人造黒鉛の一種である。
【0054】
負極活物質として炭素材料の他に、Si及びSnの少なくとも一種を含む合金を使用することは、Si及びSnのそれぞれを単体で用いる場合やそれぞれの酸化物を用いる場合に比べ、電気容量を小さくすることができる点で有効である。なかでもSi系合金が好ましい。
【0055】
Si系合金としては、B、Mg、Ca、Ti、Fe、Co、Mo、Cr、V、W、Ni、Mn、Zn及びCuなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と、Siとの合金などを挙げることができる。具体的には、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0056】
本発明においては、負極活物質として、既述の材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記負極活物質の平均粒子径は10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.1~10μmとすることが好ましく、1~7μmとすることがより好ましい。
【0057】
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極用電極材料に含まれるバインダーについて、詳細に説明する。
【0058】
[バインダー]
本発明の非水電解質二次電池に含まれるバインダーとしては、電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば好適に用いることが可能である。かかるバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、合成ブタジエンゴム(SBR)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等よりなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましい。
【0059】
バインダーとして用いる際の形状としては特に制限はなく、固体状であっても液体状(例えばエマルジョン状)であってもよく、電極の製造方法(特に乾式混練か湿式混練か)、電解液への溶解性等を考慮のうえ、適宜に選択することができる。
【0060】
バインダーを溶解する上記溶媒としては、バインダーを溶解するものである限り特に制限はない。具体的には、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等よりなる群から選ばれる1種類以上を挙げることができ、特にNMP又はDMAcが好適である。
【0061】
以下、本発明の非水電解質二次電池用電極について説明する。本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体及び上記集電体上の活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、活物質層が本発明の非水電解質二次電池用電極材料から成る電極である。
【0062】
(非水電解質二次電池用電極)
非水電解質二次電池の電極作製方法としては、以下の二つの手法が一般的である。一つの方法は、電極活物質、導電助剤及びバインダーを混合・混練して、押し出し成形によりフィルム化して、これを圧延、延伸した後、集電体と張り合わせる方法である。もう一つの方法は、電極活物質、導電助剤、バインダー及びバインダーを溶解する溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを基盤上へ塗布し溶媒を除去後にプレスを行う方法である。
【0063】
本発明の場合、どちらでも可能であるが、後者の方法が好適であるので、以下後者の方法について詳述する。
【0064】
本発明における電極の作製において、スラリー中の導電助剤の添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる電極材料に対して10質量%以下である。上記の添加割合としては7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。導電助剤の添加割合が10質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0065】
また、本発明におけるバインダーの添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる電極材料に対して1~25質量%である。上記の添加割合は3~20質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。バインダー量が1質量%より少ないとクラックの発生や電極が集電体から剥離してしまうことがある。またバインダー量が25質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0066】
電極を作製する際に、スラリー中の分散状態が悪いことから、塗布に適した流動性を確保することが困難であることがある。このような場合には、スラリー化助剤を使用してもよい。スラリー化助剤としては、スラリー化助剤として、例えばポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール等よりなる群から選ばれる1つ以上を挙げることができ、特にポリビニルピロリドンを使用することが好適である。上記の如きスラリー化助剤を添加することにより、比較的に少ない溶媒量であっても十分な流動性を確保することができ、微粉砕活性炭の分散性も格段に向上する。また、溶媒除去後のクラックの発生も低減できる。スラリー化助剤の添加量としては、スラリー中の溶媒以外の成分の合計に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、0.5~8質量%であることがさらに好ましい。スラリー化助剤の添加量が10質量%より多いと逆にスラリー粘度が急激に低下し、分散不良を生じて好適なスラリー作製が困難となる場合がある。また、この値が0.5質量%より少ないと、スラリー化助剤の効果が現れない。
【0067】
上記スラリーにおける固形分濃度(上記スラリーの溶媒以外の成分の合計重量がスラリーの全質量に占める割合をいう。)は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%である。固形分濃度が50質量%より多いと、均一なスラリー作製が困難である場合がある。また、この値が10質量%より少ないと、スラリーの粘度が低下しすぎてしまい、電極の厚みが不均一になってしまうことがある。
【0068】
上記スラリーを塗布するには、例えばドクターブレード等の適宜の塗布方法を採用することができる。塗布後、例えば60~150℃、好ましくは75~85℃において、好ましくは60~180分処理することにより溶媒を除去する。その後、溶媒除去後の塗布物をプレスすることにより、活物質層を製造することができる。
【0069】
本発明の非水電解質二次電池用電極において、活物質層の厚みは5~300μmの範囲が好適である。活物質層厚みが5μm未満であると、任意の容量セルを製造しようとした場合、セパレータや集電体を多量に使用することになり、セル内活物質層体積占有率が低下してしまい、エネルギー密度の観点から好ましくなく、用途がかなり制限されてしまう。特に出力特性(低温特性も含む)も重要であるが、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0070】
一方、電極厚みが300μmを超える電極を製造することは、クラック発生の問題から比較的に困難を伴うため、電極厚みは概ね300μm以下とすることが電極の安定的製造の観点から好ましい。より安定な電極製造を行うためには、電極厚みは200μm以下とすることがより好ましく、また、電極の生産性やキャパシタの出力特性を高くする目的から、電極厚みのさらに好適な範囲は10~100μmである。
【0071】
上記のとおりに作製した、本発明による非水電解質二次電池用電極は、その電極強度に異方性がないことが好ましい。電極強度に異方性がない電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明による電極材料おいて、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6以下であることが好ましく、上記の比σM/σTが1.2以下であることがより好ましく、0.9~1.1の範囲にあることが更に好ましい。
【0072】
上記のとおりに作製した、本発明による非水電解質二次電池用電極は、その電極強度に異方性を有することが好ましい。電極強度に異方性を有する電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明による電極材料において、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6より大きいことが好ましく、上記の比σM/σTが1.7以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましい。
【0073】
本発明による非水電解質二次電池用電極の集電体は、任意の導電性材料から形成することができる。したがって、例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅等の金属材料、特にアルミニウム、ステンレス鋼、銅から形成することができる。
【0074】
以下、本発明の非水電解質二次電池について説明する。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の電極活物質層を含む電池である。
【0075】
(非水電解質二次電池)
本発明による非水電解質二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム電池、リチウムイオンポリマー電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。本発明の非水電解質二次電池では、正極活物質層が集電体の表面に形成されてなる正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、正極材料層と本発明による負極の負極活物質層とが向き合い、かつ正極活物質層と本発明による負極活物質層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。
【0076】
また、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び負極活物質層が集電体の表面に形成されてなる負極が、本発明による正極の正極活物質層と負極の負極活物質層とが向き合い、かつ本発明による正極の正極活物質層と負極活物質層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。さらに、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、本発明による正極の正極活物質層と本発明による負極の負極活物質層とが向き合い、かつ本発明による正極の正極活物質層と本発明による負極の負極活物質層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されてよい。
【0077】
本発明の非水電解質二次電池のための電解質層は、本発明の目的及び効果を損なわない限り制限されるものではない。したがって例えば、電解質層としては、液体電解質、すなわち例えば有機溶媒にリチウム塩が溶解した溶液を用いることができる。ただし、このような液体電解質を用いる場合、正極活物質層と負極活物質層との間の直接の接触を防ぐために、多孔質層からなるセパレータを用いることが一般に好ましい。
【0078】
液体電解質のための有機溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を使用することができる。これらの有機溶媒は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、液体電解質のためのリチウム塩としては例えば、LiPF6、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiBF4等を使用することができる。これらのリチウム塩は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
なお、電解質層としては、固体電解質を用いることもでき、この場合には、別個のスペーサーを省略することができる。
【0080】
(炭素系導電助剤)
本発明による炭素系導電助剤は、直線構造であって、かつ平均繊維径200nm超900nm以下の超極細繊維状炭素を含み、上記超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~15μmである、超極細繊維状炭素に関する詳細な説明は上記のとおりである。
【0081】
〈第2の本発明〉
本発明について、以下に説明をする。
本発明の複合体は、超極細繊維状炭素と球状炭素とを含む複合体であって、超極細繊維状炭素が直線構造を有し、超極細繊維状炭素と球状炭素とが一体的に互いに付着されて、超極細繊維状炭素と球状炭素が均一に混合されてなる、複合体である(態様1)。
【0082】
態様1において、本発明の複合体は、超極細繊維状炭素と球状炭素とを乾式複合をすることによって得られる(態様2)。
【0083】
態様1又は態様2において、本発明の複合体の密度と超極細繊維状炭素の密度とが略同一であるときに、本発明の複合体が、超極細繊維状炭素に対して略同等~1.5倍の体積抵抗率を有する(態様3)。
【0084】
態様1~3のいずれか1の態様において、本発明の複合体の密度と球状炭素の密度とが略同一であるときに、本発明の複合体が、球状炭素に対して略同等~1/100倍以下の体積抵抗率を有する(態様4)。
【0085】
態様1~4のいずれか1の態様の複合体において、超極細繊維状炭素と球状炭素との質量比が1:9~5:5である(態様5)。
【0086】
態様1~5のいずれか1の態様の複合体において、超極細繊維状炭素の平均繊維長が10μm超~50μmである(態様6)。
【0087】
態様1~5のいずれか1の態様の複合体において、超極細繊維状炭素の平均繊維長が1μm~10μmである(態様7)。
【0088】
態様1~7のいずれか1の態様の複合体において、球状炭素がカーボンブラックである(態様8)。
【0089】
本発明の炭素系導電助剤は、態様1~7のいずれか1の態様の複合体を含む炭素系導電助剤である(態様9)。
【0090】
本発明の電極活物質層は、態様1~8の複合体と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む、上記第1の本発明の態様1~5のいずれか1の態様の電極活物質層である(態様10)。
【0091】
本発明の非水電解質二次電池は、態様10の電極活物質層を含む、非水電解質二次電池である(態様11)。
【0092】
本発明の複合体は、態様1~8のうち2以上の態様を任意に組み合わせることができる。本発明の炭素系導電助剤は、2以上の態様を任意に組み合わせた本発明の複合体を含むことができ、その複合体を、本発明の電極活物質層は含みことでき、その電極活物質層を、本発明の非水電解質二次電池用電極は有することでき、本発明の非水電解質二次電池は、その非水電解質二次電池用電極を含むことができる。
【0093】
以下、本発明について更に詳細に説明をする。
【0094】
[複合体]
本発明の複合体は、超極細繊維状炭素と球状炭素とを含む複合体であって、超極細繊維状炭素が直線構造を有し、超極細繊維状炭素と上記球状炭素とが一体的に互いに付着されて、上記超極細繊維状炭素と上記球状炭素が均一に混合されてなる、複合体である。本発明の複合体は、超極細繊維状炭素と球状炭素とが一体的に互いに付着されて、上記超極細繊維状炭素と上記球状炭素が均一に混合されることで、高導電性と優れた機械的強度とを有する。
【0095】
ここで、「付着」とは化学的な結合でもよいが、主に物理的な結合を意味し、例えば、接着のような物理的な結合を意味する。一体的に互いに付着されて均一に混合されているかどうかは、走査型電子顕微鏡等を用いて、複合体に含まれる超極細繊維状炭素と球状炭素との混合度合を観察することよって容易に判断することができる。また、複合体の空隙率を測定することによっても、一体的に互いに付着されて均一に混合されているかどうかを判断することができる。均一に混合されているというためには、複合体の空隙率は、例えば、50%以下、40%以下又は30%以下から選択でき、また10%以上とすることができる。
【0096】
本発明の複合体における超極細繊維状炭素と球状炭素とが一体的に互いに付着されて、上記超極細繊維状炭素と上記球状炭素が均一に混合されるためには、本発明の複合体が、極細繊維状炭素と球状炭素とを乾式複合又は湿式複合をすることによって製造されて得られることが好ましい。
【0097】
特に、本発明の複合体が、極細繊維状炭素と球状炭素とを乾式複合をすることによって製造されることがより好ましい。乾式複合を施すことによって、本発明の複合体は、高導電性と優れた機械的強度とを兼ね備えることができる。乾式複合とは、乾式粉砕機等を用いて、極細繊維状炭素と球状炭素とを粉砕し、分散させて複合することをいう。
【0098】
湿式複合とは、湿式粉砕機等を用いて、極細繊維状炭素と球状炭素とを有機溶媒等中で粉砕し、分散させて複合することをいう。
【0099】
本発明の複合体の密度と超極細繊維状炭素の密度とが略同一であるときに、本発明の複合体が、超極細繊維状炭素に対して略同等~50倍の体積抵抗率を有することが好ましく、30倍以下の体積抵抗率を有することがより好ましく、10倍以下の体積抵抗率を有することが更に好ましい。ここで体積抵抗率(単位:Ω・cm)は、単位体積当たりの抵抗を意味し、導電性の尺度として用いられる。すなわち、体積抵抗率(単位:Ω・cm)の値が低ければ低いほど、導電性が良好であることを意味する。
【0100】
本発明の複合体の密度と球状炭素の密度とが略同一であるときに、本発明の複合体が、球状炭素に対して略同等~1/100倍以下の体積抵抗率を有することが好ましい。
【0101】
本発明の複合体において、超極細繊維状炭素と球状炭素との質量比が1:9~5:5であることが好ましい。本発明の複合体において、超極細繊維状炭素の質量比率を下げていくと、本発明の複合体の体積抵抗率は、球状炭素の体積抵抗率に近づいていくので、超極細繊維状炭素と球状炭素との質量比は、4:6~5:5であることがより好ましく、5:5であることが更に好ましい。
【0102】
本発明の複合体に含まれる超極細繊維状炭素は、本発明の目的を達成し、さらには本発明の効果を奏すれば、特に限定されることはないが、易黒鉛化性炭素であることが好ましい。易黒鉛化性炭素とは、2,500℃以上の高温での加熱処理によって三次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成しやすい炭素原料である。軟質炭素、ソフトカーボンなどとも呼ばれる。易黒鉛化性炭素としては、石油コークス、石炭ピッチコークス、ポリ塩化ビニル、3,5-ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0103】
中でも、メソフェ-ズピッチと呼ばれる、溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうる化合物又はその混合物が、高結晶性、高導電性が期待されることから好ましい。メソフェ-ズピッチとしては、石油残渣油を水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石油系メソフェ-ズピッチ;コールタールピッチを水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石炭系メソフェ-ズピッチ;ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素を原料として超強酸(例えばHF、BF3等)の存在下で重縮合させて得られる合成液晶ピッチ等が挙げられる。中でも、合成液晶ピッチが、不純物を含まない点でより好ましい。
【0104】
(平均繊維径)
本発明における超極細繊維状炭素の平均繊維径は、200nm超900nm以下の範囲にある。この平均繊維径は、電界放射型走査電子顕微鏡によって倍率2,000倍にて撮影した写真図より測定された値である。上記超極細繊維状炭素の平均繊維径は、230nm超600nm以下の範囲にあることが好ましく、250nm超500nm以下の範囲にあることがより好ましく、250nm超400nm以下の範囲にあることが更に好ましい。
【0105】
本発明における超極細繊維状炭素は直線構造を有する。ここで、直線構造とは分岐度が0.01個/μm以下であることをいう。分岐とは、超極細繊維状炭素が末端部以外の場所で他の超極細繊維状炭素と結合した粒状部をいい、超極細繊維状炭素の主軸が中途で枝分かれしていること、及び超極細繊維状炭素の主軸が枝状の副軸を有することをいう。
【0106】
(平均繊維長)
本発明における超極細繊維状炭素の平均繊維長は、1~100μmの範囲でよい。本発明の複合体において、導電性、機械的強度及び分散性の観点から、超極細繊維状炭素の平均繊維長が10μm超~50μmであること又は1μm~10μmであることが好ましい。本発明における超極細繊維状炭素の平均繊維長は、100μm超の長さである場合、超極細繊維状炭素の分散性が損なわれる場合があるからである。ここで、本明細書において、超極細繊維状炭素をCNFと称する場合があり、平均繊維長が短い超極細繊維状炭素、例えば、平均繊維長が1μm~15μmである超極細繊維状炭素をS-CNFと称する場合がある。
【0107】
(平均面間距離)
本発明における超極細繊維状炭素は、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d(002)が0.335~0.340nmであることがより好ましい。
【0108】
ここで、本発明における、代表的な超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図15に示す。
図15から明らかなように、本発明における超極細繊維状炭素は直線構造を有して、平均繊維長が1~100μmであることが確認される。
【0109】
本発明における超極細繊維状炭素(CNF又はS-CNF)は公知の製造方法によって、製造される。例えば、超極細繊維状炭素(CNF又はS-CNF)は、特開2010-13742、特開2010-31439に記載された製造方法によって製造され得る。
【0110】
本発明における球状炭素は、カーボンブラックであることが好ましい。カーボンブラックは、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック等が挙げられるが、アセチレンブラックであることが好ましい。
【0111】
[導電助剤]
本発明の炭素系導電助剤は、本発明の複合体を含む炭素系導電助剤である。本発明の炭素系導電助剤は、本発明の複合体を含むが、電極活物質層の導電性を向上させることができる限り、更に本発明の複合体以外の材料、例えば炭素系材料等を含んでよい。
【0112】
[電極活物質層]
本発明の電極活物質層は、後述する非水電解質二次電池用電極材料からなる。
本発明の電極活物質層の形成に用いられる非水電解質二次電池用電極材料は、本発明の炭素系導電助剤と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料である。
【0113】
次に、本発明による非水電解質二次電池用電極材料に含まれる電極活物質(正極活物質、負極活物質)について説明する。
【0114】
(正極活物質)
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる正極活物質としては、非水電解質二次電池において、正極活物質として知られている従来公知の材料の中から、任意のものを一種又は二種以上適宜選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有金属酸化物が好適である。 このリチウム含有金属酸化物としては、リチウムと、Co、Mg、Mn、Ni、Fe、Al、Mo、V、W及びTiなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む複合酸化物を挙げることができる。
【0115】
具体的には、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixCobV1-bOz、LixCobFe1-bO2、LixMn2O4、LixMncCo2-cO4、LixMncNi2-cO4、LixMncV2-cO4、LixMncFe2-cO4(ここで、x=0.02~1.2、a=0.1~0.9、b=0.8~0.98、c=1.6~1.96、z=2.01~2.3である。)などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。好ましいリチウム含有金属酸化物としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixMn2O4、LixCobV1-bOz(ここで、x、a、b及びzは上記と同じである。)からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。なお、xの値は充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0116】
上記正極活物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記正極活物質の平均粒子径は、10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.05μm(50nm)~7μmとすることが好ましく、1μm~7μmとすることがより好ましい。
【0117】
(負極活物質)
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる負極活物質としては、非水電解質二次電池において、負極活物質として知られている従来公知の材料の中から、一種又は二種以上選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料、Si及びSnのいずれか、又はこれらの少なくとも一種を含む合金や酸化物などを用いることができる。これらの中でも炭素材料が好ましい。
【0118】
上記炭素材料としては、天然黒鉛、石油系及び石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛、樹脂を炭素化したハードカーボン、メソフェーズピッチ系炭素材料などを代表例として挙げることができる。天然黒鉛や人造黒鉛を用いる場合、電池容量の増大の観点から、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)が0.335~0.337nmの範囲にあるものが好ましい。
【0119】
天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛質材料のことをいう。天然黒鉛は、その外観と性状によって、結晶化度の高い鱗状黒鉛と結晶化度が低い土状黒鉛の二種類に分けられる。鱗状黒鉛はさらに外観が葉状の鱗片状黒鉛と、塊状である鱗状黒鉛とに分けられる。黒鉛質材料となる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に制限されない。また、天然黒鉛又は天然黒鉛を原料として製造した粒子に熱処理を施して用いてもよい。
【0120】
また、人造黒鉛とは、広く人工的な手法で作られた黒鉛及び黒鉛の完全結晶に近い黒鉛質材料をいう。代表的な例としては、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣などから得られるタールやコークスを原料にして、500~1000℃程度の焼成工程、2000℃以上の黒鉛化工程を経て得たものが挙げられる。また、溶解鉄から炭素を再析出させることで得られるキッシュグラファイトも人造黒鉛の一種である。
【0121】
負極活物質として炭素材料の他に、Si及びSnの少なくとも一種を含む合金を使用することは、Si及びSnのそれぞれを単体で用いる場合やそれぞれの酸化物を用いる場合に比べ、電気容量を小さくすることができる点で有効である。なかでもSi系合金が好ましい。
【0122】
Si系合金としては、B、Mg、Ca、Ti、Fe、Co、Mo、Cr、V、W、Ni、Mn、Zn及びCuなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と、Siとの合金などを挙げることができる。具体的には、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0123】
本発明においては、負極活物質として、既述の材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記負極活物質の平均粒子径は10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.1~10μmとすることが好ましく、1~7μmとすることがより好ましい。
【0124】
(バインダー)
本発明の非水電解質二次電池に含まれるバインダーとしては、電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば好適に用いることが可能である。かかるバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、合成ブタジエンゴム(SBR)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等よりなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましい。
【0125】
バインダーとして用いる際の形状としては特に制限はなく、固体状であっても液体状(例えばエマルジョン状)であってもよく、電極の製造方法(特に乾式混練か湿式混練か)、電解液への溶解性等を考慮のうえ、適宜に選択することができる。
【0126】
バインダーを溶解する上記溶媒としては、バインダーを溶解するものである限り特に制限はない。具体的には、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等よりなる群から選ばれる1種類以上を挙げることができ、特にNMP又はDMAcが好適である。
【0127】
[非水電解質二次電池用電極]
本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体及び集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、活物質層が本発明の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極である。
【0128】
非水電解質二次電池の電極作製方法としては、以下の二つの手法が一般的である。一つの方法は、電極活物質、導電助剤及びバインダーを混合・混練して、押し出し成形によりフィルム化して、これを圧延、延伸した後、集電体と張り合わせる方法である。もう一つの方法は、電極活物質、導電助剤、バインダー及びバインダーを溶解する溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを基盤上へ塗布し溶媒を除去後にプレスを行う方法である。
【0129】
本発明の場合、どちらでも可能であるが、後者の方法が好適であるので、以下後者の方法について詳述する。
【0130】
本発明における電極の作製において、スラリー中の導電助剤の添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる電極材料に対して10質量%以下である。上記の添加割合としては7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。導電助剤の添加割合が10質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0131】
また、本発明におけるバインダーの添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる電極材料に対して1~25質量%である。上記の添加割合は3~20質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。バインダー量が1質量%より少ないとクラックの発生や電極が集電体から剥離してしまうことがある。またバインダー量が25質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0132】
電極を作製する際に、スラリー中の分散状態が悪いことから、塗布に適した流動性を確保することが困難であることがある。このような場合には、スラリー化助剤を使用してもよい。スラリー化助剤としては、スラリー化助剤として、例えばポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール等よりなる群から選ばれる1つ以上を挙げることができ、特にポリビニルピロリドンを使用することが好適である。上記の如きスラリー化助剤を添加することにより、比較的に少ない溶媒量であっても十分な流動性を確保することができ、微粉砕活性炭の分散性も格段に向上する。また、溶媒除去後のクラックの発生も低減できる。スラリー化助剤の添加量としては、スラリー中の溶媒以外の成分の合計に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、0.5~8質量%であることがさらに好ましい。スラリー化助剤の添加量が10質量%より多いと逆にスラリー粘度が急激に低下し、分散不良を生じて好適なスラリー作製が困難となる場合がある。また、この値が0.5質量%より少ないと、スラリー化助剤の効果が現れない。
【0133】
上記スラリーにおける固形分濃度(上記スラリーの溶媒以外の成分の合計重量がスラリーの全質量に占める割合をいう。)は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%である。固形分濃度が50質量%より多いと、均一なスラリー作製が困難である場合がある。また、この値が10質量%より少ないと、スラリーの粘度が低下しすぎてしまい、電極の厚みが不均一になってしまうことがある。
【0134】
上記スラリーを塗布するには、例えばドクターブレード等の適宜の塗布方法を採用することができる。塗布後、例えば60~150℃、好ましくは75~85℃において、好ましくは60~180分処理することにより溶媒を除去する。その後、溶媒除去後の塗布物をプレスすることにより、活物質層を製造することができる。
【0135】
本発明の非水電解質二次電池用電極において、活物質層の厚みは5~300μmの範囲が好適である。活物質層厚みが5μm未満であると、任意の容量セルを製造しようとした場合、セパレータや集電体を多量に使用することになり、セル内活物質層体積占有率が低下してしまい、エネルギー密度の観点から好ましくなく、用途がかなり制限されてしまう。特に出力特性(低温特性も含む)も重要であるが、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0136】
一方、電極厚みが300μmを超える電極を製造することは、クラック発生の問題から比較的に困難を伴うため、電極厚みは概ね300μm以下とすることが電極の安定的製造の観点から好ましい。より安定な電極製造を行うためには、電極厚みは200μm以下とすることがより好ましく、また、電極の生産性やキャパシタの出力特性を高くする目的から、電極厚みのさらに好適な範囲は10~100μmである。
【0137】
上記のとおりに作製した、本発明による非水電解質二次電池用電極は、その電極強度に異方性がないことが好ましい。電極強度に異方性がない電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明による電極材料おいて、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6以下であることが好ましく、上記の比σM/σTが1.2以下であることがより好ましく、0.9~1.1の範囲にあることが更に好ましい。
【0138】
上記のとおりに作製した、本発明による非水電解質二次電池用電極は、その電極強度に異方性を有することが好ましい。電極強度に異方性を有する電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明による電極材料において、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6より大きいことが好ましく、上記の比σM/σTが1.7以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましい。
【0139】
本発明による非水電解質二次電池用電極の集電体は、任意の導電性材料から形成することができる。したがって、例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅等の金属材料、特にアルミニウム、ステンレス鋼、銅から形成することができる。
【0140】
[非水電解質二次電池]
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池である。
【0141】
本発明による非水電解質二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム電池、リチウムイオンポリマー電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。本発明の非水電解質二次電池では、正極材料層が集電体の表面に形成されてなる正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、正極材料層と本発明による負極の負極材料層とが向き合い、かつ正極材料層と本発明による負極材料層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。
【0142】
また、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び負極材料層が集電体の表面に形成されてなる負極が、本発明による正極の正極材料層と負極の負極材料層とが向き合い、かつ本発明による正極の正極材料層と負極材料層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。さらに、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、本発明による正極の正極材料層と本発明による負極の負極材料層とが向き合い、かつ本発明による正極の正極材料層と本発明による負極の負極材料層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されてよい。
【0143】
本発明の非水電解質二次電池のための電解質層は、本発明の目的及び効果を損なわない限り制限されるものではない。したがって例えば、電解質層としては、液体電解質、すなわち例えば有機溶媒にリチウム塩が溶解した溶液を用いることができる。ただし、このような液体電解質を用いる場合、正極活物質層と負極活物質層との間の直接の接触を防ぐために、多孔質層からなるセパレータを用いることが一般に好ましい。
【0144】
液体電解質のための有機溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を使用することができる。これらの有機溶媒は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、液体電解質のためのリチウム塩としては例えば、LiPF6、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiBF4等を使用することができる。これらのリチウム塩は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
なお、電解質層としては、固体電解質を用いることもでき、この場合には、別個のスペーサーを省略することができる。
【0146】
〈第3の本発明〉
本発明について、以下に説明をする。
【0147】
本発明の超極細繊維状炭素は、直線構造を有する超極細繊維状炭素であって、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾された、及び/又は超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理された、超極細繊維状炭素である(態様1)。本発明の超極細繊維状炭素は、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾されるか、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理されるか、又は、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾されて、かつ酸化処理されることによって、優れた水分散性を有する。
【0148】
態様1において、本発明の超極細繊維状炭素は、解砕されてなる超極細繊維状炭素である(態様2)。態様2によると、本発明の超極細繊維状炭素は解砕されて、超極細繊維状炭素の水分散性は更に向上する。
【0149】
態様2において、本発明の超極細繊維状炭素は、乾式粉砕装置及び/又は湿式粉砕装置により解砕されてなる超極細繊維状炭素である(態様3)。態様3によると、本発明の超極細繊維状炭素は乾式粉砕装置及び/又は湿式粉砕装置により解砕されて、超極細繊維状炭素の水分散性は更に向上する。
【0150】
態様1~態様3のいずれか1の態様において、本発明の超極細繊維状炭素は、アスペクト比が1~1000である超極細繊維状炭素である(態様4)。
【0151】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、態様1~態様4のいずれか1の態様の超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体である(態様5)。態様5によると、本発明の超極細繊維状炭素集合体は優れた水分散性を有する。
【0152】
本発明の炭素系導電助剤は、態様1~態様4のいずれか1の態様の超極細繊維状炭素、及び/又は態様5に記載の超極細繊維状炭素集合体を含む、炭素系導電助剤である(態様6)。態様6によれば、本発明の炭素系導電助剤は優れた導電性、すなわち高導電性を有する。
【0153】
本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、態様6の炭素系導電助剤と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料である(態様7)。態様7によれば、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は高導電性を有する。
【0154】
態様7において、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、溶媒として水を更に含む非水電解質二次電池用電極材料である(態様8)。態様8によれば、超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性が更に改良されて、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は更なる高導電性を有する。
【0155】
本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体及び集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、活物質層が態様7又は態様8の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極である(態様9)。態様9によれば、本発明の非水電解質二次電池用電極は高導電性を有する。
【0156】
本発明の非水電解質二次電池は、態様9の非水電解質二次電池用電極を含む非水電解質二次電池である(態様10)。超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性が改良されることによって、本発明の非水電解質二次電池は、優れたサイクル特性と、高容量とを有する。
【0157】
本発明の超極細繊維状炭素は、態様1~4のうち少なくとも2つの態様を任意に組み合わせた超極細繊維状炭素でもよい。本発明の超極細繊維状炭素集合体は、態様1~4のうち少なくとも2つの態様を任意に組み合わせた超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体でもよい。その超極細繊維状炭素及び/又はその超極細繊維状炭素集合体を、本発明の炭素系導電助剤は含むことができ、その炭素導電助剤を、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は含みことでき、その非水電解質二次電池用電極材料を、本発明の非水電解質二次電池用電極は有することでき、その非水電解質二次電池用電極を、本発明の非水電解質二次電池は含むことができる。
【0158】
以下、本発明について更に詳細に説明をする。
【0159】
[超極細繊維状炭素]
本発明の超極細繊維状炭素は、直線構造を有する超極細繊維状炭素であって、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾された、及び/又は超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理された、超極細繊維状炭素である。ここで、直線構造とは分岐度が0.01個/μm以下であることをいう。分岐とは、超極細繊維状炭素が末端部以外の場所で他の超極細繊維状炭素と結合した粒状部をいい、超極細繊維状炭素の主軸が中途で枝分かれしていること、及び超極細繊維状炭素の主軸が枝状の副軸を有することをいう。
【0160】
本発明の超極細繊維状炭素は、超極細繊維状炭素の表面の一部又は全部が界面活性剤によって修飾されることによって、優れた水分散性を有する。また、本発明の超極細繊維状炭素は、超極細繊維状炭素の表面の一部又は全部が酸化処理されることによって優れた水分散性を有する。超極細繊維状炭素の表面の一部としては、例えば、超極細繊維状炭素の端部の表面が挙げられる。また、水分散性とは、水溶液又は水(イオン交換水等)における超極細繊維状炭素の分散度合、すなわち分散性を意味する。
【0161】
超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾されるとは、超極細繊維状炭素と界面活性剤とが化学修飾することか、物理修飾することか、又は化学修飾して、さらに物理修飾することをいう。化学修飾とは、超極細繊維状炭素と界面活性剤とが化学反応して化学的に結合することを意味し、例えば超極細繊維状炭素の官能基と界面活性剤の官能基とが共有結合することを意味する。物理修飾とは、非化学的な結合であって、物理的な結合を意味し、例えば超極細繊維状炭素と界面活性剤とが吸着したり、接着したりすることを意味する。
【0162】
本発明の超極細繊維状炭素を修飾する界面活性剤としては、例えば、、陰イオン界面活性剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、脂肪酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、陽イオン界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等)、両性界面活性剤(アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等)、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド等)等が挙げられるが、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)が好ましい。
【0163】
超極細繊維状炭素と超極細繊維状炭素を修飾する界面活性剤との質量比は、本発明の目的を達成し、さらには本発明の効果を奏すれば、特に限定されることはないが、5:6であることが好ましい。
【0164】
超極細繊維状炭素繊維の表面の少なくとも一部を界面活性剤によって修飾する方法としては、特に方法は限定されないが、好ましい方法として、超極細繊維状炭素繊維と界面活性剤とを「電極作製溶液中」にて混合させる方法、超極細繊維状炭素繊維の分散性が良好な有機溶剤中に超極細繊維状炭素を分散させ、その溶液中に界面活性剤または界面活性剤を溶解させた溶液を添加させ、次いで溶剤を加熱などにより除去する方法が挙げられる。中でも、後者の方法が、超極細繊維状炭素が分散した状態から界面活性剤を修飾することが可能なため、電極作製時に、超極細繊維状炭素の凝集が形成し難い界面活性剤に修飾された超極細繊維状炭素繊維を得られるため、より好ましい。
【0165】
上記超極細繊維状炭素繊維の分散性が良好な有機溶剤としては、超極細繊維状炭素繊維の分散が良好であれば特に限定されないが、炭素材料との親和性の高い有機溶媒が挙げられる。炭素材料との親和性の高い有機溶媒としては、アルコール類、エステル類、アミド類、エーテル類などが挙げられるが、親和性の高さよりアミド類がより好ましい。
また、超極細繊維状炭素繊維の分散性が良好な有機溶剤としては、界面活性剤の修飾後に溶剤を加熱により除去する場合には、界面活性剤を溶解させる溶剤よりも揮発しにくいものである方が、溶剤を加熱濃縮していく際に、超極細繊維状炭素繊維の分散性が良好な有機溶剤の濃度を高く保て、超極細繊維状炭素繊維の分散性を保てることから、より好ましい。
【0166】
上記界面活性剤を溶解させる溶剤としては、上記界面活性剤を溶解することができ、「超極細繊維状炭素繊維の分散性が良好な有機溶剤」との相溶性のある溶剤であれば特に限定されないが、好ましい例として、アルコール、水などが挙げられる。
【0167】
上記界面活性剤を溶解させる溶剤が水である場合、超極細繊維状炭素繊維の分散性が良好な有機溶剤として、例えば、NMP、ピリジン等を用いることが、溶剤を加熱濃縮していく際に、超極細繊維状炭素繊維の分散性が良好な有機溶剤の濃度を高く保て、超極細繊維状炭素繊維の分散性を保てることから好ましい。
【0168】
超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部の酸化処理の具体例としては、過酸化物(H2O2)による酸化処理、オゾンによる酸化処理、UV照射による酸化処理、空気による酸化処理、混酸などの酸による酸化処理等が挙げられる。過酸化物(H2O2)による酸化処理によって本発明の超極細繊維状炭素の表面にイオン性のカルボキシル基が生成され、超極細繊維状炭素の結晶構造にダメージを与えることが少ない観点から、過酸化物(H2O2)による酸化処理が好ましい。
【0169】
本発明の超極細繊維状炭素は、水分散性の向上の観点から、解砕されてなる超極細繊維状炭素であることが好ましく、乾式粉砕装置及び/又は湿式粉砕装置により解砕されてなる超極細繊維状炭素であることがより好ましく、乾式粉砕装置の1つの例示である乾式ジェットミル及び/又は湿式粉砕装置の1つの例示である湿式ジェットミルにより解砕されてなる超極細繊維状炭素であることが、水分散性の更なる向上を達成できるので更に好ましい。なお、解砕とは、超極細繊維状炭素を解きほぐすことを意味する。さらに、本発明の超極細繊維状炭素は、乾式粉砕機又は湿式粉砕機により、粉砕された超極細繊維状炭素でもよい。粉砕とは、超極細繊維状炭素を解砕して、砕く(超極細繊維状炭素の短尺化)ことを意味する。
【0170】
本発明の超極細繊維状炭素は、アスペクト比が1~1000である超極細繊維状炭素であることが好ましく、アスペクト比が5~500である超極細繊維状炭素であることがより好ましく、アスペクト比が10~100である超極細繊維状炭素であることが更に好ましい。
【0171】
本発明の超極細繊維状炭素は、本発明の目的を達成し、さらには本発明の効果を奏すれば、特に限定されることはないが、易黒鉛化性炭素であることが好ましい。易黒鉛化性炭素とは、2,500℃以上の高温での加熱処理によって三次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成しやすい炭素原料である。軟質炭素、ソフトカーボンなどとも呼ばれる。易黒鉛化性炭素としては、石油コークス、石炭ピッチコークス、ポリ塩化ビニル、3,5-ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0172】
中でも、メソフェ-ズピッチと呼ばれる、溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうる化合物又はその混合物が、高結晶性、高導電性が期待されることから好ましい。メソフェ-ズピッチとしては、石油残渣油を水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石油系メソフェ-ズピッチ;コールタールピッチを水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石炭系メソフェ-ズピッチ;ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素を原料として超強酸(例えばHF、BF3等)の存在下で重縮合させて得られる合成液晶ピッチ等が挙げられる。中でも、合成液晶ピッチが、不純物を含まない点でより好ましい。
【0173】
(平均繊維径)
本発明の超極細繊維状炭素の平均繊維径は、200nm超900nm以下の範囲にあることが好ましい。この平均繊維径は、電界放射型走査電子顕微鏡によって倍率2,000倍にて撮影した写真図より測定された値である。上記超極細繊維状炭素の平均繊維径は、230nm超600nm以下の範囲にあることがより好ましく、250nm超500nm以下の範囲にあることが更に好ましく、250nm超400nm以下の範囲にあることが更により好ましい。
【0174】
(平均繊維長)
本発明の超極細繊維状炭素の平均繊維長は、1~100μmの範囲であることが好ましい。本発明の超極細繊維状炭素において、水分散性及び導電性の観点から、超極細繊維状炭素の平均繊維長が10μm超~50μmであること又は1μm~10μmであることが好ましい。また、本発明の超極細繊維状炭素集合体において、平均繊維長が1μm~10μmである超極細繊維状炭素と、平均繊維長が10μm超~50μmである超極細繊維状炭素とを任意の割合で含んでもよい。本発明の超極細繊維状炭素の平均繊維長は、100μm超の長さである場合、超極細繊維状炭素又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性が損なわれる場合があるからである。ここで、本明細書において、超極細繊維状炭素をCNFと称する場合があり、平均繊維長が短い超極細繊維状炭素、例えば、平均繊維長が1μm~10μmである超極細繊維状炭素をS-CNFと称する場合がある。
【0175】
(平均面間距離)
本発明における超極細繊維状炭素の平均面間距離は、本発明の目的を達成し、さらには本発明の効果を奏すれば、特に限定されることはないが、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d(002)が0.335~0.340nmであることが好ましい。
【0176】
ここで、本発明の代表的な超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図26に示す。
図26から明らかなように、本発明における超極細繊維状炭素は直線構造を有して、平均繊維長が1~100μmであることが確認される。
【0177】
本発明の超極細繊維状炭素(CNF又はS-CNF)は公知の製造方法によって、製造される。例えば、超極細繊維状炭素(CNF又はS-CNF)は、特開2010-13742、特開2010-31439などに記載された製造方法によって製造され得る。
【0178】
[超極細繊維状炭素集合体]
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、本発明の超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体である。本発明の超極細繊維状炭素集合体は、本発明の超極細繊維状炭素が集合して構成されるので、優れた水分散性を有する。
【0179】
[導電助剤]
本発明の炭素系導電助剤は、本発明の超極細繊維状炭素、及び/又は超極細繊維状炭素集合体を含む炭素系導電助剤である。本発明の炭素系導電助剤は、本発明の超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体を含むことによって、優れた導電性、すなわち高導電性を有する。本発明の炭素系導電助剤は、本発明の超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体を含むが、導電性を更に向上させることができる限り、本発明の超極細繊維状炭素及び超極細繊維状炭素集合体以外の材料、例えば炭素系材料等を含んでよい。
【0180】
[非水電解質二次電池用電極材料]
本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、本発明の炭素系導電助剤と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料である。本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、本発明の炭素系導電助剤を含むことによって、優れた導電性、すなわち高導電性を有する。
【0181】
本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、溶媒として水を更に含むことが好ましい。溶媒としての水は例えば、イオン交換水等が挙げられる。溶媒として水を更に含むことによって、本発明の超極細繊維状炭素及び/又は超極細繊維状炭素集合体の水分散性が更に良好となり、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、更なる高導電性を有する。
【0182】
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる電極活物質(正極活物質、負極活物質)について説明する。
【0183】
(正極活物質)
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる正極活物質としては、非水電解質二次電池において、正極活物質として知られている従来公知の材料の中から、任意のものを一種又は二種以上適宜選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有金属酸化物が好適である。 このリチウム含有金属酸化物としては、リチウムと、Co、Mg、Mn、Ni、Fe、Al、Mo、V、W及びTiなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む複合酸化物を挙げることができる。
【0184】
具体的には、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixCobV1-bOz、LixCobFe1-bO2、LixMn2O4、LixMncCo2-cO4、LixMncNi2-cO4、LixMncV2-cO4、LixMncFe2-cO4(ここで、x=0.02~1.2、a=0.1~0.9、b=0.8~0.98、c=1.6~1.96、z=2.01~2.3である。)などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。好ましいリチウム含有金属酸化物としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixMn2O4、LixCobV1-bOz(ここで、x、a、b及びzは上記と同じである。)からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。なお、xの値は充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0185】
上記正極活物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記正極活物質の平均粒子径は、10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.05μm(50nm)~7μmとすることが好ましく、1μm~7μmとすることがより好ましい。
【0186】
(負極活物質)
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる負極活物質としては、非水電解質二次電池において、負極活物質として知られている従来公知の材料の中から、一種又は二種以上選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料、Si及びSnのいずれか、又はこれらの少なくとも一種を含む合金や酸化物などを用いることができる。これらの中でも炭素材料が好ましい。
【0187】
上記炭素材料としては、天然黒鉛、石油系及び石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛、樹脂を炭素化したハードカーボン、メソフェーズピッチ系炭素材料などを代表例として挙げることができる。天然黒鉛や人造黒鉛を用いる場合、電池容量の増大の観点から、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)が0.335~0.337nmの範囲にあるものが好ましい。
【0188】
天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛質材料のことをいう。天然黒鉛は、その外観と性状によって、結晶化度の高い鱗状黒鉛と結晶化度が低い土状黒鉛の二種類に分けられる。鱗状黒鉛はさらに外観が葉状の鱗片状黒鉛と、塊状である鱗状黒鉛とに分けられる。黒鉛質材料となる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に制限されない。また、天然黒鉛又は天然黒鉛を原料として製造した粒子に熱処理を施して用いてもよい。
【0189】
また、人造黒鉛とは、広く人工的な手法で作られた黒鉛及び黒鉛の完全結晶に近い黒鉛質材料をいう。代表的な例としては、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣などから得られるタールやコークスを原料にして、500~1000℃程度の焼成工程、2000℃以上の黒鉛化工程を経て得たものが挙げられる。また、溶解鉄から炭素を再析出させることで得られるキッシュグラファイトも人造黒鉛の一種である。
【0190】
負極活物質として炭素材料の他に、Si及びSnの少なくとも一種を含む合金を使用することは、Si及びSnのそれぞれを単体で用いる場合やそれぞれの酸化物を用いる場合に比べ、電気容量を小さくすることができる点で有効である。なかでもSi系合金が好ましい。
【0191】
Si系合金としては、B、Mg、Ca、Ti、Fe、Co、Mo、Cr、V、W、Ni、Mn、Zn及びCuなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と、Siとの合金などを挙げることができる。具体的には、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0192】
本発明においては、負極活物質として、既述の材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記負極活物質の平均粒子径は10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.1~10μmとすることが好ましく、1~7μmとすることがより好ましい。
【0193】
(バインダー)
本発明の非水電解質二次電池に含まれるバインダーとしては、電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば好適に用いることが可能である。かかるバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、合成ブタジエンゴム(SBR)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等よりなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましい。
【0194】
バインダーとして用いる際の形状としては特に制限はなく、固体状であっても液体状(例えばエマルジョン状)であってもよく、電極の製造方法(特に乾式混練か湿式混練か)、電解液への溶解性等を考慮のうえ、適宜に選択することができる。
【0195】
バインダーを溶解する上記溶媒としては、バインダーを溶解するものである限り特に制限はない。具体的には、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等よりなる群から選ばれる1種類以上を挙げることができ、特にNMP又はDMAcが好適である。
【0196】
[非水電解質二次電池用電極]
本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体及び集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、活物質層が本発明の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極である。本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体上に正極活物質層を有する場合は正極であり、集電体上に負極活物質層を有する場合は負極である。本発明の非水電解質二次電池用電極は、本発明の非水電解質二次電池用電極材料を活物質層として有するので、優れた導電性、すなわち高導電性を有し、さらに優れた機械的強度を有する。そして、本発明の超極細繊維状炭素及び超極細繊維状炭素集合体は優れた水分散性を有することから、本発明の非水電解質二次電池用電極材料はスラリー化したときに、ペースト状にし易く、本発明の非水電解質二次電池用電極は容易に製造され得る。
【0197】
本発明の非水電解質二次電池の電極作製方法としては、以下の二つの手法が一般的である。一つの方法は、電極活物質、導電助剤及びバインダーを混合・混練して、押し出し成形によりフィルム化して、これを圧延、延伸した後、集電体と張り合わせる方法である。もう一つの方法は、電極活物質、導電助剤、バインダー及びバインダーを溶解する溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを基盤上へ塗布し溶媒を除去後にプレスを行う方法である。
【0198】
本発明の場合、どちらでも可能であるが、後者の方法が好適であるので、以下後者の方法について詳述する。
【0199】
本発明の非水電解質二次電池用電極の作製において、スラリー中の本発明の導電助剤の添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる本発明の非水電解質二次電池用電極材料に対して10質量%以下である。上記の添加割合としては7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。導電助剤の添加割合が10質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0200】
また、本発明におけるバインダーの添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる電極材料に対して1~25質量%である。上記の添加割合は3~20質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。バインダー量が1質量%より少ないとクラックの発生や電極が集電体から剥離してしまうことがある。またバインダー量が25質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0201】
電極を作製する際に、スラリー中の分散状態が悪いことから、塗布に適した流動性を確保することが困難であることがある。このような場合には、スラリー化助剤を使用してもよい。スラリー化助剤としては、例えばポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール等よりなる群から選ばれる1つ以上を挙げることができ、特にポリビニルピロリドンを使用することが好適である。上記の如きスラリー化助剤を添加することにより、比較的に少ない溶媒量であっても十分な流動性を確保することができ、微粉砕活性炭の分散性も格段に向上する。また、溶媒除去後のクラックの発生も低減できる。
【0202】
上記スラリーにおける固形分濃度(上記スラリーの溶媒以外の成分の合計重量がスラリーの全質量に占める割合をいう。)は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%である。固形分濃度が50質量%より多いと、均一なスラリー作製が困難である場合がある。また、この値が10質量%より少ないと、スラリーの粘度が低下しすぎてしまい、電極の厚みが不均一になってしまうことがある。
【0203】
上記スラリーを塗布するには、例えばドクターブレード等の適宜の塗布方法を採用することができる。塗布後、例えば60~150℃、好ましくは75~85℃において、好ましくは60~180分処理することにより溶媒を除去する。その後、溶媒除去後の塗布物をプレスすることにより、活物質層を製造することができる。
【0204】
本発明の非水電解質二次電池用電極において、活物質層の厚みは5~300μmの範囲が好適である。活物質層厚みが5μm未満であると、任意の容量セルを製造しようとした場合、セパレータや集電体を多量に使用することになり、セル内活物質層体積占有率が低下してしまい、エネルギー密度の観点から好ましくなく、用途がかなり制限されてしまう。特に出力特性(低温特性も含む)も重要であるが、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0205】
一方、電極厚みが300μmを超える電極を製造することは、クラック発生の問題から比較的に困難を伴うため、電極厚みは概ね300μm以下とすることが電極の安定的製造の観点から好ましい。より安定な電極製造を行うためには、電極厚みは200μm以下とすることがより好ましく、また、電極の生産性やキャパシタの出力特性を高くする目的から、電極厚みのさらに好適な範囲は10~100μmである。
【0206】
上記のとおりに作製した、本発明の非水電解質二次電池用電極は、補強効果の観点から機械的強度(電極強度)に異方性がないことが好ましい。機械的強度(電極強度)に異方性がない電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明の非水電解質二次電池用電極材料おいて、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6以下であることが好ましく、上記の比σM/σTが1.2以下であることがより好ましく、0.9~1.1の範囲にあることが更に好ましい。
【0207】
上記のとおりに作製した、本発明の非水電解質二次電池用電極は、補強効果の観点から機械的強度(電極強度)に異方性を有することが好ましい。機械的強度(電極強度)に異方性を有する電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明の非水電解質二次電池用電極材料において、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6より大きいことが好ましく、上記の比σM/σTが1.7以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましい。
【0208】
本発明の非水電解質二次電池用電極の集電体は、任意の導電性材料から形成することができる。したがって、例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅等の金属材料、特にアルミニウム、ステンレス鋼、銅から形成することができる。
【0209】
[非水電解質二次電池]
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池用電極を含む非水電解質二次電池である。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池用電極を含むことによって、優れたサイクル特性と、高容量とを有する。
【0210】
本発明の非水電解質二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム電池、リチウムイオンポリマー電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。本発明の非水電解質二次電池では、正極活物質層が集電体の表面に形成されてなる正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、正極活物質層と本発明の負極の負極活物質層とが向き合い、かつ正極活物質層と本発明による負極活物質との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。
【0211】
また、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び負極活物質層が集電体の表面に形成されてなる負極が、本発明の正極の正極活物質層と負極の負極活物質層とが向き合い、かつ本発明の正極の正極活物質層と負極活物質層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。さらに、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、本発明の正極の正極活物質層と本発明の負極の負極活物質層とが向き合い、かつ本発明の正極の正極活物質と本発明の負極の負極活物質層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されてよい。
【0212】
本発明の非水電解質二次電池のための電解質層は、本発明の目的及び効果を損なわない限り制限されるものではない。したがって例えば、電解質層としては、液体電解質、すなわち例えば有機溶媒にリチウム塩が溶解した溶液を用いることができる。ただし、このような液体電解質を用いる場合、正極活物質層と負極活物質層との間の直接の接触を防ぐために、多孔質層からなるセパレータを用いることが一般に好ましい。
【0213】
液体電解質のための有機溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を使用することができる。これらの有機溶媒は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、液体電解質のためのリチウム塩としては例えば、LiPF6、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiBF4等を使用することができる。これらのリチウム塩は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、電解質層としては、固体電解質を用いることもでき、この場合には、別個のスペーサーを省略することができる。
【0214】
〈第4の本発明〉
本発明について、以下に説明をする。
【0215】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、直線構造を有する超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体であって、超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾された、及び/又は超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理され、体積換算粒度分布測定により得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長15μm以下の第一ピークと繊維長15μm超の第二ピークとを有し、第一ピークの体積換算粒度分布(%)の第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が3/1以上である、超極細繊維状炭素集合体である(態様1)。
【0216】
本発明の超極細繊維状炭素は、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾されるか、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理されるか、又は、超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾されて、かつ酸化処理されて、さらには、体積換算粒度分布測定により得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長15μm以下の第一ピークと繊維長15μm超の第二ピークとを有して、第一ピークの体積換算粒度分布(%)の第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が3/1以上であることによって、優れた水分散性と優れた機械的強度とを有する。
【0217】
ここで、「体積換算粒度分布測定により得られた上記超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長15μm以下の第一ピークと繊維長15μm超の第二ピークとを有し、第一ピークの体積換算粒度分布(%)の上記第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比」は次のように求めることができる。粒度分布計により超極細繊維状炭素集合体の体積換算粒度分布を測定して得られるチャート(横軸が繊維長、縦軸が体積換算粒度分布(%))において、繊維長15μm以下の領域において傾きが大きく変化する点のうち体積換算粒度分布(%)が最も大きいものを第一ピーク、繊維長15μm超の領域において傾きが大きく変化する点のうち体積換算粒度分布(%)が最も大きいものを第二ピークとし、上記第一ピークの体積換算粒度分布(%)と上記第二ピークの体積換算粒度分布(%)との比(第一ピーク/第二ピーク)を求める。
【0218】
なお、上記「傾きが大きく変化する点」は極大値の他、例えば
図41や
図42に示す第二ピークのように、明確な極大値は示さないが前後で傾きが大きく変化する点をいう。
【0219】
態様1において、本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超極細繊維状炭素集合体の上記超極細繊維状炭素の平均繊維長が25μm以下である、超極細繊維状炭素集合体である(態様2)。態様2によると、本発明の超極細繊維状炭素集合体の水分散性と機械的強度は更に優れたものとなる。
【0220】
態様1又は2において、本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超遠心粉砕機により処理されて形成される超極細繊維状炭素集合体である(態様3)。態様3によると、本発明の超極細繊維状炭素集合体の水分散性と機械的強度とは更に優れたものとなる。
【0221】
態様1~態様3のいずれか1の態様において、本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超極細繊維状炭素集合体の超極細繊維状炭素のアスペクト比が1~1000である超極細繊維状炭素集合体である(態様4)。
【0222】
本発明の炭素系導電助剤は、態様1~態様4のいずれか1の態様の超極細繊維状炭素集合体を含む、炭素系導電助剤である(態様5)。態様5によれば、本発明の炭素系導電助剤は優れた導電性、すなわち高導電性と優れた機械的強度とを有する。
【0223】
本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、態様5の炭素系導電助剤と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料である(態様6)。態様6によれば、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は優れた導電性、すなわち高導電性と優れた機械的強度とを有する。
【0224】
態様6において、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、溶媒として水を更に含む非水電解質二次電池用電極材料である(態様7)。態様7によれば、超極細繊維状炭素集合体の水分散性が更に改良されて、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は更なる高導電性と優れた機械的強度とを有する。
【0225】
本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体及び集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、活物質層が態様6又は態様7の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極である(態様8)。態様8によれば、本発明の非水電解質二次電池用電極は優れた導電性、すなわち高導電性と優れた機械的強度とを有する。
【0226】
本発明の非水電解質二次電池は、態様8の非水電解質二次電池用電極を含む非水電解質二次電池である(態様9)。超極細繊維状炭素集合体の水分散性及び機械的強度が改良されることによって、本発明の非水電解質二次電池は、優れたサイクル特性と、高容量とを有する。
【0227】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、態様1~4のうち少なくとも2つの態様を任意に組み合わせた超極細繊維状炭素集合体でもよい。その超極細繊維状炭素集合体を、本発明の炭素系導電助剤は含むことができ、その炭素導電助剤を、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は含みことでき、その非水電解質二次電池用電極材料を、本発明の非水電解質二次電池用電極は有することでき、その非水電解質二次電池用電極を、本発明の非水電解質二次電池は含むことができる。
【0228】
以下、本発明について更に詳細に説明をする。
【0229】
[超極細繊維状炭素集合体]
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、直線構造を有する超極細繊維状炭素が集合して成る超極細繊維状炭素集合体であって、超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾された、及び/又は超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が酸化処理され、体積換算粒度分布測定により得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長15μm以下の第一ピークと繊維長15μm超の第二ピークとを有し、第一ピークの体積換算粒度分布(%)の第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が3/1以上である、超極細繊維状炭素集合体である。
【0230】
ここで、直線構造とは分岐度が0.01個/μm以下であることをいう。分岐とは、超極細繊維状炭素が末端部以外の場所で他の超極細繊維状炭素と結合した粒状部をいい、超極細繊維状炭素の主軸が中途で枝分かれしていること、及び超極細繊維状炭素の主軸が枝状の副軸を有することをいう。
【0231】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超極細繊維状炭素集合体の少なくとも一部の超極細繊維状炭素の表面の一部又は全部が界面活性剤によって修飾されることによって、優れた水分散性を有する。また、本発明の超極細繊維状炭素は、超極細繊維状炭素の表面の一部又は全部が酸化処理されることによって優れた水分散性を有する。超極細繊維状炭素の表面の一部としては、例えば、超極細繊維状炭素の端部の表面が挙げられる。また、水分散性とは、水溶液又は水(イオン交換水等)における超極細繊維状炭素の分散度合、すなわち分散性を意味する。
【0232】
超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって修飾されるとは、超極細繊維状炭素と界面活性剤とが化学修飾することか、物理修飾することか、又は化学修飾して、さらに物理修飾することをいう。化学修飾とは、超極細繊維状炭素と界面活性剤とが化学反応して化学的に結合することを意味し、例えば超極細繊維状炭素の官能基と界面活性剤の官能基とが共有結合することを意味する。物理修飾とは、非化学的な結合であって、物理的な結合を意味し、例えば超極細繊維状炭素と界面活性剤とが吸着したり、接着したりすることを意味する。
【0233】
超極細繊維状炭素を修飾する界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、脂肪酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、陽イオン界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等)、両性界面活性剤(アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等)、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド等)等が挙げられるが、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)が好ましい。
【0234】
超極細繊維状炭素と超極細繊維状炭素を修飾する界面活性剤との質量比は、本発明の目的を達成し、さらには本発明の効果を奏すれば、特に限定されることはないが、5:6であることが好ましい。
【0235】
超極細繊維状炭素の表面の少なくとも一部の酸化処理の具体例としては、過酸化物(H2O2)による酸化処理、オゾンによる酸化処理、UV照射による酸化処理、空気による酸化処理等が挙げられる。過酸化物(H2O2)による酸化処理によって本発明の超極細繊維状炭素の表面にイオン性のカルボキシル基が生成される観点から、過酸化物(H2O2)による酸化処理が好ましい。
【0236】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、体積換算粒度分布測定により得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長15μm以下の第一ピークと繊維長15μm超の第二ピークとを有して、第一ピークの体積換算粒度分布(%)の第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が3/1以上であることによって優れた水分散性と優れた機械的強度とを有する。本発明の超極細繊維状炭素集合体を構成する繊維長15μm以下の超極細繊維状炭素が、水分散性の改良に主に寄与し、本発明の超極細繊維状炭素集合体を構成する繊維長15μm超の超極細繊維状炭素が、機械的強度(補強効果)の改良に主に寄与する。
【0237】
さらに、本発明は、繊維長15μm以下の超極細繊維状炭素と繊維長15μm超の超極細繊維状炭素を含むことにより、電極材料を塗布するときの塗布方向(MD方向)及び/又は塗布方向に対する面内垂直方向(TD方向)に対して機械的強度が大きく、優れた補強効果を奏することができる。
【0238】
本発明の超極細繊維状炭素集合体において、繊維長15μm以下の第一ピークの体積換算粒度分布(%)の繊維長15μm超の第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が3/1以上であり、5/1以上であることが好ましい。これらの好ましい態様により、水分散性と機械的強度との更なる改良を図ることができる。また、繊維長15μm以下の第一ピークの体積換算粒度分布(%)の繊維長15μm超の第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比が3/1未満であると、水分散性及び/又は機械的強度の改良が図れないおそれがある。
【0239】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、体積換算粒度分布測定により得られた超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布において、繊維長が15μm超~50μmである超極細繊維状炭素の割合が超極細繊維状炭素集合体に対して50体積%未満であることが好ましく、より好ましい範囲として、40体積%未満、30体積%未満、20体積%未満、10体積%未満とすることができる。これらの好ましい範囲により、水分散性と機械的強度との更なる改良を図ることができる。
【0240】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超極細繊維状炭素集合体の超極細繊維状炭素の平均繊維長は1~100μmの範囲でよいが、25μm以下であることが好ましく、23μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、18μm以下であることが特に好ましい。これらの好ましい態様により、水分散性と機械的強度との更なる改良を図ることができる。超極細繊維状炭素の平均繊維長が、100μm超の長さである場合、本発明の超極細繊維状炭素集合体の水分散性及び機械的強度が損なわれる場合があるからである。ここで、本明細書において、超極細繊維状炭素をCNFと称する場合があり、平均繊維長が短い超極細繊維状炭素、例えば、平均繊維長が1μm~10μmである超極細繊維状炭素をS-CNFと称する場合がある。
【0241】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超遠心粉砕機により処理されて形成されることが好ましい。本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超遠心粉砕機により処理されることで水分散性と機械的強度との更なる改良を図ることができる。超遠心粉砕機によって、本発明の超極細繊維状炭素は衝撃粉砕と剪断との2段階の処理で瞬間粉砕される。すなわち、投入された超極細繊維状炭素は、高速回転するロータに遠心力で飛ばされて衝撃粉砕され、さらに、ロータ外周のリング状のスクリーンで剪断される。以上より、本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超遠心粉砕機により処理されて形成される。そして、上記の衝撃粉砕と剪断との2段階の処理を1回の処理と規定すると、本発明の超極細繊維状炭素集合体は、超遠心粉砕機により、任意の処理回数を経て処理されて形成されてよいが、1回~10回の処理回数を経て処理されて形成されることが好ましく、1回の処理回数を経て処理されて形成されることがより好ましく、5回以上の処理回数を経て処理されて形成されることが更に好ましい。
【0242】
本発明の超極細繊維状炭素集合体は、黒鉛化処理が施されて形成されることが好ましい。黒鉛化処理は、超遠心粉砕機による処理前に施されてもよいし、超遠心粉砕機による処理後に施されてもよいが、超遠心粉砕機による処理後に施されることが好ましい。黒鉛化処理は公知の方法で行うことができる(例えば、特開2012-36520に記載された方法)。黒鉛化処理に使用される不活性ガスとしては窒素、アルゴン等が挙げられ、黒鉛化処理温度は500℃~3500℃であることが好ましく、2000℃~3500℃であることがより好ましく、2600℃~3000℃であることが更に好ましい。また、黒鉛化処理時間は、黒鉛化が可能であれば、任意の時間でよいが、0.1~24時間であるとことが好ましく、0.2~10時間であることがより好ましく、0.5~8時間であることが更に好ましい。なお、黒鉛化処理する際の、酸素濃度は20体積ppm以下であることが好ましく、10体積ppm以下であることがより好ましい。
【0243】
本発明の超極細繊維状炭素は、アスペクト比が1~1000である超極細繊維状炭素であることが好ましく、アスペクト比が5~500である超極細繊維状炭素であることがより好ましく、アスペクト比が10~100である超極細繊維状炭素であることが更に好ましい。
【0244】
本発明の超極細繊維状炭素集合体を構成する超極細繊維状炭素は、本発明の目的を達成し、さらには本発明の効果を奏すれば、特に限定されることはないが、易黒鉛化性炭素であることが好ましい。易黒鉛化性炭素とは、2,500℃以上の高温での加熱処理によって三次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成しやすい炭素原料である。軟質炭素、ソフトカーボンなどとも呼ばれる。易黒鉛化性炭素としては、石油コークス、石炭ピッチコークス、ポリ塩化ビニル、3,5-ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0245】
中でも、メソフェ-ズピッチと呼ばれる、溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうる化合物又はその混合物が、高結晶性、高導電性が期待されることから好ましい。メソフェーズピッチとしては、石油残渣油を水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石油系メソフェ-ズピッチ;コールタールピッチを水素添加・熱処理を主体とする方法ないし水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする方法で得られる石炭系メソフェ-ズピッチ;ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素を原料として超強酸(例えばHF、BF3等)の存在下で重縮合させて得られる合成液晶ピッチ等が挙げられる。中でも、合成液晶ピッチが、不純物を含まない点でより好ましい。
【0246】
(平均繊維径)
本発明の超極細繊維状炭素集合体を構成する超極細繊維状炭素の平均繊維径は、200nm超900nm以下の範囲であることが好ましい。この平均繊維径は、電界放射型走査電子顕微鏡によって倍率2,000倍にて撮影した写真図より測定された値である。上記超極細繊維状炭素の平均繊維径は、230nm超600nm以下の範囲であることがより好ましく、250nm超500nm以下の範囲であることが更に好ましく、250nm超400nm以下の範囲であることが更により好ましい。
【0247】
(平均面間距離)
本発明の超極細繊維状炭素集合体を構成する超極細繊維状炭素の平均面間距離は、本発明の目的を達成し、さらには本発明の効果を奏すれば、特に限定されることはないが、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d(002)が0.335~0.340nmであることが好ましい。
【0248】
ここで、本発明の超極細繊維状炭素集合体を構成する代表的な超極細繊維状炭素の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図40に示す。
図40から明らかなように、超極細繊維状炭素は直線構造を有して、平均繊維長が1~100μmであることが確認される。
【0249】
本発明の超極細繊維状炭素集合体を構成する超極細繊維状炭素(CNF又はS-CNF)は公知の製造方法によって、製造される。例えば、超極細繊維状炭素(CNF又はS-CNF)は、特開2010-13742、特開2010-31439などに記載された製造方法によって製造され得る。そして、本発明の超極細繊維状炭素集合体は、上記により製造された超極細繊維状炭素を集合させて形成される。
【0250】
[導電助剤]
本発明の炭素系導電助剤は、本発明の超極細繊維状炭素集合体を含む炭素系導電助剤である。本発明の炭素系導電助剤は、本発明の超極細繊維状炭素集合体を含むことによって、優れた導電性、すなわち高導電性を有し、さらに優れた機械的強度を有する。本発明の炭素系導電助剤は、本発明の超極細繊維状炭素集合体を含んで成り、導電性を更に向上させることができる限り、本発明の超極細繊維状炭素集合体以外の材料、例えば炭素系材料等を含んでもよい。
【0251】
[非水電解質二次電池用電極材料]
本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、本発明の炭素系導電助剤と、電極活物質と、バインダーとを少なくとも含む非水電解質二次電池用電極材料である。本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、本発明の炭素系導電助剤を含むことによって、優れた導電性、すなわち高導電性を有し、さらに優れた機械的強度を有する。
【0252】
本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、溶媒として水を更に含むことが好ましい。溶媒としての水は例えば、イオン交換水等が挙げられる。溶媒として水を更に含むことによって、本発明の超極細繊維状炭素集合体の水分散性が更に良好となり、本発明の非水電解質二次電池用電極材料は、更なる高導電性を有する。
【0253】
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる電極活物質(正極活物質及び負極活物質)について説明する。
【0254】
(正極活物質)
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる正極活物質としては、非水電解質二次電池において、正極活物質として知られている従来公知の材料の中から、任意のものを一種又は二種以上適宜選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有金属酸化物が好適である。このリチウム含有金属酸化物としては、リチウムと、Co、Mg、Mn、Ni、Fe、Al、Mo、V、W及びTiなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む複合酸化物を挙げることができる。
【0255】
具体的には、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixCobV1-bOz、LixCobFe1-bO2、LixMn2O4、LixMncCo2-cO4、LixMncNi2-cO4、LixMncV2-cO4、LixMncFe2-cO4(ここで、x=0.02~1.2、a=0.1~0.9、b=0.8~0.98、c=1.6~1.96、z=2.01~2.3である。)などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。好ましいリチウム含有金属酸化物としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixMn2O4、LixCobV1-bOz(ここで、x、a、b及びzは上記と同じである。)からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。なお、xの値は充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0256】
上記正極活物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記正極活物質の平均粒子径は、10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.05μm(50nm)~7μmとすることが好ましく、1μm~7μmとすることがより好ましい。
【0257】
(負極活物質)
本発明の非水電解質二次電池用電極材料に含まれる負極活物質としては、非水電解質二次電池において、負極活物質として知られている従来公知の材料の中から、一種又は二種以上選択して用いることができる。例えばリチウムイオン二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料、Si及びSnのいずれか、又はこれらの少なくとも一種を含む合金や酸化物などを用いることができる。これらの中でも炭素材料が好ましい。
【0258】
上記炭素材料としては、天然黒鉛、石油系及び石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛、樹脂を炭素化したハードカーボン、メソフェーズピッチ系炭素材料などを代表例として挙げることができる。天然黒鉛や人造黒鉛を用いる場合、電池容量の増大の観点から、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)が0.335~0.337nmの範囲にあるものが好ましい。
【0259】
天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛質材料のことをいう。天然黒鉛は、その外観と性状によって、結晶化度の高い鱗状黒鉛と結晶化度が低い土状黒鉛の二種類に分けられる。鱗状黒鉛はさらに外観が葉状の鱗片状黒鉛と、塊状である鱗状黒鉛とに分けられる。黒鉛質材料となる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に制限されない。また、天然黒鉛又は天然黒鉛を原料として製造した粒子に熱処理を施して用いてもよい。
【0260】
また、人造黒鉛とは、広く人工的な手法で作られた黒鉛及び黒鉛の完全結晶に近い黒鉛質材料をいう。代表的な例としては、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣などから得られるタールやコークスを原料にして、500~1000℃程度の焼成工程、2000℃以上の黒鉛化工程を経て得たものが挙げられる。また、溶解鉄から炭素を再析出させることで得られるキッシュグラファイトも人造黒鉛の一種である。
【0261】
負極活物質として炭素材料の他に、Si及びSnの少なくとも一種を含む合金を使用することは、Si及びSnのそれぞれを単体で用いる場合やそれぞれの酸化物を用いる場合に比べ、電気容量を小さくすることができる点で有効である。なかでもSi系合金が好ましい。
【0262】
Si系合金としては、B、Mg、Ca、Ti、Fe、Co、Mo、Cr、V、W、Ni、Mn、Zn及びCuなどからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と、Siとの合金などを挙げることができる。具体的には、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2などからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0263】
本発明においては、負極活物質として、既述の材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記負極活物質の平均粒子径は10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.1~10μmとすることが好ましく、1~7μmとすることがより好ましい。
【0264】
(バインダー)
本発明の非水電解質二次電池に含まれるバインダーとしては、電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば好適に用いることが可能である。かかるバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、合成ブタジエンゴム(SBR)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等よりなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましい。
【0265】
バインダーとして用いる際の形状としては特に制限はなく、固体状であっても液体状(例えばエマルジョン状)であってもよく、電極の製造方法(特に乾式混練か湿式混練か)、電解液への溶解性等を考慮のうえ、適宜に選択することができる。
【0266】
バインダーを溶解する上記溶媒としては、バインダーを溶解するものである限り特に制限はない。具体的には、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等よりなる群から選ばれる1種類以上を挙げることができ、特にNMP又はDMAcが好適である。
【0267】
[非水電解質二次電池用電極]
本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体及び集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用電極であって、活物質層が本発明の非水電解質二次電池用電極材料から成る、非水電解質二次電池用電極である。本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体上に正極活物質層を有する場合は正極であり、集電体上に負極活物質層を有する場合は負極である。本発明の非水電解質二次電池用電極は、本発明の非水電解質二次電池用電極材料を活物質層として有するので、優れた導電性、すなわち高導電性を有し、さらに優れた機械的強度を有する。そして、本発明の超極細繊維状炭素集合体は優れた水分散性を有することから、本発明の非水電解質二次電池用電極材料はスラリー化したときに、ペースト状にし易く、本発明の非水電解質二次電池用電極は容易に製造され得る。
【0268】
本発明の非水電解質二次電池用電極を作製する方法としては、以下の二つの手法が一般的である。一つの方法は、電極活物質、導電助剤及びバインダーを混合・混練して、押し出し成形によりフィルム化して、これを圧延、延伸した後、集電体と張り合わせる方法である。もう一つの方法は、電極活物質、導電助剤、バインダー及びバインダーを溶解する溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを基盤上へ塗布し溶媒を除去後にプレスを行う方法である。
【0269】
本発明の場合、どちらでも可能であるが、後者の方法が好適であるので、以下後者の方法について詳述する。
【0270】
本発明の非水電解質二次電池用電極の作製において、スラリー中の本発明の導電助剤の添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる本発明の非水電解質二次電池用電極材料に対して10質量%以下である。上記の添加割合としては7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。導電助剤の添加割合が10質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0271】
また、本発明におけるバインダーの添加割合としては、電極活物質、導電助剤及びバインダーからなる電極材料に対して1~25質量%である。上記の添加割合は3~20質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。バインダー量が1質量%より少ないとクラックの発生や電極が集電体から剥離してしまうことがある。またバインダー量が25質量%より多いと、任意の容量セルを製造しようとした場合、電極中の活物質量が少なってしまい、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0272】
電極を作製する際に、スラリー中の分散状態が悪いことから、塗布に適した流動性を確保することが困難であることがある。このような場合には、スラリー化助剤を使用してもよい。スラリー化助剤としては、例えばポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール等よりなる群から選ばれる1つ以上を挙げることができ、特にポリビニルピロリドンを使用することが好適である。上記の如きスラリー化助剤を添加することにより、比較的に少ない溶媒量であっても十分な流動性を確保することができ、微粉砕活性炭の分散性も格段に向上する。また、溶媒除去後のクラックの発生も低減できる。
【0273】
上記スラリーにおける固形分濃度(上記スラリーの溶媒以外の成分の合計重量がスラリーの全質量に占める割合をいう。)は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%である。固形分濃度が50質量%より多いと、均一なスラリー作製が困難である場合がある。また、この値が10質量%より少ないと、スラリーの粘度が低下しすぎてしまい、電極の厚みが不均一になってしまうことがある。
【0274】
上記スラリーを塗布するには、例えばドクターブレード等の適宜の塗布方法を採用することができる。塗布後、例えば60~150℃、好ましくは75~85℃において、好ましくは60~180分処理することにより溶媒を除去する。その後、溶媒除去後の塗布物をプレスすることにより、活物質層を製造することができる。
【0275】
本発明の非水電解質二次電池用電極において、活物質層の厚みは5~300μmの範囲が好適である。活物質層厚みが5μm未満であると、任意の容量セルを製造しようとした場合、セパレータや集電体を多量に使用することになり、セル内活物質層体積占有率が低下してしまい、エネルギー密度の観点から好ましくなく、用途がかなり制限されてしまう。特に出力特性(低温特性も含む)も重要であるが、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
【0276】
一方、電極厚みが300μmを超える電極を製造することは、クラック発生の問題から比較的に困難を伴うため、電極厚みは概ね300μm以下とすることが電極の安定的製造の観点から好ましい。より安定な電極製造を行うためには、電極厚みは200μm以下とすることがより好ましく、また、電極の生産性やキャパシタの出力特性を高くする目的から、電極厚みの更に好適な範囲は10~100μmである。
【0277】
上記のとおりに作製した、本発明の非水電解質二次電池用電極は、補強効果の観点から機械的強度(電極強度)に異方性がないことが好ましい。機械的強度(電極強度)に異方性がない電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明の非水電解質二次電池用電極材料おいて、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6以下であることが好ましく、上記の比σM/σTが1.2以下であることがより好ましく、0.9~1.1の範囲にあることが更に好ましい。
【0278】
上記のとおりに作製した、本発明の非水電解質二次電池用電極は、補強効果の観点から、機械的強度(電極強度)に異方性を有することが好ましい。機械的強度(電極強度)に異方性を有する電極から集電体を除いたもの、すなわち、本発明の非水電解質二次電池用電極材料において、電極材料を塗布する塗布方向の引張強度σMと、塗布方向に対する面内垂直方向の引張強度σTの比σM/σTが1.6より大きいことが好ましく、上記の比σM/σTが1.7以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましい。
【0279】
本発明の非水電解質二次電池用電極の集電体は、任意の導電性材料から形成することができる。したがって、例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅等の金属材料、特にアルミニウム、ステンレス鋼、銅から形成することができる。
【0280】
[非水電解質二次電池]
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池用電極を含む非水電解質二次電池である。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池用電極を含むことによって、優れたサイクル特性と、高容量とを有する。
【0281】
本発明の非水電解質二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム電池、リチウムイオンポリマー電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。本発明の非水電解質二次電池では、正極活物質層が集電体の表面に形成されてなる正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、正極活物質層と本発明の負極の負極活物質層とが向き合い、かつ正極活物質層と本発明による負極活物質との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。
【0282】
また、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び負極活物質層が集電体の表面に形成されてなる負極が、本発明の正極の正極活物質層と負極の負極活物質層とが向き合い、かつ本発明の正極の正極活物質層と負極活物質層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されていてよい。さらに、本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解質を含む電解質層、及び本発明の非水電解質二次電池用負極が、本発明の正極の正極活物質層と本発明の負極の負極活物質層とが向き合い、かつ本発明の正極の正極活物質と本発明の負極の負極活物質層との間に電解質層が挿入されるようにして積層されてよい。
【0283】
本発明の非水電解質二次電池のための電解質層は、本発明の目的及び効果を損なわない限り制限されるものではない。したがって例えば、電解質層としては、液体電解質、すなわち例えば有機溶媒にリチウム塩が溶解した溶液を用いることができる。ただし、このような液体電解質を用いる場合、正極活物質層と負極活物質層との間の直接の接触を防ぐために、多孔質層からなるセパレータを用いることが一般に好ましい。
【0284】
液体電解質のための有機溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を使用することができる。これらの有機溶媒は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、液体電解質のためのリチウム塩としては例えば、LiPF6、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiBF4等を使用することができる。これらのリチウム塩は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、電解質層としては、固体電解質を用いることもでき、この場合には、別個のスペーサーを省略することができる。
【実施例】
【0285】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。
【0286】
〈第1の本発明〉
実施例中の各種測定や分析は、それぞれ以下の方法に従って行った。
【0287】
(1)前駆体成形体、超極細繊維状炭素の繊維径、繊維長の測定及びその他の炭素系導
電助剤の形状確認
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)を用いて観察及び写真撮影を行った。超極細繊維状炭素等の平均繊維径は、得られた電子顕微鏡写真から無作為に20箇所を選択して繊維径を測定し、それらのすべての測定結果(n=20)の平均値を平均繊維径とした。平均繊維長についても同様に算出した。
【0288】
(2)超極細繊維状炭素のX線回折測定
X線回折測定はリガク社製RINT-2100を用いてJIS R7651法に準拠し、格子面間隔(d002)及び結晶子大きさ(Lc002)を測定した。
【0289】
(3)電極材料の引張試験
電極を1cmの幅に切り出し、万能引張試験機(インストロン社製、INSTRON5500R)で引張試験を行うことで機械的強度を評価した。試験条件は把握長5cm,引張速度1mm/分とし、0.2%(0.1mm)伸長時にかかる応力を比較することで評価を行った。各電極の引張試験を行うにあたり、電極作製時のスラリーを塗布する塗布方向(MD)及び塗布方向に対する面内垂直方向(TD)のそれぞれについて試験を行い(n=5)、すべての結果の平均値をとることでMD方向の引張強度σM、TD方向の引張強度σTとした。
【0290】
〈超極細繊維状炭素の製造〉
熱可塑樹脂として高密度ポリエチレン(HI-ZEX(登録商標)5000SR、(株)プライムポリマ-製;350℃、600s-1の溶融粘度14Pa・s)90質量部及び熱可塑性炭素前駆体として合成メソフェ-ズピッチAR・MPH(三菱ガス化学(株)製)10質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM-26SS」、バレル温度310℃、窒素気流下)で溶融混練して樹脂組成物を調製した。
【0291】
上記樹脂組成物をシリンダ-式単孔紡糸機により、390℃で紡糸口金より紡糸し、前駆体成形体(熱可塑性炭素前駆体を島成分として含有する海島型複合繊維)を作成した。この前駆体成形体の繊維径は300μmであった。次に、前駆体成形体を熱風乾燥機により、空気中において215℃で3時間保持することにより、安定化前駆体成形体を得た。
【0292】
次に、上記安定化前駆体成形体を、真空ガス置換炉中で、窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、減圧状態下で、5℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成した。この繊維状炭素前駆体をイオン交換水中に加え、ミキサーで2分間粉砕することにより、濃度0.1重量%の超極細繊維状炭素前駆体を分散させた予備分散液を作製した。この予備分散液を、湿式ジェットミル(株式会社スギノマシン社製、スターバーストラボHJP-17007、使用チャンバー:シングルノズルチャンバー)を用いて、ノズル径0.17mm、処理圧力100MPaにより、処理を10回繰り返すことによって、繊維状炭素前駆体の分散させた液を作製した。次いで、得られた溶媒液を濾過することによって、繊維状炭素前駆体を分散させた不織布を作製した。
【0293】
この繊維状炭素前駆体を分散させた不織布をアルゴンガス雰囲気下、室温から3時間で3000℃まで昇温することで超極細繊維状炭素を作製した。得られた超極細繊維状炭素の平均繊維径は300nm、平均繊維長は16μmであり、分岐構造は見られなかった、すなわち、直線構造が確認された。また、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が0.3375nmであった。ここで、製造された超極細繊維状炭素(CNF)の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図10に示す。
【0294】
[参考例A1]
〈電極活物質層の作製〉
上記のとおりに製造した超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)(CNF)を4質量部と、負極活物質(人造黒鉛;大阪ガス製、MCMB)を81質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ化学社製)を15質量部、溶液としてN-メチルピロリドンを用いることによりスラリーを作製した。作製したスラリーをガラス板に塗布、乾燥後、ガラス基板から電極活物質層を剥離し、ロールプレス(50kg/cm2、5cm/分)を行うことにより、電極活物質層を作製した。
【0295】
〈評価電極材料の引張試験及び結果〉
上記のとおりに作製した電極活物質層の引張強度を評価したところ、MD方向で2.6MPa、TD方向で1.5MPa、σ
M/σ
T=1.7となり、異方性のある補強効果を示した。引張試験の結果得られた応力―ひずみ曲線図を
図2に示す。
【0296】
参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素は繊維径に対する繊維長の比が大きい。そのため、スラリー塗布時に超極細繊維状炭素がMD方向に並ぶ傾向があり、MD方向に大きな補強効果を示した。
【0297】
[実施例A2]
〈電極活物質層の作製〉
参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素を粉砕(株式会社スギノマシン社製、スターバースト)し、平均繊維長5μmの超極細繊維状炭素として用いたこと以外は、参考例A1と同様に操作を行い、電極活物質層を作製した。ここで、平均繊維長5μmの超極細繊維状炭素(S-CNF)の走査型電子顕微鏡写真((a)2,000倍と(b)8,000倍)を
図11に示す。
【0298】
〈評価電極活物質層の引張試験及び結果〉
引張試験により機械的強度の評価を行った。MD方向で1.9MPa、TD方向で1.7MPa、σ
M/σ
T=1.1となり、異方性がない補強効果を示した。引張試験の結果得られた応力―ひずみ曲線図を
図3に示す。
【0299】
実施例A2で用いられた超極細繊維状炭素は参考例A1の超極細繊維状炭素よりも繊維長が短いため、繊維径に対する繊維長の比が比較的小さい。そのため、スラリー塗布方向に並ぶ傾向が少なく、引張強度の異方性が少なくなっている。その結果として、MD方向だけでなく、TD方向にも補強効果を示した。
【0300】
[実施例A3]
〈電極活物質層の作製〉
炭素系導電助剤として、参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素を2質量部及び実施例A2で用いられた超極細繊維状炭素を2質量部で用いたこと以外は、参考例A1と同様に操作を行い、電極活物質層を作製した。ここで、作製された電極活物質層の走査型電子顕微鏡写真((a)5,000倍と(b)8,000倍)を
図13に示す。
図13から明らかなように、参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素(CNF)と実施例A2で用いられた超極細繊維状炭素(S-CNF)との両方が存在していることが確認された。
【0301】
〈評価電極活物質層の引張試験及び結果〉
引張試験により機械的強度の評価を行った。MD方向で2.6MPa、TD方向で1.8MPa、σ
M/σ
T=1.5となり、異方性が少ない補強効果を示した。引張試験の結果得られた応力―ひずみ曲線図を
図4に示す。
【0302】
スラリー塗布時にMD方向に並びやすい、参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素と、MD方向に並ぶ傾向が少ない実施例A2で用いられた超極細繊維状炭素を組み合わせることにより、MD及びTD方向のいずれにも補強効果を示した。
【0303】
[実施例A4]
〈電極活物質層の作製〉
炭素系導電助剤として、参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素を2質量部及びアセチレンブラック(AB)(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)を2質量部で用いたこと以外は、参考例A1と同様に操作を行い、電極活物質層を作製した。ここで、用いられたアセチレンブラック(AB)の走査型電子顕微鏡写真(8,000倍)を
図12に示す。また、作製された電極活物質層の走査型電子顕微鏡写真((a)5,000倍と(b)8,000倍)を
図14に示す。
図14から明らかなように、参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素(CNF)とアセチレンブラック(AB)との両方が存在していることが確認された。
【0304】
〈評価電極活物質層の引張試験及び結果〉
引張試験により機械的強度の評価を行った。MD方向で2.0MPa、TD方向で1.4MPa、σ
M/σ
T=1.4となり、異方性が少ない補強効果を示した。引張試験の結果得られた応力―ひずみ曲線図を
図5に示す。
参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素を用いているため、スラリー塗布時に超極細繊維状炭素がMD方向に並ぶ傾向があり、MD方向に大きな補強効果を示した。
【0305】
[比較例A1]
〈電極活物質層の作製〉
参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素の替わりに、気相法炭素繊維(分岐構造を有する炭素繊維)(VGCF)を用いたこと以外は、参考例A1と同様に操作を行い、電極活物質層を作製した。
【0306】
〈評価電極活物質層の引張試験及び結果〉
引張試験により機械的強度の評価を行った。MD方向で0.96MPa、TD方向で0.90MPaとなり、MD方向又はTD方向に関係なく補強効果が劣る結果であった。引張試験の結果得られた応力―ひずみ曲線図を
図6に示す。
【0307】
[比較例A2]
〈電極活物質層の作製〉
参考例A1で用いられた超極細繊維状炭素の替わりに、アセチレンブラック(AB)(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)を用いたこと以外は、参考例A1と同様に操作を行い、電極活物質層を作製した。
【0308】
〈評価電極活物質層の引張試験及び結果〉
引張試験により機械的強度の評価を行った。MD方向で1.1MPa、TD方向で1.1MPaとなり、方向に関係なく補強効果が劣る結果であった。引張試験の結果得られた応力―ひずみ曲線図を
図7に示す。
【0309】
参考例A1、実施例A2~4及び比較例A1~2で作製された電極活物質層の0.2%(0.1mm)伸長時にかかる応力(MPa)の)の結果(MD方向及びTD方向)を
図7及び8に示す。また、参考例A1、実施例A2~4及び比較例A1~2で作製された電極活物質層の0.2%(0.1mm)伸長時にかかる応力(MPa)の具体的な値(MD方向及びTD方向)を下記の表1に示す。
【0310】
【0311】
本発明による非電解質二次電池用電極は、本発明による電極活物質層と集電体とから成るので、本発明による非電解質二次電池用電極の機械強度は、本発明による非電解質二次電池用電極材料によって得られた上記結果に基づく機械強度と同様な効果を奏することが理解される。
【0312】
なお、参考例A1、実施例A2~4及び比較例A1~2で作製された電極活物質層の0.2%(0.1mm)伸長時にかかる応力(MPa)のMD方向(電極作製時に電極材料(スラリー)を塗布するときの塗布方向)の結果を、
図8にまとめている。また、参考例A1、実施例A2~4及び比較例A1~2で作製された電極活物質層の0.2%(0.1mm)伸長時にかかる応力(MPa)の)のTD方向(電極作製時に電極材料(スラリー)を塗布するときの塗布方向に対する面内垂直方向)の結果を、
図9にまとめている。
【0313】
[実施例A5]
〈負極の製造〉
実施例A2で製造した平均繊維長5μmの超極細繊維状炭素(S-CNF)を2質量部と、負極活物質(鱗状黒鉛;日立化成社製、商品名MAGD)91質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ化学社製)7質量部、溶液としてN-メチルピロリドンを用いることによりスラリーを作製した。作製したスラリーを塗布、乾燥、ロールプレスを行うことにより、負極を作製した。電極の厚みは、75μm、電極密度は1.5g/cm3であった。
【0314】
上記のとおり作製した負極の引張強度を評価したところ、MD方向で1.5MPa、TD方向で1.4MPa、σM/σT=1.1となり、異方性が少ない補強効果を示した。
【0315】
〈正極の製造〉
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2、日本化学工業社製)89質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン6質量部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、商品名デンカブラック)、溶液としてN-メチルピロリドンを用いることによりスラリーを作製した。作製したスラリーを塗布、乾燥、ロールプレスを行うことにより、正極を作製した。電極の厚みは、82μm、電極密度は3.0g/cm3であった。
【0316】
〈セルの製造〉
上記のように作成した正極、負極、およびセパレータにはポリエチレン多孔膜を用い、1mol/L濃度のLiPF6を含むエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート混合溶液(3/7質量比、キシダ化学社製)からなる電解液をセルに注入して、単層ラミネートセルを作製した。
【0317】
〈サイクル特性の評価〉
上記の手順により作製したリチウムイオン二次電池の電池性能の評価を以下のように行った。
【0318】
[充放電条件]
上記のように作製したセルを用いて、充放電装置にて充放電試験を行った。充電条件は4.2Vまで0.2C定電流充電後、定電圧充電(0.02Cカットオフ)することとし、10分間の休止時間をおいてから放電に切り替えた。放電条件としては、2.75Vまで0.2C定電流放電することとした。
【0319】
評価した結果、50回目の容量維持率は92.0%と良好であった。
【0320】
[実施例A6]
実施例A5のS-CNFの替わりに、上記で作製した超極細繊維状炭素(CNF)とS-CNFの混合物(質量比1:1)を用いたこと以外は、実施例A5と同様に電極およびリチウムイオン二次電池を製造した。
【0321】
上記のとおり作製した負極の引張強度を評価したところ、MD方向で1.8MPa、TD方向で1.4MPa、σM/σT=1.3となり、異方性が少ない補強効果を示した。
【0322】
また、上記のとおり作製した電池のサイクル特性を評価したところ、50回目の容量維持率は92.5%と良好であった。
【0323】
[実施例A7]
実施例A5のS-CNFの替わりに、上記で作製した超極細繊維状炭素(CNF)とアセチレンブラック(AB)(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)の混合物(質量比1:1)を用いたこと以外は、実施例A5と同様に電極およびリチウムイオン二次電池を製造した。
【0324】
上記のとおり作製した負極の引張強度を評価したところ、MD方向で1.5MPa、TD方向で1.2MPa、σM/σT=1.3となり、異方性が少ない補強効果を示した。
【0325】
また、上記のとおり作製した電池のサイクル特性を評価したところ、50回目の容量維持率は91.5%と良好であった。
【0326】
[比較例A3]
実施例A5のS-CNFの替わりに、気相法炭素繊維(分岐構造を有する炭素繊維)を用いたこと以外は、実施例A5と同様に電極およびリチウムイオン二次電池を製造した。
【0327】
また、上記のとおり作製した電池のサイクル特性を評価したところ、50回目の容量維持率は90.7%と劣るものであった。
【0328】
[比較例A4]
実施例A5のS-CNFの替わりに、アセチレンブラック(AB)(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)を用いたこと以外は、実施例A5と同様に電極およびリチウムイオン二次電池を製造した。
【0329】
また、上記のとおり作製した電池のサイクル特性を評価したところ、50回目の容量維持率は89.5%と劣るものであった。
【0330】
実施例A5~A7、及び比較例A3~A4についての結果を下記の表A1にまとめる。
【0331】
【0332】
〈第2の本発明〉
以下、実施例により、第2の本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。
【0333】
実施例中の各種測定は、それぞれ以下の方法に従って行った。
【0334】
超極細繊維状炭素の繊維径及び繊維長の測定、並びに超極細繊維状炭素のX線回折測定は、上記と同様に行った。
【0335】
[実施例B1]
(実施例B1-1)
〈超極細繊維状炭素の製造〉
熱可塑樹脂として高密度ポリエチレン(HI-ZEX(登録商標) 5000SR、(株)プライムポリマ-製;350℃、600s-1の溶融粘度14Pa・s)90質量部および熱可塑性炭素前駆体として合成メソフェ-ズピッチAR・MPH(三菱ガス化学(株)製)10質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM-26SS」、バレル温度310℃、窒素気流下)で溶融混練して樹脂組成物を調製した。
【0336】
上記樹脂組成物をシリンダ-式単孔紡糸機により、390℃で紡糸口金より紡糸し、前駆体成形体(熱可塑性炭素前駆体を島成分として含有する海島型複合繊維)を作成した。この前駆体成形体の繊維径は300μmであった。次に、前駆体成形体を熱風乾燥機により、空気中において215℃で3時間保持することにより、安定化前駆体成形体を得た。
【0337】
次に、上記安定化前駆体成形体を、真空ガス置換炉中で、窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、減圧状態下で、5℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成した。この繊維状炭素前駆体をイオン交換水中に加え、ミキサーで2分間粉砕することにより濃度0.1質量%の繊維状炭素前駆体を分散させた。
【0338】
この分散させた繊維状炭素前駆体をアルゴンガス雰囲気下、室温から3時間で3000℃まで昇温することで超極細繊維状炭素を作製した。得られた超極細繊維状炭素の平均繊維径は300nm、平均繊維長は16μmであり、分岐構造は見られなかった。すなわち、直線構造が確認された。また、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が0.3375nmであった。ここで、製造された超極細繊維状炭素(CNF)の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図16に示す。
【0339】
〈湿式複合化〉
上記で得られた1質量部の超極細繊維状炭素と、1質量部のアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック75%プレス品)を、エタノール溶液を用いて湿式粉砕装置(あわとり練太郎ARV-310、シンキー社製)により粉砕し、複合体1-1を得た(20g)。
【0340】
(実施例B1-2)
〈超極細繊維状炭素の製造〉
実施例B1-1に記載の超極細繊維状炭素の製造方法と全く同様な製造方法で超極細繊維状炭素を得た。
【0341】
〈乾式複合化〉
上記のとおりに製造した1質量部の超極細繊維状炭素と、1質量部のアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック75%プレス品)とを乾式ジェットミル(A-Oジェットミル、セイシン製)により粉砕し、複合体1-2を得た(20g)。
【0342】
(実施例B1-3)
〈超極細繊維状炭素の製造〉
実施例B1-1に記載の超極細繊維状炭素の製造方法と全く同様な製造方法で超極細繊維状炭素を得た。
【0343】
〈メカニカルミリングによる複合化〉
上記のとおりに製造した1質量部の超極細繊維状炭素と、1質量部のアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック75%プレス品)とを遊星ボールミル装置(装置:フリッチュ製P-7、使用ボール:ジルコニア製ボール直径10mm)により粉砕し、複合体1-3を得た(20g)。
【0344】
(比較例B1-1)
実施例B1-1に記載の超極細繊維状炭素の製造方法と全く同様な製造方法で超極細繊維状炭素を得た(20g)。
【0345】
(比較例B1-2)
20gのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック75%プレス品)を用意した。
【0346】
[実施例B2]
(実施例B2-1)
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)を用いて、実施例B1-1で得られた複合体1-1を観察して、写真撮影を行った。撮影した写真結果を
図17(撮影倍率×500倍)及び
図18(撮影倍率×1000倍)に示す。
図17及び
図18から明らかなように、凝集したアセチレンブラックが所々観察されるが、超極細繊維状炭素の形状は変わらずに、超極細繊維状炭素とアセチレンブラックとは共に分散して、一体的に互いに付着されて存在していた。
【0347】
(実施例B2-2)
実施例B2-1と同様に、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)を用いて、実施例B1-2で得られた複合体1-2を観察して、写真撮影を行った。撮影した写真結果を
図19(撮影倍率×500倍)及び
図20(撮影倍率×1000倍)に示す。
図19及び
図20から明らかなように、超極細繊維状炭素の形状は変わらずに、超極細繊維状炭素の周囲にアセチレンブラックがハイブリットされたように均一に混合されていた。超極細繊維状炭素とアセチレンブラックとが一体的に互いに付着されて、超極細繊維状炭素とアセチレンブラックが均一に混合されていることが確認された。
【0348】
[実施例B3]
(実施例B3-1)
実施例B1-1で得られた複合体1-1を用いて、密度と体積抵抗率との関係を調べた。密度と体積抵抗率との関係を調べるために、四探針法(三菱化学アナリテック株式会社、ロレスターGP)を用いて密度と体積抵抗率とを測定した。ロレスターGPに、複合体1-1の紛体サンプル投入し、常温下で上から押しつぶして圧力をかけ、密度の値を小さくしながら体積抵抗率を測定した。測定結果を
図21に示す。例えば、密度0.58g/ccのときに複合体1-1の体積抵抗率は0.7Ω・cmであった。
【0349】
(実施例B3-2)
実施例B1-2で得られた複合体1-1を用いた以外は、実施例B3-1に記載した方法と全く同様な方法で、密度と体積抵抗率との関係を調べた。測定結果を
図21に示す。例えば、密度0.58g/ccのときに複合体1-2の体積抵抗率は0.05Ω・cmであった。
【0350】
(比較例B2-1)
比較例B1-1で得られた超極細繊維状炭素を用いた以外は、実施例B3-1に記載した方法と全く同様な方法で、密度と体積抵抗率との関係を調べた。測定結果を
図21に示す。例えば、密度0.58g/ccのときに超極細繊維状炭素(CNF)の体積抵抗率は0.05Ω・cmであった。
【0351】
(比較例B2-2)
比較例B1-2で用意したアセチレンブラックを用いた以外は、実施例B3-1に記載した方法と全く同様な方法で、密度と体積抵抗率との関係を調べた。測定結果を
図21に示す。測定結果を
図21に示す。例えば、密度0.58g/ccのときにアセチレンブラックの体積抵抗率は0.12Ω・cmであった。
【0352】
〈密度と体積抵抗率との関係〉
図21を参照すると、実施例B1-1で得られた複合体1-1の体積抵抗率は、比較例B1-2で用意したアセチレンブラックの体積抵抗率よりも高い抵抗率を示したが、実用上問題ないレベルだった。実施例B1-2で得られた複合体1-2の体積抵抗率は、比較例B1-1で得られた超極細繊維状炭素の体積抵抗率と略同等~良好であり、比較例B1-2で用意したアセチレンブラックの体積抵抗率よりも低い抵抗率を示した。以上より、複合体1-1及び複合体1-2は、超極細繊維状炭素に起因する優れた機械的強度(補強効果)を維持しながら、優れた導電性を有することが理解できる。
【0353】
(実施例B3-2)
実施例B1-2で得られた複合体1-2を用いて、放電レート特性の評価を行った。
〈正極の製造〉
導電助剤として上記作製した複合体1-2を2質量部、正極活物質としてカーボン被覆LiFePO4(宝泉株式会社製、SLFP-ES01)91質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを7質量部、溶液としてN-メチルピロリドンを用いることによりスラリーを作製した。作製したスラリーをアルミ箔上に塗布、乾燥、ロールプレスを行うことにより、正極を作製した。電極の厚みは、35μm、電極密度は2.5g/cm3であった。
【0354】
〈セルの製造〉
上記のように作製した正極を、ポリエチレン多孔質セパレータを介して金属リチウムと対向させ、1mol/L濃度のLiPF6を含むエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート混合溶液(3/7質量比、キシダ化学社製)からなる電解液を2032型コインセルに注入して、電池評価用のハーフセルを作製した。
【0355】
〈放電レート特性評価〉
上記のように作製したセルを用いて、充放電装置にて充放電試験を行った。充電条件は、4.0Vまで0.2C定電流充電後、定電圧充電(0.01Cカットオフ)することとし、10分間の休止時間をおいてから放電に切り替えた。放電条件としては、下限電圧を2.5Vに設定し各放電レートにて定電流放電とした。放電レートは0.2C→0.5C→1.0C→2.0C→3.0C→5.0Cのように段階的に上げることとした。
【0356】
測定された放電レート特性のチャートを
図22に示す。また、電極電位3Vカットオフ時における容量維持率(0.2C放電容量を100%とする)を下記表B1に示す。
【0357】
(実施例B3-3)
導電助剤として実施例B1-3で得られた複合体1-3を用いた以外は、実施例3-2と同様にレート特性の評価を行った。
【0358】
測定された放電レート特性のチャートを
図23に示す。また、電極電位3Vカットオフ時における容量維持率(0.2C放電容量を100%とする)を下記表B1に示す。
【0359】
(比較例B3-1)
導電助剤として比較例B1-1で得られた超極細繊維状炭素(CNF)を用いた以外は、実施例3-2と同様にレート特性の評価を行った。
【0360】
測定された放電レート特性のチャートを
図24に示す。また、電極電位3Vカットオフ時における容量維持率(0.2C放電容量を100%とする)を下記表B1に示す。
【0361】
(比較例B3-2)
導電助剤として比較例B1-2で用いたアセチレンブラックを用いた以外は、実施例3-2と同様にレート特性の評価を行った。
【0362】
測定された放電レート特性のチャートを
図25に示す。また、電極電位3Vカットオフ時における容量維持率(0.2C放電容量を100%とする)を下記表B1に示す。
【0363】
【0364】
〈第3の本発明〉
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。
【0365】
実施例における、超極細繊維状炭素の繊維径及び繊維長の測定、並びに超極細繊維状炭素のX線回折測定は、それぞれ以下の方法に従って行った。
【0366】
超極細繊維状炭素の繊維径及び繊維長の測定、並びに超極細繊維状炭素のX線回折測定は、上記と同様に行った。
【0367】
[実施例C1]
〈超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)の製造〉
熱可塑樹脂として高密度ポリエチレン(HI-ZEX(登録商標)5000SR、(株)プライムポリマ-製;350℃、600s-1の溶融粘度14Pa・s)90質量部および熱可塑性炭素前駆体として合成メソフェ-ズピッチAR・MPH(三菱ガス化学(株)製)10質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM-26SS」、バレル温度310℃、窒素気流下)で溶融混練して樹脂組成物を調製した。
【0368】
上記樹脂組成物をシリンダ-式単孔紡糸機により、390℃で紡糸口金より紡糸し、前駆体成形体(熱可塑性炭素前駆体を島成分として含有する海島型複合繊維)を作成した。この前駆体成形体の繊維径は300μmであった。次に、前駆体成形体を熱風乾燥機により、空気中において215℃で3時間保持することにより、安定化前駆体成形体を得た。
【0369】
次に、上記安定化前駆体成形体を、真空ガス置換炉中で、窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、減圧状態下で、5℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成した。この繊維状炭素前駆体をイオン交換水中に加え、ミキサーで2分間粉砕することにより濃度0.1質量%の繊維状炭素前駆体を分散させた。
【0370】
この分散させた繊維状炭素前駆体をアルゴンガス雰囲気下、室温から3時間で3000℃まで昇温することで黒鉛化して、その後、室温まで自然冷却して乾式ジェットミル装置(A-0ジェットミル、セイシン製)により解砕し、超極細繊維状炭素を製造した。得られた超極細繊維状炭素の平均繊維径は300nm、平均繊維長は16μmであり、分岐構造は見られなかった。すなわち、直線構造が確認された。また、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が0.3375nmであった。ここで、製造された超極細繊維状炭素(CNF)の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図27に示す。
【0371】
〈スラリーの作製〉
上記のとおりに製造した、5質量部の超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)と、バインダーである、5質量部のスチレンブタジエンゴム(SBR、日本ゼオン製)と、界面活性剤である、6質量部のエーテル化度0.8、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、500質量部の溶媒である、イオン交換水とを用いて超音波振動にて混合してスラリーを作製した。
【0372】
〈水分散性評価〉
上記により作製したスラリーを用いて水分散性の評価を目視で行った。水分散性の評価方法は、スラリーを目視で確認して、スラリーが滑らかで、スラリー中に超極細繊維状炭素集合体の凝集体が存在しなければ、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は良好と判断した。一方、スラリー中に目視で確認できる超極細繊維状炭素集合体の凝集体が存在すれば、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は不良と判断した。
【0373】
〈電極の作製〉
上記のとおりに製造した、2質量部の超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)と、バインダーである、1.5質量部のスチレンブタジエンゴム(SBR、日本ゼオン製)と、界面活性剤である、1.5質量部のエーテル化度0.8、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、95質量部の負極活物質である黒鉛(NICABEADS,Type:P25B-XB,Nippon Carbon Co.)と、100質量部のイオン交換水とを混合させ、電極作製スラリーを調製した。調製した電極作製スラリーをドクターブレードにより銅箔上に塗布させ、塗布した電極作製スラリーを105℃の熱風乾燥器中で乾燥させることにより、電極シートを作製した。
【0374】
〈電極中の分散性評価〉
上記により作製した電極シートの表面を走査型電子顕微鏡により観察し、超極細繊維状炭素の凝集の有無を確認し、凝集体が存在すれば、電極中の分散性は不良と判断した。
【0375】
[実施例C2]
〈超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)の製造〉
乾式ジェットミル装置により解砕しないで、湿式粉砕装置(株式会社スギノマシン社製、スターバースト)により解砕した以外は、実施例C1と全く同様な方法で超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を製造して、平均繊維長が5μmである超極細繊維状炭素を得た。
【0376】
〈スラリーの作製〉
上記のとおりに製造した超極細繊維状炭素を用いて、実施例C1に記載のスラリーの作製の方法と全く同様な方法で作製してスラリーを得た。
【0377】
〈水分散性評価〉
上記により作製したスラリーを用いて水分散性の評価を実施例C1と同様に行った。
【0378】
[実施例C3]
〈超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)の製造〉
乾式ジェットミル装置により解砕しなかった以外は、実施例C1と全く同様な方法で超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を製造して、平均繊維長が16μmである超極細繊維状炭素を得た。
【0379】
〈スラリーの作製〉
上記のとおりに製造した超極細繊維状炭素を用いて、実施例C1に記載のスラリーの作製の方法と全く同様な方法で作製してスラリーを得た。
【0380】
〈水分散性評価〉
上記により作製したスラリーを用いて水分散性の評価を実施例C1と同様に行った。
【0381】
[比較例C1]
〈超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)の製造〉
実施例C1と全く同様な方法で超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を製造した。
【0382】
〈スラリーの作製〉
上記のとおりに製造した超極細繊維状炭素を用いて、界面活性剤である、6質量部のエーテル化度0.8、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を用いなかった以外は、実施例C1に記載のスラリーの作製の方法と全く同様な方法で作製してスラリーを得た。
【0383】
〈水分散性評価〉
上記により作製したスラリーを用いて水分散性の評価を実施例C1と同様に行った。
【0384】
[実施例C4]
〈超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)の製造〉
実施例C1と全く同様な方法で超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を製造した。
【0385】
〈超極細繊維状炭素繊維の界面活性剤修飾体の製造〉
2質量部の上記超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を撹拌中の500質量部のN-メチルピロリドン(特級、和光純薬製)中に添加し分散させた。この分散液に、1.5質量部のエーテル化度0.8、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、500質量部のイオン交換水中との溶液を加え、混合溶液を調製した。この混合溶液を加熱濃縮することにより超極細繊維状炭素繊維の界面活性剤修飾体を調製した。
【0386】
〈スラリーの作製〉
上記のとおりに製造した超極細繊維状炭素繊維の界面活性剤修飾体を用いて、実施例C1に記載のスラリーの組成と同様になるようにスラリーを作製した。
【0387】
〈水分散性評価〉
上記により作製したスラリーを用いて水分散性の評価を実施例C1と同様に行った。
【0388】
〈電極の作製〉
上記のとおりに製造した超極細繊維状炭素繊維の界面活性剤修飾体を用いて、実施例C1に記載の電極組成と同様になるようにスラリーを調製し、実施例C1と同様に電極を作製した。
【0389】
〈電極中の分散性評価〉
上記により作製した電極シートの表面を走査型電子顕微鏡により観察し、超極細繊維状炭素の凝集の有無を確認し、凝集体が存在すれば、電極中の分散性は不良と判断した。
【0390】
[実施例C5]
〈超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)の製造〉
実施例C1と全く同様な方法で超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を製造した。
【0391】
〈酸化処理超極細繊維状炭素の製造〉
5gの上記超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を撹拌中の50mlの濃硝酸(60~61%、試薬特級、和光純薬製)と150mlの濃硫酸(95.0+%、試薬特級、和光純薬製)の混合液(混酸)中に添加した。室温にて3時間混合した後に、ろ過により固形物を回収し、その固形物を洗浄液が中性になるまでイオン交換水により洗浄し、固形物を乾燥させることで、酸化処理超極細繊維状炭素を調製した。
【0392】
〈酸化処理超極細繊維状炭素の黒鉛構造の評価〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素の黒鉛構造を、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)、および結晶子の大きさLc(002)を、酸化処理を行っていない超極細繊維状炭素のd(002)の0.3372nm、およびLc(002)の47.9nmに対して比較により、評価した。
【0393】
〈酸化処理超極細繊維状炭素の残存薬剤の評価〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素を、窒素雰囲気下にて25℃から500℃まで10℃/分により昇温させ、25℃時点での質量に対する25℃時点での質量の減少率を測定することにより、酸化処理超極細繊維状炭素に含まれる薬剤等の残存量を測定した。質量減少率が大きいと、非水電解質二次電池に用いた場合に、副反応による電池容量の低下が発生するため好ましくない。
【0394】
〈スラリーの作製〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素を用いて、実施例C1に記載のスラリーの作製の方法と全く同様な方法で作製してスラリーを得た。
【0395】
〈水分散性評価〉
上記により作製したスラリーを用いて水分散性の評価を実施例C1と同様に行った。
【0396】
〈電極の作製〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素を用いて、実施例C1に記載の電極組成と同様になるようにスラリーを調製し、実施例C1と同様に電極を作製した。
【0397】
〈電極中の分散性評価〉
上記により作製した電極シートの表面を走査型電子顕微鏡により観察し、超極細繊維状炭素の凝集の有無を確認し、凝集体が存在すれば、電極中の分散性は不良と判断した。
【0398】
[実施例C6]
〈超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)の製造〉
実施例C1と全く同様な方法で超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を製造した。
【0399】
〈酸化処理超極細繊維状炭素の製造〉
5gの上記超極細繊維状炭素(炭素系導電助剤)を撹拌中の200mlの過酸化水素水(30.0~35.5%、試薬特級、和光純薬製)中に添加した。室温にて3時間混合した後に、ろ過により固形物を回収し、その固形物をイオン交換水により洗浄し、固形物を乾燥させることで、酸化処理超極細繊維状炭素を調製した。
【0400】
〈酸化処理超極細繊維状炭素の黒鉛構造の評価〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素の黒鉛構造を、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)、および結晶子の大きさLc(002)を、酸化処理を行っていない超極細繊維状炭素のd(002)の0.3372nm、およびLc(002)の47.9nmに対して比較により、評価した。
【0401】
〈酸化処理超極細繊維状炭素の残存薬剤の評価〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素を、窒素雰囲気下にて25℃から500℃まで10℃/分により昇温させ、25℃時点での質量に対する25℃時点での質量の減少率を測定することにより、酸化処理超極細繊維状炭素に含まれる薬剤等の残存量を測定した。質量減少率が大きいと、非水電解質二次電池に用いた場合に、副反応による電池容量の低下が発生するため好ましくない。
【0402】
〈スラリーの作製〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素を用いて、実施例C1に記載のスラリーの作製の方法と全く同様な方法で作製してスラリーを得た。
【0403】
〈水分散性評価〉
上記により作製したスラリーを用いて水分散性の評価を実施例C1と同様に行った。
【0404】
〈電極の作製〉
上記のとおりに製造した酸化処理超極細繊維状炭素を用いて、実施例C1に記載の電極組成と同様になるようにスラリーを調製し、実施例C1と同様に電極を作製した。
【0405】
〈電極中の分散性評価〉
上記により作製した電極シートの表面を走査型電子顕微鏡により観察し、超極細繊維状炭素の凝集の有無を確認し、凝集体が存在すれば、電極中の分散性は不良と判断した。
【0406】
[水分散性評価結果及び考察]
実施例C1で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果を
図28に示す。
図28から明白であるが、実施例C1で作製されたスラリーは滑らに形成されており、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は良好であった。実施例C2で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果を
図29に示す。
図29から明白であるが、実施例C2で作製されたスラリーは滑らに形成されており、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は非常に良好であった。
【0407】
実施例C3で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果を
図30に示す。
図30に示されるとおり、実施例C3で作製されたスラリー中に超極細繊維状炭素の小さな凝集体が散見された。この凝集体は、解砕工程を経なかったために、超極細繊維状炭素が解砕されず、束状の超極細繊維状炭素が形成されたためと考えられる。
【0408】
なお、実施例C3で作製されたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性は、実施例C1及び2で作製されたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性よりは良好ではなかったが、実施例C3で作製されたスラリー中の超極細繊維状炭素集合体の水分散性は、不良のレベルではなく、実用上問題ないレベルであった。
【0409】
比較例C1で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果を
図31に示す。
図31に示されるとおり、比較例C1で作製されたスラリー中の超極細繊維状炭素は完全に凝集し、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は不良であった。この水分散性不良は、スラリー作成時に界面活性剤を混合しなかったために、超極細繊維状炭素が界面活性剤によって修飾されずに超極細繊維状炭素の疎水性が保持されたためと考えられる。
【0410】
実施例C4で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果を
図32に示す。
図32から明白であるが、実施例C4で作製されたスラリーは滑らに形成されており、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は良好であった。
【0411】
実施例C5で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果を
図33に示す。
図33から明白であるが、実施例C5で作製されたスラリーは滑らに形成されており、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は良好であった。
【0412】
実施例C6で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果を
図34に示す。
図34から明白であるが、実施例C6で作製されたスラリーは滑らに形成されており、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は良好であった。
【0413】
[酸化処理超極細繊維状炭素の黒鉛構造の評価]
実施例C5で作製された酸化処理超極細繊維状炭素の黒鉛構造の評価は、面間隔d(002)は0.3377nm、結晶子の大きさLc(002)は21.3nmであった。これは、酸化処理を行っていない超極細繊維状炭素に対して面間隔が増大し、結晶子サイズが小さくなっていることを示しており、実用上問題ないレベルであるが、好ましくないものであった。
【0414】
また、同様に実施例C6では、d(002)は0.3373nm、Lc(002)は47.7nmであった。これは、酸化処理を行っていない超極細繊維状炭素に対して、面間隔が増大し、結晶子サイズが小さくなってはいるが、その変化は小さく、実用上まったく問題ないものであった。
【0415】
[酸化処理超極細繊維状炭素の残存薬剤の評価]
酸化処理を行っていない超極細繊維状炭素の質量減少率は、0.6%であったのに対して、実施例C6は1.3%と質量減少率はほとんど変わらなかったのに対して、実施例C5では7.5%と質量減少率が大きく、実施例C5では非水電解質二次電池に用いた場合に、副反応による電池容量の低下が発生するため好ましくないことが確認された。
【0416】
[電極中の分散性評価]
実施例C1で作製された電極を用いた電極中の分散性評価の結果を
図35に示す。
図35から明白であるが、実施例C1で作製された電極中には、超極細繊維状炭素集合体の凝集体が確認され、電極中での分散性は不十分であることが確認された。つまり、スラリーでの水分散性評価結果では、分散性が良好であり、巨視的には分散性が良好であったが、微視的には凝集体を形成しており、本目的に対して好ましくないものであった。
【0417】
また、実施例C4で作製された電極を用いた電極中の分散性評価の結果を
図36に示す。
図36から明白であるが、実施例C4で作製された電極中には、超極細繊維状炭素集合体が電極中に分散しており、電極中の分散性評価は良好であった。
【0418】
また、実施例C5で作製された電極を用いた電極中の分散性評価の結果を
図37に示す。
図37から明白であるが、実施例C5で作製された電極中には、超極細繊維状炭素集合体が電極中に分散しており、電極中の分散性評価は良好であった。
【0419】
また、実施例C6で作製された電極を用いた電極中の分散性評価の結果を
図38に示す。
図38から明白であるが、実施例C6で作製された電極中には、超極細繊維状炭素集合体が電極中に分散しており、電極中の分散性評価は良好であった。
【0420】
【0421】
〈第4の本発明〉
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。
【0422】
実施例における、超極細繊維状炭素の繊維径及び繊維長の測定、並びに超極細繊維状炭素のX線回折測定は、それぞれ以下の方法に従って行った。
【0423】
超極細繊維状炭素の繊維径及び繊維長の測定、並びに超極細繊維状炭素のX線回折測定は、上記と同様に行った。
【0424】
[実施例D1]
〈超極細繊維状炭素の製造〉
【0425】
熱可塑樹脂として高密度ポリエチレン(HI-ZEX(登録商標)5000SR、(株)プライムポリマ-製;350℃、600s-1の溶融粘度14Pa・s)90質量部及び熱可塑性炭素前駆体として合成メソフェ-ズピッチAR・MPH(三菱ガス化学(株)製)10質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM-26SS」、バレル温度310℃、窒素気流下)で溶融混練して樹脂組成物を調製した。
【0426】
上記樹脂組成物をシリンダ-式単孔紡糸機により、390℃で紡糸口金より紡糸し、前駆体成形体(熱可塑性炭素前駆体を島成分として含有する海島型複合繊維)を作成した。この前駆体成形体の繊維径は300μmであった。次に、前駆体成形体を熱風乾燥機により、空気中において215℃で3時間保持することにより、安定化前駆体成形体を得た。
【0427】
次に、上記安定化前駆体成形体を、真空ガス置換炉中で、窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、減圧状態下で、5℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成した。この繊維状炭素前駆体をイオン交換水中に加え、ミキサーで2分間粉砕することにより濃度0.1質量%の繊維状炭素前駆体を分散させた。この0.1質量%分散液を、100℃の乾燥機中で乾燥させて超極細繊維状炭素を製造した。得られた超極細繊維状炭素の平均繊維径は300nmであり、分岐構造は見られなかった。すなわち、直線構造が確認された。粒度分布測定により超極細繊維状炭素の粒度分布を測定すると、平均繊維長が20μmであった。また、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が0.3375nmであった。ここで、製造された超極細繊維状炭素(CNF)の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図40に示す。
【0428】
〈超極細繊維状炭素集合体の製造〉
上記により製造された超極細繊維状炭素を超遠心粉砕機(レッチェ社製:ZM100)、ローターは24本刃であり、スクリーンの孔径は0.08mmであり、回転速度は18000rpmであった。)により、処理回数5回で連続処理をして、その後、アルゴンガス雰囲気下、室温から3時間で3000℃まで昇温することで黒鉛化して、室温まで自然冷却して、複数個の超極細繊維状炭素を集合させて超極細繊維状炭素集合体を製造した。
【0429】
〈超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の測定〉
粒度分布計(画像解析粒度分布計:ジャスコインタナショナル株式会社製IF-200nano、溶媒:エタノール、炭素繊維濃度:0.05%。)により、上記により製造された超極細繊維状炭素集合体の体積換算粒度分布(%)を測定して、超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布を求めた。
【0430】
〈スラリーの作製〉
上記により製造された、5質量部の超極細繊維状炭素集合体(炭素系導電助剤)と、バインダーである、5質量部のスチレンブタジエンゴム(SBR、日本ゼオン製)と、界面活性剤である、6質量部のエーテル化度0.8、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、5質量部の溶媒であるイオン交換水とを用いて超音波振動にて混合してスラリーを作製した。
【0431】
〈水分散性評価〉
上記により作製されたスラリーを用いて水分散性の評価を目視で行った。水分散性の評価方法は、スラリーを目視で確認して、スラリーが滑らかで、スラリー中に超極細繊維状炭素集合体の凝集体が存在しなければ、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は良好と判断した。一方、スラリー中に目視で確認できる超極細繊維状炭素集合体の凝集体が存在すれば、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は不良と判断した。水分散性の評価基準は以下のとおりとした。
【0432】
(水分散性評価基準)
◎:水分散性が非常に良好、
○:水分散性が良好、
△:水分散性がやや不良
×:水分散性が不良
××:水分散性が非常に不良
【0433】
[実施例D2]
〈超極細繊維状炭素の製造〉
実施例D1に記載の製造方法と全く同様な製造方法で超極細繊維状炭素を製造した。
【0434】
〈超極細繊維状炭素集合体(炭素系導電助剤)の製造〉
超遠心粉砕機による処理回数を1回とした以外は、実施例D1に記載の製造方法と全く同様な製造方法で超極細繊維状炭素集合体(炭素系導電助剤)を製造した。
【0435】
〈超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の測定〉
実施例D1に記載の測定方法と全く同様な測定方法で、上記により製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布を求めた。
【0436】
〈スラリーの作製〉
上記により製造された超極細繊維状炭素集合体を用いて、実施例D1に記載のスラリーの作製方法と全く同様な作製方法でスラリーを作製した。
【0437】
〈水分散性評価〉
上記により作製されたスラリーを用いて、実施例D1に記載の評価方法と全く同様な評価方法で水分散性の評価を行った。
【0438】
[比較例D1]
〈超極細繊維状炭素の製造〉
実施例D1に記載の製造方法と全く同様な製造方法で超極細繊維状炭素を製造した。
【0439】
〈超極細繊維状炭素集合体(炭素系導電助剤)の製造〉
【0440】
上記により製造された超極細繊維状炭素を超遠心粉砕機により処理しなかったこと以外は、実施例D1に記載の方法と全く同様な方法で超極細繊維状炭素集合体を製造した。
【0441】
〈超極細繊維状炭素の繊維長分布の測定〉
実施例D1に記載の測定方法と全く同様な測定方法で、上記により製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布を求めた。
【0442】
〈スラリーの作製〉
上記により製造された超極細繊維状炭素集合体を用いて、実施例D1に記載のスラリーの作製方法と全く同様な作製方法でスラリーを作製した。
【0443】
〈水分散性評価〉
上記により作製されたスラリーを用いて実施例D1に記載の評価方法と全く同様な評価方法で水分散性の評価を行った。
【0444】
[比較例D2]
〈超極細繊維状炭素混合体の製造〉
実施例D1に記載の方法と全く同様な方法で製造された超極細繊維状炭素を、湿式粉砕装置(株式会社スギノマシン社製、スターバースト)により粉砕して、平均繊維長5μmの超極細繊維状炭素(S-CNF)を製造した。そして、この平均繊維長5μmの超極細繊維状炭素(S-CNF)と、実施例D1に記載の方法と全く同様な方法で製造された超極細繊維状炭素(CNF)とを1:1の質量比で混合をして、超極細繊維状炭素混合体を製造した。
【0445】
〈超極細繊維状炭素集合体(炭素系導電助剤)の製造〉
上記により製造された超極細繊維状炭素混合体の複数個を集合させて超極細繊維状炭素集合体を製造した。
【0446】
〈超極細繊維状炭素混合体の繊維長分布の測定〉
実施例D1に記載の測定方法と全く同様な測定方法で、上記により製造された超極細繊維状炭素混合体の繊維長分布を求めた。
【0447】
〈スラリーの作製〉
上記により製造された超極細繊維状炭素集合体を用いて、実施例D1に記載のスラリーの作製方法と全く同様な作製方法でスラリーを作製した。
【0448】
〈水分散性評価〉
上記により作製されたスラリーを用いて実施例D1に記載の評価方法と全く同様な評価方法で水分散性の評価を行った。
【0449】
[繊維長分布結果及び考察]
【0450】
実施例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を
図41に示す。
図41を参照すると、実施例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布には第一ピーク及び第二ピークの2つのピークが存在した。繊維長7μmの第一ピークの体積換算粒度分布(%)の繊維長18μmの第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比は5であり、繊維長が短い超極細繊維状炭素の数が多かった(下記の表1を参照)。また、実施例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長の平均値は17μmであり、中央値は15μmであった(下記の表2を参照)。
【0451】
ここで、平均値は、全個数の超極細繊維状炭素の繊維長の値を加算して、超極細繊維状炭素の個数で割った値である。中央値は、超極細繊維状炭素の繊維長が小さいものから順に並べて超極細繊維状炭素の個数順で丁度真ん中の繊維長の値である。繊維長の個数が偶数個の場合は、中央に近い2つの超極細繊維状炭素の繊維長の値の平均値である。超極細繊維状炭素の繊維長のバラツキが大きいほど、平均値と中央値は大きく離れてずれる。
【0452】
実施例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を
図42に示す。
図42を参照すると、実施例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布には第一ピーク及び第二ピークの2つのピークが存在した。繊維長10μmの第一ピークの体積換算粒度分布(%)の繊維長25μmの第二ピークの体積換算粒度分布(%)に対する比は3であった。すなわち、実施例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体中に含まれる、15μm以下の繊維長である短い超極細繊維状炭素の体積比率(%)が、実施例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体中に含まれる15μm以下の繊維長である短い超極細繊維状炭素の体積比率(%)よりやや少なかった(下記の表1を参照)。また、実施例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長の平均値は20μmであり、中央値は17μmであった(下記の表2を参照)。
【0453】
比較例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を
図43に示す。
図43を参照すると、比較例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布には繊維長25μmの1つのピークが存在した(下記の表1を参照)。また、比較例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長の平均値は24μmであり、中央値は18μmであった(下記の表2を参照)。
【0454】
比較例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布の結果を
図44に示す。
図44を参照すると、比較例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長分布には2つのピークが存在した。繊維長3μmのピークの体積換算粒度分布(%)の繊維長25μmのピークの体積換算粒度分布(%)に対する比は1であった。すなわち、これらの2つのそれぞれのピークの体積比率は同等で、広い分布をもつことが確認できた(下記の表1を参照)。また、比較例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体の繊維長の平均値は14μmであり、中央値は12μmであった(下記の表2を参照)。
【0455】
[水分散性評価結果及び考察]
実施例D1で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果は、表1に示すとおり、非常に良好な◎印評価であった。実施例D1で作製されたスラリーは滑らに形成されており、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は非常に良好であった。
【0456】
実施例D2で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果は、表1に示すとおり、良好な○印評価であった。実施例D2で作製されたスラリー中には超極細繊維状炭素の凝集体が散見されたが、これは、実施例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体中に含まれる、15μm超の繊維長である長い超極細繊維状炭素の体積比率(%)が、実施例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体中に含まれる、15μm超の繊維長である長い超極細繊維状炭素の体積比率(%)よりやや多かったため、実施例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体よりも実施例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体の方が超極細繊維状炭素の凝集体が形成されやすかったためと考えられる。しかし、実施例D2で作製されたスラリーは比較的滑らに形成されて、超極細繊維状炭素集合体の水分散性は良好であった。
【0457】
比較例D1で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果は、表1に示すとおり、やや不良な△印評価であった。比較例D1で作製されたスラリー中には、超極細繊維状炭素の凝集体が見られた。これは、比較例D1で製造された超極細繊維状炭素集合体中に含まれる、15μm超の繊維長である長い超極細繊維状炭素に起因した束状の超極細繊維状炭素が形成されたためと考えられる。
【0458】
比較例D2で作製されたスラリーを用いた水分散性の評価の結果は、表1に示すとおり、不良な×印評価であった。比較例D2で作製されたスラリー中には、超極細繊維状炭素の凝集体が見られた。これは、比較例D2で製造された超極細繊維状炭素集合体中に含まれる15μm超の繊維長である長い超極細繊維状炭素の体積比率(%)が超極細繊維状炭素集合体全体の体積比率(%)に対して50体積%以上であることに起因して、束状の超極細繊維状炭素が形成されたためと考えられる。
【0459】
【0460】