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▶ サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】旋削インサート
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20220214BHJP
   B23B 27/22 20060101ALI20220214BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/22
B23B27/16 Z
B23B27/16 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018517858
(86)(22)【出願日】2016-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2016071090
(87)【国際公開番号】W WO2017060025
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-07-08
(31)【優先権主張番号】15189172.8
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レフ, ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, アダム
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06527485(US,B1)
【文献】欧州特許第00804313(EP,B1)
【文献】米国特許第04318644(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103357907(CN,A)
【文献】国際公開第2015/194701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状表面を形成するための旋削インサート(1)であって、
上面(8)と、
反対側の底面(9)と、
前記上面(8)および前記底面(9)を連結する側面(13、13’、13”)と、
前記上面(8)および前記底面(9)に対して平行に、前記上面(8)と前記底面(9)との間に位置する基準面(RP)と、
前記基準面(RP)に対して垂直に延び、前記基準面(RP)と交差する中心軸(A1)と、
前記中心軸(A1)の周りに対称的に形成された3つのノーズ部(15、15’、15”)であって、
各ノーズ部(15、15’、15”)は、第1の切れ刃(11、11’、11”)と、第2の切れ刃(12、12’、12”)と、前記第1の切れ刃(11、11’、11”)および前記第2の切れ刃(12、12’、12”)を連結する凸状ノーズ切れ刃(10、10’、10”)とを備える、3つのノーズ部とを備える、旋削インサートにおいて、
前記ノーズ切れ刃(10)は、前記第1の切れ刃(11、11’、11”)および前記第2の切れ刃(12、12’、12”)との間に中心を有し、0.2~2.0mmの半径を有する円形の弧または一部の形状を有し、
上面図において、前記同じノーズ部(15)上の前記第1の切れ刃(11)および第2の切れ刃(12)が、互いに対して25~50°のノーズ角(α)を形成し、
前記第1の切れ刃(11)から前記基準面(RP)までの距離が、前記ノーズ切れ刃(10)からの距離が増大するにつれて減少し、
二等分線(7、7’、7”)が、前記第1の切れ刃(11、11’、11”)および前記第2の切れ刃(12、12’、12”)の各対から等距離に延び、
各二等分線(7、7’、7”)は、前記中心軸(A1)と交差することを特徴とする、旋削インサート。
【請求項2】
前記第1および第2の切れ刃(11、12)が、上面図において線形または直線的である、請求項1に記載の旋削インサート(1)。
【請求項3】
くぼみ(17、17’、17”)が、ノーズ切れ刃(10、10’、10”)の各対の間の各側面(13、13’、13”)内に形成される、請求項1または2に記載の旋削インサート(1)。
【請求項4】
前記上面(8)が、前記二等分線(7)に沿って延長部を有する突起部(30)であって、前記第1の切れ刃(11)を向く第1の切りくず破壊壁(34)と、前記第2の切れ刃(12)を向く第2の切りくず破壊壁とを備える、突起部(30)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項5】
前記基準面(RP)に対して垂直な平面において測定される、前記突起部(30)の上面と前記第1の切れ刃(11)の最低点との間の距離(D1)が、0.28~0.35mmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項6】
上面図において、前記第1の切れ刃(11)から前記第1の切りくず破壊壁(34)までの距離が、前記ノーズ切れ刃(10)から離れるにつれて増大する、請求項1から5のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項7】
第1の側面(13)が、前記第1の切れ刃(11)に隣接する第1の逃げ面(21)と、第3の逃げ面(23)と、前記第1の逃げ面(21)と前記第3の逃げ面(23)との間に位置する第2の逃げ面(22)とを備え、前記第3の逃げ面(23)は、前記第1の切れ刃(11)に対して垂直な平面において測定される、前記底面に関連する角度εを形成し、前記第2の逃げ面(22)は、前記第1の切れ刃(11)に対して垂直な平面において測定される、前記底面(9)に関連する角度σを形成し、前記第1の逃げ面(21)は、前記第1の切れ刃(11)に対して垂直な平面において測定される、前記底面(9)に関連する角度γを形成し、σ>εであり、各ノーズ部(15、15’、15”)の前記側面(13、13’、13”)は、前記基準面(RP)に対して垂直であり、前記二等分線(7)を含む平面に関連して対称的に構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項8】
前記底面(9)が、回転防止手段(40、40’、40”、41、42、43、44)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項9】
前記底面(9)が、3つの溝(40、40’、40”)の形態の回転防止手段を備え、各溝(40、40’、40”)は、隣接する第1の切れ刃(11、11’、11”)と第2の切れ刃(12、12’、12”)との間に位置する前記二等分線(7、7’、7”)に沿って主延長部を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項10】
前記上面(8)および底面(9)が同一であり、前記回転防止手段が、表面(41、42、43、44)の組の形態であり、各表面(41、42、43、44)は、前記基準面(RP)に関連して5~60°の角度を形成する平面内を延びる、請求項1から9のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項11】
前記上面(8)が、前記二等分線(7)に沿って延長部を有する突起部(30)であって、前記第1の切れ刃(11)を向く第1の切りくず破壊壁(34)を備える、突起部(30)を備え、前記上面(8)は、隆起部(80)を備え、前記隆起部(80)は、前記二等分線(7)と前記第1の切れ刃(11)との間に形成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項12】
前記ノーズ角(α)が、35°未満であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項13】
側面図において、前記第1の切れ刃(11)が、前記基準面(RP)に対して1~4°の角度を形成し、それにより、前記第1の切れ刃(11)から前記基準面(RP)までの距離は、前記ノーズ切れ刃(10)から離れるにつれて連続的に減少する、請求項1から12のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項14】
前記第1の切れ刃(11)が、上面図において、前記第1の切れ刃(11)が、前記ノーズ切れ刃(10)に連結された第1の端点から、ノーズ切れ刃(10、10’、10”)の対間の側面(13、13’、13”)に形成されたくぼみ(17、17’、17”)と前記第1の切れ刃(11)が交差する第2の端点まで、線形または直線的であり、
前記第1の切れ刃(11)から前記基準面(RP)までの距離が、前記第1の端点から前記第2の端点まで連続的に減少する、請求項1から13のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)と、工具本体(2)とを備える旋削工具(3)であって、前記工具本体(2)は、前端(44)および反対側の後端と、長手方向軸(A2)に沿って前記前端(44)から前記後端まで延びる主延長部と、前記前端(44)内に形成されたインサートシートであって、有効なノーズ部(15)の二等分線(7)が前記工具本体(2)の前記長手方向軸(A2)に関連して35~55°の角度θを形成するように前記旋削インサート(1)が装着可能である、インサートシートとを有する、旋削工具(3)。
【請求項16】
前記角度θおよび前記角度αの半分の合計が、50°以上であり、かつ70°以下である、請求項15に記載の旋削工具(3)。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)を用いて金属加工品(50)を機械加工する方法であって、
前記金属加工品(50)を第1の端部(54)にクランプするステップと、
前記金属加工品(50)を回転軸(A3)の周りで回転させるステップと、
有効なノーズ部(15)の第1の切れ刃(11)を、前記第1の切れ刃(11)が、前記金属加工品(50)の前記回転軸(A3)に対して、第2の切れ刃(12)が前記金属加工品(50)の前記回転軸に対して形成する角度より小さい角度を形成するように位置決めするステップと、
前記第2の切れ刃(12)が有効であるように、前記旋削インサート(1)を前記回転軸(A3)に対して垂直に、前記回転軸(A3)から離れる方向に移動させるステップとを含む、方法。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の旋削インサート(1)を用いて金属加工品(50)を機械加工する方法であって、
前記金属加工品(50)を第1の端部(54)にクランプするステップと、
前記金属加工品(50)を回転軸(A3)の周りで回転させるステップと、
有効なノーズ部(15)の第1の切れ刃(11)を、前記第1の切れ刃(11)が、前記金属加工品(50)の前記回転軸(A3)に対して、第2の切れ刃(12)が前記金属加工品(50)の前記回転軸に対して形成する角度より小さい角度を形成するように位置決めするステップと、
前記第1の切れ刃(11)が有効であるように、前記旋削インサート(1)を前記回転軸(A3)に対して平行に、前記第1の端部(54)から離れる方向に移動させるステップとを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より詳細には、本発明は、CNC機などの機械における金属切削に使用される旋削インサートの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる旋削インサート、そのような旋削インサートを備える旋削工具、およびそのような旋削工具を使用して金属加工品を機械加工する方法に言及する。金属加工品の旋削において、金属加工品は、中心軸周りを回転する。金属加工品は、1つまたは複数のチャックまたはジョーなどの回転可能なクランプ手段によって一方の端部においてクランプされる。クランプされた加工品の端部は、クランプ端または駆動端と呼ばれ得る。安定してクランプするために、金属加工品のクランプ端または駆動端は、金属加工品の反対側端部より大きい直径を有することができ、および/またはクランプ端と反対側端部との間に位置する金属加工品の一部のより大きい直径を有する。あるいは、金属加工品は、機械加工作業、すなわち金属切削作業前に一定の直径を有することができる。旋削インサートは、金属加工品に関連して移動される。この相対移動は送りと呼ばれる。旋削インサートの移動は、金属加工品の中心軸に対して平行な方向であることができ、これは、一般的には、長手方向送りまたは軸方向送りと呼ばれる。旋削インサートの移動は、さらに、金属加工品の中心軸に対して垂直な方向であることもでき、これは、一般的には、径方向送りまたは面削りと呼ばれる。他の移動角度、または送り方向も可能であり、これは、一般的には、複製または複製旋削として知られている。複製では、送りは軸方向および径方向の両方の成分を有する。旋削インサートの相対移動中、金属加工品からの材料は、切りくずの形態で除去される。切りくずは、好ましくは短く、および/または切りくずの詰まりを防止する形状または移動方向を有し、および/または機械加工された表面の表面仕上げを損なわないものである。
【0003】
幅広い範囲の送り方向に使用することができる旋削インサートの一般的な形状は、三角形の旋削インサートである。そのようなインサートは、上面図、すなわち読み手方向のすくい面において、3辺すべてが等しい長さのものであり、ノーズ角が60°である三角形の形状を有する。三角形のコーナは、ノーズ切れ刃の形態であり、これは、通常、0.2~2.0mmの範囲内の曲率半径を有する。そのような旋削インサートの例は、ISO規格によって一般的に設計されたTNMGおよびTCMTであり、一般的には、コーティングされたまたはコーティングされていない超硬合金または立方晶窒化ホウ素(CBN)またはセラミックまたはサーメットから少なくとも部分的に作製される。
【0004】
径方向旋削において、送り方向は、金属加工品の回転軸に対して垂直に、この回転軸に向かうものである。これは面削りと呼ばれる。外面削りとしても知られている金属加工品の回転軸から離れる径方向旋削は、特定の構成要素を機械加工するときに有利になり得るが、TNMGまたはTCMTなどの一般的な旋削インサートを使用すると、不十分な切りくず制御などの欠点を与える。
【0005】
米国特許第4632608号の旋削インサートは、外面削りにおける欠点を克服するよう意図されている。インサートは、3つのノーズ部を備える。1つの実施形態では、ノーズ部は円形状を有する。円形状の切れ刃の一部が、外面削りにおける唯一の有効な切れ刃である。別の実施形態では、各ノーズ部の周囲は、いくつかの反りが付けられたセグメントからなり、この場合ノーズ角は60°である。外面削りにおけるこの実施形態の場合、直線的な切れ刃の一部および凸状に湾曲したノーズ切れ刃の一部が、外面削りにおける唯一の有効な切れ刃である。米国特許第4632608号の旋削インサートは、両方が金属加工品内に外部90°コーナを形成する2つの壁を機械加工するために使用することができ、この場合、回転軸からより遠い距離にある1つの壁は、回転軸に対して垂直であり、回転軸からより近い距離にある1つの円筒状壁は、回転軸に対して平行であり、2つの壁は、円形または湾曲したセグメントによって連結される。この文脈における外部90°コーナは、金属加工品の外面もしくは外側表面上にまたは外面もしくは外側表面において、円筒状壁または円筒状表面が回転軸から外方を向くように形成された90°コーナである。これは、回転軸と同軸の孔の内側にある内面もしくは内側表面上にまたは内面もしくは内側表面において形成され得る任意のコーナと対比する。
円形または湾曲したセグメントは、回転軸を含む平面における断面において、円の4分の1の形状、またはほぼ円である形状の4分の1の形状の弧の形状であり、旋削インサートのノーズ切れ刃と同じ曲率半径を有する。円形または湾曲したセグメントは、代替的には、旋削インサートのノーズ切れ刃より大きい曲率半径を有する。より詳細には、米国特許第4632608号では、外部90°コーナを形成する2つの壁の機械加工は、軸方向旋削作動によって行われ、その後外面削り作動が続き、この場合有効なノーズ部の同じ部分が、両方の作動において有効である。金属加工品のクランプ端に向かい、金属加工品の回転軸に対して垂直であるコーナの壁に向かう上記で述べた軸方向旋削作動において、本発明者は、回転軸からより遠い距離に回転軸に対して垂直に延びる上記で述べた壁に旋削インサートが近づくにつれて、切りくず制御が低減されることを見出した。
【発明の概要】
【0006】
本発明者は、金属加工品において外部90°コーナを形成する2つの壁面を機械加工する代替方法が、インサート磨耗および/または切りくず破壊および/または切りくず制御に関してより効果的であり、新しい旋削インサートが、これまでに知られている旋削インサートと比較してさらなる改良を与えることを見出した。
【0007】
本発明の目的は、金属加工品において外部90°コーナを形成する2つの壁面を機械加工するのに適した3つのノーズ部を備える旋削インサートであって、外面削り作動において、すなわち金属加工品の回転軸から、この回転軸に対して垂直な方向に旋削または送るとき、改良された切りくず破壊および/または切りくず制御を有する、旋削インサートを提供することである。別の目的は、インサートを回転軸に対して平行に、すなわち軸方向送りで、金属加工品のクランプ端から離れるように移動させるとき、改良された切りくず破壊および/または切りくず制御および/または工具寿命を与える旋削インサートを提供することである。さらに別の目的は、両方向の軸方向送りおよび両方向の径方向送りの両方に使用することができる、表面を生成する有効なノーズ切れ刃を有効なノーズ部上または有効なノーズ部に有する旋削インサートを提供することであり、この場合、同じ有効なノーズ部を、旋削インサートのノーズ切れ刃と同じ曲率半径を有する湾曲したセグメントによって連結された2つの壁によって形成された90°コーナを機械加工するために、旋削インサートを再配向させずに使用することができる。さらに別の目的は、送り方向に関して、および再配向させずに単一の旋削インサートによって生み出すことができる構成要素のタイプに関して多様である旋削インサートを提供することである。
【0008】
少なくとも主要な目的は、最初に定義した旋削インサートであって、上面図において、同じノーズ部上および同じノーズ部における第1および第2の切れ刃が、互いに対して25~50°のノーズ角αを形成し、第1の切れ刃から基準面RPまでの距離が、ノーズ切れ刃からの距離が増大するにつれて減少することを特徴とする、旋削インサートを用いて達成される。そのような旋削インサートにより、本発明者は、切りくず破壊および/または切りくず制御および/または工具寿命、すなわちインサート磨耗が、外面削り、および金属加工品のクランプ端から離れる軸方向旋削において改善されることを見出した。そのような旋削インサートにより、外部90°コーナを形成する2つの壁を、1つの位置または配向にある1つの旋削インサートの1つのノーズ部を用いて、外面削り、および加工品のクランプ端から離れる軸方向旋削、すなわち金属加工品の回転軸に対して垂直に延びる壁から離れる軸方向旋削によって効率的に機械加工することができる。この文脈における外部90°コーナは、回転軸からより遠い距離にあり、回転軸に対して垂直である1つの壁と、回転軸からより近い距離にあり、回転軸に対して平行である1つの円筒状壁とを備え、この場合2つの壁は、円形または湾曲したセグメントによって連結される。この文脈における外部90°コーナは、金属加工品の外面もしくは外側表面上にまたは外面もしくは外側表面において、円筒状壁または円筒状表面が回転軸から外方を向くように形成された90°コーナである。これは、回転軸と同軸の孔の内側にある内面もしくは内側表面上にまたは内面もしくは内側表面において形成され得るいずれのコーナとも対比する。
【0009】
上面は、すくい面を備える。底面は、シート面を備える。基準面は、ノーズ切れ刃が位置する平面に対して平行である。ノーズ切れ刃は、好ましくは、基準面から最大距離に位置する切れ刃である。ノーズ切れ刃は、中心軸から等距離に位置する。中心軸は、インサートの幾何学的中心を通り抜ける。好ましくは、中心軸は、クランプねじ用の貫通穴の中心に位置する。
【0010】
ノーズ部は、中心軸周りに対称的に形成され、すなわち各ノーズ部は、互いのノーズ部に対して120°の角度を形成する。
【0011】
ノーズ部は、旋削インサートの中心に関連して、旋削インサートの遠位部である。1つのノーズ部の少なくとも一部が、有効であり、すなわち機械加工中、金属加工品と接触する。各ノーズ部は、少なくとも上面に隣接して、またはこの上面と境を接する切れ刃を備える。旋削インサートは、両面型または可逆式でよく、すなわち、底面は、上面に類似する、または同一の組の切れ刃を備える。ノーズ切れ刃は、旋削インサートの最も遠位部を形成し、換言すれば、ノーズ切れ刃は、旋削インサートの、旋削インサートの中心軸から最大距離に位置する部分である。ノーズ部は、旋削インサートの周囲部分であり、この場合すくい面が、第1の切れ刃、第2の切れ刃、およびノーズ切れ刃の間の上面上にまたは上面において形成される。ノーズ切れ刃は、好ましくは、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に中心を有する円形の弧または一部の形状を有し、この場合円形は、好ましくは、0.2~2.0mmの半径を有する。あるいは、ノーズ切れ刃は、楕円形の弧の形状を有することができる。あるいは、ノーズ切れ刃は、上面図において凸状であるノーズ切れ刃を一緒になって形成する、円形の1つまたは複数の弧または楕円形の弧と、直線的な部分との組み合わせの形状を有することができる。上面図は、上面が読み手を向き、底面が読み手から外方を向く図である。第1および第2の切れ刃は、好ましくは上面図において直線的である。第1および第2の切れ刃が、たとえばわずかに凸状またはわずかに凹状などのように上面図において直線的でない場合、ノーズ角は、第1および第2の切れ刃それぞれの端点間の直線的な線を使用して測定される。第1および第2の刃がわずかに凸状またはわずかに凹状である場合、第1および第2の切れ刃の曲率半径は、ノーズ切れ刃の曲率半径の5倍を上回り、好ましくは10倍を上回って大きい。あるいは、25~50°のノーズ角は、25~50°の角度の円弧の形状を有するノーズ切れ刃に等しい。第1および第2の切れ刃は、好ましくは、2.0~20.0mmの等しい長さを有する。第1の切れ刃から基準面までの距離は、ノーズ切れ刃からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。換言すれば、第1の切れ刃から基準面までの距離は、少なくとも第1の切れ刃の一部に対して、ノーズ切れ刃から離れるにつれて減少する。代替的に考えると、基準面から第1の切れ刃の第1の部分までの距離は、基準面から第1の切れ刃の第2の部分の距離より大きく、この場合第1の切れ刃の第1の部分は、ノーズ切れ刃と第1の切れ刃の第2の部分との間に位置する。換言すれば、第1の切れ刃の少なくとも一部は、側面図において、底面および基準面に向かって、ノーズ切れ刃から離れながら傾斜する。たとえば、ノーズ切れ刃に隣接する第1の切れ刃の第1の点は、基準面から距離を離して位置し、この距離は、第1の切れ刃の第1の点よりもノーズ切れ刃からより遠い距離に位置する第1の切れ刃の第2の点から基準面までの距離より大きい。すべてのノーズ切れ刃は、好ましくは、基準面に対して平行な共通平面内に位置する。切れ刃は、すくい面、およびリリーフ面としても知られている逃げ面と境を接する旋削インサートの刃である。ノーズ切れ刃の弧長は、第1の切れ刃および第2の切れ刃両方の長さより短い。旋削インサートは、両方向の軸方向送りおよび両方向の径方向送りに適しており、この場合同じ有効なノーズ部を、旋削インサートのノーズ切れ刃と同じ曲率半径を有する湾曲したセグメントによって連結された2つの壁面によって形成された90°コーナを機械加工するために使用することができる。各ノーズ部は、互いのノーズ部に対して中心軸周りに120°の角度を形成する。旋削インサートは、片面型、すなわち、上面の境界部のみにある切れ刃、または両面型、すなわち上面の境界部および底面の境界部にある切れ刃でよい。好ましくは、旋削インサートは、上面の領域が底面の領域より大きいような片面型であり、この場合上部領域および底部領域は、基準面RP上に投影される。旋削インサートは、好ましくは、コーティングされた、またはコーティングされない焼結された超硬合金またはサーメットの部片から少なくとも部分的に作製される。あるいは、旋削インサートは、立方晶窒化ホウ素(CBN)、多結晶ダイヤモンド(PCD)またはセラミックから少なくとも部分的に作製される。旋削インサートは、たとえばねじまたはクランプを用いることによって工具本体内に取り外し可能に装着可能である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、第1および第2の切れ刃は、上面図において線形または直線的である。そのような旋削インサートにより、切削力方向および/または切りくず流れ方向は、切削深さ、すなわち切削の深さにあまり依存しない。この文脈では、200mmより大きい凹状または凸状の曲率半径は、直線的または線形とみなされる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、二等分線が、第1および第2の切れ刃の各対から等距離に延び、各二等分線は、中心軸と交差する。そのような旋削インサートにより、垂直となり得る2つの方向に機械加工するとき、有効でないノーズ切れ刃による干渉のリスクは低減される。そのような旋削インサートにより、両端においてクランプされた金属加工品にこのインサートを使用することが可能である。換言すれば、同じノーズ部上または同じノーズ部に形成された第1および第2の切れ刃は、二等分線から等距離に位置する。したがって、二等分線は、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に位置する。第1および第2の切れ刃は、二等分線の両側上にまたは両側に位置する。各二等分線は、任意の他の二等分線に対して120°の角度を形成する。各二等分線は、中心軸と交差する。各二等分線は、第1の切れ刃および第2の切れ刃と同じノーズ部上またはノーズ部に形成されたノーズ切れ刃の中心と交差する。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、くぼみが、ノーズ切れ刃の各対間の各側面内に形成される。そのような旋削インサートにより、第1の切れ刃または第2の切れ刃のみを使用してより大きい切削深さが可能である。くぼみ、または切欠部が、インサート内にこうして形成される。くぼみは、上面図において、ノーズ切れ刃の各対の間に各対から等しい長さに位置する旋削インサートの部分が存在しないように形成される。換言すれば、旋削インサートは、等しい長さの凹状側部を有する対称三角形である形状を有する。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、上面は、二等分線に沿って延長部を有する突起部であって、第1の切れ刃を向く第1の切りくず破壊壁と、第2の切れ刃を向く第2の切りくず破壊壁とを備える突起部を備える。そのような旋削インサートにより、切りくず破壊および/または切りくず制御は、さらに改良される。1つのさらなる効果は、切りくずが機械加工された表面にあたり、それによって機械加工された金属加工品、すなわち構成要素の表面品質を低減し得るリスクが低減されることである。突起部は、上面の周囲部分よりも、基準面からさらに離れて延びることができる。すくい面が、突起部と切れ刃との間に形成される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、基準面RPに対して垂直な平面において測定される、突起部の上面と第1の切れ刃の最低点との間の距離は、0.28~0.35mmである。
【0017】
換言すれば、側面図において、突起部の上面、すなわち最高点と、第1の切れ刃の最低点との間の高さ相違は、0.28~0.35mmである。そのような旋削インサートにより、切りくず破壊および/または切りくず制御は、さらに改良される。1つのさらなる効果は、切りくずが機械加工された表面にあたり、それによって機械加工された金属加工品、すなわち構成要素の表面品質を低減し得るリスクが低減されることである。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、上面図において、第1の切れ刃から第1の切りくず破壊壁までの距離は、ノーズ切れ刃から離れるにつれて増大する。そのような旋削インサートにより、切りくず制御は、さらに改良される。たとえば、切りくずの詰まりまたは切りくずが金属加工品にあたるリスクが、低減される。この距離は、第1の切れ刃に対して垂直な方向に、基準面に対して平行な平面において、第1の切りくず破壊まで測定される。突起部、したがって第1の切りくず破壊壁は、必ずしも第1の切れ刃の全長に沿って延びる必要はない。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、第1の側面は、第1の切れ刃に隣接する第1の逃げ面と、第3の逃げ面と、第1の逃げ面と第3の逃げ面との間に位置する第2の逃げ面とを備え、第3の逃げ面は、第1の切れ刃に対して垂直な平面において測定される、底面に関連する角度εを形成し、第2の逃げ面は、第1の切れ刃に対して垂直な平面において測定される、底面に関連する角度σを形成し、第1の逃げ面は、第1の切れ刃に対して垂直な平面において測定される、底面に関連する角度γを形成し、角度σは、角度εより大きく、各ノーズ部の側面は、基準面RPに対して垂直であり、二等分線を含む平面に関連して対称的に構成される。そのような旋削インサートにより、インサート強度の低下を低減しながら、より小さい加工品直径から外面削りを行うことができる。本発明者は、より小さい直径における外面削りの際、より大きい逃げ角が必要であるが、側面に沿った一定の角度による逃げ角の増大は、インサートの強度の低減を与えることを見出した。第1の逃げ面および第3の逃げ面に関連して比較的小さい逃げ角を有する第2の逃げ面は、インサートの強度を増大させる目的を有する。第3の逃げ面は、好ましくは、底面に隣接する。逃げ面が形成する角度は、底面に関連して、または代替的には底面と交差する基準面に対して平行な平面に関連して測定される。好ましくは、角度γは、角度εより大きい。好ましくは、角度σは、角度γより大きい。好ましくは、第1の切れ刃から第1の逃げ面の下側境界線までの距離、すなわち底面の最も近くに位置する第1の逃げ面の境界線までの距離は、ノーズ切れ刃から離れるにつれて減少する。好ましくは、角度γは、80~88°である。好ましくは、角度εは、75~88°である。好ましくは、角度σは、85~90°である。好ましくは、第3の逃げ面は、第1の切れ刃に対して垂直な平面で見て凸状であり、好ましくは10mmを上回る曲率半径を有する。好ましくは、第1の逃げ面の、基準面に対して垂直な方向の高さは、第1の切れ刃の強度をさらに増大させるために、第2の逃げ面の高さ未満である。好ましくは、第1の逃げ面の高さは、第1の切れ刃の最大のフランク磨耗に合致するために少なくとも0.3mmである。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、底面は、回転防止手段を備える。そのような旋削インサートにより、旋削インサートが工具本体に着座しているとき、両方向の径方向旋削および/または両方向の軸方向旋削が、改良される。回転防止手段は、1つまたは複数の凸部、溝、突起部、もしくは空洞、またはそのような特徴の組み合わせの形態であることができる。回転防止手段は、旋削インサートが取り外し可能にクランプされ得る、工具本体内の対応する構造または工具本体内に着座したシムとの接触によって相互作用するのに適している。回転防止手段は、旋削インサートの中心軸周りの2つの両方向における旋削インサートの回転または移動を防止するか、または少なくとも低減する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、底面は、3つの溝の形態の回転防止手段を備え、各溝は、隣接する第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に位置する二等分線に沿って主延長部を有する。そのような旋削インサートにより、インサートは、同じインサートシート内の3つの位置に割り付け可能である。溝の配向は、両方向の軸方向旋削および両方向の径方向旋削(面削りおよび外面削り)の両方において十分な回転防止が存在するように、第1および第2の切れ刃に関連して対称的に配向される。換言すれば、各ノーズ部において、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に位置する二等分線は、同じノーズ部内のインサートの底面内の溝の主延長部と同じ延長部を有する。その結果、3つのすべての溝は、旋削インサートの中心軸に向かう方向に主延長部を有する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、上面および底面は同一であり、回転防止手段は、表面の組の形態であり、各表面は、基準面に関連して5~60°の角度を形成する平面内を延びる。そのような構成により、旋削インサートは、両面型となり、回転防止手段を備えることができる。両面型または可逆式の旋削インサートとは、旋削インサートが先述の底面をすくい面として用いて使用できることを意味する。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、上面は、二等分線に沿って延長部を有する突起部であって、第1の切れ刃を向く第1の切りくず破壊壁を備える、突起部を備え、上面は、隆起部を備え、隆起部は、二等分線と第1の切れ刃との間に形成される。
【0024】
隆起部または突起部は、上面から突起する。少なくとも1つの隆起部、好ましくは複数の隆起部またはすべての隆起部は、好ましくは、上面図において0.3~0.5mmの幅および上面図において0.6~1.4mmの長さを有し、この場合長さは、幅に対して垂直であり、幅は、隣接する、すなわち関連する第1の切れ刃に対して平行に測定される。隆起部は、二等分線および第1の切れ刃それぞれから離間されて置かれるように、二等分線と第1の切れ刃との間に形成される。隆起部は、好ましくは、上面図において、第1の切れ刃と隆起部との間の距離が0.4~0.5mmであるように置かれる。前記距離は、上面図において第1の切れ刃に対して垂直に、第1の切れ刃に最も近い各それぞれの隆起部の部分まで測定される。
【0025】
そのような旋削インサートにより、隆起部は、低送り速度における切りくず破壊および/または切りくず制御を改良する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、ノーズ角αは、35°未満である。そのような旋削インサートにより、旋削インサートの多様性が改良される。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、側面図において、第1の切れ刃は、基準面に対して1~4°の角度を形成し、それにより、第1の切れ刃から基準面までの距離は、ノーズ切れ刃から離れるにつれて連続的に減少する。換言すれば、側面図において、第1の切れ刃は、上面が上方向であり、底面が下方向であり、基準面が水平であるところのノーズ切れ刃から離れながら、下方向に1~4°傾斜する。したがって、第1の切れ刃のどの部分も、ノーズ切れ刃から離れながら上方向に傾斜しない。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、第1の切れ刃は、上面図において、第1の切れ刃が、ノーズ切れ刃に連結された第1の端点から、ノーズ切れ刃の対間の側面に形成されたくぼみと第1の切れ刃が交差する第2の端点まで、線形または直線的であり、第1の切れ刃から基準面までの距離は、前記第1の端点から前記第2の端点まで連続的に減少する。換言すれば、第2の端点から基準面までの距離は、第1の端点から基準面までの距離より短い。
【0029】
そのような旋削インサートにより、切りくず制御は、特により大きい切削深さにおいてさらに改良される。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、旋削工具は、本発明による旋削インサートと、工具本体とを備え、工具本体は、前端および反対側の後端と、長手方向軸A2に沿って前端から後端まで延びる主延長部と、前端内に形成されたインサートシートであって、有効なノーズ部の二等分線が工具本体の長手方向軸A2に関連して35~55°の角度θを形成するように旋削インサートが装着可能である、インサートシートとを有する。そのような旋削工具により、旋削インサートは、より大きい範囲の送り方向が可能であるように位置決めされ、または着座する。そのような旋削工具により、同じノーズ部において、第1の切れ刃を軸方向旋削に使用し、第2の切れ刃を外面削りに使用することができ、それにより、両方の作動、すなわち送り方向に対して有効でない、すなわち磨耗しないノーズ切れ刃の一部が存在する。そのような旋削工具により、金属加工品のクランプ端から離れる軸方向旋削を行うときの第1の切れ刃の進入角は、45°未満であり、少なくとも10°である。本発明者は、そのような進入角が、インサートが金属加工品のクランプ端から離れる方向に移動するように軸方向旋削を行うときにインサートの磨耗を低減することを見出した。そのような切削工具により、外面削り、すなわち金属加工品の回転軸から垂直に離れるように送るときの第2の切れ刃の進入角は、45°未満であり、少なくとも10°である。本発明者は、そのような進入角が、外削りを行うときにインサート磨耗を低減することを見出した。有効なノーズ部は、装着状態において、工具本体の後端に関連して、および工具本体の長手方向軸に関連して最も遠位にある旋削インサートの部分であるノーズ切れ刃を備えるノーズ部である。有効なノーズ部の第1の切れ刃が工具本体の長手方向軸に関連して形成する角度は、有効なノーズ部の第2の切れ刃が工具本体の長手方向軸に関連して形成する角度より大きい。工具本体の長手方向軸は、好ましくは、金属加工品の回転軸に対して垂直である。装着状態における旋削インサートの中心軸は、工具本体の長手方向軸に関連してほぼ垂直(70°から110°)である。工具本体のインサートは、好ましくは、旋削インサートの底面内に形成されたインサート回転手段に対応するインサート回転手段を備える。工具本体の後端は、有効なノーズ切れ刃から最大距離に位置する工具本体の部分である。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、角度θおよび角度αの半分の合計は、50°以上であり、かつ70°以下である。換言すれば、50°≦θ+(α/2)≦70°である。そのような旋削工具により、切りくず破壊および/または切りくず制御が、外面削りおよび金属加工品のクランプ端から離れる軸方向旋削においてさらに改良される。そのような旋削工具により、90°外部コーナを金属加工品内に機械加工することができ、この場合コーナの1つの壁面は、金属加工品の回転軸に対して垂直であり、コーナの1つの壁面は、金属加工品の回転軸に対して平行であり、2つの壁面は、旋削インサートのノーズ切れ刃と同じ曲率半径を有する表面によって連結される。そのような旋削工具により、第1の切れ刃の進入角は、金属加工品のクランプ端から離れる軸方向旋削を行うとき、20°から40°の間であり、本発明者は、そのような進入角がインサートの磨耗を低減することを見出した。そのような旋削工具により、第2の切れ刃の進入角は、外面削りを行うとき、20°から40°の間であり、本発明者は、そのような進入角がインサートの磨耗を低減することを見出した。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、金属加工品を機械加工する方法が、本発明による旋削インサートを使用して実施される。方法は、金属加工品を第1の端部にクランプするステップと、金属加工品を回転軸A3の周りで回転させるステップと、有効なノーズ部の第1の切れ刃を、第1の切れ刃が、金属加工品の回転軸A3に対して、第2の切れ刃が金属加工品のその回転軸に対して形成する角度より小さい角度を形成するように位置決めするステップと、第2の切れ刃が有効であるように、旋削インサートを回転軸A3に対して垂直に、この回転軸から離れる方向に移動させるステップとを含む。有効なノーズ部は、切削中、金属加工品から切りくずを切削する少なくとも1つの切れ刃を備えるように位置決めされたノーズ部である。有効なノーズ部は、他方の、すなわち有効でないノーズ部より、金属加工品の回転軸の近く、および金属加工品の第1の端部の近くに位置決めされる。「第2の切れ刃が有効である」という表現は、第2の切れ刃が金属加工品から切りくずを切削することを意味する。さらに、有効な第2の切れ刃に隣接するノーズ切れ刃の一部は、有効である。第2の切れ刃と同じノーズ部上またはノーズ部に形成された第1の切れ刃は、第2の切れ刃が有効であるときは有効でない。旋削インサートのこの移動は、通常、送り、代替的には外面削りとして知られている。第2の切れ刃は、好ましくは、20~40°の第2の進入角κ2において有効である。進入が20°未満である場合、切りくずの幅は、広くなりすぎて切りくず制御を低減し、振動のリスクが増大する。進入角が40°を超える場合、インサート磨耗が増大する。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、金属加工品を機械加工する方法は、本発明による旋削インサートを使用して実施される。方法は、金属加工品を第1の端部にクランプするステップと、金属加工品を回転軸の周りで回転させるステップと、有効なノーズ部の第1の切れ刃を、第1の切れ刃が、金属加工品の回転軸A3に対して、第2の切れ刃が金属加工品のこの回転軸に対して形成する角度より小さい角度を形成するように位置決めするステップと、第1の切れ刃が有効であるように、旋削インサートを回転軸A3に対して平行に、第1の端部から離れる方向に移動させるステップとを含む。有効なノーズ部は、切削中、金属加工品から切りくずを切削する少なくとも1つの切れ刃を備えるように位置決めされたノーズ部である。有効なノーズ部は、他方の、すなわち有効でないノーズ部より、金属加工品の回転軸の近く、および金属加工品の第1の端部の近くに位置決めされる。「第1の切れ刃が有効である」という表現は、第1の切れ刃が金属加工品から切りくずを切削することを意味する。さらに、有効な第1の切れ刃に隣接するノーズ切れ刃の一部は、有効である。第1の切れ刃と同じノーズ部上または同じノーズ部に形成された第2の切れ刃は、第1の切れ刃が有効であるときには有効でない。旋削インサートのこの移動は、長手方向の旋削作動である。第1の切れ刃は、好ましくは、20~40°の第1の進入角κ1において有効である。進入が20°未満である場合、切りくずの幅は、広くなりすぎて切りくず制御を低減し、振動のリスクが増大する。進入角が40°を超える場合、インサート磨耗が増大する。
【0034】
次に、本発明を、本発明のさまざまな実施形態の説明によって、および添付の図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】従来の旋削インサートを用いた円筒状表面の従来の旋削を示す概略図である。
図2】第1の実施形態による旋削インサートによる円筒状表面の旋削を示す概略図である。
図3】第1の実施形態による旋削インサートを用いた金属加工品の軸方向旋削および外面削りを含む、旋削を示す概略図である。
図4】第1の実施形態による旋削インサートを用いた金属加工品の外面削りを含む旋削を示す概略図である。
図5】第1の実施形態による旋削インサートのノーズ部の上面の上面図である。
図6図5の線VI-VI、VII-VII、およびVIII-VIIIそれぞれに沿った詳細なセクションの図である。
図7図5の線VI-VI、VII-VII、およびVIII-VIIIそれぞれに沿った詳細なセクションの図である。
図8図5の線VI-VI、VII-VII、およびVIII-VIIIそれぞれに沿った詳細なセクションの図である。
図9図5のノーズ部の側面図である。
図10】第1の実施形態による旋削インサートによる90°コーナの旋削を示す概略図である。
図11】従来の旋削からの磨耗を示す、従来の旋削インサートのノーズ部の概略上面図である。
図12図10の旋削からの磨耗を示す、一実施形態のノーズ部の概略上面図である。
図13a】第2の実施形態による旋削インサートを示す斜視図である。
図13b図13aの旋削インサートの前面図である。
図13c図13aの旋削インサートの側面図である。
図13d図13aの旋削インサートの上面図である。
図14】部分的な工具本体内に位置決めされた図13aの旋削インサートを示す斜視図である。
図15図14の旋削インサートおよび工具本体を示す分解図である。
図16a】第1の実施形態による旋削インサートを示す斜視図である。
図16b図16aの旋削インサートの前面図である。
図16c図16aの旋削インサートの側面図である。
図16d図16aの旋削インサートの上面図である。
図17図16aの旋削インサートおよび工具本体を示す斜視図である。
図18a図16aの旋削インサートの底面を示す斜視図である。
図18b図16aの旋削インサートの底面を示す別の斜視図である。
図19a】第3の実施形態による旋削インサートを示す斜視図である。
図19b図19aの旋削インサートの側面図である。
図19c図19aの旋削インサートの上面図である。
図19d図19aの旋削インサートの右底部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
すべての旋削インサートの図は、一定の縮尺で描かれている。
【0037】
従来の旋削インサート1を使用した旋削による従来の金属切削作業を示す図1を参照する。金属加工品50は、CNC機または旋削盤などのモータ(図示せず)を備える機械に連結されたクランプジョー52によってクランプされる。クランプジョーは、金属加工品50の第1の端部54、またはクランプ端において外面を押しつける。金属加工品50の反対側の第2の端部55は、自由端である。金属加工品50は、回転軸A3の周りを回転する。旋削インサート1は、工具本体2内のインサートシートまたはポケット内に固定式にかつ取り外し可能にクランプされる。工具本体2は、後端から、インサートシートまたはポケットが位置する前端まで延びる長手方向軸A2を有する。工具本体2および旋削インサート1は、一緒になって旋削工具3を形成する。旋削工具3は、金属加工品50に関連して移動され、これは、一般的に示される送りである。図1では、送りは軸方向、長手方向とも呼ばれる送りであり、すなわち、送りの方向は、長手方向軸A3に対して平行である。このようにして、円筒状表面53が形成される。旋削インサート1は、主切れ刃と副切れ刃との間の角度として定義された、80°であるノーズ角αを有する有効なノーズを有する。回転軸A3に対して垂直である壁面に旋削インサート1が近づくにつれ、切りくず制御は不十分になり、その理由は、切りくずを切削ゾーンから出すための空間がそれほどないためである。また、切りくずが機械加工された表面にあたる、または損傷を与えるリスクもある。主切れ刃は、ノーズ切れ刃の後方にある。換言すれば、主切れ刃の侵入角度は90°を超え、図1では約95°である。進入角は、切れ刃と送り方向との間の角度として定義される。図1に示す旋削方法では、バック逃げ角は、約5°である。バック逃げ角は、後刃である副切れ刃と、送り方向に対して反対、すなわちこの送り方向に関連して180°の角度として定義される。
【0038】
第1の実施形態による旋削インサートを備える旋削工具を使用する、旋削作業を示す図2を参照する。図1と同様に、金属加工品は、金属加工品の第1の端部54にある、またはこの端部に隣接する外面に押しつけられたクランプジョー(図示せず)によってクランプされる。金属加工品の反対側の第2の端部55は、自由端である。金属加工品は、回転軸A3の周りを回転する。上面図で見たときの旋削インサートは、ねじ6を用いることによって工具本体2内のインサートシートまたはポケット内に固定式に、かつ取り外し可能にクランプされる。工具本体2は、後端から、インサートシートまたはポケットが位置する前端44との間を延びる長手方向軸A2を有する。図2では、この送りは、最大範囲において、軸方向の、長手方向とも呼ばれる送りであり、すなわち、送りの方向は、回転軸A3に対して平行である。このようにして、外部円筒状表面53が形成される。各切削の進入時、または軸方向送りの直前、送りは、旋削インサートが円弧に沿って移動するような径方向成分を有する。
【0039】
旋削インサートは、有効なノーズ切れ刃10を備える有効なノーズ部15を備える。有効なノーズ部15は、さらに、回転軸A3に対して平行な軸方向旋削中、10~45°、好ましくは20~40°の範囲内になるように選択された進入角κ1を有する、有効な第1の切れ刃を備える。作業において主切れ刃である第1の切れ刃は、軸方向の送り方向にノーズ切れ刃10の前方にある。換言すれば、第1の切れ刃は前刃である。有効なノーズ部15上にまたはここに形成された第2の切れ刃は、副切れ刃または後刃である。送り方向が、回転軸A3に対して垂直に、この回転軸から離れるように径方向である場合、第2の切れ刃は進入角κ2において有効である。二等分線7が、第1および第2の切れ刃によって画定される。換言すれば、二等分線は、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に形成される。第1および第2の切れ刃は、旋削インサートの外側の一点に集束する。有効なノーズ部15の二等分線は、長手方向軸A2に対して40~50°の角度θを形成する。旋削インサートは、2つの有効でないノーズ切れ刃10’、10”を備える2つの有効でないノーズ部を備える。軸方向の旋削作業では、旋削インサートのすべての部分は、送り方向に有効なノーズ切れ刃10の前方にある。軸方向の旋削作業では、切りくずを円滑に金属加工品から離れるように向けることができる。機械加工ステップでは、旋削インサート1は、ノーズ切れ刃10が円弧に沿って移動するように金属加工品50に進入する。旋削インサート1は、進入中の切りくずの厚さが一定またはほぼ一定になるように加工品50に進入するか、切削し始める。進入時、切削深さは、ゼロの切削深さから増大する。そのような好ましい進入は、インサートの磨耗、特にノーズ切れ刃10における磨耗を低減する。切りくず厚さは、送り速度に進入角を掛けたものとして定義される。したがって、進入中の旋削インサートの送り速度および移動および/または方向を選択および/または変更することにより、切りくず厚さを一定またはほぼ一定にすることができる。進入中の送り速度は、好ましくは、0.50mm/回転以下である。進入中の切りくず厚さは、好ましくは、後続の切削または機械加工中の切りくず厚さ以下である。
【0040】
図1および2のノーズ切れ刃によって少なくとも部分的に生成または形成された円筒状表面53、または回転対称面は、小さい頂部および谷部を有する波形状を有し、この波形状は、ノーズ半径曲率および送り速度によって少なくとも部分的に影響を受ける。波形の高さは、0.10mm未満、好ましくは0.05未満である。ねじ山プロファイルは、この意味では円筒状表面53ではない。
【0041】
図3および4では、代替的な機械加工作業における図2の旋削インサートおよび工具本体を見ることができ、旋削工具の、特に送り方向に関する多様な応用領域を示している。
【0042】
図3は、6つのステップにおける機械加工順序を示す。ステップ1は、切り下げ作業である。ステップ2は、金属加工品の第1の端部54またはクランプ端から離れる軸方向旋削である。ステップ3は、軸方向および径方向両方の成分を有する送りの形態の、円錐または円錐台、すなわちテーパにされた表面を生成するならい削り作業である。ステップ4は、作業2に類似する作業である。ステップ5は、金属加工品の回転軸A3に対して垂直な平面内に位置する平坦な表面を生成する、外面削り作業である。ステップ6は、金属加工品の第2の端部55または自由端における外面削り作業である。
【0043】
図4は、2つの機械加工ステップ、ステップ1およびステップ2を示す。ステップ1では、径方向送りは、回転軸A3に対して垂直であり、この回転軸に向かうものである。2では、径方向送りは、回転軸A3に対して垂直であり、この回転軸から離れるものであり、ここで回転軸A3に対して垂直な平坦な表面56が、生成される。いずれの場合も、第2の切れ刃は10~45°、好ましくは20~40°の範囲内である進入角κ2において有効である。回転軸A3周りの金属加工品の回転方向は、ステップ1および2に対して相反する方向である。ステップ2では、回転方向は図1図3と同じである。
【0044】
図5は、凸状ノーズ切れ刃10によって連結された第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を備える、第1の実施形態による旋削インサートのノーズ部15の上面図である。同じノーズ部15上または同じノーズ部15における第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して25~50°のノーズ角αを形成し、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、旋削インサートの外側の一点(図示せず)に集束する。二等分線7が、第1の切れ刃11と第2の切れ刃12との間に、これらの刃から等距離に位置する。二等分線7は、ノーズ切れ刃10とその中心において交差する。突起部30が、旋削インサートの上面内に形成され、この突起部は、二等分線に沿ってその主延長部を有する。突起部は、第1の切れ刃の方を向く第1の切りくず破壊壁34と、第2の切れ刃を向く第2の切りくず破壊壁とを備える。第1の切れ刃11に対して垂直な方向に、かつ基準面RPに対して平行な平面において、第1の切れ刃11から第1の切りくず破壊壁34までの測定される距離は、ノーズ切れ刃10から離れるにつれて増大する。これにより、特に図2のような旋削作業において改良された切りくず制御が与えられる。突起部30、したがって第1の切りくず破壊壁34は、第1の切れ刃11より短い延長部を有する。
【0045】
図9は、図5のノーズ部の側面図を示す。底面9は、上面の反対側に位置する。基準面RPは、上面と底面9との間に、これらの面から等距離に位置する。上面および底面は平坦ではないが、基準面RPは、3つのノーズ切れ刃と交差する平面に対して平行であるように位置決めされ得る。側面13は、上面および底面9を連結する。側面13は、第1の切れ刃11に隣接する第1の逃げ面21と、底面9に隣接する第3の逃げ面23と、第1の逃げ面21と第3の逃げ面23との間に位置する第2の逃げ面22とを備える。第1の切れ刃11から第1の逃げ面21の下側境界線、すなわち底面9の最も近くに位置する第1の逃げ面21の境界線までの距離は、ノーズ切れ刃から離れるにつれて減少する。第1の逃げ面21の基準面RPに対して垂直な方向の高さは、第1の切れ刃11の強度をさらに高めるために、第2の逃げ面22の高さより小さい。第1の逃げ面21の高さは、第1の切れ刃11のフランク面の磨耗を補償するために少なくとも0.3mmである。第1の切れ刃11は、底面9および基準面RPに向かって、ノーズ切れ刃10から離れながら傾斜する。第1の切れ刃11から基準面RPまでの距離は、少なくとも第1の切れ刃11の一部分に関して、ノーズ切れ刃10からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。基準面RPからノーズ切れ刃10に隣接して位置する第1の切れ刃11の第1の部分までの距離は、基準面RPから、ノーズ切れ刃10からさらに離れて位置する第1の切れ刃11の第2の部分までの距離より大きい。第1の切れ刃11のそのような配向により、切りくず制御は、たとえば、図2に見られる作業のような、クランプ端から離れる軸方向の旋削において改良される。距離D1は、基準面RPに対して垂直な方向に測定され、突起部30の上面と第1の切れ刃11の最低点との間の距離を表す。D1は、0.28~0.35mmである。これにより、切りくず破壊および/または切りくず制御は、図2に見られる作業においてさらに改良される。
【0046】
図6図8は、図5の線VI-VI、VII-VIIおよびVIII-VIIIそれぞれに沿ったセクションを示す。このセクションは、基準面RPに対して垂直な平面において第1の切れ刃11に対して垂直である。図6図8では、第1、第2、および第3の逃げ面21、22、23が、基準面RPに対して平行であり平面に関連して、底面9と交差して形成する角度が、γ、σ、εそれぞれで示される。角度σは、角度εより大きい。これにより、インサート強度の低下を低減させながら、小さい加工品直径から外面削りを行うことができる。直径が小さくなるにつれてより大きい逃げ角が必要であるが、大きく一定である逃げ角は、インサートの強度を低減させる。第2の逃げ面22は、インサートの強度を増大させる目的を有する。第3の逃げ面23は、底面に隣接する。角度γは、角度εより大きい。角度σは、γより大きい。第3の逃げ面23は、図6図8の断面で見て凸状またはほぼ凸状であり、それによって下限直径範囲、すなわち旋削インサートが、インサートの強度の低減を最小限に抑えて外面削り作業において機能することができる最少直径をさらに改良する。
【0047】
第2の切れ刃12、および第2の切れ刃12に隣接する側面13の構成は、上記で図5図8に関連して説明した、第1の切れ刃11および第1の切れ刃11に隣接する側面13の構成によるものである。
【0048】
図11は、従来の旋削の原理を示し、この場合C1は図1の送り方向を表し、D1は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。C3は、従来の面削り作業を表し、すなわち回転軸A3に対して垂直に、この回転軸に向かう送りを表し、D3は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。第2の切れ刃12は、C1送り方向の主切れ刃である。第1の切れ刃11は、C3送り方向の主切れ刃である。凸状ノーズ切れ刃10は、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する。遷移点T1、T2は、ノーズ切れ刃10と第1の切れ刃11および第2の切れ刃12それぞれとの間の遷移を表す。磨耗D1、D3は、切削深さおよび送り速度の両方に依存する。しかし、D1およびD3が重複し、その結果、ノーズ切れ刃10において、または少なくともノーズ切れ刃10の中心部分において高い磨耗を生じさせることは明確である。
【0049】
図12は、本発明および代替的な旋削方法の原理を示す。C2は、図2の主送り方向、または図10のパス2、4、6および8の主送り方向、すなわち金属加工品のクランプ端から離れる、軸方向送り方向を表す。D2は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。C4は、外面削り作業、すなわち図10のパス1、3、5、および7の主送り方向に見られるように、回転軸A3に対して垂直に、この回転軸から離れる送りを表す。D4は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。第2の切れ刃12は、C4送り方向における主切れ刃である。第1の切れ刃11は、C2送り方向における主切れ刃である。凸状ノーズ切れ刃10は、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する。遷移点T1、T2は、ノーズ切れ刃10と第1の切れ刃11および第2の切れ刃12それぞれとの間の遷移を表す。磨耗D2、D4は、切削深さおよび送り速度の両方に依存する。しかし、D2およびD4が重複せず、少なくとも図11の程度よりは重複せず、その結果、ノーズ切れ刃10における磨耗が低減され、または少なくともノーズ切れ刃10の中心部分における磨耗が低減されることが明確である。第1および第2の切れ刃11、12の磨耗の範囲はより広く、すなわち、図11と比較してより長い距離にわたって分散される。しかし、送りC2およびC4の進入角は、C1およびC3のより大きい進入角と比較して小さいため、図12の切りくず厚さは、より薄くなり、そのため、磨耗は比較的小さくなる。一定の送り速度および切削深さにおいて、D2の面積はD3の面積に等しく、D1の面積はD4の面積に等しい。
【0050】
図10は、第1の実施形態による旋削インサートを使用する機械加工順序の例を示す。左手は、金属加工品のクランプ端である。円筒状表面53および平坦表面56を備える90°コーナが、旋削によって形成される。ステップ1~8の順序が示される。各ステップの進入は、各ステップの主送り方向に対して垂直であるように示される。ステップ1、3、5、および7の主送り方向は、回転軸A3に対して垂直に、この回転軸から離れるものである。ステップ2、4、6および8の主送り方向は、回転軸A3に対して平行に、クランプ端から離れるものである。各切削の進入は、好ましくは図2に関連して説明した通りである。図10に示すステップの順序後の旋削インサート1の磨耗は、図12に示す磨耗に類似し、またはこの磨耗と同一である。
【0051】
図16a~図18bは、さらに、第1の実施形態による旋削インサート1、ならびに旋削インサート1および工具本体2を備える旋削工具3を説明する。旋削インサート1は、すくい面である、またはすくい面を備える上面8と、シート面として機能する反対側の底面9とを備える。基準面RPが、上面8および底面9に対して平行に、これらの面間に位置する。中心軸A1が、基準面RPに対して垂直に延び、基準面RP、上面8、および底面9と交差する。上面8および底面9内に開口部を有する、ねじ用の穴は、中心軸A1と同軸である。旋削インサート1は、逃げ面として機能し、上面8および底面9を連結する側面13、13’、13”を備える。
【0052】
3つのノーズ部15、15’、15”は、中心軸A1に対して対称的に、またはこの周りに形成される。ノーズ部15、15’、15”は、同一である。各ノーズ部15、15’、15”は、第1の切れ刃11と、第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する凸状ノーズ切れ刃10とを備える。ノーズ切れ刃10、10’、10”は、中心軸A1から最大距離に、すなわち旋削インサートの他のすべての部分よりも、中心軸A1から遠い距離に位置する。図16Dに見られる上面図では、同じノーズ部15上のまたは同じノーズ部15における第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して25~50°のノーズ角αを形成し、図16dでは、ノーズ角αは35°である。図16bなどの側面図では、各ノーズ部15、15’、15”上のまたは各ノーズ部15、15’、15”における第1および第2の切れ刃11、12の少なくとも一部は、底面に向かって傾斜し、それにより、側面図では、第1および第2の切れ刃11、12は、同じノーズ部15上または同じノーズ部15においてノーズ切れ刃10と境を接する最高点を有する。換言すれば、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12から基準面RPまでの距離は、ノーズ切れ刃10からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。第1および第2の切れ刃11、12は、上面図では、線形もしくは直線的、またはほぼ線形もしくは直線的である。二等分線7、7’、7”が、第1の切れ刃11、11’、11”および第2の切れ刃12、12’、12”の各対から等距離に延びる。各二等分線7、7’、7”は、中心軸Aと交差する。くぼみ17、17’、17”が、ノーズ切れ刃10、10’、10”の各対間に形成される。図18aおよび18bに見られる底面9は、旋削インサート1が切削中、中心軸A1周りを回転する傾向を低減する目的で、3つの溝40、40’、40”の形態の回転防止手段を備え、各溝40、40’、40”は、最も近い第1の切れ刃11および第2の切れ刃12に隣接して位置する二等分線7、7’、7”と同じ方向に主延長部を有する。各溝40、40’、40”は、好ましくは、互いに関連して鈍角100~160°に2つのシート面を備える。旋削インサート1は、図17に見られるように、ねじまたは上部クランプなどのクランプ手段によって、工具本体2の前端に位置するインサートシート4内に固定式にクランプされるよう意図される。次に、インサートシート4と旋削インサートとの間の接触を、図18bおよび図17の影をつけた領域を見ながら説明する。有効なノーズ切削部15は、溝40が図18bに位置するインサートの部分である。溝40の2つのシート面は、インサートシート4の底部内の凸部90の2つの表面と接触している。各々の他の溝40’、40”の1つの表面、有効なノーズ切れ刃10から最大距離に位置する表面は、インサートシート4の底部内の底面93、94と接触している。有効なノーズ切れ刃10から最大距離にある側面13の少なくとも一部は、インサートシート4の後端に形成された後方シート面91、92と接触することができる。
【0053】
図13a~図15は、第2の実施形態による旋削インサート1、ならびに旋削インサート1および工具本体2を備える旋削工具3を示す。旋削インサート1は、すくい面である、またはすくい面を備える上面8と、シート面として機能する反対側の底面9とを備える。上面8および底面9は同一である。これは、第1の位置にある間、上面8はすくい面として機能し、インサートが上下逆さまになったとき、同じ表面は、次にシート面として機能することを意味する。基準面RPは、上面8および底面9に対して平行に、これらの面間に位置する。中心軸A1が、基準面RPに対して垂直に延び、基準面RP、上面8、および底面9と交差する。上面8および底面9内に開口部を有する、ねじ用の穴は、中心軸A1と同軸である。旋削インサート1は、逃げ面として機能し、上面8および底面9を連結する側面13、13’、13”を備える。3つのノーズ部15、15’、15”は、中心軸A1に対して対称的に、またはこの周りに形成される。ノーズ部15、15’、15”は、同一である。各ノーズ部15、15’、15”は、第1の切れ刃11と、第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する凸状ノーズ切れ刃10とを備える。ノーズ切れ刃10、10’、10”は、中心軸A1から最大距離に、すなわち旋削インサートの他のすべての部分よりも、中心軸A1から遠い距離に位置する。図13dに見られる上面図では、同じノーズ部15上のまたは同じノーズ部15における第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して25~50°、この場合では45°のノーズ角αを形成する。たとえば図13bのような側面図では、各ノーズ部15、15’、15”上のまたは各ノーズ部15、15’、15”における第1および第2の切れ刃11、12の少なくとも一部は、底面に向かって傾斜し、それにより、側面図では、第1および第2の切れ刃11、12は、同じノーズ部15上または同じノーズ部15においてノーズ切れ刃10に隣接する最高点を有する。換言すれば、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12から基準面RPまでの距離は、ノーズ切れ刃10からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。第1および第2の切れ刃11、12は、上面図では、線形もしくは直線的、またはほぼ線形もしくは直線的である。二等分線7、7’、7”が、第1の切れ刃11、11’、11”および第2の切れ刃12、12’、12”の各対から等距離に延びる。各二等分線7、7’、7”は、中心軸Aと交差する。くぼみ17、17’、17”が、隣接するノーズ切れ刃10、10’、10”の各対間に形成される。旋削インサート1は、表面41、42、43、44の組の形態の回転防止手段を備え、この場合各表面41、42、43、44は、基準面RPに関連して5~60°の角度を形成する平面内を延びる。表面41、42、43、44の組は、中央のリング形状突起部30において形成され、中心軸A1の周りを延びる。そのような構成により、旋削インサート1は、両面型または可逆式に作製することができ、可能な用途を広げる。第1の切りくず破壊壁34は、表面41、42、43、44の組の一部であることができる。代替的な解決策(図示せず)は、第1の切りくず破壊壁34を別の突起部(図示せず)の一部として中心軸A1からより遠い距離に配置することである。図14は、インサートを押さえつけ、工具本体2のインサートシート4内に保つ、クランプ95を用いることによる旋削インサート1の1つの可能なクランプモードを示す。
【0054】
図15は、第2の実施形態による旋削インサート1をたとえば上部クランプ95を用いることによって装着することができるインサートシート4を示す。有効なノーズ切れ刃10から最大距離に位置する側面13は、インサートシート4の後面91、92に押さえつけられる2つの表面を備える。表面41、42、43、44の組は、インサートシート4の底部の前部90の表面と接触する2つの前面41、42を備える。この文脈での前部は、中心軸Aと有効なノーズ切れ刃10との間である。表面41、42、43、44の組は、さらに、2つの後面43、44を備え、この後面は、インサートシート4の底面内の、前部90とインサートシート4の後面91、92との間に位置する後底面93、94に押さえつけられる2つの後面43、44を備える。
【0055】
図19a~図19dは、すくい面である、またはすくい面を備える上面8と、シート面として機能する反対側の底面9とを備える第3の実施形態による旋削インサート1を示す。底面9は、たとえば図18aおよび18bに示すような第1の実施形態と同一の回転防止手段(図示せず)を備える。第3の実施形態による旋削インサート1は、上面8に関してのみ、第1の実施形態による旋削インサートとは異なる。切れ刃の形状および位置、ならびに工具本体における旋削インサートの使用および装着を含む他のすべての態様では、第3の実施形態による旋削インサートは、第1の実施形態による旋削インサートと同一であり、この旋削インサートと同一の方法で使用されるよう意図される。突起部30が、旋削インサート1の上面8内に形成され、この突起部30は、二等分線7に沿って主延長部を有する。より正確には、各ノーズ部15、15’、15”の上面8は、上面図において各それぞれ二等分線7、7’、7”に沿って延びる突起部30を備える。突起部3は、ノーズ切れ刃10から離間されて置かれる。突起部30の幅は、ノーズ切れ刃10から離れるにつれて増大し、この場合前記幅は、上面図において二等分線7に対して垂直に測定される。第3の実施形態によるインサート1の場合、各ノーズ部15、15’、15”上に形成された突起部30は、上面図において、円形またはリング形状の突起セグメントを用いることによって連結され、それによって単一の突起部30を形成する。あるいは、各ノーズ部15、15’、15”上に形成された突起部30は、離間されて置かれてよい。図19dに見ることができるように、突起部30は、第1の切れ刃11の方を向く第1の切りくず破壊壁34と、第2の切れ刃12を向く第2の切りくず破壊壁とを備える。第1の切れ刃11に対して垂直な方向にかつ基準面RPに対して平行な平面において、第1の切れ刃11から第1の切りくず破壊壁34まで測定される距離は、ノーズ切れ刃10から離れるにつれて増大する。これにより、特に図2のような旋削作動において切りくず制御が改良される。突起部30の上面と第1の切れ刃11の最低点との間の距離を表す、基準面RPに垂直な方向に測定される距離は、0.28~0.35mmである。これにより、切りくず破壊および/または切りくず制御は、図2に見られるような作動においてさらに改良される。
【0056】
突起部30と第1の切れ刃11との間には、複数の隆起部80、すなわち突起部が形成される。隆起部80または突起部は、上面図において、好ましくは0.30から0.60mm、より好ましくは0.40~0.50mmの距離だけ、第1の切れ刃11から離間されて置かれる。基準面RPに対して垂直な方向に、隆起部80の上面と、第1の切れ刃11の関連する部分、すなわち最も近い部分との間で測定される距離は、0.04~0.07mm、好ましくは0.05~0.06mmである。各隆起部80は、したがって、第1の切れ刃11の関連する部分、すなわち最も近い部分に関連して持ち上げられており、それにより、隆起部80の上面の少なくとも一部から基準面RPまでの距離は、基準面RPから、第1の切れ刃11の関連する部分、すなわち最も近い部分までの距離より大きい。対応する方法で、突起部30は、隆起部80に関連して持ち上げられる。少なくとも1つの隆起部80、好ましくは複数の隆起部80は、第1の切りくず破壊壁34と交差する。各関連する第1の切れ刃11に隣接する隆起部80の数は、好ましくは、3~10個、さらに好ましくは4~8つである。図19dに見ることができる第3の実施形態では、関連する第1の切れ刃11に隣接する隆起部80の数は、6つである。隆起部80の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の隆起部80は、図19cに最適に見られるように上面図において長円形状、もしくはほぼ長円形状であり、または細長いものである。隆起部80の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の隆起部80は、上面図において、第1の切れ刃11に対して垂直であり、または実質的に、すなわち20°以内で、垂直な主延長部を有する。
【0057】
各ノーズ部15、15’、15”の上面8は、上面図において、それぞれの二等分線7、7’、7”に関して、対称的に形成され、または鏡像にされる。したがって、突起部30と第2の切れ刃12との間には、別の複数の隆起部80が形成され、この別の複数の隆起部80は、対応する方法で配置される。
【0058】
本発明は、開示する実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で変更および改変されてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図13c
図13d
図14
図15
図16a
図16b
図16c
図16d
図17
図18a
図18b
図19a
図19b
図19c
図19d