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特許7023246耐疲労ヒューズ素子を含む高電圧電力ヒューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】耐疲労ヒューズ素子を含む高電圧電力ヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/08 20060101AFI20220214BHJP
   H01H 85/044 20060101ALI20220214BHJP
   H01H 85/06 20060101ALI20220214BHJP
   H01H 85/18 20060101ALI20220214BHJP
   H01H 85/12 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
H01H85/08
H01H85/044
H01H85/06
H01H85/18
H01H85/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018566349
(86)(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 US2017029774
(87)【国際公開番号】W WO2017222640
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】15/186,674
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・スティーヴン・ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ラムデヴ・カナパディー
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-159537(JP,A)
【文献】実開昭56-050044(JP,U)
【文献】特開2006-339161(JP,A)
【文献】特開昭54-026454(JP,A)
【文献】特開2010-186639(JP,A)
【文献】特開2002-343225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0348731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/06-85/12
H01H 85/18
H01H 85/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクトな電力ヒューズであって、
ハウジングと、
前記ハウジングから延びている第1および第2の導電性端子と、
前記ハウジング内に収容され、前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続されたヒューズ素子アセンブリと、を備え、
記ヒューズ素子アセンブリは、電気自動車の、動作中の電源システムにおける短絡または過負荷状態を示さない一見ランダムな電流負荷循環に関連した熱循環応力に起因する機械的疲労によって生じる想定外の厄介な動作に対して、少なくとも1つの事前製造された耐疲労アセンブリによって対処するために製造され、
前記少なくとも1つの事前製造された耐疲労アセンブリは、
互いに同一平面上に配置された少なくとも第1の導電性プレートおよび少なくとも第2の導電性プレートと、
前記第1の導電性プレートと前記第2の導電性プレートとを相互接続している複数のワイヤ結合された弱い箇所であって前記複数のワイヤ結合された弱い箇所のそれぞれは、互いに別個に設けられ、前記第1の導電性プレートに接続された第1の端部と、前記第2の導電性プレートに接続された第2の端部とを有している、複数のワイヤ結合された弱い箇所と、
アークバリア材料を含み、前記第1の導電性プレートと前記第2の導電性プレートとに接続された前記複数のワイヤ結合された弱い箇所のそれぞれの端部のみを覆い、前記複数のワイヤ結合された弱い箇所の大部分を覆わないシーリング要素と、
前記シーリング要素を覆うアーククエンチング媒体と、を含んでおり、
前記電力ヒューズは、少なくとも150Aの定格電流を備えるように設計されている、電力ヒューズ。
【請求項2】
前記第1の導電性プレートおよび前記第2の導電性プレートは、第1の導電性材料からそれぞれ製作され、前記複数のワイヤ結合された弱い箇所は、前記第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料から製作されている、請求項1に記載の電力ヒューズ。
【請求項3】
前記第1の導電性材料は、銅である、請求項2に記載の電力ヒューズ。
【請求項4】
前記第2の導電性材料は、アルミニウムまたは銀のうちの1つである、請求項3に記載の電力ヒューズ。
【請求項5】
記シーリング要素は、はんだまたはMスポット材料をさらに含む、請求項1に記載の電力ヒューズ。
【請求項6】
記アーククエンチング媒体は、前記ワイヤ結合された弱い箇所を機械的に支持する、請求項に記載の電力ヒューズ。
【請求項7】
前記アーククエンチング媒体は、珪砂または硅石を含む、請求項6に記載の電力ヒューズ。
【請求項8】
前記アーククエンチング媒体は、メラン粉末を含む、請求項6に記載の電力ヒューズ。
【請求項9】
前記アーククエンチング媒体は、前記第1の導電性プレートおよび前記第2の導電性プレートの一部の上下に延びるように、前記第1の導電性プレートおよび前記第2の導電性プレートのうち、前記シーリング要素および前記複数のワイヤ結合された弱い箇所とは反対側の部分をさらに覆い、前記複数のワイヤ結合された弱い箇所は、1つまたは複数の列を形成し、前記アーククエンチング媒体は、前記第1の導電性プレートおよび前記第2の導電性プレートの前記1つまたは複数の前記ワイヤ結合された弱い箇所の列の間にある部分を覆わない、請求項6に記載の電力ヒューズ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの事前製造された耐疲労アセンブリは、第1および第2の事前製造された耐疲労アセンブリを含み該第1および第2の事前製造された耐疲労アセンブリのそれぞれは、前記第1の導電性端子と前記第2の導電性端子の間で前記第1の導電性端子と前記第2の導電性端子に直接接続され、ハウジング内で電気的に互いに並列に接続されている、請求項1に記載の電力ヒューズ。
【請求項11】
前記電力ヒューズは、少なくとも500Vの定格電圧を備えるように設計される、請求項1に記載の電力ヒューズ。
【請求項12】
前記事前製造された耐疲労アセンブリ内の前記少なくとも第1の導電性プレートおよび第2の導電性プレートは、5つの導電性プレートを含み該5つの導電性プレートのそれぞれは、前記5つの導電性プレートのうちの互いに隣接するもの同士の間に延びる前記複数のワイヤ結合された弱い箇所を備えている、請求項1に記載の電力ヒューズ。
【請求項13】
前記複数のワイヤ結合された弱い箇所の各々は、ひずみ緩和ループ部分を含む、請求項1に記載の電力ヒューズ。
【請求項14】
前記複数のワイヤ結合された弱い箇所は、丸みを帯びたワイヤを各々含む、請求項1に記載の電力ヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の分野は、概して、電気回路保護ヒューズに関し、より具体的には、耐熱機械的ひずみ疲労性ヒュージブル素子アセンブリを含む電力ヒューズの製作に関する。
【0002】
ヒューズは、電気回路への費用のかかる損傷を防止するための過大電流保護装置として広く使用されている。ヒューズ端子は、典型的には、電源または電力供給装置と、電気回路に配置されている電気部品、または部品の組み合わせとの間の電気的接続を形成する。1つ以上のヒュージブルリンクもしくは素子、またはヒューズ素子アセンブリが、ヒューズ端子間に接続され、その結果、ヒューズを流れる電流が所定の限度を超えると、ヒュージブル素子が溶解し、ヒューズを通る1つ以上の回路を開き、電気部品の損傷を防止する。
【0003】
いわゆるフルレンジ電力ヒューズは、比較的高い故障電流と比較的低い故障電流との両方を等しい効果で安全に中断させるために、高電圧電力分配システムで動作可能である。絶えず拡大している電力システムの変化を考慮して、この種の既知のヒューズは、いくつかの面では不利である。フルレンジの電力ヒューズの改善が、市場のニーズを満たすために望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
非限定的で非網羅的な実施形態が、以下の図を参照して説明され、特に指定がない限り様々な図面を通して同様の部品には同じ参照番号が付されている。
【0005】
図1】例示的な電力システムで生成される例示的な一時的な電流パルスプロファイルを示す図である。
図2図1に示す電流プロファイルを経験する可能性のある高電圧電力ヒューズの上面図である。
図3図2に示す電力ヒューズの部分斜視図である。
図4図3に示すヒューズ素子アセンブリの拡大図である。
図5図4に示すヒューズ素子アセンブリの一部を示す。
図6】疲労状態にある図5に示すヒューズ素子の一部の拡大図である。
図7】製造の第1の段階における耐疲労ヒューズ素子アセンブリの上面斜視図である。
図8】製造の第2の段階における図7に示す耐疲労ヒューズ素子アセンブリの上面斜視図である。
図9図8に示すヒューズ素子アセンブリの部分断面図である。
図10】製造の第3の段階における図8に示す耐疲労ヒューズ素子アセンブリの上面斜視図である。
図11図10に示すヒューズ素子アセンブリの部分断面図である。
図12】製造の第1の段階における耐疲労ヒューズ素子アセンブリを作製するバッチプロセスの上面図である。
図13】製造の第2の段階における耐疲労ヒューズ素子アセンブリを作製するバッチプロセスの上面図である。
図14】製造の第3の段階における耐疲労ヒューズ素子アセンブリを作製するバッチプロセスの上面図である。
図15】製造の第4の段階における耐疲労ヒューズ素子アセンブリを作製するバッチプロセスの上面図である。
図16】製造の第5の段階における耐疲労ヒューズ素子アセンブリを作製するバッチプロセスの上面図である。
図17図12~16に示すプロセスで製造された耐疲労ヒューズ素子アセンブリの上面図である。
図18図17に示すヒューズ素子アセンブリを含む電力ヒューズの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
とりわけ、電気自動車技術における最近の進歩は、ヒューズ製造業者に特有の課題を提示している。電気自動車の製造業者は、従来の車両用電力分配システムよりもはるかに高い電圧で動作する電力分配システムに対して、電気自動車の仕様および要求を満たすためのより小さいヒューズを探すと同時に、ヒュージブル回路保護を求めている。
【0007】
従来の内燃機関駆動車両用の電力システムは、比較的低い電圧、典型的には約48VDC以下で動作する。しかしながら、本明細書では電気自動車(EV)と呼ばれる電気駆動車両用の電力システムは、はるかに高い電圧で動作する。EVの比較的高い電圧システム(例えば、200VDC以上)は、一般に、バッテリが、電力源からより多くのエネルギーを蓄積して、車両の電気モータに、内燃機関で使用されている12ボルトまたは24ボルトのエネルギーを蓄積する従来のバッテリよりもより少ない損失(例えば、熱損失)で、およびより最近では48ボルトの電力システムでより多くのエネルギーを供給することを可能にする。
【0008】
EV相手先商標製品の製造会社(OEM)は、全バッテリ電気自動車(BEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、およびプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の電気負荷を保護するために、回路保護ヒューズを採用している。各EVタイプ間で、EV製造業者は、所有コストを削減しながら、バッテリ1充電当たりのEVの走行可能距離範囲を最大化したいと努力している。これらの目標を達成することにより、EVシステムのエネルギー貯蔵および電力供給、ならびに電力システムによって運ばれる車両部品の大きさ、容積、および質量が変わる。より小型および/または軽量の車両は、より大型で重い車両よりもこれらの要求をより効果的に満たすことができるため、このような全てのEV部品は、現在、潜在的な大きさ、重量、およびコスト削減のために精査されている。
【0009】
一般的に言えば、部品が大きいほど、関連する材料コストが高くなる傾向があり、EVの全体的な大きさが大きくなる、あるいは車両体積が縮小すると過度の空き容量を占める傾向があり、1回のバッテリ充電当たりの車両走行可能距離を直接減少させる、より大きな質量を導入する傾向がある。しかしながら、既知の高電圧回路保護ヒューズは、比較的大きく、かつ、比較的重い部品である。歴史的に、そして正当な理由から、回路保護ヒューズは、より低い電圧システムと対照的に、高電圧電力システムの要求を満たすために大きさが大きくなる傾向があった。よって、高電圧EV電力システムを保護するために必要な既存のヒューズは、従来の内燃機関駆動車両の低電圧電力システムを保護するために必要な既存のヒューズよりもはるかに大きい。回路保護性能を犠牲にすることなく、EV製造業者のニーズを満たすために、より小型で軽量の高電圧電力ヒューズが望まれている。
【0010】
最先端のEV用の電力システムは、450VDCの高電圧で動作することができる。増加した電力システム電圧は、望ましくは、バッテリ1充電当たりより多くの電力をEVに供給する。しかしながら、このような高電圧電力システムにおける電気ヒューズの動作条件は、低電圧システムよりもはるかに厳しい。具体的には、ヒューズが開くときの電気アーク状態に関する仕様は、特に、電気ヒューズの大きさを縮小するための業界の好みと相まって、高電圧電力システムでは満たすことが非常に困難である。最先端のEVによる電力ヒューズに課される電流循環負荷はまた、従来のヒューズ素子の早期破壊を招く可能性のある機械的なひずみおよび摩耗を引き起こす傾向がある。最先端のEVの用途の高電圧回路において、EV OEMによって使用される既知の電力ヒューズが現在利用可能であり、EV用の高電圧電力システムの要件を満たすことができる従来の電力ヒューズの大きさおよび重量は、コストは言うまでもなく、新しいEVの実現には実用的ではない。
【0011】
いくら控えめに言っても、ヒューズ素子が高電圧で動作する際に受け入れ可能な遮断性能を依然として提供しながら、最先端のEV電力システムの高電流および高バッテリ電圧を可能な限り扱うことができる比較的小さな電力ヒューズを提供することは、困難なことである。ヒューズ製造業者およびEV製造業者は、各々、より小さい、より軽く、およびより低コストのヒューズの恩恵を受けるであろう。EV革新は、より小型で、高電圧のヒューズを望む市場をけん引しているが、より小型で、しかし強力な電気システムへの傾向は、EV市場を超越している。様々な他の電力システムの用途は、間違いなく、より大きな、従来製作されていたヒューズに匹敵する性能を別の方法で提供する、より小さなヒューズから恩恵を受けるであろう。当該技術分野における長年の実現されていないニーズに対する改善が必要である。
【0012】
これらおよび他の困難に対処する電気回路保護ヒューズの例示的な実施形態を以下に説明する。例示的なヒューズの実施形態は、既知の高電圧電力ヒューズと比較して、EVにおける低減された物理的体積または空間を占有する比較的小さくてコンパクトな物理的パッケージサイズを有利に提供する。また、既知のヒューズと比較して、例示的なヒューズの実施形態は、比較的高い電力処理能力、より高い電圧動作、フルレンジ時間電流動作、より低い短絡レットスルーエネルギー性能、およびより長い寿命動作および信頼性を有利に提供する。例示的なヒューズの実施形態は、非常に高い電流制限性能、ならびに厄介なまたは早期のヒューズ動作からの長い耐用年数および高い信頼性を提供するように設計および技術化されている。方法の態様は、部分的には明示的に議論され、一部は以下の議論から明らかになるであろう。
【0013】
EV用途およびヒューズの特定のタイプおよび定格の文脈において記載されているが、本発明の利益は必ずしもEV用途または記載された特定のヒューズタイプまたは定格に限定されない。むしろ、本発明の利益は、より多くの異なる電力システムの用途に広く広がると考えられ、また、本明細書で論じられているものと類似または異なる定格を有する異なるタイプのヒューズを構築するために、部分的または全体において実行される。
【0014】
図1は、ヒューズ、および具体的には、ヒューズ素子または負荷電流循環疲労に影響されやすい内部の素子を提示することができるEV電力システムの用途における例示的な電流駆動プロファイル100を示す。電流は、図1の縦軸に沿って示され、時間は横軸に沿って示されている。典型的なEV電力システムの用途では、電力ヒューズは、電気的故障状態による電気負荷への損傷を防止するための回路保護装置として利用される。図1の例を考慮すると、EV電力システムは、比較的短期間の電流負荷における大きな分散に影響されやすい。電流の分散は、EV車両の運転者の行動、交通状況および/または道路状況に基づいて、一見したところランダムな運転習慣によって生成されるシーケンスで様々な大きさの電流パルスを生成する。これにより、EV駆動モータ、一次駆動バッテリ、およびシステムに含まれる保護用電力ヒューズには、事実上無限大のさまざまな電流負荷周期が発生する。
【0015】
図1の電流パルスプロファイルに例示されているこのようなランダムな電流負荷条件は、(バッテリの消耗に対応する)EVの加速と(回生バッテリ充電に対応する)EVの減速の両方に対して、本質的に周期的である。この電流周期的負荷は、ヒューズ素子に、より具体的には、ジュール効果加熱プロセスによって、電力ヒューズ内のヒューズ素子アセンブリのいわゆる弱い箇所に、熱循環応力を加える。ヒューズ素子のこの熱循環負荷は、特に、ヒューズ素子の弱い箇所に機械的膨張および収縮周期を課す。ヒューズ素子の弱い箇所のこの繰り返される機械的な周期的負荷は、やがて弱い箇所を破損点まで損傷させる蓄積ひずみを与える。本明細書の目的のために、この熱機械的プロセスおよび現象は、本明細書では、ヒューズ疲労と呼ばれる。以下でさらに説明するように、ヒューズ疲労は、主として、ヒューズが駆動プロファイルに耐えるにつれて、クリープのひずみに起因する。ヒューズ素子の弱い箇所で発生した熱が、ヒューズ疲労の発生をもたらす主なメカニズムである。
【0016】
図2図4は、EV電力システムと共に使用するように設計された例示的な高電圧電力ヒューズ200の様々な図である。従来法で構築された既知のULクラスJヒューズと比較して、ヒューズ200は、はるかに小型のパッケージ寸法で同等の性能を提供する。
【0017】
図2に示すように、本発明の電力ヒューズ200は、ハウジング202と、配線および負荷側回路に接続するように構成された端子ブレード204、206と、端子ブレード204、206の間の電気的接続を完了するヒューズ素子アセンブリ208とを含む。所定の電流条件に従って、ヒューズ素子アセンブリ208の少なくとも一部が溶融し、崩壊し、あるいは構造的に故障し、端子ブレード204、206の間の回路経路が開く。したがって、負荷側回路は配線側回路から電気的に絶縁されて、電気的故障状態が発生したときに、負荷側回路部品および回路を損傷から保護する。
【0018】
一例におけるヒューズ200は、500VDCの電圧定格および150Aの電流定格を提供するように技術化されている。Lがヒューズの両端部間のハウジングの軸方向長さであり、Rがヒューズのハウジングの外径であり、Lがハウジングの反対側で互いに対向するブレード端子の遠位端の間で測定されたヒューズの総全長である図示の例では、ヒューズ200の寸法は、従来の構造で同等の性能を提供する既知のULクラスJヒューズの対応する寸法の約50%である。さらに、ヒューズハウジング202の半径は、匹敵する性能を提供する従来のULクラスJヒューズの半径の約50%であり、ヒューズ200の容積は、同じ定格で同等の性能を提供する従来のULクラスJヒューズの容積から約87%低減される。したがって、ヒューズ200は、別の方法で同等のヒューズ保護性能をヒューズに提供しながら、相当な大きさおよび容積の削減を提供する。ヒューズ200の大きさおよび容積の削減は、ヒューズ100に対して、その構成に利用される材料の削減を介して、重量およびコストの節約にさらに寄与する。したがって、そのより小型の寸法のため、ヒューズ200は、EV電力システムの用途にはるかに好ましい。
【0019】
一例では、ハウジング202は、例示的な一実施形態では、ガラスメラミンなどの当該技術分野で既知である非導電性材料から製作される。ハウジング202に適した他の既知の材料を、必要に応じて他の実施形態で代替的に使用することができる。代替的に、図示のハウジング202は、ほぼ円筒形または管状であり、図示の例示的な実施形態では、軸方向長さ寸法LおよびLに垂直な軸に沿ってほぼ円形の断面を有する。しかしながら、ハウジング202は、これに限定されることなく、互いに直角に配置されている4つの側壁を有する、つまり、正方形または長方形の断面を有する長方形を含む、別の形状に必要に応じて代替的に形成され得る。図示のハウジング202は、第1の端部210、第2の端部212、およびヒューズ素子アセンブリ208を受けて収容する対向する端部210、212の間の内部穴または通路を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ハウジング202は、必要に応じて導電性材料で製作することができるが、これは、端子ブレード204、206をハウジング202から電気的に絶縁するために絶縁ガスケットなどを必要とする。
【0021】
端子ブレード204、206はそれぞれ、ハウジング202の対向する端部210、212から各々反対方向に延び、互いにほぼ同一平面関係に延びるように配置される。端子ブレード204、206の各々は、考えられる実施形態では、銅または真鍮のような導電性材料から製作されてもよい。端子ブレード204、206を形成するのに望ましい他の実施形態では、他の既知の導電性材料を代替的に使用することができる。端子ブレード204、206の各々には、図3に示すように開口部214、216が形成されており、開口部214、216は、ボルト(図示せず)などの締結具を受けてヒューズ200をEV内の適所に固定し、端子ブレード204、206を介して、回路導体への配線および負荷側回路接続を確立することができる。
【0022】
例示的な端子ブレード204、206がヒューズ200について示され、かつ、説明されているが、他の端子構造および配置も、さらなるおよび/または代替の実施形態で同様に利用されてもよい。例えば、開口部214、216は、いくつかの実施形態では任意選択であると考えられ、省略されてもよい。当業者であれば様々な種類の端子オプションを提供することが理解されているように、ナイフブレードの接点が、図示の端子ブレードの代わりに設けられてもよく、同様にフェルール端子またはエンドキャップが設けられてもよい。端子ブレード204、206はまた、必要に応じて、間隔を空けてほぼ平行な向きに配置することができ、図示のものとは異なる位置でハウジング202から突出することができる。
【0023】
図3に示すようにハウジング202が取り外され、図4の拡大図に示すように、ヒューズ素子アセンブリ208は、第1のヒューズ素子218、および各々がエンドプレート226、228に設けられている端子コンタクトブロック222、224にそれぞれ接続されている第2のヒューズ素子220を含む。ブロック222、224を含むエンドプレート226、228は、銅、真鍮、または亜鉛のような導電性材料から製作されるが、他の導電性材料も既知であり、同様に他の実施形態で利用することができる。ヒューズ素子218、210および端子コンタクトブロック222、224の機械的および電気的接続は、これに限定されないが、はんだ付け技術を含む既知の技術を用いて確立することができる。
【0024】
様々な実施形態では、エンドプレート226、228は、端子ブレード204、206を含むように形成されてもよく、または端子ブレード204、206が別個に設けられ、かつ、取り付けられてもよい。エンドプレート226、228は、いくつかの実施形態では任意選択であると考えられ、ヒューズ素子アセンブリ208と端子ブレード204、206との間の接続は、別の手法で確立されてもよい。
【0025】
エンドプレート226、228をハウジング202に対して適所に固定する複数の固定ピン230も示されている。一例では、固定ピン230は、鋼で製作することができるが、他の材料も既知であり、必要に応じて利用することができる。いくつかの実施形態では、ピン230は任意選択であると考えられ、他の機械的接続の特徴を優先して省略することができる。
【0026】
消弧フィラー媒体、または材料232は、ヒューズ素子アセンブリ208を取り囲む。フィラー材料232は、(ここで図示されている)プラグで封止されているエンドプレート226、228のうちの1つの1つ以上の充填開口を介して、ハウジング202に導入されてもよい。プラグは、様々な実施形態では、鋼、プラスチック、または他の材料から製作することができる。他の実施形態では、フィラー材料232の導入を容易にするために、ハウジング202を含むが、これに限定されない、充填孔または充填孔(複数)が、他の位置に設けられてもよい。
【0027】
1つの考えられる実施形態では、充填媒体232は、石英珪砂とケイ酸ナトリウム結合剤とからなる。石英砂は、そのゆるやかな圧縮状態では比較的高い熱伝導および吸収能力を有するが、改善された性能を提供するためにケイ素化され得る。例えば、液体ケイ酸ナトリウム溶液を砂に添加し、次いで遊離水を乾燥させることによって、以下の利点を備えたケイ酸塩フィラー材料232を得ることができる。
【0028】
ケイ酸塩材料232は、ヒューズ素子218、220、石英砂、ヒューズハウジング202、エンドプレート226および228、および端子コンタクトブロック222、224に対するケイ酸ナトリウムの熱伝導結合を生成する。この熱結合により、ヒューズ素子218、220からそれらの周囲、回路インターフェース、および導体へのより高い熱伝導が可能になる。石英砂へのケイ酸ナトリウムの適用は、熱エネルギーの伝導をヒューズ素子218、220から離れて援助する。
【0029】
ケイ酸ナトリウムは、砂をヒューズ素子、端子、およびハウジング管に機械的に結合し、これらの材料間の熱伝導を増加させる。従来、砂のみを含み得るフィラー材料は、ヒューズ内のヒューズ素子の導電性部分と点接触するのに対し、フィラー材料232のケイ素化された砂は、ヒューズ素子に機械的に結合される。したがって、同等の性能を提供する既知のヒューズと比較して、ヒューズ200の実質的な寸法縮小を部分的に容易にする、ケイ素化されたフィラー材料232により、より効率的、かつ効果的な熱伝導が可能になる。
【0030】
図4は、ヒューズ素子アセンブリ208をさらに詳細に示している。電力ヒューズ200は、アセンブリ208内のヒューズ素子の設計特徴のため、より高いシステム電圧で動作することができ、ヒューズ200の寸法縮小をさらに容易にする。
【0031】
図4に示すように、ヒューズ素子218、220の各々は、一般に、導電性材料のストリップから、斜め断242、244によって接続されている一連の同一平面上の断240に形成される。ヒューズ素子218、220は、一般に、実質的に同一の形状および幾何学的形状で形成されるが、アセンブリ208内で互いに対して反転される。すなわち、図示の実施形態でのヒューズ素子218、220は、互いに鏡像関係に配置されている。言い換えると、ヒューズ素子218、220の一方は、右上向きに配向され、他方は、逆向きに配向され、その結果、コンパクトで省スペースの構造となる。特定のヒューズ素子の幾何学および配置が示されているが、他の種類のヒューズ素子、ヒューズ素子の幾何学、およびヒューズ素子の配置も他の実施形態で可能である。ヒューズ素子218、220は、全ての実施形態で互いに同一に形成される必要はない。さらに、いくつかの実施形態では、単一のヒューズ素子を利用することができる。
【0032】
図示されている例示的なヒューズ素子218、220では、斜め断片242、244が平面部240から平面外に形成または曲げられ、斜め断片242が、斜め断片244と等しく、かつ、対向傾斜面を有する。すなわち、斜め断片242の一方は正の傾斜を有し、斜め断片244の他方は図示の例では負の傾斜を有する。斜め断片242、244は、図示のように平面部240の間で対に配置されている。端子タブ246は、上述したように、エンドプレート226、228への電気的接続が確立され得るように、ヒューズ素子218、220のいずれかの対向する端部に示されている。
【0033】
図示されている例では、平面部240は、当該技術分野では弱い箇所と呼ばれる縮小された断面積241の複数の断片を画定する。弱い箇所241は、図示されている例の平面部240内の丸い開口部によって画定される。弱い箇所241は、隣接する開口部間の断片240の最も薄い部分に対応する。弱い箇所241の減少した断面積は、電流がヒューズ素子218、220を流れるときに熱集中を経験し、弱い箇所241の断面積は戦略的に選択されて、指定された電流条件を経た場合、弱い箇所241の位置で、ヒューズ素子218および220を開かせる。
【0034】
各断片240に設けられている複数の断片240および複数の弱い箇所241は、ヒューズ素子218、220が動作するときに、アーク分割を容易にする。図示した例では、ヒューズ素子218、220は、1つではなく断片240に対応する3つの位置で同時に開く。図示した例によれば、450VDCシステムでは、ヒューズ素子が動作してヒューズ200を通って回路を開くとき、電気アークが断片240の3箇所に分割され、各位置のアークは、450VDCの代わりに150VDCのアーク電位を有する。各断片240に設けられている複数(例えば、4つ)の弱い箇所241は、弱い箇所241の電気アークをさらに効果的に分割する。アーク分割は、ヒューズ200の寸法縮小をすることができるように、フィラー材料232の量を減少させると共にハウジング202の半径を減少させる。
【0035】
平面部240の間の屈曲斜め断片242、244は、アークが燃焼するための平坦な長さを依然として提供するが、断片242、244が交差するコーナーで、アークが結合する可能性を避けるために、曲げ角度を慎重に選択すべきである。屈曲斜め断片242、244はまた、端子タブ246の遠位端と平面部240に平行な方向との間で測定されたヒューズ素子アセンブリ208の効果的に短い長さを提供する。有効長さがより短いと、ヒューズ素子が屈曲断片242、244を含まない場合に別の方法で必要とされるであろうヒューズ200のハウジングの軸方向長さの短縮が容易になる。屈曲斜め断片242、244はまた、使用中の電流循環動作からの製造疲労および熱膨張疲労からの応力解放を提供する。
【0036】
高出力のハンドリングおよび高電圧の動作の側面を有するこのような小型のヒューズパッケージを維持するために、上記のフィラー232および形成されたヒューズ素子の幾何学でのケイ素化された石英砂の使用を超えて、特別な素子処理を適用することもできる。具体的には、RTVまたはUV硬化型シリコーンなどのアーク遮断材料またはアークバリア材料の適用は、ヒューズ素子218、220の端子タブ246に隣接して適用することができる。最も高い割合の二酸化ケイ素(ケイ土)を生むシリコーンは、端子タブ246の近くでアークバーンバックを阻止または緩和する際に、最良の性能を発揮することが分かっている。端子タブ246におけるあらゆるアークは望ましくなく、したがって、アーク遮断材料またはバリア材料250は、アークが端子タブ246に達するのを防止するように設けられた位置で、ヒューズ素子218、220の全断面を完全に取り囲む。
【0037】
フルレンジ時間電流動作は、各々のヒューズ素子218、220内に2つのヒューズ素子溶融機構を採用することによって達成される。ヒューズ素子218の1つの溶融機構は、高電流動作(または短絡故障)によく反応し、かつ、ヒューズ素子220の1つの溶融機構は、低電流動作(または過負荷故障)によく反応する。このように、ヒューズ素子218は、短絡ヒューズ素子と呼ばれることがあり、ヒューズ素子220は、過負荷ヒューズ素子と呼ばれることがある。
【0038】
ある考えられる実施形態では、過負荷ヒューズ素子220は、純粋なスズ(Sn)が、断片240のうちの1つの弱い箇所に近接した位置で、この例では銅(Cu)から製作されたヒューズ素子に適用されるメトカーフ効果(M効果)コーティング(図示せず)を含むことができる。過負荷加熱の間に、共晶材料を形成するために、SnおよびCuが一緒に拡散する。その結果、考えられる実施形態では、CuとSnの間のどこかの低い温度または約400℃の低い溶融温度が得られる。したがって、過負荷ヒューズ素子220およびM効果コーティングを含むセクション(複数可)240は、短絡ヒューズ素子218に影響を与えない電流条件に応答する。考えられる実施形態では、M効果コーティングは、過負荷ヒューズ素子220内の3つのセクション240のうちの1つのみの約半分に適用されてもよいが、M効果コーティングは、必要に応じてセクション240の追加のものに適用されてもよい。さらに、M効果コーティングは、弱い箇所から離れた適用可能な部分240に適用されるより大きなコーティングとは対照的に、別の実施形態では、弱い箇所の位置のみにスポットとして適用することができる。
【0039】
短絡ヒューズ素子218内のヒューズ素子の溶融断片を縮小することにより、エネルギーを通す、より低い短絡が達成される。これは通常、追加された抵抗と熱による定格電流容量を低下させることによってヒューズ定格に悪影響を与える。ケイ素化された砂フィラー材料232は、ヒューズ素子218からより効果的に熱を除去するので、さもなければ生じるであろう電流容量の損失を補償する。
【0040】
ケイ酸ナトリウムの石英砂への適用はまた、熱エネルギーの伝導をヒューズ素子の弱い箇所から離れて援助し、機械的応力およびひずみを減少させて、さもなければ生じる可能性のある負荷電流循環疲労を軽減する。換言すれば、ケイ素化されたフィラー232は、ヒューズ素子の弱い箇所でのそれらの動作温度を低下させることにより、ヒューズ疲労を緩和する。ケイ酸ナトリウムは、砂をヒューズ素子、端子およびハウジングに機械的に結合し、これらの材料間の熱伝導を増加させる。少ない熱は弱い箇所で生成され、機械的ひずみおよびヒューズの疲労の発現は、その結果遅くなるが、図1に示す電流プロファイルがヒューズ全体に適用されるEVの用途では、疲労によるヒューズ素子のヒューズ故障は、短絡状態または過負荷状態とは対照的に、ヒューズの寿命への実際的な制限となっている。
【0041】
記載されたヒューズ素子は、従来設計されたヒューズと同様に、金属で打ち抜かれた、または穴あきヒューズ素子を利用しており、上述した周期的電流負荷の種類を含むEVの用途には不利であることが見出された。このような打ち抜かれたヒューズ素子の設計は、銅または銀または銅合金から製作されたものであれ、ヒューズ素子の弱い箇所241に機械的なひずみおよび応力を不必要に導入し、その結果、より短い耐用年数となる傾向がある。この短いヒューズ耐用年数は、弱い箇所241におけるヒューズ素子の機械的疲労に起因する厄介なヒューズ動作の形で現れる。
【0042】
図5および図6に示すように、繰り返される高電流パルスは、ヒューズ素子218、220の亀裂伝播および故障に続く粒界崩壊から、金属疲労につながる。ヒューズ素子218、220の機械的制約は、打ち抜かれたヒューズ素子の設計および製造に固有のものであり、繰り返される負荷電流循環中に弱い箇所241の面内座屈を促進することが残念ながら判明している。この面内座屈は、隣接する金属粒子間に剥離または滑りが生じる金属粒界への損傷の結果である。このような弱い箇所241の座屈は、経時的に発生し、より高い一時的な電流パルスで加速され、より顕著になる。一時的な電流パルスの加熱冷却デルタが大きいほど、機械的影響が大きくなり、したがって、弱い箇所241の面内座屈変形が大きくなる。
【0043】
一時的な電流パルスの加熱効果によって引き起こされる金属の繰り返しの物理的機械的操作は、ひいては、金属ヒューズ素子の粒子構造の変化を引き起こす。これらの機械的操作は、金属の加工と呼ばれることもある。金属の加工は、隣接する粒子が近隣の粒子に強く拘束されている場合に、粒界の強化を引き起こす。金属の加工が過剰になると、粒子が互いに滑り落ち、滑り帯または滑り面と呼ばれるものが生じる、粒界での崩壊が結果的に生じる。粒子間のこの滑りおよび分離は、電流パルスの加熱効果を増加させることによって、疲労プロセスを加速する電気抵抗の局部的増加をもたらす。滑り帯の形成は、疲労亀裂が最初に開始されたところである。
【0044】
本発明者らは、ヒューズ素子218、220を形成するために、金属を打ち抜く、または穴をあける製造方法が、弱い箇所241を形成する打ち抜きプロセスがせん断および引き裂きの機械的なプロセスであるために、ヒューズ素子の弱い箇所241の全ての打ち抜かれた縁部に局所的な滑り帯を生じさせることを見出した。この引き裂きプロセスは、多くの滑り帯領域を有する弱い箇所241に予め応力を加える。滑り帯および疲労亀裂は、熱の影響により記載された座屈と相まって、最終的に、電気的故障状態と無関係である弱い箇所241の時ならぬ構造破損をもたらす。電力システム内の問題のある電気状態に関係しないこのような早期破壊モードは、ヒューズの厄介な動作と呼ばれることがある。一旦ヒューズ素子が故障すると、ヒューズに接続された回路は、ヒューズが交換されるまで再び動作しないので、そのような厄介な動作を回避することは、EV製造業者および消費者の両方の観点から、EV電力システムで非常に望ましい。したがって、実際EV車両および電力システムへの関心が高まるにつれて、ヒューズ疲労の影響は、車両設計での負の重要品質(CTQ)属性であるとみなされる。
【0045】
したがって、耐疲労である弱い箇所を含むヒューズ素子を製作するための新しい設計方法が非常に望ましい。可能なアプローチは、金属片からの弱い箇所を含むヒューズ素子の幾何形状を製作するためのレーザまたはウォータージェット切断方法の使用による打ち抜き応力を除去することであろう。所望の数の弱い箇所を含むヒューズ素子を製作する際に、切断のためのレーザ出力が使用され、ウォータージェットが冷却およびデブリ除去のために使用されるレーザとウォータージェットの両方の切断方法を組み合わせることができる。このような方法は、部分的には、上述のようなスリップバンドを有する弱い箇所241の予応力を排除することによって有利である。しかしながら、このような製作方法は、金属の加工による疲労および弱い箇所241での座屈を排除するものではない。したがって、このような方法は、打ち抜かれた金属ヒューズ素子に対して延長された耐用年数を提供することができるが、厄介なヒューズ動作が依然として生じ、他の解決策が望まれる。
【0046】
図7図11は、従来の打ち抜かれた弱い箇所ではなく、ワイヤ結合された弱い箇所を含む耐疲労ヒューズ素子アセンブリ300のそれぞれの製作段階を示す。ワイヤ結合された弱い箇所は、金属で打ち抜かれたヒューズ素子に共通する上述した弱い箇所および座屈の問題の事前応力を除去し、したがって、図1に示されるもののような周期的電流負荷を示す同じ動作条件において、厄介な動作を避ける。
【0047】
図7は、本発明の例示的な実施形態による耐疲労ヒューズ素子アセンブリ300を示す。ヒューズ素子アセンブリ300は、一連の導電性プレート302、304、306、308および310と、プレート302、304、306、308および310を相互接続する別個に設けられた導電性ワイヤ結合された弱い箇所素子312とを含む。プレート302、304、306、308および310は、上述したような導電性金属または合金から製作することができる。プレート302、304、306、308および310は、お互いに同一平面上の関係でほぼ整列しており、互いにわずかに離間載置され、導電性ワイヤで結合された弱い箇所素子312は、プレート302、304、306、308および310のうちの隣接するものの間に延びている。
【0048】
ワイヤ結合された弱い箇所素子312は、はんだ付け、ろう付け、溶接または当該技術分野で知られている他の技術を介して、それぞれのプレート302、304、306、308および310とは別々に提供されるが、機械的および電気的に接続されるワイヤを含む。図9に見られるように、各々のワイヤ結合された弱い箇所312は、プレートのうちの第1のものに接続された第1の端部314と、プレートのうちの第2のものに接続された第2の端部316と、第1および第2の端部314、316の間に延びるひずみ緩和ループ部分318と、を含むことができる。第1および第2の端部314、316は、各々のそれぞれのプレート上で概ね平面状に延びて、一方、ひずみ緩和ループ部分318は、端部314、316の間でアーチ状に延びる。結合位置の間のそれぞれのプレートに対するひずみ緩和ループ部分318の包含は、熱機械的サイクルによる座屈疲労を低減する。
【0049】
ワイヤ結合された弱い箇所素子312のワイヤは、細長い丸いまたは円筒形の形状または任意の所望の領域の一定のまたは均一の断面積を有する形態で提供されて、プレート302、304、306、308および310の間の低減された断面積の弱い箇所の所望の数を画定し、プレート302、304、306、308および310の間の可溶作用を促進する。ワイヤ結合された弱い箇所素子312のワイヤはまた、ときにはワイヤリボン材と呼ばれる矩形の断面積または形状を有する平坦な形状で提供されてもよい。いずれにせよ、ワイヤ結合された弱い箇所素子312の使用は、金属打ち抜きプロセスからの応力を除去する。ひずみ緩和部分318を含むワイヤ結合された弱い箇所素子312は、プレート302、304、306、308および310とは別々に製作され、さもなければ、上述したヒューズ素子218、220のような単一ヒューズ素子構造から必要とされる複雑なヒューズ素子形成ジオメトリの必要性が排除される。
【0050】
いくつかの実施形態では、ワイヤ結合された弱い箇所素子312およびプレート302、304、306、308および310は、ワイヤおよびプレート302、304、306、308および310の電気抵抗が独立するように異なる材料および寸法から製作されてもよい。考えられる実施形態では、銅プレート302、304、306、308および310と組み合わせてワイヤ結合された弱い箇所素子312用のアルミニウムワイヤが有利であると考えられる。アルミニウムの溶融温度は約660℃であり、銀よりも302℃低く、銅よりも425℃低い。アルミニウムのより低い溶融温度は、ワイヤ結合された弱い箇所素子312における短絡レトスルーエネルギー(時間およびピーク電流またはIt)を低下させることに等しい。さらに、アルミニウムがワイヤ結合された弱い箇所素子312のために利用されるときのヒューズ性能を向上させるために、アルミニウム抵抗率は、28.2nΩ・m(以下の比較表に見られるように銀の抵抗率の約1.8倍であるが、銅プレート302、304、306、308および310は素子抵抗を低く保つ。
【0051】
【表1】
【0052】
別の考えられる実施形態では、ワイヤ結合された弱い箇所素子312および銅プレート302、304、306、308および310内の銀ワイヤは、特定のタイプの電流制限ヒューズで利用される傾向のある全ての銀で打ち抜かれたヒューズ素子に対してコスト効果のある代替物を提供する。もちろん、さらなる変形が可能である。
【0053】
ワイヤ結合された弱い箇所素子312および銅プレート302、304、306、308および310に利用される材料にかかわらず、アセンブリ300の製作に使用され得る3つの基本的なワイヤ結合技術が存在する。ワイヤのサーモソニック結合は、ボールおよびウェッジタイプの取り付け方法のために、温度、超音波および低衝撃力を利用する。ワイヤの超音波結合は、超音波と低衝撃力とウェッジ法のみを利用する。ワイヤの熱圧着結合は、温度と高衝撃力とウェッジ法のみを利用する。
【0054】
示された例示的な実施形態では、隣接するプレート間の13個のワイヤ結合された弱い箇所素子312によって相互接続された5つの導電性プレート302、304、306、308および310がアセンブリ300に示されている。したがって、アセンブリ300は、アセンブリ300内に合計で52本のワイヤ結合された弱い箇所素子312のために、プレート302、304、306、308および310の間の4つの位置のそれぞれにおいて各々のプレートの間の13本のワイヤ結合された弱い箇所素子312を横切るアーク分割を伴う高電圧EV電力システムの用途に非常に適している。しかしながら、他の実施形態では、プレート302、304、306、308および310の数および/またはワイヤ結合された弱い箇所312の数を、隣接するプレート間で代替的に利用することができる。プレート302、304、306、308および310の例示的な形状が示されているが、他の形状も可能である。また、各々のプレート302、304、306、308および310は、図示の例では概して平面であるが、別の実施形態では、プレート302、304、306、308および310は、上述したヒューズ素子218、220と同様に平面外に曲がったセクションを含む。
【0055】
図8および図9に示すように、ヒューズ素子アセンブリ300はまた、各々のプレートの端縁に適用され、ワイヤ結合された弱い箇所素子312の端部314、316を密閉するシール材料320を含む。考えられる実施形態におけるシール材料312は、上記のようなシリコーンであってもよい。シール材料320は、アセンブリ300に気密シールおよびアークバリア特性を提供する。気密シールは、ワイヤ結合された接続部のための腐食および電解問題、ならびにワイヤ結合された弱い箇所素子312について上述したようなアルミニウムワイヤが利用される場合の特別な利益であるジョイント金属の酸化の回避を回避する。ヒューズが動作するときに、ACおよびDCアークの両方のためにシール材料320によってアーククエンチングバリアが設けられる。
【0056】
別の考えられる実施形態では、シール材料320は、代替的に、ワイヤ結合された弱い箇所素子312の端部314、316をそれぞれのプレート302、304、306、308および310に接続するために使用されるはんだであってもよい。すなわち、場合によっては、はんだは、アセンブリ内のワイヤ結合された弱い箇所素子312の端部314、316を効果的にシールすることができる。はんだが純粋なスズである場合、銅ワイヤ結合された弱い箇所素子312と共に使用される場合、それはシールおよびMスポット材料になることもできる。しかしながら、M効果材料は、さらに他の実施形態では必要に応じて独立して適用することができ、はんだ付け材料を介して達成する必要はないことが理解される。
【0057】
また、いくつかの実施形態では、ワイヤ結合された弱い箇所素子312の端部314、316に、はんだとシリコーンのようなアークバリア材料の両方を組み合わせて適用して、シール材料320を集合的に画定することも考えられる。すなわち、はんだ層を覆って、はんだがシールとして作用し、シリコーンがアーククエンチング材料および障壁として作用するように、シリコーン層を適用することができる。電力システムのヒューズの異なる仕様に適合するために、様々な程度のシールおよびアークバリア特性を提供するための多くの他の選択肢が可能である。
【0058】
図10および図11に示すように、石砂のようなアーククエンチング媒体322もシール材料320およびワイヤ結合された弱い箇所素子312のループ部分318の上に設けられる。示された例示的な実施形態では、隣接するプレートの上にのみ延びているシール材料320とは異なり、アーククエンチング媒体322は、プレートの上方および下方に延びる。アーククエンチング媒体322は、ワイヤ結合された弱い箇所素子312のループ部分318のヒートシンク、アーククエンチング、および機械的支持を含むいくつかの機能を提供する。石またはケイ素化された砂は、s部分318ワイヤの弱い箇所を機械的に支持し、石砂は、石英珪砂とケイ酸ナトリウムとメラミン粉末とを混合して特別なアーククエンチング能力を付与することができる。
【0059】
アーククエンチング媒体322は、半固体コンシステンシーを有する化合物または溶液としてヒューズ素子アセンブリ300に適用することができ、その結果、アーククエンチング媒体322の一部分の上方から適用されると、プレート間の開口部から滲出し、プレートの底側部に接触してワイヤ結合された弱い箇所312を完全に取り囲む。しかしながら、図10および図11に示すように、アーククエンチング媒体322は、ヒューズ素子アセンブリ全体を取り囲まない。代わりに、図10に見られるように、プレート302、304、306、308および310の一部は、ワイヤ結合されたヒューズ素子312の間のアーククエンチング媒体によって全く覆われていない。このようなアーククエンチング媒体312の目標使用は、コストを節減するだけでなく、ヒューズ素子アセンブリを含むヒューズの重量を低減する。
【0060】
ケイ素化された媒体は、ヒューズ素子218、220について上述したように、ヒューズ素子アセンブリの改善された熱性能のために、ワイヤ結合された弱い箇所312に結合されてもよい。アーククエンチング媒体312内に含まれるメラミン粉末は、電気的故障状態に応答してヒューズが開くので、さらなる性能改善のためにアーク消弧ガスを生成する。
【0061】
図12図16は、ヒューズ素子アセンブリ300を製作するためのバッチ製造プロセスの製作段階を示す。
【0062】
図12に示すように、銅などの導電性金属のリードフレーム400は、図示のように多数の長方形の開口部402および細長いスロット404で打ち抜かれた金属シートから構築される。
【0063】
図13に示すように、ワイヤ結合された弱い箇所312の列は、図示のようにリードフレーム400上の細長いスロット404の所望のものを横切って接続されている。上述した技術のいずれかを使用して、ワイヤ結合された弱い箇所312に接続することができる。
【0064】
図14に示すように、シール材料320の列が分配され、図示のようにリードフレーム400上のワイヤ結合された弱い箇所312を覆うように適用される。ワイヤ結合されたジョイントのシール材料320は、ヒューズが動作または開放するときにアーククエンチングバリアを提供すると共に、そうでなければ起こり得る酸化および腐食を防止または低減する気密シールを生成する。
【0065】
図15に示されているように、アーククエンチング媒体322の列は、図示されているように、リードフレーム400上のシール材料320の上に分配されて適用される。
【0066】
図16に示すように、開口部402の間の金属材料を除去することによって、ヒューズアセンブリ300を単一化するために、リードフレーム400が打ち抜かれる(図12~15)。図示の例では、15個のヒューズ素子アセンブリ300が、リードフレーム400上で実行されるバッチプロセスで形成される。
【0067】
図17は、ヒューズの製作のために準備された完成したヒューズ素子アセンブリ300を示す。図18は、ハウジング202の内部に2つのヒューズ素子アセンブリ300を含むヒューズ500と、上述した素子204、206、224、226および228とを示している。ヒューズ500は、ヒューズ300と同様に、上述のヒューズ200のような疲労による厄介な動作をすることなく、EV電力システムに適し、図1の駆動プロファイルに耐える500V、150A定格のヒューズを提供するように技術化することができる。ヒューズ500は、記載されたヒューズ200と同様の寸法で製作されてもよく、EV電力システムの用途に対して50%の小型化を伴う高電圧電力ヒューズを提供する。
【0068】
本発明の利益および利点は、ここで開示された例示的な実施形態に関して十分に説明されていると考えられる。
【0069】
ハウジングと、ハウジングから延びる第1および第2の導電性端子と、第1および第2の端子間に接続された少なくとも1つの耐疲労ヒューズ素子アセンブリとを含む電力ヒューズの実施形態が開示されている。ヒューズ素子アセンブリは、第1および第2の導電性端子をそれぞれ接続する少なくとも第1の導電性プレートおよび第2の導電性プレートと、第1の導電性プレートと第2の導電性プレートとを相互接続する複数の個別に設けられたワイヤ結合された弱い箇所と、を含む。
【0070】
任意選択で、第1の導電性プレートおよび第2の導電性プレートは、第1の導電性材料から製作することができ、ワイヤ結合された弱い箇所は、第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料から製作することができる。第1の導電性材料は、銅であってもよく、第2の導電性材料は、アルミニウムであってもよい。代替的に、第2の導電性材料は、銀であってもよい。
【0071】
電力ヒューズは、任意選択で、それぞれの第1の導電性プレートおよび第2の導電性プレートに接続されたワイヤ結合された弱い箇所のそれぞれの端部を覆うシーリング要素を含む。シーリング要素は、はんだ、Mスポット材またはアークバリア材のうちの少なくとも1つとすることができる。アーククエンチング媒体はまた、シーリング要素を覆うことができる。アーククエンチング媒体は、珪砂または硅石を含んでもよく、また、メラン粉末を含んでもよい。第1の導電性プレートおよび第2の導電性プレートの一部は、アーククエンチング媒体によって被覆されてなくてもよい。


【0072】
少なくとも1つの耐疲労ヒューズ素子アセンブリは、各々少なくとも第1の導電性プレートと第2の導電性プレートとを有する2つの耐疲労ヒューズ素子アセンブリと、第1の導電性プレートと第2の導電性プレートとを相互接続する複数のヒューズ素子弱い箇所と、を含むことができる。ヒューズの定格電圧は、少なくとも500Vであってもよい。ヒューズの定格電流は、少なくとも150Aであってもよい。第1および第2の導電性端子は、第1および第2の端子ブレードを含む。ハウジングは、円筒状であってもよい。
【0073】
少なくとも1つの第1の導電性プレートおよび第2の導電性プレートは、5つの導電性プレートのそれぞれものの間に延びる複数のワイヤ結合された弱い箇所を有する5つの導電性プレートを含むことができる。複数のワイヤ結合された弱い箇所の各々は、ひずみ緩和ループ部分を含むことができる。複数のワイヤ結合された弱い箇所は、13の結合された弱い箇所を含むことができる。複数のワイヤ結合された弱い箇所は、それぞれ丸みを帯びたワイヤを含む。第1の導電性プレートと第2の導電性プレートは、同一平面上に配置することができ、複数のワイヤ結合された弱い箇所は、第1の導電性プレートと第2の導電性プレートの平面外に延びることができる。
【0074】
この記載された説明は、最善の様式を含めて本発明を開示するために実施例を使用し、また当業者が本発明を実践することを可能にするためにも実施例を使用し、それには任意の装置またはシステムを作製しかつ使用することおよび組み込まれた方法を実行することが含まれる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思い付く他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文字通りの言葉と異ならない構造的要因を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字通りの言葉との実質的な相違がない同等の構造的要因を含む場合、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されている。

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