(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】仮設構造物の安定化構造、根がらみの設置方法
(51)【国際特許分類】
E04G 5/16 20060101AFI20220214BHJP
E04G 7/14 20060101ALI20220214BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
E04G5/16 A
E04G7/14 A
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2019023634
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅一
(72)【発明者】
【氏名】幡野 康宏
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-110369(JP,A)
【文献】特開2012-052366(JP,A)
【文献】特開2014-190070(JP,A)
【文献】特開2018-066118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/16
E04G 7/14
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場や支保工などの仮設構造物の安定化構造であって、
設置面と接する底部と、前記底部から上方に伸びて、仮設構造物を構成する鉛直材を取付可能なネジ棒と、前記ネジ棒に螺合して上下動可能な回転体とを少なくとも有する、複数のジャッキベースと、
各ジャッキベースに取り付け可能な、連結金具と、
前記連結金具を介して配置する、根がらみと、
を少なくとも具備し、
前記回転体は、
前記回転体の側周に少なくとも一箇所以上、凹部を形成してあり、
前記連結金具は、
前記回転体の側周を挟みつつ、前記凹部に係合可能な、取付部と、
前記取付部の背面側に設け、根がらみを把持可能な、把持部と、
を少なくとも有することを特徴とする、
仮設構造物の安定化構造。
【請求項2】
足場や支保工などの仮設構造物における根がらみの設置方法であって、
設置面と接する底部と、前記底部から上方に伸びて仮設構造物を構成する鉛直材を取付可能なネジ棒と、前記ネジ棒に螺合して上下動可能な回転体とを少なくとも有する、ジャッキベースを設置する工程と、
別部材のハンドルを用いて前記回転体を螺合して、該回転体を所定の位置に調整する工程と、
前記ハンドルを前記回転体から外し、前記回転体に連結金具を取り付ける工程と、
複数の回転体に対し、連結金具を介して根がらみを配置する工程と、
を少なくとも含
み、
前記回転体において、前記ハンドルの取付機構と、前記連結金具の取付機構を兼用してあることを特徴とする、
仮設構造物における根がらみの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場などで用いる足場や支保工などの仮設構造物における安定化構造等に関し、より詳しくは、仮設構造物の設置面近傍に配置する根がらみの設置に特徴を持たせた発明に関する。
【背景技術】
【0002】
足場や支保工などの仮設構造物の設置面近傍には、支柱や建地材などの鉛直材を複数スパンにわたって連結する根がらみを設けることが一般的である。
根がらみは、鉛直材に生じる風荷重などの水平力を他の鉛直材に分散させる効果や、鉛直材の不等沈下を防止する効果などを有する。
根がらみは、できる限り低い位置に設置することが求められており、鉛直材との連結態様として、以下の態様が知られている。
【0003】
[従来態様1]
図6に示すように、ジャッキベースaに取り付ける鉛直材bに対し、別途直交クランプcを介して根がらみdを取り付けたもの。
[従来態様2]
以下の特許文献1に示すように、根がらみの端部に差込み片を設け、建地側に前記差込み片の受け部を形成したもの。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の根がらみの設置態様では、以下に記載する問題のうち、少なくとも何れか1つの問題を有する。
(1)根がらみの設置高さの低減が、鉛直材の下端近傍までに限られる。
(2)仮設構造物との接触や、地震や風などによる振動などの外部要因を受けて、ジャッキベースの回転体が自然に緩んで下方へと回転してしまったとしても、根がらみが鉛直材の高さを一定に維持しつづけるため、鉛直材と回転体との間が離れてしまい、仮設構造物の荷重がジャッキベースへと伝達されなくなってしまう。
(3)仮設構造物を仮囲いの骨組として使用するべく、鉛直材に別途パネル材などを取り付ける場合に、従来鉛直材にクランプしていた根がらみや、回転体のハンドル部分がパネル材と干渉してしまう懸念がある。
【0006】
そこで、本願発明は、ジャッキベースに根がらみを取り付けることが可能な手段の提供を少なくとも目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、足場や支保工などの仮設構造物の安定化構造であって、設置面と接する底部と、前記底部から上方に伸びて、仮設構造物を構成する鉛直材を取付可能なネジ棒と、前記ネジ棒に螺合して上下動可能な回転体とを少なくとも有する、複数のジャッキベースと、各ジャッキベースに取り付け可能な、連結金具と、前記連結金具を介して配置する、根がらみと、を少なくとも具備し、前記回転体は、前記回転体の側周に少なくとも一箇所以上、凹部を形成してあり、前記連結金具は、前記回転体の側周を挟みつつ、前記凹部に係合可能な、取付部と、前記取付部の背面側に設け、根がらみを把持可能な、把持部と、を少なくとも有することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、足場や支保工などの仮設構造物における根がらみの設置方法であって、設置面と接する底部と、前記底部から上方に伸びて仮設構造物を構成する鉛直材を取付可能なネジ棒と、前記ネジ棒に螺合して上下動可能な回転体とを少なくとも有する、ジャッキベースを設置する工程と、別部材のハンドルを用いて前記回転体を螺合して、該回転体を所定の位置に調整する工程と、前記ハンドルを前記回転体から外し、前記回転体に連結金具を取り付ける工程と、複数の回転体に対し、連結金具を介して根がらみを配置する工程と、を少なくとも含み、前記回転体において、前記ハンドルの取付機構と、前記連結金具の取付機構を兼用してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち少なくとも何れか1つの効果を得ることができる。
(1)従来、鉛直材に取り付けていた根がらみをより低い位置に設置できるため、仮設構造物の安定化に寄与する。
(2)仮設構造物の構築後に何らかの理由で回転体が緩んで自然に回転しようとしても、連結金具によって把持される根がらみでもって当該回転動作が規制されるため、仮設構造物の構築後の回転体の位置ズレを防止することができる。その結果、回転体の位置(高さ)が保持されるため、鉛直材と回転体との接触が常に保たれることとなり、仮設構造物の荷重を確実にジャッキベースへと伝達することができる。
(3)ジャッキベースの回転体から、当該回転体の回転動作に用いるハンドルが除かれ、さらにジャッキベース自体に根がらみを取り付ける態様となったため、鉛直材に対するその他の取付部材の干渉要素が少なくなり、仮設構造物の設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ジャッキベースおよび連結金具の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
<1>全体構成(
図1)
図1に、本発明に係る仮設構造物の構築状態を示す。
本発明に係る仮設構造物は、仮設構造物の設置面に配置するジャッキベースAと、前記ジャッキベースAに取り付ける連結金具Bと、前記連結金具Bを介してジャッキベースA間に配置する根がらみCとを少なくとも具備してなる。
また、ジャッキベースAには、仮設構造物を構成する建地材や支柱などの鉛直方向を長手方向とする鉛直材Dを上方から取り付けている。
【0012】
<2>ジャッキベース(
図2)
ジャッキベースAは、仮設構造物の最下部に配置する部材である。
ジャッキベースAは、通常、設置面に接する底部10と、前記底部10から上方に伸びるネジ棒20と、前記ネジ棒20に螺合して、前記ネジ棒20に差し込んだ鉛直材Dを下から支持しながら、底部10と鉛直材Dの下端との離隔距離を調整可能な回転体30とを具備して構成する。
このうち、回転体30の詳細について以下説明する。
【0013】
<3>回転体(
図2)
回転体30は、底部10と鉛直材Dの下端との離隔距離を調整するための部材である。
設置面が、傾斜地であったり、不陸が大きかったりする場合には、ジャッキベースAの上方に設ける仮設構造物の水平を維持するべく、回転体30の位置を調整する作業を行う。
従来の回転体30は、ネジ棒20上の螺合動作を行うために、側周面から張り出した持ち手部分を常設していることが一般的であるが、本発明では、前記の持ち手部分を常設せずに、任意に脱着自在可能な構成としている。
本実施例では、回転体30の側周面に凹部31を形成している。
この凹部31に係止可能に構成した別部材のハンドルEを用いて、回転体30の螺合動作を可能とする。
【0014】
<3.1>凹部の形態について
本発明では特に凹部31の数や位置を限定するものではない。
なお、本実施例では、凹部31を回転体30の側周面において90°ずつ間隔を空けて4箇所配置している。これは、ハンドルEを用いた螺合動作を行う際に、適宜ハンドルEを係止する凹部31を入れ換えながら作業を行うことで、作業効率を向上させるためである。
【0015】
<3.2>凹部の兼用について
前記した凹部31は、後述する連結金具Bの取付にも使用可能と態様としてもよい。
したがって、凹部31の数が多ければ多いほど、連結金具Bの取付位置、すなわち、回転体30の位置に対する根がらみCの長手方向を柔軟に設定することができることとなる。ただし、ジャッキベースAにおいて回転体30の一回転に対する上下動のピッチは僅かであるため、本実施例のように凹部31を90°ずつ4箇所設けておけば、根がらみCの設置方向を規定したときに、ジャッキベースAが設置面から離れてしまうなどの支障はほぼ生じない。
【0016】
<4>連結金具(
図2)
連結金具Bは、ジャッキベースAに取り付けることで、鉛直材Dよりも低い位置に根がらみCを取り付けるための部材である。
本実施例では、連結金具Bは、ジャッキベースAの回転体30に取り付け可能な取付部40と、根がらみCを把持可能な把持部50と、を有して構成する。
【0017】
<5>取付部(
図2)
取付部40は、ジャッキベースAの回転体30に取り付けるための部位である。
本実施例では、取付部40を、平面視して離隔状態で対向配置する一対の腕部41を有する略コ字状を呈する部材で構成している。
一対の腕部41の離隔距離は、前記した回転体30の直径よりも大きく構成し、回転体30の側周面を一対の腕部41で狭むように位置させることができる。
一方の腕部41には、内側に突出する突起42を設け、他方の腕部41には、内側への突出長を調整可能に螺合したボルト43を設けている。
突起42およびボルト43を、前記回転体30に設けた、略180°間隔を空けた二箇所の凹部31に係合することで、回転体30に対し、連結金具Bを固定することができる。
【0018】
<6>把持部(
図2)
把持部50は、根がらみCを把持するための部材である。
把持部50は、鉛直材Dやネジ棒20と略直交するように配置する根がらみCを取り付け可能であれば、如何なる態様であってもよい、
本実施例では、把持部50に、取付部40の背面側に固定した単管クランプを用いている。
【0019】
<7>使用方法(
図3)
図を参照しながら、仮設構造物の設置において根がらみCを設置するまでの手順を説明する。
(1)ジャッキベースの設置(
図3(a))
まず、所定間隔を空けながらジャッキベースAを配置する。
(2)回転体の位置調整(
図3(b))
ハンドルEを回転体30に設けた凹部31に係止して回転動作を行い、各回転体30の高さを調整する。
(3)連結金具の設置(
図3(c))
回転体30をハンドルEから外し、連結金具Bを回転体30の凹部31にはめ込んでボルト43の締結を進めて固定する。
(4)根がらみの設置(
図3(d))
各連結金具Bを介して根がらみCを取り付ける。
【0020】
<7.1>根がらみを利用した回転体の位置調整
なお、前記(2)の工程において、全ての回転体30の高さを調整する必要はなく、一部の回転体30について位置調整を行い、前記(4)の工程で前記一部の回転体30に取り付けた根がらみCの解放端側の位置を参考にして、その余の回転体30の位置調整や連結金具Bの設置を行ってもよい。
【0021】
<8>作用・効果(
図4)
図を参照しながら、本発明を適用した仮設構造物の作用効果について説明する。
(1)仮設構造物の安定化(
図4(a))
根がらみCを、従来の鉛直材Dに設置していた態様より低い位置に設置できるため、仮設構造物の安定化に寄与する。
(2)回転体30の拘束・荷重伝達性の維持(
図4(a))
根がらみCは1本当たり、最低三箇所の回転体30(ジャッキベースA)と連結する態様で設置される。そのため、仮設構造物との接触や、地震や風などによる振動などの外部要因を受けて回転体30が緩んで自然に回転しようとしても、連結金具Bによって把持される根がらみCでもって当該回転動作が規制されるため、仮設構造物の構築後の回転体30の位置ズレを防止することができる。
さらに、回転体30の位置(高さ)を保持することができるため、鉛直材Dと回転体30との接触が常に保たれることとなるため、鉛直材Dと回転体30とが離れてしまうことによる、仮設構造物の荷重がジャッキベースAに伝達されない問題が生じることなく、仮設構造物全体の荷重伝達性を維持することができる。
(3)鉛直材Dに別部材を配置する場合の干渉防止(
図4(b))
仮設構造物を仮囲いとして使用するべく、鉛直材Dに別途パネル材などを取り付ける場合に、従来、鉛直材Dにクランプしていた根がらみCや、回転体30のハンドルE部分が干渉する懸念があったところ、ジャッキベースAの回転体30からハンドルEが除去され、さらにジャッキベースAに根がらみCを取り付ける態様となったため、鉛直材Dに対する取付部40材の干渉要素が少なくなり、仮設構造物の設計の自由度が向上する。
【実施例2】
【0022】
本発明に係るジャッキベースの回転体の別実施例について説明する。
図5に示すように、本実施例に係るジャッキベースAは、回転体30の側周面に設けた等間隔に4箇所設けた凹部31に雌ネジ部311を形成し、当該雌ネジ部311に螺合可能な雄ネジ部60を設けたハンドルEを二箇所設けて、従来の回転体30と等しい外観を構成している。
この場合、実施例1で使用したハンドルEは不要となる。
【符号の説明】
【0023】
A ジャッキベース
10 底部
20 ネジ棒
30 回転体
31 凹部
311 雌ネジ部
B 連結金具
40 取付部
41 腕部
42 突起
43 ボルト
50 把持部
C 根がらみ
D 鉛直材
E ハンドル
60 雄ネジ部
a ジャッキベース
b 鉛直材
c 直交クランプ
d 根がらみ