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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】ホース
(51)【国際特許分類】
   A62C 33/00 20060101AFI20220214BHJP
   F16L 11/02 20060101ALI20220214BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A62C33/00 C
F16L11/02
F16L11/12 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019089765
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020185059
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2019-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】得能 進
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 政城
(72)【発明者】
【氏名】水谷 誠惇輝
【合議体】
【審判長】金澤 俊郎
【審判官】山本 信平
【審判官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-140146(JP,A)
【文献】特開2001-193874(JP,A)
【文献】特開2004-132443(JP,A)
【文献】特開2017-189239(JP,A)
【文献】特開2017-86698(JP,A)
【文献】特開2002-340241(JP,A)
【文献】特開平7-55069(JP,A)
【文献】特開2017-206788(JP,A)
【文献】特開2016-160018(JP,A)
【文献】特開2006-289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C33/00
F16L11/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物からなるジャケットと該ジャケットの内周面の全周を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面の全周を被覆する外側被覆層とを備えた3層構造を有し、前記ジャケットの外周面に蓄光性を有する蓄光ラインまたは反射性を有する反射ラインが設けられ、前記蓄光ラインまたは前記反射ラインがホース長さ方向に沿って延在し、前記外側被覆層が透明の樹脂からなり、前記内側被覆層の厚さAと前記外側被覆層の厚さBとが0.5≦A/B≦2.0の関係を満たし、前記外側被覆層の厚さBが0.2mm~3.0mmの範囲にあり、前記ホースの内径が100mm~450mmの範囲であることを特徴とするホース。
【請求項2】
織物からなるジャケットと該ジャケットの内周面の全周を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面の全周を被覆する外側被覆層とを備えた3層構造を有し、前記ジャケットの外周面に蓄光性を有する蓄光ラインまたは反射性を有する反射ラインが設けられ、前記蓄光ラインまたは前記反射ラインがホース長さ方向に沿って延在し、前記外側被覆層が透明の樹脂からなり、前記内側被覆層および前記外側被覆層が同種の樹脂からなり、前記ホースの内径が100mm~450mmの範囲であることを特徴とするホース。
【請求項3】
前記ジャケットの外周面に複数本の前記蓄光ラインまたは前記反射ラインが配置され、前記蓄光ラインまたは前記反射ラインがホース周方向に間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のホース。
【請求項4】
前記蓄光ラインまたは前記反射ラインの幅の合計が前記ホースの周囲長の1%~80%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のホース。
【請求項5】
前記反射ラインが再帰反射性を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のホース。
【請求項6】
前記内側被覆層の厚さAと前記外側被覆層の厚さBとが0.5≦A/B≦2.0の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載のホース。
【請求項7】
前記内側被覆層および前記外側被覆層が同種または異種の樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のホース。
【請求項8】
前記織物が、ホース長さ方向に延在する綾織部および杉綾織部がホース周方向に交互に配置されてなり、前記綾織部が順綾目構造または逆綾目構造を有し、前記杉綾織部が順綾目構造および逆綾目構造を有し、前記杉綾織部の経糸が第1の糸および第2の糸からなり、前記第1の糸および前記第2の糸の少なくとも一方が蓄光性または反射性を有し、前記杉綾織部が前記蓄光ラインまたは前記反射ラインをなし、前記第2の糸は前記第1の糸および前記綾織部の経糸とは色が異なる着色糸であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のホース。
【請求項9】
前記第1の糸は前記綾織部の経糸とは色が同じ糸であることを特徴とする請求項に記載のホース。
【請求項10】
前記第1の糸は前記綾織部の経糸とは色が異なる着色糸であることを特徴とする請求項に記載のホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホースに関し、詳しくは、視認性を向上させながら、耐摩耗性を改善すると共に、取扱い性を改善したホースに関する。
【背景技術】
【0002】
織物からなるジャケットを有するホースにおいて、ホースの視認性を向上させるため、ジャケットを構成する糸として、蓄光性または反射性を有する糸が用いられている。しかしながら、このような蓄光性または反射性を有する糸は、通常のジャケットに用いられるポリエステル等の糸に比べて耐摩耗性が低く、長期間の使用によって擦り減ったり、擦り切れたりすることがあるため、ホース全体として耐久性が低下するという問題がある。また、ジャケットの外表面に蓄光材と反射材を含む樹脂層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような樹脂層は表出しているため、長期間の使用によって擦り減ることがあり、ホース全体として耐久性の観点で懸念がある。
【0003】
ジャケットが表出しているホースの場合、使用時にホースの外表面に水が付着し、その水が付着した状態のままであるとカビの発生が危惧される。そのため、使用後にホースを乾燥させることが必要であるが、即時に使用することに対しては不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-150522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、視認性を向上させながら、耐摩耗性を改善すると共に、取扱い性を改善したホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するホースは、織物からなるジャケットと該ジャケットの内周面の全周を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面の全周を被覆する外側被覆層とを備えた3層構造を有し、前記ジャケットの外周面に蓄光性を有する蓄光ラインまたは反射性を有する反射ラインが設けられ、前記蓄光ラインまたは前記反射ラインがホース長さ方向に沿って延在し、前記外側被覆層が透明の樹脂からなり、前記内側被覆層の厚さAと前記外側被覆層の厚さBとが0.5≦A/B≦2.0の関係を満たし、前記外側被覆層の厚さBが0.2mm~3.0mmの範囲にあり、前記ホースの内径が100mm~450mmの範囲であることを特徴とする。
また、本発明のホースは、織物からなるジャケットと該ジャケットの内周面の全周を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面の全周を被覆する外側被覆層とを備えた3層構造を有し、前記ジャケットの外周面に蓄光性を有する蓄光ラインまたは反射性を有する反射ラインが設けられ、前記蓄光ラインまたは前記反射ラインがホース長さ方向に沿って延在し、前記外側被覆層が透明の樹脂からなり、前記内側被覆層および前記外側被覆層が同種の樹脂からなり、前記ホースの内径が100mm~450mmの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るホースは、織物からなるジャケットとジャケットの内周面の全周を被覆する内側被覆層とジャケットの外周面の全周を被覆する外側被覆層とを備えた3層構造を有し、ジャケットの外周面に蓄光性を有する蓄光ラインまたは反射性を有する反射ラインが設けられ、蓄光ラインまたは反射ラインはホース長さ方向に沿って延在している。例えば、ジャケットの外周面に蓄光ラインが形成された場合、特に夜間や暗い建物内において、蓄光ラインが蓄光性を発揮して発光することによってホースの視認性を高めることができる。また、ジャケットの外周面に反射ラインが形成された場合、ホースに光が当たった際に反射ラインが反射性を発揮して照射された光を反射することによってホースの視認性を高めることができる。上述したいずれの場合においても、外側被覆層が透明の樹脂から構成されていることにより、各ラインの蓄光性または反射性を妨げることがないため、各ラインの有する効果を十分に得ることができる。更に、ジャケットの外表面が樹脂でコーティングされているので、ジャケットの外表面に表出した蓄光ラインまたは反射ラインの耐摩耗性を改善し、ホース全体としての耐久性を向上させることができる。また、ジャケットの外表面が樹脂でコーティングされているので、ホースの外表面に織物が表出している従来のジャケットに比べて取扱い性に優れている。即ち、ホースの外表面が水を吸収してホース自体が重くなることがなく、ホースの乾燥作業やそれによって使用不可となる時間を短縮することができ、更には、カビの発生を抑制することができる。
【0008】
本発明のホースにおいて、ジャケットの外周面に複数本の蓄光ラインまたは反射ラインが配置され、、これら蓄光ラインまたは反射ラインはホース周方向に間隔をおいて配置されていることが好ましい。ジャケットの外周面に複数本の蓄光ラインまたは反射ラインが形成されるので、ホースの視認性を効果的に改善することができる。
【0009】
蓄光ラインまたは反射ラインの幅の合計はホースの周囲長の1%~80%であるとよい。これにより、蓄光ラインまたは反射ラインの視認性を高くすることができる。
【0010】
反射ラインは再帰反射性を有することが好ましい。再帰反射性を有する反射ラインを設けた場合、反射ラインの視認性を高めることができる。
【0011】
内側被覆層の厚さAと外側被覆層の厚さBとは0.5≦A/B≦2.0の関係を満たすとよい。これにより、ホースの耐久性を効果的に改善することができる。
【0012】
内側被覆層および外側被覆層を同種または異種の樹脂から構成するとよい。更に、ホースの口径を38mm~450mmの範囲とするとよい。
【0013】
織物は、ホース長さ方向に延在する綾織部および杉綾織部がホース周方向に交互に配置されてなり、綾織部は順綾目構造または逆綾目構造を有し、杉綾織部は順綾目構造および逆綾目構造を有し、杉綾織部の経糸は第1の糸および第2の糸からなり、第1の糸および第2の糸の少なくとも一方が蓄光性または反射性を有し、杉綾織部は蓄光ラインまたは反射ラインをなし、第2の糸は第1の糸および綾織部の経糸とは色が異なる着色糸で構成するとよい。これにより、織物の模様として逆V字形が形成されるので耐久性に優れており、長時間にわたり逆V字形を視認することができる。特に、第1の糸および第2の糸の少なくとも一方が蓄光性または反射性を有し、杉綾織部は蓄光ラインまたは反射ラインをなし、第2の糸は第1の糸および綾織部の経糸とは色が異なる着色糸で構成することによって、逆V字形の視認性が向上し、帰還路の方向を瞬時、かつ確実に判断することができる。
【0014】
第1の糸は綾織部の経糸とは色が同じ糸にすることができる。或いは、第1の糸は綾織部の経糸とは色が異なる着色糸にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態からなるホースの一例を示す斜視図である。
図2図1のホースの一部を拡大して示す断面図である。
図3】本発明の実施形態からなるホースの変形例を示す斜視図である。
図4図3のホースにおける織物の長さ方向の一部を示す展開図である。
図5図3のホースにおける織物の杉綾織部を含む織組織を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1および図2は本発明の実施形態からなるホースを示すものである。
【0017】
図1に示すように、本発明のホース1は、筒状に織成した織物10からなるジャケット2と、ジャケット2の内周面および外周面を被覆する被覆層3とを有しており、全体として3層構造である。ホース1の内周面および外周面は、被覆層3によって織物10の織組織に基づく凹凸が少なく、滑らかに形成されており、通水時の圧力損失が低減される。
【0018】
被覆層3は、ジャケット2の内周面を被覆する内側被覆層3Aと、ジャケット2の外周面を被覆する外側被覆層3Bとを有する。内側被覆層3Aはゴムまたは合成樹脂からなり、外側被覆層3Bは合成樹脂からなる。ここで、外側被覆層3Bを構成する合成樹脂は透明である。内側被覆層3Aまたは外側被覆層3Bが合成樹脂からなる場合、その色は特に限定されるものではないが、無着色であることが好ましい。
【0019】
また、内側被覆層3Aおよび外側被覆層3Bは、製造上の観点から同種の材料で構成されることが好ましいが、異種の材料で構成することもできる。特に、内側被覆層3Aおよび外側被覆層3Bを同種の合成樹脂で構成し、その合成樹脂としてポリウレタンを用いることが好ましい。
【0020】
ジャケット2を構成する織物10は、ホース長さ方向に配される経糸5と、ホース長さ方向中心軸の周りに螺旋状に配される緯糸6により織成される。織物10として、例えば綾織物を用いることができる。図2において、織物10は、緯糸6のホース径方向外側においてホース周方向に密に配置された複数本の経糸5と、緯糸6のホース径方向内側においてホース周方向に間欠的に配置された複数本の経糸5からなる織組織を有している。緯糸6は織物10の外表面に露出していない。なお、織物10の織組織は、これに限定されるものではなく、他の織組織を有していてもよい。
【0021】
織物10を構成する経糸5は、その少なくとも一部が蓄光性または反射性を有している。経糸5に蓄光性または反射性を付与する手段は、特に限定されるものではない。例えば、蓄光材または反射材を練り込んだ糸や、糸表面に蓄光塗料または反射塗料を塗布した糸を用いることで、糸に蓄光性または反射性を付与することができる。なお、経糸5は、蓄光性と反射性の双方を有するものであってもよい。
【0022】
上述した織物10からなるジャケット2の外周面には、複数本のライン4(蓄光ラインまたは反射ライン)がホース長さ方向に沿って延在している。これらライン4は、蓄光性または反射性を有する経糸5がホース周方向に近接して配置することにより形成される。ライン4は、ホース1の視認性を向上させるために、好ましくはホース周方向に2本~6本、より好ましくは4本~6本が配置されているとよい。また、ライン4は、ホース周方向に間隔をおいて配置されており、好ましくは互いに等間隔に配置されているとよい。
【0023】
蓄光性または反射性を有する経糸5は着色糸であってもよい。蓄光性または反射性を有する経糸5に着色糸を用いた場合、蓄光性または反射性を有しない経糸5の色は、特に限定されるものではないが、蓄光性または反射性を有する経糸5の色に対し明度および/または彩度が異なる色としてもよい。着色の手段は特に制限されるものではなく、染料、顔料、蛍光剤等を用いて着色することができる。
【0024】
上述した実施形態では、織物10を構成する経糸5の少なくとも一部が蓄光性または反射性を有し、その蓄光性または反射性を有する経糸5をホース周方向に近接して配置することにより、蓄光性または反射性を有するライン4が形成されているが、これに限定されるものではない。別の実施形態として、通常の織物からなるジャケット2の外周面に対して、外側被覆層3Bとは異なる蓄光材または反射材を含んだ他の樹脂層を付加することや、蓄光材または反射材を含んだ塗料を塗布すること、蓄光材または反射材を含んだ接着剤を塗布すること等により、蓄光性または反射性を有するライン4を形成することができる。上述したいずれの場合であっても、外側被覆層3Bはホース径方向最外側に位置し、ジャケット2の外周面を被覆する。
【0025】
上述したホース1では、織物10からなるジャケット2とその内周面を被覆する内側被覆層3Aと外周面を被覆する外側被覆層3Bとを備え、ジャケット2の外周面にライン4(蓄光ラインまたは反射ライン)が設けられ、ライン4はホース長さ方向に沿って延在している。例えば、ジャケット2の外周面に蓄光ラインが形成された場合、特に夜間や暗い建物内において、蓄光ラインが蓄光性を発揮して発光することによってホース1の視認性を高めることができる。また、ジャケット2の外周面に反射ラインが形成された場合、ホース1に光が当たった際に反射ラインが反射性を発揮して照射された光を反射することによってホース1の視認性を高めることができる。上述したいずれの場合においても、外側被覆層3Bが透明の樹脂から構成されていることにより、各ライン4の蓄光性または反射性を妨げることがないため、各ライン4の有する効果を十分に得ることができる。更に、ジャケット2の外表面が樹脂でコーティングされているので、ジャケット2の外表面に表出した蓄光ラインまたは反射ラインの耐摩耗性を改善し、ホース全体としての耐久性を向上させることができる。また、ジャケット2の外表面が樹脂でコーティングされているので、ホースの外表面に織物が表出している従来のジャケットに比べて取扱い性に優れている。即ち、ホース1の外表面が水を吸収してホース自体が重くなることがなく、ホース1の乾燥作業やそれによって使用不可となる時間を短縮することができ、更には、カビの発生を抑制することができる。
【0026】
上記ホースにおいて、ライン4(蓄光ラインまたは反射ライン)の幅wの合計は、ホース1の周囲長に対して好ましくは1%~80%、より好ましくは1%~50%であるとよい。このようにライン4の幅wをホース1の周囲長に対して適度に設定することで、ライン4の視認性を高くすることができる。なお、ライン4の幅wは、ジャケット2の外表面上でホース周方向に沿って測定される幅である(図1参照)。
【0027】
内側被覆層3Aの厚さA(図2参照)と外側被覆層3Bの厚さB(図2参照)とは0.5≦A/B≦2.0の関係を満たすとよい。その際、外側被覆層3Bの厚さBは、0.2mm~3.0mmの範囲とするとよい。このように厚さAと厚さBの比A/Bを適度に設定することで、ホース1の耐久性を効果的に改善することができる。なお、厚さAおよび厚さBは、織物10の織組織に基づく凹凸を含まないジャケット2の内輪郭線または外輪郭線(図示の一点鎖線)を基準として、その内輪郭線または外輪郭線からホース1の内周面または外周面までの材料厚さをホース周方向における同じ位置で測定したものである。
【0028】
上記ホースにおいて、反射ラインは再帰反射性を有することが好ましい。具体的には、反射ラインが再帰性反射材からなるもしくは再帰反射性を有する経糸5で構成される。再帰性反射材として、例えばガラスビーズを用いることができる。ジャケット2の外周面に、再帰性反射材を含むテープを貼り付けることや、再帰性反射材を樹脂または接着剤に混ぜて直接塗布すること等により、ライン4に再帰反射性を付与することができる。或いは、再帰反射性を有する経糸5をホース周方向に近接して配置することにより、再帰反射性を有するライン4を形成することができる。このように再帰反射性を有するライン4(再帰性反射ライン)を設けることで、ライン4の視認性を高めることができる。
【0029】
図3図5は、本発明の実施形態からなるホースの変形例である。図4は、ジャケット2を構成する織物10について、ホース長さ方向の一部を切り取り、更にホース1を扁平にした時の一方の縁部(耳部)に沿って切り、展開したものである。図5は、織物10の杉綾織部12を中心にした織組織を部分的に示すものである。
【0030】
図3に示すように、ホース1は、ホース長さ方向に延在する綾織部11および杉綾織部12がホース周方向に交互に配置された織物10を有している。杉綾織部12は逆V字形の模様に描かれ、その頂点の示す方向が水源側の方向であり脱出方向となる。
【0031】
図4に示すように、ホース1を扁平にしたとき、ホース1の表側および裏側の略中央部(腹部)に杉綾織部12が配置され、合計2列の杉綾織部12が形成される。杉綾織部12の列数として、好ましくは1列から5列、より好ましくは1列から3列、更に好ましくは2列であるとよい。ホース周方向に間隔をあけて配置される杉綾織部12の間には、綾織部11が配置される。なお、ホース1の表側および裏側の縁部(耳部)に杉綾織部12を配置してもよい。
【0032】
綾織部11は、順綾目構造または逆綾目構造を有し、杉綾織部12は、順綾目構造21および逆綾目構造22を有する。杉綾織部12において、順綾目構造21と逆綾目構造22とは隣接して形成され、これらの境界線に対して線対称の構造を有する。図示の例は、綾織部11が順綾目構造を有し、綾織部11の順綾目構造の一方側に隣接して杉綾織部12の順綾目構造21が配置され、他方側に隣接して杉綾織部12の逆綾目構造22が配置された織物10である。なお、綾織部11は逆綾目構造を有してもよく、その場合も同様に、綾織部11の逆綾目構造に隣接して杉綾織部12の順綾目構造21と逆綾目構造22が配置される。
【0033】
杉綾織部12の周方向長さの合計(l21+l22+l21+l22)は、ホースの周囲長、即ち、織物10の周囲長Lに対し、好ましくは1%~80%、より好ましくは1%~50%であるとよい。杉綾織部12の割合をこのような範囲内にすることにより、杉綾織部12の模様(逆V字形)の視認性を高くし、退避方向(水源側の方向)をより早く、確実に判断することができる。
【0034】
図5に示すように、綾織部11は順綾目からなり、杉綾織部12は順綾目および逆綾目からなる。綾織部11の順綾目は、経糸5a(図中、白抜きで表す。)と緯糸6(図中、横線のハッチングで表す。)とからなる2/1斜文織構造である。杉綾織部12の順綾目は、交互に配置された第1の糸5b(図中、白抜きで表す。)および第2の糸5c(図中、斜線のハッチングで表す。)と、緯糸6(図中、横線のハッチングで表す。)とからなる右下がり模様の2/1斜文織構造である。また、杉綾織部12の逆綾目は、交互に配置された第1の糸5b(図中、白抜きで表す。)および第2の糸5c(図中、斜線のハッチングで表す。)と、緯糸6(図中、横線のハッチングで表す。)とからなる右上がり模様の2/1斜文織構造である。杉綾織部12を構成する第1の糸5bおよび第2の糸5cは、1本ずつまたは2本ずつ交互に配置することができる。
【0035】
杉綾織部12の経糸5c(第2の糸)は、綾織部11の経糸5aの色および杉綾織部12の経糸5b(第1の糸)とは異なる着色糸である。図5の例は、杉綾織部12の経糸5b(第1の糸)が、綾織部11の経糸5aと同じ色の糸である織物10を示す。このとき、織物10の経糸5a,5bと経糸5cとは互いに異なる2色で構成されている。なお、緯糸6は、織物の中に入り込むため特に限定されない。経糸5aおよび経糸5bは、白または無着色にすることができる。経糸5cの色は、特に限定されるものではないが、経糸5aの色に対し明度および/または彩度が異なる色であるとよい。着色の手段は特に制限されるものではなく、染料、顔料、蛍光剤等を用いて着色することができる。
【0036】
別の実施形態として、杉綾織部12の経糸5b(第1の糸)を、綾織部11の経糸5aの色とは異なる着色糸にすることができる。このとき、杉綾織部12の経糸5b(第1の糸)、経糸5c(第2の糸)および綾織部11の経糸5aは互いに異なる色の着色糸であり、織物10の経糸5a,5b,5cは3色で構成される。この場合も、緯糸6は、織物の中に入り込むため特に限定されない。経糸5aは、白または無着色にすることができる。経糸5bおよび経糸5cの色は、特に限定されるものではないが、少なくとも一方が経糸5aの色に対し明度および/または彩度が異なる色であるとよい。着色の手段は特に制限されるものではなく、染料、顔料、蛍光剤等を用いて着色することができる。
【0037】
上記織物において、経糸5c(第2の糸)は経糸5b(第1の糸)および綾織部11の経糸5aとは色が異なる着色糸であるので、ジャケット2の外表面上において杉綾織部12の模様(逆V字形)が明確に形成される。また、経糸5b(第1の糸)および経糸5c(第2の糸)の少なくとも一方が蓄光性または反射性を有している。この蓄光性または反射性を有する経糸5b,5cからなる杉綾織部12は、ホース長さ方向に延在するライン4(蓄光ラインまたは反射ライン)を形成する。なお、図示の例は、経糸5b(第1の糸)のみが蓄光性または反射性を有する織物10を示す。
【0038】
上述したホース1では、織物10の模様として逆V字形が形成されるので耐久性に優れており、長時間にわたり逆V字形を視認することができる。特に、第1の糸5bおよび第2の糸5cの少なくとも一方が蓄光性または反射性を有し、杉綾織部12は蓄光ラインまたは反射ラインをなし、第2の糸5cは第1の糸5bおよび綾織部11の経糸5aとは色が異なる着色糸で構成することによって、逆V字形の視認性が向上し、帰還路の方向を瞬時、かつ確実に判断することができる。
【0039】
経糸5および緯糸6として、通常のホースに用いられる繊維、例えばポリエステル等のフィラメント糸や紡績糸を使用することができる。ホース1のジャケット2を構成する筒状の織物10は、サーキュラー(円型)織機を用いて製造することができる。
【0040】
また、被覆層3は、ジャケット2に対して内側被覆層3Aを内周面側から内張りすると共に、外側被覆層3Bを外周面側から外張りすることにより形成することができる。或いは、ジャケット2の外周側から内周側に向けて、熱可塑性樹脂をジャケット2内に圧入する1圧入工程による方法(ワンショット押出成形法)で形成することもできる。このワンショット押出成形法を用いて被覆層3を形成した場合、熱可塑性樹脂が外周側から内周側までジャケット2の内部を貫通して一体的に存在するようになるため、全体でより強固な一体構造となる。これにより、ホースが折れ曲がってキンクが発生することを効果的に抑制することができる。
【0041】
本発明のホースの口径(図示の内径D)は、特に限定されるものではないが、口径を38mm~450mmの範囲とするとよい。特に、100mm~450mmの大口径のホースに適用した場合、ホース1の表面積が大きいため、ホース1の視認性、耐久性および取扱い性に対する改善効果が顕著である。
【0042】
また、本発明のホースの用途は、特に限定されるものではないが、例えば消防用ホースとして用いた場合、ホース1の視認性および耐久性に対して優れた効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ホース
2 ジャケット
3 被覆層
3A 内側被覆層
3B 外側被覆層
4 ライン
5 経糸
6 緯糸
10 織物
図1
図2
図3
図4
図5