IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京フード株式会社の特許一覧

特許7023266マシュマロの製造方法及びマシュマロ製造用プレミックスゲル
<>
  • 特許-マシュマロの製造方法及びマシュマロ製造用プレミックスゲル 図1
  • 特許-マシュマロの製造方法及びマシュマロ製造用プレミックスゲル 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】マシュマロの製造方法及びマシュマロ製造用プレミックスゲル
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/00 20060101AFI20220214BHJP
【FI】
A23G3/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019209390
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021078436
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2020-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391005569
【氏名又は名称】東京フード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】岸川 菜乃花
(72)【発明者】
【氏名】鈴本 英之
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/049166(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0321750(US,A1)
【文献】特開2005-245442(JP,A)
【文献】特開2004-105179(JP,A)
【文献】特開2009-261381(JP,A)
【文献】特開2009-261382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(A)~(C)を備えることを特徴とするマシュマロ製造用プレミックスゲルの製造方法。
(1)原料に対して72.5~80.5質量%の糖と、15~22.5質量%の水と混合して、煮詰めて濃縮することなく、加熱溶解する工程(A);
(2)原料に対して1.3~3.0質量%のゼラチンを40~80℃の温度で、投入して混合ペーストとする工程(B);及び
(3)混合したペーストは、冷蔵条件下にて硬化を行い、ゲル状に固めて、50℃で溶解させたときの粘度が150~2350cPであるマシュマロ製造用プレミックスゲルとする工程(C);
【請求項2】
工程(A)において、糖と水との混合物に、さらに大豆タンパク質及び/又は乳タンパク質を混合することを特徴とする請求項1に記載のマシュマロ製造用プレミックスゲルの製造方法。
【請求項3】
以下の工程(A)~(F)を備えることを特徴とするマシュマロの製造方法。
(1)原料に対して72.5~80.5質量%の糖と、15~22.5質量%の水と混合して、煮詰めて濃縮することなく、加熱溶解する工程(A);
(2)原料に対して1.3~3.0質量%のゼラチンを40~80℃の温度で、投入して混合ペーストとする工程(B);及び
(3)混合したペーストは、冷蔵条件下にて硬化を行い、ゲル状に固めて、50℃で溶解させたときの粘度が150~2350cPであるマシュマロ製造用プレミックスゲルとする工程(C);
(4)マシュマロ製造用プレミックスゲルを、40~80℃で加熱溶解する工程(D)
(5)比重が0.2~0.6になるよう泡立てる工程(E);及び
(6)マシュマロを成形する工程(F)
【請求項4】
工程(A)において、糖と水との混合物に、さらに大豆タンパク質及び/又は乳タンパク質を混合することを特徴とする請求項3に記載のマシュマロの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシュマロ製造設備を有しない一般の製菓業者であっても簡便にマシュマロを製造することができるマシュマロの製造方法や、マシュマロを簡便に製造するためのマシュマロ製造用プレミックスゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
マシュマロは、微細な気泡による弾力性を有するソフトキャンディの一種であり、メレンゲタイプとメレンゲ不使用タイプとに大別される。メレンゲタイプは、泡立てた卵白(メレンゲ)により気泡を保持する点に特徴があり、メレンゲ不使用タイプは、糖を煮詰めて濃縮したものにゼラチンなどのゲル化剤を加えて泡立てることにより気泡を保持する点に特徴がある。メレンゲタイプは、卵白を泡立てたメレンゲに、砂糖、水あめ、水を煮詰めたシロップを熱いまま加え、ゼラチンを加えてさらに泡立てたものを固め、粉(コーンスターチ等)をまぶして製造される。一方で、卵白(メレンゲ)を使用した場合、日持ちが悪くなるため、工業的な量産品ではメレンゲ不使用タイプが一般的である。工業的なマシュマロ製造においては、糖を110~120℃に煮詰めて濃縮したシロップにゼラチンを加え、連続ミキサーや加圧式ミキサーで泡立てて製造される。かかる製造方法により製造されたマシュマロでは、メレンゲに代わり、濃縮した糖やゼラチン等の増粘剤が気泡を保持する役割を有すると考えられる。起泡性を高めるために、大豆タンパク質、乳タンパク質、加水分解植物タンパク質や、他の増粘剤等を添加してもよく、食感を改善するために、油脂が添加される場合もある(特許文献1~3等)。
【0003】
しかしながら、上述の工業的なマシュマロ製造においては、糖の濃縮のために温度を110℃以上にする必要があり、さらに濃縮により粘度が極めて高くなるため高温を維持しなければ泡立てが困難であり、一般の菓子製造設備で製造することは難しい。そのため、マシュマロ製造設備を有しない製菓業者では、専門のマシュマロ製造業者から供給を受ける場合が多いが、固形物で供給されるため、マシュマロをトッピングに用いるか、混ぜ込む程度の二次加工しかすることができず、自由な成形を行うことができないのが現状である。
【0004】
かかる問題点を解決するための試みとして、特許文献4及び5には、粉末ゼラチン、乾燥卵白、ペプチド類(乳ペプチド、大豆ペプチド等)及び糖類(砂糖、ぶどう糖、麦芽糖等)を水に加熱溶解し、ホイップして泡立て、冷却、固化させることを特徴とするマシュマロの製造方法が記載されている。また、特許文献6には、水、糖質、ゲル化剤(ゼラチン等)、粉末油脂を含むマシュマロのプレミックス粉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-335861号公報
【文献】特開2002-291413号公報
【文献】特開2002-291414号公報
【文献】特開2009-261381号公報
【文献】特開2009-261382号公報
【文献】特開2017-118850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、一般の菓子製造設備で製造することのできるマシュマロの報告はあるが、特許文献4、5に記載のものは、保形性に乏しいか、流動性がすぐ失われるため成形しづらい(硬くなり、手絞りが困難になる)という問題がある。また、特許文献6に記載のものは、多量の粉末を100℃近い温度の熱水に溶解させる必要があり、一般の製菓業者において行ううえで困難なものであった。本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、より簡便なマシュマロの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、原料に対して1.3~3.0質量%のゼラチンと、糖と、水とを含む原料を、50℃でゲルを再溶解させたときの粘度が150~3000cPになるように配合して加熱溶解、冷却固化させて製造したゲルが、加熱溶解、ホイップすることで、手絞りで成形するだけでマシュマロを製造することができる、成形が容易で保形性に優れたマシュマロ生地となることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は以下に関する。
〔1〕原料に対して1.3~3.0質量%のゼラチンと、糖と、水とを含む前記原料からなるゲルであって、50℃で溶解させたときの粘度が150~3000cPであることを特徴とするマシュマロ製造用プレミックスゲル。
〔2〕大豆タンパク質及び/又は乳タンパク質をさらに含むことを特徴とする上記〔1〕に記載のマシュマロ製造用プレミックスゲル。
〔3〕以下のステップ(A)~(C)を備えたことを特徴とするマシュマロの製造方法。
(A)上記〔1〕又は〔2〕に記載のマシュマロ製造用プレミックスゲルを、40~80℃で加熱溶解するステップ;
(B)比重が0.2~0.6になるよう泡立てるステップ;
(C)成形するステップ;
〔4〕以下のステップ(A)~(C)を備えたことを特徴とするマシュマロの製造方法。
(A)原料に対して1.3~3.0質量%のゼラチンと、糖と、水とを含む前記原料を、加熱溶解後に50℃で測定したときの粘度が150~3000cPになるように配合し、加熱溶解するステップ;
(B)比重が0.2~0.6になるよう泡立てるステップ;
(C)成形するステップ;
〔5〕原料が、大豆タンパク質及び/又は乳タンパク質をさらに含むことを特徴とする上記〔4〕に記載のマシュマロの製造方法。
〔6〕上記〔3〕~〔5〕のいずれかに記載の製造方法により製造されたマシュマロ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マシュマロ製造設備を有しない製菓業者においても、成形が容易で保形性に優れたマシュマロを簡便に製造することができるため、マシュマロをこれまでにない幅広い食品に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明により製造されたマシュマロを使用した菓子を示す写真である。
図2】実施例における保形性の評価基準を例示する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、原料に対して1.3~3.0質量%のゼラチンと、糖と、水とを含む原料からなるゲルであって、50℃で溶解させたときの粘度が150~3000cPであることを特徴とするマシュマロ製造用プレミックスゲル(以下、「本発明のプレミックスゲル」という)や、本発明のプレミックスゲルを、40~80℃で加熱溶解するステップ(A)、前記ステップ(A)で得られた溶液を、比重が0.2~0.6になるよう泡立てるステップ(B)、及び前記ステップ(B)の泡立て後、成形するステップ(C)を備えたことを特徴とするマシュマロの製造方法(以下、「本発明の製造方法1」という)や、原料に対して1.3~3.0質量%のゼラチンと、糖と、水とを含み、加熱溶解後に50℃で測定したときの粘度が150~3000cPになるように配合した原料(以下、「本発明のマシュマロ原料」という)を加熱溶解するステップ(A)、前記ステップ(A)で得られた溶液を、比重が0.2~0.6になるよう泡立てるステップ(B)、及び前記ステップ(B)の泡立て後、成形するステップ(C)を備えたことを特徴とするマシュマロの製造方法(以下、「本発明の製造方法2」といい、「本発明の製造方法1」と「本発明の製造方法2」を合わせて「本発明の製造方法」という)や、本発明の製造方法により製造されたマシュマロに関する。本明細書においてマシュマロとは、ゼラチン、糖及び水を含む原料を加熱溶解して泡立てた生地(マシュマロ生地)を、成形、冷却固化して得られる、気泡による弾力を有するソフトキャンディを意味する。また、マシュマロ製造用プレミックスゲルとは、あらかじめマシュマロの原料を配合し、加熱溶解、冷却固化することで作製されたゲルであって、加熱溶解して泡立てることで、マシュマロ生地を簡便に作製することのできる、マシュマロ製造の用途に用いられるゲルを意味する。本発明のプレミックスゲルによれば、マシュマロ製造設備を用いずに、簡便にマシュマロを製造することができる。
【0012】
本発明のプレミックスゲル及び本発明のマシュマロ原料の50℃での溶解後の粘度は、150~3000cP(センチポアズ)であればよく、好ましくは200~3000cPであり、より好ましくは200~2500cPである。粘度の測定には、B型粘度計を用い、測定開始後30秒後の数値を本発明における粘度とする。
【0013】
本発明におけるゼラチンとしては、公知のいかなるゼラチンを用いることができ、中でもゼリー強度が100~250gのゼラチンを用いることが好ましい。ここで、ゼリー強度はJISK6503-2001「にかわ及びゼラチン」に定められる方法に従って測定される。また、本発明における糖としては、例えば砂糖(ショ糖)、果糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽糖、転化糖、異性化糖(果糖ブドウ糖液糖等)、トレハロース、糖アルコール、コーンシロップ、水あめ、デキストリンを例示することができる。上記糖アルコールとしては、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の単糖アルコール、イソマルチトール、マルチトール、ラクチトール等の二糖アルコール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の三糖アルコール、オリゴ糖アルコール等の四糖以上の糖アルコール、還元澱粉糖化物、還元澱粉分解物等を挙げることができる。
【0014】
本発明において、マシュマロの食感を改善したり、手絞り等による成形のし易さを向上させるため、本発明のプレミックスゲル又は本発明のマシュマロ原料に大豆タンパク質及び/又は乳タンパク質を配合してもよい。乳タンパク質としては、乳清タンパクが好ましい。大豆タンパク質や乳タンパク質の配合量としては、原料に対して0.1~5質量%を好適に例示することができる。また、任意で増粘安定剤(ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン等)、香料、着色料、果汁、濃縮果汁、甘味料、フレーバー等を配合してもよい。好ましい態様において、本発明のプレミックスゲル又は本発明のマシュマロ原料は、卵白及び/又は粉末油脂を含有しない。
【0015】
本発明の製造方法1において、本発明のプレミックスゲルの加熱溶解は、本発明のプレミックスゲルが溶解する温度である40~80℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは40~60℃で行うことができる。上記加熱溶解を80℃を超える温度で行うと、ゼラチンが変性し、保形性が変わる可能性があるため望ましくない。
【0016】
本発明の製造方法2において、本発明のマシュマロ原料の加熱溶解時の温度は、本発明のマシュマロ原料が溶解し、且つゼラチンが熱変性しない温度であればよく、例えば40~80℃、好ましくは50~80℃、より好ましくは60~80℃を挙げることができる。ここで、上記加熱溶解を80℃を超える温度で行うと、ゼラチンが変性し、保形性が変わる可能性があるため望ましくないが、上記加熱溶解に先立って、本発明のマシュマロ原料からゼラチンを除いた原料を80℃を超える温度(例えば80℃超~110℃未満)で加熱溶解し、その後、例えば40~80℃、好ましくは50~80℃、より好ましくは60~80℃においてゼラチンを加えてもよい。
【0017】
本発明の製造方法において、泡立ては、ハンドミキサー、ミキサー、スタンドミキサー、連続ミキサー、ホイッパー、ビーター、加圧ミキサー等、いかなる泡立て手段を用いて行ってもよいが、一般の製菓業者や家庭でマシュマロを製造するという観点からは、ハンドミキサー、ミキサー、スタンドミキサー、ホイッパー、ビーターが好ましい。また、泡立て後の比重は、0.2~0.6、好ましくは0.3~0.5を挙げることができる。
【0018】
本発明の製造方法において、泡立て後の成形はいかなる方法で行ってもよいが、本発明は、泡立て後に手絞りにより容易に成形でき、且つ保形性に優れる点に特徴がある。したがって、本発明の製造方法により、タルトトッピング、シュークリーム充填、クッキーサンド、パイコロネ充填等の、これまでマシュマロを用いることが困難であった用途にも、マシュマロを使用することができる(図1)。さらに、本発明の製造方法により製造されたマシュマロは、表面焼成することもできる。
【0019】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例
【0020】
1.マシュマロ製造用プレミックスゲルの製造
以下の方法により、マシュマロ製造用プレミックスゲルを製造した。
(1)下記の表1及び表2の配合にて水、砂糖、果糖ブドウ糖液糖を加熱溶解後、ゼラチン(クイックゼラチンQM-20、ゼライス株式会社製)、並びに任意で大豆タンパク(フジプロCLE、不二製油株式会社製)及び/又は乳タンパク(ダイイチラクトEM-10、第一化成株式会社製)を混合した。ゼラチンは、60~70℃の温度で投入した。
(2)混合したペーストは冷蔵条件下にて硬化を行い、ゲル状に固めてマシュマロ製造用プレミックスゲルとした。
(3)ゲルの再溶解時粘度としては、ゲルサンプルを50℃(±3℃)にて溶解し、含気させる前の状態で速やかに粘度測定を開始し、粘度測定を開始してから30秒後の数値を採用した。粘度の測定にはB型粘度計(デジタル粘度計LVDVII+、AMETEK Brookfield社製)を使用した。
【0021】
2.マシュマロ製造用プレミックスゲルを用いたマシュマロの製造
上記の方法で製造したマシュマロ製造用プレミックスゲルを用い、以下の方法によりマシュマロを製造した。
(1)ゲルを40~60℃で溶解し、スタンドミキサー(Kitchenaid mixer、キッチンエイド社製)を用いて比重が約0.4になるようホイッパーで含気させた。同時に評価を行う実施例、比較例については、比重の数値幅が0.05の範囲に収まるように含気処理を行った。
(2)含気させたペーストを、絞り袋を使い、星口金で手絞りを行い成形した。
【0022】
絞りやすさの評価は、絞る際、熟練した女性研究員が手絞りでも適度な力で絞れるかどうかを指標として行った。熟練した女性研究員が手絞りでも適度な力で絞れると判断したものを「絞り適正良好」とした。一方、硬くて手で絞ることが難しいものや、軟らかすぎて少し力をかけただけで大量に出てしまうものは「絞り適正不良」と評価した。作業時間を考慮し、ホイップ後30分以内に硬く絞れなくなるものは「絞り適正不良」とした。
【0023】
また、保形性の評価としては、絞って20分後でも溝が残っているものを保形性良好と判断し(図2A)、だれて溝がなくなってしまうものは保形性不良(図2C)と判断した。ボーダーラインとして、多少角が残っていたとしても横から見て溝がなくなった状態のものから、保形性不良と判定した(図2B)。
【0024】
3.結果3-1 再溶解時粘度の検討
ゼラチン量を2.5質量%に固定した場合における、再溶解時粘度と保形性、絞り適正を評価した結果を以下の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
ここでの結果より、再溶解時粘度が150cP~3000cP程度であるマシュマロ製造用プレミックスゲルが、マシュマロ製造時に絞り袋で手絞りをしても適度な力で絞りやすく、且つ絞った際の保形性が良好であることが示された。
【0027】
3-2 タンパク質の有無による食感改善効果の検討
大豆タンパク質や乳タンパク質の有無による、マシュマロの食感改善効果を検討した。食感は、熟練したパネラー4名により、下記の基準に従い評価した。
食感(弾力):噛んだ際、マシュマロらしい弾力のある食感をしているか評価を行った。
5:弾力のある食感をしている
4:やや弾力のある食感をしている
3:ふつう
2:やや弾力がない食感をしている(マシュマロとしての許容ライン)
1:弾力がない食感をしている

食感(滑らかさ):舌触りが滑らかな食感であるか評価を行った。
5:滑らかな食感である
4:やや滑らかな食感である
3:ふつう
2:やや滑らかでない(マシュマロとしての許容ライン)
1:滑らかでなく、ぼそぼそする
【0028】
結果を以下の表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
ここでの結果より、タンパク質を入れなくてもマシュマロを製造することができるが(実施例5)、好ましくは大豆タンパク質を入れるとよりマシュマロらしい弾力のある食感となることがわかった。添加するタンパク質としては、大豆タンパク質のみでもよいが、大豆タンパク質のみを使用する場合絞りやすさが若干劣るため(実施例5)、より好ましくは乳タンパクを併用したときに、食感がよく、かつ絞りやすいマシュマロをつくることができることがわかった(実施例1)。
【0031】
3-3 ゼラチン量の検討
実施例1の配合から、ゼラチン量を変化させた場合における、再溶解時粘度と保形性、絞り適正を評価した結果を以下の表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
ここでの結果より、ゼラチン量を1質量%から3.4質量%まで変化させても、再溶解時粘度は637cP~1150cPの範囲であったが、1質量%では保形性が乏しく、3.4質量%では絞り適正が不良(硬く絞りづらい)となることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、マシュマロ製造設備を有しない製菓業者においても、成形が容易で保形性に優れたマシュマロを簡便に製造することができるため、マシュマロをこれまでにない幅広い食品に使用することができるようになる。したがって、本発明の食品分野における産業上の利用可能性は極めて高い。
図1
図2